説明

E/Eコネクタおよびそこに使用されるポリマー組成物

本発明は、半芳香族ポリアミド、難燃剤系、および強化剤を含む難燃性ポリアミド組成物であって、この半芳香族ポリアミドが、テレフタル酸および脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸ならびに脂肪族ジアミンから誘導された単位を有する、組成物に関する。この半芳香族ポリアミドにおいて、脂肪族ジアミンは、2〜5個のC原子を有する短鎖脂肪族ジアミンを10〜70モル%および少なくとも6個のC原子を有する長鎖脂肪族ジアミンを30〜90モル%からなり、ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸および場合によりテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸を5〜65モル%ならびにテレフタル酸を35〜95モル%からなり、かつテレフタル酸および長鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計は、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し少なくとも60モル%である。本発明はまた、電気/電子(E/E)コネクタ用筐体およびその中における難燃性ポリアミド組成物の使用、このE/Eコネクタを用いる表面実装工程、ならびにこのE/Eコネクタを備える表面実装部品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、電気/電子(E/E)コネクタならびにそこにおける非難燃性および難燃性ポリアミド組成物の使用に関する。本発明はまた、このE/Eコネクタが使用される表面実装工程およびこのE/Eコネクタを備える表面実装部品にも関する。さらに本発明は、テレフタル酸および脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸ならびに脂肪族ジアミンから誘導された単位を含む半芳香族ポリアミドと、難燃剤系と、強化剤とを含む、コネクタに使用可能な難燃性ポリアミド組成物に関する。
【0002】
電気コネクタは電気回路を結合するための導電デバイスである。例えば、プリント回路基板(PCB)に実装された端子台は、個々の電線をこの回路基板に接続することを可能する。接続は、携帯機器用のように一時的なものであってもよいし、あるいは組立ておよび取外しに工具を必要とするものであってもよいし、あるいは2つの電線またはデバイスを永久的に電気的接合するものであってもよい。典型的には、この種の電気コネクタは、プラスチック材料等の絶縁材料から作製された筐体で覆われた1つの導電素子または2つもしくはそれ以上の導電素子を備えている。このプラスチック材料は、異なる構成要素を含むポリマー組成物であってもよく、筐体は、射出成形法により作製されたものであってもよい。電気および電子用途用射出成形部品に使用されるポリマー組成物は、基本的要件として、一般に難燃性を含む多くの要件を満たさなければならない。これらの多くの用途に関し電気および電子部品としてUL認定を受けるためには、UL−94の燃焼性ランクV−0に合格するために難燃剤を存在させることが不可欠である。それとは別に、難燃性要件がこれよりも厳しくなく、必ずしも難燃性が要求されるわけではない(例えば、UL−HBランクで十分な)コネクタ用途もある。コネクタが小型化されたことによって、例えば、PCB上における引き剥がし強さ、コンタクト部の高い予圧、および高湿度下における耐ヒートショック性が求められる過酷な環境試験に関する機械特性も一層重大なものになってきている。さらに、射出成形部品は幾分複雑である場合が多く、最終使用条件下における寸法安定性は性能を決定付ける特性になっている。このことは、部品の断面が幾分薄く、かつこの部品が比較的長い場合がある電気/電子(E/E)コネクタ用途に特に当てはまる。電子コネクタの場合、部品を損傷させず、ピン位置を保持するには、はんだ付け工程中に曝される高温下で極めて優れた寸法安定性を有することが必要である。電子コネクタが表面実装技術(SMT)を用いて回路基板にはんだ付けされる場合、このような工程中に曝される高い表面温度によってプラスチックコネクタに膨れが発生することが多い。
【0003】
鉛が禁止されたことによってフローおよびリフローはんだ付けがより高いはんだ付け温度で行われるようになった。膨れは、はんだ付け工程条件下においてボイドの拡大や混入した水分または気体の膨張が起こっていることの表れである。高温の鉛フリーはんだ付けを用いる傾向が高まっているため、現行のコネクタの処理方法に従来のポリアミド組成物を併用することは膨れの防止には不十分であろう。
【0004】
E/Eコネクタ筐体の膨れを抑制し、したがってこれを防止する鍵となるのは、成形部品の吸湿を抑制することである。膨れは筐体樹脂が水蒸気で過飽和したときに発生する。世界中のPCB用SMT組立ての多くは環太平洋地域で行われている。コネクタが高い温度および湿度に曝される可能性があるため、このようなコネクタが水分で飽和する可能性がある。
【0005】
膨れが開始する温度は、その部品内の水分の割合、コネクタの加熱速度およびリフロー工程のピーク温度、結晶化度および成形条件(例えば、成形温度、溶融温度)、保管条件(例えば、温度、%RH、期間)、ならびに部品の設計特性(すなわち、厚み、長さ)を含む多くの要素に依存する。成形部品は、はんだ付け工程中に膨れが発生する傾向を抑えるために高湿度条件下で保管される場合が多い。
【0006】
ピーク温度が高くなるほど、膨れが発生するまでに許容される水分量は少なくなる。鉛フリーはんだはピーク温度をより高くする必要があり、したがって膨れの発生率はより高くなるであろう。
【0007】
ポリアミド樹脂組成物は、その吸湿性がはんだ付け条件下における寸法安定性および耐膨れ性に悪影響を及ぼし得ることから、電子/電気用途における使用に限界があることが歴史的に見出されている。
【0008】
コネクタに使用されるポリアミドの例としては、例えば、ポリアミド−46および半芳香族コポリアミドが挙げられる。テレフタル酸(TA)およびヘキサメチレンジアミン(HMD)(場合により、脂肪族ジカルボン酸としてアジピン酸を含む)をベースとする半芳香族コポリアミドは特許文献に一般的に記載されている。TAおよび脂肪族ジアミンから作製される耐熱性半結晶性半芳香族ナイロンコポリマーと同様、TA、脂肪族ジカルボン酸、および脂肪族ジアミンから作製されるコポリマーも米国特許第6,140,459号明細書より公知である。米国特許第6,140,459号明細書のコポリマーは、TA、9〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、および脂肪族ジアミンとしてのHMDをベースとするものである。
【0009】
米国特許第6,140,459号明細書に述べられているように、当該特許文献に記載されているかまたは市販されているTAおよびHMDをベースとする多くのコポリマーの性能は、表面実装用途に辛うじて使用できるものである。そのようなものの例が、ヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)および2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(DT)のコポリマーである6T/DT[モル比50/50](Mok、Pagilaganに付与された米国特許第5,378,800号明細書;Lahary、Coquardに付与された米国特許第5,322,923号明細書)であり、その理由は、ガラス転移温度(Tg)が高いことと成形後収縮が高いこととにある。3種の酸(テレフタル酸(TA)、イソフタル酸(IA)、およびアジピン酸(AA))およびHMDをベースとするヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンアジパミドのターポリマー(6T/6I/66)[モル比65/25/10](Poppe、Lisleらに付与された米国再発行特許第34,447号明細書)は、低温の金型で成形した場合は成形収縮および成形後収縮が大きくなる。Tgが高いヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンセバカミド(6T/6I/610)ターポリマー[モル比70/20/10](Amimotoらに付与された米国特許第5,424,104号明細書)の場合も同様のことが起こるであろう。Tgが高いヘキサメチレンテレフタルアミド/カプロラクタムのコポリマー(6T/6)[70/30](Kopietz、Betz、Blinne、Kochに付与された欧州特許第413258号明細書)もそのようなものの例であろう。TA、AA、およびHMDをベースとする、モル比55/45(米国特許第5,424,104号明細書)またはモル比65/35(米国再発行特許第34,447号明細書)のヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンアジパミドのコポリマー(6T/66)は、成形後収縮は許容できるものの、溶融加工性(すなわち熱安定性および流動性)、水分吸着、および耐膨れ性に難点がある。
