説明

CDMA受信回路およびその処理方法

【課題】 省電力化されたCDMA受信回路を提供する。
【解決手段】 パスサーチ回路104から出力された有効パス遅延量と既に入力されている有効パス遅延量と比較する有効パス遅延量比較回路302と、希望電力対干渉電力比と、あらかじめ定められた基準とを比較する電力比比較回路303と、電力比比較回路303の比較結果に基づいて計数するパスカウンタ回路304と、パスカウンタ回路304の計数値と、有効パス遅延量の変化しない回数の基準を定めたしきい値と比較する良好受信判定回路305とを具備し、有効パス遅延量と、あらかじめ記憶した有効パス遅延量とが等しいと判定され、希望電力対干渉電力比があらかじめ定めた基準の範囲内であると判定されパスカウンタ回路304が加算され、パスカウンタ回路304の加算後の計数値がしきい値を越えると判定されたときに、パスサーチ回路104にその旨を通知するCDMA受信回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDMA通信回路に係り、特に受信回路のパスサーチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体通信などに広く用いられているCDMA(Code Division Multuple Access:符号分割多重接続)通信方式は、送信側では拡散符号系列を用いてビットデータを拡散変調して送信しており、受信側では送信側で用いた拡散符号系列で受信側のタイミング同期を取った後に逆拡散および復調処理をすることによって、送信したビットデータを復元する通信方式である。
【0003】
従来のCDMA受信回路の動作を、図6を参照して説明する。
【0004】
図示したように、受信アンテナ201から入力された受信信号は、準同期検波回路202によって、ベースバンド処理が可能な周波数帯に周波数変換される。
【0005】
この周波数変換された信号は、A/D(Analg to digital:アナログ/デジタル)変換器203によってA/D変換された後、パスサーチ回路204によって指定ユーザごとに割り当てられた拡散信号を用いて各受信遅延時間に対して相互相関値を求める遅延プロファイルが計算される。
【0006】
このようにパスサーチ回路204は、パスサーチされた中で、指定ユーザの拡散符号との相関性が高いパス遅延位置を有効パスに指定して、この有効パスの有効パス遅延量をフィンガー回路2051〜205nへ出力する。
【0007】
フィンガー回路2051〜205nでは、パスサーチ回路204から得た有効パス遅延量を用いて受信データの逆拡散により相関値計算を行い、復調回路206に出力する。
【0008】
復調回路206では、各フィンガー回路2051〜205nの相関値計算結果をフェージングによるビット位相調整を行った後に同相加算を行い、図示しないスロット単位およびフレーム単位の信号処理を行う。
【0009】
他方、復調回路206の出力は希望電力対干渉電力比計算回路207に入力され、SIR(Signal to Interference power Ratio:希望電力対干渉電力比)値が計算され、図示しない送信側装置の電力制御手段に用いられる。
【0010】
なお、このようなCDMA通信方式に用いられる電力制御としては、TPC(Transmission power Control:送信電力制御)ビットを用いた方式が一般的に用いられる。
【0011】
このTPCビットを用いた方式は、送信データフォーマットの中に基準信号パターンである固定のパイロットビットパターンを周期的に挿入して送信し、受信側ではこの挿入されたパイロットビットパターン部分を逆拡散した後、SIR値を推定している。
【0012】
この推定されたSIR値が、指定された基準SIR値に対して大きければ送信電力を小さくするように送信側のTPCビットが生成され、SIR値が指定された基準SIR値に対して小さければ送信電力を大きくするように送信側のTPCビットが生成される。
【0013】
受信品質を良好に保持しつつ、消費電力低減を図ったフィンガパス割り当て処理を行う無線通信機および無線通信機の消費電力制御方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−24557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来のCDMA受信回路においては、基地局装置と移動機端末との距離が近く、受信品質が良好かつ移動機端末側がほぼ静止状態にある場合(例えば、移動機端末を用いて見通しの良いセル半径の小さな基地局装置とデータ通信を行う場合)には、有効パスの受信遅延位置が変動しないため、パスサーチ回路の動作によってフィンガー回路へ出力する有効パス位置の情報も変わらない。
【0015】
