説明

3軸加速度センサ及びそのZ軸依存性の補正方法

【課題】 小規模な回路構成であるにも拘わらず、X、Y及びZ軸方向といった3次元方向の正確な加速度を検出できる3軸加速度センサ及びそのZ軸依存性の補正方法を提供する。
【解決手段】 X軸方向に配置された一対の静電容量素子Cx+及びCx-の容量比に基づいてX軸方向の加速度を検出する第1スイッチトキャパシタ回路41と、Y軸方向に配置された一対の静電容量素子Cy+及びCy-の容量比に基づいてY軸方向の加速度を検出する第2スイッチトキャパシタ回路42と、Z軸方向に配置された静電容量素子Czと基準容量を有する静電容量素子Crefの容量比に基づいてZ軸方向の加速度を検出する第3スイッチトキャパシタ回路43とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、自動車の衝突検出等に使用される静電容量型の3軸加速度センサ及びそのZ軸依存性の補正方法に関し、特に検出される加速度値の精度を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、静電容量型の加速度センサとして、X、Y及びZ軸といった3次元方向の加速度を検出する3軸加速度センサが知られている。この3軸加速度センサは、静電容量素子の構造や信号処理回路の特性によって、X軸及びY軸方向の出力がZ軸方向の加速度に依存するというZ軸依存性を有する。このようなZ軸依存性を解消するために、特開平9−21825号公報は「加速度センサの他軸干渉出力の補正方法」を開示している。
【0003】この従来の3軸加速度センサでは、円筒内に配設された固定基板及び可撓基板の各対向面に電極を設けることにより、5個の静電容量素子C1〜C5が形成されている。このうち、静電容量素子C1とC3とは円筒の中心線を対称軸としてX軸方向に対称になるように配置され、静電容量素子C2とC4とは円筒の中心線を対称軸としてY軸方向に対称になるように配置され、静電容量素子C5は円筒の中心線の周囲に配置されている。
【0004】以上のように構成された静電容量素子C1〜C5のそれぞれからの信号は、図10に示す補正回路で補正され、X、Y及びZ軸方向の加速度Vx、Vy及びVzを表す電圧信号がそれぞれ出力される。具体的に説明すると、補正回路は、容量−電圧変換回路(以下、「CV変換回路」と略記する)61〜65、X軸用の差分回路71、Y軸用の差分回路72、X軸補正回路81及びY軸補正回路82から構成されている。
【0005】静電容量素子C1〜C5からの信号は、それぞれCV変換回路61〜65に供給され、各CV変換回路61〜65で静電容量素子C1〜C5の容量に応じた電圧信号V1〜V5に変換される。CV変換回路61及び62からの電圧信号V1及びV3はX軸用の差分回路71に供給される。また、CV変換回路63及び64からの電圧信号V2及びV4はY軸用の差分回路72に供給される。X軸用の差分回路71は、電圧信号V1及びV3の差を算出し、電圧信号「V1−V3」としてX軸補正回路81に供給する。また、Y軸用の差分回路72は、電圧信号V2及びV4の差を算出し、電圧信号「V2−V4」としてY軸補正回路82に供給する。
【0006】X軸補正回路81は、電圧信号「V1−V3」からZ軸による干渉成分「K・V5」を減算し、X軸方向の加速度Vxとして出力する。ここで、Kは補正係数である。また、Y軸補正回路82は、電圧信号「V2−V4」からZ軸による干渉成分「K’・V5」を減算し、Y軸方向の加速度Vyとして出力する。ここで、K’は補正係数である。Z軸の加速度Vzとしては、CV変換回路65からの電圧信号V5がそのまま出力される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の3軸加速度センサは、2つの静電容量素子の容量差からX軸及びY軸方向の加速度を検出しているので、Z軸方向の加速度が異なると、Z軸方向の容量差が異なることから、正確な検出結果が得られないという問題があった。
【0008】また、上述した従来の3軸加速度センサは、図10に示されるように、各静電容量素子C1〜C5からの信号を電圧信号に変換するためのCV変換回路を静電容量素子の数だけ備えなければならないので、回路規模が大きくなるという問題があった。
【0009】本発明は、小規模な回路構成であるにも拘わらず、X、Y及びZ軸方向といった3次元方向の正確な加速度を検出できる3軸加速度センサ及びそのZ軸依存性の補正方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するために以下の構成とした。請求項1の発明の3軸加速度センサは、固定基板と可動基板との各対向面に電極を配置し、対向配置される静電容量素子を複数対設け、複数対の静電容量素子の静電容量変化に基づき前記基板面に平行に設定されたXY平面上のX軸方向及びY軸方向の加速度、及び前記XY平面に直交するZ軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサにおいて、前記X軸方向に沿って配置されたX軸用の一対の静電容量素子の容量比に基づいて前記X軸方向の加速度を検出するX軸加速度検出手段と、前記Y軸方向に沿って配置されたY軸用の一対の静電容量素子の容量比に基づいて前記Y軸方向の加速度を検出するY軸加速度検出手段と、Z軸用静電容量素子と基準容量を有する基準静電容量素子との一対の静電容量素子の容量比に基づいて前記Z軸方向の加速度を検出するZ軸加速度検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】請求項1の発明によれば、X、Y及びZ軸のそれぞれに対応して配置された一対の静電容量素子の容量比に基づいて、X、Y及びZ軸のそれぞれの加速度を検出する。すなわち、容量比を求めることで、例えば、X軸用の一方の静電容量素子に含まれるZ軸方向の誤差とX軸用の他方の静電容量素子に含まれるZ軸方向の誤差とが約分により除去されるので、従来の容量差に基づいて加速度を検出する場合に発生するZ軸方向の誤差が減少する。従って、X軸方向、Y軸方向の検出感度のZ軸依存性を補正することができ、これによって、正確な検出結果を得ることができる。
