説明

BCMAポリペプチド及びその使用

本発明はタンパク質の産生のための新規リーダー配列を包含する。更に具体的には、本発明は、組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るリーダー配列をコードするDNAコンストラクト、及び短縮ヒト組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るリーダー配列をコードするDNAコンストラクト、に関する。本発明は更に、哺乳類細胞におけるタンパク質の産生のためのこれらのDNAコンストラクトの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B細胞成熟抗原及びそれらの使用、特にヒトの対象者における治療的又は予防的処置のための使用、に関する。本発明はまた、前記ポリペプチドをコードする核酸、かかる核酸を含んで成るベクター及び当該ベクターを含む組換え細胞、並びに相当の医薬組成物、に関する。本発明は更に、前記ポリペプチドを産生する方法、並びに、任意の試料中にあるこれらのポリペプチドを検出し、又は試料に薬注する方法、を開示する。
【0002】
B細胞成熟抗原は、BCMA;TR17_HUMAN,TNFRSF17(Swissprot Acc.Q02223)としても知られている、腫瘍壊死受容体スーパーファミリーのメンバーであり、これは成熟B細胞で優先的に発現している[Laabi et al. 1992 ; Madry et al. 1998]。BCMAは非グリコシル化III型膜貫通タンパク質であり、これはB細胞の成熟、成長及び生存に関与している。
【0003】
ヒトBCMAタンパク質は184アミノ酸のポリペプチドであり、これは、当該タンパク質のN末端領域内に位置している細胞外ドメイン(アミノ酸残基1−50)、細胞内ドメイン(アミノ酸残基94−184)及び膜貫通領域(アミノ酸残基51−93)を含んで成る。BCMAの細胞外ドメインは、(TNF−R分子に特有の)6個のシステインリッチなモチーフを含んで成る。このドメインは、成長因子の受容体上で多く見られるシステインリッチドメイン(CRD)の共通母体と若干類似しているが、TNF様タンパク質と尚も結合する。しかしながら、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの一部のメンバーと異なり、BCMA細胞内領域は、TNF媒介型の細胞死シグナル伝達に関与する「デスドメイン」を欠いている。しかしながら、この細胞内領域は、TRAFとの会合及びNF−κBの活性化に必須の25アミノ酸のフラグメント(残基119−143)を含む。BCMAは、III多膜貫通タンパク質(すなわち、同一の配列が膜貫通配列及びシグナル配列の両方として働く)であるので、BCMA遺伝子は特定のシグナルペプチドを含んでいないため、生理学的条件下で、そのタンパク質はゴルジ膜内でほとんど発現し、そして細胞表面では発現しない。
【0004】
BCMAはTNFスーパーファミリーの2つのリガンド:Bリンパ球刺激因子(主にBlySとして知られているが、文献では種々の異なる名前、例えばTHANK、BAFF、B細胞活性化因子、TALL−1及びzTNF4と記載されている);及びAPRIL(増殖誘導リガンド)[Hatzoglou et al. 2000 (PDF); Shu et al. 2000 (PDF); Gross et al. 2000 (PDF); Yu et al. 2000 (PDF); Marsters et al. 2000 (PAP)]の受容体である。BLySがBCMA及びTACI(異なる受容体:「膜貫通活性化因子で且つCAML相互作用因子(transmembrane activator and CAML-interacto)」)に対し協調的に結合することで、転写因子NF−κBが活性化され、そしてアポトーシスを阻害するBcl−2の発現が増大する。この総合作用がB細胞の文化、増殖及び生存を促進する。
【0005】
これに関して、BCMAは長命の骨髄血漿細胞の生存に関与しており[O'Connor et al. 2004 (PDF)]、これは自己免疫疾患に対し負の作用を及ぼす。更に、トランスジェニックマウスの実験に基づき、BCMAが自己免疫疾患、例えば紅斑性狼瘡(SLE)に関与しうることが示唆されている[Gross et al. 2000 ; Mackay et al. 1999 ; Khare et al. 2000]。BCMAは更に体液性免疫の進行に関与しており(例えば、抗体の産生)、そして更なる報告として、種々の免疫関連障害(例えば、IBD又は多発性硬化症)並びに癌における役割が開示されている(BCMA/BLyS系の完全な概説については、Mackay et a., 2004を参照のこと)。これに関して、種々のBCMAアンタゴニストが文献において、免疫疾患の処置における使用について報告されている。
【0006】
かかるアンタゴニストには、BCMA細胞外ドメイン(例えばWO02/66516)又はBCMAの可溶性型、すなわちBCMAの細胞外ドメインを本質的に含んで成り、且つ細胞内領域を欠いているポリペプチド、に対する抗体を含む。この点、複数の受容体が、単離されたBCMA細胞外ドメインは治療的に又は融合タンパク質に使用することができることを示唆している(WO00/40716、WO00/68378、WO01/60397、WO01/87977、WO03/35846、WO03/72713)。公開番号WO03/72713は、可溶性BCMAを含んで成るタンパク質を投与することで哺乳類の神経変性免疫障害を処置するための方法及び組成物を提供している。当該タンパク質は、完全な細胞外ドメイン(残基1−50)、CRD領域(8−41)又は他の一般的なより小さい変異体を含むことがある。BCMA−IgG融合タンパク質も、自己免疫疾患又は癌に対する治療特性を有していることが文献で開示されている [Rennert et al. 2000; Yu et al. 2000 ; Pelletier et al. 2003]。また、BCMAのリガンド結合ドメインは、異なる親和性/特異性を有するその変異体を、融合タンパク質を使って生じさせる突然変異によって研究されている[Patel et al. 2004]。BCMA細胞内領域の欠失変異体もHatzoglou et al. 2000で開示されている。
【0007】
従って、BCMAはヒトの対象者の種々の生理学的症状の処置のために認識される標的であり、有効なアンタゴニスト又は別のBCMAポリペプチドの開発は医薬産業にとって非常に有益であろう。
【0008】
本発明の詳細
本発明は、新規なBCMAポリペプチド変異体及びそれらの使用、特にヒトの対象者における治療的又は予防的な処置のための使用を開示する。本発明はまた、前記ポリペプチドをコードする核酸、かかる核酸を含んで成るベクター及び当該ベクターを含む組換え細胞、並びに相当の医薬組成物、に関する。本発明は更に、前記ポリペプチドを産生する方法、並びに、任意の試料中にあるこれらのポリペプチドを検出し、又は試料に薬注する方法、を開示する。更に、本発明の新規なBCMAポリペプチド変異体に特異的な抗体も含む。
【0009】
更に具体的には、本発明は、特定の構造的及び生物学的特性を有するヒトBCMAの天然の新規なスプライシング変異体の同定、単離及びキャラクタリゼーションから生じるものであり、これは有益な医薬産物となる。
【0010】
従って、本発明の目的は、単離されたBCMAポリペプチド変異体、又はその特有フラグメントにある。本発明のポリペプチド変異体は、BCMAポリペプチドのリガンド結合ドメイン及びNF−κB活性化ドメインの配列を含んで成り、そして機能的な膜貫通ドメインを欠いている。本発明のBCMAポリペプチドは、BCMAの可溶性型を意味し、これは、種々の病理学的症状で使用されうる。
【0011】
本発明の別の目的は、上文で定義したようなBCMAポリペプチドを含んで成る融合タンパク質に存する。
【0012】
本発明の別の目的は、上文で定義したようなBCMAポリペプチドを含んで成るコンジュゲートに存する。
【0013】
本発明の別の目的は、上文で定義したようなBCMAポリペプチドを含んで成る受容体複合体に存する。
【0014】
本発明の更なる目的は、上文で定義したようなBCMAポリペプチド変異体又は融合タンパク質をコードする核酸、並びにそのような核酸を含んで成る任意のクローニング又は発現ベクターに存する。
【0015】
本発明はまた、上文で定義したようなベクター又は核酸を含んで成る組換え宿主細胞、並びにかかる組換え細胞を用いて上文で定義したようなBCMAポリペプチド変異体を生成する方法、に関する。
【0016】
本発明の更なる観点は、上文で定義したような生成物(例えば、ポリペプチド、融合タンパク質、コンジュゲート、受容体複合体、核酸、ベクター又は組換え細胞)を含んで成る医薬組成物に存する。
【0017】
本発明の更なる観点は、ヒトの対象者において使用するための医薬組成物の製造のための、上文で定義したような生成物(例えば、ポリペプチド、融合タンパク質、コンジュゲート、受容体複合体、核酸、ベクター又は組換え細胞)の使用に存する。
【0018】
上記生成物及び医薬組成物は、例えば免疫関連障害又は癌の処置に、特に自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、IBD、脳脊髄炎、重症筋無力症、等)、炎症性疾患(例えば、関節痛、敗血症ショック、CNS炎症)、アレルギー、喘息、気管支炎、肺気腫、腎臓病、糖尿病、癌、並びに任意のB細胞媒介障害、を処置するために研究されている。
【0019】
本発明の更なる目的は、上文で定義したようなポリペプチドと選択的に結合する抗体、又はそのような抗体のフラグメント若しくは誘導体、にも関する。
