説明

COPD用エアロゾル製剤

本発明は、COPDおよび他の呼吸器疾患を患う患者に投与するための、臭化グリコピロニウムを含む安定なエアロゾル溶液製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧型定量吸入器で用いることを意図した、臭化グリコピロニウムを含む医薬エアロゾル溶液製剤に関する。本発明は、さらに、COPDを含む呼吸器疾患の予防および治療におけるそのような製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
臭化グリコピロニウム(グリコピロレート(glycopyrrolate)としても知られている)は、特定の麻酔の投与に係わる唾液分泌を減少させるために、および消化性潰瘍の補助療法として用いられるムスカリン様M3抗コリン剤である。これは、喘息症状の治療において有効であることも報告されている(Hansel et al.,Chest 2005;128:1974−1979(非特許文献1))。
【0003】
WO2005/107873(特許文献1)は、小児喘息の治療のためのグリコピロレートの使用に関する。
【0004】
WO01/76575(特許文献2)は、グリコピロレートの肺送達のための放出制御製剤を開示している。この製剤は、呼吸器疾患、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療における使用を意図している。この出願は、乾燥粉末吸入器(DPI)による送達に適した乾燥粉末製剤に重点を置いている。
【0005】
DPIの欠点の一つは、不十分な患者吸入流速により、送達投与量が減少すると共に粉末の再分解が不完全となり、その結果、装置性能が満足できないことである。この理由により、DPIは、普通は、年齢の高い子供および成人においてのみ用いられる。吸入が困難な若い子供および他の人々は、加圧型定量吸入器(pMDI)により投与される推進剤系エアロゾル製剤の使用により恩恵を受けることができる。pMDIは、医薬品を含む液滴を気道に放出するための推進剤をエアロゾル中に用いる。
【0006】
産物の長い使用期間に渡って、理想的には温度または湿度の特定条件下に貯蔵する必要性なく、効果的かつ一貫した投与量で臭化グリコピロニウムの治療利益を供給する、溶液の形態で臨床的に有用なエアロゾル産物を提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/107873号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/76575号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hansel et al.,Chest 2005;128:1974−1979
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、HFA推進剤に溶解された臭化グリコピロニウム、任意の共溶媒、および臭化グリコピロニウムの安定化に充分な所定量の酸を含む医薬組成物を提供する。さらなる医薬活性成分も含まれ得る。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、本発明の医薬組成物を含む、エアロゾル送達に適した加圧型定量吸入器または他の容器を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、COPDなどの呼吸器疾患症状の治療もしくは緩和治療または予防のための、明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(好ましい態様の詳細な説明)
HFA推進剤中の臭化グリコピロニウムと共溶媒としてのエタノールとの溶液製剤を調製し、温度および湿度の異なる条件下における貯蔵の3か月後に、安定性について調べた。一つのバッチを最適条件(冷凍)下に貯蔵し、他のバッチを、高い温度および湿度の促進分解条件下に貯蔵した。冷凍バッチは3か月の期間に渡って安定なままであったが、他のバッチはその期間において著しく分解した。どのタイプの製剤においても臭化グリコピロニウムが劣った安定性を示すことが観察されたのは初めてであった。
【0013】
このように、推進剤に溶解された臭化グリコピロニウムと共溶媒との単純なエアロゾル溶液製剤は、実用のための要求を満たすことができない、すなわち、冷凍することなくヒトに適用され、さらに活性成分の一貫した投与量を送達し得るべきである。
【0014】
本発明者らは、特定量の無機酸を製剤中に含ませることにより、これらの安定性の問題を克服することができた。特に、本発明者らは、0.005〜1.0μg/μl、好ましくは0.099〜0.74μg/μl、より好ましくは0.18〜0.32μg/μlの範囲の1M塩酸(HCl)を溶液に含ませることが、非最適貯蔵の長い期間に渡って臭化グリコピロニウムの分解を避けるのに充分であり、それにより、溶液製剤を含むpMDIの一作動当たり臭化グリコピロニウムの一貫した投与量が確保されることを発見した。