【0012】また、請求項2の発明は、請求項1記載の3軸加速度センサにおいて、前記X軸加速度検出手段、前記Y軸加速度検出手段、前記Z軸加速度検出手段のそれぞれは、直列接続された前記一対の静電容量素子の一方の静電容量素子を電源の正極に接続し、他方の静電容量素子を前記電源の負極に接続し、前記一対の静電容量素子の直列接続点に反転入力端子が接続された演算増幅器を設け、該演算増幅器の出力端子から加速度検出信号を出力することを特徴とする。
【0013】請求項2の発明によれば、各加速度検出手段は、直列接続された一対の静電容量素子の直列接続点からの分圧電圧を演算増幅器の反転入力端子に入力し、演算増幅器の出力端子から加速度検出信号を出力するので、一対の静電容量素子の容量比に基づいて正確に加速度を検出することができる。
【0014】請求項3の発明は、請求項1記載の3軸加速度センサにおいて、前記X軸加速度検出手段、前記Y軸加速度検出手段、前記Z軸加速度検出手段のそれぞれは、直列接続された前記一対の静電容量素子の一方の静電容量素子と電源の正極とに接続された第1スイッチング素子、他方の静電容量素子と前記電源の負極とに接続された第2スイッチング素子、前記一対の静電容量素子の直列接続点に反転入力端子が接続された演算増幅器、前記反転入力端子と前記演算増幅器の出力端子とに接続された第3スイッチング素子、前記演算増幅器の非反転入力端子と前記出力端子とに接続された第4スイッチング素子、前記非反転入力端子と前記一方の静電容量素子とに接続された第5スイッチング素子、前記非反転入力端子と前記他方の静電容量素子とに接続された第6スイッチング素子を有するスイッチトキャパシタ回路からなり、前記第1乃至第3スイッチング素子のそれぞれは、入力された制御信号により同時にオンまたはオフし、前記第4乃至第6スイッチング素子のそれぞれは、前記第1乃至第3スイッチング素子と相補的に動作することを特徴とする。
【0015】請求項3の発明によれば、各加速度検出手段は、第1乃至第3スイッチング素子のそれぞれを、入力された制御信号により同時にオンまたはオフし、第4乃至第6スイッチング素子のそれぞれを、第1乃至第3スイッチング素子と相補的に動作させることにより、直列接続された一対の静電容量素子の直列接続点からの分圧電圧を演算増幅器の反転入力端子に入力し、演算増幅器の出力端子から加速度検出信号を出力するので、一対の静電容量素子の容量比に基づいて加速度をさらに正確に検出することができる。
【0016】請求項4の発明は、請求項1記載の3軸加速度センサにおいて、前記Z軸加速度検出手段は、前記Z軸用静電容量素子と前記基準静電容量素子との容量比を表す信号をパルス密度変調するZ軸変調器と、このZ軸変調器で得られたZ軸パルス信号を一定時間カウントし、得られたカウンタ値に基づきZ軸方向の加速度を検出するZ軸カウンタと、前記Z軸パルス信号を所定値からダウンカウントするダウンカウンタとを有し、前記X軸加速度検出手段は、前記X軸用の一対の静電容量素子の容量比を表す信号をパルス密度変調するX軸変調器と、このX軸変調器で得られたX軸パルス信号を前記ダウンカウンタが示す時間だけカウントし、得られたカウント値に基づきX軸方向の加速度を検出するX軸カウンタとを有し、前記Y軸加速度検出手段は、前記Y軸用の一対の静電容量素子の容量比を表す信号をパルス密度変調するY軸変調器と、このY軸変調器で得られたY軸パルス信号を前記ダウンカウンタが示す時間だけカウントし、得られたカウント値に基づきY軸方向の加速度を検出するY軸カウンタとを有することを特徴とする。
【0017】請求項4の発明によれば、X、Y及びZ軸のそれぞれに対応して配置された一対の静電容量素子の容量比に基づいて加速度を検出するので、従来の容量差に基づいて加速度を検出する場合に発生するZ軸方向の誤差が生じず、正確な検出結果を得ることができ、しかも、パルス密度変調により得られるパルスをカウントするといったデジタル処理が行われるので、さらに正確な加速度値を得ることができる。
【0018】請求項5の発明は、固定基板と可動基板との各対向面に電極を配置し、対向配置される静電容量素子を複数対設け、複数対の静電容量素子の静電容量変化に基づき前記基板面に平行に設定されたXY平面上のX軸方向及びY軸方向の加速度、及び前記XY平面に直交するZ軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサのZ軸依存性の補正方法であって、前記X軸方向に沿って配置されたX軸用の一対の静電容量素子の容量比を求め、該容量比に基づいて前記X軸方向の加速度を検出するX軸加速度検出工程と、前記Y軸方向に沿って配置されたY軸用の一対の静電容量素子の容量比を求め、該容量比に基づいて前記Y軸方向の加速度を検出するY軸加速度検出工程と、Z軸用静電容量素子と基準容量を有する基準静電容量素子との一対の静電容量素子の容量比を求め該容量比に基づいて前記Z軸方向の加速度を検出するZ軸加速度検出工程と、備えたことを特徴とする。この請求項5の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用・効果が得られる。
