説明

3次元GISナビゲーション方法、3次元GISナビゲーションサーバおよび3次元GISナビゲーションシステム

【課題】 利用者が進行方向やランドマーク等を認識するのに最適な情報バランスを考慮し、ナビゲーションに必要な画像の視認性を確保しつつデータ量を落とすことのできる3次元GISナビゲーション方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】 クライアントからのナビゲーション要求に応じ、目的地に至るルート上の個々の地点の3次元景観を示す静止画を順次に配信する方法であって、道路上の一定距離間隔における静止画および交差点における一定角度間隔の静止画を選択する工程と、利用に支障をきたさない範囲で静止画を間引く工程と、視認性に影響を与える重要度に応じて静止画の画質を変更する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラフィック機能の乏しい携帯電話に3次元GIS(Geographical Information System)ナビゲーションを提供する3次元GISナビゲーション方法、3次元GISナビゲーションサーバおよび3次元GISナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元GISは様々な分野での利用が期待されており、一部で実用化が進められつつある。有望な用途の一つとして、歩行者の所持する携帯電話に対し目的地への道順に沿った3次元の景観を表示するナビゲーションシステムが考えられている。しかし、3次元GISの基盤データはグラフィック展開時に膨大な演算処理を要するため、グラフィック機能の乏しい携帯電話で処理するのは非常に困難である。
【0003】
一方、携帯電話等のモバイル端末は近年、小型、高性能、多機能になってきている。主に携帯電話は年々著しく向上し続けている。視覚的な表現に関しては、近年の携帯電話では液晶画面のカラー化、大型化、高画質化が進み、高性能で多彩な表現が可能になった。基本的な静止画、動画に関して言えば、高品質な表現が可能になり、多くの用途に使用されている。
【0004】
しかしながら、現状の携帯電話ではCPU能力や記憶容量を含め、総合的な機能制約があるため、膨大な空間データを用いる3次元グラフィックス表現には適していない。また、携帯電話ごとに3次元グラフィックスエンジンや表示領域、発色数の性能差があるため、端末によって著しく動作速度が異なってしまう等の端末依存の問題も発生する。故に、現状の携帯電話において3次元GIS方式を採用し、多くの建物や道路を広範囲にわたりレンダリングしてアニメーションで再現することは極めて困難である。
【0005】
そこで、膨大な空間データを使ったレンダリング処理はサーバに任せ、携帯電話ではサーバから送られてくる静止画を素材に用いて3次元アニメーションを実現する方式が現実的であり、既にいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、ユーザの現在地情報および目的地情報を受信し、現在地と目的地とを結ぶルートを計算し、ルート上の各地点における複数もしくは大きさの異なる静止画を携帯電話に配信して表示する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−69423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、携帯電話に静止画を配信して表示させることにより、グラフィック機能の乏しい携帯電話における3次元景観のナビゲーションを実現したものが既に提案されているが、配信する静止画をいかに決定するかという点については十分に考慮されておらず、実用に際してデータ量が多くなり、携帯電話の限られた帯域では伝送が困難になる場合がある。例えば、ルートに沿って等間隔に作成した静止画を携帯電話に配信する場合、視認性を確保するために間隔を小さく設定するとデータ量が多くなり、狭帯域のモバイル回線で伝送するには応答時間への影響が避けられない。また、伝送効率および応答時間短縮の観点から複数の静止画をまとめて伝送する場合、携帯電話のメモリ容量の制限から一度に保持しておける静止画数が限られるため、データ量が多くなることで伝送回数が増えるという問題もある。
