説明

3D映像生成システム

【課題】3Dグラフィクスハードウェア等を使用できない表示機器においても3D表現による視差画像等を動的に合成でき、メニューやアイコンなどに様々な視覚エフェクトを適用することが可能な3D映像生成システムを提供する。
【解決手段】3D画像を処理可能な3D情報処理装置と、2D画像を処理可能な2D画像表示装置とを通信可能に接続し、前記3D情報処理装置では、3Dオブジェクトに対して1以上のカメラアングルを設定し、前記各カメラアングルで撮影した視野画像である2D画像を出力し、前記カメラアングルから少なくとも構成されるパラメータを出力するように構成する一方、前記2D画像表示装置では、送信された2D画像及びパラメータを読み込み、指定された2つの2D画像間での複数の遷移画像を、前記パラメータに含まれるカメラアングルから生成し、前記2D画像間で連続的に変化する映像を生成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビや携帯電話など3Dグラフィックスハードウェアが使用できない表示機器に動的に3D映像を生成する3D映像生成システム及び3D映像生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゲームやアニメーションなどにおける3D表現は、3DCGポリゴンデータを3Dグラフィクスハードウェアによって2D画像として描画することによって実現している。
【0003】
一方、3Dテレビや携帯電話等の表示機器では、高度なCPUやグラフィックエンジン、多量のメモリ等を価格の点から搭載しにくく、多くの演算を必要とする3DCGポリゴンモデルは事実上使用できないため、従来、これらの表示機器では、アイコンやキャラクタ等に代表されるオブジェクトのアニメーション映像効果や視差画像を得るために、3Dオーサリングツールによってあらかじめ作成したムービーを再生するようにしている。
【0004】
ところが、このような規定のムービーであると、オブジェクトの視点を変えたいとか、オブジェクトの姿勢を変化させたいといった映像内容の動的な変更要求に対応することができない。これは、立体視のための視差の変更のために3D表現を動的に調整する必要がある3Dテレビなどの表示機器において、特に解決が必要な問題である。
【0005】
そこで、モーフィングによって2D画像を擬似的に3D映像化する技術が開発されてきている。例えば特許文献1〜3では、キャラクタの状態が割り当てられた画像群から、モーフィングを用いて中割り画像を生成する技術が紹介されているし、その他、モーフィングに関しては、動きを自然化するための様々な手法が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−145650号公報
【特許文献2】特開2002−197489号公報
【特許文献3】特開平10−261102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなモーフィングでは、自由視点でのオブジェクトの3D映像化が難しい。様々な姿勢や状態の異なる画像にメタ情報(状態や姿勢)を付加する手法等も考えられてはいるが、アニメーションが複雑または長大になると、不自然な状態や姿勢が含まれやすくなる。
【0008】
本発明は、かかる課題を鑑みてなされたものであって、3Dグラフィクスハードウェア等を使用できない表示機器においても3D表現による視差画像等を動的に合成でき、メニューやアイコンなどに様々な視覚エフェクトを適用することが可能な3D映像生成システムを提供することをその主たる目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、3D画像を処理可能な3D情報処理装置と、2D画像を処理可能な2D画像表示装置とを通信可能に接続して構成された映像システムであって、
前記3D情報処理装置が、複数の姿勢の3Dオブジェクトを生成するとともに前記各姿勢の3Dオブジェクトそれぞれに互いに対応する1以上の制御点を設定する3Dオブジェクト登録部と、前記3Dオブジェクトについて、一の姿勢から遷移可能な他の姿勢を定義する状態遷移定義部と、前記3Dオブジェクト登録部において設定された3Dオブジェクトの姿勢ごとに、1以上のカメラアングルを設定するカメラアングル設定部と、前記各カメラアングルで撮影した視野画像である2D画像を出力する2D画像出力部と、前記状態遷移定義部で定義された状態遷移情報及び各2D画像に対応して設定されたカメラアングルから少なくとも構成されるパラメータを出力するパラメータ出力部とを具備したものであり、
