説明

CD20抗体による認知症又はアルツハイマー病の治療方法

B細胞悪性腫瘍又はアルツハイマー病以外のいずれの自己免疫性疾患にも罹っていない患者における、CD20抗体を用いたアルツハイマー病(AD)又は認知症の治療方法を開示する。また、この方法への使用のための製造品も開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連出願)
本出願は、その全体の開示内容が出典明記により本明細書中に援用される2005年4月22日出願の仮出願第60/674028号に基づく米国特許法119条の優先権を主張する非仮出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、CD20抗体を用いた、ヒト患者のAD又は認知症の治療方法、並びにその使用のための指示書を具備する製造品に関する。
【0003】
(発明の背景)
アルツハイマー病(AD)は今日の健康管理における重大な問題であり、過去10年間では、公知の有益な治療がなかった。最も一般的な脳の神経変性疾患であるADはすべての認知症症例のおよそ70%を占める。この認知症は一般に、記憶、混乱、視覚空間、計算、判断及び、おそらく妄想及び幻覚の問題が明らかとなっている。疾患の初期には、認知症の行動の徴候はわずかであり、気付かれないことが多い。疾患の中間段階では、患者が単独で作業をまだ行うことができる反面、複雑な作業では援助が必要となることが多い。後期の段階では、さらに一般的な身体の機能、例えば咀嚼や嚥下、腸及び膀胱コントロール及び、呼吸行動が失われ、患者は寝たきりになることが多い。一般的に、疾患の発症後およそ5〜10年に死に至る。現在、ADは米国での主要な死因の第4番目である。
【0004】
ADにおいて、進行性神経変性は、相対的に、核基底層、海馬、扁桃体、嗅内皮質、そして最終的に側頭部、前頭部及び頭頂部の高位連合野の選択的な併発を含む、脳の複数の領域に起こる。神経系損傷及びシナプス密度の付随欠損は、学習及び記憶の検索に必須であるいくつかの神経系を使用不能にする。
もっとも一般的なADは孤発性ADと称され、すべての診断された症例のおよそ90%を占める。このAD型は、家族性ADの遺伝的原因と結びつかなかったので、通常、孤発性と称する。それでも、遺伝した危険因子がこの型の疾患において作用するかもしれない。
【0005】
Lal及びForsterは、自己免疫性及び加齢性の認知減退を再検討し、C57BL/6マウスにおける脳応答性抗体(BRA)の存在を検討している(Lal and Forster, Neurobiology of Aging, 9: 733-742 (1988))。Toro等は、Rev. Neurol. 29(12): 1104-7 (1999)において、プレセニリン-1遺伝子(PS-1)にE280A突然変異を有するアルツハイマー病患者の血清のカルジオリピン及びβ-アミロイドに対する自己抗体のレベルを調査した。ADにおける自己抗体は、Terryberry等 Neurobiology of Aging 19(3): 205-216 (1998)、Singh等 Neurosci. Lett 147(1): 25-28 (1992)、Davydova等 Bull Exp. Biol. Med. 134(1): 23-25 (2002)、Capsoni等 Mol. Cell. Neurosci. 21(1): 15-28 (2002)、Evseev等 Bull Exp. Biol. Med. 131(4): 305-308 (2001)、Appel等 Ann. N. Y. Acad. Sci. 747: 183-194 (1994)、D'Andrea, M. Brain Res. 982(1): 19-30 (2003)、Mruthinti等 Neurobiol Aging. 25(8): 1023-1032 (2004)、Nath等 Neuromolecular Med. 3(1): 29-39 (2003)、Weksler及びGoodhardt Exp Gerontol. 37:971-979 (2002)、及びFurlan等 Brain 126(Pt 2): 285-291 (2003)を含む他の文献によって調べられている。
また、AD療法に関しては、Keimowitz, R. Arch Neurol. 54(4): 485-8 (1997)、Aisen等 Neurology. 54(3): 588-93 (2000)、及びAisen等 Dementia. 7(4): 201-6 (1996)も参照のこと。
5つの処方薬は、ADを治療するために米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている。軽度〜中程度のADを治療するために承認されている医薬のうちの4つは、コリンエステラーゼ阻害薬:ガランタミン(REMINYL(登録商標))、リバスチグミン(EXELON(登録商標))、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))及びタクリン(COGNEX(登録商標))である。5つ目の承認された医薬はNメチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニストであり、メマンチン(NAMENDA(登録商標))と称され、中程度〜重度のADの治療のために承認されている。
【0006】
CD20抗体及びそれを用いた治療
リンパ球は、造血過程の間に骨髄において生産される多種ある白血球のうちの1つである。リンパ球の2つの主な分類は、Bリンパ球(B細胞)とTリンパ球(T細胞)である。ここで特に対象とするリンパ球はB細胞である。
B細胞は骨髄内で成熟して、その細胞表面上に抗原結合抗体を発現する骨髄を放出する。天然のB細胞がその膜結合性抗体に特異的な抗原と初めて遭遇すると、細胞は速やかに分離し、その子孫はメモリーB細胞と「プラズマ細胞(形質細胞、plasma cell)」と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。メモリーB細胞は長い寿命を持ち、本来の親細胞と同じ特異性を有する膜結合性抗体を発現し続ける。プラズマ細胞は、膜結合性抗体を発現する代わりに、分泌型抗体を産生する。分泌された抗体は、体液性免疫の主要なエフェクター分子である。
【0007】
CD20抗原(ヒトBリンパ球制限分化抗原、Bp35とも呼ばれる)はプレB及び成熟Bリンパ球上に位置するおよそ35kDの分子量の疎水性膜貫通型タンパク質である(Valentine等, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287 (1989);及びEinfeld等, EMBO J. 7(3):711-717(1988))。該抗原はまたB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上に発現されるが(Anderson等, Blood 63(6):1424-1433 (1984))、造血幹細胞、プロB細胞、正常なプラズマ細胞又は他の正常な組織上には見出されない(Tedder等, J. Immunol. 135(2):973-979 (1985))。CD20は分化及び細胞周期の開始の活性化過程における初期段階を調節し(上掲のTedderら)、おそらくはカルシウムイオンチャネルとして機能する(Tedder等, J. Cell. Biochem. 14D:195 (1990))。
【0008】
B細胞リンパ腫ではCD20が発現されるため、この抗原はこのようなリンパ腫の「標的とする(ターゲティング)」ための候補となりうる。基本的に標的とするとは以下のことを言う:B細胞のCD20表面上抗原特異的な抗体を患者に投与する。これらの抗CD20抗体は、正常及び悪性の何れのB細胞(表面上)のCD20抗原にも特異的に結合する;CD20表面上抗原に結合する抗体は、腫瘍性B細胞を破壊及び減少に至らしめることができる。さらに、腫瘍を破壊する可能性を有する化学薬品又は放射性標識は抗CD20抗体に結合させて、作用剤が腫瘍性B細胞特異的に「運ばれる」ようにすることができる。方法にかかわりなく、主たる目的は、腫瘍を破壊することである;特定の方法は、使用する特定の抗CD20抗体により測定することができ、ゆえに、CD20抗原を標的とする有用な方法はかなり異なる。
【0009】
リツキシマブ(rituximab)(リツキサン(RITUXAN)(登録商標))抗体は、一般的にCD20抗原に対する遺伝子的操作を施したキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは1998年4月7日に発行の米国特許第5736137号(Anderson等)において「C2B8」と呼ばれている抗体である。リツキシマブは、再発性又は低抵抗性(refractory low-grade)又は濾胞性(follicular)の、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療のためのものである。インビトロでは、リツキシマブは、補体依存性細胞障害性(CDC)及び抗体依存細胞性細胞障害性(ADCC)を調節して、アポトーシスを誘導することが実証されている(Reff等, Blood 83(2):435-445 (1994);Maloney等, Blood 88:637a (1996);Manches等, Blood 101:949-954 (2003))。また、リツキシマブ及び化学療法及び毒素間の相乗効果は、実験的に観察された。特に、リツキシマブは、ドキソルビシン、CDDP、VP-16、ジフテリア毒素及びリシンの細胞障害性効果に対するヒトB細胞リンパ腫細胞系の薬物抵抗性の感度を高める(Demidem等 Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997))。インビボ前臨床研究では、リツキシマブが、カニクイザルの末梢血、リンパ節及び骨髄のB細胞を減少させることを示した (Reff等 Blood 83(2):435-445 (1994))。
【0010】
また、リツキシマブは様々な非悪性腫瘍性自己免疫疾患において研究されており、そこでB細胞と自己抗体は疾患病理学上の役割があるようである。Edwards等, Biochem Soc. Trans. 30:824-828 (2002)。リツキシマブは、例えば、関節リウマチ(RA) (Leandro等, Ann. Rheum. Dis. 61:883-888 (2002);Edwards等, Arthritis Rheum., 46 (Suppl. 9): S46 (2002);Stahl等, Ann. Rheum. Dis., 62 (Suppl. 1): OP004 (2003);Emery等, Arthritis Rheum. 48(9): S439 (2003))、ループス(Eisenberg, Arthritis. Res. Ther. 5:157-159 (2003);Leandro等 Arthritis Rheum. 46: 2673-2677 (2002);Gorman等, Lupus, 13: 312-316 (2004))、免疫性血小板減少性紫斑病(D’Arena等, Leuk. Lymphoma 44:561-562 (2003);Stasi等, Blood, 98: 952-957 (2001);Saleh等, Semin. Oncol., 27 (Supp 12):99-103 (2000);Zaia等, Haematolgica, 87: 189-195 (2002);Ratanatharathorn等, Ann. Int. Med., 133: 275-279 (2000))、 赤芽球ろう (Auner等, Br. J. Haematol., 116: 725-728 (2002));自己免疫性貧血(Zaja等, Haematologica 87:189-195 (2002) (Haematologica 87:336 (2002)に誤植あり)、寒冷凝集素症 (Layios等, Leukemia, 15: 187-8 (2001);Berentsen等, Blood, 103: 2925-2928 (2004);Berentsen等, Br. J. Haematol., 115: 79-83 (2001);Bauduer, Br. J. Haematol., 112: 1083-1090 (2001);Damiani等, Br. J. Haematol., 114: 229-234 (2001))、重症インスリン耐性のタイプB症候群(Coll等, N. Engl. J. Med., 350: 310-311 (2004)、混合クリオグロブリン血症(DeVita等, Arthritis Rheum. 46 Suppl. 9:S206/S469 (2002))、重症筋無力症(Zaja等, Neurology, 55: 1062-63 (2000);Wylam等, J. Pediatr., 143: 674-677 (2003))、ウェゲナー肉芽腫症(Specks等, Arthritis & Rheumatism 44: 2836-2840 (2001))、難治性尋常性天疱瘡(Dupuy等, Arch Dermatol., 140:91-96 (2004))、皮膚筋炎(Levine, Arthritis Rheum., 46 (Suppl. 9):S1299 (2002))、シェーグレン症候群(Somer等, Arthritis & Rheumatism, 49: 394-398 (2003))、急性タイプII混合クリオグロブリン血症(Zaja等, Blood, 101: 3827-3834 (2003))、尋常性天疱瘡(Dupay等, Arch. Dermatol., 140: 91-95 (2004))、自己免疫性ニューロパチー(Pestronk等, J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 74:485-489 (2003))、腫瘍随伴性眼球クローヌス-筋クローヌス症候群(Pranzatelli等 Neurology 60(Suppl. 1) PO5.128:A395 (2003))、及び再発性多発性硬化症(RRMS)の徴候及び症状を潜在的に軽減することが報告されている。Cross等 (abstract) 「Preliminary Results from a Phase II Trial of Rituximab in MS」 Eighth Annual Meeting of the Americas Committees for Research and Treatment in Multiple Sclerosis, 20-21 (2003)。
【0011】
第II相研究(WA16291)を関節リウマチ(RA)患者で行い、リツキシマブの安全性及び有効性に関する48週フォローアップデータを得ている。Emery等 Arthritis Rheum 48(9): S439 (2003);Szczepanski等 Arthritis Rheum 48(9): S121 (2003);Edwards等, "Efficacy of B-cell-targeted therapy with rituximab in patients with rheumatoid arthritis" N Engl. J. Med. 350:2572-82 (2004)。合計161人の患者は、4つの治療アームについて均等にランダム化した:メトトレキセート、リツキシマブ単独、リツキシマブとメトトレキセート、及びリツキシマブとシクロホスファミド(CTX)。リツキシマブの治療投薬計画は、第1日目と第15日目に1gを静脈内に投与された。ほとんどのRA患者はリツキシマブを注入すると、十分な耐性となり、初めの注入の間でさえ少なくとも一の有害症状を経験するものは36%に上る(これに対してプラシーボ投与患者は30%)。概して、大多数の有害症状は、重症度が軽度から中程度のものであると考えられ、すべての治療群全体で等しかった。48週間の4アーム全体の中に合計19の重度の有害症状があった。それはリツキシマブ/CTX群においてわずかに頻度が多かった。感染の発病は、すべての群全体で等しかった。このRA患者集団の深刻な感染の平均率は年間100患者につき4.66であった。それは地域に密着した疫学研究で報告されたRA患者の入院を必要とする感染率より低い(年間100患者につき9.57)。Doran等, Arthritis Rheum. 46:2287-2293 (2002)。
【0012】
少数の自己免疫神経障害(Pestronk等, 上掲)、眼球クローヌス-筋クローヌス症候群(Pranzatelli等, 上掲)及びRRMS (Cross等, 上掲))を含む神経病患者におけるリツキシマブの報告された安全特性は、腫瘍学又はRAにおいて報告されたものと同じであった。RRMS患者においてインターフェロンβ(IFN-β)又は酢酸グラチラマー(glatiramer acetate)と組み合わせたリツキシマブの現行の研究者主導試験(investigator-sponsored trial, IST)(Cross等, 上掲)では、10人の治療された患者のうちの1人はリツキシマブの第一注入の後に中程度の熱と悪寒を経験し、一晩観察のために病院に入院したが、その他の9人の患者は有害症状を報告することなく4の注入投薬計画を終えた。
【0013】