【0019】請求項6の発明は、請求項5記載の3軸加速度センサのZ軸依存性の補正方法において、前記Z軸加速度検出工程は、前記Z軸用静電容量素子と前記基準静電容量素子との容量比を表す信号をパルス密度変調し、得られたZ軸パルス信号を一定時間カウントし、得られたカウンタ値に基づきZ軸方向の加速度を検出し、前記Z軸パルス信号をダウンカウンタにより所定値からダウンカウントし、前記X軸加速度検出工程は、前記X軸用の一対の静電容量素子の容量比を表す信号をパルス密度変調し、得られたX軸パルス信号を前記ダウンカウンタが示す時間だけカウントし、得られたカウント値に基づきX軸方向の加速度を検出し、前記Y軸加速度検出工程は、前記Y軸用の一対の静電容量素子の容量比を表す信号をパルス密度変調し、得られたY軸パルス信号を前記ダウンカウンタが示す時間だけカウントし、得られたカウント値に基づきY軸方向の加速度を検出することを特徴とする。この請求項6の発明によれば、請求項4の発明と同様の作用・効果が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の3軸加速度センサ及びそのZ軸依存性の補正方法の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】(第1の実施の形態)本発明の第1の実施の形態に係る3軸加速度センサのセンサ部の構造を図1に示し、検出回路の構成を図2に示す。
【0022】この3軸加速度センサのセンサ部は、従来の加速度センサと同様に、5つの静電容量素子から構成されている。すなわち、センサ部は、図1(B)の断面図に示すように、可動部10、固定部20及び垂錘体30から構成されている。可動部10は、可動基板からなり、SOIウエハを用いてシリコンでメサ構造を形成し、そのメサを下部に設けられた梁で支える構造を有する。この可動部10の上面には、酸化シリコンSiOによって、適当な質量を有する作動体としての垂錘体30が固着されている。
【0023】可動部10の底面には、図1(A)の底面図に示すように、静電容量素子を形成する一方の電極部が形成されている。この一方の電極部は、外側電極11に接続された内側電極12のクロスポイントを含む周辺領域に形成されたZ軸用電極15、Z軸用電極15を挟んでX軸方向に配置された一対のX軸用電極13a,13b、Z軸用電極15を挟んでY軸方向に配置された一対のY軸用電極14a,14bの5つの電極から構成され、各電極は、相互に電気的に接続されるようになっている。
【0024】また、固定部20は、図1(C)に示すように、固定基板としてのガラス基板21の上に5つのアルミニウム電極(Al電極)22が設けられる。これらのAl電極22は、中央部に配置されたZ軸用電極25、Z軸用電極25を挟んでX軸方向に配置された一対のX軸用電極23a,23b、Z軸用電極25を挟んでY軸方向に配置された一対のY軸用電極24a,24bの5つの電極から構成され、可動部10の各電極に対向するように配置されている。これらの5つの電極により、静電容量素子の他方の電極部を構成している。以上の構成により、Cx+、Cx-、Cy+、Cy-及びCzといった5個の静電容量素子が形成されている。Cx+、Cx-は、X軸用の一対の静電容量素子を構成し、Cy+、Cy- は、Y軸用の一対の静電容量素子を構成し、Czと基準静電容量素子CrefとでZ軸用の一対の静電容量素子を構成している。基準静電容量素子Crefは、一定容量を有する静電容量素子である。
【0025】検出回路にはスイッチトキャパシタ方式の回路が採用されている。この検出回路は、X、Y及びZ軸といった3軸方向の加速度を同時に検出し、且つX軸及びY軸方向の加速度のZ軸依存性を減少させる補正を行う。
【0026】この検出回路は、図2に示すように、X軸用の一対の静電容量素子Cx+、Cx-の容量比に基づいてX軸方向の加速度を検出する第1スイッチトキャパシタ回路41、Y軸用の一対の静電容量素子Cy+、Cy- に基づいてY軸方向の加速度を検出する第2スイッチトキャパシタ回路42、及びCzと基準静電容量素子Crefとの容量比に基づいてZ軸方向の加速度を検出する第3スイッチトキャパシタ回路43から構成されている。
【0027】第1スイッチトキャパシタ回路41は、直列接続された一対の静電容量素子Cx+及びCx-、一方の静電容量素子Cx+と電源Vddの正極とに接続された第1スイッチング素子S1、他方の静電容量素子Cx-と電源Vddの負極(グランド)とに接続された第2スイッチング素子S1、演算増幅器OP1、演算増幅器OP1の非反転入力端子とグランドと接続されたキャパシタCm1、演算増幅器OP1の反転入力端子と出力端子とに接続された第3スイッチング素子S1及びキャパシタCf1、演算増幅器OP1の非反転入力端子と出力端子とに接続された第4スイッチング素子S2、演算増幅器OP1の非反転入力端子と一方の静電容量素子Cx+とに接続された第5スイッチング素子S2、非反転入力端子と他方の静電容量素子Cx-とに接続された第6スイッチング素子S2、一対の静電容量素子Cx+及びCx-の直列接続点と演算増幅器OP1の反転入力端子とに接続された第7スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S2を有する。
【0028】第1乃至第3スイッチング素子、第7スイッチング素子S1のそれぞれは、入力された制御信号により同時にオンまたはオフし、第4乃至第6スイッチング素子、第8スイッチング素子S2のそれぞれは、第1乃至第3スイッチング素子と相補的に(一方のスイッチング素子がオンのときに他方のスイッチング素子がオフする動作)動作するようになっている。
【0029】また、第2スイッチトキャパシタ回路42及び第3スイッチトキャパシタ回路43も第1スイッチトキャパシタ回路41と同一に構成されるので、概略のみを説明する。第2スイッチトキャパシタ回路42は、静電容量素子Cy+及びCy-、複数のスイッチング素子S3及びS4、キャパシタCf2及びCm2、並びに演算増幅器OP2が図示するように接続されて構成されている。更に、第3スイッチトキャパシタ回路43は、静電容量素子Cz及びCref、複数のスイッチング素子S5及びS6、キャパシタCf3及びCm3、並びに演算増幅器OP3が図示するように接続されて構成されている。