【0010】
米国特許第6,140,459号明細書にさらに記載されているように、上の半芳香族ポリアミドとは別に、ポリアミド46、PPS、およびLCPが多くのE/Eコネクタ用途に使用されている。しかしながら、ポリアミド46は湿気に敏感であり、そのため、リフローはんだ付け工程条件下で膨れが見られる可能性がある。PPSは、その脆さにより、腐食の問題および部品の不良を起こしやすい。LCPは他の材料よりも良好な性能を提供することができるが、そのウエルドライン強度は低く、そして価格が高い。
【0011】
米国特許第6,140,459号明細書により提供された解決策が、難燃剤系、場合により無機フィラー、ならびにテレフタル酸(TA)、9〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、およびヘキサメチレンジアミン(HMD)から作製された半結晶性半芳香族ナイロンコポリマーを含み、このポリマーのガラス転移温度(Tg)が90℃以下であり、融解温度(Tm)が少なくとも295℃である難燃性ポリマー組成物である。この生成物は、電子コネクタに求められるSMT(表面実装技術)IR溶融リフローはんだ付け条件下において、低い成形後収縮、良好な溶融安定性および加工性、低い水分吸着、ならびに極めて優れた耐膨れ性を提供すると主張されている。
【0012】
実装に伴うピーク温度がより一層高くなり、火災の潜在的な危険性をなくすという観点での安全面の重要性が増し、小型化の結果としてより高い寸法精度を有する一層小さい部品が用いられるという様々な傾向を鑑みると、SMT条件下において、良好な溶融安定性および加工性、寸法安定性、良好な機械特性、ならびに極めて優れた耐膨れ性を示すより一層優れた難燃材料が必要である。このような材料は、幅広い耐膨れ性および幅広いはんだ付け性能を示すべきである。これらの材料が有するべき他の特性は、長い流路、薄肉の部品、低ボイドを達成するための高い流動性であり、その一方で、高い剛性および靭性等の良好な機械特性は維持される。さらに、脱型後、はんだ付け前後、および高温高湿度の環境条件に曝した後の寸法安定性が求められる。
【0013】
したがって、目的は、電気コネクタ用プラスチック筐体およびこのプラスチック筐体を備えるコネクタと、さらには、耐膨れ性という観点でより良好な性能を示すコネクタに使用することができる難燃性ポリマー材料とを提供することにある。それと同時に、この材料は、溶融安定性および加工性、機械特性、ならびに寸法安定性のバランスが良好であるべきであり、好ましくは全体のバランスも改善されている。
【0014】
この目的は、本発明によるコネクタおよびその中のプラスチック筐体によって達成され、このプラスチック筐体は、強化剤と、テレフタル酸を含むジカルボン酸および脂肪族ジアミンを含むジアミンから誘導された単位を有する半芳香族ポリアミドコポリマーとを含む強化ポリマー組成物から作製されており、
a.ジカルボン酸(A)は、脂肪族ジカルボン酸および場合によりテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)を5〜65モル%ならびにテレフタル酸(A2)を35〜95モル%の混合物からなり、
b.脂肪族ジアミン(B)は、2〜5個のC原子を有する短鎖脂肪族ジアミン(B1)を10〜70モル%および少なくとも6個のC原子を有する長鎖脂肪族ジアミン(B2)を30〜90モル%の混合物からなり、
c.テレフタル酸(A2)および長鎖脂肪族ジアミン(B2)のモル量の合計がジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し少なくとも60モル%である。
【0015】
簡潔かつ読みやすくするために、本明細書においては、この半芳香族ポリアミドコポリマーを、半芳香族ポリアミドXまたはさらに短縮してポリアミドXとも表すこととする。
【0016】
この目的はまた、難燃剤および強化剤と一緒に配合された半芳香族ポリアミドを含む強化難燃性ポリマー組成物であって、この半芳香族ポリアミドが、本明細書において上述したコネクタ用のものと同一である組成物によっても達成された。
【0017】
本発明における電気または電子コネクタ(その筐体または被覆材を含む)とは、電気または電子回路を結合する導電デバイスを意味する。この接続は、携帯機器用のように一時的なものであってもよいし、あるいは組立ておよび取外しに工具を必要とするものであってもよいし、あるいは2つの電線またはデバイスを永久的に電気的接合するものであってもよい。
【0018】
本発明の好ましい実施形態においては、コネクタのプラスチック筐体は、本明細書において上述した難燃性ポリマー組成物から作製されている。
【0019】
上記強化ポリマー組成物から作製された本発明によるプラスチックコネクタ筐体は、電子コネクタの表面実装技術(SMT)に用いられるリフローはんだ付け条件下における耐膨れ性に優れるだけでなく、良好な加工性を有し、機械的性能、収縮挙動、および寸法安定性のバランスが非常に良好である。
【0020】
本発明のE/Eコネクタは、PA46、PA6T/66、およびPA9T組成物等の他のポリアミド組成物と比較して耐膨れ性が改善されていることが見出された。このことは、「良好な耐膨れ性」を有すると認められていたPA9T等を用いた従来のポリアミドE/Eコネクタよりも本発明のE/Eコネクタの水分吸収または取り込みが実質的に高かったことを特に考慮すれば、予期せぬことであった。
【0021】
はんだ付け工程が鉛フリーで行われる傾向に加えて、E/Eコネクタがさらに小型化される傾向もある。この傾向により、高温下で反りが発生せず、良好な剛性等の機械特性を有することができる薄肉の壁を有する設計が必要となった。本発明のE/Eコネクタは、E/Eコネクタに使用するのに好適な従来のポリアミド組成物と比較して、高温下における改善された反りに対する耐性および改善された剛性を併せ持つことができる。剛性等の機械特性の改善は、典型的には、材料の配向が高くなることに起因して性能が向上する異方性材料に付随するものであることから、等方的な挙動(これに付随し、ポリマーの流れに平行および垂直な方向の線熱膨張係数が類似している)および高温下における改善された剛性を兼ね備えていることは意外なことである。
【0022】
本発明によるプラスチックコネクタ筐体中の強化ポリマー組成物はまた、PA−6T/66をベースとする対応する難燃性組成物よりも流動性が高くかつ靭性が高い。新規な本組成物はまた、Tg未満においてのみならずTgを超えても高い弾性率および非常に良好な寸法安定性を示す。本発明の組成物中の耐熱性半結晶性ポリアミドの結晶化度が比較的低いことと、さらには、純粋なポリアミドそのもののTg超における弾性率が比較的低いこととを鑑みると、このことは特に意外なことである。本発明による組成物を構成する半結晶性ポリアミドはまた、Tgが比較的高く、その幾つかの実施形態のTgは90℃を超える、すなわち、米国特許第6,140,459号明細書の上限である90℃を超え、その一方で、依然として非常に良好な寸法安定性を有している。中には、6T/DT(このポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が高く後成形収縮が高いため、150℃の成形温度で成形を行ってさえも電気コネクタに使用するのに適していないと米国特許第6,140,459号明細書で述べられている)と同程度の高いTgを有するポリマーもある。半結晶性半芳香族ポリアミドが、短鎖ジアミンとしての1,4−ジアミノブタンおよび長鎖ジアミンとしての例えばヘキサンジアミンの組合せならびにカルボン酸としてのテレフタル酸およびアジピン酸を含む(したがって、PA6T/66/46コポリマーを意味する)場合も、PA6T/66およびPA46と比較して膨れ性(blister performance)が改善されているとともに良好な寸法安定性を有しているという結果が得られた。それと同時に、本発明の組成物の他の良好な特性は維持されていた。米国特許第6,140,459号明細書に報告されているように、ポリアミド46が非常に湿気に弱く、その成形物の寸法が不安定になりやすく、リフローはんだ付け工程条件下において膨れが頻繁に観察されるという事実を鑑みると、この結果は特に意外なことである。
【0023】
本発明の第2の実施形態による強化難燃性ポリアミド組成物は、強化ポリマー組成物の上述した特性を示すだけでなく、高い絶縁破壊強度も示し、これは他の数種のポリアミド組成物さえも上回っている。
【0024】
ここで言う改善とは(該当する場合)、半芳香族ポリアミドXをベースとするポリアミド組成物と引用された先行技術によるポリアミド6T/66等のコポリアミドとの比較にそれぞれ基づくもの(ポリアミドXおよび上記コポリアミドは類似の融解温度になるように配合)であることに留意されたい。
【0025】
