説明

C−MET二量体化及び活性化を阻害するための方法と組成物

本発明は、特にc-met二量体化及び/又はc-met多量体化を混乱させるc-metアンタゴニストを使用した、c-metへのリガンドの結合を調節することによる、HGF/c-metシグナル伝達経路を調節する方法及び組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2003年12月11日に出願された仮出願第60/528909号の優先権享受を主張し、米国特許法施行規則第1.53条(b)(1)に基づき出願された非仮出願であり、基礎出願の内容の全体を出典明示によりここに援用する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般的に、分子生物学及び成長因子調節の分野に関する。特に本発明は、HGF/c-metシグナル伝達経路のモジュレーター及び該モジュレーターの使用に関する。
【0003】
(背景)
HGFは、いくつかの種々な細胞型において、分裂促進、細胞遊走促進及び形態形成活性を有する、間充織誘導性多指向性因子である。HGF効果は特定のチロシンキナーゼ、c-metにより媒介され、異常なHGF及びc-metが多様な腫瘍で頻繁に観察される。例えば、Maulikら、「サイトカインと成長因子の概説(Cytokine & Growth Factor Reviews)」(2002), 13:41-59; Danilkovitch-Miagkova及びZbar, J. Clin. Invest. (2002), 109(7):863-867を参照のこと。HGF/c-metシグナル伝達経路の調節は、腫瘍の進行と転移に関連している。例えば、Trusolino及びComoglio, Nature Rev. (2002), 2:289-300を参照のこと。
【0004】
HGFはMetレセプターチロシンキナーゼ(RTK)の細胞外ドメインに結合し、多様な生物学的プロセス、例えば細胞散乱、増殖及び生存を調節している。HGF-Metシグナル伝達は、特に筋肉前駆細胞の遊走における正常な胚発生、及び肝臓及び神経系の発生に必須である(Bladtら, 1995; Hamanoueら, 1996; Mainaら, 1996; Schmidtら, 1995; Ueharaら, 1995)。Met及びHGFノックアウトマウスの発生表現型は、HGFがMetレセプターに対する同族リガンドであることを、かなり類似して示唆している(Schmidtら, 1995; Ueharaら, 1995)。また、HGF-Metは肝臓再生、血管新生、及び創傷治癒における役割も担っている(Bussolinoら, 1992; Matsumoto及びNakamura, 1993; Nusratら, 1994)。Metレセプター前駆体は、ジスルフィド結合により結合している膜貫通βサブユニットと細胞外αサブユニットにおいて、タンパク質分解性開裂を被る(Tempestら, 1988)。βサブユニットは細胞質キナーゼドメインを含み、アダプタータンパク質が結合し、シグナル伝達が開始されるC末端にて、多基質ドッキング部位を包含する(Bardelliら, 1997; Nguyenら, 1997; Pelicciら, 1995; Ponzettoら, 1994; Weidnerら, 1996)。HGFの結合において、Metの活性化により、チロシンのリン酸化、及びそれぞれGab1及びGrb2/Sos媒介性PI3-キナーゼ及びRas/MAPK活性化を通した下流シグナル伝達に至り、細胞運動性及び増殖が促進される(Furgeら, 2000; Hartmannら, 1994; Ponzettoら, 1996; Royal及びPark, 1995)。
【0005】
Metは、発癌物質処理された骨肉腫株化細胞において形質転換することが示されている(Cooperら, 1984; Parkら, 1986)。Metの過剰発現又は遺伝子-増幅が種々のヒトの癌で観察されている。例えば、Metタンパク質は直腸結腸癌では少なくとも5倍、過剰発現しており、肝転移においては遺伝子-増幅されることが報告されている(Di Renzoら, 1995; Liuら, 1992)。また、Metタンパク質は、口腔扁平上皮癌、肝細胞癌、腎細胞癌、乳癌、及び肺癌においても過剰発現していることが報告されている(Jinら, 1997; Morelloら, 2001; Nataliら, 1996; Oliveroら, 1996; Suzukiら, 1994)。さらに、mRNAの過剰発現は、肝細胞癌、胃癌、及び直腸結腸癌において観察されている(Boixら, 1994; Kuniyasuら, 1993; Liuら, 1992)。
【0006】
Metのキナーゼドメインにおけるいくつかの変異は、レセプターの構造的活性化に至る腎乳頭癌腫に見出されている(Oliveroら, 1999; Schmidtら, 1997; Schmidtら, 1999)。これらの活性化変異により、構造的なMetチロシンリン酸化が付与され、結果としてMAPK活性化、病巣形成、及び腫瘍形成に帰する(Jeffersら, 1997)。さらに、これらの変異により、細胞の運動性及び浸潤が高められる(Giordanoら, 2000; Lorenzatoら, 2002)。形質転換した細胞におけるHGF-依存性Met活性化は、増加した運動性、散乱性及び遊走を媒介し、最終的に浸潤癌の成長及び転移に至る(Jeffersら, 1996; Meinersら, 1998)。
【0007】
Metは、レセプターの活性化、形質転換、及び浸潤を促進させる他のタンパク質と相互作用することが示されている。新生細胞において、Metは、α6β4インテグリン、細胞外マトリックス(ECM)成分に対するレセプター、例えばラミニンと相互作用し、HGF-依存性浸潤性増殖を促進させることが報告されている(Trusolinoら, 2001)。さらに、Metの細胞外ドメインは、いくつかのセマフォリンファミリー、プレキシン(plexin)B1と相互作用し、浸潤性増殖を高めることが示されている(Giordanoら, 2002)。さらに、腫瘍形成及び転移に関連しているCD44v6も、Met及びHGFと複合体を形成し、Metレセプターの活性化に帰することが報告されている(Orian-Rousseauら, 2002)。
【0008】
Metは、Ron及びSeaに含まれるレセプターチロシンキナーゼ(RTKs)のサブファミリーのメンバーである(Maulikら, 2002)。Metの細胞外ドメイン構造の予測では、セマフォリン及びプレキシンと、共通の相同性を有すると示唆されている。MetのN末端には、全てのセマフォリン類及びプレキシン類に保存されている約500のアミノ酸のSemaドメインが含まれる。セマフォリン類とプレキシン類は、神経発生における役割について記載されている、分泌及び膜結合性タンパク質の大きなファミリーに属している(Van Vactor及びLorenz, 1999)。しかしながら、さらに近年、セマフォリンの過剰発現は腫瘍の浸潤及び転移に相関している。プレキシン類、セマフォリン類及びインテグリン類に見出されているシステイン-リッチのPSIドメイン(Met関連配列ドメインとも称される)は、Semaドメインに隣接し、プレキシン類及び転写因子に見出されている免疫グロブリン様領域である4つのIPT繰り返しが続く。近年の研究では、Met SemaドメインがHGFとヘパリンの結合に十分であることが示唆されている(Gherardiら, 2003)。
【0009】
Metキナーゼドメインの役割は詳細に調査されているが、Metの細胞ドメインの特徴付けは不十分である。HGFがMetの細胞外ドメインに結合し、結果としてレセプターの活性化に帰することは知られているが、レセプターの二量体化に寄与していたとしても、サブドメイン(類)については明らかになっていない。それにもかかわらず、Met細胞外ドメイン内のサブドメインが、HGF/c-metシグナル伝達軸の活性化に対して寄与しているならば、その説明では、標的とする治療のための設計、例えば特に、Metレセプターそれ自身の機能における異常に関与した臨床的シナリオにおいて、かなり有利であるとことは明らかである。
特許出願及び刊行物を含む、ここで引用した全ての文献は、出典明示によりその全体がここに援用される。
【0010】
(発明の開示)
本発明は、部分的には、肝細胞増殖因子のレセプター、c-metの二量体化が、重要で有利な治療標的として提供される生物学的/細胞プロセスであるという実証に基づいている。ここでは、このプロセスの混乱により、癌等の多くの病状における細胞増殖調節不全に関連した細胞シグナル伝達経路の活性化が、効果的に阻害されることが実証された。さらに本発明は、c-metタンパク質内の全てではないがある種のドメインが、効果的なc-met二量体化、よってHGF/c-metシグナル伝達軸の活性化において主要な役割を担っているか、及び/又はこれに必要であるという発見に基づいている。また本発明は、c-metの細胞外タンパク質における特定のドメインへのHGFの結合に干渉することに基づく組成物と方法を提供する。c-metに結合する同族リガンド又はc-met二量体化に必要なc-metの特異的タンパク質を同定することにより、HGF/c-met経路の異常な又は所望しないシグナル伝達に関連した病態に対する予防的及び/又は治療的アプローチの設計におけるさらなる微調整のための、独特で有利な標的が提供される。従って、本発明は、c-metリガンド結合、c-met二量体化、活性化、及びHGF/c-metシグナル伝達に関連した他の生物学的/生理学的活性の調節を含む、HGF/c-met経路の調節に関連した方法、組成物、キット及び製造品を提供する。
【0011】
一態様では、本発明はHGF/c-metシグナル伝達経路を混乱させる、c-metアンタゴニストを提供する。例えば、本発明はc-met二量体化を混乱させるc-metアンタゴニストを提供する。一実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストはc-met Semaドメインの二量体化機能(すなわち、効果的なレセプター二量体化に機能させるSemaドメインの能力)を混乱させる。一例では、c-metアンタゴニストは、c-met Semaドメインのc-met二量体化をもたらす能力に干渉する。直接的又は間接的に干渉することができる。例えば、c-metアンタゴニストはc-met Semaドメイン内部の配列に結合し、よって該結合ドメインとその結合パートナー(例えば他のc-met分子)との相互作用が阻害され得る。他の例では、c-metアンタゴニストはc-met Semaドメイン内部ではない配列に結合してよいが、該結合の結果、c-met Semaドメインのその結合パートナー(例えば他のc-met分子)と相互作用する能力は混乱する。一実施態様では、本発明のアンタゴニストは、c-met二量体化が混乱するようにc-met(例えば細胞外ドメイン)に結合する。一実施態様では、本発明のアンタゴニストは、c-met二量体化をもたらすc-met Semaドメインの能力が混乱するように、c-metに結合する。例えば、一実施態様では、本発明は、c-met分子への結合時に、該分子の二量体化を阻害するアンタゴニストを提供する。一実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、c-met Semaドメインの配列に特異的に結合する。
【0012】
一実施態様では、本発明のアンタゴニストは、ホモ二量体化を含むc-metの二量体化を混乱させる。一実施態様では、本発明のアンタゴニストは、ヘテロ二量体化(すなわち、非-c-met分子とのc-met二量体化)を含むc-met二量体化を混乱させる。
【0013】
いくつかの例では、c-metへのリガンド(例えばHGF)の結合に干渉しないc-metアンタゴニストを有することが有利であり得る。従って、いくつかの実施態様では、本発明のアンタゴニストは、c-metにおけるリガンド(例えばHGF)結合部位に結合しない。他の実施態様では、本発明のアンタゴニストは、c-metへのリガンド(例えばHGF)結合を実質的に阻害しない。一実施態様では、本発明のアンタゴニストは、c-metへの結合において、リガンド(例えばHGF)と実質的に競合しない。一例では、本発明のアンタゴニストは、一又は複数の他のアンタゴニストとの結合に使用可能で、ここでアンタゴニストはHGF/c-met軸内における種々のプロセス及び/又は機能を標的にする。よって、一実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、他のc-metアンタゴニスト、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション受託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ 1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ 5D5.11.6)で寄託されているハイブリドーマ株化細胞により産生されるモノクローナル抗体のFab断片が結合するエピトープとは異なる、c-met上のエピトープに結合する。他の実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション受託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ 1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ 5D5.11.6)で寄託されているハイブリドーマ株化細胞により産生されるモノクローナル抗体のFab断片とは異なる(すなわちそれではない)。一実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション受託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ 1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ 5D5.11.6)で寄託されているハイブリドーマ株化細胞により産生される抗体のc-met結合配列を含まない。
【0014】
いくつかの例においては、c-met二量体化及びリガンド結合の双方を混乱させるc-metアンタゴニストを有することが有利であり得る。例えば、本発明のアンタゴニストは、c-metへの結合に対して、HGFと競合する能力をさらに含み得る。
【0015】
本発明のc-metアンタゴニストの一実施態様では、c-metへアンタゴニストが結合すると、HGFによるc-metの活性化が阻害される。本発明のc-metアンタゴニストの一実施態様では、細胞中でc-metにアンタゴニストが結合すると、細胞の増殖、散乱、形態形成及び/又は運動性が阻害される。
【0016】
一実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、c-met Semaドメイン又はその変異体の少なくとも一部を含有するペプチドを含む。一例では、本発明のアンタゴニストは、LDAQT(配列番号:1)(例えば、c-metの269-273残基)、LTEKRKKRS(配列番号:2)(例えば、c-metの300-308残基)、KPDSAEPM(配列番号:3)(例えば、c-metの350-357残基)及びNVRCLQHF(配列番号:4)(例えば、c-metの381-388残基)からなる群から選択される、少なくとも一の配列を含有するペプチドを含む。他の例では、本発明のアンタゴニストは、LDAQT(配列番号:1)、LTEKRKKRS(配列番号:2)、KPDSAEPM(配列番号:3)及びNVRCLQHF(配列番号:4)からなる群から選択される少なくとも一の配列から本質的になるペプチドを含む。一実施態様では、前記ペプチドは、配列LTEKRKKRS(配列番号:2)を含む。一実施態様では、前記ペプチドは、本質的にLTEKRKKRS(配列番号:2)からなる。一実施態様では、前記ペプチドは、配列LDAQT(配列番号:1)を含む。一実施態様では、前記ペプチドは、本質的にLDAQT(配列番号:1)からなる。一実施態様では、前記ペプチドは、配列KPDSAEPM(配列番号:3)を含む。一実施態様では、前記ペプチドは、本質的にKPDSAEPM(配列番号:3)からなる。一実施態様では、前記ペプチドは、配列NVRCLQHF(配列番号:4)を含む。一実施態様では、前記ペプチドは、本質的にNVRCLQHF(配列番号:4)からなる。いくつかの実施態様では、ペプチドは、配列LDAQT(配列番号:1)、LTEKRKKRS(配列番号:2)、KPDSAEPM(配列番号:3)及び/又はNVRCLQHF(配列番号:4)と、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%の配列同一性又は類似したアミノ酸配列を有する変異体であり、ここで変異体はc-met分子と複合体を形成する能力を保持している。いくつかの実施態様では、これらのペプチドは、それらの阻害及び/又は治療効果を高める(例えば、親和性を向上、薬物動態特性(例えば、半減期、安定性、クリアランス等)を改善、被験者に対する毒性を低下させる)修飾を含む。このような修飾には、例えばグリコシル化、ペグ化、自然に生じたものではないが機能的に等価なアミノ酸での置換、結合基を含む修飾等が含まれる。適切な修飾は当該技術でよく知られており、さらに必要に応じて、経験的に決定することができる。
【0017】
いくつかの実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、小分子(例えば有機分子)、ペプチド(例えばオリゴペプチド)、抗体、抗体断片、アプタマー、オリゴヌクレオチド(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)、又はそれらを組み合わせたものであるか、又はそれらを含む。
いくつかの実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、ここで記載された本発明のスクリーニング又は同定方法により得られる。
