ErbB−3(HER3)選択的併用療法
本発明は、HER3標的化併用療法のための医薬組成物およびそれを用いる治療方法に関する。本発明は、HER3および任意によりHER2および/またはEGFRの低下した発現をもたらす、細胞内のHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)のmRNAを標的とするオリゴマー、ならびにシグナル伝達および/または細胞内への受容体二量体の内在化の阻害をもたらす1以上の受容体チロシンキナーゼの小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビター、を含む医薬組成物に関する。併用療法は、過剰増殖障害(例えば、癌)などの一定範囲の医学的障害に対して有益である。本発明は、オリゴマーとタンパク質チロシンキナーゼインヒビターとの組み合わせを用いる過剰増殖障害の治療方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2008年11月7日出願の米国仮出願第61/112,549号(その全体が参照により本明細書中に組み入れられる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、細胞内でのHER3(および任意により、EGFRおよびHER2のうちの1以上)の発現および/または活性をダウンレギュレーションする方法に関し、該方法は、細胞内でHER3 mRNAを標的とする有効量のオリゴマー性化合物(オリゴマー)および有効量のタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)インヒビター、またはそれらの製薬上許容される誘導体を細胞に投与するステップを含む。本発明はさらに、細胞内でHER3 mRNAを標的とする有効量のオリゴマーおよび有効量のPTKインヒビター、またはそれらの製薬上許容される誘導体を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、疾患の治療方法に関する。本発明はさらに、HER3 mRNAを標的とする有効量のオリゴマーおよび有効量のPTKインヒビター、またはそれらの製薬上許容される誘導体を、製薬上許容される賦形剤中に含む、医薬組成物に関する。該組成物は、HER3(および任意により、EGFRおよびHER2のうちの1以上)の発現および/または活性をダウンレギュレーションするのに、かつ癌などの種々の疾患を治療するのに有用である。
【0003】
本発明は、医薬の製造のための、本明細書中に記載されるオリゴマーのうちの1以上などの、HER3を標的とするロックド核酸(「LNA」)オリゴマーの使用を提供し、ここで、該医薬は、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターとの併用での、癌の治療での使用のためのものである。本発明は、本明細書中に記載されるオリゴマーのうちの1以上などの、HER3を標的とするLNAオリゴマーを含む医薬を提供し、ここで、該医薬は、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターとの併用での、癌の治療での使用のためのものである。
【背景技術】
【0004】
1.1 背景技術
HER3は、受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーのメンバーであり、該ファミリーは、4種の異なる受容体:ErbB-1(EGFR、HER1)、ErbB-2(neu、HER2)、ErbB-3(HER3)およびErbB-4(HER4)を含む(Yardenら, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol, 2001, 2(2):127-137)。このファミリーの受容体タンパク質は、細胞外リガンド結合性ドメイン、疎水性1回膜貫通ドメインおよび細胞質チロシンキナーゼ含有ドメインから構成される。EGFファミリーには少なくとも12種類の増殖因子があり、それらはErbB受容体のうちの1種以上に結合し、受容体ホモ二量体化またはヘテロ二量体化に影響を与える。二量体化はリガンド結合した受容体の内在化およびリサイクル(またはその分解)、ならびにとりわけ細胞生存、アポトーシスおよび増殖活性を調節する下流の細胞内シグナル伝達経路の引き金を引く。HER3(ErbB3)は、チロシンキナーゼ活性を欠いていると当業者には理解されている。
【0005】
EGFR、HER2および最近ではHER3は、腫瘍形成に関連付けられている。近年の研究により、正常組織同等物と比較したときに、EGFRが多数の悪性ヒト組織で過剰発現されていることが示されている。EGFRをコードする遺伝子の過剰発現、増幅、欠失および構造的再編成の高い発生率が、乳房、肺、卵巣および腎臓の腫瘍で見出されている。多形性膠芽腫でのEGFR遺伝子の増幅は、知られている最も一貫した遺伝子変化のうちの1つである。EGFR過剰発現は、多数の非小細胞肺癌でも記録されている。HER3 mRNAレベルの上昇が、ヒト乳房腫瘍で検出されている。
【0006】
細胞のタンパク質または他の高分子を標的とし、アポトーシスを引き起こす従来の化学療法レジメンは、典型的には、急速に分裂する腫瘍細胞と、速く分裂する正常細胞とを区別しない。骨髄細胞および消化管の細胞などの正常細胞の死滅は、毒性の副作用を引き起こす。さらに、細胞毒性の化学療法による腫瘍応答は、予測不可能なものである。
【0007】
近年、数種類のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、タンパク質チロシンキナーゼ発現が調節不能となっている一部の癌に対する選択的療法として研究されている。しかしながら、そのような療法の有効性は限られており、なぜなら、多数の癌はタンパク質チロシンキナーゼインヒビター療法に応答せず、または時間が経つとインヒビターに対する抵抗性が形成されるからである(Aroraら, (2005) J. Pharmacol. and Exp. Therapies 315(3):971-971-979)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
腫瘍細胞を標的とし、従来の化学療法よりも有効かつ毒性が少なく、現在利用可能な選択的療法よりも応答率が高い癌療法への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.2 概要
特定の実施形態では、本発明は、以下の成分:(a) 隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーであって、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記オリゴマー;(b)タンパク質チロシンキナーゼインヒビター;および(c)製薬上許容される賦形剤、を含む医薬組成物に関する。
【0010】
種々の実施形態において、医薬組成物は、配列番号180に示される配列からなるオリゴマーおよびタンパク質チロシンキナーゼインヒビターであるゲフィチニブを含む。
【0011】
他の実施形態では、医薬組成物は、以下の成分:(a) 隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーのコンジュゲートであって、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記コンジュゲート;(b)タンパク質チロシンキナーゼインヒビター;および(c)製薬上許容される賦形剤、を含む。
【0012】
本発明はさらに、哺乳動物細胞の増殖を阻害する方法に関し、該方法は、細胞を、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記オリゴマー;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、と接触させるステップを含む。
【0013】
種々の実施形態において、哺乳動物細胞の増殖を阻害する方法は、細胞を、有効量の配列番号180に示される配列からなるオリゴマーおよび有効量のゲフィチニブと接触させるステップを含む。
【0014】
一部の実施形態では、本発明は、哺乳動物の身体内の細胞増殖を阻害する方法を包含し、該方法は、哺乳動物組織を、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的配列の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記オリゴマー;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、と接触させるステップを含む。
【0015】
特定の実施形態では、哺乳動物の身体内の細胞増殖を阻害する方法は、哺乳動物組織を、有効量の配列番号180に示される配列からなるオリゴマーおよび有効量のゲフィチニブと接触させるステップを含む。
【0016】
種々の実施形態において、哺乳動物の身体内で細胞増殖を阻害する方法は、哺乳動物組織を、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーの有効量のコンジュゲートであって、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記コンジュゲート;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、と接触させるステップを含む。
【0017】
本発明はさらに、哺乳動物における癌を治療する方法を包含し、該方法は、該哺乳動物に、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記オリゴマー;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、を投与するステップを含む。
【0018】
特定の実施形態では、哺乳動物における癌を治療する方法は、該哺乳動物に、有効量の配列番号180に示される配列からなるオリゴマーおよび有効量のゲフィチニブを投与するステップを含む。
【0019】
種々の実施形態において、癌は、肺癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌、上皮癌および胃癌からなる群より選択される。
【0020】
さらなる実施形態では、本発明は、哺乳動物における癌を治療する方法を包含し、該方法は、該哺乳動物に、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーの有効量のコンジュゲートであって、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記コンジュゲート;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、を投与するステップを含む。
【0021】
本発明の一実施形態は、以下:
(a.) 隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域は、
5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169);および
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなる群より選択される化合物中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一であり、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該オリゴマーがHER3のアンチセンスインヒビターである、
上記オリゴマー;および
(b.)ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブおよびカネルチニブなどのEGFR(HER1)のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターおよび/またはソラフェニブなどのVEGFRファミリーメンバー、例えばVEGFR2およびVEGFR3などのタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
の、哺乳動物における癌の治療のための組み合わせでの使用を提供する。
【0022】
該実施形態の一変形では、第1領域の配列は、5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169)または5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列と同一である。該実施形態の別の変形では、オリゴマーは、5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169)または5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)であり、HER3のアンチセンスオリゴマーインヒビターである。これらの使用に対応する治療方法の実施形態も、本発明により提供される。該方法の実施形態は、癌に対する治療の必要がある哺乳動物(ヒト患者など)へのオリゴマーおよびPKIインヒビターの同時かまたはほぼ同時の投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、A549肺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図1B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、A549肺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図1C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、A549細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図2A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、H1993前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図2B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、H1993前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図2C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、H1993細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図3A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、15PC3前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図3B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、15PC3前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図3C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、15PC3細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図4A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、DU145前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図4B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、DU145前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図4C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、DU145細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図5A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、SKBR3乳癌細胞に対する抗増殖効果を示す図である。
【図5B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、SKBR3乳癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図5C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、SKBR3細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図6A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、A431ヒト上皮癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図6B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、A431ヒト上皮癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図6C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、A431細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.4 詳細な説明
