説明

5−ヒドロキシトリプタミンおよびノルエピネフリンの再取込みの阻害のための、またはうつ病障害の治療のための化合物、その製造方法ならびにその使用

本発明は、式(I)の化合物、その光学異性体またはその医薬的に許容可能な塩、それらの製造方法およびそれらの使用を開示する(ここにおいて、R1、R2、R3およびR4については明細書に記載される)。これらの化合物は、光学異性体またはラセミ混合物である。これらの化合物は、取込みされた後、in vivoにて、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノールに代謝的に転換される。転換後の化合物は、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)およびノルエピネフリン(NA)の再取込みを阻害することによって神経薬理学的な活性を有し、中枢神経系に関連した疾病(例えばうつ病等)を治療するために使用される。
【化18】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)およびノルエピネフリン(NA)再取込みの阻害のための、またはうつ病等といった中枢神経系障害の治療もしくは補助的療法のための、式(I)の化合物およびその塩、それらの製造方法、それらを含む医薬組成物ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
式(II)によるベンラファキシン(venlafaxine)(1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール)は、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)およびノルエピネフリン(NA)再取込みの阻害剤であり、うつ病障害等の治療に広く使用されていることが報告されている。さらに、式(II)による化合物が再取込みされた後、肝臓における代謝により、強い活性を有する代謝産物(III)(1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール)および弱い活性を有する代謝産物(IV)(1−[2−メチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール)および(V)(1−[2−メチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール)が形成される(ここにおいて、化合物(II)および(III)は、同じ治療効果を有する)(US4535186、US20040176468、US20040147601、US20030191347、Wyeth Effexor description参照)。
【0003】
化合物(II)の取込みと比較して、中枢神経系に関連した疾患(特にうつ病)を治療するための化合物(III)の直接の取込みは、単一の活性化合物を用いる原則の利点があり、用量および治療効果の調節を容易にし、副作用を軽減し、およびその他の薬剤との相互作用の危険性を低下させる(US6673838参照)。しかしながら、よりヒドロキシ基を含む化合物(III)は、親水性の増大をもたらし、それゆえ経口または経皮の吸収速度を減少させ、および吸収されない薬剤による、おそらくより多くの系前(pre−system)副作用をもたらす。上記の化合物(III)の欠点を解決するために、化合物(III)の一連の誘導体[式(I)の化合物]が合成された。化合物(III)のプロドラッグとしてのこれらの化合物は、in vivoで代謝されて化合物(III)となり、それによって治療効果を奏する。
【化5】

【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)およびノルエピネフリン(NA)の再取込みの阻害剤のプロドラッグとして使用され、および特にうつ病等の治療に使用される新規の化合物を開発することである。それによって得られる式(I)の化合物は、単一の活性化合物を用いる原則の利点があり、用量および治療効果の調節を容易にし、副作用を軽減し、その他の薬剤との相互作用の危険性を低下させ、生物学的利用能を上昇させ、および吸収されない薬剤による系前副作用を減少させる。
【0005】
本発明は、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)およびノルエピネフリン(NA)再取込みの阻害剤のプロドラッグとして使用され、および特にうつ病等の治療に使用される、式(I)による化合物、その光学異性体または医薬的に許容可能な塩に関する:
【化6】

【0006】
ここにおいて、
キラル中心(*)は、R、SまたはRS(ラセミ混合物)となることができ;
R1は、C1−C20飽和アルキルアシルまたはC2−C20不飽和アルキロイル、好ましくはホルミル、アセチル、プロピノイル、ブタノイル、イソブタノイルおよび飽和もしくは不飽和脂肪酸(fatty acyl);または7−20の炭素原子を有するアリーロイル、好ましくは1から10の炭素を有する置換基を有するベンゾイルもしくは非置換型ベンゾイル;または4−10炭素原子を有するシクロアルキロイル、もしくは1−10炭素原子を有するヒドロキシアルキロイルもしくは炭水化物、ならびに酸素、窒素およびフッ素、硫黄、リン(phosphor)もしくはその他のヘテロ原子を含むC1−C10有機アシル基;または以下の基から選択され:
【化7】

【0007】
ここにおいて、R5、R6およびR7は、独立に、水素、1−10炭素原子を有する飽和アルキルもしくは2−20炭素原子を有する不飽和アルキル、または7−20炭素原子を有するアリール、例えば1から10炭素を有する置換基を有するフェニルもしくはベンジルまたは非置換型フェニルもしくはベンジル等から選択され;
R2は、水素、1−20炭素原子を有する飽和アルキル、2−20炭素原子を有する不飽和アルキル、6−20炭素原子を有するアリール、4−10炭素原子を有するシクロアルキル、1−10炭素原子を有するヒドロキシアルキルまたは炭水化物置換基、1−20炭素原子を有する飽和アルキロイル、2−20炭素原子を有する不飽和アルキロイル、好ましくはホルミル、アセチル、プロピノイル、ブタノイル、イソブタノイルおよび不飽和脂肪酸(fatty acyl);7−20炭素原子を有するアリーロイル、好ましくは1から10炭素を有する置換基を有するベンゾイルもしくは不飽和ベンゾイル;4−10炭素原子を有するシクロアルキロイル、1−10炭素原子を有するヒドロキシアルキロイル、酸素、窒素およびフッ素、硫黄、リンもしくはその他のヘテロ原子を含むC1−C10有機アシル基;または以下の基から選択され:
【化8】

