AC−DCコンバータ
【課題】複数種類の入力電源の利用を可能とした上で回路構成の簡素化を実現させるAC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】リレー回路Rylは、入力電圧Vinの実効値が高いときにトランスTcの巻線比RNを低値に設定させ、誘導起電力及びこれによって生成される出力電圧Voutを低減させる。一方、入力電圧Voutの実効値が低いときにトランスTcの巻線比RNを高値に切換え、誘導起電力及びこれによって生成される出力電圧Voutを上昇させる。即ち、入力電圧Vinの実効値が高いときの出力電圧Voutと低いときの出力電圧Voutは、リレー回路Rylの動作によって其の電圧値の差が低減されるように制御される。
【解決手段】リレー回路Rylは、入力電圧Vinの実効値が高いときにトランスTcの巻線比RNを低値に設定させ、誘導起電力及びこれによって生成される出力電圧Voutを低減させる。一方、入力電圧Voutの実効値が低いときにトランスTcの巻線比RNを高値に切換え、誘導起電力及びこれによって生成される出力電圧Voutを上昇させる。即ち、入力電圧Vinの実効値が高いときの出力電圧Voutと低いときの出力電圧Voutは、リレー回路Rylの動作によって其の電圧値の差が低減されるように制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC−DCコンバータに関し、特に、電気自動車等に搭載される車載用充電装置として用いる際に好適のものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリ容量に関する技術の進歩に伴い、高電力及び長時間の使用に耐え得るバッテリの製品化が進められている。これを受けて、例えば、自動車業界にあっては、かかるバッテリ製品を利用することにより、電動モータを用いた長距離走行を実現させ、この開発成果として、HEV(Hybrid Electric Vehicle)及びEV(Electric
Vehicle)を商品化させるに至っている。
【0003】
EV(Electric Vehicle)は、走行用の電動モータと車載バッテリと車載用充電装置と電力供給用コネクタとが設けられている。車載用充電装置は、商用電力用のプラグ又は急速充電用のプラグが電力供給用コネクタに接続されると、入力される電力を変換させ車載バッテリを充電させるための供給電力を制御する。そして、車載バッテリでは、前段の車載用充電装置から電力が供給され、充電が行われることとなる。
【0004】
一方、HEV(Hybrid Electric Vehicle)にあっても、EVと同様な充電システムを搭載させ、商用電力等から車載バッテリを充電させるものが製品化されている。かかるHEV(Hybrid Electric Vehicle)は、更に、内燃機関による動力系統を備え、電動モータから駆動力を得る場合には車載バッテリの電気エネルギーを消費させ、内燃機関から駆動力を得る場合には化石燃料による熱エネルギーを利用し、これら双方の駆動系の利点を活かすことにより、低燃費走行を実現させている。
【0005】
以下、上述したEV(Electric Vehicle)又はHEV(Hybrid Electric Vehicle)のように、商用電力を車体に接続させて車載バッテリを充電させるシステムをプラグイン式充電システムと呼ぶこととする。また、当該プラグイン式充電システムを搭載させた車両をプラグイン式電気自動車と呼ぶこととする。
【0006】
特開平11−356043号公報(特許文献1)では、回路構成が上述した充電装置に類似するスイッチング電源装置について紹介されている。図13に示す如く、スイッチング電源装置BCS0は、単相交流電源ACmに接続されるACコネクタtinと、単相の交流電圧を整流化させる単相ダイオードブリッジDbr0と、単相ダイオードブリッジDbr0の後段に接続される平滑コンデンサC1と、一次コイル側に中間タップtsを設けたトランスTcと、トランスTcの中間タップts及び第1の端点taに接続され電力の供給経路を切換えるスイッチ回路Rc(特許請求の範囲における切換回路)と、第2の端点tbに接続されたスイッチング素子T5を備え一次コイルL1に流れる一次電流を変動させるドライブ回路Drと、二次コイルT2での誘導起電力を平滑させる平滑回路Sfと、入力電圧Vinの検出信号Svinに基づいてスイッチ回路Rcを切換える電圧判定回路CNTrと、出力電圧Voutの検出信号Svに基づいてドライブ回路を制御させる制御回路CNTdとから構成される。
【0007】
スイッチング電源装置BCS0は、単相ダイオードブリッジDrb0の直後に平滑コンデンサC1が設けられるところ、所謂、コンデンサ・インプット式の回路構成を成すものである。当該スイッチング電源装置BCS0は、単相交流電源ACmが接続されると、単相ダイオードブリッジDbr0にて単相の交流電圧を全波整流波Vdへ変換させ(図14a参照)、後段の平滑回路C1で電荷を蓄積させることにより安定した入力電圧Vinを得る(図14b参照)。この入力電圧Vinは、スイッチ回路Rcを介してトランスTcの一次コイルL1に印加される。
【0008】
ドライブ回路Drは、制御回路CNTdによって駆動されると、一次コイルL1に流れる一次電流を断続的に発生させる。このとき、二次コイルL2は、一次電流の変動に応じて鉄心の磁束が変動するため、この変動に応じて誘導起電力を発生させる。この誘導起電力は、一次電流の通電又は遮断に応じて発生するところ、其の波形は交流又は発振状態とされる。
【0009】
平滑回路Sfは、ダイオードブリッジD1〜D4,及び、リアクトルL3,平滑コンデンサC2,ダイオードD5から構成されている。当該平滑回路Sfは、発振状態の誘導起電力を全波整流させ、その後、直流状態の電力へと変換する。平滑回路Sfから出力される出力電圧Voutは、制御回路CNTdで其の電圧値が認識され、当該制御回路CNTdがドライブ回路Drの動作を制御することにより、出力電圧Voutの電圧値が適宜に調整されることとなる。
【0010】
また、特許文献1に係るスイッチング電源装置BCS0は、ACコネクタtinへ供給される電力が異なる場合、以下の如くスイッチ回路Rcを機能させて、双方の出力電圧Voutに違いが生じないよう制御する。
【0011】
例えば、ACコネクタtinに商用電源(AC100〔V〕)が接続される場合、電圧判定回路CNTrでは、検出回路(図示なし)を介して入力電圧Vinを認識し、AC100〔V〕が印加されている旨の信号Srを出力させる。このとき、スイッチ回路Rcでは、信号Srに基づいてスイッチを端子taに導通させる。従って、一次コイルL1では、端子ta〜端子tbの区間に一次電流が流れることとなる。尚、AC100〔V〕を整流化させた場合、入力電圧Vinは140〔V〕とされる。
【0012】
これに対し、ACコネクタtinに車載バッテリ(DC14〔V〕)が接続される場合、電圧判定回路CNTrでは、DC14〔V〕が印加されている旨の信号Srを出力させる。このとき、スイッチ回路Rcでは、信号Srに基づいてスイッチを中間タップtsに導通させる。この中間タップtsは、一次電流の流れる区間をts〜tbの間に設定するものであり、区間ts〜tbにおける一次コイルL1の巻数は、区間ta〜tbにおける一次コイルの巻数の1/10程度に設定されている。
【0013】
従って、DC14〔V〕が入力される場合の巻線比RN2(二次巻線N2/一次巻線N1)はAC100〔V〕時の巻線比RN1の10倍程度となるため、スイッチング電源装置BCS0から出力される出力電圧Voutは、DC14〔V〕又はAC100〔V〕の何の電力が与えられても、略同値若しくは同様の状態に制御される。
【0014】
かかるスイッチング電源装置は、前述したプラグイン式電気自動車の充電装置に適用させることが可能である。この場合の車載用充電装置は、車体の電力供給用コネクタへ異なる電力が供給されても、トランスTcの巻線比RNを適宜に設定することで、何れの場合にも出力電圧Voutに違いを与えずして、車載バッテリBmを好適に充電させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−356043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、図14(c)に示す如く、全波整流波Vdにおけるピーク値の近傍で、平滑コンデンサC1に流れる電流Iinが瞬時的に発生する。このような入力電流Iinは、高調波の発生原因とされ、交流電源Acmに接続される電気機器の動作を不安定にさせるとの問題が生じる。
【0017】
また、このようなコンデンサ・インプット式の電力変換回路は、入力電流Iinがによって、力率の低下を招くこととなる。このため、当該電力変換回路は、所望の電力を出力させるため、力率低下を補うよう入力電流Iinを大きくさせる回路設計が要求される。従って、ダイオード,スイッチング素子,平滑コンデンサC2として用いられる電解コンデンサ,この他の回路素子について、定格電流の高い素子を選択しなければならず、回路装置の大型化及び高コスト化を招くとの問題が生じる。
【0018】
更に、このような電力変換回路を車載用充電装置として用いる場合、高調波の発生に応じて周辺の車載電装機器へ悪影響を及ぼすことが懸念される。特に、ACコネクタからの供給電源をセンシングしているECU(Elctric Control
Unit)等では、其の悪影響による被害が甚大となり得る。
【0019】
このため、高調波による弊害を回避すべく、力率を改善させることを企図した電力変換回路が提案されている。図15は其の一例が示されており、具体的には、単相ダイオードブリッジDbrと平滑コンデンサC1との間に力率改善回路PFCが追加構成される。また、力率改善回路PFCにおけるスイッチング素子Tpの制御を行う制御マイコンCNTpが追加されている。かかる電力変換回路によれば、スイッチング素子Tpの通電電流を適宜に制御させると、入力電圧(全波整流波)と相似形の入力電流Iinが生成されるため、力率が改善され、これにより、周辺の電気機器への悪影響は一定の範囲で改善される。しかし、このような電力変換回路では、力率改善回路PFCを追加構成させなければならないので、回路の複雑化を招き、結局、装置の大型化及び高コスト化を招いてしまう。
【0020】
更に、図13及び図15の何れの電力変換回路にあっても、平滑コンデンサC1が必ず設けられることとなる。当該平滑コンデンサC1は、入力電圧の大きさに応じてキャパシタンスが設定されるため、一般的には素子体格の大きい電解コンデンサが使用される。従って、車載用充電装置にあっては、数百ボルトオーダーの使用に耐える電解コンデンサを選定しなければならず、これを満たす電解コンデンサを用いれば、素子体格の肥大化を招いて、レイアウト上の困難を極める。
【0021】
加えて、昨今の自動車は、複数の国を対象として製造・販売等が行なわれている。この場合、プラグイン式電気自動車の使用が予定されている国A〜Cのうち、商用電源の電圧値が高い国Aに合わせて平滑コンデンサC1(電解コンデンサ)を選定しなければならない。従って、或るプラグイン式電気自動車について言えば、商用電源の電圧値が大きい国Aで使用されないにも関わらず、当該国Aに対応させたスペックの充電装置を搭載させなければならないという問題も生じる。
【0022】
本発明は上記課題に鑑み、複数種類の入力電源の利用を可能とした上で回路構成の簡素化を実現させるAC−DCコンバータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、第1の発明では次のようなAC−DCコンバータの構成とする。即ち、多相交流電圧を整流化させる多相ダイオードブリッジと、異なる3点以上の接点箇所を具備する一次コイル及び当該一次コイルに流れる一次電流の変動に応じて誘導起電力を発生させる二次コイルを具備するトランスと、前記一次電流の通電又は遮断を断続的に制御する第1のスイッチング素子を有し当該第1のスイッチング素子の動作に応じて前記一次電流の電流値を変動させるドライブ回路と、前記3点以上の接点箇所のうち複数の接点箇所に接続され且つ前記複数の接点箇所の何れかを選択的に通電させることにより前記一次電流が前記一次コイルを流れる通電区間を切換える切換回路と、前記誘導起電力を平滑させる平滑回路とを備えることとする。
【0024】
また、第2の発明では次のようなAC−DCコンバータの構成としても良い。即ち、多相交流電圧を整流化させる多相ダイオードブリッジと、異なる3点以上の接点箇所を具備する一次コイル及び当該一次コイルに流れる一次電流の変動に応じて誘導起電力を発生させる二次コイルを具備するトランスと、前記3点以上の接点箇所のうち複数の接点箇所に対応して設けられた第2のスイッチング素子を有する切換回路と、前記誘導起電力を平滑させる平滑回路とを備え、
前記切換回路は、前記第2のスイッチング素子の何れかを選択的に駆動させることにより前記一次電流の通電区間を切換え、且つ、前記第2のスイッチング素子のうち選択的に駆動させるスイッチング素子について前記一次電流の通電又は遮断を断続的に制御することとする。
【0025】
これらの発明について好ましくは、前記切換回路は、実効値の高い第1の多相交流電圧が入力された場面で前記通電区間を長く設定し、実効値の低い第2の多相交流電圧が入力された場面で前記通電区間を短く設定することとする。
【0026】