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、利用者が進行方向やランドマーク等を認識するのに最適な情報バランスを考慮し、ナビゲーションに必要な画像の視認性を確保しつつデータ量を落とすことのできる3次元GISナビゲーション方法、3次元GISナビゲーションサーバおよび3次元GISナビゲーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、請求項1に記載されるように、クライアントからのナビゲーション要求に応じ、目的地に至るルート上の個々の地点の3次元景観を示す静止画を順次に配信する方法であって、道路上の一定距離間隔における静止画および交差点における一定角度間隔の静止画を選択する工程と、利用に支障をきたさない範囲で静止画を間引く工程と、視認性に影響を与える重要度に応じて静止画の画質を変更する工程とを備えるようにしている。これにより、ナビゲーションに必要な画像の視認性を確保しつつデータ量を落とすことができる。
【0009】
また、請求項2に記載されるように、区間道路の総距離と静止画枚数の割合に応じて静止画の間引きを行うようにすることができる。これにより、道路上の静止画における基本的な間引きを行うことができる。
【0010】
また、請求項3に記載されるように、交差点の進行方向変化角度と静止画枚数の割合に応じて静止画の間引きを行うようにすることができる。これにより、交差点の静止画における基本的な間引きを行うことができる。
【0011】
また、請求項4に記載されるように、視認性に影響を与える重要個所の静止画の間引きを行わないようにすることができる。これにより、間引きに起因する画像の視認性の低下を防止することができる。
【0012】
また、請求項5に記載されるように、間引きの行われなかった静止画のうち、視認性に影響を与える重要個所以外の静止画の画質を低下させるようにすることができる。これにより、ナビゲーションに必要な画像の視認性を確保しつつデータ量を落とすことができる。
【0013】
また、請求項6に記載されるように、重要個所は、開始地点、終点地点、進行方向変化直前、交差点内の最初の1枚目および2枚目、または、ランドマークの静止画であるものとすることができる。これにより、視認性に影響を与える重要個所についての具体的な基準を与えることができる。
【0014】
また、請求項7に記載されるように、クライアントからのナビゲーション要求に応じ、目的地に至るルート上の個々の地点の3次元景観を示す静止画を順次に配信する装置であって、道路上の一定距離間隔における静止画および交差点における一定角度間隔の静止画を選択する手段と、利用に支障をきたさない範囲で静止画を間引く手段と、視認性に影響を与える重要度に応じて静止画の画質を変更する手段とを備える3次元GISナビゲーションサーバとして構成することができる。
【0015】
また、請求項8に記載されるように、利用者により所持される無線通信機能を有したクライアントと、上記クライアントからのナビゲーション要求に応じ目的地に至るルート上の個々の地点の3次元景観を示す静止画を順次に配信し、配信する静止画につき、道路上の一定距離間隔における静止画および交差点における一定角度間隔の静止画を選択する手段、利用に支障をきたさない範囲で静止画を間引く手段、および視認性に影響を与える重要度に応じて静止画の画質を変更する手段を有した3次元GISナビゲーションサーバとを備える3次元GISナビゲーションシステムとして構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、クライアントに配信するナビゲーション画像として、道路上の一定距離間隔における静止画および交差点における一定角度間隔の静止画に対し間引きおよび画質変更を行うことで、ナビゲーションに必要な画像の視認性を確保しつつデータ量を落とすことができ、狭帯域のモバイル回線で伝送する場合の応答時間を速め、複数の静止画をまとめて伝送する場合の伝送回数を削減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態につき図面を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態にかかる3次元GISナビゲーションシステムの構成図である。図1において、3次元GISナビゲーションシステムは、3次元GIS情報に基づいてナビゲーションのための静止画等を作成しネットワーク2を介して配信する3次元GISナビゲーションサーバ1と、ネットワーク2に接続された基地局3と、利用者が保持する携帯電話等のクライアント4とから構成されている。
【0019】