【0030】また、第1〜第3スイッチトキャパシタ回路41〜43内のスイッチング素子S1〜S6は、図3に示すように、時間の経過に連れて循環しながら排他的にオン(図中の高レベル)になるように制御される。
【0031】第1〜第3スイッチトキャパシタ回路41〜43のそれぞれは、図2に示すように同一の構成を有し、それらの動作も同一であるので、以下では第1スイッチトキャパシタ回路41を主体に説明する。
【0032】第1スイッチトキャパシタ回路41において、或るタイミングでスイッチング素子S1がオンにされると、第1スイッチトキャパシタ回路41は、図4に示す回路と等価になる。従って、静電容量素子Cx+及びCx-に蓄積される電荷Qx+及びQx-は、それぞれ下記式(1)及び(2)で表される。
【0033】
Qx+=(Vdd−Vm)・Cx+・・・式(1)
Qx-=Vm・Cx-・・・式(2)
ここで、Vmは可動部10に形成された電極の電位である。
【0034】次のタイミングでスイッチング素子S2がオンにされると、第1スイッチトキャパシタ回路41は、図5に示す回路と等価になる。ここで、「Qx+>Qx-」と仮定すると、演算増幅器OP1への入力ΔVは下記式(3)で表される。
【0035】
ΔV=(Qx+−Qx-)/(Cx++Cx-+Cf1)・・・式(3)
上記ΔVが正の時に演算増幅器OP1の出力は増加する。スイッチング素子S1とS2とが順次オンにされることにより、第1スイッチトキャパシタ回路41は、ΔVがゼロに近づくように動作する。この時、「Qx+=Qx-」であるので、次の式(4)が成立する。
【0036】
(Vdd−Vm)・Cx+=Vm・Cx-・・・式(4)
これを整理すると、下記式(5)が得られる。
【0037】
Vm=Vdd・Cx+/(Cx++Cx-)=Vx・・・式(5)
同様にして、第2スイッチトキャパシタ回路42のスイッチング素子S3とS4とが順次オンにされることにより、下記式(6)が得られる。
【0038】
Vm=Vdd・Cy+/(Cy++Cy-)=Vy・・・式(6)
同様にして、第3スイッチトキャパシタ回路43のスイッチング素子S5とS6とが順次オンにされることにより、下記式(7)が得られる。
【0039】
Vm=Vdd・Cz/(Cz+Cref)=Vz・・・式(7)
このように、スイッチング素子S1〜S6が、図3に示すように順次オンにされることにより、第1〜第3スイッチトキャパシタ回路41〜43のそれぞれは、X軸方向の静電容量素子Cx+とCx-との容量比をX軸方向の加速度Vxとして、Y軸方向の静電容量素子Cy+とCy-との容量比をY軸方向の加速度Vyとして、Z軸方向の静電容量素子CzとCrefとの容量比をZ軸方向の加速度Vzとして、電圧信号で順次出力する。
【0040】次に、このように構成される3軸加速度センサにおいて、X及びY軸方向加速度のZ軸依存性を解消できる原理を説明する。上記検出回路の出力は、上記式(5)〜(7)から理解できるように、下記式(8)で表すことができる。
【0041】
V(x,y,z)=Vdd・C+(x,y,z)/(C+(x,y,z)+C-(x,y,z))・・・式(8)
この式(8)において、C+にZ軸方向の容量Cz+、C-に一定の容量Cref(=Cz-)を与えれば、Z軸方向の加速度Vzが得られる。また、X軸方向の静電容量素子Cx+とCx-とを、図2に示すように配置することによる差動容量からX軸方向の加速度が得られるが、Cx+とCx-はZ軸方向の加速度により増減する。同様に、Y軸方向の静電容量素子Cy+とCy-とを図2に示すように配置することによる差動容量からY軸方向の加速度が得られるが、Cy+とCy-はZ軸方向の加速度により増減する。しかし、上記のように構成されるスイッチトキャパシタ方式の回路を採用した検出回路を用いれば、Z軸方向の加速度による容量の増減が打ち消されることになる。
【0042】例えば、X軸方向に加速度が加わったとすると、下記のように表現できる。まず、Z軸により容量値は、Cx=εS/(d−Kz・Az)・・・式(9)
となる。ここで、εは誘電率、Sは電極面積、AzはZ軸方向の加速度、KzはZ軸方向の加速度に対する容量変化率である。
【0043】この式(9)の値からX軸方向の加速度Axが加わり容量が変化する。よって、X軸方向の加速度による静電容量素子Cx+及びCx-の容量変化は、下記式(10)及び(11)で表現できる。 Cx+=εS/(d−Kx・Ax−Kz・Az)・・・式(10)
Cx-=εS/(d+Kx・Ax−Kz・Az)・・・式(11)
ここで、KxはX軸方向の加速度に対する容量変化率である。
【0044】上記式(10)及び(11)を式(8)に代入すると、X軸方向の加速度Vxは、下記式(12−1)のようになる。
【0045】
Vx={εS/(d−Kx・Ax−Kz・Az)}/{εS/(d−Kx・Ax−Kz・Az)−εS/(d+Kx・Ax−Kz・Az)}
=1/{1+(d−Kx・Ax−Kz・Az)/(d+Kx・Ax−Kz・Az)}
=(d+Kx・Ax−Kz・Az)/(d+Kx・Ax−Kz・Az+d−Kx・Ax−Kz・Az)
=(d−Kz・Az+Kx・Ax)/2(d−Kz・Az)
={1+Kx・Ax/(d−Kz・Az)}/2・・・式(12−1)
d》Kz・Azの場合、Vx={1+Kx・Ax/d}/2・・・式(12−2)
よって、この式(12−1)よりZ軸依存性は減衰し、d》Kz・Azの条件下では、式(12−2)からZ軸依存性を除去できることがわかる。Y軸方向の検出感度のZ軸依存性の補正についても同様である。
【0046】次に、第1の実施の形態に係る3軸加速度センサのZ軸依存性の補正の効果を、上記特開平9−21825号公報に開示された従来の加速度センサの他軸干渉出力の補正方法と比較して説明する。