【0008】
ここにおいて、R5、R6およびR7は、独立に、水素、1−20炭素原子を有する飽和アルキル、2−20炭素原子を有する不飽和アルキル、または6−20炭素原子を有するアリール、例えば1から10炭素を有する置換基を有するフェニルもしくはベンジルまたは非置換型フェニルもしくはベンジル等から選択され;
R3およびR4は、独立に、水素、1−20炭素原子を有する飽和アルキル、2−20炭素原子を有する不飽和アルキル、6−20炭素原子を有するアリール、例えば1から10炭素を有する置換基を有するフェニルもしくはベンジルまたは非置換型フェニルもしくはベンジル;4−10炭素原子を有するシクロアルキル、1−10炭素原子を有するヒドロキシアルキルまたは炭水化物置換基、ならびに酸素、窒素およびフッ素、硫黄、リンもしくはその他のヘテロ原子を含むC1−C10有機アシル基等から選択され;
好ましくは、R1は、7−20炭素原子を有するアリーロイル、1−10炭素原子を有するアルコキシロイルまたは7−10炭素原子を有するアリーロキシロイル、1−10炭素原子を有する1,1−ジアルコキシルアルキル、および1−10炭素原子を有するアルキルアミノカルボニルであり;R2は水素であり;R3およびR4はメチルである。
【0009】
上記アリールアシルは、好ましくは、以下の構造であり:
【化9】

【0010】
ここにおいて、R8およびR9は、独立に、水素、1−6炭素原子を有する飽和アルキル、または1−6炭素原子を有するアルコキシル、2−6炭素原子を有する不飽和アルキル、OH、Cl、F、CN、カルボキシルおよびエステル基から選択され;好ましくは、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フッ素またはカルボキシルから選択される。
【0011】
本発明によると、「光学異性体」という用語は、化合物(I)のRもしくはS光学異性体またはRSラセミ混合物、またはそれらの医薬的に許容可能な塩を意味する。
【0012】
本発明によると、式(I)の代表的な化合物は:
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メトキシベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−フルオロベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル2−カルボキシルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−メチル)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−メトキシ)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メトキシベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−フルオロ)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−フルオロベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート、
1−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−シクロヘキシル4−メトキシベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−メトキシ)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルN−メチルカルバメート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルN,N−ジメチルカルバメート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルエチルカーボネート、
ならびに、それらの種々の塩および光学異性体である。
【0013】
当該分野の薬物の製造のための従来の方法によって、本発明の式(I)の化合物(それらの光学異性体およびラセミ混合物ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩を含む)は、適切な剤形(dosage form)を形成するよう製造でき、例えば、経口、注射、経皮、経鼻、粘膜および吸入投与のための剤形を形成するよう製造できる。経口投与のための剤形は、固い錠剤またはカプセル剤または軟カプセル剤またはドロップ丸薬(drop pills)、ならびに液剤(solutions)または懸濁剤(suspensions)または乳剤(emulsions)または散剤とすることができ、通常の剤形、または徐放性(sustained release)もしくは部位特異的送達性もしくは速放性(fast release)もしくは崩壊性剤形とすることができる。注射投与のための剤形は、静脈内注射または皮下注射または筋肉内注射または腹腔内注射とすることができ、液剤または懸濁剤または乳剤とすることができ、および標準的または長時間作用性の剤形(例えば移植片、微粒子またはゲル)とすることができる。経皮投与のための剤形は、経皮パッチ、ゲルまたはその他の形態とすることができる。吸入投与は、液剤、懸濁剤、乳剤または散剤とすることができる。粘膜投与のための剤形は、液剤、懸濁剤、乳剤、散剤または坐剤とすることができる。
【0014】
本発明は、さらに、有効量の式(I)の化合物、ならびに適合性のおよび医薬的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物に関する。担体は、何れかの不活性の有機体(organics)もしくは無機体(inorganics)、例えば水、ゼラチン、セルロース、デンプン等、またはその他の医薬的に活性な物質およびその他の従来の添加剤、例えば、安定剤、湿潤剤、乳化剤、着香剤および緩衝剤等であってよい。
【0015】
本発明の式(I)の化合物(それらの光学異性体およびラセミ混合物ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩を含む)は、1日当り1mgから1000mgの単一用量または複数回用量によって、例えば、うつ病、不安障害、全般性不安障害、パニック状態(panic−stricken)、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、月経前不快性障害(premenstrual dysphoric disorders)、線維筋痛、集中障害(impaired concentration)、強迫性症候群、社会不安障害、自閉症性障害、精神分裂症、肥満、ハイパーオレキシア・ネルボーザ(hyperorexia nervosa)および拒食症、トゥレット症候群、血管運動性紅潮(vasomotor flush)、コカインもしくはアルコール中毒、性障害、境界性人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁、痛み(pains)、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群、パーキンソン病および癲癇等といった関連する疾患または障害の治療に用いることができる。
【発明を実施するための具体的様式】
【0016】
本発明は、以下の実施例によって更に例示されるが、それらに限定されるわけではない。
【0017】
2.52g(10mmol)の化合物(III)および9.98mmolの有機塩化アシルを、100mLのジクロロメタンに添加し、撹拌しおよび、0℃まで冷却した。1.05g(9.9mmol)のトリエチルアミンを含んだジクロロメタンの溶液を少しずつ添加し(約10分)、その後、連続的に室温で18時間撹拌した。反応溶液を、50mLの水で洗浄しおよび分離し、その後有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空蒸着法で溶媒を除去し、および生成物を真空下で乾燥した。
【0018】
化合物VIの塩(例えば、塩酸塩)の形成
5mmolの上記生成物を含む30mL無水エーテル溶液を0℃まで冷却し、その後、4.8mmol無水塩化物を含む1Mエーテル溶液を窒素ガス下で添加した。油状の沈殿物を無水エーテルでそれぞれ洗浄し、その後減圧下で乾燥させた。生成物の大部分は、非結晶性の泡様固体であった。
【0019】
上記反応スキームに従って、以下の化合物を合成し、特性を調べた。
【0020】
[実施例1] 化合物IIIのカルボン酸フェニルモノエステル[式(VI)]の合成
【化10】

