説明

5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造方法

【課題】5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを、高効率、高純度で得る製造方法を提供する。
【解決手段】4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンを塩酸存在下、亜硝酸塩と反応させ、次いで、銅触媒存在下、アクリル酸メチルと反応させ、2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを得、次いで、アルカリ存在下、チオ尿素と反応させ、高度に2量化不純物が少ない5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを得る方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリンの作用不足に起因する2型糖尿病に対して、優れた効果を示す治療剤として有用な5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩の製造方法、該塩酸塩の原料となる5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩は、インスリンの作用不足に起因する2型糖尿病、特にインスリン抵抗性に対して、優れた効果を示す治療剤として有用である。従来、この塩酸塩は、
下記式(3)
【0003】
【化1】

【0004】
で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを原料とし、該原料と塩化水素とを反応させて製造されている。そして、この上記式(3)で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンは、以下の方法によりに製造されている。
【0005】
具体的には、先ず、エタノールを溶媒として、2−ブロモ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルをチオ尿素、酢酸ナトリウムと還流下、3時間反応させ、溶媒を減圧濃縮した後、残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、水およびエーテルを加えて結晶化させ、粗5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する。次いで、メタノールで再結晶することにより、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造することができる(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特公平5−66956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、特許文献1に記載の方法に従えば、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを効率よく製造することができる。
【0008】
しかしながら、本発明者等の検討によると、特許文献1に記載された方法において、2−ブロモ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを使用して、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造した場合、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンのピリジル基もしくはフェニル基上に、エチルピリジルフェニルエーテルが付加した、イミノチアゾリジノン残基を有する化合物が不純物(以下、この不純物を単に特定不純物とする場合もある)として残存することが分かった。この特定不純物は、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンと類似した構造であり、かつ同じ反応基を有するため、精製により除去することが難しい。そのため、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩としても、僅かに特定不純物由来の塩酸塩が残存するため、高収率で高純度の塩酸塩を製造することが難しく、改善の余地があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノン、および5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩を製造するに際し、上記特定不純物、および特定不純物由来の塩酸塩の生成が少ない製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するため、先ず、上記特定不純物が生成される原因を調査したところ、2−ブロモ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを合成する際に、既に、上記特定不純物の原因物質が生成していることが判明した。そのため、前の段階の原料、即ち、アクリル酸メチルと反応させるジアゾニウム塩の合成について検討を行った。
【0011】
その結果、上記特許文献1に記載された方法において、臭化水素酸を使用する代わりに塩酸を使用することにより、上記課題を解決できることを見い出した。より具体的には、塩酸存在下で、上記式(1)で示されるアミンと亜硝酸塩とを反応させてジアゾニウム塩を合成し、次いで、銅触媒存在下、該ジアゾニウム塩とアクリル酸メチルとを反応させるメーヤワインアリール化反応により2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを製造することにより、上記特定不純物の原因物質の生成を抑制できることをつきとめ、さらに、アルカリ存在下、この2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルチオ尿素と反応させることにより、高度に特定不純物が少ない5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを効率よく得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、塩酸の存在下、下記式(1)
【0013】
【化2】

【0014】
で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと亜硝酸塩とを反応させてジアゾニウム塩を製造した後、銅触媒存在下、該ジアゾニウム塩とアクリル酸メチルとを反応させて下記式(2)
【0015】
【化3】

【0016】
で示される2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを製造する工程、および
アルカリ存在下、前記工程で得られた2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルとチオ尿素とを反応させて下記式(3)
【0017】
【化4】

【0018】
で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する工程
を含むことを特徴とする5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造方法である。
【0019】
また、上記方法において、該ジアゾニウム塩とアクリル酸メチルとの反応は、効率よく反応を行い、特定不純物の原因物質をより低減するためには、該ジアゾニウム塩1モルに対して、アクリル酸メチルを5モル以上使用することが好ましい。
【0020】
また、本発明は、上記の方法によって上記式(3)で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造した後、該5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンと塩化水素とを反応させて下記式(4)
【0021】
【化5】