特定の実施形態では、本発明は、HER3(および任意によりEGFRおよびHER2のうちの1以上)の発現および/または活性を変化させるための組成物および方法を提供する。特に、本発明は、細胞内条件下でHER3(および任意によりEGFRおよびHER2のうちの1以上)をコードする核酸に特異的にハイブリダイズする有効量のオリゴマー、ならびに有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、またはそれらの製薬上許容される誘導体を、製薬上許容される賦形剤中に含む、医薬組成物を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、オリゴマーは、タンパク質チロシンキナーゼインヒビター、またはその製薬上許容される誘導体と同じ組成物中に存在する。種々の実施形態において、オリゴマーは、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを含む組成物とは別個の組成物中に存在する。特定の実施形態では、オリゴマーは、タンパク質チロシンキナーゼインヒビター組成物とは別個の組成物中に存在し、2つの組成物が組み合わせでの使用のためにパッケージ化されている。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、患者において癌などの障害を治療または予防する方法を包含し、該方法は、それを必要とする患者に、有効量の本発明の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0027】
1.5 医薬組成物
1.5.1 オリゴマー
第1の態様では、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマー性化合物(本明細書中ではオリゴマーと称する)は、例えば、哺乳動物HER3をコードする核酸分子の機能を変化させるのに有用である。特定の実施形態では、哺乳動物HER3をコードする核酸分子としては、配列番号197に示される塩基配列を有する核酸、および天然に存在するその対立遺伝子変異体が挙げられる。本発明のオリゴマーは、共有結合したモノマーから構成される。
【0028】
「モノマー」との用語は、核酸中に天然に存在し、修飾された糖または修飾された核酸塩基のいずれも含有しないヌクレオシドおよびデオキシヌクレオシド(集合的に、「ヌクレオシド」)、すなわち、リボース糖またはデオキシリボース糖が、天然に存在する、修飾されていない核酸塩基(塩基)部分(すなわち、プリンおよびピリミジン複素環アデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシル)に共有結合している化合物、および、核酸中に天然に存在するか、または核酸中に天然に存在しないヌクレオシドであって、糖部分がリボース糖もしくはデオキシリボース糖以外(二環式糖または2’修飾糖など、例えば2’置換糖)であるか、または塩基部分が修飾されている(例えば、5-メチルシトシン)、あるいはその両方である「ヌクレオシドアナログ」の両者を含む。
【0029】
「RNAモノマー」は、リボース糖および修飾されていない核酸塩基を含有するヌクレオシドである。
【0030】
「DNAモノマー」は、デオキシリボース糖および修飾されていない核酸塩基を含有するヌクレオシドである。
【0031】
「ロックド核酸モノマー」、「ロックドモノマー」または「LNAモノマー」は、二環式糖を有するヌクレオシドアナログであり、本明細書中で以下でさらに説明する。
【0032】
「対応するヌクレオシドアナログ」および「対応するヌクレオシド」との用語は、ヌクレオシドアナログ中の塩基部分とヌクレオシド中の塩基部分とが同じであることを意味する。例えば、「ヌクレオシド」がアデニンに連結した2-デオキシリボース糖を含有する場合、「対応するヌクレオシドアナログ」は、例えば、アデニン塩基部分に連結した修飾糖を含有する。
【0033】
本発明の組成物および方法での使用のために本明細書中に記載されるオリゴマーのモノマー同士は、連結基を介して結合されている。好適には、それぞれのモノマーが、3’隣接モノマーに連結基を介して連結されている。
【0034】
「連結基」または「ヌクレオシド間連結」との用語は、2つの連続するモノマー同士を共有結合させることが可能な基を意味する。具体例としては、リン酸基(隣接するヌクレオシドモノマー間にホスホジエステルを形成する)およびホスホロチオエート基(隣接するヌクレオシドモノマー間にホスホロチオエート結合を形成する)が挙げられる。
【0035】
好適な連結基としては、WO 2007/031091に列挙されているもの、例えば、WO 2007/031091(参照により本明細書中に組み入れられる)の第34頁の第1段落に列挙されている連結基が挙げられる。
【0036】
一部の実施形態では、連結基は、その通常のホスホジエステルから、ヌクレアーゼの攻撃に対してより抵抗性のものに修飾されており、そのようなものとしては例えばホスホロチオエートまたはボラノホスフェートが挙げられ、これらはRNaseHにより切断可能であり、標的遺伝子の発現のRNase媒介アンチセンス阻害を可能にする。
【0037】
「オリゴマー」、「オリゴマー性化合物」および「オリゴヌクレオチド」との用語は、本発明の文脈において交換可能に用いられ、例えば、リン酸基(ヌクレオシド間にホスホジエステル結合を形成する)またはホスホロチオエート基(ヌクレオシド間にホスホロチオエート結合を形成する)による、2以上の連続するモノマーの共有結合により形成される分子を指す。オリゴマーは、10〜50個のモノマー、例えば、10〜30個のモノマーを含むか、またはこれらからなる。
【0038】
一部の実施形態では、オリゴマーは、本明細書中で言及するように、ヌクレオシド、もしくはヌクレオシドアナログ、またはそれらの混合物を含む。「LNAオリゴマー」または「LNAオリゴヌクレオチド」は、以下の6.1.2節で定義するような、1個以上のLNAモノマーを含むオリゴヌクレオチドを指す。
【0039】
任意によりオリゴマーに含められるヌクレオシドアナログは、対応するヌクレオシドと同様に機能するものであってもよいし、特定の改良された機能を有していてもよい。モノマーのうちの一部または全部がヌクレオシドアナログであるオリゴマーは、多くの場合、天然形態よりも好ましく、これは、例えば、細胞膜に浸透する能力の向上、細胞外および/または細胞内ヌクレアーゼに対する良好な抵抗性、ならびに核酸標的に対する高い親和性および特異性のためである。LNAモノマーが特に好ましい。
【0040】
種々の実施形態において、オリゴマー中に存在する1個以上のヌクレオシドアナログは、「サイレント」であるか、または対応する天然ヌクレオシドに対して機能の面で「同等」であり、すなわち、標的遺伝子発現を阻害するためにオリゴマーが機能する方法に対して何ら機能的影響を有しない。そのような「同等」なヌクレオシドアナログは、それにもかかわらず、例えば、製造がより容易またはより安価であるか、または保存もしくは製造条件でより安定であるか、またはタグもしくは標識を取り込むことができる場合に、有用である。しかしながら、典型的には、アナログは、例えば、標的核酸の標的領域に対する増大した結合親和性および/または細胞内ヌクレアーゼに対する増大した抵抗性および/または細胞内への運搬の増大した容易さをもたらすことにより、発現を阻害するためにオリゴマーが機能する方法に機能的影響を有するであろう。
【0041】
種々の実施形態において、本発明のオリゴマーは、ヌクレオシドモノマーおよびLNAモノマーまたは他のヌクレオシドアナログモノマーなどの少なくとも1個のヌクレオシドアナログモノマーを含む。
【0042】
「少なくとも1」との用語は、1より大きいかまたは1と等しい整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などを含む。種々の実施形態において、例えば、本発明の化合物の核酸またはタンパク質標的を指す場合、「少なくとも1」との用語は、「少なくとも2」および「少なくとも3」および「少なくとも4」との用語を含む。同様に、一部の実施形態では、「少なくとも2」との用語は、「少なくとも3」および「少なくとも4」との用語を含む。
【0043】
一部の実施形態では、オリゴマーは、10〜50個の連続するモノマー、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の連続するモノマーからなる。
【0044】
一部の実施形態では、オリゴマーは、10〜25個のモノマーからなるか、10〜16個のモノマーからなるか、または12〜16個のモノマーからなる。
【0045】
種々の実施形態において、オリゴマーは、10〜25個の連続するモノマー、10〜24個の連続するモノマー、12〜25個または12〜24個または10〜22個の連続するモノマー、例えば12〜18個の連続するモノマー、例えば13〜17個または12〜16個の連続するモノマー、例えば13、14、15、16個の連続するモノマーを含む。
【0046】
種々の実施形態において、オリゴマーは、10〜22個の連続するモノマー、または10〜18個、例えば12〜18個または13〜17個または12〜16個、例えば13、14、15もしくは16個の連続するモノマーを含む。
【0047】
一部の実施形態では、オリゴマーは、10〜16個または12〜16個または12〜14個の連続するモノマーを含む。他の実施形態では、オリゴマーは、14〜18個または14〜16個の連続するモノマーを含む。
【0048】
種々の実施形態において、オリゴマーは、10、11、12、13、または14個の連続するモノマーを含む。
【0049】
種々の実施形態において、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、22個以下の連続するモノマー、例えば20個以下の連続するモノマー、例えば18個以下の連続するモノマー、例えば15、16または17個の連続するモノマーからなる。特定の実施形態では、本発明のオリゴマーは、20個未満の連続するモノマーを含む。
【0050】
種々の実施形態において、本発明のオリゴマーは、RNAモノマーを含まない。
【0051】
種々の実施形態において、オリゴマーは直鎖状分子であるか、または合成時には直鎖状である。そのような実施形態では、オリゴマーは、一本鎖分子であり、典型的には、オリゴマーが内部二本鎖を形成するような、同じオリゴマー内の別の領域に対して相補的な、例えば少なくとも3、4または5個の連続するモノマーの短い領域を含まない。種々の実施形態において、オリゴマーは、実質的に二本鎖でなく、すなわち、siRNAではない。
【0052】
一部の実施形態では、オリゴマーは、モノマーの連続する伸長部からなり、その配列は、本明細書中に開示される配列番号により特定される(例えば、表1を参照されたい)。他の実施形態では、オリゴマーは、モノマーの連続する伸長部からなる第1領域、および少なくとも1個の追加のモノマーからなる1以上の追加の領域を含む。一部の実施形態では、第1領域の配列は、本明細書中に開示される配列番号により特定される。
【0053】
1.5.2 ロックド核酸(LNA)モノマー
「LNAモノマー」との用語は、二環式糖(「LNA糖」)を含有するヌクレオシドアナログを指す。「LNAオリゴヌクレオチド」および「LNAオリゴマー」との用語は、1個以上のLNAモノマーを含有するオリゴマーを指す。
【0054】
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で使用されるオリゴヌクレオチド化合物中で用いられるLNAは、一般式Iの構造:
【化1】
【0055】
[式中、
Xは、-O-、-S-、-N(RN*)-、-C(R6R6*)-から選択され、
Bは、水素、任意により置換されているC1〜4-アルコキシ、任意により置換されているC1〜4-アルキル、任意により置換されているC1〜4-アシルオキシ、核酸塩基、DNAインターカレーター、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート基、リポーター基、およびリガンドから選択され、
Pは、後続のモノマーとのヌクレオシド間結合のためのラジカル位置、または5’-末端基を示し、そのようなヌクレオシド間結合または5’-末端基は、任意により置換基R5または同等に適用可能な置換基R5*を含み、
P*は、先行するモノマーとのヌクレオシド間結合、または3’-末端基を示し、
R4*およびR2*は一緒になって、-C(RaRb)-、-C(Ra)=C(Rb)-、-C(Ra)=N-、-O-、-Si(Ra)2-、-S-、-SO2-、-N(Ra)-、および>C=Zから選択される1〜4個の基/原子からなるビラジカルを示し、
式中、Zは、-O-、-S-、および-N(Ra)-から選択され、RaおよびRbはそれぞれ独立して、水素、任意により置換されているC1〜12-アルキル、任意により置換されているC2〜12-アルケニル、任意により置換されているC2〜12-アルキニル、ヒドロキシ、C1〜12-アルコキシ、C2〜12-アルコキシアルキル、C2〜12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1〜12-アルコキシカルボニル、C1〜12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、C1〜6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1〜6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1〜6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1〜6-アルキルチオ、ハロゲン、DNAインターカレーター、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート基、リポーター基、およびリガンドから選択され、ここで、アリールおよびヘテロアリールは任意により置換されていてもよく、2つのジェミナルな(geminal)置換基RaおよびRbは一緒になって、任意により置換されているメチレン(=CH2)を表す場合があり、
置換基R1*、R2、R3*、R5、R5*、R6およびR6*のそれぞれは、存在する場合、独立に、水素、任意により置換されているC1〜12-アルキル、任意により置換されているC2〜12-アルケニル、任意により置換されているC2〜12-アルキニル、ヒドロキシ、C1〜12-アルコキシ、C2〜12-アルコキシアルキル、C2〜12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1〜12-アルコキシカルボニル、C1〜12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、C1〜6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1〜6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1〜6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1〜6-アルキルチオ、ハロゲン、DNAインターカレーター、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート基、リポーター基、およびリガンドから選択され、ここで、アリールおよびヘテロアリールは任意により置換されていてもよく、2つのジェミナルな置換基が一緒になって、オキソ、チオキソ、イミノ、または任意により置換されているメチレンを表すか、または一緒になって、1〜5個の炭素原子のアルキレン鎖からなるスピロビラジカルを形成してもよく、このアルキレン鎖は、任意により、-O-、-S-、および-(NRN)-から選択される1以上のヘテロ原子/基により中断されているか、かつ/または終結されており、式中、RNは、水素、およびC1〜4-アルキルから選択され、2つの隣接する(ジェミナルでない)置換基は、追加の結合を表して二重結合をもたらしてもよく、RN*は、存在し、ビラジカルに含まれない場合、水素およびC1〜4-アルキルから選択される]
ならびにその塩基塩および酸付加塩を有する。
【0056】
特定の実施形態では、R5*は、H、-CH3、-CH2-CH3、-CH2-O-CH3、および-CH=CH2から選択される。
【0057】