本発明によるプラスチックコネクタ筐体および強化難燃性ポリアミド組成物を構成する半芳香族ポリアミドXは、脂肪族ジアミンおよびジカルボン酸から誘導された単位を含む。ジカルボン酸から誘導された単位はA−A単位で表すことができ、ジアミンから誘導された単位はB−B単位で表すことができる。これに沿って、例えば、ナイロン・プラスチックハンドブック(Nylon Plastic handbook)、M.I.Kohan編、Hanser Publishers、ミュンヘン(Munich)、ISBN 1−56990−189−9(1995年)、p.5において用いられている分類に対応させて、このポリアミドをAABBポリマーと表すことができる。
【0026】
短鎖脂肪族ジアミン(B1)は、C2〜C5脂肪族ジアミンまたはその混合物である。言い換えれば、これは、2〜5個の炭素(C)原子を有している。短鎖脂肪族ジアミンは、例えば、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、および1,5−ペンタンジアミン、ならびにこれらの混合物であってもよい。好ましくは、短鎖脂肪族ジアミンは、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは1,4−ブタンジアミンである。
【0027】
長鎖脂肪族ジアミン(B2)は、少なくとも6個の炭素(C)原子を有する脂肪族ジアミンである。長鎖脂肪族ジアミンは、直鎖、分岐、および/または脂環式であってもよい。長鎖脂肪族ジアミンは、例えば、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(2−メチルペンタメチレンジアミンとしても公知)、1,5−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミン、ならびにこれらの任意の混合物であってもよい。好ましくは、長鎖脂肪族ジアミンは、6〜12個の炭素原子を有し、好適には、C8またはC10ジアミンである。好ましい実施形態においては、長鎖ジアミンは、50〜100モル%、より好ましくは75〜100モル%が、6〜9個の炭素原子を有するジアミンから構成される。こうすることにより、高温特性がより一層良好な材料が得られる。より好ましくは、長鎖脂肪族ジアミンは、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは1,6−ヘキサンジアミンである。この好ましい選択肢、特に、より好ましい1,6−ヘキサンジアミンを選択することの利点は、本発明によるコポリアミドの高温特性がより一層良好になることにある。
【0028】
脂肪族ジカルボン酸は、直鎖、分岐鎖、および/または脂環式であってもよく、その炭素原子数は特に制限されない。しかしながら、脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは4〜25個の炭素原子またはこれらの混合物を有し、より好ましくは6〜18個、よりさらに好ましくは6〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族ジカルボン酸を含む。好適な脂肪族ジカルボン酸は、例えば、アジピン酸(C6)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(C8)、スベリン酸(C8)、セバシン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、またはこれらの混合物である。好ましくは、脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物等のC6〜C10脂肪族ジカルボン酸であり、さらには、脂肪族ジカルボン酸は、C6〜C8脂肪族ジカルボン酸である。最も好ましくは、脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸である。
【0029】
芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸以外に、他の芳香族ジカルボン酸、例えば、イソフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸を含んでいてもよい。
【0030】
半芳香族ポリアミドは、好適には、テレフタル酸以外に、脂肪族ジカルボン酸および場合によりテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に加えてこれらの任意の組合せも含んでいてもよい。好ましくは、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸の量は、脂肪族ジカルボン酸およびテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)の総モル量に対し50モル%未満、より好ましくは25モル%未満である。
【0031】
本発明による組成物中の半芳香族ポリアミドにおいて、短鎖脂肪族ジアミン(B1)は、脂肪族ジアミン単位(B)の10〜70モル%を構成し、長鎖脂肪族ジアミン(B2)は、残りの30〜90モル%を構成する。
【0032】
好ましくは、短鎖脂肪族ジアミンのモル量は、短鎖および長鎖ジアミンのモル量に対し、最大で60モル%、より好ましくは50モル%、40モル%、さらには35モル%でさえある。このような短鎖ジアミンのモル量がより少ないコポリアミドの利点は、所与のTmを有するコポリアミドの場合は耐膨れ性が改善されていることにある。
【0033】
同じく好ましくは、半芳香族ポリアミド中の短鎖脂肪族ジアミンのモル量は、短鎖脂肪族ジアミンおよび長鎖脂肪族ジアミンの総モル量に対し少なくとも15モル%、より好ましくは、少なくとも20モル%である。短鎖脂肪族ジアミンのモル量が多くなるほど、ポリアミドの熱安定性は高くなる。
【0034】
脂肪族ジカルボン酸およびテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)は、ジカルボン酸単位(A)の5〜65モル%を構成し、テレフタル酸(A2)は、残りの35〜95モル%を構成する。
【0035】
好ましくは、ジカルボン酸は、少なくとも40モル%、より好ましくは少なくとも45モル%、さらには少なくとも50モル%がテレフタル酸から構成される。テレフタル酸の量を増加させることの利点は、高温特性がさらに改善されることにある。同じく好ましくは、脂肪族ジカルボン酸および場合によりテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)の量は、ジカルボン酸の少なくとも10モル%、より好ましくは少なくとも15モル%である。この量を増加させることの利点は、組成物の加工性が向上することにある。
【0036】
非常に好ましい実施形態においては、ジカルボン酸(A)は、テレフタル酸(A2)をジカルボン酸のモル量に対し50〜85モル%ならびに脂肪族ジカルボン酸および場合によりテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)を50〜15モル%からなり、その中にテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が少量でも存在する場合、その量は、脂肪族ジカルボン酸およびテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)の総モル量に対し25モル%未満であり、かつ脂肪族ジアミン(B)は、脂肪族ジアミンの総モル量に対し長鎖ジアミン(B2)を40〜80モル%および短鎖ジアミン(B1)を60〜20モル%からなる。この好ましい組成物は、膨れ性(blistering properties)、絶縁破壊強度、加工挙動、および機械特性の全体のバランスがより良好である。
【0037】
長鎖脂肪族ジアミンの最小量が脂肪族ジアミンの総モル量に対し30モル%であり、テレフタル酸の最小量がジカルボン酸のモル量に対し35モル%であるのに対し、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対するテレフタル酸および長鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計は少なくとも60モル%である。その結果として、長鎖脂肪族ジアミンの相対量が最小の30モル%である場合、テレフタル酸の相対量は少なくとも90モル%となる。同様に、テレフタル酸の相対量が最小の35モル%である場合、長鎖脂肪族ジアミンの相対量は少なくとも85モル%となる。
【0038】
他の非常に好ましい実施形態においては、テレフタル酸(A2)および長鎖脂肪族ジアミン(B2)のモル量の合計は、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し少なくとも65モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、よりさらに好ましくは少なくとも75モル%である。テレフタル酸(A2)および長鎖脂肪族ジアミン(B2)のモル量の合計がより高いポリアミドの利点は、より高い絶縁破壊値により高い熱安定性および良好な溶融加工性を兼ね備えたポリアミドとなることにある。好適には、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対する上記合計は、70〜85モル%の範囲にあるかまたは75〜80モル%の範囲にさえある。
