説明

AC停止対応スイッチング電源およびその停止検出方法

【課題】ブレーカなどの付加部品を必要とせず、非常時などにAC電源のスイッチを切ると、直ちにDC出力を停止して負荷側の装置の動作を停止させるAC停止対応スイッチング電源を提供する。
【解決手段】高周波のサンプリング周波数fsを発生する信号発生手段6と、整流波形の電圧レベルをサンプリング周波数fsのタイミングで検出する電圧レベル検出手段7と、電圧レベル検出手段7がボトム電圧Vboを連続して所定回数検出した場合には、交流電源の停止と判定する判定手段8と、判定手段8が交流電源の停止と判定した場合、スイッチ情報Jsを出力するスイッチ制御手段9と有し、サンプリング周波数fsに基づいてスイッチング手段を制御し、直流出力を停止するので、AC停止の検出を単純で、確実に行い、AC停止から極めて短い時間でDC停止の制御を実行する制御手段3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時などにAC電源のスイッチを切ると、直ちにDC出力を停止して負荷側の装置の動作を停止させるAC停止対応スイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング電源は、AC電源が何らかの原因によって瞬断しても、DC出力が停止することなく、負荷の駆動を継続させ、AC停止(例えば、AC電源スイッチのオフ)に対しても、でき得るだけ長くDC出力を継続させることが望まれており、AC停止からDC出力が継続する時間(出力保持時間)が数10ms(例えば、25ms)程度になっているのが現状である。
【0003】
AC停止からDC出力が継続する保持時間は、スイッチング電源内蔵の平滑コンデンサの静電容量に依存し、平滑コンデンサに蓄積されたエネルギー(電荷)量が次第に放電されていくことを利用して、実現がなされている。
【0004】
図9に従来のスイッチング電源のAC電源とDC出力の関係図を示す。図9において、スイッチング電源は、AC停止から数十(10)msの出力保持時間があるので、出力保持時間(数10ms)のAC瞬停(瞬断)に対してDC出力が停止することなく、AC停止の場合にも、出力保持時間(数10ms)は負荷にDC出力を供給し続ける。
【0005】
いずれにしても、スイッチング電源は、AC停止から数10ms経過すると、DC出力が停止することになる。
【0006】
一方、AC停止から直ちにDC出力が停止するスイッチング電源に対して、搬送機器や包装機器を負荷として使用するユーザから強い要望がある。
【0007】
また、ACが停止すると、直ちにDC出力を停止するスイッチング電源は、商用電源(AC電源)の停止をフォトカプラで検出し、フォトカプラの出力トランジスタがOFFになると、出力トランジスタに並列接続されたコンデンサが充電を開始し、出力遮断用FETがONすると、出力制御FETがOFFとなって直流出力が停止するものが、「特許文献1」(直流電源装置)に開示されている。
【特許文献1】実開平5−73574号公報(要約、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のスイッチング電源は、AC停止から出力保持時間(数10ms)だけ負荷にDC出力を供給し続けるので、AC停止した場合、直ちにDC出力の停止を要望する搬送機器や包装機器のユーザには、対応することができない課題がある。
【0009】
例えば、搬送機器の場合、部品や商品を送るローラやアームに何かが引っかかり応力がかかると、この応力に対抗するため、搬送機器のモータに大きな電流が流れる。このような場合、スイッチング電源のDC出力の出力保持時間に関係なく、AC停止に瞬時に応答してDC出力を遮断して、機器を停止することが要望されている。
【0010】
また、例えば、包装機器の場合、AC停止に応答してすぐにDC出力を遮断したい場合でも、DC出力が出力保持時間だけ継続するので、機器がしばらく止まらない。したがって、本来停止したいタイミングで停止できなく、商品などをパッケージングする工程の途中で止まることになり、商品包装を狙い通りのタイミングで停止できないことになり、AC停止に瞬時に応答してDC出力を遮断して、機器を停止することが要望されている。
【0011】
「特許文献1」に開示されたスイッチング電源(直流電源装置)は、出力保持時間を待たずにDC出力を停止させることが可能であるが、AC停止→フォトカプラの停止→コンデンサが充電→出力遮断用FETがON→出力制御FETがOFFの経過を辿り、DC出力を停止するため、特にコンデンサの充電に時間を要し(コンデンサの静電容量と抵抗値の時定数に依存)、AC停止から直ちにDC出力を停止できない課題がある。