種々の実施形態において、R4*およびR2*は一緒になって、-C(RaRb)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-C(ReRf)-O-、-C(RaRb)-O-C(RcRd)-、-C(RaRb)-O-C(RcRd)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-、-C(RaRb)-C(RcRd)-C(ReRf)-、-C(Ra)=C(Rb)-C(RcRd)-、-C(RaRb)-N(Rc)-、-C(RaRb)-C(RcRd)-N(Re)-、-C(RaRb)-N(Rc)-O-、および-C(RaRb)-S-、-C(RaRb)-C(RcRd)-S-から選択されるビラジカルを表し、ここで、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfはそれぞれ、独立して、水素、任意により置換されているC1〜12-アルキル、任意により置換されているC2〜12-アルケニル、任意により置換されているC2〜12-アルキニル、ヒドロキシ、C1〜12-アルコキシ、C2〜12-アルコキシアルキル、C2〜12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1〜12-アルコキシカルボニル、C1〜12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、C1〜6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1〜6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1〜6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1〜6-アルキルチオ、ハロゲン、DNAインターカレーター、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート基、リポーター基、およびリガンドから選択され、ここで、アリールおよびヘテロアリールは任意により置換されていてもよく、2つのジェミナルな置換基RaおよびRbは一緒になって、任意により置換されているメチレン(=CH2)を表してもよい。
【0058】
さらなる実施形態では、R4*およびR2*は一緒になって、-CH2-O-、-CH2-S-、-CH2-NH-、-CH2-N(CH3)-、-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-、-CH2-CH2-S-、-CH2-CH2-NH-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-O-、-CH2-CH2-CH(CH3)-、-CH=CH-CH2-、-CH2-O-CH2-O-、-CH2-NH-O-、-CH2-N(CH3)-O-、-CH2-O-CH2-、-CH(CH3)-O-、-CH(CH2-O-CH3)-O-から選択されるビラジカルを表す。
【0059】
全てのキラル中心について、不斉基はRまたはS配向のいずれかで見出すことができる。
【0060】
種々の実施形態において、オリゴマー中で用いられるLNAモノマーは、式(II)または式(III)に従う少なくとも1個のLNAモノマーを含む:
【化2】
【0061】
[式中、
Yは-O-、-O-CH2-、-S-、-NH-、またはN(RH)であり、ZおよびZ*は独立に、ヌクレオシド間結合、末端基または保護基から選択され、Bは、核酸中に天然に存在するかもしくは核酸中に天然に存在しない非修飾塩基部分または修飾塩基部分を構成し、RHは、水素およびC1〜4-アルキルから選択される]。
【0062】
本発明の種々の実施形態における使用のためのLNAモノマーは、以下の式(IV)〜(VIII)に示されている:
【化3】
【0063】
「チオ-LNA」との用語は、上記の式(II)中のYが、Sまたは-CH2-S-から選択されるLNAモノマーを指す。チオ-LNAは、β-D配置またはα-L配置のいずれかであり得る。
【0064】
「アミノ-LNA」との用語は、上記の式(II)中のYが、-N(H)-、N(R)-、CH2-N(H)-、および-CH2-N(R)-(式中、Rは水素およびC1〜4-アルキルから選択される)から選択されるLNAモノマーを指す。アミノ-LNAは、β-D配置またはα-L配置のいずれかであり得る。
【0065】
「オキシ-LNA」との用語は、上記の式(II)中のYが、-O-または-CH2-O-を表すLNAモノマーを指す。オキシ-LNAは、β-D配置またはα-L配置のいずれかであり得る。
【0066】
「ENA」との用語は、上記の式(II)中のYが、-CH2-O-(-CH2-O-の酸素原子は、塩基Bに対して2’位に連結している)であるLNAモノマーを指す。
【0067】
特定の実施形態では、LNAモノマーは、β-D-オキシ-LNAモノマー、α-L-オキシ-LNAモノマー、β-D-アミノ-LNAモノマーおよびβ-D-チオ-LNAモノマーから選択され、特にβ-D-オキシ-LNAモノマーである。
【0068】
本文脈において、「C1〜4-アルキル」との用語は、鎖が1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素鎖、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルを意味する。
【0069】
ロックド核酸(LNA)含有オリゴマーは、アンチセンスオリゴマーの新世代を代表する。従前のオリゴヌクレオチドと異なり、LNAオリゴマー中のヌクレオシドLNAモノマーは、糖の中に操作されたO2’-〜C4’-結合を有する(上記の式IV〜VIIIを参照されたい)。これは、RNA結合に都合の良い3’-末端構造コンホメーションにリボースを安定化、または「ロック」する。したがって、LNAオリゴマーは、従来のDNAオリゴマーと比較して、RNAに対して例外的に高い結合親和性を有する。さらに、LNA修飾は、ヌクレアーゼ抵抗性を著明に向上させ、オリゴヌクレオチド長の短縮を可能にする(例えば、Vester Bら, LNA (locked nucleic acid): high-affinity targeting of complementary RNA and DNA. Biochemistry. 2004 Oct 26;43(42):13233-41; Lauritsen Aら, Methylphosphonate LNA: a locked nucleic acid with a methylphosphonate linkage. Bioorg Med Chem Lett. 2003 Jan 20;13(2):253-6を参照されたい)。
【0070】
LNAモノマーおよびLNAモノマーを含むオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知のいずれかの方法により取得することができる。特定の実施形態では、LNAモノマーおよびLNAオリゴヌクレオチドは、PCT公報第WO 07/031081号およびその中で引用されている参考文献に開示されている方法により取得することができる。
【0071】
1.5.3 他のヌクレオシドアナログモノマーおよび結合
種々の実施形態において、オリゴマー中に存在するモノマーのうちの少なくとも1個が、修飾された塩基(例えば、5-メチルシトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、2-クロロ-6-アミノプリン、キサンチンおよびヒポキサンチンから選択される塩基)、および/または修飾された糖(例えば、2’-置換基をもたらすように修飾された糖部分、例えば、2’-O-アルキル-リボース糖、2’-アミノ-デオキシリボース糖、2’-フルオロ-デオキシリボース糖、および2’-O-メトキシエチル-リボース糖(2’MOE)、または上述のようなLNA糖、またはアラビノース糖(「ANAモノマー」)、または2’-フルオロ-アラビノース糖、またはd-アラビノ-ヘキシトール糖(「HNAモノマー」))を含有するヌクレオシドアナログである。
【0072】
本明細書中に記載されるオリゴマー中で有用なヌクレオシドアナログの具体例は、例えば、Freier & Altmann; Nucl. Acid Res., 1997, 25, 4429-4443およびUhlmann; Curr. Opinion in Drug Development, 2000, 3(2), 293-213に記載されているか、またはWO 2007/031091に記載されているか、もしくは参照されており、これらは参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0073】
種々の実施形態において、オリゴマー中への親和性強化ヌクレオシドアナログ(すなわち、オリゴマー/標的領域二本鎖の二本鎖安定性(Tm)を上昇させるヌクレオシドアナログ、例えば、LNAモノマーまたは2’-置換糖を含有するモノマー)の組み込み、または修飾連結基の組み込みは、ヌクレアーゼ抵抗性の上昇をもたらす。種々の実施形態において、そのような親和性強化ヌクレオシドアナログの組み込みは、オリゴマーのサイズを低減させることを可能にし、より短いオリゴマーに対するより大きな配列特異性を可能にする。特定のオリゴマー塩基配列に言及する場合、特定の実施形態では、オリゴマーが対応する親和性強化ヌクレオシドアナログ(対応するLNAモノマーまたは他の対応するヌクレオシドアナログなど)を含むことが理解されるであろう。
【0074】
ヌクレオシドおよび/またはヌクレオシドアナログモノマーを含むオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知のいずれかの方法により合成することができる。一部の実施形態では、本発明の方法および組成物での使用のためのオリゴヌクレオチドは、標準的なホスホルアミダイト化学をヨウ素による酸化と共に用いる自動化DNA合成機を用いて合成することができる。β-シアノエチルジイソプロピル-ホスホルアミダイトは、Applied Biosystems(Foster City, Calif.)から購入することができる。本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマー性化合物の製造での使用のための修飾モノマーは、当技術分野で公知のいずれかの方法、例えばJones R.およびHerdewijn P., Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry (John Wiley & Sons, Inc., eds. 2008)中に説明されているものなどにより取得することができる。
【0075】
一部の実施形態では、オリゴマーの少なくとも2つの連続するモノマー間の結合は、ホスホジエステル結合以外のものである。
【0076】
特定の実施形態では、オリゴマーは、修飾された塩基を有する少なくとも1個のモノマー、修飾された糖を有する少なくとも1個のモノマー(同じモノマーでもよい)、および少なくとも1箇所の天然に存在しないモノマー間結合を含む。
【0077】
1.5.4 ギャップマー設計
特定の実施形態では、本発明のオリゴマーはギャップマー(gapmer)である。
【0078】
「ギャップマー」は、本明細書中、以下でさらに説明するように、RNAse(例えば、RNAseH)を集結させることが可能なモノマーの連続する伸長部(本明細書中で領域Bと称される、少なくとも6または7個のDNAモノマーの領域など)を含むオリゴマーであって、ここで、領域Bは、5’末端と3’末端の両方で、それぞれ領域Aおよび領域Cと称される領域に隣接されており、領域AおよびCのそれぞれが、ヌクレオシドアナログ(例えば親和性強化ヌクレオシドアナログ、例えば1〜6個の親和性強化アナログ、例えばLNAヌクレオチドなど)を含む。
【0079】
特定の実施形態では、領域AおよびC中に存在するヌクレオシドアナログは、上記のように修飾糖部分を含み、オリゴマー中またはその領域中の全てのヌクレオシドアナログが、同じ修飾糖部分を含む。種々の実施形態において、ヌクレオシドアナログは2’-MOE糖、2’-フルオロ-デオキシリボース糖またはLNA糖を含有する。オリゴマーのヌクレオシドアナログは、独立に、これら3タイプから選択され得る。ヌクレオシドアナログを含有する特定のオリゴマーの実施形態では、ヌクレオシドアナログのうち少なくとも1個が2’-MOE-糖を含有する。種々の実施形態において、オリゴマー中の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオシドアナログが、2’-MOE-リボース糖を含有する。特定の実施形態では、ヌクレオシドアナログのうち少なくとも1個が、2’-フルオロ-デオキシリボース糖を含有する。種々の実施形態において、オリゴマー中の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオシドアナログが、2’-フルオロ-デオキシリボース糖を含有する。
【0080】
典型的には、ギャップマーは、5’から3’に、A-B-Cの領域、または任意によりA-B-C-DもしくはD-A-B-Cの領域を含み、ここで領域Aは、少なくとも1個のヌクレオシドアナログ、例えば少なくとも1個のLNAモノマー、例えば1〜6個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーを含み、領域Bは、(mRNA標的などの標的RNA分子の相補的標的領域と二本鎖を形成したとき)RNAseを集結させることが可能な少なくとも5個の連続するモノマー、例えばDNAモノマーを含み、領域Cは、少なくとも1個のヌクレオシドアナログ、例えば少なくとも1個のLNAモノマー、例えば1〜6個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなるか、またはこれを含み、領域Dは、存在する場合、1、2または3個のモノマー、例えばDNAモノマーを含む。
【0081】
種々の実施形態において、領域Aは、1、2、3、4、5または6個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマー、例えば2〜5個のヌクレオシドアナログ、例えば2〜5個のLNAモノマー、例えば3または4個のヌクレオシドアナログ、例えば3または4個のLNAモノマーからなり、かつ/または領域Cは、1、2、3、4、5または6個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマー、例えば2〜5個のヌクレオシドアナログ、例えば2〜5個のLNAモノマー、例えば3または4個のヌクレオシドアナログ、例えば3または4個のLNAモノマーからなる。一部の実施形態では、全てのヌクレオシドアナログが、LNAモノマーである。
【0082】
特定の実施形態では、領域Bは、RNAseを集結させることが可能な5、6、7、8、9、10、11または12個の連続するモノマー、またはRNAseを集結させることが可能な6〜10個、もしくは7〜9個、例えば8個の連続するモノマーを含む。特定の実施形態では、領域Bは、少なくとも1個のDNAモノマー、例えば1〜12個のDNAモノマー、または4〜12個のDNAモノマー、または6〜10個のDNAモノマー、例えば7〜10個のDNAモノマー、または8、9もしくは10個のDNAモノマーを含む。
【0083】
特定の実施形態では、領域Aは、3または4個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなり、領域Bは7、8、9または10個のDNAモノマーからなり、領域Cは3または4個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなる。そのような設計は、(A-B-C)3-10-3、3-10-4、4-10-3、3-9-3、3-9-4、4-9-3、3-8-3、3-8-4、4-8-3、3-7-3、3-7-4、4-7-3を含み、さらに領域Dを含んでもよく、これは1または2個のモノマー、例えばDNAモノマーを有し得る。
【0084】
特定の実施形態では、オリゴマーは、10、11、12、13または14個の連続するモノマーからなり、オリゴマーの該領域はパターン(5’〜3’)A-B-C、または任意によりA-B-C-DもしくはD-A-B-Cを有し、ここで、領域Aは、1、2または3個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなり、領域Bは、相補的なRNA分子(mRNA標的など)と二本鎖を形成したときに、RNAseを集結させることが可能な7、8または9個の連続するモノマーからなり、領域Cは、1、2または3個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなる。存在する場合、領域Dは1個のDNAモノマーからなる。
【0085】
特定の実施形態では、領域Aは1個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Aは2個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Aは3個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Cは1個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Cは2個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Cは3個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは7個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは8個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは9個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは1〜9個のDNAモノマー、例えば、2、3、4、5、6、7または8個のDNAモノマーを含む。特定の実施形態では、領域BはDNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは、α-L配置にある少なくとも1個のLNAモノマー、例えばα-L配置にある2、3、4、5、6、7、8または9個のLNAモノマーを含む。特定の実施形態では、領域Bは、少なくとも1個のα-L-オキシLNAモノマーを含む。特定の実施形態では、α-L配置にある領域B中のLNAモノマーの全てが、α-L-オキシLNAモノマーである。特定の実施形態では、オリゴマーのA-B-C領域中に存在するモノマーの数は、(ヌクレオシドアナログモノマー-領域B-ヌクレオシドアナログモノマー):1-8-1、1-8-2、2-8-1、2-8-2、3-8-3、2-8-3、3-8-2、4-8-1、4-8-2、1-8-4、2-8-4、または;1-9-1、1-9-2、2-9-1、2-9-2、2-9-3、3-9-2、1-9-3、3-9-1、4-9-1、1-9-4、または;1-10-1、1-10-2、2-10-1、2-10-2、1-10-3および3-10-1からなる群より選択される。特定の実施形態では、本発明のオリゴマーのA-B-C領域中に存在するモノマーの数は:2-7-1、1-7-2、2-7-2、3-7-3、2-7-3、3-7-2、3-7-4、および4-7-3からなる群より選択される。特定の実施形態では、領域AおよびCのそれぞれが2個のLNAモノマーからなり、領域Bが8または9個のヌクレオシドモノマー(特定の実施形態では、DNAモノマー)からなる。