【0022】
で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩を製造する工程
を含む5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩の製造方法である。
【0023】
さらに、本発明は、上記式(2)で示される2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、臭化水素酸を使用した場合に生成する特定不純物の原因物質に類似する化合物の生成をより低減することができる。そして、本発明の方法により得られた上記式(2)で示される2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを原料として、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造することにより、イミノチアゾリジノン残基を有する不純物(特定不純物)の生成をより低減することができる。
【0025】
その結果、本発明によって製造された5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンは、塩化水素と反応させて、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩とした場合に、上記特定不純物に由来する塩酸塩の生成を少なくすることができ、純度の高い5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、塩酸存在下、上記式(1)で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと亜硝酸塩と反応させてジアゾニウム塩とし、次いで、銅触媒存在下、該ジアゾニウム塩とアクリル酸メチルとを反応させ、上記式(3)で示される2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを製造した後、アルカリ存在下、得られた2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルとチオ尿素とを反応させ、特定不純物の含有量が少ない5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する方法である。
【0027】
本発明は、塩酸の存在下で上記反応を行うことにより、下記に詳述する特定不純物の原因物質の生成をより低減することができる。塩酸と臭化水素酸との違いにより、このように生成物に差が生じるのは、上記式(1)で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンを原料とする場合の特有の結果であり、従来の技術からは予測もできないことである。
【0028】
以下、各成分、各工程の反応条件について説明する。
【0029】
(4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン)
本発明において、上記式(1)で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンは、公知の方法に基づいて製造することができる。具体的には、特許文献1に記載された方法を用いて製造できる。この方法に従えば、2−(5−エチル−2−ピリジル)エタノールと4−フルオロニトロベンゼンをN,N’−ジメチルホルムアミド中、水素化ナトリウムでエーテル化し、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ニトロベンゼンを得、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ニトロベンゼンをメタノール中、パラジウム炭素存在下、室温、1気圧で接触還元を行い、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンを得ることができる。
【0030】
本発明においては、このようにして得られる4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンを、塩酸の存在下で反応させることにより、臭化水素酸の存在下で反応させるよりも、上記特定不純物の原因物質の生成を抑制することができる。次に、塩酸存在下での反応条件について説明する前に、特定不純物の生成について説明する。
【0031】
(特定不純物について 臭化水素酸存在下での反応)
特許文献1に記載された方法に従い、臭化水素酸の存在下、上記式(1)で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと亜硝酸塩とを反応させてジアゾニウム塩を製造した後、次いで、アルカリ存在下、該ジアゾニウム塩とアクリル酸メチルとを反応させることにより、下記式(5)
【0032】
【化6】

【0033】
で示される2−ブロモ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを製造すると、以下のような不純物を生成していることが分かった。この不純物(特定不純物の原因物質)の構造を下記式(6)に示す。
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、Rは下記式(7)で示される基であり、nおよびmは置換基Rの数を示し、nとmとの合計が0にならない条件の下、nは0〜3の整数、mは0〜4の整数である。)。
【0036】
【化8】

【0037】
(式中、aの炭素原子は、ピリジル基またはフェニル基と結合する炭素原子を示す。)。
【0038】
以上の通り、上記式(5)で示される2−ブロモ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルと上記式(6)で示される不純物とは同じ反応基を有するため、このような不純物を含んだまま、次に、チオ尿素とを反応させると、上記不純物は下記式(8)で示される特定不純物となる。
【0039】
【化9】