より好ましくは、前記第1の多相交流電圧の実効値をV1rmsとし、前記第2の多相交流電圧の実効値をV2rmsとし、前記切換回路によって前記第1の多相交流電圧のために設定された第1の通電区間に巻回される前記一次コイルの巻数をN1aとし、前記切換回路によって前記第2の多相交流電圧のために設定された第2の通電区間に巻回される前記一次コイルの巻数をN1sとすると、これらの値は、V1rms/N1a=V2rms/N1s,の関係を充足することとする。
【0027】
また、前記第1の多相交流電圧の実効値が前記第2の多相交流電圧の実効値の約2倍とされる関係が予定される場合において、
前記トランスの一次コイルは、一端の接点箇所に導通される第1の端点と、他端の接点箇所に導通される第2の端点と、前記第1の端点から前記第2の端点までの巻線を等分させる接点箇所に導通されるセンタータップとを有することとしても良い。
【0028】
上述した全ての発明について好ましくは、商用電力の入力が可能なプラグイン式電気自動車に搭載され、前記商用電力に基づいて車載バッテリを充電する車載用充電装置として用いられることとする。このとき、前記商用電力は3相交流電源から供給されることとするのが良い。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るAC−DCコンバータは、3相交流電源から電力を取得し、各相電圧を全波整流させることで入力電圧に平滑作用を与え、入力側での平滑コンデンサを省略可能とさせ、以って、回路構成の簡素化・装置の低コスト化が図られるという利点を利用するものである。
【0030】
そして、このような平滑作用をワン・コンバータ方式の電力変換回路で実現させ、併せて、入力電圧の値に応じてトランスの巻線比を切換える機能を付加させている。これにより、異なる値の入力電源に対して使用可能なAC−DCコンバータは、ワン・コンバータ方式の回路を採用することで、力率改善回路を用いずして高調波を解消させる効果、及び、回路構成を簡素化させる効果、の双方の効果が奏されることとなる。また、当該AC−DCコンバータは、回路構成の簡素化が図られることにより、装置の小型化及び低コスト化に資するものとなる。
【0031】
特に、AC−DCコンバータが車載用充電装置とされ、当該装置を搭載させるプラグイン式電気自動車の使用予定国が複数国に跨り且つ各国での商用電源の値が異なる条件であっても、先に説明したように、本発明に係る車載用充電装置は、入力側の平滑コンデンサが省略されることとなるため、商用電源の電圧値(入力値)に影響されることなく、当該装置の体格を自由に設計することが可能となる。また、かかる車載用充電装置にあっては、高調波の発生を解消させているので、プラグイン式電気自動車へ搭載されている車載電装機器・ECU等の安定動作を保障することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態に係る車載用充電装置の回路構成を示す図。
【図2】3相交流電圧及び其の全波整流後の波形を示すタイムチャート。
【図3】入力電圧検出回路の構成例を示す図。
【図4】実施の形態に係る車載用充電装置の他の回路構成を示す図。
【図5】平滑回路の構成例を示す図。
【図6】平滑回路の構成例を示す図。
【図7】切換回路の構成例を示す図。
【図8】切換回路の構成例を示す図。
【図9】切換回路の構成例を示す図。
【図10】実施例に係る切換回路及びトランスでの動作を示す図。
【図11】実施例に係る切換回路及びトランスでの動作を示す図。
【図12】実施例に係る入力電圧と出力電圧との関係を示す図。
【図13】従来例に係る車載用充電装置の回路構成を示す図。
【図14】従来例における入力電圧と入力電流とを示すタイムチャート。
【図15】他の従来例に係る車載用充電装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1に示す如く、本実施の形態に係るAC−DCコンバータBCS1は、以下の如く、ワン・コンバータ方式の電力変換回路が用いられている。具体的には、多相ダイオードブリッジDbrとドライブ回路Drと切換回路RcとトランスTcと平滑回路Sfと電圧検出回路INSvと電流検出回路INSiと信号処理装置CNT1とから構成される。尚、AC−DCコンバータは、本実施の形態においてプラグイン式自動車に搭載される充電装置であるところ、以下、車載用充電装置BCS1と呼ぶこととする。また、当該車載用充電装置BCS1は、入力コネクタtinと出力端子toutとが設けられ、入力コネクタtinには、3相の商用電源ACtを印加させる電源プラグが接続され、出力端子tioutには、車載バッテリBmが接続される。
【0034】
商用電源ACtは、3相の交流電源(r相/s相/t相)が用いられる点で従来技術と異なる。かかる3相の商用電源ACtは、例えば、日本国の場合、AC200〔V〕,AC400〔V〕が供給され、欧州の場合、AC380〔V〕,AC400〔V〕が供給され、その他の国にあっても、各電力会社によって、其の電圧値(多相交流電圧)が多種多様に設定されている。尚、これらの電圧値は実効値を示すものとする。
【0035】
入力コネクタtinは、上述した複数種類の商用電源(3相交流電源)が印加されるよう、複数種類のプラグ形状に対応した端子が形成される。当該入力コネクタtinは、この他、急速充電プラグ用のコネクタを別途設けるようにしても良い。
【0036】
出力端子toutは、図示の如く、車載用充電装置BCS1の後段側に設けられ、平滑回路Sfの出力電圧Voutが印加されるように配線されている。かかる出力端子toutは、更に、後段部に電源ラインが接続され、出力電圧Voutが電源ラインを介して車載バッテリBmへ印加されるよう配線されている。以下、車載用充電装置について、車載バッテリBmが接続される方向を出力側と呼び、商用電力ACtが接続される方向を入力側と呼ぶことがある。
【0037】
車載バッテリBmは、リチウムイオン電池等のバッテリセルがバッテリモジュール内に複数配設され、総じて400〔V〕程度の直流電圧を発生させる。車載バッテリBmから出力される電力は、バッテリ電力から3相交流電力を生成させるメインインバータ装置と、車載電装機器及びサブバッテリ(DC12〔V〕程度)へ電力を供給させるDC−DCコンバータとに分配される。そして、インバータ回路では、車載バッテリBmの直流電力を3相交流電力へと変換させ、駆動モータ(3相同期モータ,3相誘導モータ等)へ3相交流電力を供給する。このとき、駆動モータは、入力された電力に応じてトルクを発生させ、駆動輪にトルクを伝えることで、車両の静動または車速のコントロールを適宜に行なう。
【0038】
多相ダイオードブリッジDbrは、ダイオードDa〜Dfによってブリッジ状に配線され、これらの構成によって各相電圧(r相電圧/s相電圧/t相電圧)に対応するア−ムが形成される。このアームでは、3相交流電圧Vactが印加されると(図2a参照)、各相に対応する相電圧(Vr/Vs/Vt)を全波整流させる(図2b参照)。従って、多相ダイオードブリッジDrbは、全波整流された各相電圧(Vr/Vs/Vt)を順次出力させるので、これによって現われる出力電圧Vinは、図2(c)に示す如く、一定の範囲ΔVにて変動するに止まり、これにより、平滑作用を受けることとなる。
【0039】
仮に、AC200〔V〕の単相交流電圧が印加される場合について検討すると、単相の場合の出力電圧は、各々の整流波が位相差πとされるので、282〔V〕〜0〔V〕の範囲で変動することとなってしまう。しかし、本実施の形態のように平衡3相交流電源を採用することにより、出力電圧Vinは、変動範囲が282〔V〕〜245〔V〕の範囲内に収まるという効果が奏される。即ち、入力電源が単相から3相へ変更されることで、出力電圧Vinの変動範囲が約13%に抑えられることとなる。また、本実施の形態では入力電源として3相交流電源を取り扱っているが、これに限らず、更に多相の電源を用いることにより、此処に説明した平滑作用がより顕著なものとなる。
【0040】
また、本実施の形態にあっては、ワン・コンバータ方式の電力変換回路が採用されているので、コンデンサ・インプット方式で用いられる入力側の平滑回路が省略される。従って、装置自体の小型化が図られ、また、高調波の発生も解消される。
【0041】
車載用充電装置BCS1には、入力電圧Vinを検出する電圧検出回路(図示なし)が設けられる。当該電圧検出回路は、図2(a)に示す如く、抵抗Rm及びRnから成る分圧抵抗とし、分圧点から入力電圧Vinに関する検出信号Svinを出力するようにしても良い。また、図2(b)に示す如く、入力コネクタtinと多相ダイオードブリッジDbrとの間にセンサ回路SCN2を設け、各々の電源ラインから相電圧に関する検出信号Svin(r),Svin(s),Svin(t)を出力させるようにしても良い。尚、入力電圧Vinを検出するための回路については、同図では単に一例として挙げているに過ぎず、現時点において公知の技術を適宜利用することが可能である。
【0042】
トランスTcは、鉄心を具備し、当該鉄心について一次コイルL1と二次コイルL2とが巻回されている。このうち、本実施の形態に係る一次コイルL1は、端点ta及び中間タップts及び端点tbを具備している。中間タップtsは、一次コイルL1のワイヤー線の途中の接点箇所へ電気的に接続されている端子であって、端点ta〜中間タップts,又は,端点tb〜中間タップtsの巻線Nを決定するものである。また、端点ta及び端点tbは、一次コイルL1の各端部における接点箇所に導通される。一方、二次コイルL2は、本実施の形態の場合、中間タップを具備しない通常のコイルが用いられる。かかるトランスTcでは、一次コイルL1に流れる一次電流が変動すると、鉄心を貫通する磁束が変動する。このとき、二次コイルL2では、磁束変化に応じて誘導起電力を発生させることとなる。先に説明したように、ドライブ回路Drから印加される電圧は交流状態とされるので、一次電流及び誘導起電力についても、時間経過に応じて其の極性が変化することとなる。
【0043】
ここで、一次コイルL1における区間ta〜tsまでの巻数をN1aとし、一次コイルにおける全区間ta〜tbの巻数(全巻数)をN1bとし、二次コイルL2にける全巻数をN2とする。このとき、区間ta〜tsにのみ一次電流が流れる場合、トランスTcの巻線比RNaは、RNa=N2/N1a,で現される。一方、全区間ta〜tbに一次電流が流れる場合、このときの巻線比RN2は、RN2=N2/N1bで現される。
【0044】
切換回路Rcは、入力端子と第1の出力端子と第2の出力端子とスイッチ手段とを備えている。本実施の形態の場合、入力端子はドライブ回路Drの一方のアームに接続され、第1の出力端子は一次コイルL1の端点taに接続され、第2の出力端子は一次コイルL1の中間タップtsに接続される。そして、切換回路Rcは、スイッチ手段によって、第1の出力端子又は第2の出力端子の何れか一方を選択し、選択された方の出力端子を入力端子に導通させ、これにより、電力の供給ルートを切換える。
【0045】
かかる切換回路Rcは、一方の出力端子が端点taに接続され他方の出力端子が中間タップtsに接続されているので、スイッチ手段によって電力の供給ルートを変更させると、一次コイルL1における一次電流の通電区間は、区間ta〜ts,又は,区間ta〜tb,の何れかに切換えられることとなる。即ち、切換回路Rcは、入力端子に導通させる出力端子を切換えることで、一次電流の通電区間を適宜に切換える役割を担う。尚、切換回路Rcに設けられるスイッチ手段については、その形態が種々改変され得るものであり、その具体例については追って詳述する。
【0046】
本実施の形態で用いられるドライブ回路Drは、パワートランジスタT1〜T4(特許請求の範囲における第1のスイッチング素子)から成るフルブリッジ回路が採用されている。かかるドライブ回路Drは、両サイドの電源ラインを介して多相ダイオードブリッジDbrに接続されている。また、パワートランジスタT1及びT2の接点は、切換回路Rcの入力端子に接続され、パワートランジスタT3及びT4の接点は、トランスTcの端点tbに接続されている。また、各々のトランジスタT1〜T4は、ゲート部が信号処理装置CNT1に接続され、当該信号処理装置CNT1から出力される駆動信号Sdによって、各々がON/OFF制御される。従って、当該ドライブ回路Drは、信号処理装置CNT1から駆動信号Sdを受信すると、各々のパワートランジスタが所定のデューティ比にて駆動され、切換回路Rcと端点tbとの間に断続的な電圧を印加させる。
【0047】
この断続的に発生する電圧は、切換回路Rcを介して一次コイルL1へ印加されるので、切換回路Rcによって選択された一次コイルL1の通電区間では、其の区間において、高い周波数で一次電流の通電又は遮断が繰返される。即ち、パワートランジスタT1〜T4が駆動されると、この動作に応じて一次電流の電流値が変動することとなる。従って、トランスTcでは、このような断続的な制御により一次電流の電流値が変動し、これにより、誘導起電力V2を発生させている。
【0048】
尚、図1に示す如く、フルブリッジ回路の端部にシャント抵抗Rkを設け、信号処理装置CNT1にてドライブ回路Drの電流値Skを監視するようにしても良い。この場合、パワートランジスタT1〜T4の動作異常を検知することが可能となる。
【0049】