【0021】
化合物(III)をUS4535186に従って合成した。
【0022】
A.一般的方法および工程
一般的な反応式は以下の通りであり、ここにおいて、Rはフェニル、トリル、メトキシフェニル、またはその他のアリール等である。
【化11】

【0023】
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエートを例とした。
【0024】
10gのデスメチル(desmethyl)−ベンラファキシン(化合物III)を、200mlの無水ピリジンに溶解し、0℃まで冷却した。等モルの4−メチルベンゾイル塩化物を溶解した無水テトラヒドロフランを少しずつ添加し、撹拌しながら室温で5時間反応させた。その後、大部分の溶媒を真空蒸着法によって除いた。残留物を400mlの水に注ぎ、pHが9になるまで撹拌しながら調整し、一晩保存した。沈殿した固体を濾過し、水で3回洗浄し、および乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を、80mlの無水エタノール/酢酸エチル(1:1)にて再結晶し、8.0gの白色固体を得た。融点は159.0−162.2℃で収率55.2%であった。
【0025】
塩酸塩の調製:20mlの無水エタノールを2.0gの上記生成物に添加し、全ての生成物が溶解するまで濃塩酸を少しずつ添加し、その後溶媒を真空蒸着法によって除去し、生成物を無水エタノールで3回洗浄し、および酢酸エチルを添加して溶解した。沈殿した固体をろ過し、融点が203.2−206.5℃の白色結晶固体を2.0g得た。
【0026】
この方法に従って、以下の化合物を合成し、特性を調べた。
【0027】
化合物1:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート
H−NMR(DMSO)δ1.14−1.59(10H,m,−(CH−), 2.11(6H,s,−N(CH), 2.42(3H,s,Ar−CH), 2.55(1H,m,−CH<), 2.86(2H,m,−CH−N−), 5.02(1H,br,−OH), 7.11, 7.27, 7.40, 8.00 (8H,d,d,d,d,Ar−H);
13C−NMR(DMSO)21.40, 21.65(2C), 24.79, 39.89, 40.81(2C), 45.89(2C), 57.94, 76.57, 120.19(2C), 123.01(2C), 126.42, 127.95(2C), 128.13(2C), 136.97, 141.90, 147.42, 164.18;
融点:159.0−162.2℃,塩化物の融点:203.2−206.5℃。
【0028】
化合物2:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニルベンゾエート
4−メチルベンゾイル塩化物をベンゾイル塩化物で置き換えた以外は、全ての反応条件は同一とした。
H−NMR(DMSO)δ0.97−1.61(10H,m,−(CH−), 2.12(6H,s,−N(CH), 2.57(1H,t,>CH−), 2.84(2H,m,−CH−N−), 4.98(1H,br,−OH), 7.13−8.13(9H,m,Ar−H);
13C−NMR(DMSO) 21.65(2C), 24.79, 39.89, 40.81(2C), 45.89(2C), 57.94, 76.57, 120.19(2C), 123.01(2C), 125.92, 128.80(2C), 132.99(2C), 133.85, 136.97, 147.42, 164.18;
融点:176.3−179.1℃,塩化物の融点:206.6−207.7℃。
【0029】
化合物3:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メトキシベンゾエート
4−メチルベンゾイル塩化物を4−メトキシベンゾイル塩化物で置き換えた以外は、全ての反応条件は同一とした。
H−NMR(DMSO)δ1.14−1.59(10H,m,−(CH−), 2.11(6H,s,−N(CH), 2.55(1H,m,−CH<), 2.86(2H,m,−CH−N−), 3.86(3H,s,−OCH), 5.02(1H,br,−OH), 7.10,7.26,8.06(8H,t,d,d,Ar−H);
13C−NMR(DMSO)21.65(2C), 24.79, 39.89, 40.81(2C), 45.89(2C), 55.25, 57.94, 76.57, 113.14(2C), 120.19(2C), 122.52, 123.01(2C), 132.28(2C), 137.01, 147.42, 162.50, 164.18;
融点:133.4−135.7℃,塩化物の融点:195.7−196.9℃。
【0030】
化合物4:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−フルオロベンゾエート
4−メチルベンゾイル塩化物を4−フルオロベンゾイル塩化物で置き換えた以外は、全ての反応条件は同一とした。
H−NMR(DMSO)δ1.25−1.59(10H,m,−(CH−), 2.16(6H,s,−N(CH), 2.55(1H,m,−CH<), 2.86(2H,m,−CH−N−), 5.02(1H,br,−OH), 7.00,7.16, 7.26, 8.12(8H,t, d,d,Ar−H);
13C−NMR(DMSO)21.65(2C), 24.79, 39.90, 40.81(2C), 45.90(2C), 57.94, 76.57, 114.41, 115.12, 120.19(2C), 123.02(2C), 130.91, 131.08, 137.02, 147.42, 158.38, 164.19, 164.88;
融点:146.2−148.5℃,塩化物の融点:199.2−201.3℃。
【0031】
[実施例2] 化合物IIIのカルボン酸ジエステル[式(VII)]の合成
【化12】