【0020】
本発明の更なる観点は、上文で定義したようなポリペプチドを、上文で定義したような抗体、そのフラグメント又は誘導体を用いて試料中で検出又は試料中に薬注する方法、に存する。
【0021】
本発明の他の観点は、上文で定義したような核酸に特異的なプライマー及びプローブ、並びに試料中のかかる核酸の存在を検出又は診断するためのそれらの使用、を含む。
【0022】
本発明の詳細な説明
本発明は、新規な生物学的に活性なヒトBCAAポリペプチド変異体の同定及びキャラクタリゼーションに起因する。これらのポリペプチドは典型的に、機能的膜貫通ドメインを欠いた成熟ヒトBCMAのポリペプチドを含んで成る。更に、この中には本発明のBCMAポリペプチド変異体の成体活性を保持する特徴的なフラグメントも含まれる。本発明は、天然又は合成のBCMAポリペプチド変異体であってもよく、そして有益な治療分子でありうる。更に、機能的な膜貫通ドメインの不在により、本発明のBCMAポリペプチド変異体は細胞膜内に固着されておらず、そして体液、特に血液、血漿、血清、リンパ液等において循環することがある。かかる可溶性BCMAポリペプチド変異体は、BCMAの天然の内因性リガンド(例えば、BAFF又はAPRIL)に結合しうるデコイの役割を果たし、それによりBCMAが媒介する活性が低下する。本発明の可溶性BCMAポリペプチド変異体は、BCMAの天然のアゴニストの役割を果たし、そして、それ自体で、又は、例えば融合タンパク質、コンジュゲート又は受容体複合体の形態で、B細胞の機能に関連する障害、特に免疫関連障害又は癌を処置するために使用されうる。
【0023】
本発明の詳細な目的は、リガンド結合ドメイン及びNF−κB活性化ドメインの配列を含んで成り、そして機能的な膜貫通ドメインを欠いているものの、尚もBCMAアンタゴニスト活性を保持している、単離されたBCMAポリペプチド変異体、又はその特徴的なフラグメント、に存する。
【0024】
本発明の範囲内で、BCMAは、例えばLaabi et al. 1992又はMadry et al. 1998に開示されている通り、B細胞成熟抗原を意味する。ヒトBCMAタンパク質の配列はアクセッション番号Q02223のもとSwissprotで入手可能である。ヒトBCMAタンパク質の具体例は、配列番号1に示す[ヒトTR17]。BCMAの用語はまた、上記配列の機能的等価物、すなわち天然多型、他の種を起源とする配列、並びに、実質的にBCMA機能に影響しない1又は複数のアミノ酸修飾を含んで成る配列、を含むと理解されるべきである。機能的な等価物は、典型的に、配列番号1と80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を示す。
【0025】
上文で言及したように、本発明のBCMAポリペプチド変異体は、機能的リガンド結合ドメイン及びNF−κB活性化ドメインを含んで成るが、機能的膜貫通ドメインを欠いている。本発明は、かかるタンパク質が天然で産生されること、そして独特な構造的コンフォーメーションを有する予測できないBCMA変異体に相当すること、を示す。事実、ジュヨウタイノ細胞外部分を保持する従来の可溶性型受容体とは対照的に、本発明の分子は機能的細胞内残基、特にNF−κB活性化ドメインを保持する。
【0026】
本発明のBCMAポリペプチド変異体は、BCMAのリガンド結合ドメイン由来のアミノ酸配列、並びにBCMAのNF−κB活性化ドメイン由来の配列、を含んで成る。
【0027】
BCMAのリガンド結合ドメイン由来の配列は、BCMAの細胞外ドメインの全て又はリガンド結合部分、の配列、あるいはその機能的等価部分、に由来するか、又はそれを含んで成ることもある。好ましくは、当該配列は、配列番号1のアミノ酸残基8−41、より更に好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基7−41又は1−43、あるいはその機能的等価物、を含んで成る。上文で言及した通り、機能的等価物は、1又は複数のアミノ酸の欠失、付加及び/又は置換を含んで成る任意の修飾配列であって、BCMAリガンドと結合する能力を保持するもの、を指す。
【0028】
本発明の特定の目的は、上文で言及したような単離したBCMAポリペプチド変異体であって、配列番号1のアミノ酸残基7−41、好ましくは配列番号1のアミノ酸残基1−43を含んで成る変異体、に関する。
【0029】
BCMAのNF−κB由来の配列は、BCMAの細胞内ドメインの全て又はNF−κB活性化部分、の配列、あるいはその機能的等価部分、に由来するか、又はそれを含んで成ることもある。好ましくは、当該配列は、配列番号1のアミノ酸残基119−143、より更に好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基94−184、あるいはその機能的等価物、を含んで成る。上文で言及した通り、機能的等価物は、1又は複数のアミノ酸の欠失、付加及び/又は置換を含んで成る任意の修飾配列であって、NF−κBを活性化する能力を保持するもの、を指す。
【0030】
本発明の特定の目的は、上文で定義したような単離したBCMAポリペプチド変異体であって、前記ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸残基119−143、好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基94−184を含んで成る、変異体に関する。
【0031】
本発明のBCMAポリペプチド変異体は、機能的な膜貫通ドメインを欠いており、すなわち、それらは、前記ポリペプチドを固着させるBCMA由来の機能的ドメインを含まない。機能的膜貫通ドメインの不在は、機能的でない膜貫通ドメインをもたらす、BCMA膜貫通ドメインにおける任意なアミノ酸の変化(例えば、1又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換及び/又は付加)から生じることがある。典型的な態様において、機能的な膜貫通ドメインの欠如は、膜貫通ドメインを形成するアミノ酸残基の全部又は一部の欠失、好ましくは配列番号1のアミノ酸残基55−77の欠失、より好ましくは配列番号1のアミノ酸残基44−93の欠失から生じる。
【0032】
本発明のBCMAポリペプチド変異体は、少なくとも1つの生体活性を有する。特に、そのような生体活性には、
−APRILについてBCMAと競合する能力
−正常マウス内で循環しているB細胞の数を減少する能力
−無胸腺マウスの腫瘍容積を減少させる能力
が含まれうる。
【0033】
かかる生体活性は、当業者に知られている任意の適当なアッセイによって決定することができ、上記活性は以下の実施例Cで更に説明するアッセイによって測定することができる。
【0034】
1つの態様において、本発明のBCMAポリペプチド変異体は、好ましくはBCMA及び/又はAPRIL及び/又はBAFFの少なくとも1つの生体活性をin vitro及び/又はin vivoで拮抗する。
【0035】
BCMA活性を同定することができるアッセイは、WO99/00518(1997年6月26日);WO99/11791(1997年9月5日);WO99/12965(1997年9月12日);EP911633(1997年10月8日);EP919620(1997年11月26日;WO99/28462(1997年12月3日);WO99/33980(1997年12月30日);WO99/35170(1998年1月5日);Hahne et al. (1998), L Exp. Med. 188: 1185-90;WO98/18921(19998年5月7日);WO98/27114( 1998年6月25日);EP869180(1998年10月7日);WO98/55620及びWO98/55621( 1998年12月10日);WO99/11791(1999年3月11日);W099/12964(1999年3月18日);及びGross et al. (2000), Nature 404: 995-9に登場する。上記文献及び本明細書に記載のアッセイのいずれも当業者に知られている方法によって必要に応じて改良することができる。
【0036】
本発明に特有の目的は、上文で定義したような単離したBCMAポリペプチド変異体であって、前記ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸残基55−77、好ましくは配列番号1のアミノ酸残基44−93を含んで成る、変異体に関する。更に、BCMAポリペプチドは、リガンド結合ドメインとNF−κB活性化ドメインとの間に1又は複数の追加のアミノ酸残基を含んで成ることがあり、これはクローニング又は天然のスプライシング過程から生じることがある。一例として、かかるポリペプチドは追加のアルギニン残基を含んで成ることがある。
【0037】
本発明の具体的な態様は、配列番号3[BCMA_ショート]を有する又は含んで成るBCMAポリペプチド変異体、その機能的等価物若しくはその特有フラグメントであって、BCMAアンタゴニスト活性を保持するもの、である。
【0038】
本発明には、上文で開示したようなBCMAポリペプチド変異体の特有フラグメントを含んで成る任意のポリペプチドも含まれる。本発明の範囲内では、特有フラグメントとは、介在しているアミノ酸残基の欠失の結果として形成したジャンクション配列を含んで成る少なくとも5個連続したアミノ酸フラグメントを指す。かかる特有フラグメントは、上文で定義したジャンクション配列を含んでなる限り、前記変異体の最大10、20、30、40、50個又はそれ以上連続したアミノ酸残基を含んで成ることがある。当該ジャンクション配列は、介在しているアミノ酸残基の欠失の結果として形成した5,6,7,8,9,10個又はそれ以上連続したアミノ酸残基を含んで成ることがある。好ましくは、特有フラグメントはまた、リガンド結合ドメインを含んで成る。更に、特有フラグメントはまた、NF−κB活性化ドメインを含んで成ることがある。好ましくは、特有フラグメントは可溶性である。好ましくは、特有フラグメントはBAFF及び/又はAPRILへの結合活性を保持する。
