説明

CYC−682と細胞傷害性薬物とを含む増殖抑制性の組合せ

本発明の第一の態様は、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−ベータ−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物又はそれらの薬学的に許容される塩と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを含む組合せに関する。本発明の第二の態様は、治療における同時、連続的又は別個の使用のための併用製剤としての上記の組合せを含む医薬品に関する。本発明の第三の態様は、増殖性傷害を治療する方法であって、上記の組合せを同時、連続的又は別個に投与することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性障害の治療に適する薬学的組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
増殖性障害の治療におけるピリミジンヌクレオシドの治療のための使用は、当該技術において詳しく記録されている。例として、ピリミジン系列の市販の抗癌剤は、5−フルオロウラシル(非特許文献1)、テガフール(非特許文献2)、UFT(非特許文献3)、カルモフール(非特許文献4)、ドキシフルリジン(非特許文献5)、シタラビン(非特許文献6)、アンシタビン(非特許文献7)及びエノシタビン(非特許文献8)を含む。
【0003】
癌細胞内で代謝拮抗活性を示すヌクレオシド類縁体は、種々のヒト悪性腫瘍の治療において成功して用いられている。1−ベータ−D−アラビノフラノシルシトシン(Ara−C、1-beta-D-arabinofuranosylcytosine)、フルダラビン及びクラドリビンのようなヌクレオシドは、白血病の治療において重要な役割を演じるが、ゲムシタビンは多くの型の充実性腫瘍の治療において広く用いられている。これらの化合物は、内因性ヌクレオシド及びヌクレオチドと同様の様式で代謝される。活性な代謝物は、ヌクレオシド及びヌクレオチドの新規合成を妨害し、且つ/又はDNA鎖に組み込まれた後にDNA鎖の伸長を阻害して、連鎖停止剤として作用する。さらに、DNA鎖に組み込まれたヌクレオシド代謝拮抗物質は、鎖切断を誘導し、これは、結局、アポトーシスの誘発をもたらし得る。
【0004】
ヌクレオシド代謝拮抗物質は、1又は複数の特定の酵素を標的にする(非特許文献9)。標的酵素に対する阻害作用の形態は、Ara−C及びゲムシタビンのように同じヌクレオシド塩基を有するヌクレオシド代謝拮抗物質間で異なり得る。どちらのヌクレオシドもデオキシシチジンキナーゼによりリン酸化され、シチジンデアミナーゼの良好な基質でもあるが、ゲムシタビンのみが充実性腫瘍に対して抗腫瘍活性を示す。このことは、これらのヌクレオシド代謝拮抗物質の薬理学的活性には違いがあり、これが標的分子に対する作用の異なる形態を反映し得ることを示唆する。
【0005】
dCK欠損が、種々の細胞及び動物モデルにおけるAra−Cに対する耐性に関連していることが示された(非特許文献10)。Ara−Cで処置されたAML患者におけるdCK遺伝子の発現の変化又はこの酵素の活性の著しい低下も、臨床的成果と関連している。これらのデータは、dCKによるAra−Cの細胞内リン酸化が細胞モデル及び患者における細胞傷害性に必須であるという概念と一致する。芽細胞原形質膜でのhENT1の欠損も、Ara−Cに対する細胞の耐性の機構として提案されている。他の著者は、Ara−Cに対する薬剤耐性の機構がCDAのようなAra−C分解酵素の増加したレベルと関連することを示唆している。
【0006】
特許文献1(Sankyo Company Limited社)は、価値のある抗腫瘍活性を示すことが示されている1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの種々の2’−シアノ−2’−デオキシ誘導体を開示している。EP536936に開示されているある具体的な化合物は、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(以下、「CYC682」という)であり、この化合物は、現在、さらに研究されている。
【0007】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N−パルミトイルシトシンとしても知られるCYC682(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)は、ヌクレオシドCNDAC、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンの経口投与される新規な2’−デオキシシチジン代謝拮抗プロドラッグである。
【0008】
【化1】

【0009】
CYC682は、自発的DNA鎖切断作用を有し、種々の株化細胞、異種移植片及び転移癌モデルにおいて有効な抗腫瘍活性をもたらす点において、ゲムシタビンのようなその他のヌクレオシド代謝物に比較して独特な作用形態を有する(非特許文献14; 非特許文献15;非特許文献16)。
【0010】
CYC682は、充実性腫瘍における前臨床データに基づくその経口生物学的利用能並びにゲムシタビン(主要な市販のヌクレオシド類縁体)及び5−FU(広く用いられている代謝拮抗薬)に比較して向上されたその活性の点で、いくつかの研究の対象である。最近、研究者らは、CYC682が結腸癌のモデルにおいて強い抗癌活性を示したことを報告した。同じモデルにおいて、CYC682は、生存率の増加及び結腸癌転移の肝臓への広がりの阻害の点で、ゲムシタビン又は5−FUのどちらよりも優れていることが見出された(非特許文献17)。現在までに、種々の癌の患者からの第I相データは、CYC682が、用量制限毒性としての骨髄抑制とともに、ヒトにおいて耐容性がよいことを示唆する。
【0011】
薬学的活性剤が、治療計画を最適にするために、組合せでしばしば投与され得ることが、当該技術においてよく確立されている。例えば、CDK阻害剤と1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン又はその代謝物とを含む組合せ、及び増殖性障害の治療におけるそれらの使用が、特許文献2(Cyclacel Limited社)に開示されている。
【特許文献1】EP536936
【特許文献2】WO2005/053699
【非特許文献1】Duschinsky, R., et al., J. Am. Chem. Soc., 79, 4559 (1957)
【非特許文献2】Hiller, SA., et al., Dokl. Akad. Nauk USSR, 176, 332 (1967)
【非特許文献3】Fujii, S., et al., Gann, 69, 763 (1978)
【非特許文献4】Hoshi, A., et al., Gann, 67, 725 (1976)
【非特許文献5】Cook, A. F., et al., J. Med. Chem., 22, 1330 (1979)
【非特許文献6】Evance, J. S., et al., Proc. Soc. Exp. Bio. Med., 106. 350 (1961)
【非特許文献7】Hoshi, A., et al., Gann, 63, 353, (1972)
【非特許文献8】Aoshima, M., et al., Cancer Res., 36, 2726 (1976)
【非特許文献9】Galmarini et al, Nucleoside analogues and nucleobases in cancer treatment. Lancet Oncol. 2002 Jul;3(7):415-24; Review
【非特許文献10】Galmarini et al, In vivo mechanisms of resistance to cytarabine in acute myeloid leukaemia, Br J Haematol. 2002 Jun;117(4):860-8
【非特許文献11】Hanaoka, K., et al, Int. J. Cancer, 1999:82:226-236
【非特許文献12】Donehower R, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2000: abstract 764
【非特許文献13】Burch, PA, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2001: abstract 364
【非特許文献14】Hanaoka et al, 1999
【非特許文献15】Kaneko et al, 1997
【非特許文献16】Wu et al, 2003
【非特許文献17】Wu M, et al, Cancer Research, 2003:63:2477-2482
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、増殖性障害、特に癌の治療に特に適する既知の薬学的作用物質の新規な組合せを提供することに努める。より具体的には、本発明は、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物を、従来の細胞傷害性薬物とともに含む組合せに関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様は、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物又はそれらの薬学的に許容される塩と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを含む組合せに関する。
【0014】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン、及び上記の細胞傷害性薬物は、個別の治療薬として当該技術においてよく確立されているが、本発明で請求される特定の組合せが癌の治療に特に有効であることは示唆されていなかった。
【0015】
第二の態様は、本発明による組合せと、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0016】
第三の態様は、増殖性障害の治療用の医薬の製造における本発明による組合せの使用に関する。
【0017】
第四の態様は、治療における同時、連続的又は別個の使用のための併用製剤としての、(i)2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩と、(ii)(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを含む医薬品に関する。
【0018】
第五の態様は、増殖性障害を治療する方法であって、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを、同時、連続的又は別個に投与することを含む方法に関する。
【0019】