【0032】
一般的な反応式は以下の通りであり、ここにおいて、Rはフェニル、トリル、メトキシフェニル、またはその他のアリールもしくはアルキル等である。
【化13】

【0033】
2倍量またはそれ以上の量の有機アシル塩化物およびトリエチルアミンを添加した以外は、実施例1と同じ合成方法とした。
【0034】
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニルベンゾエートを例とした。
【0035】
17.4gのデスメチル−ベンラファキシン(化合物III)、18.58gの塩化ベンゾイルおよび200mlの無水テトラヒドロフランを反応フラスコに添加し、0℃まで冷却した。トリエチルアミンの50mL無水テトラヒドロフラン溶液を少しずつ添加した。全ての原料を溶解した後、反応溶液を400mLの水に注ぎ、撹拌した。その後、沈殿した固体をろ過し、水で3回洗浄し、および乾燥させて、粗生成物を得た。その後、粗生成物を、10倍量の無水エタノールに溶解し、再結晶により19.3gの白色固体を得た。融点は127.8−129.7℃の融点で、収率は60.9%であった。
【0036】
塩酸塩の調製:5.0gの上記生成物を20mlの無水エーテルに溶解し、その後、塩化水素の飽和無水エーテル溶液を少しずつ添加した。沈殿した固体をろ過し、融点176.1−179.0℃の白色結晶固体を5.0g得た。
【0037】
この方法に従って、以下の化合物を合成した。
【0038】
化合物2.1:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニルベンゾエート
H NMR(DMSO)δ1.07−1.58(10H,m,−(CH−), 2.01(6H,s,−N(CH), 2.33,4.06(2H,dd,−CH−N−), 3.00(1H,t,−CH<), 7.16−8.13(14H,m,Ar−H),
13C−NMR(DMSO) 21.56(2C), 24.64, 37.70(2C), 37.94, 45.89(2C), 57.85, 81.50, 120.35(2C), 123.37(2C), 125.90, 128.67(2C), 128.80(2C), 129.42, 129.47(2C), 132.86, 132.99(2C), 133.85, 136.41, 148.19, 164.18, 166.21;
融点:127.8−129.7℃,塩化物の融点:176.1−179.0℃。
【0039】
化合物2.2:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−メチル)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート
ベンゾイル塩化物を4−メチルベンゾイル塩化物で置き換えた以外は、全ての反応条件は同一とした。
H−NMR(DMSO)δ1.10−1.59(10H,m,−(CH−), 2.11(6H,s,−N(CH), 2.45(6H,s,Ar−CH), 2.55(1H,m,−CH<), 2.86(2H,m,−CH−N−), 7.11−8.00(12H,d,d,d,d,Ar−H);
13C−NMR(DMSO) 21.40(2C), 21.56(2C), 24.64, 37.70(2C), 37.94, 45.89(2C), 57.85, 81.50, 120.35(2C), 123.42(2C), 125.31, 126.43, 127.59(2C), 127.95(2C), 128.10(2C), 128.13(2C), 136.41, 141.90(2C), 148.19, 164.19, 166.21;
融点:122.8−125.1℃。
【0040】
化合物2.3:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−メトキシ)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メトキシベンゾエート
ベンゾイル塩化物を4−メトキシベンゾイル塩化物で置き換えた以外は、全ての反応条件は同一とした。
H−NMR (DMSO)δ1.14−1.59(10H,m,−(CH−), 2.11(6H,s,−N(CH), 2.55(1H,m,−CH<), 2.86(2H,m,−CH−N−), 3.86(6H,s,−OCH), 5.02(1H,br,−OH), 7.10−8.06(12H,t,d,d,Ar−H);
13C−NMR (DMSO) 21.56(2C). 24.64, 37.70(2C), 37.94, 45.89(2C), 55.25(2C), 57.85, 81.50, 113.11(2C), 113.14(2C), 120.35(2C), 121.03, 122.52, 123.37(2C), 131.21(2C), 132,28(2C), 136.41, 148.19, 162.50(2C), 164.16, 166.21;
融点: 112.6−114.9℃。
【0041】
[実施例3] 化合物(III)のカルボン酸非対称性ジエステル[式(VIII)]の合成
【化14】