【0039】
本発明によるポリアミドは、ジカルボン酸(AA)およびジアミン(BB)から誘導されたA−A−B−B単位以外に、脂肪族アミノカルボン酸(AB単位)および対応する環式ラクタム等の他の構成要素から誘導された単位に加えて、少量の分岐剤および/または連鎖停止剤を含んでいてもよい。
【0040】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミン以外の構成要素から誘導された単位を、ポリアミドの総質量に対し、最大で10質量%、より好ましくは最大で8質量%、よりさらに好ましくは最大で5質量%含む。最も好ましくは、本発明によるポリアミドは、この種の他の構成要素を全く含まず、ジカルボン酸およびジアミンから誘導されたA−A−B−B単位のみからなる。その利点は、物流上(logistically)工程がより簡素化されることと、結晶性がより高くなることにある。
【0041】
好ましくは、半芳香族ポリアミドのガラス転移温度(Tg)は100℃を超え、より好ましくは少なくとも110℃であり、さらには少なくとも120℃でさえある。好ましくは、Tgは、最高で140℃、より好ましくは最高で130℃である。同様に好ましくは、半芳香族ポリアミドの融解温度(Tm)は少なくとも295℃、好ましくは少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも310℃である。好ましくは、Tgは、最高で340℃、より好ましくは最高で330℃である。Tmがより高くなることにより、耐膨れ性がより高くなる。TgおよびTmがこれらの範囲内にあることのさらなる利点は、耐膨れ性、寸法安定性、および加工挙動のバランスがより良好になることにある。
【0042】
本明細書におけるTgおよびTmは以下の方法を用いてDSCにより測定される。融解点(温度)という用語は、本明細書においては、ASTM D3417−97/D3418−97に準拠し、DSCにより昇温速度を10℃/分として測定した場合に、融解範囲内で最も高い融解速度を示す温度と理解される。本明細書におけるガラス転移点という用語は、ASTM E1356−91に準拠して、DSCにより昇温速度を10℃/分として測定した場合に、元の温度曲線(parent thermal curve)の変曲点に相当する、元の温度曲線の1次微分(時間に対する)のピーク温度として定められる温度と理解される。
【0043】
上記半芳香族ポリアミドの粘度は広い範囲内で変化してもよい。意外なことに、上記半芳香族ポリアミドの相対粘度は1.6という低さであっても、それを下回ってさえもよく、その一方で、強化剤および難燃剤の両方を含む強化難燃性組成物の場合でさえも、耐膨れ性および良好な機械特性を依然として維持していることが観察されている。通常、このような低分子量のポリアミド、特に半芳香族ポリアミドは非常に脆いという難点があり、この性質は、フィラー材および難燃剤を含有させると向上する。本発明による強化難燃性組成物は、引用した先行技術による半芳香族ポリアミドを含む対応する組成物と比較して、靭性が改善されている。
【0044】
好ましくは、相対粘度は、少なくとも1.7、より好ましくは1.8、さらには1.9である。この種の成形部品の機械特性を保持することが非常に重要であり、このように相対粘度が低い場合にもやはり当てはまる。同じく好ましくは、相対粘度は、4.0未満、より好ましくは3.5未満、よりさらに好ましくは3.0未満である。このように相対粘度がより低いことの利点は、成形時の流動性がより高く、より薄肉の構成要素を有する成形部品を作製できることにある。この相対粘度の値は、ISO307、第4版の方法に準拠して96%硫酸中で測定された相対粘度に関連することに留意されたい。
【0045】
上記半芳香族ポリアミドはまた、相対粘度の高い半芳香族ポリアミドおよび相対粘度が低い半芳香族ポリアミドのブレンドからなるものであってもよい。好適には、このブレンドは、相対粘度が少なくとも1.8、より好ましくは少なくとも1.9の構成要素および相対粘度が1.7未満、より好ましくは1.6未満の構成要素を含む。相対粘度が少なくとも1.9である第1の構成要素は、分子量が少なくとも10,000であってもよく、一方、相対粘度が1.6未満である第2の構成要素は、分子量が7,500未満、好ましくは5,000未満であってもよい。第1および第2の構成要素は幅広い範囲内で変化する重量比で存在してもよく、好ましくは19:1〜1:1、より好ましくは9:1〜3:1の範囲にある。粘度が比較的低い第2の構成要素が存在することの利点は、ポリアミド組成物の成形挙動がさらに改善され、それによって一層薄肉の壁を有する部品の成形が可能になることにある。
【0046】
本発明のコネクタ筐体を作製することができる強化ポリマー組成物は、半芳香族ポリアミドXを幅広い範囲内で変化する量で含んでいてもよい。好適には、強化ポリマー組成物の総重量に対する半芳香族ポリアミドの量は25〜95重量%の範囲にあり、より好ましくは、本組成物中に35〜90重量%が含まれ、さらには45〜85重量%でさえある。本発明による難燃性ポリアミド組成物においても、半芳香族ポリアミドは幅広い範囲内で変化する量で存在してもよい。難燃剤も含有されているため、通常、相対量はより少なくなるであろう。好適には、その中の半芳香族ポリアミドXの量は25〜80重量%の範囲にあり、より好ましくは、この組成物は、半芳香族ポリアミドを25〜60重量%含み、さらには30〜50重量%でさえある。
【0047】
本発明によるコネクタ筐体および組成物は、半結晶性半芳香族ポリアミドおよび強化剤および任意的な難燃剤系以外に1種以上の他の構成要素を含んでいてもよい。難燃剤系は、高分子難燃剤を含んでいてもよい。他の構成要素には、耐熱性半結晶性半芳香族ポリアミドおよび任意的な高分子難燃剤以外のポリマーまたは高分子系の構成要素が含まれていてもよい。このような他のポリマーは、例えば、ゴムおよび熱可塑性ポリマーを含んでいてもよい。ゴムは、好適には、耐衝撃性改良剤を含む。熱可塑性ポリマーは他のポリアミドであってもよい。好ましくは、このポリアミドは、融解温度が耐熱性半結晶性半芳香族ポリアミドの融解温度よりも低い半結晶性ポリアミドである。
【0048】
他のポリマーは、好ましくは、組成物の総重量に対し25重量%未満の量、より好ましくは(もし存在する場合は)1〜20重量%、よりさらに好ましくは2〜15重量%、最も好ましくは5〜10重量%の量で存在する。
【0049】
他のポリマーの含有量がより少ないこと、特に、ポリアミド−46やポリアミド−6T/66のようなポリマーが存在しないことの利点は、例えば、より高温および高湿度の環境条件に曝された後も絶縁耐力がより良好に保持されることにある。
【0050】
難燃剤系は、ハロゲン系難燃剤および/または非ハロゲン系難燃剤に加えて(上記難燃剤またはこれらの組合せ以外に)、場合により難燃相乗剤も含んでいてもよい。ハロゲン系難燃剤は、臭素化ポリマー、例えば、臭素化ポリスチレン、ポリブロモスチレンコポリマー、臭素化エポキシ樹脂および/または臭素化ポリフェニレンオキシドであってもよい。好適には、ハロゲン系難燃剤は、臭素含有量が高い、例えば、61〜70重量%の範囲にある臭素化ポリスチレンである。臭素含有量がより高ければ、難燃剤の充填量を減らして流動性をより高くすることができる。非ハロゲン系難燃剤は、好適には、窒素含有難燃剤、リン含有難燃剤、ならびに/または窒素およびリン含有難燃剤であってもよい。好適な非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン酸エステル、特に、ポリリン酸メラミン等のポリリン酸エステルならびにホスフィン酸塩、特に、ジエチルホスフィン酸カルシウムおよびアルミニウム等の有機ホスフィン酸の金属塩である。好適な相乗剤の例は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等のアンチモン化合物ならびに他の金属酸化物ならびにホウ酸亜鉛および他の金属ホウ酸塩である。好ましくは、相乗剤は、耐膨れ性を改善させるホウ酸亜鉛である。
【0051】
好適には、難燃剤系は、組成物の総重量に対し1〜40重量%、好ましくは5〜35重量%の総量で存在する。好ましくは、難燃剤は、組成物の総重量に対し5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%の量で存在し、相乗剤は、好ましくは0〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%、よりさらに好ましくは5〜10重量%の量で存在する。
【0052】