第六の態様は、増殖性障害の治療用の医薬の製造における、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩の使用であって、前記治療が、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物を、同時、連続的又は別個に対象に投与することを含む使用に関する。
【0020】
第七の態様は、増殖性障害の治療用の医薬の製造における、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物の使用であって、前記治療が、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩を、同時、連続的又は別個に対象に投与することを含む使用に関する。
【0021】
第八の態様は、増殖性障害の治療用の医薬の製造における、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物との使用に関する。
【0022】
第九の態様は、増殖性障害の治療用の医薬の製造における、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物の使用であって、前記医薬が、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩との併用療法用である使用に関する。
【0023】
第十の態様は、増殖性障害の治療用の医薬の製造における、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩の使用であって、前記医薬が、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物との併用療法用である使用に関する。
【0024】
本発明の第十一の態様は、増殖性障害の治療用の医薬の製造における、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩の使用であって、前記医薬が、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物との前処置療法用である使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に記載する好ましい実施形態は、本発明の上記の全ての態様に適用可能である。
【0026】
本発明のある好ましい実施形態は、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン(CYC682)又はその代謝物と、ゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びドキソルビシンから選択される細胞傷害性薬物とを含む組合せに関する。
【0027】
本発明の別の態様は、CYC682又はその代謝物と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを含む医薬組成物に関する。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態は、CYC682又はその代謝物と、ゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びドキソルビシンから選択される細胞傷害性薬物とを含む医薬組成物に関する。
【0029】
ある好ましい実施形態において、代謝物は、「CNDAC」としても知られる1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンである。
【0030】
別の態様は、本発明の組合せを含む増殖性障害の治療用の医薬品に関し、ここで、該障害は好ましくは癌である。
【0031】
本発明のさらなる態様は、治療における同時、連続的又は別個の使用のための併用製剤としての、CYC682又はその代謝物と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを含む医薬品に関する。
【0032】
本発明のある実施形態は、治療における同時、連続的又は別個の使用のための併用製剤としての、CYC682又はその代謝物と、ゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びドキソルビシンから選択される細胞傷害性薬物とを含む医薬品に関する。
【0033】
さらに別の態様は、増殖性障害を治療する方法に関し、該方法は、本発明の組合せを同時、連続的又は別個に投与することを含む。
【0034】
本明細書で用いる場合、「同時」とは、2つの作用物質が同時に投与されることを意味するために用いられるが、用語「組合せで」は、それらが、同時でなければ同じ時間枠内で治療的に作用し得るような時間枠で「連続的に」投与されることを意味するために用いられる。つまり、「連続的な」投与は、一方の作用物質が、これらがともに治療量で同時に存在するという条件で、他方の後に5分、10分又は数時間以内に投与されることを許容する。成分の投与間の時間の遅れは、成分の実際の性質、それらの間の相互作用、及びそれらのそれぞれの半減期に応じて変動する。
【0035】
「組合せで」又は「連続的に」とは対照的に、「別個に」は、本明細書で用いる場合、一方の作用物質と他方とを投与する間隔が著しい、すなわち最初に投与される作用物質は、第二の作用物質が投与されるときには治療有効量で血流中にもはや存在し得ないことを意味する。
【0036】
ある好ましい実施形態において、医薬品は、CYC682又はその代謝物の前に、細胞傷害性薬物を連続的又は別個に投与することを含む。
【0037】
別の好ましい実施形態において、医薬品は、細胞傷害性薬物の前に、CYC682又はその代謝物を連続的又は別個に投与することを含む。
【0038】
ある好ましい実施形態において、CYC682(又はその代謝物)は、細胞傷害性薬物の少なくとも1時間、又は少なくとも4時間、又は少なくとも8時間、12時間、24時間若しくは48時間前に投与される。
【0039】
別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物は、CYC682(又はその代謝物)の少なくとも1時間、又は少なくとも4時間、又は少なくとも8時間、12時間、24時間若しくは48時間前に投与される。
【0040】
別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物とCYC682(又はその代謝物)とは、同時に投与される。
【0041】
ある非常に好ましい実施形態において、CYC682(又はその代謝物)と細胞傷害性薬物とは、図2に示す計画に従って投与され、すなわち、CYC682を48時間投与し、その後細胞傷害性薬物を24時間投与するか、又は細胞傷害性薬物を24時間投与し、その後CYC682を48時間投与するか、又は細胞傷害性薬物とCYC682とを同時に24、48又は72時間投与する。投与計画は、好ましくは各処置サイクルの間に処置のない期間を有して、所望により反復可能である。
【0042】
好ましい実施形態において、CYC682又はその代謝物及び細胞傷害性薬物は、個別の成分について治療有効量でそれぞれ投与される。
【0043】
別の好ましい実施形態において、CYC682又はその代謝物及び細胞傷害性薬物は、個別の成分について治療量未満でそれぞれ投与される。
【0044】
用語「治療量未満」は、CYC682単独又は細胞傷害性薬物単独での治療について、治療効果を生み出すために典型的に必要とされるよりも低い量を意味する。
【0045】
さらなる態様は、本発明の組合せの、増殖性障害の治療用の医薬の製造における使用に関する。
【0046】
本明細書で用いる場合、語句「医薬の製造」は、1若しくは複数の上記の成分の医薬としての直接の使用、又はこのような医薬の製造の任意の段階における使用を含む。
【0047】
本発明の別の態様は、CYC682又はその代謝物の、増殖性障害の治療用の医薬の製造における使用に関し、該治療は、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物を、同時、連続的又は別個に対象に投与することを含む。
【0048】
ある特に好ましい実施形態は、CYC682又はその代謝物の、増殖性障害の治療用の医薬の製造における使用に関し、該治療は、ゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びドキソルビシンから選択される細胞傷害性薬物を、同時、連続的又は別個に対象に投与することを含む。
【0049】
別の態様は、増殖性障害の治療用の医薬の製造における、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物の使用に関し、該医薬は、CYC682又はその代謝物との併用療法用である。ある好ましい実施形態において、療法は前処置療法であり得る。
【0050】
ある特に好ましい実施形態は、ゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びドキソルビシンから選択される細胞傷害性薬物の、増殖性障害の治療用の医薬の製造における使用に関し、該医薬は、CYC682又はその代謝物との併用療法用である。ある好ましい実施形態において、療法は前処置療法であり得る。
【0051】
別の態様は、CYC682又はその代謝物の、増殖性障害の治療用の医薬の製造における使用に関し、該医薬は、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物との併用療法用である。ある好ましい実施形態において、療法は前処置療法であり得る。
【0052】
ある特に好ましい実施形態は、CYC682又はその代謝物の、増殖性障害の治療用の医薬の製造における使用に関し、該医薬は、ゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びドキソルビシンから選択される細胞傷害性薬物との併用療法用である。ここでまた、ある非常に好ましい実施形態において、療法は前処置療法であり得る。
【0053】
本明細書で用いる場合、用語「併用療法」は、細胞傷害性薬物とCYC682(又はその代謝物)とが、同時でなければ、それらが同じ時間枠内で治療的に働くようにともに利用可能になるような時間枠内で連続的に投与される療法のことである。
【0054】
本明細書で用いる場合、用語「前処置療法」又は「前処置された」は、第1の作用物質が、別個又は連続的のいずれかで、第2の作用物質の前に投与される計画を意味する。好ましくは、第2の作用物質は、第1の作用物質の投与の少なくとも2時間後に投与される。より好ましくは、第2の作用物質は、第1の作用物質の投与の少なくとも4時間後、より好ましくは少なくとも6又は8時間後に投与される。さらにより好ましくは、第2の作用物質は、第1の作用物質の投与の少なくとも12時間後、より好ましくは少なくとも18又は24時間後に投与される。
【0055】