したがって、このような受信品質が良好な通信環境化においては、パスサーチ回路の動作は必要ではなく、この良好な通信状態においては消費電力の浪費が生じるという問題があった。
【0016】
そこで本発明の目的は、基地局装置と移動機端末と見通しが良く互いの受信品質が良好かつ移動機端末側がほぼ静止状態にある場合を検知し、検知した場合は、パスサーチ回路の動作を簡易化することにより消費電力を低減することの可能なCDMA受信回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のCDMA受信回路の第1の発明は、受信した高周波信号の有効パス遅延量を計算して出力するパスサーチ回路と、前記有効パス遅延量を用いて前記高周波信号の受信状態を示す希望電力対干渉電力比を計算する希望電力対干渉電力比計算回路と、を有するCDMA受信回路であって、
前記有効パス遅延量を入力し、該有効パス遅延量と、既に入力されている有効パス遅延量と比較する有効パス遅延量比較回路と、
前記希望電力対干渉電力比と、あらかじめ定められた高周波信号の受信状態の基準となる希望電力対干渉電力比基準とを比較する電力比比較回路と、
前記電力比比較回路の比較結果に基づいて計数するパスカウンタ回路と、
前記パスカウンタ回路の計数値と、有効パス遅延量が安定していることを示すあらかじめ定められた基準であるパス安定基準とを比較する受信良好判定回路と、を具備し、
前記有効パス遅延量比較回路が、前記有効パス遅延量と、既に入力されている有効パス遅延量が等しいと判定し、
前記電力比比較回路が、前記希望電力対干渉電力比が前記希望電力対干渉電力比基準の範囲内であると判定し、
前記パスカウンタ回路の計数値が加算された後、
前記受信良好判定回路が、前記パスカウンタ回路の加算後の計数値が前記パス安定基準以上であると判定したときに、前記受信良好判定回路が、前記パスサーチ回路に、前記受信良好判定回路の判定結果を通知するCDMA受信回路である。
【0018】
第2の発明は、第1の発明に記載のCDMA受信回路において、
前記パスカウンタ回路の計数値と、前記パス安定基準とを比較するパス安定判定回路と、
前記パス安定判定回路の比較結果に基づいて計数する一時受信カウンタ回路と、
前記一時受信カウンタ回路の計数値をあらかじめ定めた一時的な受信状態の不安定の基準を示す一時受信基準と比較する一時受信判定回路と、をさらに具備し、
前記電力比比較回路が、前記希望電力対干渉電力比が前記希望電力対干渉電力比基準の範囲外であると判定し、
前記パス安定判定回路が、前記パスカウンタ回路の計数値が前記パス安定基準以上であると判定し、
前記一時受信カウンタ回路の計数値が加算された後、
前記一時受信判定回路が、前記一時受信カウンタ回路の加算後の計数値が前記一時受信基準より小さいと判定したときに、前記一時受信判定回路が、前記パスサーチ回路に、前記一時受信判定回路の判定結果を通知するものである。
【0019】
第3の発明は、受信した高周波信号の有効パス遅延量を計算して出力するパスサーチ回路と、前記有効パス遅延量を用いて前記高周波信号の受信状態を示す希望電力対干渉電力比を計算する希望電力対干渉電力比計算回路と、を有するCDMA受信回路の処理方法であって、
前記有効パス遅延量を入力し、該有効パス遅延量と、既に入力されている有効パス遅延量と比較するステップと、
前記希望電力対干渉電力比と、あらかじめ定められた高周波信号の受信状態の基準となる希望電力対干渉電力比基準とを比較するステップと、
前記希望電力対干渉電力比と、前記希望電力対干渉電力比基準との比較結果に基づいて計数するステップと、
前記パスカウンタ回路の計数値と、有効パス遅延量が安定していることを示すあらかじめ定められた基準であるパス安定基準とを比較するステップと、を具備し、
前記有効パス遅延量と、既に入力されている有効パス遅延量とが等しいと判定され、
前記希望電力対干渉電力比が前記希望電力対干渉電力比基準の範囲内であると判定され、
前記計数値が加算された後、
前記加算後の前記計数値が前記パス安定基準以上であると判定されたときに、その旨を前記パスサーチ回路に通知するCDMA受信回路の処理方法である。
【0020】
CDMA受信回路は、通常移動体通信で用いられることが多いため、送信側と受信側の距離が常に変化したり、送信側と受信側との間でフェージングが発生することなどによる受信状態の不安定な状態が発生する。
【0021】
これらの悪い条件においても安定した受信を確保できるように、CDMA受信回路は、パス監視を常に行うパスサーチの機能を有している。
【0022】
しかし、このパスサーチは必ずしも常に必要であるとは限らない。携帯電話などの移動機端末とこの移動機端末話の基地局とが見通しのよい電波伝播状態で、携帯電話の使用者が歩行しているか立ち止まっている状態では、この空間での有効パス遅延量にはほとんど変化が見られないことが多い。
【0023】
