説明

AVシステム及びミリ波伝送装置

【課題】AV機器にミリ波帯を使用してAV信号を送信する際に、視聴空間に合わせてサラウンド効果等を最適化可能にする。
【解決手段】デジタルレコーダ10内のミリ波伝送装置30は、複数のAV機器(サラウンドスピーカ)にAV信号伝送部32、及びアンテナ部34を介してミリ波帯のAV信号を送信する。また、ミリ波伝送装置30は、ミリ波レーダ装置40を備え、所定の視聴空間を走査し、該視聴空間の空間情報を取得する。サラウンド制御部54は、ミリ波レーダ装置40により取得された視聴空間の空間情報に基づいて各AV機器にミリ波送信されるAV信号の再生の最適化を行わせ、視聴空間、視聴者の位置に合ったサラウンド効果等が得られるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はAVシステム及びミリ波伝送装置に係り、特に所定の視聴空間に配置されたAV(Audio Video)機器にミリ波帯を使用してAV信号を送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視聴室に複数のチャンネル(例えば、5.1チャンネル)に対応した複数のスピーカを配置し、サラウンド効果のある音響システムを構築する場合には、各スピーカを適切な位置に配置するとともに、どのスピーカにどの音声信号を供給すべきかを考慮しながら音声再生装置の出力端子と各スピーカの入力端子とを接続する接続作業を行っており、作業が煩雑であるという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、複数のスピーカの1つ1つに順次テスト信号を供給し、マイクロホンによって受音し、受音結果によって信号入力とスピーカの接続を自動的に最適化するとともに、スピーカの有効な設定を通知することを可能にし、簡単な操作で最適な再生環境を構築するチャンネル配置装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、ミリ波帯の音声信号を複数のスピーカに送信し、サラウンド音声を楽しむことができるオーディオビデオ無線伝送装置が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−25085号公報
【特許文献2】特開2005−65169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のチャンネル配置装置は、各スピーカの位置を特定するための専用マイクロホンを必要とするとともに、各スピーカと再生装置との間を有線で接続しているため、配線が邪魔になり、一旦配線すると、スピーカ等の位置を自由に移動させることができないという問題がある。また、各スピーカの正規のレイアウトが決められており、最適なサラウンド効果が得られる視聴位置も決められており、自由度がないという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載のオーディオビデオ無線伝送装置は、ミリ波帯の音声信号を無線で送信するため、配線が不要であるという利点があるが、視聴者の位置に対してサラウンド効果等を最適化する機能がない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、AV機器にミリ波帯を使用してAV信号を送信する際に、視聴空間に合わせてサラウンド効果等を最適化することができるAVシステム及びミリ波伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、所定の視聴空間に配置されたミリ波伝送装置と、前記ミリ波伝送伝装置とミリ波帯を使用してミリ波通信を行う前記視聴空間に配置されたAV機器とからなるAVシステムにおいて、前記ミリ波伝送装置は、前記所定の視聴空間を走査し、該視聴空間の空間情報を取得するミリ波レーダ装置と、前記AV機器とミリ波通信を行うミリ波通信手段と、前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報に基づいて前記ミリ波通信手段から前記AV機器にミリ波送信されるAV信号の再生の最適化を行う制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
このAVシステムは、前記ミリ波伝送装置からAV機器にミリ波帯のAV信号を無線送信するため、配線が不要であり、特にミリ波を使用したミリ波レーダ装置によって視聴空間の空間情報を取得し、その取得した空間情報に基づいてミリ波通信手段からAV機器にミリ波送信されるAV信号の再生の最適化を行うようにしたため、視聴空間に合わせてサラウンド効果等の最適化を図ることができる。
【0010】
請求項2に示すように請求項1に記載のAVシステムにおいて、前記ミリ波レーダ装置は、前記ミリ波通信手段とアンテナ部を共用し、前記所定の視聴空間の空間情報の取得時に前記アンテナ部を制御して前記所定の視聴空間を走査することを特徴としている。
【0011】
即ち、前記ミリ波レーダ装置として、AV信号をミリ波送信するミリ波通信手段の一部(アンテナ部やミリ波を生成する回路部等)を利用することで、コストの低減を図ることができる。
【0012】
請求項3に示すように請求項2に記載のAVシステムにおいて、前記所定の視聴空間の空間情報を取得するための空間情報取得モードを有し、前記ミリ波レーダ装置は、前記空間情報取得モード時に前記所定の視聴空間を走査することを特徴としている。前記空間情報取得モードは、専用のモード切替え手段を操作することによって選択できるようにしてもよいし、システム起動時から空間情報取得までの間、自動的に選択されるようにしてもよい。
【0013】
請求項4に示すように請求項2に記載のAVシステムにおいて、前記ミリ波レーダ装置は、前記ミリ波通信手段からの前記AV信号の送信中に割り込んで前記所定の視聴空間を走査することを特徴としている。
【0014】
