説明

EP4受容体アゴニストとしてのイソインドール誘導体

本発明はインドール誘導体、その製法、該誘導体を含む医薬組成物およびその医薬における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドール誘導体、その調製方法、該誘導体含有の医薬組成物、および医薬におけるその使用に関する。
本発明の化合物はEP受容体アゴニストである。
【背景技術】
【0002】
多数の報文は、プロスタノイド受容体の特性化および治療上の関連性、ならびに最も一般的に使用される選択的アゴニストおよびアンタゴニストを記載する:Eicosanoids;From Biotechnology to Therapeutic Applications,Folco,Samuelsson,Maclouf,and Velo eds,Plenum Press,New York,1996,chap.14,137−154、およびJournal of Lipid Mediators and Cell Signalling,1996,14,83−87、およびProstanoid Receptors,Structure,Properties and Function,S Narumiyaら、Physiological Reviews 1999,79(4),1193−126。
【0003】
EP受容体は7回膜貫通型受容体であり、その天然リガンドがプロスタグランジンPGEである。PGEは他のEP受容体(タイプEP、EP、およびEP)に対しても親和性を有する。プロスタノイドEP受容体は、高レベルの細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)と一般に関連付けられる一群の受容体に分類される。EP受容体は、平滑筋弛緩、眼内圧、疼痛(特に、炎症性痛、神経因性痛、および内臓痛)、炎症、神経保護、リンパ球分化、骨代謝過程、アレルギー作用、睡眠促進、腎臓調節、胃または腸粘液分泌、および十二指腸重炭酸塩分泌に関連している。EP受容体は、NarumiyaによってProstaglandins&Other Lipid Mediators 2002,68−69 557−73で概説されるように、動脈管の閉鎖、血管抑制、炎症、および骨リモデリングにおいて重要な役割を果たす。
【0004】
多数の刊行物は、EP受容体サブタイプを介して作用するPGE、およびEPアゴニスト単独が、炎症性刺激後に炎症性サイトカインを調節できることを実証している。Takayamaらは、Journal of Biological Chemistry 2002,277(46),44147−54において、PGEが、EP受容体を介してマクロファージ由来のケモカイン産生を抑制することによって炎症性疾患時に炎症を調節することを明らかにした。Bioorganic&Medicinal Chemistry 2002,10(7),2103−2110において、Maruyamaらは、選択的EP受容体アゴニスト(ONO−AE1−437)が、IL−10のレベルを増大させながら、ヒト全血中のLPS誘導性TNF−αを抑制することを明らかにする。Anesthesiology,2002,97,170−176の論文は、選択的EP受容体アゴニスト(ONO−AE1−329)が、機械および熱痛覚過敏、ならびに急性および慢性単関節炎における炎症反応を効果的に阻害したことを示唆する。
【0005】
SakumaらのJournal of Journal of Bone and Mineral Research 2000,15(2),218−227と、MiyauraらのJournal of Biological Chemistry 2000,275(26),19819−23の独立した2つの報文は、EP受容体ノックアウトマウスから由来の培養細胞での障害のある破骨細胞の形成を報告する。Yoshidaらは、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2002,99(7),4580−4585において、PGE受容体EPサブタイプのそれぞれを欠いているマウスの使用により、EPは、PGE投与に応答して骨形成を媒介する受容体であると同定した。当該著者らはまた、選択的EP受容体アゴニスト(ONO−4819)が野生型マウスにおいて骨形成を一貫して誘導することを証明した。加えて、Teraiらは、Bone 2005,37(4),555−562において、選択的EP受容体アゴニスト(ONO−4819)の存在によって、骨形成を誘導することができる治療的サイトカインであるrhBMP−2の骨誘導能が高まることを示した。
【0006】
Larsenらによるさらなる研究は、ヒト十二指腸のセカンドパーツにおいてPGEの分泌に及ぼす効果が、EP受容体によって媒介されることを示す(Acta.Physiol.Scand.2005,185,133−140)。また、ラットにおいて、選択的EP受容体アゴニスト(ONO−AE1−329)が大腸炎から保護できることも明らかになった(Nittaら、Scandinavian Journal of Immunology 2002,56(1),66−75)。
【0007】
Doreらは、The European Journal of Neuroscience 2005,22(9),2199−206において、PGEがEPおよびEP受容体に作用することによってニューロンをアミロイドβペプチド毒性から保護しうることを明らかにした。さらには、Doreは、Brain Research 2005,1066(1−2),71−77において、EP受容体アゴニスト(ONO−AE1−329)が脳における興奮毒性の急性期モデルにおいて神経毒性から保護することを証明した。
【0008】
Woodwardらは、Journal of Lipid Mediators 1993,6(1−3),545−53において、選択的プロスタノイドアゴニストを使用して眼内圧を下げうることを見い出した。Investigative Ophthalmology&Visual Scienceでの2つの論文は、プロスタノイドEP受容体がヒト水晶体上皮細胞で発現されることを明らかにし(Mukhopadhyayら、1999,40(1),105−12)、プロスタノイドEP受容体の眼の小柱状フレームワーク中の流れの調節における生理的役割を示唆する(Hoyngら、1999,40(11),2622−6)。
【0009】
EP受容体結合活性を示す化合物は、例えば国際公開第98/55468号、国際公開第00/18744号、国際公開第00/03980号、国際公開第00/15608号、国際公開第00/16760号、国際公開第00/21532号、欧州特許第0855389号、欧州特許第0985663号、国際公開第02/50031号、国際公開第02/50032号、国際公開第02/50033号、国際公開第02/064564号、国際公開第03/103604号、国際公開第03/077910号、国際公開第03/086371号、国際公開第04/037813号、国際公開第04/067524号、国際公開第04/085430号、米国特許出願公開第04/142969号、国際公開第05/021508号、国際公開第05/105733号、国際公開第05/105732号、国際公開第05/080367号、国際公開第05/037812号、国際公開第05/116010号および国際公開第06/122403号に記載されている。
【0010】
[4−(1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル)フェニル]−2−プロピオン酸・ナトリウム塩などのインドプロフェン誘導体が、Ruferら、Eur.J.Med.Chem.−Chimica Therapeutica,1978,13,193に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第98/55468号
【特許文献2】国際公開第00/18744号
【特許文献3】国際公開第00/03980号
