説明

DC/DCコンバータおよび電力変換装置

【課題】三相インバータを用いることなく、商用の三相電源と連系するのに好適なDC/DCコンバータおよびそれを用いた電力変換装置を提供する。
【解決手段】商用の三相電源2にΔ結線された3台の単相インバータ5−1〜5−3に対して、太陽電池1からの直流電力を、絶縁型のDC/DCコンバータ4のトランスを介して分配して出力するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータおよびそれを用いた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から環境への影響の少ない太陽電池、燃料電池等による分散型電源システムの開発が盛んに進められている。
【0003】
このような分散型電源システムでは、太陽電池等によって発電した直流電力を、DC/DCコンバータおよびインバータを備えた電力変換装置であるパワーコンディショナによって、商用周波数の交流電力に変換し、商用電力系統と連系して負荷に供給するとともに、余剰電力を商用電力系統に逆潮流することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
三相の商用電力系統と連系するには、三相インバータを備える電力変換装置によって、三相の交流電力に変換すればよいが、安価な単相インバータを複数台用いて三相インバータを構成する場合、三相不平衡という不具合が生じる場合があるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−161032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、安価な単相インバータを複数台用いて三相の商用電力系統と連系するのに好適なDC/DCコンバータおよびそれを用いた電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるDC/DCコンバータは、直流電力を変換出力する絶縁型のDC/DCコンバータであって、当該DC/DCコンバータは、前記直流電力を、複数台の単相インバータに分配出力するトランスを具備したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明によると、トランスにより複数台の単相インバータに直流電力を分配出力できるので、例えば三相電源にΔ結線あるいはV結線される3台または2台の単相インバータに、直流電力を分配できるようになり、結果として、高価な三相インバータを用いることなく、安価な単相インバータを用いて三相電源に連系する電力変換装置を構成することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態は、前記直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、該インバータ回路の交流電力の電圧を変圧するとともに、それぞれ絶縁された複数の出力に分配する前記トランスと、該トランスからの複数の出力それぞれを整流する複数の整流回路と、各整流回路の出力をそれぞれ平滑する複数の平滑回路とを備えている。
【0010】
この実施形態によると、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の交流電力を、トランスによって、絶縁された複数出力に分配し、整流、平滑して複数台の単相インバータに供給することができる。
【0011】
本発明の好ましい他の実施形態は、前記複数が、2または3であり、2台の前記単相インバータが、商用三相電源にV結線され、または、3台の前記単相インバータが商用三相電源にΔ結線あるいはY結線されるものである。
【0012】
この実施形態によると、当該DC/DCコンバータによって、商用三相電源にΔ結線あるいは三相四線式の前記商用電源にY結線される3台の単相インバータ、または、商用三相電源にV結線される2台の単相インバータに、直流電力を分配できるようになり、結果として、高価な三相インバータを用いることなく、安価な単相インバータを用いて三相電源に連系する電力変換装置を構成することができる。
【0013】
本発明の好ましい更に他の実施形態は、前記トランスは、単一の一次巻線と、複数の二次巻線とを備えるものである。
【0014】
この実施形態によると、単一の一次巻線と、複数の二次巻線とを備えるトランスによって、絶縁された複数出力に分配することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記トランスの前記二次巻線には、該トランスの出力を等分するための変流器が接続されている。
【0016】
この実施形態よると、変流器によって、複数の二次巻線に流れる電流を等分することができる。
【0017】