CD20抗体及びCD20結合分子に関する特許文献には、米国特許第5776456号、同第5736137号、同第5843439号、同第6399061号及び同第6682734号、並びに米国公開特許第2002/0197255号、米国公開特許第2003/0021781号、米国公開特許第2003/0082172号、米国公開特許第2003/0095963号、米国公開特許第2003/0147885号(Anderson等);米国特許第6455043号、米国公開特許第2003/0026804号及び国際公開第2000/09160号(Grillo-Lopez, A.);国際公開第2000/27428号(Grillo-Lopez及びWhite);国際公開第2000/27433号及び米国公開特許第2004/0213784号(Grillo-Lopez及びLeonard);国際公開第2000/44788号(Braslawsky等);国際公開第2001/10462号(Rastetter, W.);国際公開第01/10461号(Rastetter及びWhite);国際公開第2001/10460号(White及びGrillo-Lopez);米国公開特許第2001/0018041号、米国公開特許第2003/0180292号、国際公開第2001/34194号(Hanna及びHariharan);米国公開特許第2002/0006404号及び国際公開第2002/04021号(Hanna及びHariharan);米国公開特許第2002/0012665号及び国際公開第2001/74388号(Hanna, N.);米国公開特許第2002/0058029号(Hanna, N.);米国公開特許第2003/0103971号(Hariharan及びHanna);米国公開特許第2005/0123540号(Hanna等);米国公開特許第2002/0009444号及び国際公開第2001/80884号(Grillo-Lopez, A.);国際公開第2001/97858号(White, C.);米国公開特許第2002/0128488号及び国際公開第2002/34790号(Reff, M.);国際公開第2002/060955号(Braslawsky等);国際公開第2002/096948号(Braslawsky等);国際公開第2002/079255号(Reff及びDavies);米国特許第6171586号及び国際公開第1998/56418(Lam等);国際公開第1998/58964(Raju, S.);国際公開第1999/22764号(Raju, S.);国際公開第1999/51642号、米国特許第6194551号、米国特許第6242195号、米国特許第6528624号及び米国特許第6538124号(Idusogie等);国際公開第2000/42072号(Presta, L.);国際公開第2000/67796号(Curd等);国際公開第2001/03734号(Grillo-Lopez等);米国公開特許第2002/0004587号及び国際公開第2001/77342号(Miller及びPresta);米国公開特許第2002/0197256号(Grewal, I.);米国公開特許第2003/0157108号(Presta, L.);国際公開第04/056312号(Lowman等);米国公開特許第2004/0202658号及び国際公開第2004/091657号(Benyunes, K.);国際公開第2005/000351号(Chan, A.);米国公開特許第2005/0032130号A1(Beresini等);米国公開特許第2005/0053602号A1(Brunetta, P.);米国特許第6565827号、同第6090365号、同第6287537号、同第6015542号、同第5843398号、及び同第5595721号、(Kaminski等);米国特許第5500362号、同第5677180号、同第5721108号、同第6120767号、同第6652852号(Robinson等);米国特許第6410391号(Raubitschek等);米国特許第6224866号及び国際公開第00/20864号(Barbera-Guillem, E.);国際公開第2001/13945号(Barbera-Guillem, E.);米国公開特許第2005/0079174号A1(Barbera-Guillem等);国際公開第2000/67795号(Goldenberg);米国公開特許第2003/0133930号及び国際公開第2000/74718号(Goldenberg及びHansen);米国公開特許第2003/0219433号及び国際公開第2003/68821号(Hansen等);国際公開第2004/058298号(Goldenberg及びHansen);国際公開第2000/76542号(Golay等);国際公開第2001/72333号(Wolin及びRosenblatt);米国特許第6368596号(Ghetie等);米国特許第6306393号及び米国公開特許第2002/0041847号(Goldenberg, D.);米国公開特許第2003/0026801号(Weiner及びHartmann);国際公開第2002/102312号(Engleman, E.);米国公開特許第2003/0068664号(Albitar等);国際公開第2003/002607号(Leung, S.);国際公開第2003/049694号、米国公開特許第2002/0009427号、及び米国公開特許第2003/0185796号(Wolin等);国際公開第2003/061694号(Sing及びSiegall);米国公開特許第2003/0219818号(Bohen等);米国公開特許第2003/0219433号及び国際公開第2003/068821号(Hansen等);米国公開特許第2003/0219818号(Bohen等);米国公開特許第2002/0136719号(Shenoy等);国際公開第2004/032828号(Wahl等);及び国際公開第2002/56910号(Hayden-Ledbetter);米国公開特許第2003/0219433号A1(Hansen等);国際公開第2004/035607号(Teeling等);米国公開特許第2004/0093621号(Shitara等);国際公開第2004/103404号(Watkins等);国際公開第2005/000901号(Tedder等);米国公開特許第2005/0025764号(Watkins等);国際公開第2005/016969号及び米国公開特許第2005/0069545号A1(Carr等);及び国際公開第2005/014618号(Chang等)が含まれる。また、米国特許第5849898号及び欧州特許第330191号(Seed等);欧州特許第332865号A2(Meyer及びWeiss);米国特許第4861579号(Meyer等);米国公開特許第2001/0056066号(Bugelski等);及び国際公開第1995/03770号(Bhat等)も参照のこと。
また、米国公開特許第2005/0079184号A1、米国公開特許第2004/0018557号A1、国際公開第2005/016241号A2、国際公開第2005/009539号A2、国際公開第2004/105684号A2、国際公開第2004/080387号A2、国際公開第2004/074434号A2、国際公開第2004/060911号A2、国際公開第2004/045512号A2、国際公開第2004/032828号A2、及び国際公開第2003/043583号A2も参照のこと。
【0014】
リツキシマブを用いた治療法に関する文献には、Perotta及びAbuel, 「Response of chronic relapsing ITP of 10 years duration to rituximab」 Abstract # 3360 Blood 10(1)(part 1-2): p. 88B (1998);Perotta等, 「Rituxan in the treatment of chronic idiopathic thrombocytopaenic purpura (ITP)」, Blood, 94: 49 (abstract) (1999);Matthews, R., 「Medical Heretics」 New Scientist (7 April, 2001);Leandro等, 「Lymphocyte depletion in rheumatoid arthritis: early evidence for safety, efficacy and dose response」 Arthritis and Rheumatism 44(9): S370 (2001);Leandro等, 「An open study of B lymphocyte depletion in systemic lupus erythematosus」, Arthritis and Rheumatism, 46:2673-2677 (2002)、この中では2週間の期間に各患者はリツキシマブ500mgの2回投与、シクロフォスファミド750mgの2回投与、及び高用量経口副腎皮質ステロイドを受け、この治療患者のうち2人はそれぞれ7か月目と8か月目に再発し、異なるプロトコールで再治療されている;「Successful long-term treatment of systemic lupus erythematosus with rituximab maintenance therapy」 Weide等, Lupus, 12: 779-782 (2003)、この中ではある患者はリツキシマブ(375mg/m×4回、1週間間隔で繰り返す)で治療を受け、更に5〜6か月ごとにリツキシマブを適用し、次いで維持療法として3か月ごとに375mg/mのリツキシマブ投与をした、他方、難治性SLE患者はリツキシマブで成功裏に治療され、維持療法を3か月ごとに受けている、両患者はリツキシマブ療法によく応答している;Edwards及びCambridge, 「Sustained improvement in rheumatoid arthritis following a protocol designed to deplete B lymphocytes」 Rheumatology 40:205-211 (2001);Cambridge等, 「B lymphocyte depletion in patients with rheumatoid arthritis: serial studies of immunological parameters」 Arthritis Rheum., 46 (Suppl. 9): S1350 (2002);Edwards等, 「Efficacy and safety of rituximab, a B-cell targeted chimeric monoclonal antibody: A randomized, placebo controlled trial in patients with rheumatoid arthritis. Arthritis and Rheumatism 46(9): S197 (2002);Pavelka等, Ann. Rheum. Dis. 63: (S1):289-90 (2004);Emery等, Arthritis Rheum. 50 (S9):S659 (2004);Levine及びPestronk, 「IgM antibody-related polyneuropathies: B-cell depletion chemotherapy using rituximab」 Neurology 52: 1701-1704 (1999);DeVita等, 「Efficacy of selective B cell blockade in the treatment of rheumatoid arthritis」 Arthritis & Rheum 46:2029-2033 (2002);Hidashida等 「Treatment of DMARD-refractory rheumatoid arthritis with rituximab.」 the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002に公開;Tuscano, J. 「Successful treatment of infliximab-refractory rheumatoid arthritis with rituximab」 the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002に公開;「Pathogenic roles of B cells in human autoimmunity; insights from the clinic」 Martin and Chan, Immunity 20:517-527 (2004);Silverman及びWeisman, 「Rituximab Therapy and Autoimmune Disorders, Prospects for Anti-B Cell Therapy」, Arthritis and Rheumatism, 48: 1484-1492 (2003);Kazkaz及びIsenberg, 「Anti B cell therapy (rituximab) in the treatment of autoimmune diseases」, Current opinion in pharmacology, 4: 398-402 (2004);Virgolini and Vanda, 「Rituximab in autoimmune diseases」, Biomedicine & pharmacotherapy, 58: 299-309(2004); Klemmer等, 「Treatment of antibody mediated autoimmune disorders with a AntiCD20 monoclonal antibody Rituximab」, Arthritis And Rheumatism , 48: (9) 9,S (SEP), page: S624-S624 (2003);Kneitz等, 「Effective B cell depletion with rituximab in the treatment of autoimmune diseases」, Immunobiology, 206: 519-527 (2002);Arzoo等, 「Treatment of refractory antibody mediated autoimmune disorders with an anti-CD20 monoclonal antibody (rituximab)」Annals of the Rheumatic Diseases, 61 (10), p922-4 (2002);Looney, R, 「Treating human autoimmune disease by depleting B cells」Ann Rheum Dis. 61(10): 863-866 (2002);「Future Strategies in Immunotherapy」 Lake及びDionne, Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery (2003 by John Wiley & Sons, Inc.)Article Online Posting Date: January 15, 2003 (Chapter 2 「 Antibody-Directed Immunotherapy」);Liang and Tedder, Wiley Encyclopedia of Molecular Medicine, Section: CD20 as an Immunotherapy Target, 文献オンライン登記日: 2002年1月15日 表題「CD20」;「Monoclonal Antibodies to Human Cell Surface Antigens」と題するAppendix 4A Stockinger等, 編集: Coligan等, in Current Protocols in Immunology (2003 John Wiley & Sons, Inc) オンライン登記日: 2003年3月;印刷物出版日: 2003年2月;Penichet及びMorrison, 「CD Antibodies/molecules: Definition; Antibody Engineering」 Wiley Encyclopedia of Molecular Medicine Section: Chimeric, Humanized and Human Antibodies; オンライン登記 2002年1月15日;Specks等 「Response of Wegener’s granulomatosis to anti-CD20 chimeric monoclonal antibody therapy」 Arthritis & Rheumatism 44:2836-2840 (2001);online abstract submission and invitation Koegh等, 「Rituximab for Remission Induction in Severe ANCA-Associated Vasculitis: Report of a Prospective Open-Label Pilot Trial in 10 Patients」, American College of Rheumatology, Session Number: 28-100, Session Title: Vasculitis, Session Type: ACR Concurrent Session, Primary Category: 28 Vasculitis, Session 10/18/2004 (<http: //www.abstractsonline.com/viewer/SearchResults.asp>);Eriksson, 「Short-term outcome and safety in 5 patients with ANCA-positive vasculitis treated with rituximab」, Kidney and Blood Pressure Research, 26: 294 (2003);Jayne等, 「B-cell depletion with rituximab for refractory vasculitis」 Kidney and Blood Pressure Research, 26: 294 (2003);Jayne, poster 88 (11th International Vasculitis and ANCA workshop), 2003 American Society of Nephrology;Stone及びSpecks, 「Rituximab Therapy for the Induction of Remission and Tolerance in ANCA-associated Vasculitis」, the 2002-2003 Immune Tolerance Networkのthe Clinical Trial Research Summary, <http: //www.immunetolerance.org/research/autoimmune/trials/stone.html>が含まれる。また、Leandro等, 「B cell repopulation occurs mainly from naive B cells in patient with rheumatoid arthritis and systemic lupus erythematosus」 Arthritis Rheum., 48 (Suppl 9): S1160 (2003)も参照。
【0015】
(発明の概要)
第一の態様では、本発明は、アルツハイマー病の治療のために有効な量のネイキッドCD20抗体が被検体に投与されることを含む、被検体のアルツハイマー病の治療方法を提供する。
第二の態様では、本発明は、認知症の治療のために有効な量のネイキッドCD20抗体が被検体に投与されることを含む、被検体の認知症の治療方法に関する。
さらに、本発明は、
(a) ネイキッドCD20抗体を内包する容器;と
(b) 被検体のアルツハイマー病又は認知症を治療するための指示を含むパッケージ挿入物
を具備する製造品に関する。
【0016】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
I.定義