請求項5に示すように請求項4に記載のAVシステムにおいて、前記ミリ波レーダ装置は、前記所定の視聴空間の走査範囲を複数に分割し、各走査範囲ごとに時間をずらして走査することを特徴としている。これにより、所定の視聴空間の空間情報を常時取得することができるとともに、AV信号のミリ波送信に支障がないようにしている。
【0015】
請求項6に示すように請求項1から5のいずれかに記載のAVシステムにおいて、前記AV機器は、複数のスピーカ装置、又は複数のスピーカ装置と映像表示装置であり、前記ミリ波通信手段は、多チャンネルの音声信号、又は多チャンネルの音声信号と映像信号を送信することを特徴としている。前記多チャンネルの音声信号、又は多チャンネルの音声信号と映像信号は、ミリ波の複数の周波数帯で同時に送信される。
【0016】
請求項7に示すように請求項6に記載のAVシステムにおいて、前記制御手段は、前記多チャンネルの音声信号の出力タイミング又は前記スピーカ装置での再生タイミング、及び音量を調整することにより前記ミリ波送信されるAV信号の再生の最適化を行うことを特徴としている。
【0017】
請求項8に示すように請求項1から5のいずれかに記載のAVシステムにおいて、前記AV機器は、立体映像表示装置であり、前記ミリ波通信手段は、立体映像信号を送信することを特徴としている。
【0018】
請求項9に示すように請求項1から8のいずれかに記載のAVシステムにおいて、前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報を表示する表示手段と、前記表示手段に表示された空間情報を利用して視聴者の位置を指示する視聴者指示手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記視聴者指示手段によって指示された視聴者の位置に基づいて前記AV信号の再生の最適化を行うことを特徴としている。
【0019】
即ち、前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報には、AV機器(対象物)の位置情報の他に、視聴空間に設置されている家具等の非対象物、及び視聴者(非対象物)の位置情報が含まれているが、この空間情報からは自動的に視聴者を判断することができない。そこで、前記空間情報を表示手段に表示させ、その表示画面上に表示されている視聴者をポインタやタッチパネル等の視聴者指示手段で指定することで、ミリ波伝送装置側が視聴者の位置を認識できるようにしている。また、前記制御手段は、前記指定された視聴者の位置において、最適なサラウンド効果等が得られるようにAV信号の再生の最適化を行うようにしている。
【0020】
請求項10に示すように請求項1から8のいずれかに記載のAVシステムにおいて、前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された空間情報と前記記憶手段に空間情報が記憶された後に前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報との差分情報を取得し、この差分情報に基づいて所定の視聴空間に入った視聴者の位置、移動した視聴者の位置、又は増加減少した視聴者の位置を検出する視聴者検出手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記視聴者検出手段によって検出された視聴者の位置に基づいて前記AV信号の再生の最適化を行うことを特徴としている。
【0021】
例えば、所定の視聴空間に視聴者が存在しない状態で、その視聴空間の空間情報を取得して記憶手段に記憶しておき、その後、前記視聴空間に視聴者が入った状態で空間情報を取得し、前記記憶した空間情報との差分情報を取得すると、視聴者の位置を認識することができる。また、前記視聴空間に視聴者が存在している状態の空間情報を記憶手段に記憶させておき、その後、取得される空間情報との差分情報を取得すると、視聴者の移動、又は視聴者の増加減少した位置を認識することができる。尚、視聴者が複数存在する場合には、複数の視聴者から等距離の位置において、最適なサラウンド効果等が得られるようにAV信号の再生の最適化を行う。
【0022】
請求項11に示すように請求項1から10のいずれかに記載のAVシステムにおいて、前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報を表示する表示手段と、前記表示手段に表示された空間情報を利用して前記AV機器の位置及び種類を指示する機器指示手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記機器指定手段によって指定されたAV機器の位置及び種類に基づいて前記AV信号の再生の最適化を行うことを特徴としている。
【0023】
即ち、前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報には、AV機器(対象物)の位置情報の他に、視聴空間に設置されている家具等の非対象物の位置情報が含まれているが、この空間情報からは自動的に対象物を判断するができない。そこで、前記空間情報を表示手段に表示させ、その表示画面上に表示されているAV機器をポインタやタッチパネル等の視聴者指示手段で指定することで、ミリ波伝送装置側がAV機器の位置を認識できるようにしている。また、上記AV機器の位置指定時に、その指定したAV機器の種類(例えば、スピーカ装置か映像表示装置の種別、又は複数のスピーカ装置のそれぞれの種類)が何であるかを同時に指定するようにしている。
【0024】
請求項12に示すように請求項1から10のいずれかに記載のAVシステムにおいて、前記AV機器は、該AV機器の種類を示す情報を送信するミリ波通信手段を有し、前記ミリ波レーダ装置は、前記所定の視聴空間の走査時に前記AV機器の位置及び種類を示す情報を取得し、前記制御手段は、前記取得したAV機器の位置及び種類に基づいて前記AV信号の再生の最適化を行うことを特徴としている。
【0025】
即ち、前記AV機器からは自身の種類を示す情報がミリ波信号として送信され、ミリ波レーダ装置は、所定の視聴空間の走査時に前記AV機器から受信したミリ波信号に基づいてそのAV機器の位置及び種類を自動的に取得するようにしている。
