説明

CRTH2受容体アンタゴニストとしてのアザインドール誘導体

式Iの化合物は、PGD2受容体であるCRTH2のアンタゴニストであり、そのため喘息などのCRTH2媒介性疾患の治療および/または予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プロスタグランジンD(PGD)は、アラキドン酸のシクロオキシゲナーゼ代謝産物である。これは、免疫学的攻撃に応答して肥満細胞およびTH2細胞から放出され、睡眠およびアレルギー反応などの種々の生理学的事象においてある役割を果たしていると見なされている。
【背景技術】
【0002】
PGDの受容体としては、「DP」受容体、TH2細胞で発現される化学誘因物質受容体相同分子(「CRTH2」)、および「FP」受容体が挙げられる。これらの受容体は、PGDによって活性化するGタンパク質結合受容体である。CRTH2受容体、ならびにヒトTヘルパー細胞、好塩基球、および好酸球などの種々の細胞におけるその発現は、Abeら,Gene 227:71−77,1999、Nagataら,FEES Letters 459:195−199,1999、およびNagataら,The Journal of Immunology 162:1278−1286,1999に記載されており、CRTH2受容体が記載されている。Hiraiら,J.Exp.Med.193:255−261,2001には、CRTH2がPGDの受容体であることが示されている。
【0003】
国際公開第2007019675号パンフレットには、式:
【化1】

のCRTH2アンタゴニストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007019675号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Abeら,Gene 227:71−77,1999
【非特許文献2】Nagataら,FEES Letters 459:195−199,1999
【非特許文献3】Nagataら,The Journal of Immunology 162:1278−1286,1999
【非特許文献4】Hiraiら,J.Exp.Med.193:255−261,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、CRTH2受容体アンタゴニストである新規化合物を提供する。本発明の化合物は、種々のプロスタグランジン媒介性疾患および障害の治療に有用であり;したがって本発明は、本明細書に記載の新規化合物を使用したプロスタグランジン媒介性疾患の治療方法、および当該化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、式I:
【化2】

の化合物またはそれらの医薬的に許容される塩に関し、式中:
、X、X、およびXの1つはNであり、その他はCHであり;
Yは、−C(R)(R)−、−C(R)(R)−C(R)(R)−、−C(R)=C(R)−、−OCH−、−OCH(C1−3アルキル)−、−OC(C1−3アルキル)−、−OC(CH2−5−、−SCH−、−SCH(C1−3アルキル)−、−SC(C1−3アルキル)−、および−SC(CH2−5−から選択され;
Cyは、アリール、ヘテロアリール、または場合によりベンゼンに縮合したC3−6シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、Rから独立してから選択される1〜4個の基で場合により置換されており;
は、H、ハロゲン、−C1−6アルキル、および−OC1−6アルキルから選択され;
は、H、ハロゲン、−C1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−SC1−6アルキル、−S(O)C1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−CN、アリール、およびヘテロアリールから選択され;
は、H、C1−6アルキル、およびフェニル部分が1〜3個のハロゲンで場合により置換されたベンジルから選択され;
およびRは独立して、H、アリール、ヘテロアリール、C1−6アルキル、またはハロC1−6アルキルであるか;または
およびRと、それらの両方が結合する炭素原子とを合わせて、C3−6シクロアルキル環を形成するか;または
およびRと、それらが結合する隣接炭素原子とを合わせて、C3−6シクロアルキル環を形成するかであり;
は、ハロゲン、NRRg、SONRRg、CN、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルコキシ、およびハロC1−6アルキルから選択され;
およびRは、水素、C1−6アルキル、−C1−6アルキル−C3−6シクロアルキル、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、Rから独立して選択される1〜3個の基で場合により置換されているアリール、およびNRRgから独立して選択され;または
、Rと、それらの両方が結合する炭素原子とを合わせて、−O−、−S−、−N(C(O)R)−、および−N(R)−から選択される環ヘテロ原子を場合により有し、1〜3個のC1−3アルキル基で場合により置換された、C3−6シクロアルキルを形成し;
およびRgは、水素およびC1−3アルキルから独立して選択される;または
、Rgと、それらが結合する原子とを合わせて、3〜6員環を形成する。
【0008】
式Iのサブセットの1つは、Cyが、Rから独立して選択される1〜3個の基で場合により置換されたフェニルである化合物である。その一実施形態では、Cyが、ハロゲン、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、およびC1−6アルコキシから独立して選択される1〜2個の基で場合により置換されたフェニルである。
【0009】
式Iの別のサブセットは、Yが−C(R)(R)−である化合物である。その一実施形態ではYがメチレンである。
【0010】
式Iの別のサブセットは、Yがメチレンであり;Cyが、ハロゲン、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、およびC1−6アルコキシから独立して選択される1〜2個の基で場合により置換されたフェニルである化合物である。その一実施形態では、Cyが、1または2個のハロゲン原子で場合により置換されたフェニルである。
【0011】
式Iの別のサブセットは、−NR−C(O)CR−Cy部分が結合するキラル炭素が(R)−配置である化合物である。
【0012】
式Iの別のサブセットは、式Iaの化合物またはそれらの医薬的に許容される塩であり:
【化3】

式中、R、R、R、R、R、およびRは、式Iにおける定義の通りである。その一実施形態は、RおよびRが、水素およびC1−3アルキルから独立して選択され、Rがハロゲンである化合物であり;特に、RおよびRの少なくとも1つがC1−3アルキルである化合物である。別の一実施形態では、
がハロゲンであり、−C(R)(R)−が、−CH(Ph)−、
【化4】


から選択される。
【0013】
式Iの別のサブセットは、式Ibの化合物またはそれらの医薬的に許容される塩であり:
【化5】

式中、R、R、R、R、R、およびRは、式Iにおける定義の通りである。その一実施形態は、RおよびRが、水素およびC1−3アルキルから独立して選択され、Rがハロゲンである化合物である。
【0014】
式Iの別のサブセットは、式Icの化合物またはそれらの医薬的に許容される塩であり:
【化6】

式中、R、R、R、R、R、およびRは、式Iにおける定義の通りである。その一実施形態は、RおよびRが、水素およびC1−3アルキルから独立して選択され、Rがハロゲンである化合物である。
【0015】
式Iの別のサブセットは、式Idの化合物またはそれらの医薬的に許容される塩であり:
【化7】

式中、R、R、R、R、R、およびRは、式Iにおける定義の通りである。その一実施形態は、RおよびRが、水素およびC1−3アルキルから独立して選択され、Rがハロゲンである化合物である。
【0016】
式Iの別のサブセットは、式Ieの化合物またはそれらの医薬的に許容される塩であり:
【化8】

式中、RおよびRは、式Iにおける定義の通りであり;Rはハロゲンであり;R’は水素またはハロゲンであり;RおよびRは、水素およびC1−3アルキルから独立して選択されるか、またはRおよびRとそれらの両方が結合する炭素原子とを合わせて、C3−6シクロアルキルまたはテトラヒドロピラニルを形成し、それらのそれぞれは、1〜2個のC1−3アルキル基で場合により置換されている。一実施形態では、RおよびR’がそれぞれ水素であり、Rがメチルである。
【0017】
式Iの別のサブセットは:
((8R)−8−{メチル[(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル)酢酸;
((8R)−8−{メチル[(2S)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル)酢酸;
{(8R)−8−[[2−(4−フルオロフェニル)−3−メチルブタノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[(ジフェニルアセチル)(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[[2−(4−フルオロフェニル)−2−メチルプロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド−[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[{[4−(4−フルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチルシクロプロピル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)シクロブチル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド−[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;および
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)シクロペンチル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸、
からなる群から選択される化合物、またはそれらの医薬的に許容される塩である。
【0018】
別の一態様において本発明は式II:
【化9】

