説明

C型肝炎ウイルス感染に対して有用な製剤

本発明は一般に、C型肝炎ウイルス(HCV)感染に対して有効な化合物および化学物質に関する。さらに本発明は、該化合物および/または化学物質を含む組成物、HCV感染を予防するための方法、ならびにHCV感染の予防および/または治療に有用な組成物の調製のためのその化合物および/または化学物質の使用に関する。本発明の有用な化合物および化学物質は、セレン、セレン塩、ビタミンD3とレチノイド、例えばオールトランスレチノイン酸とその塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドとその塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルとその塩、9-シスレチノイン酸とその塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドとその塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルとその塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染に対する有効な化合物および化学物質に関する。特に本発明は、該化合物および/または化学物質を含む組成物、HCV感染を予防するための方法、ならびにHCV感染の予防および/または治療に有用な組成物の調製のための化合物および/または化学物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は、慢性肝炎、肝硬変、および肝細胞癌の主要な原因である。WIOは、世界の人口の約3%、すなわち1億7000万人がC型肝炎ウイルスに感染していると推定している。米国では390万人のアメリカ人が感染していると推定されている(CDCファクトシート(CDC fact sheet)、2000年9月)。80%を超えるHCV感染者が慢性肝炎(これは、無症候性キャリアー状態から肝臓の炎症の繰り返しや重症の慢性肝疾患にわたる病状を引き起こす)を発症する。20年間で、慢性HCV患者の20%以上が肝硬変を発症して肝細胞癌まで進行するリスクがあると予測される。慢性C型肝炎からの肝不全は、肝臓移植の主要な指標である。CDCは、移植を除外するとHCVについての医学的コストおよび労働喪失コストは年約6億USドルであると予測している。HCVは主に血液や血液製剤により伝搬する。1992年半ばからの血液供給の日常的スクリーニングにより、新しい輸血関連症例は極めてまれになり、ウイルスを獲得する最大の危険因子として薬物注射に追い越されている。しかし効率は低いが性的感染経路と、感染した母親から子への6%の感染率があり、これはHIV同時感染の場合にはより高い。感染のある割合では、伝染モードは不明のままである。1990年代の発症率の大きな低下にもかかわらず、HCVによる死亡者数(現在の推定年間死亡者数は、米国で8,000〜10,000人)と重症疾患は、これから10〜20年で3倍になると予測される(情報源:CDCファクトシート(CDC fact sheet)(12/12/00にアクセスした);Houghton M. 「C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Viruses)」、BN Fields, DM Knipe, PM Howley(編)、Fields Virology, 1996, リッペンコット−ラーベンパブ(Lippencott-Raven Pub.)、フィラデルフィア中、;Rosen HRとGretch DR, Molecula Medicine Today Vol.5, 393, Sept. 99; Science 285, 26, July 99; ニュースフォーカス:C型肝炎の科学的挑戦(News Focus: The scientific challenge of Hepatitis C); Wong JBら、Am J Public Health, 90, 1562, Oct 2000: 米国におけるC型肝炎罹患率、死亡率およびコストの推定)。
【0003】
EASL(ヨーロッパ肝臓研究練合(European Association for the Study of the Liver))、C型肝炎についての国際合意会議(International Consensus Conference on Hepatitis C(1999年2月26〜28日、パリ、フランス)の発表によると、アルファインターフェロンとリバビリン(ribavirin)の併用療法が、投薬経験の無い患者についての推奨される治療法である。インターフェロンを用いる単独療法もまたFDAにより認可されているが、持続的応答率(HCV RNAが、治療終了の6ヶ月以上後も血清中に検出されない)はわずかに15〜20%であり、これに対して併用療法では35〜45%である。インターフェロン(イントロンエー(Intron A)、シェリング−プラウ(Schering-Plough);ロフェロンエー(Roferon A)、ホフマン−ラロッシュ(Hoffmann-LaRoche);ウェルフェロン(Wellferon)、グラクソウェルカム(Glaxo Wellcome);インフェルゲン(Infergen)、アムジェン(Amgen))は、週に3回皮下注射され、リバビリンは、日に2回投与される経口薬剤である。推奨される治療期間は6〜12ヶ月であり、HCV遺伝子型に依存する。最近の臨床試験(Hepatology 32:4, Pt 2 of 2, Oct 2000; NEJM 343, 1673. Dec 2000; NEJM 343, 1666. Dec 2000)では、実験型の除放性のペグ化インターフェロン(pegylated interferons)(ペガシス(Pegasys)、ホフマン−ラロッシュ(Hoffmann-LaRoche);PEG-イントロン(PEG-Intron)、シェリング−プラウ(Schering-Plough))は、応答率(リバビリンとの併用で42〜82%)と投与(週1回の注射)において改善を示した。インターフェロン療法の一般的な副作用には:例えば、疲労、筋肉痛、頭痛、吐き気、発熱、体重減少、過敏症、うつ病、骨髄抑制、可逆的抜け毛がある。リバビリンの最も一般的な副作用は、貧血、疲労および過敏症、かゆみ、皮疹、鼻づまり、副鼻腔炎、せきである。2%未満の患者では、単独および併用療法のより重症の副作用が起きる(NIDDK情報:慢性C型肝炎:現在の疾患管理(Chronic Hepatitis C: Current Disease Management)、09.12.99にアクセスした)。インターフェロンの禁忌のいくつかは、精神病または重症のうつ病;好中球減少症および/または血小板減少症;肝臓を除く臓器移植;症候性心臓疾患;非代償性肝硬変;無制御発作である。リバビリンの禁忌は、最終段階の腎不全;貧血;ヘモグロビン症;重症の心臓疾患;妊娠;信頼できる避妊法の後述欠如(合意宣言EASL)。さらにインターフェロン−アルファによるC型肝炎ウイルス感染の治療は、ほんの少数の人にのみ有効である。これは、ウイルスがインターフェロンに対して耐性になる技を使っている可能性を示唆する。
【0004】
Vogelの総説「慢性C型肝炎感染の治療のためのペグインターフェロン−α2a(40kDa)/リバビリン併用」、Expert Rev. Anti-infect. Ther. 1(3), 423-431 (2003)、および Durantelら「C型肝炎感染に対する現代の新生治療法」、Expert Rev. Anti-infect. Ther. 1(3), 441-454 (2003)は、HCV治療法の現状を概説している。これらの文献によると、2つの分子、標準(すなわち、非ペグ化)またはペグ化インターフェロンとリバビリンの組合せを使用する。この治療法は、50〜60%の症例で持続的なウイルス応答を誘導するが、いまだに多数のいわゆる「不応答者」があり、治療はしばしば上記副作用により限定される。特に不応答患者のために、およびより一般的には現代の臨床業務を改善するために、HCV治療の代替的かつ有効な治療アプローチを開発することが重要である。
【0005】
以下において「インターフェロンおよび/またはリバビリン治療法に対する不応答者」または「インターフェロンおよび/またはリバビリン治療法に対する不応答患者」という用語が使用されるなら、これらの用語は、ペグ化または非ペグ化(標準)α−、β−、またはγ−インターフェロン単独(いわゆるインターフェロン単独療法)、リバビリン単独(いわゆるリバビリン単独療法)、または、ペグ化または非ペグ化(標準)α−、β−、またはγ−インターフェロンとリバビリンとの併用療法により治療した時、陽性の応答または全体の治療を示さないHCV感染個体(特にヒト)を意味する。不応答者は、治療のすぐ最初からインターフェロンおよび/またはリバビリンに応答しないか、またはある期間のインターフェロンおよび/またはリバビリン治療の後に不応答になる患者いる。
インターフェロンの新しい型ではない実験的治療法は、マキサミン(Maxamine)(ヒスタミンジヒドロクロリド、マキシムファーマシューチカルズ(Maxim Pharmaceuticals))(これは、第III相試験でインターフェロンと併用されるであろう)、VX-497(ベルテックスファーマシューチカルズ(Vertex Pharmaceuticals))(第II相試験で毒性の低いリバビリン代替物としてのIMP脱水素酵素インヒビター)、およびアマンタジン(amantadine)(エンドラボズ(Endo Labs))(3重療法(第II相)の第3成分としての認可されたインフルエンザ薬)である。HCV酵素のインヒビター(例えばプロテアーゼインヒビター)、RNA依存性RNAポリメラーゼインヒビター、ヘリカーゼインヒビターならびにリボザイムおよびアンチセンスRNAは、前臨床段階である(ベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim)、リボザイムファーマシューチカルズ(Ribozyme Pharmaceuticals)、ベルテックスファーマシューチカルズ(Vertex Pharmaceuticals)、シェリング−プラウ(Schering-Plough)、ホフマン−ラロッシュ(Hoffmann-LaRoche)、イムソル(Immusol)、メルク(Merck)など)。予防または治療用途のワクチンは無いが、いくつかの会社は、従来法によるワクチンまたはDNAワクチン、または免疫刺激物質を開発しようとしている(例えば、カイロン(Chiron)、メルク/ビカル(Merck/Vical)、エピミューン(Epimmune)、ナビ(NABI)、イノジェネティクス(Innogenetics))。さらにHCVビリオンに対する抗体が開発されており、最近臨床治験に入った(トリメラ社(Trimera Co.)、イスラエル)。
【0006】
要約すると、慢性C型肝炎の利用可能な治療法は、高価であり、ある割合の患者にのみ有効であり、副作用もまれではない。
【0007】
WO02/066022 A1は、治療の必要な患者に、治療的有効量のレチノイド(例えばオールトランスレチノイン酸(all-trans retinoic acid))を投与することを含む、肝炎の治療法を記載している。具体例において、肝炎の型はA、B、C、D、EおよびG型肝炎であり、治療はリポソーム性オールトランスレチノイン酸を用いる。
【0008】
発明の説明
最近の研究は、細胞がいかに互いに通信して、人体の多くの組織の成長と維持を調整しているかを証明した。この通信ネットワークの主要な因子は、細胞の外から核へのシグナルの伝搬であり、これにより、特異的遺伝子が活性化または抑制される。このプロセスは、シグナル伝達と呼ばれる。
【0009】
細胞レベルのシグナル伝達は、細胞の外から中へのシグナルの移動を意味する。シグナルの移動は、アセチルコリンクラスの受容体分子(リガンドとの相互作用で、小イオン移動の形でシグナルが細胞の中または外へ伝達されることを可能にするチャネルを構成する受容体)に関連するもののように単純である。これらのイオン移動は、細胞の電位の変化を引き起こし、これは次に、細胞に沿ってシグナルを伝搬させる。より複雑なシグナル伝達は、多くの細胞内事象へのリガンド−受容体相互作用の関連を含む。これらの事象には、チロシンキナーゼおよび/またはセリン/スレオニンキナーゼによるリン酸化がある。タンパク質のリン酸化は、酵素活性とタンパク質コンフォメーションを変化させる。最終的結果は、細胞活性の変化と、応答性細胞内で発現される遺伝子のプログラムの変化である。
【0010】
シグナル伝達受容体は、3つの大きなクラスがある:
1. 原形質膜を貫通し内因性酵素活性を有する受容体:
内因性酵素活性を有する受容体には、チロシンキナーゼであるもの(例えば、PDGF、インスリン、EGF、およびFGF受容体)、チロシンホスファターゼであるもの(例えば、T細胞およびマクロファージのCD45[クラスター決定基-45]タンパク質)、グアニレートシクラーゼであるもの(例えば、ナトリウム排泄増加ペプチド受容体)、およびセリン/スレオニンキナーゼであるもの(例えば、アクチビンおよびTGF-ベータ受容体)がある。内因性チロシンキナーゼ活性を有する受容体は、自己リン酸化ならびに他の基質のリン酸化が可能である。
【0011】
さらにいくつかの群の受容体は固有の酵素活性が欠如しているが、直接的なタンパク質−タンパク質相互作用により細胞内チロシンキナーゼに連結している。このクラスの受容体には、すべてのサイトカイン受容体(例えば、インターロイキン-2受容体)ならびにT細胞のCD4とCD8細胞表面糖タンパク質、およびT細胞抗原受容体がある。
【0012】
2. 細胞内でGTP結合性および加水分解性タンパク質(Gタンパク質と呼ぶ)に連結している受容体:
Gタンパク質と相互作用するクラスの受容体はすべて、7つの膜貫通ドメインを特徴とする構造を有する。これらの受容体は、蛇行性(serpentine)受容体と呼ばれる。このクラスの例は、アドレナリン作動性受容体、臭気受容体、およびいくつかのホルモン受容体である(例えば、グルカゴン、アンギオテンシン、バソプレシンおよびブラジキニン)。
【0013】
3. 細胞内に存在し、リガンドに結合すると核に移動して、リガンド−受容体複合体が直接遺伝子転写に影響を与える受容体:
ステロイド/甲状腺ホルモン受容体スーパーファミリー(例えば、糖質コルチコイド、ビタミンD、レチノイン酸および甲状腺ホルモン受容体)は、細胞質に存在し、親油性ステロイド/甲状腺ホルモンに結合するタンパク質のクラスである。これらのホルモンは、疎水性原形質膜を自由に貫通することができる。リガンドに結合すると、ホルモン−受容体複合体は核に移動し、特異的DNA配列に結合して、関連する遺伝子の転写速度を変化させる。
【0014】
上記経路の1つまたはいくつかを介してメッセージが核に到達すると、これは、特異的遺伝子の調節を開始して、RNA産生、そして最後に特異的生物学的機能を果たすタンパク質の産生を引き起こす。シグナル伝達分子の活性が撹乱されると、細胞が機能異常になり疾患に至る。具体的には、ウイルスが複製するのに、HCVと宿主細胞との相互作用が必要である。
【0015】
本発明は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管(P18283)が、HCV感染宿主細胞中でHCV複製の結果として、特異的にダウンレギュレートされるという事実に基づく。本明細書に記載の抗ウイルス性の予防および/または治療アプローチは、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管をアップレギュレートするのに使用できる特異的化学物質および化合物に注目する。これらの特異的化学物質および化合物は、セレン、セレン塩、ビタミンD3、ペグ化および非ペグ化(標準)α−、β−、およびγ−インターフェロン、リバビリン、およびレチノイド(特に、オールトランスレチノイン酸のようなレチノイン酸のすべての異性体型)、オールトランスレチノイン酸の塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、13-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸の塩、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、ならびに(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN)である。
【0016】
本発明のさらなる態様において、1つ以上の上記物質とともに、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管をアップレギュレートするのに使用できる抗ウイルス性予防および/または治療物質として、パラコートを使用することが好ましい。
【0017】
不応答者の治療にはオールトランスレチノイン酸または13-シスレチノイン酸の使用が好ましい。またHCV感染またはHCV感染関連疾患の治療のために、上記の化学物質の1つとともにオールトランスレチノイン酸または13-シスレチノイン酸を使用することが好ましい。特に、(i)オールトランスレチノイン酸はセエンおよび/またはセレン塩とともに使用される、(ii)オールトランスレチノイン酸は、ペグ化および/または非ペグ化(標準)α−、β−、およびγ−インターフェロンとともに使用される、(iii)オールトランスレチノイン酸は、ペグ化および/または非ペグ化(標準)α−、β−、およびγ−インターフェロンおよびリバビリンとともに使用される、(iv)オールトランスレチノイン酸は、ペグ化および/または非ペグ化(標準)α−、β−、およびγ−インターフェロンおよびセレンおよび/またはセレン塩とともに使用される、(v)オールトランスレチノイン酸は、リバビリンとセレンおよび/またはセレン塩、および(vi)オールトランスレチノイン酸とリバビリンとともに使用される。組合せ(v)の場合に、オールトランスレチノイン酸は好ましくは、0.1〜10μM、さらに好ましくは0.5〜2.5μM、および特に1μMの濃度で使用され、セレンまたはセレン塩は好ましくは、1〜200nM、さらに好ましくは10〜100nM、および特に50nMの濃度で使用され、リバビリンは好ましくは1〜500μM、さらに好ましくは10〜100μM、および特に50μMの濃度で使用される。上記組合せ(i)、(ii)、(iii)、(v)、および(v)は、応答者および不応答者の治療の両方に使用することができる。
【0018】
さらに以下の化合物は、本発明で使用される用語「レチノイド」に包含される。特に本出願で理解される追加のレチノイドはまた、レチノール、エトレチネート(etretinate)、オールトランスレチノイン酸または13-シスレチノイン酸と2-アミノエタノールとのアミド、またはアルファ-L-セリン、アルファ-L-スレオニン、ホスフェート基を含むアルファ-L-チロシンも意味する。
【0019】
これらの追加のレチノイドの構造は、いかの一般式により包含される:
R--CONH--X-OPO(OH)2
ここで
Rは
【化1】

