説明

3,3−ジフェニルプロピルアミンの新規な誘導体

【課題】3,3−ジフェニルプロピルアミン類の新規な誘導体、その製造方法、その新規な化合物を含有する薬学的組成物、および薬物を調製するためのこれらの化合物の使用を提供すること。
【解決手段】一般式1で示されるジフェニルプロピルアミン類誘導体


(ここで、Aは水素または重水素、Xはアミノ基を表す。)、その製造法、および薬剤組成物への使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3,3−ジフェニルプロピルアミン類の新規な誘導体、それらの調製方法、前記新規な化合物を含有する薬学的組成物、および薬剤を調製するための前記化合物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体において、正常な膀胱の収縮は、主にコリン作動性ムスカリン様受容体への刺激によって仲介される。ムスカリン様受容体は、正常な膀胱の収縮だけでなく、頻尿症、尿意逼迫症および切迫尿失禁症の如き症状を引き起こす過活動状態の膀胱における収縮の主要部分も仲介すると信じるだけの理由がある。この理由のため、膀胱過活動性を治療するための抗ムスカリン様作用薬が提案されている。
市販されている抗ムスカリン様作用薬の中で、オキシブチニンが、膀胱過活動性に関連する切迫尿失禁症や他の症状の薬理学的治療にとっての現在の金本位であると考えられている。オキシブチニンの効果はいくつかの臨床研究ですでに証明されているが、オキシブチニンの臨床的効用は、抗ムスカリン副作用によって制限されている。口内の乾きが、芳しくないコンプライアンスまたは治療の中断を引き起こす程に思いこともある最も一般的に体感される副作用である(非特許文献1参照)。
【0003】
トルテロジンは、切迫尿失禁症および排尿筋過活動性を治療することを目的とした新規で、効き目が強く、かつ拮抗的なムスカリン様受容体拮抗薬である。前臨床薬理データは、トルテロジンが唾液分泌に対する効果を越えて膀胱に対するインビボでの良好な組織選択性を示すのに対し(非特許文献2参照)、オキシブチニンは反対の選択性を示すことを示している。トルテロジンは、膀胱のムスカリン様受容体に対してオキシブチニンと等力であり、そして前臨床研究で証明されたトルテロジンの好ましい組織選択性は、臨床研究で確認されている。このように、良好な臨床的有効度は、非常に低い発生率の口内乾燥と抗ムスカリン副作用に伴われてきた。
トルテロジンの主要な代謝産物である5−ヒドロキシメチル誘導体も効き目の強いムスカリン様受容体拮抗薬であり、そしてこの代謝産物の薬理学的なインビボおよびインビトロ特性は、トルテロジンのものとほとんど同じである(非特許文献3照)。薬理学データと薬動学データを組み合わせたものが、この代謝産物が大多数の患者に対する臨床効果に大きく貢献していることはほぼ間違いないことを示している。
【0004】
特許文献1は、このトルテロジンの活性代謝産物を切迫尿失禁症に対する新規な薬物として提案している。この活性代謝産物を患者に直接投与することは、トルテロジンと比べて、患者は1種類の活性成分(化合物)だけに対処すればよく、このため通常は患者間の薬効および副作用のばらつきが小さくなり、かつ他の薬物と相互作用する危険性が低くなるという利点がある。
しかしながら、トルテロジンにヒドロキシ基をさらに導入すると親化合物と比べて新規な化合物(3,3−ジフェニルプロピルアミン)の親水性が高くなり、これは一般に吸収率/生物学的利用率を低下させることになり、そして吸収されない抗ムスカリン様作用薬に因る前全身性の副作用または相互作用を招くことになる。この不都合を回避するための方法では、上記代謝産物の異なる数種類のプロドラッグを合成し、そしてそれらの抗ムスカリン作用、生体膜を通じての潜在的な吸収率、および酵素的分割について試験した。
【特許文献1】国際公開WO94/11337号パンフレット
【非特許文献1】アンダーソン(Andersson)、K.−E.、1988、排尿障害の治療における今日の概念(Current concepts in the treatment of disorders of micturition)、Drugs 35、477−494、ケラーら(Kelleher et al.) 1994
【非特許文献2】ニルベブラントら(Nilvebrant et al.)、1997、トルテロジン−新規な膀胱選択性抗ムスカリン剤、Eur.J.Pharmacol.327(1997)、195−207
【非特許文献3】ニルベブラントら、1997、Eur.J.Pharmacol.327(1997)195−207
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、3,3−ジフェニルプロピルアミン類の新規な誘導体を提供することである。本発明のさらなる目的は、薬物の生体膜を通じての低すぎる吸収率または好ましくない新陳代謝などの不都合を回避する一方で、尿失禁症およびムスカリン様構造に起因する他の痙攣原性(spasmogenic)症状を治療するためのプロドラッグとしてより有用となる3,3−ジフェニルプロピルアミン類の新規な誘導体を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる目的は、オキシブチニンやトルテロジンの如き現在の薬物よりも優れた薬動学特性を有する抗ムスカリン剤の新規なプロドラッグと、それらを調製するための方法と、それらを含有する薬学的組成物と、尿失禁症、胃腸活動過剰(過敏性腸症候群)および他の平滑筋収縮状態を治療するために前記化合物および組成物を使用する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、一般式I
【0008】
【化1】

【0009】
ここでRは水素であり、およびR’は、
a)C1〜C6アルキル、C3〜C10シクロアルキル、置換または非置換ベンジル、アリルまたは炭水化物基、または
b)ホルミル、C1〜C6アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、置換または非置換アリールカルボニル、好ましくはベンゾイル、または
c)C1〜C6アルコキシカルボニル、置換または非置換アリールオキシカルボニル、ベンゾイルアシル、ベンゾイルグリシル、、置換または非置換アミノ酸残基、または
d)下記式
【0010】
【化2】

【0011】
ここでR4およびR5は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、置換または非置換アリール、好ましくは置換または非置換フェニル、ベンジルまたはフェノキシアルキルを表し、ここでそのアルキル残基の炭素数は1〜4であり、そしてR4およびR5は、アミン窒素と一緒になって環を形成してもよい、
で表される基、または
e)下記式
【0012】
【化3】

【0013】
ここでR6およびR7は、独立に、C1〜C6アルキル、置換または非置換アリール、好ましくは置換または非置換フェニル、ベンジルまたはフェノキシアルキルを表し、ここでそのアルキル残基の炭素数は1〜6である、
で表される基、または
f)無機酸のエステル部分、
g)Ra、RbおよびRcが、独立に、C1〜C4アルキルまたはアリール、好ましくはフェニルから選択される−SiRabc基、
から選択される、但しR’はメチルまたはベンジルまたはイソプロピルカルボニルではないものとする、
Xは、式Ia
【0014】
【化4】

【0015】
ここでR8およびR9は、互いに同じまたは異なっていてもよく、かつ合わせて3つ以上の炭素原子を含有する非芳香族ヒドロカルビル基を表し、そしてR8およびR9は、アミン窒素と一緒になって環を形成してもよい、
で表される三級アミノ基を表し、
Aは水素(1H)または重水素(2H)を表す、
で表される新規な3,3−ジフェニルプロピルアミン、および
その生理的に許容できる酸との塩、その遊離塩基、および該化合物が光学異性体の形態にある場合のラセミ混合物および各鏡像異性体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
前記化合物は、生理的に許容できる有機および無機酸と共に塩を形成することができる。さらに、前記化合物は、それらの塩だけでなく遊離塩基も含有する。そのような酸添加塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩を挙げることができる。
前記新規な化合物が光学異性体の形態にある場合には、本発明にはラセミ混合物および各鏡像異性体が包含される。
8およびR9の各々は、独立に、飽和ヒドロカルビル基、特にC1〜C8アルキル、特にC1〜C6アルキル、またはアダマンチルの如き飽和脂肪族ヒドロカルビル基を表し、そしてR8およびR9は、合わせて3つ以上、好ましくは4つ以上の炭素原子を含有する。
本発明の別の実施態様によれば、R8およびR9の少なくとも1つは、分岐炭素鎖を含有する。
現時点で好ましいとされる式I中の三級アミノ基Xとしては、以下の基a)〜h)が挙げられる。
【0017】
【化5】