【0012】
上記課題を解決するため、交流電源とスイッチング電源間、スイッチング電源と負荷間に、それぞれブレーカを挿入し、交流電源とスイッチング電源間のブレーカの切断に連動してスイッチング電源と負荷間のブレーカを切断することにより、AC停止から直ちにDC出力の停止が可能なものもある。
【0013】
図10にブレーカを用いたスイッチング電源の構成図を示す。交流電源(AC)とP/S(スイッチング電源)50間にブレーカSWa、SWbを挿入し、P/S(スイッチング電源)50と装置(負荷)51間にブレーカSWc、SWdを挿入して、連動駆動装置52でブレーカSWa、SWbと、ブレーカSWc、SWdを同時にOFF駆動することにより、AC停止とDC出力の停止が同時に実行可能となる。
【0014】
しかし、ブレーカSWa、SWb、SWc、SWdの挿入、連動駆動装置52の使用に伴い、部品費用のアップならびに部品取付けの工数を要する新たな課題が発生する。
【0015】
この発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的はブレーカなどの付加部品を必要とせず、非常時などにAC電源のスイッチを切ると、直ちにDC出力を停止して負荷側の装置の動作を停止させるAC停止対応スイッチング電源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するためこの発明に係るAC停止対応スイッチング電源は、交流電源の停止を検出し、直流出力を停止するAC停止対応スイッチング電源であって、交流電源の停止を、全波整流波形のボトム電圧が連続することから検出し、検出した結果に基づいて直流出力を停止する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明に係るAC停止対応スイッチング電源は、交流電源の停止を、全波整流波形のボトム電圧が連続することから検出し、検出した結果に基づいて直流出力を停止する制御を行う制御手段を備えたので、AC停止を検出すると、直ちに直流出力の停止を制御することができる。
【0018】
また、この発明に係る制御手段は、高周波のサンプリング周波数を発生する信号発生手段と、整流波形の電圧レベルをサンプリング周波数のタイミングで検出する電圧レベル検出手段と、電圧レベル検出手段がボトム電圧を連続して所定回数検出した場合には、交流電源の停止と判定する判定手段と、判定手段が交流電源の停止と判定した場合、スイッチ情報を出力するスイッチ制御手段とを備え、スイッチ情報に基づいてスイッチング手段を制御し、直流出力を停止することを特徴とする。
【0019】
この発明に係る制御手段は、高周波のサンプリング周波数を発生する信号発生手段と、整流波形の電圧レベルをサンプリング周波数のタイミングで検出する電圧レベル検出手段と、電圧レベル検出手段がボトム電圧を連続して所定回数検出した場合には、交流電源の停止と判定する判定手段と、判定手段が交流電源の停止と判定した場合、スイッチ情報を出力するスイッチ制御手段とを備え、スイッチ情報に基づいてスイッチング手段を制御し、直流出力を停止するので、AC停止の検出を単純で、確実に行い、AC停止から極めて短い時間でDC停止の制御を実行することができる。
【0020】
さらに、この発明に係る信号発生手段は、サンプリング周波数を変更可能にすることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る信号発生手段は、サンプリング周波数を変更可能にするので、サンプリング周波数を高くすることにより、ボトム電圧の所定回数をより短時間で実行することができる。
【0022】
また、この発明に係る判定手段は、ボトム電圧の連続して検出する所定回数を2回以上の任意回数に設定可能なことを特徴とする。
【0023】
この発明に係る判定手段は、ボトム電圧の連続して検出する所定回数を2回以上の任意回数に設定可能なので、AC停止の検出を最短時間で行う場合には、所定回数を2回に設定し、AC停止の検出を確実に行う場合には、所定回数を多めに設定することができる。
【0024】
さらに、この発明に係るスイッチング手段は、直流出力ラインに直列に接続し、スイッチ情報に基づいて、直流出力を遮断することを特徴とする。
【0025】