であり、
そしてXは
--CH2--CH2--
または
--CH(CO2H)--CH2--
または
--CH(CO2H)--CH(CH3)--
または
--CH(CO2H)--CH2--C6H5--
である。
【0020】
すなわち2-アミノエタノールのアミノ基またはアミノ酸のアルファアミノ基は、オールトランスレチノイン酸または13-シスレチノイン酸のカルボキシル基とともにアミド結合を形成する。同時に2-アミノエタノールのヒドロキシル基とアミノ酸は、ホスフェート残基により修飾される。
【0021】
本発明の追加のレチノイドに入るレチノイドは、例えばUS6,326,397B1およびUS6,403,554B2に記載されている(これらは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)。これらの2つのUS特許において特に、オールトランスレチノイン酸または13-シスレチノイン酸と2-アミノエタノール、アルファ-L-セリン、アルファ-L-スレオニン、アルファ-L-チロシンとのアミドが開示される。同時にアミノ酸と2-アミノエタノールのヒドロキシル基は、ホスフェート残基により修飾される。オールトランスレチノイン酸または13-シスレチノイン酸は、種々の方法により天然に存在する生成物から得られている。しかし、本発明の範囲内で、これらの化合物を合成法で作成することができる。本発明の追加のレチノイドをいかに合成するかの例は、上記特許US6,326,397B1およびUS6,403,554B2に記載されている。
【0022】
これらの合成化合物の主要な特徴は、アミノ酸と2-アミノエタノールのN-アシル誘導体のヒドロキシル基のリン酸化である。
【0023】
本発明の追加のレチノイド(レチノイン酸誘導体)は以下の化合物を含む:
1. N-(オールトランスレチノイル)-o-ホスホ-2-アミノエタノール
1a. N-(13-シスレチノイル)-o-ホスホ-2-アミノエタノール
2. N-(オールトランスレチノイル)-o-ホスホ-L-セリン
2a. N-(13-シスレチノイル)-o-ホスホ-L-セリン
3. N-(オールトランスレチノイル)-o-ホスホ-L-スレオニン
3a. N-(13-シスレチノイル)-o-ホスホ-L-スレオニン
4. N-(オールトランスレチノイル)-o-ホスホ-L-チロシン
4a. N-(13-シスレチノイル)-o-ホスホ-L-チロシン
【0024】
上記化合物の構造式を以下に示す:
【化2】