の化合物、あるいはそれらの塩またはC1−6アルキルエステルに関し、式中、変量は式Iにおける定義の通りである。式IIのサブセットの1つは、XがNであり、X、X、およびXがそれぞれCHであり;RおよびRがそれぞれHであり;Yが−CH−である化合物である。式IIの化合物は、式Iの化合物の調製に有用な中間体であり、塩、エステル、またはそれらのエステルの塩を含んでいる。塩およびエステルは、式Iの化合物を得るための反応能力において有用となるあらゆるものであってよく;塩としては医薬的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されるものではなく;エステルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどであってよい。
【0019】
本発明は、式Iの化合物を含有する医薬組成物、ならびに式Iの化合物を使用したプロスタグランジン媒介性疾患を治療または予防する方法も含んでいる。
【0020】
特に明記しない限り、以下の定義を使用して本発明を説明する。
【0021】
用語「ハロゲン」または「ハロ」はF、Cl、Br、およびIを含んでいる。
【0022】
用語「アルキル」は、指定の数の炭素原子を有する線状または分岐のアルキル鎖を意味する。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−およびt−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0023】
用語「シクロアルキル」は、指定の数の環炭素原子を有する飽和炭素環を意味し、そのようなものとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。「ベンゼンに縮合したシクロアルキル」は、ベンゼン部分以外にさらなる不飽和を有さない二環式炭素環であり;例としてはベンゾシクロブテニル、インダニル、およびテトラヒドロナフチルが挙げられる。
【0024】
「ハロアルキル」は、1種類以上の水素原子がハロゲン原子で置換されており、最大ですべての水素原子がハロ基で完全に置換されている前述のアルキル基を意味する。たとえば、C1−6ハロアルキルとしては、−CF、−CFCF、CHFCHなどが挙げられる。
【0025】
「アルコキシ」は、指定の数の炭素原子を有する線状または分岐のアルキル鎖のアルコキシ基を意味する。たとえばC1−6アルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシなどが挙げられる。
【0026】
「ハロアルコキシ」は、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されており、最大ですべての水素原子がハロ基で完全に置換されている前述のアルコキシ基を意味する。たとえばC1−6ハロアルコキシとしては、−OCF、−OCFCF、−OCHCFなどが挙げられる。
【0027】
「アリール」は、1〜3個のベンゼン環を含む6〜14員の炭素環式芳香環系を意味する。2つ以上の芳香環が存在する場合、それらの環は互いに縮合しており、そのため隣接する環は共通の結合を共有する。例としてはフェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「ヘテロアリール」(Het)は、1つの環または2つの縮合環、ならびにO、S、およびNから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜10員の芳香環系を意味する。Hetとしては、フラニル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピロリル、テトラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、トリアジニル、トリアゾリル、1H−ピロール−2,5−ジオニル、2−ピロン、4−ピロン、ピロロピリジン、フロピリジン、およびチエノピリジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
「治療有効量」は、研究者、獣医、医師、またはその他の臨床医によって探求される組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的反応を誘発する薬物または医薬品の量を意味する。
【0030】
用語「治療」または「治療すること」は、疾患または障害に伴う兆候および症状を緩和、改善、軽減、またはその他の減少を含んでいる。
【0031】
医薬組成物などの用語「組成物」は、有効成分、および担体を構成する不活性成分(医薬的に許容される賦形剤)を含む生成物、ならびに、任意の2種類以上の成分の混合、錯体形成、または凝集によって、または1種類以上の成分の溶解によって、または1種類以上の成分の他の種類の反応または相互作用によって、直接または間接的に得られるあらゆる生成物を含むことを意図している。したがって、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物、および医薬的に許容される賦形剤を混合することによって製造されたあらゆる組成物を含んでいる。
【0032】
用語「場合により置換された」は、「非置換または置換」を意味し、したがって、本明細書に記載の一般構造式は、指定の場合による置換基を含有する化合物、およびその場合による置換基を含有しない化合物を含んでいる。たとえば、語句「Rから独立して選択される1〜4個の基でそれぞれ場合により置換されたアリールまたはヘテロアリール」は、非置換のアリールまたはヘテロアリール、およびRから選択される1、2、3、または4つの置換基で置換されたアリールまたはヘテロアリールを含んでおり;同じ語句を同等の表現「Ar−(R0−4」で表すこともできる。
【0033】
それぞれの変量は、一般構造式の定義内で出現するそれぞれの場合で独立して定義される。たとえば、「Ar−(R0−4」中に2つ以上のRが存在する場合、それぞれのRは、出現するごとに独立して選択され、それぞれのRは互いに同じ場合も異なる場合もある。別の例では、用語−OC(C1−3アルキル)−は、2つのアルキル置換基の鎖長が同じまたは異なる化合物を含んでいる。
【0034】
本明細書のために、以下の略語は以下の意味を有する。Ac=アセチル;ADD=アゾジカルボン酸ジピペリジド;DCM=ジクロロメタン;DMAP=4−(ジメチルアミノ)ピリジン;DMF=ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;EA=酢酸エチル;HATU=O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;HMDS=ヘキサメチルジシラジド;NMP=N−メチル−2−ピロリジノン;PPTS=p−トルエンスルホン酸ピリジニウム;TBAF=フッ化テトラブチルアンモニウム;TBDMSi=t−ブチル−ジメチルシリル;TFA=トリフルオロ酢酸;THF=テトラヒドロフラン;THP=テトラヒドロピラニル;Ts=トシル。アルキル基の略語としては:Me=メチル;Et=エチル;n−Pr=ノルマルプロピル;i−Pr=イソプロピル;c−Pr=シクロプロピル;n−Bu=ノルマルブチル;i−Bu=イソブチル;c−Bu=シクロブチル;s−Bu=第2級ブチル;t−Bu=第3級ブチルが挙げられる。
【0035】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
式Iの化合物は1種類以上の不斉中心を含有しており、したがってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物、および個々のジアステレオマーとなる場合がある。本発明は、式Iの化合物のこのようなすべての異性体を包含することを意図している。
【0036】
本明細書に記載の化合物の一部は、オレフィン系二重結合を含有し、特に明記しない限り、EおよびZの両方の幾何異性体を含むことを意味している。
【0037】
本明細書に記載の化合物の一部は、互変異性体と呼ばれる、水素の異なる結合位置を有して存在することができる。このような例としては、ケトンおよびそのエノール形態を挙げることができ、これはケト−エノール互変異性体と呼ばれる。個別の互変異性体およびそれらの混合物が式Iの化合物に含まれる。
【0038】
式Iの化合物は、たとえば、好適な溶媒、たとえばメタノールもしくは酢酸エチルまたはそれらの混合物からの分別結晶化によって、鏡像異性体のジアステレオマー対に分割することができる。こうして得られた鏡像異性体の対は、従来手段によって、たとえば分割剤としての光学活性な酸を使用することによって、個別の立体異性体に分割することができる。
【0039】
あるいは、一般式Iの化合物のあらゆる鏡像異性体は、既知の配置の光学的に純粋な出発物質または試薬を使用して立体特異的に合成することによって得ることができる。
【0040】
同位体
一般式Iの化合物において、原子は、それらの天然の同位体存在比を示す場合もあるし、1種類以上の原子は、同じ原子番号を有するが、天然に主として見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する特定の同位体を人工的に濃縮される場合もある。本発明は、一般式Iの化合物のすべての好適な同位体変化を含むことを意味する。たとえば、水素(H)の異なる同位体として、プロチウム(H)および重水素(H)が挙げられる。プロチウムは、天然に見られる主要な水素同位体である。重水素を濃縮することで、インビボでの半減期の増加または投薬量の減量などのある種の治療上の利点を得ることができるし、生体サンプルの特性決定の基準として有用な化合物を得ることもできる。当業者に周知の従来技術によって、またはby本明細書のスキームおよび実施例に記載される方法と類似の方法によって、適切な同位体が濃縮された試薬および/または中間体を使用して、一般式Iの同位体が濃縮された化合物を、過度の実験を行うことなく調製することができる。
【0041】