【0047】まず、従来の加速度センサの他軸干渉出力の補正方法で用いられる容量差によりZ軸依存性を補正する場合を考える。今、加速度が0Gの時の電極間距離をd、その時の容量をC0=ε(S/d)、地球重力の影響による電極間距離の変化を±0.01と仮定した場合における電極間距離を1.01d及び0.99d、その時の容量をそれぞれCz+0.1=ε(S/1.01d)及びCz-0.1=ε(S/0.99d)とする。ここに、εは誘電率、Sは電極面積である。電極間距離と静電容量との関係を図6に示す。
【0048】ここで、加速度センサにX軸方向に加速度(電極間距離の変化を±0.1と仮定する)が加わるとすると、Z軸方向の加速度が0Gの時の容量差ΔCsub0は以下の式(13)で表される。
【0049】


また、Z軸方向の加速度が1Gの時の容量差ΔCsub+1は以下の式(14)で表され、Z軸方向の加速度が0Gである時の容量差ΔCsub0との誤差は1.98%になる。
【0050】
ΔCsub+1=εS/(1.01d−0.1d)−εS/(1.01d+0.1d)
=0.198εS/d・・・式(14)
また、Z軸方向の加速度が−1Gの時の容量差ΔCsub-1は以下の式(15)で表され、Z軸方向の加速度が0Gである時の容量差ΔCsub0との誤差は1.98%になる。
【0051】
ΔCsub-1=εS/(0.99d−0.1d)−εS/(0.99d+0.1d)
=0.206εS/d・・・式(15)
次に、本発明の第1の実施の形態に係る補正方法で用いられる容量比によりZ軸依存性を補正する場合を考える。
【0052】Z軸方向の加速度が0Gの時の容量比は以下の式(16)で表される。
【0053】
{Cx+/(Cx++Cx-)}rate =(εS/0.9d)/{(εS/0.9d)+(εS/1.1d)}
=1/(1+0.9/1.1)
=0.55・・・式(16)
また、Z軸方向の加速度が1Gの時の容量比は以下の式(17)で表され、Z軸方向の加速度が0Gである時の容量比との誤差は0.09%になる。
【0054】
{Cx+/(Cx++Cx-)}rate+1 ={εS/(1.01d−0.1d)}/{(εS/(1.01d−0.1d)+(εS/(1.01d+0.1d)}
=1/(1+0.91/1.11)
=0.5495・・・式(17)
また、Z軸方向の加速度が−1Gの時の容量比は以下の式(18)で表され、Z軸方向の加速度が0Gである時の容量比との誤差は0.09%になる。
【0055】
{Cx+/(Cx++Cx-)}rate-1 ={εS/(0.99d−0.1d)}/{(εS/(0.99d−0.1d)+(εS/(0.99d+0.1d)}
=1/(1+0.89/1.09)
=0.5505・・・式(18)
上記従来の加速度センサの他軸干渉出力の補正方法で採用されている容量差による方法では、Z軸方向の加速度が0Gである場合との誤差を補正するために、Z軸方向成分に応じた信号を加減算しなければならないが、図7の変位による容量変化特性に示すように、特性が線形でないため、近似的な補正となっている。これに対し、本発明の第1の実施の形態に係る3軸加速度センサで採用されている容量比を用いた方法によれば、Z軸方向成分の信号は含まれていないため、補正率は容量差に比べて非常によいことがわかる。
【0056】また、図2に示した検出回路は、図10に示したCV変換回路部に対応する。これらの図から、検出回路の回路規模はCV変換回路部の1/2以下になることが推測される。
【0057】(第2の実施の形態)この第2の実施の形態に係る3軸加速度センサはデジタル回路で構成されている。この第2の実施の形態に係る3軸加速度センサのセンサ部は、第1の実施の形態に係る3軸加速度センサのセンサ部と同じであり、検出回路の構成及び動作が異なる。従って、以下では、検出回路を中心に説明する。
【0058】検出回路は、ΔΣ変調方式を採用した回路から構成され、X、Y及びZ軸といった3軸方向の加速度を同時に検出し、且つX軸及びY軸方向の検出感度のZ軸依存性を減少させる補正を行う。このΔΣ変調方式では、図9に示すように、加速度信号はパルス密度変調信号として得られる。
【0059】この検出回路は、図8に示すように、X軸用の一対の静電容量素子Cx+及びCx-、Y軸用の一対の静電容量素子Cy+及びCy-、Z軸用の一対の静電容量素子Cz及びCref、スイッチング素子S1〜S3、ΔΣ変調器50〜52、カウンタ53〜55、ダウンカウンタ56及び抵抗素子Rから構成されている。
【0060】静電容量素子Cx+とCx-との接続点からの信号はスイッチング素子S1を介してΔΣ変調器50に供給される。ΔΣ変調器50は、入力された信号をパルス密度変調し、パルス密度変調信号Pxとしてカウンタ53に供給する。カウンタ53は、ダウンカウンタ56から供給されるパルス取り込み時間Tzの間、パルス密度変調信号Pxのパルスをカウントする。このカウンタ53でカウントされた値は、X軸方向の加速度Nxとして出力される。
【0061】静電容量素子Cy+とCy-との接続点からの信号はスイッチング素子S2を介してΔΣ変調器51に供給される。ΔΣ変調器51は、入力された信号をパルス密度変調し、パルス密度変調信号Pyとしてカウンタ54に供給する。カウンタ54は、ダウンカウンタ56から供給されるパルス取り込み時間Tzの間、パルス密度変調信号Pyのパルスをカウントする。このカウンタ54でカウントされた値は、Y軸方向の加速度Nyとして出力される。
【0062】静電容量素子CzとCrefとの接続点からの信号はスイッチング素子S3を介してΔΣ変調器52に供給される。静電容量素子Crefは基準容量を有する容量素子である。ΔΣ変調器52は、入力された信号をパルス密度変調し、パルス密度変調信号Pzとしてカウンタ55及びダウンカウンタ56に供給する。カウンタ55は、外部から供給される信号に応じて一定時間Tの間、パルス密度変調信号Pzのパルスをカウントする。このカウンタ55でカウントされた値は、Z軸方向の加速度Nzとして出力される。