【0018】
基a)が特に好ましい。
【0019】
前記三級アミノ基XはWO94/11337に記載されており、そして本発明による化合物は、対応する出発化合物を用いることによって得ることができる。
【0020】
本発明による化合物において、「アルキル」という用語は、好ましくは炭素数が1〜6である直鎖状または分鎖状炭化水素基を表す。そのような炭化水素基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチルおよびヘキシルから選択されることができる。「シクロアルキル」という用語は、場合により置換されてもよい3〜10個の炭素原子を有する環状炭化水素基を表す。
「置換または非置換ベンジル」という用語は、フェニル環の1つ以上の置換基によって任意に置換されるベンジル基−CH2−C65を表す。好適な置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロから選択される。好適なハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子およびヨウ素原子である。好ましい置換ベンジル基は、4−メチルベンジル、2−メチルベンジル、4−メトキシベンジル、2−メトキシベンジル、4−ニトロベンジル、2−ニトロベンジル、4−クロロベンジルおよび2−クロロベンジルである。
【0021】
本発明による化合物において、「C1〜C6アルキルカルボニル」という用語は、Rが上記において定義されたとおりのアルキル基であるR−C(=O)−基を表す。好ましいC1〜C6アルキルカルボニル基は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレロイルおよびピバロイルから選択される。「シクロアルキルカルボニル」という用語は、Rが上記において定義されたとおりの環状炭化水素基であるR−C(=O)−基を表す。これは選択されたカルボニル基に対しても当てはまる。
【0022】
「アリール」という用語は、フェニル−(C65−)、ナフチル−(C107−)、アンスリル−(C149−)の如き芳香族炭化水素基を表す。本発明による好ましいアリール基は、フェニルとナフチルであるが、フェニルが特に好ましい。
「ベンゾイル」という用語は、フェニル環が1つ以上の置換基を有していてもよい式−CO−C65のアシル基を表す。
アリール基、特にフェニル基の好ましい置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロゲンおよびニトロから選択される。置換されたベンゾイル基としては、4−メチルベンゾイル、2−メチルベンゾイル、4−メトキシベンゾイル、2−メトキシベンゾイル、4−クロロベンゾイル、2−クロロベンゾイル、4−ニトロベンゾイルおよび2−ニトロベンゾイルを挙げることができる。
「C1〜C6アルコキシカルボニル」という用語は、Rが上記において定義されたとおりのアルキル基であるROC(=O)−基を表す。好ましいC1〜C6アルコキシカルボニルは、CH3OC(=O)−、C25−OC(=O)−、C37OC(=O)−、(CH33COC(=O)−および脂環式アルキルオキシカルボニルから選択される。
「アミノ酸残基」という用語は、天然または合成のアミノ酸の残基を表す。特に好ましいアミノ酸残基は、グリシル、バリル、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、プロリル、セリル、スレオニル、メチオニルおよびヒドロキシプロリルからなる群から選択される。
【0023】
前記アミノ酸残基は好適な基で置換されてもよく、置換されたアミノ酸残基としては、ベンゾイルグリシルおよびN−アセチルグリシルを挙げることができる。
「炭水化物基」という用語は、式Cn2nnまたはCn(H2O)nで表されるポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトンの残基を表し、対応する炭水化物基は、例えばアスピナル(Aspinal)、多糖類(The Polysaccharides)、ニューヨーク、Academic Press 1982、1983に記載されている。本発明による化合物における好ましい炭水化物基は、グルクロノシル基、特に1β−D−グルクロノシル基である。
本願明細書において用いられる「LG」という用語は、ハロゲン化物、カルボキシレート、イミダゾリドから選択される脱離基を表す。
本願明細書において用いられる「Bn」という用語は、ベンジル基を表す。
無機酸の好適なエステル部分は、硫酸およびリン酸の如き無機酸から誘導することができる。
【0024】
本発明による好ましい化合物は、
A)一般式II
【0025】
【化6】

【0026】
ここでR1は、水素、C1〜C6アルキル(但し、イソプロピルを除く)またはフェニルを表す、
で表されるフェノール系モノエステルであって、
(±)−ギ酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−酢酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−プロピオン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−n−酪酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2,2−ジメチルプロピオン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−アセトアミド酢酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−シクロペンタンカルボン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−シクロヘキサンカルボン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、R−(+)−安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−4−メチル安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−メチル安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−アセトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−1−ナフトエ酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−ナフトエ酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−4−クロロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−4−メトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−メトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−4−ニトロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−ニトロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−マロン酸−ビス−[2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチル−フェニル]エステル、(±)−コハク酸−ビス−[2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチル−フェニル]エステル、(±)−ペンタンニ酸−ビス−[2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチル−フェニル]エステル、および(±)−ヘキサンニ酸−ビス−[2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチル−フェニル]エステルが特に好ましいとされるフェノール系モノエステルから選択される3,3−ジフェニルプロピルアミン類、および
その生理的に許容できる酸との塩、その遊離塩基、および該化合物が光学異性体の形態にある場合のラセミ混合物および各鏡像異性体である。
【0027】
さらに、本発明は上記化合物を製造するための方法にも関連する。特に、本発明によれば、以下の方法が提供される。
上記において定義されたとおりの一般式II
【0028】
【化7】

【0029】
で表されるフェノール系モノエステルを製造するための方法であって、下記式
【0030】
【化8】

【0031】
で表される化合物を、下記式
【0032】
【化9】

【0033】
ここでLGは、ハロゲン化物、カルボキシレートおよびイミダゾリドから選択される脱離基を表し、そしてR1は上記において定義されたものと同じである、
で表される化合物から選択されるアシル化剤の等当量で、不活性溶媒中で縮合剤の存在下において処理することからなる方法。該アシル化剤は好ましくは下記式
【0034】
【化10】

ここでHalはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表し、そしてR1は上記において定義されたものと同じである、
で表される化合物から選択される。
従って、これらの方法においては、下記式
【0035】
【化11】

【0036】
で表される中間体Bが等当量のアシル化剤(例えば、アシルハロゲン化物またはアシル無水物)によって不活性溶媒中で縮合剤(例えば、アミン)の存在下において処理され、多官能性アシル化剤(例えば、酸ハロゲン化物、好ましくはジカルボン酸の酸塩化物)を用いる場合に、式IIで表されるフェノール系モノエステルが得られる。
【0037】
本発明による3,3−ジフェニルプロピルアミン類を製造するための方法において用いられる中間体Bは、下記式で表されるラセミ混合物または光学活性化合物の形態であってもよい。
【0038】
【化12】