また、図1のドライブ回路Drはフルブリッジ回路が採用されているが、当該ドライブ回路Drは、かかる形態に限定されるものではない。例えば、図4に示す如く、単体のパワートランジスタT5(特許請求の範囲における第1のスイッチング素子)によってドライブ回路Drを構成させても良い。同図でのパワートランジスタT5は、端点tbと多相ダイオードブリッジ回路Dbrとの間に介挿され、信号処理装置CNT1から受けた駆動信号Sdに応じて通電/遮断を繰返し、これにより、一次コイルL1に一次電流を発生させる。また、当該ドライブ回路Drは端点ta側に接続させても良い。この場合、切換回路Rcは、入力端子が他方側の電源ラインに接続され、出力端子の各々は、中間タップts及び端点tbへ接続されることとなる。
【0050】
平滑回路Sfは、トランスTcの二次コイルL2へ接続され、当該二次コイルから出力された誘導起電力V2を平滑させ、直流状態に変換された出力電圧Voutを後段の出力端子Voutへ印加する。
【0051】
図5は、平滑回路Sfの構成例が示されている。例えば、図5(a)に示される平滑回路Sfは、ダイオードDp及びDqとリアクトルL3と平滑コンデンサC2とから構成される。ダイオードDp及びDqのアノードは、各々が二次コイルL2の端点に接続される。また、双方のダイオードDp及びDqは、カソード側が互いに接続され、其の接点は、リアクトルL3の入力側に接続されている。かかるリアクトルL3は、電源ラインに介挿されるように配線される。そして、平滑コンデンサC2は、リアクトルL3の後段にて、二次コイルL2に対して並列接続される。かかる平滑コンデンサC2は、数百Vオーダーの電圧を出力させることが要求されるところ、一般には電解コンデンサ等が用いられる。
【0052】
また、図5(b)に示されるような平滑回路Sfとしても良い。この場合、二次コイルL2にセンタータップが設けられる。そして、当該二次コイルL2の端点にダイオードDp及びDqのカソードが各々接続され、当該ダイオードDp及びDqのアノードは、互いに接続される。この接点は、平滑コンデンサC2の陰極側に接続される。また、平滑コンデンサC2の陽極側は、リアクトルL3を介して二次コイルL2のセンタータップに接続される。
【0053】
これらの平滑回路Sfは、共に、極性が素早く変動するような交流状態の誘導起電力V2が印加されると、これに応じて生じる電荷を平滑コンデンサC2へ蓄積させ、力流電力を発生させる。但し、このような平滑回路については、既に周知の技術とされているため、動作等の説明を省略することとする。
【0054】
図6は、平滑回路の他の構成例が示されている。図6(a)の平滑回路Sfは、ダイオードDh〜DkとパワートランジスタTj及びTkとリアクトルL3と平滑回路C2とから構成される。ダイオードDh〜Dkはブリッジ状に配線され、併せて、図示の如く、パワートランジスタTj及びTkが接続されている。かかる平滑回路Sfは、パワートランジスタTj及びTkが制御されることで、平滑コンデンサC2へ流れる電流の制限が行なわれる。先に説明したドライブ回路Drにあっても、パワートランジスタの駆動デューティを調整することにより、出力電圧Voutを所望の値に調整することは可能である。但し、このような機能を平滑回路Sfに追加させることで、より正確に出力電圧Voutを調整させることが可能となる。また、例えば、ドライブ回路Dr側の駆動デューティを固定値とし、平滑回路Sf側の駆動デューティを制御することにより、出力電圧Voutを調整するようにしても良い。
【0055】
図6(b)の平滑回路Sfは、上述したダイオードブリッジDh〜DkがパワートランジスタTh〜Tkへ置換えられている。一般に、ダイオードでの電圧降下と比較してトランジスタでの電圧降下は低く抑えられるので、かかる構成とした場合、出力効率の向上が図られる。尚、ここに紹介した平滑回路Sfは、例示的なものに過ぎず、この他、現時点における公知の技術を適宜取入れることが可能である。
【0056】
電圧検出回路INSvは、例えば、分圧抵抗R1及びR2によって構成され、この回路の分圧点から出力電圧Voutに関する検出信号Svを出力させる。
【0057】
電流検出回路INSiは、例えば、シャント抵抗R3及びオペアンプAMPとから構成され、シャント抵抗R3で検出した電流値に比例する検出信号Siを出力させる。
【0058】
信号処理装置CNT1は、図1に示す如く、第1の制御回路CNTdと第2の制御回路CNTrとから構成される。当該信号処理装置CNT1は、CPU及びメモリ回路及びAD変換回路,この他、所定の信号を生成・出力させるために必要な回路が構成される。尚、信号処理装置CNT1については、ワンチップされているか否か又はCPUの数など、その回路構成を問うものではない。かかる信号処理装置CNT1には、入力電圧Vinを示すSvin,出力電圧Voutを示す検出信号Sv,充電装置内の二次側の電源ラインを流れる電流値を示す検出信号Siが入力される。そして、第1の制御回路CNTdでは、検出信号Si及び検出信号Svに基づいてパワートランジスタT1〜T4の駆動デューティを規定し、これに即した駆動信号を各々出力させる。かかる制御回路CNTdは、充電装置の出力電力が定電圧または定電流となるように適宜にモードを設定し、これにより、充電装置の出力電圧Vout又は出力電流を制御する。
【0059】
一方、第2の制御回路CNTrは、入力電圧Vinの値に基づいて切換信号Srを出力させる。具体的に説明すると、入力電圧Vinを示すSvinが所定の閾値より高い場合、入力電圧Vinが高い旨の信号(以下、切換信号Sraと呼ぶ)を出力させる。これに対し、入力電圧Vinを示すSvinが所定の閾値より低い場合、入力電圧Vinが低い旨の信号(以下、切換信号Srbと呼ぶ)を出力させる。
【0060】
図7(a)は、切換回路Rcの一形態とされるリレー回路Rylが示されている。当該リレー回路Rylは、入力端子teと第1の出力端子t1と第2の出力端子t2とが設けられ、スイッチ機構SW及びソレノイドコイルCoから成るスイッチ手段を備えている。スイッチ機構は、従動端子を備え、ソレノイドコイルCoの極性に応じて動作する。ソレノイドコイルCoは、切換信号Sraが入力されると、従動端子へ斥力を与え、入力端子teと第1の出力端子t1とを導通させる。また、切換信号Srbが入力されると、従動端子を引き寄せ、入力端子teと第2の出力端子t2とを導通させる。
【0061】
従って、充電装置BCS1へ閾値より高い多相交流電源が接続されると、リレー回路Rylは、信号処理装置CNT1から切換信号Sraを受け、これにより、入力端子teと第1の出力端子taとを導通させる。この場合、ドライブ回路Drからの印加電圧は通電区間ta〜tbに加えられることとなり、当該リレー回路Rylは、一次電流を流す通電区間を長く設定することとなる。
【0062】
また、充電装置BCS1へ閾値より低い多相交流電源が接続されると、リレー回路Rylは、信号処理装置CNT1から切換信号Srbを受け、これにより、入力端子teと第2の出力端子tsとを導通させる。この場合、ドライブ回路Drからの印加電圧は通電区間ts〜tbに加えられることとなり、当該リレー回路Rylは、一次電流を流す通電区間を短く設定することとなる。
【0063】
このような制御が行われると、リレー回路Rylは、入力電圧Vinの実効値が高いときにトランスTcの巻線比RNを低値に設定させ、誘導起電力及びこれによって生成される出力電圧Voutを低減させる。一方、入力電圧Voutの実効値が低いときにトランスTcの巻線比RNを高値に切換え、誘導起電力及びこれによって生成される出力電圧Voutを上昇させる。即ち、入力電圧Vinの実効値が高いときの出力電圧Voutと低いときの出力電圧Voutは、リレー回路Rylの動作によって其の電圧値の差が低減されるように制御される。
【0064】
本実施の形態では、車載用充電装置BCS1に2種類の商用電源が接続されるものとし、このうち、一方の商用電源ACt1が接続された場合、このときの電圧(第1の多相交流電圧)の実効値をV1rmsとする。また、他方の商用電源ACt2が接続された場合、このときの電圧(第2の多相交流電圧)の実効値をV2rmsとする。但し、実効値V1rms>実効値V2rms,とする。
【0065】
また、一次コイルL1における通電区間ta〜tb(全区間)は、商用電源ACt1が接続されたときに設定される区間であって、当該区間における巻数はN1aとする。また、一次コイルL1における通電区間ts〜tb(一部区間)は、商用電源ACt2が接続されたときに設定される区間であって、当該区間における巻数はN1sとする。
【0066】
本実施の形態に係る一次コイルL1は、中間タップtsが,V1rms/N1a=V2rms/N1s,の関係を充足するように、当該中間タップtsとの接点箇所が設定されている。このため、商用電源ACt1を接続した場合の誘導起電力V2(1)は、二次コイルL2の巻数をN2とすると、V2(1)=(N2/N1a)・V1rms,と表現される。一方、商用電源ACt2を接続した場合の誘導起電力V2(2)は、V2(1)=(N2/N1s)・V2rms,と表現される。従って、双方の場合の誘導起電力は、「V1rms/N1a=V2rms/N1s」の関係を有するところ、共に、同じ電圧値とされる。然るに、平滑回路Sfからの出力電圧Voutは、商用電源ACt1又は商用電源ACt2の何れが接続されても同一の電圧値を出力させることとなる。
【0067】
故に、後段の車載バッテリBmは、商用電源ACt1又は商用電源ACt2の何れが接続されても、其の接続される電源に関わり無く、同じ電圧値で充電されることとなる。従って、かかる充電装置によると、充電時における詳細な制御、例えば、過充電保護に関する制御の実効が図られることとなる。
【0068】
上述の如く、本実施の形態に係る車載用充電装置BCS1は、3相交流電源から電力を取得し、各相電圧を全波整流させることで入力電圧に平滑作用を与え、入力側での平滑コンデンサを省略可能とさせ、以って、回路構成の簡素化・装置の低コスト化が図られるという利点を利用するものである。
【0069】
そして、このような平滑作用をワン・コンバータ方式の電力変換回路で実現させ、併せて、入力電圧の値に応じてトランスTcの巻線比RNを切換える機能を付加させている。これにより、異なる値の入力電源に対して使用可能な車載用充電装置BCS1は、ワン・コンバータ方式の回路を採用することで、力率改善回路を用いずして高調波を解消させる効果、及び、回路構成を簡素化させる効果、の双方の効果が奏されることとなる。また、当該AC−DCコンバータは、回路構成の簡素化が図られることにより、装置の小型化及び低コスト化に資するものとなる。
【0070】
また、かかる車載用充電装置にあっては、高調波の発生を解消させているので、プラグイン式電気自動車へ搭載されている車載電装機器・ECU等の安定動作を保障することとなる。
【0071】
尚、リレー回路Rylは、其の配線方法が上述した態様に限定されるものでない。例えば、図7(b)に示す如く、ドライブ回路Drのもう一方の電源ラインに入力端子teを接続させ、第1の出力端子t1を中間タップに接続させ、第2の出力端子t2を端点tbに接続させても良い。このような態様でリレー回路Rylを切換制御させても、上述同様の効果が得られる。
【0072】
また、図8(a)は、切換回路の更なる改変例が示されている。当該切換回路Sc1は、2つのサイリスタ(特許請求の範囲における第2のスイッチング素子)によって構成され、双方のサイリスタのアノード側は入力端子teへ接続される。また、一方のカソード側は第1の出力端子t1へ接続され、他方のカソード側は第2の出力端子t2へ接続される。そして、各々のゲートには、信号処理装置CNT1から駆動信号Sr1及びSr2が送られる。かかる切換回路Sc1は、第1の出力端子t1に接続されるサイリスタを通電状態にさせることで、一次コイルL1での通電区間をta〜tbの全区間に設定する。一方、第2の出力端子t2に接続されるサイリスタを通電状態にさせることで、通電区間をts〜tbの区間に設定する。即ち、同図の切換回路Sc1は、通電状態とさせるサイリスタを選択することで、電力の供給ルートを変更させ、通電区間の設定動作を行なう。
【0073】
ここでの駆動信号Sr1及びSr2は、サイリスタが自己消弧できないため、通電指令(点弧)と遮断指令(消弧)との双方をゲートへ与える必要がある。尚、これらのサイリスタの替わりに、自己消弧可能なスイッチング素子へ置き換えることも可能である。かかるスイッチング素子は、IGBTまたはMOFET等のパワートランジスタが好ましい。また、此処でのスイッチング素子に限らず、本明細書で記される全てのスイッチング素子について、このようなパワートランジスタが使用可能であることは言うまでもない。
【0074】
図8(b)は、切換回路の更なる改変例が示されている。当該切換回路Sc2は、2つのスイッチング素子Ty及びTz(特許請求の範囲における第2のスイッチング素子)によって構成され、スイッチング素子Tyは、出力端子t1へ接続され、通電区間を区間ta〜ts(一部区間)に設定する機能を担う。また、スイッチング素子Tzは、出力端子t2へ接続され、通電区間を区間ta〜tb(全区間)に設定する機能を担う。
【0075】