用語「医薬的に許容される塩」は、無機塩基および有機塩基などの医薬的に許容される非毒性の塩基から調製された塩を意味する。無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムの塩である。医薬的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩としては、第1級、第2級、および第3級のアミン類、天然置換アミン類などの置換アミン類、環状アミン類、ならびに塩基性イオン交換樹脂の塩、たとえば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。
【0042】
本発明の化合物が塩基性の場合、塩は、無機酸および有機酸などの医薬的に許容される非毒性の酸から調製することができる。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。特に好ましいものは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、および酒石酸である。
【0043】
特に明記されない限り、式I、Ia、Ib、Ic、Id、およびIeの化合物、およびそれらのサブセット、それらの実施形態、ならびに特定の化合物に対する言及は、それらの医薬的に許容される塩をも含んでいることを意味するものと理解されたい。
【0044】
さらに、本発明の化合物の結晶形態の一部は、多形として存在する場合があり、そのため、全ての形態が本発明に含まれることが意図される。さらに、本発明の化合物の一部は、水との溶媒和物(水和物)または一般の有機溶媒との溶媒和物を形成することができる。このような溶媒和物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0045】
有用性
式Iの化合物のプロスタグランジン受容体と相互作用する能力は、哺乳動物、特にヒトの被験者におけるプロスタグランジン類によって生じる望ましくない症状の予防または治療において有用となる。プロスタグランジン類の作用のこの模倣または拮抗効果は、本発明の化合物およびそれらの医薬組成物が、哺乳動物、特にヒトにおける、呼吸症状、アレルギー症状、疼痛、炎症症状、粘液分泌障害、骨障害、睡眠障害、受胎障害、血液凝固障害、視覚異常、ならびに免疫および自己免疫疾患の治療、予防、または改善に有用であることを示している。さらに、このような化合物は、細胞悪性形質転換およびメタスティック(metastic)腫瘍増殖を阻害することができ、したがって癌の治療に使用することができる。式Iの化合物は、糖尿病性網膜症および腫瘍血管新生において発生するようなプロスタグランジン媒介性増殖性障害の治療および/または予防にも有用となりうる。式Iの化合物は、収縮性プロスタノイド類への拮抗、またはプロスタノイド類の緩和の模倣によって、プロスタノイドによって誘導される平滑筋収縮を阻害することもでき、したがって、月経困難症、早産、および好酸球関連の障害の治療に使用することができる。特に、式Iの化合物は、プロスタグランジンD2受容体であるCRTH2の選択的アゴニストである。
【0046】
したがって、本発明の別の一態様は、プロスタグランジン媒介性疾患を治療または予防する方法であって、前記プロスタグランジン関連疾患の治療または予防に有効な量の式Iの化合物を、そのような治療の必要な哺乳動物の患者に投与することを含む方法を提供する。プロスタグランジン媒介性疾患としては、アレルギー性鼻炎、鼻づまり、鼻漏、通年性鼻炎、鼻炎、アレルギー喘息などの喘息、慢性閉塞性肺疾患、およびその他の形態の肺炎症;睡眠障害および睡眠覚醒周期障害;月経困難症および早産に関連するプロスタノイドによって誘導される平滑筋収縮;好酸球関連の障害;血栓症;緑内障および視覚障害;閉塞性血管疾患;うっ血性心不全;受傷後または手術後などの抗凝固療法を必要とする疾患または症状;炎症;壊疽;レイノー病;細胞保護作用などの粘液分泌障害;疼痛および片頭痛;たとえば骨粗鬆症などの骨形成および骨吸収の制御を必要とする疾患;ショック;発熱などの熱調節、ならびに免疫調節が望ましい免疫障害または症状が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、治療される疾患は、鼻づまり、肺のうっ血、ならびにアレルギー喘息などの喘息などのプロスタグランジンD2が媒介する疾患である。
【0047】
本発明の一実施形態は、プロスタグランジン媒介性疾患を治療または予防する方法であって、プロスタグランジン媒介性疾患の治療または予防に有効な量の式Iの化合物を治療の必要な哺乳動物の患者に投与する方法である。ここにおいて、プロスタグランジン媒介性疾患は、鼻づまり、アレルギー性鼻炎および通年性鼻炎などの鼻炎、ならびにアレルギー喘息などの喘息である。
【0048】
本発明の別の一実施形態は、プロスタグランジンD2媒介性疾患を治療または予防する方法であって、プロスタグランジンD2媒介性疾患の治療または予防に有効な量の式Iの化合物を治療の必要な哺乳動物の患者に投与する方法である。ここにおいて、前記プロスタグランジンD2媒介性疾患は鼻づまりまたは喘息である。
【0049】
本発明の別の一実施形態は、鼻づまりの治療を、そのような治療が必要な患者に対して行う方法であって、式Iの化合物の治療有効量を前記患者に投与する方法である。
【0050】
本発明のさらに別の一実施形態は、アレルギー喘息などの喘息の治療を、そのような治療が必要な患者に対して行う方法であって、式Iの化合物の治療有効量を前記患者に投与する方法である。
【0051】
用量範囲
式Iの化合物の予防用量または治療用量は、当然ながら、治療すべき症状の性質および重症度、ならびに個別の式Iの化合物およびその投与経路によって変動する。これは、個別の患者の年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与時間、排出率、薬物の組み合わせ、および反応などの種々の要因によっても変動する。一般に、1日量は、哺乳動物の体重1kg当たり約0.001mg〜約100mg、好ましくは0.01mg〜約10mg/kgである。他方、場合によってはこれらの限度外の用量を使用することが必要となりうる。
【0052】
1つの剤形を製造するために担体材料と混合することができる有効成分の量は、治療される宿主および個別の投与方式に応じて変動する。たとえば、ヒトの経口投与が意図された製剤は、全組成物の約5〜約99.95%で変動しうる適切で好都合な量の担体材料と配合された0.05mg〜5gの有効成分を含有することができる。単位剤形は、一般に約0.1mg〜約0.4gの間の有効成分、一般的には0.5mg、1mg、2mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、または400mgを含有する。
【0053】
医薬組成物
本発明の別の一態様は、式Iの化合物を医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物を提供する。いずれかのプロスタノイド媒介性疾患を治療するために、式I化合物は、従来の非毒性の医薬的に許容される担体、アジュバンド、および賦形剤を含有する単位用量製剤で、経口投与、吸入噴霧、局所投与、非経口投与、または直腸投与することができる。本明細書において使用される場合、非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または輸液術を含んでいる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどの温血動物の治療に加えて、本発明の化合物は、ヒトの治療において有効である。
【0054】
有効成分を含有する医薬組成物は、たとえば、錠剤、トローチ、ドロップ、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、乳剤、硬または軟カプセル、或いはシロップまたはエリキシルとして経口使用に適した形態であってよい。経口使用が意図された組成物は、医薬組成物の製造の技術分野で周知のあらゆる方法により調製することができ、そのような組成物は、医薬的に洗練されおよび口当たりの良い製剤を得るために、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤からなる群から選択される1種類以上の物質を含有していてもよい。錠剤は、錠剤の製造に好適な非毒性の医薬的に許容される賦形剤と混合された有効成分を含有する。これらの賦形剤は、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、たとえば、コーンスターチ、またはアルギン酸;結合剤、たとえばデンプン、ゼラチン、またはアラビアゴム、ならびに滑沢剤、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってよい。錠剤は、コーティングされない場合もあるし、消化管における崩壊および吸収を遅らせ、それによってより長時間持続する作用を得るために、周知の技術によってコーティングされていてもよい。たとえば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートなどの時間遅延物質を使用することができる。これらは、米国特許第4,256,108号明細書、第4,166,452号明細書、および第4,265,874号明細書に記載の技術によってコーティングして、制御放出のための浸透療法の錠剤を形成することができる。
【0055】
経口使用のための製剤は、有効成分が不活性固体希釈剤、たとえば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセルとして提供することもでき、あるいは有効成分がプロピレングリコール、PEG、およびエタノールなどの水混和性溶媒、或いは油性媒体、たとえば落花生油、液体パラフィン、またはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして提供することもできる。
【0056】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された有効物質を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴムであり;分散剤または湿潤剤は、天然のホスファチド、たとえばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、たとえばポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、たとえばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、たとえばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物、たとえばポリエチレンソルビタンモノオレエートであってよい。水性懸濁液は、1種類以上の保存剤たとえばエチル、またはn−プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸、1種類以上の着色剤着色剤、1種類以上の香味剤、ならびに1種類以上の甘味剤、たとえばスクロース、サッカリン、またはアスパルテームを含有していてもよい。
【0057】
油性懸濁液は、植物油、たとえば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油の中、あるいは液体パラフィンなどの鉱油の中に有効成分を懸濁させることによって処方することができる。油性懸濁液は、増粘剤、たとえば蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含有することができる。前述のような甘味剤および香味剤を、口当たりの良い経口剤を得るために加えることができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を加えることによって保存することができる。