また、この発明に係るスイッチング手段は、直流出力ライン間に挿入し、スイッチ情報に基づいて、直流出力をシャントすることを特徴とする。
【0026】
さらに、この発明に係るスイッチング手段は、DC−DCコンバータを駆動する制御ICの駆動電圧をスイッチ情報に基づいて停止するとともに、直流出力ライン間に挿入し、スイッチ情報に基づいて、直流出力をシャントすることを特徴とする。
【0027】
この発明に係るスイッチング手段は、直流出力ラインに直列に接続し、スイッチ情報に基づいて、直流出力を遮断したり、また、直流出力ライン間に挿入し、スイッチ情報に基づいて、直流出力をシャントしたり、さらに、DC−DCコンバータを駆動する制御ICの駆動電圧をスイッチ情報に基づいて停止するとともに、直流出力ライン間に挿入し、スイッチ情報に基づいて、直流出力をシャントするので、AC停止から直ちにDC出力を停止することができる。
【0028】
また、この発明に係る制御手段は、前記制御手段のON動作とOFF動作を切替える切替スイッチを備えたことを特徴とする。
【0029】
この発明に係る制御手段は、制御手段のON動作とOFF動作を切替える切替スイッチを備えたので、切替スイッチの切替えにより、AC停止に反応して短時間にDC出力を停止するモードと、AC停止から出力保持時間の経過後にDC出力を停止するモードを選択することができる。
【0030】
さらに、この発明に係るAC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法は、交流電源の停止を検出し、直流出力を停止するAC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法であって、全波整流波形の電圧レベルを高周波のサンプリング周波数で検出するステップS1と、電圧レベルのボトム電圧を連続して検出するステップS2と、ボトム電圧を連続して検出する回数が所定値であるか否かを判定するステップS3と、回数が所定値の場合には、交流電源停止と判断するステップS4とを備えたことを特徴とする。
【0031】
AC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法は、全波整流波形の電圧レベルを高周波のサンプリング周波数で検出するステップS1と、電圧レベルのボトム電圧を連続して検出するステップS2と、ボトム電圧を連続して検出する回数が所定値であるか否かを判定するステップS3と、回数が所定値の場合には、交流電源停止と判断するステップS4とを備えたので、交流電源の停止をボトム電圧の連続して継続する回数から判定することができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明に係るAC停止対応スイッチング電源は、交流電源の停止を、全波整流波形のボトム電圧が連続することから検出し、検出した結果に基づいて直流出力を停止する制御を行う制御手段を備えたので、AC停止を検出すると、直ちに直流出力の停止を制御することができ、AC停止に応答して迅速にDC出力の停止が可能になり、利便性の改善を図ることができる。
【0033】
また、この発明に係る制御手段は、高周波のサンプリング周波数を発生する信号発生手段と、整流波形の電圧レベルをサンプリング周波数のタイミングで検出する電圧レベル検出手段と、電圧レベル検出手段がボトム電圧を連続して所定回数検出した場合には、交流電源の停止と判定する判定手段と、判定手段が交流電源の停止と判定した場合、スイッチ情報を出力するスイッチ制御手段とを備え、スイッチ情報に基づいてスイッチング手段を制御し、直流出力を停止するので、AC停止の検出を単純で、確実に行い、AC停止から極めて短い時間でDC停止の制御を実行することができ、使い勝手の良さをアピールすることができる。
【0034】
さらに、この発明に係る信号発生手段は、サンプリング周波数を変更可能にするので、サンプリング周波数を高くすることにより、ボトム電圧の所定回数をより短時間で実行することができ、AC停止からより短い時間でDC出力を停止することができる。
【0035】
また、この発明に係る判定手段は、ボトム電圧の連続して検出する所定回数を2回以上の任意回数に設定可能なので、AC停止の検出を最短時間で行う場合には、所定回数を2回に設定し、AC停止の検出を確実に行う場合には、所定回数を多めに設定することができ、AC停止の検出を最短時間または確実性のいずれかで検出することができる。
【0036】