従って、切換回路Sc2についても、スイッチング素子Ty又はTzの何れかを選択的に駆動させ、一次電流の通電区間を切換える。また、同図における切換回路Sc2にあっては、選択されたスイッチング素子について、一次電流の通電又は遮断を断続的させる制御が行われる。このスイッチング素子の動作は、信号処理装置CNT1から送られる駆動信号Sr1又はSr2が高周波パルスとされ、これにより実現されるものである。そして、駆動対象としてスイッチング素子Tyが選択される場合、信号処理装置CNT1から駆動信号Sr1が入力され、スイッチング素子Tyは、通電区間ta〜tsについて、断続的な一次電流を発生させる。また、駆動対象としてスイッチング素子Tzが選択される場合、駆動信号Sr2が入力され、スイッチング素子Tzは、通電区間ta〜tbについて、断続的な一次電流を発生させる。
【0076】
即ち、切換回路Sc2は、通電経路を切換える本来的な機能を担うと共に、上述したドライブ回路DrのようなトランスTcを駆動させる機能を併せて備える回路である。このため、切換回路Sc2を有する車載用充電装置BCSは、ドライブ回路を別途設ける必要がないため、回路構成が非常に簡素化される。
【0077】
図9(a)は、切換回路の更なる変更例が示されている。当該切換回路Rc3は、複数のスイッチング手段Sw1〜Sw4が組み込まれ、1つの入力端子teと複数の出力端子t1〜t4とが設けられている。このうち、スイッチ手段Sw1は入力端子teと出力端子t1との間に介挿され、スイッチ手段Sw2は入力端子teと出力端子t2との間に介挿され、その他のスイッチング手段についても同様な配線が施される。かかる切換回路Rc3は、駆動信号Sr1〜Sr4に応じて、電力の導通経路を複数の種類(te〜t1,te〜t2,te〜t3,te〜t4)に切換えることが可能となる。
【0078】
トランスTcの一次コイルL1は、中間タップts1〜ts3が設けられ、総じて5箇所の接点箇所を備えている。同図の一次コイルL1は、端点taが第1の出力端子t1に接続され、中間タップts1が第2の出力端子t2に接続され、中間タップts2が第3の出力端子t3に接続され、中間タップts3が第4の出力端子t4に接続され、端点tbがドライブ回路drに接続される。
【0079】
同図における車載用充電装置BCSは、電力供給ルートが切換回路Rc3によって複数のルートに選択され得るので、その電力供給ルートの数に応じて、一次電流の通電区間を複数設定することが可能となる。従って、このような構成を備える車載用充電装置BCSは、2種類に限らず更に多くの種類の商用電源の使用が予定されていても、中間タップts1〜ts3で設定される巻数が其の入力電源の実効値に対応していれば、当該充電装置からの出力電圧Voutを同値とする制御が可能となり、車載バッテリを好適に充電させることが可能となる。
【0080】
図9(b)は、切換回路の更なる変更例が示されている。当該切換回路Rc4は、複数の入力端子t1〜t4が設けられ、この入力端子の各々に対応してスイッチ手段Sw1〜Sw4が接続されている。当該スイッチ手段Sw1〜Sw4は、入力端子t1〜t4を介して一次コイルL1の中間タップts1〜ts3,端点tbに適宜に接続される。
【0081】
かかる構成を具備する車載用充電装置BCSは、図9(a)と同様、3種類以上の異なる入力電源が用いられる各場面において、車載バッテリを好適に充電させることが可能となる。また、図9(b)における切換回路Rc4は、一次電流の通電区間を設定する機能と、トランスTcを駆動させる機能とを並存させているため、車載用充電装置BCSの回路構成を簡素化させ得る。
【0082】
尚、ここで示されるスイッチ手段Sw1〜Sw4は、先にも説明したように、リレー回路のような機構的な装置であっても良く、パワートランジスタ等の半導体素子を用いても良い。また、これら切換回路は、図7(a)及び(b)で説明したように、その接続位置及び配線について適宜変更が成されることを予定している。
【実施例】
【0083】
以下、車載用充電装置BCS1の使用例について具体的に説明する。本実施例では、プラグイン式電気自動車が日本国又は欧州の何れかで使用されることが予定されているものとする。また、プラグイン式電気自動車の充電装置BCS1には、日本で使用する場合、3相のAC200〔V〕によって商用電力が供給され、欧州で使用する場合、3相のAC400〔V〕によって商用電力が供給されるものとする。
【0084】
本実施例の場合、トランスTcの一次コイルL1は、コイルの巻数を等分させる接点箇所に、センタータップtgが接続されている。また、一次コイルL1の一端側の接点箇所は端点ta(第1の端点)に導通され、他端側の接点箇所は端点tb(第2の端点)に接続されている。かかるトランスTcは、リレー回路Rylの切換動作に応じて、巻線比RNが100%または50%の何れか一方に切換られる。
【0085】
先ず、プラグイン式電気自動車が欧州で使用される場合、車載用充電装置BCS1の入力コネクタtinへは、AC400〔V〕の商用電源プラグが接続される(図10参照)。この場合、図12(a1)に示す如く、商用電源ACt1の印加電圧は、ブリッジ回路Drbによって平滑され、入力電圧Vinを得る。この場合の入力電圧Vinは、約564〔V〕〜490〔V〕の範囲内で変動することとなる。以下、同図における入力電圧Vinの実効値をV1rmsとする。
【0086】
この場合、信号処理装置CNT1では、ドライブ回路Drを所定のモードで駆動させると共に、AC400〔V〕に係る入力電圧Vinを認識し、リレー回路Rylの通電経路を出力端子t1の方へ切換える。従って、一次コイルL1では、通電区間がta〜tbの全区間に設定され、これにより、トランスTcでは、巻線比RNが50%に設定される。そして、車載用充電装置BCS1は、直流電圧V1rms及び巻線比RN=50%の条件に応じて、出力端子toutから400〔V〕の充電電圧(出力電圧Vout)を出力させる(図12−a2参照)。
【0087】
これに対し、プラグイン式電気自動車が日本国で使用される場合、車載用充電装置BCS1の入力コネクタtinへは、AC200〔V〕の商用電源プラグが接続される(図11参照)。この場合、図12(b1)に示す如く、商用電源ACt2の印加電圧は、約282〔V〕〜245〔V〕で変動する入力電圧Vinへと平滑される。以下、同図における入力電圧Vinの実効値をV2rmsとする。
【0088】
この場合、信号処理装置CNT1では、ドライブ回路Drを所定のモードで駆動させると共に、AC200〔V〕に係る入力電圧Vinを認識し、リレー回路Rylの通電経路を出力端子t2の方へ切換える。従って、一次コイルL1では、通電区間が巻線を半分にさせる区間(ts〜tb)に設定され、これにより、トランスTcでは、巻線比RNが100%に設定される。そして、車載用充電装置BCS1は、直流電圧V2rms及び巻線比RN=100%の条件に応じて、充電電圧(出力電圧Vout)を出力させる。かかる充電電圧は、入力電圧Vinの実効値に比例し且つ巻線比RNに反比例するところ、其の出力電圧Voutについても400〔V〕に制御されることとなる(図12−b2参照)。
【0089】
このように、プラグイン式電気自動車が欧州及び日本国の双方で使用される可能性がある場合、トランスTcにセンタータップTgを設けることで、プラグイン式電気自動車をこの何れの国でも充電することが可能となる。
【0090】
また、世界各国では3相の交流電力を供給する電力会社が数多く存在するところ、本実施例のように、3相整流ブリッジを配する車載用充電装置BCS1は、各国での使用にあたり、非常に実用性の高いものとなる。
【0091】
更に、従来技術にあっては、コンデンサ・インプット方式の回路構成を採用する場合、AC400〔V〕及びAC200〔V〕の双方の商用電源を入力できるように設計するためには、入力側の平滑コンデンサをAC400〔V〕に合わせて選択しなければならず、装置の大型化を招き、コストの高騰を招来させていた。
【0092】
これに対し、本実施例に係る車載用充電装置BCS1によると、ワン・コンバータ方式の回路構成の採用により、入力側の平滑コンデンサが省略されることとなる。従って、AC400〔V〕及びAC200〔V〕の双方の商用電源を入力できるように設計する場合であっても、商用電源の電圧値(入力値)に影響されることなく、当該装置の体格を自由に設計することが可能となる。即ち、本実施例に係る車載用充電装置は、かかる技術的側面からも、装置の小型化が可能と成り、コストを低く抑えることが可能となる。また、入力側の平滑コンデンサが省略されるので、高調波の問題が解消され、力率改善回路又はアクティブフィルタ等の複雑な回路構成が不要となる。
【0093】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記された技術的思想の範囲内において、種々の変更が可能である。例えば、上述した車載用充電装置では、一次コイルL1の巻線数を正確に定めることにより、異なる入力電源に対して同一の充電電圧Voutを得るようにしている。しかし、この一次コイルL1の巻数を厳格に定めなくとも、一方の入力電源から変換される充電電圧Vout1と他方の入力電源から変換される充電電圧Vout2とが所定の範囲まで近づくように制御されれば足りる。但し、このような場合、ドライブ回路Dr等による補完的な制御が必要とされ、これにより、車載用充電装置では、双方の出力電圧Vout1及びVout2を一致させ、商用電源の種類に影響されない充電制御を実現させる。
【0094】
また、本明細書では、AC−DCコンバータの代表例として車載用充電装置を詳細に説明してきたが、特許請求の範囲に記されるAC−DCコンバータは、当該充電装置に限定されるものでなく、種々の技術分野において適宜形態を変えて広く適用され得るものである。
【0095】
最後に、本発明の旨とするところは、従来技術では回路構成が複雑化されていた課題について、切換可能なトランスをワン・コンバータ方式に適用させ、かかる簡潔な構成にして、高調波又は装置のサイズ等の問題を一挙に解決へ導くところにある。即ち、その技術的思想は、ここで用いられるトランス及びワン・コンバータ方式の回路構成を単に組合せた内容に止まるものでなく、当業者の想定を超える内容に企及する。
【符号の説明】
【0096】
BCS1,BCS2 車載用充電装置(AC−DCコンバータ)
Dbr 多相ダイオードブリッジ
Tc トランス
L1 一次コイル
L2 二次コイル
Dr ドライブ回路
T1〜T4,T5 第1のスイッチング素子
Rc(Ryl,Sc1,Sc2) 切換回路
Ty,Tz 第2のスイッチング素子
Sf 平滑回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC−DCコンバータに関し、特に、電気自動車等に搭載される車載用充電装置として用いる際に好適のものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリ容量に関する技術の進歩に伴い、高電力及び長時間の使用に耐え得るバッテリの製品化が進められている。これを受けて、例えば、自動車業界にあっては、かかるバッテリ製品を利用することにより、電動モータを用いた長距離走行を実現させ、この開発成果として、HEV(Hybrid Electric Vehicle)及びEV(Electric
Vehicle)を商品化させるに至っている。
【0003】
EV(Electric Vehicle)は、走行用の電動モータと車載バッテリと車載用充電装置と電力供給用コネクタとが設けられている。車載用充電装置は、商用電力用のプラグ又は急速充電用のプラグが電力供給用コネクタに接続されると、入力される電力を変換させ車載バッテリを充電させるための供給電力を制御する。そして、車載バッテリでは、前段の車載用充電装置から電力が供給され、充電が行われることとなる。
【0004】
一方、HEV(Hybrid Electric Vehicle)にあっても、EVと同様な充電システムを搭載させ、商用電力等から車載バッテリを充電させるものが製品化されている。かかるHEV(Hybrid Electric Vehicle)は、更に、内燃機関による動力系統を備え、電動モータから駆動力を得る場合には車載バッテリの電気エネルギーを消費させ、内燃機関から駆動力を得る場合には化石燃料による熱エネルギーを利用し、これら双方の駆動系の利点を活かすことにより、低燃費走行を実現させている。
【0005】
以下、上述したEV(Electric Vehicle)又はHEV(Hybrid Electric Vehicle)のように、商用電力を車体に接続させて車載バッテリを充電させるシステムをプラグイン式充電システムと呼ぶこととする。また、当該プラグイン式充電システムを搭載させた車両をプラグイン式電気自動車と呼ぶこととする。
【0006】
特開平11−356043号公報(特許文献1)では、回路構成が上述した充電装置に類似するスイッチング電源装置について紹介されている。図13に示す如く、スイッチング電源装置BCS0は、単相交流電源ACmに接続されるACコネクタtinと、単相の交流電圧を整流化させる単相ダイオードブリッジDbr0と、単相ダイオードブリッジDbr0の後段に接続される平滑コンデンサC1と、一次コイル側に中間タップtsを設けたトランスTcと、トランスTcの中間タップts及び第1の端点taに接続され電力の供給経路を切換えるスイッチ回路Rc(特許請求の範囲における切換回路)と、第2の端点tbに接続されたスイッチング素子T5を備え一次コイルL1に流れる一次電流を変動させるドライブ回路Drと、二次コイルT2での誘導起電力を平滑させる平滑回路Sfと、入力電圧Vinの検出信号Svinに基づいてスイッチ回路Rcを切換える電圧判定回路CNTrと、出力電圧Voutの検出信号Svに基づいてドライブ回路を制御させる制御回路CNTdとから構成される。