3次元GISナビゲーションサーバ1は、GISデータベース12の格納情報に基づき予めアニメーションデータを作成し、作成したアニメーションデータをアニメーションデータ蓄積部13に格納するアニメーションデータ作成部11と、ネットワーク2を介してクライアント4からのナビゲーションの要求を受信するとともにナビゲーションのための静止画等をクライアント4に向けて送信するデータ送受信部14と、クライアント4からのナビゲーションの要求に応じてナビゲーションデータを作成するナビゲーションデータ作成部15と、ナビゲーションデータ作成部15で作成されたナビゲーションデータの静止画を対象に、利用者に支障をきたさない範囲での間引き・画質変更を行う間引き・画質変更部16と、間引き・画質変更の行われた静止画にナビゲーションのためのキャプションおよび記号等の定型オブジェクトを付加する定型オブジェクト挿入部17とを備えている。
【0020】
アニメーションデータ作成部11は、GISデータベース12の格納情報に基づき3次元景観の動画を生成する動画生成部111と、生成された動画から静止画を抽出する静止画抽出部112とを備えている。
【0021】
GISデータベース12は、道路の接続関係を示す道路ネットワーク情報121と、道路の形状を示す道路形状情報122と、道路の周囲に存在する建物の形状を示す建物形状情報123と、建物の外壁等の属性を示す建物属性情報124と、視認性の高いランドマークとなり得る建物等を示すランドマーク情報125とを含んでいる。
【0022】
ナビゲーションデータ作成部15は、クライアント4から取得した現在地情報および目的地情報に基づき、GISデータベース12の道路ネットワーク情報121を用いてルートを解析するルート情報解析部151と、解析されたルートに沿った静止画を全て選択する静止画選択部152とを備えている。
【0023】
間引き・画質変更部16は、道路の総距離と静止画枚数の割合もしくは交差点の進行方向変化角度と静止画枚数の割合に応じて間引き間隔を判断して決定する間引き間隔判断・決定部161と、間引きを行わない重要個所の静止画を除外し、間引きする個所を決定する間引き個所判断・決定部162と、間引き処理を実行する間引き処理部163と、間引きされなかった静止画のうち重要個所でない部分を画質変更の対象として判断し決定する画質変更判断・決定部164と、画質変更処理を実行する画質変更処理部165とを備えている。
【0024】
定型オブジェクト挿入部17は、GISデータベース12の道路ネットワーク情報121を用いてルートを解析するルート情報解析部171と、ルートの解析結果に基づき、座標データから静止画ごとの位置・進行方向を判定し、その位置・進行方向に対するキャプション・記号を付加するキャプション・記号挿入部172とを備えている。
【0025】
以下、上記の実施形態の動作について説明する。
【0026】
図2は3次元GISナビゲーションサーバ1の処理を示すフローチャートである。
【0027】
先ず、クライアント4に対してナビゲーションを行う前段階の処理として、ナビゲーションに際して提供する静止画の素材となるアニメーションデータの作成について説明する。
【0028】
アニメーションデータ作成部11の動画生成部111は、ナビゲーションサービスを行うエリア内の道路および交差点につき、GISデータベース12の格納情報に基づきレンダリング処理を行い、道路、交差点の景観を表示した3次元空間映像の動画を生成する(ステップS1)。
【0029】
次いで、静止画抽出部112は動画生成部111で生成された動画から、道路については一定距離間隔ごとに、交差点については一定角度間隔ごとに、静止画を抽出し、抽出した静止画502と座標データ503からなるアニメーションデータ501をアニメーションデータ蓄積部13に格納する(ステップS2)。
【0030】
図3はアニメーションデータ作成における静止画抽出の方法を示す図であり、(a)に示すように、各道路511の往路・復路に沿って一定速度で移動した場合の景観を示す動画514、515と、交差点512において一定の角速度で360度回転した場合の景観を示す動画516とから、道路511の動画514、515については一定距離間隔ごとに静止画517、518を抽出し、交差点512の動画516については一定角度間隔ごとに静止画519を抽出する。なお、513は道路511の周辺に存在する建物である。
【0031】
(b)は直進路における静止画の抽出をより詳しく示したものであり、道路511の動画514から一定間隔ごとに静止画517を抽出する。なお、静止画517を抽出する間隔はあまり広くせず、後の間引き処理により視認性に問題のない部分の静止画を間引くことで対応する。これは、当初から広い間隔で静止画を抽出した場合、移動の開始地点や終点地点における静止画と実際の景観との誤差が大きくなるためである。