前記2D画像表示装置が、前記2D画像出力部から送信された2D画像を読み込む画像読込部と、前記パラメータ出力部から送信された前記パラメータを読み込むパラメータ読込部と、指定された2つの2D画像間での複数の遷移画像を、前記パラメータに含まれる状態遷移情報及びカメラアングルから生成し、前記2D画像間で連続的に変化する映像を生成する映像生成部とを具備したものであることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、3Dグラフィクスハードウェアを持たず、3D画像、すなわち3次元情報を有する画像を、3次元情報を保持させたまま、変形や視点変更のできない2D画像表示装置でも、任意の視点における3Dアニメーション映像等を、装置内部の2D画像処理演算で生成できる。これは、3D情報処理装置側で、3D画像を、2D画像演算できるだけの処理を施した後、2D画像にして送信するからである。
前記2D画像演算処理とは、例えばステレオ視やイメージモーフィングの手法を組み合わせによる2D画像の変形処理や合成処理のことである。
【0011】
また、キャラクタにさまざまな動きを加えるアニメーション映像を静止画から合成する場合、姿勢の異なる多くの静止画像を違和感無く合成させなければならない。本実施形態では、状態遷移を用いた合成規則を定義できるので、姿勢の異なる画像群の違和感無く合成させることが可能である。
【0012】
本発明は、姿勢変更を伴わず、カメラアングル、すなわちカメラ視点のみ変更した場合の遷移3D画像も生成することができる。その場合は、前記3D情報処理装置が、3Dオブジェクトに対して1以上のカメラアングルを設定するカメラアングル設定部と、前記各カメラアングルで撮影した視野画像である2D画像を出力する2D画像出力部と、前記カメラアングルから少なくとも構成されるパラメータを出力するパラメータ出力部とを具備したものであり、
前記2D画像表示装置が、前記2D画像出力部から送信された2D画像を読み込む画像読込部と、前記パラメータ出力部から送信された前記パラメータを読み込むパラメータ読込部と、指定された2つの2D画像間での複数の遷移画像を、前記パラメータに含まれるカメラアングルから生成し、前記2D画像間で連続的に変化する映像を生成する映像生成部とを具備したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、3D情報処理装置と2D画像表示装置とでの機能分担を巧みに設定しているので、2D画像表示装置で、3D表現によるオブジェクトの視差画像や変形遷移画像を、例えばユーザの操作によって動的に、都度生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における3D映像生成システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】同実施形態におけるオーサリングツールの機能ブロック図である。
【図3】同実施形態におけるオーサリングツールの動作を示すフローチャートである。
【図4】同実施形態における2D画像表示装置の機能ブロック図である。
【図5】同実施形態における2D画像表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】同実施形態における遷移規則を示す例示図である。
【図7】同実施形態における状態遷移図である。
【図8】同実施形態における状態遷移表である。
【図9】同実施形態において、異なる視点から撮影した2つの画像が存在するときの別の視点の画像を生成するための手法を説明するための説明図である。
【図10】状態遷移と視差の補間とを組み合わせた制御点群の電化製品側での動作、すなわち計算方法を説明するための説明図である。
【図11】同実施形態において、目的の画像の補間制御点群が算出されているときの電化製品側での動作、すなわち補間画像の合成方法を説明するための説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態における3D映像生成システムの全体構成を示す構成図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態における3D映像生成システムの全体構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る映像生成システムの全体構成を概略的に表したものである。