「認知症」は、器質性因子又は心理的因子、見当識障害、障害性の記憶、判断及び知性、並びに浅い不安定情動に特徴付けられるものによる一般的な精神悪化を指す。本明細書中の認知症には、血管性認知症、虚血性血管性認知症(IVD)、前頭側頭骨認知症(FTD)、レビー小体型認知症、アルツハイマー性認知症などが含まれる。高齢者の中で最も一般的な認知症の形態はアルツハイマー病(AD)である。
「アルツハイマー病(AD)」は、記憶喪失、混乱及び見当識障害によって明らかになる進行性の精神悪化を指し、一般に高齢期に発症し、共通して5〜10年で死に至る。アルツハイマー病は、熟練した神経科医又は臨床医により診断されうる。一実施態様では、ADを有する被検体は、可能性のあるADの存在に関して、国立神経病・言語障害・脳卒中研究所/アルツハイマー病及び関連疾患研究所(NINCDS/ADRDA)判定基準を満たすであろう。
「軽度〜中程度の」又は「早期の」ADなる表現は本明細書中で同義として用いられ、進行しないADを指し、疾患の徴候又は症状が重症でないものを指す。軽度〜中程度又は早期のADを有する被検体は、熟練した神経科医又は臨床医によって同定できる。一実施態様では、軽度〜中程度のADを有する被検体は、簡易精神状態検査(MMSE)を用いて同定される。
【0017】
本明細書中の「中程度〜重度」又は「後期の」ADは前進し、疾患の徴候又は症状が宣告されるADを指す。このような被検体は、熟練した神経科医又は臨床医によって同定できる。この型のADを有する被検体は、コリンエステラーゼ阻害薬による治療にもはや応答せず、有意に低減したアセチルコリンレベルを有しうる。一実施態様では、中程度〜重度のADを有する被検体は、簡易精神状態検査を用いて同定される。
「簡易精神状態検査(MMSE)」は、記憶の愁訴又は、認知症の診断が考慮されるときに最も一般的に用いられる試験である。12〜26ポイントのスコアを有する被検体は、軽度〜中程度の認知症又はADを有するとみなされうる。12ポイント未満のスコアを有する被検体は、重度の認知症又はADを有するとみなされうる。MMSEは一連の質問表及び試験を含んでおり、それぞれは、正しく答えられる場合にポイントを記録する。すべての答えが正しい場合、最大30ポイントのスコアとなりうる。アルツハイマー病をもつ人々は一般に26ポイント以下となる。完全な試験のコピーは、心理的判定源(Psychological Assessment Resources、PAR)ウェブサイトhttp://www.parinc.comから入手可能である。
「家族性AD」は、遺伝子欠損によって生じるADの遺伝性の形態である。
「孤発性AD」は、環境因子と遺伝因子、例えばApoE4+遺伝子型の組合せによって生じると考えられている最も一般的なADである。すべての診断されたAD患者のほぼ90%は、孤発性型の疾患を有する。
【0018】
「標準的なケア」の投薬により、AD又は認知症を治療するために最も一般的に用いられる一又は複数の医薬が意図される。例えば、ADのための標準的なケアは、コリンエステラーゼ阻害薬及び/又はNMDA拮抗薬であってもよい。
AD又は認知症の「症状」は、構造、機能又は感覚の正常からの逸脱又は任意の病的な現象であり、被検体により経験され、AD又は認知症を表すものである。
本明細書中の「被検体」はヒト被検体である。本明細書のために、被検体はAD又は認知症の被検体を指す。通常、被検体は、AD又は認知症の治療に適格である。本明細書のために、このような適格性のある被検体は、AD又は認知症の一又は複数の徴候ないし症状を経験しているか、経験したことがあるか、経験しそうにある者である。AD又は認知症の診断には混合性認知症(MIX)の診断が含まれ、ADの徴候及び症状は虚血性血管性認知症(IVD)の徴候及び症状と共に存在する。一実施態様では、被検体は、AD以外の自己免疫性疾患に罹っていない。場合によっては、AD又は認知症に罹っているヒト又はその罹患のリスクにあるヒトは、血清、脳脊髄液(CSF)及び/又は老人性プラーク(一又は複数)におけるCD20陽性B細胞のレベルの上昇についてスクリーニングされているヒトとして同定されうる。あるいは、又は加えて、被検体は自己抗体を検出するためのアッセイを用いてスクリーニングされ、質的、好ましくは量的に評価されうる。例えばELISAによって、被検体の血清、脳脊髄液(CSF)及び/又は老人性プラーク(一又は複数)中の前記の自己抗体が検出されてもよい。
【0019】
「自己抗体」は、被検体によって増やされた抗体であって、被検体自身の抗原に対するものである。AD又は認知症と関係している例示的な自己抗体は、脳応答性抗体(BRA)及び、β-アミロイド、カルジオリピン、チューブリン、グリア線維性酸性タンパク質、神経線維タンパク質(NFL)、ガングリオシド、骨格タンパク質、ミエリン塩基性タンパク(MBP)、セロトニン、ドーパミン、プレセニリン、アミロイドβ-ペプチド(Abeta)、促進した糖化末端生成物に対するレセプター(RAGE)、神経成長因子(NGF)などに対する抗体が含まれるが、これらに限定するものではない。
「非定型の」自己抗体レベルは、正常レベルを上回る上記の自己抗体のレベルを意味する。このような正常ないし非定型の自己抗体レベルは、正常な被検体又はADないし認知症に罹っていない被検体の生体サンプルにおいてみられるレベルであってもよい。生体サンプルは血清、CSF又は老人性プラークであってもよい。
【0020】
「脳応答性抗体」又は「BRA」は、被検体の血清、脳脊髄液(CSF)及び/又は脳組織に存在するヒト抗体の任意の自然発生する集団であり、この抗体は、他の正常なヒト組織と反応するよりも大きな特異性を有してヒトの脳及び/又はヒトの中枢神経系(CNS)組織と応答できる。
本明細書中の被検体の「治療」は、治療的処置及び予防又は阻止的な処置を指す。治療を必要とする者には、既にAD又は認知症を有する者、並びにAD又は認知症が予防されるべきものである者が含まれる。したがって、被検体は、AD又は認知症を有すると診断されているか、AD又は認知症の素因があるか、又はAD又は認知症に罹りやすいかもしれない。本明細書中で用いる「処置」、「治療する」又は「治療」なる用語には、阻止(例えば、予防)、対症療法及び治癒的療法が含まれる。
【0021】
「有効量」なる用語は、認知症又はADを予防するか、改善するか又は治療するために有効である抗体(又は、他の薬剤)の量を指す。このような有効量により、通常、認識機能(例えば記憶、言語、臨界思考、読み及び/又は書き能力)の維持、疾患の経過の遅延、疾患の発症の遅延又は疾患の完全な阻止、疾患と関係する行動問題の管理、抑鬱及び/又は無気力の治療、行動、例えば攻撃性及び/又は不安の治療、摂食、着脱衣及び入浴などの日常生活能力の欠如の遅延、自己抗体レベル(一又は複数)の低減、及び(例えば、血清、CNS及び/又は老人性プラークにおける)CD20陽性B細胞数の減少、などの認知症又はアルツハイマー病の徴候又は症状の改善が生じる。
「コリンエステラーゼ阻害薬」は、アセチルコリン及び/又は偽コリンの分解を阻止するか、又は阻害する薬剤ないし組成物である。コリンエステラーゼ阻害薬の例には、ガランタミン(REMINYL(登録商標))、リバスチグミン(EXELON(登録商標))、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))、タクリン(COGNEX(登録商標))及びヒュープリンXTM(HUPRINE X)が含まれる。
本明細書中の「NメチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト」は、NMDAにより阻止するか又は阻害する、及び/又は過剰なグルタミン酸及び/又はグルタミン酸活性を制御する薬剤又は組成物を意図する。例示的なNMDAアンタゴニストにはメマンチン(NAMENDA(登録商標))及びネラメキサンが含まれる。
【0022】
ここで補助治療として用いる「免疫抑制剤」なる用語は、本明細書中で治療される被検体の免疫系を抑制する又は遮断するように働く物質を表す。これは、サイトカイン産生を抑制する、自己抗原の発現を下方制御又は抑制する、あるいはMHC抗原を遮断する物質を含む。そのような薬剤の例として、2-アミノ-6-アリル-5-代替ピリミジン(米国特許第4665077号参照);非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);ガンシクロビル;タクロリムス、糖質ステロイド、例としてコルチゾール又はアルドステロン、抗炎症剤、例としてシクロオキシゲナーゼインヒビター、5-リポキシゲナーゼインヒビター又はロイコトリエンレセプターアンタゴニスト;プリンアンタゴニスト、例えばアザチオプリン又はミコフェノール酸モフェチル(MMF);アルキル化剤、例えばシクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド (米国特許第4120649号に記載のように、MHC抗原を遮断する);MHC抗原及びMHCフラグメントに対する抗イデオタイプ抗体;シクロスポリン;6メルカプトプリン;副腎皮質ステロイド又は糖質副腎皮質ステロイド又は糖質ステロイド類似体などのステロイド、例としてプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、例えばSOLU-MEDROL(登録商標) メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、及びデキサメタゾン;ジヒドロ葉酸レダクターゼインヒビター、例としてメトトレキサート(経口又は皮下);クロロキン及びヒドロキシクロロキンなどの抗マラリア剤;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカイン又はサイトカインレセプター抗体又はアンタゴニスト、例として抗インターフェロン-γ、-β、又は-α抗体、抗腫瘍壊死因子α抗体(インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))又はアダリムマブ)、抗TNFαイムノアドヘシン(エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子β抗体、抗インターロイキン2(IL-2)抗体及び抗IL-2レセプター抗体、抗インターロイキン6(IL-6)レセプター抗体及びアンタゴニスト;抗CD11a及び抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗-L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;pan-T抗体、好ましくは、抗-CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開の国際公開第90/08187号);ストレプトキナーゼ;トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β);ストレプトドルナーゼ(streptodornase);宿主由来のRNA又はDNA;FK506;RS-61443;クロランブシル;デオキシスペルグアニン(deoxyspergualin);ラパマイシン;T細胞レセプター (Cohen等, 米国特許第5114721号);T細胞レセプターフラグメント(Offner等, Science 251:430-432 (1991);国際公開第90/11294号;Ianeway, Nature, 341: 482 (1989);及び国際公開第91/01133号);BAFFないしBR3抗体ないしイムノアドヘシンなどのBAFFアンタゴニスト及びzTNF4アンタゴニスト(参考までにMackay及びMackay, Trends Immunol., 23:113-5 (2002)と以下の定義を参照のこと);T細胞ヘルパーシグナルを阻害する生物学的な薬剤、例として抗CD40レセプター又は抗CD40リガンド(CD154)、例えばCD40-CD40リガンドに対する阻止抗体(例えば、Durie等, Science, 261: 1328-30 (1993);Mohan等, J. Immunol., 154: 1470-80 (1995))及びCTLA4-Ig(Finck等, Science, 265: 1225-7 (1994));及びT10B9などのT細胞レセプター抗体 (欧州特許第340109号)を含む。
【0023】
ここで使用する「細胞障害性剤」なる用語は、細胞の機能阻害又は阻止、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を表す。この用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素、又はそれらの断片を含むことを意図する。
【0024】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));βラパチョーネ;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHCIリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(gemcitabine) (GEMZAR(登録商標))、テガフル(tegafur) (UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(capecitabine) (XELODA(登録商標))、エポチロン(epothilone)、及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド類、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)、及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;上述したもののいずれかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体:並びに上記のうち2以上の組み合わせ、例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニソロン併用療法の略称であるCHOP、及び5-FU及びロイコボビン(leucovovin)とオキサリプラチン(ELOXATINTM)を組み合わせた治療法の略称であるFOLFOXが含まれる。
【0025】
またこの定義に含まれるものには、癌の増殖を助けるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働き、多くの場合全身処置の形態で使用される抗ホルモン剤がある。それらはそれ自体がホルモンであってもよい。それらは例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)を含み、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(FARESTON(登録商標));抗プロゲステロン;エストロゲンレセプター下方調節剤(ERD);エストロゲンレセプターアンタゴニスト、例えばフルベストラント(fulvestrant) (FASLODEX(登録商標));卵巣を抑止又は停止させる機能がある作用剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば酢酸リュープロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン(tripterelin);抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド;並びに副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害薬、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、及びアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))である。加えて、このような化学療法剤の定義には、クロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(AREDIA(登録商標))、チルドロン酸(SKELID(登録商標))、又はリセドロン酸(ACTONEL(登録商標))、並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に接着細胞の増殖に結びつくシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Raf、及びH-Ras、及び上皮成長因子レセプター(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害薬(例えばLURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));ラパチニブ(lapatinib ditosylate)(GW572016としても知られるErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害薬);及び上記のもののいずれかの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0026】
「サイトカイン」なる用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインの例としては、リンホカイン、モノカイン;IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15等のインターロイキン(IL)、例えば、PROLEUKIN(登録商標)rIL-2及びヒトIL-4及びヒトIL-4の変異体、例として、IL-2Rγへの結合に関与するIL-4の領域内に突然変異を有する変異体、例えばArg21がGlu残基に変異したもの;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α又はTNF-β、及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養物由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物、例えば合成して産生された小分子構成要素及び製薬的に受容可能な誘導体及びその塩類を含む。
【0027】
「ホルモン」なる用語は通常管を有する腺性器官によって分泌されるポリペプチドホルモンを表す。そのようなホルモンには、例えば、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;エストラジオール;ホルモン補充療法;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピチオスタン又はテストラクトン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)のような糖タンパク質ホルモン;プロラクチン、胎盤ラクトゲン、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド性腺刺激ホルモン放出ホルモン;インヒビン;アクチビン;ミュラー阻害物質;及びトロンボポエチンなどがある。本明細中で用いるように、ホルモンなる用語は、天然源由来又は組み換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列ホルモンの生物学的活性な相当物、例えば合成して産生した小分子成分及び製薬的に許容可能な誘導体及びその塩類が含まれる。