【特許文献4】国際公開第00/15608号
【特許文献5】国際公開第00/16760号
【特許文献6】国際公開第00/21532号
【特許文献7】欧州特許第0855389号
【特許文献8】欧州特許第0985663号
【特許文献9】国際公開第02/50031号
【特許文献10】国際公開第02/50032号
【特許文献11】国際公開第02/50033号
【特許文献12】国際公開第02/064564号
【特許文献13】国際公開第03/103604号
【特許文献14】国際公開第03/077910号
【特許文献15】国際公開第03/086371号
【特許文献16】国際公開第04/037813号
【特許文献17】国際公開第04/067524号
【特許文献18】国際公開第04/085430号
【特許文献19】米国特許出願公開第04/142969号
【特許文献20】国際公開第05/021508号
【特許文献21】国際公開第05/105733号
【特許文献22】国際公開第05/105732号
【特許文献23】国際公開第05/080367号
【特許文献24】国際公開第05/037812号
【特許文献25】国際公開第05/116010号
【特許文献26】国際公開第06/122403号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Eicosanoids;From Biotechnology to Therapeutic Applications,Folco,Samuelsson,Macloufおよび Velo編、Plenum Press,New York,1996,chap.14,137−154
【非特許文献2】Journal of Lipid Mediators and Cell Signalling,1996,14,83−87
【非特許文献3】Prostanoid Receptors,Structure,Properties and Function,S Narumiyaら、Physiological Reviews 1999,79(4),1193−126
【非特許文献4】Narumiya、Prostaglandins&Other Lipid Mediators 2002,68−69 557−73
【非特許文献5】Takayamaら、Journal of Biological Chemistry 2002,277(46),44147−54
【非特許文献6】Maruyamaら、Bioorganic&Medicinal Chemistry 2002,10(7),2103−2110
【非特許文献7】Anesthesiology,2002,97,170−176
【非特許文献8】Sakuma、Journal of Journal of Bone and Mineral Research 2000,15(2),218−227
【非特許文献9】Miyaura、Journal of Biological Chemistry 2000,275(26),19819−23
【非特許文献10】Yoshidaら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2002,99(7),4580−4585
【非特許文献11】Teraiらは、Bone 2005,37(4),555−562
【非特許文献12】Larsenら、Acta.Physiol.Scand.2005,185,133−140
【非特許文献13】Nittaら、Scandinavian Journal of Immunology 2002,56(1),66−75
【非特許文献14】Doreら、The European Journal of Neuroscience 2005,22(9),2199−206
【非特許文献15】Dore、Brain Research 2005,1066(1−2),71−77
【非特許文献16】Woodwardら、Journal of Lipid Mediators 1993,6(1−3),545−53
【非特許文献17】Mukhopadhyayら、Investigative Ophthalmology&Visual Science、1999,40(1),105−12
【非特許文献18】Hoyngら、Investigative Ophthalmology&Visual Science、1999,40(11),2622−6
【非特許文献19】Ruferら、Eur.J.Med.Chem.−Chimica Therapeutica,1978,13,193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の化合物は、本明細書に記載の生物学的アッセイにて試験した場合に、有利なインビボおよびインビトロ活性を示すことがわかった。
【0014】
本発明は、以下の:
{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−クロロフェニル}酢酸;
{3−クロロ−4−[1,3−ジオキソ−4,9−ビス(プロピルオキシ)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]フェニル}酢酸;
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸;
{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−ブロモフェニル}酢酸;
{3−ブロモ−4−[1,3−ジオキソ−4,9−ビス(プロピルオキシ)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]フェニル}酢酸;
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−ブロモフェニル)酢酸;
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸;
{3−クロロ−4−[1−オキソ−4,9−ビス(プロピルオキシ)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]フェニル}酢酸;
{3−ブロモ−4−[1−オキソ−4,9−ビス(プロピルオキシ)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]フェニル}酢酸;
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−ブロモフェニル)酢酸;および/または
その医薬上許容される誘導体からなる群より選択される化合物(以下、「本発明の化合物」という)を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
医薬上許容される誘導体とは、本発明の化合物の医薬上許容される塩、溶媒和物、もしくはエステル、またはこのようなエステルの塩もしくは溶媒和物、あるいはレシピエントに投与すると、本発明の化合物またはその活性代謝物もしくは残基を(直接または間接に)提供することができる任意の他の化合物を意味する。本発明の一の実施形態において、医薬上許容される誘導体は塩またはエステル、あるいはかかるエステルの塩を意味する。
【0016】
医薬用途では、上記の塩は医薬上許容される塩であるが、他の塩は、例えば本発明の化合物およびその医薬上許容される塩の調製に使用され得ることを理解されたい。
【0017】
医薬上許容される塩としては、Berge,BighleyおよびMonkhouse、J.Pharm.Sci.,1977,66,1−19で記載されている塩が挙げられる。「医薬上許容される塩」なる語は、無機塩基および有機塩基を含めて医薬上許容される塩基から調製された塩を意味する。無機塩基に由来する塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン酸塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。医薬上許容される有機塩基に由来する塩としては、第一級、第二級、および第三級アミン塩;天然の置換アミンを含めて、置換アミン;ならびに環状アミンの塩が挙げられる。特定の医薬上許容される有機塩基としては、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどが挙げられる。塩は、塩基性イオン交換樹脂、例えばポリアミン樹脂から形成することもできる。