【0018】
他の態様では、本発明はc-metアンタゴニストをスクリーニング又は同定するための方法を提供する。一例では、前記方法は、c-metを発現する細胞と候補物質とを接触させることを含み、それにより、該候補物質の存在によって、該細胞内部におけるc-metの二量体化及び/又は活性化が阻害されれば(任意の多様な基準及び方法、そのいくつかはここで記載されたものにより評価される)、物質はc-metアンタゴニストであることが示される。他の例では、前記方法は、c-met Semaドメインの少なくとも一部を有する標的分子と候補物質とを接触させることを含み、それにより、該標的分子と特異的に結合する物質が、(c-metアンタゴニストとして)選択される。いくつかの実施態様では、本発明のスクリーニング方法は、c-metを発現する細胞と選択された物質とを接触させ、ここで、細胞におけるc-met二量体化の阻害を評価(例えばここで、該細胞におけるc-metの二量体化度合いを検出又は定量化)することを含む。c-met二量体化の阻害は、当該技術で公知であり、また当該技術で公知の任意の多様な、さらにそのいくつかがここで詳細に記載されている基準に基づく種々の方法で評価することができる。例えば、c-met二量体化の阻害は、c-met活性化量の低下により表され、例えば細胞内におけるc-met関連細胞シグナル伝達量でも示され得る。細胞シグナル伝達は、当該技術で公知であり、そのいくつかがここで記載されている多様な基準に基づく、種々の方法により評価することができる。例えば、HGF/c-met経路における細胞シグナル伝達の発生は、シグナル伝達経路での標的分子のリン酸化における、生物学的な変化の形態で表される。よって、例えばHGF/c-met経路における、一又は複数の公知のリン酸化標的に関連したタンパク質リン酸化の量を測定することができる。このようなリン酸化標的の例には、c-metそれ自身、及びミトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)が含まれる。
【0019】
一態様では、本発明は、一又は複数の本発明のアンタゴニストと担体を含有する組成物を提供する。一実施態様では、担体は製薬的に許容可能なものである。
一態様では、本発明は、本発明のc-metアンタゴニストをコードする核酸を提供する。一実施態様では、本発明の核酸は、ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)である又はこれを含有するc-metアンタゴニストをコードする。一実施態様では、本発明の核酸は、抗体又はその断片である又はこれらを含有するc-metアンタゴニストをコードする。
【0020】
一態様では、本発明は、本発明の核酸を含有するベクターを提供する。
一態様では、本発明は、本発明の核酸又はベクターを含有する宿主細胞を提供する。ベクターは任意のタイプ、例えば組換えベクター、特に発現ベクターであってよい。多様な宿主細胞の任意のものを使用することができる。一実施態様では、宿主細胞は原核細胞、例えば大腸菌である。一実施態様では、宿主細胞は真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳動物細胞である。
【0021】
一態様では、本発明は、本発明のアンタゴニストの作製方法を提供する。例えば、本発明は、抗体(又はその断片)である又はこれらを含有するc-metアンタゴニストの作製方法を提供するものであり、ここで該方法は、該抗体(又はその断片)をコードする本発明の組換えベクターを適切な宿主細胞で発現させ、該抗体を回収することを含む。他の例では、本発明は、ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)である又はこれを含有するc-metアンタゴニストの作製方法を提供するものであり、該方法は、該ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)をコードする本発明の組換えベクターを適切な宿主細胞で発現させ、該ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)を回収することを含む。
【0022】
一態様では、本発明は、容器、及び容器に収容される組成物を含む製造品を提供するものであり、ここで該組成物は一又は複数の本発明のc-metアンタゴニストを含有する。一実施態様では、組成物は本発明の核酸を含有する。一実施態様では、アンタゴニストを含有する組成物は、いくつかの実施態様では製薬的に許容可能である担体をさらに含有する。一実施態様では、本発明の製造品は、患者に組成物(例えばアンタゴニスト)を投与するための指示書をさらに含む。
【0023】
一態様では、本発明は、一又は複数の本発明のc-metアンタゴニストを含有する組成物を収容する第1容器;及びバッファーを収容する第2容器を具備するキットを提供する。一実施態様では、バッファーは製薬的に許容可能である。一実施態様では、アンタゴニストを含有する組成物は、いくつかの実施態様では製薬的に許容可能である担体をさらに含有する。一実施態様では、キットは、患者に組成物(例えばアンタゴニスト)を投与するための指示書をさらに含む。
【0024】
一態様では、本発明は、病気、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患、及び/又は血管新生関連疾患の治療及び/又は予防的処置のための医薬の調製における、本発明のc-metアンタゴニストの使用を提供する。c-metアンタゴニストは、抗体、抗体断片、小分子(例えば有機分子)、ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)、核酸(例えばオリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチド)、アプタマー、又はそれらの組み合わせを含む、ここで記載された任意の形態にすることができる。
【0025】
一態様では、本発明は、病気、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患、及び/又は血管新生関連疾患の治療及び/又は予防的処置のための医薬の調製における、本発明の核酸の使用を提供する。
一態様では、本発明は、病気、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患、及び/又は血管新生関連疾患の治療及び/又は予防的処置のための医薬の調製における、本発明の発現ベクターの使用を提供する。
一態様では、本発明は、病気、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患、及び/又は血管新生関連疾患の治療及び/又は予防的処置のための医薬の調製における、本発明の宿主細胞の使用を提供する。
一態様では、本発明は、病気、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患、及び/又は血管新生関連疾患の治療及び/又は予防的処置のための医薬の調製における、本発明の製造品の使用を提供する。
一態様では、本発明は、病気、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患、及び/又は血管新生関連疾患の治療及び/又は予防的処置のための医薬の調製における、本発明のキットの使用を提供する。
【0026】
本発明は、HGF/c-metシグナル伝達軸の調節不全に関連した病気を調節するのに有用な方法及び組成物を提供する。HGF/c-metシグナル伝達経路は、例えば細胞増殖及び血管新生を含む、複数の生物学的及び生理学的機能に関与している。よって、一態様では、本発明は、c-metの細胞外部分のサブドメインの機能を調節する物質/分子を患者に投与し、よって、HGF/c-metシグナル伝達を調節する方法を提供する。一実施態様では、サブドメインはc-met Semaドメインの全て又は少なくとも一部を含む。
【0027】
一態様では、本発明は、c-met活性化細胞増殖を阻害する方法を提供するものであり、該方法は、本発明のc-metアンタゴニスト有効量と、細胞又は組織とを接触させることを含み、よってc-met活性化に関連した細胞増殖が阻害される。
一態様では、本発明は、患者のc-met活性化の調節不全に関連した病態を処置する方法を提供するものであり、該方法は、本発明のc-metアンタゴニストを有効量、患者に投与することを含み、よって該病態は処置される。
【0028】
一態様では、本発明は、c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方を発現する細胞の増殖を阻害する方法を提供するもので、該方法は、本発明のc-metアンタゴニストと該細胞とを接触させることを含み、よって該細胞の増殖が阻害される。一実施態様では、細胞は種々の細胞により発現されるHGFにより(例えばパラクリン作用を介して)接触させられる。
一態様では、本発明は、c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方を発現する細胞を含有する癌性腫瘍を有する哺乳動物を治療的処置する方法を提供するもので、該方法は、本発明のc-metアンタゴニストを有効量、該哺乳動物に投与することを含み、それにより、該哺乳動物が効果的に処置される。一実施態様では、細胞は種々の細胞により発現されるHGFにより(例えばパラクリン作用を介して)接触させられる。
一態様では、本発明は、c-met又は肝細胞増殖又はその双方の増加した発現又は活性に関連した細胞増殖性疾患を処置又は防止するための方法を提供するもので、該方法は、本発明のc-metアンタゴニストを有効量、患者に投与することを含み、それにより、該細胞増殖性疾患が効果的に治療又は防止される。一実施態様では、前記増殖性疾患は癌である。
【0029】
一態様では、本発明は細胞増殖を阻害する方法を提供するもので、ここで該細胞増殖は、c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方の増殖効果に少なくとも部分的に依存しており、該方法は、本発明のc-metアンタゴニストを有効量、該細胞と接触させることを含み、それにより、該細胞の増殖が阻害される。一実施態様では、細胞は種々の細胞により発現されるHGFにより(例えばパラクリン作用を介して)接触させられる。
哺乳動物の腫瘍を治療的に処置する方法において、該腫瘍の増殖は、c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方の増殖効果に少なくとも部分的に依存しており、該方法は、本発明のc-metアンタゴニストを有効量、該細胞と接触させることを含み、それにより、該腫瘍が効果的に処置される。一実施態様では、細胞は種々の細胞により発現されるHGFにより(例えばパラクリン作用を介して)接触させられる。
【0030】
本発明の方法は、例えばHGF/c-metシグナル伝達経路の調節不全に関連した細胞及び/又は組織の、任意の適切な病理状態に影響を与えるように使用することができる。一実施態様では、本発明の方法の標的細胞は癌細胞である。例えば、癌細胞は、乳癌細胞、直腸結腸癌細胞、肺癌細胞、乳頭癌細胞(例えば甲状腺)、大腸癌細胞、膵癌細胞、卵巣癌細胞、子宮頸癌細胞、中枢神経系癌細胞、骨原性肉腫細胞、腎癌細胞、肝臓癌細胞、膀胱癌細胞、aprostate癌細胞、胃癌細胞、頭部及び頸部の扁平上皮癌細胞、リンパ腫細胞、黒色腫細胞、及び白血病細胞からなる群から選択することができる。一実施態様では、本発明の方法の標的細胞は、過剰増殖性及び/又は過形成細胞である。一実施態様では、本発明の方法の標的細胞は形成異常細胞である。さらなる他の実施態様では、本発明の方法の標的細胞は転移細胞である。
【0031】
本発明の方法は、付加的な処置工程をさらに含む。例えば一実施態様では、方法は、放射線処置及び/又は化学療法剤に、標的細胞及び/又は組織(例えば癌細胞)を暴露させる工程をさらに含む。
【0032】
ここで記載したように、c-met活性化は重要な生物学的プロセスであり、その調節不全により、多数の病態に至る。従って、本発明の方法の一実施態様では、標的細胞(例えば癌細胞)とは、同じ組織起源の正常な細胞と比較して、c-metの活性度が高められているものである。一実施態様では、本発明の方法は、標的細胞に死をもたらす。例えば、本発明のアゴニストと接触すると、結果としてc-met経路を介したシグナル伝達に対して細胞不能になり、結果として細胞死又は細胞増殖の阻害がなされる。
【0033】
c-met活性化(ひいてはシグナル伝達)の調節不全は、例えばHGF(c-metの同族リガンド)及び/又はc-metそれ自身の過剰発現を含む、いくつかの細胞変化に起因する。従って、いくつかの実施態様では、本発明の方法は、細胞をターゲティングすることを含み、ここで、c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方は、同じ組織起源の正常な細胞と比較して、前記細胞(例えば癌細胞)によって、より豊富に発現している。c-met発現細胞は、オートクリン又はパラクリン方式等において、種々の供給源からのHGFにより調節することができる。例えば、本発明の方法の一実施態様では、標的細胞は、種々の細胞内部で及び/又は細胞により発現した肝細胞増殖因子に接触/結合している(例えばパラクリン作用を介する)。前記種々の細胞は、標的細胞に対して同一又は異なる組織起源のものであってよい。一実施態様では、標的細胞は、標的細胞それ自身により発現したHGFに接触/結合している(例えばオートクリン作用/ループを介する)。さらにc-met活性化及び/又はシグナル伝達は、リガンドと無関係に生じ得る。よって、本発明の方法の一実施態様では、標的細胞におけるc-met活性化は、リガンドと無関係に生じる。
【0034】
(発明の実施形態)
本発明は、HGF/c-metシグナル伝達軸の調節不全に関連した病態を処置及び/又は防止するための、該軸に干渉する方法を提供する。本発明は、リガンド結合及び/又はc-metレセプター二量体化(ひいてはc-met活性化)に必要であり、ここで示されたc-met内部におけるサブドメイン/サブ配列の解明の少なくとも一部に基づく。さらに本発明は、本発明の方法に有用な組成物、キット及び製造品を提供する。
これらの方法、組成物、キット及び製造品の詳細を、ここで提供する。
【0035】
(一般的技術)
本発明の実施では、別段の記載がない限り、当業者の技量の範囲に入る分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学での一般的な技術が使用される。このような技術は、文献、例えば 「分子クローニング:研究室用マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第2版、(Sambrookら, 1989); 「オリゴヌクレオチドの合成(Oligonucleotide Synthesis)」 (M. J. Gait編, 1984); 「動物細胞培養(Animal Cell Culture)」 (R. I. Freshney編, 1987); 「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」(Academic Press, Inc.); 「分子生物学における現代のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」 (F. M. Ausubelら編, 1987、定期的に更新);「PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR: The Polymerase Chain Reaction)」(Mullisら編, 1994); 「分子クローニングの解説書(A Practical Guide to Molecular Cloning)」(Perbal Bernard V., 1988)において十分に説明されている。
【0036】
(定義)
ペプチド(例えば、VDWVCFRDLGCDWEL、LDAQT、LTEKRKKRS、KPDSAEPM、NVRCLQHF)又はポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、特定のペプチド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN−2プログラム用の完全なソースコードが以下の表Aに与えられている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって作成され、表Aに示したソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, Californiaを通して公的に入手可能であり、また表Aに与えたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0037】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは、A及びBのプログラムアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと一致しない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは一致しないと評価されるであろう。
特に断らない限りは、ここで使用されるの全ての%アミノ酸配列同一性値は、直前のパラグラフに記載したように、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。


























【0038】