【0032】
(c)は交差点における静止画の抽出をより詳しく示したものであり、交差点512の動画516から一定角度間隔ごとに静止画519を抽出する。なお、交差点512の動画516は真北を始点としたものに統一することで、静止画519の抽出処理を画一化することができる。また、静止画519を抽出する角度間隔はあまり広くせず、後の間引き処理により視認性に問題のない部分の静止画を間引くことで対応する。これは、当初から広い角度間隔で静止画を抽出した場合、右左折時における景観のつながりがわかりにくくなり、どこまで曲がるのかを正確に伝えられないからである。
【0033】
次に、図2に戻り、クライアント4に対してナビゲーションを行う処理について説明する。
【0034】
クライアント4からデータ送受信部14を介してナビゲーションの要求があった場合(ステップS3)、ナビゲーションデータ作成部15のルート情報解析部151は、要求に含まれる現在地情報および目的地情報に基づき、GISデータベース12の道路ネットワーク情報121を用いて、道路、交差点を組み合わせたルート情報を解析する(ステップS4)。
【0035】
次いで、静止画選択部152は、道路、交差点ごとの連続する静止画からルート情報に沿った静止画を全て選択し、静止画の識別情報をリストにしたルート静止画リストファイル504を出力する(ステップS5)。
【0036】
図4はナビゲーションデータ作成における静止画選択の方法を示す図であり、(a)において道路520を直進し交差点512において道路521に右折するものとすると、道路および交差点についての複数の静止画517、518、519の中から、道路については進行方向に属する全ての静止画522、524を選択し、交差点については右折に伴って変化する角度範囲にある全ての静止画523を選択する。
【0037】
(b)は直進路における静止画の選択をより詳しく示したものであり、道路520の進行方向に沿った静止画522の全てを選択する。(c)は交差点における静止画の選択をより詳しく示したものであり、交差点における右折に伴う方向525から方向526への角度変化範囲内に存在する静止画523を全て選択する。
【0038】
次いで、図2に戻り、間引き・画質変更部16はルート静止画リストファイル504にリストアップされた静止画に対し、利用者に支障をきたさない範囲での間引きを行うとともに、重要度に応じた画質変更(画質低下)を行い、間引いた静止画を除外するとともに画質変更した静止画の識別情報を反映した新たなルート静止画リストファイル505を出力する(ステップS6)。間引き・画質変更部16の処理の詳細については後述する。
【0039】
次いで、定型オブジェクト挿入部17のルート情報解析部171は、GISデータベース12の道路ネットワーク情報121を用いてルート情報を解析し、ナビゲーションのためのキャプションや進行方向を示す記号を挿入するための情報を取得する(ステップS7)。
【0040】
次いで、キャプション・記号挿入部172は、座標データから静止画ごとの位置・進行方向を判定し(ステップS8)、その位置・進行方向に対するキャプション・記号を決定し(ステップS9)、キャプション・記号の内容、挿入位置等を示す情報を含んだ制御ファイル507を作成する(ステップS10)。
【0041】
そして、データ送受信部14は該当する静止画とキャプション・記号データ506と制御ファイル507とをクライアント4に向けネットワーク2を介して送信する(ステップS11)。
【0042】
これらの情報を取得したクライアント4では、静止画とキャプションと記号とを制御ファイル507の制御情報に基づき合成して表示し、利用者は表示された静止画と周囲の景観とを比較するとともに、キャプションおよび記号を参考情報として、進行方向を把握する。利用者が現時点の表示画像について認識し、次の画像を要求すべき所定のキー操作を行うと、ルート情報に沿った次の静止画等を送信する。この場合、その都度に静止画等を送信するようにしてもよいし、図5に示すように予め複数の静止画等をクライアント4に送信しておき(先読)、クライアント4内で表示を切り替え、不要になった静止画等を廃棄するようにしてもよい。この先読により、歩行利用に際して遅延の少ない端末応答性が確保できる。
【0043】
図6は間引き・画質変更部16の処理(図2におけるステップS6の詳細)を示すフローチャートである。
【0044】