【0042】
非対称性ジエステルは、対応するモノエステルをアシル化することによって得た。その合成は、実施例1と同一とした。
【0043】
一般的な反応式は以下の通りであり、ここにおいて、R、R1はフェニル、トリル、メトキシフェニル、またはその他のアリールもしくはアルキル等である。
【化15】

【0044】
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエートを例とした。
【0045】
実施例1によって合成したモノエステルの10mmol(実施例1による化合物1)および10−15mmolの塩化ベンゾイルを、200mLの無水ピリジンに添加し、撹拌しながら0℃まで冷却し、その後、1.05g(9.9mmol)のトリエチルアミンを含む無水テトラヒドロフラン溶液を少しずつ(約10分)添加し、撹拌しながら、室温で18時間連続的に反応させた。反応溶液を50mlの水で洗浄し分離し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、その後真空蒸着法によって溶媒を除去し、残留物を400mLの水に注ぎ、pHが9になるまで撹拌しながら調整し、一晩保存した。沈殿した固体をろ過し、水で3回洗浄し、乾燥させて粗生成物を得た。粗生成物を無水エタノールで再結晶し、白色固体を得た。
【0046】
この方法に従って、以下の化合物を合成した。
【0047】
化合物3.1:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート
H−NMR(DMSO)δ1.10−1.59(10H,m,−(CH−), 2.17(6H,s,−N(CH), 2.42(3H,s,Ar−CH), 2.55(1H,m,−CH<), 2.86(2H,m,−CH−N−), 7.11 − 8.20(13H,d,d,d,d,Ar−H);
13C−NMR (DMSO) 21.40, 21.56(2C), 24.64, 37.70(2C), 37.94, 45.89(2C), 57.86, 81.52, 120.36(2C), 123.38(2C), 126.43, 127.95(2C), 128.13(2C), 128.67(2C), 129.42, 129.47(2C), 132.86, 136.41, 141.90, 149.19, 164.19, 166.22;
融点:127.8−130.2℃。
【0048】
化合物3.2:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メトキシベンゾエート
実施例1の化合物1を実施例1の化合物3で置き換えた以外は、全ての反応条件は同一とした。
H−NMR (DMSO) δ1.22−1.76(10H,m,−(CH−), 2.15(6H,s,−N(CH), 2.58(1H,m,−CH<), 2.76(2H,m,−CH−N−), 3.86(3H,s,−OCH), 7.16 − 8.10(9H,t, d,d,Ar−H);
13C−NMR (DMSO) 21.56(2C), 24.64, 37.70(2C), 37.94, 45.89(2C), 55.25, 57.85, 81.50, 113.12(2C), 120.35(2C), 121.03, 123.37(2C), 125.92, 128.81(2C), 131.22(2C), 132.99(2C), 133.85, 136.41, 148.19, 162.50, 164.18, 166.26;
融点:119.6−122.8℃。
【0049】
[実施例4] 化合物(III)のベンジルエーテルのカルバモイルモノエステル[式(IX)]の合成
【化16】

【0050】
一般的な反応式は以下の通りであり、ここにおいて、R1、R2またはR’はH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、トリルまたはその他のアルキルもしくはアリール等である。
【化17】

【0051】
化合物4.1:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニルN−メチル−カルバメート
6mmolのイソシアン酸メチルを、化合物(III)の5mmolのベンジルエーテルを含む20mLのジクロロメタン溶液に撹拌しながら添加し、室温で16時間反応を行い、その後、反応溶液を10mLの5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させて除去し、油状または白色固体の生成物を得た。
【0052】
H−NMR (DMSO) 1.33−1.69(10H,m,−(CH−), 2.17(6H,s,−N(CH), 2.65(1H,m,−CH<), 2.76(2H,m,−CH−N−), 2.78(3H−NCH), 5.37(NH), 6.90−7.59(9H,Ar−H);
13C−NMR (DMSO) 22.43(2C), 25.22, 27.35, 35.14, 39.29(2C), 45.89(2C), 56.72, 81.67, 120.30(2C), 122.81(2C), 122.89, 124.36(2C), 128.81(2C), 135.34, 147.41, 156.11, 160.37;
融点:138.6−140.8℃。
【0053】
化合物2:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]フェニルN,N−ジメチル−カルバメート
6mmolのN−ジメチル−ホルミル塩化物を、0℃で、撹拌しながら、化合物(III)の5mmolのベンジルエーテル誘導体および1mLのトリエチルアミンを含む30mLのジクロロメタン溶液に添加し、0℃で6時間連続的に反応を行い、その後、反応液を10mLの5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発によって溶媒を除去し、油状または白色固体の生成物を得た。
【0054】
H−NMR (DMSO) 1.33−1.69(10H,m,−(CH−), 2.17(6H,s−N(CH), 2.65(1H,m,−CH<), 2.76(2H,m,−CH−N−), 2.89(6HN(CH), 6.90−7.59(9H,Ar−H).
13C−NMR (DMSO) 20.43(2C), 25.15, 35.14, 36.42, 36.65, 39.29(2C), 45.89(2C), 56.72, 81.67, 1220.70(2C), 122,80(2C), 122.90, 124.71(2C), 128.81(2C), 135.45, 148.50, 155.12, 156.11;
融点:126.2−129.3℃。
【0055】
[実施例5] 活性成分1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)を形成するための、肝臓細胞における化合物代謝の実験
40μgの実施例1の化合物1(または化合物2もしくは3もしくは4)を、1mM NADPHを含む0.01Mリン酸カリウム緩衝液に溶解し、25μLのヒト肝細胞S9(20mgタンパク質/mL、H961)を混合し、37℃で2時間培養した。その後、混合物を濃縮過塩素酸でクエンチした。沈殿したタンパク質を遠心機によって除去した後、上清を、濃縮リン酸カリウムによってpHが3になるまで調整し、再び遠心した。上清を直接HPLCに注入し、分析した。
【0056】
代謝の結果を表1に示す。肝臓細胞における、化合物から活性成分1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)への2時間における代謝率は、それぞれ異なるエステル基に依存して80%から100%に及ぶ。
【表1】