好ましくは、CYC682又はその代謝物と細胞傷害性薬物とは、相乗相互作用する。本明細書で用いる場合、用語「相乗的」は、CYC682と細胞傷害性薬物とが、組合せで用いた場合に、2つの成分の個別の効果を加えることから予測されるよりも大きい効果を生み出すことを意味する。有利には、相乗的相互作用は、患者に各成分をより少ない用量で投与し、それにより、同じ治療効果を奏し及び/又は維持しながら化学療法の毒性を低減させることを可能にし得る。つまり、特に好ましい実施形態において、各成分は治療量未満で投与され得る。
【0056】
別の好ましい実施形態において、CYC682又はその代謝物と細胞傷害性薬物とは、単一療法での個別の成分の使用に関連するか又は既知の組合せにおけるそれらの使用に関連する有害副作用を緩和又は排除するような様式で相互作用する。
【0057】
本発明のある好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物は、アントラサイクリンである。このクラスの化合物は、ダウノルビシン(セルビジン(Cerubidine))、ドキソルビシン(アドリアマイシン(Adriamycin)、ルベックス(Rubex))、エピルビシン(エレンス(Ellence)、ファーモルビシン(Pharmorubicin))、及びイダルビシン(イダマイシン(Idamycin))を含む。
【0058】
アントラサイクリン抗生物質は、1939年に微生物から最初に単離され、それらの抗生特性は1950年代に研究された。これらの抗生物質は、細菌をかなり迅速に死滅させるが、ヒトでの感染を治療するには毒性が強すぎた。アントラサイクリン抗生物質の抗腫瘍特性が試験され、癌細胞に対して活性であることが見出されたのは、1960年代になってからであった。
【0059】
アントラサイクリン類は、全て、DNAに結合し、それらの細胞毒性は、この結合に大きく起因する。より具体的には、これらは二本鎖DNAに結合する。アントラサイクリン類で処置したヒト染色体調製物において、結合した薬物は、明確に区別されたオレンジ−赤色の蛍光のバンドとして観察される。DNAとのこの相互作用が、インターカレーションによるものであり、いくつかの方法によりそうであると同定されている。アントラサイクリン類の構造を、DNAへの結合を変更するように改変すると、抗腫瘍活性が通常、低下又は喪失する。つまり、DNA結合が、これらの薬物の抗癌活性に必須であるようである。しかし、細胞傷害性に導く経路は、明確には明らかにされていない。DNA及びRNA合成の阻害は、これが薬物の高濃度でしか発生しないことから、細胞傷害性に必須であるとは考えられていない。
【0060】
アントラサイクリン類は、いくつかの重要な効果を有し、その任意の1つ又は全ては、これらの薬物の細胞傷害性作用において役割を有する。まず、これらはDNAにインターカレートすることにより、DNA及びRNA合成を含むDNAの多くの機能に影響を与え得る。DNA鎖の切断も発生し得る。これは、酵素DNAトポイソメラーゼII又はフリーラジカルの形成のいずれかにより媒介されると考えられている。酵素トポイソメラーゼIIの阻害は、例えば、DNAの二本鎖切断を導く一連の反応を導き得る。
【0061】
一時的な二本鎖切断は、トポイソメラーゼIIにより、その正常な触媒サイクルの経過において、切断複合体の形成により誘発される。永久的な二本鎖切断をもたらすこの複合体の破壊は、薬物の非存在下ではまれにしか発生しない。トポイソメラーゼIIの阻害剤は、切断複合体を持続させ、それにより切断複合体が不可逆的な二本鎖切断に変換される可能性を増加させる。
【0062】
アントラサイクリン類も、活性酸素種の形成を引き起こすことができ、これが次いで一本鎖切断を主に引き起こす。アントラサイクリン発色団はヒドロキシキノンを含有し、これはよく知られた鉄キレート形成構造である。薬物−Fe−DNA複合体は、グルタチオンから酸素への電子の移動を触媒し、活性酸素種の形成をもたらす。
【0063】
本発明のある非常に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はドキソルビシンである。ドキソルビシンは、化合物(8S−シス)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−アルファ−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン、又は(8S,10S)−10−(4−アミノ−5−ヒドロキシ−6−メチル−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(2−ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−7,8,9,10−テトラヒドロテトラセン−5,12−ジオンである。
【0064】
好ましくは、細胞傷害性薬物がドキソルビシンである場合、細胞傷害性薬物とCYC682(又はその代謝物)は、別個に又は連続的に、より好ましくは連続的に投与される。
【0065】
ある特に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がドキソルビシンである場合、CYC682(又はその代謝物)は、細胞傷害性薬物の前に投与され、すなわち、好ましくは、対象はCYC682で前処置される。
【0066】
別の特に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がドキソルビシンである場合、ドキソルビシンは、CYC682(又はその代謝物)の前に投与され、すなわち、好ましくは、対象はドキソルビシンで前処置される。
【0067】
ある好ましい実施形態において、本発明の組合せは、CNDAC(CYC682の代謝物として)と、細胞傷害性薬物としてのドキソルビシンとを含む。好ましくは、この実施形態について、ドキソルビシンは、CNDACの前に又はCNDACと同時に投与される。
【0068】
本発明の別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物は、シスプラチン、カルボプラチン又はオキサリプラチンのような白金抗腫瘍薬である。
【0069】
ある非常に好ましい実施形態において、白金抗腫瘍薬はオキサリプラチンである。
【0070】
オキサリプラチンは、オキサレート及びジアミノシクロヘキサン(DACH、diaminocyclohexane)と錯体形成した白金原子を含有する細胞傷害性薬物である。嵩高いDACHが、シスプラチン及びカルボプラチンよりも大きい細胞傷害性に貢献すると考えられている(Wiseman LR, Adkins JC, Plosker GL, et al. Oxaliplatin: a review of its use in the management of metastatic colorectal cancer. Drugs Aging 1999;14(6):459-75)。オキサリプラチンの作用は、細胞周期相に特異的でないことが知られているが、その正確な機構は知られていない。オキサリプラチンは、おそらくDNA分子の鎖間及び鎖内架橋を形成することによりDNA合成を阻害すると考えられている反応性白金錯体を形成する。オキサリプラチンは、DACH基及びDNAミスマッチ修復への耐性のために、シスプラチン又はカルボプラチンに対して、通常、交差耐性ではない(Wiseman LR et al, ibid; Misset JL, Bleiberg H, Sutherland W, et al, Oxaliplatin Clinical Activity: A Review; Critical Reviews in Oncology-Hematology 2000;35(2):75-93)。臨床前研究により、オキサリプラチンがフルオロウラシル及びイリノテカンの活性代謝物であるSN−38と相乗作用を有することが示されている(Cvitkovic E, Bekradda M. Oxaliplatin: A New Therapeutic Option in Colorectal Cancer; Semin Oncol 1999;26(6):647-62)。オキサリプラチンは、放射線増感剤でもある(Freyer G, Bossard N, Romestaing P, et al, Oxaliplatin (OXA), 5-fluorouracil (5FU), L-folinic acid (FA) and concomitant irradiation in patients with rectal cancer: A phase 1 study; Proc Am Soc Clin Oncol 2000; 19 :260a; Carraro S, Roca E, Cartelli C, et al, Oxaliplatin (OXA), 5-fluorouracil (5-Fu) and leucovorin (LV) plus radiotherapy in unresectable rectal cancer (URC): Preliminary results; Proc Am Soc Clin Oncol 2000;19:291a)。
【0071】
オキサリプラチンは、原発腫瘍の完全切除後の第III期(デュークのC期)結腸癌の合併治療、及び転移性結腸直腸癌の治療における5−フルオロウラシル(5−FU、5-fluorouracil)及びホリニン酸(FA、folinic acid)との併用における使用が承認されている。
【0072】
好ましくは、細胞傷害性薬物がオキサリプラチンである場合、細胞傷害性薬物及びCYC682(又はその代謝物)は、別個又は連続的に、より好ましくは連続的に投与される。
【0073】
ある特に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がオキサリプラチンである場合、CYC682(又はその代謝物)は、細胞傷害性薬物の前に投与され、すなわち、好ましくは、対象はCYC682で前処置される。
【0074】
別の特に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がオキサリプラチンである場合、細胞傷害性薬物は、CYC682(又はその代謝物)の前に投与され、すなわち、好ましくは、対象はオキサリプラチンで前処置される。
【0075】
別の特に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はシスプラチンである。
【0076】
一般的にはシスプラチン又はシス−DDPと呼ばれる化合物シス−ジアミンジクロロ白金(II)は、特に精巣癌の治療において、病院で広く用いられる既知の抗癌剤である。分子構造は比較的単純であり、中央の白金原子の周囲に正方晶系(正方形)の平面構造を形成する、シス位に配置された2つの塩素配位子と2つのNH配位子とからなる。シスプラチンは、電気的中性の4配位白金錯体として存在する。しかし、2水和(活性)の形がDNAへの結合を促進することが、研究により示されている。
【0077】
シスプラチンは、通常、滅菌塩水溶液として血流中に静脈内投与される。血流中の高い塩素濃度のために、薬物はその中性の形で無傷のままである。そして、これが拡散により細胞内に入ると、ここで細胞内のより低い塩素濃度の結果として加水分解を受ける。加水分解により、中性の分子は、両方の塩素配位子が水分子に置換された活性加水分解錯体に変換されて、正電荷種を発生する。活性形は、DNA塩基対との求核置換を受け得る二官能性求電子物質である。
