説明

3相ブラシレスモータ、電動パワーステアリング装置、および3相ブラシレスモータの組み立て方法

【課題】レゾルバの検出精度を向上させることができる3相ブラシレスモータ、電動パワーステアリング装置、および3相ブラシレスモータの組み立て方法を提供する。
【解決手段】ステータハウジング35と、ステータハウジング35に内嵌固定され、ステータコイル38が巻装されているステータコア36と、ステータコア36の径方向内側に回転自在に設けられたロータ31と、ステータハウジング35の一端に設けられたレゾルバハウジング71と、レゾルバハウジング71に内嵌固定され、レゾルバコイル79が巻装されたレゾルバステータ63Bと、ロータ31のレゾルバステータ63Bに対応する部位に外嵌固定されたレゾルバロータ63Aとを備え、ステータコア36とレゾルバステータ63Bとの間に、ステータハウジング35の内径、およびレゾルバハウジング71の内径よりも小径に形成された小径部76を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3相ブラシレスモータ、電動パワーステアリング装置、および3相ブラシレスモータの組み立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置として、ロータの回転位置を検出するレゾルバを備えた3相ブラシレスモータがある。この種の3相ブラシレスモータは、筒状のステータハウジング内に、ステータコイルが巻装されたステータを内嵌固定し、このステータの径方向内側にロータが回転自在に設けられている。また、ステータハウジングの一端には、ステータハウジングの開口部を閉塞するブラケットが設けられている。ブラケットには、一端側に大きく開口された大開口部が形成されている。ブラケットは、大開口部の周縁をステータハウジングの周縁に重ね合わせるようにし、ボルトによって締結固定される場合が多い。
【0003】
レゾルバは、ブラケット内に固定されたレゾルバステータと、ロータのレゾルバステータに対応する位置に固定されたレゾルバロータとで構成されている。
レゾルバステータには、レゾルバコイルが巻装されている。そして、ロータの回転に伴い、レゾルバロータが回転すると、レゾルバコイルの信号出力が変化するようになっている。この信号出力の変化に基づいてロータの回転位置を検出する。
【0004】
ここで、ブラケットには、レゾルバステータの他に、ロータを回転自在に支持するための軸受けが設けられている場合が多い。このため、ブラケットへのレゾルバステータ、および軸受けの組み立て手順としては、大開口部側から軸受け、レゾルバステータの順で組み付けるようになっている。すなわち、軸受けよりもレゾルバステータが大開口部側に位置することになる。
そして、ステータが組み付けられているステータハウジングに、レゾルバステータ、および軸受けを組み付けたブラケットを取り付ける。このとき、ブラケットは、仮締め状態にしておき、レゾルバロータが取り付けられたロータを組み付けた後、レゾルバステータの角度調整を行うべく、ブラケットの角度を調整して増し締めを行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−148457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、ブラケットの大開口部寄りにレゾルバステータが取り付けられるので、ステータハウジングにブラケットを取り付けた状態では、ステータとレゾルバステータとが近接して配置されることになる。このため、ステータからの漏れ磁束によりレゾルバの検出精度が悪化するおそれがあるという課題がある。
また、ステータハウジングにブラケットをボルトによって締結固定するので、振動等によってボルトが緩み、レゾルバステータの固定角度がずれて、検出精度が悪化するおそれがあるという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、レゾルバの検出精度を向上させることができる3相ブラシレスモータ、電動パワーステアリング装置、および3相ブラシレスモータの組み立て方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、ステータハウジングと、前記ステータハウジングに内嵌固定され、ステータコイルが巻装されているステータコアと、前記ステータコアの径方向内側に回転自在に設けられたロータと、前記ステータハウジングの一端に設けられたレゾルバハウジングと、前記レゾルバハウジングに内嵌固定され、レゾルバコイルが巻装されたレゾルバステータと、前記ロータの前記レゾルバステータに対応する部位に外嵌固定されたレゾルバロータとを備え、前記レゾルバロータの回転に伴って、前記レゾルバコイルの出力信号の位相が変化し、この出力信号の位相の変化に基づいて、前記ロータの回転位置を検出するように構成されている3相ブラシレスモータにおいて、前記ステータコアと前記レゾルバステータとの間に、前記ステータハウジングの内径、および前記レゾルバハウジングの内径よりも小径に形成された小径部を設けたことを特徴とする。