さらに、この発明に係るスイッチング手段は、直流出力ラインに直列に接続し、スイッチ情報に基づいて、直流出力を遮断したり、また、直流出力ライン間に挿入し、スイッチ情報に基づいて、直流出力をシャントしたり、さらに、DC−DCコンバータを駆動する制御ICの駆動電圧をスイッチ情報に基づいて停止するとともに、直流出力ライン間に挿入し、スイッチ情報に基づいて、直流出力をシャントするので、AC停止から直ちにDC出力を停止することができ、AC停止から最短時間で、確実にDC出力を停止することができる。
【0037】
また、この発明に係る制御手段は、制御手段のON動作とOFF動作を切替える切替スイッチを備えたので、切替スイッチの切替えにより、AC停止に反応して短時間にDC出力を停止するモードと、AC停止から出力保持時間の経過後にDC出力を停止するモードを選択することができ、1つのスイッチング電源で2モードに対応可能となり、利便性の良さをアピールすることができる。
【0038】
さらに、AC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法は、全波整流波形の電圧レベルを高周波のサンプリング周波数で検出するステップS1と、電圧レベルのボトム電圧を連続して検出するステップS2と、ボトム電圧を連続して検出する回数が所定値であるか否かを判定するステップS3と、回数が所定値の場合には、交流電源停止と判断するステップS4とを備えたので、交流電源の停止をボトム電圧の連続して継続する回数から判定することができ、単純な方法で、交流電源の停止を極めて短時間で、確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係るAC停止対応スイッチング電源の一実施の形態全体構成図である。図1において、AC停止対応スイッチング電源1は、交流電源(AC)VAC(100V/200V、50Hz/60Hzなど)の投入または停止の切替えを行うための電源スイッチSW−ACと、交流電源(AC)VACを全波整流するダイオードブリッジDBと、全波整流された脈流を高周波信号に昇圧する昇圧回路2と、昇圧された高周波信号を平滑する平滑コンデンサC1と、DC−DCコンバータの一部を構成する絶縁トランスTの一次巻線NP1、スイッチング素子であるMOSFET−Q1、MOSFET−Q1の発振周波数およびデューティ比を決定してスイッチング駆動する制御IC4と、絶縁トランスTの二次巻線NS、整流ダイオードD1および平滑コンデンサC2で構成し、DC出力電圧VOを発生する主電源回路と、主電源回路をDC出力ラインOLに接続するスイッチング手段を構成するMOSFET−Q2と、制御IC4に直流電圧VCCを供給するための電源回路を構成する一次巻線NP2、整流ダイオードD2および平滑コンデンサC3とから構成されている。
【0040】
また、AC停止対応スイッチング電源1は、交流電源(AC)VACの停止を、全波整流波形のボトム電圧Vboが連続することから検出し、検出した結果に基づいて直流出力(DC出力電圧VO)を停止する制御を行う制御手段3を備える。
【0041】
全波整流波形は、抵抗器R1および抵抗器R2で抵抗分割され、分圧された全波整流電圧VRが制御手段3に供給される。
【0042】
制御手段3は、全波整流電圧VRを高周波のサンプリング周波数fsで検出し、AC停止(交流電源(AC)VAC=0)に伴い、ボトム電圧Vboを連続して所定回数だけ検出すると、AC停止が発生したと判定し、直ちにスイッチ情報Jsを出力する。
【0043】
制御手段3から出力されたスイッチ情報Jsは、トランジスタTR1を介してフォトカプラFC1のフォトダイオードDaを駆動し、フォトダイオードDaの動作によってフォトカプラFC1のフォトトランジスタTRa、トランジスタTR2を駆動することにより、DC出力ラインOLに直列に接続されたMOSFET−Q2をOFF状態にして、主電源回路をDC出力ラインOLから切り離し、DC出力電圧VO(DC出力)を停止して負荷側の装置の動作を停止させる。
【0044】
図2はこの発明に係る制御手段の一実施の形態要部ブロック構成図である。図2において、制御手段3は、CPU(Central Processing Unit)を基本に構成し、インタフェース5、信号発生手段6、電圧レベル検出手段7、判定手段8およびスイッチ制御手段9を備える。
【0045】
信号発生手段6は、CPUの基準クロックを分周し、交流電源(AC)VACの全波整流波形の周波数(ACが50Hzの場合には100Hz、ACが60Hzの場合には120Hz)より充分高いサンプリング周波数fsの信号(サンプリングパルス)を発生し、電圧レベル検出手段7に提供する。