【0007】
スイッチング電源装置BCS0は、単相ダイオードブリッジDrb0の直後に平滑コンデンサC1が設けられるところ、所謂、コンデンサ・インプット式の回路構成を成すものである。当該スイッチング電源装置BCS0は、単相交流電源ACmが接続されると、単相ダイオードブリッジDbr0にて単相の交流電圧を全波整流波Vdへ変換させ(図14a参照)、後段の平滑回路C1で電荷を蓄積させることにより安定した入力電圧Vinを得る(図14b参照)。この入力電圧Vinは、スイッチ回路Rcを介してトランスTcの一次コイルL1に印加される。
【0008】
ドライブ回路Drは、制御回路CNTdによって駆動されると、一次コイルL1に流れる一次電流を断続的に発生させる。このとき、二次コイルL2は、一次電流の変動に応じて鉄心の磁束が変動するため、この変動に応じて誘導起電力を発生させる。この誘導起電力は、一次電流の通電又は遮断に応じて発生するところ、其の波形は交流又は発振状態とされる。
【0009】
平滑回路Sfは、ダイオードブリッジD1〜D4,及び、リアクトルL3,平滑コンデンサC2,ダイオードD5から構成されている。当該平滑回路Sfは、発振状態の誘導起電力を全波整流させ、その後、直流状態の電力へと変換する。平滑回路Sfから出力される出力電圧Voutは、制御回路CNTdで其の電圧値が認識され、当該制御回路CNTdがドライブ回路Drの動作を制御することにより、出力電圧Voutの電圧値が適宜に調整されることとなる。
【0010】
また、特許文献1に係るスイッチング電源装置BCS0は、ACコネクタtinへ供給される電力が異なる場合、以下の如くスイッチ回路Rcを機能させて、双方の出力電圧Voutに違いが生じないよう制御する。
【0011】
例えば、ACコネクタtinに商用電源(AC100〔V〕)が接続される場合、電圧判定回路CNTrでは、検出回路(図示なし)を介して入力電圧Vinを認識し、AC100〔V〕が印加されている旨の信号Srを出力させる。このとき、スイッチ回路Rcでは、信号Srに基づいてスイッチを端子taに導通させる。従って、一次コイルL1では、端子ta〜端子tbの区間に一次電流が流れることとなる。尚、AC100〔V〕を整流化させた場合、入力電圧Vinは140〔V〕とされる。
【0012】
これに対し、ACコネクタtinに車載バッテリ(DC14〔V〕)が接続される場合、電圧判定回路CNTrでは、DC14〔V〕が印加されている旨の信号Srを出力させる。このとき、スイッチ回路Rcでは、信号Srに基づいてスイッチを中間タップtsに導通させる。この中間タップtsは、一次電流の流れる区間をts〜tbの間に設定するものであり、区間ts〜tbにおける一次コイルL1の巻数は、区間ta〜tbにおける一次コイルの巻数の1/10程度に設定されている。
【0013】
従って、DC14〔V〕が入力される場合の巻線比RN2(二次巻線N2/一次巻線N1)はAC100〔V〕時の巻線比RN1の10倍程度となるため、スイッチング電源装置BCS0から出力される出力電圧Voutは、DC14〔V〕又はAC100〔V〕の何の電力が与えられても、略同値若しくは同様の状態に制御される。
【0014】
かかるスイッチング電源装置は、前述したプラグイン式電気自動車の充電装置に適用させることが可能である。この場合の車載用充電装置は、車体の電力供給用コネクタへ異なる電力が供給されても、トランスTcの巻線比RNを適宜に設定することで、何れの場合にも出力電圧Voutに違いを与えずして、車載バッテリBmを好適に充電させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−356043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、図14(c)に示す如く、全波整流波Vdにおけるピーク値の近傍で、平滑コンデンサC1に流れる電流Iinが瞬時的に発生する。このような入力電流Iinは、高調波の発生原因とされ、交流電源Acmに接続される電気機器の動作を不安定にさせるとの問題が生じる。
【0017】
また、このようなコンデンサ・インプット式の電力変換回路は、入力電流Iinがによって、力率の低下を招くこととなる。このため、当該電力変換回路は、所望の電力を出力させるため、力率低下を補うよう入力電流Iinを大きくさせる回路設計が要求される。従って、ダイオード,スイッチング素子,平滑コンデンサC2として用いられる電解コンデンサ,この他の回路素子について、定格電流の高い素子を選択しなければならず、回路装置の大型化及び高コスト化を招くとの問題が生じる。
【0018】
更に、このような電力変換回路を車載用充電装置として用いる場合、高調波の発生に応じて周辺の車載電装機器へ悪影響を及ぼすことが懸念される。特に、ACコネクタからの供給電源をセンシングしているECU(Elctric Control
Unit)等では、其の悪影響による被害が甚大となり得る。
【0019】
このため、高調波による弊害を回避すべく、力率を改善させることを企図した電力変換回路が提案されている。図15は其の一例が示されており、具体的には、単相ダイオードブリッジDbrと平滑コンデンサC1との間に力率改善回路PFCが追加構成される。また、力率改善回路PFCにおけるスイッチング素子Tpの制御を行う制御マイコンCNTpが追加されている。かかる電力変換回路によれば、スイッチング素子Tpの通電電流を適宜に制御させると、入力電圧(全波整流波)と相似形の入力電流Iinが生成されるため、力率が改善され、これにより、周辺の電気機器への悪影響は一定の範囲で改善される。しかし、このような電力変換回路では、力率改善回路PFCを追加構成させなければならないので、回路の複雑化を招き、結局、装置の大型化及び高コスト化を招いてしまう。
【0020】
更に、図13及び図15の何れの電力変換回路にあっても、平滑コンデンサC1が必ず設けられることとなる。当該平滑コンデンサC1は、入力電圧の大きさに応じてキャパシタンスが設定されるため、一般的には素子体格の大きい電解コンデンサが使用される。従って、車載用充電装置にあっては、数百ボルトオーダーの使用に耐える電解コンデンサを選定しなければならず、これを満たす電解コンデンサを用いれば、素子体格の肥大化を招いて、レイアウト上の困難を極める。
【0021】
加えて、昨今の自動車は、複数の国を対象として製造・販売等が行なわれている。この場合、プラグイン式電気自動車の使用が予定されている国A〜Cのうち、商用電源の電圧値が高い国Aに合わせて平滑コンデンサC1(電解コンデンサ)を選定しなければならない。従って、或るプラグイン式電気自動車について言えば、商用電源の電圧値が大きい国Aで使用されないにも関わらず、当該国Aに対応させたスペックの充電装置を搭載させなければならないという問題も生じる。
【0022】
本発明は上記課題に鑑み、複数種類の入力電源の利用を可能とした上で回路構成の簡素化を実現させるAC−DCコンバータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、第1の発明では次のようなAC−DCコンバータの構成とする。即ち、多相交流電圧を整流化させる多相ダイオードブリッジと、異なる3点以上の接点箇所を具備する一次コイル及び当該一次コイルに流れる一次電流の変動に応じて誘導起電力を発生させる二次コイルを具備するトランスと、前記一次電流の通電又は遮断を断続的に制御する第1のスイッチング素子を有し当該第1のスイッチング素子の動作に応じて前記一次電流の電流値を変動させるドライブ回路と、前記3点以上の接点箇所のうち複数の接点箇所に接続され且つ前記複数の接点箇所の何れかを選択的に通電させることにより前記一次電流が前記一次コイルを流れる通電区間を切換える切換回路と、前記誘導起電力を平滑させる平滑回路とを備えることとする。
【0024】
また、第2の発明では次のようなAC−DCコンバータの構成としても良い。即ち、多相交流電圧を整流化させる多相ダイオードブリッジと、異なる3点以上の接点箇所を具備する一次コイル及び当該一次コイルに流れる一次電流の変動に応じて誘導起電力を発生させる二次コイルを具備するトランスと、前記3点以上の接点箇所のうち複数の接点箇所に対応して設けられた第2のスイッチング素子を有する切換回路と、前記誘導起電力を平滑させる平滑回路とを備え、
前記切換回路は、前記第2のスイッチング素子の何れかを選択的に駆動させることにより前記一次電流の通電区間を切換え、且つ、前記第2のスイッチング素子のうち選択的に駆動させるスイッチング素子について前記一次電流の通電又は遮断を断続的に制御することとする。
【0025】
これらの発明について好ましくは、前記切換回路は、実効値の高い第1の多相交流電圧が入力された場面で前記通電区間を長く設定し、実効値の低い第2の多相交流電圧が入力された場面で前記通電区間を短く設定することとする。
【0026】
より好ましくは、前記第1の多相交流電圧の実効値をV1rmsとし、前記第2の多相交流電圧の実効値をV2rmsとし、前記切換回路によって前記第1の多相交流電圧のために設定された第1の通電区間に巻回される前記一次コイルの巻数をN1aとし、前記切換回路によって前記第2の多相交流電圧のために設定された第2の通電区間に巻回される前記一次コイルの巻数をN1sとすると、これらの値は、V1rms/N1a=V2rms/N1s,の関係を充足することとする。
【0027】
また、前記第1の多相交流電圧の実効値が前記第2の多相交流電圧の実効値の約2倍とされる関係が予定される場合において、
前記トランスの一次コイルは、一端の接点箇所に導通される第1の端点と、他端の接点箇所に導通される第2の端点と、前記第1の端点から前記第2の端点までの巻線を等分させる接点箇所に導通されるセンタータップとを有することとしても良い。
【0028】
上述した全ての発明について好ましくは、商用電力の入力が可能なプラグイン式電気自動車に搭載され、前記商用電力に基づいて車載バッテリを充電する車載用充電装置として用いられることとする。このとき、前記商用電力は3相交流電源から供給されることとするのが良い。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るAC−DCコンバータは、3相交流電源から電力を取得し、各相電圧を全波整流させることで入力電圧に平滑作用を与え、入力側での平滑コンデンサを省略可能とさせ、以って、回路構成の簡素化・装置の低コスト化が図られるという利点を利用するものである。
【0030】
そして、このような平滑作用をワン・コンバータ方式の電力変換回路で実現させ、併せて、入力電圧の値に応じてトランスの巻線比を切換える機能を付加させている。これにより、異なる値の入力電源に対して使用可能なAC−DCコンバータは、ワン・コンバータ方式の回路を採用することで、力率改善回路を用いずして高調波を解消させる効果、及び、回路構成を簡素化させる効果、の双方の効果が奏されることとなる。また、当該AC−DCコンバータは、回路構成の簡素化が図られることにより、装置の小型化及び低コスト化に資するものとなる。
【0031】
特に、AC−DCコンバータが車載用充電装置とされ、当該装置を搭載させるプラグイン式電気自動車の使用予定国が複数国に跨り且つ各国での商用電源の値が異なる条件であっても、先に説明したように、本発明に係る車載用充電装置は、入力側の平滑コンデンサが省略されることとなるため、商用電源の電圧値(入力値)に影響されることなく、当該装置の体格を自由に設計することが可能となる。また、かかる車載用充電装置にあっては、高調波の発生を解消させているので、プラグイン式電気自動車へ搭載されている車載電装機器・ECU等の安定動作を保障することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態に係る車載用充電装置の回路構成を示す図。
【図2】3相交流電圧及び其の全波整流後の波形を示すタイムチャート。
【図3】入力電圧検出回路の構成例を示す図。
【図4】実施の形態に係る車載用充電装置の他の回路構成を示す図。
【図5】平滑回路の構成例を示す図。
【図6】平滑回路の構成例を示す図。
【図7】切換回路の構成例を示す図。
【図8】切換回路の構成例を示す図。
【図9】切換回路の構成例を示す図。
【図10】実施例に係る切換回路及びトランスでの動作を示す図。
【図11】実施例に係る切換回路及びトランスでの動作を示す図。
【図12】実施例に係る入力電圧と出力電圧との関係を示す図。
【図13】従来例に係る車載用充電装置の回路構成を示す図。
【図14】従来例における入力電圧と入力電流とを示すタイムチャート。
【図15】他の従来例に係る車載用充電装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1に示す如く、本実施の形態に係るAC−DCコンバータBCS1は、以下の如く、ワン・コンバータ方式の電力変換回路が用いられている。具体的には、多相ダイオードブリッジDbrとドライブ回路Drと切換回路RcとトランスTcと平滑回路Sfと電圧検出回路INSvと電流検出回路INSiと信号処理装置CNT1とから構成される。尚、AC−DCコンバータは、本実施の形態においてプラグイン式自動車に搭載される充電装置であるところ、以下、車載用充電装置BCS1と呼ぶこととする。また、当該車載用充電装置BCS1は、入力コネクタtinと出力端子toutとが設けられ、入力コネクタtinには、3相の商用電源ACtを印加させる電源プラグが接続され、出力端子tioutには、車載バッテリBmが接続される。