このようにすることで、小径部によって、ステータコアからの漏れ磁束がレゾルバステータに影響を及ぼすことを阻止できる。このため、レゾルバの検出精度の悪化を抑制することが可能になる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記小径部に、前記ロータを回転自在に支持するための軸受けを設けたことを特徴とする。
このように構成することで、レゾルバステータに対するステータコアからの漏れ磁束の影響をさらに小さくすることができる。このため、より確実レゾルバの検出精度を向上させることができる。
また、軸受けをステータコア側に配置する一方、軸受けを挟んでステータとは反対側にレゾルバステータを配置するので、レゾルバハウジングの大型化を防止しつつレゾルバの検出精度を向上させることが可能になる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、前記ステータハウジングと、前記レゾルバハウジングとを一体成形したことを特徴とする。
このように構成することで、振動などによるレゾルバハウジングの位置ずれを無くすことができる。このため、レゾルバの検出精度の経年低下を防止することができる。
また、ステータハウジングとレゾルバハウジングとを一体化することで、部品点数を減少でき、製造コストを低減することができると共に、ブラシレスモータ全体として小型化を図ることが可能になる。
【0011】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3の何れかに記載の3相ブラシレスモータの前記ロータを筒状に形成し、前記ロータに取り付けられ、前記ロータと共に回転するボールナットと、前記ロータ内を貫通するように設けられ、前記ボールナットと噛合うラック軸とを備え、前記ロータ、およびボールナットの回転により、前記ラック軸を軸方向に沿ってスライド移動させることを特徴とする電動パワーステアリング装置とした。
このように構成することで、レゾルバ検出精度の悪化が防止できる信頼性の高い電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0012】
請求項5に記載した発明は、ステータハウジングと、前記ステータハウジングに内嵌固定され、ステータコイルが巻装されているステータコアと、前記ステータコアの径方向内側に回転自在に設けられたロータと、前記ステータハウジングの一端に設けられたレゾルバハウジングと、前記レゾルバハウジングに内嵌固定され、レゾルバコイルが巻装されたレゾルバステータと、前記ロータの前記レゾルバステータに対応する部位に外嵌固定され、前記ロータと共回りして前記レゾルバコイルの出力信号の位相を変化させるレゾルバロータとを備え、前記ステータハウジングと前記レゾルバハウジングとを一体成形した3相ブラシレスモータの組み立て方法であって、前記ステータハウジングに前記ステータコアを組み付けるステータ組み付け工程と、前記レゾルバハウジングに前記レゾルバステータを組み付けるレゾルバステータ組み付け工程と、前記ステータコアの径方向内側に前記ロータを挿入するロータ組み付け工程と、これらステータ組み付け工程、レゾルバステータ組み付け工程、およびロータ組み付け工程の後に、前記ステータコイルに2相通電を行う通電工程と、前記通電工程により、前記ロータが停止した状態で、このロータに前記レゾルバロータを組み付けるレゾルバロータ組み付け工程とを有することを特徴とする3相ブラシレスモータの組み立て方法とした。
このような方法とすることで、予めレゾルバハウジングに固定されたレゾルバステータの角度に基づいてレゾルバロータを固定することができ、レゾルバの角度調整を容易、かつ確実に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小径部によって、ステータコアからの漏れ磁束がレゾルバステータに影響を及ぼすことを阻止できる。このため、レゾルバの検出精度の悪化を抑制することが可能になる。
また、振動などによるレゾルバハウジングの位置ずれを無くすことができる。このため、レゾルバの検出精度の経年低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における電動パワーステアリング装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるブラシレスモータの縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるレゾルバの構成図である。アーマチュアの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(電動パワーステアリング装置)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電動パワーステアリング装置の構成図である。