【0028】
「増殖因子」なる用語は増殖を促進するタンパク質を表し、例えば、肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子;血管内皮増殖因子;神経成長因子、例えばNGF-β;血小板由来増殖因子;トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えばTGF-α及びTGF-β;インスリン様成長因子-I及び-II;エリトロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロン-α、-β、及び-γ;及び、コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)及び顆粒球-CSF(G-CSF)などがある。本明細書中で用いられる、増殖因子なる用語には、天然源由来あるいは組換え細胞培養物由来のタンパク質及び天然配列増殖因子の生物学的に活性な等価物、例えば合成して産生された小分子構成要素及び製薬的に受容可能な誘導体及びその塩類を含む。
【0029】
「インテグリン」なる用語は、細胞の細胞外基質への結合と応答の両方をさせるレセプタータンパク質であり、創傷治癒、細胞分化、腫瘍細胞のホーミング及びアポトーシスなどの様々な細胞性機能に関与するものを表す。これらは細胞-細胞外基質及び細胞間相互作用に関与する細胞接着レセプターの大きなファミリーの一部である。機能的なインテグリンは、α及びβと称する2つの膜貫通性グリコプロテインサブユニットから成り、非共有的に結合している。βサブユニットのように、αサブユニットはすべて互いにいくらかの相同性がある。レセプターは常に1のα鎖及び1のβ鎖を含有する。例えば、α6β1、α3β1、α7β1、LFA-1などがある。本明細書中で用いられる、インテグリンなる用語には、天然源由来あるいは組換え細胞培養物由来のタンパク質及び天然配列インテグリンの生物学的に活性な等価物、例えば合成して産生された小分子構成要素及び製薬的に受容可能な誘導体及びその塩類を含む。
【0030】
本明細書中では、「腫瘍壊死因子α(TNFα)」とは、Pennica等, Nature, 312:721 (1984)又はAggarwal等, JBC, 260:2345 (1985)に記載のアミノ酸配列を含有するヒトTNFα分子を意味する。
本明細書中の「TNFαインヒビター」は、一般的にはTNFαへの結合とその活性を中和することを介してTNFαの生物学的活性をある程度阻害する薬剤である。本明細書中で考慮されるTNFインヒビターの具体例は、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))及びアダリムマブ(HUMIRATM)である。
「疾患変更性抗リウマチ剤」又は「DMARD」の例には、ヒドロキシクロロキノン、スルファサラジン、メトトレキセート、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アザチオプリン、D-ペニシラミン、ゴールド塩類(経口)、ゴールド塩類(筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリンA及び局所性シクロスポリンを含むシクロスポリン、ブドウ球菌プロテインA(Goodyear 及びSilverman, J. Exp. Med., 197, (9), p1125-39 (2003))、これらの塩類及び誘導体を含むものなどがある。
【0031】
「非ステロイド系抗炎症薬」又は「NSAID」の例として、アスピリン、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、COX-2インヒビター、例としてセレコキシブ(celecoxib) (CELEBREX(登録商標);4-(5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾロ-1-イル) ベンゼンスルホンアミド及びバルデコキシブ(valdecoxib) (BEXTRA(登録商標))、及びメロキシカム(MOBIC(登録商標))、これらの塩類及び誘導体などがある。
本明細書中の「インテグリンアンタゴニスト又は抗体」の例として、LFA-1抗体、例としてGenentechから市販のエファリズマブ(RAPTIVA(登録商標))、又は、α4インテグリン抗体、例としてBiogenから入手可能なナタリズマブ(ANTEGREN(登録商標))、又は、ジアザサイクリックフェニルアラニン誘導体(国際公開第2003/89410号)、フェニルアラニン誘導体(国際公開第2003/70709号、国際公開第2002/28830号、国際公開第2002/16329号及び国際公開第2003/53926号)、フェニルプロピオン酸誘導体(国際公開第2003/10135号)、エナミン誘導体(国際公開第2001/79173号)、プロパン酸誘導体(国際公開第2000/37444号)、アルカノン酸誘導体(国際公開第2000/32575号)、置換型フェニール誘導体(米国特許第6677339号及び同第6348463号)、芳香族アミン誘導体(米国特許第6369229号)、ADAMディスインテグリンドメインポリペプチド(米国公開公報2002/0042368号)、αvβ3インテグリンに対する抗体(欧州特許第633945号)、アザ架橋された二環式アミノ酸誘導体(国際公開第2002/02556号)などが含まれる。
【0032】
「副腎皮質ステロイド」は、天然に生じる副腎皮質ステロイドの効果を模倣するかあるいは増大するステロイドの一般的な化学構造を有するいくつかの合成又は天然に生じる物質の何か一つを指す。合成副腎皮質ステロイドの例として、プレドニゾン、プレドニゾロン(メチルプレドニゾロン、例としてSOLU-MEDROL(登録商標) メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウムを含む)、デキサメサゾン又はデキサメサゾントリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、及びベタメサゾンが含まれる。本明細書中の好適な副腎皮質ステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン又はデキサメサゾンである。
【0033】
「B細胞」は骨髄内で成熟するリンパ球であり、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、又はエフェクターB細胞(プラズマ細胞)などがある。本明細書中のB細胞は正常又は非悪性のB細胞でもよい。
ここで「B細胞表面上マーカー」又は「B細胞表面上抗原」とは、B細胞の表面上に発現する抗原であり、それに結合するアンタゴニスト又は抗体の標的となることができる。例示的B細胞表面上マーカーには、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85及びCD86白血球表面上マーカーが含まれる。(詳しくは、The Leukocyte Antigen Facts Book, 2nd Edition. 1997, Barclay等編集, Academic Press, Harcourt Brace & Co., New Yorkを参照)。他のB細胞表面上マーカーには、RP105、FcRH2、B細胞CR2、CCR6、P2X5、HLA-DOB、CXCR5、FCER2、BR3、Btig、NAG14、SLGC16270、FcRH1、IRTA2、ATWD578、FcRH3、IRTA1、FcRH6、BCMA、及び239287などがある。特に対象とするB細胞表面上マーカーは、被検体の他の非B細胞組織と比較してB細胞上に主にに発現しており、B細胞前駆細胞及び成熟B細胞の両方の細胞上に発現していてもよい。
【0034】
「CD20」抗原又は「CD20」は、末梢血又はリンパ系器官に由来するB細胞の90%以上の表面にみられるおよそ35kDaの非グルコシル化リンタンパク質である。CD20は正常B細胞だけでなく悪性のB細胞上にも存在し、幹細胞には発現しない。CD20を意味する文献中での他の名称には、「Bリンパ球限定抗原(B-lymphocyte-restricted antigen)」及び「Bp35」などがある。CD20抗原は、例としてClark等 PNAS (USA) 82:1766 (1985)に記載されている。
【0035】
「B細胞表面マーカーアンタゴニスト」とは、B細胞上のB細胞表面マーカーに結合することによって被検体のB細胞を破壊又は枯渇させる、及び/又は一以上のB細胞機能を妨げる、例えば、B細胞に誘導される体液性反応を低減又は阻害する分子である。好ましくは、アンタゴニストは、それによって治療される被検体のB細胞を枯渇する(すなわち、循環中のB細胞レベルを下げる)ことができる。そのような枯渇は、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)、B細胞増殖の阻害及び/又はB細胞死の誘導(例えば、アポトーシスを介する)等の多様なメカニズムを介して達成されるであろう。本発明の範囲に包含されるアンタゴニストには、場合によって細胞障害性剤とコンジュゲート又は細胞障害性剤と融合している、CD20などのB細胞表面マーカーに結合する抗体、合成又は天然配列のペプチド、イムノアドヘシン、及び小分子アンタゴニストが含まれる。好適なアンタゴニストは抗体を含む。
【0036】
本明細書中の「CD20抗体アンタゴニスト」とは、B細胞上のCD20に結合することによって被検体のB細胞を破壊又は枯渇させる、及び/又は一以上のB細胞機能を妨げる、例えば、B細胞に誘導される体液性反応を低減又は阻害する抗体である。好ましくは、抗体アンタゴニストは、それによって治療する被検体のB細胞を枯渇する(すなわち、循環中のB細胞レベルを下げる)ことができる。そのような枯渇は、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)、B細胞増殖の阻害及び/又はB細胞死の誘導(例えば、アポトーシスを介する)等の多様な機能を介して達成されるであろう。
ここで「抗体」なる用語は、広い意味で用いられ、特にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成した多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を有する限りにおける抗体断片の範囲にわたる。
【0037】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
本明細書中の「インタクト抗体」とは、2つの抗原結合領域とFc領域を含有してなるものである。好ましくは、インタクト抗体は機能的なFc領域を有する。
【0038】
CD20抗体の例には以下のものが含まれる:現在では「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と呼称される「C2B8」(米国特許第5736137号);「Y2B8」又は「Ibritumomab Tiuxetan」(ゼバリン(登録商標))と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体、IDEC Pharmaceuticals, Inc.から市販(米国特許第5736137号;1993年6月22日に受託番号HB11388としてATCCに寄託された2B8);場合によっては「131I-B1」又はCorixaから市販の「ヨードI131 Tositumomab」抗体(BEXXARTM)を生成するために131Iで標識した「Tositumomab」とも呼称されるマウスIgG2a「B1」(米国特許第5595721号も参照のこと);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69(2):584-591 (1987)及びそれらの変異体、例として「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5(国際公開第2003/002607号, Leung, S;ATCC寄託番号HB-96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5677180号);ヒト化2H7(国際公開第2004/056312号(Lowman等)及び以下に挙げるもの);B細胞の細胞膜のCD20分子を標的とした完全なヒト、高親和性抗体である、2F2(HuMax-CD20)(Genmab, Denmark;例としてGlennie and van de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510 (2003)及びCragg等, Blood 101: 1045-1052 (2003);国際公開第2004/035607号;米国公開特許第2004/0167319号を参照);国際公開第2004/035607号及び米国公開特許第2004/0167319号(Teeling等)に記載のヒトモノクローナル抗体;米国公開特許第2004/0093621号(Shitara等)に記載のFc領域に結合した複合体Nグリコシド結合糖鎖を有する抗体;CD20に結合するモノクローナル抗体及び抗原結合断片(国際公開第2005/000901号, Tedder等)、例えばHB20-3、HB20-4、HB20-25、及びMB20-11;抗体のAMEシリーズなどのCD20結合分子、例えば国際公開第2004/103404号及び米国公開特許第2005/0025764号(Watkins等, Eli Lilly/Applied Molecular Evolution, AME)に記載のAME33抗体;CD20結合分子、例えば米国公開特許第2005/0025764号(Watkins等)に記載のもの;A20抗体又はその変異体、例えばキメラないしはヒト化A20抗体(それぞれcA20、hA20) (米国公開特許第2003/0219433号, Immunomedics);CD20結合抗体、例えばエピトープ劣化Leu-16、1H4又は2B8、場合によってIL-2とコンジュゲートしたもの、米国公開特許第2005/0069545号A1及び国際公開第2005/16969号(Carr等);CD22及びCD20を結合する二重特異性抗体、例えばhLL2xhA20 (国際公開第2005/14618号, Chang等);the International Leukocyte Typing Workshopより入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2 (Valentine等, Leukocyte Typing III (McMichael, 編集, p. 440, Oxford University Press (1987));1H4 (Haisma等 Blood 92:184 (1998))。本明細書中の好適なCD20抗体は、キメラ、ヒト化ないしはヒトCD20抗体であり、より好ましくはリツキシマブ、ヒト化2H7、2F2(Hu-Max-CD20) ヒトCD20抗体 (Genmab)、及びヒト化A20抗体(Immunomedics)である。
【0039】
本明細書中の「リツキシマブ」又は「リツキサン(登録商標)」なる用語は、CD20抗原に対する一般的に遺伝子操作したキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体を指し、米国特許第5736137号では「C2B8」と命名されるものであり、CD20を結合する能力を保持する該抗体の断片を含みうる。
本明細書中の目的のためだけに、そして特に明記しなければ、「ヒト化2H7」抗体はマウス2H7抗体のヒト化変異体であり、該抗体はインビボで循環B細胞を減少するために有効である。
【0040】
一実施態様では、ヒト化2H7抗体は以下のCDR配列の1、2、3、4、5又は6を含んでなる。
XがM又はLであるCDRL1配列RASSSVSYXH(配列番号21)、例として配列番号4(図1A)、
配列番号5(図1A)のCDRL2配列、
XがS又はAであるCDRL3配列QQWXFNPPT(配列番号22)、例として配列番号6(図1A)、
配列番号10のCDRH1配列(図1B)、
XがD又はAであるCDRH2配列AIYPGNGXTSYNQKFKG(配列番号23)、例として配列番号11(図1B)、及び
位置6のXがN、A、Y、W又はDであり、位置7のXがS又はRである、CDRH3配列VVYYSXXYWYFDV(配列番号24)、例として配列番号12(図1B)。
【0041】
上記のCDR配列は一般的に、ヒト可変軽鎖及び可変重鎖のフレームワーク配列、例えばヒト軽鎖κサブグループI(VκI)の実質的なヒトコンセンサスFR残基、及びヒト重鎖サブグループIII(VIII)の実質的なヒトコンセンサスFR残基内に存在する。また、国際公報2004/056312号(Lowman等)も参照のこと。
可変重鎖領域はヒトIgG鎖定常領域に結合されてもよく、該領域は例えば天然配列及び変異形の定常領域を含むIgG1又はIgG3でもよい。
好適な実施態様では、このような抗体は、配列番号8の可変重鎖ドメイン配列(v16、図1Bに示す)を含有し、場合によっては配列番号2の可変軽鎖ドメイン配列(v16、図1Aに示す)を含有し、場合によっては、可変重鎖ドメイン内の位置56、100及び/又は100aの一又は複数のアミノ酸置換、例えばD56A、N100A又はN100Y、及び/又はS100aRと、可変軽鎖ドメイン内の位置32及び/又は92の一又は複数のアミノ酸置換、例えばM32L及び/又はS92Aを含有する。好ましくは、抗体は配列番号13又は15の軽鎖アミノ酸配列と、配列番号14、16、17又は20の重鎖アミノ酸配列を含有するインタクト抗体でる。
好適なヒト化2H7抗体はオクレリズマブ(ocrelizumab)(Genentech)である。
【0042】
本明細書中の抗体はさらに、ADCC活性を改善するFc領域内に少なくとも一のアミノ酸置換を含有する、例えば重鎖残基のEu番号付けでいうと、位置298、333及び334にアミノ酸置換、好ましくはS298A、E333A及びK334Aを有するものである。また、米国特許第6737056号, Prestaを参照のこと。
これら抗体の何れかは、FcRn結合又は血清半減期を改善するようなFc領域内での少なくとも一の置換、例えばN434Wなどの重鎖位置434での置換を含有してもよい。また、米国特許第6737056号, Prestaを参照のこと。