【0034】
商用電源ACtは、3相の交流電源(r相/s相/t相)が用いられる点で従来技術と異なる。かかる3相の商用電源ACtは、例えば、日本国の場合、AC200〔V〕,AC400〔V〕が供給され、欧州の場合、AC380〔V〕,AC400〔V〕が供給され、その他の国にあっても、各電力会社によって、其の電圧値(多相交流電圧)が多種多様に設定されている。尚、これらの電圧値は実効値を示すものとする。
【0035】
入力コネクタtinは、上述した複数種類の商用電源(3相交流電源)が印加されるよう、複数種類のプラグ形状に対応した端子が形成される。当該入力コネクタtinは、この他、急速充電プラグ用のコネクタを別途設けるようにしても良い。
【0036】
出力端子toutは、図示の如く、車載用充電装置BCS1の後段側に設けられ、平滑回路Sfの出力電圧Voutが印加されるように配線されている。かかる出力端子toutは、更に、後段部に電源ラインが接続され、出力電圧Voutが電源ラインを介して車載バッテリBmへ印加されるよう配線されている。以下、車載用充電装置について、車載バッテリBmが接続される方向を出力側と呼び、商用電力ACtが接続される方向を入力側と呼ぶことがある。
【0037】
車載バッテリBmは、リチウムイオン電池等のバッテリセルがバッテリモジュール内に複数配設され、総じて400〔V〕程度の直流電圧を発生させる。車載バッテリBmから出力される電力は、バッテリ電力から3相交流電力を生成させるメインインバータ装置と、車載電装機器及びサブバッテリ(DC12〔V〕程度)へ電力を供給させるDC−DCコンバータとに分配される。そして、インバータ回路では、車載バッテリBmの直流電力を3相交流電力へと変換させ、駆動モータ(3相同期モータ,3相誘導モータ等)へ3相交流電力を供給する。このとき、駆動モータは、入力された電力に応じてトルクを発生させ、駆動輪にトルクを伝えることで、車両の静動または車速のコントロールを適宜に行なう。
【0038】
多相ダイオードブリッジDbrは、ダイオードDa〜Dfによってブリッジ状に配線され、これらの構成によって各相電圧(r相電圧/s相電圧/t相電圧)に対応するア−ムが形成される。このアームでは、3相交流電圧Vactが印加されると(図2a参照)、各相に対応する相電圧(Vr/Vs/Vt)を全波整流させる(図2b参照)。従って、多相ダイオードブリッジDrbは、全波整流された各相電圧(Vr/Vs/Vt)を順次出力させるので、これによって現われる出力電圧Vinは、図2(c)に示す如く、一定の範囲ΔVにて変動するに止まり、これにより、平滑作用を受けることとなる。
【0039】
仮に、AC200〔V〕の単相交流電圧が印加される場合について検討すると、単相の場合の出力電圧は、各々の整流波が位相差πとされるので、282〔V〕〜0〔V〕の範囲で変動することとなってしまう。しかし、本実施の形態のように平衡3相交流電源を採用することにより、出力電圧Vinは、変動範囲が282〔V〕〜245〔V〕の範囲内に収まるという効果が奏される。即ち、入力電源が単相から3相へ変更されることで、出力電圧Vinの変動範囲が約13%に抑えられることとなる。また、本実施の形態では入力電源として3相交流電源を取り扱っているが、これに限らず、更に多相の電源を用いることにより、此処に説明した平滑作用がより顕著なものとなる。
【0040】
また、本実施の形態にあっては、ワン・コンバータ方式の電力変換回路が採用されているので、コンデンサ・インプット方式で用いられる入力側の平滑回路が省略される。従って、装置自体の小型化が図られ、また、高調波の発生も解消される。
【0041】
車載用充電装置BCS1には、入力電圧Vinを検出する電圧検出回路(図示なし)が設けられる。当該電圧検出回路は、図2(a)に示す如く、抵抗Rm及びRnから成る分圧抵抗とし、分圧点から入力電圧Vinに関する検出信号Svinを出力するようにしても良い。また、図2(b)に示す如く、入力コネクタtinと多相ダイオードブリッジDbrとの間にセンサ回路SCN2を設け、各々の電源ラインから相電圧に関する検出信号Svin(r),Svin(s),Svin(t)を出力させるようにしても良い。尚、入力電圧Vinを検出するための回路については、同図では単に一例として挙げているに過ぎず、現時点において公知の技術を適宜利用することが可能である。
【0042】
トランスTcは、鉄心を具備し、当該鉄心について一次コイルL1と二次コイルL2とが巻回されている。このうち、本実施の形態に係る一次コイルL1は、端点ta及び中間タップts及び端点tbを具備している。中間タップtsは、一次コイルL1のワイヤー線の途中の接点箇所へ電気的に接続されている端子であって、端点ta〜中間タップts,又は,端点tb〜中間タップtsの巻線Nを決定するものである。また、端点ta及び端点tbは、一次コイルL1の各端部における接点箇所に導通される。一方、二次コイルL2は、本実施の形態の場合、中間タップを具備しない通常のコイルが用いられる。かかるトランスTcでは、一次コイルL1に流れる一次電流が変動すると、鉄心を貫通する磁束が変動する。このとき、二次コイルL2では、磁束変化に応じて誘導起電力を発生させることとなる。先に説明したように、ドライブ回路Drから印加される電圧は交流状態とされるので、一次電流及び誘導起電力についても、時間経過に応じて其の極性が変化することとなる。
【0043】
ここで、一次コイルL1における区間ta〜tsまでの巻数をN1aとし、一次コイルにおける全区間ta〜tbの巻数(全巻数)をN1bとし、二次コイルL2にける全巻数をN2とする。このとき、区間ta〜tsにのみ一次電流が流れる場合、トランスTcの巻線比RNaは、RNa=N2/N1a,で現される。一方、全区間ta〜tbに一次電流が流れる場合、このときの巻線比RN2は、RN2=N2/N1bで現される。
【0044】
切換回路Rcは、入力端子と第1の出力端子と第2の出力端子とスイッチ手段とを備えている。本実施の形態の場合、入力端子はドライブ回路Drの一方のアームに接続され、第1の出力端子は一次コイルL1の端点taに接続され、第2の出力端子は一次コイルL1の中間タップtsに接続される。そして、切換回路Rcは、スイッチ手段によって、第1の出力端子又は第2の出力端子の何れか一方を選択し、選択された方の出力端子を入力端子に導通させ、これにより、電力の供給ルートを切換える。
【0045】
かかる切換回路Rcは、一方の出力端子が端点taに接続され他方の出力端子が中間タップtsに接続されているので、スイッチ手段によって電力の供給ルートを変更させると、一次コイルL1における一次電流の通電区間は、区間ta〜ts,又は,区間ta〜tb,の何れかに切換えられることとなる。即ち、切換回路Rcは、入力端子に導通させる出力端子を切換えることで、一次電流の通電区間を適宜に切換える役割を担う。尚、切換回路Rcに設けられるスイッチ手段については、その形態が種々改変され得るものであり、その具体例については追って詳述する。
【0046】
本実施の形態で用いられるドライブ回路Drは、パワートランジスタT1〜T4(特許請求の範囲における第1のスイッチング素子)から成るフルブリッジ回路が採用されている。かかるドライブ回路Drは、両サイドの電源ラインを介して多相ダイオードブリッジDbrに接続されている。また、パワートランジスタT1及びT2の接点は、切換回路Rcの入力端子に接続され、パワートランジスタT3及びT4の接点は、トランスTcの端点tbに接続されている。また、各々のトランジスタT1〜T4は、ゲート部が信号処理装置CNT1に接続され、当該信号処理装置CNT1から出力される駆動信号Sdによって、各々がON/OFF制御される。従って、当該ドライブ回路Drは、信号処理装置CNT1から駆動信号Sdを受信すると、各々のパワートランジスタが所定のデューティ比にて駆動され、切換回路Rcと端点tbとの間に断続的な電圧を印加させる。
【0047】
この断続的に発生する電圧は、切換回路Rcを介して一次コイルL1へ印加されるので、切換回路Rcによって選択された一次コイルL1の通電区間では、其の区間において、高い周波数で一次電流の通電又は遮断が繰返される。即ち、パワートランジスタT1〜T4が駆動されると、この動作に応じて一次電流の電流値が変動することとなる。従って、トランスTcでは、このような断続的な制御により一次電流の電流値が変動し、これにより、誘導起電力V2を発生させている。
【0048】
尚、図1に示す如く、フルブリッジ回路の端部にシャント抵抗Rkを設け、信号処理装置CNT1にてドライブ回路Drの電流値Skを監視するようにしても良い。この場合、パワートランジスタT1〜T4の動作異常を検知することが可能となる。
【0049】
また、図1のドライブ回路Drはフルブリッジ回路が採用されているが、当該ドライブ回路Drは、かかる形態に限定されるものではない。例えば、図4に示す如く、単体のパワートランジスタT5(特許請求の範囲における第1のスイッチング素子)によってドライブ回路Drを構成させても良い。同図でのパワートランジスタT5は、端点tbと多相ダイオードブリッジ回路Dbrとの間に介挿され、信号処理装置CNT1から受けた駆動信号Sdに応じて通電/遮断を繰返し、これにより、一次コイルL1に一次電流を発生させる。また、当該ドライブ回路Drは端点ta側に接続させても良い。この場合、切換回路Rcは、入力端子が他方側の電源ラインに接続され、出力端子の各々は、中間タップts及び端点tbへ接続されることとなる。
【0050】
平滑回路Sfは、トランスTcの二次コイルL2へ接続され、当該二次コイルから出力された誘導起電力V2を平滑させ、直流状態に変換された出力電圧Voutを後段の出力端子Voutへ印加する。
【0051】
図5は、平滑回路Sfの構成例が示されている。例えば、図5(a)に示される平滑回路Sfは、ダイオードDp及びDqとリアクトルL3と平滑コンデンサC2とから構成される。ダイオードDp及びDqのアノードは、各々が二次コイルL2の端点に接続される。また、双方のダイオードDp及びDqは、カソード側が互いに接続され、其の接点は、リアクトルL3の入力側に接続されている。かかるリアクトルL3は、電源ラインに介挿されるように配線される。そして、平滑コンデンサC2は、リアクトルL3の後段にて、二次コイルL2に対して並列接続される。かかる平滑コンデンサC2は、数百Vオーダーの電圧を出力させることが要求されるところ、一般には電解コンデンサ等が用いられる。
【0052】
また、図5(b)に示されるような平滑回路Sfとしても良い。この場合、二次コイルL2にセンタータップが設けられる。そして、当該二次コイルL2の端点にダイオードDp及びDqのカソードが各々接続され、当該ダイオードDp及びDqのアノードは、互いに接続される。この接点は、平滑コンデンサC2の陰極側に接続される。また、平滑コンデンサC2の陽極側は、リアクトルL3を介して二次コイルL2のセンタータップに接続される。
【0053】
これらの平滑回路Sfは、共に、極性が素早く変動するような交流状態の誘導起電力V2が印加されると、これに応じて生じる電荷を平滑コンデンサC2へ蓄積させ、力流電力を発生させる。但し、このような平滑回路については、既に周知の技術とされているため、動作等の説明を省略することとする。
【0054】
図6は、平滑回路の他の構成例が示されている。図6(a)の平滑回路Sfは、ダイオードDh〜DkとパワートランジスタTj及びTkとリアクトルL3と平滑回路C2とから構成される。ダイオードDh〜Dkはブリッジ状に配線され、併せて、図示の如く、パワートランジスタTj及びTkが接続されている。かかる平滑回路Sfは、パワートランジスタTj及びTkが制御されることで、平滑コンデンサC2へ流れる電流の制限が行なわれる。先に説明したドライブ回路Drにあっても、パワートランジスタの駆動デューティを調整することにより、出力電圧Voutを所望の値に調整することは可能である。但し、このような機能を平滑回路Sfに追加させることで、より正確に出力電圧Voutを調整させることが可能となる。また、例えば、ドライブ回路Dr側の駆動デューティを固定値とし、平滑回路Sf側の駆動デューティを制御することにより、出力電圧Voutを調整するようにしても良い。
【0055】
図6(b)の平滑回路Sfは、上述したダイオードブリッジDh〜DkがパワートランジスタTh〜Tkへ置換えられている。一般に、ダイオードでの電圧降下と比較してトランジスタでの電圧降下は低く抑えられるので、かかる構成とした場合、出力効率の向上が図られる。尚、ここに紹介した平滑回路Sfは、例示的なものに過ぎず、この他、現時点における公知の技術を適宜取入れることが可能である。
【0056】
電圧検出回路INSvは、例えば、分圧抵抗R1及びR2によって構成され、この回路の分圧点から出力電圧Voutに関する検出信号Svを出力させる。
【0057】
電流検出回路INSiは、例えば、シャント抵抗R3及びオペアンプAMPとから構成され、シャント抵抗R3で検出した電流値に比例する検出信号Siを出力させる。
【0058】