ここで使用される場合、「ベクター」なる用語は、それが結合している他の核酸を輸送可能な核酸分子を称することを意図している。ベクターの一タイプは、付加的なDNAセグメントが結合していてもよい、環状の二重鎖DNAループと称される「プラスミド」である。他のタイプのベクターはファージベクターである。さらに他のタイプのベクターは、付加的なDNAセグメントがウイルスゲノムに結合していてもよいウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律増殖可能である(例えば、複製の細菌起源を有する細菌性ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞へ導入されると、宿主細胞のゲノムに結合可能で、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが操作的に結合している遺伝子の発現に指向可能である。ここでは、このようなベクターは「組換え発現ベクター」(又は単に、「組換えベクター」)と称される。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合プラスミドの形態をしている。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、最も一般的には、プラスミドがベクターの形態で使用される場合に、交換可能に使用され得る。
【0039】
ここで交換可能に使用される場合、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドポリマーを称し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。もし存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識と結合することによりさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ」、類似体による自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電性結合(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダーゼ、カルバマート等)及び荷電性結合(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、介入物を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された結合を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖類に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる結合を調製するために活性化されてもよく、もしくは固体状又は半固体状支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャッピング基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシル類は標準的な保護基に誘導されてもよい。さらにポリヌクレオチドは当該技術で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ-又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び脱塩基性ヌクレオチド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル結合は代替の結合基で置き換えてもよい。これらの代替の結合基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR.sub.2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH.sub.2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのRまたはR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての架橋が同一である必要はない。先の記述において、RNA及びDNAを含む、ここで引用された全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0040】
ここで使用される場合、「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの合成のポリヌクレオチドを称する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
【0041】
ここで使用される場合、「肝細胞増殖因子」又は「HGF」なる用語は、特に又は文脈的にさらなる指摘がないならば、このようなプロセスが生じる条件下、HGF/c-metシグナル伝達経路を活性化可能な、任意の天然又は変異(天然/自然に生じた又は合成)HGFポリペプチドを称する。
【0042】
「抗体」及び「免疫グロブリン」は、広義において相互交換可能に使用され、モノクローナル抗体(例えば、全長又は無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、所望の生物活性を示す限り二重特異性抗体)、及び抗体断片が含まれる。抗体は、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟したものであってよい。
【0043】
「抗体断片」は無傷抗体の一部のみを含み、該一部は、無傷抗体に存在する場合に、その一部に通常関連している機能の少なくとも一部、好ましくはほとんど又は全ての機能を保持している。一実施態様では、抗体断片は、無傷抗体の抗原結合部位を含み、よって抗原に結合する能力を保持している。他の実施態様では、抗体断片、例えばFc領域を含むものは、特にFcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能及び補体結合等、無傷抗体に存在する場合に、Fc領域に通常関連している少なくとも一の生物学的機能を保持している。
【0044】
ここで使用される場合、「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物活性を示す限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。
【0045】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分においてヒト化抗体は、レシピエントの高度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、全てあるいはほとんど全ての高度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。更なる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Reichmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。また、次の総論及びここで引用された参考文献:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)も参照のこと。
【0046】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここにおいて開示されたヒト抗体を作製するいずれかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。
【0047】
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較し、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、抗体の一又は複数のCDRにおける一又は複数の変化を伴うものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該分野において知られる手順によって生産される。Marksら. Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメイン混合による親和性成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier 等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0048】
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、その標的(例えばc-met)の一又は複数の生物学的活性を部分的又は完全にブロック、阻害、又は中和する任意の分子を含む。例えば、「ブロッキング」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害又は低減させるものである。
【0049】
「疾患」は、本発明の物質/分子又は方法で処置されることで恩恵を受ける任意の病状のことである。これには、問題の疾患に哺乳動物を罹患させた慢性及び急性の疾患が含まれる。ここで処置される疾患の非限定的例には、良性及び悪性の腫瘍;非白血病及びリンパ性悪性疾患;ニューロン、グリア、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質及び胞胚腔の疾患;及び炎症、免疫学的及び他の血管新生に関連した疾患を含む。
【0050】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長/増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌(squamous cell cancer)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌、並びに様々なタイプの頭部及び頸部の癌が含まれる。
【0051】
ここで「自己免疫疾病」とは、個々の所有する組織から生じる、またこれを指向する、非悪性の疾病又は疾患のことである。ここで自己免疫疾病では、悪性又は癌性の疾病又は状態、特にB細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病及び慢性骨髄芽球性白血病を除く。自己免疫疾病又は疾患の例には、限定されるものではないが、炎症反応、例えば乾癬及び皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚病;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)に関連した反応;呼吸困難症候群(成人性呼吸困難症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギーによる病状、例えば湿疹及び喘息及びT細胞の浸潤に関連した他の病状及び慢性炎症反応;アテローム性動脈硬化症;白血球付着欠損症;リウマチ様関節炎;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病(例えば、I型真性糖尿病又はインシュリン依存性真性糖尿病);多発性硬化症;レノー症候群;自己免疫甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン(Sjorgen)症候群;若年発症糖尿病;及び結核に典型的に見出されるTリンパ球及びサイトカインにより媒介される急性及び遅延高血圧に関連した免疫反応、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽種症及び血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出に関連した疾病;中枢神経系(CNS)炎症疾病;多臓器傷害症候群;溶血性貧血(限定するものではないが、クリオグロブリン血症又はクームズポジティブ貧血を含む);重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾病;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;クレーブス病;ランベルト-イートン筋無力症症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;全身硬直症候群;ベーチット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少病等が含まれる。
【0052】
ここで使用される場合、「処置」とは、処置される個人又は細胞の自然経過を変化させる試みにおける臨床的介入を称し、予防のため、又は臨床病理経過中に実施することができる。処置に所望する効果には、発症又は再発の予防、症状の緩和、疾病の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、転移の防止、疾病の進行速度の低減、病状の回復又は緩和、及び緩解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様では、本発明のアンタゴニストは疾病又は疾患の発症を遅延化させるために使用される。
【0053】
「有効量」とは、所望する治療的又は予防的結果を達成するのに必要な期間、用量で有効な量を称する。本発明のアンタゴニストの「治療的有効量」は、病状、年齢、性別、個人の体重、及び個人に所望する反応を引き出すためのアンタゴニストの能力等の要因に応じて変わり得る。また、治療的有効量とは、アンタゴニストの任意の毒性又は有害な影響を、治療的に有益な効果が上回る量である。「予防的有効量」は、所望する予防的結果を達成するのに必要な期間、用量で有効な量を称する。必然ではないが、典型的には、予防的用量は、疾病の前又は初期の段階に患者に使用されるために、予防的有効量は治療的有効量よりも少ない。
【0054】
(ベクター構築)
ここで記載されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望するポリヌクレオチド配列は、適切な源細胞から単離され、配列決定されてよい。抗体用の源細胞には、ハイブリドーマ細胞等の抗体生産細胞が含まれる。また、ポリヌクレオチドはヌクレオチドシンセサイザー又はPCR技術を使用して合成することができる。得られたら、ポリペプチドをコードする配列を、宿主細胞において異種ポリヌクレオチドを複製し発現できる組換えベクターに挿入する。当該技術で入手可能な公知の多くのベクターを、本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主としてベクター、特にベクターで形質転換される宿主細胞に挿入される核酸の大きさに依存する。それぞれのベクターは、それが存在する特定の宿主細胞との適合性及び機能(異種ポリヌクレオチドの増幅又は発現、又は双方)に応じて、種々の成分を含有する。ベクター成分には、限定されるものではないが、一般的に複製起源(特に、ベクターが原核細胞に挿入される場合)、選択マーカー遺伝子、プロモータ、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入物及び転写終結配列が含まれる。
【0055】
一般的に、宿主細胞と適合性のある種から誘導されたレプリコン及び制御配列を含むプラスミドベクターは、これらの宿主に関連して使用される。通常、ベクターは、複製部位、並びに形質転換した細胞に表現型選択を付与可能なマーキング配列を担持している。例えば、大腸菌は、典型的にはpBR322、大腸菌種から誘導されたプラスミドを使用して形質転換される。pBR322はアンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含み、よって形質転換された細胞を同定するための、容易な手段が付与される。また、pBR322、その誘導体、又は他の細菌性プラスミド又はバクテリオファージも、内在性タンパク質の発現のため、微生物体により使用可能なプロモータを含有、又は含有するように修飾される。
【0056】
さらに、宿主微生物と適合性のあるレプリコン及び制御配列を含むファージベクターは、これらの宿主に関連した形質転換ベクターとして使用することができる。例えばバクテリオファージ、特にλGEM.TM.-11は、大腸菌LE392等の感受性宿主細胞を形質転換するために使用可能な組換えベクターを作製するのに利用され得る。
【0057】
構成又は誘導プロモータのいずれかは、特定の状況での必要性に従い、本発明で使用可能であり、当業者により確認可能である。種々の潜在的宿主細胞により認識される多数のプロモータがよく知られている。選択されたプロモータは、制限酵素消化を介して、ソースDNAからプロモータを除去し、選択されたベクターに単離されたプロモータ配列を挿入することにより、ここで記載されたポリペプチドをコードするシストロンDNAに、作用可能に連結することができる。未変性のプロモータ配列及び多くの異種プロモータの双方とも、標的遺伝子の直接増幅及び/又は発現に使用され得る。しかしながら、一般的に、未変性の標的ポリペプチドプロモータと比較して、より多くの転写がなされ、発現した標的遺伝子の収率が高いために、異種プロモータが好ましいとされる。
【0058】
原核宿主を用いた使用に適したプロモータには、PhoAプロモータ、β-ガラクタマーゼ(galactamase)及びラクトースプロモータシステム、トリプトファン(trp)プロモータシステム、及びハイブリッドプロモータ、例えばtac又はtrcプロモータが含まれる。しかしながら、細菌において機能的な他のプロモータ(例えば他の公知の細菌又はファージプロモータ)も適切である。それらのヌクレオチド配列は公開されており、よって当業者であれば、リンカー又はアダプターを使用し、標的となる軽及び重鎖をコードするシストロンにそれらを作用可能な連結させ(Siebenlistら (1980) Cell 20: 269)、任意の必要な制限部位を供給することができる。
【0059】