【0015】
3−[(シクロペンチルヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドと化学的に定義される臭化グリコピロニウムは、配置(3R,2'R)−、(3S,2'R)−、(3R,2'S)−および(3S,2'S)−の4つの潜在的に異なる立体異性体に対応する2つのキラル中心を有する。これらの純粋なエナンチオマーもしくはジアステレオマーまたはこれらの任意の組み合わせのいずれかの形態の臭化グリコピロニウムを、本発明の実施において用いることができる。本発明の一つの態様において、グリコピロレートとしても知られている(3S,2'R),(3R,2'S)−3−[(シクロペンチルヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドラセミ混合物が好ましい。臭化グリコピロニウムは、0.005〜0.14%(w/w)、好ましくは0.010〜0.13%(w/w)、より好ましくは0.015〜0.04%(w/w)の範囲の量で製剤中に存在し、ここで、%(w/w)は、組成物の合計重量に対するパーセントで表される成分の重量による量を意味する。
【0016】
グリコピロレートは市販されており、US2,956,062またはFranko BV and Lunsford CD,J Med Pharm Chem2(5),523−540,1960に記載の方法に従って合成することができる。
【0017】
組成物の推進剤成分はいかなる加圧液化推進剤であってもよく、好ましくはヒドロフルオロアルカン(HFA)または異なるHFAの混合物、より好ましくは、HFA134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)、HFA227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)およびそれらの混合物からなる群より選択される。好ましいHFAはHFA134aである。HFAは、75〜95%(w/w)、好ましくは85〜90%(w/w)の範囲の量で製剤中に存在してよい。
【0018】
本発明の製剤中に混入される共溶媒は、推進剤より高い極性を有し、医薬的に許容されるアルコール、特にエタノール、またはプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールのようなポリオールのような一または複数種の物質が挙げられる。
【0019】
共溶媒は、エタノールおよびイソプロピルアルコールのような低級分岐または直鎖アルキル(C1−C4)アルコールの群から選択されることが有利である。好ましくは、共溶媒はエタノールである。
【0020】
共溶媒の濃度は、製剤中の活性成分の最終濃度により、および推進剤のタイプにより変わる。例えば、エタノールを、5〜25%(w/w)、好ましくは8〜20%(w/w)、より好ましくは10〜15%(w/w)の範囲の濃度で用いてよい。好ましい態様の一つにおいて、エタノールの濃度は12%(w/w)である。
【0021】
製剤中における推進剤と共溶媒との比率は、好ましくは50:50〜95:5(w/w)の範囲である。
【0022】
本発明の製剤中において1M HClの代わりに異なるモル濃度のHClまたは別の無機酸(鉱酸)を用いることが考えられる。例えば、別の酸は、(限定はされないが)ハロゲン化水素(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等)、リン酸、硝酸、硫酸およびハロゲンオキソ酸のような医薬的に許容される一塩基または多塩基酸であり得る。
【0023】
組成物の医薬活性成分は、好ましくは、推進剤と共溶媒との混合物中に完全にかつ均質に溶解されている、すなわち、組成物は好ましくは溶液製剤である。
【0024】
溶液製剤組成物は、当該分野で知られている他の医薬賦形剤または添加剤を任意に含んでよい。特に、本発明の組成物は、一または複数種の低揮発性成分を含んでいてよい。低揮発性成分は、吸入器の作動時にエアロゾル粒子の空力学的重量中位径(MMAD)を増加させる、および/または、推進剤/共溶媒混合物中での活性成分の溶解性を高めるために有用である。
【0025】
低揮発性成分は、存在する場合、25℃における蒸気圧が0.1kPa未満、好ましくは0.05kPa未満である。低揮発性成分は、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸アスコルビル、トコフェロールエステルのようなエステル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールのようなグリコール、または、飽和有機カルボン酸(すなわち、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸)もしくは不飽和カルボン酸(すなわち、オレイン酸またはアスコルビン酸)のような界面活性剤であってよい。
【0026】
低揮発性成分の量は、0.1〜10%w/w、好ましくは0.5〜5%(w/w)、より好ましくは1〜2%(w/w)で変化してよい。