同図に示すように、ブラシレスモータ7を含むラックタイプの電動パワーステアリング装置1は、自動車などの車両内に搭載されるものである。電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール2のステアリングシャフト3に連結されたギヤボックス4を有し、ギヤボックス4は、ブラケットである第1ハウジング部5に取り付けられている。
【0016】
第1ハウジング部5は、車体取付用部材である取付部6が一体に延設されている。第1ハウジング部5の一端部側(図1における左端側)には、ブラシレスモータ7の他端部が固定されている。すなわち、第1ハウジング部5は、ブラシレスモータ7の他端部に設けられるブラケットの役割も有している。
【0017】
ブラシレスモータ7の一端部(図1における左端部)には、ブラケットである第2ハウジング部8が固定されている。第2ハウジング部8には、車体取付用部材である取付部9が一体に延設されている。そして、第1ハウジング部5、ブラシレスモータ7、第2ハウジング部8を順番に貫通するように、ラック軸10が挿入されている。
ラック軸10は、ギヤボックス4内でラック・アンド・ピニオン機構を形成し、ステアリングホイールの操作に応じて軸方向に沿ってスライド移動自在になっている。なお、ラック軸10の両端部には、不図示のナックルアームなどを介して車輪が連結される。
【0018】
第1ハウジング部5は、円筒状の基部11を有し、基部11の一端部側が拡径されて連結部12が形成されている。基部11には、取付部6が一体に延設されると共にギヤボックス4が取り付けられている。また、第1ハウジング部5の連結部12の内周には、アンギュラベアリング13の外周部が圧入によって固定されている。さらに、連結部12の開口側の外周部には、シール部材17を挿入するための環状溝18が形成されている。環状溝18よりも基部11側には、第1ハウジング部5とブラシレスモータ7とを固定するための不図示の外フランジ部が形成されている。
【0019】
一方、第2ハウジング部8も円筒状の基部57を有している。基部57のブラシレスモータ7側端には、ブラシレスモータ7側に向かって徐々に拡径する連結部56が形成されている。また、基部57には、取付部9が一体に設けられている。
連結部56のブラシレスモータ7側端には、ブラシレスモータ7にインロー接合されるリング状の接合部58が形成されている。この接合部58の外周部には、環状溝59が形成され、ここにOリングなどのパッキン23が装着されている。環状溝59よりも基部57側(図1における左側)には、第2ハウジング部8とブラシレスモータ7とを固定するための不図示の外フランジ部が形成されている。
【0020】
(ブラシレスモータ)
図2は、ブラシレスモータの縦断面図である。
図1、図2に示すように、ブラシレスモータ7は、ステータ30と、ステータ30内に配置されたロータ31とを有している。
ステータ30は、円筒形のステータハウジング35の内周にステータコア36が圧入固定されたものである。ステータハウジング35の他端部(図2おける右端部)は、開口部37を有しており、この開口部37を閉塞するように第1ハウジング部5が取り付けられている。
【0021】
ステータコア36には、環状の外周部から中心に向かって複数のティース36Aが突設されている。各ティース36Aは軸方向平面視で略T字状に形成されたものであって、各ティース36Aに、インシュレータ39を装着した上からステータコイル38が巻装されている。ステータコイル38は3相(U相、V相、W相)に構成されており、それぞれステータハウジング35の他端側に配設されたターミナル42に接続されている。ターミナル42は、ステータハウジング35の側方に突設されたコネクタ45の接続端子44に電気的に接続されている。これによって、外部の電源から電流をターミナル42に供給できるようになっている。
【0022】
ロータ31は、ステータハウジング35の一端部、および他端部からそれぞれ軸方向に突出する中空状の回転軸46を有している。
回転軸46の外周でステータコア36に臨む位置には、複数の磁極が周方向に配置された環状のロータマグネット33が固定されている。このロータマグネット33には、マグネットカバー48が覆われている。
【0023】
また、回転軸46の第1ハウジング部5側端には、ボールナット52が固定されている(図1参照)。このボールナット52は、ラック軸10の一部に形成されたボールネジ53との間に複数のボール54を介在させることでボールナット機構を形成している。ボールナット52は、第1ハウジング部5の内周に設けられたアンギュラベアリング13に支持されており、回転軸46と一体に回転するようになっている。
【0024】
(レゾルバ)
図3は、レゾルバ63の構成図である。
図2、図3に示すように、回転軸46の第2ハウジング部8側端には、外周部が段差により縮径された第1縮径部25が形成されている。この第1縮径部25には、レゾルバ63の一方を構成するレゾルバロータ63Aが外嵌固定されている。