【0046】
電圧レベル検出手段7は、全波整流波形の全波整流電圧VRを信号発生手段6から提供されたサンプリング周波数fsのサンプリングパルスの周期毎のタイミングで検出し、検出した全波整流電圧VRを判定手段8に提供する。
【0047】
判定手段8は、全波整流電圧VRのボトム電圧Vboの値(全波整流波形は、ダイオードブリッジDBの順方向電圧(=2VF)が基準となるので、ACが正常な時には0Vよりもわずかに高い電圧値となるが、AC停止後には、一次側の接地電圧0Vとなる)と、サンプリング周波数fsの周期単位で連続するボトム電圧Vboの所定回数Nxを記憶し、電圧レベル検出手段7から提供される全波整流電圧VRのボトム電圧Vbo(=0V)が連続して所定回数Nx検出した場合、AC停止と判断して、判定信号をスイッチ制御手段9に供給する。
【0048】
スイッチ制御手段9は、判定手段8からの判定信号を受信した場合、直ちにスイッチ情報JsをトランジスタTR1に出力する。
【0049】
インタフェース5は、例えばAC停止対応スイッチング電源1のパネルに設けたサンプリング周波数の設定ツマミや外部パソコンの操作により、周波数設定情報JFが供給されると、サンプリング周波数情報FSを信号発生手段6に提供し、サンプリング周波数fsを変更させる。
【0050】
また、インタフェース5は、例えばAC停止対応スイッチング電源1のパネルに設けたサンプリング周波数の設定ツマミや外部パソコンの操作により、ボトム電圧Vbo(=0V)の連続して検出する所定回数Nxであるカウント設定情報JNが提供されると、カウント回数情報NCを判定手段8に提供し、カウント数Nxを変更させる。
【0051】
さらに、インタフェース5は、モード切替スイッチSW−MをON/OFFに切り替えることにより、モード切替情報JWが供給されると、この情報をスイッチ制御手段9に提供し、スイッチ制御手段9の動作を無効にしたり、有効にしたりして、出力保持時間(数10ms)対応機能またはAC停止対応機能へのモード変更を実行する。
【0052】
このように、この発明に係る制御手段3は、高周波のサンプリング周波数fsを発生する信号発生手段6と、整流波形の電圧レベル(全波整流電圧VR)をサンプリング周波数fsのタイミングで検出する電圧レベル検出手段7と、電圧レベル検出手段7がボトム電圧Vbo(=0V)を連続して所定回数検出した場合には、交流電源(AC)VACの停止と判定する判定手段8と、判定手段8が交流電源(AC)VACの停止と判定した場合、スイッチ情報Jsを出力するスイッチ制御手段9とを備え、スイッチ情報Jsに基づいてスイッチング手段(MOSFET−Q2)を制御し、直流出力(DC出力電圧VO)を停止するので、AC停止の検出を単純で、確実に行い、AC停止から極めて短い時間でDC停止の制御を実行することができ、使い勝手の良さをアピールすることができる。
【0053】
また、この発明に係る信号発生手段6は、サンプリング周波数fsを変更可能にするので、サンプリング周波数fsを高くすることにより、ボトム電圧Vbo(=0V)の所定回数をより短時間で実行することができ、AC停止からより短い時間でDC出力を停止することができる。
【0054】
さらに、この発明に係る判定手段8は、ボトム電圧Vboの連続して検出する所定回数を2回以上の任意回数に設定可能なので、AC停止の検出を最短時間で行う場合には、所定回数を2回に設定し、AC停止の検出を確実に行う場合には、所定回数を多めに設定することができ、AC停止の検出を最短時間または確実性のいずれかで検出することができる。
【0055】
次に、この発明に係るAC停止検出の基本的な方式について説明する。50Hzの交流電源(AC)VACの全波整流波形である全波整流電圧VRは、100Hzとなり、周期10msとなって、サンプリング周波数fsを1Kzとすると、全波整流電圧VRの一周期(10ms)に対して、1ms毎に10回のサンプリングで、電圧レベルを検出可能になる。
【0056】
図3はこの発明に係る全波整流波形とサンプリング周波数の一実施の形態関係図である。図3において、交流電源(AC)VACは正常なので、ボトム電圧Vboが連続して検出されることがない。これにより、制御手段3は、AC停止と判定することがない。
【0057】
