説明

4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの製造方法

本発明は、4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノンを水素化触媒の存在下で水素と反応させることによる、4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの製造方法に関する。本発明は、その反応が脂肪族アルコール中で実行されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノンを水素化触媒の存在下で水素と反応させることによる、4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの製造方法に関し、これは、その反応が脂肪族アルコール中で実行されることを特徴とする。
【0002】
4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンは、血液凝固因子Xaの阻害剤であり、様々な血栓塞栓性障害の予防および/または処置に使用できる、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミドの合成における中心的前駆物質である(この主題に関し、WO−A01/47919参照。この開示内容を、出典明示により本明細書の一部とする)。
【0003】
5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(IV)は、WO−A01/47919によると、4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン(I)、2−[(2S)−2−オキシラニルメチル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(II)および5−クロロチオフェン−2−カルボニルクロリド(III)から出発して合成される:
【化1】

【0004】
同様に、WO−A02/48099は、4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンを、有効成分合成のための前駆物質として記載しているが、そこにはこの化合物の製造に関して何の情報もない。
【0005】
対照的に、WO−A01/47919は、4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン(I)の製造方法も記載している。この方法では、モルホリン−3−オン(V)を最初に水素化ナトリウムで脱プロトン化し、次いで4−フルオロニトロベンゼン(VI)と反応させ、4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノン(VII)を得る。溶媒としてのテトラヒドロフラン中、パラジウム/活性炭の上で水素により(VII)を触媒的に水素化し、4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン(I)を得る:
【化2】

【0006】
しかしながら、第1段階で理論値の17.6%、そして第2段階で理論値の37.6%というこの方法の収率は、満足のいくものではない。第2段階、(VII)のニトロ基の水素化では、この低収率の理由の一つは、間違いなく、激烈な反応条件、具体的には70℃で8時間の反応時間および50バールの水素圧、であろう。さらに、高圧は、かなりの器具の複雑さを必要とする。得られる生成物はまた、結晶化により精製しなければならない。これらの欠点は、特に大スケールでの反応を面倒にしている。
【0007】
このことは、特に比較的大量の製造に適する、4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン(I)の単純化された製造方法を提供するという、本発明の目的を生じさせる。
【0008】
驚くべきことに、4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノン(VII)の水素との反応を、水素化触媒、好ましくはパラジウム/活性炭(5%)の存在下、脂肪族アルコール、好ましくはメタノール、エタノールまたはn−ブタノールなどの1個ないし4個の炭素原子を有するアルコール中で、実行できることが見出された。より好ましくは、反応は、溶液または懸濁液のエタノール中で起こる。40℃ないし120℃、好ましくは75℃ないし85℃の温度での溶媒としてのエタノールの使用、および2ないし10バール、好ましくは4.5ないし5.5バールの水素圧は、反応時間を明瞭に短縮できる。一般に、反応は、僅か約1時間後に完了する。これらの穏やかな反応条件は、生成物(I)が素晴らしい収率と高い純度で得られることを導く。
【0009】
溶媒としてのエタノールの場合、40℃で反応混合物を水およびエタノールと混合し、生成物溶液から触媒を濾去するだけで後処理する。濾液を減圧下で濃縮することにより、4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン(I)を単離する。他の溶媒を使用する場合、後処理の条件をふさわしく調整する。
【0010】
好ましい実施態様では、物質中の4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン(I)を単離せず、生成物を含有する濾液をさらに直接反応させる。
【0011】
本発明では、WO−A01/47919の記載と異なり、4−フェニル−3−モルホリノン(VIII)をニトロ化することにより4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノン(VII)を製造する。
【化3】

【0012】
この反応では、4−フェニル−3−モルホリノン(VIII)を内部温度5ないし15℃で、数回に分けて7ないし8当量の濃硫酸に添加し、次いで混合物を25℃で約30分間撹拌する。その後、反応混合物を−10ないし0℃で0.9ないし1.2当量の65%硝酸と混合する。ニトロ化にはよくあることであるが、これにより、所望のパラ−異性体のみならず、不所望のオルト−およびメタ−異性体も形成される。後処理に、pH7ないし7.5に到達するまで、水および25%水性アンモニア溶液を5ないし15℃で反応混合物に添加する。
【0013】
驚くべきことに、所望のパラ−異性体(VII)が、アセトンの添加および反応混合物の40℃への加熱の後に、選択的に有機相に溶解されており、このようにして簡単かつ有利なやり方で抽出により取り出せることが判明した。
【0014】
有機相の濃縮によりアセトン/水混合物から生成物(VII)が結晶化し、かくしてその単離が可能となる。
【0015】
4−フェニル−3−モルホリノン(VIII)の製造のために、文献は、様々な合成を記載している:
US3,092,630によると、1,4−ジオキサン−2−オンおよびアニリンを、オートクレーブ中、340℃で反応させ、相当の、しかし不特定の量の(VIII)を得る。
【0016】
J. Heterocycl. Chem. 2000, 37, 109 - 110 は、過マグネシウム酸カリウムを用いる4−フェニルモルホリンの相間移動触媒による酸化による、(VIII)の製造を記載している。しかしながら、ここで形成されるさらなる反応生成物は、容易に二酸化マンガンを発火させる。さらに、収率は理論値の僅か45%であり、困難を伴ってしか反応を大スケールで実行できない。
【0017】
エチル2−クロロアセテートの2−アニリノエタノールとの反応は、Bull. Soc. Chim. France 1956, 1210 - 1212に、およびまた、Zhurnal Organicheskoi Khimii 1970, 6, 1305 - 1308 [CA 73:66523]に記載されている。しかしながら、ここでは、脱プロトン化を、各々トルエン中およびベンゼン中のナトリウムで実行する。
【0018】
先行技術で記載された激烈な反応条件、または技術的に扱いが難しい反応条件、試薬または溶媒を、本発明に従い、クロロアセチルクロリドの2−アニリノエタノールとの反応で4−フェニル−3−モルホリノン(VIII)を製造することにより、回避できる。
【化4】