【0040】
(式中、R、nおよびmは、上記式(6)のものと同義である。)。
【0041】
このような特定不純物は、さらに塩化水素との反応により塩酸塩となり、最終的に得られる5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩中に含まれるようになる。本発明者等の検討によると、特許文献1に記載の方法に従い5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩を製造すると、多少製造条件にも影響されるが、各生成物中に上記式(6)で示される不純物(特定不純物の原因物質)が0.6〜1.5質量%、上記式(8)で示される特定不純物が0.6〜1.5質量%、および上記特定不純物由来の塩酸塩が0.3〜1.0質量%含まれることが分かった。なお、上記不純物の量は、高性能 液クロマトグラフ(以下、単にHPLCとする場合もある)にて確認したものである。
【0042】
本発明は、上記式(8)で示される特定不純物を低減することを目的とし、さらに、上記特定不純物由来の塩酸塩を低減することを目的とするものである。上記式(8)で示される特定不純物を低減するためには、上記式(6)で示される不純物(特定不純物の原因物質)を低減する方法が考えられる。そのため、本発明者等は、上記式(1)で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと亜硝酸塩とを反応させてジアゾニウム塩を製造する反応に着目して検討したところ、臭化水素酸に代えて塩酸を使用することにより、上記式(6)においてBrがClである不純物(特定不純物の原因物質)の生成が殆どないことを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0043】
以下、本発明における2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを製造する工程について説明する。
【0044】
(2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを製造する工程)
本発明においては、先ず、塩酸存在下、上記式(1)で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと亜硝酸塩とを反応させて、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン由来のジアゾニウム塩を合成する。この反応は、基本的には、特許文献1に記載された方法において、臭化水素酸に代えて塩酸を使用してやればよい。
【0045】
(塩酸)
本発明において、使用する塩酸は、濃度が高いほど反応速度が向上して不純物の生成を抑制できることから、35質量%程度の濃塩酸を使用することが好ましい。また塩酸の使用量は、あまり多すぎると、副反応を助長し、少なすぎると完全に反応が完結しないため、使用する4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン1モルに対して、塩酸に含まれる塩化水素が3〜5モルとなる量が好ましい。
【0046】
(亜硝酸塩)
本発明において、使用する亜硝酸塩は、市販の工業製品を使用することができ、具体的には、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどが挙げられる。亜硝酸塩の使用量は、あまり多すぎると副反応を助長し、少なすぎると完全に反応が完結しないため、使用する4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンに1モルに対して、1〜1.5モルであることが好ましい。この亜硝酸塩は、直接、反応液中に添加することもできるが、水に溶解させて反応液中に滴下することが好ましい。そのとき使用する水の量は、亜硝酸塩の溶解性と経済性を考慮すると、使用する亜硝酸塩1gに対して、好ましくは1〜3ml、より好ましくは1.2〜2.5mlである。
【0047】
(ジアゾニウム塩の合成 反応条件)
本発明において、塩酸存在下、上記式(1)で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと亜硝酸塩との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。使用する有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類を挙げることができ、これらは単独で使用することもできるし、2種類以上を混合して使用することもできる。中でも、反応速度、溶解度、選択率の観点から、ケトン類、アルコール類が好適に使用され、これらの混合溶媒を使用することが好ましい。これら有機溶媒の使用量は、経済性、副反応物を低減するという観点から、使用する4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン1gに対して、好ましくは5〜25ml、より好ましくは7〜20mlである。
【0048】
本発明において、塩酸の存在下、上記式(1)で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと亜硝酸塩とを反応させる際、これらの混合方法、添加順序は、特に制限されるものではない。例えば、塩酸、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン、および亜硝酸塩とを同時に反応容器内に滴下し、混合する方法、または、予め2成分を混合し、その混合溶液に他の成分を添加して混合する方法などが挙げられる。中でも、副反応を制限するためには、以下の方法で4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン由来のジアゾニウム塩を合成することが好ましい。即ち、必要に応じて有機溶媒に分散させた4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと塩酸とを混合した溶液中に、亜硝酸塩を添加することが好ましい。また、この添加する亜硝酸塩は水に溶解させたものであることが好ましい。
【0049】
上記ジアゾニウム塩を合成する反応において、反応温度は、副反応を抑制するという観点から、好ましくは0〜15℃、より好ましくは0〜10℃である。なお、この反応温度は、各成分が混合されている反応液の温度を指す。また、反応時間は、特に制限されるものではなく、撹拌下、0.01〜10時間、より好ましくは0.1〜5時間である。
【0050】
以上のような条件により反応を行うことで4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン由来のジアゾニウム塩を合成することができる。次に、銅触媒存在下、得られたジアゾニウム塩とアクリル酸メチルの製造方法について説明する。
【0051】
(銅触媒)
本発明において、使用する銅触媒は、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)などが挙げられる。これらは、試薬或いは工業原料が何ら制限無く使用できる。銅触媒の使用量は、通常の触媒量と同じであり、具体的には、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン由来のジアゾニウム塩1モルに対して、好ましくは0.01〜0.2モル、より好ましくは0.02〜0.1モルである。