【0018】
本発明の化合物は、適当なプロドラッグの代謝によってインビボで産生される場合もあることを理解されたい。このようなプロドラッグは、例えば本発明の化合物の生理学的に許容される代謝的に不安定なエステルとすることができる。これらは、本発明の親化合物中のカルボン酸基のエステル化し、適切な場合には事前に分子中に存在する任意の他の反応性基を保護し、続けて必要に応じて脱保護を行うことによって生成することができる。このような代謝的に不安定なエステルの例としては、C1〜4アルキルエステル、例えばメチル、エチル、もしくはt−ブチルエステル、C3〜6アルケニルエステル、例えばアリル置換もしくは非置換アミノアルキルエステル(例えば、アミノエチル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、または2−(4−モルホリノ)エチルエステル、あるいはアシルオキシメチルまたは1−アシルオキシエチルなどのアシルオキシアルキルエステル、例えばピバロイルオキシメチル、1−ピバロイルオキシエチル、アセトキシメチル、1−アセトキシエチル、1−(1−メトキシ−1−メチル)エチルカルボニルオキシエチル、1−ベンゾイルオキシエチル、イソプロポキシカルボニルオキシメチル、1−イソプロポキシカルボニルオキシエチル、シクロヘキシルカルボニルオキシメチル、1−シクロヘキシルカルボニルオキシエチルエステル、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、1−シクロヘキシルオキシカルボニルオキシエチル、1−(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル、または1−(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチルが挙げられる。
【0019】
本発明は、すべての幾何異性型、互変異性型、および光学異性型、ならびにそれらの混合物(例えば、ラセミ混合物)を含めて、本発明の化合物およびその医薬上許容される誘導体のすべての異性体を包含することを理解されたい。
【0020】
本発明の化合物は医薬組成物で使用するためのものであるので、それぞれ実質的に純粋な形、例えば少なくとも50%の純度、より適切には少なくとも75%の純度、好ましくは少なくとも95%の純度で提供されることが理解されよう(%は、重量/重量に基づく)。本発明の化合物の純粋でない調製物は、医薬組成物で使用される純度のより高い形を調製するために使用される場合もある。本発明の中間化合物の純度はそれほど臨界的なものではないが、本発明の化合物に関しては実質的に純粋な形が好ましいことは容易に理解されよう。可能である限り、本発明の化合物は結晶形で得られることが好ましい。
【0021】
本発明の化合物のいくつかが有機溶媒から結晶化することができ、または再結晶される場合、結晶化の溶媒は、結晶生成物中に存在してもよい。本発明は、このような溶媒和物をその範囲内に包含する。同様に、本発明の化合物のいくつかは、含水溶媒から結晶化または再結晶する場合もある。このような場合、水和水をなす場合もある。本発明は、化学量論的水和物、および凍結乾燥などの方法によって生成される場合もある可変量の水を含有する化合物をその範囲内に包含する。さらに、様々な結晶化条件によって、様々な結晶多形の結晶生成物が形成され得る。本発明は、本発明の化合物のすべての結晶多形をその範囲内に包含する。
【0022】
本発明は、本発明のすべての同位体標識化合物もその範囲内に包含する。このような化合物は、その中の1つまたは複数の原子が、通常自然界に見られる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子で置換されている点以外は、本発明の化合物のリストに記載されるものと同一である。本発明の化合物およびその医薬上許容される誘導体に組み込むことができる同位体の例としては、2H、3H、11C、13C、14C、15N、17O、18Oおよび36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素および塩素の同位体が挙げられる。
【0023】
本発明の同位体標識化合物、例えば3H、14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬物および/または基質組織分布アッセイで有用である。トリチウム、すなわち3H同位体、および炭素−14、すなわち14C同位体は、それらの調製の容易さおよび検出性のため特に好ましい。11C同位体および18F同位体は、PET(ポジトロン放出断層撮影)で特に有用であり、脳画像診断で有用である。重水素、すなわち2Hなどのより重い同位体によるさらなる置換は、より高い代謝安定性、例えばin vivo半減期の増大または必要用量の低減によって生ずるある種の治療上の利点をもたらすことができ、したがっていくつかの状況で好ましいことがある。本発明の同位体標識化合物は、非同位体標識試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識試薬を使用することによって、下記のスキームおよび/または実施例で開示する合成手順を実施することによって調製してもよい。
【0024】
本発明の化合物はEP受容体アゴニストであり、したがってEP受容体によって媒介される疾患を治療するのに有用であり得る。
特に、本発明の化合物は、疼痛、例えば疾患修飾および関節構造保存特性に伴う慢性関節痛(例えば、関節リウマチ、骨関節炎、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎、および若年性関節炎);筋骨格痛;腰痛および頚部痛;捻挫および筋挫傷;神経因性疼痛;交感神経依存性疼痛;筋炎;癌に伴う疼痛および線維筋痛;片頭痛に伴う疼痛;インフルエンザまたは感冒などの他のウイルス感染症に伴う疼痛;リウマチ熱;非潰瘍性消化不良、非心臓性胸痛、および過敏性腸症候群などの腸機能障害に伴う疼痛;心筋虚血に伴う疼痛;術後痛;頭痛;歯痛;ならびに月経困難症の治療に有用であり得る。
【0025】
本発明の化合物は、特に神経因性疼痛およびそれに伴う症状の治療に有用であり得る。神経因性疼痛症候群としては、糖尿病性神経障害;坐骨神経痛;非特異性腰痛;多発性硬化症疼痛;線維筋痛;HIV関連神経障害;帯状疱疹後神経痛;三叉神経痛;および身体的外傷、切断、癌、毒素、または慢性炎症性病態によって生ずる疼痛が挙げられる。神経因性疼痛の症状としては、自発性電撃痛および乱刺痛、または進行中の灼熱痛が挙げられる。さらに、「しびれ」(パレステジィおよびジセステジィ)など通常は痛み以外の感覚、接触に対する感受性の増大(感覚過敏)、非侵害刺激後の痛い感覚(動的、静的、または熱的アロディニア)、侵害刺激に対する感受性の増大(熱、冷、機械痛覚過敏)、刺激除去後の継続的痛覚(ヒペルパチー)、あるいは選択的感覚系伝導路の欠如または欠損(痛覚鈍麻)に伴う疼痛が含まれる。
【0026】