先ず、間引き・画質変更部16の間引き間隔判断・決定部161は、ルート静止画リストファイル504を入力し(ステップS21)、次いでGISデータベース12から道路ネットワーク情報121を入力する(ステップS22)。
【0045】
次いで、間引き間隔判断・決定部161は、区間道路の総距離と静止画枚数の割合による間引き間隔を判断して決定するとともに(ステップS23)、交差点における進行方向の変化角度と静止画枚数の割合による間引き間隔を判断して決定する(ステップS24)。
【0046】
次いで、間引き個所判断・決定部162は、間引きを行わない重要個所の静止画、例えば、開始地点、終点地点、進行方向変化直前、交差点内の最初の1枚目および2枚目、ランドマーク等を判断し決定する(ステップS25)。
【0047】
図7は直進路における静止画間隔による間引きの判断の例を示す図であるが、(a)に示すように道路527に沿った連続する静止画528がある程度の間隔をもっている場合、間引き間隔判断・決定部161は間引きの必要はないと判断し、(b)に示すように道路529に沿った連続する静止画530の間隔が狭い場合には間引きの必要があると判断し、何枚おきに間引くかを決定する。すなわち、静止画の間隔がある程度の距離であるならば間引きを行う必要はなく、逆に間引きをしてしまうと前後の静止画で景観のつながりがわからなくなってナビゲーションに支障をきたしてしまうからである。一方で、静止画の間隔が短い場合は全ての静止画を使用すると膨大なデータ量となり、高速に処理を行うのが困難となるため、間引く対象とする。
【0048】
図8は直進路における静止画の間引きの例を示す図であり、一定間隔(例えば10メートル間隔)で抽出された静止画531〜539の間隔が短いと判断し、1枚おきの静止画532、534、536、538を間引いた場合を示している。また、残った静止画531、533、535の画像の例をあわせて示してある。例えば10メートル間隔で抽出された静止画の場合、2つ以上を連続して間引いてしまうと各静止画の距離が開きすぎてしまい、景観のつながり(連続性)がわからなくなってしまうため、1枚おきに間引くようにしている。
【0049】
一方、間引き間隔判断・決定部161は、間引き個所判断・決定部162によって重要個所と判断された所定の位置の静止画については間引きを行わない。第1は、直進する場合の直後の静止画であり、図9に示すように、静止画540から直進が開始されるものとすると、この静止画540については元から間引かないことに加え、続く静止画541についても間引きの対象としない。これは、直進開始直後の静止画については、進行方向につき利用者の認識をより確実にするためである。
【0050】
また、間引きを行わない特定の位置の第2は、道なりの右左折において進行方向が変化する直前の静止画であり、ルート情報の解析結果に基づいて道なりの右左折が発生する場所を特定し、その直前の静止画は間引きの対象としない。
【0051】
図10(a)は地点Aから直進し地点Bで右折して地点Cに進行する場合に、原則通りに間引きを行った場合を示しており、地点Bで右折する直前の静止画543を間引いている。この場合、地点Bで右折する直前に利用者に対して表示されるのは静止画542となってしまうため、地点Bの静止画544とのつながりがわかりずらくなってしまう。そこで、(b)に示すように、地点Bで右折する直前の静止画543については間引きの対象としないものとする。これにより、続く静止画544とのつながりがわかりやすくなり、円滑なナビゲーションを行うことができる。
【0052】
図11は交差点における静止画の間引きの例を示す図であり、地点Aから直進し地点Bで右折して地点Cに進行するものとすると、地点Bの交差点における進行方向の変化角度範囲内に存在するものとして選択された静止画546〜549のうち、最初の静止画546とそれに続く静止画547と最後の静止画549を残し、それ以外の静止画548を間引きの対象とする。従って、静止画546と静止画547の間は小さい角度変化となり、静止画547と静止画549の間は大きな角度変化となる。
【0053】
これは、一定角度間隔の静止画を全て使用しなくても利用者に対して十分に進行方向の変化を認識させることができるため、データ量を削減するために所定の枚数ずつ間引きを行うが、最初の進行方向の変化については利用者に明確に認識してもらうべきことから、最初の静止画に続く静止画については間引きを行わないものである。
【0054】