【0039】
あるいは、式IIの構造は、保護されたベンジル性ヒドロキシ基の位置選択的な脱保護化によって得ることができる(化学的にまたは酵素的に、ティー.ダブリュー.グリーン(T.W.Greene)、ピー.ジー.エム.ワッツ(P.G.M.Wuts)、「有機化学における保護基」、第2版、ジェイ.ウィリー&サンズ(J.Wily&Sons)、New York 1991)。
【0040】
さらに、本発明は、上記3,3−ジフェニルプロピルアミン類の1種類以上を含有する薬学的組成物に関するものである。すなわち、本発明による化合物は、薬学的に活性な物質として、特に抗ムスカリン剤として使用することができる。
これらは、前記化合物を少なくとも1種類含有する薬学的調合物を調製するのに用いることができる。
【0041】
遊離塩基または生理的に許容できる酸との塩の形態にある本発明による化合物は、認可された薬学的処置に従って経口、注射、鼻スプレーによる投与のための組成物の如き好適な生薬形態にすることができる。本発明によるそのような薬学的組成物は、当該技術分野において周知であるような適合性のある薬学的に許容できる担体材料または希釈剤と一緒に、有効量の請求項1〜4の化合物を含有する。担体は、例えば水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶性セルロースデンプン、殿粉グリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、コロイド状ニ酸化ケイ素の如き、経腸、経皮すなわち非経口投与に好適な有機または無機のあらゆる不活性材料である。そのような組成物は、他の薬学的的に活性な液剤や、安定剤、湿潤剤、乳化剤、着香剤、緩衝剤の如き慣用の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0042】
本発明による組成物は、例えば、錠剤、カプセル、粉末、シロップ、エリキシルの如き、経口投与用に固体または液体の形態、非経口投与用に無菌液、懸濁液または乳濁液の形態などに調製することができる。
本発明による化合物は、パッチ調合物に用いることができる。これらの化合物は、副作用の発生率を低下させ、かつ個体コンプライアンスを向上させた状態で経皮投与することができる。
これらの化合物および組成物は、前述のように、尿失禁症およびムスカリン様構造に起因する他の痙攣性症状を治療するために利用することができる。特定の化合物の投与量は、その効力、投薬方法、患者の年齢および体重、および治療される症状の重さに依存して変動する。例えば、1日当たりの投与量は約0.01〜約5mgの範囲であり、例えばそれぞれ約0.05mg〜約50gの投薬量を一回または複数回に分けて投与する。
【実施例】
【0043】
本発明を以下の非制限的な実施例および薬理試験によってさらに説明する。
I. 実験
1. 概要
すべての化合物を1Hおよび13CNMR分光法(ブルーカー(Bruker)DPX200)によって十分に特徴付けた。13CNMRスペクトル(50MHz、ppm値を提供)について報告された化学シフトは、それぞれCDCl3溶媒(77.10ppm)、2重水素化ジクロロメタン溶媒(CD2Cl2、53.8ppm)、CD3OD(49.00ppm)または6重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6、39.70ppm)を基準とする。1HNMRデータ(200MHz、ppm)は、内部テトラメチルシランを基準とする。薄層クロマトグラフィー(tlc、Rf値を記録)をプレコートされた5x10cmのE.Merckシリカゲル平板(60F254)において実施し、螢光消光またはアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液の噴霧によってスポットを可視化した。溶媒系は、(1)酢酸エチル/n−ヘキサン(30/70、v/v−%)、(2)トルエン/アセトン/メタノール/酢酸(70/5/20/5、v/v−%)、(3)n−ヘキサン/アセトン/ジエチルアミン((70/20/10、v/v−%)、(4)n−ヘキサン/アセトン/トリエチルアミン((70/20/10、v/v−%)、(5)酢酸エチル/n−ヘキサン/2−プロパノール/トリエチルアミン(60/40/20/1、v/v−%)、(6)酢酸エチル/トリエチルアミン(90/10、v/v−%)、(7)シクロヘキサン/アセトン/酢酸(80/20/0.5、v/v−%)であった。光学回転は589.3nmおよび室温においてパーキンエルマー偏光計241型を用いて測定された。記録された融点(mp)は未修正のままで、メトラー(Mettler)FP1測定器を用いて測定した。赤外線スペクトルは、解像度が4cm-1であるパーキンエルマーFTIRスペクトロメーターシリーズ1610で測定した。ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)については、スペクトル(m/z値および相対存在度(%)を記録)をフィニガン(Finnigan)TSQ700三重質量分析計を用いて、メタンまたはアンモニアを反応ガスとして用いた正(P−CI)または負(N−CI)の化学イオン化モードで記録した。ヒドロキシル化合物は、それらのトリメチルシリルエーテル誘導体として分析された。複合ガスクロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)においては、ウオーターズインテグリティーシステム(Waters Integrety System)とサーマビーム(Thermabeam)質量検出器(EI、7−eV)を用いて、m/z値および相対存在度を記録した。
【0044】
2. 中間体AおよびBの合成
3−フェニルアクリル酸4−ブロモフェニルエステル
ジクロロメタン(150ml)中の4−ブロモフェノール(69.2g)と塩化シンナモイル(66.8g)の氷冷溶液をトリエチルアミン(40.6g)で処理した。室温で18時間攪拌した後に、この混合物を水(250ml)と1Mの塩化水素水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。これを真空蒸発させると、固形の3−フェニルアクリル酸4−ブロモフェニルエステル(121.0g、収率99.8%)が残り、融点は113.3℃、tlcは(1)0.83であった。NMR(CDCl3)は、116.85、118.87、123.49、128.38、129.06、130.90、132.49、134.02、147.07、149.84、および165.06であった。
(±)−6−ブロモ−4−フェニルクロマン−2−オン
エステル(60.0g)の一部を酢酸(60ml)と濃硫酸(18ml)の混合溶液に溶かし、2時間還流させた。冷却後、この反応混合物を氷水に注ぎ込み、得られた生成物をエチルアセテートで抽出して単離した。溶媒を蒸発させ、残留物を沸騰したエタノール(150ml)で再結晶させると、26.3g(収率43.8%)の純粋な結晶質の(±)−6−ブロモ−4−フェニルクロマン−2−オンが得られ、融点は117.8℃、tlcは(1)0.67であった。NMR(CDCl3)は、36.56、40.51、117.29、118.87、127.47、127.89、128.33、129.32、131.07、131.79、139.42、150.76、および166.84であった。
【0045】
(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸メチルエステル
メタノール(350ml)およびアセトン(350ml)中の(±)−6−ブロモ−4−フェニルクロマン−2−オン(85.0g)、無水炭酸カリウム(46.7g)、ヨウ化ナトリウム(20.5g)および塩化ベンジル(40.6g)からなる懸濁液を3時間還流させた。溶媒を蒸発させた後に、残留物をジエチルエーテル(2x300ml)で抽出し、そしてその抽出物を水(2x200ml)と炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。これを(Na2SO4で)乾燥および回転蒸発させると、121.8g(粗収率102.1%)の(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸メチルエステルが淡い黄色の油として得られ、tlcは(1)0.77であった。NMR(CDCl3)は、39.22、40.53、51.63、70.16、113.10、113.77、126.46、126.92、127.88、128.08、128.34、128.45、130.31、130.55、134.41、136.44、142.37、154,94、および172.08であった。
【0046】
(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸
エタノール(5ml)中の(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸メチルエステル(0.391g、0.92mmol)の溶液を、この乳白色の乳濁液が透明になるまで、50℃で過剰水酸化ナトリウム水溶液で処理した。次に、得られた反応混合物を酸性化(pH=3)し、蒸発させて、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機抽出物を蒸発させて、残った油を最少量の沸騰したエタノールに再度溶かした。4℃で18時間経過した後に形成された沈殿物を濾別し、真空乾燥させると、0.27g(71.4%)の無色の結晶である(±)−3−(2−ベンジルオキシ)−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸が得られ、融点は124.9℃、tlcは(1)0.15(出発材料のメチルエステルは0.75)であった。NMR(CDCl3)は、39.15、40.26、70.25、113.21、113.90、126.62、127.27、127.98、128.17、128.47、128.54、130.46、130.68、134.34、136.45、142.16、154.95、および177.65であった。LC−MSは、412/410(14/11%、M+.)、394/392(15/13%)、321/319(17/22%)、304/302(17/21%)、259(24%)、194(22%)、178(21%)、167(65%)、152(49%)、および92(100%)であった。IR(KBr)は、3434、3030、1708、1485、1452、1403、1289、1243、1126、1018、804、735、698、および649であった。C2219BrO3(分子量411.30)の場合の計算値は、C64.25%、H4.66%、Br19.43%、およびO11.67%であり、その実測値は、C63.72%、H4.70%、Br19.75%、およびO11.80%であった。
【0047】
一方、上記(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸メチルエステルの合成からの粗反応混合物を蒸発させて、温めたエタノールに再度溶かし、そして過剰水酸化カリウム水溶液で処理した。これをpHが3(濃塩酸)になるまで酸性化し、4℃まで冷却すると固体が形成され、この固体を18時間後に濾別し、水で繰返し洗浄し、乾燥させると、収率82%で(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸が得られた。
【0048】
a)3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸の分解
2,000mlと700mlの無水エタノールにそれぞれ溶かされた(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸(815.6g、1.85mol)と1S、2R−(+)−エフェドリンヘミハイドレート(232.1g、1.85mol)の温めた溶液同士を混ぜ合わせてから0℃まで冷ました。形成された沈殿物を収集し、冷やしたエタノールで洗浄し、真空乾燥させると見出しの化合物(融点は153℃、光学純度はNMRおよびHPLCによる測定値で65%)のエフェドリニウム塩が553.2g得られた。この塩を沸騰したエタノールで2回再結晶させることによって、75%の収率で無色の結晶であるR−(−)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸1S、2R−(+)−エフェドリニウム塩が得られ、融点は158.6℃、光学純度は97.6%(HPLC)であった。NMR(CDCl3)は、9.53、30.90、41.54、42.83、61.45、70.15、70.42、113.05、113.68、125.89、126.03、127.33、127.85、128.19、128.28、128.45、129.86、130.70、135.91、136.65、140.40、144.09、155.20、および178.94であった。
【0049】
このエフェドリニウム塩を、アセトン(5ml)とエタノール(10ml)の混合溶液に1.2g(2.0mmol)溶かした。水(0.4ml)と濃(37%)塩酸水溶液(0.34ml)で処理した後に、この溶液を真空蒸発させ、そしてその残留物を1M塩酸塩溶液(2ml)とジクロロメタン(10ml)に再度溶かした。得られた有機相を分離し、水(2ml)で2回洗浄し、そして乾燥するまで蒸発させると、R−(−)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸が無色の油として得られた。この油はゆっくりと凝固(0.4g、収率98%)し、融点は105.6℃(酢酸エチル/n−ヘプタンの場合)、tlcは(7)0.21、[α]D20=−21.1(c=1.0、エタノール)、そして光学純度は99.9%(HPLC)であった。NMRは、ラセミ酸のものと同じである。
【0050】
S−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸
上記分解および再結晶からの混合母液を、攪拌および冷却(18℃)しながら、過剰の濃塩酸水溶液で処理した。得られた沈殿物(塩化エフェドリニウム)を濾別し、得られた濾液を乾燥するまで蒸発させた。得られた残留物をジクロロメタン(1.5リットル)に再度溶かし、そして数部の1M塩酸水溶液で洗浄した後に水で洗浄した。これを(Na2SO4で)乾燥、濾過および蒸発させた後に、479gの粗S−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸が黄色の粘り気のある油として得られた。純粋なS−(+)鏡像異性体酸を、R−(−)酸について前述したと同様にして1R、2S−(−)−エフェドリン塩に転換させた。沸騰したエタノールによる2回の再結晶によって、83%の収率でS−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸1R、2S−(−)−エフェドリン塩の無色の結晶が得られ、融点は158.7℃、光学純度は97.8%(HPLC)であった。NMR(CDCl3)は、9.47、30.85、41.54、42.92、61.48、70.13、70.30、113.04、113.66、125.89、126.01、127.32、127.84、128.18、128.44、129.83、130.68、135.94、136.63、140.44、144.13、155.19および178.94であった。
S−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸を、R−(−)酸について前述したような方法によってこのエフェドリニウム塩から定量的収率で得た。そのtlcは(7)0.20であり、光学純度(NMR)は99%を上回り、融点は105.5℃であり、[α]D20は+22.6(c=1.0、エタノール)であり、そしてNMRはラセミ酸のものと同じであった。
【0051】
b)R−(−)−およびS−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸のエナンチオ選択的な合成
【0052】
【化13】

【0053】
2−ベンジルオキシ−5−ブロモベンズアルデヒド
THF(150ml)中の0.1モルの5−ブロモ−2−ベンズアルデヒドの溶液に0.1モルのK2CO3および0.11モルの臭化ベンジルとを添加した。この混合物を2時間還流させて、水(500ml)を添加した。酢酸エチル(400ml)を添加して攪拌した後に、有機層を水で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウムを使用)させ、そして乾燥するまで蒸発させた。得られた純粋な(tlcによる)2−ベンジルオキシ−5−ブロモベンズアルデヒドの僅かに黄色い固体を次の工程で使用した。
【0054】
3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−アクリル酸
150mlのピリジン中の2−ベンジルオキシ−5−ブロモベンズアルデヒド(0.10mol)、マロン酸(15.0g)およびピペリジン(2.0ml)の混合物を、まず90℃で90分間加熱し、その後、0.5時間還流させた。室温まで冷却した後に、この反応物を氷(1kg)と濃塩酸水溶液(250ml)との混合物に注いだ。2時間攪拌した後に沈殿した固体材料を吸引で収集し、最少量の沸騰メタノールで再結晶させた。
【0055】
3−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−アクリロイル]−(4R)−4−フェニルオキサゾリジン−2−オン
塩化ピバロイル(7g)を、200mlのテトラヒドロフラン中の3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−アクリル酸(50.0mmol)とトリエチルアミン(15.0ml)との攪拌溶液に、−30℃で滴下した。さらに一時間後、温度を−50℃まで下げ、そして(R)−2−フェニルオキサゾリジン−2−オン(9.0g)と塩化リチウム(2.5g)とを一度に添加した。そして冷却浴を取り除き、攪拌を18時間以上続けた。反応物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出することによって3−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−アクリロイル]−(4R)−4−フェニルオキサゾリジン−2−オンが単離された。
【0056】
3−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−(3S)−3−フェニルプロピオニル]−(4R)−4−フェニルオキサゾリジン−2−オン
乾燥テトラヒドロフラン(150ml)中の塩化銅(I)(21.0g)と硫化ジメチル(45ml)との予冷された(−30℃)混合物にフェニルマグネシウムプロミド(0.3mol)のエーテル溶液を滴下した。得られた混合物を同じ温度で20分間攪拌してから−40℃まで冷却した。乾燥テトラヒドロフラン(150ml)中の3−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−アクリロイル]−(4R)−4−フェニルオキサゾリジン−2−オン(50.0mmol)の溶液を10分間で添加した。冷却浴を取り除き、攪拌を18時間以上続けた。混合物を半飽和塩化アンモニウム水溶液で急冷し、酢酸エチルで抽出することによって生成物を単離した。
【0057】
S−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸
テトラヒドロフラン(300ml)と水(100ml)中の上記3−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−(3S)−3−フェニルプロピオニル]−(4R)−4−フェニルオキサゾリジン−2−オンの溶液を0℃まで冷却(0℃)し、その後、30%過酸化水素水溶液(20ml)で処理してから固体の水酸化リチウム(4.3g)で処理した。2時間後に水を添加し、酢酸エチルで抽出することによってキラル助剤を除去した。水相を塩酸水溶液(10%)で酸性化し、粗S−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸が、t−ブチル−メチルエーテルで抽出された。
【0058】
HPLC分析(キラルパック(Chiralpak)AD、移動相:ヘキサン/2−プロパノール/トリフルオロ酢酸[92:8:0.1、vol/vol−%]、流量:1.0ml/分、検波:285nm)によって、鏡像異性体比(enantiomeric ratio)が93:7(保持時間はそれぞれ14.8分と11.5分)であることが示された。S−(+)鏡像異性体の光学純度は「ニトロミックス(nitromix)」(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1998、Vol.37、p.2349)または前述の(1R、2S)−(−)−エフェドリンヘミハイドレートを用いてジアステレオマー塩を再結晶化させることによって86%から98.5%を上回る値にまで向上させることができる。S−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸は、ジアステレオマー塩の水溶液を酸性化した後に単離された。これにより、光学回転が[α]D22=+21.6(c=0.5、MeOH)である無色の結晶が形成された。
臭化フェニルマグネシウムのS−(+)鏡像異性体について前述されたとおり3−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−アクリロイル]−(4S)−4−フェニルオキサゾリジン−2−オンへの共役オルガノキュプレート(organocuprate)添加によって、2回の再結晶化の後に99.6%の光学純度で結晶質のR−(−)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸が得られた。光学回転は[α]D22=−21.7(c=0.5、MeOH)であった。
【0059】
中間体BのR−およびS−鏡像異性体の合成
(i)フェニルプロパノール経路
【0060】
【化14】