本発明のCDMA受信回路では、このような有効パス遅延量の変化の有無を検知する有効パス遅延量比較回路を設けている。さらには、有効パス遅延量の変化が前回の受信と等しい場合には、希望電力対干渉電力比をあらかじめ定められた希望電力対干渉電力比基準と比較して基準範囲内であると判定した回数をパスカウンタ回路で計数する。
【0024】
この計数された回数が、あらかじめ定めた基準回数以上であると、このCDMA受信回路での受信状態が安定しており、有効パス遅延量の変化がないことが分かり、パスサーチ回路で詳細なパスサーチを行う必要がないか、簡易的なパスサーチを行うことで安定した受信状態が得られることになる。
【0025】
CDMA受信回路は、この簡易的なパスサーチを行うことをパスサーチ回路に通知する機能を有している。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、受信品質が良好かつ移動機端末側がほぼ静止状態にある場合を検知し、パスサーチ回路の動作を簡易化することにより消費電力を低減することの可能なCDMA受信回路を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は、本実施形態のCDMA受信回路の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図1を参照すると、本実施形態のCDMA受信回路は、移動機端末から送信された高周波信号を受信する空中線101と、受信した高周波信号をベースバンド処理が可能な周波数帯に周波数変換する準同期検波回路102と、周波数変換された信号をA/D変換するA/D変換器103と、A/D変換された信号を指定ユーザごとに割り当てられた拡散信号を用いて各受信遅延時間に対して相互相関値を求め、有効パス遅延量を計算して出力するパスサーチ回路104と、有効パス遅延量を用いて受信データの逆拡散により相関値計算を行うフィンガー回路1051〜105nと、フィンガー回路1051〜105nで得られた相関値計算結果に基づいて同相加算して復調を行う復調回路106と、復調回路106から出力された復調信号から高周波信号の受信状態を示す希望電力対干渉電力比を算出する希望電力対干渉電力比計算回路107と、パスサーチ回路104のパスサーチ動作の制御を行うパスサーチ制御回路108とを備えて構成される。
【0030】
パスサーチ制御回路108は、パスサーチ回路104から入力された有効パス遅延量を既に入力されている直前の受信で得られた有効パス遅延量と比較する有効パス遅延量比較回路302と、希望電力対干渉電力比をあらかじめ定められた高周波信号の受信状態の基準となる希望電力対干渉電力比基準と比較する電力比比較回路303と、電力比比較回路303の比較結果に基づいて計数するパスカウンタ回路304と、パスカウンタ回路304の計数値を有効パス遅延量が安定していることを示すあらかじめ定められた基準であるパス安定基準と比較する良好受信判定回路305とを備えて構成される。
【0031】
アンテナ101は準同期検波回路102の入力端子に接続され、準同期検波回路102の出力端子はA/D変換器103の入力端子に接続され、A/D変換器103の出力端子はパスサーチ回路の入力端子に接続され、A/D変換器103の出力端子は各フィンガー回路1051〜105nの入力端子に接続されている。
【0032】
パスサーチ回路104の出力端子は各フィンガ回路1051〜105nの入力端子に接続され、各フィンガ回路1051〜105nの出力端子は復調回路106の入力端子に接続され、復調回路の出力端子は希望電力対干渉電力比計算回路107の入力端子に接続され、希望電力対干渉電力比計算回路107の出力端子は図示しない送信側装置の電力制御手段に接続されている。
【0033】
パスサーチ回路104の出力端子は有効パス遅延量比較回路302の入力端子に接続され、有効パス遅延量比較回路302の出力端子は電力比比較回路303の入力端子に接続され、電力比比較回路303の入力端子はパスカウンタ回路304の入力端子に接続され、パスカウンタ回路304の出力端子は良好受信判定回路305の入力端子に接続され、良好受信判定回路305の出力端子はパスサーチ回路104に接続されている。
【0034】
有効パス遅延量比較回路302の出力端子はパスサーチ回路104に接続され、電力比比較回路303の出力端子はパスサーチ回路104に接続され、希望電力対干渉電力比計算回路107の出力端子は電力比比較回路303の入力端子に接続されている。
【0035】
良好受信判定回路305には、あらかじめ有効パス遅延量が安定していることを示す基準であるパス安定基準が格納されている。
【0036】
有効パス遅延量は、高周波信号の受信状態が良好で、送信側で静止もしくはごく低速で移動しつつ高周波信号を送信している場合には、変化しない。
【0037】
そこで、この有効パス遅延量が変化しない安定度を有効パス遅延量が変化しないで受信された回数で示すことができる。
【0038】