【0025】
さらに、US6,326,397B1に記載されたレチノイドアンタゴニストも、本発明のレチノイドに入る。US6,326,397B1の内容は、その全体が本出願に取り込まれる。具体的には、本出願は式Iの化合物
【化3】

(式中、点線の結合は、水素化されているかまたは2重結合を形成することができる;および、点線の結合が2重結合を形成する時、R1は低級アルキルでありR2は水素である;および点線の結合が水素化されている時、R1とR2は一緒にメチレンであり、シス置換シクロプロピル環を形成する;R3はヒドロキシまたは低級アルコキシである;R4はアルキルまたはアルコキシである;そしてR5とR6は、独立に、非置換であるかまたは1〜3個の低級アルキル基で置換されたC4-C12アルキルまたは1〜3個の環を有する5-12のシクロアルキル置換基であり、R5とR6の炭素原子は分子の残りに結合して、4級炭素原子を形成する)、および式Iのカルボン酸の薬剤学的に許容される塩に関する。
【0026】
本明細書において用語「アルキル」は、直鎖、分岐鎖または環状アルキル残基、特に1〜12子の炭素原子を含むものを意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロパノール、t-ブチル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどがある。用語「低級アルキル」は、1〜7個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。最も好適な低級アルキル基はメチルとエチルである。R4で示されるアルキル基とアルコキシ基は1〜8個の炭素原子を含み、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。特に好適な基R4はエトキシとブトキシである。R5またはR6で示されるC4-12アルキル基の例は、tert-ブチル、1,1-ジメチルプロピル、1-メチル-1-エチルプロピル、1-メチル-1-エチルヘキシル、および1,1-ジメチルデシルである。これらの基のうち、tert-ブチルが好ましい。R5とR6の1つが、置換された5〜12シクロアルキル炭化水素である時、置換基は1〜3個の融合炭化水素環(これは非置換でも、1〜3個の低級アルキル基により置換されてもよい)を含有する。置換基R5とR6は、炭素原子により式Iの分子の残りに結合しており、こうして結合している時、4級炭素原子を形成する。R5とR6で示される好適なモノ−またはポリ環状炭化水素置換基は、1-アダマンチルと1-メチルシクロヘキシルである。
【0027】
ある実施態様において本発明は、式Iの化合物
【化4】

(式中、R1は低級アルキルであり、R3〜R6は式Iと同じである);および式Iaのカルボン酸の薬剤学的に許容される塩を含む。
【0028】
別の実施態様において本発明は、式Ibの化合物
【化5】

(式中、R3〜R6は式Iと同じである);および式Ibのカルボン酸の薬剤学的に許容される塩を含む。
【0029】
式Iの化合物(ここでR1とR2は一緒にメチレンである)は、純粋なエナンチオマーまたはラセミ体として存在してもよい。式Ibは特定のエナンチオマー型を任意に記載するが、本発明は、反対のエナンチオマーならびにラセミ体も含むことを理解されたい。
【0030】
R1がメチルであり、R4がエトキシまたはブトキシであり、R5とR6がtert-ブチルである式Iaの化合物が特に好ましい。
【0031】
上記式Iの化合物はレチノイドX受容体(RXR)に特異的に結合するが、これらを活性化することはない。従って本発明の化合物は、患者のレチノイドにより誘導される有害事象を低減または排除するのに使用することができる(レチノイドアゴニスト)。
【0032】
さらなる態様において本発明は、選択的レチノイン酸受容体(RAR)アンタゴニスト活性、レチノイドX受容体(RXR)アンタゴニスト活性、または混合RAR-RXRアンタゴニスト活性を有するレチノイドを含むレチノイドアンタゴニストの使用に関する。
【0033】
本発明のこの態様において用語「レチノイドアンタゴニスト」は、RAR、RXRまたは混合RAR-RXRアンタゴニスト活性を有するレチノイドまたは化合物に使用される。これは、受容体中性アンタゴニスト活性(中性アンタゴニスト)、受容体逆アゴニスト活性(逆アゴニスト)および陰性ホルモン活性(陰性ホルモン)を有する化合物を含む。
【0034】
すなわち用語「レチノイドアンタゴニスト」は、以下を包含する。
a) 本明細書において上記した式IのRXRアンタゴニスト、特に式Icのもの
【化6】

(式中、点線の結合は任意であり;点線の結合が存在する時、R1はメチルであり、R2は水素である;および点線の結合が存在しない時、R1とR2は一緒にメチレンであり、シス置換シクロプロピル環を形成する;そしてR41はC1-4アルコキシである);
b)式
【化7】

のRARα−アンタゴニスト
(式中、R7はC5-10アルキルであり、R8とR9は互いに独立に、水素またはフッ素である;かかる化合物は米国特許第5,391,766号およびJ. Med. Chem. 1997, 40, 2445に記載されている);
c)式
【化8】

のRAR α、βアンタゴニスト
(式中、R10はジアマンチルであり、XはOまたはNHであり、R11はフェニルまたはベンジルであり、ここで環Aまたは環Bは随時存在する;かかる化合物は、Med. Chem. Res. 1991, 1, 220;Biochem. Biophys. Res. Com. 1997, 231, 243;J. Med. Chem. 1994, 37, 1508に記載されている);
d)式
【化9】

のRAR β、γアンタゴニスト
(式中、R12とR13は互いに独立に、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、随時分岐したC1-5アルキルまたはアダマンチルである;かかる化合物はJ. Med. Chem. 1995 38, 4993に記載されている);
e)式
【化10】

のRAR γアンタゴニスト
かかる化合物は、Cancer Res. 1995, 55, 4446に記載されている;
f)式
【化11】

のRAR α、β、γアンタゴニスト
(式中、Yは--CH2--またはイオウであり、Zは--CH= または窒素であり、R14は水素またはC1-4アルキルである;かかる化合物は、J. Med. Chem. 1995, 38, 3163および4764;J. Biol. Chem. 1996, 271, 11897および22692に記載されている);
g)式
【化12】

のRXRアンタゴニスト
(式中、R15はC1-4アルコキシである;かかる化合物は、J. Med. Chem. 1996, 39, 3229;およびNature 1996, 383, 450に記載されている)、および式III〜XVIIの化合物の薬剤学的に許容される塩、および薬剤学的に許容される加水分解可能なエステル。
【0035】
本発明の範囲において「薬剤学的に許容される塩」は、レチノイドおよび特にレチノイドアンタゴニストについて化学的に許容され、薬剤学的に許容される調製物中でヒト患者に適用可能な任意の塩を含む。レチノイドまたはレチノイドアンタゴニストのかかる従来の薬剤学的に許容される任意の塩を、使用することができる。使用可能な従来の塩の中には、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウムまたはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムまたはマグネシウム塩)、およびアンモニウム塩またはアルキルアンモニウム塩が含まれる。
【0036】
さらに市販のデータベース「ファーマプロジェクト(Pharmaprojects)」に開示された以下の物質は、本発明の用語「レチノイド」に該当すると見なされる。
【0037】
【化13】