【0026】
請求項13に示すように請求項1から12のいずれかに記載のAVシステムにおいて、前記ミリ波通信手段から前記AV機器の方向に送信されるミリ波の指向性が高くなるように、前記ミリ波通信手段のアンテナ部の指向特性を制御する指向特性制御手段を更に備えたことを特徴としている。
【0027】
即ち、ミリ波は指向性が高い程、到達距離が長くなる。そこで、前記ミリ波伝送装置から遠い位置にあるAV機器に対しては、そのAV機器の方向に送信されるミリ波の指向性が高くなるように制御するようにしている。
【0028】
請求項14に係る発明は、請求項1から13のいずれかに記載のAVシステムに適用されたミリ波伝送装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、AV機器にミリ波帯を使用してAV信号を送信する際に、ミリ波レーダ装置により視聴空間の空間情報を取得するようにしたため、その取得した視聴空間に合わせてサラウンド効果等の最適化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面に従って本発明に係るAVシステム及びミリ波伝送装置の好ましい実施の形態について説明する。
[AVシステムの全体構成]
図1は本発明に係るAVシステムのシステム構成図であり、5.1チャンネル・ホームシアターシステムの場合に関して示している。
【0031】
この5.1チャンネル・ホームシアターシステム1は、デジタルレコーダ10と、映像表示装置12と、フロント3チャンネル(レフト、センタ、ライト)のスピーカ装置14、16、18と、リア2チャンネル(リアレフト、リアライト)のスピーカ装置20、22と、ウーハのスピーカ装置24とから構成されている。
【0032】
上記5つのスピーカ装置14、16、18、20、22の5チャンネルと、ウーハのスピーカ装置24の0.1チャンネルとにより、5.1チャンネルのサラウンドスピーカシステムが構成されている。尚、ウーハは、重低域の狭い帯域のみを受け持つため、0.1チャンネルと表記される。
【0033】
また、上記デジタルレコーダ10、映像表示装置12、及びスピーカ装置14、16、18、20、22、24は、視聴空間である部屋26の適所にそれぞれ配置される。
【0034】
デジタルレコーダ10は、例えば、HD(高品位)DVD内蔵デジタルレコーダである。このデジタルレコーダ10と、各AV機器(映像表示装置12、スピーカ装置14、16、18、20、22、24)とは、ミリ波帯を使用して無線通信し、デジタルレコーダ10はミリ波帯のAV(Audio Video)信号を送信する。更に、デジタルレコーダ10、映像表示装置12、及びスピーカ装置14、16、18、20、22、24は、上記ミリ波帯を使用する通信のアクセスポイント兼リピータとして機能する。
【0035】
また、デジタルレコーダ10は、後述するように視聴空間の空間情報を取得するためのミリ波レーダ装置を有するミリ波伝送装置を備えている。
[デジタルレコーダ]
図2は上記デジタルレコーダ10の実施の形態を示すブロック図である。
【0036】
このデジタルレコーダ10は、HD DVDの記録再生部28、リモコン受光部29、及び本発明に係るミリ波伝送装置30から構成されている。
【0037】
記録再生部28は、HD DVDドライブ、ハードディスク装置等を有し、HDメディア又はハードディスク装置からのAV信号の再生や、HDメディア又はハードディスク装置へのAV信号の記録を行う。
【0038】
リモコン受光部29は、図示しない赤外線リモコン装置からデジタルレコーダ10をリモコン操作するための赤外線リモコン信号を受光し、デジタルレコーダ10の記録再生部28、及びミリ波伝送装置30の各部に操作信号を出力する。
【0039】
ミリ波伝送装置30は、前記記録再生部28から再生される送信データをミリ波帯のAV信号として送信し、又はミリ波帯のAV信号を受信し記録再生部28に出力するミリ波通信手段と、ミリ波レーダ装置40と、表示制御部52、サラウンド制御部54を含み、ミリ波通信手段及びミリ波レーダ装置40を統括制御する制御部50とから構成されており、ミリ波通信手段は、AV信号送信部32と、アンテナ部34と、AV信号受信部36と、周波数シンセサイザ部38とから構成されている。
【0040】
AV信号送信部32は、D−A変換器32A、ミキサ及びアップコンバータ回路32B、及び送信用アンプ32Cから構成されている。
【0041】
D−A変換器32Aには、送信データとして、5.1チャンネルのデジタルの音声信号、及び映像信号が加えられており、D−A変換器32Aは、入力するデジタル信号をそれぞれアナログ信号に変換し、ミキサ及びアップコンバータ回路32Bに出力する。
【0042】
ミキサ及びアップコンバータ回路32Bの他の入力には、周波数シンセサイザ部38からミリ波帯の複数のミリ波搬送波が加えられるようになっている。
【0043】
周波数シンセサイザ部38は、電圧制御発振器(VCO)38A、分周器38B、及びタイミング調整回路38Cを有し、5.1チャンネルのデジタルの音声信号及び映像信号のチャンネル数分の帯域の異なる複数チャンネル分のミリ波搬送波を生成し、これをAV信号送信部32、及びAV信号受信部36に加える。ここで、ミリ波とは、周波数が30〜300GHz(波長10〜1mm)の電波である。
【0044】
前記ミキサ及びアップコンバータ回路32Bは、5.1チャンネルのデジタルの音声信号及び映像信号を、周波数シンセサイザ部38から加えられる各AV信号に対応した複数チャンネル分のミリ波搬送波によってミリ波変調信号に周波数変換する。このようにして周波数変換されたミリ波帯のAV信号は、送信用アンプ32Cによって増幅されてアンテナ部34に出力され、このアンテナ部34からミリ波帯のAV信号として送信される。
【0045】
また、AV信号受信部36は、受信用アンプ36A、ミキサ及びダウンコンバータ回路36B、及びA−D変換器36Cから構成されている。