【0078】
シスプラチンは、二官能性アルキル化剤のものと同様の生化学的特性を有し、DNA内で鎖間、鎖内及び単官能性付加物架橋を生じる。最も一般的な形は、1,2−鎖間架橋である。この付加物において、白金は近接したプリン塩基のN7位に共有結合する。その結果、DNAは巻き戻され、主溝に向かって曲がる。他の白金−DNA付加物は、単官能性及び1,3−及びより長い範囲の鎖内、鎖間並びにタンパク質−DNAの架橋を含む。
【0079】
グアニンはシトシンと3つの水素結合部位を提供することにより、アデニンとチミンとの間に発生し得る2つの水素結合に比較してより大きい安定性を導くので、ほとんどの付加物がグアニン残基を含むことが研究により示されている。シスプラチン−DNA付加物の形成が、DNA構造をひずませ、これが次に複製及び転写の破壊を導く。さらに、シスプラチン−DNA付加物の形成は、細胞がそれら自体を修復する能力を、タンパク質修復を遮断若しくは遅延させることによるか、又はヌクレオチド除去修復(NER、nucleotide excision repair)タンパク質、特にXPAの機能を負に変更することのいずれかにより破壊する。
【0080】
シスプラチンは、転移性の非セミノーム性胚細胞癌、進行期及び不応性卵巣癌、肺癌、子宮頸癌、進行期及び不応性膀胱癌、並びに頭頚部の扁平上皮癌の治療における使用について承認されている。シスプラチンは、転移性精巣癌の治療のために別の抗腫瘍薬との組合せでも用いられる。シスプラチン、ビンブラスチン及びブレオマイシンの組合せは、非常に有効であると報告されている。
【0081】
ある好ましい実施形態において、組合せは、CNDAC(CYC682の代謝物として)とシスプラチンとを含む。好ましくは、この実施形態について、シスプラチンは、CNDACと同時に又はCNDACの前に投与される。より好ましくは、シスプラチンは、CNDACの前に投与される。
【0082】
ある好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物は、タキサンである。タキサンは、タキサス属(Taxus)(イチイ)の植物に由来するアルカロイドの種類である。タキサン種の基本的な機構は、微小管機能の阻害であり、これが次に細胞分裂を阻害する。タキサン系統群のメンバーは、ドセタキセル及びタキソールを含む。
【0083】
ある好ましい実施形態において、本発明の組合せは、CNDAC(CYC682の代謝物として)と細胞傷害性薬物としてのシスプラチンとを含む。好ましくは、この実施形態について、シスプラチンは、CNDACの前に又はCNDACと同時に投与される。
【0084】
本発明のある非常に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はドセタキセルである。
【0085】
ドセタキセルは、セイヨウイチイの樹木(タキサス・バッカータ(Taxus baccata))の再生可能な針状葉からの半合成により調製されるタキサン系統群の抗癌剤である。ドセタキセルは、病院で広く用いられて、局所進行又は転移性の乳癌、局所進行又は転移性の非小細胞肺癌、及びホルモン不応性前立腺癌を含むいくつかの癌を治療する。作用の機構は、細胞分裂において必須の役割を演じる微小管網の破壊に基づく。より最近の研究は、非小細胞肺癌単独の1次治療、又は頭頚部癌、乳癌、胃癌、前立腺癌及び卵巣癌の組合せでのドセタキセルの使用に焦点を当てている。
【0086】
好ましくは、細胞傷害性薬物がドセタキセルである場合、細胞傷害性薬物とCYC682(又はその代謝物)は、別個に又は連続的に、より好ましくは連続的に投与される。
【0087】
ある特に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がドセタキセルである場合、細胞傷害性薬物は、CYC682(又はその代謝物)の前に投与され、すなわち、好ましくは、対象はドセタキセルで前処置される。
【0088】
別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はビンカアルカロイドである。
【0089】
ビンカアルカロイドは、ツルニチニチソウ植物であるカタランサス・ロゼウス(Catharanthus roseus)(ビンカ・ロゼア(Vinca rosea)、ロクネラ・ロゼア(Lochnera rosea)及びアンモカリス・ロゼア(Ammocallis rosea)とも呼ばれる)由来のインドール−インドリン二量体の群である。これらは、チューブリンの微小管への重合を阻害することにより、紡錘体の形成を遮断し、中期で細胞を停止させることが知られている。ビンカアルカロイドは、ビンブラスチン、ビンカミン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビンポセチンを含む。
【0090】
ある非常に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はビノレルビンである。
【0091】
ビノレルビンは、第3又は4期の非小細胞肺癌の1次治療のため、及びアントラサイクリンを含む計画の後に再発したか又はアントラサイクリンを含む計画に不応性の進行性乳癌第3若しくは4期の治療における単一剤又は組合せとして使用が認可されている。
【0092】
ある好ましい実施形態において、本発明の組合せは、CNDAC(CYC682の代謝物として)と細胞傷害性薬物としてのビノレルビンとを含む。この実施形態について、ビノレルビンは、CNDACの前、又は同時に、又は後に投与してよい。
【0093】
本発明のある非常に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はシトシン類縁体である。
【0094】
シトシンは、RNA及びDNAに存在するピリミジンに由来する窒素含有塩基である。より具体的には、シトシンは、以下に示す構造を有する4−アミノピリミジン−2(1H)−オンとして知られる化合物である。
【0095】
【化2】

【0096】
本明細書において用いる場合、用語「シトシン類縁体」は、化学修飾されたシトシンのことである。このような化学修飾の例は、ハロ基、アルキル基、糖若しくはその誘導体、アシル基又はアミノ基による水素の置換である。好ましくは、シトシンは、1位の窒素の糖又はその誘導体での置換により化学修飾される。
【0097】
したがって、本発明の関係において、好ましいシトシン類縁体は、限定されないが、ゲムシタビン及びシタラビン(又はAra−C、シトシンアラビノシド、4−アミノ−1−[(2R,3S,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]ピリミジン−2−オン)を含む。
【0098】
【化3】


ゲムシタビン シタラビン
【0099】
本発明のある非常に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はゲムシタビンである。ゲムシタビン、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンは、特に卵巣癌、膵臓癌及び肺癌に対する抗腫瘍活性を示すヌクレオシド類縁体である。
【0100】
ゲムシタビンは、細胞周期特異性を示し、DNA合成を受ける細胞(S期)を主に死滅させ、且つG1/S期の境界を通る細胞の進行を遮断する。ゲムシタビンは、ヌクレオシドキナーゼにより、活性ジホスフェート(dFdCDP)ヌクレオシド及びトリホスフェート(dFdCTP)ヌクレオシドに細胞内で代謝される。ゲムシタビンの細胞傷害性効果は、ジホスフェートヌクレオシド及びトリホスフェートヌクレオシドの組み合わされた作用の結果としてのDNA合成の阻害に帰することが可能である。より具体的には、ゲムシタビンジホスフェートは、DNA合成のためのデオキシヌクレオシドトリホスフェートを生じる反応の触媒を担うリボヌクレオチドレダクターゼを阻害する。ジホスフェートヌクレオシドによるこの酵素の阻害は、例えばdCTPのようなデオキシヌクレオチド濃度の低下の原因となる。さらに、ゲムシタビントリホスフェートは、DNAへの取り込みについてdCTPと競合する。dCTPの細胞内濃度のその後の低下は、DNAへのゲムシタビントリホスフェートの取り込みを増進させる(自己強化)。ゲムシタビンヌクレオチドがDNAに一旦取り込まれると、成長するDNA鎖にさらに1つのヌクレオチドしか付加できず、その後、さらなるDNA合成の阻害はない。DNAポリメラーゼは、ゲムシタビンヌクレオチドを除去して、成長するDNA鎖を修復できない(マスクされた連鎖停止)。CEM Tリンパ芽球細胞において、ゲムシタビンは、プログラムされた細胞死の特徴であるヌクレオソーム間DNA断片化を誘発する。
【0101】
ある特に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はゲムシタビンであり、細胞傷害性薬物及びCYC682は同時に投与される。
【0102】
別の特に好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物はゲムシタビンであり、細胞傷害性薬物及びCYC682は、別個又は連続的に、より好ましくは連続的に投与される。より好ましくは、CYC682はゲムシタビンの前に投与され、すなわち、好ましくは、対象はCYC682で前処置される。
【0103】
ある好ましい実施形態において、本発明の組合せは、CNDAC(CYC682の代謝物として)と、細胞傷害性薬物としてのゲムシタビンとを含む。好ましくは、この実施形態について、ゲムシタビンはCNDACと同時に投与される。
【0104】
増殖性障害
用語「増殖性障害」は、本明細書において、細胞周期の制御を必要とする任意の障害、例えば再狭窄及び心筋症のような心血管障害、糸球体腎炎及び関節リウマチのような自己免疫障害、乾癬のような皮膚障害、マラリアのような抗炎症性、抗真菌、抗寄生虫障害、気腫並びに脱毛症を含む広い意味で用いられる。これらの疾患において、本発明の化合物は、所望により望ましい細胞内でアポトーシスを誘導するか又は静止を維持し得る。
【0105】
上記の全ての態様及び実施形態において、好ましくは、増殖性障害は癌、より好ましくは結腸癌である。
【0106】
別の好ましい実施形態において、癌は、肺癌、より好ましくは非小細胞肺癌である。
【0107】
ある好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がゲムシタビンである場合、増殖性障害は、肺癌、乳癌、膀胱癌又は膵臓癌である。
【0108】
別の実施形態において、細胞傷害性薬物がオキサリプラチンである場合、増殖性障害は、結腸直腸癌である。
【0109】
さらに別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がドキソルビシンである場合、増殖性障害は、乳癌、前立腺癌又は血液の癌である。
【0110】
さらに別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がドセタキセルである場合、増殖性障害は、乳癌、肺癌又は前立腺癌である。
【0111】