そこで、この有効パス遅延量が変化しないで受信した回数に対して、有効パス遅延量の安定度を示す基準値としてあらかじめパス安定基準を定めておき、このパス安定基準と有効パス遅延量が変化しないで受信した回数とを比較することで、CDMA受信回路での高周波信号のパスの安定度を判定することができる。
【0039】
次に、本実施形態のCDMA受信回路の動作について、図1〜3を参照して詳細に説明する。
【0040】
CDMA受信回路は、図示しない移動機端末から送信された高周波信号をアンテナ101で受信する。アンテナ101から入力された受信信号は、準同期検波回路102に入力され、準同期検波回路102によって準同期検波され、ベースバンド処理が可能な周波数帯の信号に周波数変換されて、A/D変換器103に出力される。
【0041】
A/D変換器103に入力されたこの周波数変換された信号は、A/D変換された後、パスサーチ回路104によって指定ユーザごとに対応した拡散信号を用いて各受信遅延時間に対しての相互相関値を演算により求める。各受信遅延時間の相互相関値が得られた後、パスサーチ回路104は、各々の遅延プロファイルを作成する。
【0042】
パスサーチ回路104によって求められた遅延プロファイルの一例を図3に示す。
【0043】
図示したように、図中横軸はパス遅延時間を示し、縦軸は相互相関値を示す。図にはパス遅延時間に対応した相互相関値が示されており、これがパスサーチ回路104で得られた遅延のプロファイルとなっている。図には、有効パスしきい値THを示す破線が示されている。
【0044】
パスサーチ回路104は、このようにして得られた遅延プロファイルから、パスサーチされた中で指定ユーザの拡散符号との相関性が高いパス遅延位置を有効パスに指定する。
【0045】
この有効パスを指定するに当たり基準となるのが、有効パスしきい値THであり、この有効パスしきい値THを超えた相互相関値を示すパス遅延時間が、指定ユーザの拡散符号との相関性が高いパス遅延位置に当たる。
【0046】
パスサーチ回路104は、この有効パスの遅延量情報を有効パス遅延量としてフィンガー回路1051〜105nへ出力する。
【0047】
フィンガー回路1051〜105nでは、パスサーチ回路104から得た有効パス遅延量を用いて受信データの逆拡散により相関値計算を行い、相関値計算の結果を復調回路106に出力する。
【0048】
この出力された相関値計算の結果には、移動機端末から送信されてアンテナ101で受信されるまでの電波伝搬の際に生じたフェージングの影響が含まれており、これは、位相のずれとして現れる。
【0049】
復調回路106では、この入力された相関値計算結果にビット位相調整を行って互いに同相とした後、各フィンガー回路1051〜105nの出力信号の同相加算を行い、図示しないスロット単位およびフレーム単位の信号処理を行う信号処理回路へ出力する。
【0050】
他方、復調回路106の出力は希望電力対干渉電力比計算回路107に入力され、SIR値が計算されこの計算結果は、図示しない送信側装置の電力制御手段に用いられる。
【0051】
この送信側装置の電力制御は、SIR値が指定された基準SIR値に対して大きければ送信電力を小さくするようにし、SIR値が指定された基準SIR値に対して小さければ送信電力を大きくするようにする。
【0052】
また、パスサーチ回路104の出力信号である有効パス遅延量および希望電力対干渉電力比計算回路107の出力信号は、パスサーチ制御回路108へも入力される。
【0053】
パスサーチ制御回路108では、パスサーチ回路104から入力された有効パス遅延量を常時監視しており、有効パス位置が固定でかつ希望電力対干渉電力比計算回路107から出力されるSIR値が長時間安定している場合は、以降のパスサーチ回路104のパスサーチ動作を簡易的に行い、それ以外の場合は通常のパスサーチ動作を行うような制御信号をパスサーチ回路104に通知する。パスサーチ回路104では、パスサーチ制御回路108からの制御信号にしたがって簡易的なパスサーチを行うかまたは通常のパスサーチ動作を行う。
【0054】
このパスサーチ制御回路108の詳細な動作を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0055】
図2は、本実施形態のCDMA受信回路のパスサーチ制御回路の動作を示すフローチャートである。
【0056】
パスサーチ回路104から出力された有効パス遅延量1は、パスサーチ制御回路108の有効パス遅延量比較回路302に入力される(ステップ2011)。同様に、パスサーチ回路104から出力された有効パス遅延量2は、有効パス遅延量比較回路302にに入力され(ステップ2012)、パスサーチ回路104から出力された有効パス遅延量nは、有効パス遅延量比較回路302に入力される(ステップ201n)。
【0057】