【0057】
[実施例6] ラットにおける経口および静脈内投与を介した、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート(実施例1の化合物1)の代謝実験
6匹のラットを2つのグループに分け、13.5mg/kgの用量で4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩を胃内または静脈内投与した。血液サンプルは、所定の予定に従って採取し、血液中のプロドラッグ4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエートおよび活性代謝産物1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)の濃度を測定した。
【0058】
ラットの静脈内投与の結果(図1A参照)から、プロドラッグ4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩は、ラットの血液中で急速に代謝され、活性代謝産物1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)(ODV)は30分でCmaxに達し、その間、血液中のプロドラッグの濃度は、その活性代謝産物1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)(ODV)のわずか10−15%であり、連続的に減少したことがわかる。
【0059】
経口投与の結果を図1Bに示す。プロドラッグが消化管を通して体内に入った後、急速に代謝され、より高い速度および程度で、ならびにより低いプロドラッグ濃度で、活性代謝産物1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)(ODV)が形成された。経口投与によるプロドラッグは、実質的に望ましい活性代謝産物1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)に完全に転換され、このことは、プロドラッグ4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエートの代謝可能性を十分に確信させるものであった。計算によると、ラットの経口投与によるプロドラッグ4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩の生物学的利用能は80%を超え、これは、直接経口投与される1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)およびその様々な塩の生物学的利用能よりも明らかに高かった。
【0060】
[実施例7] 経口投与を経たビーグル犬における、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノール(化合物III)コハク酸塩およびそのプロドラッグ:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルベンゾエート塩酸塩(実施例1の化合物2)、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩(実施例1の化合物1)および4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メトキシベンゾエート(実施例1の化合物3)コハク酸塩の実験結果
約10kg体重の9個体のビーグル犬を3つのグループに分け、0.016mmol/kgの用量で、O−デスメチル−ベンラファキシン(ODV)コハク酸塩、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニルベンゾエート塩酸塩、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩および4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メトキシベンゾエートコハク酸塩の胃内投与に供した。血液サンプルは、所定の予定に従って採取し、血液中の活性代謝産物1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノール(化合物III)およびそのプロドラッグの濃度を測定した。
【0061】
結果を図2に示す。プロドラッグが、消化管を通してビーグル犬の体内に入った後、それらは、すぐに活性代謝物デスメチル−ベンラファキシンに代謝され、プロドラッグ濃度は測定限界より低かった。そのため、経口投与によるほとんどすべてのプロドラッグは、所望の活性代謝産物1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノール(化合物III)に転換されたとみなされた。その間、ODVのプロドラッグの生物学的利用能は、ODV塩のなかで最も生物学的利用能を有しているODVコハク酸塩のそれよりも明らかに高く、AUCは30%を超えて上昇し(表2)(4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩のAUCは60%を越えて上昇した(表2))、生物学的利用能は、非常に有意に改善され、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノール(化合物III)コハク酸塩よりも明らかな優位性を示すことが実験から示された。
【表2】

【0062】
[実施例8] 標準的経口錠剤の製造
【表2−2】

これらの構成成分を直接錠剤化し、100mg/錠剤(1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに基づいて計算)の薬剤を含む錠剤を得た。この種の錠剤の溶出試験の結果を以下に示す。
【表3】

【0063】
[実施例9] 経口投与のための4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩の徐放性カプセルの製造
【表3−2】

コーティングが乾燥した後、コーティングした顆粒を、硬ゼラチンカプセルに充填した。1カプセル当り100mgの薬剤とし(1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに基づいて計算)、コーティングの程度は6%であった。カプセルの溶解試験は、中華人民共和国の薬局方に従って行った。その結果を以下に示す。
【表4】

【0064】
[実施例10] 経口投与のための4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニルベンゾエート塩酸塩の徐放性カプセルの製造
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩を、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]ベンゾエート塩酸塩で置き換えた以外は、実施例9と同じ製造方法とした。カプセルの溶解試験は、中華人民共和国の薬局方に従って行った。その結果を以下に示す。
【表5】