この映像生成システムは、メニューやアイコンなど表示機器のGUIにかかわるコンテンツの生成と利用に主として用いられるものである。
【0016】
図1中、3D情報処理装置たる汎用計算機400は、ハードウェア的には、CPUやメモリ、ディスプレイ、入力機器等を具備するものであり、前記メモリに格納されたプログラムに従ってCPUが周辺機器と協働することによって、視差画像やアニメーション画像を動的に合成するための画像群および各種パラメータ500を出力するための編集ソフトウェアである3DCGモデルオーサリングツール100としての機能を発揮する。
【0017】
2D画像表示装置たる電化製品200は、画像表示機能で言えば、一般的な2D画像の表示機能のみを備え、画像群および各種パラメータ500を処理するための処理能力を持つプロセッサを備えたものである。しかして、この電化製品200が有する後述の各部としての機能は、汎用計算機400同様、メモリに格納されたプログラムに従ってCPUが周辺機器と協働することによって得られるものである。なお、この電化製品200において表示されるメニューやアイコンなどは、リモコンなどの外部操作機器(または機器上の操作パネルなどの内部操作機器)300によって与えられる動作イベント600に従い、表示内容が動的に変更される。
【0018】
<オーサリングツール100について>
次に、3DCGモデルオーサリングツール100が有する機能について、図2を参照しながら説明する。
【0019】
3DCGポリゴンモデル作成部101では、電化製品200において表示させたいキャラクタ等の3Dオブジェクトの作成を支援する。具体的にこのものは、オペレータによる3Dオブジェクトの作成操作に係る支援をし、完成した3Dオブジェクトをメモリの所定領域に登録する。ここで3Dオブジェクトとは、3次元情報を有するオブジェクトのことである。
【0020】
制御点登録部102では、電化製品200における画像処理のために必要な制御点が3DCGポリゴンモデルに登録される。この制御点の設定は、この制御点登録部102が自動で行っても良いし、オペレータの指定を受け付けて、それをこの制御点登録部102が登録するようにしても良い。3DCGポリゴンモデルに登録された3D空間上の制御点は、カメラの内部パラメータおよび外部パラメータから得られるカメラ行列によって容易に2D画像に射影できる。
【0021】
3DCGポリゴンモデル編集部103では、作成した3DCGポリゴンモデルの姿勢が変更される。ここでいう姿勢とは、オブジェクトの向きだけでなく、立つ・座るなどの変形をも含む意味である。この姿勢変更の設定は、この3DCGポリゴンモデル編集部103が自動で行っても良いし、オペレータの操作にしたがって、3DCGポリゴンモデル編集部103が姿勢を変更するようにしても良い。このとき、姿勢の変更に応じて頂点も移動するため、頂点に定義づけられた制御点も移動する。
状態登録部104では、3DCGポリゴンモデル編集部103において決定した姿勢が、アニメーションにおける基準状態(基点)として登録される。
【0022】
なお、請求項1で言う3Dオブジェクト登録部とは、以上の3DCGポリゴンモデル作成部101、制御点登録部102、3DCGポリゴンモデル編集部103及び状態登録部104を具備するものである。
【0023】
状態遷移定義部105では、前記状態登録部104において登録した状態間をどのように移動するか遷移関係が定義される。この定義は、オペレータの指示によってよいし、状態遷移定義部105が自動で定義しても良い。電化製品200がある状態から別の状態への遷移映像を表示する場合、定義された状態遷移規則を元に画像間の遷移経路を決定することで、意図した遷移映像を生成できる。
【0024】
カメラアングル設定部106では、電化製品200において表示させる視野範囲を満たすカメラアングルを設定する。カメラアングルの設定はオペレータの指示にしたがって行ってもよいし、このカメラアングル設定部106が自動で行っても良い。電化製品200で生成される視野画像の精度は、カメラアングル設定部106で設定されたカメラアングルのサンプル数に依存する。
【0025】