有効パス遅延量比較回路302では、入力された各有効パス遅延量1〜nと、前回比較時に有効パス遅延量比較回路302に入力され有効パス遅延量比較回路302に記憶されている有効パス遅延量との比較が行われる(ステップ2502)。
【0058】
比較した結果、すべての有効パス遅延量1〜nが、前回の有効パス遅延量と変化がない場合は、この有効パス遅延量比較回路302の比較結果は、図中ステップ2502の下方のYESの流れを辿り、電力比比較回路303に通知される。
【0059】
比較した結果、入力された有効パス遅延量が前回の有効パス遅延量に対して変化がある場合は、ステップ2502の左方のNoの流れを辿り、パスサーチ制御回路108は次回のパスサーチ動作は通常動作で行うようにパスサーチ回路104へ通知する(ステップ2509)。このパスサーチ制御回路108の通知によって、パスサーチ回路104は、次回にA/D変換器103から入力する信号に対して、通常のパスサーチ動作を行う。
【0060】
なお、パスサーチ制御回路108に入力された前回受信分の有効パス遅延量は、パスサーチ制御回路108に備えられた図示しないメモリに保管されている。有効パス遅延量比較回路302の比較後にこのメモリの記憶内容は次回の比較のために今回入力された有効パス遅延量へと更新される。
【0061】
なお、ここで前回の比較が行われていない場合、すなわち有効パス遅延量比較回路302に初めて有効パス遅延量が入力された場合には、前回の有効パス遅延量と変化がある場合と同様とし、ステップ2502の左方のNoの流れを辿り、パスサーチ制御回路108は次回のパスサーチ動作は通常動作で行うようにパスサーチ回路104へ通知する。
【0062】
次に、電力比比較回路303においては、希望電力対干渉電力比計算回路107の計算結果であるSIR値があらかじめ定められた基準SIR値に対して±αdB以内にあるかどうかを判定する(ステップ2503)。
【0063】
判定した結果、SIR値が基準SIR値に対して±αdB以内であれば、ステップ2503の下方のYESの流れを辿り、判定結果は、パスカウンタ回路304に通知される。
【0064】
電力比比較回路303が判定した結果、SIR値が基準SIR値に対して±αdB以内でなければ、ステップ2503の左方のNoの流れを辿る。このSIR値が±αdB以内でないことにより、通常動作のパスサーチを行うように電力比比較回路303からパスサーチ回路104に通知され(ステップ2509)、パスサーチ回路104はこの通知を受けたことにより、次回のパスサーチ動作を通常動作で行う。
【0065】
この場合には、有効パス遅延量の変化はないが、何らかの原因で受信状態が安定しておらず受信電界が弱くなったりしていることを意味している。
【0066】
次に、パスカウンタ回路304では、有効パス遅延量が前回と変化がなく、かつSIR値が基準SIR値に対して±αdB以内にあるときに、パスカウンタ回路304の計数値mに1だけ加算する(ステップ2504)。
【0067】
このパスカウンタ回路304の示す計数値mは、有効パス遅延量が前回と変化がなく、かつSIR値が基準SIR値に対して±αdB以内である有効パス遅延量の入力信号がパスサーチ制御回路108に入力された回数が積算された結果であり、この受信の回数mが大きい程、CDMA受信回路の受信状態が良好かつ安定していることを示す。
【0068】
次に、パスカウンタ回路304で示された計数値mは良好受信判定回路305に入力され、良好受信判定回路305に記憶された有効パス遅延量が安定していることを示すあらかじめ定められた基準であるパス安定基準Zと比較される(ステップ2505)。
【0069】
良好受信判定回路305で比較された結果、計数値mがあらかじめ定めたしきい値であるパス安定基準Zと同じまたはパス安定基準Zよりも大きくなった場合には、ステップ2505の下方のYESの流れを辿り、パスサーチ制御回路108は次回のパスサーチ動作は簡易動作で行うようにパスサーチ回路104へ通知する(ステップ2508)。
【0070】
このパスサーチ制御回路108の通知によって、パスサーチ回路104は、次にA/D変換器103から入力する信号に対して、簡易のパスサーチ動作を行う。
【0071】
良好受信判定回路305で比較された結果、計数値mがパス安定基準Zよりも小さくなった場合には、ステップ2505の左方のNoの流れを辿り、パスサーチ制御回路108は次回のパスサーチ動作は通常動作で行うようにパスサーチ回路104へ通知する(ステップ2509)。このパスサーチ制御回路108の通知によって、パスサーチ回路104は、次にA/D変換器103から入力する信号に対して、通常のパスサーチ動作を行う。
【0072】
なお、パスカウンタ回路304の回数mは連続回数をカウントするものであり、有効パス遅延量が前回と変化がなく、かつSIR値が基準SIR値に対して±αdB以内である条件を一度でも満足しない場合は、パスカウンタ回路304はリセットされる。
【0073】