さらに別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がシスプラチンである場合、増殖性障害は、卵巣癌、肺癌、子宮頸癌、精巣癌、膀胱癌又は頭頚部の扁平上皮癌である。
【0112】
さらに別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物がビノレルビンである場合、増殖性障害は、乳癌又は肺癌である。より好ましくは、増殖性障害は非小細胞肺癌である。
【0113】
医薬組成物
特に好ましい実施形態において、本発明の医薬品は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物の形である。
【0114】
本発明の化合物(それらの薬学的に許容される塩、エステル及び薬学的に許容される溶媒和物を含む)は単独で投与され得るが、これらは、通常、特にヒトの治療のために、薬学的な担体、賦形剤又は希釈剤と混合して投与される。医薬組成物は、ヒト及び動物用の医薬におけるヒト又は動物用であってよい。
【0115】
本明細書に記載される医薬組成物の種々の異なる形のための適切な賦形剤の例は、“Handbook of Pharmaceutical Excipients", 2nd "Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見出し得る。
【0116】
治療用の許容される担体又は希釈剤は、製薬技術において公知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。
【0117】
適切な担体の例は、乳糖、デンプン、ブドウ糖、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどを含む。適切な希釈剤の例は、エタノール、グリセロール及び水を含む。
【0118】
薬学的な担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準的な薬学のプラクティスに関して選択され得る。医薬組成物は、担体、賦形剤若しくは希釈剤として、又はこれらに加えて、任意の適切な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、被覆剤、可溶化剤を含み得る。
【0119】
適切な結合剤の例は、デンプン、ゼラチン、ブドウ糖、無水乳糖、流動性乳糖、ベータ−乳糖、トウモロコシ製甘味料のような天然の糖、アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウムのような天然及び合成のガム、カルボキシメチルセルロース並びにポリエチレングリコールを含む。
【0120】
適切な滑沢剤の例は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。
【0121】
防腐剤、安定化剤、着色料及び香料でさえも、医薬組成物に加えてよい。防腐剤の例は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。抗酸化剤及び懸濁化剤も用いてよい。
【0122】
塩/エステル
本発明の作用物質は、塩又はエステル、特に薬学的に許容される塩又はエステルとして存在し得る。
【0123】
本発明の作用物質の薬学的に許容される塩は、その適切な酸付加塩又は塩基性塩を含む。適切な薬学的な塩の総説は、Berge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19 (1977)に見出し得る。塩は、例えば、鉱酸、例えば硫酸、リン酸又はハロゲン化水素酸のような無機強酸;酢酸のような非置換又は置換(例えばハロゲンにより)の炭素原子数1〜4のアルカンカルボン酸のような有機強カルボン酸;例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸若しくはテトラフタル酸のような飽和又は不飽和のジカルボン酸;例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸のようなヒドロキシカルボン酸;例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸のようなアミノ酸;安息香酸;或いはメタンスルホン酸若しくはp−トルエンスルホン酸のような非置換又は置換(例えばハロゲンにより)の(C1−C4)−アルキル又はアリール−スルホン酸のような有機スルホン酸と形成される。
【0124】
エステルは、エステル化される官能基に応じて、有機酸又はアルコール/水酸化物のいずれかを用いて形成される。有機酸は、カルボン酸、例えば、酢酸のような非置換又は置換(例えばハロゲンにより)の炭素原子数1〜12のアルカンカルボン酸;例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸若しくはテトラフタル酸のような飽和又は不飽和のジカルボン酸;例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸のようなヒドロキシカルボン酸;例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸のようなアミノ酸;安息香酸;或いはメタンスルホン酸若しくはp−トルエンスルホン酸のような非置換又は置換(例えばハロゲンにより)の(C1−C4)−アルキル又はアリール−スルホン酸のような有機スルホン酸を含む。適切な水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムのような無機水酸化物を含む。アルコールは、非置換又は置換(例えばハロゲンにより)されていてよい炭素原子数1〜12のアルカンアルコールを含む。
【0125】
鏡像異性体/互変異性体
本発明は、適切であれば、上記の作用物質の全ての鏡像異性体及び互変異性体も含む。当業者は、光学的特性(1又は複数のキラル炭素原子)又は互変異性の特徴を有する化合物を認識するだろう。対応する鏡像異性体及び/又は互変異性体は、当該技術において知られる方法により単離/調製してよい。
【0126】
立体異性体及び幾何異性体
本発明の作用物質のいくつかは、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在してよい。例えば、これらは、1又は複数の非対称中心及び/又は幾何中心を有してよく、よって、2以上の立体異性及び/又は幾何異性の形で存在してよい。本発明は、これらの阻害物質の全ての個別の立体異性体及び幾何異性体並びにそれらの混合物の使用を意図する。請求項で用いる用語は、これらの形を包含するが、但し、これらの形が適切な機能的活性を保持する(同程度を必要としないが)ことを条件とする。
【0127】
本発明は、上記の作用物質又はそれらの薬学的に許容される塩の全ての適切な同位体変形も含む。本発明の作用物質又はそれらの薬学的に許容される塩の同位体変形は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号を有するが、天然で通常見出される原子質量と異なる原子質量を有する原子で置き換えられているものと定義される。作用物質及びその薬学的に許容される塩に取り込まれ得る同位体の例は、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clのような水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体を含む。作用物質及びそれらの薬学的に許容される塩のある同位体変形、例えば3H又は14Cのような放射活性同位体が取り込まれたものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究に有用である。トリチウム化された、すなわち3H及びカーボン14、すなわち14C同位体は、それらの調製及び検出が容易であるために特に好ましい。さらに、重水素、すなわち2Hのような同位体での置換は、より大きい代謝安定性、例えば増加したインビボ半減期又は減少した用量要求性による、ある程度の治療上の利点を与え得るので、ある状況において好ましい場合がある。本発明の作用物質及びそれらの本発明の薬学的に許容される塩の同位体変形は、適切な試薬の適切な同位体変形を用いる通常の方法により一般に調製できる。
【0128】
溶媒和物
本発明は、本発明の作用物質の溶媒和物の形も含む。請求項で用いられる用語は、これらの形を包含する。
【0129】
多形
本発明は、さらに、その種々の結晶形、多形及び(無)水和物の形の本発明の作用物質に関する。化合物を、このような化合物の合成に用いる溶媒からの精製及び/又は単離の方法をわずかに変更することにより任意のこのような形で単離し得ることは、製薬工業においてよく確立されている。
【0130】
プロドラッグ
本発明は、さらに、プロドラッグの形の本発明の作用物質を含む。このようなプロドラッグは、一般に、1又は複数の適切な基が、ヒト又は哺乳動物の対象に投与される際に修飾が復元し得るように修飾されている化合物である。インビボで復元を行うためにこのようなプロドラッグとともに第2の作用物質を投与することも可能であるが、このような復元は、このような対象に天然に存在する酵素により通常行われる。このような修飾の例は、復元がエステラーゼなどにより行われ得るエステル(例えば上記の任意のもの)を含む。このような他の系は、当業者に公知である。
【0131】
投与
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、経膣、非経口、筋内、腹腔内、動脈内、鞘内、気管支内、皮下、皮内、静脈内、経鼻、頬側又は舌下の投与経路用に適合されてよい。
【0132】
経口投与のために、圧縮錠剤、丸剤、錠剤、ゲル剤(gellules)、滴剤及びカプセル剤が特に用いられる。好ましくは、これらの組成物は、用量当たり1〜2000mg、より好ましくは50〜1000mgの活性成分を含有する。
【0133】
投与の他の形は、静脈内、動脈内、鞘内、皮下、皮内、腹腔内又は筋内に注入され得、且つ滅菌若しくは滅菌可能な溶液から調製される液剤又はエマルジョンを含む。本発明の医薬組成物は、坐剤、膣坐剤、懸濁剤、エマルジョン、ローション剤、軟膏、クリーム、ゲル、噴霧剤、液剤又は散粉剤の形であってもよい。
【0134】
経皮投与の別の手段は、皮膚貼布の使用による。例えば、活性成分を、ポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性エマルジョンからなるクリームに混合し得る。活性成分は、1〜10重量%の濃度で、白ろう又は白色軟ワセリン基剤と所望により安定剤及び防腐剤とからなる軟膏にも混合できる。
【0135】
注射可能な形は、用量当たり10〜1000mg、好ましくは10〜500mgの活性成分を含有してよい。
【0136】
組成物は、単位剤形、すなわち単位用量を含有する別個の部分、又は単位用量の複数若しくは単位未満の形で処方されてよい。
【0137】
特に好ましい実施形態において、本発明の組合せ又は医薬組成物は、静脈内投与される。
【0138】
投与量