信号処理装置CNT1は、図1に示す如く、第1の制御回路CNTdと第2の制御回路CNTrとから構成される。当該信号処理装置CNT1は、CPU及びメモリ回路及びAD変換回路,この他、所定の信号を生成・出力させるために必要な回路が構成される。尚、信号処理装置CNT1については、ワンチップされているか否か又はCPUの数など、その回路構成を問うものではない。かかる信号処理装置CNT1には、入力電圧Vinを示すSvin,出力電圧Voutを示す検出信号Sv,充電装置内の二次側の電源ラインを流れる電流値を示す検出信号Siが入力される。そして、第1の制御回路CNTdでは、検出信号Si及び検出信号Svに基づいてパワートランジスタT1〜T4の駆動デューティを規定し、これに即した駆動信号を各々出力させる。かかる制御回路CNTdは、充電装置の出力電力が定電圧または定電流となるように適宜にモードを設定し、これにより、充電装置の出力電圧Vout又は出力電流を制御する。
【0059】
一方、第2の制御回路CNTrは、入力電圧Vinの値に基づいて切換信号Srを出力させる。具体的に説明すると、入力電圧Vinを示すSvinが所定の閾値より高い場合、入力電圧Vinが高い旨の信号(以下、切換信号Sraと呼ぶ)を出力させる。これに対し、入力電圧Vinを示すSvinが所定の閾値より低い場合、入力電圧Vinが低い旨の信号(以下、切換信号Srbと呼ぶ)を出力させる。
【0060】
図7(a)は、切換回路Rcの一形態とされるリレー回路Rylが示されている。当該リレー回路Rylは、入力端子teと第1の出力端子t1と第2の出力端子t2とが設けられ、スイッチ機構SW及びソレノイドコイルCoから成るスイッチ手段を備えている。スイッチ機構は、従動端子を備え、ソレノイドコイルCoの極性に応じて動作する。ソレノイドコイルCoは、切換信号Sraが入力されると、従動端子へ斥力を与え、入力端子teと第1の出力端子t1とを導通させる。また、切換信号Srbが入力されると、従動端子を引き寄せ、入力端子teと第2の出力端子t2とを導通させる。
【0061】
従って、充電装置BCS1へ閾値より高い多相交流電源が接続されると、リレー回路Rylは、信号処理装置CNT1から切換信号Sraを受け、これにより、入力端子teと第1の出力端子taとを導通させる。この場合、ドライブ回路Drからの印加電圧は通電区間ta〜tbに加えられることとなり、当該リレー回路Rylは、一次電流を流す通電区間を長く設定することとなる。
【0062】
また、充電装置BCS1へ閾値より低い多相交流電源が接続されると、リレー回路Rylは、信号処理装置CNT1から切換信号Srbを受け、これにより、入力端子teと第2の出力端子tsとを導通させる。この場合、ドライブ回路Drからの印加電圧は通電区間ts〜tbに加えられることとなり、当該リレー回路Rylは、一次電流を流す通電区間を短く設定することとなる。
【0063】
このような制御が行われると、リレー回路Rylは、入力電圧Vinの実効値が高いときにトランスTcの巻線比RNを低値に設定させ、誘導起電力及びこれによって生成される出力電圧Voutを低減させる。一方、入力電圧Voutの実効値が低いときにトランスTcの巻線比RNを高値に切換え、誘導起電力及びこれによって生成される出力電圧Voutを上昇させる。即ち、入力電圧Vinの実効値が高いときの出力電圧Voutと低いときの出力電圧Voutは、リレー回路Rylの動作によって其の電圧値の差が低減されるように制御される。
【0064】
本実施の形態では、車載用充電装置BCS1に2種類の商用電源が接続されるものとし、このうち、一方の商用電源ACt1が接続された場合、このときの電圧(第1の多相交流電圧)の実効値をV1rmsとする。また、他方の商用電源ACt2が接続された場合、このときの電圧(第2の多相交流電圧)の実効値をV2rmsとする。但し、実効値V1rms>実効値V2rms,とする。
【0065】
また、一次コイルL1における通電区間ta〜tb(全区間)は、商用電源ACt1が接続されたときに設定される区間であって、当該区間における巻数はN1aとする。また、一次コイルL1における通電区間ts〜tb(一部区間)は、商用電源ACt2が接続されたときに設定される区間であって、当該区間における巻数はN1sとする。
【0066】
本実施の形態に係る一次コイルL1は、中間タップtsが,V1rms/N1a=V2rms/N1s,の関係を充足するように、当該中間タップtsとの接点箇所が設定されている。このため、商用電源ACt1を接続した場合の誘導起電力V2(1)は、二次コイルL2の巻数をN2とすると、V2(1)=(N2/N1a)・V1rms,と表現される。一方、商用電源ACt2を接続した場合の誘導起電力V2(2)は、V2(1)=(N2/N1s)・V2rms,と表現される。従って、双方の場合の誘導起電力は、「V1rms/N1a=V2rms/N1s」の関係を有するところ、共に、同じ電圧値とされる。然るに、平滑回路Sfからの出力電圧Voutは、商用電源ACt1又は商用電源ACt2の何れが接続されても同一の電圧値を出力させることとなる。
【0067】
故に、後段の車載バッテリBmは、商用電源ACt1又は商用電源ACt2の何れが接続されても、其の接続される電源に関わり無く、同じ電圧値で充電されることとなる。従って、かかる充電装置によると、充電時における詳細な制御、例えば、過充電保護に関する制御の実効が図られることとなる。
【0068】
上述の如く、本実施の形態に係る車載用充電装置BCS1は、3相交流電源から電力を取得し、各相電圧を全波整流させることで入力電圧に平滑作用を与え、入力側での平滑コンデンサを省略可能とさせ、以って、回路構成の簡素化・装置の低コスト化が図られるという利点を利用するものである。
【0069】
そして、このような平滑作用をワン・コンバータ方式の電力変換回路で実現させ、併せて、入力電圧の値に応じてトランスTcの巻線比RNを切換える機能を付加させている。これにより、異なる値の入力電源に対して使用可能な車載用充電装置BCS1は、ワン・コンバータ方式の回路を採用することで、力率改善回路を用いずして高調波を解消させる効果、及び、回路構成を簡素化させる効果、の双方の効果が奏されることとなる。また、当該AC−DCコンバータは、回路構成の簡素化が図られることにより、装置の小型化及び低コスト化に資するものとなる。
【0070】
また、かかる車載用充電装置にあっては、高調波の発生を解消させているので、プラグイン式電気自動車へ搭載されている車載電装機器・ECU等の安定動作を保障することとなる。
【0071】
尚、リレー回路Rylは、其の配線方法が上述した態様に限定されるものでない。例えば、図7(b)に示す如く、ドライブ回路Drのもう一方の電源ラインに入力端子teを接続させ、第1の出力端子t1を中間タップに接続させ、第2の出力端子t2を端点tbに接続させても良い。このような態様でリレー回路Rylを切換制御させても、上述同様の効果が得られる。
【0072】
また、図8(a)は、切換回路の更なる改変例が示されている。当該切換回路Sc1は、2つのサイリスタ(特許請求の範囲における第2のスイッチング素子)によって構成され、双方のサイリスタのアノード側は入力端子teへ接続される。また、一方のカソード側は第1の出力端子t1へ接続され、他方のカソード側は第2の出力端子t2へ接続される。そして、各々のゲートには、信号処理装置CNT1から駆動信号Sr1及びSr2が送られる。かかる切換回路Sc1は、第1の出力端子t1に接続されるサイリスタを通電状態にさせることで、一次コイルL1での通電区間をta〜tbの全区間に設定する。一方、第2の出力端子t2に接続されるサイリスタを通電状態にさせることで、通電区間をts〜tbの区間に設定する。即ち、同図の切換回路Sc1は、通電状態とさせるサイリスタを選択することで、電力の供給ルートを変更させ、通電区間の設定動作を行なう。
【0073】
ここでの駆動信号Sr1及びSr2は、サイリスタが自己消弧できないため、通電指令(点弧)と遮断指令(消弧)との双方をゲートへ与える必要がある。尚、これらのサイリスタの替わりに、自己消弧可能なスイッチング素子へ置き換えることも可能である。かかるスイッチング素子は、IGBTまたはMOFET等のパワートランジスタが好ましい。また、此処でのスイッチング素子に限らず、本明細書で記される全てのスイッチング素子について、このようなパワートランジスタが使用可能であることは言うまでもない。
【0074】
図8(b)は、切換回路の更なる改変例が示されている。当該切換回路Sc2は、2つのスイッチング素子Ty及びTz(特許請求の範囲における第2のスイッチング素子)によって構成され、スイッチング素子Tyは、出力端子t1へ接続され、通電区間を区間ta〜ts(一部区間)に設定する機能を担う。また、スイッチング素子Tzは、出力端子t2へ接続され、通電区間を区間ta〜tb(全区間)に設定する機能を担う。
【0075】
従って、切換回路Sc2についても、スイッチング素子Ty又はTzの何れかを選択的に駆動させ、一次電流の通電区間を切換える。また、同図における切換回路Sc2にあっては、選択されたスイッチング素子について、一次電流の通電又は遮断を断続的させる制御が行われる。このスイッチング素子の動作は、信号処理装置CNT1から送られる駆動信号Sr1又はSr2が高周波パルスとされ、これにより実現されるものである。そして、駆動対象としてスイッチング素子Tyが選択される場合、信号処理装置CNT1から駆動信号Sr1が入力され、スイッチング素子Tyは、通電区間ta〜tsについて、断続的な一次電流を発生させる。また、駆動対象としてスイッチング素子Tzが選択される場合、駆動信号Sr2が入力され、スイッチング素子Tzは、通電区間ta〜tbについて、断続的な一次電流を発生させる。
【0076】
即ち、切換回路Sc2は、通電経路を切換える本来的な機能を担うと共に、上述したドライブ回路DrのようなトランスTcを駆動させる機能を併せて備える回路である。このため、切換回路Sc2を有する車載用充電装置BCSは、ドライブ回路を別途設ける必要がないため、回路構成が非常に簡素化される。
【0077】
図9(a)は、切換回路の更なる変更例が示されている。当該切換回路Rc3は、複数のスイッチング手段Sw1〜Sw4が組み込まれ、1つの入力端子teと複数の出力端子t1〜t4とが設けられている。このうち、スイッチ手段Sw1は入力端子teと出力端子t1との間に介挿され、スイッチ手段Sw2は入力端子teと出力端子t2との間に介挿され、その他のスイッチング手段についても同様な配線が施される。かかる切換回路Rc3は、駆動信号Sr1〜Sr4に応じて、電力の導通経路を複数の種類(te〜t1,te〜t2,te〜t3,te〜t4)に切換えることが可能となる。
【0078】
トランスTcの一次コイルL1は、中間タップts1〜ts3が設けられ、総じて5箇所の接点箇所を備えている。同図の一次コイルL1は、端点taが第1の出力端子t1に接続され、中間タップts1が第2の出力端子t2に接続され、中間タップts2が第3の出力端子t3に接続され、中間タップts3が第4の出力端子t4に接続され、端点tbがドライブ回路drに接続される。
【0079】
同図における車載用充電装置BCSは、電力供給ルートが切換回路Rc3によって複数のルートに選択され得るので、その電力供給ルートの数に応じて、一次電流の通電区間を複数設定することが可能となる。従って、このような構成を備える車載用充電装置BCSは、2種類に限らず更に多くの種類の商用電源の使用が予定されていても、中間タップts1〜ts3で設定される巻数が其の入力電源の実効値に対応していれば、当該充電装置からの出力電圧Voutを同値とする制御が可能となり、車載バッテリを好適に充電させることが可能となる。
【0080】
図9(b)は、切換回路の更なる変更例が示されている。当該切換回路Rc4は、複数の入力端子t1〜t4が設けられ、この入力端子の各々に対応してスイッチ手段Sw1〜Sw4が接続されている。当該スイッチ手段Sw1〜Sw4は、入力端子t1〜t4を介して一次コイルL1の中間タップts1〜ts3,端点tbに適宜に接続される。
【0081】
かかる構成を具備する車載用充電装置BCSは、図9(a)と同様、3種類以上の異なる入力電源が用いられる各場面において、車載バッテリを好適に充電させることが可能となる。また、図9(b)における切換回路Rc4は、一次電流の通電区間を設定する機能と、トランスTcを駆動させる機能とを並存させているため、車載用充電装置BCSの回路構成を簡素化させ得る。
【0082】
尚、ここで示されるスイッチ手段Sw1〜Sw4は、先にも説明したように、リレー回路のような機構的な装置であっても良く、パワートランジスタ等の半導体素子を用いても良い。また、これら切換回路は、図7(a)及び(b)で説明したように、その接続位置及び配線について適宜変更が成されることを予定している。
【実施例】
【0083】
以下、車載用充電装置BCS1の使用例について具体的に説明する。本実施例では、プラグイン式電気自動車が日本国又は欧州の何れかで使用されることが予定されているものとする。また、プラグイン式電気自動車の充電装置BCS1には、日本で使用する場合、3相のAC200〔V〕によって商用電力が供給され、欧州で使用する場合、3相のAC400〔V〕によって商用電力が供給されるものとする。
【0084】
本実施例の場合、トランスTcの一次コイルL1は、コイルの巻数を等分させる接点箇所に、センタータップtgが接続されている。また、一次コイルL1の一端側の接点箇所は端点ta(第1の端点)に導通され、他端側の接点箇所は端点tb(第2の端点)に接続されている。かかるトランスTcは、リレー回路Rylの切換動作に応じて、巻線比RNが100%または50%の何れか一方に切換られる。