2D画像出力部107では、状態登録部104において登録された3DCGポリゴンモデルの姿勢ごとに、カメラアングル設定部106において設定したカメラアングルで撮影した視野画像を出力する。出力画像は、状態をm個、カメラアングルをn個としたとき、m×n枚である。
【0026】
各種パラメータ出力部108では、状態登録部104によって登録された状態や、状態遷移定義部によって定義された状態遷移表、およびカメラアングル設定部106によって設定されたカメラパラメータが出力される。
次に、かかる3DCGモデルオーサリングツール100によるデータ作成の流れの一例を図3を参照しながら説明する。
【0027】
まず、オペレータの指示によって使用するキャラクタやオブジェクトの3DCGポリゴンモデルを作成し(S101)、作成した3DCGポリゴンモデルの頂点のいくつかを、制御点として定義する(S102)。これは、電化製品200における画像の合成処理に必要となる。
【0028】
次に、オペレータの指示により、3DCGポリゴンモデルに形状の変形を加え代表的な姿勢を与える(S103)。このときのモデルの姿勢を状態として登録する(S104)。このとき、3DCGモデルオーサリングツール100は、登録した姿勢を再現するために必要な変形処理(変換行列)をメモリに記憶する。新たな姿勢を、アニメーションの生成に必要な数だけ、手順S103、S104を繰り返して登録していく(S105)。
【0029】
そして、キャラクタやオブジェクトの3DCGモデルが、登録した姿勢間をどのように遷移するかをオペレータの指示により定義する(S106)。状態間の遷移についての説明は、後述する。
【0030】
次に、オペレータの指示によって、状態間の遷移によるアニメーション命令セットを作成する(S107〜S109)。アニメーション命令セットは、単純なテキストコマンドであるため、オペレータは、3DCGモデルオーサリングツール100以外のツールでも作成できる。そのため、本ツールにおいて設定の必要が無ければこれらの処理は省略できる。
【0031】
次に、本ツール100が出力する2D画像のカメラアングルについて登録する(S110)。また、立体視のための視差画像や自由視点映像が必要な場合、必要な数のカメラアングルを追加する(S111)。
【0032】
そして、登録した状態の姿勢に変形した3DCGポリゴンモデルを、登録したカメラアングルで撮影し、その2D画像を出力し(S112)。電化製品200における画像の合成処理に必要となる各種パラメータを出力する(S113)。各種パラメータとは、モデルの状態と状態遷移表、アニメーション命令セット、カメラパラメータである。
【0033】
<電化製品200について>
次に、2D画像表示装置たる電化製品200が有する機能について、図4を参照しながら説明する。
画像読込部201は、3DCGモデルオーサリングツール100が2D画像出力部107において出力した画像群を読み込む。
各種パラメータ読込部202は、3DCGモデルオーサリングツール100が各種パラメータ出力部108において出力したパラメータ群を読み込む。
初期画像生成部203は、読み込んだ画像と各種パラメータから、イベントのアイドル状態のときのパラメータに従って初期画像を生成する。
【0034】
動作イベント処理部204は、外部操作機器(または機器上の操作パネルなどの内部操作機器)300が動作イベント出力部301において出力する動作イベント600を読み込む。
動作設計部205は、読み込んだ動作イベント600に従い、画像合成のためのパラメータ条件や遷移命令コマンドを設定する。
視差処理部206は、読み込んだ動作イベントや電化製品200が要求する視点でのカメラアングルとカメラ行列を設定する。
2D画像生成部207は、動作設計部205で設定した合成順序と、視差設定部206で設定したカメラアングルで2D画像を合成する。
なお、特許請求項1で言う映像生成部とは、前記動作設計部205、視差処理部206、及び2D画像生成部207を具備したものである。
かかる電化製品200による画像作成の流れを、図5を参照しながら説明する。
【0035】
まず、3DCGモデルオーサリングツール100により作成された2D画像群を通信等を介して受信し読み込む(S201)。次いで、3DCGモデルオーサリングツール100により作成された各種パラメータを同様に読み込む(S202)。そして、読み込んだ2D画像群と各種パラメータから、動作イベントのアイドル状態のときの初期パラメータに従って初期画像を生成し表示する(S203)。なお、生成手順は、初期パラメータの条件に従いS207以下を実行する。