【0065】
[実施例11] 経口投与のための4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メトキシベンゾエートコハク酸塩の徐放性カプセルの製造
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩を、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メチルベンゾエートコハク酸塩で置き換えた以外は、実施例9と同じ製造方法とした。カプセルの溶解試験は、中華人民共和国の薬局方に従って行った。その結果を以下に示す。
【表5−2】

[実施例12] 経口投与のための徐放性錠剤の製造
【表5−3】

それぞれの錠剤は、100mgの主薬(1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに基づいて計算)を含む。錠剤の溶解試験は、中華人民共和国の薬局方に従って行った。その結果を以下に示す。
【表6】

【0066】
[実施例13] 経口投与のための4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]フェニル4−メトキシベンゾエート塩酸塩の徐放性カプセルのビーグル犬試験
9.8kgから12.5kgの間の体重の6個体のビーグル犬をこの試験で用いた。水、および試験60分前の摂食以外は、一晩絶食させた。ここにおいて、3個体のビーグル犬には、別々に、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩の徐放性カプセル剤(159mgの薬剤、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに基づいて計算すると100mgを含む)を1つ経口投与し、一方、その他の3個体のビーグル犬には、別々に、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩(79mgの薬剤、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに基づいて計算すると50mg)を静脈内投与した。血液サンプルを、薬剤投与の、0.25、0.5、1、2、4、6、8、12、16および24時間後に、別々に採取した。血液サンプル(3mL)を、5mLのヘパリンの入った試験管に入れ、低温で遠心し、−70℃で保存し、その後HPLC−MSで分析した(Ther. Drug Monit. 16:100−107(1994))。
【0067】
血液サンプルの分析結果は、経口投与された4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩は、in vivoにて素早く1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに転換されたことを示す。
【0068】
ビーグル犬体内の1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)のデータを表7に示す。
【表7】

【0069】
[実施例14] 経口投与された4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルベンゾエート塩酸塩の徐放性カプセルのビーグル犬試験
試験は、実施例13と同じ方法に従って行ったが、それぞれの徐放性カプセルには、154mgの薬剤(1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに基づいて計算すると100mg)を含んでいた。血液サンプルの分析結果もまた、経口投与された4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルベンゾエート塩酸塩は、in vivoにて素早く1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに転換されたことを示す。
【0070】
ビーグル犬体内の1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)のデータを表8に示す。
【表8】

【0071】
[実施例15] 経口投与された4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエートコハク酸塩の徐放性カプセルのビーグル犬試験
試験は、実施例13と同じ方法に従って行ったが、それぞれの徐放性カプセルには、195mgの薬剤(1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに基づいて計算すると100mg)を含んでいた。
【0072】
血液サンプルの分析結果もまた、経口投与された4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メトキシベンゾエートコハク酸塩は、in vivoにて素早く1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]シクロヘキサノールに転換されたことを示す。
【0073】
ビーグル犬体内の1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)のデータを表9に示す。
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1A】図1AおよびBは、ラットにおける、プロドラッグ4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩のin vivoでの代謝を示す。Aは、静脈内投与を表し、Bは経口投与を表す;グループIにおいて、□はプロドラッグ:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエートを表し、■は活性代謝産物:化合物(III)を表す;グループIIにおいて、○はプロドラッグ:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエートを表し、●は活性代謝産物:化合物(III)を表す。
【図1B】図1AおよびBは、ラットにおける、プロドラッグ4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩のin vivoでの代謝を示す。Aは、静脈内投与を表し、Bは経口投与を表す;グループIにおいて、□はプロドラッグ:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエートを表し、■は活性代謝産物:化合物(III)を表す;グループIIにおいて、○はプロドラッグ:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエートを表し、●は活性代謝産物:化合物(III)を表す。
【図2】図2は、ビーグル犬における、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−シクロヘキサノール(化合物III)コハク酸塩(ODVコハク酸塩)(−□−で表される)およびそのプロドラッグ:4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルベンゾエート塩酸塩(ベンゾエート)(−▲−で表される)、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート塩酸塩(4−メチルベンゾエート)(−◆−で表される)、および4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メトキシベンゾエートコハク酸塩(4−メトキシベンゾエート)(−▽−で表される)のin vivoでの吸収および代謝を示す。全ての血中濃度は、活性代謝産物化合物(III)のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)による化合物、その光学異性体または医薬的に許容可能な塩:
【化1】

ここにおいて、
キラル中心(*)は、RもしくはSまたはRS(ラセミ混合物)となることができ;
R1は、1−20の炭素原子を有する飽和アルキロイルまたは2−20炭素原子を有する不飽和アルキルアシル、好ましくはホルミル、アセチル、プロピノイル、ブチリル、イソブチリルおよび飽和もしくは不飽和脂肪酸(fatty acyl);または7−20の炭素原子を有するアリーロイル、好ましくは1から10の炭素原子を有する置換基を有するベンゾイルもしくは非置換型ベンゾイル;または4−10炭素原子を有するシクロアルキロイル、もしくは1−10の炭素原子を有するヒドロキシアルキロイルもしくは炭水化物、ならびに酸素、窒素およびフッ素、硫黄、リン(phosphor)もしくはその他のヘテロ原子等を含むC1−C10有機アシル;または以下の基から選択され:
【化2】