【化14】


【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【0038】
本発明の別の実施態様において、追加の物質は、少なくとも1つの上記化学物質および化合物と組合せることができる。かかる追加の物質はパラコート(paraquat)である。パラコートは、1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウムの慣用名であり、パラコートの市販されている型は、例えば1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウムジクロリドである。
【0039】
新しい薬剤学的に活性な化合物を開発するために、医学的介入のための標的候補を同定しなければならない。すなわち薬剤学的に有効な化合物を見つけるための方法は、標的同定を含む。HCV感染を扱うための適当な標的を見つけるための詳細は、WO02/084294に記載されている。
【0040】
標的同定は基本的に、特定の生物学的成分、すなわちタンパク質、および特定の病態または制御システムとのその関連の同定である。疾患またはその症状に影響を与え得る薬剤学的に活性な化合物(薬剤)の探索において同定されるタンパク質は、標的と呼ばれる。該標的は、生物学的システムの制御または調節に関与し、その機能は薬剤により妨害することができる。
【0041】
疾患という用語は本明細書において、獲得した症状または遺伝的症状を意味する。疾患は体の正常な生物学的システムを変化させ、化合物の過剰または過少(化学的不均衡)を引き起こす。これらの化合物の制御システムは、体による不均衡を検出するためのあるタンパク質の使用を含むか、または化学的均衡を回復するための中和性化合物を体に産生させる。
【0042】
本明細書において体という用語は、任意の生物学的システム、例えばヒト、動物、細胞、または細胞培養物を意味する。
【0043】
従って本発明の目的は、C型肝炎ウイルス感染の予防および/または治療に有効であるが、上記の負の副作用を示さないか少なくとも公知の生成物および方法について報告されている程度までは示さない化合物、組成物および方法を提供することである。本発明の目的は、独立請求項の教示により解決される。本発明の追加の有利な特徴、態様および詳細は、本出願の従属請求項、説明および実施例から明らかである。
【0044】
発明の詳細な説明
ヒトの細胞タンパク質であるグルタチオンペルオキシダーゼ−消化管は、HCV感染の結果として体内で特異的にダウンレギュレートされていることは、すでに証明されている。このヒト細胞タンパク質であるグルタチオンペルオキシダーゼ−消化管は、HCV感染を扱うための診断および治療標的として同定されている。
【0045】
グルタチオンペルオキシダーゼ:
今日まで哺乳動物でグルタチオンペルオキシダーゼの4つの明確な分子種が同定されている(古典的細胞酵素、リン脂質ヒドロペルオキシド代謝性酵素、消化管酵素、および細胞外血漿酵素)。これらの1次構造はあまり関連が無い。これらは異なる遺伝子にコードされ、異なる酵素性を有することが証明されている。ヒト血漿酵素の生理学的役割は、ヒト血漿中の還元グルタチオンが低レベルであるため、およびこの酵素の反応性が低いため、いまだに不明である。
【0046】
ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管(GI-GPx)はまた、グルタチオンペルオキシダーゼ関連タンパク質2(GPRP)またはグルタチオンヒドロペルオキシド酸化還元酵素としても知られている。これは、受け入れ番号(Accession Number)P18283とEC番号1.11.1.9が割り当てられている。
【0047】
ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管(GI-GPx)は、水素ドナーとしてのグルタチオン(GSH)による種々の有機ヒドロペルオキシドならびに過酸化水素の還元を触媒する(2 GSH + H2O2 → Gs--Gs + 2 H2O)。これは分子量84,000を有し、4つのサブユニットからなる。この酵素は、脂質ヒドロペルオキシドの酵素的測定に有用である。
【0048】
GI-GPxはセレノタンパク質のファミリーに属し、グルタチオンを還元性基質として使用して、種々のヒドロペルオキシドの還元を触媒することにより、酸化的傷害に対する哺乳動物、鳥および魚の防御機構において重要な役割を果たす。この酵素は、多くの場合過酸化的傷害に対して細胞膜システムを防御する機構として機能し、この酵素の示唆される機能において重要な役割を果たす必須微量元素としてセレンが示唆されている。ビタミンEとSeの両方とも、遺伝的変化の基礎的原因としての酸化的ストレスの共通の機構において、抗酸化剤としても作用することは公知である。
【0049】
セレンは、哺乳動物系内で主にセレノタンパク質の形で機能する。セレノタンパク質はセレンをセレノシステインとして含有し、種々の生理学的役割を果たす。17個のセレノタンパク質が同定されている:細胞性または古典的グルタチオンペルオキシダーゼ;血漿(または細胞外)グルタチオンペルオキシダーゼ;リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ;消化管グルタチオンペルオキシダーゼ;セレノタンパク質P;1、2および3型ヨードチロシン脱ヨード酵素;セレノタンパク質W;チオレドキシン還元酵素;およびセレノホスフェートシンセターゼ。これらのうち、細胞性および血漿グルタチオンペルオキシダーゼは、セレン状態の評価に使用される機能性パラメータである(D.H. Holben, A.M. Smith, J. Am. Diet. Assoc. 1999, 99, 836-843)。
【0050】
ビタミンE(DL-α-トコフェロール)、ビタミンC(L-アスコルビン酸)、補酵素Q10、亜鉛、およびセレン以外に、多くのさらなる抗酸化剤、例えばN-アセチル-L-システイン、N-アセチル-S-ファルネシル-L-システイン、ビリルビン、カフェイン酸、CAPE、カテキン、セルロプラスミン、コエレンテラジン、ジイソプロピルサリチル酸銅、メシル酸デフェロキサミン、R-(-)-デプレニル、DMNQ、DTPAジアンヒドリド、エブセレン、エラグ酸、(-)-エピガロカテキン、L-エルゴチオネイン、EUK-8、フェリチン、グルタチオン、グルタチオンモノエチルエステル、α−リポ酸、ルテオリン(Luteolin)、マノアリド(Manoalide)、MCI-186、MnTBAP、MnTMPyP、モリンヒドレート、NCO-700、NDGA、p-ニトロブルー、没食子酸プロピル、レスベラトロール、ルチン、シリマリン、L-ステホリジン、タキホリン、テトランドリン、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、トロロックス(Trolox)(登録商標)、U-74389G、U-83836E、および尿酸(すべて、カルビオケム(Calbiochem)、サンジエゴ、カリホルニア州、アメリカ合衆国から入手できる)、これらは、GI-GPxのダウンレギュレーションを少なくとも部分的に補正することによりHCV感染の予防および/または治療に適用される。
【0051】
追加の抗酸化剤は、カルボン酸(例えばクエン酸)、およびフェノール化合物、例えばBHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、没食子酸プロピル、TBHQ(tert-ブチルヒドロキノン)、トコフェロール、レシチン、ガムおよび樹脂グアヤック、THBP(トリヒドロキシブチロフェノン)、チオジプロピオン酸、およびチオジプロピオン酸ジラウリル、およびグリシンよりなる群から選択される。
【0052】
酸化的傷害は、主にフリーラジカル、特に通常の細胞呼吸、および食作用細胞が細菌またはウイルス感染細胞を破壊した時に起きる酸化的バーストに由来する反応性酸素中間体により引き起こされる。傷害性の可能性のある酸素ラジカルの絶え間ない生成に対応するために、真核生物は多くの防御機構を進化させた。これらには、フリーラジカルスカベンジャーとして作用し、GI-GPxと相互作用し、GI-GPxの発現および/または産生を活性化、刺激および/または上昇させる上記抗酸化剤を含む。細胞で生成されるGI-GPxの量に対するラジカルの有利な作用は、GI-GPxのHCV誘導性のダウンレギュレーションと競合し、C型肝炎ウイルスに対する闘いにおいて細胞を支持する。
【0053】
HCV感染研究:
唯一の信頼できる実験動物HCV感染研究が、チンパンジーで行われている。いまのところ、HCVに利用できる簡単な細胞培養感染系は無い。初代細胞および細胞株でHCVのin vitro伝搬の試みを記載する多くの報告が公表されているが、その再現性、低レベルの発現および正しく制御された検出法について問題が残る(総説は、J. Gen. Virol. 81, 1631;Antiviral Chemistry and Chemotherapy 10, 99)。すなわちBartenschlagerと共同研究者が記載したレプリコン系(Lohmannら、肝癌細胞株におけるサブゲノムC型肝炎ウイルスRNAの複製、Science 285, 110, 1999)が、本明細書に開示した研究について使用された。このレプリコン系は、HCV感染を刺激するためのシステムとして使用されるHCV複製サイクルの決定的に重要な部分を再現する。Bartenschlagerのグループは、ネオマイシン−ホスホトランスフェラーゼ(NPT)遺伝子ならびにHCVゲノムのバージョン(構造HCVタンパク質の配列はここで検出された)を有する、2シストロン性組換えRNA(いわゆる「レプリコン」)を産生した。サブゲノムHCV RNA分子をヒト肝癌細胞株HuH-7中にトランスフェクション後、HCVレプリコンの効率的なRNA-依存性RNA複製を、NPT遺伝子の同時増幅と抗生物質G-418に対する生じる耐性に基づいて選択した。細胞ゲノムへのコード情報の組み込みは、機能性レプリコンの排除基準であった。ノーザンブロッティングにより検出可能な自己複製するHCV RNAを用いて、G-418耐性クローンからいくつかの株が樹立された。マイナス鎖RNA複製中間体はノーザンブロッティングまたは代謝性放射能標識により検出され、非構造性HCVタンパク質の産生は、代謝標識またはウェスタンブロッティング後に免疫沈降により証明された。
【0054】
HCVのRNA-依存性RNA複製の非構造タンパク質の宿主細胞転写への可能性のある影響および/または依存は、本明細書に記載の方法で使用されるクロンテク(Clontech)のcDNAアレイを用いる分析が可能である。HuH-pcDNA3細胞は、NPT遺伝子担持プラスミド(pcDNA3、インビトロゲン(Invitrogen))の組み込みによりG-418に耐性のHuH7細胞である。対照株と比較して3つのレプリコン株が、細胞RNA発現パターンの変化について分析される:
・HuH-9-13:持続性レプリコンIRES377/NS3-3'/wtを有する細胞株、Science 1999, 285, 110-113に記載。
・HuH-5-15:持続性レプリコンIRES389/NS3-3'/wtを有する細胞株、Science 1999, 285, 110-113に記載。
・HuH-5-15:持続性レプリコンIRES377/NS2-3'/wtを有する細胞株、Science 1999, 285, 110-113に記載。
【0055】
これらのHCVレプリコン細胞は、HCV感染細胞系の刺激、特にHCV感染哺乳動物(ヒトを含む)を刺激するための系として機能する。細胞シグナル伝達事象によるHCVの妨害は、対照細胞の細胞シグナル伝達と比較した時のディファレンシャルな遺伝子発現に反映される。シグナル伝達マイクロアレイ分析の結果は、GI-GPxの大きなダウンレギュレーションを証明した。HCVレプリコン細胞HuH-9-13、HuH-5-15およびHuH-11-7からの放射能標識した複合体cDNA−プローブは、cDNA−アレイにハイブリダイズされ、HCVレプリコンを含有しないHuH-pcDNA細胞からのcDNA−プローブとのハイブリダイゼーションと比較した。
【0056】
本明細書で報告した驚くべき結果に基づき、本発明の1つの態様は、C型肝炎ウイルス感染の予防および/または治療に有用な特異的化学物質および化合物に関する。特にこれらの特異的化学物質および化合物は、セレン、セレン塩、ビタミンD3、ペグ化および非ペグ化(標準)α−、β−、およびγ−インターフェロン、リバビリン、およびレチノイド、特にすべての型のレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸の塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、例えば9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、13-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸の塩、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、ならびに(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN)を含む。
【0057】
上記化学物質および化合物は、パラコートのような追加の化合物と組合せてもよい。
【0058】
さらに本発明は、個体のC型肝炎ウイルス感染を治療する方法を開示する。好ましくは個体は、インターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である。この方法は、細胞のGI-GPxの活性を少なくとも部分的にアップレギュレートするか、またはGI-GPxの産生を少なくとも部分的にアップレギュレートする上記の具体的な化合物および化学物質の少なくとも1つの薬剤学的に有効な量を投与する工程を含む。この化合物および化学物質に、オールトランスレチノイン酸やパラコートのような追加の物質を加えてもよい。