本発明の化合物は、炎症の治療、例えば皮膚病態(例えば、日焼け、熱傷、湿疹、皮膚炎、乾癬);緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎などの眼疾患、および眼組織に対する急性傷害(例えば、結膜炎);肺障害(例えば、喘息、気管支炎、肺気腫、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、ハト愛好家病、農夫肺、COPD);胃腸系障害(例えば、アフタ性潰瘍、クローン病、アトピー性胃炎、痘瘡状胃炎、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、消化管逆流症、下痢、便秘);臓器移植;血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、スクレロドーマ(sclerodoma)、重症筋無力症、多発性硬化症、ソルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性紅斑性狼瘡、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎、およびシェーグレン症候群などの炎症性要素を有する他の病態の治療にも有用であり得る。
【0027】
本発明の化合物は、自己免疫疾患、免疫不全疾患、または臓器移植などの免疫疾患の治療にも有用であり得る。本発明の化合物は、HIV感染の潜伏期を増大させるのにも有効であり得る。
本発明の化合物は、間欠性跛行、不安定狭心症、発作、および急性冠症候群(例えば、閉塞性血管疾患)など過剰なまたは望ましくない血小板活性化の疾患の治療にも有用であり得る。
本発明の化合物は、利尿作用を有する薬物としても有用である可能性があり、または過活動膀胱症候群を治療するのに有用である可能性がある。
【0028】
本発明の化合物は、性不能または勃起不全の治療にも有用であり得る。
本発明の化合物は、骨粗鬆症(特に、閉経後骨粗鬆症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨パジェット病、骨溶解症、骨転移を伴うかまたは伴わない悪性腫瘍の高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、骨関節炎、骨痛、骨減少症、結石症(calculosis)、結石症(lithiasis)(特に、尿路結石症)、痛風および強直性脊椎炎、腱炎、ならびに滑液包炎など異常骨代謝または吸収を特徴とする骨疾患の治療にも有用であり得る。
【0029】
本発明の化合物は、骨再形成、および/または骨形成の促進、および/または骨折治癒の促進にも有用であり得る。
本発明の化合物は、NSAIDおよびCOX−2阻害薬の血行動態的副作用を減弱させるためにも有用であり得る。
本発明の化合物は、高血圧または心筋虚血などの心血管疾患;機能性または器質性静脈不全;静脈瘤療法;痔核;および動脈圧の著しい低下に伴うショック状態(例えば、敗血症性ショック)の治療にも有用であり得る。
【0030】
本発明の化合物は、認知症などの神経変性疾患および神経変性、特に変性認知症(老年痴呆、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、およびクロイツフェルト−ヤコブ病、ALS、運動ニューロン疾患を含む);血管性認知症(多発梗塞性痴呆を含む);ならびに頭蓋内占拠性病変、外傷、感染および関連病態(HIV感染を含む)、代謝、毒素;無酸素およびビタミン欠乏に伴う認知症;ならびに加齢に伴う軽度認知障害、特に加齢関連性記憶障害の治療にも有用であり得る。
【0031】
本発明の化合物は、神経学的障害の治療にも有用であり得、神経保護剤として有用であり得る。本発明の化合物は、発作後の神経変性、心停止、肺バイパス、外傷性脳損傷、脊髄損傷などの治療にも有用であり得る。
本発明の化合物は、I型糖尿病の合併症(例えば、糖尿病性細小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、黄斑変性症、緑内障)、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、ブドウ膜炎、川崎病、およびサルコイドーシスの治療にも有用であり得る。
【0032】
本発明の化合物は、腎機能障害(腎炎、特にメサンギウム増殖性糸球体腎炎、腎炎症候群)、肝機能障害(肝炎、肝硬変)、および胃腸障害(下痢)の治療にも有用であり得る。
治療という場合、確立した症状の治療と予防的治療の両方を包含することを理解されたい。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、ヒト用または獣医用医薬品で使用するための本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体が提供される。
本発明の別の実施形態によれば、EP受容体におけるPGEの作用または作用の喪失によって媒介される病態の治療で使用するための本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体が提供される。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、EP受容体におけるPGEの作用または作用の喪失によって媒介される病態を患っている対象のヒトまたは動物を治療する方法であって、前記対象に有効量の本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体を投与することを含む方法が提供される。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、疼痛、炎症性障害、免疫性障害、骨障害、神経変性障害、または腎障害を患っている対象のヒトまたは動物を治療する方法であって、前記対象に有効量の本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体を投与することを含む方法が提供される。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体の、EP受容体におけるPGEの作用によって媒介される病態の治療用医薬品の製造のための使用が提供される。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体の、疼痛、炎症性疼痛、免疫性疼痛、骨痛、神経変性疼痛、または腎障害などの病態の治療または予防用医薬品の製造のための使用が提供される。
【0038】
本発明の化合物およびその医薬上許容される誘導体は、好都合なことに医薬組成物の形で投与される。このような組成物は、好都合なことに1つまたは複数の生理学的に許容される担体または賦形剤と混合して通常の方式で使用するために提供することができる。
【0039】
したがって、本発明の別の態様では、ヒト用または獣医用医薬品での使用に適応された本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体を含む医薬組成物が提供される。
【0040】
本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体を、未加工の化学品として投与することが可能であるが、医薬製剤として提供することが好ましい。本発明の製剤は、本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体を、そのための1つまたは複数の許容される担体または希釈剤、および所望により他の治療用成分と共に含む。担体は、製剤の他の成分と相溶性があり、かつそのレシピエントに有害でないという意味において「許容される」べきである。
【0041】
最も適当な経路は例えばレシピエントの状態および障害に依存することができるが、製剤としては、経口、非経口(例えば注射またはデポー錠剤による皮下、皮内、髄腔内、例えばデポーによる筋肉内、および静脈内を含む)、直腸、および局所(経皮、口腔内、および舌下を含む)投与に適した製剤が挙げられる。製剤は、好都合なことには単位剤形で提供することができ、薬学技術でよく知られている方法によって調製することができる(例えば、レミントン−The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott,Williams&Wilkins,USA、2005およびその中に記載の参考文献を参照のこと)。方法はすべて、本発明の化合物またはその医薬上許容される酸付加塩(「活性成分」)を1つまたは複数の副成分を構成する担体と結合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体または微細化固体担体または両方と均一かつ緊密に結合させ、次いで必要なら、生成物を所望の製剤に造形することによって調製される。