【0058】
水を加えることによる水性懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒では、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1種類以上の保存剤と混合された有効成分が提供される。好適な分散剤または湿潤剤、ならびに懸濁剤は、すでに前述したものが例として挙げられる。さらなる賦形剤、たとえば甘味剤、香味剤、および着色剤も存在することができる。
【0059】
本発明の医薬組成物は水中油型乳剤の形態であってもよい。その油相は、植物油、たとえばオリーブ油または落花生油、あるいいは鉱油、たとえば液体パラフィン、あるいはこれらの混合物であってよい。好適な乳化剤は、天然のホスファチド類、たとえば大豆、レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステル類または部分エステル類、たとえばソルビタンモノオレエート、および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってよい。乳剤は、甘味剤および香味剤を含有することもできる。
【0060】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、たとえばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースとともに処方することができる。このような製剤は粘滑薬、保存剤、ならびに香味剤および着色剤を含有していてもよい。医薬組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、前述の好適な分散剤または湿潤剤、ならびに懸濁剤を使用して周知の技術により処方することができる。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液、たとえば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用可能な許容される賦形剤および溶媒の中では特に水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。エタノール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなどの共溶媒を使用することもできる。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的のため、合成モノグリセリド類またはジグリセリド類などのあらゆるブランドの固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸類は、注射剤の調製における使用が見出されている。
【0061】
式Iの化合物は、薬剤を直腸投与するための坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、常温では固体であるが直腸温度では液体である好適な刺激のない賦形剤を薬剤と混合することによって調製することができ、したがって直腸で溶融して薬剤を放出する。このような物質は、カカオバターおよびポリエチレングリコールである。
【0062】
局所使用の場合、式Iの化合物を含有するクリーム、軟膏、ゲル、溶液、または懸濁液などが使用される(この用途のためには、局所適用は口の洗浄およびうがいを含むべきである)。局所製剤は、医薬用担体、共溶媒、乳化剤、浸透促進剤、防腐系、および皮膚軟化剤で一般に構成することができる。
【0063】
他の薬物との組み合わせ
プロスタグランジン媒介性疾患の治療および予防のために、式Iの化合物を別の治療薬と同時投与することができる。したがって、別の一態様において、本発明は、治療有効量の式Iの化合物および1種類以上の別の治療薬を含む、プロスタグランジン媒介性疾患を治療するための医薬組成物を提供する。式Iの化合物との併用療法に好適な治療薬としては:(1)DP受容体アンタゴニスト、たとえばS−5751およびラロピプラント;(2)コルチコステロイド、たとえばトリアムシノロンアセトニド、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびモメタゾン;(3)β−アゴニストたとえば、サルメテロール、ホルモテロール、アルホルモテロール、テルブタリン、メタプロテレノール、アルブテロールなど;(4)ロイコトリエン受容体アンタゴニストなどのロイコトリエン修飾薬、たとえばモンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト、あるいは5−リポキシゲナーゼ阻害剤およびFLAP(5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質)阻害剤などのリポキシゲナーゼ阻害剤、たとえばジロイトン;(5)抗ヒスタミン剤、たとえば、ブロモフェニラミン(bromopheniramine)、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミン ピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジンなど;(6)うっ血除去薬、たとえば、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドフェドリン(pseudophedrine)、オキシメタゾリン、エフィネフリン(ephinephrine)、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、またはレボ−デゾキシエフェドリン;(7)アンチータシブ(antiitussive)、たとえばコデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタン、またはデキストラメトルファン(dextramethorphan);(8)プロスタグランジンFアゴニストなどの別のプロスタグランジンリガンド、たとえばラタノプロスト;ミソプロストール、エンプロスチル、リオプロスチル、オルノプロストル(ornoprostol)、またはロサプロストル;(9)利尿剤;(10)非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、たとえばプロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、フロフェナック、イブフェナック、イソキセパック、オキシピナック(oxpinac)、スリンダク、チオピナック、トルメチン、ジドメタシン、およびゾメピラック)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサルおよびフルフェニサール)、オキシカム類(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、およびテノキシカン(tenoxican))、サリチレート類(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)、ならびにピラゾロン類(アパゾン、ベズピペリロン(bezpiperylon)、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン);(11)シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、たとえばセレコキシブおよびロフェコキシブ;(12)ホスホジエステラーゼIV(PDE−IV)の阻害剤、たとえばアリフロ(Ariflo)、ロフルミラスト;(13)ケモカイン受容体、特にCCR−1、CCR−2、およびCCR−3のアンタゴニスト;(14)コレステロール降下薬、たとえばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、およびプラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、およびその他のスタチン類)、金属イオン封鎖剤(コレスチラミンおよびコレスチポール)、ニコチン酸、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート、およびベンザフィブラート)、およびプロブコール;(15)抗糖尿病薬、たとえばインスリン、スルホニル尿素類、ビグアニド類(メトホルミン)、α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース)、およびグリタゾン類(トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、ロシグリタゾンなど);(16)インターフェロンβ(インターフェロンβ−1a、インターフェロンβ−1b)の製剤;(17)抗コリン剤、たとえばムスカリンアンタゴニスト(臭化イプラトロピウムおよび臭化チオトロピウム)、および選択的ムスカリンM3アンタゴニスト;(18)ステロイド類、たとえばベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾン;(19)片頭痛の治療に一般に使用されるトリプタン類、たとえばスミトリプタンおよびリザトリプタン;(20)アレンドロネートおよび骨粗鬆症の他の治療薬;(21)他の化合物、たとえば5−アミノサリチル酸およびそのプロドラッグ、代謝拮抗薬、たとえばアザチオプリンおよび6−メルカプトプリン、細胞毒性癌化学療法薬、ブラジキニン(BK2)アンタゴニスト、たとえばFK−3657、TP受容体アンタゴニスト、たとえばセラトロダスト、ニューロキニンアンタゴニスト(NK1/NK2)、VLA−4アンタゴニスト、たとえば米国特許第5,510,332号明細書、国際公開第97/03094号パンフレット、国際公開第97/02289号パンフレット、国際公開第96/40781号パンフレット、国際公開第96/22966号パンフレット、国際公開第96/20216号パンフレット、国際公開第96/01644号パンフレット、国際公開第96/06108号パンフレット、国際公開第95/15973号パンフレット、および国際公開第96/31206号パンフレットに記載のものが挙げられる。さらに、本発明は、プロスタグランジンD2媒介性疾患の治療方法であって:そのような治療を必要とする患者に非毒性の治療有効量の式Iの化合物を投与し、場合により、すぐ上に記載した1種類以上のこのような成分を同時投与する方法を含んでいる。
【0064】
合成方法
本発明の式Iの化合物は、スキーム1〜4に概略が示される合成経路および本明細書に記載される方法によって調製することができる。
【0065】
置換アザインドール類の調製方法
スキーム1に示されるように、塩化アルミニウムの存在下、DCM中のアザインドール1−iをクロロオキソ酢酸メチル1−iiで処理することによって、ケトエステル1−iiiが得られ(タオ・ワン(Tao Wang),J.Org.Chem.2002,67,6226参照)、これをTFA中トリエチルシランで処理すると、エステル化合物1が得られる。
【0066】
アザインドール類の別の調製方法をスキーム1Aに示している。一方法では、パラジウム触媒の存在下で、1−ivなどの2−アミノ−3−ヨードピリジンを1−vなどのアルキンで処理すると、アザインドール1aが得られる(フェローズ・ウジャインワラ(Feroze Ujjainwalla),Tetrahedron Letters 1998,39,5355、およびサン・サン・パーク(Sang Sun Park),Tetrahedron Letters 1998,39,627参照)。別の方法の1つでは、アセチレン1−viをn−ブチルリチウムでリチオ化した後、4−ブロモブタ−1−エン1−viiで捕捉すると、1−viiiが得られる。アザインドール1aに対して使用した触媒と同じ触媒のパラジウムを使用して、アミノヨードピリジン1−ixをアルキン1−viiiと縮合させると、アザインドール1bが得られる。
【化10】