【0036】
次に初期画像を表示し、入力待ち状態に移行する(S204)。そして、電化製品200のユーザから入力された動作イベント命令のうち、状態遷移に関する命令コマンドに従い、画像間の遷移命令コマンドを設定する(S206)。
【0037】
次に、入力された動作イベント命令が要求するカメラアングルに基づき、カメラ行列を作成する(S207)。S206で設定した遷移規則に従い、遷移が終了するまで連続画像を生成する(S208、S209)。入力された動作イベント命令が、複数の視差映像を必要とする場合、新たなカメラアングルについてS207〜S209の操作を実行する(S210)。最後に連続画像を2D映像として画面に出力する(S211)。
以上が、3DCGモデルオーサリングツール100及び電化製品200の構成である。
【0038】
<具体的な状態遷移の設定例>
次いで、画像遷移アニメーションを制御するための状態遷移の概念について、図6〜9を参照しながら動物のキャラクタを例に説明する。
【0039】
図6においてキャラクタの初期状態(アイドル状態)を、立つ姿勢(S1041)に設定する。このキャラクタにさまざまな行動をとらせるために、他の姿勢を定義する。図6の例では、立つ姿勢(S1041)の他に、座る姿勢(S1042)、吼える姿勢(S1043)、歩く姿勢(S1044)の3つ、計4つを定義する。この4つの姿勢のキャラクタは3DCGモデルオーサリングツール100でオペレータの操作の下、作成され、制御点とともにメモリに登録されたものである。このようにいくつかの状態が与えられたとき、キャラクタの姿勢の変化が小さい状態同士を姿勢の遷移先としてオペレータが設定する。この遷移先の関係を示すテーブル(状態遷移表)は、状態遷移定義部105がメモリに登録する。
【0040】
前記姿勢の変化の小さい状態間の画像の合成では、合成後の画素の変化を小さく抑えられるため、自然な遷移となる。S1041とS1043のように姿勢が大きく異なるものは、直接遷移できないように遷移規則を定義することにより、それぞれの画像の合成を避けられる。これにより、画像の合成において不自然な中割り画像の発生を防ぐことができる。
【0041】
図6の遷移規則を状態遷移図で表すと図7のように、状態遷移表で表すと図8のようになる。図8におけるIa、Ib、Icは、状態間の遷移命令コマンドである。
【0042】
電化製品200では、前述した4つの姿勢のキャラクタを2次元にそれぞれ投影した画像群と、各パラメータ、すなわち各2D画像での制御点及び状態遷移表を3DCGモデルオーサリングツール100から受信する。
次に、電化製品200の動作設計部205による画像間の遷移命令コマンドの生成例を示す。
【0043】
例えば、立つ姿勢(S1041)から、吼える姿勢(S1043)への動作イベントがユーザから入力された場合、図7の状態遷移表に従い、S1041からS1042を経てS1043に到達する経路が求まる。図8より、動作イベントの遷移要求を満たす遷移命令コマンドは、初期状態であるS1041を基点として(Ib,Ic)となる。これは、S1041とS1043の姿勢が大きく異なるため、S1042を中間経路として利用して合成することで、結果のアニメーションを滑らかにしている。状態遷移による画像の合成規則の制御は、大量の画像を合成して複雑なアニメーションを生成する場合においても、合成結果の不自然さを軽減できる。
【0044】
<具体的な視差の補間例>
次に、具体的な視差の補間、すなわち3Dオブジェクトの姿勢は変わらず、異なる視点から撮影した2つの画像が存在するとき、別の視点の画像を生成するための手法を、図9を参照しながら説明する。
【0045】
3次元空間中に存在する対象物O(S20601)上の同じ頂点M(S20602)を、内部パラメータと外部パラメータが既知であるカメラC1(S20604)とカメラC2(S20606)で撮影しているとき、頂点Mの3次元位置は、カメラC1(S20604)で撮影された参照画像I1(S20603)中の制御点m1(S20607)とカメラC2(S20606)で撮影された参照画像C2(S20605)中の制御点m2(S20607)より、三角測量法により求められる。また、2つのカメラ間の対応関係を表す基礎行列Fが、カメラ間の幾何学的な拘束(エピポーラ拘束)により、以下のように成り立つ。
Fm=0 (1)