【0039】
従って、本発明の特別な目的は、アミノ酸配列NARSG(配列番号3の残基42−46)又はCNARSGL(配列番号3の残基41−47)を含んで成る単離したポリペプチドに存する。
【0040】
本発明の好ましいBCMAポリペプチド変異体は可溶性であり、すなわち、それらは機能的な膜固着配列を含んでおらず、そしてその結果、体液中を循環しうる。また、本発明の好ましいBCMAポリペプチド変異体は、BCMA天然リガンド、例えばBAFF及び/又はAPRILに結合する能力を保持する。かかるポリペプチドは、その結果、アンタゴニストとして機能し、そして、BCMA媒介型活性を、例えば生理学的条件で阻害するために使用されうる。
【0041】
本発明はまた、上文で開示されているようなBCMAポリペプチドを含んで成る融合タンパク質であって、追加のアミノ酸ドメインに対し作用可能に連結された融合タンパク質に関する。追加のアミノ酸ドメインは、BCMAポリペプチドの配列から上流(N末端)又は下流(C末端)に位置していることがある。この追加のドメインは、例えば、安定性の増大、融合タンパク質のターゲティング又はバイオアベイラビリティーを提供し;生成又は産生を容易にし、あるいは分子に追加の生体活性を付与する、任意な機能的領域を含んで成ることがある。かかる追加のアミノ酸ドメインの典型例には、限定しないが、タグ、ターゲティングペプチド、イムノグロブリンの定常領域、多量体化ドメイン及び/又は生体活性タンパク質若しくはそのフラグメントあるいはヘテロ二量体タンパク質ホルモン、例えばヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)であって、US6,193,972に記載のものが含まれる。用語「作用可能に連結」とは、ポリペプチドと追加のアミノ酸ドメインとがペプチド結合を通じて、直接又はスペーサー残基(例えば、1又は複数のGly−Serモチーフ)を介して会合していることを指す。このように、融合タンパク質は、後述するとおり、当該タンパク質をコードする核酸分子を宿主細胞で直接発現させることにより、組換えで産生することができる。また、必要により、融合タンパク質に含まれる追加のアミノ酸配列は、産生/精製工程の終わりに、又はin vivoで、そのいずれかで、適切なエンドペプチダーゼ/エキソペプチダーゼによって除去してもよい。例えば、融合タンパク質に含まれるスペーサー配列は、エンドペプチダーゼ(例えばカスパーゼ)の認識部位を含んで成ることがあり、これを使用することで、所望のポリペプチド変異体を追加のアミノ酸ドメインからin vivo又はin vitroのいずれかで酵素開裂して分離することができる。
【0042】
追加のアミノ酸残基の具体例には、例えば、GST配列及びHisタグ配列から選択されるタグ配列を含む。タグ配列は、BCMAポリペプチド変異体のC末端又はN末端、好ましくはC末端に連結されうる。
【0043】
特定の態様において、追加のアミノ酸残基は、タンパク質の分泌を指示するペプチドシグナルとして働く。BCMAはIII型膜貫通タンパク質であり、これは特定のシグナルペプチドを含んでいない(同じ配列が膜貫通配列及びシグナル配列の両方として働く)。しかしながら、本発明のBCMAポリペプチド変異体は、分泌を行わせ又は増大させるために、(当該ポリペプチドのN末端で)異種のシグナル配列と融合してもよい。かかるシグナルペプチドは、選択した宿主細胞、例えば真核(例えば哺乳類)細胞又は原核宿主細胞で機能する任意な配列であってよい。かかるペプチドシグナルの例は当業界で周知である。
【0044】
追加の特定の態様において、融合タンパク質における追加のアミノ酸残基は、イムノグロブリンの定常領域、特にヒトイムノグロブリンのFc部分由来のアミノ酸配列を含んで成る。Fc部分の配列は、例えばIgG、好ましくはヒトIgGに由来することがある。前記Ig配列はまた、エフェクター機能を低減するために、又は結果として生じる二量体の安定性を増大させるために、修飾してもよい。イムノグロブリンの定常領域由来のアミノ酸配列は、BCMAポリペプチド変異体のC末端又はN末端、好ましくはC末端と連結してもよい。
【0045】
更に特定の態様において、融合タンパク質内の追加のアミノ酸残基は、2又はそれ以上の本発明の融合タンパク質間、又は1若しくは複数の本発明の融合タンパク質と異なるタンパク質との間で複合体を形成させる多量体化ドメインを含んで成る。かかる多量体ドメインの一例として、ロイシンジッパーがある。多量体化ドメインは、BCMAポリペプチド変異体のC末端又はN末端、好ましくはC末端と連結されうる。
【0046】
本発明の融合タンパク質は、上記追加のアミノ酸残基のうちの1つのみ、又はそれらの組み合わせ、のいずれかを含んで成ることがあると解すべきである。例えば、融合タンパク質は、シグナルペプチド及びタグ配列、又はシグナルペプチド及び多量体化ドメイン又はシグナルペプチド及びイムノグロブリンの定常領域、あるいはタグ及びイムノグロブリンの定常領域、を含んで成ることがある。また、上文で指摘した通り、追加のアミノ酸配列のうちの幾つかは、スペーサー残基を通じて、特に、開裂可能なスペーサー残基であって、必要に応じてこれらの因子をその後分離させるスペーサー残基を通じて、BCMAポリペプチド変異体と連結してもよい。かかる融合タンパク質は、後述するような、当業界で本質的に知られている任意な常用の技術によって産生することができる。
【0047】
本発明のポリペプチド又は融合タンパク質は、単離した形態、あるいはその活性コンジュゲート又は複合体の形態であってもよい。
【0048】
これに関して、本発明の特別な目的は、上文で定義したようなBCMAポリペプチド変異体又は融合タンパク質を含んで成るコンジュゲートに存する。コンジュゲートは、前記ポリペプチドと(共有結合で)カップリングした少なくとも1つの化学基、例えば標識、安定剤、毒素、薬物等を含んで成る。特定の態様において、コンジュゲートは、放射性標識、ビオチン、蛍光標識、細胞毒性物質、薬物又は薬物送達物質を含んで成り、これらは、BCMAポリペプチド変異体の任意なアミノ酸残基と共有結合でカップリングしている。有用なコンジュゲートは、当業界で本質的に知られている分子及び方法、例えば、リガンドとの相互作用の検出を行わせるためのもの(放射性標識又は蛍光標識、ビオチン)、あるいは薬物送達の有効性の点で前記物質を改良するためのもの、例えばポリエチレングリコール及び他の天然若しくは合成ポリマー、を用いて生成することができる(Harris JM and Chess RB, 2003; Greenwald RB et al., 2003; Pillai O and Panchagnula R, 2001)。
【0049】
本発明の他の観点は、上文で定義したようなBCMAポリペプチド変異体又は融合タンパク質又はコンジュゲートを含んで成る受容体複合体である。かかる受容体複合体は、典型的に、本発明の2又はそれ以上の融合タンパク質間、あるいは1又は複数の本発明の融合タンパク質と異なるタンパク質との間で形成した多量体を含んで成る。多量体化は、前記タンパク質に含まれる特定の多量体化ドメインを通じて、上文で言及したように達成されうる。かかる多量体はin vitroで形成することもあれば、あるいは、それらは生物に投与した際にin vivoで形成することもある。
【0050】
本発明のポリペプチド及び融合タンパク質は、当業界で本質的に知られている任意の技術により、例えば組換え技術、化学合成、クローニング、ライゲーション、又はそれらの組み合わせにより生成することができる。
【0051】
特定の態様において、ポリペプチド又は融合タンパク質は組換え技術により、例えば相当の核酸を適当な宿主細胞で発現させることにより産生される。
【0052】
これに関し、用語「核酸分子」は、上文で開示したようなポリペプチド又は融合タンパク質をコードする任意の核酸分子を包含する。核酸は、DNA(例えば、cDNA、gDNA、合成DNA等)、RNA(例えば、mRNA)、PNA(ペプチド核酸)等、更に好ましくはDNA、より更に好ましくはcDNA分子でありうる。本発明の特定の目的は、より具体的には、配列番号2、又はその相補鎖若しくは縮重配列、から選択されるヌクレオチド配列を含んで成る核酸分子に存する。
【0053】
縮重配列とは、引用ヌクレオチド配列と同一のアミノ酸配列をコードするが、遺伝コードの縮重の結果として異なるヌクレオチド配列を含んで成る任意のヌクレオチド配列を指す。
【0054】
本発明の更なる目的は、上文で定義したような核酸分子を含んで成るベクターである。当該ベクターは、組み込みの、又は自律複製する、任意の原核細胞又は真核細胞で機能的な、任意のクローニングベクター又は発現ベクターであってもよい。特に、ベクターはプラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、エピソーム、人工染色体等でありうる。ベクターは、制御因子、例えばプロモーター、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、複製起点等を含んで成ることがある。かかるベクターの具体例には、真核細胞のプラスミド、例えばpBR、pUC又はpcDNAプラスミド;ウイルスベクター、例えばレトロウイルス、アデノウイルス又はAAVベクター;バクテリオファージ;バキュロウイルス;BAC又はYAC等の下文で記載するようなものが含まれる。
【0055】