アジリジン類の調製方法
スキーム2に示されるように、トリエチルアミンの存在下、アスパラギン酸ジメチルエステル2−iをTHF中の塩化スルホニル2−iiで処理すると、スルホニルアミドジエステル2−iiiが得られる。ジエステル2−iiiを、たとえば水素化ホウ素ナトリウムで還元すると、ジオール2−ivが得られ、これをミツノブ(Mitsunobu)条件下におくと、アジリジン2−vが得られる。2−vの第1級アルコールをシリルエーテル基で保護して、保護されたアジリジン2を得ることができる。
【0067】
スキーム2Aは、保護されたアジリジンの別の調製方法を示している。イミダゾールの存在下で塩化tert−ブチルジメチルシリルで処理することによって、ブタ−3−エン−1−オール2−viがシリルエーテル2−viiに変換される。次に、三臭化トリメチルフェニルアンモニウムの存在下、化合物2−viiをクロラミン−Tで処理すると、アジリジン2aが得られる。
【化11】

スルホンアミド中間体3の調製方法
スキーム3は、スルホンアミド中間体3の調製を示している。水素化ナトリウムの存在下、アザインドール1をアジリジン2と縮合させると、3−iが得られる。TBAFでシリル基を除去し、続いてデス−マーチン(Dess−Martin)試薬で酸化すると、アルデヒド3−iiが得られる。PPTSの存在下でアルデヒド3−iiをトルエン中で加熱すると、対応する環化化合物が得られ、これを水素化すると3−iiiが得られる。化合物3−iiiは、水素化ナトリウムの存在下、たとえばヨウ化メチルでアルキル化して、3−ivを得ることができる。エステル3−iiiまたは3−ivを、たとえば、水酸化リチウムで加水分解すると、遊離酸化合物3が得られる。
【化12】

スキーム3Aは、式3aの化合物の調製を示している。スキーム3に記載の条件を使用して、アザインドール3−vをアルデヒド3−viに、続いて化合物3−viiに変換することができ、次にこれは標準条件(NaClO酸化の場合:JACS 1984,106,7217参照)を使用して、化合物3−viiiに変換することができる。化合物3−viiiの二重結合を水素化し、続いてエステルを加水分解して、式3aの化合物を得ることができる。
【化13】

あるいは、スキーム3Bに示されるように、アザインドール1は、ナトリウムHMDSで脱プロトンして、アジリジン2と縮合させることができ;得られた化合物をアルキル化することができ;最後に、塩酸でシリル基を除去して3−ixを得ることができる。アルコール3−ixのパーク−デーリング(Parkh−Doering)酸化によって、アルデヒド3−xが得られる。PPTSの存在下で3−xを環化した後、水素化することによって、3−ivが得られ、ここでR’は水素以外である。
【化14】

式Iの化合物の調製方法
スキーム4に示されるように、スルホンアミド4−iを、メタノール中マグネシウムで処理すると(スルホンアミド開裂の例として、モニカ・フィッツ(Monika Fitz)Tetrahedron Asymmetry 2005,16,3690参照)、アミン4−iiが得られる。酸とのカップリング剤としてHATUを使用して変換して、または塩化アシルを使用してアシル化して、アミン4−iiからアミド4−iiiを得ることができる。次に、エステル4−iiiを加水分解して式Iの遊離酸を得ることができる。Rが水素であるアミン4−iiは、還元的アミノ化によってアルキル化することができ;たとえば、4−ii(R=H)をベンズルアルデヒド(benzlaldehyde)およびNaBH(OAc)で処理することで、対応するベンジルアミンを得ることができる。Rが水素であるアミド4−iiiは、一連のスルホンアミドに関してスキーム3に記載したようにアルキル化することができる。
【化15】

Yがメチレン以外である式Iの化合物は、国際公開第2007019675号パンフレット(その関連部分が参照により本明細書に組み入れられる)に概略が示される一般手順により調製することができる。
【0068】
式Iの化合物は、本明細書におけるスキームおよび実施例に記載の手順により、適切な物質を使用して調製することができ、以下の特定の実施例によってさらに例示する。例示される化合物は、本発明の代表例であるが、本発明の範囲をいかなる方法によっても限定するものとして解釈すべきではない。実施例は、本発明の化合物の調製に関してさらに詳細に説明している。当業者であれば容易に理解できるように、以下の調製手順の保護基、試薬、ならびに条件および方法の周知の変法を、これらの化合物の調製に使用できる。ある化学試薬が市販されてない場合はいつでも、そのような化学試薬が、文献に記載される周知の方法に従うか適合させるかのいずれかによって、当業者により容易に調製できることも理解されたい。特に明記しない限り、すべての温度は摂氏温度である。質量スペクトル(MS)は、エレクトロスプレーイオン質量分析(ESMS)、または大気圧化学イオン化質量分析(APCI)のいずれかによって測定した。
【0069】
中間体1−1の調製
{(8R)−8−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル}酢酸メチル
【化16】