レゾルバ63は、回転軸46の回転角度を検出するための回転角度検出装置である。レゾルバロータ63Aは、第1縮径部25の段差面25Aに当接することによって軸方向の位置が決定するようになっている。レゾルバロータ63Aは、複数(この実施形態では3つ)の突極66を周方向に等間隔で配置した略環状の永久磁石、または、略環状の積層鋼鈑により構成されている(図3参照)。
【0025】
ここで、ステータハウジング35の一端部、つまり、第2ハウジング部8側端部には、レゾルバハウジング71が一体成形されている。レゾルバハウジング71は、ステータハウジング35の一端部が軸方向に沿って延出した形の円筒状になっており、この端部の開口部72を閉塞するように第2ハウジング部8が取り付けられている。
【0026】
レゾルバハウジング71の内周面は、開口部72からステータハウジング35側に向かって段差により徐々に縮径した形になっている。すなわち、レゾルバハウジング71の内周面には、開口部72側から順に、第1縮径部73、第2縮径部74が形成されている。第2縮径部74は、レゾルバロータ63Aに対応する位置に形成されており、ここに、レゾルバ63の他方を構成するレゾルバステータ63Bが設けられている。
【0027】
レゾルバステータ63Bは、複数の鋼板によって形成され、かつレゾルバロータ63Aの周囲を取り囲むように略円環状に形成された積層コア75を有している。積層コア75の外周部は、レゾルバハウジング71の第2縮径部74の内周に圧入されている。積層コア75は、第2縮径部74の段差面74Aに当接することで軸方向への移動が規制されると共に、軸方向の位置が決定するようになっている。
積層コア75の内周面には、複数のティース75Aが径方向に沿って突設されている。各ティース75Aは軸方向平面視で略T字状に形成されたものであって、ここに不図示のインシュレータを装着した上からレゾルバコイル79が巻装されている。
【0028】
ここで、図3に示すように、レゾルバロータ63Aは、複数の突極66を有しているので、レゾルバロータ63Aとレゾルバステータ63Bとの間のギャップGが周方向に沿って変化する。これにより、回転軸46と共にレゾルバロータ63Aが回転すると、ギャップパーミアンスが正弦波状に変動するようになっている。
すなわち、レゾルバ63は、レゾルバロータ63Aとレゾルバステータ63Bとの間のギャップパーミアンスの変動を利用してレゾルバロータ63Aの回転位置を検出し、この結果、回転軸46の回転位置を検出することができる。このため、レゾルバロータ63Aの突極66とレゾルバステータ63Bのティース75Aとの相対位置関係が回転軸46の原点位置の精度を決定するのに大きく影響してくる。
【0029】
レゾルバハウジング71の第2縮径部74よりもステータコア36側には、第2縮径部74よりも小径な小径部76が設けられている。つまり、小径部76は、レゾルバステータ63Bとステータコア36との間に設けられた状態になっている。小径部76の内周には、回転軸46を回転自在に支持するためのべアリング77の外周部が圧入されている。
【0030】
小径部76のステータコア36側端には、径方向内側に向かって延出する内フランジ部78が一体成形されている。この内フランジ部78にベアリング77を当接させることで、ベアリング77の軸方向への移動が規制されると共に、ベアリング77の位置が決定する。
ここで、回転軸46のベアリング77に対応する位置、つまり、回転軸46の第1縮径部25よりもロータマグネット33側には、段差によって第1縮径部25よりも拡径され、かつ回転軸46の外周よりも縮径された第2縮径部26が形成されている。ベアリング77は、この第2縮径部26を回転自在に支持するように構成されている。回転軸46は、第2縮径部26の段差面26Aがベアリング77に当接することによって軸方向への移動が規制される。
【0031】
また、レゾルバハウジング71の側部には、レゾルバステータ63Bからの電気信号を取り出すためのコネクタ27が固定されている。コネクタ27のコネクタ端子27Aは、レゾルバステータ63Bに巻装されているレゾルバコイル79に接続されている。コネクタ27は、不図示の外部制御機器から延びている外部コネクタが嵌着可能に形成されており、コネクタ27を介してレゾルバステータ63Bからの電気信号が不図示の外部制御機器に出力される。
【0032】
(組み立て方法)
次に、ブラシレスモータ7の組み立て方法について説明する。
まず、ステータハウジング35の開口部37側からターミナル42を挿入し、ステータコア36に巻装された各ステータコイル38の端末部と、ターミナル42とを電気的に接続する。そして、この状態でステータハウジング35の開口部37側からステータコア36を圧入する(ステータ組み付け工程)。
続いて、ターミナル42と、ステータハウジング35の側方に突設されたコネクタ45の接続端子44とを電気的に接続する。