【0063】また、ダウンカウンタ56は、ΔΣ変調器52からのパルス密度変調信号Pzのパルスに応じて定数Nをダウンカウントする。このダウンカウンタ56の値がパルス取り込み時間Tzとしてカウンタ53及び54に供給される。また、スイッチング素子S1〜S3は、循環しながら順次排他的にオンになるように制御される。
【0064】以上の構成において動作を説明する。まず、スイッチング素子S3がオンにされることによりΔΣ変調器52からパルス密度変調信号Pzが出力される。これにより、カウンタ55からZ軸方向の加速度Nzが出力される。また、ダウンカウンタ56は、このパルス密度変調信号Pzのパルスに応じて定数Nをダウンカウントし、その結果をパルス取り込み時間Tzとしてカウンタ53及び54に供給する。
【0065】次に、スイッチング素子S1がオンにされることによりΔΣ変調器50からパルス密度変調信号Pxが出力される。これにより、カウンタ53からX軸方向の加速度Nxが出力される。次に、スイッチング素子S2がオンにされることによりΔΣ変調器51からパルス密度変調信号Pyが出力される。これにより、カウンタ54からY軸方向の加速度Nyが出力される。次に、スイッチング素子S3が再度オンにされる。以下、同様の動作が繰り返される。
【0066】この構成によれば、定数NをZ軸方向の加速度に対応したパルス密度変調信号Pzでダウンカウントして、この時間Tzの間、X軸及びY軸の加速度に対応したパルスがカウントされる。従って、カウント数Nx、NyはZ軸方向の加速度による変化が打ち消されることになり、X軸及びY軸方向の検出感度のZ軸依存性が減少する。
【0067】次に、上記のように構成される3軸加速度センサにおいて、X及びY軸方向加速度のZ軸依存性を解消できる原理を説明する。上記の構成において、加速度による容量変化式は以下のように表すことができる。まず、Z軸により容量値は、C(x,y,z)=εS/(d−Kz・Az)
=εS/{d(1−Kz・Az/d)}
≒εS・(1+Kz・Az/d)/d=C0(1+Kz・Az/d)・・・式(19)
となる。ここで、C0は初期容量、AzはZ軸方向の加速度、KzはZ軸方向の加速度に対する容量変化率である。
【0068】この式(19)の値から、X軸及びY軸にそれぞれX軸方向の加速度Ax及びY軸方向の加速度Ayが加わり容量が変化する。よって、それぞれの加速度による変化式は以下のように表すことができる。
【0069】
Cx=εS/(d−Kx・Ax−Kz・Az)
=εS/{d(1−Kx・Ax/d−Kz・Az/d)}
≒εS/{d(1−Kz・Az/d)(1−Kx・Ax/d)}
≒εS・(1+Kz・Az/d)・(1+Kx・Ax/d)/d =C0(1+Kz・Az/d)・(1+Kx・Ax/d)・・・式(20)
Cy=C0(1+Kz・Az/d)・(1+Ky・Ay/d)・・・式(21)
Cz=C0(1+Kz・Az/d)・・・式(22)
ここで、KxはX軸方向の加速度に対する容量変化率、KyはY軸方向の加速度に対する容量変化率である。また、CxはCx+,Cx-から演算した結果であり、CyはCy+,Cy-から演算した結果である。
【0070】上記の容量変化をΔΣ変調器50,51,52はパルス密度変調に変換する。従って、パルス密度変調信号をPとすると、各信号は下記のように表すことができる。
【0071】
Px=P0(1+Kpz・Az)・(1+Kpx・Ax)・・・式(23)
Py=P0(1+Kpz・Az)・(1+Kpy・Ay)・・・式(24)
Pz=P0(1+Kpz・Az)・・・式(25)
ここで、P0は無加速度時のパルス密度変調信号、Kpx、Kpy及びKpzは加速度に対するパルス密度変調信号係数である。
【0072】このとき、上記式(23)〜(25)から一定時間TにおいてZ軸のパルス数Nzは、下記式(26)で表される。
【0073】
Nz=T・Pz=T・P0(1+Kpz・Az)・・・式(26)
ここで、PzはX軸及びY軸のパルス取り込み時間Tzを決定するため、ダウンカウンタに入力される。
【0074】また、このダウンカウンタには、任意のパルス数Nが設定されている。よって、Tzは式(22)のZ軸信号より、下記式(27)のようになる。
【0075】
Tz=N/Pz=N/(P0(1+Kpz・Az))・・・式(27)
従って、X軸のパルス数Nxは、上記式(23)と式(27)から、下記式(28)となる。
【0076】
Nx=Px・Tz=P0(1+Kpz・Az)・(1+Kpx・Ax)・N/(P0(1+Kpz・Az))=N・(1+Kpx・Ax)・・・式(28)
また、Y軸のパルス数Nyは、上記式(24)と式(27)から、下記式(29)となる。
【0077】
Ny=Py・Tz=(P0(1+Kpz・Az)・(1+Kpy・Ay))・N/(P0(1+Kpz・Az))=N・(1+Kpy・Ay)・・・式(29)
よって、この式(28)よりX軸方向の検出感度のZ軸依存性を補正することができることがわかる。また、式(29)よりX軸方向の検出感度のZ軸依存性を補正することができることがわかる。
【0078】ここで、本発明の第2の実施の形態に係る補正方法で用いられる容量比によりZ軸依存性を補正する場合を考える。
【0079】Z軸方向の加速度が0Gの時の容量比は以下の式(30)で表される。
【0080】
(Cx/Cz)rate=(εS/0.9d)/(εS/d)
=1/0.9=1.111・・・式(30)
また、Z軸方向の加速度が1Gの時の容量比は以下の式(31)で表され、Z軸方向の加速度が0Gである時の容量比との誤差は0%になる。
【0081】(Cx/Cz)rate+1 ={εS/(0.9×1.1d)}/(εS/1.1d)
=1.1/(0.9×1.1)=1.111・・・式(31)