当業者は、過度の実験を行わずに、対象に投与する本発明の組成物の1つの適切な用量を容易に決定できる。典型的には、医師は、個別の患者に最も適するであろう実際の投与量を決定し、それは、用いる具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全身の健康、性別、食餌、投与の形態及び時間、排泄速度、併用薬剤、具体的な状態の重篤度、並びに個人が受けている治療を含む種々の因子に依存する。本明細書に開示される投与量は、平均的な場合の例である。より高い又はより低い投与量範囲が正当である個別の場合がもちろんあり得、これらも本発明の範囲内である。
【0139】
必要に応じて、作用物質は、2〜20mg/kgのような0.1〜30mg/kg体重、より好ましくは0.1〜1mg/kg体重の用量で投与してよい。
【0140】
手引きとして、細胞傷害性薬物は、典型的に、該細胞傷害性薬物についての承認された投与量の間の投与量で医師に指示に従って投与される。該投与量は、製造業者から得ることができる各作用物質についての製品の特性のまとめ又は例えばwww.emea.eu.int/htms/human/epar/a-zepar.htmのような文献から入手可能である。
【0141】
手引きとして、CYC682は、ヒトの成人患者について0.05〜5gの投与量で医師の指示に従って典型的に投与される。好ましくは、該投与量は、経口で、1〜120mg/m体表面である。用量は、1週間に5日間で4週間、又は1週間に3日間で4週間与え得る。投与量及び投与頻度は、患者の全身の医療状態、及び引き起こされる有害事象の重篤度、特に造血、肝臓及び腎臓系に引き起こされるものに典型的に適合される。CYC682の合計1日用量は、単一用量として投与され得るか、又は別々の投与量に分けて、好ましくは1日当たり2、3若しくは4回投与され得る。
【0142】
好ましくは、細胞傷害性薬物は、CYC682又はその代謝物の投与の少なくとも2時間前に投与される。より好ましくは、細胞傷害性薬物は、CYC682又はその代謝物の投与の少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも6又は8時間前に投与される。さらにより好ましくは、細胞傷害性薬物は、CYC682又はその代謝物の投与の少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも18又は24時間前に投与される。
【0143】
別の好ましい実施形態において、細胞傷害性薬物は、CYC682又はその代謝物の投与の少なくとも2時間後に投与される。より好ましくは、細胞傷害性薬物は、CYC682又はその代謝物の投与の少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも6又は8時間後に投与される。さらにより好ましくは、細胞傷害性薬物は、CYC682又はその代謝物の投与の少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも18〜24時間後に投与される。
【0144】
キットオブパーツ(kit of parts)
本発明のさらなる態様は、
(i)薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合されていてもよい2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、
(ii)薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合されていてもよい(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物と
を含むキットオブパーツに関する。
【0145】
本発明のある特に好ましい実施形態は、
(i)薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合されていてもよい2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、
(ii)薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合されていてもよいゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びドキソルビシンから選択される細胞傷害性薬物と
を含むキットオブパーツに関する。
【0146】
好ましくは、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物及び細胞傷害性薬物は、それぞれ単位剤形にある。好ましくは、キットオブパーツは、各成分、すなわち上記の成分(i)及び(ii)の単位剤形の複数を含有する。
【0147】
所望により、キットオブパーツは、具体的な投与計画、例えば、いつ、どのように、そしてどのような頻度で各成分の単位剤形を摂取すべきかを示す指示を含む服薬遵守を促進するための手段をさらに含んでいてもよい。
【0148】
本発明は、実施例により及び以下の図面を参照してさらに説明される。
[実施例]
【0149】
材料及び方法
ドキソルビシン及び組織培養試薬は、Sigma Aldrich社により供給される。CYC682は、Cyclacel Ltd.社(英国、ダンディー)により供給された。ドセタキソール(Taxotere(登録商標)、Aventis社製)を臨床製剤として用いた。ゲムシタビンは、Lilly社により供給された。オキサリプラチンは、Sanofi社により供給された。シスプラチン及びビノレルビンは、Sigma Aldrich社から得た。
【0150】
CYC682の調製(EP536936に従う)
CYC682は、Sankyo Company Limited社のEP536936の実施例1及び2に記載される方法に従って調製した。
【0151】
株化細胞
全ての株化細胞は、ATCC(メリーランド州ロックヴィル)から得た。細胞を、10%胎児ウシ血清(Invitrogen社製、フランス、セルジー−ポントアーズ)、2mMグルタミン、100単位/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補ったRPMI培地で単層として成長させた。全ての細胞を、トリプシン/EDTA(それぞれ0.25%及び0.02%;Invitrogen社製、フランス、セルジー−ポントアーズ)を用いて1週間に2回剥離し、2.5×10細胞/mlの濃度で播種した。全ての株化細胞を、Stratagene社製のキット(カリフォルニア州ラホーヤ)を用いるPCRによりマイコプラズマ(Mycoplasma)汚染について定期的に試験した。
【0152】
インビトロ成長阻害アッセイ(MTTアッセイ)
MTTアッセイは、以前に記載されたようにして行った(Hansen MB, Nielsen SE, Berg K. Re-examination and further development of a precise and rapid dye method for measuring cell growth/cell kill. J Immunol Methods. 1989 May 12;119(2):203-10)。簡単に、細胞を、96ウェル組織培養プレートに2×10細胞/ウェルの密度で播種した。細胞生存率を、黄色の水溶性テトラゾリウムであるMTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド;Sigma社製、フランス、サンカンタンファラヴィエール)の、紫色で水不溶性のフォルマザンへの色の変換により、120時間のインキュベーションの後に決定した。この反応は、ミトコンドリアのデヒドロゲナーゼにより触媒され、生存細胞の相対数を評価するために用いられる(Mosmann, T, Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival: application to proliferation and cytotoxicity assays. J Immunol Methods. 1983 Dec 16;65(l-2):55-63)。細胞を、0.4mg/mlのMTTと37℃にて4時間インキュベートした。インキュベーションの後に、上清を捨て、細胞沈殿物を0.1mlのDMSOに再懸濁し、吸光度を560nmにてマイクロプレートリーダー(Dynatech社製、ミシガン)を用いて測定した。未処理の細胞又は細胞を含まない薬剤含有培地を含むウェルは、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。成長阻害曲線を、未処理の対照細胞の百分率としてプロットした。
【0153】
単一作用物質研究
細胞を、96ウェルプレートに2×10細胞/ウェルで播種し、24時間後に漸増濃度のCYC682で処理した。1時間、24時間又は48時間のインキュベーション時間の後に細胞を洗浄し、薬剤フリー培地で72時間、後インキュベートした。次いで、成長阻害をMTTアッセイにより決定した。
【0154】
CYC682と他の薬物の同時曝露
同時の薬物曝露のために、細胞を、96ウェルプレートに2×10細胞/ウェルで播種し、24時間後に漸増濃度のCYC682単独、又はIC20、IC40又はIC60値に対応する種々の濃度の別の薬物とともに処理した。倍化時間のほぼ4倍(120時間)の後に、成長阻害効果をMTTアッセイにより測定した。
【0155】
CYC682と他の薬物への連続的曝露
細胞を、96ウェルプレートに2×10細胞/ウェルで播種し、24時間成長させた。次いで、細胞を種々の濃度の第1薬物に1時間/24時間/48時間曝露し、薬物を除去し、細胞を洗浄し、第2薬物を加えた。さらなる薬物曝露の後に、第2薬物を除去し、細胞を洗浄し、薬剤フリー培地で72時間インキュベートした。次いで、成長阻害をMTTアッセイにより決定した。
【0156】
CNDAC併用
NSCLC株化細胞であるH1299又はRERF−LC−MAでの実験を、10%(v/v)FCS含有DMEM中、3,000/ウェルの密度で播種した細胞を含む96ウェルプレートで行った。全ての薬物の貯蔵溶液は、0.9%(w/v)の滅菌塩水溶液に溶解したゲムシタビン以外はジメチルスルホキシド(DMSO)中で作製した。
【0157】
可能性のある相乗相互作用の実験的評価のために、同時処置計画は、72時間のCNDACと調査中の他の作用物質とで細胞を同時処置することと、それに並行して、個別の化合物単独で72時間処置する細胞の適切な対照とを含んでいた。連続処置計画では、一方の薬物を、播種の2時間後に細胞に加え、24時間放置した。次いで、培地を吸引し、第2薬物を含有する新鮮な培地に置き換えて、72時間インキュベートした。連続処置計画のための2つの個別処置の対照では、薬物処置の一方を薬物フリー培地に置換することを含んでいた。薬物処置の後に、各ウェル中の細胞数を、10%アラマーブルー(Roche社製、英国、イーストサセックス、ルイス)含有培地中で1時間インキュベートし、吸光度を488〜595nmで測定することにより評価した。薬物相互作用は、以下に記載されるCalcusynソフトウェアパッケージ(BioSoft社製、英国、ケンブリッジ)を用いて分析した。1の併用指数(C.I.、Combination Index)は、相加的薬物相互作用を示すが、1より大きいC.I.はアンタゴニスト作用であり、1未満のスコアは相乗作用である。