本発明の電力変換装置は、本発明に係るDC/DCコンバータと、商用三相電源に接続される複数台の単相インバータとを備え、前記商用三相電源に連系するものである。
【0018】
本発明の電力変換装置によると、高価な三相インバータを用いることなく、太陽電池や燃料電池等の直流電力源からの直流電力を、安価な単相インバータを用いて商用の三相電源に連系することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、三相電源に接続される複数台の単相インバータに、直流電力を分配できるので、高価な三相インバータを用いることなく、安価な単相インバータを用いて商用の三相電源に系統連系する電力変換装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係るパワーコンディショナを備える太陽光発電システムの概略構成図である。
【図2】図1のDC/DCコンバータの回路構成図である。
【図3】図1のDC/DCコンバータの他の回路構成図である。
【図4】図1のDC/DCコンバータの更に他の回路構成図である。
【図5】図1の単相インバータの回路構成図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る太陽光発電システムの概略構成図である。
【図7】図1のDC/DCコンバータの他の回路構成図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係るパワーコンディショナを備える太陽光発電システムの概略構成図である。
【図9】本発明の更に他の実施の形態に係るパワーコンディショナを備える太陽光発電システムの概略構成図である。
【図10】図9のDC/DCコンバータの回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の一つの実施形態に係るDC/DCコンバータおよびそれを用いた電力変換装置として、パワーコンディショナを備える太陽光発電システムの概略構成図である。
【0023】
この実施形態の太陽光発電システムは、直流電力源としての太陽電池1と、この太陽電池1からの直流電力を、交流電力に変換して商用電源系統である三相電源2に連系する電力変換装置としてのパワーコンディショナ3とを備えている。
【0024】
この実施形態のパワーコンディショナ3は、三相インバータを用いることなく、商用の三相電源2と連系できるようにするために、太陽電池1からの直流電力を変圧して分配する絶縁型のDC/DCコンバータ4と、このDC/DCコンバータ4からの直流電力を、単相の交流電力にそれぞれ変換して商用の三相電源2に連系する3台の単相インバータ5−1〜5−3とを備えている。
【0025】
3台の単相インバータ5−1〜5−3の内、単相インバータ5−1は、商用の三相電源2のU相,V相間に接続され、単相インバータ5−2は、商用の三相電源2のV相,W相間に接続され、単相インバータ5−3は、商用の三相電源2のW相,U相間に接続される。すなわち、これらの単相インバータ5−1〜5−3は、商用の三相電源2にΔ結線されている。
【0026】
図2にDC/DCコンバータ4の回路構成を示す。
【0027】
DC/DCコンバータ4は、太陽電池1に並列に接続される平滑コンデンサ6と、直流電力を交流電力に変換する高周波インバータ回路7と、この高周波インバータ回路7からの交流電力を変圧するとともに、3台の単相インバータ5−1〜5−3に対応するように均等に分配する高周波トランス8と、この高周波トランス8からの交流出力をそれぞれ全波整流する整流回路9−1〜9−3と、各整流回路9−1〜9−3の出力をそれぞれ平滑化して各単相インバータ5−1〜5−3に与える平滑回路10−1〜10−3と、平滑回路10−3の出力に基づいて、高周波インバータ回路7のスイッチング制御を行う変換制御回路11とを備えている。
【0028】
高周波インバータ回路7は、フルブリッジ構成された4個のIGBTなどのスイッチング素子12a〜12dと、各スイッチング素子12a〜12dに逆並列に接続されたダイオード13a〜13dとを備えている。この高周波インバータ回路7は、変換制御回路11によってスイッチング制御されて直流電力を高周波の交流電力に変換する。
【0029】
高周波トランス8は、単一の一次巻線N1と、3つの二次巻線N2−1〜N2−3とを備えており、高周波インバータ回路7からの交流電力を変圧して、各整流回路9−1〜9−3に供給する。
【0030】
このように高周波トランス8では、商用の三相電源2にΔ結線されている3台の単相インバータ5−1〜5−3に、絶縁された出力を均等に配分するために、3つの二次巻線N2−1〜N2−3を備えている。
【0031】