これら抗体の何れかはさらに、CDC活性を亢進するFc領域内での少なくとも一のアミノ酸置換、例えば位置326での少なくとも一の置換、好ましくはK326A又はK326Wを含有してもよい。また、米国特許第6528624号(Idusogie等)を参照のこと。
【0043】
いくつかの好適なヒト化2H7変異体は、配列番号2の可変軽鎖ドメインと配列番号8の可変重鎖ドメインを含有するものであり、例として、(存在する場合には)Fc領域内に置換を有するもの又は有さないもの、配列番号8に変異N100A;又はD56AとN100A;又はD56A、N100YとS100aRを含有する可変重鎖ドメインと配列番号2に変異M32L;又はS92A;又はM32LとS92Aを含有する可変軽鎖ドメインを有するものなどがある。
2H7.v16の可変重鎖のM34は抗体安定性を供給する可能性のあるものとして同定され、新たな置換の候補となりうる。
本発明のいくつかの多様な好適な実施態様をまとめると、2H7.v16をベースとした突然変異体の可変領域は、以下の表1に挙げる位置のアミノ酸置換を除いてv16のアミノ酸配列を含有する。特に明記しない限り、2H7変異体はv16と同じ軽鎖を有する
【0044】
表1 例示的なヒト化2H7抗体変異体

【0045】
ある好適なヒト化2H7は、2H7.v16可変軽鎖ドメイン配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKR (配列番号:2);
と、2H7.v16可変重鎖ドメイン配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:8)
を含んでなる。
【0046】
ヒト化2H7.v16抗体がインタクト抗体である場合、軽鎖アミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列番号:13);
と、配列番号:14の重鎖アミノ酸配列又は:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号:17)
を含んでなりうる。
【0047】
他の好適なヒト化2H7抗体は、2H7.v511可変軽鎖ドメイン配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYLHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWAFNPPTFGQGTKVEIKR (配列番号:18)
と、2H7.v511可変重鎖ドメイン配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSYRYWYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:19)
を含んでなる。
【0048】
ヒト化2H7.v511抗体がインタクト抗体である場合、軽鎖アミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYLHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWAFNPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列番号:15);
と、配列番号:16の重鎖アミノ酸配列又は:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSYRYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNAALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号:20)
を含んでなりうる。
【0049】
「成長阻害(「増殖阻害」ともいう)」抗体は、抗体が結合する抗原を発現している細胞の増殖を阻害又は低減するものである。例えば、アンタゴニストはインビトロ及び/又はインビボでのB細胞の増殖を阻害又は低減しうる。
「アポトーシスを誘導する」抗体とは、標準的なアポトーシスアッセイにより測定できるようなB細胞などのプログラム細胞死、例えば、アネキシンVの結合、DNA断片化、細胞収縮、小胞体の肥大、細胞断片化、及び/又は膜小嚢の形成(アポトーシス体と呼称)を誘導するものである。
【0050】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0051】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)への抗体の関与を示す。
【0052】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してV-V二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0053】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
(存在する場合には)抗体の「重鎖」の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスが割り当てられる。インタクト抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(イソ型)に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
【0054】
特に明記しない限り、本明細書中の免疫グロブリン重鎖の残基の番号付けは、出典明記によって本明細書中に特別に援用されるKabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のEUインデックスのものである。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。
「Fc領域」なる用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226の位置又はPro230からの位置のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。したがって、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。
【0055】
「機能的なFc領域」は、天然配列のFc領域のエフェクター機能を保持する。典型的な「エフェクター機能」は、C1q結合;補体依存性細胞障害活性、Fcレセプター結合;抗体依存性細胞障害活性(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(すなわち、B細胞レセプター)の下方制御などである。このようなエフェクターの機能は、一般に、Fc領域が結合領域例えば、抗体の可変ドメイン)に結合するのに必要とされており、ここで実施例として開示する様々はアッセイを用いることで評価することが可能である。
「天然配列のFc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を包含する。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1Fc領域(非A-及びA-アロタイプ);天然配列のヒトIgG2Fc領域;天然配列のヒトIgG3Fc領域;及び天然配列のヒトIgG4Fc領域;並びに、上記何れかの自然に生じる変異体が含まれる。
【0056】
「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは一又は複数のアミノ酸置換により、天然配列のFc領域とは異なるアミノ酸配列を包含するものである。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列のFc領域もしくは親ポリペプチドのFc領域と比較した場合、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列のFc領域又は親のポリペプチドのFC領域におよそ1からおよそ10のアミノ酸置換、好ましくはおよそ1からおよそ5のアミノ酸置換を有する。本明細書中の変異体Fc領域は、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と好ましくは少なくともおよそ80%の相同性を有するか、最も好ましくは少なくともおよそ90%の相同性を、さらに好ましくは少なくともおよそ95%の相同性を有するものであろう。
【0057】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞を溶解する細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象分子のADCC活性は、例えばClynes等 PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。
【0058】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。好ましくは、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表す。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(γレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含め、他のFcRもここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGの移動及び免疫グロブリンホメオスタシスに寄与する新生児レセプターであるFcRnもまた含む(Guyer等, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0059】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1補体が、同種抗原と結合した分子(例えば、抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編集, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(V−V)内で軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
【0060】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じ得、一般に少量で存在しうる可能な変異を除いて、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。そのようなモノクローナル抗体は典型的には標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含む方法によって得られている。例えば、選択方法は、ハイブリドーマクローンのプール、ファージクローン又は組換えDNAクローンのような複数のクローンから独特のクローンを選択することでありうる。選択された標的結合配列は、例えば標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養においてその生産を改善し、インビボでのその免疫原性を減少させ、多重特異的抗体を作り出す等のために、更に改変することができ、改変された標的結合配列を含む抗体はまた本発明のモノクローナル抗体であることが理解されなければならない。異なった決定基(エピトープ)に対する異なった抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と異なり、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによって汚染されていない点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要とするものであると考えてはならない。例えば、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えばKohler等, Nature, 256:495 (1975);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2版 1988);Hammerling等, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681, (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば米国特許第4816567号を参照)、ファージディスプレイ法(例えばClackson等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004);Lee等, J.Mol.Biol.340(5):1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee等 J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全てを有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生する技術(例えば国際公開第1998/24893号;同第1996/34096号;同第1996/33735号;同第1991/10741号;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545806号;同第5569825号;同第5591669号(全てGenPharm);同第5545807号;国際公開第1997/17852号;米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016号; Marks等, Bio/Technology, 10: 779-783 (1992);Lonberg等, Nature, 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature, 368: 812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology, 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826 (1996);及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol., 13: 65-93 (1995)を参照)を含む様々な技術によって作製することができる。
【0061】
本明細書中のモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に相同な又は同一な重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に相同な又は同一なものである(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5693780号)。
【0062】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループが上記のFR置換を除くFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも1又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0063】
本明細書中で使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
本明細書中の目的のための「ネイキッド抗体」は、細胞障害性分子又は放射性標識とコンジュゲートしていない抗体である。
【0064】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様においては、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法により定量して、抗体が95重量%より多くなるまで、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに十分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように十分な程度まで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0065】
「親和性成熟」抗体は、その一又は複数の高頻度可変領域に一又は複数の変異を有する抗体であって、そのような変異を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させたものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により産生できる。Marks等は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas等、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier等、Gene, 169:147-155 (1995);Yelton等、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995);Jackson等, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0066】
「抗体曝露」とは、およそ1日から20日の期間にわたって投与される一又は複数回用量の本明細書中の抗体への接触又は曝露を意味する。前記用量は、この曝露期間にわたって一回又は決まった時間ないしは変則的な時間で、投与されてもよい。初め及びその後(例えば2回目又は3回目)の抗体曝露は、本明細書中で詳述されるようにそれぞれ時間を隔てたものである。
「パッケージ挿入物」は、効能、用途、服用量、投与、配合禁忌、パッケージされている製品と併用される他の治療薬、及び/又はその治療薬の用途に関する警告などについての情報を含む、治療薬の商業的包装を慣習的に含めた指示書を指す。
【0067】
II.AD又は認知症の治療
本発明は、AD又は認知症に罹患している患者のAD又は認知症の治療方法であって、B細胞表面マーカー(好ましくはCD20抗体)に結合するアンタゴニスト(好ましくは抗体)の有効量を被検体に投与することを含んでなる方法を提供する。本明細書中で治療されるAD又は認知症は、軽度、中程度、重度、軽度〜中程度、中程度〜重度、孤発性、家族性、早期発症性、及び遅発性のAD又は認知症を含む。
例示的な投薬プロトコールに従って、前記方法は、AD又は認知症の被検体に有効量のネイキッドCD20抗体を投与して、およそ0.5〜4グラム(好ましくは1.5〜2.5グラム)の初回抗体曝露の後に、およそ0.5〜4グラム(好ましくは1.5〜2.5グラム)の2回目の抗体曝露が供給されることを含み、該2回目の抗体曝露が初回抗体曝露後およそ16〜60週までに供給されないものである。本発明のために、前記の2回目の抗体曝露は、被検体が初回抗体曝露後にCD20抗体で処置される次回であり、初回と2回目の曝露の間にCD20抗体処置ないしは曝露が介在しない。