【0158】
統計分析及び相乗活性の決定
薬剤併用の効果を、半有効原理に基づくChou及びTalalayの方法を用いて評価した(Chou TC, Talalay P. Quantitative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors. Adv Enzyme Regul. 1984;22:27-55)。これは、等式:f/f=(C/C(式中、fは薬物濃度Cにより影響される細胞画分であり(例えば細胞成長が90%阻害されると0.9)、fは影響されない画分であり、Cは薬物濃度であり、IC50は最大効果の半分に必要な濃度であり(すなわち、細胞成長の50%阻害)、mは濃度−効果曲線のシグモイド係数である)を用いて、各薬物と、複数の希釈された固定された比の組合せとについての用量−効果曲線をプロットすることを含む。組合せでの各薬物についての曲線の傾きに基づいて、薬物が、互いに排他的でない効果を有するか(例えば独立した又は相互作用的な作用形態)を決定できる。
【0159】
併用指数(CI)は、次いで、等式:
CI=[(C)/(C]+[(C)/(C]+[α(C)(C)/(C(C
(式中、(Cは、その薬物単独のxパーセントの効果を生じるのに必要な薬物1の濃度であり、(C)は、(C)との組合せで同じxパーセントの効果を生じるのに必要な薬物1の濃度である)により決定される。薬物の作用形態が互いに排他的又は非排他的である場合、αはそれぞれ0又は1である。CI値は、異なる値のf(すなわち、異なる程度の細胞成長阻害)を用いてこの等式により算出される。<1のCI値は相乗作用を示し、1の値は相加効果を示し、>1の値はアンタゴニスト作用を示す。データは、IBM−PCコンピュータで、マイクロコンピュータソフトウェア用の濃度−効果分析を用いて(Biosoft社製、英国、ケンブリッジ)分析した。統計分析及びグラフについて、本発明者らは、Instat and Prismソフトウェア(GraphPad社製、米国、サンディエゴ)を用いる。単独又は対にした組合せで試験した薬物についての用量−効果の関係は、半有効プロット分析に供して、それらの相対的効力(IC50)、形(m)及び同調性(r)を、それぞれの選択した株化細胞において決定した。上記のように、IC50及びmの値は、CI等式に基づいて、相乗作用及びアンタゴニスト作用を計算するためにそれぞれ用いた。結果は、2重で行った少なくとも3回の実験の平均±標準偏差として表した。各実験において、細胞を、上記のように、対にした組合せに48時間曝露した。平均及び標準偏差は、スチューデントのt検定(両側p値)を用いて比較した。
【0160】
結果
単一作用物質の研究
ヒト癌株化細胞のパネルでの単一作用物質として与えられたCYC682及びCNDACの増殖抑制効果
図1は、株化細胞のパネルにおけるCYC682及びCNDACの効果を示す。各点は、それぞれ2重で行った少なくとも3回の個別の実験の平均である。48時間曝露についてのIC50を表1に示す。CYC682及びCNDACへの24時間の曝露を試験し、CNDAC細胞傷害性について十分でないことが見出された。48時間の曝露は、最も感受性が高いヒト癌株化細胞におけるCYC682の増殖抑制効果を観察するために最適であることが示された。各点は、それぞれ2重で行った少なくとも3回の個別の実験の平均である。CYC682は、いくつかのヒト癌株化細胞に対する細胞傷害性効果を示し、HCT116が最も感受性が高い癌株化細胞であった。
【0161】
CYC682細胞傷害性の他の抗癌剤との比較
比較は、CYC682の細胞傷害性効果と、オキサリプラチン、シスプラチン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ビノレルビン、5FU及びAra−Cを含むいくつかの抗癌剤の細胞傷害性効果との間で行った(表1)。データは、CYC682が、ほとんどの癌株化細胞においてマイクロモルの濃度で増殖抑制活性を示し、そのプロファイルは、オキサリプラチン及びシスプラチンのような伝統的な抗癌剤のものとも、シタラビン及びゲムシタビンのような近縁の代謝拮抗物質のものとも異なることを示す。このことは、ヒト癌細胞における作用機序及びCYC682に対する耐性が、Ara−C及びゲムシタビンのものとは少なくとも部分的に異なるであろうことを示唆する。
【0162】
薬物併用研究
CYC682と、オキサリプラチン、ドキソルビシン、ドセタキセル及びゲムシタビンとへの連続的及び同時の曝露の効果(図2)を、2つの感受性結腸癌株化細胞であるCOLO205及びHCT116において、Chou及びTalalayにより以前に記載されたようなIC50に相当する薬物濃度についての影響される画分を表す併用指数を用いて研究した。
【0163】
ドセタキセル−CYC682の組合せ
図3に示すように、両方の株化細胞において、ドセタキセルをCYC682の前に与えた場合、相乗効果が観察された。
【0164】
ゲムシタビン−CYC682の組合せ
ゲムシタビンの後にCYC682という順序は、両方の株化細胞において相乗作用があった(図4)。CYC682とゲムシタビンとの相乗作用は、近縁ではあるが、これらの2つの化合物が、癌細胞において異なる作用機序を有し得ることを示唆する。
【0165】
ドキソルビシン−CYC682の組合せ
CYC682のドキソルビシンとの組合せは、連続曝露を用いて、高濃度で相乗作用があった(図5)。
【0166】
オキサリプラチン−CYC682の組合せ
CYC682のオキサリプラチンとの組合せは、CYC682をオキサリプラチンの前又は後に投与したときにHCT116細胞において相乗活性を導いた(図6)。COLO205細胞では、CYC682をオキサリプラチンの前に与えた場合に相乗作用が得られた。
【0167】
CNDACの組合せ
CNDACは、ドキソルビシン、シスプラチン、ゲムシタビン又はドセタキセルとの組合せで試験し、結果は、これらの全ての組合せが相乗薬物相互作用を生じることを示唆する(表3)。
【0168】
CNDACは、H1299細胞においてビノレルビンとの組合せでも試験し、結果は、この組合せが、試験した3つの処置計画の全てで相乗作用を生じることを示す(表4)。
【0169】
H1299細胞において、CNDAC及びドキソルビシンは、ドキソルビシン前処置及び同時前処置計画を用いて、ED50(細胞集団の50%が死滅するとき)にて相乗作用を生じた。
【0170】
ED50において、CNDAC及びシスプラチンは、シスプラチン前処置を用いて相乗作用を生じ、同時処置を用いて弱い相乗作用を生じた。
【0171】
CNDAC及びゲムシタビンは、同時処置計画で試験し、これはED50で相乗作用を生じた。
【0172】
考察
上記のデータは、CYC682が広範囲のヒト癌株化細胞に対して細胞傷害活性を示し、HCT116が最も感受性が高いことを示す。CYC682及びCNDACは、シタラビン、ゲムシタビン、5FU及び他の細胞傷害性薬物(オキサリプラチン、シスプラチン、ドキソルビシン、ビノレルビン、ドセタキセル)のような伝統的な代謝物とは異なる特異な活性スペクトルを示す。
【0173】
併用研究は、CYC682(又はCNDAC)を、ヒト結腸癌細胞及びNSCLC細胞において広い濃度範囲にわたってオキサリプラチン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ビノレルビン、シスプラチン及びドキソルビシンのような薬物と組み合わせたときに、相乗効果を証明した。CYC682とゲムシタビンとの相乗作用は、近縁であっても、これらの2つの化合物が癌細胞において異なる作用機序を有することを強く示唆する。
【0174】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、本発明の種々の修飾及び変更が当業者には明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載しているが、請求される本発明は、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されるはずである。実際に、関連分野の当業者に明らかな本発明を行うための記載された形態の種々の修飾は、本発明により包含されることを意図する。
【0175】
【表1】

【0176】
表3及び4:種々の細胞傷害性薬物との組合せのCNDACを用いて得られた結果のまとめ。細胞を、実施例の部分に記載するようにして、3つの異なる処置計画を用いて、記載される細胞傷害性薬物との組合せのCNDACを用いて処置した。結果は、少なくとも3回の独立した実験の平均である。
【0177】
【表2】

【0178】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】株化細胞のパネルに対するCYC682及びCNDACの影響を示すグラフである(μMでの濃度に対する%生存)。
【図2】CYC682に基づく組合せの影響を評価する順序1、2及び3を示す図である。読み取りは、薬物への曝露の後の曝露H72の直後に行った。
【図3】COLO205及びHCT116のヒト癌株化細胞におけるCYC682及びドセタキセルの相互作用を示すアイソボログラムである。
【図4】COLO205及びHCT116のヒト癌株化細胞におけるCYC682及びゲムシタビンの相互作用を示すアイソボログラムである。
【図5】COLO205及びHCT116のヒト癌株化細胞におけるCYC682及びドキソルビシンの相互作用を示すアイソボログラムである。
【図6】COLO205及びHCT116のヒト癌株化細胞におけるCYC682及びオキサリプラチンの相互作用を示すアイソボログラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを含む組合せ。
【請求項2】
ビンカアルカロイドが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンから選択される請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
ビンカアルカロイドがビノレルビンである請求項1又は請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
タキサンが、ドセタキソール及びタキソールから選択される請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
タキサンがドセタキソールである請求項1に記載の組合せ。
【請求項6】
シトシン類縁体が、ゲムシタビン及びara−Cから選択される請求項1に記載の組合せ。
【請求項7】
シトシン類縁体がゲムシタビンである請求項1に記載の組合せ。
【請求項8】
アントラサイクリンが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン及びミトキサントロンから選択される請求項1に記載の組合せ。
【請求項9】
アントラサイクリンがドキソルビシンである請求項1に記載の組合せ。
【請求項10】
白金抗腫瘍薬が、シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンから選択される請求項1に記載の組合せ。