【0027】
本発明の一つの態様において、作動時にエアロゾル液滴のNMADを増加させることなく活性成分の溶解性に好ましい影響を与えるために、0.005〜0.5%(w/w)の所定量の水を、任意に製剤に添加してよい。
【0028】
本発明の製剤は、共溶媒、推進剤および安定化量の酸以外の賦形剤(例えば界面活性剤)を含まないことが有利である。
【0029】
本発明は、1M HClを添加することを含んでなる医薬組成物を調製する方法、または、HFA推進剤中の臭化グリコピロニウムと共溶媒の溶液にも関し、ここで、添加される1M HClの量は最終溶液1μl当たり0.005〜1.0μgの範囲である。
【0030】
本発明の医薬組成物は、さらに、個別、連続または同時使用のための他の更なる医薬活性成分を含んでいてよい。組成物の任意の更なる医薬活性成分としては、呼吸器疾患およびそれらの症状の予防または治療のための当該分野で知られている任意の成分が挙げられる。これらの活性成分は、例えば、ホルモテロール、サルブタモール、フェノテロール、カルモテロール(TA2005)、インダカテロール、ミルベテロール、ビランテロール(GSK642444)、テルブタリン、サルメテロール、ビトルテロール、メタプロテレノール(全て、単独の立体異性体またはそれらの混合物およびそれらの塩の状態である)のようなβ−2−作動薬、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブチキソコルト、フロ酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ブデソニドおよびその22R−エピマー、シクレソニド、フルニソリド、ロテプレドノールおよびロフレポニドのようなコルチコステロイド、メトスコポラミン、イプラトロピウムブロミド、オキシトロピウムブロミドおよびチオトロピウムブロミドのような他の抗ムスカリン様薬剤、シロミラスト、ロフルミラストおよびテトミラストのようなホスホジエステラーゼIV阻害剤である。これらの更なる活性成分のうち、フマル酸ホルモテロールが特に好ましい。
【0031】
本発明の組成物は、当業者に知られている任意の適当なMDI装置から吸入することができる。製剤の個々の医薬活性成分の所望の投与量は、成分の条件、および病状の型および重症度に依存するが、1回または2回の作動で活性成分の治療量が送達されることが好ましい。一般的には、活性成分の投与量は、作動当たり約0.5μg〜1000μgの範囲、例えば1〜100μg/作動、場合により約5〜50μg/作動である。当業者は、個々の医薬活性成分の適切な投与量を決める方法に精通している。
【0032】
具体的に臭化グリコピロニウムについては、好ましい投与量は作動当たり約0.5〜100μg、好ましくは作動当たり約1〜40μg、より好ましくは作動当たり約5〜26μg、さらにより好ましくは作動当たり25μgである。
【0033】
本発明の医薬組成物は、当該分野で知られているpMDI装置に充填される。この装置は、計量弁が取り付けられたキャニスターを含む。計量弁の作動により、スプレー産物の少量が放出される。
【0034】
キャニスターの一部または全体が、金属、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレススチールまたは陽極酸化アルミニウムからなることができる。あるいは、キャニスターはプラスチック缶またはプラスチック被覆ガラス瓶であってよい。
【0035】
金属キャニスターは、内側表面の一部または全体が、不活性有機被覆材により内張りされていてよい。好ましい被覆材は、例えば、エポキシ−フェノール樹脂、過フッ化ポリマー、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロアルコキシアルキレン、パーフルオロアルキレン、例えば、ポリ−テトラフルオロエチレン(Teflon)、フッ化−エチレン−プロピレン(FEP)、ポリエーテルスルホン(PES)、フッ化−エチレン−プロピレン・ポリエーテルスルホン(FEP−PES)混合物またはそれらの組み合わせである。他の適当な被覆材は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィドまたはそれらの組み合わせであり得る。
【0036】
ある態様において、FEP−PESまたはテフロン(登録商標)で内張りされた内側表面を有するキャニスターが好ましく用いられる。
【0037】
他の特別の態様において、ステンレススチール製のキャニスターを用いてよい。
【0038】
容器は、活性成分の治療有効日用量を送達するための計量弁で閉鎖されている。通常、計量弁アセンブリーは、その中に開口部を有する口金、計量チャンバーを収納する口金に取り付けられた成形本体、コアおよびコア延長部からなる幹部(stem)、計量チャンバーの周りの内側および外側密閉材、コアの周りのバネ、および弁を通した推進剤の漏出を防止するガスケットを含んでなる。
【0039】