【0059】
本発明の同様の態様は、GI-GPxの活性を少なくとも部分的にアップレギュレートするか、またはGI-GPxの産生を少なくとも部分的にアップレギュレートする上記の具体的な化合物および化学物質の少なくとも1つの薬剤学的に有効な量を投与する工程を含んでなる、細胞または細胞培養物中のC型肝炎ウイルス感染および/またはHCV感染に関連する疾患を予防および/または治療する方法に関する。
【0060】
本発明の他の態様は、細胞のGI-GPxの活性を少なくとも部分的にアップレギュレートするか、またはGI-GPxの産生を少なくとも部分的にアップレギュレートする上記の具体的な化合物および化学物質の少なくとも1つの薬剤学的に有効な量を投与する工程を含んでなる、個体または細胞または細胞培養物中のC型肝炎ウイルス感染およびHCV感染に関連する疾患を予防および/または治療する方法を提供する。好ましくは個体は、インターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対して不応答者である。
【0061】
上記方法以外に本発明はまた、個体のGI-GPxを少なくとも部分的に活性化するか、またはGI-GPxの産生を活性化または刺激する上記の具体的な化合物および化学物質の少なくとも1つの薬剤学的に有効な量を投与する工程を含んでなる、個体のC型肝炎ウイルス感染および/またはHCV感染に関連する疾患を予防および/または治療方法に関する。再度、好ましくは個体は、インターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対して不応答者である。
【0062】
本発明の別の態様は、GI-GPxの活性を少なくとも部分的に活性化するか、または細胞でのGI-GPxの産生を少なくとも部分的に活性化または刺激する上記の具体的な化合物および化学物質の少なくとも1つの薬剤学的に有効な量を投与する工程を含んでなる、細胞または細胞培養物中のC型肝炎ウイルス感染およびHCV感染に関連する疾患を予防および/または治療する方法に関する。
【0063】
用語「関連する疾患」は、例えば日和見感染、肝硬変、肝癌、肝細胞癌、またはHCV感染とともに発症する任意の他の疾患を意味する。
【0064】
GI-GPxの機能は、細胞の過酸化物を解毒し、酸化的傷害から細胞を防御することである。HCV感染細胞を酸化的ストレス条件(好ましくはパラコートまたは過酸化物から生成するラジカル)に付すと、ラジカルの毒性に対して非感染細胞と比較してHCV感染細胞の耐性が低下する。すなわち人工的酸化的ストレス条件は、HCV感染細胞の選択的死滅を可能にする。
【0065】
有用なラジカル生成化合物(ラジカル開始剤)の例は、パラコート、2,2'-ビピリジルおよび4,4'-ビピリジル誘導体、ビス-6-(2,2'-ビピリジル)-ピリミジン、トリス-(2,2'-ビピリジル)-ルテニウムのようなビピリジル、ジベンゾイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、過酸化水素、ジ−tert-ブチルペルオキシドのような過酸化物、またはジアザイソブチロニトリルのようなジアザ化合物である。
【0066】
本発明のさらに別の態様は、セレン、セレン塩、ビタミンD3、ペグ化および非ペグ化(標準)α−、β−、およびγ−インターフェロン、リバビリン、およびレチノイド、特にすべての型のレチノイン酸、例えばオールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸の塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、13-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸の塩、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、ならびに(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN)よりなる群から選択される特異的化学物質および化合物の少なくとも1つを含む、C型肝炎ウイルスおよび/または関連する疾患に罹った個体の予防および/または治療に有用な新規治療用組成物に関する。
【0067】
本発明のさらなる実施態様は、セレン、セレン塩、ビタミンD3、およびレチノイド、例えばオールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸の塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、4-[E-2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸、および/または4-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド安息香酸、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN)よりなる群から選択される特異的化学物質および化合物の少なくとも1つの薬剤学的に有効な量を、個体または細胞に投与する工程を含んでなる、個体または細胞または細胞培養物中のC型肝炎ウイルスの産生を制御する方法であって、該物質または化合物は、該ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の活性を少なくとも部分的に活性化または上昇させ、または該物質は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の産生を少なくとも部分的に活性化または刺激する、上記方法で示される。上記化学物質および化合物は、オールトランスレチノイン酸やパラコートのような追加の化合物と組合せてもよい。好ましくは個体は、インターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対して不応答者である。
【0068】
本発明の別の態様は、C型肝炎ウイルスおよび/または関連疾患に罹った個体の予防および/または治療のための該方法で有用な新規治療用組成物に関する。該組成物は、GI-GPxの活性を上昇させることができるか、またはGI-GPxの産生および/または発現を活性化または刺激することができる、セレン、セレン塩、ビタミンD3、およびレチノイド、例えばオールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸の塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、4-[E-2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸、および/または4-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド安息香酸、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN)よりなる群から選択される特異的化学物質および化合物の少なくとも1つを含む。好適な個体は、インターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対して不応答の者である。
【0069】
本発明のさらなる態様において新規治療用組成物は、0.01〜0.15重量%、特に0.02〜0.05重量%の特異的化学物質および化合物または「物質」を含有する。
【0070】
上記化学物質および化合物は、オールトランスレチノイン酸やパラコートのような追加の化合物と組合せてもよい。
【0071】
該医薬組成物はさらに、薬剤学的に許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤を含有してもよい。
【0072】
本発明のさらなる実施態様において医薬組成物が経口投与用である場合、治療物質(または複数の物質)は、錠剤またはカプセル剤の形で投与される。かかる錠剤またはカプセル剤は、1〜300mg、好ましくは1〜150mg、さらに好ましくは1〜100mg、および特に1〜50mgの物質を含有してもよい。
【0073】
上記の特異的物質の少なくとも1つの治療的有効量を個体(患者)に適用する別の可能な方法は、物質をリポソームに含有させて、リポソームを個体に投与する方法である。リポソームは、典型的には約25nm〜約5μmの直径を有する球形粒子である。リポソームは通常、水性の内部コンパートメントを有する1つ以上の同心円の脂質二重層(いわゆる「脂質小胞」)を含む。リポソームは、医薬物質の担体として知られており、この物質はある臓器や細胞組織でリポソームにより選択的に濃縮される。例えばAdv. Drug Deliv. Rev. 19, 425〜444 (1996)およびScience 267, 1275以降(1995)を参照されたい。
【0074】
本明細書において用語「アクチベーター」は、GI-GPxの量および/または活性またはその発現をアップレギュレートする、活性化する、刺激する、または上昇させることができる任意の化合物を意味する。
【0075】
本明細書において用語「インヒビター」は、GI-GPxの量および/または活性またはその発現をダウンレギュレートする、低下させる、不活性化させる、抑制する、または制御することができる任意の化合物を意味する。一般にGI-GPxインヒビターは、タンパク質、オリゴ−およびポリペプチド、核酸(例えばRNAi)、遺伝子、小化学分子、または他の化学的部分でもよい。
【0076】
本明細書において用語「物質」は、レギュレーター、インヒビター、および/またはアクチベーターと同義である。すなわち用語「物質」は、GI-GPxの量および/または活性またはGI-GPxの発現を、ダウンレギュレートもしくはアップレギュレートする、低下もしくは上昇させる、抑制もしくは刺激する、不活性化もしくは活性化する、または制御もしくは影響することができる、任意の化学もしくは生物学的化合物を意味する。
【0077】
DNAからタンパク質へ遺伝情報を伝える役割以外に、RNA分子は多くの細胞プロセスに積極的に参加する。例は、翻訳(rRNA、tRNA、tmRNA)、細胞内タンパク質ターゲティング(SRP)、プレmRNAの核スプライシング(snRNP)、mRNAエディッティング(gRNA)、およびX染色体不活性化(Xist RNA)である。これらのRNA分子のそれぞれは、タンパク質をコードすることなく、それ自体機能性生成物として作用する。RNA分子は、明確な構造的特徴を有するユニークな形に折り畳まれ、一部のRNAは特異的タンパク質または小分子(例えばATP結合アプタマーにおけるように)に結合し、他のものは特定の化学反応を触媒する。すなわちRNAアプタマーは、GI-GPxと相互作用して、該ペルオキシダーゼの活性および生物学的機能を調節、制御、活性化または阻害するように、使用することができる。
【0078】
本明細書において用語「発現および/または活性を制御する」とは一般に、細胞成分の量または活性(機能)を制御または調節するように機能する任意のプロセスを意味する。静的制御は、ある一定レベルで発現および/または活性を維持する。アップレギュレーションは、発現および/または活性の相対的上昇を意味する。従ってダウンレギュレーションは、発現および/または活性の相対的低下を意味する。ダウンレギュレーションは、ある細胞成分の活性の阻害と同義である。
【0079】
本発明のさらなる態様は、個体または細胞または細胞培養物に、薬剤学的に有効な量の物質を投与する工程を含んでなる、個体または細胞または細胞培養物中のヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の発現を制御するための方法であって、該物質は、該ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管をコードするDNAの転写および/またはRNAの翻訳を、少なくとも部分的に阻害または低下させる、方法に関する。また、好適な個体は、インターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対して不応答の者である。
【0080】
治療薬、薬剤学的に活性な物質またはインヒビターは、それぞれin vitroで個体からの細胞に投与されるか、または個体へのin vivo投与でもよい。用語「個体」は、好ましくは哺乳動物および最も好ましくはヒトを意味する。個体への医薬調製物の投与経路には、経口と非経口があり、皮膚、皮内、消化管内、皮内、脈管内、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻内、膣内、頬内、経皮、直腸、皮下、舌下、局所もしくは経皮塗布があるが、これらの投与法に限定されない。例えば、好適な調製物は経口投与に適した投与型である。これらの投与型には、例えば丸剤、錠剤、フィルム錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、散剤および被覆物がある。個体への投与は、単回投与または繰り返し投与でもよく、種々の生理学的に許容される塩の型でもよく、および/または薬剤学的に許容される担体、結合剤、滑沢剤、賦形剤、希釈剤、および/またはアジュバントとともに投与されてもよい。薬剤学的に許容される塩の型および薬剤調製法は、当業者に公知である。
【0081】