本発明の更なる観点は、上文で定義したような核酸分子又はベクターを含んで成る組換え宿主細胞である。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞でありうる。原核細胞の例には、細菌、例えばE.コリ(E. coli)が含まれる。真核細胞の例は、酵母細胞、植物細胞、哺乳類細胞、例えば任意の一次細胞培養又は樹立細胞系(例えば、3T3、Vero、HEK293、TN5等)がある。特に好ましい本発明の哺乳類細胞はCHO細胞である。
【0056】
本発明の他の目的には、上文で定義したようなBCMAポリペプチド変異体又は融合タンパク質を産生する方法であって、前記核酸の発現を行わせ、そして産生したポリペプチドを回収する条件下で本発明の組換え宿主細胞を培養することを含んで成る方法、がある。前記ポリペプチドは、ポリペプチドが分泌された場合には細胞培養上清から、あるいは適当である場合には、細胞質又は破片から回収されうる。ポリペプチド産物はグリコシル化されてもされなくてもよく、あるいは使用する宿主細胞に応じて他の転写後修飾を含んでもよい。
【0057】
ベクター及び原核宿主細胞又は原核宿主細胞を用いてどのように組換えタンパク質をクローニングして産生するかについての技術は多数の本及び概説が提供しており、例えばOxford University Press発行の"A Practical Approach"シリーズのうちの幾つかの表題が提供している("DNA Cloning 2: Expression Systems", 1995; "DNA Cloning 4: Mammalian Systems", 1996; "Protein Expression", 1999; "Protein Purification Techniques", 2001)。
【0058】
通常、ベクターは、エピソーム又は非相同組換え/相同組換えベクターであって、任意の適当な手段(形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ダイレクトマイクロインジェクション等)により適切な宿主細胞に導入してそれらを形質転換することができるものであってもよい。特定のプラスミド、ウイルスベクター又はレトロウイルスベクターを選択するのに重要な因子には、ベクターを含むレシピエント細胞が認識し易く、且つ当該ベクターを含まないレシピエント細胞から選択し易いこと;特定の宿主において望まれるベクターのコピー数;及び異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャッフル」することが可能であることが望ましいか否か、が含まれる。ベクターは、原核細胞又は真核細胞における本発明のポリペプチド又は融合タンパク質に、適切な転写開始/終結制御配列であって、前記細胞において構成的に活性であるか誘導可能であるように選択されるものの制御のもと、発現を行わせるべきである。実質的にかかる細胞に富んでいる細胞系が、続いて単離され、その結果安定な細胞系が提供される。
【0059】
本発明の組換えポリペプチドの高収率な産生方法のうち特に好ましいのは、US4,889,803に記載のように、メトトレキサートレベルを徐々に増大させることで、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)増幅をDHFR欠損CHO細胞において用いて行われる。得られたポリペプチドはグリコシル化された形態であり得る。
【0060】
真核宿主細胞(例えば、酵母、昆虫又は哺乳類細胞)の場合、異なる転写制御配列及び翻訳制御配列が、宿主の性質に応じて利用されうる。それらはウイルス起源、例えばアデノウイルス、パピローマウイルス、シミアンウイルス等であって、その制御シグナルが高い発現レベルの特定の遺伝子と会合するものに由来してもよい。例として、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーター等がある。転写開始制御シグナルは、遺伝子の発現が調節できるように、抑制及び活性化を可能にするものが選択されうる。導入されたDNAによって安定して形質転換されている細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1又は複数のマーカーを導入することによっても選択することができる。当該マーカーは更に、栄養要求性の宿主に対しては光合成栄養、殺生物剤耐性、例えば抗生物質、又は重金属、例えば銅等に対する耐性を提供する。選択マーカー遺伝子は、発現するDNA配列に対し、直接連結することができ(例えば同一ベクター上)、あるいは同時トランスフェクションで同一細胞内に導入することもできる。追加の因子が更に本発明のタンパク質の最適な合成に必要とされることもある。
【0061】
特に適当な原核細胞には、組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌(例えばバチルス・サブチリス(Bacilllus subtilis)又はE.コリ(E. coli))が含まれる。かかる細胞は、典型的に、N末端のメチオニン残基を含んで成るタンパク質、例えば本発明の特定の対象を表しているそのようなタンパク質を産生する。本発明で使用する好ましい細胞には真核宿主細胞、例えば哺乳類細胞、例えばヒト、サル、マウス、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞があり、これは、それらがタンパク質分子に翻訳後修飾、例えば正確なフォールディング又は正確な位置でのグリコシル化をもたらすためである。別の真核宿主細胞としては、酵母発現ベクターで形質転換した酵母細胞(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)等)がある。また、酵母細胞はグリコシル化等の翻訳後ペプチド修飾を実施することができる。酵母での所望のタンパク質の産生に利用することができる強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを利用する、多数の組換えDNAストラテジーが存在している。酵母細胞は、クローニングした哺乳類遺伝子産物のリーダー配列を認識してリーダー配列を持つポリペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌することができる。
【0062】
組換えポリペプチドを長期間高収率で産生するためには、安定な発現が好ましい。例えば、注目のポリペプチドを安定して発現する細胞系は、ウイルスの複製起点及び/又は内因性の発現因子及び選択マーカー遺伝子を同一又は異なるベクター上に含みうる発現ベクターを用いて形質転換することができる。ベクターの導入後、細胞は、それらを選択培地に移す前に1〜2日間強化培地中で生育させてもよい。選択マーカーの目的は、選択耐性を付与するためであり、その存在によって導入配列を連続して発現する細胞の生育及び回収が可能となる。安定的に形質転換した細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖することができる。かかる細胞で実質的に強化された細胞系を続いて単離することで安定な細胞系を提供することができる。
【0063】
発現の宿主として利用可能な哺乳類細胞系は当業界で知られており、これらにはAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞系が含まれ、例えば、限定しないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、新生児ハムスター腎臓、サル腎臓(COS)、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowesメラノーマ細胞及びヒト肝細胞癌(例えばHep G2)細胞及び多数の他の細胞系がある。バキュロウイルス系において、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系の材料はキットの形態で市販されており、特にInvitrogenのものがある。
【0064】
組換えDNA技術に加え、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質は、化学合成技術で調製することができる。化学合成技術の例には固相合成及び液相合成がある。固相合成として、例えば、合成されるべきポリペプチドのカルボキシ末端に相当するアミノ酸は、有機溶媒に不溶の支持体と結合し、そして交互に反応を繰り返すことで(例えば、アミノ酸とそれらのアミノ基及び適切な保護基で保護された側鎖の官能基との連続縮合により)、ポリペプチド鎖は伸長する。固相合成法は、使用する保護基の型によってtBoc法とFmoc法とに大きく分類される。総合してBCMAに匹敵するサイズの合成タンパク質は文献で開示されている(Brown A et al., 1996)。
【0065】
本発明のポリペプチドは、産生することができ、調製することができ、投与することができ、あるいは所望とされる使用方法及び/又は産生方法に従い優先されうる。他の代わりの形態で一般的に使用することができる。本発明のタンパク質は、翻訳後修飾することができ、これは例えばグリコシル化による。本発明のポリペプチド又はタンパク質は単離された(又は精製された)活性型で、あるいは前駆体、誘導体及び/又はそれらの塩として提供することができる。
【0066】
上文で示した通り、用語「活性」又は「生物学的に活性」とは、かかるポリペプチドがBCMAリガンドに結合し、そしてBCMAアンタゴニストとして機能する能力を有することを意味する。
【0067】
「前駆体」は、細胞又は生物に投与する前又は後の代謝的及び/又は酵素的なプロセシングにより本発明のポリペプチドに変化可能な化合物である。