【0046】
新たに任意の視点の補間カメラC(S20609)が与えられた場合、制御点m1(S20607)と制御点m2(S20608)から、補間画像(S20610)中の補間制御点m(S20611)を求める問題を考える。
(1)より、カメラC1とカメラCの関係は、
m=0 (2)
ここで、F1はカメラC1と補間カメラCの間の基礎行列である。
(1)より、カメラC2とカメラCの関係は、
m=0 (3)
ここで、F2はカメラC2と補間カメラCの間の基礎行列である。
(2)と(3)より、補間制御点mは以下の式で表される。
m=m×m (4)
【0047】
補間画像中の補間制御点mは、カメラ間の対応関係を表すF1とF2が求まれば(4)式により直ちに求まる。この手法により、カメラパラメータが既知である複数の視点のカメラから撮影した画像群を用いると、任意の視点での画像を新たに算出することが可能である。
【0048】
ここでは、オーサリングツール100の2D画像出力部107から出力された複数の2D視野画像と、各種パラメータ出力部108から出力されるカメラパラメータを電化製品200は読み込み、その視差処理部206が前記手法に基づいて、中間の補間カメラの画像を算出する。
【0049】
<状態遷移と視差の補間の組み合わせによる制御点群の変換>
上述の状態遷移と視差の補間とを組み合わせた制御点群の電化製品200側での動作、すなわち計算方法を、図10を参照しながら説明する。
【0050】
動作イベント処理部204が受け取った動作イベントが、立つ状態(S1041)から座る状態(S1042)の遷移命令と、ある視点のカメラ(S20801)での描画命令を持つとする。このとき、以下の条件で、目的の補間画像3(S20722)中の制御点群3(S20723)を求める。
・立つ状態(S1041)が持つ参照画像群は、参照画像1(S20702)と参照画像2(S20705)である。
・座る状態(S1042)が持つ参照画像群は、参照画像3(S20708)と参照画像4(S20711)である。
・参照画像1(S20702)には、制御点群1(S20704)とカメラ行列1(S20703)が与えられている。
・参照画像2(S20705)には、制御点群2(S20707)とカメラ行列2(S20706)が与えられている。
・参照画像3(S20708)には、制御点群3(S20710)とカメラ行列3(S20709)が与えられている。
・参照画像4(S20711)には、制御点群4(S20713)とカメラ行列4(S20712)が与えられている。
【0051】
最初の処理では、カメラ視点補間操作1(S20714)により、補間カメラ行列(S20701)の視点における補間画像1(S20715)中の補間制御点群1(S20716)の位置を算出する。
【0052】
次の処理は、カメラ視点補間操作2(S20715)により、補間カメラ行列(S20701)の視点における補間画像2(S20718)中の補間制御点群2(S20719)の位置を算出する。
【0053】
最後の処理は、制御点ワーピング操作(S20720)により、補間制御点群1(S20716)の位置と補間制御点群2(S20719)の位置を遷移の経過時間で決まる混合比率で補間して、中間姿勢(S20721)中の補間画像3(S20722)中の制御点群3(S20723)の位置を算出する。
【0054】
補間による制御点の移動処理はワーピングと呼ばれる。カメラ補間操作とワーピング操作の二種の処理により、自由な視点で状態間を遷移する補間制御点群が求められる。
【0055】
<変換された制御点群を用いた3Dアニメーション画像の合成>
上述の手法により目的の画像の補間制御点群3(S20723)が算出されているときの電化製品200側での動作、すなわち補間画像の合成方法を図11を参照しながら説明する。
【0056】
目的の補間画像中の補間制御点群が与えられているとき、ある参照画像が持つ制御点群を補間制御点群に一致させるように参照画像中のすべての画素を移動させると、目的の補間画像の幾何学的制約にそった変換画像が得られる。この操作はイメージワーピングと呼ばれる。図11において、以下の4つのイメージワーピングを行う。
・参照画像1(S20702)にイメージワーピング処理1(S20724)を施すと変換画像1(S20725)が得られる。
・参照画像2(S20705)にイメージワーピング処理2(S20726)を施すと変換画像2(S20727)が得られる。