ステップ1:オキソ(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)酢酸メチル
塩化アルミニウム(56.4g、423mmol、5当量)のDCM(50mL)中の懸濁液に、7−アザインドール(10.0g、85mmol)を加えた。室温で1時間後、得られた混合物を0℃まで冷却し、クロロオキソ酢酸メチル(51.9g、423mmol、5当量)を滴下した。室温で18時間後、反応混合物を0℃まで冷却し、メタノール(300mL)を加えた。室温で0.5時間後、溶媒を蒸発させた。DCM(500mL)および飽和NaHCO(600mL)を加えた。有機相を分離し、水をDCM(250mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、酒石酸カリウムナトリウム溶液(500mLの水中166g)を加えて18時間撹拌した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物を、フラッシュクロマトグラフィーによってヘキサン中50%酢酸エチルを使用して精製して、13gの表題化合物を得た。
【0070】
ステップ2:1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル酢酸メチル
トリエチルシラン(9.95g、85.78mmol)のTFA(25mL)中の混合物に、オキソ(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)酢酸メチル(5.0g、24.48mmol)を少しずつ加えた。50℃で18時間後、溶媒を蒸発させ、飽和NaHCOを加え、続いてDCMを加えた。有機相を分離し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物を、コンビフラッシュ(combiflash)によってヘキサン中10%酢酸エチルから100%酢酸エチルを使用して精製して、3.5gの表題化合物を得た。
【0071】
ステップ3:D−アスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩
D−アスパラギン酸(25g、188mmol)のメタノール(250mL)中の0℃の懸濁液に、塩化チオニル(15.1mL、207mmol)を30分間かけて滴下した。室温で24時間後、溶媒を減圧下で除去し、その残留物を、メタノールとともに2回共蒸発させた。その残留物にTHFを加え、THFとともに2回共蒸発させた。表題化合物を400mLのTHF中に懸濁させ、それを次のステップで使用した。
【0072】
ステップ4:N−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]−D−アスパラギン酸ジメチル
D−アスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩(36.0g、182mmol)のTHF(360mL)中の懸濁液に、塩化4−フルオロベンゼンスルホニル(39.0g、200mmol、1.1当量)を加えた。0℃のこの混合物に、トリエチルアミン(60.8g、601mmol、3.3当量)を滴下した。室温で18時間後、反応混合物を濾過し、固形分をメチルtert−ブチルエーテル(30mL)で洗浄した。濾液を蒸発させた後、メチルtert−ブチルエーテル(300mL)を加えた。得られた混合物に100mLの1MのHClを加えた。有機相を分離し、水、半飽和重炭酸ナトリウム、0.5MのHCl、および半飽和塩化ナトリウムで順次洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発さえて、50gの表題化合物を油として得た。
【0073】
ステップ5:4−フルオロ−N−[(1R)−3−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]ベンゼンスルホンアミド
N−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]−D−アスパラギン酸ジメチル(50g、157mmol)のエタノール(500mL)中の0℃の懸濁液に、水素化ホウ素ナトリウム(29.6g、783mmol、5当量)を2.5時間かけて少しずつ加えた。室温で18時間後、飽和塩化ナトリウム(500mL)を加えることによって反応をクエンチした。得られた混合物を濾過し、濾液を約500mLの体積まで減圧下で濃縮した。この混合物にpH3〜4となるまで濃HClを加え、その混合物を塩化ナトリウムで飽和させた。水相を酢酸エチル(5×200mL)で抽出した。塩化ナトリウムでのクエンチによって得られた固体を、1MのHCl中に溶解させ、塩化ナトリウムを加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機相を1つにまとめ、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。混合物を、フラッシュクロマトグラフィーによって酢酸エチルを使用して精製して、35gの表題化合物を得た。
【0074】
ステップ6:2−{(2R)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アジリジン−2−イル}エタノール
THF(700mL)中の4−フルオロ−N−[(1R)−3−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]ベンゼンスルホンアミド(35.0g、133mmol)に、1,1’−(アゾジカルボニル)ジペピリジン(35.0g、139mmol、1.04当量)を加え、次にトリブチルホスフィン(28.7g、142mmol、1.07当量)を10分間かけて加えた。2時間後、反応混合物を濾過し、固形分をメチルtert−ブチルエーテル(100mL)で洗浄した。水(200mL)を濾液に加え、有機相を分離し、次にこれを100mLの3%過酸化水素で洗浄した。次に有機相を水および半飽和塩化ナトリウムで洗浄した。有機相を回収し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物をメチルtert−ブチルエーテルで処理し、混合物を濾過した。濾液を蒸発させ、フラッシュクロマトグラフィーによってヘキサン中50%酢酸エチルから70%酢酸エチルを使用して精製して、31gの表題化合物を得た。
【0075】
ステップ7:(2R)−2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]−アジリジン
2−{(2R)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アジリジン−2−イル}エタノール(17.5g、71.3mmol)のTHF(175mL)中の溶液に、塩化tert−ブチルジメチルシリル(11.8g、78mmol、1.1当量)を加え、続いてイミダゾール(10.7g、157mmol、2.2当量)を加えた。2時間後、固形分を濾過し、メチルtert−ブチルエーテル(75mL)を加えた。濾液に水(100mL)を加え、有機相を分離した。有機相を半飽和塩化ナトリウム、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物を、フラッシュクロマトグラフィーによってヘキサン中10%酢酸エチルを使用して精製して、20gの表題化合物を得た。
【0076】
ステップ8:[1−((2R)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]−アミノ}ブチル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)酢酸メチル
1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル酢酸メチル(1.1g、5.8mmol)のDMF(12mL)中の0℃に冷却した溶液に、油中60%NaH(0.26g、6.4mmol、1.1当量)を加えた。室温で10分後、反応混合物を0℃まで冷却し、(2R)−2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]−アジリジン(2.0g、5.8mmol)のDMF溶液(12mL)を加えた。反応を室温で0.5時間熟成させ、飽和塩化アンモニウムおよび酢酸エチルの上に注いだ。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物をコンビフラッシュ(ヘキサンからヘキサン中50%酢酸エチル)によって精製して、1.2gの表題化合物を得た。
【0077】
ステップ9:[1−((2R)−2−{[(4−フルオロフェニルスルホニル]アミノ}−4−ヒドロキシブチル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル]酢酸メチル
[1−((2R)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]−アミノ}ブチル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル]酢酸メチル(1.2g、2.2mmol)のジクロロメタン(40mL)中の溶液に、1MのTBAF(4.8mL、2.2当量)を加えた。0.5時間後、反応混合物に25%酢酸アンモニウム水溶液を加えてクエンチし、有機相を分離し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物を、コンビフラッシュ(ヘキサン中20%酢酸エチルから100%酢酸エチル)で精製して、849mgの表題化合物を得た。
【0078】
ステップ10:[1−((2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−4−オキソブチル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル]酢酸メチル
[1−((2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−4−ヒドロキシブチル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル]酢酸メチル(0.89g、1.9mmol)のジクロロメタン(16mL)中の溶液に、デス−マーチン試薬(0.99g、2.3mmol、1.2当量)を加えた。45分後、反応混合物をコンビフラッシュ(ヘキサン中20%酢酸エチルから100%酢酸エチル)によって直接精製して、697mgの表題化合物を得た。
【0079】
ステップ11:((8R)−8−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−8,9−ジヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル)酢酸メチル
[1−((2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−4−オキソブチル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル]酢酸メチル(0.69g、1.6mmol)のトルエン(50mL)中の混合物に、PPTS(0.41g、1.6mmol、1.2当量)を加えた。90℃で10時間後、反応混合物に飽和重炭酸ナトリウムを加えてクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物をコンビフラッシュ(ヘキサン中10%酢酸エチルから100%酢酸エチル)によって精製して、469mgの表題化合物を得た。
【0080】
ステップ12:((8R)−8−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド−[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチル
((8R)−8−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−8,9−ジヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチル(0.46g、1.1mmol)の酢酸エチル(20mL)中の溶液に、窒素下でPd−C10%(0.02g、0.19mmol、0.17当量)を加えた。1気圧のH下で1時間後、DCMを反応混合物に加え、次にこれをマイクロフィルターで濾過し、溶媒を蒸発させて、464mgの表題化合物を得た。
【0081】
ステップ13:{(8R)−8−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチル
((8R)−8−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド−[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチル(0.46g、1.1mmol)のDMF(5.5mL)中の溶液に、0℃において窒素下で、油中60%NaH(0.04g、1.2mmol、1.1当量)を加えた。10分後、ヨウ化メチル(0.076mL、1.2mmol、1.1当量)を加え、反応混合物を室温で1時間熟成させた。反応混合物を、25%酢酸アンモニウム水溶液および酢酸エチルの上に注いだ。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物をコンビフラッシュ(ヘキサンから100%酢酸エチル)によって精製して、420mgの表題化合物を得た。
【0082】
別の経路:
ステップ1:{1−[(2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ}−4−ヒドロキシブチル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル}酢酸メチル
NaHMDS(177.22g、966mmol)のDMF(600ml)中の−10℃の溶液を撹拌しながら、これに、1H−ピロロ[2,3−6]ピリジン−3−イル酢酸メチル(197.98g、969mmol)のDMF(1000ml)中の溶液を15分間かけて加え、その温度で2時間続けて撹拌した。この陰イオンに(2R)−2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アジリジン(288g、801mmol)のDMF(1000ml)中の溶液を1時間かけて加えた。反応混合物を−10℃において1時間撹拌した。ヨードメタン(125.0ml、1999mmol)を−10℃において加え、反応物を1.5時間撹拌した。次に、さらにヨードメタン(20mL)を加え、反応物をさらに30分間撹拌した。3NのHCl(1800ml、5400mmol)を−10℃においてゆっくりと加え、反応をさらに1時間撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(4L)および酢酸エチル(4L)の中に注ぐことによって反応をクエンチした。pHは依然として酸性であったので、固体重炭酸ナトリウムを加えた。層を分離させ、有機層を1/2ブライン(1×4L)および(1×2L)で洗浄した。
【0083】
ステップ2:{1−[(2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ)−4−オキソブチル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル}酢酸メチル
室温のDMSO(1L、1.41E+04mmol)にピリジン三酸化硫黄(202.08g、1270mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した(溶液A)。別のフラスコ中で、{1−[(2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ}−4−ヒドロキシブチル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル}酢酸メチル(273g、589mmol)およびヒューニッヒ塩基(0.425L、2433mmol)のジクロロメタン(4L)中の−10℃の溶液を撹拌しながら、これに溶液Aを30分間かけて滴下した。反応物を−10℃で1時間撹拌し、次に1/2飽和ブライン(4L)を加えてクエンチし;水層に固体重炭酸ナトリウムを加えて中和させた。次に層を分離させ、有機層を1/2飽和ブライン(4L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物を、フラッシュクロマトグラフィーによって酢酸エチルを使用して精製して、表題化合物を得た。
【0084】
ステップ3:((8R)−8−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ}−8,9−ジヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチル
{1−[(2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ)−4−オキソブチル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル}酢酸メチル(272g、589mmol)の酢酸エチル(2.5L)中の混合物に、PPTS(326.33g、1299mmol)を加えた。65℃で4日後、反応混合物に飽和重炭酸ナトリウムを加えてクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機相を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。その残留物をコンビフラッシュ(ヘキサン中10%酢酸エチルから100%酢酸エチル)によって精製して、表題化合物を得た。
【0085】
ステップ4:((8R)−8−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチル
((8R)−8−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ}−8,9−ジヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチル(105g、237mmol)の酢酸エチル(500mL)中の溶液に、窒素下でPd−C10%(5.04g、47.4mmol)を加えた。1気圧のH下で48時間後、反応物をパー(Parr)に移し、10psiのHにおいて1時間維持した。反応物をソルカフロック(solka−flok)で濾過した。Pd−C10%(5.45g)をさらに加え、反応物を1気圧のH下で終夜撹拌した。次に反応混合物をソルカフロックで濾過し、酢酸エチルでリンスした。溶媒を減圧下で除去した後、表題化合物を得た。
【実施例1】
【0086】
((8R)−8−{メチル[(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル)酢酸(異性体A)および((8R)−8−{メチル[(2S)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル]−アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸(異性体B)
【化17】