【0068】
用語「塩」は、本明細書では、本発明のポリペプチドのカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩を指す。カルボキシル基の塩は、当業界で知られている手段によって形成することができ、これには無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄又は亜鉛の塩等、並びに有機塩基との塩、例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン又はリジン、ピペリジン、プロカイン等で形成されるもの、が含まれる。酸付加塩には、例えば、鉱酸、例えば塩酸又は硫酸との塩、及び有機酸、例えば酢酸又はシュウ酸との塩が含まれる。かかる塩のいずれも実質的に本発明と類似の活性を有するべきである。
【0069】
用語「誘導体」は、本明細書で使用する場合、アミノ酸部分の側鎖上又はアミノ末端基又はカルボキシ末端基上に存在する官能基の官能基から、当業界で本質的に知られている方法に従い調製することができる誘導体を指す。かかる誘導体には、例えばカルボキシル基のエステル又は脂肪族アミド及び遊離アミノ基のN−アシル誘導体又は遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体が含まれ、そしてこれらはアシル基、例えばアルカノイル基又はアロイル基で形成される。
【0070】
本発明のポリペプチド又は融合タンパク質の精製は、当業界で本質的に知られている種々の方法によって実施することができ、これには、限定しないが、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動等を包含する任意の常用の手順による。特定の精製手順は、前記ポリペプチドと選択的に結合し、且つカラム内に含まれているゲルマトリックス上に典型的に固定されている(モノクローナル)抗体又はアフィニティー基を用いたアフィニティークロマトグラフィーである。本発明のタンパク質の精製した調製物は、15%未満の夾雑物を含む、更に好ましくは少なくとも90、95又は97%のポリペプチドを含んで成る調製物を指す。単離したタンパク質、ポリペプチド又は核酸とは、その天然の環境にはないタンパク質、ポリペプチド又は核酸を表す。
【0071】
本発明の更なる目的は、上文で定義した生成物(例えば、ポリペプチド、融合タンパク質、コンジュゲート、受容体複合体、核酸分子、ベクター又は細胞)、及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含んで成る医薬組成物である。より好ましい本発明の医薬組成物は、配列番号3を含んで成るポリペプチド、又はかかるポリペプチドを含んで成る融合タンパク質、を含んで成る。
【0072】
本発明の他の観点は、ヒトの対象者を処置するための医薬組成物の製造のための、上文で開示したような生成物(例えば、ポリペプチド、融合タンパク質、コンジュゲート、受容体複合体、核酸分子、ベクター又は細胞)の使用に関する。
【0073】
上記生成物及び医薬組成物は、例えば免疫関連障害又は癌の処置に、特に自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、IBD、脳脊髄炎、重症筋無力症、等)、炎症性疾患(例えば、関節痛、敗血症ショック、CNS炎症)、アレルギー、喘息、気管支炎、肺気腫、腎臓病、糖尿病、癌、並びに任意のB細胞媒介障害の処置に特に適している。
【0074】
これに関して、本発明の特定の目的は、対象者の免疫障害又は癌を処置するための医薬組成物の製造のための上文で定義したような生成物の使用に関する。
【0075】
本発明の更に詳細な目的は、対象者の炎症性障害を処置するための医薬組成物の製造のための上文で定義したような生成物の使用に関する。
【0076】
本発明の更に詳細な目的は、対象者の喘息、気管支炎又は肺気腫を処置するための医薬組成物の製造のための上文で定義したような生成物の使用に関する。
【0077】
本発明の更に詳細な目的は、対象者における抗体産生を阻害又は低下させるための、特に自己免疫疾患を有する対象者における自己抗体産生を低下させるための医薬組成物の製造のための上文で定義したような生成物の使用に関する。
【0078】
本発明はまた、上文で定義したような生成物を用いる処置のための相当の方法に関する。特に、本発明の目的は、対象者の癌、自己免疫疾患又は炎症性疾患を処置する方法であって、必要とされる対象者に対し、上文で定義したような生成物を有効量投与することを含んで成る方法、である。
【0079】
本発明の別の特定の使用は、対象者、特に免疫関連障害又は炎症性疾患を有する対象者のB細胞成熟又は増殖を阻害するためのものである。
【0080】
本発明はまた、対象者におけるBCMAとそのリガンドとの間の相互作用を軽減する方法であって、かかる対象者に上文で定義したような生成物を有効量投与することを含んで成る方法をも包含する。
【0081】
本発明の範囲内で、処置との用語には対象者、特にヒトの対象者における予防的又は治療的処置が含まれる。処置には、疾患の臨床兆候のあらゆる改善、疾患の開始、特に急性疾患の開始の遅れ;その重篤度の軽減、疾患の進行の緩和又はその原因の抑制、例えば(自己)抗体の産生の軽減、B細胞増殖の軽減等、が含まれる。
【0082】
有効量は、患者、疾患及び製品によって、当業者が調節することができる。典型的に、有効量は、約5μg/kg〜50mg/kg、特に100μg/kg〜10mg/kg含んで成る。
【0083】
医薬組成物は、単独の活性成分として又は他の活性成分との組み合わせにおける使用のために、本発明の1又は複数の生成物、並びに任意の適当な医薬として許容される希釈剤、担体、生物学的に許容される賦形剤(vehicle)及び添加物であって、動物への投与に適しているもの(例えば、生理食塩水)を含んでもよく、そして任意に助剤(例えば賦形剤(excipient)、安定剤、又はアジュバント)であって、活性成分を医薬として使用することができる調製物に処理することを容易にするものを含んで成る。医薬組成物は、投与形態の必要に応じた任意な許容される方法で製剤化されうる。例えば、生体材料及び他のポリマーを薬物送達に使用することは、特定の投与形態を評価するための異なる技術及びモデルに加え、文献に開示されている(Luo B and Prestwich GD, 2001; Cleland JL et al., 2001)。
【0084】
「医薬として許容される」とは、活性成分の生体活性の有効性に干渉せず、そして投与される宿主に毒性がない任意の担体を包含することを意味する。例えば、非経口投与の場合、上記活性成分は注射用の単位剤形で、賦形剤、例えば食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー液中で製剤化することができる。担体は、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、及び種々の油、例えば石油、動物油、植物油又は合成起源の油(ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油)から選択することもできる。
【0085】
許容されるあらゆる投与形態を使用することができ、そしてこれは活性成分の所望の血液レベルを確立するために当業者が決定することができる。例えば、投与は、種々の非経口経路、例えば皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻内、経皮、経直腸、経口、又は口腔経路によってもよい。本発明の医薬組成物はまた、所定の割合でポリペプチドを長期投与するために、徐放又は制御放出の剤形で、例えば蓄積注射、浸透圧ポンプ等で、好ましくは正確な投与量を単回投与するのに適した単位剤形で投与することができる。
【0086】
非経口投与は、ボーラス注射又は時間をかけての漸進的な灌流によってもよい。非経口投与の調製物には、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳濁液が含まれ、これに当業界で知られている助剤又は賦形剤を含めてもよく、そして当該調製物はルーチンな方法に従い調製することができる。尚、適切な油性の注射用懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与してもよい。適当な親油性溶媒又は賦形剤には、脂肪油、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリドが含まれる。粘度を増大させる物質を含むことがある水性の注射用懸濁液には、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランが含まれる。任意に、懸濁液は更に安定剤を含むことがある。医薬組成物は、注射による投与に適した溶液を含み、そして約0.01〜99.99パーセント、好ましくは約20〜75%の活性化合物を賦形剤と一緒に含む。
【0087】
投与量は年齢、レシピエントの性別、健康、及び体重、併用療法の種類に依存し、あるとしたら、処置の頻度、及び所望とする効果の性質にも依存すると解される。投与量は、当業者が理解し、そして決定可能なように、個々の対象者に合わせられる。それぞれの処置に要される合計の投与量は、複数回投与又は単回投与で投与されうる。本発明の医薬組成物は、単独で、又はその症状に対する、若しくはその症状の他の症候に対する他の治療法と一緒に投与されうる。通常、活性成分の一日量は、0.01〜100ミリグラム/体重1キログラム/1日を含んで成る。通常、1〜40ミリグラム/体重1キログラムを分割量又は徐放形態で与えることが所望の結果を得るのに有効である。第二又はその後の投与は、個体に対して投与した最初又は以前の投与量と同一、それ未満又はそれよりも多い量で実施することができる。