【0086】
種々の実施形態において、他のギャップマー設計は、領域Aおよび/またはCが3、4、5または6個のヌクレオシドアナログ、例えば2’-O-メトキシエチル-リボース糖(2’MOE)を含有するモノマーまたは2’-フルオロ-デオキシリボース糖を含有するモノマーからなり、領域Bが8、9、10、11または12個のヌクレオシド、例えばDNAモノマーからなり、ここで、領域A-B-Cは5-10-5または4-12-4モノマーを有するものを含む。
【0087】
一部の実施形態では、ギャップマーは、本明細書中に提供されるものなどの硫黄含有連結基を含む。種々の実施形態において、ギャップマーは、特にギャップ領域(B)に、ホスホロチオエート連結基を含む。
【0088】
特定の実施形態では、ホスホロチオエート結合は、隣接する領域(AおよびC)中のモノマーを一緒に連結する。種々の実施形態において、ホスホロチオエート結合は、領域AまたはCを領域Dに連結し、領域D内のモノマーを一緒に連結する。
【0089】
種々の実施形態において、領域A、BおよびCは、特に、例えばヌクレオシドアナログ(例えば、LNAモノマー)の使用によって領域AおよびC内の連結基がエンドヌクレアーゼ分解から保護される場合、ホスホロチオエート以外の連結基、例えばホスホジエステル結合を含む。
【0090】
種々の実施形態において、オリゴマーの隣接するモノマーは、ホスホロチオエート結合により互いに連結されている。
【0091】
ホスホロチオエート骨格を有するオリゴマー、特に(典型的には領域Aおよび/またはC中に)ヌクレオシドアナログモノマー間またはヌクレオシドアナログモノマーに隣接してホスホロチオエート連結基を有するオリゴマーに、ホスホジエステル結合(1または2個の結合など)を含めることは、オリゴマーのバイオアベイラビリティおよび/または生体分布を変化させる場合があることが認識されている。WO 2008/053314(参照により本明細書中に組み入れられる)を参照されたい。
【0092】
上記で言及した実施形態などの一部の実施形態では、好適でありかつ具体的に示されていない場合、全ての残りの連結基はホスホジエステルもしくはホスホロチオエート、またはそれらの混合である。
【0093】
一部の実施形態では、全てのヌクレオシド間連結基がホスホロチオエートである。
【0094】
本明細書中に提供されるものなどの具体的なギャップマーオリゴヌクレオチド配列に言及する場合、種々の実施形態において、特に、ヌクレオシドアナログ(LNAモノマーなど)間の結合について、結合がホスホロチオエート結合である場合、本明細書中に開示されているものなどの代わりの結合を用いることができ、例えば、リン酸(ホスホジエステル)結合を用いることができることが理解されるであろう。
【0095】
更なるギャップマー設計は、WO 2004/046160およびWO 2007/146511A2(参照により本明細書中に組み入れられる)に開示されている。米国仮出願第60/977,409号(参照により本明細書中に組み入れられる)は、「ショートマー(shortmer)」ギャップマーオリゴマーに言及している。一部の実施形態では、本明細書中に提示されるオリゴマーは、そのようなショートマーギャップマーであり得る。
【0096】
1.5.5 オリゴマーの配列および特異性
本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマーは、HER3および/またはHER2および/またはEGFRポリペプチドをコードする核酸にハイブリダイズする。
【0097】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」との用語は、本明細書中で交換可能に用いられ、上述のような2個以上のモノマーの共有結合により形成される分子と定義される。2個以上のモノマーを含んで、「核酸」はいずれの長さでもあり得、この用語は、本明細書中に記載される長さを有する「オリゴマー」に対して包括的である。「核酸」および「ポリヌクレオチド」との用語は、一本鎖、二本鎖、部分的二本鎖、および環状分子を含む。
【0098】
種々の実施形態において、本明細書中で用いられる場合、「標的核酸」との用語は、哺乳動物HER3ポリペプチドをコードする核酸(DNAまたはRNAなど)を指す(例えば、配列番号197中の配列を有するヒトHER3 mRNA、または以下のGenBank登録番号を有する哺乳動物mRNA:NM_001005915、NM_001982およびオルタナティブスプライシング型NP_001973.2およびNP_001005915.1(ヒト);NM_017218(ラット);NM_010153(マウス);NM_001103105(ウシ);またはGenBank登録番号XM_001491896 (ウマ)、XM_001169469およびXM_509131(チンパンジー)を有する推定mRNA配列)。
【0099】
種々の実施形態において、「標的核酸」は、哺乳動物HER2ポリペプチドをコードする核酸も含む(例えば、以下のGenBank登録番号を有する哺乳動物mRNA:NM_001005862およびNM_004448(ヒト);NM_017003およびNM_017218(ラット);NM_001003817(マウス);NM_001003217(イヌ);およびNM_001048163(ネコ))。
【0100】
種々の実施形態において、「標的核酸」は、哺乳動物EGFRポリペプチドをコードする核酸も含む(例えば、以下のGenBank登録番号を有する哺乳動物mRNA:NM_201284、NM_201283、NM_201282およびNM_005228(ヒト);NM_007912およびNM_207655(マウス);NM_031507(ラット); およびNM_214007(ブタ))。
【0101】
上記で開示したGenBank登録番号は、cDNA配列を示し、mRNA配列それ自体を示すものではないことが認識される。成熟mRNAの配列は、チミン塩基(T)をウラシル塩基(U)で置き換えることにより、対応するcDNA配列から直接誘導することができる。
【0102】
種々の実施形態において、「標的核酸」は、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)コード核酸または天然に存在するその変異体、およびそこから誘導されるRNA核酸(プレmRNAまたは成熟mRNAなど)も含む。本発明に従うオリゴマーは、典型的には、標的核酸にハイブリダイズすることが可能である。
【0103】
「天然に存在するその変異体」との用語は、所定の分類群(例えば哺乳動物、例えばマウス、サル、およびヒト)内で天然に存在する、HER3(またはHER2もしくはEGFR)ポリペプチドまたは核酸配列の変異体を指す。典型的には、ポリヌクレオチドの「天然に存在する変異体」を指す場合、該用語は、HER3(またはHER2もしくはEGFR)をコードするゲノムDNA(第12染色体:54.76〜54.78Mbに見出される)のいずれかの対立遺伝子変異体(染色体転座または複製による)、およびそこから誘導されるmRNAなどのRNAも包含する場合がある。具体的なポリペプチド配列に言及する場合、例えば、該用語は、例えば翻訳と同時の修飾(co-translational modification)または翻訳後修飾(シグナルペプチド切断、タンパク質分解切断、グリコシル化、等)により、したがってプロセシングされていてもよい、タンパク質の天然に存在する形態も含む。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるオリゴマーは、オリゴマーのモノマーと標的核酸のモノマーとの間の、ワトソン・クリック塩基対形成、Hoogsteen水素結合、または逆Hoogsteen水素結合のいずれかにより、標的核酸の一領域(「標的領域」)に結合する。そのような結合は、「ハイブリダイゼーション」とも称される。他に示さない限り、結合は、相補的塩基同士(すなわち、アデニンとチミン(DNA)またはウラシル(RNA)、およびグアニンとシトシン)のワトソン・クリック対形成によるものであり、オリゴマーは、オリゴマーの配列が、標的領域の逆相補体の配列と同一であるか、または部分的に同一であるために、標的領域に結合し;本明細書中の目的のためには、オリゴマーは標的領域に「相補的」または「部分的に相補的」であると言われ、標的領域の配列に対するオリゴマー配列の「相補性」パーセントは、標的領域の配列の逆相補体に対する「同一性」パーセントである。
【0105】
他に文脈により明らかとされない限り、本明細書中の「標的領域」は、本明細書中で以下に記載するアライメントプログラムおよびパラメータを用いて、特定されたオリゴマー(またはその領域)の配列の逆相補体に最もよくアライメントする配列を有する標的核酸の領域であろう。
【0106】
本発明の組成物および方法で用いるためのオリゴマー(またはその領域)と哺乳動物HER3(またはHER2もしくはEGFR)をコードする核酸の標的領域(本明細書中に開示されているものなど)との間の「相補性」の程度を決定するに当たって、「相補性」(また、「相同性」)の程度は、オリゴマー(またはその領域)の配列と、それに最もよくアライメントする標的領域の配列の逆相補体との間の同一性パーセントとして表現される。パーセンテージは、2つの配列間で同一なアライメントした塩基の数をカウントし、オリゴマー(またはその領域)中の連続するモノマーの総数で除算し、これに100を乗算することにより算出される。そのような比較では、ギャップが存在する場合、そのようなギャップが、領域(ギャップ内のモノマーの数が本発明のオリゴマーと標的領域との間で異なる)ではなく、単なるミスマッチであるのが好ましい。
【0107】
アミノ酸およびポリヌクレオチドアライメント、配列同一性パーセンテージ、および相補性の程度は、本発明の目的のためには、ClustalWアルゴリズムを用いて標準的な設定を用いて決定することができる:http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.htmlを参照されたい、Method: EMBOSS::water (local): Gap Open = 10.0、Gap extend = 0.5、Blosum 62 (タンパク質)、またはヌクレオチド/核酸塩基配列についてはDNAfullを使用。
【0108】
理解されるであろうように、文脈に依存して、「ミスマッチ」は、配列中の非同一性(例えば、オリゴマーの核酸塩基配列と、それが結合する標的領域の逆相補体との間の、例えば、2つのアライメントされたHER3コード核酸の塩基配列間での)、または、配列中の非相補性(例えば、オリゴマーとそれが結合する標的領域との間の)を指す。
【0109】
好適には、オリゴマー(または以下でさらに説明されるようなコンジュゲート)は、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)遺伝子の発現を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害することが可能である。
【0110】
種々の実施形態において、本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマーは、処理直前の発現レベルと比較して、HER3(および任意により、HER2およびEGFRのうちの1以上)mRNA発現の少なくとも10%、少なくとも20%、より好ましくは処理直前の発現レベルと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の阻害を及ぼす。種々の実施形態において、本発明のオリゴマーは、処理直前の発現レベルと比較して、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)タンパク質発現の少なくとも10%、少なくとも20%、より好ましくは処理直前の発現レベルと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の阻害を及ぼす。一部の実施形態では、そのような阻害は、1nMの本発明のオリゴマーまたはコンジュゲートを用いた場合に見られる。種々の実施形態において、そのような阻害は、25nMのオリゴマーまたはコンジュゲートを用いた場合に見られる。
【0111】
種々の実施形態において、mRNA発現の阻害は、100%未満(すなわち、発現の完全な阻害未満)、例えば98%未満の阻害、95%未満の阻害、90%未満の阻害、80%未満の阻害、例えば70%未満の阻害である。種々の実施形態において、タンパク質発現の阻害は、100%未満(すなわち、発現の完全な阻害未満)、例えば98%未満の阻害、95%未満の阻害、90%未満の阻害、80%未満の阻害、例えば70%未満の阻害である。
【0112】
あるいは、発現レベルの変化は、mRNAレベルを測定することによって、例えば、ノザンブロッティングまたは定量的RT-PCRによって、決定することができる。mRNAレベルを介して測定する場合、適切な投与量(1nMおよび25nMなど)を用いた場合の阻害レベルは、種々の実施形態において、典型的には本発明の化合物なしでのレベルの10〜20%のレベルまでである。
【0113】
発現レベルの変化(すなわち、阻害または増大)は、タンパク質レベルを測定することによっても、例えば、SDS-PAGEとそれに続く標的タンパク質に対して生起された好適な抗体を用いるウエスタンブロッティングにより、決定することができる。
【0114】
一部の実施形態では、本発明は、HER3 mRNAおよび/またはそこから誘導されるタンパク質の1種以上のオルタナティブスプライシングアイソフォームの発現を阻害(例えば、ダウンレギュレート)するオリゴマーを提供する。一部の実施形態では、本発明は、HER3の1種以上のオルタナティブスプライシングタンパク質アイソフォーム(GenBank登録番号NP_001973.2および同NP_001005915.1)の発現および/またはHER3タンパク質アイソフォームをコードする核酸(GenBank登録番号NM_001982および同NM_001005915.1)の発現を阻害するオリゴマーを提供する。一部の実施形態では、HER3アイソフォーム1をコードするmRNAが標的核酸である。他の実施形態では、HER3アイソフォーム2をコードするmRNAが標的核酸である。特定の実施形態では、HER3アイソフォーム1およびHER3アイソフォーム2をコードする核酸が標的核酸であり、例えば、配列番号180の配列を有するオリゴマーである。
【0115】
種々の実施形態において、本発明は、HER3核酸中の標的領域の配列に相補的な塩基配列を有するオリゴマー、またはその第1領域を提供し、オリゴマーはHER3 mRNAおよび/またはHER3タンパク質発現をダウンレギュレーションし、HER2および/またはEGFRなどの1種以上の他のErbB受容体チロシンキナーゼファミリーメンバーのmRNAおよび/またはタンパク質の発現をダウンレギュレーションする。2種類の異なるErbB受容体ファミリー核酸(例えば、HER2およびHER3 mRNA)の標的領域に効果的に結合し、かつ両方の標的のmRNAおよび/またはタンパク質発現をダウンレギュレーションするオリゴマー、またはその第1領域は、「二重特異的(bispecific)」と名付けられる。3種類の異なるErbB受容体ファミリーメンバーの標的領域に結合し、3種類の遺伝子全てを効果的にダウンレギュレーションすることが可能なオリゴマー、またはその第1領域は、「三重特異的(trispecific)」と名付けられる。種々の実施形態において、本発明のオリゴマー性化合物は多重特異的(polyspecific)であり、すなわち、受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーの複数のメンバーの標的核酸の標的領域に結合し、それらの発現をダウンレギュレーションすることが可能なものであり得る。本明細書中で用いられる場合、「二重特異的」および「三重特異的」との用語は、どのようにも限定的ではないことが理解される。例えば、「二重特異的オリゴマー」が第3の標的核酸に対して何らかの作用を有する場合があり、「三重特異的オリゴマー」がその3種類の標的核酸のうちの1つに対して非常に弱く、したがって著明でない作用を有する場合がある。
【0116】