【0061】
(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロパン−1−オール
350mlの乾燥テトラヒドロフラン中のメチル(±)−プロピオネート(121.0g)の溶液を、窒素雰囲気下において、テトラヒドロフラン(350ml)中の水素化アルミニウムリチウム(7.9g)の懸濁液にゆっくりと添加した。室温で18時間攪拌した後に20%塩化水素水溶液を滴下し、そしてジエチルエーテルで繰返し抽出することによって生成物を単離した。抽出物同士を混ぜ合わせたものを塩酸、水酸化ナトリウム溶液および蒸留水で順次洗浄した後に(Na2SO4で)乾燥させることによって、蒸発後に淡い黄色の粘り気のある油(108.8g、収率96.3%)である(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロパン−1−オールが得られ、これは徐々に結晶化した。この融点は73.8℃、tlcは(1)0.47、そしてNMR(CDCl3)は、37.52、39.52、60.84、70.54、113.54、113.83、126.29、127.30、127.51、129.99、128.24、128.38、129.99、130.88、135,69、136.40、143.53および155.12であった。
(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸をテトラヒドロフラン中で水素化アルミニウムリチウムで還元した(30分間、25℃)後に収率31%で同じ生成物が得られた。
【0062】
(±)−トルエン−4−スルホン酸−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピルエステル
ジクロロメタン(300ml)中の(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロパン−1−オール(108.0g)の冷却された(5℃)溶液をピリジン(79.4ml)で処理した後にジクロロメタン(200ml)中のp−トルエンスルホニルクロリド(60.6g)で処理した。室温で18時間後、溶媒を真空除去し、残留物をジエチルエーテルで抽出した。抽出物を塩酸および水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させると、減圧下で濃縮した後に(±)−トルエン−4−スルホン酸−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピルエステル(140.3g、収率93.6%)が淡い黄色の油として得られた。tlc:(1)0.66。NMR(CDCl3)は、21.67、33.67、39.69、68.58、70.28、113.21、113.76、126.47、127.84、128.10、128.25、128.41、128.51、129.81、130.26、130.42、132.91、134.39、136.41、142.16および155.07であった。
【0063】
(±)−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピル]−ジイソプロピルアミン
アセトニトリル(230ml)中の(±)−トルエンスルホネート((±)−トルエン−4−スルホン酸−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピルエステル、139.9g)とN,N−ジイソプロピルアミン(256g)との溶液を97時間還流させた。次に、この反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、このように形成された残留物をジエチルエーテル(500ml)と水酸化ナトリウム水溶液(2M、240ml)の間に分配した。有機相を水(250ml)で2回洗浄した後に、1Mの硫酸で抽出した。水相をpH=12〜13にまで調整し、エーテル(500ml)で再度抽出した。有機相を水で洗浄し、(Na2SO4で)乾燥させ、蒸発させると、tlcが(2)0.49である(±)−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピル]−ジイソプロピルアミンが茶色の粘り気のあるシロップ(94.5g、収率77.9%)が得られた。NMR(CDCl3)は、20.65、20.70、36.70、41.58、43.78、48.77、70.24、113.52、126.02、127.96、128.20、128.36、129.82、130.69、136.34、136.76、144.20および155.15であった。
【0064】
(ii)フェニルプロピオンアミド経路
【0065】
【化15】

【0066】
S−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオニルクロリド
チオニルクロリド(4.5g、2.8ml、37.8mmo)と数滴のジメチルホルムアミドを、酢酸エチル(60ml)中のS−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸(10.3g、25mmol)の溶液に添加した。この混合物を、tlc制御装置が出発材料が完全に消費されたことを示す(2時間)まで還流させた。真空蒸発させると、ほとんど定量的収量(10.7g)で酸塩化物が淡い黄色の液体として得られた。アリコートをメチルエステルに転換すると、tlc(Rf=0.54、溶媒系(7))に単一のスポットが示された。
【0067】
S−(+)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオンアミド
酢酸エチル(40ml)中のS−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオニルクロリド(9.6g、22.3mmol)の溶液を、60mlの酢酸エチル中のジイソプロピルアミン(6.4g、49.0mmol)の攪拌および冷却(3℃)した溶液に滴下した。この反応を室温で18時間攪拌した後に、水、塩酸水溶液(1M)および半飽和ブラインで洗浄した。有機相を(硫酸ナトリウムで)乾燥させ、乾燥するまで蒸発させた。S−(+)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオンアミドの無色の油状の残留物(10.7g、収率97%)はtlc(Rf=0.70(4))において単一のスポットを示した。NMR(CDCl3)は、18.42、20.46、20.63、20.98、39.51、41.44、45.76、48.63、70.00.112.84、113.64、126.10、126.45、127.34、127.78、128.20、128.36、129.93、130.59、135.18、136.52、143.52、155.17および169.61であった。
【0068】
(±)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオンアミド
ジイソプロピルアミンとラセミ酸塩化物とからS−(+)鏡像異性体について前述したと同じようにしてアミドを製造した。この粘り気のある無色の油をエタノールに溶かし、得られた溶液を−30℃で保存した。この溶液から、融点が101.8℃である無色の結晶が得られた。
【0069】
(±)−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピル]−ジイソプロピルアミン
40mlの乾燥テトラヒドロフラン中の(±)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオンアミド(11.8g)の攪拌溶液に1Mの水素化アルミニウムリチウム/テトラヒドロフラン(36ml)を添加した。反応を4時間還流させた後に、水を滴下して急冷させた。沈殿物を取り除いた後に、溶媒を蒸発させ、油状の残留物を希硫酸に溶かした。水相をジエチルエーテルで数回洗浄し、pH=10〜12(NaOH水溶液)にまで調整し、そしてジエチルエーテルで抽出した。抽出物を(硫酸ナトリウムで)乾燥させ、濾過し、乾燥するまで真空で蒸発させると、見出しの化合物が粘り気のある無色の油として8.1g(76.7%)得られ、tlcは(4)0.86であった。NMRスペクトルは、トシレート前駆体から得られる生成物に対応する(上記参照)。
【0070】
S−(+)−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピル]−ジイソプロピルアミン
S−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸を出発材料として用いて一連の反応手順を繰り返すと、S−(+)−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピル]−ジイソプロピルアミンが粘り気のある無色の油として得られた。[α]D22=+18.5(c=10.0、エタノール)、代表バッチの光学純度は99.4%であった。
【0071】
R−(−)−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピル]−ジイソプロピルアミン
R−(−)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸を出発材料として用いて一連の反応手順を繰り返すと、R−(−)−[3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピル]−ジイソプロピルアミンが粘り気のある無色の油として得られた。[α]D22=−17.3(c=10.0、エタノール)、代表バッチの光学純度は98.3%であった。
光学純度はキラルパックODカラムを用いたキラルHPLCによって測定した。
【0072】
(±)−4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−安息香酸塩酸塩
窒素雰囲気下において上記(±)−アミン(22.8g)、臭化エチル(17.4g)およびマグネシウム(6.1g)から調製されたエーテルグリニヤー溶液を乾燥テトラヒドロフラン(200ml)で希釈し、その後、−60℃まで冷却した。次に、粉末状の固体ニ酸化炭素(約50g)を少量に分けて添加し、得られた緑色の反応混合物を室温まで温めた。塩化アンモニウムの水溶液(200ml、10%)を添加し、かつ水相をpH=0.95まで調整した後に、白色の固体を濾過で回収すると、(±)−4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−安息香酸塩酸塩(14.7g、収率64.3%)が得られ、融点は140℃(dec.)、tlcは(2)0.33であった。NMR(CD3OD)は、17.07、18.77、33.55、43.27、56.50、71.50、112.89、124.10、127.94、129.07、129.25、129.34、129.59、129.66、130.18、131.60、132.78、137.60、143.30、161.11および169.70であった。
【0073】
(±)−[4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)フェニル]−メタノール
中間体A(n=1)
(±)−塩酸塩をそのメチルエステル(MeOH、極微量の硫酸、6時間の還流)に転換し、そのようにして得られた油状の遊離塩基(28g、tlc(2):Rf=0.46)を乾燥ジエチルエーテル(230ml)に溶かした。この溶液を、エーテル(140ml)中の水素化アルミニウムリチウム(1.8g)の懸濁液に、窒素雰囲気下においてゆっくり(2時間)と滴下した。18時間攪拌した後に、水(4.7ml)を加えて反応を急冷した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過し、乾燥するまで蒸発させると、(±)−[4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)フェニル]−メタノール(26g、収率98.9%)が油として得られ、これは除々に結晶化した。この融点は86.4℃、tlcは(2)0.32、そしてNMR(CDCl3)は、20.53、20.61、36.87、41.65、44.14、48.82、65.12、70.09、111.80、125.77、125.97、126.94、127.55、128.08、128.37、128.44、133.27、134.05、134.27、137.21および144.84であった。
【0074】
【化16】