本明細書においてGI-GPxアクチベーターの「薬剤学的に有効な量」は、in vitroで処理された細胞もしくは細胞培養物、またはin vivoで処理された被験体(例えば、個体、特にヒト)で、所望の生理学的結果を達成するのに有効な量である。特に薬剤学的に有効な量は、ウイルス感染に関連する臨床的に明確な病態プロセスの1つ以上を、ある期間阻害するのに充分な量である。有効量は、選択される特定のGI-GPxインヒビターまたはアクチベーターに依存し、また治療される被験体および感染の重症度に関連する種々の要因や条件に依存する。例えば、アクチベーターがin vivoで投与されるなら、患者の年齢、体重および健康ならびに前臨床動物試験で得られる用量応答曲線および毒性データのような因子が考慮すべきものである。アクチベーターがin vitroで細胞または細胞培養物と接触させられるなら、種々の前臨床のin vitro試験を計画して、取り込み、半減期、用量、毒性などのパラメータも評価するであろう。ある物質の薬剤学的に有効な量の決定は、当業者の能力の範囲内である。上記したように本発明の「治療的有効量」の物質および化合物は、0.01〜0.15重量%の医薬組成物でもよい。錠剤またはカプセル剤が投与型で使用される場合、その錠剤またはカプセル剤中の有効な物質または化合物の量は、1〜300mg、好ましくは1〜150mg、さらに好ましくは1〜100mg、および特に1〜50mgである。
【0082】
本開示は初めて、セレン、セレン塩、ビタミンD3、ペグ化および非ペグ化(標準)α−、β−、およびγ−インターフェロン、リバビリン、およびレチノイド、特にすべての型のレチノイン酸、例えばオールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸の塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、13-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸の塩、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、13-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、ならびに4-[E-2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸、および/または4-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]カルボキサミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN)よりなる群から選択される特異的化合物および化学物質を使用する、C型肝炎ウイルスのウイルス感染に特異的に関与するGI-GPxのアップレギュレーションを教示する。上記の化学物質および化合物は、オールトランスレチノイン酸やパラコートのような追加の化合物と組合せてもよい。
【0083】
同様に発現量を決定するために、遺伝子発現のポリペプチド産物を測定してもよい。タンパク質を測定する方法には、特に限定されないが、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、放射免疫定量法、免疫組織化学、および並んだアレイ中のペプチド固定化がある。しかし特異的なタンパク質またはmRNA生成物を特異的かつ定量的に測定する任意の方法を使用することができる。
【0084】
本発明はさらに、マイクロアレイ構成と分析の分野で公知の方法を参照することによりその全体を本明細書に組み込む。これらの方法には、特に限定されないが、バイオポリマー化合物のアレイおよびその製造法を記載する以下の特許および特許出願がある:
【0085】
米国特許第5,242,974号;5,384,261号;5,405,783号;5,412,087号;5,424,186号;5,429,807号;5,436,327号;5,445,934号;5,472,672号;5,527,681号;5,529,756号;5,545,531号;5,554,501号;5,556,752号;5,561,071号;5,559,895号;5,624,711号;5,639,603号;5,658,734号;5,807,522号;6,087,102号;WO93/17126;WO95/11995;WO95/35505;EP742287;およびEP799897。
【0086】
これらの方法には、特に限定されないが、種々の用途でアレイを使用する方法を記載する以下の特許および特許出願がある:
【0087】
米国特許第5,143,854号;5,288,644号;5,324,633号;5,432,049号;5,470,710号;5,492,806号;5,503,980号;5,510,270号;5,525,464号;5,547,839号;5,580,732号;5,661,028号;5,994,076号;6,033,860号;6,040,138;6,040,140号;WO95/21265;WO96/31622;WO97/10365;WO97/27317;EP373203;およびEP785280。
【0088】
C型肝炎ウイルス(HCV)の確固とした細胞培養系は確立されていない。このために、モデル系(感染可能な唯一の動物はヒトとチンパンジーである)でHDVがいかに細胞に感染するかを研究し抗ウイルス薬を試験することが極めて困難である。培養系を考案するための大きな一歩が、レプリコン細胞株により確立された(Lohmann, V., Korner, F., Koch, J.-O., Herian, U., Theilmann, L. およびBartenschlager, R. 1999. 肝癌細胞株におけるサブゲノムC型肝炎ウイルスRNAの複製、Science 285, 110-113)。培養肝細胞中のサブゲノムHCV RNAの複製が、初めて得られた。これらのサブゲノムレプリコンは、非構造タンパク質をコードするが、細胞中で複製される能力がありウイルスタンパク質を合成することができるHCVゲノムの部分のみからなる。上記で引用したLohmannらの科学文献に記載され本発明で使用されるレプリコンは、細胞培養物中のHCV複製、病因、および進化の研究を可能にする。これらはまた、あるタイプの抗ウイルス薬の細胞ベースの試験を可能にする。
【0089】
最近、消化管−グルタチオンペルオキシダーゼ(GI-GPx)が、HCV複製における標的として確認された(WO02/084294)。上記したように、GI-GPxはセレノタンパク質のファミリーに属し、グルタチオンを還元性基質として使用して、種々のヒドロペルオキシドの還元を触媒することにより、酸化的傷害に対して真核細胞の防御機構において重要な役割を果たす。この酵素は、過酸化的傷害に対して細胞膜系を防御する機構として機能することが示唆されている。必要な微量元素としてのセレンは、この酵素の基本的な機能を示唆する。
【0090】
セレンは、哺乳動物系内で主にセレノタンパク質の形で機能する。セレノタンパク質はセレンをセレノシステインとして含有し、種々の生理学的役割を果たす。17個のセレノタンパク質が同定されている:細胞性または古典的グルタチオンペルオキシダーゼ;血漿(または細胞外)グルタチオンペルオキシダーゼ;リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ;消化管グルタチオンペルオキシダーゼ;セレノタンパク質P;1、2および3型ヨードチロシン脱ヨード酵素;セレノタンパク質W;チオレドキシン還元酵素;およびセレノホスフェートシンセターゼ。これらのうち、細胞性および血漿グルタチオンペルオキシダーゼは、セレン状態の評価に使用される機能性パラメータである(D.H. Holben, A.M. Smith, J. Am. Diet. Assoc. 1999, 99, 836-843)。
【0091】
GI-GPxは、モックトランスフェクションしたHuH7細胞と比較して、HCVレプリコン細胞中で劇的にダウンレギュレートされる。レプリコン細胞にGI-GPxを強制的に再発現させる(例えば、アデノウイルスを含有するGI-GPxで感染することにより)と、サブゲノムHCV RNAおよびHCVタンパク質NS5aが、ほとんど検出できないレベルまで低下する(WO02/084294を参照)。本発明においてこの逆相関の情報は、細胞性の内因性GI-GPx遺伝子の発現をアップレギュレートする方法を開発するのに使用された。このレプリコン細胞中のアップレギュレーションは、HCVの枯渇を引き起こす。
【0092】
本明細書に記載の本発明の組成物と方法の他の適切な修飾と適用が、明らかであり、本発明または本明細書に記載の実施態様の範囲を逸脱することなく可能であることは、当業者に明らかである。本発明を詳細に説明したため、本発明は以下の実施例(これらは、例示のためのみであり、決して本発明を限定するものではない)を参照することにより、より明確に理解されるであろう。
【0093】
実施例
WO02/084294の実施例が参照される(これは参照することにより本明細書に組み込まれる)。
【0094】
さらに、HCV複製のモデル系として、R. Bartenschlager教授(ハイデルベルグ大学、ドイツ連邦共和国)により提供された3つのレプリコン細胞株が使用された。培養物を種々の期間、比較目的にオールトランスレチノイン酸(RA)、および他の物質、セレン、セレン塩、ビタミンD3とレチノイド、例えば9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN)(シグマ(Sigma)から得られる)を用いて処理した。GI-GPxの発現レベルを、Bartenschlager教授(ハイデルベルグ大学、ドイツ連邦共和国)により提供された抗体を使用してウェスタンブロッティングによりタンパク質レベルで、およびプローブとしてGI-GPx特異的オリゴヌクレオチドを使用してノーザンブロッティングによりRNAレベルで、測定した。HCV RNAのレベルは、プローブとしてネオマイシンホスホトランスフェラーゼに対して相補的なDNAオリゴヌクレオチドを使用するノーザンブロッティングにより試験した。ウイルスタンパク質NS5aの濃度は、NS5a特異的抗体を用いてウェスタンブロッティングにより測定した(バイオジェネシス(Biogenesis)、英国)。
【0095】
レプリコン細胞をオールトランスレチノイン酸(1μM)で3日間処理しても、GI-GPxおよびHCV発現にはほとんど影響は無かった。しかし7日間のインキュベーション後、RNAレベルとタンパク質レベルでGI-GPxの劇的なアップレギュレーション(3〜4倍)が観察された。同時にサブゲノムHCV RNAとウイルスタンパク質NS5aの発現が、試験した細胞株に依存して2〜5倍ダウンレギュレートされた。さらに驚くべきことに、HCV RNAと-NS5aタンパク質のさらなるダウンレギュレーションが、セレンまたはセレン塩、例えば亜セレン酸ナトリウム(50nM)の添加に依存することがわかった。この事実は、HCVのダウンレギュレーションが、まずレチノイン酸による転写レベルでのGI-GPx遺伝子の活性化により、次に亜セレン酸ナトリウムが必要なセレノタンパク質の合成により促進された。実際、HCVのオールトランスレチノイン酸誘導性のダウンレギュレーションは、インターフェロンにより誘導される固有の免疫応答には依存しないことが証明された。すなわちオールトランスレチノイン酸は、PKR(2本鎖RNA依存性タンパク質キナーゼ)の転写を誘導しなかった。オールトランスレチノイン酸でも亜セレン酸ナトリウムでも、または両方を組合せても、重症の細胞障害作用は観察されなかった。
【0096】
提示した知見は、HCV陽性患者の治療にレチノイド(セレンまたは亜セレン酸ナトリウムのようなセレン塩、および/またはcAMPおよび/またはその類似体と組合せて)が使用できることを証明する。特にGI-GPxの誘導に対して高い特異性を有するレチノイド(例えばN-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN))の使用が好ましい。4-HPRとAHPNは、HCV感染における多くの前癌状態および癌状態の予防と治療における治療薬として大きな可能性を示す。実際得られたデータは、オールトランスレチノイン酸に次いで、他の核受容体リガンド、例えば9-シスレチノイン酸ならびにその塩、9-シスレチノイン酸C1〜C10アルキルエステルならびにその塩、9-シスレチノイン酸C1〜C10アルキルアミドならびにその塩、およびビタミンD3もまた、HCV負荷を低下させることができることを示す。
【0097】
GI-GPxプロモーターが3つのレチノイン酸受容体認識因子を含有するという事実のために、レプリコン細胞に対して6日間オールトランスレチノイン酸を作用させると、GI-GPx RNAとタンパク質をアップレギュレートした。セレンまたはセレン塩(例えば亜セレン酸ナトリウム)の存在下で、毒性作用無しでHCV-RNAとHCV-NS5aタンパク質の2〜5倍の低下が観察された。さらに特異的レチノイド、例えばN-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(CD437;AHPN)、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸C1〜C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸C1〜C10アルキルアミド、およびビタミンD3は、単独でまたは互いに組合せると、またはセレンもしくはセレン塩と組合せると、同様の作用を示した。
【0098】
さらに、最初の予備結果は、9-シスレチノイン酸とその上記したアルキルおよびアミド誘導体が、オールトランスレチノイン酸単独よりはるかに強くHCV RNAをダウンレギュレートすることを示した。
【0099】
9-シスレチノイン酸を含有するローション剤(溶液)、ゲル、クリーム剤、軟ゼラチンカプセル剤、硬ゼラチンカプセル剤、錠剤およびサシェについての投与型を記載する以下の例は、US-A-5,428,071とEP-B1-0552624から得られる。
【0100】
【表1】