種々の実施形態において、二重特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3核酸中の標的領域およびHER2標的核酸中の標的領域に結合し、HER3およびHER2 mRNAおよび/またはタンパク質の発現を効果的にダウンレギュレーションすることが可能である。特定の実施形態では、二重特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質とHER2 mRNAおよび/またはタンパク質の発現を同じ程度にはダウンレギュレーションしない。他の実施形態では、本発明の二重特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3標的核酸中の標的領域およびEGFR標的核酸中の標的領域に結合し、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質ならびにEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を効果的にダウンレギュレーションすることが可能である。種々の実施形態において、二重特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質とEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を同じ程度にはダウンレギュレーションしない。さらに他の実施形態では、三重特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3標的核酸中の標的領域、および2種類の他のErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼ標的核酸中の標的領域に結合し、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質ならびに受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーの2つの他のメンバーのmRNAおよび/またはタンパク質の発現を効果的にダウンレギュレーションすることが可能である。種々の実施形態において、三重特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質の発現、HER2 mRNAおよび/またはタンパク質の発現、ならびにEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を効果的にダウンレギュレーションすることが可能である。種々の実施形態において、三重特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質、HER2 mRNAおよび/またはタンパク質ならびにEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を同じ程度にはダウンレギュレーションしない。
【0117】
本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、典型的には、ヒトHER3および/またはヒトHER2および/またはヒトEGFRのmRNAの標的領域に結合し、したがって、例えば、配列番号197、配列番号198および/または配列番号199の塩基配列に相補的または部分的に相補的な塩基配列を有する領域を含むかまたはそれからなる。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーの配列は、任意により、配列番号197、198または199の最もよくアライメントする標的領域の配列と比較したときに、1、2、3、4個以上の塩基ミスマッチを含む。
【0118】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物および方法で用いられるオリゴマーは、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列と同一の配列を有する(本明細書中、下記の表1を参照されたい)。他の実施形態では、本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマーは、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列と比較したときに、1、2、または3塩基で異なる配列を有する。一部の実施形態では、オリゴマーは、10〜16個の連続するモノマーを含む。16個の連続するモノマーからなるオリゴマーの配列の例は、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140である。より短い配列をそこから誘導することができ、例えば、より短いオリゴマーの配列が、配列番号200〜227、1〜140および228〜233の塩基配列を有するものから選択されるオリゴマーの領域中にそのまま存在し得る。種々の実施形態において、より長いオリゴマーが、配列番号200〜227、1〜140および228〜233中にそのまま存在する少なくとも10個の連続するモノマーの配列を有する領域を含む。配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140の配列を有するオリゴマーに相補的なヒトHER3 mRNAの標的領域が、図1に示されている(太字および下線部、対応するオリゴマーの配列番号が上に示されている)。
【0119】
種々の実施形態において、オリゴマーは、配列番号141〜168に示される塩基配列を有する。特定の実施形態では、オリゴマーはLNAオリゴマーであり、例えば、配列番号169〜196および234の配列を有するもの、特に配列番号169、170、173、174、180、181、183、185、187、188、189、190、191、192および194の塩基配列を有するものである。種々の実施形態において、オリゴマーは、配列番号169、170、172、174、175、176および179の塩基配列を有するものなどのLNAオリゴマーである。一部の実施形態では、オリゴマーまたはその領域は、配列番号169、180または234に示される塩基配列からなるか、それを含む。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、配列番号169、180または234に示される塩基配列を有するオリゴマーを含む。
【0120】
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマーは、好適には、配列番号200〜227から選択される配列などの特定の配列を有する領域を含み、この配列は、これもまた本発明の組成物および方法で用いることができる、より短いオリゴマー中にそのまま存在する。種々の実施形態では、該領域は10〜16個のモノマーを含む。例えば、配列番号200〜227の塩基配列を有するオリゴマーがそれぞれ、その配列が、それぞれ、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140の配列を有するより短いオリゴマー中にそのまま存在する1つの領域を含む。一部の実施形態では、16個未満のモノマー(例えば、10、11、12、13、14、または15モノマー)を有するオリゴマーは、その配列が配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140の配列を有するオリゴマー中にそのまま存在する、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または15個の連続するモノマーの領域を有する。したがって、種々の実施形態において、より短いオリゴマーの配列が、より長いオリゴマーの配列から誘導される。一部の実施形態では、本明細書中に開示した配列番号を有するオリゴマーの配列、またはその少なくとも10個の連続するモノマーの配列が、より長いオリゴマー中にそのまま存在する。典型的には、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140中にそのまま存在する配列を有する第1領域を含み、オリゴマーが配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140中にそのまま存在する第1領域よりも長い場合、オリゴマーの隣接領域は、標的核酸の標的領域に隣接する配列に相補的な配列を有する。2つのそのようなオリゴマーは、配列番号1および配列番号54である。
【0121】
種々の実施形態において、オリゴマーは、哺乳動物HER3をコードする標的核酸の標的領域に完全に相補的な(完璧に相補的な)モノマーの配列を含むか、またはそれからなる。
【0122】
しかしながら、一部の実施形態では、オリゴマーの配列は、HER3標的核酸の最もよくアライメントする標的領域と比較して1、2、3、または4個(またはそれ以上)のミスマッチを含み、かつ依然として十分に標的領域に結合し、HER3 mRNAまたはタンパク質発現の阻害を及ぼす。ワトソン・クリック水素結合二本鎖に対するミスマッチの不安定化効果は、例えば、オリゴマーの長さを増すこと、および/またはオリゴマー中に存在するヌクレオシドアナログ(LNAモノマーなど)の数を増やすことによって補償することができる。
【0123】
種々の実施形態において、オリゴマー塩基配列は、例えば、哺乳動物HER3をコードする標的核酸の最もよくアライメントする標的領域の塩基配列と比較して、3箇所以下、例えば2箇所以下のミスマッチを含む。
【0124】
本発明の組成物および方法での使用のためのオリゴマーまたはその領域の塩基配列は、種々の実施形態において、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、100%さえも同一である。
【0125】
オリゴマーまたはその第1領域の塩基配列は、種々の実施形態において、配列番号197、198および/または199中に存在する標的領域の配列に対して少なくとも80%相補的、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、100%さえも相補的である。
【0126】
種々の実施形態において、オリゴマー(またはその第1領域)の配列は、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択され、または配列番号200〜227、1〜140および228〜233の少なくとも10個の連続するモノマーからなる群より選択される。他の実施形態では、本発明の医薬組成物および方法で用いられるオリゴマーまたはその第1領域の配列は、任意により、選択された配列またはその領域と最適にアライメントしたときに、配列番号200〜227、1〜140および228〜233の配列、またはその少なくとも10個の連続するモノマーの配列を有するオリゴマー中のものとは異なる、1、2または3個の塩基部分を含む。
【0127】
特定の実施形態では、モノマー領域は、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29個の連続するモノマー、例えば、10〜15、12〜25、12〜22個、例えば12〜18個のモノマーからなる。好適には、種々の実施形態において、該領域は本発明のオリゴマーと同じ長さのものである。
【0128】
一部の実施形態では、オリゴマーは、5’または3’末端に追加のモノマーを含み、例えば、オリゴマーの5’末端および/または3’末端に独立して1、2、3、4または5個の追加のモノマーを含み、これらは標的領域の配列に相補的でない。
【0129】
種々の実施形態において、本発明のオリゴマーは、5’および/または3’に追加のモノマーが隣接した、標的に相補的な領域を含む。種々の実施形態において、該領域の3’末端に1、2もしくは3個のDNAまたはRNAモノマーが隣接している。3’ DNAモノマーは、オリゴマーの固相合成でしばしば用いられる。種々の実施形態において、同じかまたは異なってよいが、オリゴマーの5’末端に1、2もしくは3個のDNAまたはRNAモノマーが隣接している。特定の実施形態では、追加の5’または3’モノマーは、ヌクレオシド、例えばDNAまたはRNAモノマーである。種々の実施形態において、5’または3’モノマーは、本明細書中でギャップマーオリゴマーの文脈で言及した領域Dを表す場合がある。
【表1】
【0130】
ギャップマー配列(配列番号141〜196および234)に関して、太字の大文字は、ヌクレオシドがLNA糖を含有していることを示し、小文字は2’-デオキシヌクレオシドを示す。下付き「s」は、隣接するヌクレオシド間のホスホロチオエート結合を示す。LNAモノマー中の全てのシトシン塩基は、5-メチルシトシンである。24ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチド(配列番号211〜227)に関して、表1に示した太字および下線の文字は、より長いオリゴヌクレオチドに組み込まれているより短いオリゴマー性化合物の塩基配列を示す。
【0131】
1.5.6 コンジュゲート
本開示の文脈において、「コンジュゲート」との用語は、それ自体核酸またはモノマーでない1以上の部分(「コンジュゲート部分」)との本明細書中で記載されるオリゴマーの共有結合(「コンジュゲーション」)により形成される化合物を示す。そのようなコンジュゲート部分の例としては、タンパク質、脂肪酸鎖、糖残基、糖タンパク質、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどの高分子化合物が挙げられる。典型的には、タンパク質は標的タンパク質に対する抗体であり得る。典型的なポリマーはポリエチレングリコールであり得る。WO 2007/031091は、好適な部分およびコンジュゲートを提供しており、それらは参照により本明細書中に組み入れられる。
【0132】
したがって、一部の実施形態では、本発明の組成物および方法は、本明細書中に記載されるオリゴマーおよび少なくとも1つのコンジュゲート部分(核酸またはモノマーではなく、オリゴマーに共有結合されている)を含むコンジュゲートを利用する。したがって、オリゴマーが本明細書中に記載される特定された塩基配列を有する連続するモノマーからなる特定の実施形態では、コンジュゲートは、オリゴマーに共有結合された少なくとも1つのコンジュゲート部分も含む。
【0133】
種々の実施形態において、コンジュゲートは、オリゴマーの活性、細胞内分布または細胞内取り込みを強化する場合がある。そのような部分としては、限定するものではないが、抗体、ポリペプチド、コレステロール部分などの脂質部分、コール酸、チオエーテル(例えば、ヘキシル-s-トリチルチオール)、チオコレステロール、脂肪鎖(例えば、ドデカンジオール残基またはウンデシル残基)、リン脂質(例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたは1,2-ジ-o-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-h-ホスホン酸トリエチルアンモニウム)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が挙げられる。
【0134】
特定の実施形態では、オリゴマーは、オリゴマー性化合物の細胞内取り込みを増大させる部分にコンジュゲートされている。
【0135】
特定の実施形態では、オリゴマーは、活性薬物、例えば、アスピリン、イブプロフェン、サルファ剤、抗糖尿病薬、抗細菌剤または抗生物質にコンジュゲートされている。
【0136】
特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、コレステロールなどのステロールである。
【0137】
種々の実施形態において、コンジュゲート部分は、正に荷電したポリマー、例えば、1〜50個、例えば2〜20個、例えば3〜10個のアミノ酸残基長の正に荷電したペプチド、および/またはポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール)を含むかまたはそれからなる。WO 2008/034123を参照されたい(参照により本明細書中に組み入れられる)。好適には、ポリアルキレンオキシドなどの正に荷電したポリマーは、WO 2008/034123に記載されている放出可能なリンカー(releasable linker)などのリンカーを介して、オリゴマーに連結されていてもよい。
【0138】
1.5.6.1.1 活性化オリゴマー
本明細書中で用いられる場合、「活性化オリゴマー」との用語は、1以上のコンジュゲート部分(すなわち、それ自体核酸またはモノマーでない部分)とのオリゴマーの共有結合を可能にし、本明細書中に記載されるコンジュゲートを形成させる少なくとも1つの官能性部分に共有結合した(すなわち、官能化された)、上記のオリゴマーなどのオリゴマーを指す。典型的には、官能性部分は、例えば、アデニン塩基の3’-ヒドロキシル基または環外NH2基を介してオリゴマーに共有結合することが可能な化学基、一部の実施形態では親水性のスペーサー、およびコンジュゲート部分に結合することが可能な末端基(例えば、アミノ基、スルフヒドリル基またはヒドロキシル基)を含むであろう。一部の実施形態では、末端基は保護されておらず、例えば、NH2基である。他の実施形態では、末端基は、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」(Theodora W GreeneおよびPeter G M Wuts著, 第3版 (John Wiley & Sons, 1999))に記載されているものなどのいずれかの好適な保護基により、保護されている。好適なヒドロキシル保護基の例としては、エステル(例えば酢酸エステル)、アラルキル基(例えばベンジル、ジフェニルメチル、またはトリフェニルメチル)、およびテトラヒドロピラニルが挙げられる。好適なアミノ保護基の例としては、ベンジル、α-メチルベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、およびアシル基(例えばトリクロロアセチルまたはトリフルオロアセチル)が挙げられる。
【0139】
一部の実施形態では、官能性部分は自己切断性である。他の実施形態では、官能性部分は生分解性である。例えば、米国特許第7,087,229号を参照されたい(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)。