【請求項11】
白金抗腫瘍薬がシスプラチンである請求項1に記載の組合せ。
【請求項12】
白金抗腫瘍薬がオキサリプラチンである請求項1に記載の組合せ。
【請求項13】
代謝物が、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンである請求項1〜12のいずれかに記載の組合せ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の組合せと、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
増殖性障害の治療用の医薬の製造における請求項1〜14のいずれかに記載の組合せの使用。
【請求項16】
治療における同時、連続的又は別個の使用のための併用製剤としての、(i)2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩と、(ii)(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを含む医薬品。
【請求項17】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、細胞傷害性薬物とが同時に投与される請求項16に記載の医薬品。
【請求項18】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、細胞傷害性薬物とが、連続的又は別個に投与される請求項16に記載の医薬品。
【請求項19】
細胞傷害性薬物が、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物の前に、連続的又は別個に投与される請求項18に記載の医薬品。
【請求項20】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物が、細胞傷害性薬物の前に、連続的又は別個に投与される請求項18に記載の医薬品。
【請求項21】
ビンカアルカロイドが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンから選択される請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項22】
ビンカアルカロイドがビノレルビンである請求項14〜21のいずれかに記載の医薬品。
【請求項23】
タキサンが、ドセタキソール及びタキソールから選択される請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項24】
タキサンがドセタキソールである請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項25】
シトシン類縁体が、ゲムシタビン及びara−Cから選択される請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項26】
シトシン類縁体がゲムシタビンである請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項27】
アントラサイクリンが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン及びミトキサントロンから選択される請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項28】
アントラサイクリンがドキソルビシンである請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項29】
白金抗腫瘍薬が、シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンから選択される請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項30】
白金抗腫瘍薬がシスプラチンである請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項31】
白金抗腫瘍薬がオキサリプラチンである請求項14〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項32】
代謝物が、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンである請求項14〜31のいずれかに記載の医薬品。
【請求項33】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物の形の請求項14〜32のいずれかに記載の医薬品。
【請求項34】
増殖性障害の治療用の請求項14〜33のいずれかに記載の医薬品。
【請求項35】
増殖性障害が癌である請求項34に記載の医薬品。
【請求項36】
増殖性障害を治療する方法であって、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物とを、同時、連続的又は別個に投与することを含む方法。
【請求項37】
代謝物が、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンである請求項36に記載の方法。
【請求項38】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、細胞傷害性薬物とが、個別の成分についての治療有効量でそれぞれ投与される請求項36又は請求項37に記載の方法。
【請求項39】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、細胞傷害性薬物とが、個別の成分についての治療有効量未満でそれぞれ投与される請求項36又は請求項37に記載の方法。
【請求項40】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、細胞傷害性薬物とが同時に投与される請求項36〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、細胞傷害性薬物とが、連続的又は別個に投与される請求項36〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
細胞傷害性薬物が、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物の前に、連続的又は別個に投与される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物が、細胞傷害性薬物の前に、連続的又は別個に投与される請求項41に記載の方法。
【請求項44】
増殖性障害が癌である請求項36〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
癌が結腸癌である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
増殖性障害の治療用の医薬の製造における、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩の使用であって、前記治療が、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物を、同時、連続的又は別個に対象に投与することを含む使用。
【請求項47】
増殖性障害の治療用の医薬の製造における、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物の使用であって、前記治療が、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩を、同時、連続的又は別個に対象に投与することを含む使用。
【請求項48】
増殖性障害の治療用の医薬の製造における、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩と、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物との使用。
【請求項49】
増殖性障害の治療用の医薬の製造における、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物の使用であって、前記医薬が、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩との併用療法用である使用。
【請求項50】
増殖性障害の治療用の医薬の製造における、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩の使用であって、前記医薬が、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物との併用療法用である使用。
【請求項51】
増殖性障害の治療用の医薬の製造における、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン若しくはその代謝物、又はそれらの薬学的に許容される塩の使用であって、前記医薬が、(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物との前処置療法用である使用。
【請求項52】
代謝物が、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンである請求項46〜51のいずれかに記載の使用。
【請求項53】
増殖性疾患が癌である請求項46〜52のいずれかに記載の使用。
【請求項54】
癌が結腸癌である請求項39に記載の使用。
【請求項55】
(i)薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合されていてもよい2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシル−シトシン又はその代謝物と、
(ii)薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合されていてもよい(a)ビンカアルカロイド、(b)タキサン、(c)シトシン類縁体、(d)アントラサイクリン及び(e)白金抗腫瘍薬から選択される細胞傷害性薬物と
を含むキットオブパーツ。
【請求項56】
実質的に本明細書に記載される組合せ、医薬品、方法又は使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−515863(P2009−515863A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539505(P2008−539505)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004230
【国際公開番号】WO2007/054731
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506138030)サイクラセル リミテッド (21)
【Fターム(参考)】