【0088】
本発明の更なる観点は、試料中の本発明のポリペプチド又は核酸を検出し、又は試料中に薬注するための組成物及び方法に関する。かかる組成物は、例えば本発明のポリペプチドの任意の特異的なリガンド、例えば抗体、あるいはそのフラグメント又は誘導体;あるいは任意の特的な核酸プローブ又はプライマーを含む。
【0089】
これに関連して、本発明の更なる目的として、上文で開示したBCMAポリペプチド変異体と選択的に結合する、抗体、又はそのフラグメント若しくは誘導体がある。更に具体的な態様において、当該抗体、又はそのフラグメント若しくは誘導体は、アミノ酸残基NARSG(配列番号3の残基42−46)又はCNARSGL(配列番号3の残基41−47)を含んで成る、又はそれに含まれるエピトープと選択的に結合する。本発明はまた、上文で定義した抗体、そのフラグメント若しくは誘導体を含んで成る医薬組成物に関する。
【0090】
本発明の範囲内で、用語「選択的」な結合とは、抗体が、優先的に、すなわち任意な他の抗原又はエピトープよりも高い親和性で、標的ポリペプチド又はエピトープと結合することを指す。換言すると、標的ポリペプチドに対する結合は、他の抗原に対する非特異的な結合と区別することができる。
【0091】
本発明の抗体(又はそのフラグメント若しくは誘導体)は、標的ポリペプチド又はエピトープと106-1以上、好ましくは107-1以上、更に好ましくは108-1以上、そして最も好ましくは109-1以上の結合親和性(Ka)を示す。抗体の結合親和性は、当業者が容易に決定することができるものであり、例えばスキャッチャード解析による(Scatchard G., Ann NY Acad. Sci. 51: 660-672, 1949)。
【0092】
本発明の抗体はモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、あるいは実質的に抗原特異性を有するそれらのフラグメント又は誘導体でもよい。フラグメントとの用語は、任意な抗体の結合部分、例えばFab、F(ab’)2、CDRドメイン等を含む。誘導体には、ヒト抗体又はヒト化抗体、多機能抗体、一本鎖抗体(例えばScFv)、二重特異性抗体、モノボディー(monobody)等が含まれる。抗体、それらのフラグメント又は誘導体を産生する方法は当業界で周知であり、動物の免疫化及び血清(ポリクローナル)又は脾臓細胞の回収(適切な細胞系との融合によるハイブリドーマを産生するため)が含まれる。
【0093】
「一本鎖抗体」は、前記抗体のVH及びVLドメインを含んで成る抗体のフラグメントであり、これらのドメインは、一本のポリペプチド鎖内に存在する。好ましくは、Fcポリペプチドは更に、一本鎖抗体分子が抗原の結合にとって望ましい構造を形成するのを可能にするVHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーを含んで成る。一本鎖抗体分子の概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer- Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0094】
用語「二重特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントであって、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)とが同一のポリペプチド鎖内で結合したもの(VH−VL)を含んでなるフラグメントを指す。好ましくは、短すぎて同一鎖上の2つのドメイン同士が対合することができないようなリンカーを用いることで、当該ドメインは別の鎖の相補的なドメインと対合せざるを得ず、そして2つの抗原結合部位を作り出す。二重特異性抗体は、より詳細に、例えばEP 404,097; WO 93/ 11161; 及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)において記載されている。
【0095】
用語「モノボディー」は、本明細書で使用する場合、重鎖可変ドメインを有しているが、軽鎖可変ドメインを有さない抗原結合分子を指す。モノボディーは、軽鎖がなくても抗原と結合することができ、そして、CDRH1、CDRH2及びCDRH3と称される3つのCDR領域を通常有している。モノボディーには、ラクダ科の起源動物、例えば2本指で革状の足裏を有する動物から得られる「ラクダ科モノボディー」が含まれる。ラクダ科の動物には、ラクダ、ラマ及びアルパカが含まれる。ラクダ(ヒトコブラクダ(Camelus dromedaries)及びフタコブラクダ(Camelus bactrianus))はしばしば、それらの血清由来材料が解析される場合に可変軽鎖ドメインを欠いていることが報告されており、これは十分な抗体特異性及び親和性がVHドメイン(3つのCDRループ)単独に由来しうることを示唆している。モノボディーはまた、種々の動物起源、特に哺乳類(例えばマウス、ラット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ又はヒト)由来の修飾型VHであって、VLの不在下で抗原と結合することができるものを含む。好ましくは、VHは、VLの不在下抗原に対するVHの結合を提供するためにVLの接合部分で修飾されている。Davis及びRiechmannは、例えば、高親和性(標的ポリペプチドに対して107-1以上の結合親和性(Ka))及び高特異性を有する「ラクダ化抗体」を生成することができることを証明している(Davies & Riechmann, 1995, Biotechnology (N Y), 13(5):475-9)。VHが、軽鎖可変ドメイン(VL)とのその接触部分を通じて非特異的に結合することを、この接触部分における3つの突然変異(G44E、L45R及びW47G)を通じて防いだ。これらの突然変異は、軽鎖のパートナーを天然において欠いているラクダ抗体の重鎖を模倣するように導入した。
【0096】
様々な種、例えばげっ歯類、哺乳類及びウマからポリクローナル抗体を産生する方法は、例えばVaitukaitisらが説明している(J Clin Endocrinol Metab. 33 (1971) p. 988)。要約すると、抗原をアジュバント(例えば、フロイントアジュバント)と組み合わせ、そして動物に対し、典型的には皮下注射によって投与する。反復注射を実施してもよい。血液試料を回収してイムノグロブリン又は血清を分離する。
【0097】
モノクローナル抗体の産生方法は、例えばHarlowら(Antibodies: A laboratory Manual, CSH Press, 1988)又はKohlerら(Nature 256 (1975) 495)の文献に見られるようなものであり、これらは引用により本明細書に組み入れられる。要約すると、これらの方法は、動物を抗原で免疫化し、続いて脾臓細胞を回収し、そしてこれらの細胞を不死化細胞、例えば骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを産生することを含んで成る。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、限界希釈によって選択することができる。抗体は、Wardら(Nature 341 (1989) 544)が開示している通り、イムノグロブリンのコンビナトリアルライブラリーによっても産生することができる。
【0098】
抗体は異種部分、例えば毒素、標識、薬物又は他の治療剤と、共有結合又は非共有結合により、直接又はカップリング剤又はリンカーの使用を通じてカップリングしてもよい。
【0099】
本発明の抗体は、本発明のBCMAポリペプチド変異体を検出、薬注、精製又は中和するために使用することもできる。特定の観点において、本発明はこのように、試料中にある上文で定義したようなBCMAポリペプチド変異体を検出又は試料中に薬注する方法であって、かかる試料を上文で開示したような抗体、そのフラグメント又は誘導体と接触させ、そして免疫複合体の形成を決定し又はその(相対)量を薬注することを含んで成る方法に存する。当該試料は、例えば、任意の体液、例えば血液、血漿、血清等であってもよく、例えば任意に希釈され、そして/あるいは処理されていてもよい。当該抗体、そのフラグメント又は誘導体は、懸濁液中に存在しているか、又は支持体上に固定されていてもよい。免疫複合体の存在又は量は当業界で本質的に知られている任意な技術によって、例えばELISA、RIA等によって、例えばレポーター抗体、標識抗体等を用いることで決定することができる。
【0100】
本発明の別の観点は核酸プローブであって、上文で定義したような核酸又はその相補鎖と選択的にハイブリダイズするプローブである。プローブとは、試料中に存在する特定のポリヌクレオチド配列を同定するのに使用することができる、定義済みの核酸セグメント(又はヌクレオチドアナログセグメント、例えば本明細書で定義したようなポリヌクレオチド)であって、同定されるべき前記の特定のポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列の相補鎖を含んで成る核酸セグメントを意味する。本発明のプローブは、典型的に、12〜600ヌクレオチドの長さの、例えば12〜500、更に好ましくは15〜400、典型的には20〜300の長さの一本鎖核酸を含んで成る。プローブの配列は、BCMAポリペプチド変異体遺伝子配列の配列に由来してもよい。プローブは、例えばハイブリッドの安定性を増大させるために、又は当該プローブを標識するために、ヌクレオチド置換及び/又は化学修飾を含んでもよい。標識の典型例には、限定しないが、放射能、蛍光、ルミネセンス等が含まれる。