ガスケット密閉材および計量弁の周りの密閉材は、EPDM、クロロブチルゴム、ブロモブチルゴム、ブチルゴムまたはネオプレンのような弾性材料を含む。EPDMゴムが特に好ましい。計量チャンバー、コアおよびコア延長部は、ステンレススチール、ポリエステル(例えばポリブチレンテレフタレート(PBT))またはアセタールのような適当な材料を用いて製造される。バネは、チタンを含むことがあるステンレススチールで製造される。口金は、金属、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレススチールまたは陽極酸化アルミニウムから作製することができる。適当な弁は、Valois,Bespak plcおよび3M−Neotechnic Ltd.のような製造者から入手できる。
【0040】
pMDIは、作動当たり25〜100μl、好ましくは40〜70μl、および任意に約50μlまたは約63μlの体積を送達することができる計量弁により作動される。
【0041】
充填された各キャニスターは、使用前に適当なチャネリング装置内に取り付けて、薬剤を患者の肺内に投与するための定量吸入器を作成するのが都合よい。適当なチャネリング装置は、例えば弁アクチュエーターおよび、そこを通して薬剤を充填キャニスターから計量弁を介して患者の口に送達し得る円筒形または円錐様通路を含み、例えば、マウスアクチュエーターを含む。
【0042】
典型的配置において、弁幹部は、延長チャンバーにつながるオリフィスを有するノズルブロック中内に配される。延長チャンバーは、マウスピース内に延びる出口オリフィスを有する。0.15〜0.45mmの範囲の直径および0.30〜1.7mmの長さを有するアクチュエーター(出口)オリフィスが、通常、適している。好ましくは、直径が0.2〜0.44mm、例えば、直径が0.22、0.25、0.30、0.33または0.42mmのオリフィスが用いられる。
【0043】
本発明のある態様において、WO03/053501に記載されているもののような、0.10〜0.22mmの範囲、特に0.12〜0.18mmの直径を有するアクチュエーターオリフィスを利用することが有用であり得る。この細かなオリフィスの使用により、霧発生の持続時間を延ばし、その結果、患者がゆっくり吸気することにより霧発生を調整することが容易になり得る。
【0044】
製剤中への水の侵入を避けるべき場合、水侵入に抵抗することができるフレキシブルパッケージ内にMDI産物を包装することが望ましいことがある。キャニスターから漏出し得る推進剤および共溶媒を吸着することができる包装材料(例えば、分子篩)内に材料を取り込むことが望ましいこともある。
【0045】
任意に、本発明の製剤を充填したMDI装置を、吸入器の正確な使用に好ましい適当な補助装置と共に利用してよい。この補助装置は市販されており、その形状および寸法により「スペーサー」、「貯蔵器」または「拡張チャンバー」として知られている。例えば、Volumatic(登録商標)が、最も広く知られ使用されている貯蔵器の一つであり、Aerochamber(登録商標)が、最も広く使用され知られているスペーサーの一つである。適当な拡張チャンバーが、例えば、WO01/49350に報告されている。
【0046】
本発明の製剤は、Easi−Breathe(登録商標)およびAutohaler(登録商標)のような登録名で知られているもののような一般的加圧型呼吸作動吸入器と共に用いてもよい。
【0047】
MDI装置の効率は、肺内の適切な部位に付着した投与量の関数である。付着は、試験管内で幾つかのパラメーターにより特徴付けられる製剤の空力学的粒径分布により影響される。
【0048】
本発明の製剤の空力学的粒径分布は、欧州薬局方6−th edition,2009(6.5),part 2.09.18に記載の手順に従ってCascade Impactorを用いて特徴付けられ得る。30l/分〜100リッター/分の範囲の流速で操作される装置E、または28.3l/分の流速で操作される装置D(Andersen Cascade Impactor(ACI))を利用してよい。各ACIプレート上への薬剤の付着は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決められる。
【0049】
加圧型MDIにより放出される粒子の以下の直径を決めることができる。
【0050】
i)空力学的重量中位径(MMAD)は、放出された粒子の空力学的重量直径がその前後に均一に分布する直径である。
【0051】
ii)送達投与量は、ACIにおける累積付着から計算され、実験当たりの作動数により割ったものである。
【0052】
iii)呼吸性投与量(微粒子投与量=FPD)は、4.7ミクロン以下の直径の粒子に対応する、ACIのフィルター(AF)へのステージ3(S3)からの付着により得られ、実験当たりの作動数により割ったものである。
【0053】
iv)呼吸性比率(微粒子比率=FPF)は、呼吸性投与量と送達投与量とのパーセント比率である。
【0054】
v)「超微小」投与量は、1.1ミクロン以下の直径の粒子に対応する、フィルターへのステージ6(S6)からの付着により得られ、実験当たりの作動数により割ったものである。