図4はこの発明に係る全波整流波形とサンプリング周波数の別実施の形態関係図である。図4において、AC停止が発生し、AC停止後には、交流電源(AC)VACが連続してボトム電圧Vbo(=0V)を示す。
【0058】
サンプリング周波数fsを1Kz、ボトム電圧Vbo(=0V)の連続する所定回数を2回とした場合、ボトム電圧Vbo(=0V)の連続2回発生するまでの時間は、2msとなり、ACが停止してから2msで、AC停止を判定し、DC出力を停止することができる。
【0059】
また、所定回数を3〜5に変更設定すると、AC停止は、それぞれ3ms、4msおよび5msで検出することができる。
【0060】
さらに、サンプリング周波数fsを10Kz、100Kzに変更設定すると、所定回数が2回の場合、AC停止は、それぞれ0.2ms、20μsで検出することができる。
【0061】
以上のことから、サンプリング周波数fsを高く設定すると、AC停止から極めて短い時間で、AC停止を検出することができる。
【0062】
また、所定回数を多く設定すると、ACの停止を確実に検出することができる。
【0063】
図5はこの発明に係るAC停止対応スイッチング電源の別実施の形態全体構成図である。図5において、AC停止対応スイッチング電源10は、スイッチング手段を構成するMOSFET−Q3がDC出力ラインOL間に挿入されている点が図1に示すAC停止対応スイッチング電源1と異なる。
【0064】
AC停止を検出して、制御手段3からスイッチ情報JsをトランジスタTR1に出力すると、フォトカプラFC1のフォトダイオードDaが動作し、フォトカプラFC1のフォトトランジスタTRa、トランジスタTR3を介してMOSFET−Q3をON状態にし、直流出力(DC出力電圧VO)をシャントして、DC出力を停止する。
【0065】
しかし、この状態では、MOSFET−Q1が動作しており、平滑コンデンサC1に蓄えられた電荷(エネルギー)が平滑コンデンサC2に充電されるので、平滑コンデンサC2の電荷(エネルギー)をMOSFET−Q3で放電するために、ある程度時間を要し、また、放電電流が大きくなるため、MOSFET−Q3の定格が大きくなる。
【0066】
図6はこの発明に係るAC停止対応スイッチング電源の別実施の形態全体構成図である。図6において、AC停止対応スイッチング電源11は、スイッチング手段を構成するMOSFET−Q3がDC出力ラインOL間に挿入されているとともに、制御IC4を駆動する直流電圧VCCをトランジスタTR4でシャントして制御IC4の動作を停止する点が図1に示すAC停止対応スイッチング電源1と異なる。
【0067】
AC停止を検出して、制御手段3からスイッチ情報JsをトランジスタTR1に出力すると、フォトカプラFC1のフォトダイオードDaおよびフォトカプラFC2のフォトダイオードDbが動作する。
【0068】
フォトダイオードDaが動作すると、フォトカプラFC1のフォトトランジスタTRa、トランジスタTR3を介してMOSFET−Q3をON状態にし、直流出力(DC出力電圧VO)をシャントして、DC出力を停止する。
【0069】
一方、フォトダイオードDbが動作すると、フォトカプラFC2のフォトトランジスタTRbを介してトランジスタTR4をON状態にし、直流電源VCCをシャントして制御IC4を停止することにより、MOSFET−Q1の動作を停止させる。
【0070】
図5に示すAC停止対応スイッチング電源10と比較して、平滑コンデンサC1に蓄えられた電荷(エネルギー)の影響を受けなくなるので、平滑コンデンサC2に蓄えられた電荷(エネルギー)の放電時間が早くなり、DC出力ラインOLのDC出力を直ちにシャントすることができる。
【0071】
また、平滑コンデンサC2の電荷(エネルギー)を放電するためのMOSFET−Q3の定格は、小さくすることができる。
【0072】
このように、この発明に係るこの発明に係るスイッチング手段(MOSFET−Q2,Q3)は、DC出力ラインOLに直列(MOSFET−Q2)に接続し、スイッチ情報Jsに基づいて、直流出力(DC出力電圧VO)を遮断したり、また、DC出力ラインOL間に挿入(MOSFET−Q3)し、スイッチ情報Jsに基づいて、直流出力(DC出力電圧VO)をシャントしたり、さらに、DC−DCコンバータを駆動する制御IC4の駆動電圧(直流電圧VCC)をスイッチ情報Jsに基づいて停止するとともに、DC出力ラインOL間に挿入(MOSFET−Q3)し、スイッチ情報Jsに基づいて、直流出力(DC出力電圧VO)をシャントするので、AC停止から直ちにDC出力を停止することができ、AC停止から最短時間で、確実にDC出力を停止することができる。