ここにおいて、R5、R6およびR7は、独立に、水素、1−10の炭素原子を有する飽和アルキルもしくは2−20の炭素原子を有する不飽和アルキル、または6−20炭素原子を有するアリール、例えば1から10炭素原子を有する置換基を有するフェニルもしくはベンジルまたは非置換型フェニルもしくはベンジル等から選択され;
R2は、水素、1−20の炭素原子を有する飽和アルキル、2−20の炭素原子を有する不飽和アルキル、6−20の炭素原子を有するアリール、4−10の炭素原子を有するシクロアルキル、1−10の炭素原子を有するヒドロキシアルキルもしくは炭水化物置換基、1−20炭素原子を有する飽和アルキロイル、2−20の炭素原子を有する不飽和アルキロイル、好ましくはホルミル、アセチル、プロピノイル、ブチリル、イソブチリルおよび飽和または不飽和脂肪酸(fatty acyl);7−20炭素原子を有するアリールアシル、好ましくは1から10の炭素原子を有する置換基を有するベンゾイルもしくは不飽和ベンゾイル;または4−10の炭素原子を有するシクロアルキロイル、または1−10の炭素原子を有するヒドロキシアルキロイルもしくは炭水化物、ならびに酸素、窒素およびフッ素、硫黄、リンもしくはその他のヘテロ原子を含むC1−C10有機アシル基;または以下の基から選択され:
【化3】

ここにおいて、R5、R6およびR7は、独立に、水素、1−20の炭素原子を有する飽和アルキル、2−20の炭素原子を有する不飽和アルキル、または6−20の炭素原子を有するアリール、例えば1から10の炭素を有する置換基を有するフェニルもしくはベンジルまたは非置換型フェニルもしくはベンジル等から選択され;
R3およびR4は、独立に、水素、1−20の炭素原子を有する飽和アルキル、または2−20の炭素原子を有する不飽和アルキル、6−20の炭素原子を有するアリール、例えば1から10の炭素原子を有する置換基を有するフェニルもしくはベンジルまたは非置換型フェニルもしくはベンジル;または4−10の炭素原子を有するシクロアルキル、または1−10の炭素原子を有するヒドロキシアルキルもしくは炭水化物、ならびに酸素、窒素およびフッ素、硫黄、リンまたはその他のヘテロ原子等を含むC1−C10有機アシル基から選択される。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)による化合物であって、前記式(I)の化合物において、R1が、7−20の炭素原子を有するアリールアシル、1−10の炭素原子を有するアルキルオキシロイル、1−10の炭素原子を有する1,1−ジアルキルオキシアルキル、および1−10炭素原子を有するアルキルアミノカルボニルであり;R2が水素であり;R3および4がメチルであることを特徴とする化合物。
【請求項3】
前記アリーロイルが以下の化学式で表されることを特徴とする、請求項1または2に記載の式(I)による化合物:
【化4】

ここにおいて、R8およびR9は、独立に、水素、1−6炭素原子を有する飽和アルキル、または1−6炭素原子を有するアルコキシル、2−6炭素原子を有する不飽和アルキル、OH、Cl、F、CN、カルボキシルおよび1−6炭素原子を有するエステル基から選択される。
【請求項4】
請求項3に記載の式(I)による化合物であって、前記置換基R8およびR9が、独立に、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フッ素またはカルボキシルから選択されることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)による化合物の塩であって、前記化合物の塩が、塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩およびその他の医薬的に許容可能な酸とともに形成される塩であることを特徴とする塩。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の化合物であって、前記化合物が、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メトキシベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−フルオロベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル2−カルボキシルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−メチル)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−メトキシ)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メトキシベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−フルオロ)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−フルオロベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート、
1−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−シクロヘキシル4−メトキシベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−(4−メトキシ)ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニル4−メチルベンゾエート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルN−メチルカルバメート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルN,N−ジメチルカルバメート、
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ベンゾイルオキシシクロヘキシル)−エチル]−フェニルエチルカーボネート、
ならびに、これらの種々の塩および光学異性体から選択される化合物。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の化合物、その光学異性体または医薬的に許容可能な塩、および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)および/またはノルエピネフリン(NA)再取込みの阻害または遮断のための及び中枢神経系に関する疾病の治療のための薬物を製造するための、請求項1から6の何れか1項に記載の化合物、その光学異性体または医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項9】
請求項2に記載の医薬組成物であって、前記組成物が、経口、注射、経皮、経鼻、粘膜および吸入投与の方法で使用される組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の医薬組成物であって、前記組成物が、通常の、徐放性(sustained release)の、調節放出性(controlled release)の、部位特異的のまたは速放性の剤形である組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−543794(P2008−543794A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516114(P2008−516114)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001370
【国際公開番号】WO2006/133652
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507412988)シャンドン・ルイェ・ファーマシューティカル・カンパニー・リミテッド (1)
【出願人】(507412298)
【Fターム(参考)】