次いで、図6に戻り、間引き処理部163は、間引き間隔判断・決定部161および間引き個所判断・決定部162において決定された間引き間隔および間引き個所に応じて、間引き処理を実行する(ステップS26)。これは、ルート静止画リストファイル504から該当する静止画の識別情報の記述を削除することで行う。
【0055】
次いで、画質変更判断・決定部164は、間引き処理の終了後、重要個所ではなく、かつ間引きされなかった静止画を判断して決定し(ステップS27)、画質変更処理部165は、重要個所ではないものとされた静止画につきアニメーションデータ蓄積部13に格納された静止画に対して画質変更を行う(ステップS28)。なお、予め画質変更された静止画を全ての静止画に対して用意しておき、それを選択するようにしてもよい。
【0056】
図12は開始地点における静止画の画質の例を示す図であり、開始地点における静止画550の画質は、ナビゲーションの開始場所を利用者にわかりやすく示すため、画質変更を行わない状態のままの高画質な鮮明な画像としておく。
【0057】
図13は直進路における静止画の画質の例を示す図であり、重要個所となる開始地点の静止画551およびその次の静止画552とランドマークの静止画556については利用者の視認性を高めるため高画質のものとしておくが、その他の静止画553、554、555等については、進行方向の変化もなく特に視認性に影響を与えないため、データ量を削減するために画質を低下させる。
【0058】
図14は道なりの右左折における静止画の画質の例を示す図であり、左折となる地点Dの手前の静止画557については、進行方向の変化を利用者にわかりやすく示すため、画質変更を行わない状態のままの高画質な鮮明な画像としておく。
【0059】
図15は交差点手前における静止画の画質の例を示す図であり、地点Aから直進し地点Bで右折して地点Cに進行する場合に、右折する地点Bの手前の静止画558については、進行方向の変化を利用者にわかりやすく示すため、画質変更を行わない状態のままの高画質な鮮明な画像としておく。
【0060】
図16は交差点における静止画の画質の例を示す図であり、地点Aから直進し地点Bで右折して地点Cに進行する場合、地点Bの交差点内における静止画559〜561については、進行方向が変化している最中であり、どのくらい曲がるのかという変化の度合いを利用者にわかりやすく示すため、画質変更を行わない状態のままの高画質な鮮明な画像としておく。
【0061】
次いで、図6に戻り、画質変更処理部165は、間引き・画質変更によって書き換えられたルート静止画リストファイル505を出力し(ステップS29)、処理を終了する。
【0062】
このように、利用者が進行方向やランドマーク等を認識するのに最適な情報バランスを考慮した間引き・画質変更処理を行うことにより、ナビゲーションに必要な画像の視認性を確保しつつデータ量を落とすことができ、クライアント4における画像表示の応答を速めることができる。また、複数の静止画を先読みする場合の伝送回数も削減することができる。
【0063】
上述した静止画の間引きおよび画質変更によるデータ削減の効果を実測した結果を以下に示すが、約24%のデータ削減の効果が確認された。
【0064】
<削減前の静止画>
・静止画枚数:15枚
・1枚当たりの静止画データ量:約7kB
(解像度200×150pixel、圧縮率60%のjpegフォーマット)
・総データ量:105kB(7kB×15枚)
<削減後の静止画>
・静止画枚数:12枚(支障のない範囲での間引きが3枚)
・画質変更枚数:2枚(重要個所でないことによる画質変更)
・画質変更した1枚当たりの静止画データ量:約5kB
(解像度200×150pixel、圧縮率35%のjpegフォーマット)
・総データ量:80kB(7kB×10枚+5kB×2枚)
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態にかかる3次元GISナビゲーションシステムの構成図である。
【図2】3次元GISナビゲーションサーバの処理を示すフローチャートである。
【図3】アニメーションデータ作成における静止画抽出の方法を示す図である。
【図4】ナビゲーションデータ作成における静止画選択の方法を示す図である。
【図5】静止画等の先読みの例を示す図である。
【図6】間引き・画質変更部の処理を示すフローチャートである。
【図7】直進路における静止画間隔による間引きの判断の例を示す図である。
【図8】直進路における静止画の間引きの例を示す図である。
【図9】直進開始直後の間引きの例を示す図である。
【図10】道なりの右左折における静止画の間引きの例を示す図である。