【0042】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、または錠剤(例えば、特に小児への投与向けの咀嚼錠)など、それぞれ所定量の活性成分を含有する別々の単位として;粉末または顆粒として;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として;あるいは水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして提供することができる。活性成分は、ボーラス、舐剤、またはペースト剤としても提供することができる。
【0043】
錠剤は、所望により1つまたは複数の副成分と共に圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠は、所望により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤、または分散化剤と混合した粉末または顆粒などの易流動性の形の活性成分を、適当な機械で圧縮することによって調製してもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を、適当な機械で成形することによって作製することができる。錠剤は、所望によりコーティングまたは刻み目をつけてもよく、その中の活性成分がスローリリースまたは放出制御されるように製剤してもよい。
【0044】
非経口投与用製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を所期のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性および非水性の無菌注射液;ならびに懸濁剤および粘稠化剤を含有することができる水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または多回投与容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで提供することができ、かつ使用直前に無菌液体担体、例えば注射用水を添加することしか必要としないフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即時調合注射液および懸濁液は、上記の種類の無菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0045】
直腸内投与用製剤は、カカオ脂、硬質脂肪、またはポリエチレングリコールなど通常の担体を含む坐薬として提供することができる。
口腔における局所投与、例えば口腔内または舌下投与用製剤としては、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどのフレーバード基剤中に活性成分を含むロゼンジ、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの基剤中に活性成分を含む香錠が挙げられる。
【0046】
本発明の化合物は、埋め込み調製物として製剤することもできる。このような長時間作用性製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば本発明の化合物は、適当なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中エマルジョンとして)またはイオン交換樹脂で製剤することができ、あるいはやや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩として製剤することができる。
【0047】
特に上記の材料に加えて、製剤は、当該製剤のタイプを考慮して当技術分野で通常の他の作用剤を含有することができ、例えば経口投与に適した製剤は、矯味剤を含有することができる。
【0048】
本発明で使用するためのEP受容体化合物は、他の治療剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、またはパレコキシブなどのCOX−2阻害薬;5−リポキシゲナーゼ阻害薬;パラセタモールなどの鎮痛剤;ジクロフェナク、インドメタシン、ナブメトン、ナプロキセン、またはイブプロフェンなどのNSAID類;ロイコトリエン受容体拮抗薬;メトトレキサートなどのDMARD類;ラモトリジンなどのナトリウムチャネル遮断薬;N型カルシウムチャネルアンタゴニスト;グリシン受容体拮抗薬などのNMDA受容体モジュレーター;ガバペンチン、プレガバリン、および関連化合物;アミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬;ニューロン安定性抗てんかん薬;ベンラファキシンなどのモノアミン作動性取り込み阻害薬;オピオイド鎮痛剤;局所麻酔薬;トリプタン類などの5HTアゴニスト、例えばスマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、アルモトリプタン、またはリザトリプタン;EP受容体リガンド;EP受容体リガンド;EP受容体リガンド;EPアンタゴニスト;EPアンタゴニスト、およびEPアンタゴニスト;カンナバノイド受容体アゴニスト;VR1アンタゴニストと組み合わせて使用してもよい。化合物を他の治療剤と組み合わせて使用する場合、化合物は任意の好都合な経路で順次または同時に投与することができる。
【0049】
したがって、別の一実施形態では、本発明は、本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体をさらなる1つまたは複数の治療剤と共に含む組合せを提供する。本発明の一の実施形態において、式(I)の化合物またはその医薬上許容される誘導体およびパラセタモールを含む組合せが提供される。
【0050】
上記の組合せは、好都合なことに医薬製剤の形で使用するために提供することができ、したがって上記に定義する組合せを医薬上許容される担体または賦形剤と共に含む医薬製剤は、本発明の別の態様をなす。このような組合せの個々の成分は、別々のまたは組み合わせた医薬製剤で順次または同時に投与することができる。
【0051】
本発明の化合物またはその医薬上許容される誘導体を同じ疾患に対して活性な第2の治療剤と組み合わせて使用する場合、それぞれの化合物の用量は、化合物が単独使用される場合の用量と異なることがある。適切な用量は、当業者によって容易に理解されよう。
【0052】
ヒトの治療のために本発明の化合物またはその医薬上許容される塩の提案された1日の用量は、遊離酸として算出して、0.001〜30mg/体重(kg)/日、およびさらに詳細には0.1〜3mg/体重(kg)/日であり、単回または分割投与、例えば1回〜4回/日投与することができる。成人の用量範囲は、遊離酸として算出して、一般に0.1〜1000mg/日、具体的には10〜800mg/日、好ましくは10〜200mg/日である。
【0053】
一の実施形態において、式(I)の化合物またはその医薬上許容される誘導体をパラセタモールと組み合わせて投与する場合、パラセタモールの適当な日用量は一日に4000mgまでである。適当な単位用量として、200、400、500および1000mgを、一日に一回、二回、三回または四回投与した量が挙げられる。
【0054】
宿主、特にヒト患者に投与する本発明の化合物の正確な量は、顧問医の責任であろう。しかし、使用する用量は、患者の年齢および性別、治療中の正確な病態およびその重症度、投与経路、および試みられていてもよい任意の可能な併用療法を含めて、いくつかの要因に依存する。
【0055】
本発明の化合物はスキーム1、2および3に従って調製することができ、一般的に「式(I)」として表示される。
【0056】
【化1】