【0075】
(±)−[4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)フェニル]−[C2H]メタノール
中間体d2−A(n=2)
重水素化リチウムアルミニウムを用いて(±)−4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−安息香酸のメチルエステルの前述した還元を繰り返すことによって、77%の収率で無色の非晶質の固体である(±)−[4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)フェニル]−[C2H]メタノールが得られ、tlcは(2)0.33であった。NMR(CDCl3)は、20.46、20.55、36.77、41.62、44.09および48.77であった。多重線は64.96、70.05、111.76、125.72、127.34、128.03、128.32、128.38、133.15、133.99、137.17、144.80および155.52にまとめられる。
【0076】
(±)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノール
中間体B(n=1)
メタノール(100ml)中の中間体A(9.1g)の溶液を、周囲条件下においてラネーニッケル(4.5g)で水素添加した。5時間後、薄層クロマトグラフィーによって水素化分解の完了が示された。触媒を濾別し、残った溶液を乾燥するまで蒸発させると油(6.95g、収率96.5%)が残り、これが徐々に結晶化して(±)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノールが得られた。この融点は50℃、tlcは(2)0.15、そしてNMR(CDCl3)は、19.42、19.83、33.22、39.62、42.27、48.27、65.19、118.32、126.23、126.55、127.47、128.33、132.50、144.47および155.38であった。
塩酸塩は、融点(分解と伴う)が187〜190℃である無色の結晶である。
【0077】
【化17】

【0078】
S−(−)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノール
(ラセミ系列について前述したようにしてS−(+)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸から調製された)S−(−)−[4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−フェニル]−メタノールを水素化分解すると、見出しの化合物が無色の固体として85%の収率で得られた。その融点は50℃以上、[α]D22=−19.8(c=1.0、エタノール)、そしてNMR(CDCl3)は、19.58、19.96、33.30、39.52、42.10、48.00、65.40、118.58、126.31、126.57、127.16、127.54、128.57、132.63、132.83、144.55および155.52であった。
S−(+)塩化塩は、無色で非吸湿性の固体であり、その融点は186.4℃(dec.)、[α]D22=+6.6(c=0.5、水)、そしてNMR(DMSO−d6)は、16.58、18.17、31.62、41.37、45.90、54.02、63.07、115.18、126.05、126.37、128.03、128.45、129.04、133.12、143.88および153.77であった。
【0079】
R−(+)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノール
(ラセミ系列について前述したようにしてR−(−)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸から調製された)R−(+)−[4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−フェニル]−メタノールを水素化分解すると、見出しの化合物が無色の固体として85%の収率で得られた。その融点は50℃以上、そして[α]D22=+21.3(c=1.0、エタノール)であった。
R−(−)塩化塩は、無色で非吸湿性の固体であり、その融点は179.8℃(dec.)、[α]D22=−7.2(c=0.5、水)、そしてNMR(DMSO−d6)は、16.59、18.19、31.64、41.38、45.92、54.07、63.08、115.19、126.07、126.39、128.04、128.46、129.05、133.13、143.89および153.79であった。
S−(+)−マンデレートは、融点が139.7℃、そして[α]D21=+38.3(c=1.0、エタノール)であった。
【0080】
(±)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシ[22]メチル−フェノール
中間体d2−B(n=2)
5ml中の乾燥ジエチルエーテル中の重水素化リチウムアルミニウム(0.1g、2.38mmol)の攪拌懸濁液を、室温で30分間、乾燥窒素雰囲気下において、乾燥ジエチルエーテル(5ml)中の(±)−4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−安息香酸メチルエステル(1.0g、2.17mmol)の溶液で処理した。室温でさらに18時間攪拌した後に、0.17mlの22Oを滴下することによって反応を急冷した。得られた沈殿物を濾別し、少量のエーテルで複数回洗浄し、そして有機相同士を合わせたもの乾燥するまで真空蒸発させると、(±)−[4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−フェニル]−[22]メタノールが淡い黄色の粘り気のある油が残り、この油は徐々に結晶化した。その融点は84.1℃、tlcは(2)0.33(出発材料は0.46)、収量は0.725g、そして収率は77.2%であった。NMR(CDCl3)は、20.46、20.55、36.77、41.62、44.09および48.77であった。多重線は64.30、70.05、111.76、125.72、125.94、126.92、127.34、127.71、128.03、128.32、128.38、133.15、133.99、137.17、144.80および155.52にまとめられる。
【0081】
メタノール(5ml)と湿ったラネーニッケル(0.1〜0.2g)との懸濁液中の上記(±)−[4−ベンジルオキシ−3−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−フェニル]−[22]メタノール(0.129g、0.29mmol)の溶液を、重水素ガス(22)の雰囲気下において室温で攪拌した。1時間後、tlcによって出発材料が完全に消失したことが示された。得られた混合物を濾過し、蒸発させ、そして得られた残留物をジエチルエーテル(5ml)に再度溶かした。この溶液を水で洗浄(2x5ml)し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、乾燥するまで蒸発させると、淡い黄色の油が収率74.6%で76.3mg残り、この油は徐々に固化して融点範囲が46〜49℃である無色の固体が得られた。tlcは(4)0.57(出発材料は0.77)であった。NMR(CDCl3)は、19.57、19.94、33.33、39.56、42.18、48.07および48.43であり、多重線は、64.61、118.47、126.29、126.58、127.55、127.94、128.38、132.53、144.53および155.37にまとめられる。GC−MS(P−CI、アンモニア、TMS誘導体)は、488.43(100%)、489.56(70%)、490.56(31%)および491.57(8%)であった。
【0082】
【化18】

【0083】
n=2、重水素
(±)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシ[22]メチル−フェノール
中間体d2−B
(iii)中間体Bへのヘック−キュプレート(Heck−Cuprate)経路
【0084】
【化19】