【0046】
アンテナ部34によって受信されたミリ波帯のAV信号は、受信用アンプ36Aによって増幅された後、ミキサ及びダウンコンバータ回路36Bに加えられる。ミキサ及びダウンコンバータ回路36Bの他の入力には、周波数シンセサイザ部38から複数チャンネル分のミリ波搬送波が加えられており、ミキサ及びダウンコンバータ回路36Bは、入力するミリ波帯のAV信号をミリ波搬送波によって復調する。この復調されたAV信号は、A−D変換器36Cによってデジタル信号に変換され、記録再生部28に出力される。
【0047】
次に、ミリ波レーダ装置40について説明する。
【0048】
ミリ波レーダ装置40は、例えば、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のミリ波レーダ装置であり、主として信号処理部41、送受信部42、指向特性制御部43、アンテナ駆動部44、空間情報処理部45、及びアンテナ部34から構成されている。
【0049】
このミリ波レーダ装置40は、上述したミリ波帯のAV信号を送受信するミリ波通信手段とアンテナ部34を共用している。また、送受信部42もミリ波通信手段のAV信号送信部32、AV信号受信部36、及び周波数シンセサイザ部38の一部と共用可能である。
【0050】
信号処理部41は、ミリ波を使用して視聴空間を走査し、視聴空間の空間情報を取得するモード(空間情報取得モード)時に、送受信部42から三角波で周波数変調したミリ波信号をアンテナ部34に出力させる。このミリ波信号を入力したアンテナ部34は、ミリ波を視聴空間に放射する。この放射されたミリ波は視聴空間に存在する物体で反射し、その一部がアンテナ部34で受信され、送受信部42に出力される。
【0051】
送受信部42は、アンテナ部34で受信されたミリ波(反射波)を周波数変調し、放射波とミキシングし、放射波と反射波との時間差(反射物体までの往復距離分の時間遅れ)に対応するビート波(放射波と反射波の周波数差)として信号処理部41に出力する。
【0052】
信号処理部41は、送受信部42から入力するビート波の周波数に基づいて反射物体までの距離を算出する。尚、ビート波の周波数は、周波数変調した三角波の遅延時間(反射物体までの往復距離)に比例するため、ビート波の周波数から反射物体までの距離を求めることができる。
【0053】
また、信号処理部41は、空間情報取得モード時に指向特性制御部43にアンテナ部34から送信されるミリ波の指向性を高くするための指令を出力するとともに、指向性の高いミリ波によって視聴空間を走査(スキャン)させるためのスキャン指令を出力する。
【0054】
指向特性制御部43は、上記信号処理部41からの指令に基づいてアンテナ駆動部44を介してアンテナ部34を駆動制御し、空間情報取得モード時に指向性の高いミリ波によって視聴空間を少なくとも1回スキャンさせる。尚、アンテナ部34は、アンテナを機械的に回転させる機械スキャン方式、又は複数のアンテナ素子の切り替えによる電子スキャン方式のいずれでもよい。
【0055】
信号処理部41は、前述したように送受信部42から入力するビート波の周波数に基づいて反射物体までの距離を算出するとともに、方位(スキャン方向)を取得し、これを空間情報処理部45に出力する。
【0056】
空間情報処理部45は、空間情報記憶部45Aを有し、反射物体までの距離及び方位に基づいて視聴空間の空間情報(ミリ波レーダ装置40を基準にした視聴空間における反射物体の位置情報)を作成し、この作成した空間情報を空間情報記憶部45Aに記憶させる。
【0057】
また、空間情報処理部45は、空間情報記憶部45Aに記憶させた空間情報をモニタできるように制御部50の表示制御部52に出力する機能と、空間情報記憶部45Aに記憶された初期状態における空間情報(又は前回の空間情報取得モード時に記憶された空間情報)と、その後、取得した空間情報との差分情報に基づいて視聴空間に入った視聴者の位置、移動した視聴者の位置、又は増加減少した視聴者の位置を検出する視聴者検出機能と、手動操作によって指示されたAV機器の位置と種類(この実施の形態では、各スピーカ装置の位置との種類)、及び視聴者の位置を制御部50のサラウンド制御部54に出力し、又は自動でAV機器の位置と種類、及び視聴者の位置を検出し、これらの情報をサラウンド制御部54に出力する機能とを有している。尚、空間情報処理部45の上記各機能の詳細については後述する。
【0058】
表示制御部52は、空間情報処理部45から入力した空間情報に基づいて、例えば、映像表示装置12に空間情報に対応する映像信号を出力する。尚、この映像信号は、ミリ波のAV信号を送信するAV信号送信部32、及びアンテナ部34を介して送信することができる。
【0059】
図3は空間情報取得モード時に映像表示装置12に表示される空間情報の一例を示す図である。
【0060】
図3は、壁等によって区画された空間が部屋26の視聴空間と、この視聴空間内に4つのスピーカ装置に対応する反射物体A1〜A4と、視聴者に対応する反射物体A5とが存在していることを示されている。また、Oは、デジタルレコーダ10(ミリ波レーダ装置40)の位置を示しているが、この位置は空間情報として表示しなくてもよい。
【0061】
ミリ波レーダ装置40は、空間情報を取得することができるが、その空間情報から反射物体の種類まで特定することができない。
【0062】
そこで、視聴者は、映像表示装置12に表示されている空間情報を見ながら、図示しない赤外線リモコン装置を操作し、視聴者の位置にポインタを合わせるとともに、そのポインタで示された位置の反射物体A5が視聴者であることを指示する。これにより、空間情報処理部45は、視聴空間(空間情報)内における視聴者の位置を認識することができる。
【0063】