【0052】
(アクリル酸メチル)
本発明において、アクリル酸メチルは、試薬或いは工業原料が何ら制限無く使用できる。アクリル酸メチルの使用量は、通常、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン由来のジアゾニウムの使用量(使用モル数)以上であることが好ましく、該ジアゾニウム塩1モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上、さらに好ましくは5モル以上である。中でも、特定不純物の原因物質(上記式(6)においてBrがClである不純物)をより低減するためには、該ジアゾニウム塩1モルに対して、アクリル酸メチルを好ましくは10モル以上、さらに好ましくは15モル以上使用することが好ましい。なお、アクリル酸メチルの使用量の上限値は、特に制限されるものではないが、後処理の操作性、経済性等を考慮すると、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン由来のジアゾニウム塩1モルに対して、好ましくは50モル、より好ましくは40モルである。
【0053】
(反応条件)
本発明において、銅触媒存在下、上記ジアゾニウム塩とアクリル酸メチルとの混合方法は、副反応をより抑制するためには、アクリル酸メチルが存在している反応系内に銅触媒を添加する態様となることが好ましい。具体的には、上記ジアゾニウム塩とアクリル酸メチルとを混合し、銅触媒を添加する方法、アクリル酸メチルに銅触媒を添加した後、上記ジアゾニウム塩を添加する方法、上記ジアゾニウム塩に、銅触媒を含むアクリル酸メチルを添加する方法等が挙げられる。なお、これら反応に使用するジアゾニウム塩は、上記ジアゾニウム塩の合成で説明した水、および有機溶媒中にジアゾニウム塩が含まれるもの(以下、ジアゾニウム塩が含まれる溶液とする場合もある)をそのまま使用することができる。
【0054】
上記反応において、反応温度は、反応速度、選択率の観点から、15〜60℃、より好ましくは20〜50℃で実施される。なお、この反応温度は、銅触媒、上記ジアゾニウム塩を含む溶液、およびアクリル酸メチルが混合されている反応液の温度を指す。また、反応時間は、特に制限されるものではなく、反応の進行状況を確認しながら、上記温度範囲を維持したまま、撹拌しながら、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5〜5時間反応させればよい。
【0055】
反応終了後は、得られた反応液をアンモニア水などで中和後、酢酸エチルなどで抽出処理を行い、次いで、溶媒を留去することにより、2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを得ることができる。
【0056】
このようにして得られた2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルは、HPLCにより測定した不純物(上記式(6)で示される不純物において、BrがClになったもの)の生成が少ない。そのため、得られた上記式(2)で示される2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルは、アルカリの存在下、チオ尿素と反応させても、上記式(8)で示される特定不純物の生成が少なくなる。塩酸と臭化水素酸との違いにより、このように生成物に差が生じるのは、本発明に使用する化合物に特有の現象であり、従来技術からは予測できないものであった。
【0057】
次に、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造について説明する。
【0058】
(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する工程)
本発明において、アルカリの存在下、上記方法により得られた2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルとチオ尿素との反応は、特許文献1に記載された方法を参考に実施することができる。
【0059】
(アルカリ)
本発明において、使用するアルカリは、具体的には、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、tert−ブトキシカリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。特に、反応速度の向上と特定不純物を抑制することを考慮すると、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸リチウム、tert−ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等を使用することが好ましい。使用するアルカリの量は、2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル1モルに対して、1〜3モルであることが好ましい。
【0060】
(チオ尿素)
本発明において、使用するチオ尿素は、工業的に入手可能なものを使用することができ、その使用量は、2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル1モルに対して、1〜3モルである。
【0061】
(反応条件)
本発明において、上記アルカリの存在下、上記方法により得られた2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルとチオ尿素とを反応させる方法は、特許文献1に記載の方法を参考にすることができる。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アミルアルコールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類などの有機溶媒を使用して反応を行うことができる。これら有機溶媒の中でも、特に反応速度、得られる反応物の純度を考慮すると、アルコール類使用することが好ましい。有機溶媒の使用量は、2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル1gに対して、好ましくは1〜15ml、より好ましくは2〜12mlである。反応温度は25〜120℃、反応時間は1〜50時間で行えばよい。また、上記方法により得られた2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル、アルカリ、およびチオ尿素の添加方法も特に制限されるものではなく、全成分を混合し、上記反応温度で上記時間反応させればよい。
【0062】
上記のような条件下で反応を行った後、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを含む溶液を冷却することにより、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの結晶を得ることができる。また、反応液を減圧下で濃縮し、残留物を飽和炭酸ナトリウム水溶液で中和し、さらに、水およびエーテルを加え、冷却することにより、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの結晶を得ることもできる。この結晶は、通常の方法、例えば、水で洗浄し、乾燥することにより、精製することができる。
【0063】