【0019】
この方法は、工業的スケールであっても、特に有効に用いることができる。この方法では、2−アニリノエタノールを、最初に水性アルコール、好ましくはエタノール溶液に加える。2.5ないし3.5当量のクロロアセチルクロリド、および4ないし8、好ましくは5ないし7当量の塩基を、同時に量り入れる。使用する塩基は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物溶液、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム溶液、特に水性水酸化ナトリウム溶液である。添加は、反応溶液の内部温度30ないし50℃、好ましくは35ないし45℃で実行する。反応溶液のpHが10ないし13.5、好ましくは12ないし12.5であるように、添加速度も調節する。
【0020】
反応溶液を0ないし10℃に冷却した後、生成物(VIII)が結晶化し、濾過および冷水での洗浄により、良好な収率および高純度で得ることができる。
【0021】
本発明はさらに、本発明に従い製造される4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンを提供する。
【0022】
本発明はさらに、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(IV)を製造するための、本発明に従い製造される4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの使用を提供する。
【0023】
本発明を好ましい実施例により下記で詳細に例示説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。特記しない限り、報告する全ての量は、重量パーセントである。
【0024】
4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン(I)の合成
第1段階:4−フェニル−3−モルホリノン(VIII)
【化5】

26リットルのタンク中、2−アニリノエタノール1.65kg(12.0mol)を、室温でエタノール1.53lに溶解し、その後水4.58lと撹拌しながら混合する。溶液を38℃に加熱する。次いで、クロロアセチルクロリド4.07kg(3.0当量)および45%水酸化ナトリウム溶液6.60kg(6.2当量)を、pHが12ないし12.5に保たれるように、同時に内部温度38ないし43℃で60ないし80分間の内に添加する。混合物をpH12ないし12.5で10分間撹拌し、次いで2℃に冷却し、この温度で30分間撹拌する。沈殿した生成物を濾過し、各回3.3kgの鉱質除去水で2回、2℃で洗浄する。湿った生成物を、50℃、減圧下で、一定量に乾燥させる。
収量:白色固体1700g(理論値の80%)
融点:114℃
【0025】
第2段階:4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノン(VII)
【化6】

2リットルのフラスコ中、4−フェニル−3−モルホリノン(VIII)177g(1.0mol)を、内部温度10℃で、4回に分けて、濃硫酸728g(7.4当量)に導入する。次いで、混合物を25℃に加熱し、この温度で30分間撹拌する。溶液を−5℃に冷却し、1時間以内、65%硝酸101.8g(1.05当量)と混合する。混合物を−5℃で1時間撹拌する。鉱質除去水1300mlをこの溶液に10℃で量り入れる。その後、同様に10℃で、25%水性アンモニア溶液を用いて、pH7.4を確立する。懸濁液をアセトン2000gと混合し、40℃に加熱する。この過程で、生成物が溶液になり、相を分離できるようになる。アセトン/水混合物1500gを常圧で有機相から留去する。この過程で、生成物が沈殿する。懸濁液を10℃に冷却し、さらに30分間撹拌し、生成物を単離する。湿った生成物を冷却アセトン320gで洗浄し、50℃、減圧下で乾燥させる。
収量:白色固体157g(理論値の70%)
融点:152℃
【0026】
第3段階:4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン(I)
【化7】

4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノン(VII)60g(0.27mol)を、エタノール480gに懸濁し、パラジウム/活性炭(5%)3gと混合し、5バールの水素と、80℃で1時間接触させる。水素化終了後、懸濁液をエタノール80gおよび水270gと混合し、40℃に加熱し、触媒を濾過する。溶液を減圧下で濃縮し、残っている固体を、50℃、減圧下で、一定重量まで乾燥させる。
収量:白色から僅かに赤みがかった色の固体48.4g(理論値の93%)
融点:171℃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化触媒の存在下で4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノンを水素と反応させることによる4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの製造方法であって、該反応を脂肪族アルコール中で実行することを特徴とする、方法。
【請求項2】
脂肪族アルコールがエタノールであることを特徴とする、請求項1に記載の4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの製造方法。
【請求項3】
生成物を含有する濾液をさらに直接反応させることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの製造方法。
【請求項4】
4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノンが、4−フェニル−3−モルホリノンをニトロ化することにより製造されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの製造方法。
【請求項5】
ニトロ化により製造された4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノンを、アセトン抽出により後処理することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
4−(4−ニトロフェニル)−3−モルホリノンを、抽出後にアセトン/水混合物から結晶化することにより単離することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
4−フェニル−3−モルホリノンが、2−アニリノエタノールのクロロアセチルクロリドとの反応により製造されることを特徴とする、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
クロロアセチルクロリドおよび塩基を同時に量り入れることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塩基が水性水酸化ナトリウム溶液であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
クロロアセチルクロリドおよび水酸化ナトリウム溶液を、内部温度35ないし45℃で、反応溶液のpHを12ないし12.5に維持しながら添加することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に従い製造される4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノン。
【請求項12】
5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミドを製造するための、請求項1に従い製造される4−(4−アミノフェニル)−3−モルホリノンの使用。

【公表番号】特表2007−505821(P2007−505821A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525762(P2006−525762)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010054
【国際公開番号】WO2005/026135
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】