【0068】
初回と2回目ないしはその後の抗体曝露との間隔は、初回抗体曝露の第1又は第2回目の投薬のいずれか、好ましくは初回抗体曝露の第1投薬から測定されうる。
本明細書中の好ましい実施態様では、抗体曝露は、およそ24週ないしは6か月離れて、又はおよそ48週又は12か月離れている。
一実施態様では、2回目の抗体曝露は、初回の曝露からおよそ20〜30週までに供給されず、場合によって、その後におよそ0.5〜4グラム(好ましくはおよそ1.5〜2.5グラム)の3回目の抗体曝露が供給され、該3回目の曝露は初回の曝露からおよそ46から60週まで(好ましくはおよそ46から54週まで)に投与されず、次いで好ましくは、初回曝露から少なくともおよそ70〜75週までに更なる抗体曝露が供給されない。
代替実施態様では、2回目の抗体曝露は、初回曝露からおよそ46〜60週までに供給されず、場合によって、その後の抗体曝露がその前の抗体曝露からおよそ46〜60週までに供給されない。
【0069】
本明細書中の一又は複数の抗体曝露の何れかは、抗体の単一投薬として、又は、抗体の2つの別々の投薬(すなわち、1回目及び2回目の投薬を構成する)として被検体に供給されうる。各々の抗体曝露に用いられる投薬の回数(1又は2の何れかにかかわらず)は、例えば、治療されるADのタイプ、用いられる抗体の種類、第二医薬を用いるかどうか、及び用いる場合に何を用いるか、投与方法と投与頻度に依存する。2回の別々の用量が投与される場合、2回目の投薬は、1回目の投薬が投与されたときからおよそ3〜17日、好ましくはおよそ6〜16日、最も好ましくはおよそ13〜16日に投与される。2回の別々の用量が投与される場合、1回目及び2回目の抗体の投薬は、好ましくはおよそ0.5〜1.5グラム、より好ましくはおよそ0.75〜1.3グラムである。
一実施態様では、被検体は、少なくともおよそ3回又は少なくとも4回の抗体の曝露、例えばおよそ3〜60曝露、より具体的にはおよそ3〜40曝露、最も具体的にはおよそ3〜20曝露が供給される。好ましくは、このような曝露は、それぞれおよそ24週ないしは6か月、又は48週ないしは12か月の間隔で投与される。一実施態様では、各々の抗体曝露は抗体の単回投薬として供給される。代替実施態様では、各々の抗体曝露は2回の別々の抗体投薬として供給される。しかしながら、すべての抗体曝露が、単回投薬又は2回の別々の投薬として供給される必要はない。
【0070】
好ましい実施態様では、前記方法は、およそ200mg〜2000mg、好ましくはおよそ500mg〜1500mg、最も好ましくはおよそ750mg〜1200mgの範囲で一又は複数の用量が投与されることを含んでなる。例えば、1から4回の用量、又は1回のみないしは2回のみの用量が投与されてもよい。この実施態様では、抗体がおよそ1か月の期間内、好ましくはおよそ2〜3週間の期間内、最も好ましくはおよそ2週間の期間内に投与されうる。
複数の用量が投与される場合、後の投薬(例えば、2回目又は3回目の投薬)は、前の用量が投与されたときからおよそ1〜20日、好ましくはおよそ6〜16日、最も好ましくはおよそ14〜16日に投与される。別々の用量が、好ましくは、全期間でおよそ1日から4週間の間、より好ましくはおよそ1日から20日の間(例えば、6〜18日間以内)に投与される。各々の別々の抗体の用量は、好ましくはおよそ200mg〜2000mg、好ましくは500mg〜1500mg、最も好ましくは750mg〜1200mgである。
【0071】
被検体は、アンタゴニストないしは抗体の少なくともおよそ2回の曝露、例えばおよそ2〜60回の曝露、より具体的にはおよそ2〜40回の曝露、最も具体的にはおよそおよそ2〜20回の曝露といった複数の曝露又は一連の用量を与えることによって、アンタゴニストないしは抗体にて再処置してもよい。このような付加的な曝露は間欠的に、例えば上記の間隔をおいて投与されうる。
好適なアンタゴニストは抗体である。本明細書に記載の方法において、CD20抗体はネイキッド抗体である。好ましくは、抗体はインタクトな、ネイキッド抗体である。本明細書において、好適なCD20抗体は、キメラ、ヒト化、又はヒトのCD20抗体であり、好ましくはリツキシマブ、ヒト化2H7、2F2(HuMax-CD20)ヒトCD20抗体(Genmab)、ヒト化A20抗体(Immunomedics)である。なお、リツキシマブ又はヒト化2H7がより好ましい。
【0072】
一実施態様では、被検体は、AD又は認知症を治療するために免疫抑制薬(一又は複数)などの薬剤(一又は複数)で今までに治療されたことがない、及び/又はB細胞表面マーカーに対する抗体によって、今までに治療されたことがない(例えば、CD20抗体にて今までに治療されたことがない)。好ましくは、被検体はB細胞悪性腫瘍を有しない。一実施態様では、被検体は、AD又は認知症以外の自己免疫性疾患に罹患していない。
抗体は、非経口、局所、皮下、腹膜内、肺内、鼻腔内、及び/又は病巣内投与を含む任意の適切な手段により投与される。非経口注入は、筋内、静脈内、動脈内、腹膜内、及び皮下への投与を含む。また、脳間質性注入であり両側性の定位注入であるので、髄腔内投与も考慮される(例として、CD20抗体の髄腔内運搬に関しては米国特許公開第2002/0009444号、Grillo-Lopez, Aを参照)。好ましくは、投薬は、静脈内、皮下、又は髄腔内に、最も好ましくは静脈内注入(一又は複数)によって、与えられる。
一実施態様では、CD20抗体は、AD又は認知症を治療するために被検体に投与される唯一の薬剤である。
【0073】
しかしながら、通常、CD20抗体は一又は複数の第二医薬と組み合わされるであろう。例えば、場合によって、コリンエステラーゼ阻害薬(ガランタミン(REMINYL(登録商標))、リバスチグミン経皮パッチを含むリバスチグミン(EXELON(登録商標))、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))、タクリン(COGNEX(登録商標))及びヒュープリンXTM、NメチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト(例えば、メマンチン(NAMENDA(登録商標))又はネラメキサン)、NGFのアデノ関連ウイルス運搬(例えばCERE-110)、β遮断薬、抗精神病薬、アセチルコリン前駆体、ニコチン性又はムスカリン性アゴニスト(例えば、XANOMELINETMパッチ)、抗β-アミロイド抗体、抗NGF抗体、例えばRA624、ワクチン、例えばヒトのアミロイドワクチン、アミロイド形成に関与する酵素(一又は複数)である、β又はγ分泌酵素の活性を阻止する薬剤、抗アミロイド療法、セロトニン、ノルエピネフリン、ソマトスタチン、APPのアミロイド-βへの転換又は老人性プラーク及び神経原線維変化の形成を妨げる薬剤、β-部位アミロイド-前駆体タンパク質切断酵素であるβ-分泌酵素(BACE)アンタゴニスト、BASE1アンタゴニスト、BASE2アンタゴニスト、γ-分泌酵素アンタゴニスト、プレセニリン-1(PSEN-1)アンタゴニスト、プレセニリン-2(PSEN-2)アンタゴニスト、APO-E4アンタゴニスト、抗鬱薬、抗痙攣薬、セロトニン再取込阻害薬、セルトラリン(ZOLOFTTM)、トラゾドン(DESYRELTM)、ジバルプロエクス(DEPAKOTETM)、ガバペンチン(NEURONINTM)、リスペリドン(RISPERDAL(登録商標))、オランザピン(ZYPREXATM)、クエチアピン(SEROQUELTM)、チオリダジン(MELLARILTM)、コレステロール低下薬又はスタチン(例えばHMG-CoA還元酵素又はシンバスタチン)、免疫調節性薬剤、抗酸化剤、例えばビタミンE(α‐トコフェロール)、魚油又はαリポ酸、カロチン、ニコチン、ギンナン抽出物、セレギリン、メシル酸エルゴロイド、エストロゲン、抗炎症薬、例えば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例として、アスピリン、イブプロフェン、cox-2阻害薬、ロフェコキシブ(VIOXX(登録商標))、ナプロキセン(ALEVE(登録商標))、セレコキシブ(CELEBRIX(登録商標))又はナプロキセン、イチョウ葉エキス、PPI-1019、ヒューペルジンA、ビタミン、例として、葉酸塩(葉酸)、B6、B12、ビタミンC、ビタミンE、セレニウム(PREADVISETM)、GABA(B)レセプターアンタゴニスト、例えばSGS742、NC-758(ALZHEMEDTM)、C-1073(MIFEPRISTONETM)、FK962、クルクミン、ONO-2506PO、メシル酸ラサギリン、バルプロエート、SR57746A(XALIPRODENTM)、NS 2330、MPC-7869、インターフェロン、例として、インターフェロンα、タンパク質分解性βアミロイド軽鎖抗体断片、細胞障害性剤(上記の定義を参照)、化学療法剤(上記に定義した)、免疫抑制剤(上記の定義)、TNFα阻害薬、DMARD、インテグリンアンタゴニストないしは抗体、副腎皮質ステロイド、プリンヒポキサンチン誘導体(例えばAIT-082)などの第二医薬を投与してもよい。
【0074】
好ましくは、第二医薬は、特にAD又は認知症が軽度〜中程度である場合、コリンエステラーゼ阻害薬(例として、ガランタミン(REMINYL(登録商標))、リバスチグミン経皮パッチを含むリバスチグミン(EXELON(登録商標))、及びドネペジル(ARICEPT(登録商標)))、又は、特にAD又は認知症が中程度〜重度である場合、NメチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト(例えば、メマンチン(NAMENDA(登録商標)))である。
第二医薬は、CD20抗体の初回の曝露及び/又はその後の曝露により投与されてもよい。このような併用投与は、別々の製剤又は単一の製薬製剤を用いた同時投与、及び何れかの順番での連続的な投与を含み、このとき、両方(又は全て)の活性薬剤が同時に各々の生物活性を及ぼす時間があることが好ましい。
【0075】
被検体への抗体の投与の他に、本出願は、遺伝子治療による抗体の投与を考慮する。抗体をコードする核酸のこのような投与は、抗体の「有効量」を投与するという表現により包含される。例として、細胞内抗体を生成するための遺伝子治療の使用に関しては、1996年3月14日に公開の国際公開第96/07321号を参照のこと。
被検体の細胞内への核酸(場合によって、ベクターに含まれている)の取り込みには2つの主な手法があり、それはインビボとエクスビボである。インビボ運搬のために、通常被検体の抗体が必要である部位に核酸が直接注入される。エクスビボ治療のために、被検体の細胞が取り除かれ、核酸がこれら単離した細胞内に導入され、変更した細胞が直接又は、例えば、被検体内に着床される多孔性膜内に被包して被検体に投与される(例として米国特許第4892538号および同第5283187号を参照)。核酸を生きた細胞に導入するために有用な様々な技術がある。技術は、核酸が対象とする宿主の細胞内にインビボで移入されるか、又はインビトロで培養細胞に形質移入されるかの何れかによって、異なる。インビトロでの哺乳動物細胞への核酸の移入に適する技術には、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、などの使用が含まれる。遺伝子のエクスビボ運搬のために一般的に用いられるベクターはレトロウィルスである。
【0076】
現在のところ、好適なインビボ核酸移入技術には、ウイルスベクター(例として、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス又はアデノ関連ウイルス)及び脂質ベースのシステム(遺伝子の脂質が媒介する移入に有用な脂質は、例えばDOTMA、DOPE及びDC-Cholである)を用いる形質移入が含まれる。場合によっては、標的細胞を標的とする薬剤、例えば細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンドなどにより核酸供給源を提供するのが好ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスに関係する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定の種類の細胞に対するキャプシドタンパク質ないしはその断片、循環への内部移行を起こすタンパク質に対する抗体、並びに、細胞内局在化を標的とするタンパク質及び細胞内半減期を上げるタンパク質は、ターゲティングのため及び/又は取込を促すために用いられてもよい。レセプターが媒介するエンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987)、Wagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:3410-3414 (1990)に記載されている。一般に知られている遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコールの概要については、Anderson等, Science 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、国際公開第93/25673号及びそこに引用される文献を参照のこと。
【0077】
III.抗体の製造
本発明の方法及び製造品は、B細胞表面上のマーカーに結合する抗体、特にCD20に結合する抗体を好ましくは使用する又は取り込むものである。したがって、該抗体の製造方法をここに記載する。
抗体の製造又はスクリーニングのために用いるB細胞表面マーカーは、例えば、所望のエピトープを含む該マーカーないしはその一部の可溶性形態であってもよい。あるいは又は更に、前記マーカーをその細胞表面上に発現する細胞を抗体の製造又はスクリーニングに用いることができる。抗体の製造に有用なB細胞表面マーカーの他の形態は当業者に明らかである。
以下は、本発明に従って用いた抗体の製造の例示的技術として記載する。
【0078】
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRにより抱合させることが有用である。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0079】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、一般にわずかながら存在する突然変異体などのモノクローナル抗体の産生中に生じうる突然変異体を除いて同一及び/又は同じエピトープに結合するものである。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個又はポリクローナルの抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0080】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、San Diego, California USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカ培養細胞系統保存機関、Rockville, Maryland USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson等, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0081】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウスの重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)がある。
【0082】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから単離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0083】
(iii) ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、基本的にはウィンターと共同研究者の方法(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536(1988))に従って、ヒト抗体の該当する配列を高頻度可変領域配列に置換することにより実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくつかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0084】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0085】
(iv) ヒト抗体
ヒト化のための別法により、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993);Bruggerman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5591669号、同5589369号及び同5545807号を参照されたい。
【0086】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty等, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13のメジャー又はマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにおいてイン-フレームをクローンする。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5565332号及び同5573905号を参照のこと。
またヒト抗体は、活性化B細胞によりインビトロで生産してもよい(例えば米国特許第5567610号及び同5229275号を参照)。
【0087】
(v) 抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開93/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直線状の断片は単特異的又は二重特異的であってもよい。
【0088】