この反応に使用した原料である2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルは、上記式(8)で示される特定不純物の原因物質(上記式(6)においてBrがClである化合物)を殆ど含まないため、得られた5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンには該特定不純物が殆ど生成されない。下記の実施例で示すが、特に、試薬の使用量、種類、反応条件等を調整すれば、特定不純物の量を0.1質量%以下とすることができ、条件の最適化を行えば、HPLCの検出限界値以下とすることができる。そのため、得られた5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンは、次の塩酸塩とする反応に好適に使用することができる。
【0064】
(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩を製造する工程)
上記のような方法で単離された5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンは、特定不純物が非常に低減されたものとなる。そのため、得られた5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンと塩化水素とを反応させて、上記式(4)で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩としても、非常に高純度の上記式(4)で示される塩酸塩を得ることができる。特に、上記の特定不純物が塩酸塩となったものを殆ど含むことがないため、上記式(4)で示される塩酸塩の精製が容易となる。
【0065】
上記式(4)で示される塩酸塩を製造する方法を例示すると、得られた5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを、3〜20倍の塩化水素を含む水溶液に溶解させ、還流温度下で加水分解を行い、次いで、得られた水溶液を冷却することにより、上記式(4)で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩を結晶として取り出すことができる。この結晶は、公知の方法で精製することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。
【0067】
実施例1
(2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルの製造)
4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン14.5g(60mmol)を、温度計を備えた3つ口フラスコに仕込み、メタノール55mL、アセトン140mlを加え、溶解させ、冷却した。次いで、35質量%の塩酸19.4g(186mmol)を添加し、2℃まで冷却した。亜硝酸ナトリウム4.72g(68mmol)を水8.1mlに溶解させ、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンを含む溶液が5℃を超えないように亜硝酸ナトリウムを溶解させた該溶解液を滴下した。滴下後、4℃で20分間攪拌し、ジアゾニウム塩への転化率をHPLC(高性能 液クロマトグラフ)で確認すると99.0%(換算値59.4mmol)であった。次いで、アクリル酸メチル93.0g(1080mmol)を添加し、38℃まで昇温し、酸化銅(I)0.54g(3.78mmol)を、様子を見ながら添加した。38℃で3時間攪拌し、溶媒を留去し、酢酸エチル110ml、28%アンモニア水60mlを加え、有機層を水洗し、乾燥した後、溶媒を留去して2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル19.21g(収率92.0%)を得た。特定不純物の原因物質(上記式(6)においてBrがClである不純物)は、HPLCでは確認できなかった。
【0068】
(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造)
次に、温度計を備えた3つ口フラスコに、上記方法で得られた2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを0.89g、エタノール7ml、チオ尿素0.22g、酢酸ナトリウム0.23g仕込み、還流下24時間攪拌した。反応後、冷却し、得られた結晶をろ取し、乾燥した。その結果、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの微黄色結晶0.44g(収率48.5%)を得、HPLC(高性能 液クロマトグラフ)により純度を確認したところ、純度は97.72質量%、特定不純物は検出されなかった。
【0069】
実施例2 (塩酸塩の製造)
実施例1で得られた5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノン0.4gをジムロート還流管と温度計を備えた3つ口フラスコに仕込み、1.0mol/L塩酸水溶液を4.5mL加え、室温で溶解させた。溶媒を還流させながら4時間攪拌を行い、加水分解を行った。反応後、系内(得られた反応液)を1.5時間で5℃まで冷却し、結晶化させた。得られた結晶をろ過し、真空で12時間乾燥させ、(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩の白色結晶0.41g(収率92.3%)を得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.82質量%であり、特定不純物が塩酸塩となった不純物は検出されなかった。
【0070】
実施例3
(2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルの製造)
実施例1において、アクリル酸メチルの添加量を52.7g(612mmol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル19.0g(収率91.2%)を得た。特定不純物の原因物質(上記式(6)においてBrがClである不純物)は、HPLC(高性能 液クロマトグラフ)で確認したところ0.04質量%であった。
【0071】
(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造)
次に、実施例1において、上記の方法により得られた特定不純物の原因物質を0.04質量%含む2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの微黄色結晶0.43g(収率47.4%)を得、HPLC(高性能 液クロマトグラフ)により純度を確認したところ、純度は97.89質量%、特定不純物0.04質量%であった。
【0072】
実施例4(塩酸塩の製造)
実施例2において、実施例3で得られた特定不純物を0.04質量%含む5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを使用した以外は、実施例2と同様の操作を行った。その結果、(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩の白色結晶0.40g(収率90.5%)を得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.84質量%であり、特定不純物が塩酸塩となった不純物は未検出であった。