一実施態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を通って発現したポリペプチドの転位を指示する、分泌シグナル配列成分を含有する。一般的に、シグナル配列はベクターの成分であってよく、もしくはベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞により認識され、プロセシング(すなわち、シグナルペプチターゼにより切断)されたものであるべきである。異種ポリペプチド原産のシグナル配列を認識及びプロセシングしない原核宿主細胞にとって、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核細胞シグナル配列により置き換えられる。
【0060】
ポリペプチドの発現に適した原核宿主細胞には、古細菌及び真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性菌が含まれる。有用な菌の例には、大腸菌類(例えば大腸菌)、桿菌(例えば枯草菌)、腸内細菌、シュードモナス属(例えば緑膿菌)、ネズミチフス菌、セラチア・マルセッセンス、クレブシエラ、プロテウス、赤痢菌、根粒菌、Vitreoscilla、又は脱窒細菌が含まれる。好ましくは、グラム陰性菌が使用される。好ましくは、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌し、付加的なプロテアーゼインヒビターが細胞培養に導入されることが望ましい。
【0061】
(ポリペプチド生成)
宿主細胞は、上述した発現ベクターを用いて形質転換又は形質移入され、プロモータの誘発、形質転換体の選択、又は所望する配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に変性された従来からの栄養培地で培養される。
形質移入とは、任意のコード化配列が実際に発現していてもいなくても、宿主細胞により発現ベクターが取り込まれることを意味する。多くの形質移入法、例えばCaPO沈降及び電気穿孔等が、当業者に公知である。成功した形質移入とは、一般的に、このベクター操作による任意の徴候が宿主細胞内に生じた場合であると認識される。
【0062】
形質転換とは、DNAが、染色体外エレメントとして又は染色体組込体により複製可能なように、原核宿主にDNAを導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、このような細胞に適した標準的な技術を用いてなされる。塩化カルシウムを使用したカルシウム処理は、実質的な細胞壁バリアを含む細菌性細胞に一般的に使用される。形質転換のための他の方法では、ポリエチレングリコール/DMSOが使用される。さらに使用される他の技術は電気穿孔である。
【0063】
原核宿主細胞は、選択された宿主細胞の培養に適した、当該技術で公知の任意の培地で成長させることができる。適切な培地の例は、必要な栄養素サプリメントがプラスされたルリアブロス(LB)を含む。また培地は、発現ベクターを含む原核細胞の成長を選択的に可能にする、発現ベクターの構造に基づき選択される、選択剤を含む。例えば、アンピシリンはアンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞を成長させるための培地に添加される。
【0064】
炭素、窒素、及び無機ホスファート源の他の任意の必要なサプリメントも、単独で、又は他のサプリメント又は培地、例えば複合窒素源との混合物として導入され、適切な濃度で含まれる。通常、培養培地は、グルタチオン、システイン、システアミン、チオグリコラート、ジチオエリトリトール及びジチオスレイトールからなる群から選択される、一又は複数の還元剤を含んでいてよい。
【0065】
原核宿主細胞は適温で培養される。大腸菌の成長においては、例えば好ましい温度は約20℃〜約39℃、より好ましくは約25℃〜約37℃の範囲、さらに好ましくは約30℃である。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、約5〜約9の範囲の任意のpHであってよい。大腸菌にとっては、pHは、好ましくは約6.8〜約7.4、より好ましくは約7.0である。
【0066】
誘導プロモータが発現ベクターに使用されるならば、タンパク質の発現はプロモータの活性化に適した条件下で誘導される。例えば、PhoAプロモータが転写のコントロールに使用されるならば、形質転換された宿主細胞は、誘導のためのホスファート制限培地で培養されてよい。多様な他の誘導因子は、当該技術で公知のようにして、使用されるベクター作成物に応じて使用されてよい。
【0067】
微生物中で発現するポリペプチドが宿主細胞の周辺質に分泌され、そこから回収され得る。タンパク質の回収は、一般的に浸透圧衝撃、超音波処理又は溶解等の手段による、微生物の破壊を典型的に含む。細胞が破壊されると、細胞片又は全細胞が、遠心分離又は濾過により除去され得る。さらにタンパク質は、例えば親和性樹脂クロマトグラフィーにより精製されてよい。また、タンパク質は培養培地に運ばれ、そこから単離することもできる。細胞を培養物から除去し、培養上清を濾過し、生成したタンパク質のさらなる精製のために濃縮してもよい。発現したポリペプチドはさらに単離され、一般的に公知の方法、例えば免疫親和性又はイオン交換カラムにおける分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEにおけるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を使用するゲル濾過;疎水性親和樹脂、マトリックスに固定化された適切な抗原を使用するリガンド親和性、及びウエストブロットアッセイを使用して同定することができる。
原核宿主細胞の他に、真核宿主細胞システムも、当該技術で十分に確立されている。例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと。適切な宿主には、哺乳動物株化細胞、例えばCHO、昆虫細胞、例えば以下に記載するものが含まれる。
【0068】
(ポリペプチドの精製)
生成されたポリペプチドは、さらなるアッセイ及び使用のために、実質的に均一な調製物を得るため、精製されてもよい。当該技術で公知の標準的なタンパク質精製法を使用することができる。次の手順が、適切な精製手順の例:免疫親和性又はイオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEにおけるクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を使用するゲル濾過である。
【0069】
(本発明の方法)
本発明は、HGF/c-metシグナル伝達経路の活性化にとって重要な、c-met内部のドメインの同定に基づいた種々の方法を提供する。ここでは、このようなドメインを用いた干渉により、HGF/c-met活性が調節されることを示している。
【0070】
種々の物質又は分子(ペプチド/ポリペプチド、抗体等を含む)は、治療剤として使用され得る。これらの物質又は分子は、製薬的に有用な組成物を調製するために公知の方法に従い調製することができ、よって、この文書での製品は、製薬的に許容可能な担体ビヒクルとの混合物に組み合わせられている。治療用調製物は、凍結乾燥された調製物又は水溶液の形態で、場合によっては生理学的に許容可能な担体、割形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A. Ed. (1980))と、所望の純度を有する活性成分とを混合することにより、保管用として調製される。許容可能な担体、割形剤又は安定剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに無毒であり、バッファー、例えばホスファート、シタラート及び他の有機酸、アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭化水素;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーン(TWEEN)TM、プルロニクス(PLURONICS)TM又はPEGを含む。
【0071】
インビボ投与に使用される調製物は滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌濾過膜を通す濾過により容易に達成される。
ここで、治療用組成物は一般に、無菌のアクセスポートを具備する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを持つ静脈内溶液バッグ又はバイアル内に配される。
投与経路は周知の方法、例えば、静脈内、腹膜内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病巣内経路での注射又は注入、局所投与、又は徐放系による。
【0072】
本発明の製薬用組成物の用量及び望ましい薬物濃度は、考慮される特定の用途に応じて変化する。適切な用量又は投与経路の決定は、通常の医師の技量の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効量の決定についての信頼できるガイダンスを提供する。有効量の種間スケーリングは、Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi等, 編, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96のMordenti, J. 及びChappell, W.「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」に記載された原理に従って実施できる。
【0073】
本発明のアンタゴニストのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日で変化する。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4,657,760号、同5,206,344号、又は同5,225,212号参照。異なる調製物が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又な組織を標的とする投与には他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することは必要であることが予想される。
【0074】
物質又は分子の投与を必要とする任意の疾病又は疾患の治療に適した放出特性を持つ調製物で、物質又は分子の持続放出が望まれる場合、物質又は分子のマイクロカプセル化が考えられる。持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN-)、インターロイキン-2、及びMNrgp120で成功裏に実施されている。Johnson等, Nat. Med., 2: 795-799 (1996); Yasuda, Biomed. Ther., 27: 1221-1223 (1993); Hora等, Bio/Technology, 8: 755-758 (1990); Cleland, 「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems」Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell 及び Newman編, (Plenum Press: New York, 1995), p. 439-462; 国際公開第97/03692号, 国際公開第96/40072号, 国際公開第96/07399号; 及び米国特許第5,564,010号。
【0075】
これらのタンパク質の持続放出調製物は、ポリ-乳酸-コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用い、その生体適合性及び広範囲の生分解特性に基づいて開発された。PLGAの分解生成物である乳酸及びグリコール酸は、ヒト身体内で即座にクリアされる。さらに、このポリマーの分解性は、分子量及び組成に応じて数ヶ月から数年まで調節できる。Lewis, 「Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer」: M. Chasin及び R. Langer (編), Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp.1-41。
【0076】
この発明は、c-met Semaドメイン機能(例えば、c-met二量体化、リガンド結合)への干渉を介して、HGF/c-metシグナル伝達を阻害するものを同定するための化合物のスクリーニング方法も包含する。スクリーニングアッセイは、c-met Sema配列と結合又は複合体形成する、そうでなければ他の細胞性タンパク質とc-met Semaドメインとの相互作用を干渉する化合物を同定するために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、それらを特に候補薬(例えば、ペプチド/ポリペプチド、小分子、抗体等)の同定に適したものにする、化学的/化合物ライブラリの高スループットスクリーニングに適用可能なアッセイを含む。
このアッセイは、タンパク質-タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、及び細胞ベースのアッセイで、この分野でよく特徴付けられているものを含む種々の方式で実施することができる。
アンタゴニストについての全てのアッセイは、c-met(Semaドメイン)とその結合パートナーとが相互作用するのに十分な条件及び時間で、候補薬とc-met Semaドメインとを接触させることを必要とすることにおいて共通する。
【0077】
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出することができる。特定の実施態様では、候補物質又は分子が、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面を物質/分子の溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化される物質/分子に特異的な固定化親和性分子、例えばモノクローナル抗体等の抗体を、固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
【0078】
候補化合物が相互作用するが、c-met Semaドメインに結合しない場合、そのドメインとの相互作用は、タンパク質-タンパク質相互作用を検出するために良く知られた方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。さらに、タンパク質-タンパク質相互作用は、Fields及び共同研究者等(Fields及びSong, Nature(London) 340, 245-246 (1989); Chien等, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578-9582 (1991))に記載された酵母菌ベースの遺伝子系を用いることにより、Chevray及びNathans, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 89, 5789-5793 (1991)に開示されているようにして監視することができる。酵母菌GAL4等の多くの転写活性化剤は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。以前の文献に記載された酵母菌発現系(一般に「2-ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、2つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2-ハイブリッド技術を用いた2つの特定のタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKERTM)は、Clontechから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこの相互作用に係るアミノ酸残基の特定にも拡張することができる。
【0079】
c-met Semaドメインとそのパートナーとの相互作用に干渉する化合物は、次のように試験できる:通常、2つの生成物が相互作用及び結合する条件下及び時間、反応混合物は、c-met Sema配列又はその一部とその結合パートナー(例えばSemaを含有する他のポリペプチド、特にc-metの細胞外ドメイン)を含むように調製される。候補化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物の不存在及び存在下で実施される。さらに、プラシーボを第3の反応混合物に添加して正のコントロールを提供してもよい。混合物中に存在する試験化合物とc-met Sema配列との結合(複合体形成)は上記のように監視される。試験化合物を含有する反応混合物ではなく対照反応における複合体の形成は、試験化合物がc-met Semaドメインとその結合パートナーとの相互作用に干渉することを示す。
【0080】
インヒビター(例えばアンタゴニスト)をアッセイするために、細胞発現c-metを、c-met Semaドメインの機能に関連した特定の活性についてスクリーニングするため、化合物と接触させ、活性を阻害する化合物の能力により、該化合物がSemaドメイン(又はそのサブドメイン)に対するアンタゴニストであることを示すことができ、その特性は、c-met Semaドメインと特異的に結合又は相互作用するが、関連のない分子とはそうはならない能力を測定することによりさらに確認される。
【0081】