また、Z軸方向の加速度が−1Gの時の容量比は以下の式(32)で表され、Z軸方向の加速度が0Gである時の容量比との誤差は0%になる。
【0082】(Cx/Cz)rate-1 ={εS/(0.9×0.9d)}/(εS/0.9d)
=0.9/(0.9×0.9)=1.111・・・式(32)
以上のように、この第2の実施の形態に係る加速度センサによれば、上記式(30)〜(32)から理解されるように、上述した第1の実施の形態と同様に、本発明の第2の実施の形態にかかる3軸加速でセンサで採用されている容量比を用いた場合の補正率は、従来の容量差を用いた場合に比べて非常に良好なことがわかる。
【0083】基本的に容量型のセンサは、地球重力を受ける(Z軸依存性)ため、センサ配置によって容量変化が起こる。上述した第1及び第2の実施の形態によれば、このような地球重力の影響を排除できる。また、上述した第1及び第2の実施の形態では、加速度センサのZ軸依存性を補正する例を説明したが、上記Z軸依存性の補正方法は、例えば容量型の圧力センサや容量型のジャイロにも適用できる。また、近年の検出回路は、アナログ回路からデジタル回路に移行する傾向がある。従って、この第2の実施の形態に示したZ軸依存性をデジタルで補正する技術は、あらゆる容量型のセンサに適用できる。
【0084】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、X、Y及びZ軸のそれぞれに対応して配置された一対の静電容量素子の容量比に基づいて、X、Y及びZ軸のそれぞれの加速度を検出する。すなわち、容量比を求めることで、例えば、X軸用の一方の静電容量素子に含まれるZ軸方向の誤差とX軸用の他方の静電容量素子に含まれるZ軸方向の誤差とが約分により除去されるので、従来の容量差に基づいて加速度を検出する場合に発生するZ軸方向の誤差をほぼ除去できる。従って、X軸方向、Y軸方向の検出感度のZ軸依存性を補正することができ、これによって、正確な検出結果を得ることができる。
【0085】請求項2の発明によれば、各加速度検出手段は、直列接続された一対の静電容量素子の直列接続点からの分圧電圧を演算増幅器の反転入力端子に入力し、演算増幅器の出力端子から加速度検出信号を出力するので、一対の静電容量素子の容量比に基づいて正確に加速度を検出することができる。
【0086】請求項3の発明によれば、各加速度検出手段は、第1乃至第3スイッチング素子のそれぞれを、入力された制御信号により同時にオンまたはオフし、第4乃至第6スイッチング素子のそれぞれを、第1乃至第3スイッチング素子と相補的に動作させることにより、直列接続された一対の静電容量素子の直列接続点からの分圧電圧を演算増幅器の反転入力端子に入力し、演算増幅器の出力端子から加速度検出信号を出力するので、一対の静電容量素子の容量比に基づいて加速度をさらに正確に検出することができる。
【0087】請求項4の発明によれば、X、Y及びZ軸のそれぞれに対応して配置された一対の静電容量素子の容量比に基づいて加速度を検出するので、従来の容量差に基づいて加速度を検出する場合に発生するZ軸方向の誤差が生じず、正確な検出結果を得ることができ、しかも、パルス密度変調により得られるパルスをカウントするといったデジタル処理が行われるので、さらに正確な加速度値を得ることができる。
【0088】請求項5の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用・効果が得られる。請求項6の発明によれば、請求項4の発明と同様の作用・効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1及び第2の実施の形態に係る3軸加速度センサのセンサ部の構造を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る3軸加速度センサの検出回路の構成を示す回路図である。
【図3】図2に示す検出回路のスイッチング素子の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る3軸加速度センサの動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る3軸加速度センサの動作を説明するための図である。
【図6】本発明の第1及び第2の実施の形態に係る3軸加速度センサのセンサ部に形成された静電容量素子における電極間距離と静電容量との関係を示す図である。
【図7】従来の3軸加速度センサにおける静電容量素子の変位による容量変化特性を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る3軸加速度センサの検出回路の構成を示す回路図である。
【図9】図8に示す回路で使用されるパルス密度変調信号の例を示す図である。
【図10】従来の3軸加速度センサを説明するための図である。
【符号の説明】
10 可動部
13a,13b,23a,23b X軸用電極
14a,14b,24a,24b Y軸用電極
15,25 Z軸用電極
20 固定部
21 ガラス基板
22 Al電極
30 垂錘体
41〜43 スイッチトキャパシタ回路
50〜52 ΔΣ変調器
53〜55 カウンタ
56 ダウンカウンタ
Cx+、Cx-、Cy+、Cy-、Cz 静電容量素子
Cref リファレンス容量
Cf1、Cf2、Cf3、Cm1、Cm2、Cm3 キャパシタ
OP1〜OP3 演算増幅器
S1〜S6 スイッチング素子