同様に、反射物体A1の位置にポインタを合わせるとともに、そのポインタで示された位置の反射物体A1がフロントレフトのスピーカ装置であること(AV機器の種類)を指示する。また、他の反射物体A2〜A4も同様にそれぞれフロントライト、リアレフト、及びリアライトのスピーカ装置であることを指示する。尚、この実施の形態では、リモコン操作と映像表示装置12のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)によって反射物体の位置、種類を指示するようにしたが、これに限らず、GUIがタッチパネルや他のポインティングデバイスを備えている場合には、これらによって位置指定等を行うようにしてもよい。
【0064】
サラウンド制御部54は、空間情報処理部45から視聴空間における各スピーカ装置の位置、種類、及び視聴者の位置の情報を取得すると、その視聴者の位置において、最適なサラウンド効果等が得られるように音声信号の再生の最適化を行う。
【0065】
即ち、サラウンド制御部54は、5.1チャンネルの各スピーカ装置に対応する多チャンネルの音声信号のAV信号送信部32からの出力タイミングを調整し、また、各スピーカ装置の音量(音量比)を調整する音量調整信号をAV信号送信部32及びアンテナ部34を介して送信させる。
【0066】
また、各スピーカ装置が音声信号の受信後、再生までの時間を調整する再生タイミング調整手段(例えば、遅延回路等)を有している場合には、各スピーカ装置の再生タイミングを調整するタイミング調整信号をAV信号送信部32(又は送受信部42)及びアンテナ部34を介して送信させ、再生タイミングを調整するようにしてもよい。
[スピーカ装置]
図4は本発明に係るAVシステムに適用されるスピーカ装置の実施の形態を示すブロック図である。
【0067】
図4に示すスピーカ装置(フロントレフト)14は、ミリ波通信装置60とデジタルスピーカ62とから構成されており、ミリ波通信装置60は、アンテナ部60A、受信用アンプ60B、帯域フィルタ60C、ダウンコンバータ回路60D、A−D変換器60E、制御部60F、D−A変換器60G、アップコンバータ回路60H、及び送信用アンプ60Iから構成されている。
【0068】
アンテナ部60Aは、ミリ波帯のAV信号、制御信号等を送受信するもので、ここで受信された多チャンネルのAV信号等は、受信用アンプ60Bによって増幅された後、帯域フィルタ60Cに加えられえる。
【0069】
帯域フィルタ60Cは、所望の信号成分(多チャンネルのAV信号のうちの自身に割り当れられた帯域の信号)のみを通過させ、ダウンコンバータ回路60Dに出力する。ダウンコンバータ回路60Dは、入力するミリ波帯のAV信号等を復調し、A−D変換器60Eに出力する。
【0070】
デジタルスピーカ62は、A−D変換器60Eから入力するAV信号に基づいて音声を発生する。
【0071】
制御部60Fは、デジタルレコーダ10から音量を制御する制御信号が送信されている場合には、その制御信号をA−D変換器60Eを介して取り込み、デジタルスピーカ62の音量を制御するための音量制御信号をデジタルスピーカ62に出力する。また、制御部60Fは、スピーカ装置14がAV信号の入力後、発音までの時間を調整する再生タイミング調整手段を有し、デジタルレコーダ10からスピーカ装置14の再生タイミングを調整するタイミング制御信号が送信されている場合には、そのタイミング制御信号をA−D変換器60を介して取り込み、デジタルスピーカ62の再生タイミング(遅延時間)を制御するための制御信号をデジタルスピーカ62に出力する。
【0072】
更に、制御部60Fは、デジタルレコーダ10等に必要な送信情報を送信する場合には、その情報をD−A変換器60Gに出力する。
【0073】
D−A変換器60Gは、入力する送信情報をアナログ信号に変換し、これをアップコンバータ回路60Hに出力する。アップコンバータ回路60Hは、D−A変換器60Gから入力する送信情報を、所定のミリ波搬送波(例えば、スピーカ装置14に割り当てられた帯域のミリ波搬送波)によってミリ波変調信号に周波数変換する。このようにして周波数変換されたミリ波帯の送信情報は、送信用アンプ60Iによって増幅されてアンテナ部60Aに出力され、このアンテナ部60Aからミリ波帯の送信情報として送信される。
【0074】
尚、図1に示した5.1チャンネル・ホームシアターシステム1の他のスピーカ装置16、18、20、22も上記スピーカ装置14と同様に構成されている。また、映像表示装置12も、スピーカ装置14に内蔵されているミリ波通信装置60と同様なミリ波通信装置を備えている。
【0075】
[サラウンド設定]
<初期設定動作>
図5は本発明に係るAVシステムにおけるサラウンド設定の初期設定動作を示すフローチャートである。
【0076】
デジタルレコーダ10は、電源投入時又は初期設定動作の操作指令を受入すると、空間情報取得モードとなり、ミリ波レーダ装置40から信号用ミリ波を、視聴空間(部屋)をスキャンするように放射し、反射物体からの反射波を受信する(ステップS10、S12)。
【0077】
この放射波と反射波との時間差に対応するビート波の周波数に基づいて反射物体までの距離を算出するとともに、信号用ミリ波の放射方位から部屋の中の空間情報を形成する(ステップS14)。
【0078】
続いて、図3に示したように前記形成した空間情報に基づいて部屋の中の反射物体(対象物)を映像表示装置12に表示させる(ステップS16)。
【0079】
視聴者は、映像表示装置12の画面を見ながら、リモコン操作によって画面内の対象物のうちの視聴者に対応する対象物にポインタを合わせ、そのポインタで示された位置の対象物が視聴者であることを指示する(ステップS18)。
【0080】
デジタルレコーダ10側では、上記リモコン操作からの指示入力により、視聴空間(空間情報)内における視聴者の位置を認識することができ、これを視聴空間の空間初期値として設定する(ステップS20)。
【0081】
尚、5.1チャンネルの各スピーカ装置、デジタルレコーダ等を視聴空間に最初に配置した時、又は各スピーカ装置等のレイアウトを変更した時には、各スピーカ装置等の位置や種類を上記と同様にしてリモコン操作等に基づいて指示し、視聴空間(空間情報)内における各スピーカ装置の位置及び種類をデジタルレコーダ側に認識させる必要がある。
【0082】