・参照画像3(S20708)にイメージワーピング処理3(S20728)を施すと変換画像3(S20729)が得られる。
・参照画像4(S20711)にイメージワーピング処理4(S20730)を施すと変換画像4(S20731)が得られる。
【0057】
得られた変換画像1(S20725)、変換画像2(S20727)、変換画像3(S20729)、変換画像4(S20731)が補間画像3と同じ補間カメラ行列(S20701)から撮影した画像とみなせる。したがって補間画像3(S20722)は、これら4つの画像を視点遷移と状態遷移の割合で決まる混合比率で単純に混合することで求められる。この混合処理はクロスディゾルプと呼ばれる。以上の処理により、任意の視点におけるアニメーション画像を合成できる。
【0058】
<効果>
以上のような構成によれば、3Dグラフィクスハードウェアを持たない2D画像表示機器でも、任意の視点における3Dアニメーション映像を機器内部の2D画像処理演算で生成できる。これは、ステレオ視やイメージモーフィングの手法を組み合わせによって、2D画像の変形処理や合成処理のみで実現できる。
【0059】
また、キャラクタにさまざまな動きを加えるアニメーション映像を静止画から合成する場合、姿勢の異なる多くの静止画像を違和感無く合成させなければならない。本実施形態では、状態遷移を用いた合成規則を定義できるので、姿勢の異なる画像群の違和感無く合成させることが可能である。
【0060】
イメージモーフィングでは、2D画像への制御点の定義が非常に難しいため、制御点の定義に関して研究の焦点が当てられていることが多い。一般的に、複数の画像同士を対応付ける制御点の推定は、莫大な計算時間を必要とし、標準的な計算機では実時間で処理できない。これに対して、本実施形態では、3DCGオーサリングツールにおける編集において、制御点を3DCGポリゴンモデルに埋め込むことにより、2D画像とともに制御点の2D位置も出力できるため、煩雑な制御点の推定処理が無い。したがって、標準的な計算能力の演算装置を搭載した家電でも、短時間で一連のイメージモーフィング処理が実行できる。
【0061】
任意の視差画像と姿勢の遷移画像の両方を算出することは、多くの計算時間を必要とする。本実施形態では、比較的計算量の少ない制御点の変形処理と、計算量の多い2D画像の加工処理を分け、2D画像の加工処理を極力減らし、また、煩雑な行列演算を、すべて制御点の変形処理で行っているため、2D画像の加工を、合成のための参照画像がN枚のときO(N)の線形時間で処理することができる。
【0062】
<その他>
本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、図12は、オブジェクトがメニューやアイコンではなく、ネットワークコンテンツ配信サービスなどによる映像データにかかわるコンテンツの場合に好ましい全体構成を表している。
【0063】
汎用計算機400で動作する3DCGモデルオーサリングツール100は、視差画像やアニメーション画像を動的に合成するための画像群および各種パラメータ500を出力するための編集ソフトウェアである。電化製品200は、一般的な2D画像の表示機能を備え、画像群および各種パラメータを処理するための処理能力を持つプロセッサを備えた機器である。映像コンテンツポータルサービス700は、3DCGモデルオーサリングツール100によって作成した映像コンテンツを、画像群および各種パラメータ500としてネットワーク端末800と通じて電化製品200に配信する。電化製品200において表示される映像コンテンツは、リモコンなどの外部操作機器(または機器上の操作パネルなどの内部操作機器)300によって与えられる動作イベント600に従い、表示内容が動的に変更される。
【0064】
図13は、オブジェクトが、携帯電話などの撮影機器上で取得した画像や映像データを入出力可能な表示機器における映像データにかかわるコンテンツの場合に好ましい全体構成を示している。
【0065】