(vi) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーの2つの異なるエピトープに結合しうる。他のこのような抗体ではB細胞表面マーカーを結合し、更に異なるB細胞表面上のマーカーが結合しうる。あるいは、抗B細胞表面マーカーは、B細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体はB細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はB細胞表面マーカー結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')二重特異性抗体)として調製することができる。
【0089】
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィ工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開第93/8829号及びTraunecker等, EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、コンストラクトに使用される3つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、3つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2又は3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0090】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
米国特許第5731168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0091】
二特異性抗体とは架橋抗体や「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していても良い。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療(国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373号及び欧州特許第03089号)等の用途が提案されている。ヘテロ抱合抗体は適当な架橋方法によって生成できる。当技術分野においては、適切な架橋剤は周知であり、それらは複数の架橋法と共に米国特許第4676980号などに記されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) はインタクト抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0092】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelny等, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により2つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモダイマーはヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等, J.Immunol. 147:60(1991)。
【0093】
IV.抗体の他の修飾
抗体のアミノ酸配列の修飾を考察する。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。抗体のアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構造物に達するまでなされるが、その最終構造物は所望の特徴を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化など、抗体の翻訳後過程を変更しうる。
突然変異のための好ましい位置にある抗体の残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリペプチドアニリン)に置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0094】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つ抗体又は細胞障害ポリペプチドに融合した抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を向上させる酵素又はポリペプチドの抗体のN-又はC-末端への融合物を含む。
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子において少なくとも一つのアミノ酸残基に異なる残基が挿入されている。抗体(一又は複数)の置換突然変異について最も関心ある部位は高度可変領域を含むが、FR交互変化も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表2に示す。これらの置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表2に「例示的置換」と名前を付けた又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化が導入され、生成物がスクリーニングされうる。
【0095】
表2

【0096】
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はヘリックス配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸はその側鎖の性質の類似性に応じて分類される( Biochemistry, 第2版., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)中のA. L. Lehninger):
(1)非極性:Ala (A), Val (V), Leu (L), Ile (I), Pro (P), Phe (F), Trp (W), Met (M)
(2)荷電のない極性:Gly (G), Ser (S), Thr (T), Cys (C), Tyr (Y), Asn (N), Gln (Q)
(3)酸性:Asp (D), Glu (E)
(4)塩基性:Lys (K), Arg (R), His(H)
あるいは、天然に生じる残基は共通の側鎖性質に基づいてグループに分類してもよい。
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr、asn、gln;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
抗体の適切な配置の維持に関与しない任意のシステイン残基は、一般にセリンで置換し、分子の酸化的安定性を向上させて異常な架橋を防止する。逆に、抗体にシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい(特にここでの抗体は抗体断片、例としてFv断片である)。
【0097】
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異である。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ置換を生成させる。このように生成された多価抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
抗体のアミノ酸変異の他の型は、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。このような変更とは、抗体に見い出される一又は複数の糖鎖部分の欠失、及び/又は抗体に存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加等を含む。
【0098】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの糖類のうち一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
【0099】
抗体がFc領域を含有する場合、それに接着する炭水化物を変更してもよい。例えば、抗体のFc領域に接着するフコースを欠損する成熟炭水化物構造の抗体は、米国特許公開出願番号2003/0157108号(Presta, L.)に記載される。CD20抗体組成物に関しては米国公開特許第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd.)も参照のこと。抗体のFc領域に接着した炭水化物内のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を二分する抗体は、国際公開第03/011878号(Jean-Mairet等)、及び米国特許第6602684号(Umana等)に参照されている。抗体のFc領域に接着するオリゴサッカライド内の少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体は、国際公開第97/30087号(Patel等)に報告される。また、抗体のFc領域に接着する変更された炭水化物を有する抗体については、国際公開第98/58964号(Raju, S.)及び国際公開第99/22764号(Raju, S.)も参照のこと。
【0100】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製された抗体の変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
エフェクター機能に関して、例えば抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)を向上させるために、本発明の抗体を修飾することが望ましい。このことは、抗体のFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入することで達成される。あるいは又は加えて、Fc領域にシステイン残基を導入することによってこの領域での鎖間のジスルフィド結合形成が起こりうる。故に、生成されたホモ二量体抗体は内部移行能を向上及び/又は補体媒介性細胞障害及びADCCを増強する。Caron等, J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992) 及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照。抗腫瘍活性が亢進されたホモ二量体抗体もまた、Wolff等, Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載されているような異種性二機能性交差結合を用いて調製されうる。又は、抗体を二重のFc領域を持つように操作して、それによって補体媒介性溶解及びADCC能を亢進した。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
【0101】
国際公開第00/42072号(Presta, L.)は、抗体がそのFc領域内にアミノ酸置換を含有する場合のヒトエフェクター細胞の存在下で改善されたADCC機能を有する抗体を述べる。好ましくは、改善されたADCCを有する抗体はFc領域内の位置298、333及び/又は334に置換を有する。好ましくは、変更されたFc領域は、それらの位置のうちの1、2又は3つに置換を含有する又はそれらからなるヒトIgG1Fc領域である。
変更したC1q結合及び/又はCDCを有する抗体については、国際公開第99/51642号、米国特許第6194551号B1、米国特許第6242195号B1、米国特許第6528624号B1及び米国特許第6538124号 (Idusogie等)に記載される。抗体は、そのFc領域のアミノ酸位置270、322、326、327、329、313、333及び/又は334の一以上にアミノ酸置換を含有する。
【0102】
抗体の血清半減期を延長するために、例として米国特許第5739277号に記載されているように抗体(特に抗体断片)内にサルベージレセプター結合エピトープを組み込む方法がある。ここで用いる、「サルベージレセプター結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期延長に関与するIgG分子(例えば、IgG、IgG、IgG又はIgG)のFc領域のエピトープを表す。また、Fc領域内に置換を有し、血清半減期が延長された抗体は国際公開第00/42072号(Presta, L.)に記載される。
3つ以上(好ましくは4つ)の機能的抗原結合部位を有する遺伝的に操作した抗体もまた考慮される(米国公開特許第2002/0004587号A1, Miller等)。
【0103】
V.治療用製剤
本発明に関連して使用される抗体の治療的剤形は、所望の純度を有する抗体を選択的に薬剤的許容可能な担体、賦形剤、安定剤と混合して凍結乾燥の剤形又は液状溶液の形態の貯蔵に適するものである(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)又はTWEENTM、PLURONICSTM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0104】
例示的抗CD20抗体の剤形は国際公開第98/56418号に記載されており、出典明記により特別に本明細書中に援用される。この公報は、2−8℃で2年間の最小限の貯蔵期間を持つように、リツキシマブ40mg/mL、25mM酢酸塩、150mMトレハロース、0.9%ベンジルアルコール、及び0.02%ポリソルベート20, pH5.0を含む液状複数回用量の剤形である。目的の他の抗CD20剤形は、リツキシマブ10mg/mL、塩化ナトリウム9.0mg/mL、クエン酸ナトリウム二水和物7.35mg/mL、ポリソルベート80 0.7mg/mL、及び注入用の滅菌水を含むpH 6.5のものである。
凍結乾燥剤形は米国特許第6267958号(Andya等)に記載されるように、皮下的投与に適する。そのような凍結乾燥剤形は適当な希釈剤で高いタンパク質濃度に再編成されるかもしれない、また再編成された剤形はここで治療される哺乳動物に皮下注射されうる。
また、抗体又はアンタゴニストの結晶形態も考慮される。例えば米国公開第2002/0136719号A1(Shenoy等)も参照のこと。
【0105】
また、本明細書中の製剤は、治療される特定の徴候のための必要に応じて、一以上の活性な化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有するものを含有してもよい。例えば、上記の治療項目IIにおいて検討されたものなどの第二の医薬をさらに提供することが望ましい場合もある。そのような他の薬剤の種類と有効量は、例えば製剤中に存在する抗体の量、治療されるADや認知症のタイプ、及び被検体の臨床的パラメータに依存する。これらは一般的に、前記の使用と同じ服用量と投薬経路で用いられるか、又は前記の用いた服用量のおよそ1から99%で用いられる。
また、活性成分は、例としてコアセルべーション技術又は界面重合化により調製したマイクロカプセル、例として、個々のコロイド状のドラッグデリバリーシステム(例として、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョン中の、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタサイクリン)マイクロカプセル中に包まれているかもしれない。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0106】
持続性徐放剤が調製される。持続性徐放剤の好適な例は、抗体を含む固形疎水性ポリマーの準透過性基質を含むものであり、基質は、造形品、例としてフィルム、又はマイクロカプセルの形である。持続性徐放基質の例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号), L-グルタミン酸及びエチルLグルタミン酸の共重合体、非分解性のエチレンビニール酢酸塩、分解性の乳酸グリコール酸共重合体、例としてLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸共重合体及びロイプロリド酢酸塩で構成された注入可能ミクロスフェア)、及びポリD-(−)-3ヒドロキシブチリン酸を含む。
【0107】
AD又は認知症において、血液脳関門が崩壊されているか又はその透過性ないしは運搬が変化しているかもしれないが、その透過性を上げる及び/又は治療剤を運搬する薬剤又は方法が抗体とともに調製されてもよい。例えば、プロカルバジンなどの親油性ベクターを用いて、血液脳関門を透過させる、及び/又は治療剤を脳へ運搬してもよい。また、イムノリポソーム、抗体指向性リポソーム及び生体分子親油性複合体が、血液脳関門を越える担体として用いられてもよい。好ましくは、これらは、脂肪酸、例えばω-3系列又はこの系列の脂質誘導体を含む。さらに、親油性分子には、他の脂肪酸、リゾ-リン脂質、ジアシルリン脂質、ジアシルグリセロール、コレステロール、ステロイド、例えば18−46の炭素原子のポリ不飽和の炭化水素基を有するものが含まれるが、これらに限定されるものではない。加えて、バイオポリマーが使われてもよい。これらには、ヒトのアルブミン、アミノデキストラン及びカゼインに結合して連結するポリ(α)-アミノ酸であるヒト血清アルブミン又は薬剤が含まれるが、これに限定されるものではない。好ましくは、このような担体は、運搬システムとしての使用に好適な生体親和性及び薬物動態を有する。例として米国特許第5716614号を参照のこと。血液脳関門の透過性を増加しうる薬剤の他の例は、トランスフェリンレセプター抗体である。トランスフェリンレセプターは、脳の毛細管内皮細胞上で検出可能である。このような抗体の例には、B3/25、OKT-9、OX-26、Tf6/14、L5.1、5E-9、T58/30及びRI7 217が含まれ、米国特許第5182107号を参照のこと。さらに、血液脳関門は浸透圧が崩壊されていてもよい。
インビボ投与のために使用される製剤は無菌でなければならない。これは濾過滅菌膜による濾過によって容易に達成されうる。
【0108】
VI.製造品
本発明の他の実施態様では、上記のAD又は認知症の治療に有用な材料を含有してなる製造品が提供される。好ましくは、製造品は、(a) B細胞表面抗原アンタゴニスト(例えばCD20抗体)と薬学的に受容可能な担体又は希釈液を含有してなる組成物を含む容器、と、(b) AD又は認知症を有する被検体への組成物の投与に関する指示を有するパッケージ挿入物とを具備する。