【0073】
図7はこの発明に係るAC対応機能と出力保持時間対応機能の切替え説明図である。図7において、モード切替スイッチSW−MをON状態にすると、従来のAC停止から数十msの出力保持時間を経過してから直流出力VDC(=DC出力電圧VO)が停止するモードとなる。
【0074】
一方、モード切替スイッチSW−MをOFF状態にすると、本発明のAC停止対応モードとなり、AC停止後、直ちに直流出力VDC(=DC出力電圧VO)が停止する。
【0075】
このように、この発明に係る制御手段3は、制御手段3のON動作とOFF動作を切替えるモード切替スイッチSW−Mを備えたので、モード切替スイッチSW−Mの切替えにより、AC停止に反応して短時間にDC出力を停止するモードと、AC停止から出力保持時間の経過後にDC出力を停止するモードを選択することができ、1つのスイッチング電源で2モードに対応可能となり、利便性の良さをアピールすることができる。
【0076】
以上説明したように、この発明に係るAC停止対応スイッチング電源1,10,11は、交流電源(交流電源(AC)VAC)の停止を、全波整流波形のボトム電圧Vboが連続することから検出し、検出した結果に基づいて直流出力(DC出力電圧VO)を停止する制御を行う制御手段3を備えたので、AC停止を検出すると、直ちに直流出力の停止を制御することができ、AC停止に応答して迅速にDC出力の停止が可能になり、利便性の改善を図ることができる。
【0077】
続いて、交流電源停止の検出方法について説明する。図8はこの発明に係るAC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法に対する一実施の形態動作フロー図である。なお、動作フローは、図3を参照にして説明する。
【0078】
ステップS1では、全波整流波形の電圧レベルを高周波のサンプリング周波数で検出する。なお、ステップS1の動作は、電圧レベル検出手段7が実行する。
【0079】
ステップS2では、電圧レベルのボトム電圧を連続して検出する。なお、ステップS2の動作は、電圧レベル検出手段7が実行する。
【0080】
ステップS3では、ボトム電圧を連続して検出する回数が所定値であるか否かを判定する。なお、ステップS3の動作は、判定手段8が実行する。
【0081】
ステップS4では、回数が所定値の場合には、交流電源停止と判断する。なお、ステップS4の動作は、判定手段8が実行する。
【0082】
このように、AC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法は、全波整流波形の電圧レベルを高周波のサンプリング周波数で検出するステップS1と、電圧レベルのボトム電圧を連続して検出するステップS2と、ボトム電圧を連続して検出する回数が所定値であるか否かを判定するステップS3と、回数が所定値の場合には、交流電源停止と判断するステップS4とを備えたので、交流電源(交流電源(AC)VAC)の停止をボトム電圧Vboの連続して継続する回数から判定することができ、単純な方法で、交流電源の停止を極めて短時間で、確実に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係るAC停止対応スイッチング電源は、ブレーカなどの付加部品を必要とせず、非常時などにAC電源のスイッチを切ると、直ちにDC出力を停止して負荷側の装置の動作を停止させるもので、AC停止の際に、直ちに負荷に供給するDC出力を停止するあらゆるスイッチング電源に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明に係るAC停止対応スイッチング電源の一実施の形態全体構成図
【図2】この発明に係る制御手段の一実施の形態要部ブロック構成図
【図3】この発明に係る全波整流波形とサンプリング周波数の一実施の形態関係図
【図4】この発明に係る全波整流波形とサンプリング周波数の別実施の形態関係図
【図5】この発明に係るAC停止対応スイッチング電源の別実施の形態全体構成図
【図6】この発明に係るAC停止対応スイッチング電源の別実施の形態全体構成図
【図7】この発明に係るAC対応機能と出力保持時間対応機能の切替え説明図
【図8】この発明に係るAC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法に対する一実施の形態動作フロー図
【図9】従来のスイッチング電源のAC電源とDC出力の関係図