汎用計算機400で動作する3DCGモデルオーサリングツール100は、視差画像やアニメーション画像を動的に合成するための画像群および各種パラメータ500を出力するための編集ソフトウェアである。電化製品200は、一般的な2D画像の表示機能を備え、画像や映像データを入出力でき、画像群および各種パラメータを処理するための処理能力を持つプロセッサを備えた機器である。電化製品200が取得した画像コンテンツ900を、3DCGモデルオーサリングツール100の編集素材として汎用計算機400に出力する。3DCGモデルオーサリングツール100によって、画像コンテンツ900を編集し、画像群および各種パラメータ500として表示機器200に出力される。電化製品200において表示される映像コンテンツは、リモコンなどの外部操作機器(または機器上の操作パネルなどの内部操作機器)300によって与えられる動作イベント600に従い、表示内容が動的に変更される。
【0066】
また、本発明は、姿勢の変更を伴わず、単にカメラ視点を動かすだけの3D映像生成にも適用できる。その場合、姿勢の変更に係る各部は不要となる。
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲に於いて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0067】
400・・・汎用計算機(3D情報処理装置)
200・・・電化製品(2D画像表示装置)
101・・・3DCGポリゴンモデル作成部
102・・・制御点登録部
103・・・3DCGポリゴンモデル編集部
104・・・状態登録部
105・・・状態遷移定義部
106・・・カメラアングル設定部
107・・・2D画像出力部
108・・・各種パラメータ出力部(パラメータ出力部)
201・・・画像読込部
202・・・各種パラメータ読込部(パラメータ読込部)
203・・・初期画像生成部
204・・・動作イベント処理部
205・・・動作設計部
206・・・視差処理部
207・・・2D画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D画像を処理可能な3D情報処理装置と、2D画像を処理可能な2D画像表示装置とを通信可能に接続して構成された映像システムであって、
前記3D情報処理装置が、
複数の姿勢の3Dオブジェクトを生成するとともに前記各姿勢の3Dオブジェクトそれぞれに互いに対応する1以上の制御点を設定する3Dオブジェクト登録部と、
前記3Dオブジェクトについて、一の姿勢から遷移可能な他の姿勢を定義する状態遷移定義部と、
前記3Dオブジェクト登録部において設定された3Dオブジェクトの姿勢ごとに、1以上のカメラアングルを設定するカメラアングル設定部と、
前記各カメラアングルで撮影した視野画像である2D画像を出力する2D画像出力部と、
前記状態遷移定義部で定義された状態遷移情報及び各2D画像に対応して設定されたカメラアングルから少なくとも構成されるパラメータを出力するパラメータ出力部とを具備したものであり、
前記2D画像表示装置が、
前記2D画像出力部から送信された2D画像を読み込む画像読込部と、
前記パラメータ出力部から送信された前記パラメータを読み込むパラメータ読込部と、
指定された2つの2D画像間での複数の遷移画像を、前記パラメータに含まれる状態遷移情報及びカメラアングルから生成し、前記2D画像間で連続的に変化する映像を生成する映像生成部とを具備することを特徴とする映像生成システム。
【請求項2】
3D画像を処理可能な3D情報処理装置と、2D画像を処理可能な2D画像表示装置とを通信可能に接続して構成された映像システムであって、
前記3D情報処理装置が、
3Dオブジェクトに対して1以上のカメラアングルを設定するカメラアングル設定部と、
前記各カメラアングルで撮影した視野画像である2D画像を出力する2D画像出力部と、
前記カメラアングルから少なくとも構成されるパラメータを出力するパラメータ出力部とを具備したものであり、
前記2D画像表示装置が、
前記2D画像出力部から送信された2D画像を読み込む画像読込部と、
前記パラメータ出力部から送信された前記パラメータを読み込むパラメータ読込部と、
指定された2つの2D画像間での複数の遷移画像を、前記パラメータに含まれるカメラアングルから生成し、前記2D画像間で連続的に変化する映像を生成する映像生成部とを具備することを特徴とする映像生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−128737(P2012−128737A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280863(P2010−280863)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】