強化剤は、ガラス繊維や炭素繊維等の異なる繊維状材料を含んでいてもよく、その中ではガラス繊維が好ましい。好適には、強化剤は、組成物の総重量に対し5〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは25〜40重量%の量で存在する。前述したように、強化剤は、Tgを超えた組成物の弾性率を増大させる作用が強く、その増加の幅が、他の数種のポリアミドに用いた場合よりも大きい。このことにより、強化剤の量を制限しながら依然として非常に良好な機械特性に到達させることができる。強化剤の量が少なければ、強化剤が制限されることによって、特定の難燃性水準に到達させるための難燃剤の量を制限することも可能になる。このことは特に非ハロゲン系難燃剤の場合に当てはまる。全体的な効果は、例えば、本発明の組成物中の半結晶性ポリアミドが、たとえポリアミド4,6等のように短鎖脂肪族ジアミンおよび脂肪族カルボン酸をベースとするAABB単位を含むとしても、ポリアミド4,6に必要とされるよりもはるかに少ない、他の半芳香族ポリアミドと同程度の量で、良好な難燃性を得ることが可能になることである。さらなる利点は、これらの組成物の流動性が、類似の機械特性を有する対応する組成物(例えば、ポリアミド6T/66をベースとするもの)よりもはるかに高いことにある。
【0053】
本発明の組成物を構成してもよい他の添加剤としては、無機フィラーおよび射出成形化合物中に用いられる助剤が挙げられる。無機フィラーは、例えば、ガラスフレークおよび鉱物フィラー(クレー、カオリン、ワラストナイト、およびタルク、および他の鉱物等)ならびにこれらの任意の組合せである。無機フィラーの量は幅広い範囲内で変化してもよいが、組成物の総重量に対し0〜25重量%の範囲が適している。
【0054】
助剤とは、ポリアミド成形用組成物を作製する当業者に公知の、上記ポリアミド組成物中に通常含まれる添加剤と理解される。好適な助剤は、例えば、UV安定剤、熱安定剤、酸化防止剤等の安定剤、着色剤、加工助剤(例えば、離型剤および潤滑剤)、流動性向上剤(ポリアミドオリゴマー等)、ならびに耐衝撃性改良剤である。助剤の量は幅広い範囲内で変化してもよいが、組成物の総重量に対し0〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲が適している。
【0055】
本発明の好ましい実施形態においては、コネクタ筐体は、
半芳香族ポリアミドXを25〜85重量%と、
強化剤を5〜50重量%と、
以下の群:
難燃剤系を最大で50重量%、
半芳香族ポリアミドおよび高分子難燃剤以外のポリマーを最大で25重量%、
無機フィラーを最大で25重量%、ならびに/または
他の添加剤を最大で10重量%
から選択される少なくとも1種の構成要素を指定された量と
からなるポリマー組成物から作製されており、重量百分率(重量%)は、組成物の総重量に対するものである。
【0056】
本発明のより好ましい実施形態においては、ポリマー組成物は、
半芳香族ポリアミドを25〜80重量%と、
強化剤を5〜50重量%と、
難燃剤系を1〜40重量%と、
半芳香族ポリアミドおよび高分子難燃剤以外のポリマーを0〜25重量%、
無機フィラーを0〜25重量%、ならびに/または
助剤を0〜5重量%と
からなる難燃性組成物であり、重量百分率(重量%)は、組成物の総重量に対するものである。
【0057】
本明細書における他のポリマー、無機フィラー、および助剤は任意的な構成要素であり、つまり、これらのうちのどれも存在しないかまたは1種のみもしくは2種のみの組合せもしくは3種すべてが存在するかのいずれであってもよいことを意味する。好適には、少なくとも1種以上の助剤が存在する。
【0058】
より好ましくは、本組成物は、
半芳香族ポリアミドを30〜60重量%と、
強化剤を15〜45重量%と、
難燃剤系を5〜35重量%と、
助剤を0.1〜5重量%と、
半芳香族ポリアミドおよび高分子難燃剤以外のポリマーを0〜25重量%と、
無機フィラーを0〜25重量%と
からなる。
【0059】
本発明によるコポリアミドの調製は、ポリアミドおよびそのコポリマーの調製に関しそれ自体公知の様々な方法により実施することができる。好適な方法の例は、例えば、ポリアミド、Polyamide,Kunststoff Handbuch、3/4、Hanser Verlag(ミュンヘン(Muenchen))、1998年、ISBN 3−446−16486−3に記載されている。コポリアミド、難燃剤系、および強化剤、および1種以上の添加剤を含む難燃性組成物も、当業者に公知の標準的なコンパウンディング法により、例えば二軸押出機で作製することができる。
【0060】
本明細書に記載されている本発明によるコネクタ用のポリマー組成物は、表面実装された電気/電子機器に使用されるプラスチック部品に成形することができ、この部品はより過酷なはんだ付け工程条件下においてより良好な耐膨れ性を提供する。
【0061】
成形は、プラスチック射出成形の当業者に公知の射出成形法により実施してもよい。半芳香族ポリアミドXを含む組成物の成形性が良好であることはこの種の工程において有利である。成形性の測定には、ポリマー組成物を規定の幅および厚みのキャビティ内に規定の溶融温度および射出圧力、例えば、80MPa、90MPa、および/または100MPaで射出成形し、射出成形された試験片の長さを測定するバーフロー法またはスパイラルフロー法を適用してもよい。この試験方法の違いは、前者は試験片が直線状である一方、後者はスパイラル様形状であることにある。本発明による難燃性組成物が良好な成形性を保持していることがスパイラルフロー試験により実証されている。本発明によるコネクタ筐体を作製する場合、半芳香族ポリアミドXを含むポリマー組成物の、半芳香族ポリアミドXの融解温度をわずかに上回る温度におけるスパイラルフロー長は、幅広い範囲で変化してもよい。上記組成物は高温安定性を有しているので、射出成形装置の設定温度および結果として得られる溶融物の温度は、ポリアミドを著しく分解させることなくスパイラルフロー長をさらに短くするのに実質的に十分に昇温してもよい。しかしながら、好ましくは、寸法が280×15×1mmのスパイラルキャビティにて半芳香族ポリアミドXの融解温度よりも10℃高い温度および80MPaの有効射出圧力で測定されるポリマー組成物のスパイラルフロー長は、少なくとも100mm、より好ましくは少なくとも120mm、よりさらに好ましくは少なくとも133mmである。
【0062】
本発明はまた、電気コネクタ用プラスチック筐体にも関する。好ましい実施形態においては、プラスチック筐体は、上述した難燃性ポリアミド組成物を含む。本発明はまた、電気または電子用途において電気回路を結合するための電気コネクタであって、導電素子およびこの導電素子の少なくとも一部が嵌め込まれたプラスチック筐体を備え、このプラスチック筐体が上述した特許請求の範囲のいずれかによる難燃性ポリアミド組成物を含む、コネクタにも関する。
【0063】
電気コネクタは、例えば、I/Oコネクタ、カードコネクタ(PCBコネクタ等)、FPC(平板状プリント回路)コネクタもしくはFFC(フラットフレキシブルケーブル)コネクタ、高速伝送用コネクタ、端子台型、MID(封入された集積デバイス(moulded integrated device))コネクタ、雌雄(plug and socket)コネクタ、テストソケット、またはこれらの任意の組合せであってもよい。例えば、プリント回路基板(PCB)に実装された端子台がこの基板にはんだ付けされ、この端子台の電線に接続される側(half)をPCBにはんだ付けされた部分から離脱させることが可能な分離型(pull−apart version)にすることも可能である。
【0064】
本発明による電気コネクタ用筐体および対応する電気コネクタは特性が向上しており、コネクタの様々な用途に有利に使用することができる。I/Oコネクタの場合の利点は、膨れが低減され、難燃剤および/または繊維強化剤の充填量が少なくても剛性が高くなることにある。
【0065】
I/Oコネクタは、例えば、バッテリー用コネクタ装置用、携帯電話等の携帯機器用、または事務機器用コネクタであってもよい。これらの用途には、通常、はんだ付けステップを含むSMT(表面実装技術)実装工程が伴う。本発明による筐体は、はんだ付け工程の際に非常に良好な寸法安定性を示す。この用途においては、コネクタが小型化される(ピッチおよびフォームファクターがより細かくなる)ことにより、機械特性が一層決定的なものになる(PCB上の引き剥がし強さ、コンタクト部の高い予圧、過酷な環境試験(高湿度下におけるサーマルショック)。難燃性だけでなく非難燃性組成物をベースとする本発明によるI/Oコネクタもこれらの面で十分な性能を示す。
【0066】
I/Oコネクタはまた、自動車に使用されるコネクタ、すなわち自動車の電気および電子系統(例えば、ECUヘッダ、密閉型コネクタ、ABSモジュール)に使用されるコネクタであってもよい。本発明による筐体は、低吸湿性および寸法安定性、低反り性および良好な機械特性(高温下においても)、良好な耐薬品性を提供し、レーザー溶接が可能であり、自動車用コネクタ用途に求められるあらゆる特性を有している。
【0067】