これは、なんらかの理由で基地局装置と移動機端末と見通しが悪くなったり、基地局装置と移動機端末との互いの受信品質が良好で無くなるか、移動機端末側が静止状態になく移動しているような場合に対応している。
【0074】
このように、CDMA受信回路は、パスサーチ制御回路108で、パスサーチ回路104から入力された有効パス遅延量を常時監視している。有効パス位置が固定でかつ希望電力対干渉電力比計算回路107から出力されるSIR値が長時間安定している場合は、以降のパスサーチ回路104のパスサーチ動作を簡易的に行い、それ以外の場合は通常のパスサーチ動作を行うような制御信号をパスサーチ回路104に通知することが可能となる。
【0075】
このため、パスサーチ回路104がパスサーチ制御回路108からの通知により簡易パスサーチを行うことでCDMA受信回路の消費電力を低減することが可能である。
【0076】
なお、パスサーチ回路104におけるパスサーチの簡易化動作の例としては、パスサーチ回路104において、パスサーチ範囲に対して遅延量を間引きして遅延プロファイル計算する方法または、パスサーチ範囲に対して時間間隔を開けて遅延プロファイルの計算を行う方法などがあり、適宜選択して用いるとよい。
【0077】
また、本実施形態では、受信を行うアンテナ101を複数持ち、各アンテナ101に対して準同期検波回路およびA/Dコンバータを持ち、パスサーチ回路104に入力され、パスサーチ回路104でのサーチ対象が複数アンテナ分ある構成でも同様に実現が可能であり、同様の効果が得られる。
【0078】
このようなCDMA受信回路は、CDMA方式の基地局装置または移動機端末の受信回路などに対して適用が可能である。
【0079】
以上説明したように、本発明によれば以下に示すような優れた効果を得られる。
(1)CDMA受信回路は、基地局装置と移動機端末との受信品質が良好かつ移動機端末側がほぼ静止状態にある場合を検知する検知手段を設け、この検知手段によってパスの良好かつ安定した状態を検知した場合は、以降のパスサーチ回路の動作を簡易化することができる。
(2)CDMA受信回路は、パスサーチ回路の動作を簡易化することにより、パスサーチ動作が必要とされない時間はパスサーチ動作分の消費電力を低減することができる。
(3)CDMA受信回路は、特に、セル半径が小さな基地局と見通しのよい通信環境下において移動機が静止または頻繁なパスサーチ動作を必要としない程度の非常に低速な移動状態で通信している場合において、パスサーチを簡易化することができ効果的である。
【0080】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0081】
図4は、本実施例のCDMA受信回路のパスサーチ制御回路の構成例を示すブロック図である。
【0082】
図を参照すると、本実施例のパスサーチ制御回路408は、図1で示したパスサーチ制御回路108の構成の他に、パスカウンタ回路304の計数値と、パス安定基準Zとを比較するパス安定判定回路506と、パス安定判定回路506の比較結果に基づいて計数する一時受信カウンタ回路507と、一時受信カウンタ回路507の計数値をあらかじめ定めた一時受信基準と比較する一時受信判定回路508とを備えて構成される。
【0083】
本図において図3のパスサーチ動作制御回路108と異なる部分は、電力比比較回路303において、SIR値があらかじめ定められた基準SIR値に対して±αdB以内にない場合における処理回路を追加したことである。
【0084】
パスカウンタ回路304の出力端子はパス安定判定回路506の入力端子に接続され、パス安定判定回路506の出力端子は一時受信カウンタ回路507の入力端子に接続され、一時受信カウンタ回路507の出力端子は一時受信判定回路508の入力端子に接続され、一時受信判定回路508の出力端子はパスサーチ回路104に接続されている。
【0085】
パス安定判定回路506の出力端子はパスサーチ回路104に接続され、一時受信判定回路508の出力端子はパスサーチ回路104に接続されている。
【0086】
図5は、本実施例のCDMA受信回路のパスサーチ制御回路の動作を示すフローチャートである。
【0087】
図から分かるように、本フローチャートが図2に示したフローチャートと異なる部分は、ステップ2503の左方のNoの流れを辿るステップ2602〜ステップ2608の処理である。ここでは、図2のフローチャートと同じ部分の流れの説明は既に行っているので省略する。
【0088】
SIR値があらかじめ定められた基準SIR値に対して±αdB以内にあるかどうかがを判定され(ステップ2503)、SIR値が±αdB以内でなければ、ステップ2503の左方のNoの流れを辿り、SIR値が±αdB以内でなかったことがパス安定判定回路506に通知される。
【0089】
この場合には、有効パス遅延量の変化はないが、何らかの原因で受信状態が安定しておらず受信電界が弱くなったりしていることを意味している。