【0085】
N,N−ジイソプロピル−アクリルアミド
125mlのジクロロメタン中の塩化アクロイル(acroyl)(42.2g、40.6ml、0.467mol)の溶液を、ジクロロメタン(500ml)中のN,N−ジイソプロピルアミンの冷却(0〜5℃)された溶液にゆっくりと添加した。2時間後、沈殿したアンモニウム塩を濾別し、残った濾液を1Mの塩酸で洗浄(3x100ml)し、(硫酸ナトリウムで)乾燥させ、そして乾燥するまで蒸発させた。N,N−ジイソプロピル−アクリルアミドが収率48%、純度約99%で淡い黄色の液体として得られた。NMR(CDCl3)は、20.54、21.25、45.66、48.10、125.62、130.70、および166.17であった。
【0086】
(E)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メトキシカルボニルフェニル)−アクリルアミド
((E)−3−(2−ジイソプロピルカルバモイル−ビニル)−4−メトキシ安息香酸メチルエステル)
酸素を含まない乾燥した窒素ガスの雰囲気下において反応を実施した。すべての溶媒および試薬は乾燥させてから使用した。
【0087】
N,N−ジメチルグリシン(6.0mmol)と、無水酢酸ナトリウム(40mmol)と、3−ブロモ−4−メトキシ安息香酸メチル(20mmol、4.90g)と、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド(24mmol、3.72g)と、ビス−(ベンゾニトリル)−パラジウム−IIクロリド(1.5mol%)と、20mlのN−メチル−2−ピロリジノンとからなる攪拌懸濁液を、tlcによって出発材料を全く検知しなくなるまで、130℃で加熱した(出発材料である3−ブロモ−4−メトキシ安息香酸メチルはRf=0.73、およびN,N−ジイソプロピルアクリルアミドはRf=0.46、溶媒系(1)の場合)。室温まで冷却した後に、50mlの2N塩化水素水溶液を添加した。反応をジクロロメタン(50ml)で希釈し、沈殿した灰色のパラジウム金属を濾別した。有機相を5部(それぞれ50ml)の2N塩酸水溶液で洗浄し、(MgSO4で)乾燥させ、乾燥するまで蒸発させた。残った灰白色の固体を酢酸エチル/n−ヘキサンで再結晶化させると、4.40gの(E)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メトキシカルボニルフェニル)−アクリルアミド)が69%の収率で得られた。その融点は139〜140℃、tlcは(1)Rf=0.40、そしてNMR(CD2Cl2)は、21.22、22.10、46.39、48.87、52.59、56.61、111.42、123.39、123.78、125.54、130.32、132.53および135.07であった。MS(EI、DI、105℃)は、319(M+.、22)、304(6%)、276(8%)、219(100%)、187(18%)および160(7%)であった。
【0088】
(±)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メトキシカルボニルフェニル)−3−フェニルプロピオンアミド
((±)−3−(2−ジイソプロピルカルバモイル−1−フェニルエチル)−4−メトキシ安息香酸メチルエステル)
酸素を含まない乾燥した窒素ガスの雰囲気下において反応を実施した。すべての溶媒および試薬は乾燥させてから使用した。
【0089】
フェニルリチウム溶液(12ml、24mmol、シクロヘキサン/ジエチルエステル)をジエチルエーテル(40ml)中の臭化第1銅硫化ジメチル付加物(2.71g、13mmol)の冷却(0℃)および攪拌された懸濁液に添加することによってリチウムジフェニルキュプレートの暗緑色の溶液を調製した。この溶液を−78℃まで冷却した後に、まずジエチルエーテル(5ml)中のトリメチルクロロシラン(1.5ml、12mmol)の溶液を添加し、次に10mlのテトラヒドロフラン中の上記シンナミド(3.19g、10.0mmol、(E)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メトキシカルボニルフェニル)−アクリルアミド)の溶液を添加した。反応をー78℃で1時間攪拌し、室温まで温めてから塩化アンモニウムの150mlの飽和水溶液を添加することによって急冷した。90分後、有機相を2部(100ml)の塩化ナトリウムの半飽和水溶液で洗浄し、(MgSO4で)乾燥させ、乾燥するまで蒸発させた。黄色い油状の残留物を最少量の酢酸エチルに溶かし、シリカゲル(移動相(1))を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。見出しの化合物の留分同士を合わせたものを蒸発させると、(±)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メトキシカルボニルフェニル)−3−フェニルプロピオンアミドが粘度のある僅かに黄色いシロップ(1.8g、収率44%)として得られた。NMR(CD2Cl2)は、19.45、19.56、19.74、38.86、44.87、47.92、50.80、54.76、109.41、121.32、125.53、128.10、128.43、128.78、132.03、143.20、159.95、165.95および168.87であった。MS(EI、DI、105℃)は、397(M+.、41%)、366(5%)、322(2%)、269(3%)、255(14%)、237(7%)、165(5%)、128(12%)、91(43%)、および58(100%)であった。
【0090】
(±)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノール
20mlのテトラヒドロフラン中の(±)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メトキシカルボニルフェニル)−3−フェニルプロピオンアミド(0.79g、2.0mmol)の溶液を5℃まで冷却してから、2.5mlの1MのLiAlH4/THFで処理した。室温で18時間攪拌した後に、微粉末状の塩化アルミニウム(0.3g)を添加し、さらに4時間攪拌し続けた。反応を、5℃で水を滴下し次に水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによって急冷した。得られた混合物をジエチルエーテル(150ml)で希釈し、そして有機相を半飽和ブラインで洗浄し、(硫酸ナトリウムで)乾燥させ、そして乾燥するまで蒸発させると、見出しの化合物が固体の灰白色のフォームとして得られた。tlcは(2)0.16、融点は48〜51℃であった。この材料の一部を、融点が186〜189℃(dec.)である塩酸塩(エーテル塩酸)に転換した。
【0091】
S−(−)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノールの水素化分解的脱酸素化
S−(−)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノール(683mg、2.0mmol、[α]D22=−19.8(c=1.0、エタノール))、白金/炭素触媒(120mg)および酢酸(1.0ml)の混合物を酢酸エチル(50ml)で希釈し、その後、4バールの水素ガスの圧力下において室温で5時間水素添加した。触媒を濾別し、残った濾液を蒸発させると油が残った。この残留物をジクロロメタン(25ml)中に再度溶かし、得られた溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を乾燥するまで濃縮し、油状の残留物をエタノール(7ml)で回収した。D−(−)−酒石酸(300mg)を添加し、この透明な溶液を−25℃で保存すると、33%の収率でS−(−)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−メチルフェノールD−(−)−水素化酒石酸の無色の結晶(310mg)が得られた。tlcは(4)0.66(出発材料は0.31)、[α]D22=−26.7(c=1.0、メタノール)、そしてNMR(CD3OD)は、17.98、18.37、20.69、33.68、43.12、56.33、74.17、116.31、127.51、129.11、129.50、129.70、129.89、130.41、144.57、153.67および176.88であった。
この酒石酸塩の一部を炭酸水素ナトリウム水溶液で処理しそして酢酸エチルで抽出し、得られた抽出物を蒸発させることによって、その遊離塩基を無色の油として定量的収率で単離した。[α]D22=−26.3(c=1.0、メタノール)であった。
【0092】
本発明による3,3−ジフェニルプロピルアミン類を製造するための方法における好ましい中間体は、(±)−3−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸およびその塩、R−(−)−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸およびその塩、S−(+)−(2−ベンジルオキシ−5−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピオン酸およびその塩、および(±)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシ[C22]メチル−フェノール、S−(−)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシ[C22]メチル−フェノール、R−(+)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシ[C22]メチル−フェノールおよびこれらの塩である。
【0093】
実施例
a)フェノール系モノエステル
aa)一般的な手順
カルボン酸のエステル
60mlのジクロロメタン中の(±)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノール(中間体B、1.71g、5.01mmol)と酸塩化物(式IIの化合物のための5.00mmolのカルボン酸モノクロリド)との攪拌溶液を0℃まで冷却し、その後、10mlのジクロロメタン中に溶かしたトリエチルアミン(0.502g、式IIの化合物のための4.96mmol)を5〜10分間の間に滴下した。攪拌を室温で18時間続けた後に、得られた混合物を水(25ml)、炭酸水素ナトリウム水溶液(5%、25ml)、および水(25ml)で逐次的に洗浄した。その後、有機相を(硫酸ナトリウム)で乾燥させて、減圧下および低温で蒸発させた。このように形成された油状の残留物を、最後に高真空に(2〜4時間)曝して残留溶媒の残りを取り除いた。式IIのエステルは、無色〜淡い黄色の固体または粘性のあるシロップとして90%〜99%(tlc、HPLC、NMR)の純度で得られた。N−アシルアミノ酸のエステル
フェノール系モノエステル
0.7〜5mlのN,N−ジメチルホルムアミド中のそれぞれのアミノ酸(2.0ml)と0.5mlのトリエチルアミンとの溶液にクロロ蟻酸メチル(2.0mmol、288mg)を一度に5℃で添加した。同じ温度で2時間攪拌した後に冷却浴を取り除き、5mlのジクロロメタン中の中間体B(2.0mmol、682mg)とトリエチルアミン(0.5ml)との溶液を添加した。反応を2〜8時間攪拌した後に、ジエチルエーテル(70ml)で希釈した。固体の沈殿物を濾別し、得られた混合物を硫酸水素ナトリウム水溶液(5%)と水で洗浄した。(硫酸ナトリウムで)乾燥、濾過および真空中で蒸発させた後に、残留物をシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製した(溶離剤として溶媒系(4)を使用)。N−アシルアミノ酸エステルが、粘性のある油またはろう状の固体として24%〜73%の収率で得られた。
【0094】
bb)塩の形成(塩酸塩の例)
30mlの乾燥ジエチルエーテル中の4.94mmolのアミノ塩基の冷却された溶液(0℃)を、窒素雰囲気下において、4.70mmol(式IIのモノアミン)または9.4mmol(式II’のジアミン)のエーテル(1M)塩酸で処理した。油状の沈殿物を乾燥エーテルで繰返し洗浄した後に高真空中で蒸発させた。残留した生成物は、ほとんどの場合、固化して非晶質の泡状物になった。これらの高吸湿性の固体は、100℃(分解と伴う)を超える広い融点範囲を示す。
【0095】
以下の化合物は上記の方法に従って製造され、それらの分析データを以下に示す。
(±)−酢酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、tlc:Rf 0.47(4)、NMR(CDCl3):20.36、20.68、20.97、36.59、42.35、43.83、48.76、64.58、122.69、125.61、126.22、126.71、127.96、128.34、136.82、138.97、143.73、147.77、169.24;GC−MS/P−CI(アンモニア、トリメチルシリル誘導体):456.8(100%)、398.4(4%)。
【0096】
(±)−プロピオン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、tlc:Rf 0.52(4)、NMR(CDCl3):20.44、20.64、27.67、36.67、42.21、43.87、48.78、64.70、122.71、125.62、126.52、126.78、127.97、128.53、136.86、138.82、143.82、147.86、172.68;GC−MS/P−CI(アンモニア、トリメチルシリル誘導体):470.38(100%)、398.4(4%)。
【0097】
(±)−n−酪酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、tlc:Rf 0.43(4)、NMR(CDCl3):13.77、18.40、20.43、20.51、20.59、36.15、36.82、42.16、43.90、48.83、49.20、64.58、122.66、125.98、126.17、126.74、127.33、127.94、128.33、136.79、138.91、143.82、171.88;GC−MS/N−CI(メタン、トリメチルシリル誘導体):482.3(20%)、412.3(100%)、340.1(33%)、298.1(89%)、234.7(15%);GC−MS/P−CI(メタン、トリメチルシリル誘導体):484.5(100%)、468.4(62%)、394.3(22%);GC−MS/P−CI(アンモニア、トリメチルシリル誘導体):484.4(100%)、398.4(3%)。
【0098】
(±)−2,2−ジメチルプロピオン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、tlc:Rf
0.49(1)、NMR(CDCl3):20.46、20.66、26.53、27.34、37.12、39.21、41.46、43.98、48.81、64.65、122.42、125.58、126.16、126.92、128.37、134.27、136.92、138.82、143.97、148.02、176.97;GC−MS/P−CI(アンモニア、トリメチルシリル誘導体):498.8(100%)、482.5(10%)、398.4(3%)。
【0099】
(±)−2−アセトアミド酢酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
((±)−2−[ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニル−2−(アセチルアミノ)アセテート)
NMR(CD3OD):20.33、20.61、22.17、30.54、42.39、48.62、51.04、64.88、117.99、124.73、125.51、127.01、127.75、129.31、131.63、137.33、146.67、147.43、171.47、173.82。
【0100】
(±)−シクロペンタンカルボン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.66(4)、出発材料中間体B(0.50)、無色の油、収率:82%、NMR(CDCl3):20.42、25.87、30.25、36.57、41.89、43.97、47.15、49.02、64.63、122.56、125.60、126.16、126.81、127.60、127.94、128.35、128.77、136.74、138.88、143.85、147.92、175.05。
【0101】
(±)−シクロヘキサンカルボン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.67(4)、出発材料中間体B(0.50)、無色の油、収率:93%、NMR(CDCl3):20.27、25.40、25.74、29.03、29.16、36.29、41.82、43.31、44.08、49.36、64.62、122.56、125.68、126.22、126.92、127.92、128.38、136.65、139.00、143.72、147.86、174.40。
【0102】
(±)−安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.31(4);無色のシロップ(収率:99%、純度:>95%);冷却時にゆっくりと結晶化;NMR(CDCl3):20.41、20.51、36.65、42.42、43.85、48.79、64.70、122.79、125.74、126.17、126.83、128.13、128.28、128.58、129.48、130.25、133.62、137.21、139.10、143.67、148.00、164.99。
【0103】
R−(+)−安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.30(4);無色のシロップ
塩酸塩:無色の非晶質の固体;[α]D20=+14.9(c=1.0、クロロホルム);
NMR(CDCl3):17.06、17.53、18.25、18.61、31.23、42.19、45.49、54.26、54.53、64.09、122.55、126.77、127.13、127.58、128.10、128.50、128.72、128.78、129.02、130.17、133.96、134.27、140.81、142.13、147.91、165.40。
【0104】
(±)−4−メチル安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.30(4)、出発材料中間体B:0.24;収率:定量的、粘性のある淡い黄色の油;NMR(CDCl3):20.32、20.50、21.78、36.13、42.35、43.98、49.29、64.66、122.79、125.81、126.19、126.70、127.04、128.30、129.32、129.76、130.29、136.94、139.20、143.61、144.46、148.04、165.07。
LC−MS:459(M+.、3.5%)、444(17%)、223(2.5%)、195(2%)、119(48%)、114(100%)。
【0105】
(±)−2−メチル安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
粘性のある無色の油、tlc:(4)0.64(出発材料Rf=0.51)、収率84%、NMR(CDCl3):20.44、20.53、21.86、22.01、36.74、42.36、43.87、48.81、64.76、122.93、123.11、125.71、126.12、126.88、128.10、128.48、130.76、131.26、131.70、132.03、132.79、137.28、139.00、141.73、143.72、148.04、165.25;LC−MS:459(M+.、21%)、444(100%)、326(1%)、223(10%)、213(6%)、195(9%)、165(14%)、115(94%)、91(99%)。
【0106】
(±)−2−アセトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
無色のシロップ、tlc:(4)0.47(出発材料Rf=0.51)、収率82%、NMR(CDCl3):20.39、20.57、20.96、36.92、42.29、43.88、48.87、64.64、122.39、122.64、124.05、125.80、126.11、126.75、128.09、128.32、132.23、134.66、137.27、139.32、143.64、147.63、151.37、162.72、169.73;LC−MS:503(M+.、7%)、488(59%)、446(6%)、326(22%)、223(9%)、213(9%)、195(9%)、163(14%)、121(100%)、114(88%)。
【0107】
(±)−1−ナフトエ酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
無色の粘性のある油、tlc:(4)0.57(出発材料Rf=0.51)、収率82%、NMR(CDCl3):20.46、20.58、36.82、42.46、43.89、48.76、64.81、122.98、124.51、125.64、125.79、125.98、126.15、126.44、126.94、128.12、128.36、128.65、131.37、131.82、133.98、134.45、137.44、139.08、143.73、148.13、165.49;LC−MS:495(M+.、8%)、480(100%)、213(7%)、165(8%)、155(95%)、127(100%)、114(90%)。
【0108】
(±)−2−ナフトエ酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
無色で淡い黄色の粘性のある油、tlc:(4)0.57(出発材料Rf=0.51)、収率71%、NMR(CDCl3):20.47、20.59、36.71、42.59、43.85、48.81、64.82、122.89、126.89、127.89、128.19、128.41、128.68、129.50、132.03、132.55、135.87、137.22、139.08、143.83、148.20、165.14;LC−MS:495(M+.、7%)、480(98%)、223(8%)、213(6%)、195(6%)、165(8%)、155(96%)、127(100%)、114(81%)。
【0109】
(±)−4−クロロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.54(4)、出発材料中間体B:0.44;収率:定量的、粘性のある淡い黄色の油;NMR(CDCl3):20.34、20.50、36.41、42.51、43.84、48.93、64.66、122.72、125.82、126.88、127.27、128.06、128.56、128.96、131.60、133.80、136.95、139.30、140.16、143.60、147.87、164.10;LC−MS:479(M+.、1.5%)、464(10%)、223(2%)、195(2%)、165(1.5%)、139(25%)、114(100%)。
【0110】
(±)−4−メトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.47(4)、出発材料中間体B:0.42;収率:89%、粘性のある淡い黄色の油;NMR(CDCl3):20.31、20.47、36.43、42.39、43.90、48.97、55.53、64.71、121.79、122.86、125.72、126.14、126.79、128.11、128.27、131.27、131.77、132.36、132.84、137.15、139.01、143.74、148.08、163.92、164.71;LC−MS:475(M+.、3.5%)、460(20%)、223(2%)、195(2%)、135(48%)、114(100%)。
【0111】
(±)−2−メトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.40(4)、出発材料中間体B:0.42;収率:98%、粘性のある淡い黄色の油;NMR(CDCl3):20.29、20.42、36.50、41.92、44.02、49.09、55.95、64.72、119.10、120.20、122.86、125.64、126.10、126.82、128.06、128.30、132.38、134.32、137.11、139.01、143.87、148.00、159.82、164.40;LC−MS:475(M+.、3.5%)、460(18%)、223(1%)、195(1%)、135(49%)、114(100%)。
【0112】
(±)−4−ニトロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.44(4)、出発材料中間体B:0.42;収率:78%、ゆっくりと固化する粘性のある黄色の油;融点:123.6℃;NMR(CDCl3):20.47、20.62、36.52、42.66、43.70、48.75、64.69、122.61、123.72、125.91、126.33、127.04、128.02、128.37、131.32、134.86、136.83、139.55、143.56、147.75、150.93、163.04;LC−MS:490(M+.、1.5%)、475(15%)、327(0.8%)、223(3%)、195(3%)、150(15%)、114(100%)。
【0113】
(±)−2−ニトロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
tlc:Rf 0.32(4)、出発材料中間体B:0.42;収率:92%、ゆっくりと固化する粘性のある黄色の油;NMR(CDCl3):20.39、20.50、36.74、42.14、43.89、48.71、48.92、64.59、122.15、123.95、124.18、125.89、126.25、127.23、127.99、128.39、129.95、132.95、133.08、136.72、139.62、143.64、147.63、148.15、163.90;LC−MS:490(M+.、1%)、475(11%)、327(2.5%)、223(2.5%)、195(3%)、165(3%)、150(7%)、114(100%)。
【0114】
(±)−N−アセチルグリシン−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル/(±)−2−アセトアミド酢酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
((±)−2−[ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニル−2−(アセチルアミノ)アセテート)
NMR(CD3OD):20.33、20.61、22.17、30.54、42.39、48.62、51.04、64.88、117.99、124.73、125.51、127.01、127.75、129.31、131.63、137.33、146.67、147.43、171.47、173.82。
f)カルバメートおよびカーボネート
モノN−置換カルバメート
【0115】
ジクロロメタン(20ml)中の4.0mmolの中間体Bの溶液を、室温で16時間、イソシアネート(4.8mmol)またはジイソシアネート(2.2mmol)で処理した。10mlの炭酸水素ナトリウム水溶液(5%、w/v)で洗浄し、(Na2SO4で)乾燥させて蒸発させると、遊離塩基の油状の残留物または無色の固体が得られた。
N−二置換カルバメート
N,N−ジアルキル−カルバモイルクロリド(4.4mmol)をジクロロメタンに溶かし、そして中間体B(4.0mmol)と、ジクロロメタン(30ml)と、トリエチルアミン(7.0mmol、0.71mg、1ml)とからなる冷却(0℃)および攪拌された混合物に滴下した。攪拌は6時間行った。次に、得られた混合物を5部(10ml)の炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、(硫酸ナトリウムで)乾燥させ、濾過し、蒸発させると、カルバメートが無色の油または固体として得られた。
【0116】
同様にして、中間体Bと過剰のイソシアネート(4.8mmol)および溶媒としてトルエンを用いて、65℃、18時間の条件下においてビス−カルバメートを製造した。
カーボネートは、式II〜IVの化合物の製造について説明された方法に従って製造および処理された。アルキルクロロホーメートがアシル化試薬として使用された。
【0117】
塩酸塩
得られた油または固体をテトラヒドロフラン(10ml)に再度溶かした。エーテル塩酸を添加し、乾燥するまで真空で蒸発させると、結晶質または非晶質のカルバメートが得られた。
特に、以下の化合物を製造した。それらの分析データを以下に示す。
(±)−N−エチルカルバミン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、tlc:Rf=0.38(4);GC−MS/P−CI(アンモニア、トリメチルシリル誘導体):486.8(100%)、413.4(5%)、398.4(6%);塩酸塩:融点(分解を伴う)64℃;NMR(DMSO−d6):15.16、16.68、18.05、18.13、25.33、31.26、35.46、53.94、62.65、67.22、123.04、125.70、126.72、127.86、128.67、135.42、136.02、140.07、142.98、147.53、154.52。
【0118】
(±)−N,N−ジメチルカルバミン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
NMR(CDCl3):20.34、20.66、30.51、36.33、36.77、42.00、48.28、50.21、65.65、119.83、123.44、125.19、126.60、127.38、127.54、129.31、136.62、143.33、150.99、155.67。
(±)−N,N−ジエチルカルバミン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル
NMR(CDCl3):20.54、20.66、30.49、35.61、42.42、48.31、50.20、65.56、119.43、123.40、125.33、126.66、126.99、127.05、136.30、143.27、149.13、154.97。
【0119】
(±)−N−フェニルカルバミン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル;NMR(CDCl3):20.52、20.61、36.91、39.44、42.25、48.22、62.66、118.36、119.46、123.50、125.32、127.11、127.99、130.15、132.63、139.65、141.33、145.16、152.21、156.00。
【0120】
(±)−炭酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステルエチルエステル、Rf=0.67(4)
【0121】
II. ヒトの肝臓のS9−留分を用いた本発明の異なる化合物の培養
a)非標識基質の培養
集められたヒト肝臓S9−製剤が本発明の異なる化合物のインビトロ代謝を示すためにかつ酵素的製法による活性代謝産物の生成を証明するために用いられた。
この集められたヒト肝臓S9−製剤は、アメリカ、マサチューセッツ州、ウォバーン(Woburn)市にあるゲンテスト(Gentest)社から提供された。
通常の分析において、25μLの集められたヒト肝臓S9(20mgのタンパク質/mL、H961、ゲンテスト社、ウォバーン市、マサチューセッツ州、アメリカ)を、0.01Mの硫酸カリウム緩衝液中の40μMの基質を用いて、NADPH(1mM)の存在下において、37℃で2時間培養した。その後、濃過塩素酸を添加して反応を急冷し、沈殿したタンパク質を遠心分離して取り除いた。上澄み液を濃リン酸カリウム溶液でpH=3に調整し、遠心分離し、HPLCに投入して各生成物の分析を行った。
非重水素化化合物の分析を紫外線検出を用いた通常の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって行った。
理論代謝転換(theoretical turnover)の(%)で表された培養結果を図1に示す。
これらの培養結果は96〜63.2%の範囲に亘っていた。活性代謝産物の形成は、各化合物のベンジル系側とフェノール系側と両方における置換基に依存している。
【0122】
説明
分析に導入されるプロドラッグは、以下の化学的構造を示す。
【0123】
【化20】