上記のようにして設定された視聴者、各スピーカ装置の位置に基づいて、その視聴者の位置において、最適なサラウンド効果が得られるように5.1チャンネルの各スピーカ装置に対応する多チャンネルの音声信号の出力タイミング、及び各スピーカ装置の音量(音量比)の設定の最適化を行う(ステップS22)。
<通常動作(マニュアル)>
図6は本発明に係るAVシステムにおけるサラウンド設定の通常動作(マニュアル)を示すフローチャートである。尚、図5に示した初期設定動作と共通する部分には、同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0083】
このサラウンド設定の通常動作(マニュアル)は、図5に示した初期設定動作後、定期的又は視聴者からの指示に基づいて実行される。
【0084】
ステップ14において、ミリ波レーダ装置により新たに部屋の中の空間情報が形成されると、ステップS30では、初期設定動作時に形成された空間情報(初期値)との差を求め、差の有無を判別する。差がない場合には、サラウンド設定の最適化は行わずに、初期設定動作時に設定したままにする。
【0085】
一方、差がある場合には、初期設定動作時に形成された空間情報と、ステップS14で形成した空間情報との差分情報(対象物)を映像表示装置12に表示させる(ステップS32)。
【0086】
尚、初期設定動作時に形成された空間情報には存在するが、ステップS14で形成した空間情報には存在しない対象物と、初期設定動作時に形成された空間情報には存在しないが、ステップS14で形成した空間情報には存在する対象物とを、例えば、色分け等によって識別可能に表示することが好ましい。
【0087】
視聴者は、映像表示装置12に表示された差分情報を見ながら、リモコン操作等による選択が促され(ステップS34)、差分情報が視聴者であると判断すると(ステップS36)、リモコン操作等によってその旨を指示する。
【0088】
これにより、デジタルレコーダ10側では、視聴空間内における視聴者の移動位置等を認識することができ、新たに認識した視聴者の位置に基づいてサラウンド設定の最適化を行う(ステップS38)。
【0089】
尚、ステップS14にて形成した空間情報は、次回のスキャン時に形成される空間情報に対する初期値となる。また、スピーカ装置を移動させた場合にも差分情報が形成されるため、視聴者は、映像表示装置12に表示された差分情報を見ながら差分情報がスピーカ装置であると判断すると、リモコン操作等によってその旨を指示する。
<通常動作(オート)>
図7は本発明に係るAVシステムにおけるサラウンド設定の通常動作(オート)を示すフローチャートである。尚、図6に示したサラウンド設定の通常動作(マニュアル)と共通する部分には、同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0090】
このサラウンド設定の通常動作(オート)は、図5に示した初期設定動作後、定期的又は視聴者からの指示に基づいて実行される。
【0091】
ステップ30において、ミリ波レーダ装置により新たに形成された空間情報と初期設定動作時に形成された空間情報(初期値)とに差があると判別されると、その差を示す差分情報に基づいて視聴者が増減したか否か(ステップS40)、又は視聴者が移動したが否かを判別する(ステップS42、図1参照)。尚、ミリ波レーダ装置は、差分情報が示す反射物体が、その反射物体の形状、大きさ等に基づいて視聴者(人間)か否かを判別できるものとする。
【0092】
ステップS40において、視聴者が増減したと判別されると、ステップS44に遷移し、ここで、増減した視聴者の中心位置を算出する。尚、視聴者が減少して一人になった場合には、その一人の視聴者の位置を算出する。
【0093】
一方、ステップS40において、視聴者が増減したと判別されずにステップS42に遷移し、ここで視聴者が移動したと判別されると、ステップS46に遷移する。ステップS46では、移動した視聴者の位置を再設定する。
【0094】
ステップS48では、ステップS44で算出された複数視聴者の中心位置、又はステップS46で再設定された視聴者の位置に基づいてサラウンド設定の最適化を行う。
[ミリ波の指向特性の制御]
図8は本発明に係るAVシステムにおけるミリ波の指向特性を制御する手順を示すフローチャートであり、図9は対象物の方向に応じて指向特性が制御されている様子を示す概念図である。
【0095】
図8において、デジタルレコーダ10は、ミリ波の指向特性を制御するモード時(空間情報取得モード時と同時でもよい)、ミリ波レーダ装置40から信号用ミリ波を、視聴空間(部屋)をスキャンするように放射し、反射物体からの反射波を受信する(ステップS10、S12)。この放射波と反射波との時間差に対応するビート波の周波数に基づいて反射物体までの距離を算出するとともに、信号用ミリ波の放射方位から部屋の中の空間情報を形成する(ステップS14)。
【0096】
デジタルレコーダ10は、5.1チャンネルの各スピーカ装置(ワイヤレスHD機器)をそれぞれ抽出できたか否かを判別する(ステップS50)。ここで、無指向性をもって伝送されるミリ波は、到達距離が短いが、指向性をもって伝送されるミリ波は、到達距離が長くなる。ミリ波レーダ装置40から放射される信号用ミリ波は、指向性が高いため、少なくとも各スピーカ装置には到達する。
【0097】
各スピーカ装置は、例えば、ミリ波レーダ装置40から放射される信号用ミリ波を受信した時に、スピーカ装置自身の種類を示す情報をミリ波信号として送信する。
【0098】
デジタルレコーダ10は、各スピーカ装置からスピーカ装置自身の種類を示すミリ波信号を受信できた場合には、ワイヤレスHD機器を検出できたと判別する。尚、デジタルレコーダ10は、ミリ波レーダ装置40のスキャン方向と、スピーカ装置自身の種類を示すミリ波信号の受信タイミングとに基づいて、どの方位にどの種類のスピーカ装置が配置されているかを認識することができる。
【0099】
ステップS50において、所望のワイヤレスHD機器を抽出できない場合には、デジタルレコーダ10は、映像表示装置12等に警告表示を行い、対象機器をデジタルレコーダ10の近くに配置するように促す(ステップS52)。