(i)R−Br、KCO、(CHCO;(ii)NaOH、EtOH/HO;(iii)SOCl、CHCl;(iv)CHCOH;(v)NaBH、MeOH/THF;(vi)EtSiH、TFA
(式中、R=R=R=C1−4アルキル;R=BrまたはCl;R=C1−6アルキル)
【0057】
式(1)の化合物は国際特許出願公開番号WO02/064564に開示の方法に従って調製されてもよい。
【0058】
【化2】



(i)氷酢酸、2N HCl
(式中、R=R=C1−4アルキル;R=BrまたはCl;R=C1−6アルキル)
【0059】
【化3】


(i)EtOH、2N NaOH
(式中、R=R=C1−4アルキル;R=BrまたはCl;R=C1−6アルキル)
【0060】
式(5)の化合物はスキーム4に従って調製されてもよい。
【0061】
【化4】


(i)N−ブロモスクシンアミドまたはN−クロロスクシンアミド
(式中、R=BrまたはCi;R=C1−6アルキル)
【0062】
式(D)の化合物は市販されており、あるいは当該分野で知られている方法に従って調製されてもよい(例えば、4−アミノフェニル酢酸エチルはAvocado Researchから購入されてもよい)。
【0063】
後記の記載および実施例は、式(I)の化合物の調製を例示する。記載は中間化合物に言及するものであり、実施例は式(I)の化合物に言及する。中間体を調製するための出発物質が言及されているバッチから必ずしも調製しなければならないというものではない。実施例を調製するための中間体が言及されているバッチから必ずしも調製しなければならないというものではない。
【0064】
略語
DMAP 4−(ジメチルアミノ)ピリジン
EtOH エタノール
IPA イソプロピルアルコール
MeOH メタノール
NaOH 水酸化ナトリウム
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
【0065】
分析操作
LC/MS
カラム:
Waters Atlantis(4.6mm×50mm)。
固定相粒径3μm。
【0066】
溶媒:
A:水性溶媒=水+0.05%ギ酸
B:有機溶媒=アセトニトリル+0.05%ギ酸
【0067】
方法:
時間/分 B(%)
0 3
0.1 3
4 97
4.8 97
4.9 3
5.0 3
・流量、3ml/分。
・注入容量、5μl。
・カラム温度、30℃。
・UV検出範囲、220〜330nm。
【0068】
保持時間はすべて、分単位で測定される。
【0069】
精製技法
実施例の精製は、クロマトグラフィーおよび/または適当な溶媒を使用する再結晶などの通常の方法によって実施することができる。クロマトグラフ方法としては、カラムクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)、およびMDAP(マスダイレクテッド自動調製)が挙げられる。本明細書で使用される「ビオテージ」なる語は市販されているプレパックシリカゲルカートリッジをいう。
【0070】
記載1
1,4−ビス(プロピルオキシ)−2,3−ナフタレンジカルボン酸ジエチル
【化5】