カードコネクタの場合は、小型化されることによって組立ておよび使用中の機械的な力がより一層高くなるので、より高い流動性を有すると同時により強度が高くかつ反りが小さい材料が必要となる。本発明による筐体は、ポリアミド−6,6をベースとする対応する組成物よりも流動性が高く、反りがポリアミド−46さえも下回る一方で、依然として非常に良好な機械特性を示す。これらの用途においては、コンタクト部に高い予圧が加わっており(高さが低減されているため)、その結果として筐体の機械的負荷が高くなる。これは、リフローはんだ付けにおいては重大なことである。これらの用途には長い間LCPが使用されているが、厚みが低減された場合は危険である。本発明によるコネクタは、高温(SMT温度)下で高い剛性を維持する。
【0068】
カードコネクタは、好適には、PCBコネクタ、FPC(平板状プリント回路)コネクタ、またはFFC(フラットフレキシブルケーブル)コネクタである。特にFPCおよびFFCコネクタの場合は、良好な流動性、高剛性、低吸湿性、および良好な寸法安定性が決定的なパラメータとなり、これらの特性は、本発明によるプラスチック筐体においては十分にバランスがとれている。
【0069】
本発明によるプラスチック筐体はまた、非常に安定な誘電特性も示し、室温のみならずそれを超える幅広い温度範囲において、高湿度条件下においてさえも、誘電応答が非常に低くかつ誘電率が低く、この点に関しては、先行技術によるポリアミド6T/66等の対応する半芳香族ポリアミドよりも良好な性能を示す。このことは高速伝送用コネクタにとって重要な利点である。高速伝送用コネクタは、例えば、高速バックプレーンコネクタ(レベル(level)3コネクタ)またはhdmi/UDI/ディスプレイポートコネクタ(高品位テレビ用)である。
【0070】
本発明による筐体および対応するコネクタのさらなる利点は、これらの筐体が作製されるポリアミド組成物が、組成物が難燃剤系を含む場合でさえも、CTI(比較トラッキング指数)が高く、同様に絶縁耐力も高いことにある。このCTI値は、例えば、ポリアミド66/6Tから作製された対応する製品よりもはるかに高い。CTI値が高いコネクタは、高電圧用途、特に、端子台および鉄道用途(高電圧)に使用されるコネクタ用として非常に好適であり、小型化が進むことによって必要とされるように、コネクタの寸法をさらに低減することも可能になる。典型的には、CTI値は400Vを超え、これはUL746−Aに準拠するクラスIに適合する。強化剤としての通常のガラス繊維、および通常の難燃剤(メラミンおよび/またはリン酸エステル誘導体をベースとする非ハロゲン系難燃剤(例えば、ポリリン酸メラミンおよびリン酸エステルの金属塩)ならびにポリブロモスチレン等のハロゲン含有ポリマーをベースとするハロゲン系難燃剤系)、およびホウ酸亜鉛等の難燃相乗剤を一緒に配合し、CTIを低下させる添加剤を除外するかまたは制限すると、600V以上のCTI値を達成することができ、したがって、UL746−Aに準拠するクラス0に適合する。CTIに影響がないかまたはCTIに好ましい効果のある添加剤の選択およびCTIに悪影響のある添加剤の回避またはその量の制限に関しては、CTI要件全般および特にULの規定に適合する射出成形品を作製する当業者が一般知識および日常的な実験に基づいて選択することができる。高いCTI値に良好な機械特性および低反り性が両立されることにより、産業用高電圧端子台に有利に使用することができる。好ましくは、本明細書において使用される本発明による筐体および難燃性材料のCTIは、少なくとも500V、より好ましくは少なくとも600VのCTIを有する。
【0071】
本発明はさらに、本明細書で上述した上記電気コネクタの、リフローはんだ付けステップを含むSMT工程における使用およびはんだ付けステップを含むSMT工程により実装された電気コネクタを備える電気または電子機器に関する。本工程は、リフローはんだ付けステップではなく加熱ステップを含む類似の実装ステップを含んでいてもよい。この加熱ステップにおいては、半芳香族ポリアミドXを含むポリマー組成物の膨れ性(blister properties)によりピーク温度を幾分高くすることができる。この温度は、250℃以上という高さであってもよく、好適には、260℃〜300℃、好ましくは270℃〜280℃の範囲にある。熱負荷が非常に短い、すなわちピーク温度に曝される時間が非常に短い場合は、ピーク温度は300℃を超えてさえもよい。
【0072】
現在利用可能なはんだ付け方法は幾つかある。その中には、蒸気相はんだ付け、フローはんだ付け、ディップはんだ付け、IRリフローはんだ付け、および従来の熱風はんだ付けが含まれる。本出願において特許請求される半芳香族ポリアミドの難燃性組成物は、以下の表に示す試験の膨れに関する結果から予想されるように、非常に優れた耐はんだ付け性を提供する。上述のはんだ付け工程は、デバイスを電子回路基板上に表面実装するための非常に生産的な方法を提供するものである。これらの工程における実装ステップ(いずれも加熱ステップを含む)は、一般に加熱はんだ付けステップを含む工程として分類することができる。
【0073】
以下の実施例および比較実験を用いて本発明を例示する。
【0074】
[実施例]
最初に、実施例1〜5(E−1〜E−5)ならびに比較例(CE)A、B、C、およびF用ポリアミドポリマーを調製することにより、E/Eコネクタの作製に使用されるポリアミド組成物を準備した。比較例DおよびEは、開閉器等の電気装置用に配合された市販のガラス繊維強化された難燃性ポリアミド組成物とした。
【0075】
[ポリマーの調製]
[E−1ポリマー:PA−6T/4T/46(モル比67.5/21.3/11.2)]
テトラメチレンジアミン179.8g、ヘキサメチレンジアミン347.25g、水537g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.36g、アジピン酸72.36g、およびテレフタル酸653.38gの混合物を2.5リットルのオートクレーブに仕込み、加熱撹拌しながら水を蒸留によって除去した。ポリアミドの調製中に失われるテトラメチレンジアミンを補うために、ポリアミド組成物の組成の計算値よりもわずかに(約2〜4重量%)過剰のテトラメチレンジアミンを用いたことに留意されたい。約27分後に塩の91重量%水溶液を得た。この工程の間、温度を169℃から223℃に昇温した。温度を210℃から226℃に昇温しながら21分間重合を実施し、その間、圧力を1.3MPaに昇圧し、その後、オートクレーブの内容物をフラッシュし、固体生成物を窒素中でさらに冷却した。次いで、こうして得られたプレポリマーを乾燥炉にて真空および0.02MPaの窒素気流中、125℃で数時間加熱することにより乾燥させた。乾燥したプレポリマーを、金属製の管状反応器(d=85mm)内で、窒素気流(2400g/h)中200℃で数時間、次いで窒素/水蒸気流(重量比3/1、2400g/h))中225℃で2時間および260℃で40時間加熱することにより固相中で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0076】
[E−2ポリマー:PA−6T/4T/46(モル比74.5/10/15.5)の調製]
E−1ポリマーと同様にして、テトラメチレンジアミン127.09g、ヘキサメチレンジアミン350.05g、水487g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.66g、アジピン酸91.59g、およびテレフタル酸567.48gの混合物を2.5リットルのオートクレーブ内で加熱撹拌し、それにより、22分後に塩の91重量%水溶液を得た。この工程の間、温度を176℃から212℃に昇温した。温度を220℃から226℃に昇温しながら22分間重合を実施し、その間、圧力を1.4MPaに昇圧した。次いで、こうして得られたプレポリマーを、乾燥炉にて真空および0.02Mpaの窒素気流中、125℃および180℃で数時間加熱することにより乾燥させた。このプレポリマーを、金属製の管状反応器(d=85mm)内で、窒素気流(2400g/h)中190℃および230℃で数時間、次いで窒素/水蒸気流(重量比3/1、2400g/h)中251℃で96時間加熱することにより固相中で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0077】
[E−3ポリマー:PA−6T/5T/66(モル比70/15/15)に相当するPA−6T/56(モル比85/15)の調製]
ペンタメチレンジアミン(98重量%)55.3g、ヘキサメチレンジアミン水溶液(59.6重量%)529.7g、水360.4g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.5g、アジピン酸67.2g、およびテレフタル酸433.04gの混合物を2.5リットルのオートクレーブに仕込み、加熱撹拌しながら水を蒸留によって除去した。35分後に塩の90重量%水溶液を得た。その間、温度を170℃から212℃に昇温した。次いで、オートクレーブを密閉した。温度を212℃から250℃に昇温しながら25分間重合を実施した。この混合物を250℃で15分間撹拌し、その間、圧力を2.9MPaに昇圧し、その後、オートクレーブの内容物をフラッシュし、固体生成物を窒素中でさらに冷却した。このプレポリマーを、金属製の管状反応器(d=85mm)内で、窒素気流(2400g/h)中200℃で数時間、次いで窒素/水蒸気流(重量比3/1、2400g/h))中230℃で2時間および260℃で24時間加熱することにより固相中で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0078】