製造品は、容器と該容器に貼付けられるか付随するラベル又はパッケージ挿入物とを具備する。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成されうる。容器はAD又は認知症の治療に有効な組成物を収容するか含んでおり、滅菌した出入口を有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈溶液用のバック又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物は、前記組成物が、供給される抗体及び任意の他の薬剤の用量及び間隔に関する具体的なガイドラインによって、AD又は認知症を患っている被検体のAD又は認知症を治療するために用いられることを示している。製造品は、製薬的に許容可能な希釈バッファ、例えば注入用の静菌性水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びブドウ糖液を含む第二の容器を更に具備してもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含め、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料を含んでもよい。
場合によって、本明細書中の製造品は、治療のための抗体以外の薬剤を収容する第二の容器と、さらに該薬剤によって、哺乳動物を治療することに関する指示書を具備する。この第二の医薬の例は上記の治療の項目IIにおいて、検討されている。
さらに、本発明の詳細は以下の非制限的な実施例により例示される。本明細書中のすべての引用文献の開示内容は、出典明記によって、本明細書中に特別に援用される。
【実施例】
【0109】
実施例1 軽度〜中程度のアルツハイマー病の治療
軽度〜中程度のADを有する被検体は、この実施例において、CD20抗体により治療される。
NINCDS/ADRDA判定基準(McKhann 等 "Clinical diagnosis of Alzheimer's disease: report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer's Disease." Neurology 34, 939-944 (1984))により定義されるアルツハイマー病を有する50〜80歳の男性又は女性の被検体が、本明細書において、治療される。前記の被検体は、簡易精神状態検査(MMSE)を用いて測定される軽度〜中程度のADを有する。例えば、MMSEスコアが16〜24の範囲であってもよい。被検体は、CD20抗体による治療の前の3か月間はADのための標準的なケア薬物治療(すなわちアセチルコリンエステラーゼ阻害薬)下にあるのが好ましい。さらに、被検体は、神経心理学的試験が可能な程度に視力と聴力を有するであろう。
Genentechから市販されているリツキシマブは、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、0.7mg/mLのポリソルベート80、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム無水和物、及び注入用の滅菌水(pH6.5)にて滅菌生成物として静注用に製剤化される。あるいは、インタクトヒト化2H7.v16又はインタクトヒト化2H7.v511を含んでなる製剤が投与される。
【0110】
治療の第一クールでは、1日目及び15日目のそれぞれに1g用量の静注(IV)用CD20抗体が投与される。被検体は、各々の注入開始の前30〜60分に、アセトアミノフェン(1g)及びジフェンヒドラミンHCl(50mg)を経口投与される。
治療のその次のクールでは、24週目(169日目)、48週目(337日目)及び72週目(505日目)に投与を開始する。治療の続くクールの2回目の注入は、1回目の注入後14±1日目とする。
本明細書中に記載のCD20抗体の投与により、認知機能の維持、疾患進行の緩徐化、疾患に伴う行動問題の制御、日常生活能力の欠失の緩徐化、自己抗体ないしBRAレベルの減少、及び/又は循環CD20陽性B細胞の減少が生じる。例えば、CD20抗体の投与により、MMSEスコアが同じに維持されるか又は4ポイント以下の減少が生じる(未処置の軽度〜中程度のADでは、MMSEスコアで1年につき2〜4ポイントの衰えが予測される)。このような改善される結果は、標準的なケア薬物単独により達成されるものより優れる。
【0111】
実施例2 中程度〜重度のアルツハイマー病の治療
この実施例は、CD20抗体を用いた中程度〜重度のADの治療を記述する。この実施例では、中程度〜重度のADを有する50歳以上の男性及び女性が治療される。このような被検体は、NPIの不穏/攻撃性ドメインに関して4以上のスコアをもつ中程度〜重度のADを有する。被検体は、少なくとも3か月間、メマンチンを一定投薬されている。
Genentechから市販されているリツキシマブは、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、0.7mg/mLのポリソルベート80、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム無水和物、及び注入用の滅菌水(pH6.5)にて滅菌生成物として静注用に製剤化される。あるいは、インタクトヒト化2H7.v16又はインタクトヒト化2H7.v511を含んでなる製剤が投与される。
【0112】
治療の第一クールでは、1日目及び15日目のそれぞれに1g用量の静注(IV)用CD20抗体が投与される。被検体は、各々の注入開始の前30〜60分に、アセトアミノフェン(1g)及びジフェンヒドラミンHCl(50mg)を経口投与される。
治療のその次のクールでは、24週目(169日目)、48週目(337日目)及び72週目(505日目)に投与を開始する。治療の続くクールの2回目の注入は、1回目の注入後14±1日目とする。
日々の機能は、被検体の機能的能力を測定するために使用するADL質問表の包括的バッテリーを含む、日常生活動作(ADL)表を用いて評価してもよい。各々のADL項目は、個々の行動の最も高いレベルから完全に欠失するまで等級分けされている。臨床医は、被検体の行動を理解している介護者と面談することによって表を作成する。
【0113】
認知能力は、中程度〜重度の認知症患者の認知機能の評価に有効な多種目計測器を用いて評価してもよい。例えば、計測器は、注意力、順応、言語、記憶、視覚空間に関する能力、解釈、慣習及び社会的相互作用の構成要素を含む認知能力の選択された態様を調べうる。例えば、0から100の範囲のスコアであり、スコアが低いほど大きな認知障害を示す重度機能障害バッテリー(SIB)を用いてもよい。
本明細書中に記載のCD20抗体の投与により、認知機能の維持、疾患進行の緩徐化、疾患に伴う行動問題の制御、日常生活能力の欠失の緩徐化、自己抗体ないしBRAレベルの減少、及び/又は循環CD20陽性B細胞の減少が生じる。CD20抗体の投与により、プラセボにより達成されるスコアよりも優れたADLスコアとなり、又は前記のCD20抗体がメマンチンと組み合わされる場合にはメマンチン単独よりも優れたスコアとなる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】マウス2H7の軽鎖可変ドメイン(V)(配列番号1)、ヒト化2H7.v16変異体の軽鎖可変ドメイン(配列番号2)、及びヒトκ軽鎖サブグループIの軽鎖可変ドメイン(配列番号3)のアミノ酸配列を比較した配列アライメント。2H7及びhu2H7.v16のVのCDRは以下の通りである:CDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)、及びCDR3(配列番号6)。それぞれの鎖のCDR1、CDR2、CDR3は示すように大括弧で囲っており、フレームワーク領域であるFR1-FR4に隣接している。2H7はマウス2H7抗体を示す。2配列間にあるアスタリスクは2配列間で異なる箇所を示す。 Kabat等, Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)に従って残基番号を示し、a、b、c、d、及びeで挿入を示す。
【図1B】マウス2H7の重鎖可変ドメイン(V)(配列番号7)、ヒト化2H7.v16変異体の重鎖可変ドメイン(配列番号8)、及び重鎖サブグループIIIのヒトコンセンサス配列の重鎖可変ドメイン(配列番号9)のアミノ酸配列を比較した配列アライメント。2H7及びhu2H7.v16のVのCDRは以下の通りである:CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)。それぞれの鎖のCDR1、CDR2、CDR3は示すように大括弧で囲っており、フレームワーク領域、FR1-FR4に隣接している。2H7はマウス2H7抗体を示す。2配列間にあるアスタリスクは2配列間で異なる箇所を示す。 Kabat等, Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)に従って残基番号を示し、a、b、c、d、及びeで挿入を示す。
【図2】Kabatの可変ドメイン残基番号付け及びEu定常ドメイン残基番号付けを用いて、成熟2H7.v16及び2H7.v511の軽鎖(それぞれ配列番号13及び15)のアライメントを示す。
【図3】Kabatの可変ドメイン残基番号付け及びEu定常ドメイン残基番号付けを用いて、成熟2H7.v16及び2H7.v511の重鎖(それぞれ配列番号14及び16)のアライメントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病を治療するために有効な量のネイキッドCD20抗体が被検体に投与されることを含む、被検体のアルツハイマー病の治療方法。
【請求項2】
前記被検体がB細胞悪性腫瘍に罹っていない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被検体が、アルツハイマー病以外の自己免疫性疾患を有さない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記被検体が軽度から中程度のアルツハイマー病を有している、請求項1ないし3の何れか一に記載の方法。
【請求項5】
前記被検体にコリンエステラーゼ阻害薬が投与されることを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コリンエステラーゼ阻害薬が、ガランタミン、リバスチグミン及びドネペジルからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記被検体が中程度から重度のアルツハイマー病を有する、請求項1ないし3の何れか一に記載の方法。
【請求項8】
さらに、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニストが被検体に投与されることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
NMDAアンタゴニストがメマンチンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被検体が非定型の自己抗体レベルを有する、請求項1ないし9の何れか一に記載の方法。
【請求項11】
前記自己抗体が、β-アミロイド、カルジオリピン、チューブリン、グリア線維性酸性タンパク質、神経線維タンパク質(NFL)、ガングリオシド、骨格タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、セロトニン、ドーパミン、神経成長因子(NGF)、プレセニリン、アミロイドβ-ペプチド(Abeta)、促進した糖化末端生成物に対するレセプター(RAGE)、又は脳応答性抗体(BRA)に対する抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記CD20抗体が第一医薬である場合に、さらに、アルツハイマー病を治療するために有効な量の第二医薬が被検体に投与されることを含む、請求項1ないし11の何れか一に記載の方法。
【請求項13】
前記第二医薬が、コリンエステラーゼ阻害薬、ガランタミン、リバスチグミン、リバスチグミン経皮パッチ、ドネペジル、タクリン、NメチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、メマンチン、ネラメキサン、NGFのアデノ関連ウイルス運搬、CERE-110、β遮断薬、抗精神病薬、アセチルコリン前駆体、ニコチン性又はムスカリン性のアゴニスト、抗β-アミロイド抗体、抗NGF抗体、RA624、ワクチン、ヒトのアミロイドワクチン、アミロイド形成に伴うβないしはγ分泌酵素の活性を遮断する薬剤、抗アミロイド療法、セロトニン、ノルエピネフリン、ソマトスタチン、APPのアミロイド-βへの変換又は老人性プラーク及び神経原線維変化の形成を妨げる薬剤、β-部位アミロイド-前駆体タンパク質切断酵素アンタゴニスト、β-分泌酵素(BACE)アンタゴニスト、BASE1アンタゴニスト、BASE2アンタゴニスト、γ-分泌酵素アンタゴニスト、プレセニリン-1(PSEN-1)アンタゴニスト、プレセニリン-2(PSEN-2)アンタゴニスト、APO-E4アンタゴニスト、抗鬱薬、抗痙攣薬、セロトニン再取込インヒビター、セルトラリン、トラゾドン、ジバルプロエクス(divalprolex)、ガバペンチン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、チオリダジン、コレステロール低下薬又はスタチン、HMG-CoA還元酵素、シンバスタチン、免疫調節性薬、抗酸化薬、ビタミンE、魚油、αリポ酸、カロチン、ニコチン、ギンナン抽出物、セレギリン、メシル酸エルゴロイド、エストロゲン、消炎剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、アスピリン、イブプロフェン、コックス-2阻害薬、ロフェコキシブ、ナプロキセン、セレコキシブ、ナプロキセン、イチョウ葉エキス、PPI-1019、ヒューペルジンA、ビタミン、葉酸塩、B6、B12、アスコルビン酸、ビタミンE、セレニウム、GABA(B)レセプターアンタゴニスト、SGS742、NC-758、C-1073、FK962、クルクミン、ONO-2506PO、メシル酸ラサギリン、バルプロエート、SR57746A、NS2330、MPC-7869、インターフェロン、インターフェロンα、タンパク分解性βアミロイド軽鎖抗体断片、細胞障害性薬、化学療法剤、免疫抑制薬、TNFα阻害薬、疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、インテグリンアンタゴニスト又は抗体、副腎皮質ステロイド及びプリンヒポキサンチン誘導体からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記被検体がCD20抗体によって今までに治療されたことがない、請求項1ないし13の何れか一に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体がキメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体である、請求項1ないし14の何れか一に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体がリツキシマブを含んでなる、請求項1ないし15の何れか一に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体がヒト化2H7を含んでなる、請求項1ないし15の何れか一に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が2F2(huMax-CD20)を含んでなる、請求項1ないし15の何れか一に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が静脈内、皮下、又は髄膜下に投与される、請求項1ないし18の何れか一に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が静脈内に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
およそ1か月の期間以内で、およそ1〜4回の投薬頻度で、およそ200mgから2000mgの範囲の用量で抗体を投与することを含んでなる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記用量がおよそ500mgから1500mgの範囲である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記用量がおよそ750mgから1200mgの範囲である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が1又は2回の投薬で投与される、請求項20ないし23の何れか一に記載の方法。
【請求項25】
前記1又は2回の投薬がおよそ2〜3週間以内で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記CD20抗体がアルツハイマー病を治療するために被検体に投与される唯一の医薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
ADを治療するために被検体に、前記CD20抗体と、コリンエステラーゼ阻害薬及びNメチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニストからなる群から選択される第二医薬とが投与されることから基本的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
認知症を治療するために有効な量のネイキッドCD20抗体が被検体に投与されることを含む、被検体の認知症の治療方法。
【請求項29】
(a) ネイキッドCD20抗体を含む容器、と、
(b) 被検体のアルツハイマー病又は認知症を治療するための指示を有するパッケージ挿入物
を具備してなる製造品。
【請求項30】
さらに、第二医薬を含むもう一つの容器を具備し、前記のCD20抗体が第一医薬であって、さらに、被検体を第二医薬で治療することに関する指示をパッケージ挿入物に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第二医薬が、コリンエステラーゼ阻害薬又はNメチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニストである、請求項30に記載の製造品。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−538767(P2008−538767A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507995(P2008−507995)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/015577
【国際公開番号】WO2006/116369
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507202770)ジェネンテック・インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】