【0124】
化学構造 X−/−Y
AcO−/−OAcはアセテートを意味し、HO−/−OButはヒドロキシと−ブチレートを意味し、HO−/−OiButはヒドロキシとイソ−ブチレート(参考)を意味し、HO−/−OPropはヒドロキシとプロピオネートを意味し、HO−/−OAcはヒドロキシとアセテートを意味する。
【0125】
b)標識基質の培養
非標識ヒドロキシ代謝産物(すなわち中間体B)の代謝分解と重水素化ヒドロキシ代謝産物(中間体d2B)の代謝分解とをインビトロで比較した。使用したのは各鏡像異性体とラセミ体であった。
このヒドロキシ代謝産物と重水素化ヒドロキシ代謝産物は、対応するカルボン酸を生成する速度にかなりの差があることを示した。
測定は、3時間の培養時間、37℃、40μMの濃度という条件で行われた。重水素化ヒドロキシ代謝産物からのカルボン酸の形成は、速度の減少が10%とかなりのものであることを示した。
【0126】
これらのインビトロ実験は、インビトロでの上記重水素化化合物の代謝回転が低減し、これによって血漿のレベルが高くなる可能性があることを示している。
c)受容体結合の研究
WO94/11337には、活性代謝産物がモルモットの膀胱のムスカリン様受容体に対して高い親和性を有することが開示されている。本発明の異なる複数の化合物を、よく確立された標準的な分析において試験し、組換型のヒトのM3受容体に対する[3H]−メチルスコポルアミンの結合を測定した。ヒトのムスカリン様M3受容体をエンコードするプラスミドに形質移入されたBSR−M3H細胞を用いて、改質トリス−HClのpH7.4の緩衝液において、通常の手段を用いて膜を調製した。この膜調製物の既知小量を、本発明の幾つかの異なる種類の化合物の異なる濃度の存在下または非存在下において、[3H]−メチルスコポルアミンを用いて25℃で60分間培養した。1μMのアトロピンの存在下において非特異的結合が推察された。膜を濾過し、3回洗浄して、使用してフィルターの数を数えて特異結合した[3H]−メチルスコポルアミンの量を求めた。以下の表に、M3受容体の結合分析における本発明のいくつかの化合物のIC50値を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
これらのデータによって、フェノール系ヒドロキシル部分における変性(derivatization)によって結合の強さが約20倍以上弱くなる。両方の官能基が変性された場合、結合力はさらに急激に低減する。さらに、活性代謝産物の鏡像異性体同士は、ヒトのM3受容体に対する結合特性において顕著な違いを示すことが確認される。
これらの化合物を、それらの抗コリン活性について、モルモットの回腸を用いた標準的な組織分析法で試験した。回腸の一部は、頚部の脱臼によって絶命したダンカンハートレイ(Duncan Hartley)モルモットから採取された。この組織を、1gの圧力下において、クレブス液(pH:7.4、32℃)の入った10mlの浴の中に設置し、異なる複数の化合物のメタコリンにより誘起される(0.6μM)収縮応答を低減させるための濃度依存能力が記録された。異なる複数の物質についてのIC50値を計算した。例を以下の表に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
これらのデータによって受容体結合分析において得られた結果が確認され、変性が増大するにつれて化合物の抗コリン活性が低下することが証明される。
d)生体膜(参考)
本発明の異なる複数の化合物を、それらのヒトの皮膚(厚さ200μm)を貫通する能力について、ティエメッセンら(Tiemessen et.al.)による32℃での「細胞内流動(”Flow thgrough cell”)」(Acta Pharm.Technol.1998; 34:99−101)において試験した。ホスフェート緩衝液(pH:6.2)を受容体媒体として使用した。試料を異なる時点で取り出し、紫外線検出(220nm)を用いたRP−HPLCによって分析した。透過全体像を作成し、異なる複数の物質の平均流出速度を直線回帰分析法によって計算した。本発明の異なる複数の化合物について得られたデータの概要を以下の表に示す。
【0131】
【表3】