[E−4ポリマー:PA−6T/5T/56(モル比75.5/15/9.5)の調製]
ペンタメチレンジアミン(98重量%)78.4g、ヘキサメチレンジアミン水溶液(59.6重量%)473.3g、水382.56g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.5g、アジピン酸42.6g、およびテレフタル酸461.5gの混合物を2.5リットルのオートクレーブに仕込み、加熱撹拌しながら水を蒸留によって除去した。35分後に塩の90重量%水溶液を得た。その間、温度を170℃から212℃に昇温した。次いで、オートクレーブを密閉した。温度を212℃から250℃に昇温しながら25分間重合を実施した。混合物を250℃で15分間撹拌し、その間、圧力を2.8MPaに昇圧し、その後、オートクレーブの内容物をフラッシュして固体生成物を窒素中でさらに冷却した。次いで、E−1ポリマーと同様にしてプレポリマーを乾燥させ、固相中で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0079】
[E−5ポリマー:PA−6T/66/56(モル比76.5/12/11.5)の調製]
ペンタメチレンジアミン(98重量%)36.9g、ヘキサメチレンジアミン水溶液(59.6重量%)553.0g、水351.2g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.5g、アジピン酸105.8g、およびテレフタル酸391.4gの混合物を2.5リットルのオートクレーブに仕込み、加熱撹拌しながら水を蒸留によって除去した。35分後に塩の90重量%水溶液を得た。その間、温度を170℃から212℃に昇温した。次いで、オートクレーブを密閉した。温度を212℃から250℃に昇温しながら25分間重合を実施した。この混合物を250℃で20分間撹拌し、その間、圧力を2.8MPaに昇圧し、その後、オートクレーブの内容物をフラッシュして固体生成物を窒素中でさらに冷却した。次いで、E−1ポリマーと同様にしてプレポリマーを乾燥させ、固相中で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0080】
[CE−Aポリマー:PA6T/66(モル比60/40)]
ポリマーIと同様にして、ヘキサメチレンジアミン520g、水537g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.36g、アジピン酸330g、およびテレフタル酸420gの混合物を2.5リットルのオートクレーブ内で加熱撹拌し、それにより、27分後に塩の91重量%水溶液を得た。この工程の間、温度を169℃から223℃に昇温した。温度を210℃から226℃に昇温しながら21分間重合を実施し、その間、圧力を1.3MPaに昇圧した。次いで、E−1ポリマーと同様にしてプレポリマーを乾燥させ、固相中で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0081】
[CE−B、Cポリマー:PA46]
ポリマーIと同様にして、テトラメチレンジアミン430.4g、水500g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.33g、およびアジピン酸686.8gの混合物を2.5リットルのオートクレーブ内で加熱撹拌し、それにより、25分後に塩の90重量%水溶液を得た。この工程の間、温度を110℃から162℃に昇温した。温度を162℃から204℃に昇温しながら重合を実施し、その間、圧力を1.3MPaに昇圧した。次いで、E−1ポリマーと同様にしてプレポリマーを乾燥させ、固相中で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0082】
[比較例CE−F:PA−6T/5T(モル比56/44)の調製]
ペンタメチレンジアミン201.4g、ヘキサメチレンジアミン300.8g、水521.1g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.65g、およびテレフタル酸722.18gの混合物を2.5リットルのオートクレーブに仕込み、加熱撹拌しながら水を蒸留によって除去した。27分後、塩の90重量%水溶液を得た。この間、温度を170℃から211℃に昇温した。次いで、オートクレーブを密閉した。温度を211℃から250℃に昇温しながら15分間重合を実施した。混合物を250℃で29分間撹拌し、その間、圧力を2.9MPaに昇圧した。その後、オートクレーブの内容物をフラッシュして固体生成物を窒素中でさらに冷却した。次いで、E−3ポリマーと同様にしてプレポリマーを乾燥させ、固相中で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0083】
[コンパウンドの調製]
E−1〜E−5、CE−A〜C、およびCE−Fはまた、以下の構成要素も含むものとした:
・標準的なグレードのポリアミド用ガラス繊維、
・難燃剤:臭素化ポリスチレン(Albermarleより入手可能なSaytex(登録商標)HP3010)、
・難燃相乗剤:ホウ酸亜鉛(Luzenacより入手可能なFirebrake(登録商標)500)、ならびに
・離型剤および安定剤のパッケージを含む助剤。
【0084】
比較実験DおよびEは、市販品:CE−Dはデュポン(DuPont)からのPA6T/66製品であるザイテル(Zytel)HTNFR52G30BL、CE−Eはクラレ(Kururay)からのPA9T製品であるジェネスター(Genestar)GN2332 BKをベースとするものとした。従来の分析法を用いてこれらの市販品に使用された臭素化ポリスチレン、相乗剤、および助剤の比率を推定した。ジェネスターのPA9T製品の分析から、ポリアミド成分は、モル比が約20:80のPA8TおよびPA9Tからなることがわかった。
【0085】
E−1〜E−5、CE−A〜C、およびCE−Fのコンパウンドを、325℃の一定温度に設定したWerner&Pfleiderer KSK 4042D押出機で調製した。ガラス繊維(これは別個にサイド供給ポートから溶融物中に投入)以外の全構成要素を押出機の供給ポートに投入した。溶融ポリマーを脱泡して押出機の末端でストランドにして冷却し、切断して顆粒状にした。コンパウンディングした組成物および市販の組成物を表1に示す。
【0086】
[射出成形]
上述した材料を射出成形に使用する前に以下の条件を適用することにより予備乾燥を行った:コポリアミドを0.02Mpaの真空中、80℃に加熱し、窒素気流を通過させながらこの温度および圧力を24時間維持した。予備乾燥した材料を、スクリュー径が22mmのアーブルグ(Arburg)5射出成形機および0.8mmのCampus UL射出成形用2ピース型金型(2 body injection mould)で射出成形した。シリンダの壁面温度を345℃に設定し、金型温度を140℃に設定した。こうして得られたCampus ULバーをさらなる試験に用いた。
【0087】
【表1】

【0088】
[試験方法]
相対粘度(RV)は、1質量%のギ酸溶液中で測定した。
【0089】
スパイラルフローは、寸法が280×15×1mmのスパイラルキャビティを用いて、半芳香族ポリアミドXの融解温度を10℃超える温度で有効射出圧力を80MPaとして測定した。
【0090】
[DSCによる熱的評価]
融解点(T)およびガラス転移温度(T)は、ASTM D3417−97 E793−85/794−85に準拠し、示差走査熱量分析(DSC)(2nd run、10℃/分)を用いて測定した。
【0091】
縦弾性率は、ISO 527に準拠し、23℃、5mm/分で引張試験を行うことにより測定した。
【0092】
衝撃試験(ノッチ付きシャルピー)は、ISO 179/1Aに準拠し、23℃で測定した。
【0093】
[水分/湿気吸収(取り込み)試験]
予備乾燥した試料(0.8mmのULバー)を加湿キャビネットまたは蒸留水の容器内で予め設定した温度および湿度で状態調整し、飽和水準に到達するまで重量増加を観測した。飽和水準における重量増加を、予備乾燥した試料の開始時の重量の百分率として求めた。
【0094】
[リフローはんだ付け条件下における膨れ性]