ステップ1:((8R)−8−(メチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)−酢酸メチル
中間体I−1(3.70g、8.58mmol)のMeOH(110mL)中の脱気した溶液に、マグネシウムリボン(2.08g、86.0mmol)を加えた。マグネシウムが完全に消費されるまで、混合物を50℃に加熱した。反応物を室温まで冷却し、過剰のDCMおよび酢酸メチルを加えた。混合物を蒸発させた後、DCMおよび酢酸メチルを加えた。混合物を濾過し、濾液を蒸発させた。残留物をDCM中に溶解させ、コンビフラッシュ(DCMからDCM中30%MeOH)によって精製して、1.9gの表題化合物を得た。
【0087】
ステップ2:{(8R)−8−[[(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸メチル(異性体A)および{(8R)−8−[[(2S)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸メチル(異性体B)
2−(4−フルオロフェニル)プロパン酸(0.10g、0.62mmol)、HATU(0.24g、0.62mmol)、およびN,N−ジイソプロピエチルアミン(N,N−diisopropyethylamine)のDMF(1mL)溶液に、((8R)−8−(メチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル]−酢酸メチル(0.11g、0.42mmol)を加えた。室温で16時間後、塩化アンモニウム水溶液を加えた後、イソプロピルアセテートで水相を抽出した。有機相をブラインで抽出し、MgSOで脱水し、減圧下で蒸発させた。その残留物をコンビフラッシュ(ヘキサンから酢酸エチル)によって精製して、0.16gの物質を得た。このジアステレオマー混合物を、キラルHPLC(キラルパック(Chiralpak)AD 50×500mm、ヘキサン中MeOH40%/EtOH40%/EtN0.25%)によって分離した。早く溶出する異性体Aのメチルエステル(0.067g)は、((8R)−8−{メチル(2R)−2−(4−フェニル)プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチルに対応し、遅く溶出する異性体Bのメチルエステルは、((8R)−8−{メチル[(2S)−2−(4−フェニル)−プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸メチル(0.067g)に対応する。
【0088】
ステップ3:{(8R)−8−[[(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸(異性体A)および{(8R)−8−[[(2S)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸(異性体B)
{(8R)−8−[[(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸メチル(0.067g、0.16mmol)のTHF(3mL)およびMeOH(1.5mL)中の溶液に、2MのNaOH(1.6mL)を加えた。室温で1時間後、1MのHClを反応混合物に加え、続いてDCMを加えた。相分離器で有機相を回収して、0.045gの異性体Aを得た。m/z410(M+H)。同じ手順を使用して、異性体Bを{(8R)−8−[[(2S)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸メチルから調製した。あるいは、エステルを加水分解するために、CHCN中のLiOHも使用した。m/z410。
【0089】
あるいは、異性体AおよびBのメチルエステルは、それぞれ(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロポン酸および(2S)−2−(4−フルオロフェニル)プロポン酸を使用して(両方の酸の合成に関してJ.Med.Chem,2007,3870参照)以下のように調製することができる:
(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロパン酸(1.96g、11.7mmol)のDMF(96mL)溶液に、HATU(6.68g、17.5mmol)を加えた。得られた混合物に0℃において、2,6−ルチジン(1.29g、12.9mmol)を加えた。0℃で15分後、[(8R)−8−(メチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル]酢酸メチル(3.20g、11.7mmol)および2,6−ルチジン(2.48g、23.2mmol)のDMF中の溶液(30mL)を上記混合物に加えた。0℃で30分後、反応物を室温まで温めた。次に水および酢酸エチルを加えることによって反応をクエンチした。有機相を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。得られた混合物をコンビフラッシュ(ヘキサン中40%から100%酢酸エチル)によって精製して、3.2gの異性体Aメチルエステルを得た。次にこのエステルをキラルHPLC(キラルパックAD 50×500mm、ヘキサン中MeOH40%/EtOH40%/EtN0.25%)によって精製して、異性体Aメチルエステルを>99%deで得た。
【0090】
アセトニトリル(30mL)中の異性体Aメチルエステル(3.70g、8.74mmol)に、2MのLiOH(6.55mL、13.1mmol)を加えた。反応終了後、飽和NHCl水溶液を加え、続いてDCMを加えた。有機相を分離し、水相を酢酸エチルおよび2−メチルテトラヒドロフランで抽出した。有機相を1つにまとめ、NaSOで脱水し、濾過し、減圧下で蒸発させた。異性体Aを熱酢酸エチル中に溶解させ、続いて室温のヘキサンを加えた。18時間後、得られた固体を濾過すると、2.98gの表題化合物が得られた。
【実施例2】
【0091】
{(8R)−8−[[2−(4−フルオロフェニル)−3−メチルブタノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル}酢酸
【化18】

2−(4−フルオロフェニル)−3−メチルブタン酸をカップリング反応に使用して実施例1に記載のようにして、表題化合物を調製した。ジアステレオマー混合物を、キラルHPLC(ADカラム ヘキサン中10%EtOH/10%MeOH/0.25%HCOOH)で分離した。移動の速い異性体:m/z438(M+1)。移動の遅い異性体:m/z438(M+1)
【実施例3】
【0092】
{(8R)−8−[(ジフェニルアセチル)(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸
【化19】

ジフェニル酢酸をカップリング反応に使用して実施例1に記載のようにして、表題化合物を調製した。m/z(453M+1)
【実施例4】
【0093】
{(8R)−8−[[2−(4−フルオロフェニル)−2−メチルプロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸
【化20】

2−(4−フルオロフェニル)−2−メチルプロパン酸をカップリング反応に使用して実施例1に記載のようにして、表題化合物を調製した。m/z(423M+1)
【実施例5】
【0094】
{(8R)−8−[{[4−(4−フルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸
【化21】

4−(4−フルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−カルボン酸をカップリング反応に使用して実施例1に記載のようにして、表題化合物を調製した。m/z(465M+1)
【実施例6】
【0095】
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチルシクロプロピル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸
【化22】

1−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸をカップリング反応に使用して実施例1に記載のようにして、表題化合物を調製した。m/z(449M+1)
【実施例7】
【0096】
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)シクロブチル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸
【化23】

1−(4−フルオロフェニル)シクロブタンカルボン酸をカップリング反応に使用して実施例1に記載のようにして、表題化合物を調製した。m/z(435M+1)
【実施例8】
【0097】
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)シクロペンチル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸
【化24】