【0055】
本発明の溶液は、それが含まれるpMDI装置の作動時に、40%を超える、好ましくは50%を超える、より好ましくは60%を超える合計FPFを提供することができる。
【0056】
さらに、本発明の製剤は、作動時に、Andersen Cascade ImpactorのステージS3−AFにおいて集められた合計微粒子投与量に対する、Andersen Cascade Impactorに含まれるステージS6−AFより定められる1.1ミクロン以下の直径の放出粒子の30%以上の比率を提供することができる。1.1ミクロン以下の直径の放出粒子の比率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%を超える、さらにより好ましくは60%を超える、最も好ましくは70%を超える。
【0057】
本発明のさらなる局面によれば、エアロゾル吸入器に本発明の組成物を充填する方法が提供される。充填されたキャニスターの商業的生産用の大規模バッチの調製のために、医薬エアロゾル製造の当業者に良く知られている従来の大量生産法および機械類を用いてよい。
【0058】
この方法は、以下の操作を含む。
【0059】
a) 臭化グリコピロニウム、共溶媒(例えばエタノール)、鉱酸、HFAを含む推進剤、および任意の低揮発性成分を含む溶液を、溶液が気化しない−50〜−60℃の温度において調製する;
b) 吸入器に、調製された溶液を冷時充填する;および
c) 弁を缶上に配して圧着する。
【0060】
別の方法は、以下の操作を含む。
【0061】
a) 臭化グリコピロニウム、共溶媒(例えばエタノール)、鉱酸、および任意の低揮発性成分を含む溶液を調製する;
b) 開いた缶にバルク溶液を充填する;
c) 弁を缶上に配して(真空)圧着する;および
d) 缶に、弁を通してHFA推進剤を加圧充填する。
【0062】
さらなる別の方法は、以下の操作を含む。
【0063】
a) 臭化グリコピロニウム、共溶媒(例えばエタノール)、鉱酸、任意の低揮発性成分、およびHFA推進剤を含む溶液を加圧容器を用いて調製する;
b) 弁を空の缶上に配して圧着する;および
c) 缶に、弁を通して最終溶液製剤を加圧充填する。
【0064】
本発明の包装製剤は、温度および湿度の普通の条件下に貯蔵したとき、長期間安定である。好ましい態様において、包装製剤は、25℃および60% RHにおいて少なくとも6か月安定であり、より好ましくは少なくとも1年間、最も好ましくは少なくとも2年間安定である。安定性は、残留活性成分の含量を測定することにより調べられる。ここに定められる「安定」製剤は、HPLC−UV VISにより測定して、所定の時点に、各活性成分の残留含量の少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%を保持するものを意味する。
【0065】
最適化安定製剤は、薬剤登録が目的の薬剤産物安定性試験に係わるICH Guideline Q1BまたはCPMP/QWP/122/02 Rev.1により要求される仕様を満たす。
【0066】
本発明の産物は、全ての型の喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような広範囲な呼吸疾患の予防目的または症状軽減のために用いてよい。
【0067】
本発明の医薬組成物の使用が有益である他の呼吸疾患は、慢性閉塞性細気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫、急性肺損傷(ALI)、嚢胞性線維症、鼻炎、および成人型または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のような、炎症および粘液の存在の結果としての抹消気道の閉塞により特徴付けられるものである。
【実施例】
【0068】
(実施例1)酸を付加または付加しない場合の貯蔵中の臭化グリコピロニウム安定性
溶液製剤を、表1に示す組成で調製した。
【0069】
【表1】

【0070】
0.222μg/μl(溶液)に相当する量で1M HClを添加することにより、酸を含むサンプルを調製した。
【0071】
5℃;25℃/60% RH;30℃/75% RH;40℃/75%RHの異なる条件下に逆さまに貯蔵したキャニスター内に溶液を充填した。サンプルを、貯蔵1〜3か月後、および5℃;25℃/60% RHのみ貯蔵6か月後に、臭化グリコピロニウム含量についてクロマトグラフィーにより分析した。結果を、以下の表2に報告する。
【0072】
【表2】

【0073】
表2に示すように、GLYは、準最適を下回る条件下に貯蔵した場合、比較的不安定であった。40℃/75% RHで3か月後、サンプル中のGLYの含量は約80%に低下した。しかしながら、酸の存在下では、貯蔵条件に係わらず、3か月においてGLYの著しい分解は起こらなかった。5℃;25℃/60% RHにおいて得られたデータは、酸の存在下では、産物を、通常条件および促進条件の両方において貯蔵することができるが、酸を用いないと、25℃/60% RHにおいて貯蔵することはできないことを示している。