【0090】
パス安定判定回路506は、電力比比較回路303からこの通知を受け取ると、パスカウンタ回路304の示す計数値mをパス安定判定回路506に入力するかパス安定判定回路506で累積されている回数mを用いて、パス安定判定回路506に記憶されたあらかじめ定められパス安定基準Zと比較する(ステップ2606)。
【0091】
パス安定判定回路506で比較された結果、計数値mがあらかじめ定めたパス安定基準Zと同じまたパス安定基準Zよりも大きくなった場合には、ステップ2606の下方のYESの流れを辿り、一時受信カウンタ回路507の計数値pに1だけ加算する(ステップ2607)。
【0092】
パス安定判定回路506で比較された結果、計数値mがあらかじめ定めたパス安定基準Zよりも小さくなった場合には、ステップ2606の左方のNoの流れを辿り、パスサーチ制御回路108は次回のパスサーチ動作を通常動作で行うようにパスサーチ回路104へ通知する(ステップ2709)。このパスサーチ制御回路108の通知によって、パスサーチ回路104は、次にA/D変換器103から入力する信号に対して、通常のパスサーチ動作を行う。
【0093】
次に、一時受信カウンタ回路507で示された計数値pは、一時受信判定回路508に入力され、一時受信判定回路508に記憶されたあらかじめ定められたしきい値である一時的な受信状態の不安定の基準を示す一時受信基準Wと比較される(ステップ2608)。
【0094】
一時受信判定回路508で比較された結果、計数値pがあらかじめ定めた一時受信基準Wよりも小さくなった場合には、ステップ2608の下方のYesの流れを辿り、パスサーチ制御回路108は次回のパスサーチ動作は簡易動作で行うようにパスサーチ回路104へ通知する。このパスサーチ制御回路108の通知によって、パスサーチ回路104は、次にA/D変換器103から入力する信号に対して、簡易動作のパスサーチ動作を行う(ステップ2708)。
【0095】
一時受信判定回路508で比較された結果、計数値pがあらかじめ定めたしきい値である一時受信基準Wと等しいか一時受信基準Wよりも大きくなった場合には、ステップ2608の左方のNoの流れを辿り、パスサーチ制御回路108は次回のパスサーチ動作を通常動作で行うようにパスサーチ回路104へ通知する(ステップ2709)。このパスサーチ制御回路108の通知によって、パスサーチ回路104は、次にA/D変換器103から入力する信号に対して、通常動作のパスサーチを行う。
【0096】
なお、一時受信カウンタ回路507の回数pは連続回数をカウントするものであり、有効パス遅延量が前回と変化なしでかつSIR値が基準SIR値の±αdB以内を満たさないという条件を一度でも満足しない場合は、一時受信カウンタ回路507の計数値pはリセットされる。
【0097】
これは、なんらかの理由で基地局装置と移動機端末と見通しが悪くなったり、基地局装置と移動機端末との互いの受信品質が良好でなくなるような場合に対応している。
【0098】
また、一時受信カウンタ回路507がカウントアップを起動中の場合は、パスカウンタ回路304の計数した回数mはリセットされずにその状態を保持する。
【0099】
このように、本実施例では、電力比比較回路303において、SIR値があらかじめ定められた基準SIR値に対して±αdB以内にない場合でも、一定期間内であれば、パスサーチの簡易動作を許可する回路構成にしている。
【0100】
このため、例えば、受信状態が良好で移動機端末が静止状態の時に、たまたま人間が通り過ぎたことによって起こるシャドウイングでの一時的な受信電界の減衰が発生しても、新規のパスサーチ動作は行わず、現在の有効パス遅延量での受信動作を継続する。この受信動作を継続していることにより、人間の通過後に受信状態が良好で移動機端末が静止状態という安定した受信状態が復活して、再びパスサーチが簡易動作で済む状態となる。CDMA受信回路は、このような状態の時に余分なパスサーチ動作を行わず消費電力の低減を実現できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本実施形態のCDMA受信回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のCDMA受信回路のパスサーチ制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図3】遅延プロファイルを示す図である。
【図4】実施例1のCDMA受信回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】実施例1のCDMA受信回路のパスサーチ制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図6】従来のCDMA受信回路の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0102】