【0101】
本発明の更なる観点には、上文で定義したようなBCMAポリペプチド変異体をコードする核酸分子の特有フラグメントを少なくとも増幅するのに使用することができる核酸プライマーである。「プライマー」は、標的ヌクレオチド配列と相補的であり、且つ当該標的ヌクレオチド配列にハイブリダイズさせるために使用する特異的なオリゴヌクレオチド配列を意味する。プライマーは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又は逆転写酵素のいずれかによって触媒されるヌクレオチドの重合の開始点としての役割を果たす。本発明の典型的なプライマーは、約6〜50ヌクレオチドの長さ、更に好ましくは約8〜40のヌクレオチドの長さの一本鎖核酸分子である。プライマー配列は、標的核酸分子から直接導くことができる。高い特異性を保証するためには、プライマー配列と標的遺伝子とが完全に相補的であることが好ましい。しかしながら、若干のミスマッチは許容されうる。
【0102】
特定の核酸プライマーは、かかるポリペプチドの特有フラグメントに隣接する、又はそれをコードするBCMA変異体核酸の一部と特異的にハイブリダイズすることができる。本発明のプライマーの具体例を以下開示する:
【化1】

【0103】
従って、本発明の更なる観点は、試料中の本発明のBCMAポリペプチド変異体をコードする核酸の存在を検出又は診断するための、上文で開示されているようなプライマー又はプローブの使用に存する。この方法は、当業界で周知の技術に従い、例えば試料と上文で開示されているようなプローブとを、ハイブリダイゼーションを起こさせるような条件下で接触させ、そしてハイブリッドの存在を決定することで;あるいは試料と上文で開示されているプライマーとを、核酸を増幅させる条件下で接触させ、そして増幅産物の存在を決定することで、実施することができる。
【0104】
本発明の更なる観点及び利点を次の実施例で開示するが、これは例示としてみなされるべきであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0105】
A.BCMA変異体の同定及びキャラクタライゼーション
1.SMART cDNA合成(プールの産生)
A)第一鎖cDNA合成
キット番号634914 Clontech
1 プレパレーションを混合する:
−0.5μlのRNA試料
−1μlの3’SMART CDSプライマーII A(10μM)
−1μlのSMART II A オリゴヌクレオチド(10μm)
−2.5μlの脱イオン水
2 内容物を混合し、そしてチューブを手短に微量遠心機でスピンさせる。
3 72℃で2分間インキュベートする。
4 チューブを氷上で2分間インキュベートする。
5 次のものを各反応チューブに添加する:
−2μlの5×First−Strandバッファー
−1μlのDTT(20mM)
−1μlの50×dNTP(10mM)
−1μlのPowerScript逆転写酵素
6 チューブを42℃で1時間インキュベートする。
7 190μlのTE1×(pH7.5)を添加する。
8 72℃で7分間インキュベートする。
9 −20℃で保存する。
【0106】
2.Agilentプロトコール
1 最初のPCR用の組成物(1反応)を混合する
−24.4μlのH2O
−1μlの逆転写酵素Th(rTTH、参照番号808.0188 Perkin)
−15μlのバッファーrTTH3,3×(Perkin)
−0.4μlのdNTP(25mM;参照番号10297−018 Invitrogene)
−1μlのミックスオリゴPCR1(10μM)
−6μlのSMART cDNA(0.4ng/μl)
−2.2μlのMg(OAc)2
【0107】
2 最初のPCRのサイクル
【表1】

【0108】
3 2回目のPCR用の組成物(1反応)を混合する
−38.8μlのH2O
−5μlのバッファーTaq+(10×)
−0.4μlのdNTP(25mM;参照番号10297−018 Invitrogene)
−0.3μlのTaq+プレシジョン(600 211 Sire)
−1μlのミックスオリゴPCR2(10μM)
−s2μlの最初のPCR産物
2.5μlのDMSO(100%)
【0109】
4 2回目のPCRのサイクル
【表2】

【0110】
これらの実験により、125aaを有するBCMAの短い形態(スプライス変異体)が単離された。BCMAのヒト遺伝子は3つのエキソンとカノニカルなスプライス部位を有する[Laabi et al 1994 (PDF)]。新規変異体(BCMA_ショート)はエキソン1とエキソン3のみを保持する(図1)。図2に表されているように、この新規なタンパク質は膜貫通ドメインを欠いているが、6個のシステインリッチドメイン(例えば、BCMA_ショート:QCSQNEYFDSLLHACIPCQLRCSSNTPPLTCQRYC)及びNF−κBを活性化させるフラグメント(例えば、BCMA_ショート:LEYTVEECTCEDCIKSKPKVDSDHC)を保持している。
【0111】
B.BCMAスプライス変異体の組織分布
BCMA_ショートの組織分布は、RT−PCRを用いて、Clontech(ヒトポリA RNA膵臓、cod.636119;ヒトポリA RNA骨格筋、cod.636120;ヒトポリA RNA小腸、cod.636125;ヒトポリA RNA精巣、cod.636115;ヒトポリA RNA肝臓、cod.636101;ヒトポリA RNA脳、cod.636102)又はInvitrogen(ヒト全RNA、正常脂肪、lot A5040004)のいずれかから購入したヒト組織から生成した一連のRNAライブラリーにおいて上文の「SMART cDNA合成」に記載のように決定した。
【0112】
2つの連続するPCR反応は、異なるcDNA鋳型であって、特定の変異体及び正常な形態を含むRT−PCR反応産物を比較した場合、いずれも同一のDNAセグメント(コントロールのRT−PCR)か、又は有意に異なる長さのDNAセグメントに至るcDNA鋳型を用いて、実施した。
【0113】
コントロールの反応においては、以下のカップルプライマーを用いて、2つのPCR連続反応を実施した:
【化2】

【0114】
反応結果は、正常なBCMA又はBCMAの短い変異体のいずれかがRNAライブラリーで発現している場合は157bpのバンドとなる。
【0115】
試験反応においては、以下のカップルプライマーを用いて、2つのPCR連続反応を実施した:
【0116】
【化3】

【0117】
反応結果はBCMA_ショートの形態又は正常な形態がRNAライブラリーで発現している場合は435bp及び/又は582bpとなる。
【0118】
各組織について、各バンドのサイズ及びDNA濃度を比較し、そして標準化した。
【0119】
2つのイソ型の組織分布は、Agilent Bioanalyzer上での移動により解析し、そして解析した相対的な発現レベルは、発現が最高の組織における発現のパーセンテージの観点から比較することができる。
【0120】
図3及び表1に示す通り、2つのBCMA型は組織分布について同一のプロファイルを有していない(図3:左のカラム;野生型の%、右のカラム:突然変異体の%)。特に突然変異体が短いほど、組織の多くで、特に肝臓、膵臓、脳、及び精巣においてより多く発現している。ヒトBCMAの発現は、肺、リンパ節、乳腺及び血液で見られる。マウスBCMAの発現は、結腸、乳腺及び胃で見られている。
【0121】
C.突然変異体の生体活性
本発明のポリペプチドの生体活性は、当業界で本質的に知られている複数の生物学的アッセイを用いて確認することができる。ポリペプチドは、直接(sc、ip、iv)動物に注射することもできるし、あるいは、例えばFAST TRACKテクノロジー(EP04405494.8)を用いて送達することもできる。
【0122】
APRILについてBCMAと競合するBCMA突然変異体
本発明のBCMA突然変異体は、BCMAのリガンド結合ドメインを保持している。リガンドAPRILについてBCMAと競合するBCMA突然変異体の能力は、BIACORE3000(Uppsala, Sweden)を用いる以下のアッセイによって試験することができる。
【0123】
BCMAタンパク質は、当業界で周知の方法に従い、CHOから産生して精製される。BCMAタンパク質の適切な希釈物は、BIACORE3000の標準的なアミンカップリング手順を用いて、センサーチップ、例えばCM5上に固定される。精製したAPRILタンパク質は、精製したBCMA突然変異体の存在下、そして不在下前記チップに添加される。当業界で周知の方法を用い、そしてBIACORE3000の取り扱い説明書に従い、BCMA突然変異体がAPRILについて競合する能力を検出することができる。BCMA突然変異体タンパク質の不在下、APRILは、固定化したBCMAに対して結合することが証明され、これはBIACORE技術によって検出する。BCMA突然変異体の存在下、固定化BCMAに対するAPRILの結合は低下し、これはBCMA変異体がAPRILに対する結合についてBCMAと競合することを示唆している。
【0124】
ポジティブコントロールとして、BCMAに対する結合をブロックする抗体を私用してもよい。
【0125】
正常なマウスにおいて循環しているB細胞の数を減少させるBCMA突然変異体
BCMAは、そのリガンドBlys及びAPRILの作用を通じて、B細胞の発生及び増殖と関連している。BCMA突然変異体がBCMAリガンドの活性を拮抗し、そして正常なマウスにおいて循環しているB細胞の数の低下をもたらす能力は、当業界で知られており、そしてUS20030082175に記載されている、B細胞増殖アッセイによって決定することができる。