【0100】
一方、所望のワイヤレスHD機器が抽出できた場合には、ワイヤレスHD機器の位置を確定し(ステップS54)、デジタルレコーダ10と位置確定したワイヤレスHD機器(対象物)との距離が、例えばデジタルレコーダ10からAV信号を無指向性のミリ波信号で送信した場合に、そのミリ波信号が到達できる限界値以下か否かを判別する(ステップS56)。
【0101】
ワイヤレスHD機器(対象物)の距離が前記限界値を越えている場合には、ステップS52に遷移し、警告表示を行わせる。
【0102】
ワイヤレスHD機器(対象物)の距離が前記限界値以下の場合には、図9に示すように対象物(AV機器群、アクセスポイント兼リピータ)へのAV信号の放射角を絞る(指向性を高くする)とともに、その絞ったAV信号の放射方向を最適化する(ステップS58、S60)。これにより、ミリ波信号の対象物方向への伝送距離を伸ばすとともに、ミリ波信号が各対象物に確実に到達できるようにすることができる。
[変形例]
視聴者が部屋に居ない状態で視聴空間の空間情報を取得し、この空間情報を記憶しておき、この空間情報と、視聴者が部屋に入った後に取得した空間情報との差分情報を算出することにより、部屋(視聴空間)に入った視聴者の位置、移動した視聴者の位置、又は増加減少した視聴者の位置を自動的に検出することができる。
【0103】
この実施の形態では、デジタルレコーダ10と、各AV機器(映像表示装置12、スピーカ装置14、16、18、20、22、24)とが、ミリ波帯を使用して無線通信するようにしたが、デジタルレコーダ10から近い位置に配置されているAV機器(例えば、図1に示す例では、映像表示装置12、スピーカ装置(センタ)16、スピーカ装置(ウーハ)24)とは有線で接続するようにしてもよい。
【0104】
また、この実施の形態では、デジタルレコーダ10内に、本発明に係るミリ波伝送装置30が組み込まれているが、このミリ波伝送装置30と、AV信号のソースとは別体でもよい。
【0105】
更に、この実施の形態のミリ波レーダ装置は、電源投入時や初期設定動作の操作指令の受入時等に視聴空間の空間情報を取得するようにしているが、これに限らず、ミリ波通信手段からのAV信号の送信中に割り込んで視聴空間の空間情報を取得するようにしてもよく、この場合、一定の時間間隔で定期的に又は連続的に行うようにしてもよい。更にまた、AV信号の送信中に割り込んで視聴空間の空間情報を取得する場合には、ミリ波レーダ装置は、視聴空間の走査範囲を複数に分割し、各走査範囲ごとに時間をずらして走査するようにし、これにより、視聴空間の空間情報を常時取得可能にするとともに、AV信号のミリ波送信に支障がないようする。
【0106】
また、[ミリ波の指向特性の制御]で説明したように、AV機器から該AV機器の種類を示す情報をミリ波送信することにより、ミリ波レーダ装置は、視聴空間の走査時にAV機器の位置及び種類を示す情報を取得することができる。即ち、視聴空間内のAV機器の位置及び種類を自動的に取得することができる。従って、自動的に取得したAV機器の位置及び種類に基づいてAV信号の再生の最適化を図ることができる。
【0107】
更に、この実施の形態では、5.1チャンネル・ホームシアターシステム1に本発明に係るAVシステムを適用した場合について説明したが、本発明は他のサラウンドシステムにも適用できる。
【0108】
また、本発明に係るAV信号は、多チャンネルの音声信号と映像信号、多チャンネルの音声信号のみ、及び多チャンネルの映像信号のみの場合を含むものとする。
【0109】
多チャンネルの映像信号としては、被写体を複数の視点位置(2視点以上)から撮影された立体映像表示装置用の多視点の映像信号が考えられる。
【0110】
即ち、視聴者の位置(距離、方向)を考慮して立体映像の立体感を最適化する技術が知られているが(例えば、特開2005−142819号公報)、この視聴者の位置を検出する手段として、本発明に係るミリ波レーダ装置を適用し、立体映像用の多チャンネルの映像信号の最適化を図ることができる。また、視聴者の移動を追尾して立体映像用の多チャンネルの映像信号の最適化を図ることで、本物の臨場感とリアリティを得ることができる。
【0111】
尚、本発明は上述した実施の形態に限定されず、各実施の形態を適宜組み合わせてもよく、また、当業者には本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は本発明に係るAVシステムのシステム構成図である。
【図2】図2はデジタルレコーダの実施の形態を示すブロック図である。
【図3】図3は空間情報取得モード時に映像表示装置に表示される空間情報の一例を示す図である。
【図4】図4は本発明に係るAVシステムに適用されるスピーカ装置の実施の形態を示すブロック図である。
【図5】図5は本発明に係るAVシステムにおけるサラウンド設定の初期設定動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は本発明に係るAVシステムにおけるサラウンド設定の通常動作(マニュアル)を示すフローチャートである。
【図7】図7は本発明に係るAVシステムにおけるサラウンド設定の通常動作(オート)を示すフローチャートである。
【図8】図8は本発明に係るAVシステムにおけるミリ波の指向特性を制御する手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は対象物の方向に応じて指向特性が制御されている様子を示す概念図である。
【符号の説明】
【0113】
1…AVシステム、10…デジタルレコーダ、12…映像表示装置、14、16、18、20、22、24…スピーカ装置、26…部屋、28…記録再生部、29…リモコン受光部、30…ミリ波伝送装置、32…AV信号送信部、34…アンテナ部、36…AV信号受信部、40…ミリ波レーダ装置、41…信号処理部、42…送受信部、43…指向特性制御部、44…アンテナ駆動部、45…空間情報処理部、45A…空間情報記憶部、50…制御部、52…表示制御部、54…サラウンド制御部、60…ミリ波通信装置、62…デジタルスピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の視聴空間に配置されたミリ波伝送装置と、前記ミリ波伝送伝装置とミリ波帯を使用してミリ波通信を行う前記視聴空間に配置されたAV機器とからなるAVシステムにおいて、