【0132】
HO−/−OHのヒドロキシ基のニ置換によって、親基のHO−/−OHに関して皮膚透過率が20倍以上に高くなる。驚くべきことに、フェノール系ヒドロキシ基の単置換によってヒトの皮膚に対する透過率が50倍とさらに高くなった。
まとめると、これらの生体データは、本発明の化合物はヒトのムスカリン様M3受容体に結合するための親和力が低いことを示している。これらの化合物は、生体膜、例えばヒトの皮膚に対する浸透力が高められており、そしてヒト肝臓S9製剤によるインビトロ代謝によって示されるように、これらの化合物が一旦体循環に侵入すると急速に活性代謝産物に代わることになる。
このように、本発明による抗ムスカリン様プロドラッグは、優れたプロドラッグを規定するプロファイルを示した。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】ヒト肝臓S−9製剤によるインヒドロ代謝における理論代謝転換(theoretia turnover)の(%)で表わされた培養結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

ここでRは水素であり、R’は、
a)C〜Cアルキル、C〜C10シクロアルキル、置換または非置換ベンジル、アリルまたは炭水化物基、または
b)ホルミル、C〜Cアルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、置換または非置換アリールカルボニル、好ましくはベンゾイル、または
c)C〜Cアルコキシカルボニル、置換または非置換アリールオキシカルボニル、ベンゾイルアシル、ベンゾイルグリシル、置換または非置換アミノ酸残基、または
d)下記式
【化2】

ここでRおよびRは、独立に、水素、C〜Cアルキル、置換または非置換アリール、好ましくは置換または非置換フェニル、ベンジルまたはフェノキシアルキルを表し、このアルキル残基の炭素数は1〜4であり、そしてRおよびRは、該アミン窒素と一緒になって環を形成してもよい、
で表される基、または
e)下記式
【化3】

ここでRおよびRは、独立に、C〜Cアルキル、置換または非置換アリール、好ましくは置換または非置換フェニル、ベンジルまたはフェノキシアルキルを表しそしてこのアルキル残基の炭素数は1〜6である、
で表される基、または
f)無機酸のエステル部分、
g)R、RおよびRが、独立に、C〜Cアルキルまたはアリール、好ましくはフェニルから選択される−SiR基、
から選択される、但しR’はメチルまたはベンジルまたはイソプロピルカルボニルではなく、
Xは、式Ia
【化4】

ここでRおよびRは、互いに同じまたは異なっていてもよく、かつ合わせて3つ以上の炭素原子を含有する非芳香族ヒドロカルビル基を表し、そしてRおよびRは、該アミン窒素と一緒になって環を形成してもよい、
で表される三級アミノ基を表し、
Aは水素(H)または重水素(H)を表す、
で表される3,3−ジフェニルプロピルアミン類、および
その生理的に許容できる酸との塩、その遊離塩基、および該化合物が光学異性体の形態にある場合のラセミ混合物および各鏡像異性体。
【請求項2】
Xが、下記式
【化5】

で表される基である、請求項1に記載の3,3−ジフェニルプロピルアミン類。
【請求項3】
一般式II
【化6】

ここでRは、水素、C〜Cアルキル(但し、イソプロピルを除く)またはフェニルを表す、
で表されるフェノール系モノエステルから選択される、請求項2に記載の3,3−ジフェニルプロピルアミン類。
【請求項4】
(±)−ギ酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−酢酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−プロピオン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−n−酪酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2,2−ジメチルプロピオン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−アセトアミド酢酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−シクロペンタンカルボン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−シクロヘキサンカルボン酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、R−(+)−安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−4−メチル安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−メチル安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−アセトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−1−ナフトエ酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−ナフトエ酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−4−クロロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−4−メトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−メトキシ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−4−ニトロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステル、(±)−2−ニトロ安息香酸−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステルから選択される、請求項1に記載の3,3−ジフェニルプロピルアミン類。
【請求項5】
請求項3において定義されるとおりの一般式II
【化7】

で表されるフェノール系モノエステルを製造するための方法であって、下記式
【化8】

で表される化合物を、下記式
【化9】

ここでLGは、ハロゲン化物、カルボキシレートおよびイミダゾリドから選択される脱離基を表し、そしてRは請求項3において定義されたものと同じである、
で表される化合物から選択されるアシル化剤の等当量を用いて、不活性溶媒中で縮合剤の存在下において処理する方法。
【請求項6】
薬学的に活性な物質として、特に抗ムスカリン剤として使用される、請求項1〜4のいずれかに記載の3,3−ジフェニルプロピルアミン類。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の3,3−ジフェニルプロピルアミン類および相溶性のある薬学的担体とを含有する薬学的組成物。
【請求項8】
抗ムスカリン様作用薬を調製するための請求項1〜4のいずれかに記載の3,3−ジフェニルプロピルアミン類の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2007−204481(P2007−204481A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39857(P2007−39857)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【分割の表示】特願2000−548284(P2000−548284)の分割
【原出願日】平成11年5月11日(1999.5.11)
【出願人】(500102697)シュヴァルツ・ファルマ・アクチエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】