高周波トランス8の3つの二次側巻線N2−1〜N2−3に、均等な電流が流れるように、例えば、図3に示すように、二次巻線N2−1〜N2−3の後段に、カレントトランス(変流器)CT1〜CT3の一次巻線を直列にそれぞれ接続するとともに、カレントトランスCT1〜CT3の二次巻線を直列に接続してもよいし、あるいは、図4に示すように、カレントトランスCT1’〜CT3’を構成してもよいし、更に、均等な電流が流れるように、二次巻線N2−1〜N2−3のターン数を異ならせてもよい。
【0032】
高周波トランス8の後段の各整流回路9−1〜9−3は、図2に示すように、ダイオードブリッジで構成されており、高周波トランス8の二次巻線N2−1〜N2−3からの高周波電流は、整流回路9−1〜9−3で整流され、更に、リアクトル14とコンデンサ15からなる平滑回路10−1〜10−3で平滑化されて、図1の各単相インバータ5−1〜5−3にそれぞれ供給される。
【0033】
変換制御回路11は、従来と同様にMPPT(最大電力点追従)制御を行うとともに、単相インバータ5−3への出力電圧である平滑回路10−3の出力電圧に基づいて、高周波インバータ回路7のスイッチング素子12a〜12dをスイッチング制御して、出力電圧を定電圧制御し、これによって、他の平滑回路10−1,10−2の出力電圧も略同電圧となる。
【0034】
このように絶縁型のDC/DCコンバータ4によって、太陽電池1からの直流電力を、絶縁された3つの出力に均等に分配して各単相インバータ5−1〜5−3に給電することが可能となる。
【0035】
図5に、図1の単相インバータ5−1〜5−3の回路構成を示す。各単相インバータ5−1〜5−3の構成は、共通であるので、図5では、代表的に単相インバータ5として説明する。
【0036】
単相インバータ5は、DC/DCコンバータ4のいずれかの平滑回路10−1〜10−3に接続されるインバータ回路16と、このインバータ回路16によって変換された交流電力の高調波を除去するフィルタ回路17と、インバータ回路16の出力に基づいて、該インバータ回路16のスイッチングを制御するインバータ制御回路18とを備えている。
【0037】
インバータ回路16は、IGBTなどのスイッチング素子19a〜19dとダイオード20a〜20dとからなるフルブリッジ回路であって、インバータ制御回路18によって制御され、DC/DCコンバータ4からの直流電力を、交流電力に変換する。フィルタ回路17は、リアクトル21とコンデンサ22とによって構成される。
【0038】
以上のようにDC/DCコンバータ4によって、太陽電池1からの直流電力を、商用の三相電源2にΔ結線された3台の単相インバータ5−1〜5−3に均等に分配するので、三相インバータを用いることなく、商用の三相電源2に三相平衡電流を流すことができ、商用電力系統と連系することが可能となる。これによって、三相インバータを用いる場合に比べて、コストを低減することが可能となる。
【0039】
上述の実施形態では、図1に示すように、三相三線式の商用電源2に連系させたけれども、本発明の他の実施形態として、図6に示すように、三相四線式の商用電源2’に連系させてもよい。
【0040】
上述の各実施形態では、DC/DCコンバータ4の高周波トランス8は、単一の一次巻線N1と、3つの二次巻線N2−1〜N2−3とを備える構成であったけれども、本発明の他の実施形態として、図7に示すように、単一の一次巻線N1および二次巻線N2からなる標準的な高周波トランス8−1の後段に、単一の一次巻線N1’と3つの二次巻線N2’−1〜N2’−3とから高周波トランス8−2を接続するようにしてもよい。この場合には、従来のDC/DCコンバータ4の高周波トランス8−1をそのまま利用できることになる。
【0041】
また、上述の実施の形態のパワーコンディショナ3では、図1に示すように、1台のDC/DCコンバータ4からの直流電力を、3台の単相インバータ5−1〜5−3に分配したけれども、他の実施形態として、複数台のDC/DCコンバータ、例えば、図8に示すように、太陽電池モジュールがグループ化(ストリング化)された3つの太陽電池1−1〜1−3からの直流電力が与えられる3台のDC/DCコンバータ4−1〜4−3を、3台の単相インバータ5−1〜5−3に並列に接続し、各DC/DCコンバータ4−1〜4−3の3つの出力を、それぞれ3台の単相インバータ5−1〜5−3に与えるようにしてもよい。この3台のDC/DCコンバータ4−1〜4−3は、上述のDC/DCコンバータ4と同じ構成である。
【0042】
この図8では、日照状態などによって各太陽電池1−1〜1−3の発電出力にばらつきがあっても、各単相インバータ5−1〜5−3には、均等に出力が分配されるので、三相電源2に三相平衡電流を流すことが可能となる。
【0043】
(実施形態2)
図9は、本発明の他の実施形態の図1に対応する太陽光発電システムの概略構成図である。
【0044】
この実施形態の太陽光発電システムは、直流電力源としての太陽電池1と、この太陽電池1からの直流電力を、交流電力に変換して商用の三相電源2に連系する電力変換装置としてのパワーコンディショナ3−2とを備えている。
【0045】