リフローはんだ付け条件下における膨れ性に関しては、上述した吸水試験と同様にして、多数の予備乾燥した試料を、予め設定した温度および湿度の加湿キャビネット内で状態調整した。異なる時間間隔で個々の試料(10個組で)をキャビネットから取り出し、すぐに周囲条件で室温に冷却し、リフローオーブンに装入し、リフローはんだ付け工程で適用される温度条件に付した。適用された温度プロファイルを以下に示す。まず最初に試料を平均1.5℃/秒の加熱勾配で80秒後に140℃の温度に到達するまで予備加熱し、その後、試料をより緩やかに加熱することにより開始から210秒後に160℃の温度に到達させた。次いで、最初の加熱勾配である約6℃/秒で220秒後に220℃の温度に到達させ、より緩やかな加熱速度である2℃/秒で開始から290秒後に260℃の温度に到達させることにより試料を260℃まで加熱した。その後、試料を20秒間で140℃に冷却した。次いで、オーブンから10個の試料を取り出し、室温に放冷し、膨れの存在を検査した。それぞれ加湿キャビネット内に載置された期間条件ごとに膨れが発生した試料の割合で評価した。膨れを有する試料の百分率を記録した。
【0095】
線熱膨張係数は、ISO 11359−1/−2に準拠して測定した。
【0096】
試料(DAM)の誘電率は、IEC 60250に準拠し、周波数3Ghz、23℃で測定した。
【0097】
試料(DAM)の絶縁耐力は、IEC 60243−1に準拠して測定した。
【0098】
比較トラッキング指数は、IEC 60112に準拠して測定した。
【0099】
荷重たわみ温度は、ISO 75−1/−2に準拠し、荷重1.8MPaで測定した。
【0100】
どのコンパウンドも0.8mm試験バーでUL−94−V0に適合した。
【0101】
[結果]
実験結果を表2に示した。
【0102】
表2に示すように、本発明の組成物は、従来のポリアミド組成物を含むE/Eコネクタのはんだ付けに付随する問題を、高温下における耐膨れ性、寸法安定性、および機械特性が改善されていると同時に、従来の組成物に要求される加工性、電気特性、および難燃性を少なくとも保持しているポリアミド組成物を提供することによって解消するものである。
【0103】
本発明の組成物は、E/Eコネクタ用途に好適なポリアミド組成物に対し膨れ性が改善されていることが見出された。本発明の範囲の組成物は、JEDEC 2/2a膨れ試験(IPC/JEDEC J−STD−020C、2004年7月)の要件を満たすことが見出された。それとは対照的に、どの比較例もこの工業規格を満たすことはできなかった。
【0104】
JEDEC レベル2は、85℃、相対湿度85%で168時間状態調整した後の試料が、リフローはんだ付け条件後に膨れが全く観察されない場合に達成される。
【0105】
JEDEC レベル2aは、30℃、相対湿度60%で696時間状態調整した後の試料が、リフローはんだ付け条件後に膨れが全く観察されない場合に達成される。
【0106】
比較例の場合は、ポリアミド9Tをベースとする組成物を含むCE−Eが最も優れた膨れ性を記録したが、依然として本発明の範囲内の組成物よりもかなり劣っていた。この発見は、CE−Eの吸湿性がより低いことに基づけば予想されたことである。実際、比較例の範囲内の膨れの結果から、膨れ性と水分の取り込み量との間に相関関係があることがわかる。
【0107】
吸湿性がより低くより疎水性の高いポリアミドを生成させることにより膨れ性の改善を達成すべきであるという教示は米国特許第6,140,459号明細書および国際公開第2006/135841号パンフレットにも存在し、ここには、テレフタル酸を含むジカルボン酸モノマーおよび10〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンから誘導された繰り返し単位を含むポリアミド組成物(例えば、PA10T)の膨れ性が改善されることが開示されている。したがって、本発明の範囲内の実施例が水の取り込みが比較的高いにも拘わらず、従来のポリアミドと比較して優れた膨れ性を示すことは意外なことである。
【0108】
比較として、引用された先行技術である米国特許第6,140,459号明細書においては、40℃、95%RHで96時間状態調整した後に膨れに関する試験が行われており、250℃までのピーク温度が適用されていることに留意されたい。これらの試験においては、PA6T/66は既に240℃で不合格になっており、PA6T/D6は210℃でさえ合格しなかった。
【0109】
比較例とは対照的に、本発明の組成物は、ポリマーの流れに対し垂直および平行方向の線熱膨張係数(CLTE)の変動がより小さいことから例示されるように、等方的な挙動を示す。この変動が小さいことにより、より低反り性の部品が得られる。部品の肉厚が低減される傾向があることから、この性質は一層重要なものになってきている。成形収縮性に関しても類似の改善が観察された。
【0110】
同様に、荷重たわみ温度(Tdef)により測定される高温下における剛性は、薄肉の壁を有する部品がはんだ付け工程中に曝される高温環境に機械的に耐えられるようにするためにますます重要なパラメータになってきている。PA66/6TおよびPA9Tをベースとする組成物のTおよびTdefの差が約20℃であることと比較すると、本発明の組成物は、構成部品が融解点の11℃以内で荷重に耐えることができ、高温下における剛性が改善されている。
【0111】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジアミンおよびジカルボン酸から誘導された単位を有する半芳香族ポリアミド(X)、強化剤、ならびに難燃剤系を含む難燃性ポリアミド組成物であって、
a)前記ジカルボン酸(A)が、脂肪族ジカルボン酸および場合によりテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)を5〜65モル%ならびにテレフタル酸(A2)を35〜95モル%の混合物からなり、
b)前記脂肪族ジアミン(B)が、2〜5個のC原子を有する短鎖脂肪族ジアミン(B1)を10〜70モル%および少なくとも6個のC原子を有する長鎖脂肪族ジアミン(B2)を30〜90モル%の混合物からなり、
c)テレフタル酸(A2)および前記長鎖脂肪族ジアミン(B2)のモル量の合計が、前記ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し少なくとも60モル%である、難燃性ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記半芳香族ポリアミドのTgが100℃を超え、かつ/またはTmが少なくとも295℃である、請求項1に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項3】
比較トラッキング指数(CTI)が少なくとも500Vである、請求項1に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項4】
前記組成物が、
前記半芳香族ポリアミドを25〜80重量%と、
前記強化剤を5〜50重量%と、
前記難燃剤系を1〜40重量%と、
前記半芳香族ポリアミド以外のポリマーを0〜25重量%、
無機フィラーを0〜25重量%、および/または
助剤を0〜5重量%と
からなり、
前記重量百分率(重量%)が前記組成物の総重量に対するものである、請求項1に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の強化剤および半芳香族ポリアミドXを含む強化ポリマー組成物を含む、電気コネクタ用プラスチック筐体。
【請求項6】
前記強化ポリマー組成物が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性ポリアミド組成物である、請求項5に記載のプラスチックコネクタ筐体。
【請求項7】
導電素子と、前記導電素子の少なくとも一部が嵌め込まれたプラスチック筐体であって、請求項5または6に記載のプラスチック筐体とを備える、電気または電子用途において電気回路を結合するための電気コネクタ。
【請求項8】
前記電気コネクタが、I/Oコネクタ、カード(PCB)コネクタ、FPC(可撓性プリント回路)コネクタ、FFC(可撓性箔回路)コネクタ、高速伝送用コネクタ、端子台、MID(封入された集積デバイス)コネクタ、もしくは雌雄コネクタ、またはこれらの任意の組合せである、請求項7に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
請求項7または8に記載の電気コネクタの、加熱はんだ付けステップを含むSMT工程における使用。
【請求項10】
加熱はんだ付けステップを含むSMT工程により実装された請求項8に記載の電気コネクタを備える電気または電子機器。

【公表番号】特表2010−534258(P2010−534258A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517305(P2010−517305)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005872
【国際公開番号】WO2009/012936
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】