潜在的なアンタゴニストの他の特定の例には、c-met Semaドメインに結合するオリゴヌクレオチド(アプタマーであってよい)、特に限定されるものではないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、単鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びこれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形態、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体が含まれる。あるいは、潜在的アンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えば、野生型c-metの作用を競合的に阻害するc-met Semaドメインの変異形態であってもよい。
【0082】
潜在的アンタゴニストには、c-met Semaドメイン及び/又はその結合バートナーにおけるc-met Semaの結合部位に結合し、それによりc-met Semaドメインの正常な生物学的活性を阻止する小分子が含まれる。小分子の例には、これらに限定されないが、小型ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成非ペプチジル有機又は無機化合物が含まれる。これらの小分子は、上述にて論議したスクリーニングアッセイの任意の一つ、及び/又は当業者によく知られている任意の他のスクリーニング技術により同定することができる。
【0083】
ここで記載したように、本発明のアンタゴニストはペプチド又はポリペプチドとすることができる。このようなペプチド又はポリペプチドを得るための方法は、当該技術でよく知られており、適切な標的抗原に対するバインダーにて、ペプチド又はポリペプチドライブラリーをスクリーニングすることが含まれる。一実施態様では、適切な標的抗原はc-met Semaドメインの少なくとも一部を含む。ペプチド及びポリペプチドのライブラリーは当該技術でよく知られており、当該技術の方法に従い調製することができる。例えば、Clarkら, 米国特許第6,121,416号;Bassら, 米国特許第5,688,666号を参照のこと。ファージコートタンパク質等の、異種タンパク質成分に融合するペプチド又はポリペプチドのライブラリは、例えばClarkら, Bassら, 上掲に記載されているように、当該技術でよく知られている。一実施態様では、c-met Semaドメイン機能をブロックする能力を有するペプチドは、アミノ酸配列LDAQT(配列番号:1)、LTEKRKKRS(配列番号:2)、KPDSAEPM(配列番号:3)及び/又はNVRCLQHF(配列番号:4)、又はその変異体を含む。一実施態様では、c-met Semaドメイン機能をブロックする能力を有するポリペプチドは、c-met Semaドメインの全て又は実質的全てを含む。第1のペプチド又はポリペプチドのバインダーの変異体は、関心ある特徴(例えば、標的結合親和性の向上、薬物動態の向上、毒性の低減、治療指標の改善等)を得るために、ペプチド又はポリペプチドの変異体をスクリーニングすることにより生じせしめることができる。変異誘発技術は当該技術でよく知られている。さらに、スキャニング変異誘発技術(例えばアラニンスキャニングをベースにしたもの)は、ペプチド又はポリペプチド内の個々のアミノ酸残基の構造的及び/又は機能的重要性を評価するのに、特に有用である。
【0084】
本発明の候補物質/分子の、HGF/c-metシグナル伝達及び/又は該シグナル伝達に関連した生物活性を調節する能力の測定は、例えばOkigakiら, Biochemistry (1992), 31:9555-9561;Matsumotoら, J. Biol. Chem.(1998), 273:22913-22920;Dateら, FEBS Let.(1997),420:1-6; Lokkerら, EMBO J. (1992), 11:2503-2510;Hartmanら, Proc. Natl. Acad. Sci USA (1992),89:11574-11578に記載されているように、当該技術で十分に確立されている、インビトロ又はインビボアッセイにおける、物質/分子の調節能力をテストすることにより実施可能である。
【0085】
(抗体)
本発明は、例えばc-met二量体化及び/又はc-metへのリガンドの結合等、c-met活性化に必要な一又は複数のプロセスに干渉する抗体の使用を含む方法を提供する。例示的な抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ結合抗体が含まれる。
【0086】
1.ポリクローナル抗体
本発明の抗体はポリクローナル抗体を含んでよい。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、c-met Semaドメイン(又はその一部)又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に結合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例には、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0087】
2.モノクローナル抗体
あるいは、本発明の抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的にはc-met Semaドメイン(又はその一部)又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培養培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0088】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も記載されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
【0089】
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、c-met Semaドメインに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイできる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定される。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0090】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培養培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640培地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製され得る。
【0091】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明の抗体を発現するハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[米国特許第4,816,567号;上掲のMorrison等]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
【0092】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
抗体は、適切な/所望する親和性を有して結合する抗体又は抗体断片のファージディスプレイライブラリをスクリーニングすることにより生成することができる。このような技術は、例えば米国特許第5,750,373号;同5,780,279号;同5,821,047号;同6,040,136号;同5,427,908号;同5,580,717号、及びここでの参照に記載されているように、当該技術においてはよく知られている。
【0093】
3.ヒト及びヒト化抗体
本発明の抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含み得る。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0094】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に、Winter及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0095】
また、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる(Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同5,545,806号;同5,569,825号;同5,625,126号;同5,633,425号;同5,661,016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonberg等, Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwild等, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996); Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
抗体は、上述した公知の選択及び変異誘発法を使用して親和成熟させてよい。好ましい親和成熟抗体は、成熟抗体が調製される出発抗体(一般的に、マウス、ヒト化又はヒト)の5倍、より好ましくは10倍、さらに好ましくは20又は30倍の親和性を有する。
【0096】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本ケースにおいて、結合特異性の一方はc-met Semaドメインに対してであり、他方は任意の他の抗原に対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際公開第93/08829号、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3659 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一の融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0097】
国際公開第96/27011号に記載された他の方法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収される異種二量体の割合を最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインの少なくとも一対のCH3領域を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの代償的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81(1985) は無傷の抗体をタンパク分解的に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
大腸菌からFab'断片を直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学結合を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
【0098】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供する。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
例示的な二重特異性抗体は、単一のc-met Semaドメインの2つの異なるエピトープ、又はc-met Semaドメインのエピトープと他のポリペプチドのエピトープに結合していてもよい。
【0099】
5.ヘテロ結合抗体
ヘテロ結合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ結合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[国際公開第91/00360号; 国際公開第 92/200373号; 欧州特許第03089号]に提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオラート及びメチル-4-メルカプトブチリミダート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
【0100】
6.エフェクター機能の加工
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば癌治療における抗体の有効性を向上させるのが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成させるようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、改善された内部移行能力及び/又は増加した相補鎖媒介細胞殺傷及び抗体-依存性細胞障害性(ADCC)を有しうる。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体はまた、Wolff等, Cancer research 53: 2560-2565 (1993)に記載されたような異種二官能性架橋を用いても調製しうる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより相補鎖溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
【0101】
7.免疫結合体
本発明はまた、化学治療剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞障害剤、あるいは放射性同位体(即ち、放射性結合)に結合された抗体を含む免疫結合体にも関する。
このような免疫結合体の生成に有用な化学治療剤は上記している。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)を含む。様々な放射性ヌクレオチドが放射性結合抗体の生成に利用可能である。例として、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reを含む。抗体及び細胞障害剤の結合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミダートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベラート等)、アルデヒド類(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアナート(トリエン2,6-ジイソシアナート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への結合のためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号参照。
他の実施態様では、腫瘍の予備標的化で使用するために、抗体は「レセプター」(ストレプトアビジン等)に結合されてもよく、抗体-レセプター結合体は患者に投与され、次いで清澄化剤を用いて未結合結合体を循環から除去し、次に細胞障害剤(例えば、放射性ヌクレオチド等)に結合した「リガンド」(アビジン等)を投与する。
【0102】
8.免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4,485,045号及び同4,544,545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームは、所定の孔サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに結合され得る。化学治療剤(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19):1484 (1989)参照。
【0103】
9.抗体の製薬用組成物
ここで開示されるスクリーニングアッセイにより同定された抗体並びに他の分子は、種々の疾病の治療のために、製薬用組成物の形態で投与することができる。
全抗体がインヒビターとして用いられる場合、内在化抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームも、所望される細胞に、本発明の物質/分子を送達するのに使用できる。抗体断片が用いられる場合、最小阻害断片を使用することが有利である。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、c-met Semaドメインに結合し、及び/又はc-met Semaドメインとその結合パートナーとの相互作用に干渉する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、及び/又は組換えDNA技術によって生成できる。例えば、Marasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7889-7893 (1993)参照。ここでの調製物は、治療される特定の徴候に必要な場合に1以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、その機能を増強させる薬剤、例えば細胞障害剤、サイトカイン、化学治療剤又は成長阻害剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は上掲のRemington's Pharmaceutical Scienceに開示されている。
【0104】
インビボ投与に使用される調製物は無菌でなけらばならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