R 抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定基板と可動基板との各対向面に電極を配置し、対向配置される静電容量素子を複数対設け、複数対の静電容量素子の静電容量変化に基づき前記基板面に平行に設定されたXY平面上のX軸方向及びY軸方向の加速度、及び前記XY平面に直交するZ軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサにおいて、前記X軸方向に沿って配置されたX軸用の一対の静電容量素子の容量比に基づいて前記X軸方向の加速度を検出するX軸加速度検出手段と、前記Y軸方向に沿って配置されたY軸用の一対の静電容量素子の容量比に基づいて前記Y軸方向の加速度を検出するY軸加速度検出手段と、Z軸用静電容量素子と基準容量を有する基準静電容量素子との一対の静電容量素子の容量比に基づいて前記Z軸方向の加速度を検出するZ軸加速度検出手段と、を備えたことを特徴とする3軸加速度センサ。
【請求項2】 前記X軸加速度検出手段、前記Y軸加速度検出手段、前記Z軸加速度検出手段のそれぞれは、直列接続された前記一対の静電容量素子の一方の静電容量素子を電源の正極に接続し、他方の静電容量素子を前記電源の負極に接続し、前記一対の静電容量素子の直列接続点に反転入力端子が接続された演算増幅器を設け、該演算増幅器の出力端子から加速度検出信号を出力することを特徴とする請求項1記載の3軸加速度センサ。
【請求項3】 前記X軸加速度検出手段、前記Y軸加速度検出手段、前記Z軸加速度検出手段のそれぞれは、直列接続された前記一対の静電容量素子の一方の静電容量素子と電源の正極とに接続された第1スイッチング素子、他方の静電容量素子と前記電源の負極とに接続された第2スイッチング素子、前記一対の静電容量素子の直列接続点に反転入力端子が接続された演算増幅器、前記反転入力端子と前記演算増幅器の出力端子とに接続された第3スイッチング素子、前記演算増幅器の非反転入力端子と前記出力端子とに接続された第4スイッチング素子、前記非反転入力端子と前記一方の静電容量素子とに接続された第5スイッチング素子、前記非反転入力端子と前記他方の静電容量素子とに接続された第6スイッチング素子を有するスイッチトキャパシタ回路からなり、前記第1乃至第3スイッチング素子のそれぞれは、入力された制御信号により同時にオンまたはオフし、前記第4乃至第6スイッチング素子のそれぞれは、前記第1乃至第3スイッチング素子と相補的に動作することを特徴とする請求項1記載の3軸加速度センサ。
【請求項4】 前記Z軸加速度検出手段は、前記Z軸用静電容量素子と前記基準静電容量素子との容量比を表す信号をパルス密度変調するZ軸変調器と、このZ軸変調器で得られたZ軸パルス信号を一定時間カウントし、得られたカウンタ値に基づきZ軸方向の加速度を検出するZ軸カウンタと、前記Z軸パルス信号を所定値からダウンカウントするダウンカウンタとを有し、前記X軸加速度検出手段は、前記X軸用の一対の静電容量素子の容量比を表す信号をパルス密度変調するX軸変調器と、このX軸変調器で得られたX軸パルス信号を前記ダウンカウンタが示す時間だけカウントし、得られたカウント値に基づきX軸方向の加速度を検出するX軸カウンタとを有し、前記Y軸加速度検出手段は、前記Y軸用の一対の静電容量素子の容量比を表す信号をパルス密度変調するY軸変調器と、このY軸変調器で得られたY軸パルス信号を前記ダウンカウンタが示す時間だけカウントし、得られたカウント値に基づきY軸方向の加速度を検出するY軸カウンタとを有することを特徴とする請求項1記載の3軸加速度センサ。
【請求項5】 固定基板と可動基板との各対向面に電極を配置し、対向配置される静電容量素子を複数対設け、複数対の静電容量素子の静電容量変化に基づき前記基板面に平行に設定されたXY平面上のX軸方向及びY軸方向の加速度、及び前記XY平面に直交するZ軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサのZ軸依存性の補正方法であって、前記X軸方向に沿って配置されたX軸用の一対の静電容量素子の容量比を求め、該容量比に基づいて前記X軸方向の加速度を検出するX軸加速度検出工程と、前記Y軸方向に沿って配置されたY軸用の一対の静電容量素子の容量比を求め、該容量比に基づいて前記Y軸方向の加速度を検出するY軸加速度検出工程と、Z軸用静電容量素子と基準容量を有する基準静電容量素子との一対の静電容量素子の容量比を求め該容量比に基づいて前記Z軸方向の加速度を検出するZ軸加速度検出工程と、を備えたことを特徴とする3軸加速度センサのZ軸依存性の補正方法。
【請求項6】 前記Z軸加速度検出工程は、前記Z軸用静電容量素子と前記基準静電容量素子との容量比を表す信号をパルス密度変調し、得られたZ軸パルス信号を一定時間カウントし、得られたカウンタ値に基づきZ軸方向の加速度を検出し、前記Z軸パルス信号をダウンカウンタにより所定値からダウンカウントし、前記X軸加速度検出工程は、前記X軸用の一対の静電容量素子の容量比を表す信号をパルス密度変調し、得られたX軸パルス信号を前記ダウンカウンタが示す時間だけカウントし、得られたカウント値に基づきX軸方向の加速度を検出し、前記Y軸加速度検出工程は、前記Y軸用の一対の静電容量素子の容量比を表す信号をパルス密度変調し、得られたY軸パルス信号を前記ダウンカウンタが示す時間だけカウントし、得られたカウント値に基づきY軸方向の加速度を検出することを特徴とする請求項5記載の3軸加速度センサのZ軸依存性の補正方法。

【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【公開番号】特開2002−31644(P2002−31644A)
【公開日】平成14年1月31日(2002.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−216452(P2000−216452)
【出願日】平成12年7月17日(2000.7.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(500169759)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】