【0071】
1−ブロモプロパン(13.1ml、144.4ミリモル)を、1,4−ジヒドロキシ−2,3−ナフタレンジカルボン酸ジエチル(11g、36.1ミリモル)[WO02/064564]および炭酸カリウム(24.9g、180.5ミリモル)のアセトン(180ml)中攪拌溶液に添加した。アルゴン雰囲気下で一夜還流させた。得られた混合物を冷却し、濾過し、溶媒を濾液より蒸発させた。残渣をトルエンに溶かし、5%水酸化カリウム溶液、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。酢酸エチル/ヘキサン(1:9)で溶出するシリカゲル上のクロマトグラフィーに付して精製し、標記化合物を黄色油として得た(11.45g、29.5ミリモル)。LC/MS:Rt=3.87、[MH] 389。
【0072】
以下の化合物を、適当な出発物質を用いて、1,4−ビス(プロピルオキシ)−2,3−ナフタレンジカルボン酸ジエチルと同様に調製した。
【0073】
【表1】

【0074】
記載4
1,4−ビス(プロピルオキシ)−2,3−ナフタレンジカルボン酸
【化6】

【0075】
1,4−ビス(プロピルオキシ)−2,3−ナフタレンジカルボン酸ジエチル(11.45g、29.5ミリモル)、エタノール(70ml)、水酸化ナトリウム(3.54g、88.5ミリモル)および水(15ml)の混合物を4時間還流させた。該反応混合物を冷却し、該容量の3分の1を蒸発させた。これを塩酸(2N)で酸性にし、酢酸エチル(3x100ml)で抽出した。合した有機物を水、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させて標記化合物を黄色固体として得た(8.91g、26.8ミリモル)。LC/MS:Rt=2.74、[MH]333。
【0076】
以下の化合物を、適当な出発物質を用いて、1,4−ビス(プロピルオキシ)−2,3−ナフタレンジカルボン酸と同様に調製した。
【0077】
【表2】

【0078】
記載7
4,9−ビス(プロピルオキシ)ナフト[2,3−c]フラン−1,3−ジオン
【化7】



【0079】
塩化チオニル(20.5ml、281.4ミリモル)を1,4−ビス(プロピルオキシ)−2,3−ナフタレンジカルボン酸(8.91g、26.8ミリモル)のクロロホルム(80ml)中溶液に滴下し、65℃で2.5時間加熱した。反応混合物を冷却し、黄色固体にまで溶媒を蒸発させた。クロロホルムとの共沸蒸留に付し、標記化合物を灰白色固体として得た(8.74g、27.8ミリモル)。LC/MS:Rt=3.77、[MH]315。
【0080】
以下の化合物を、適当な出発物質を用いて、4,9−ビス(プロピルオキシ)ナフト[2,3−c]フラン−1,3−ジオンと同様に調製した。
【0081】
【表3】

【0082】
記載10
(4−アミノ−3−ブロモフェニル)酢酸エチル
【化8】


【0083】
4−アミノフェニル酢酸エチル(5g、27.9ミリモル)をクロロホルム(100ml)に溶かし、N−ブロモスクシンイミド(4.97g、27.9ミリモル)で処理し、アルゴン下、室温で1時間攪拌した。反応混合物を水、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。褐色油まで蒸発させ、それを酢酸エチル/ヘキサン(1:3)で溶出するシリカゲル上のクロマトグラフィーに付して精製し、標記化合物を黄色油として得た(6.03g、23.4ミリモル)。LC/MS:Rt=2.55、[MH]260。
【0084】
以下の化合物を、適当な出発物質を用いて、(4−アミノ−3−ブロモフェニル)酢酸エチルと同様に調製した。
【0085】
【表4】

【0086】
記載12
{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−クロロフェニル}酢酸エチル
【化9】

【0087】
4,9−ビス(エチルオキシ)ナフト[2,3−c]フラン−1,3−ジオン(0.200g、0.7ミリモル)の酢酸(2ml)中攪拌懸濁液を、(4−アミノ−3−クロロフェニル)酢酸エチル(0.284g、1.33ミリモル)およびDMAP(0.024g、0.21ミリモル)で処理した。これをアルゴン雰囲気下でモレキュラーシーブと一緒に一夜還流させた。反応混合物を冷却し、セライトを介する濾過によりモレキュラーシーブを除去し、酢酸で洗浄した。沈殿物を形成するまで、攪拌しながら水を添加した。固体を濾過により集め、水で洗浄した。これを沸騰IPAより再結晶に付し、標記化合物を得た(0.102g、0.21ミリモル)。LC/MS:Rt=3.84、[MH]482。
【0088】
以下の化合物を、適当な出発物質を用い、{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−クロロフェニル}酢酸エチルと同様に調製した。
【0089】
【表5】

【0090】
実施例1
{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−クロロフェニル}酢酸
【化10】

【0091】
{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−クロロフェニル}酢酸エチル(0.120g、0.25ミリモル)を氷酢酸(4ml)および2N塩酸(4ml)に懸濁させ、反応が終わるまで加熱した(100℃、2−5時間)。冷却して水を添加した。形成した白色沈殿物を濾過し、水で洗浄し、集めて真空オーブン中で一夜乾燥させ、標記化合物を白色固体として得た(0.084g、0.19ミリモル)。LC/MS:Rt=3.39、[MH]454。
【0092】
以下の化合物を、適当な出発物質を用いて、{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−クロロフェニル}酢酸と同様に調製した。
【0093】
【表6】

【0094】
記載18
(3−クロロ−4−{1−ヒドロキシ−4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}フェニル)酢酸エチル
【化11】