持続放出調製物を調製してもよい。持続放出調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能なマイクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物活性の喪失及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S−S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の使用、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0105】
(製造品)
本発明の他の態様では、上述の疾病の処置、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。製造品は容器と該容器上又はそれに付随したラベル又はパッケージ挿入物を含んでなる。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成されてもよい。容器は、組成物それ自体、又は症状を処置、予防及び/又は診断するのに有効な他の組成物と組み合わせて該組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも一の活性剤は本発明のアンタゴニストである。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌のような選択した症状の処置のために使用されることを示している。さらに、製造品は(a)そこに本発明のアンタゴニストを含有する組成物を含む第一の容器と;(b)そこにさらなる細胞障害剤を含有する組成物含む第二の容器とを含み得る。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二組成物が、癌等の特定の病状を処置するのに使用可能であることを示すパッケージ挿入物を更に含みうる。あるいは、又は付加的に、製造品は、薬学的に許容可能なバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二(又は第三)の容器をさらに含んでもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
次は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上述した一般的に記載を与えたので、種々の他の実施態様も実施することができるものと理解される。
【実施例】
【0106】
材料及び方法
コンストラクト及び組換えタンパク質
c-metの細胞外サブドメイン欠失を、常套的なPCR法を使用して構築した。KpnI部位に隣接したSema、PSI、第1IPT、又は第4IPTドメインでKpnI部位に隣接されたものの出発点を有するN-末端プライマーを、StuI部位に隣接されたMet残基959まで、C-末端プライマーと対形成させた。テンプレートとしてc-Metを使用し、各クローンに対するPCR断片を、製造者の指示書に従い、Zero Blunt TOPO PCRクローニングキット(Invitrogen)を使用して、pCR-Blunt II-TOPOベクターに挿入した。クローンをDNA配列決定により確認した。ついで、KpnI及びEcoRVを介し、コンストラクトをpcDNA3.1 V5/Hisベクター(Invitrogen)においてサブクローンし、C-末端にタグを添加した。各クローンのN-末端にて、HindIII及びKpnI部位を介して、Metのシグナルペプチドを添加した。HindIII及びEcoRVを用いて各クローンを消化させ、HindIII及びPmeIを介して、pRK5TKneoベクターにてサブクローンした。EC-WT Flag及びEC-WT V5/Hisクローン用には、HindIII部位を有するN-末端プライマーを、StuI部位に隣接されたMet残基595まで、C-末端プライマーと対形成させた。HindIII/StuIを介し、EC-WT V5/HisをpcDNA3.1 V5/HisのHindIII/EcoRV部位においてサブクローンし、ついで、上述したようにして、pRK5TKneoにてサブクローンした。EC-WT Flag用には、PCR断片をpCR-Blunt II-TOPOベクターに連結させた。Flagタグ配列を有するオリゴヌクレオチドをStuIとKpnIの間に挿入した。ついで、HindIII及びEcoRV/ScaIを介し、EC-WT FlagをpRK5TKneoにおいてサブクローンした。組換えHGF及び抗-Met 5D5-Fabは、R. Schwall (Genentech)により提供された。scHGFを上述したようにして、哺乳動物細胞で産生させた(Peekら,2002)。
【0107】
組換えSema及びPSIドメインを得るため、PCRをMETレセプターの残基25-567をコードする領域に対して実施した。8xのHisタグ及びNotI部位をC-末端に添加し、N-末端をpAcGP67A(BD Biosciences)の昆虫細胞分泌シグナルのC-末端に直接融合させた。PCR生成物をSpeI及びNotIで消化させ、pAcGP67Aでサブクローン化した。精製されたプラスミドDNA(pAcGP67AプラスMET sema及びPSIドメイン)を、製造者のプロトコル(BD Biosciences)に従い、Sf9昆虫細胞に形質移入した。発現のために、5x10細胞/mLの濃度で、ESF921培地(Protein Expression、LLC)にて成長させた1LのHi5昆虫細胞を、27℃で72時間インキュベートさせた10mLのウイルス保存物に感染させた。ついで、3000g、15分の遠心分離により、上清から細胞を除去した。1mMのNiCl、5mMのCaCl、及び50mMのTris、pH 8.0を上清に添加した。上清を濾過し、重力流により、2mLのNi-NTAカラム(Qiagen)に添加し、20mLの洗浄用バッファー(50mMのTris、pH8.0、500mMのNaCl、5mMのイミダゾール)が続いた。50mMのTris 8.0、300mMのNaCl、250mMのイミダゾールを含有するバッファーを用い、タンパク質を溶出させた。組換えSemaドメイン単独を作成する試みでは、Sema3Aに対して事前に報告されているような(Antipenkoら,2003)タンパク質は産出しなかった。
【0108】
免疫沈降及びウエスタンブロット分析
株化細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から得た。293細胞を、10%のFBS(Sigma)、ペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO)、及びグルタミンが補足されたDMEMに保持させた。A549、H441、及びMDA-MB-435細胞を、10%のFBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びグルタミンが補足された50:50のDMEM/F12(Cellgro)に保持させた。製造者の指示書に従い、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、細胞を1-12μgの指示されたコンストラクトに感染させた。24時間後、完全プロテアーゼインヒビター混合錠剤とホスファターゼインヒビター混合物2(それぞれRoche及びSigma)を含有する1%のNP40溶解バッファーを用いて、細胞を収集した。Metチロシンのリン酸化及びMAPKのリン酸化の研究のために、0.5%のBSAを用い、細胞を2時間、血清不足にさせた。10μg/mlの抗-Met 5D5-Fab又はrSemaで処理した細胞を、溶解前にさらに1時間インキュベートした。細胞片を遠心分離し、上清をプロテインAセファロース(Sigme)又はプロテインG-プラスアガロースビーズ(Santa Cruz)を用いて1時間、事前浄化しておいた。ついで、500μgの溶菌液を回転させながら、4℃で一晩、10μgの5D5抗体(Genetech)又は35μlのMet(C-28)アガロース接合体(Santa Cruz)を用いて免疫沈降させた。HGF結合研究のために、500μgの溶菌液を5μgのscHGF又はHGFと共にインキュベートし、続いて1μgのV5抗体を用いて免疫沈降させた。免疫沈降物を1%のNP40溶解バッファーで3回洗浄するさらに2時間前、プロテインA又はGビーズを添加した。10mMのDTTと共に、2xのサンプルバッファーを添加した後、サンプルを4-12%のトリス-グリシンゲル(Invitrogen)に流した。タンパク質をニトロセルロース膜に移動させ、5%の脱脂乳又はBSAで1時間ブロックし、ついで振動させながら、4℃で一晩、1:5000のV5(Invitrogen)、1:10000のC-末端Met(C-12)(Santa Cruz)、1:1000のMAPK(Cell Signaling)、1:500のHGF-α(145)(Santa Cruz)、1:1000のP-MAPK(Cell Signaling)、1:1000のHis(Cell Signaling)、又は1:1000のホスホチロシン4G10(Uptake)抗体を用いて探索した。マウス又はウサギIgGに対する第2抗体を、1:5000希釈度で使用した(Amersham)。強化された化学発光(ECL-Plus、Amersham)により、タンパク質が検出された。
【0109】
共有親和性架橋分析
架橋研究を、修正を伴い過去に記載されたようにして実施した(Blechmanら, 1995)。0.5%のBSAを用い、A549、H441、MDA-MB-435及び293細胞を、2時間血清不足にさせた。培地を除去し、PBSと置き換えた。ついで製造者の指示書に従い、細胞を増加濃度の架橋剤スルホ-EGS(Pierce)で処理した。同様に、293細胞を6-ウェルプレートに置き、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用し、0.1-4μgの指示されたコンストラクトを形質移入した。24時間後、培地をPBSと置き換え、細胞をスルホ-EGSで架橋させた。ついで、プロテアーゼとホスファターゼインヒビターを伴う1%のNP40溶解バッファーを用いて、細胞を溶解させた。還元サンプルバッファー中、10μgの溶菌液を8%又は4-12%のトリス-グリシンゲルで即座に分析し、ニトロセルロース膜に移動させ、5%のミルクで1時間ブロックした。膜を振動させながら、4℃で一晩、1:1000のMetC-12(Santa Cruz)又は1:5000のV5抗体を用いて探索した。1:5000の第2抗体をインキュベートした後、タンパク質をECL-プラスで検出した。EC-WT-Flag及びEC-WT-V5/Hisコンストラクトを同時形質移入し、従来通りに架橋した。500μgの架橋した溶菌液を、V5又はFlag抗体を用いて免疫沈降させ、8%のトリス-グリシンゲルで分析し、ニトロセルロース膜に移動させ、1:5000のV5又は1:1000のFlag(Sigma)抗体のいずれかで免疫ブロットした。タンパク質をECL-プラスで検出した。
【0110】
掻爬アッセイ
H441細胞を、50:50のDMEM/F12に10%のFBSが入った96-ウェルプレートに、4.5x10細胞/ウェルの密度で播種した。次の日、過去に記載されているように各ウェルにおいて、集密的な単層にて掻爬を1回行った(Lorenzatoら, 2002)。ついで、細胞を、0.5%のBSAを含有する培地と共にインキュベートし、モック(偽)、10μg/mlの5D5、10μg/mlのSema、又は100ng/mlのHGFで処理した。掻爬体を監視し、毎日写真撮影した。代表的な結果が2日に示される。
【0111】
遊走アッセイ
トランスウェル(transwell)遊走アッセイを修正を伴う上述のようにして実施した(Coltellaら,2003)。MDA-MB-435細胞を、10μg/mlのIV型コラーゲン(Sigma)で予め被覆された各トランスウェル(Costar)の上部チャンバーに、0.5%のBSAを含有する培地に1.2x10細胞で播種した。モック、10μg/mlの抗-Met5D5-Fab、又は10μg/mlのSemaを上部チャンバーに添加した。さらに正のコントロールとして、100ng/mlのHGFをモック処理ウェルの下部チャンバーに添加した。次の日、細胞を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.5%のクリスタルバイオレットで染色した。下部チャンバーに遊走した細胞を10%の酢酸で可溶化させ、マイクロプレートリーダーで、560nmでの吸光度を測定した。
【0112】
結果
SemaドメインはMetレセプター架橋に必要
レセプターの二量体化及び活性化に対する、Metの細胞外ドメインによりなされる貢献度を測定するために、Metのサブドメイン欠失を図1に示すようにして作製した。各欠失変異体を、V5/Hisタグを担持するN-末端及びC-末端膜貫通領域にて、シグナルペプチド(S.P.)に隣接させた。スルホ-EGSを使用し、Met欠失変異体の架橋に対する能力を個々にテストした。増加濃度のスルホ-EGSで処理されたV5/Hisタグ欠失変異体の形質移入体を溶解させ、4-12%のSDS-PAGEで分析した。スルホ-EGSで処理されないサンプルにおいて、EC-WT-V5/Hisは、プロセスモノマー(EC-M、〜90kD)及び非プロセス(*、〜120kD)タンパク質として表れた。EC-WT架橋は、図2Aに示すように、下級(EC-M、〜90kD)から上級遊走性二量体(EC-D、〜180kD)へのシフトにより検出された。Semaドメインを欠失したMet変異体は同様のシフトを示さなかった。予期された非プロセスEC-WT(*)Metは、スルホ-EGSが細胞膜不浸透性であるために、架橋を示さなかったと記される。Metの細胞内単鎖前駆体は、それが細胞表面に存在する場合に、タンパク質分解的に決断される(Giordanoら,1989)。架橋し膜挿入されたプロセスMetレセプターの限界浸透性及び効果が調査されているため、スルホ-EGSは架橋剤として選択された。
【0113】
膜結合性細胞外Metがホモダイマーを形成する場合にアドレスするため、細胞をEC-WT-V5/His及びEC-WT-Flagで同時形質移入させ、スルホ-EGSで架橋した。細胞を溶解させ、V5抗体を用いて免疫沈降させ、8%のSDS-PAGEにて分析し、Flag又はV5抗体で免疫ブロットした。免疫ブロットがEC-WT-Flag及びEC-WT-V5/His(図2B)を含有する上級遊走形態(EC-D、〜180kD)を表示し、これはEC-WTの双方の形態が架橋し同時免疫沈降していることを示す。Flag抗体を使用した逆性免疫沈降も類似した結果を示した(図2B)。また残留した非架橋EC-WT Flag(EC-M)もV5免疫沈降で検出されたが、増加したスルホ-EGSの添加により上級遊走形態にシフトした(図2B)。まとめて、架橋研究により、細胞外膜結合性Metホモダイマーは、Semaドメインが存在する場合に形成されることが明らかとなった。
【0114】
HGF及びscHGF(R494E)はSemaドメインに結合
HGFは不活性な単鎖前駆体として分泌され、細胞外プロテアーゼによりα及びβ鎖に切断される(Nakaら, 1992) HGFの切断されたジスルフィド結合α及びβ鎖は、高親和性でMetレセプターに結合している(Bottaroら,1991;Naldiniら,1991)。Met欠失変異体のHGFに結合する能力についてテストした。細胞をEC-WT、△S、△P、△IPT、TMで形質移入するか、又はモックの形質移入をし、細胞溶解液をHGFと共にインキュベートした。V5抗体を用いた免疫沈降、続いて4-12%でのSDS-PAGE、及びα鎖-HGF抗体を用いた検出により、HGFがEC-WT単独に結合したことが示された(図3B)。HGFが残存しているMet欠失変異体に結合しなかったという観察によって、SemaドメインはHGF結合に必要であることが示される。
【0115】
R494E変異を含む単鎖HGF[scHGF(R494E)]は結合して、Metレセプターの活性化を阻害する(Lokkerら,1992)。また、scHGF(R494E)もMet細胞外ドメインに対する結合性について調査された。形質移入したMet欠失変異体を溶解させ、scHGF(R494E)と共にインキュベートし、上述したようにして分析した。scHGF(R494E)のみがEC-WTに結合し、Sema欠失変異体では結合しないことが、データに示された(図3C)。これらの観察から、同時免疫沈降実験で、HGFとscHGF(R494E)の双方が組換えEC-Met及びSemaドメインタンパク質に結合することが確認された(データを示さず)。よって、データは、MetのSemaドメインはHGF相互作用部位であるという観察に一致する(Gherardiら,2003)。さらにデータには、MetのSemaドメインが、さらに結合するscHGF(R494E)の相互作用部位であることも示されている。
【0116】
5D5モノクローナル抗体はMetのSemaドメインに結合
抗-Met5D5のFab断片(抗-Met5D-Fab)が、HGF/c-metシグナル伝達を阻害することが示されている。例えば、米国特許第5,686,292号;同 5,646,036号;同 6,207,152号及び同6,214,344号を参照のこと。Met欠失コンストラクトを、抗-Met5D5を用いた同時免疫沈降実験でテストした。先のようにして、細胞をMet欠失コンストラクトで形質移入するか、又はモックの形質移入をした。これらの細胞溶菌液を抗-Met5D5で免疫沈降させ、His抗体で免疫ブロットした。図3Eに示すように、Sema-含有EC-WTのみが抗-Met5D5に結合した。全ての形質移入タンパク質は溶菌液中に検出され(図3D)、内在性Metが抗-Met5D5により免疫沈降された(図3F)。よって、データには、抗-Met5D5がMetのSemaドメインに結合することが示されている。抗-Met5D5-Fabがアンタゴニストとして作用するため、次の機能研究におけるコントロールとして使用した。
【0117】
腫瘍株化細胞における内在性Metの架橋