前記ミリ波伝送装置は、
前記所定の視聴空間を走査し、該視聴空間の空間情報を取得するミリ波レーダ装置と、
前記AV機器とミリ波通信を行うミリ波通信手段と、
前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報に基づいて前記ミリ波通信手段から前記AV機器にミリ波送信されるAV信号の再生の最適化を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とするAVシステム。
【請求項2】
前記ミリ波レーダ装置は、前記ミリ波通信手段とアンテナ部を共用し、前記所定の視聴空間の空間情報の取得時に前記アンテナ部を制御して前記所定の視聴空間を走査することを特徴とする請求項1に記載のAVシステム。
【請求項3】
前記所定の視聴空間の空間情報を取得するための空間情報取得モードを有し、前記ミリ波レーダ装置は、前記空間情報取得モード時に前記所定の視聴空間を走査することを特徴とする請求項2に記載のAVシステム。
【請求項4】
前記ミリ波レーダ装置は、前記ミリ波通信手段からの前記AV信号の送信中に割り込んで前記所定の視聴空間を走査することを特徴とする請求項2に記載のAVシステム。
【請求項5】
前記ミリ波レーダ装置は、前記所定の視聴空間の走査範囲を複数に分割し、各走査範囲ごとに時間をずらして走査することを特徴とする請求項4に記載のAVシステム。
【請求項6】
前記AV機器は、複数のスピーカ装置、又は複数のスピーカ装置と映像表示装置であり、前記ミリ波通信手段は、多チャンネルの音声信号、又は多チャンネルの音声信号と映像信号を送信することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のAVシステム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記多チャンネルの音声信号の出力タイミング又は前記スピーカ装置での再生タイミング、及び音量を調整することにより前記ミリ波送信されるAV信号の再生の最適化を行うことを特徴とする請求項6に記載のAVシステム。
【請求項8】
前記AV機器は、立体映像表示装置であり、前記ミリ波通信手段は、立体映像信号を送信することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のAVシステム。
【請求項9】
前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された空間情報を利用して視聴者の位置を指示する視聴者指示手段と、を更に備え、
前記制御手段は、前記視聴者指示手段によって指示された視聴者の位置に基づいて前記AV信号の再生の最適化を行うことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のAVシステム。
【請求項10】
前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された空間情報と前記記憶手段に空間情報が記憶された後に前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報との差分情報を取得し、この差分情報に基づいて所定の視聴空間に入った視聴者の位置、移動した視聴者の位置、又は増加減少した視聴者の位置を検出する視聴者検出手段と、を更に備え、
前記制御手段は、前記視聴者検出手段によって検出された視聴者の位置に基づいて前記AV信号の再生の最適化を行うことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のAVシステム。
【請求項11】
前記ミリ波レーダ装置が取得した空間情報を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された空間情報を利用して前記AV機器の位置及び種類を指示する機器指示手段と、を更に備え、
前記制御手段は、前記機器指定手段によって指定されたAV機器の位置及び種類に基づいて前記AV信号の再生の最適化を行うことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のAVシステム。
【請求項12】
前記AV機器は、該AV機器の種類を示す情報を送信するミリ波通信手段を有し、
前記ミリ波レーダ装置は、前記所定の視聴空間の走査時に前記AV機器の位置及び種類を示す情報を取得し、
前記制御手段は、前記取得したAV機器の位置及び種類に基づいて前記AV信号の再生の最適化を行うことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のAVシステム。
【請求項13】
前記ミリ波通信手段から前記AV機器の方向に送信されるミリ波の指向性が高くなるように、前記ミリ波通信手段のアンテナ部の指向特性を制御する指向特性制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のAVシステム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のAVシステムに適用されたミリ波伝送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−89076(P2009−89076A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256708(P2007−256708)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】