【図11】交差点における静止画の間引きの例を示す図である。
【図12】開始地点における静止画の画質の例を示す図である。
【図13】直進路における静止画の画質の例を示す図である。
【図14】道なりの右左折における静止画の画質の例を示す図である。
【図15】交差点手前における静止画の画質の例を示す図である。
【図16】交差点における静止画の画質の例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 3次元GISナビゲーションサーバ
11 アニメーションデータ作成部
111 動画生成部
112 静止画抽出部
12 GISデータベース
121 道路ネットワーク情報
122 道路形状情報
123 建物形状情報
124 建物属性情報
125 ランドマーク情報
13 アニメーションデータ蓄積部
14 データ送受信部
15 ナビゲーションデータ作成部
151 ルート情報解析部
152 静止画選択部
16 間引き・画質変更部
161 間引き間隔判断・決定部
162 間引き個所判断・決定部
163 間引き処理部
164 画質変更判断・決定部
165 画質変更処理部
17 定型オブジェクト挿入部
171 ルート情報解析部
172 キャプション・記号挿入部
2 ネットワーク
3 基地局
4 クライアント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアントからのナビゲーション要求に応じ、目的地に至るルート上の個々の地点の3次元景観を示す静止画を順次に配信する方法であって、
道路上の一定距離間隔における静止画および交差点における一定角度間隔の静止画を選択する工程と、
利用に支障をきたさない範囲で静止画を間引く工程と、
視認性に影響を与える重要度に応じて静止画の画質を変更する工程とを備えたことを特徴とする3次元GISナビゲーション方法。
【請求項2】
区間道路の総距離と静止画枚数の割合に応じて静止画の間引きを行うことを特徴とする請求項1に記載の3次元GISナビゲーション方法。
【請求項3】
交差点の進行方向変化角度と静止画枚数の割合に応じて静止画の間引きを行うことを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の3次元GISナビゲーション方法。
【請求項4】
視認性に影響を与える重要個所の静止画の間引きを行わないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の3次元GISナビゲーション方法。
【請求項5】
間引きの行われなかった静止画のうち、視認性に影響を与える重要個所以外の静止画の画質を低下させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の3次元GISナビゲーション方法。
【請求項6】
重要個所は、開始地点、終点地点、進行方向変化直前、交差点内の最初の1枚目および2枚目、または、ランドマークの静止画であることを特徴とする請求項4または5のいずれか一項に記載の3次元GISナビゲーション方法。
【請求項7】
クライアントからのナビゲーション要求に応じ、目的地に至るルート上の個々の地点の3次元景観を示す静止画を順次に配信する装置であって、
道路上の一定距離間隔における静止画および交差点における一定角度間隔の静止画を選択する手段と、
利用に支障をきたさない範囲で静止画を間引く手段と、
視認性に影響を与える重要度に応じて静止画の画質を変更する手段とを備えたことを特徴とする3次元GISナビゲーションサーバ。
【請求項8】
利用者により所持される無線通信機能を有したクライアントと、
上記クライアントからのナビゲーション要求に応じ目的地に至るルート上の個々の地点の3次元景観を示す静止画を順次に配信し、配信する静止画につき、道路上の一定距離間隔における静止画および交差点における一定角度間隔の静止画を選択する手段、利用に支障をきたさない範囲で静止画を間引く手段、および視認性に影響を与える重要度に応じて静止画の画質を変更する手段を有した3次元GISナビゲーションサーバとを備えたことを特徴とする3次元GISナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−84184(P2006−84184A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266339(P2004−266339)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】