【0140】
一部の実施形態では、本発明の組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、該オリゴマーの5’末端へのコンジュゲート部分の共有結合を可能にするために、5’末端で官能化されている。他の実施形態では、オリゴマーは3’末端で官能化されていることができる。さらに他の実施形態では、オリゴマーは、骨格に沿って、または複素環塩基部分で官能化されていることができる。また別の実施形態では、オリゴマーは、5’末端、3’末端、骨格および塩基から独立に選択される2以上の位置で官能化されていることができる。
【0141】
一部の実施形態では、活性化オリゴマーは、官能性部分に共有結合する1個以上のモノマーを、合成中に取り込ませることにより合成される。他の実施形態では、本発明の活性化オリゴマーは、官能化されていないモノマーを用いて合成され、該オリゴマーは合成の完了後に官能化される。
【0142】
一部の実施形態では、オリゴマーは、アミノアルキルリンカーを含有するヒンダード(hindered)エステルを用いて官能化され、ここでアルキル部分は式(CH2)wを有し、wは1〜10の整数、例えば約6であり、アルキルアミノ基のアルキル部分は直鎖または分岐鎖であり得、官能基はエステル基(-O-C(O)-(CH2)wNH)を介してオリゴマーに連結されている。
【0143】
他の実施形態では、オリゴマーは、(CH2)w-スルフヒドリル(SH)リンカーを含有するヒンダードエステルを用いて官能化され、wは1〜10の整数、例えば約6であり、アルキルアミノ基のアルキル部分は直鎖または分岐鎖であり得、官能基はエステル基(-O-C(O)-(CH2)wSH)を介してオリゴマーに連結されている。一部の実施形態では、スルフヒドリル活性化オリゴヌクレオチドは、ポリエチレングリコールまたはペプチドなどのポリマー部分と(ジスルフィド結合の形成を介して)コンジュゲート化される。
【0144】
少なくとも1つの官能性部分に共有結合された活性化オリゴマーは、当技術分野で公知のいずれかの方法により、特に米国特許第7,595,304号、WO 2008/034122およびWO 2008/034119(これらはそれぞれが参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)、ならびにZhaoら, (2007) J. Controlled Release 119:143-152;およびZhaoら, (2005) Bioconjugate Chem. 16:758-766に開示されている方法により、合成することができる。
【0145】
さらに他の実施形態では、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、米国特許第4,962,029号および同第4,914,210号に実質的に記載されている官能化試薬(すなわち、一方の末端にホスホルアミダイトを有し、親水性スペーサー鎖により反対側の末端(保護または未保護スルフヒドリル基、アミノ基またはヒドロキシル基を含む)に連結されている実質的に直鎖の試薬)を用いて、オリゴマー中にスルフヒドリル基、アミノ基またはヒドロキシル基を導入することにより官能化される。そのような試薬は、主としてオリゴマーのヒドロキシル基と反応する。一部の実施形態では、そのような活性化オリゴマーは、オリゴマーの5’-ヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。他の実施形態では、活性化オリゴマーは、3’-ヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。さらに他の実施形態では、活性化オリゴマーは、オリゴマーの骨格のヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。またさらなる実施形態では、オリゴマーは、米国特許第4,962,029号および同第4,914,210号(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)に記載されている2以上の官能化試薬を用いて官能化される。そのような官能化試薬をを合成し、それらをモノマーまたはオリゴマーに組み入れる方法は、米国特許第4,962,029号および同第4,914,210号に開示されている。
【0146】
一部の実施形態では、固相結合オリゴマーの5’-末端をジエニルホスホルアミダイト誘導体で官能化し、続いて、脱保護したオリゴマーを、例えば、Diels-Alder付加環化反応を介してアミノ酸またはペプチドとコンジュゲートする。
【0147】
種々の実施形態において、2’-糖修飾(例えば、2’-カルバメート置換糖または2’-(O-ペンチル-N-フタルイミド)-デオキシリボース糖)を含有するモノマーのオリゴマーへの組み込みは、オリゴマーの糖へのコンジュゲート部分の共有結合を促進する。他の実施形態では、1個以上のモノマーの2’位にアミノ含有リンカーを有するオリゴマーは、例えば、5’-ジメトキシトリチル-2’-O-(e-フタルイミジルアミノペンチル)-2’-デオキシアデノシン-3’-N,N-ジイソプロピル-シアノエトキシホスホルアミダイトなどの試薬を用いて調製される。例えば、Manoharanら, Tetrahedron Letters, 1991, 34, 7171を参照されたい。
【0148】
またさらなる実施形態では、オリゴマーは、N6プリンアミノ基、グアニンの環外N2、またはシトシンのN4もしくは5位を含む核酸塩基上に、アミノ含有官能性部分を有する。一部の実施形態では、そのような官能化は、オリゴマー合成において既に官能化されている市販の試薬を用いることにより達成される場合がある。
【0149】
いくつかの官能性部分が市販されており、例えば、ヘテロ二官能性連結部分およびホモ二官能性連結部分は、Pierce Co.(Rockford, Ill.)から入手可能である。他の市販の連結基は、5'-Amino-Modifier C6および3'-Amino-Modifier試薬(両方ともGlen Research Corporation(Sterling, Va.)から入手可能)である。5'-Amino-Modifier C6は、ABI(Applied Biosystems Inc., Foster City, Calif.)からAminolink-2としても入手可能であり、3'-Amino-Modifierは、Clontech Laboratories Inc.(Palo Alto, Calif.)からも入手可能である。
【0150】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、2種類または3種類全ての標的核酸さえも標的化するために、2種以上のオリゴマーを含む。種々の実施形態において、本発明は、HER3を標的とするオリゴマー、およびHER2発現を標的としてダウンレギュレーションするオリゴマーを含む医薬組成物に関する。他の実施形態では、同じかまたは異なり、本発明は、HER3を標的とするオリゴマー、およびEGFR発現を標的としてダウンレギュレーションするさらなるオリゴマーを含む医薬組成物に関する。
【0151】
一部の実施形態では、HER2および/またはEGFR mRNAを標的とするオリゴマー(またはそのコンジュゲート)は、HER3を標的とするオリゴマーと同じ設計(例えば、ギャップマー、ヘッドマー(headmer)、テイルマー(tailmer))を有する。種々の実施形態において、HER2および/またはEGFR mRNAを標的とするオリゴマー(またはそのコンジュゲート)は、HER3を標的とするオリゴマーと異なる設計を有する。
【0152】
一部の実施形態では、本発明の組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、細胞膜を通過するオリゴマーの送達のために、コンジュゲート部分に共有結合されている。細胞膜を通過するオリゴマーの送達のためのコンジュゲート部分の例は、コレステロールなどの親油性部分である。種々の実施形態において、本発明の医薬組成物での使用のためのオリゴマーは、リポソームを形成する脂質製剤を用いて製剤化される(Lipofectamine 2000またはLipofectamine RNAiMAXなど、両方ともInvitrogenから市販されている)。一部の実施形態では、オリゴマーは、1種以上の脂質様の天然に存在しない小分子(「リピドイド(lipidoid)」)の混合物を用いて製剤化される。リピドイドのライブラリーは、慣用の合成化学法により合成することができ、特定のサイズのオリゴマーの選択された投与経路による標的化組織への効果的な送達のためのビヒクルを開発するために、リピドイドの種々の量および組み合わせをアッセイすることができる。好適なリピドイドのライブラリーおよび組成物は、例えば、Akincら, (2008) Nature Biotechnol.(http://www.nature.com/nbt/journal/vaop/ncurrent/abs/nbt1402.htmlで入手可能、参照により本明細書中に組み入れられる)の中に見出すことができる。
【0153】
1.6 タンパク質チロシンキナーゼインヒビター
本明細書中で交換可能に用いられる場合、「タンパク質チロシンキナーゼインヒビター」、「PTKインヒビター」、および「チロシンキナーゼインヒビター」との用語は、1以上のチロシンキナーゼドメインに結合し、その活性を阻害する分子を指す。タンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、本明細書中に記載されるHER3を標的とするオリゴマーではない。一部の実施形態では、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、モノクローナル抗体である。他の実施形態では、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、1000Da未満、例えば300〜700Daの分子量を有する小分子である。
【0154】
特定の実施形態では、PTKインヒビターは、1以上のEGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼに結合し、これを阻害する。種々の実施形態において、PTKインヒビターは、1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するか、またはそれにより調節される1以上のタンパク質(例えば、1以上のEGFRファミリーメンバーから始まる1以上のシグナル伝達カスケードに含まれるタンパク質)のチロシンキナーゼに結合し、これを阻害する。一部の実施形態では、チロシンキナーゼは受容体チロシンキナーゼであり、すなわち、細胞外リガンド結合ドメインを有するより大きなタンパク質の細胞内ドメインであり、1以上のリガンドの結合により活性化される。特定の実施形態では、タンパク質チロシンキナーゼは、非受容体チロシンキナーゼである。チロシンキナーゼ酵素は、1以上のシグナル伝達経路中の他のタンパク質の活性を、それらをリン酸化することにより調節する。
【0155】
種々の実施形態において、本発明の組成物および方法で有用なタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、EGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼドメインに選択的に結合する小分子インヒビターを含む。特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で有用なタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、タンパク質のEGFRファミリーの2以上のメンバーのチロシンキナーゼドメインに結合し、その活性を阻害する小分子インヒビターを含む。他の実施形態では、本発明の組成物および方法で有用なタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、受容体チロシンキナーゼのEGFRファミリーに選択的に結合するのではなく、VEGFR、PDGFR、および/またはRafなどのタンパク質の他のファミリーのチロシンキナーゼドメインにも結合するPTKインヒビターを含む。特定の実施形態では、PTKインヒビターは、可逆的インヒビターであり、すなわち、それらはタンパク質に結合するが、これを不可逆的に変化させはしない。種々の実施形態において、PTKインヒビターは不可逆的インヒビターであり、すなわち、それらはPTK受容体二量体を共有結合によって架橋することにより、PTKを阻害する。
【0156】
種々の実施形態において、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターの製薬上許容される誘導体を含む医薬組成物を包含する。本明細書中で用いられる場合、「製薬上許容される誘導体」との用語は、PTKインヒビターのいずれかの製薬上許容される塩、プロドラッグ、放射標識形態、立体異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、他の立体異性体形態、ラセミ混合物、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物(例えば、水和物)、無定形固体形態または結晶性固体形態を含む。一実施形態では、製薬上許容される誘導体は、PTKインヒビターの製薬上許容される塩、放射標識形態、立体異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、他の立体異性体形態、ラセミ混合物、幾何異性体、および/または互変異性体である。別の実施形態では、製薬上許容される誘導体は、PTKインヒビターの製薬上許容される塩である。
【0157】
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で用いられるPTKインヒビターは、塩でない形態(例えば、遊離酸または遊離塩基の形態)にある。他の実施形態では、本発明の組成物および方法で用いられるPTKインヒビターは、製薬上許容される塩の形態にある。本明細書中で用いられる場合、「製薬上許容される塩」は、所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒性作用の許容可能なレベルを示す塩を指す。
【0158】
チロシンキナーゼインヒビターの製薬上許容される塩形態は、慣用の方法により調製することができる。PTKインヒビターが酸基を含む場合、好適な塩は、化合物を好適な塩基と反応させ、対応する塩基付加塩をもたらすことにより形成させることができる。そのような塩基としては、限定するものではないが、アルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含む);アルカリ土類金属水酸化物(水酸化バリウム、および水酸化カルシウムなど);アルカリ金属アルコキシド(例えば、カリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド);および種々の有機塩基(ピペリジン、ジエタノールアミンおよびN-メチルグルタミンなど)が挙げられる。
【0159】
あるいは、化合物を製薬上許容される有機および無機酸で処理することにより、PTKインヒビターの酸付加塩を形成させることができる(例えば、ハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素など)、他の鉱物酸および対応するその塩(硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩など)ならびにアルキルおよびモノアリールスルホン酸塩(エタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩)、ならびに他の有機酸および対応するその塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩など)。したがって、PTKインヒビターの製薬上許容される酸付加塩としては、限定するものではないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギネート(arginate)、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩(besylate))、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、臭化物、酪酸塩、カンホレート(camphorate)、カンファースルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩(digluconate)、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクテレート(galacterate)(粘液酸(mucic acid)からの)、ガラクツロネート(galacturonate)、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸、リン酸一水素塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩が挙げられる。
【0160】