【0073】
実施例5
(2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルの製造)
実施例1において、アクリル酸メチルの添加量を31.0g(360mmol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル18.9g(収率90.6%)を得た。特定不純物の原因物質は、HPLC(高性能 液クロマトグラフ)で確認したところ0.36質量%であった。
【0074】
(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造)
次に、実施例1において、上記の方法により得られた特定不純物の原因物質を0.36質量%含む2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの微黄色結晶0.42g(収率46.1%)を得、HPLC(高性能 液クロマトグラフ)により純度を確認したところ、純度は97.64質量%、特定不純物0.35質量%であった。
【0075】
比較例1
(2−ブロモ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルの製造)
4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリン14.5g(60mmol)を、温度計を備えた2つ口フラスコに仕込み、メタノール55mL、アセトン140mlを加え、溶解させ、冷却した。次いで、47質量%臭化水素酸32.0g(186mmol)を添加し、2℃まで冷却した。亜硝酸ナトリウム4.72g(68mmol)を水8.1mlに溶解させ、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンを含む溶液が5℃を超えないように、亜硝酸ナトリウムを溶解させた該溶解液を滴下した。滴下後、4℃で20分間攪拌し、ジアゾニウム塩への転化率をHPLCで確認すると99.1%(換算値59.5mmol)であった。次いで、アクリル酸メチル93.0g(1080mmol)を添加し、38℃まで昇温し、酸化銅(I)0.54g(3.78mmol)を、様子を見ながら添加した。38℃で3時間攪拌し、溶媒を留去し、酢酸エチル20ml、28%アンモニア水10mlを加え、有機層を水洗し、乾燥した後、溶媒を留去して、2−ブロモ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル20.76g(収率88.2%)を得た。HPLC(高性能 液クロマトグラフ)により純度を確認したところ、上記式(6)で示される不純物(特定不純物の原因物質)は0.78質量%であった。
【0076】
(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造)
次に、温度計を備えた3つ口フラスコに、上記方法で得られた特定不純物の原因物質を0.78質量%含む2−ブロモ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを1g、エタノール7ml、チオ尿素0.22g、酢酸ナトリウム0.23g仕込み、還流下5時間攪拌した。反応後冷却し、得られた結晶をろ取し、乾燥した。その結果、5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの微黄色結晶0.40g(収率45.0%)を得、HPLC(高性能 液クロマトグラフ)により純度を確認したところ、純度は95.40質量%、特定不純物は0.77質量%であった。
【0077】
比較例2 (塩酸塩の製造)
比較例1で得られた特定不純物を0.77質量%含む5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノン0.40gをジムロート還流管と温度計を備えた2つ口フラスコに仕込み、1.0mol/L塩酸水溶液を3.5mL加え、室温で溶解させた。溶媒を還流させながら4時間攪拌を行い、加水分解を行った。反応後、系内(得られた反応液)を1.5時間で5℃まで冷却し、結晶化させた。得られた結晶をろ過し、真空で12時間乾燥させ、(5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩の微黄色結晶0.40g(収率90.4%)を得た。HPLC(高性能 液クロマトグラフ)により純度を確認したところ、純度は98.87質量%、特定不純物が塩酸塩となった不純物は0.56質量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸の存在下、下記式(1)
【化1】

で示される4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]アニリンと亜硝酸塩とを反応させてジアゾニウム塩を製造した後、銅触媒存在下、該ジアゾニウム塩とアクリル酸メチルとを反応させて下記式(2)
【化2】

で示される2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを製造する工程、および、
アルカリ存在下、前記工程で得られた2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルとチオ尿素とを反応させて下記式(3)
【化3】

で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する工程
を含むことを特徴とする5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造方法。
【請求項2】
前記2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチルを製造する工程において、前記ジアゾニウム塩1モルに対して、アクリル酸メチルを5モル以上使用することを特徴とする請求項1に記載の5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法によって上記式(3)で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造した後、該5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}−2−イミノ−4−チアゾリジノンと塩化水素とを反応させて下記式(4)
【化4】

で示される5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩を製造する工程
を含むことを特徴とする5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩の製造方法。
【請求項4】
下記式(2)
【化5】

で示される2−クロロ−3−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]フェニル}プロピオン酸メチル。

【公開番号】特開2009−203197(P2009−203197A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48024(P2008−48024)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】