【0095】
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸エチル(0.500g、0.98ミリモル)をメタノール(1ml)に懸濁させ、エタノール(2ml)およびテトラヒドロフラン(4ml)を加えて溶解を促進させた。氷浴中にて0℃に冷却し、ホウ水素化ナトリウム(0.111g、2.94ミリモル)で2分間にわたって滴下処理した。アルゴン下、0℃で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチルと1M塩化アンモニウム溶液の間に分配させた。水層を酢酸エチル(x2)で抽出した。合した有機物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。有機物を蒸発させて標記化合物(0.499g、0.97ミリモル)を得た。LC/MS:Rt=3.71、[MH]512。
【0096】
以下の化合物を、適当な出発物質を用いて、(3−クロロ−4−{1−ヒドロキシ−4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}フェニル)酢酸エチルと同様に調製した。
【0097】
【表7】

【0098】
記載22
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸エチル
【化12】

【0099】
(3−クロロ−4−{1−ヒドロキシ−4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}フェニル)酢酸エチル(0.499g、0.97ミリモル)をトリフルオロ酢酸(2ml)に溶かし、氷浴中にて0℃に冷却した。トリエチルシラン(0.23ml、1.46ミリモル)で処理し、0℃で1時間攪拌した。揮発物を蒸発させ、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより直接的に精製し、標記化合物を得た(0.180g、0.36ミリモル)。LC/MS:Rt=3.93、[MH]496。
【0100】
以下の化合物を、適当な出発物質を用いて、(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸エチルと同様に調製した。
【0101】
【表8】

【0102】
実施例7
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸
【化13】

【0103】
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸エチル(0.160g、0.32ミリモル)をエタノール(3ml)に溶かし、2N水酸化ナトリウム(5ml)で処理した。1時間加熱還流し、ついで冷却し、溶媒を蒸発させた。残渣を2N塩酸でpH1の酸性にした。これを酢酸エチル(x2)で抽出し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、ついでヘキサンでトリチュレートし、標記化合物を白色固体として得た(0.125g、0.26ミリモル)。LC/MS:Rt=3.53、[MH]468。
【0104】
以下の化合物を、適当な出発物質を用いて、(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸と同様に調製した。
【0105】
【表9】

【0106】
生物学的データ
組換え型ヒトプロスタノイドEP受容体(HEK−EP細胞)を発現するHEK−293(T)細胞を使用した研究が行われた。細胞をglutamax II(Gibco)を含有し、10%ウシ胎児血清および0.4mg/mlのG418を補充したDMEM−F12/F12中で単層培養として増殖させた。HEK−EP細胞を10μMのインドメタシンを用いた実験の前24時間30分前処理し、10μMのインドメタシンを含有するVerseneを使用して収穫した。細胞をアッセイバッファー(DMEM:F12、10μMのインドメタシンおよび200μMのIBMX)に1×10細胞/mlで再び懸濁させ、37℃で20分間インキュベートした。その後、50μlの細胞を50μlのアゴニスト(式(I)の化合物)に添加し、100μlの1%トリトンX−100で反応を止める前に37℃で4分間インキュベートした。競合結合アッセイを用いて、細胞可溶化物中のcAMPレベルを測定した。このアッセイでは、プロテインキナーゼAの結合性サブユニットに結合する細胞可溶化物の3H−cAMP(Amersham)の阻害能を測定し、cAMPレベルを標準曲線から算出した。各化合物のデータは、標準アゴニストPGEの10nMの最大濃度への応答の%として表した。各化合物について、最大応答およびその最大応答の50%を引き起こす化合物の濃度を算出した。固有活性を、PGEへの最大応答に対して表す。特記しない限り、試薬はSigmaから市販されているものを購入した。
【0107】
本発明の実施例の化合物を上記のアッセイで試験し、各々、6.6以上のpEC50値を、60%以上の固有活性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−クロロフェニル}酢酸;
{3−クロロ−4−[1,3−ジオキソ−4,9−ビス(プロピルオキシ)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]フェニル}酢酸;
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸;
{4−[4,9−ビス(エチルオキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]−3−ブロモフェニル}酢酸;
{3−ブロモ−4−[1,3−ジオキソ−4,9−ビス(プロピルオキシ)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]フェニル}酢酸;
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−ブロモフェニル)酢酸;
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−クロロフェニル)酢酸;
{3−クロロ−4−[1−オキソ−4,9−ビス(プロピルオキシ)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]フェニル}酢酸;
{3−ブロモ−4−[1−オキソ−4,9−ビス(プロピルオキシ)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル]フェニル}酢酸;
(4−{4,9−ビス(1−メチルエトキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[f]イソインドール−2−イル}−3−ブロモフェニル)酢酸;
およびその医薬上許容される誘導体からなる群より選択される化合物。
【請求項2】
ヒト医学または獣医学に用いる、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
EP受容体におけるPGEの作用または作用の喪失によって媒介される病態の治療で使用するための、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
EP受容体におけるPGEの作用または作用の喪失によって媒介される病態に罹患しているヒトまたは動物対象を治療する方法であって、該対象に有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項5】
病態が、疼痛、炎症性障害、免疫性障害、骨障害、神経変性障害および腎障害からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
EP受容体におけるPGEの作用によって媒介される病態の治療用医薬を製造するための、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項7】
病態が、疼痛、炎症性障害、免疫性障害、骨障害、神経変性障害および腎障害からなる群より選択される、請求項6記載の使用。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物、および1種または複数の許容される担体または希釈体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
さらに1種または複数の治療剤を含む、請求項8記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−506878(P2010−506878A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532780(P2009−532780)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060932
【国際公開番号】WO2008/046798
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】