本発明の方法および組成物で有用なPTKインヒビターとしては、限定するものではないが、ゲフィチニブ(ZD-1839、Iressa(登録商標))、エルロチニブ(OSI-1774、TarcevaTM)、カネルチニブ(CI-1033)、バンデタニブ(ZD6474、Zactima(登録商標))、チルホスチンAG-825(CAS 149092-50-2)、ラパチニブ(GW-572016)、ソラフェニブ(BAY43-9006)、AG-494(CAS 133550-35-3)、RG-13022(CAS 149286-90-8)、RG-14620(CAS 136831-49-7)、BIBW 2992(Tovok)、チルホスチン9(CAS 136831-49-7)、チルホスチン23(CAS 118409-57-7)、チルホスチン25(CAS 118409-58-8)、チルホスチン46(CAS 122520-85-8)、チルホスチン47(CAS 122520-86-9)、チルホスチン53(CAS 122520-90-5)、ブテイン(1-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オン 2’,3,4,4’-テトラヒドロキシカルコン;CAS 487-52-5)、クルクミン((E,E)-1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン;CAS 458-37-7)、N4-(1-ベンジル-1H-インダゾール-5-イル)-N6,N6-ジメチル-ピリド-[3,4-d]-ピリミジン-4,6-ジアミン(202272-68-2)、AG-1478、AG-879、シクロプロパンカルボン酸-(3-(6-(3-トリフルオロメチル-フェニルアミノ)-ピリミジン-4-イルアミノ)-フェニル)-アミド(CAS 879127-07-8)、N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N2-(1-メチルピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、2HCl(CAS 196612-93-8)、4-(4-ベンジルオキシアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン(CAS 179248-61-4)、N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル)2-ブチナミド(CAS 881001-19-0)、EKB-569、HKI-272、およびHKI-357が挙げられる。
【0161】
一部の実施形態では、PTKインヒビターは、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブおよびソラフェニブから選択される。
【0162】
特定の実施形態では、チロシンキナーゼインヒビターはゲフィチニブである。
【0163】
PTKインヒビターは、当技術分野で公知のいずれかの方法により取得することができる。一部の実施形態では、PTKインヒビターは、例えば、Sigma-Aldrich(登録商標)およびCayman Chemicalから市販されている。種々の実施形態において、PTKインヒビターは、例えば、AstraZeneca、Roche、GlaxoSmithKlineおよびBayer Pharmaceuticalsから処方により入手可能である。他の実施形態では、PTKインヒビターは、当技術分野で公知の方法により、例えば、Rewcastle, G.W.ら, (1996) J. Med. Chem. 39:918-928で説明されている方法により合成することができる。
【0164】
種々の実施形態において、本発明の組成物は、2種以上のチロシンキナーゼインヒビターを含む。一部の実施形態では、一方のチロシンキナーゼインヒビターが特定の受容体チロシンキナーゼに対して選択的であり(例えば、ゲフィチニブ)、第2のチロシンキナーゼインヒビターは比較的、非選択的である(例えば、ソラフェニブ)。種々の実施形態において、第2のチロシンキナーゼインヒビターは、2以上のEGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼドメインに結合する(例えば、ラパチニブ)。またさらなる実施形態では、第2のチロシンキナーゼインヒビターは、VEGFRなどの異なるファミリーのPTK受容体のチロシンキナーゼドメインに結合する。
【0165】
1.6.1 製薬上許容される賦形剤および投与剤形
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、少なくとも1種のオリゴマー性化合物、少なくとも1種のPTKインヒビターまたは製薬上許容されるその誘導体、および好適な量の製薬上許容される賦形剤を含み、それにより患者への適正な投与のための剤形がもたらされる。本明細書中で用いられる場合、「患者」との用語は、限定するものではないが、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、ペットまたは家畜、例えば、ウシ、サル、ヒヒ、チンパンジー、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットを含む。種々の実施形態において、少なくとも1種のオリゴマー性化合物および少なくとも1種のPTKインヒビターは、単一の医薬組成物中にある。他の実施形態では、少なくとも1種のオリゴマー性化合物および少なくとも1種のPTKインヒビターは、別個の医薬組成物中にある。有効成分が別個の組成物中にあるそのような実施形態では、組成物は、HER3標的化併用療法での使用のために一緒に梱包することができる(同梱)。
【0166】
製薬的賦形剤は、希釈剤、懸濁化剤、溶解剤、結合剤、崩壊剤、保存料、着色料、滑沢剤、等であり得る。製薬的賦形剤は、液体であり得、例えば、水または石油、動物、植物もしくは合成由来のものなどの油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油、等である。製薬的賦形剤は、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素、等であり得る。さらに、添加剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤および着色料を用いることができる。一実施形態では、製薬上許容される賦形剤は、患者に投与するときに無菌である。オリゴマーまたはPTKインヒビターが静脈内投与される場合、水は特に有用な賦形剤である。生理食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射可能溶液のために、液体賦形剤として用いることができる。好適な製薬的賦形剤としてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、等が挙げられる。本発明の組成物は、所望であれば、少量の湿潤化剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。経口投与剤形を製剤化するために用いることができる製薬上許容される賦形剤の具体例は、the Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (1986)に記載されている。
【0167】
本発明の医薬組成物は、溶液剤、懸濁液剤、エマルジョン剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、持続放出製剤、坐薬、エマルジョン剤、エアゾール剤、噴霧剤、懸濁液剤の形態、または使用のために好適ないずれかの他の剤形であり得る。好適な製薬的賦形剤の他の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences 1447-1676 (Alfonso R. Gennaro編, 第19版, 1995)(参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0168】
種々の実施形態において、組成物は、ヒトへの経口投与に適合した組成物として、慣用の手順に従い製剤化される。経口送達するためのオリゴマーまたは小分子PTKインヒビターは、例えば、錠剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、カプレット剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性溶液剤、懸濁液剤、顆粒剤、散剤、エマルジョン剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であり得る。活性薬剤が経口用錠剤中に組み入れられる場合、そのような錠剤は、圧縮錠剤、粉薬錠剤(例えば、粉末化錠剤または崩壊錠剤)、腸溶コーティング錠剤、糖衣錠剤、フィルムコーティング錠剤、多圧縮錠剤または多層錠剤であり得る。固体経口投与剤形を製造するための技術および組成は、Marcel Dekker, Inc出版のPharmaceutical Dosage Forms: Tablets (Lieberman, LachmanおよびSchwartz編, 第2版)に記載されている。錠剤(圧縮錠剤および成形錠剤)、カプセル剤(ハードおよびソフトゼラチン)および丸剤を製造するための技術および組成は、Remington's Pharmaceutical Sciences 1553-1593 (Arthur Osol編, 第16版, Mack Publishing, Easton, PA 1980)にも記載されている。
【0169】
液体経口投与剤形は、水性および非水性溶液剤、エマルジョン剤、懸濁液剤、ならびに不活性顆粒から再調製される溶液剤および/または懸濁液剤を含む(任意により1種以上の好適な溶媒、保存料、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、着色料、香味剤、等を含有する)。液体経口投与剤形を製造するための技術および組成は、Marcel Dekker, Inc.出版のPharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, (Lieberman, RiegerおよびBanker編)に記載されている。
【0170】
本発明の組成物が非経口的に注入されるものである場合、それらは、例えば、等張無菌溶液剤の形態であり得る。あるいは、組成物が吸入されるものである場合、それらは、乾燥エアゾール剤に製剤化することができるか、または水性もしくは部分的に水性の溶液剤に製剤化することができる。
【0171】
経口投与用組成物は、製薬的に口当たりが良い調製物をもたらすために、1種以上の薬剤、例えば、甘味料(フルクトース、アスパルテームまたはサッカリンなど);香味剤(ペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリーなど);着色料;および保存料を含有することができる。さらに、医薬組成物の錠剤または丸剤の剤形は、消化管での崩壊および吸収を遅延させるためにコーティングして、それにより長時間にわたる持続作用をもたらすことができる。浸透活性駆動化合物を囲む選択的透過性膜も、経口投与用組成物に好適である。これらの後者のプラットフォームでは、カプセルを囲む環境からの体液が駆動化合物により吸収されて、該化合物が膨潤して開口部を通過して薬剤または薬剤組成物を置き換える。これらの送達プラットフォームは、即時放出製剤の急上昇する(spiked)プロフィールとは逆に、実質的にゼロオーダーの送達プロフィールをもたらすことができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの遅延物質を用いることもできる。経口用組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースおよび炭酸マグネシウムなどの標準的な賦形剤を含むことができる。一実施形態では、賦形剤は製薬グレードのものである。
【0172】
別の実施形態では、組成物は静脈内投与のために製剤化することができる。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌等張水性緩衝液を含む。必要である場合、組成物は溶解剤も含むことができる。静脈内投与用の組成物は、任意により、ベンゾカインまたはプリロカインなどの局所麻酔薬を含んで、注入部位の痛みを低減させることができる。一般的に、例えば、活性薬剤の量を示したアンプルもしくはサシェなどの密閉容器中の凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として、成分を別個に供給するか、または単一投与剤形として一緒に混合することができる。組成物が点滴による投与のためのものである場合、例えば、無菌の製薬グレード水または生理食塩水が入った輸液ボトルと共に供給することができる。活性薬剤を注射により投与する場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用無菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0173】
本発明の医薬組成物は、制御放出手段もしくは徐放手段により、または当業者に公知の送達デバイスにより、投与することができる。例としては、限定するものではないが、米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;同第4,008,719号;同第5,674,533号;同第5,059,595号;同第5,591,767号;同第5,120,548号;同第5,073,543号;同第5,639,476号;同第5,354,556号;および同第5,733,566号(そのそれぞれが参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されているものなどが挙げられる。そのような投与剤形は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、マルチ顆粒、リポソーム、ミクロスフェア、またはそれらの組み合わせを用い、1種以上の有効成分の制御放出または徐放をもたらすために用いて、様々な割合での所望の放出プロフィールをもたらすことができる。本明細書中に記載するものをはじめとする当業者に公知の好適な制御放出製剤または徐放製剤は、本発明の有効成分を用いた使用のために容易に選択することができる。したがって、本発明は、制御放出または徐放に適合した、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、およびカプレット剤などの、経口投与に好適な単一の単位投与剤形を包含する。
【0174】
本明細書中に記載した医薬組成物の投与は、経口、肺内、局所(例えば、表皮、経皮、眼内ならびに膣内および腸内送達をはじめとする粘膜)、あるいは静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射または点滴をはじめとする非経口的であり得る。一実施形態では、治療用オリゴマーを含有する医薬組成物は、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)またはボーラス注射として投与される。本発明の多くの態様で、非経口経路が好ましい。適正な製剤は、選択された投与経路、すなわち、局所または全身治療が施されるかどうかに依存する。少なくとも1種のオリゴマーおよび少なくとも1種のPTKインヒビターが別個の組成物中に製剤化される種々の実施形態において、医薬組成物は同じ剤形(例えば、固体剤形、液体剤形、エアゾール)である必要はなく、同じ経路(例えば、経口、非経口、局所)により、または同時に投与される必要はない。例えば、本発明は、オリゴマーが経口投与用の剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、経口用シロップ等)に製剤化され、PTKインヒビターが静脈内投与または吸入による投与用の剤形に製剤化される医薬組成物を包含する。
【0175】
1.6.2 投与レジメン
HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーは、3日〜2週間の範囲の定期的な間隔(「投与間隔」または「DI」)で投与することができる。一部の実施形態では、DIは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13日である。種々の実施形態において、DIは約1週間である。またさらなる実施形態では、DIは、6、7または8日である。好適には、2回の投与間にDIを有して、少なくとも2回投与し、例えば、3、4、5、6、7、8、9または10回投与し、それぞれがLNAオリゴマーの連続する投与間にDIを有する。各投与間のDI期間は同じであり得る。一部の実施形態では、DI期間は3日〜2週間である。他の実施形態では、DI期間は4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13日である。また別の実施形態では、DI期間は約1週間である。特定の実施形態では、DI期間は、6、7または8日である。
【0176】
一部の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーの各用量は、約0.25mg/kg体重〜約10mg/kg体重、例えば約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、または約9mg/kgである。一部の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーの各用量は、約2mg/kg〜約8mg/kg、または約4〜約6mg/kg、または約4m/kg〜約5mg/kgである。一部の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーの各用量は、少なくとも2mg/kg、例えば2、3、4、5、6、7または8mg/kgである。種々の実施形態において、各用量は6mg/kgである。