【0074】
(実施例2)異なる量のHClを用いた場合の貯蔵中の臭化グリコピロニウム安定性
実施例1の表1に対応する組成にて、以下の異なる量の1M HClを加えて、溶液製剤を調製した。
1M HCl
μg/作動 μg/μl(製剤)
(63μl弁使用)
0.312 0.0050
3.13 0.0497
6.25 0.0992
11.8 0.187
15.6 0.248
20.6 0.327
25.0 0.397
28.1 0.446
46.8 0.743
65.6 1.041
40℃/75%RHで1か月間逆さまに貯蔵したEPDM弁を設けた従来のアルミニウム製キャニスターに溶液を充填した。サンプルを、臭化グリコピロニウム含量についてクロマトグラフィーにより分析し、値は、3つの缶の平均値である。
【0075】
全範囲の酸濃度について、安定性は見られなかった。
【0076】
残留臭化グリコピロニウム含量は、0時間における含量に対して95.9±0.5%〜101.9±2.4%の範囲であり、合計分解産物は、全組成物の0.8±0.1〜3.7±1.0%の範囲であった。さらに、酸の濃度が0.187μg/μlより低いまたは0.743μg/μlより高いと、残留活性成分が少なく、分解産物が多く、それらの程度の多様性が大きかった。
【0077】
従って、0.005〜1.0μg/μl、好ましくは0.099〜0.74μg/μl、より好ましくは0.18〜0.32μg/μlの範囲の所定量の1M塩酸(HCl)を用いることにより、安定臭化グリコピロニウムHFA溶液製剤を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFA推進剤に溶解された臭化グリコピロニウムおよび共溶媒を含む医薬組成物であって、0.005〜1.0μg/μlの範囲の1M塩酸(HCl)を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記1M HClの範囲が0.18〜0.32μg/μlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記共溶媒がエタノールである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の0.005〜0.14%w/wの範囲の量の臭化グリコピロニウムを含む、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
β−2−作動薬、コルチコステロイド、抗ムスカリン様薬剤およびホスホジエステラーゼ(IV)阻害剤からなる群より選ばれる一または複数種の医薬活性成分をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
フマル酸ホルモテロールをさらに含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ジプロピオン酸ベクロメタゾンをさらに含む請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物を含んでなる定量吸入器。
【請求項9】
請求項1に記載の医薬組成物を含むと共に個別、連続または同時投与用の一または複数種の医薬活性成分をさらに含むキット・オブ・パーツであって、前記医薬活性成分が、β−2−作動薬、コルチコステロイド、抗ムスカリン様剤およびホスホジエステラーゼ(IV)阻害剤からなる群より選択されるキット・オブ・パーツ。
【請求項10】
COPDなどの呼吸器疾患の治療または予防に用いる薬剤の製造における、請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
COPDの予防または治療のための、請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
エアロゾルキャニスターに、請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物を充填する方法であって、
a)臭化グリコピロニウム、共溶媒、鉱酸および任意の低揮発性成分を含む溶液を調製する工程、
b)開いたキャニスターに溶液を充填する工程、
c)キャニスターの上に弁を配して圧着する工程、および
d)弁を通してHFA推進剤をキャニスターに加圧充填する工程
を含む方法。

【公表番号】特表2013−515695(P2013−515695A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545322(P2012−545322)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070478
【国際公開番号】WO2011/076842
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(304037234)シエシー ファルマセウティチィ ソシエタ ペル アチオニ (24)
【Fターム(参考)】