【0033】
次に、レゾルバハウジング71の開口部72側からベアリング77を小径部76に向かって圧入する。続いて、レゾルバハウジング71の開口部72側からレゾルバステータ63Bを第2縮径部74に向かって圧入する(レゾルバステータ組み付け工程)。
そして、レゾルバステータ63Bに巻装されているレゾルバコイル79と、レゾルバハウジングの側部に設けられたコネクタ27のコネクタ端子27Aとを電気的に接続する。
【0034】
この後、ロータマグネット33が取り付けられたロータ31をステータハウジング35の開口部37側から挿入する(ロータ組み付け工程)。このとき、回転軸46に形成されている第2縮径部26の段差面26Aがベアリング77に当接するまで挿入する。
次に、コネクタ45を介してステータコイル38に2相通電を行い、回転軸46をロックする(通電工程)。
【0035】
そして、回転軸46をロックさせた状態でレゾルバロータ63Aをレゾルバハウジング71の開口部72側から第1縮径部73に向かって圧入する(レゾルバロータ組み付け工程)。このとき、レゾルバステータ63Bの固定角度に基づいてレゾルバロータ63Aの角度調整を行いながら圧入する。これにより、ブラシレスモータ7の組み立てが完了する。
【0036】
(作用)
このような構成のもと、ステータコイル38の各相にそれぞれ所望の電流を供給すると、ステータコア36の各ティース36Aに所定の磁界が発生し、この磁界とロータ31のロータマグネット33との間に生じる吸引力や反発力によってロータ31が回転する。また、ロータ31の回転に伴ってレゾルバロータ63Aが回転し、ギャップパーミアンスの変動によってレゾルバコイル79の信号出力が変化する。そして、この信号出力に基づいて不図示の外部制御機器がロータ31の回転位置を検出する。
【0037】
ここで、レゾルバコイル79の信号出力は、各ティース36Aから生じる漏れ磁束の影響を受けると精度が悪化してしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、ステータコア36とレゾルバステータ63Bとの間に小径部76が設けられている。この小径部76は、ステータハウジング35の内周面から径方向内側に張り出した状態になっている。これにより、ステータコア36とレゾルバステータ63Bは、小径部76を間に挟んで振り分け配置された状態になる。このため、小径部76は、各ティース36Aからの漏れ磁束がレゾルバステータ63Bに影響を及ぼすのを阻止する遮蔽板として機能する。
【0038】
また、小径部76を設ける分、ステータコア36とレゾルバステータ63Bとの間の距離が長くなるので、レゾルバステータ63Bは、さらに各ティース36Aから生じる漏れ磁束の影響を受け難くなる。さらに、小径部76に回転軸46を回転自在に支持するためのベアリング77を設けることによって、このベアリング77もレゾルバステータ63Bの漏れ磁束による影響を防止するための遮蔽板として機能する。
【0039】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、小径部76やベアリング77によって、ステータコア36からの漏れ磁束がレゾルバステータ63Bに影響を及ぼすことを阻止できるので、レゾルバ63の検出精度を向上させることができる。
ここで、ステータコア36とレゾルバステータ63Bとの間に小径部76を設け、ここにベアリング77を固定しているが、従来のように、ブラケットに大開口部側から軸受け、レゾルバステータの順で組み付ける場合と比較して、それぞれの配置が逆になっただけである。このため、ステータコア36とレゾルバステータ63Bとの間に小径部76を設けてもレゾルバハウジング71の大型化を防止することができる。
【0040】
さらに、ステータハウジング35とレゾルバハウジング71とを一体成形とすることで、部品点数を減少させることができ、製造コストを低減することができると共に、ブラシレスモータ7全体として小型化を図ることができる。
これに加え、従来のように、ステータハウジング35にレゾルバハウジング71をボルト等によって締結固定する場合と比較して、振動等によるレゾルバハウジング71の取付け角度がずれるのを防止できる。すなわち、レゾルバロータ63Aの突極66とレゾルバステータ63Bのティース75Aとの相対位置関係が変化してしまうのを防止できる。このため、レゾルバ63の検出精度の経年低下を防止することができる。
【0041】
そして、レゾルバハウジング71にレゾルバステータ63Bを圧入固定すると共に、ロータ31の回転軸46にレゾルバロータ63Aを圧入固定している。このため、例えば、レゾルバステータ63Bをボルト等によって締結固定する場合と比較して、振動等によるレゾルバステータ63Bの取付け角度がずれるのを防止できる。よって、より確実にレゾルバ63の検出精度の経年低下を防止することができる。
【0042】