【図10】ブレーカを用いたスイッチング電源の構成図
【符号の説明】
【0085】
1,10,11 AC停止対応スイッチング電源
2 昇圧回路
3 制御手段
4 制御IC
5 インタフェース
6 信号発生手段
7 電圧レベル検出手段
8 判定手段
9 スイッチ制御手段
SW−AC 電源スイッチ
SW−M モード切替スイッチ
DB ダイオードブリッジ
T 絶縁トランス
NP1,NP2 一次巻線
NS 二次巻線
D1,D2 整流ダイオード
C1,C2,C3 平滑コンデンサ
FC1,FC2 フォトカプラ
Da,Db フォトダイオード
TRa,TRb フォトトランジスタ
TR1,TR2,TR3,TR4 トランジスタ
Q1,Q2,Q3 MOSFET
R1,R2 抵抗器
VAC 交流電源(AC)
VR 全波整流電圧
VO DC出力電圧
Vbo ボトム電圧Vbo(=0V)
OL DC出力ライン
Js スイッチ情報
JW モード切替情報
JF 周波数設定情報
JN カウント設定情報
FS サンプリング周波数情報
NC カウント回数情報F
fs サンプリング周波数



【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の停止を検出し、直流出力を停止するAC停止対応スイッチング電源であって、
前記交流電源の停止を、全波整流波形のボトム電圧が連続することから検出し、検出した結果に基づいて直流出力を停止する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とするAC停止対応スイッチング電源。
【請求項2】
前記制御手段は、高周波のサンプリング周波数を発生する信号発生手段と、整流波形の電圧レベルをサンプリング周波数のタイミングで検出する電圧レベル検出手段と、前記電圧レベル検出手段がボトム電圧を連続して所定回数検出した場合には、前記交流電源の停止と判定する判定手段と、前記判定手段が前記交流電源の停止と判定した場合、スイッチ情報を出力するスイッチ制御手段と、を備え、スイッチ情報に基づいてスイッチング手段を制御し、直流出力を停止することを特徴とする請求項1記載のAC停止対応スイッチング電源。
【請求項3】
前記信号発生手段は、サンプリング周波数を変更可能にすることを特徴とする請求項2記載のAC停止対応スイッチング電源。
【請求項4】
前記判定手段は、ボトム電圧の連続して検出する所定回数を2回以上の任意回数に設定可能なことを特徴とする請求項2記載のAC停止対応スイッチング電源。
【請求項5】
前記スイッチング手段は、直流出力ラインに直列に接続し、スイッチ情報に基づいて、直流出力を遮断することを特徴とする請求項2記載のAC停止対応スイッチング電源。
【請求項6】
前記スイッチング手段は、直流出力ライン間に挿入し、スイッチ情報に基づいて、直流出力をシャントすることを特徴とする請求項2記載のAC停止対応スイッチング電源。
【請求項7】
前記スイッチング手段は、DC−DCコンバータを駆動する制御ICの駆動電圧をスイッチ情報に基づいて停止するとともに、直流出力ライン間に挿入し、スイッチ情報に基づいて、直流出力をシャントすることを特徴とする請求項2記載または請求項6記載のAC停止対応スイッチング電源。
【請求項8】
前記制御手段は、前記制御手段のON動作とOFF動作を切替える切替スイッチを備えたことを特徴とする請求項1記載のAC停止対応スイッチング電源。
【請求項9】
交流電源の停止を検出し、直流出力を停止するAC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法であって、
全波整流波形の電圧レベルを高周波のサンプリング周波数で検出するステップS1と、
電圧レベルのボトム電圧を連続して検出するステップS2と、
ボトム電圧を連続して検出する回数が所定値であるか否かを判定するステップS3と、
回数が所定値の場合には、交流電源停止と判断するステップS4と、
を備えたことを特徴とするAC停止対応スイッチング電源の交流電源停止の検出方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−244105(P2007−244105A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63731(P2006−63731)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】