データには、Semaドメインが2つの機能、すなわちHGF結合性及びレセプター二量体化に関連していることが示されているため、HGF結合への関与を排除し、二量体化におけるMet Semaドメインの役割を調査した。特に示さない限りは、全ての以下の研究は、HGFの不在下で実施した。293(胚腎臓)、H441(肺癌腺)、A549(肺癌)、及びMDA-MB-435(乳癌)株化細胞で発現したHGFレベルを、RT-PCR及びウエスタンブロット分析により測定した。MDA-MB-435及びH441細胞は、検出可能なHGF RNA又はタンパク質を有していなかったが、A549及び293細胞はHGF RNAを発現し、溶菌液及び馴化培地においては、検出可能なHGFタンパク質はほとんどなかった(データを示さず)。種々の腫瘍株化細胞において発現したMetが、HGFの不在下で架橋可能かどうかを測定するために、実験の継続時間中、0.5%のBSAを含有する血清フリーの培地に細胞を保持した。これらの株化細胞を、従来通りにスルホ-EGSで架橋させ、溶菌液を4-12%のSDS-PAGEにより分析し、続いてMet抗体を用いて免疫ブロットした。架橋試薬がない場合、Metは、EC-WTを用いた架橋研究で示されたように(図2A)、プロセス(Met-M)及び非プロセス(*)タンパク質として表れた。各株化細胞においては、0.1mMのスルホ-EGSでさえ、Met-Mから上級遊走形態(Met-D)へのシフトが観察された(図4)。架橋剤の濃度を増加させることにより、Met-MからMet D形態へのシフトが向上した。我々の以前の観察と一致して、細胞内の非プロセスMetは、スルホ-EGS処理時には架橋しなかった。これに対し、A549細胞を100ng/mlのHGFと共にインキュベートし、従来通りに架橋した。Metに対する免疫ブロットでは、HGFの不在下で見られるMet-Dと比較した場合、HGFの存在下ではより高度な遊走形態が明らかになった(図4)。データには、架橋したMet二量体がHGFの不在下で形成され、HGF結合のために、さらにシフトしたことが示されている。
【0118】
rSema及び抗-Met5D5-Fabを用いた腫瘍細胞におけるMetシグナル伝達の阻害
データには、SemaドメインがMet二量体化に必要であることが示されているため、MetレセプターのSema及びPSIドメインを含む、組換えSema(rSema)タンパク質(材料と方法の項を参照)が生じ、Metシグナル伝達における機能的結果を調査した。ヒト腫瘍細胞を増加濃度のrSemaで処理し、HGF刺激における、ミトゲン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の下流活性化及びMetチロシンリン酸化について分析した。A549細胞を血清不足にし、HGFの存在下、増加濃度のrSemaと共にインキュベートした。細胞溶菌液を収集し、C-末端Met抗体で免疫沈降させ、ホスホ-チロシン抗体で免疫ブロットした。Metリン酸化の低減は、HGF刺激単独と比較して、HGFの存在下、増加量のrSemaを用いて観察された(図5A及び5B)。同様に、MAPKのリン酸化は、リガンドの存在下、増加濃度のrSemaを用いた処理において減少した。H441及びMDA-MB-435株化細胞も、同様の方式において、rSema及びHGFで処理したところ、ホスホ-MAPKにおける用量依存性減少が観察された(図5A及び5B)。
【0119】
さらに、HGFの不在下におけるrSemaによるMet活性化の阻害も調査した。比較のため、Metレセプターアンタゴニストとして作用する抗-Met5D5-Fabを、機能研究に使用した。A549細胞を血清不足にし、抗-Met5D5-Fab又はrSemaで処理した。rSema又は抗-Met5D5-Fabを用いた処理は、モック処理をされたコントロールと比較して、リガンド非依存性のMetリン酸化及びホスホ-MAPKのレベルを阻害する原因となった(図5C及び5D)。同様に、H441及びMDA-MB-435株化細胞も、HGFの不在下、抗-Met5D5-Fab及びrSemaで処理し(図5C及び5D)たところ;MAPKリン酸化における減少は、A549細胞で以前に観察されたのと類似した傾向であった。これらの結果から、rSemaはリガンド依存性及び非依存性のMetリン酸化を阻害するばかりでなく、下流MAPKシグナル伝達にも影響を及ぼすことが示唆された。
【0120】
また、Met欠失変異体の、内在性Metシグナル形質導入を減弱させる能力についても調査した。細胞を、Met欠失変異体で形質移入し(図5E);溶菌液をC-末端Met抗体で免疫沈降させ、ホスホ-チロシン抗体で免疫ブロットした。EC-WT形質移入体は、モック処理をされたコントロールと比較して、Metチロシンリン酸化及びホスホ-MAPKの減弱が示された(図5F及び5G)。Sema欠失形質移入体は、ホスホ-Metのある程度の減弱は示すが、下流MAPKリン酸化における低減を示さなかった(図5F及び5G)。共に、これらの観察により、SemaドメインがMet活性化に必要であることが確認され、Metシグナル伝達をrSemaが阻害する、先の結果が確証された(図5A-D)。
【0121】
rSema及び抗-Met5D5-Fabによる細胞遊走の阻害
Met媒介性細胞運動の測定として、H441細胞を掻爬アッセイに使用した(Lorenzatoら,2002)。高密度で増殖させたH441細胞を、0日目に各ウェルに掻爬し、実験の継続時間中、0.5%のBSAを含有する血清フリーの培地に保持した(図6)。正のコントロール又はモック処理をしたものとして、細胞を、それぞれ10μg/mlのrSema又は5D5又は100ng/mlのHGFで処理した。2日目、モック処理がされたウェルの間隙は完全に閉じていたが、rSemaで処理した細胞においては、間隙は残っていた(図6)。また、抗-Met5D5 Fab処理された細胞の間隙は、より小さい程度で、可視できる程に残っていた。HGF処理された細胞は、1日目に間隙が閉じ、それ自体は2日目も残っていた。これらの観察は4つの別の実験で一致していた。データには、内在性Metの活性化により媒介される細胞運動が、HGFの不在下において、rSema及び抗-Met 5D5-Fabの双方により阻害されることが示唆されている。
【0122】
リガンドの存在下、細胞運動におけるrSemaの効果を調査するために、細胞を、0、0.1、0.5又は5μg/mlのrSemaに加えて、20ng/mlのHGFで処理した。HGF単独で処理された細胞は、1日目に完全に間隙が閉じた。これに対し、HGFの存在下、rSemaで処理された細胞は、用量依存方式で間隙が保持されていた(データを示さず)。データには、rSemaがHGFの存在下でMet媒介性細胞運動を阻害することを示唆している。
【0123】
MDA-MB-435細胞を用いたトランスウェルアッセイを、Met駆動性細胞遊走(Coltellaら,2003)を測定するために使用した。HGFの不在下、モック処理がされた細胞は、図7に示すように遊走した。この遊走は、rSema、及び抗-Met5D5-Fabの添加により、より小さな程度まで、一貫して減少した。これらの細胞にHGFを添加すると、遊走が〜3倍に増加した。掻爬アッセイに相関したデータが、H441株化細胞に生じた。またAktの活性化も、細胞運動及び遊走アッセイに使用されるH441及びMDA-MB-435細胞で調査された。HGFの存在下、増加濃度のrSemaを用いたAktリン酸化で、用量依存性減少が観察された(データを示さない)。データは、rSemaがリガンドの存在下で細胞運動を阻害可能である観察と相関していた。総合すれば、これらの観察は、Semaドメインアンタゴニスト、例えばSema配列を有する組換えポリペプチドはMet活性化のみを阻害可能であるのではなく、リガンド依存性及び非依存の状況双方で、細胞運動及び遊走の下流効果をブロックすることができるといった結論を支持している。
【0124】
議論
Semaドメインは、セマフォリン及びそのレセプター、プレキシンの細胞外領域に存在しており、レセプター/リガンド認識部位として供給されている(Tamagnoneら,1999)。Sema3A及びSema4Dの結晶構造についての最近の出版物では、これらのSemaドメインが、ホモ二量体化に重要な7つのbladedβ-プロペラ構造を形成していることが示唆されている(Antipenkoら,2003;Loveら,2003)。ここで記載されているインビトロ及びインビボ実験の証拠には、Metレセプター二量体化におけるSemaドメインの役割が強く支持されている。
データには、Metの架橋がSemaドメインの存在下でのみ生じ、レセプター二量体化におけるSemaドメインの必須の役割が示唆されている。さらに、Metの架橋はHGFの不在下でも観察されており、これらの腫瘍株化細胞のMetレセプターが、リガンドの刺激なしに、二量体化され得ることを示している。
Sema3Aの結晶構造は、Semaドメインにおける4つの相互作用「ループ」が、Sema3A二量体の間の界面を確立するのに重要であることを示唆している(Antipenkoら,2003)。Metを伴うSema3A配列のアラインメントでは、Met SemaドメインのR307とS308の間のタンパク質分解性切断部位に近接して、「ループ」が存在していることが明らかであり、Met二量体化におけるその重要性が示唆されている。
【0125】
ここで記載された細胞ベースアッセイにより、HGFの不在下、SemaドメインがMetレセプターの同種親和性相互作用を媒介することが明らかとなった。特に、先の報告では、MetがCD44v6、α6β4インテグリン、及びプレキシンB1とも相互作用することが示唆されている(Giordanoら,2002;Orian-Rousseauら,2002;Trusolinoら,2001)。ここで記載された結果からは、プレキシンB1と関連したMetが、これら高度に保存されたSemaドメインを介して生じるといった意見が支持される。さらに、Metとセマフォリンの双方の過剰発現が、癌及び浸潤性転移において記載されており、任意の潜在的相互作用がSemaドメインを介して媒介されるという、さらなる推測に至る。しかしながら、これらの病理学的状況においてヘテロマー性相互作用を媒介するこれらの分子及びメカニズムの役割は、さらなる調査にとっては有益である。CD44v6及びα6β4は、Semaドメインに含まれることが知られていない。よって、Sema及び/又はPSI又はIPTドメインを介して媒介される他のタンパク質モチーフとの相互作用は、特定の生物反応の開始においては重要であり(Bertotti及びComoglio,2003)、可能性として排除できない。
【0126】
RTK、例えば線維芽細胞成長因子レセプター2(FGFR2)及びRETにおいて、各レセプターの細胞外ドメインにおけるシステイン間のジスルフィド結合は、レセプター二量体化に関連している(Robertsonら,2000)。Metレセプターにおいて、ここで記載されたデータには、システイン-リッチのPSIドメイン又は4つのIPTドメインのいずれも、Semaドメインの不在下で架橋しないことが示されており、これはこれらの領域がMet二量体化に必要ではないことを示唆している。さらに、プレキシンB1とのMet相互作用は、MetのPSIドメインの欠失にもかかわらず不変である(Giordanoら,2002)。ここで記載された機能研究に使用されるrSemaは、Sema及びPSIドメインを含んでいるが(材料と方法を参照)、ここで記載された架橋研究及びプレキシンB1において報告されているPDIドメイン欠失(Giordanoら,2002)では、Semaドメインが、PSIドメインの不在下でのこれらの相互作用において主要な役割を担っていることが、強く示されている。内部のPSI又はIPT欠失を生じさせる試みは、結果として本研究に使用されない非プロセスMetの発現を生じ、よってMet二量体形成又はいくつかの他のメカニズム、例えばEGFR用に報告されているような二量体化の自己抑制における、PSI及びIPTドメインのための役割であろうがなかろうが、断定的に示されたままである(Fergusonら,2003)。細胞外Metの結晶構造の分解はこれらの複合体の相互作用においてさらに軽く脱落する。
【0127】
RTKのリガンド-レセプター複合体の結晶学的研究により、いくつかの構造的洞察が明らかとなった。Flt-1及びTrkAは双方とも、レセプターの二量体化及び活性化のためのリガンドの二量体化に利用される(Wiesmannら,1997;Wiesmannら,1999)。FGFRにおいて、ヘパリン結合FGFリガンドは、レセプター二量体化を促進させる(Plotnikovら, 1999)。これに対し、EGF:EGFR(表皮成長因子レセプター)複合体は、リガンド-リガンド相互作用に無関係に、レセプターを介してホモ二量体化する(Garrettら, 2002; Ogisoら, 2002)。MetとHGFの相互作用はあまり明らかになっていないが、最近の報告では、Met、HGF及びヘパリンは、1:1:1の複合体として存在していることが示唆されている(Gherardiら, 2003)。細胞成分、例えば細胞外マトリックス(ECM)は我々の研究でも存在しており、インビボでのレセプター二量体化においてかなりの影響を有し得るために、我々の細胞ベースの研究はインビトロでの観察で報告されているこれらのものとは異なる。ECMがラミニン、及び細胞の相互作用の原因となる他の成分を含有しているため(Giancotti及びRuoslahti, 1999)、Met二量体化を容易にする全てのタンパク質は未だに同定されていないと思われる。
【0128】
ここで示したように、Semaドメインは、先の観察と一致して、HGFとの相互作用に十分であり(Gherardiら, 2003)、rSemaはリガンドにより促進されるMet活性化を阻害可能である。よって、rSemaは、HGFの結合による、HGF依存性Met活性化を効果的に阻害すると思われる。さらに、HGF依存性Met過剰発現腫瘍は、リガンド依存性レセプター活性化のRon Semaドメイン媒介性阻害に類似した方式にて、rSemaにより標的にされ得ることが示唆される(Angeloniら, 2003)。ここに記載されたデータには、架橋研究ではリガンド非依存性Met二量体が、HGFに結合した場合にさらにシフトすることが示されているため(図4)、Sema-HGF相互作用部位がMet二量体化界面とは異なることが示されている。これらのデータは、二量体化界面及びHGF相互作用部位が重複していないことを示唆している。
【0129】
さらに、ここでは、Semaドメインが公知のc-metアンタゴニスト抗体、抗-Met5D5-Fabの結合に必要であることが示されている。また、抗-Met5D5-Fabは、ここで記載した所見で観察されているように、リガンド非依存性レセプターの活性化を阻害するために、HGF競合に加えて、抗-Met5D5-Fabが立体障害によりレセプター二量体化をブロックすることが可能である。同様に、rSemaはリガンド非依存性及び依存性のMet活性化を阻害し、効果的なMetインヒビターとしての、rSemaの役割が示されている。同様の阻害活性がc-kitレセプターについても記載されている(Levら, 1992)。この研究にて扱われているリガンド非依存性状況での二量体化におけるMet Semaドメインの役割は、Ron Semaドメインの役割とは異なっている。Ron SemaドメインがMSPとの結合に競合して、Ronの活性化を阻害する一方、Ronレセプター二量体化は阻害されない(Angeloniら, 2003)。ここで記載された機能研究は、HGFの存在又は不在下で実施されており、Met Semaドメインがリガンド依存性及び非依存性のレセプター活性化の双方を阻害することが示されている。これらのデータには、Met及びRonの構造モチーフ及び結合性相互作用は類似しているが、インビボでは異なる同種親和性相互作用であることが明白であると示唆されている。
【0130】
ここでは、Met Semaドメインが、リガンド依存性ばかりでなく、リガンド非依存性のMetレセプター活性化の潜在的インヒビターであることが示されている。ここで記載されたデータには、MetのSemaドメインが腫瘍細胞におけるレセプター活性化をブロックし、それによってMAPKリン酸化、細胞運動及び遊走が阻害されることが示されている。生物治療として、Semaドメインそれ自体を利用することに限定されるものではないが、MetのSemaドメインの機能を標的にすることによって、HGF/c-metシグナル伝達軸の調節不全に関連した腫瘍を処置できる可能性を、これらの観察は提示している。
【0131】
(部分的な参考文献リスト)
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【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】Met欠失変異体の模式的な表示Met細胞外ドメインのサブドメイン欠失をN-末端から作製し、TM領域の後に、V5/Hisでタグをつけた。Metシグナルペプチド(S.P.)配列を各変異体のN-末端に付加した。略語は次のとおりである:Sema-セマフォリン;PSI-プレキシン、セマフォリン、インテグリン;IPT-プレキシン及び転写因子の免疫グロブリン様領域;及びTM-膜貫通。Sema領域上の矢印は、Metタンパク質分解性部位を指示している。
【図2】SemaドメインはMet架橋に必要A:Met欠失変異体を293細胞において形質移入し、増加濃度のスルホ-EGSに暴露した。10μgの溶菌液を4-12%のSDS-PAGEで分析し、V5抗体を用いて免疫ブロットした。EC-Mは単量体EC-WTを表し、EC-Dは二量体EC-WTを称する。星印は非プロセスEC-WTの存在を示す。B:EC-WT-Flag及びEC-WT-V5/Hisを293細胞において同時形質移入し、増加濃度のスルホ-EGSを受けさせ、溶解し、V5又はFlag抗体で免疫沈降させ、8%のSDS-PAGEで分析した。免疫沈降サンプルをFlag又はV5抗体でブロットした。