また、予めレゾルバハウジング71にレゾルバステータ63Bを圧入固定し(レゾルバステータ組み付け工程)、この後、2相通電を行って(通電工程)、ロックされた回転軸46にレゾルバロータ63Aを圧入固定するようにしている。このため、レゾルバ63の組み付けを容易に行うことができる。
【0043】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、自動車などの車両内に搭載されるラックタイプの電動パワーステアリング装置1にブラシレスモータ7を適用した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、他の電装品にも広くブラシレスモータ7を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 電動パワーステアリング装置
7 ブラシレスモータ
10 ラック軸
30 ステータ
31 ロータ
35 ステータハウジング
36 ステータコア
38 ステータコイル
52 ボールナット
53 ボールネジ
63 レゾルバ
63A レゾルバロータ
63B レゾルバステータ
71 レゾルバハウジング
76 小径部
77 ベアリング(軸受け)
79 レゾルバコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータハウジングと、
前記ステータハウジングに内嵌固定され、ステータコイルが巻装されているステータコアと、
前記ステータコアの径方向内側に回転自在に設けられたロータと、
前記ステータハウジングの一端に設けられたレゾルバハウジングと、
前記レゾルバハウジングに内嵌固定され、レゾルバコイルが巻装されたレゾルバステータと、
前記ロータの前記レゾルバステータに対応する部位に外嵌固定されたレゾルバロータとを備え、
前記レゾルバロータの回転に伴って、前記レゾルバコイルの出力信号の位相が変化し、この出力信号の位相の変化に基づいて、前記ロータの回転位置を検出するように構成されている3相ブラシレスモータにおいて、
前記ステータコアと前記レゾルバステータとの間に、前記ステータハウジングの内径、および前記レゾルバハウジングの内径よりも小径に形成された小径部を設けたことを特徴とする3相ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記小径部に、前記ロータを回転自在に支持するための軸受けを設けたことを特徴とする請求項1に記載の3相ブラシレスモータ。
【請求項3】
前記ステータハウジングと、前記レゾルバハウジングとを一体成形したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3相ブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の3相ブラシレスモータの前記ロータを筒状に形成し、
前記ロータに取り付けられ、前記ロータと共に回転するボールナットと、
前記ロータ内を貫通するように設けられ、前記ボールナットと噛合うラック軸とを備え、
前記ロータ、およびボールナットの回転により、前記ラック軸を軸方向に沿ってスライド移動させることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
ステータハウジングと、
前記ステータハウジングに内嵌固定され、ステータコイルが巻装されているステータコアと、
前記ステータコアの径方向内側に回転自在に設けられたロータと、
前記ステータハウジングの一端に設けられたレゾルバハウジングと、
前記レゾルバハウジングに内嵌固定され、レゾルバコイルが巻装されたレゾルバステータと、
前記ロータの前記レゾルバステータに対応する部位に外嵌固定され、前記ロータと共回りして前記レゾルバコイルの出力信号の位相を変化させるレゾルバロータとを備え、
前記ステータハウジングと前記レゾルバハウジングとを一体成形した3相ブラシレスモータの組み立て方法であって、
前記ステータハウジングに前記ステータコアを組み付けるステータ組み付け工程と、
前記レゾルバハウジングに前記レゾルバステータを組み付けるレゾルバステータ組み付け工程と、
前記ステータコアの径方向内側に前記ロータを挿入するロータ組み付け工程と、
これらステータ組み付け工程、レゾルバステータ組み付け工程、およびロータ組み付け工程の後に、前記ステータコイルに2相通電を行う通電工程と、
前記通電工程により、前記ロータが停止した状態で、このロータに前記レゾルバロータを組み付けるレゾルバロータ組み付け工程とを有することを特徴とする3相ブラシレスモータの組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−233326(P2010−233326A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77594(P2009−77594)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】