【0126】
無胸腺マウスにおいて腫瘍容積の低下をもたらすBCMA突然変異体
BCMA活性のアンタゴニストは、多数の腫瘍細胞系を注射した無胸腺マウスの腫瘍容積を低下させる能力を有すると説明されている(US20030082175)。BCMA突然変異体は、US20030082175に記載されているように試験することができる。無胸腺マウスは、精製したBCMA突然変異タンパク質、生理食塩水、ネガティブコントロールタンパク質又はポジティブコントロールタンパク質のいずれかで注射される。腫瘍サイズは注射後の適切な時間に、例えば30〜45日後に測定される。本発明のBCMA突然変異体は、未処理の、又はネガティブコントロールタンパク質で処理したものと比較した場合に、有意に腫瘍容積を低下させる。
【0127】
【表3】

【0128】
【表4】

【表5】

【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明のヒトBCMA変異体のゲノム構成。
【図2】成熟BCMAと本発明のBCMA変異体との間の配列アラインメント。
【図3】本発明のBCMA変異体の組織発現。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BCMAポリペプチドのリガンド結合ドメイン及びNF−κB活性化ドメインの配列を含んで成り、そして機能的膜貫通ドメインを欠いている単離したBCMAポリペプチド変異体、又はその特有フラグメント。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸残基7−41、好ましくは配列番号1のアミノ酸残基1−43
を含んでなる、請求項1に記載の単離したBCMAポリペプチド変異体。
【請求項3】
配列番号1のアミノ酸残基119−143、好ましくは配列番号1のアミノ酸残基94−184を含んでなる、請求項1又は2に記載の単離したBCMAポリペプチド。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸残基55−77、好ましくは配列番号1のアミノ酸残基44−93を含んでなる、請求項1、2又は3に記載の単離したBCMAポリペプチド。
【請求項5】
配列番号3又はその特有フラグメントを含んで成る、請求項1に記載の単離したBCMAポリペプチド変異体。
【請求項6】
アミノ酸配列NARSG(配列番号3の残基42−46)を含んで成る、請求項1に記載の単離したBCMAポリペプチド変異体。
【請求項7】
可溶性である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の単離したBCMAポリペプチド変異体。
【請求項8】
BAFF及び/又はAPRILと結合する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の単離したBCMAポリペプチド変異体。
【請求項9】
追加のアミノ酸ドメインと作用可能に連結した、請求項1〜8のいずれか1項に記載のBCMAポリペプチドを含んで成る融合タンパク質。
【請求項10】
追加のアミノ酸ドメインがシグナルペプチド、タグ、ターゲティングペプチド、イムノグロブリンの定常領域、多量体化ドメイン又は生体活性タンパク質若しくはそのフラグメントを含んで成る、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
イムノグロブリンの定常領域と作用可能に連結した請求項1〜8のいずれか1項に記載のBCMAポリペプチドを含んで成る、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のBCMAポリペプチド又は請求項9〜11のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含んで成る受容体複合体。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のBCMAポリペプチド又は請求項9〜11のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含んで成るコンジュゲート。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする単離した核酸分子。
【請求項15】
cDNA分子である、請求項14に記載の単離した核酸分子。
【請求項16】
配列番号2、又はその相補鎖若しくは縮重配列、から選択されるヌクレオチド配列を含んで成る、請求項14に記載の単離した核酸分子。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の核酸分子を含んで成るベクター。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の核酸分子又は請求項17に記載のベクターを含んで成る、組換え宿主細胞。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチドを発現する、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
原核細胞又は真核細胞である、請求項18又は19に記載の宿主細胞。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチドを産生する方法であって、請求項18〜20のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞を、核酸分子を発現させる条件下で培養し、そして産生したポリペプチドを回収すること、を含んで成る方法。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド変異体、請求項14〜16のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項17に記載のベクター又は請求項18、19又は20に記載の細胞、及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項23】
請求項5に記載のポリペプチド及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含んで成る、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
対象者の免疫障害又は癌を処置するための医薬組成物の製造のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド変異体、請求項14〜16のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項17に記載のベクター、請求項18〜20のいずれか1項に記載の細胞、の使用。
【請求項25】
対象者の癌を処置するための請求項24に記載の使用。
【請求項26】
対象者の自己免疫疾患を処置するための、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
対象者のB細胞成熟又は成長を阻害するための医薬組成物の製造のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド変異体、請求項14〜16のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項17に記載のベクター、請求項18〜20のいずれか1項に記載の細胞、の使用。
【請求項28】
対象者の炎症性疾患を処置するための医薬組成物の製造のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド変異体、請求項14〜16のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項17に記載のベクター、請求項18〜20のいずれか1項に記載の細胞、の使用。
【請求項29】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のBCMAポリペプチドと選択的に結合する、抗体、又はそのフラグメント若しくは誘導体。
【請求項30】
アミノ酸残基CNARSGL(配列番号3の残基41−47)を含んで成る又はこれに含まれるエピトープと選択的に結合する、請求項29に記載の抗体、フラグメント又は誘導体。
【請求項31】
モノクローナル抗体又はそのフラグメント若しくは誘導体である、請求項29又は30に記載の抗体。
【請求項32】
請求項14〜16のいずれか1項で定義した核酸又はその相補鎖と選択的にハイブリダイズする、核酸プローブ。
【請求項33】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のBCMAポリペプチドをコードする核酸分子の特有フラグメントを少なくとも増幅するのに使用することができる核酸プライマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−525002(P2008−525002A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547534(P2007−547534)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/057091
【国際公開番号】WO2006/067210
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(504320031)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】