101 アンテナ
102 準同期検波回路
103 A/D変換器
104 パスサーチ回路
106 復調回路
107 希望電力対干渉電力比計算回路
108 パスサーチ制御回路
201 アンテナ
202 準同期検波回路
203 A/D変換器
204 パスサーチ回路
206 復調回路
207 希望電力対干渉電力比計算回路
108 パスサーチ制御回路
302 有効パス遅延量比較回路
303 電力比比較回路
304 パスカウンタ回路
305 良好受信判定回路
506 パス安定判定回路
507 一時受信カウンタ回路
508 一時受信判定回路
1051〜105n フィンガー回路
2051〜205n フィンガー回路
W 一時受信基準
Z パス安定基準

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した高周波信号の有効パス遅延量を計算して出力するパスサーチ回路と、前記有効パス遅延量を用いて前記高周波信号の受信状態を示す希望電力対干渉電力比を計算する希望電力対干渉電力比計算回路と、を有するCDMA受信回路であって、
前記有効パス遅延量を入力し、該有効パス遅延量と、既に入力されている有効パス遅延量と比較する有効パス遅延量比較回路と、
前記希望電力対干渉電力比と、あらかじめ定められた高周波信号の受信状態の基準となる希望電力対干渉電力比基準とを比較する電力比比較回路と、
前記電力比比較回路の比較結果に基づいて計数するパスカウンタ回路と、
前記パスカウンタ回路の計数値と、有効パス遅延量が安定していることを示すあらかじめ定められた基準であるパス安定基準とを比較する受信良好判定回路と、を具備し、
前記有効パス遅延量比較回路が、前記有効パス遅延量と、既に入力されている有効パス遅延量が等しいと判定し、
前記電力比比較回路が、前記希望電力対干渉電力比が前記希望電力対干渉電力比基準の範囲内であると判定し、
前記パスカウンタ回路の計数値が加算された後、
前記受信良好判定回路が、前記パスカウンタ回路の加算後の計数値が前記パス安定基準以上であると判定したときに、前記受信良好判定回路が、前記パスサーチ回路に、前記受信良好判定回路の判定結果を通知することを特徴とするCDMA受信回路。
【請求項2】
請求項1に記載のCDMA受信回路において、
前記パスカウンタ回路の計数値と、前記パス安定基準とを比較するパス安定判定回路と、
前記パス安定判定回路の比較結果に基づいて計数する一時受信カウンタ回路と、
前記一時受信カウンタ回路の計数値をあらかじめ定めた一時的な受信状態の不安定の基準を示す一時受信基準と比較する一時受信判定回路と、をさらに具備し、
前記電力比比較回路が、前記希望電力対干渉電力比が前記希望電力対干渉電力比基準の範囲外であると判定し、
前記パス安定判定回路が、前記パスカウンタ回路の計数値が前記パス安定基準以上であると判定し、
前記一時受信カウンタ回路の計数値が加算された後、
前記一時受信判定回路が、前記一時受信カウンタ回路の加算後の計数値が前記一時受信基準より小さいと判定したときに、前記一時受信判定回路が、前記パスサーチ回路に、前記一時受信判定回路の判定結果を通知するCDMA受信回路。
【請求項3】
受信した高周波信号の有効パス遅延量を計算して出力するパスサーチ回路と、前記有効パス遅延量を用いて前記高周波信号の受信状態を示す希望電力対干渉電力比を計算する希望電力対干渉電力比計算回路と、を有するCDMA受信回路の処理方法であって、
前記有効パス遅延量を入力し、該有効パス遅延量と、既に入力されている有効パス遅延量と比較するステップと、
前記希望電力対干渉電力比と、あらかじめ定められた高周波信号の受信状態の基準となる希望電力対干渉電力比基準とを比較するステップと、
前記希望電力対干渉電力比と、前記希望電力対干渉電力比基準との比較結果に基づいて計数するステップと、
前記パスカウンタ回路の計数値と、有効パス遅延量が安定していることを示すあらかじめ定められた基準であるパス安定基準とを比較するステップと、を具備し、
前記有効パス遅延量と、既に入力されている有効パス遅延量とが等しいと判定され、
前記希望電力対干渉電力比が前記希望電力対干渉電力比基準の範囲内であると判定され、
前記計数値が加算された後、
前記加算後の前記計数値が前記パス安定基準以上であると判定されたときに、その旨を前記パスサーチ回路に通知することを特徴とするCDMA受信回路の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−43370(P2007−43370A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223964(P2005−223964)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】