この実施形態のパワーコンディショナ3−2は、三相インバータを用いることなく、商用の三相電源2と連系できるようにするために、太陽電池1からの直流電力を変圧して分配する絶縁型のDC/DCコンバータ4−4と、このDC/DCコンバータ4−4からの直流電力を、単相の交流電力にそれぞれ変換して商用の三相電源2に連系する2台の単相インバータ5−1,5−2とを備えている。一方の単相インバータ5−1は、商用の三相電源2のU相,V相間に接続され、他方の単相インバータ5−2は、商用の三相電源2のV相,W相間に接続される。すなわち、これらの単相インバータ5−1,5−2は、商用の三相電源2にV結線されている。
【0046】
図10に、図9の実施形態のDC/DCコンバータ4−4の回路構成を示す。
【0047】
DC/DCコンバータ4−4は、太陽電池1に並列に接続される平滑コンデンサ6と、直流電力を交流電力に変換する高周波インバータ回路7と、この高周波インバータ回路7からの交流電力を変圧するとともに、2台の単相インバータ5−1,5−2に対応するように均等に分配する高周波トランス8−3と、この高周波トランス8−3からの交流出力をそれぞれ全波整流する整流回路9−1,9−2と、各整流回路9−1,9−2の出力をそれぞれ平滑化して各単相インバータ5−1,5−2に与える平滑回路10−1,10−2と、平滑回路10−2の出力に基づいて、高周波インバータ回路7のスイッチング制御を行う変換制御回路11と、を備えている。
【0048】
この実施形態では、高周波トランス8−3は、単一の一次巻線N1と、2つの二次巻線N2−1,N2−2とを備えており、高周波インバータ回路7からの交流電力を変圧して、各整流回路9−1,9−2に供給する。
【0049】
単相インバータ5−1,5−2およびその他の構成は、上述の実施の形態1と同様である。
【0050】
この実施形態によれば、DC/DCコンバータ4−4によって、太陽電池1からの直流電力を、商用の三相電源2にV結線された2台の単相インバータ5−1,5−2に均等に分配するので、三相インバータを用いることなく、商用電力系統と連系することが可能となる。
【0051】
上述の各実施形態では、DC/DCコンバータの整流回路は、全波整流回路であったけれども、本発明の他の実施形態として、倍電圧整流回路とし、高周波トランスの2次巻線電圧を、その2倍の電圧に昇圧するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、電力変換装置として有用である。
【符号の説明】
【0053】
1,1−1〜1−3 太陽電池
2 三相電源
3,3−1,3−2 パワーコンディショナ
4,4−1〜4−4 DC/DCコンバータ
5−1〜5−3 単相インバータ
8,8−1〜8−3 高周波トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を変換する絶縁型のDC/DCコンバータであって、
当該DC/DCコンバータは、前記直流電力を、複数台の単相インバータに分配出力するためのトランスを具備した、ことを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
該インバータ回路の交流電力の電圧を変圧するとともに、それぞれ絶縁された複数出力に分配する前記トランスと、
該トランスからの複数出力それぞれを整流する複数の整流回路と、
各整流回路それぞれの出力を平滑する複数の平滑回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記複数が、2または3であり、2台の前記単相インバータが、商用三相電源にV結線され、または、3台の前記単相インバータが商用三相電源にΔ結線あるいはY結線される請求項1または2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記トランスは、
単一の一次巻線と、
複数の二次巻線と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記トランスの二次巻線に、該トランスの出力等分用変流器が接続されている、ことを特徴とする請求項4に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれか一項に記載のDC/DCコンバータと、
商用三相電源に接続される複数台の単相インバータと、
を備え、
前記商用三相電源に連系する、ことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−36114(P2011−36114A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183210(P2009−183210)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】