【0085】
先ず、プラグイン式電気自動車が欧州で使用される場合、車載用充電装置BCS1の入力コネクタtinへは、AC400〔V〕の商用電源プラグが接続される(図10参照)。この場合、図12(a1)に示す如く、商用電源ACt1の印加電圧は、ブリッジ回路Drbによって平滑され、入力電圧Vinを得る。この場合の入力電圧Vinは、約564〔V〕〜490〔V〕の範囲内で変動することとなる。以下、同図における入力電圧Vinの実効値をV1rmsとする。
【0086】
この場合、信号処理装置CNT1では、ドライブ回路Drを所定のモードで駆動させると共に、AC400〔V〕に係る入力電圧Vinを認識し、リレー回路Rylの通電経路を出力端子t1の方へ切換える。従って、一次コイルL1では、通電区間がta〜tbの全区間に設定され、これにより、トランスTcでは、巻線比RNが50%に設定される。そして、車載用充電装置BCS1は、直流電圧V1rms及び巻線比RN=50%の条件に応じて、出力端子toutから400〔V〕の充電電圧(出力電圧Vout)を出力させる(図12−a2参照)。
【0087】
これに対し、プラグイン式電気自動車が日本国で使用される場合、車載用充電装置BCS1の入力コネクタtinへは、AC200〔V〕の商用電源プラグが接続される(図11参照)。この場合、図12(b1)に示す如く、商用電源ACt2の印加電圧は、約282〔V〕〜245〔V〕で変動する入力電圧Vinへと平滑される。以下、同図における入力電圧Vinの実効値をV2rmsとする。
【0088】
この場合、信号処理装置CNT1では、ドライブ回路Drを所定のモードで駆動させると共に、AC200〔V〕に係る入力電圧Vinを認識し、リレー回路Rylの通電経路を出力端子t2の方へ切換える。従って、一次コイルL1では、通電区間が巻線を半分にさせる区間(ts〜tb)に設定され、これにより、トランスTcでは、巻線比RNが100%に設定される。そして、車載用充電装置BCS1は、直流電圧V2rms及び巻線比RN=100%の条件に応じて、充電電圧(出力電圧Vout)を出力させる。かかる充電電圧は、入力電圧Vinの実効値に比例し且つ巻線比RNに反比例するところ、其の出力電圧Voutについても400〔V〕に制御されることとなる(図12−b2参照)。
【0089】
このように、プラグイン式電気自動車が欧州及び日本国の双方で使用される可能性がある場合、トランスTcにセンタータップTgを設けることで、プラグイン式電気自動車をこの何れの国でも充電することが可能となる。
【0090】
また、世界各国では3相の交流電力を供給する電力会社が数多く存在するところ、本実施例のように、3相整流ブリッジを配する車載用充電装置BCS1は、各国での使用にあたり、非常に実用性の高いものとなる。
【0091】
更に、従来技術にあっては、コンデンサ・インプット方式の回路構成を採用する場合、AC400〔V〕及びAC200〔V〕の双方の商用電源を入力できるように設計するためには、入力側の平滑コンデンサをAC400〔V〕に合わせて選択しなければならず、装置の大型化を招き、コストの高騰を招来させていた。
【0092】
これに対し、本実施例に係る車載用充電装置BCS1によると、ワン・コンバータ方式の回路構成の採用により、入力側の平滑コンデンサが省略されることとなる。従って、AC400〔V〕及びAC200〔V〕の双方の商用電源を入力できるように設計する場合であっても、商用電源の電圧値(入力値)に影響されることなく、当該装置の体格を自由に設計することが可能となる。即ち、本実施例に係る車載用充電装置は、かかる技術的側面からも、装置の小型化が可能と成り、コストを低く抑えることが可能となる。また、入力側の平滑コンデンサが省略されるので、高調波の問題が解消され、力率改善回路又はアクティブフィルタ等の複雑な回路構成が不要となる。
【0093】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記された技術的思想の範囲内において、種々の変更が可能である。例えば、上述した車載用充電装置では、一次コイルL1の巻線数を正確に定めることにより、異なる入力電源に対して同一の充電電圧Voutを得るようにしている。しかし、この一次コイルL1の巻数を厳格に定めなくとも、一方の入力電源から変換される充電電圧Vout1と他方の入力電源から変換される充電電圧Vout2とが所定の範囲まで近づくように制御されれば足りる。但し、このような場合、ドライブ回路Dr等による補完的な制御が必要とされ、これにより、車載用充電装置では、双方の出力電圧Vout1及びVout2を一致させ、商用電源の種類に影響されない充電制御を実現させる。
【0094】
また、本明細書では、AC−DCコンバータの代表例として車載用充電装置を詳細に説明してきたが、特許請求の範囲に記されるAC−DCコンバータは、当該充電装置に限定されるものでなく、種々の技術分野において適宜形態を変えて広く適用され得るものである。
【0095】
最後に、本発明の旨とするところは、従来技術では回路構成が複雑化されていた課題について、切換可能なトランスをワン・コンバータ方式に適用させ、かかる簡潔な構成にして、高調波又は装置のサイズ等の問題を一挙に解決へ導くところにある。即ち、その技術的思想は、ここで用いられるトランス及びワン・コンバータ方式の回路構成を単に組合せた内容に止まるものでなく、当業者の想定を超える内容に企及する。
【符号の説明】
【0096】
BCS1,BCS2 車載用充電装置(AC−DCコンバータ)
Dbr 多相ダイオードブリッジ
Tc トランス
L1 一次コイル
L2 二次コイル
Dr ドライブ回路
T1〜T4,T5 第1のスイッチング素子
Rc(Ryl,Sc1,Sc2) 切換回路
Ty,Tz 第2のスイッチング素子
Sf 平滑回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相交流電圧を整流化させる多相ダイオードブリッジと、異なる3点以上の接点箇所を具備する一次コイル及び当該一次コイルに流れる一次電流の変動に応じて誘導起電力を発生させる二次コイルを具備するトランスと、前記一次電流の通電又は遮断を断続的に制御する第1のスイッチング素子を有し当該第1のスイッチング素子の動作に応じて前記一次電流の電流値を変動させるドライブ回路と、前記3点以上の接点箇所のうち複数の接点箇所に接続され且つ前記複数の接点箇所の何れかを選択的に通電させることにより前記一次電流が前記一次コイルを流れる通電区間を切換える切換回路と、前記誘導起電力を平滑させる平滑回路とを備えることを特徴とするAC−DCコンバータ。
【請求項2】
多相交流電圧を整流化させる多相ダイオードブリッジと、異なる3点以上の接点箇所を具備する一次コイル及び当該一次コイルに流れる一次電流の変動に応じて誘導起電力を発生させる二次コイルを具備するトランスと、前記3点以上の接点箇所のうち複数の接点箇所に対応して設けられた第2のスイッチング素子を有する切換回路と、前記誘導起電力を平滑させる平滑回路とを備え、
前記切換回路は、
前記第2のスイッチング素子の何れかを選択的に駆動させることにより前記一次電流の通電区間を切換え、且つ、前記第2のスイッチング素子のうち選択的に駆動させるスイッチング素子について前記一次電流の通電又は遮断を断続的に制御することを特徴とするAC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記切換回路は、実効値の高い第1の多相交流電圧が入力された場面で前記通電区間を長く設定し、実効値の低い第2の多相交流電圧が入力された場面で前記通電区間を短く設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1の多相交流電圧の実効値をV1rmsとし、前記第2の多相交流電圧の実効値をV2rmsとし、前記切換回路によって前記第1の多相交流電圧のために設定された第1の通電区間に巻回される前記一次コイルの巻数をN1aとし、前記切換回路によって前記第2の多相交流電圧のために設定された第2の通電区間に巻回される前記一次コイルの巻数をN1sとすると、
これらの値は、V1rms/N1a=V2rms/N1s,の関係を充足することを特徴とする請求項3に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1の多相交流電圧の実効値が前記第2の多相交流電圧の実効値の約2倍とされる関係が予定される場合において、
前記トランスの一次コイルは、一端の接点箇所に導通される第1の端点と、他端の接点箇所に導通される第2の端点と、前記第1の端点から前記第2の端点までの巻線を等分させる接点箇所に導通されるセンタータップとを有することを特徴とする請求項3に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項6】
商用電力の入力が可能なプラグイン式電気自動車に搭載され、前記商用電力に基づいて車載バッテリを充電する車載用充電装置として用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項7】
前記商用電力は3相交流電源から供給されることを特徴とする請求項6に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項1】
多相交流電圧を整流化させる多相ダイオードブリッジと、異なる3点以上の接点箇所を具備する一次コイル及び当該一次コイルに流れる一次電流の変動に応じて誘導起電力を発生させる二次コイルを具備するトランスと、前記一次電流の通電又は遮断を断続的に制御する第1のスイッチング素子を有し当該第1のスイッチング素子の動作に応じて前記一次電流の電流値を変動させるドライブ回路と、前記3点以上の接点箇所のうち複数の接点箇所に接続され且つ前記複数の接点箇所の何れかを選択的に通電させることにより前記一次電流が前記一次コイルを流れる通電区間を切換える切換回路と、前記誘導起電力を平滑させる平滑回路とを備えることを特徴とするAC−DCコンバータ。
【請求項2】
多相交流電圧を整流化させる多相ダイオードブリッジと、異なる3点以上の接点箇所を具備する一次コイル及び当該一次コイルに流れる一次電流の変動に応じて誘導起電力を発生させる二次コイルを具備するトランスと、前記3点以上の接点箇所のうち複数の接点箇所に対応して設けられた第2のスイッチング素子を有する切換回路と、前記誘導起電力を平滑させる平滑回路とを備え、
前記切換回路は、
前記第2のスイッチング素子の何れかを選択的に駆動させることにより前記一次電流の通電区間を切換え、且つ、前記第2のスイッチング素子のうち選択的に駆動させるスイッチング素子について前記一次電流の通電又は遮断を断続的に制御することを特徴とするAC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記切換回路は、実効値の高い第1の多相交流電圧が入力された場面で前記通電区間を長く設定し、実効値の低い第2の多相交流電圧が入力された場面で前記通電区間を短く設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1の多相交流電圧の実効値をV1rmsとし、前記第2の多相交流電圧の実効値をV2rmsとし、前記切換回路によって前記第1の多相交流電圧のために設定された第1の通電区間に巻回される前記一次コイルの巻数をN1aとし、前記切換回路によって前記第2の多相交流電圧のために設定された第2の通電区間に巻回される前記一次コイルの巻数をN1sとすると、
これらの値は、V1rms/N1a=V2rms/N1s,の関係を充足することを特徴とする請求項3に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1の多相交流電圧の実効値が前記第2の多相交流電圧の実効値の約2倍とされる関係が予定される場合において、
前記トランスの一次コイルは、一端の接点箇所に導通される第1の端点と、他端の接点箇所に導通される第2の端点と、前記第1の端点から前記第2の端点までの巻線を等分させる接点箇所に導通されるセンタータップとを有することを特徴とする請求項3に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項6】
商用電力の入力が可能なプラグイン式電気自動車に搭載され、前記商用電力に基づいて車載バッテリを充電する車載用充電装置として用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項7】
前記商用電力は3相交流電源から供給されることを特徴とする請求項6に記載のAC−DCコンバータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−85447(P2012−85447A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229741(P2010−229741)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
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