* または他の界面活性剤
** または他の錯体形成剤、例えばEDTA
*** または他のアルコール、例えばエタノール
【0101】
【表2】

* または他の界面活性剤
** または他の錯体形成剤、例えばEDTA
*** または他のアルコール、例えばエタノール
**** ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または他のポリマー、例えば中和カルボマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム
***** 保存剤、例えばパラベンエステル(メチル、エチル、プロピル、ブチル)、ソルビン酸、安息香酸
【0102】
【表3】

* 例えば、カプリル酸/カプリン酸/トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、天然のグリセリド、ならびに例えばプロピレングリコール、ジカプリル酸/ジカプリン酸、および蝋、例えばステアリン酸ステアリル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル
** セテアレス(Ceteareth)5-30、または他の乳化剤、例えばポリソルベート20-80、脂肪酸のソルビタンエステル、PEGの脂肪酸エステル。
*** 保存剤、例えばパラベンエステル(メチル、エチル、プロピル、ブチル)、ソルビン酸、安息香酸
【0103】
【表4】

* 天然の植物油、例えばダイズ油、ピーナツ油、および人工グリセリド
** 天然のおよび人工の蝋または部分的に水和された脂肪の組成物
【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【0107】
以下において試験の結果は、インターフェロン治療に不応答性のHCV感染細胞の治療について、レチノイン酸とその誘導体に関して提示される。
オールトランスレチノイン酸(ATRA)またはその一部の誘導体によりHCVレプリコン細胞株を治療すると、HCV RNAとNS5aタンパク質の発現が抑制された(図1、パネルA)。基礎的機構は、セレノシステインタンパク質消化管グルタチオンペルオキシダーゼ(GI-GPx)遺伝子のアップレギュレーションによることを多くの知見が証明する(図1、パネルB)、例えばこの作用は、亜セレン酸ナトリウム(50nM)を細胞培養培地(図1、パネルA)に与えた時最も顕著であり、これは、GI-GPxタンパク質の合成とアップレギュレーションに必要である(図1、パネルB)。
【0108】
レチノイン酸(RA)−およびインターフェロン(IFN)−依存性経路
レチノイン酸研究の仮定で、RA作用が、インターフェロン応答を活性化することによっても仲介されるかどうかを調べた。典型的なインターフェロン誘導性遺伝子は、2本鎖RNA依存性タンパク質キナーゼ(PKR)をコードする。モックトランスフェクションしたHuH7細胞(pcDNA3)とレプリコン細胞株をATRA(1μM)で処理したが、ノーザンブロッティングで追跡したPKR mRNAレベルのアップレギュレーションは観察されなかった。しかし対照としてのIFNは、PKR mRNAの劇的なアップレギュレーションを引き起こした。レプリコン細胞株の例を図1、パネルCに示す。
【0109】
これらの結果は、RAがIFNとは独立にレプリコン系に作用することを示す。これらの結果はさらに、IFN治療で反応しないHCV-患者(いわゆる不応答者)がRA治療により治療されることを意味する。
【0110】
残念ながら、この仮説を直接検定するIFN耐性のレプリコン系は文献に記載されていない。
【0111】
IFNとの併用におけるRAの作用
最近の文献(レチノイン酸は、I型インターフェロン受容体の発現上昇を介してC型肝炎ウイルス複製に対するインターフェロンの抗ウイルス作用を増強する、Hamamotoら、J. Lab. Clin. Med. 141, 2003, 58-66)では、HuH7細胞をATRAと9-シスRAで処理すると、インターフェロンI型受容体サブユニットの発現が誘導される(RNAレベルで24時間後に最大2倍、TaqMan分析)ことが証明された。興味深いことにこの作用は、用量に依存しなかった(上記で引用したHamamotoの文献の図2)。IFN処理は、トランスフェクションされたHCV(レプリコン−)RNAの濃度を低下させ、この作用は、RAで処理することにより増強された。著者らは、RAが、HuH7細胞中でI型IFN−受容体のアップレギュレーションを介してIFN−アルファの抗HCV複製作用を上昇させると結論している。
【0112】
レプリコン細胞をATRAで処理後のインターフェロン受容体の発現を、ウェスタンブロッティングにより分析したが、タンパク質レベルでのインターフェロン受容体のアップレギュレーションは観察されなかった。
【0113】
治療濃度以下のIFN アルファを使用して、我々は、HCVタンパク質NS5aの用量依存性低下を見いだした(図2、左のパネル)。RAの存在下で、HCVダウンレギュレーションがわずかに増強された(中央のパネル)。最も強い作用は、IFNをATRAと亜セレン酸ナトリウムの両方とともに適用した時、観察された(図2、右のパネル)。
【0114】
データは、IFNとRA作用は相加的であり、HCVをダウンレギュレートするその機構が独立であることを示す。この知見はさらに、RAがIFN耐性患者(不応答者)で作用するという仮説を支持する。
【0115】
Hamamotoが提示した結果を本明細書に記載の結果と比較すると、以下が明らかである:
【0116】
両方のグループともIFNとRAは相加的抗HCV作用を促進するという同じ結論に至った。しかしHamamotoは、このRA作用がIFNI型受容体のアップレギュレーションによる(再現されなかった知見)と主張するが、本発明に従うと、RA作用はGI-GPxのアップレギュレーションによると考えられる。
【0117】
さらにいくつかのレチノイド(すなわち、オールトランスレチノイン酸(ATRA);9-シスレチノイン酸(9-シスRA);13-シスレチノイン酸(13-シスRA);(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB);(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580);N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR))が核受容体(RAR=レチノイン酸受容体;RXR=レチノイドX受容体)のリガンドとして作用する能力を試験し、非レチノイド物質(11-メトキシ-3,7,11-トリメチル-2E,4E-ドデカジエン酸=メトプレン酸)と比較した。結果を以下の表1に示す。
【0118】
【表8】