【図3】HGF及び抗-Met抗体(ここでは「5D5」とも称される)はMetのSemaドメインに結合A:293細胞を指示したMet V5/Hisタグ構築体で形質移入し、V5抗体で免疫沈降させ、4-12%のSDS-PAGEで分析し、His抗体を用いて免疫ブロットした。B:Aからの免疫沈降物を5μgのHGFと共にインキュベートした。サンプルを4-12%のSDS-PAGEで分析し、α鎖であると認識されたHGF抗体を用いて免疫ブロットした。10ngの投与量のHGFを正のコントロールとして提供した。C:免疫沈降及び免疫ブロットを、scHGF(R494E)を使用し、Bのように実施した。正のコントロールとして、15ngのscHGF(R494E)をサンプルと共に分析した。D:293細胞を指示したコンストラクトで形質移入し、4-12%のSDS-PAGEで分析し、V5抗体を用いて免疫ブロットした。E:Dからの形質移入した溶菌液を抗-Met5D5抗体で免疫沈降させ、His抗体を用いて免疫ブロットした。F:Bからのニトロセルロース膜をMet C-12抗体を用いて再検出した。
【図4】腫瘍株化細胞における内在性c-Metの架橋増加濃度のスルホ-EGSを、血清不足にされた293、H441、MDA-MB-435、及びA549細胞に添加した。さらにA549細胞を、架橋前に100μg/mlのHGFと共にインキュベートした。溶菌液をMet C-12抗体を用いて免疫ブロットした。*で示されるバンドは非プロセスWT-Metを表す。
【図5A−D】Metシグナル伝達はrSema及び抗-Met5D5-Fabにより阻害。Metの細胞外ドメインはMetシグナル伝達を減弱。A:A549細胞を血清不足のままにし、ホスホ-Met及びホスホ-MAPK分析のために、10分間、10ng/mlのHGFと共に、0、5、10、50又は100μg/mlのrSemaで処理した。溶菌液をMet C-12抗体で免疫沈降させ、ホスホチロシン抗体を用いて免疫ブロットし、リン酸化Metを検出し、続いてMet抗体を用いて免疫ブロットした。H441及びMDA-MB-435細胞をそれぞれ5分間、0、5、10又は100μg/mlのrSemaに加えて、5又は10ng/mlのHGFで処理した。タンパク質をホスホ-MAPKで検出し、MAPK抗体で再検出した。*で示されるバンドは非プロセスWT-Metを表す。B:Aにおけるデータを、NIHイメージソフトウェアを使用して定量化し、各サンプルにおける非リン酸化タンパク質に対するリン酸化タンパク質の比率と比較して、左パネルに棒グラフとして表した。右パネルは他の実験のデータを表す。C:A549、H441及びMDA-MB-435細胞を血清不足のままにし、10μg/mlのrSema又は抗-Met5D5-Fabで処理した。サンプルをホスホチロシン、Met、ホスホ-MAPK、又はMAPK抗体を用いて免疫ブロットした。*で示されるバンドは非プロセスWT-Metを表す。D:Cにおけるデータを定量化し、Bのようにして提供した。
【図5E−G】E:A549細胞を指示したコンストラクトで形質移入した。Met変異体の発現をV5抗体を用いた免疫ブロットにより検出した。*で示されるバンドは非プロセスEC-WTを表す。F:(左)Eからの溶菌液をMet C-12抗体で免疫沈降させ、ホスホ-チロシン抗体を用いて免疫ブロットした。Met抗体で膜を再検出した。(右)溶菌液をホスホ-MAPKを用いて免疫ブロットし、MAPKで再検出した。G:Fにおけるデータを、NIHイメージソフトウェアを使用して定量化し、各サンプルにおける非リン酸化タンパク質に対するリン酸化タンパク質の比率と比較して、左パネルに棒グラフとして表した。右パネルは他の実験のデータを表す。各グラフにおいて左から右への棒は、それぞれFで「モック」、「EC-WT」、「△S」、「△P」及び「TM」と命名されたレーンに相当する。
【図6】rSema及び抗-Met5D5-Fabは細胞運動を阻害H441細胞を掻爬し、2日の間、血清不足にされた培地において、モック、rSema、抗-Met5D5-Fab又はHGFで処理した。4つの独立した実験を実施し、代表的なデータセットを示す。
【図7】rSema及び抗-Met5D5-Fabによる細胞遊走の阻害MDA-MB-435細胞を、血清不足にされた培地において、各トランスウェルの上部チャンバーに播種し、モック、rSema又は抗-Met5D5-Fabで処理した。正のコントロールとしてHGFを、モック処理がなされたウェルの下部チャンバーに添加した。遊走細胞をクリスタルバイオレットで染色し、溶出細胞の吸光度を560nmで測定した。これらの非依存性遊走研究を重複して実施し、代表的なグラフを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
c-met二量体化を混乱させるc-metアンタゴニスト。
【請求項2】
c-met Semaドメインの二量体化機能を混乱させる、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項3】
c-met二量体化が混乱するようにc-metに結合する、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項4】
c-met二量体化を行わしめるc-met Semaドメインの能力を混乱させるようにc-metに結合する、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項5】
c-met Semaドメインの配列に特異的に結合するc-metアンタゴニスト。
【請求項6】
c-met分子に結合することにより、該分子の二量体化を阻害する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項7】
前記二量体化がホモ二量体化を含む、請求項6に記載のアンタゴニスト。
【請求項8】
c-metのHGF結合部位に結合しない、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項9】
c-metへの結合に対して肝細胞増殖因子(HGF)と実質的に競合しない、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項10】
c-metへの肝細胞成長因子の結合を実質的に阻害しない、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項11】
c-metへの結合に対してHGFと競合する、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項12】
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション受託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ 1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ 5D5.11.6)で寄託されているハイブリドーマ株化細胞により産生されるモノクローナル抗体が結合するエピトープとは異なる、c-met上のエピトープに結合する、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項13】
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション受託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ 1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ 5D5.11.6)で寄託されているハイブリドーマ株化細胞により産生されるモノクローナル抗体ではない、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項14】
抗体又はその断片、ペプチド、又はそれらの組み合わせである、請求項1ないし13のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項15】
c-metにアンタゴニストが結合することで、HGF依存性又は非依存性のc-met活性化が阻害される、請求項1ないし14のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項16】
細胞のc-metにアンタゴニストが結合することで、細胞の増殖、散乱、形態形成及び/又は運動性が阻害される、請求項1ないし15のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項17】
前記アンタゴニストが、c-met Semaドメイン又はその変異体の少なくとも一部を含有するペプチドを含む、請求項1ないし16のいずれか1項に記載のアンタゴニスト。
【請求項18】
前記ペプチドが、LDAQT(配列番号:1)、LTEKRKKRS(配列番号:2)、KPDSAEPM(配列番号:3)及びNVRCLQHF(配列番号:4)からなる群から選択される少なくとも一の配列を含有する、請求項17に記載のアンタゴニスト。
【請求項19】
前記ペプチドが、LDAQT(配列番号:1)、LTEKRKKRS(配列番号:2)、KPDSAEPM(配列番号:3)及びNVRCLQHF(配列番号:4)からなる群から選択される少なくとも一の配列から本質的になる、請求項17に記載のアンタゴニスト。
【請求項20】
前記ペプチドが配列LTEKRKKRS(配列番号:2)を含む、請求項17に記載のアンタゴニスト。
【請求項21】
前記ペプチドが本質的にLTEKRKKRS(配列番号:2)からなる、請求項17に記載のアンタゴニスト。
【請求項22】
請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストと担体を含有する組成物。
【請求項23】
担体が製薬的に許容可能なものである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストをコードする核酸であって、該アンタゴニストがポリペプチドを含んでなる核酸。
【請求項25】
アンタゴニストが抗体又はその断片を含有する、請求項24に記載の核酸。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の核酸を含んでなるベクター。
【請求項27】
請求項26に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項28】
容器と;
該容器に収容される組成物を含み、該組成物が請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストを含有している製造品。
【請求項29】
患者にアンタゴニストを投与するための指示書をさらに含む、請求項28に記載の製造品。
【請求項30】
請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストを含有する組成物を収容する第1容器と;
バッファーを収容する第2容器;
を具備するキット。
【請求項31】
バッファーが製薬的に許容可能なものである、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
患者にアンタゴニストを投与するための指示書をさらに含む、請求項30に記載のキット。
【請求項33】
c-metアンタゴニストをスクリーニング又は同定する方法であって、c-met Semaドメインの少なくとも一部を含む標的分子と候補物質を接触させ、該標的分子に特異的に結合する物質をc-metアンタゴニストとして選択することを含む方法。
【請求項34】
選択された物質を、c-metを発現する細胞と接触させ、細胞におけるc-met二量体化の阻害を検出又は定量する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
c-met二量体化の阻害が、c-met活性化量の低減により示される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
c-met活性化量がc-met関連細胞のシグナル伝達量で示される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞シグナル伝達がタンパク質リン酸化により示される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
患者においてc-met活性化を調節する方法であって、c-met Semaドメインモジュレーターを患者に投与することを含み、それによりc-met活性が調節される方法。
【請求項39】
c-met活性化細胞増殖を阻害する方法であって、請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストと細胞又は組織とを接触させることを含み、それによりc-met活性化に関連した細胞増殖が阻害される方法。
【請求項40】
患者におけるc-met活性化の調節不全に関連した病態を処置する方法であって、請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストを患者に投与することを含み、それによりc-met活性化が阻害される方法。
【請求項41】
c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方を発現する細胞の増殖を阻害する方法であって、請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストと該細胞とを接触させることを含み、それにより該細胞の増殖が阻害される方法。
【請求項42】
c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方を発現する細胞を含有する癌性腫瘍を有する哺乳動物を治療的処置する方法であって、請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストを治療的有効量、該哺乳動物に投与することを含み、それにより該哺乳動物が効果的に処置される方法。
【請求項43】
c-met又は肝細胞増殖又はその双方の増加した発現又は活性に関連した細胞増殖性疾患を処置又は防止するための方法であって、請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストを有効量、このような処置が必要な患者に投与することを含み、それにより該細胞増殖性疾患が効果的に治療又は防止される方法。
【請求項44】
前記増殖性疾患が癌である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
細胞増殖を阻害する方法であって、細胞増殖が、c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方の増殖効果に少なくとも部分的に依存しており、該方法が、請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストと該細胞とを接触させることを含み、それにより該細胞の増殖が阻害される方法。
【請求項46】
哺乳動物の腫瘍を治療的処置する方法であって、腫瘍の増殖が、c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方の増殖効果に少なくとも部分的に依存しており、該方法が、請求項1ないし21のいずれか1項に記載のアンタゴニストと該細胞とを接触させることを含み、それにより該腫瘍が効果的に処置される方法。
【請求項47】
前記細胞が癌細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記癌細胞が、放射線処置又は化学療法剤にさらに暴露される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記癌細胞が、乳癌細胞、直腸結腸癌細胞、肺癌細胞、乳頭癌細胞、前立腺癌細胞、リンパ腫細胞、大腸癌細胞、膵癌細胞、卵巣癌細胞、子宮頸癌細胞、中枢神経系癌細胞、骨原性肉腫細胞、腎癌細胞、肝臓癌細胞、膀胱癌細胞、胃癌細胞、頭部及び頸部の扁平上皮癌細胞、黒色腫細胞及び白血病細胞からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
c-met又は肝細胞増殖因子又はその双方が、同じ組織起源の正常な細胞と比較して、前記癌細胞により豊富に発現している、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記肝細胞増殖因子が種々の細胞で発現している、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
c-met活性化が、同じ組織起源の正常な細胞と比較して、前記癌細胞において高められている、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞の死を引き起こす、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記アンタゴニストの不在下で、c-met活性化がリガンドに無関係に生じる、請求項40ないし53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記アンタゴニストの不在下で、c-met活性化がリガンドに依存している、請求項40ないし53のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A−D】
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【図5E−G】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−507252(P2008−507252A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544006(P2006−544006)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/041362
【国際公開番号】WO2005/058965
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】