1−(4−フルオロフェニル)シクロペンタンカルボン酸をカップリング反応に使用して実施例1に記載のようにして、表題化合物を調製した。m/z(449M+1)
【0098】
生物試験
1種類以上の以下の試験法を使用して、本発明の化合物をCRTH2アンタゴニストとして評価することができる。
【0099】
放射性リガンド結合試験。放射性リガンド結合試験は、室温において、10mMのHEPES/KOHpH7.4、10mMのMnClを含有する1mMのEDTA、および0.7nM [H]PGD(NEN、171Cimmol−1)中、最終体積0.2mlにおいて行った。競合リガンドをジメチルスルホキシド(MeSO)中に希釈し、最終温置体積を1%(v/v)で一定に維持した。HEK−hCRTH2細胞系から調製した8〜20μgの膜タンパク質を加えることによって反応を開始した。10μMのPGDの非存在下および存在下で、それぞれ全結合および非特異的結合を求めた。これらの条件下で、放射性リガンドの受容体への特異的結合(全結合−非特異的結合)は50分以内に平衡に達し、最長180分間安定であった。この反応を室温で60分間規定通りに行い、トムテック・マッハIII(Tomtec MachIII)半自動ハーベスター(HEK−hCRTH2用)を使用して、あらかじめ湿潤したユニフィルター(Unifilter)GF/C(パッカード(Packard))で迅速に濾過することによって反応を終了した。次にフィルターを4mlの同じ緩衝液で洗浄し、フィルターに残留した放射性リガンドを、25μアルティマ・ゴールド(Ultima Gold)F(商標)(ユニフィルター)(パッカード)中での平衡後に、液体シンチレーション計数によって測定した。実施例1から8の化合物は、25nM未満のKi(単位nM)値を有する。
【0100】
i[cAMP]測定。HEK−hCRTH2細胞を80〜90%の集密度まで増殖させた。試験を行う日に、細胞をPBSで洗浄し、細胞解離緩衝液中で2分間温置し、300gにおいて室温で5分間遠心分離することによって収穫し、20mMのHEPES pH7.4および0.75mMのIBMX(HBSS/HEPES/IBMX)を含有するハンクス(Hanks)平衡塩類溶液中に1.25e10細胞ml−1で再懸濁させた。この試験は、12500個の細胞および種々の濃度の75nlの試験化合物を含有する1ウェル当たり0.01mlのHBSS/HEPES/IBMXを使用する384プレートフォーマットで行った。37℃における試験化合物での細胞の10分間の予備温置の後、HBSS 20mMHepes中に希釈した0.005mlのフォルスコリン(Forskolin)/DK−PGDを、それぞれ最終濃度10μMおよび150nMで加えて、反応を開始させた。37℃で10分間温置した後、cAMP XS+ヒットハンター(HitHunter)ケミルミネッセンス試験(GEヘルスケア(GE Healthcare)90−0075)を使用してcAMP含有量を測定した。フォルスコリンおよびEC85 DK−PGD2対照物質を使用して%阻害を計算した。
【0101】
ヒト全血中の好酸球形状変化試験。EDTAを含有するバキュテナー(vacutainer)中に血液を採取した。アンタゴニストを血液に加え、室温で10分間温置した。次に、流水浴中37℃において、血液にDK−PGD(13,14−ジヒドロ−15−ケトプロスタグランジンD)を4分間かけて加えた。次に、75%(v/v)PBS中で調製した0.25%(v/v)の冷パラホルムアルデヒドの存在下、氷上で1分間、血液細胞を固定した。175μLの固定血液を、155mMの冷NHCl溶菌液870μL中に移し、4℃で少なくとも40分間温置した。次に、430gにおいて5分間遠心分離して、上澄みは廃棄した。遠心分離した細胞を、FACsキャリバー(Calibur)フローサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))を使用して分析した。フロージョー(FlowJo)ソクトウェアを使用して、それらの高い自己蛍光に基づいて好中球から好酸球を単離し、FSC−H値の増加とともに全好酸球の%値を求めることによって、フローサイトメトリー生データを分析した。最大(100%)および最小(0%)の形状変化を、それぞれ10μMのDK−PGDおよびPBSの存在下で測定した。各血液提供者のEC50を測定するために、試験ごとにDK−PGDの用量反応曲線を行った。化合物を、30nMのDK−PGDの存在下で10用量滴定曲線において試験して、アンタゴニストIC50を求めた。
【0102】
本発明の一部の化合物は、DP受容体よりもCRTH2受容体に対して選択的である。DP受容体およびその他のプロスタノイド受容体における試験は、国際公開第2003/06220号パンフレットに記載される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中:
、X、X、およびXの1つはNであり、その他はCHであり;
Yは、−C(R)(R)−、−C(R)(R)−C(R)(R)−、−C(R)=C(R)−、−OCH−、−OCH(C1−3アルキル)−、−OC(C1−3アルキル)−、−OC(CH2−5−、−SCH−、−SCH(C1−3アルキル)−、−SC(C1−3アルキル)−、および−SC(CH2−5−から選択され;
Cyは、アリール、ヘテロアリール、または場合によりベンゼンに縮合したC3−6シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、Rから独立してから選択される1〜4個の基で場合により置換されており;
は、H、ハロゲン、−C1−6アルキル、および−OC1−6アルキルから選択され;
は、H、ハロゲン、−C1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−SC1−6アルキル、−S(O)C1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−CN、アリール、およびヘテロアリールから選択され;
は、H、C1−6アルキル、およびフェニル部分が1〜3個のハロゲンで場合により置換されたベンジルから選択され;
およびRは独立して、H、アリール、ヘテロアリール、C1−6アルキル、またはハロC1−6アルキルであるか;または
およびRと、それらの両方が結合する炭素原子とを合わせて、C3−6シクロアルキル環を形成するか;または
およびRと、それらが結合する隣接炭素原子とを合わせて、C3−6シクロアルキル環を形成するかであり;
は、ハロゲン、NRRg、SONRRg、CN、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルコキシ、およびハロC1−6アルキルから選択され;
およびRは、水素、C1−6アルキル、−C1−6アルキル−C3−6シクロアルキル、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、Rから独立して選択される1〜3個の基で場合により置換されているアリール、およびNRRgから独立して選択され;または
、Rと、それらの両方が結合する炭素原子とを合わせて、−O−、−S−、−N(C(O)R)−、および−N(R)−から選択される環ヘテロ原子を場合により有し、1〜3個のC1−3アルキル基で場合により置換された、C3−6シクロアルキルを形成し;
およびRgは、水素およびC1−3アルキルから独立して選択される;または
、Rgと、それらが結合する原子とを合わせて、3〜6員環を形成する)
の化合物またはそれらの医薬的に許容される塩。
【請求項2】
Cyが、Rから独立して選択される1〜3個の基で場合により置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yが−C(R)(R)−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Cyが、ハロゲン、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、およびC1−6アルコキシから独立して選択される1〜2個の基で場合により置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
−NR−C(O)CR−Cy部分が結合しているキラル炭素が(R)−配置である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式Ia:
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、およびRは、請求項1に記載の定義の通りである)
の化合物またはそれらの医薬的に許容される塩である、式Iの化合物。
【請求項7】
およびRのそれぞれが水素である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式Ib:
【化3】

(式中、R、R、R、R、R、およびRは、請求項1に記載の定義の通りである)
の化合物またはそれらの医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
およびRのそれぞれが水素である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式Ic:
【化4】

(式中、R、R、R、R、R、およびRは、請求項1に記載の定義の通りである)
の化合物またはそれらの医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
およびRのそれぞれが水素である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
式Id:
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、およびRは、請求項1に記載の定義の通りである)
の化合物またはそれらの医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
およびRのそれぞれが水素である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
式Ie:
【化6】

(式中、RおよびRは、請求項1に記載の定義の通りであり;Rはハロゲンであり;R’は水素またはハロゲンであり;RおよびRは、水素およびC1−3アルキルから独立して選択されるか、またはRおよびRとそれらの両方が結合する炭素原子とを合わせて、C3−6シクロアルキルまたはテトラヒドロピラニルを形成し、それらのそれぞれは、1〜2個のC1−3アルキル基で場合により置換されている)
の化合物またはそれらの医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
およびR’がそれぞれ水素であり、Rがフッ素であり、Rがメチルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
((8R)−8−{メチル[(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル)酢酸;
((8R)−8−{メチル[(2S)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル)酢酸;
{(8R)−8−[[2−(4−フルオロフェニル)−3−メチルブタノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]−インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[(ジフェニルアセチル)(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[[2−(4−フルオロフェニル)−2−メチルプロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[{[4−(4−フルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチルシクロプロピル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)シクロブチル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸;および
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)シクロペンチル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸、
からなる群から選択される化合物、またはそれらの医薬的に許容される塩。
【請求項17】
((8R)−8−{メチル[(2R)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
((8R)−8−{メチル[(2S)−2−(4−フルオロフェニル)プロパノイル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル)酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
{(8R)−8−[[2−(4−フルオロフェニル)−3−メチルブタノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
{(8R)−8−[(ジフェニルアセチル)(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
{(8R)−8−[[2−(4−フルオロフェニル)−2−メチルプロパノイル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
{(8R)−8−[{[4−(4−フルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチルシクロプロピル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)−シクロブチル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
{(8R)−8−[{[1−(4−フルオロフェニル)シクロペンチル]カルボニル}(メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−5−イル}酢酸またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
治療有効量の請求項1の化合物と医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項27】
CRTH2媒介性疾患の治療または予防を行うための薬剤の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項28】
ロイコトリエンアンタゴニスト、5−リポオキシゲナーゼ阻害剤、およびFLAP阻害剤からなる群から選択される第2の有効成分を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
式II:
【化7】

(式中:
、X、X、およびXの1つはNであり、その他はCHであり;
Yは、−C(R)(R)−、−C(R)(R)−C(R)(R)−、−C(R)=C(R)−、−OCH−、−OCH(C1−3アルキル)−、−OC(C1−3アルキル)−、−OC(CH2−5−、−SCH−、−SCH(C1−3アルキル)−、−SC(C1−3アルキル)−、および−SC(CH2−5−から選択され;
は、H、ハロゲン、−C1−6アルキル、および−OC1−6アルキルから選択され;
は、H、ハロゲン、−C1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−SC1−6アルキル、−S(O)C1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−CN、アリール、およびヘテロアリールから選択され;
は、H、C1−6アルキル、およびフェニル部分が1〜3個のハロゲンで場合により置換されたベンジルから選択され;
およびRは独立して、H、アリール、ヘテロアリール、C1−6アルキル、またはハロC1−6アルキルであるか;または
およびRと、それらの両方が結合する炭素原子とを合わせて、C3−6シクロアルキル環を形成するか;または
およびRと、それらが結合する隣接炭素原子とを合わせて、C3−6シクロアルキル環を形成するかである)
の化合物、あるいはそれらの塩またはC1−6アルキルエステル。
【請求項30】
がNであり、X、X、およびXがそれぞれCHであり;RおよびRがそれぞれHであり;Yが−CH−である化合物である、請求項29に記載の化合物。


【公表番号】特表2012−502928(P2012−502928A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527167(P2011−527167)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001322
【国際公開番号】WO2010/031184
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(305042057)メルク カナダ インコーポレイテッド (99)
【氏名又は名称原語表記】MERCK CANADA INC.
【Fターム(参考)】