* Kd=解離定数
** EC50=エフェクター濃度(50%作用を示す濃度)
+++=非常に強い阻害作用;++=中程度の阻害作用;-=阻害作用無し
【0119】
データは、RXRではなくRARが、グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管(GI-GPx)プロモーターのアップレギュレーションに関与していることを示す。データはさらに、HCV複製の阻害がGI-GPx mRNAのアップレギュレーションに連結していることを示す。
【0120】
予備的試験は、レチノイン酸(例えば、ベサノイド(Vesanoid)(登録商標)、ロシュファーマシューチカルズ(Roche Pharmaceuticals)、ナトレイ(Nutley)、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)またはレチノイドを、約1〜100mg/m2/日、好ましくは20〜80mg/m2/日、さらに好ましくは30〜60mg/m2/日、および特に40〜50mg/m2/日で投与してもよいことを証明した。適当な投与は、1日に1〜4回、好ましくは1日に1〜3回、および特に1日に2回である。
【0121】
併用療法を適用するなら、上記の量のレチノイン酸またはレチノイド以外に、インターフェロン(例えば、ペグ化インターフェロンα、例えばペガシス(Pegasys)(登録商標)(ホフマン−ラロッシュ(Hoffmann-La Roche))を、約135〜180μg/週の量(好ましくは週に1回投与)投与してもよい。
【0122】
不応答者のHCV感染の治療のために、ATRA単独による治療が特に好ましい。さらにATRA+インターフェロン(ペグ化または非ペグ化α−、β−、およびγ−インターフェロン)、ATRA+インターフェロン(ペグ化または非ペグ化α−、β−、およびγ−インターフェロン)+セレンもしくはセレン塩、またはATRA+セレン(および/またはセレン塩)およびリバビリンによる治療が特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
(原文記載なし)
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染および/またはHCV感染に関連する少なくとも1つの疾患に罹った個体の予防および/または治療に有用な組成物であって、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸の塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される少なくとも1つの物質を含んでなる組成物。
【請求項2】
組成物は0.01〜0.15重量%の前記物質を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
組成物は0.02〜0.05重量%の前記物質を含む、請求項1または2の組成物。
【請求項4】
セレン塩は亜セレン酸ナトリウムである、前記請求項のいずれか1項の組成物。
【請求項5】
以下の化合物、ペグ化α−、β−、および/またはγ−インターフェロン、非ペグ化(標準)α−、β−、および/またはγ−インターフェロン、およびリバビリンの少なくとも1つをさらに含む、前記請求項のいずれか1項の組成物。
【請求項6】
パラコートをさらに含む、前記請求項のいずれか1項の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの薬剤学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含む、前記請求項のいずれか1項の組成物。
【請求項8】
HCV感染および/またはHCV感染に関連する少なくとも1つの疾患に罹った個体は、インターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である、前記請求項のいずれか1項の組成物。
【請求項9】
C型肝炎ウイルス感染および/またはHCV感染に関連する疾患の治療および/または予防用の医薬組成物の調製のための、物質セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)の少なくとも1つの使用。
【請求項10】
組成物は0.01〜0.15重量%の前記物質を含む、請求項9の使用。
【請求項11】
組成物は0.02〜0.05重量%の前記物質を含む、請求項9または10の使用。
【請求項12】
セレン塩は亜セレン酸ナトリウムである、請求項9〜11のいずれか1項の使用。
【請求項13】
組成物は、以下の化合物、ペグ化α−、β−、および/またはγ−インターフェロン、非ペグ化(標準)α−、β−、および/またはγ−インターフェロン、およびリバビリンの少なくとも1つをさらに含む、請求項9〜12のいずれか1項の使用。
【請求項14】
組成物は、パラコートをさらに含む、請求項9〜13のいずれか1項の使用。
【請求項15】
該組成物は経口投与用である、請求項9〜14のいずれか1項の使用。
【請求項16】
該組成物は局所投与用である、請求項9〜14のいずれか1項の使用。
【請求項17】
該組成物の経口投与単位は、1〜300mg、好ましくは1〜150mg、さらに好ましくは1〜100mg、および特に1〜50mgの前記物質を含有する、請求項15の使用。
【請求項18】
医薬組成物は、HCV感染および/またはHCV感染に関連する疾患を有する個体の治療および/または予防用であり、個体はインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である、請求項9〜17のいずれか1項の使用。
【請求項19】
経口投与用の単位剤形の組成物であって、活性成分として、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される少なくとも1つの物質と、経口投与に適した薬剤学的に許容される担体とを含み、該物質は、約1〜50mgの量で前記単位剤形中に存在し、該単位剤形は錠剤またはカプセル剤である組成物。
【請求項20】
パラコートをさらに含む、請求項19の組成物。
【請求項21】
個体のC型肝炎ウイルス感染および/またはHCV感染に関連する疾患を予防および/または治療する方法であって、薬剤学的に有効な量のセレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)を、個体に投与する工程を含む方法。
【請求項22】
個体はインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である、請求項21の方法。
【請求項23】
細胞または細胞培養物のC型肝炎ウイルス感染および/またはHCV感染に関連する疾患を予防および/または治療する方法であって、薬剤学的に有効な量のセレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)を、個体に投与する工程を含む方法。
【請求項24】
個体のC型肝炎ウイルスの産生を制御する方法であって、薬剤学的に有効な量のセレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)を、個体に投与する工程を含む方法。
【請求項25】
個体はインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である、請求項24の方法。
【請求項26】
細胞または細胞培養物のC型肝炎ウイルスの産生を制御する方法であって、薬剤学的に有効な量のセレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)を、細胞または細胞培養物に投与する工程を含む方法。
【請求項27】
パラコートを投与することをさらに含む、請求項21〜26のいずれか1項の方法。
【請求項28】
C型肝炎ウイルス感染および/またはHCV感染に関連する疾患の治療および/または予防用の医薬組成物の単位剤形の調製のための、物質セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)の少なくとも1つの使用であって、医薬組成物は薬剤学的に許容される担体をさらに含む使用。
【請求項29】
組成物は、化合物オールトランスレチノイン酸、ペグ化α−、β−、および/またはγ−インターフェロン、非ペグ化(標準)α−、β−、および/またはγ−インターフェロン、およびリバビリンの少なくとも1つをさらに含む、請求項28の使用。
【請求項30】
セレン塩は亜セレン酸ナトリウムである、請求項28または29の使用。
【請求項31】
組成物はパラコートをさらに含む、請求項28〜30のいずれか1項の使用。
【請求項32】
該組成物は経口投与用である、請求項28〜31のいずれか1項の使用。
【請求項33】
経口投与用の単位剤形は錠剤またはカプセル剤である、請求項32の使用。
【請求項34】
錠剤またはカプセル剤は、1〜300mg、好ましくは1〜150mg、さらに好ましくは1〜100mg、および特に1〜50mgの前記物質を含有する、請求項33の使用。
【請求項35】
該組成物は局所投与用である、請求項28〜31のいずれか1項の使用。
【請求項36】
個体のC型肝炎ウイルス感染および/またはHCV感染に関連する疾患を予防および/または治療する方法であって、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の活性を少なくとも部分的に活性化するか、あるいは該ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の産生を少なくとも部分的に活性化または刺激する、薬剤学的に有効な量のセレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸の塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)を投与する工程を含む方法。
【請求項37】
個体はインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である、請求項36の方法。
【請求項38】
細胞または細胞培養物のC型肝炎ウイルス感染および/またはHCV感染に関連する疾患を予防および/または治療する方法であって、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の活性を少なくとも部分的に活性化するか、または該ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の産生を少なくとも部分的に活性化または刺激する、薬剤学的に有効な量のセレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)を投与する工程を含む方法。
【請求項39】
個体のC型肝炎ウイルスの産生を制御する方法であって、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される物質の薬剤学的に有効な量を個体に投与する工程を含み、該物質は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の活性を少なくとも部分的に活性化するか、あるいは該物質は、該ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の産生を少なくとも部分的に活性化または刺激する方法。
【請求項40】
個体はインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である、請求項39の方法。
【請求項41】
細胞または細胞培養物のC型肝炎ウイルスの産生を制御する方法であって、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される物質の薬剤学的に有効な量を投与する工程を含み、該物質は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の活性を少なくとも部分的に活性化するか、あるいは該物質は、該ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の産生を少なくとも部分的に活性化または刺激する方法。
【請求項42】
個体のヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の発現を制御する方法であって、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される物質の薬剤学的に有効な量を個体に投与する工程を含み、該物質は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管をコードするDNAの転写および/またはRNAの翻訳を少なくとも部分的に阻害する方法。
【請求項43】
個体はインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である、請求項42の方法。
【請求項44】
個体のヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の発現を制御する方法であって、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される物質の薬剤学的に有効な量を個体に投与する工程を含み、該物質は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管をコードするDNAの転写および/またはRNAの翻訳を少なくとも部分的に活性化する方法。
【請求項45】
個体はインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対する不応答者である、請求項44の方法。
【請求項46】
細胞または細胞培養物のヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の発現を制御する方法であって、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される物質の薬剤学的に有効な量を細胞または細胞培養物に投与する工程を含み、該物質は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管をコードするDNAの転写および/またはRNAの翻訳を少なくとも部分的に活性化する方法。
【請求項47】
個体のヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の活性を制御する方法であって、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される物質の薬剤学的に有効な量を個体に投与する工程を含み、該物質は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管と相互作用する方法。
【請求項48】
個体はインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対して不応答者である、請求項47の方法。
【請求項49】
細胞または細胞培養物のヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管の活性を制御する方法であって、セレン、セレン塩、ビタミンD3、オールトランスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、オールトランスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、9-シスレチノイン酸、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステル、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルエステルの塩、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミド、9-シスレチノイン酸のC1-C10アルキルアミドの塩、(E)-4-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)、(4-[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸(AM-580)、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチナミド(4-HPR)、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸(AHPN)よりなる群から選択される物質の薬剤学的に有効な量を細胞または細胞培養物に投与する工程を含み、該物質は、ヒト細胞タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ−消化管と相互作用する方法。
【請求項50】
パラコートを投与することをさらに含む、請求項36〜49のいずれか1項の方法。

【公表番号】特表2006−514094(P2006−514094A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570683(P2004−570683)
【出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013514
【国際公開番号】WO2004/050101
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(503318747)ゲーペーツェー バイオテック アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】