【0177】
LNAオリゴマーの投与は、典型的には、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または腹腔内投与により行なわれる。特定の実施形態では、投与は静脈内である。
【0178】
一部の実施形態では、LNAオリゴマーの投与レジメンは、最初の投与レジメンの後に繰り返される。種々の実施形態において、投与レジメンは、疾患の進行を治療または予防するために必要である場合に繰り返される。
【0179】
特定の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーは、継続的よりもむしろ比較的短い期間にわたって投与される。種々の実施形態において、患者が長期にわたって病院に拘束される必要がないので、短い投与期間は患者の生活の質に著明な改善をもたらす。したがって、種々の実施形態において、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーは、継続的な点滴によっては投与されない。したがって、LNAオリゴマーの各用量は、12時間未満の時間、例えば約8時間未満、例えば約4時間未満、例えば約3時間未満で患者に投与することができる。したがって、LNAオリゴマーの各用量は、約1時間〜約4時間、例えば約2時間〜約3時間、または約2時間の時間で患者に投与することができる。LNAオリゴマーは、少なくとも30分、例えば少なくとも1時間の時間で患者に投与することができる。そのような投与は、例えば、静脈内に行なうことができる。
【0180】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターの製薬上有効な用量は、一部の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーの1以上の製薬上有効な用量の投与の前に、それと同時に、またはそれに続いて投与することができる。典型的には、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターの1以上の有効な用量を投与して、LNAオリゴマーとタンパク質チロシンキナーゼの両方が、患者に対して同時に治療的利益をもたらすようにする。
【0181】
1.6.3 キット
本発明は、第1の構成要素および第2の構成要素を含むキットも提供する。種々の実施形態において、第1の構成要素は、HER3の発現を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害することが可能な少なくとも1種のオリゴマー、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物を含み、第2の構成要素は、1種以上のEGFRファミリーメンバーに選択的な少なくとも1種の小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを含む。他の実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドまたはPTKインヒビター以外の治療剤、例えば化学療法剤(例えば、タキソール)である第3の構成要素を含む。一部の実施形態では、本発明のキットは、過剰増殖障害(癌など)の治療方法で用いられ、該方法は、それを必要とする患者に、キットの第1の構成要素および第2の構成要素の有効量を投与するステップを含む。種々の実施形態において、第1および第2の構成要素は、同じ時点でまたは同時に投与される。他の実施形態では、第1および第2の構成要素は、逐次的かついずれかの順番で投与される。
【0182】
一部の実施形態では、キットは、HER3の発現を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害することが可能な本発明のオリゴマー、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物を含む第1の構成要素、およびタンパク質チロシンキナーゼインヒビターである第2の構成要素、ならびに本明細書中に記載されるHER2およびEGFRのうちの1以上の発現を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害することが可能なオリゴマー、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物である第3の構成要素を含む。
【0183】
本発明の一実施形態は、キット内の別々の組成物中に、少なくとも1種のオリゴマー性化合物および少なくとも1種のPTKインヒビターを含むキットを提供する。例えば、本発明の1つのキットの実施形態は、それぞれキット内の別々の組成物として、配列番号180に従うオリゴマー性化合物およびPTKインヒビターであるゲフィチニブを含む。
【0184】
1.7 方法
特定の実施形態では、本発明は、細胞内でHER3の発現および/または活性を阻害する方法を包含し、該方法は、細胞を、有効量のオリゴマー性化合物(またはそのコンジュゲート)および有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターと接触させ、それにより、細胞内でのHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)の発現および/または活性の阻害(例えば、ダウンレギュレーション)を及ぼすようにするステップを含む。特定の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)のmRNA発現を阻害する。他の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)のタンパク質発現を阻害する。また別の実施形態では、EGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼの活性を阻害する(例えば、ダウンレギュレーションする)。種々の実施形態において、細胞へのHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)の内在化を阻害する(例えば、ダウンレギュレーションする)。種々の実施形態において、細胞は哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。
【0185】
特定の実施形態において、接触はin vitroで行なわれる。他の実施形態では、接触は、本発明の組成物を哺乳動物に投与することによりin vivoで行なわれる。種々の実施形態において、本発明は、HER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現、および/または細胞へのHER3の内在化、ならびに細胞内でのHER2タンパク質および/もしくはmRNAの発現および/またはHER2チロシンキナーゼの活性、および/または細胞へのHER2の内在化を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害する方法を提供する。ヒトHER2 mRNAの配列は、配列番号199に示されている。またさらなる実施形態では、本発明は、細胞内でのHER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現、および/または細胞へのHER3の内在化、ならびに細胞内でのEGFRタンパク質および/もしくはmRNAの発現、および/またはEGFRチロシンキナーゼの活性、および/または細胞へのEGFRの内在化を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害する方法を提供する。ヒトEGFR mRNAの配列は、配列番号198に示されている。またさらなる実施形態では、本発明は、細胞内でのHER3、HER2およびEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現、ならびに/またはHER2およびEGFRチロシンキナーゼの活性、ならびに/または細胞へのHER3、HER2およびEGFRの内在化を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害する方法を提供する。
【0186】
特定の実施形態では、本発明は、患者での疾患を治療する方法に関し、該方法は、それを必要とする患者に、有効量の少なくとも1種のオリゴマーまたはそのコンジュゲート、有効量の少なくとも1種の小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビターおよび製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物を投与するステップを含む。本明細書中で用いられる場合、「治療する」および「治療」との用語は、既存の疾患(例えば、本明細書中で以下で言及する疾患または障害)の治療、または疾患の防止、すなわち予防の両方を指す。
【0187】
種々の実施形態において、本発明は、患者での疾患の治療方法に関し、ここでオリゴマー(またはそのコンジュゲート)およびタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは異なる医薬組成物中にある。特定の実施形態では、2種類の組成物を同じ時点でまたは同時に投与することができる。他の実施形態では、2種類の組成物を逐次的にいずれかの順番で投与することができる。種々の実施形態において、オリゴヌクレオチド(またはそのコンジュゲート)を含む組成物およびタンパク質チロシンキナーゼインヒビターを含む組成物は、異なる投与スケジュールで、かつ異なる濃度で、異なる剤形で、かつ異なる投与経路により投与することができる。
【0188】
投与方法としては、限定するものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、非経口、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、経口、舌下、脳内、膣内、経皮、直腸内、吸入により、または局所的に、特に耳、鼻、眼または皮膚への投与が挙げられる。投与方法は、医師の裁量に任されている。
【0189】
例えば、吸入器もしくはネブライザ、およびエアゾール化剤を含む製剤を用いることにより、またはフルオロカーボンもしくは合成肺表面活性物質中の灌流を介して、肺内投与を用いることもできる。特定の実施形態では、オリゴマー(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターを、トリグリセリドなどの慣用の結合剤および賦形剤とともに坐薬として製剤化することができる。
【0190】
オリゴマー(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターを、注入(例えば、継続的な点滴またはボーラス注射)による非経口投与のために組み込む場合、非経口投与用製剤は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、エマルジョンの形態であり得、そのような製剤は、製薬上必要な添加剤、例えば、1種以上の安定化剤、懸濁剤、分散剤等をさらに含み得る。オリゴマー(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、注入可能な製剤として再構成するための粉末の形態であることもできる。
【0191】
他の実施形態では、オリゴマー(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、ベシクル、特にリポソーム中で送達することができる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);およびTreatら, Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer 317-327および353-365 (1989)を参照されたい)。
【0192】
また別の実施形態では、オリゴマー性化合物(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、制御放出系または徐放系で送達することができる(例えば、Goodson, "Dental Applications" (pp. 115-138), Medical Applications of Controlled Release, Vol. 2, Applications and Evaluation, R.S. LangerおよびD.L. Wise編, CRC Press (1984); Langer, Science 249:1527-1533 (1990)を参照されたい)。種々の実施形態において、制御放出送達または徐放送達は、ポンプにより行なうことができ(Langer, Science 249:1527-1533 (1990); Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwaldら, Surgery 88:507 (1980); およびSaudekら, N. Engl. J. Med. 321:574 (1989))、またはポリマー性材料を用いることで行なうことができる(Medical Applications of Controlled Release (LangerおよびWise編, 1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance (SmolenおよびBall編, 1984); RangerおよびPeppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983); Levyら, Science 228:190 (1985); Duringら, Ann. Neurol. 25:351 (1989); およびHowardら, J. Neurosurg. 71:105 (1989)を参照されたい)。
【0193】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、細胞増殖を阻害するために有用である。種々の実施形態において、抗増殖効果は、未処理の細胞サンプルと比較して、細胞増殖において少なくとも10%の減少、少なくとも20%の減少、少なくとも30%の減少、少なくとも40%の減少、少なくとも50%の減少、少なくとも60%の減少、少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、または少なくとも90%の減少である。他の実施形態では、抗増殖効果は、オリゴマー性化合物または小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビターいずれか単独で処理(「単剤療法」)された細胞サンプルと比較して、細胞増殖において少なくとも10%の減少、少なくとも20%の減少、少なくとも30%の減少、少なくとも40%の減少、少なくとも50%の減少、少なくとも60%の減少、少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、または少なくとも90%の減少である。種々の実施形態において、細胞は癌細胞である。一部の実施形態では、癌細胞は、乳癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、および上皮癌細胞から選択される。
【0194】
したがって、本発明の組成物は、癌などの過剰増殖疾患を治療するのに有用である。一部の実施形態では、本発明のHER3標的化併用療法により治療する対象の癌は、リンパ腫および白血病(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫)、大腸癌、直腸癌、上皮癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、黒色腫、頭頸部癌、脳の癌、未知の原発部位の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、稀突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫、重鎖病、転移、または制御されていないか異常な細胞増殖により特徴づけられるいずれかの疾患もしくは障害からなる群より選択される。
【0195】
特定の実施形態では、疾患は、肺癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌、上皮癌、および胃癌からなる群より選択される癌である。
【0196】
特定の他の実施形態では、肺癌は非小細胞肺癌である。
【0197】
以下の実施例に示すように、本発明の併用療法レジメンは、例えば、ゲフィチニブまたは別のPTKインヒビターでの単剤療法に抵抗性の癌の治療を可能にする。
【0198】
種々の実施形態において、本発明による疾患の治療は、放射線療法、化学療法または免疫療法などの1種以上の他の抗癌治療と組み合わせることができる。
【0199】
特定の実施形態では、疾患は、HER3遺伝子(および/もしくはHER2遺伝子および/もしくはEGFR遺伝子)またはそのタンパク質産物がHER3に関連するかこれと相互作用する遺伝子中の突然変異を伴う。一部の実施形態では、突然変異した遺伝子は、チロシンキナーゼドメインに突然変異を有するタンパク質をコードする。種々の実施形態において、チロシンキナーゼドメイン中の突然変異は、小分子PTKインヒビターの結合部位および/またはATP結合部位におけるものである。したがって、種々の実施形態において、標的mRNAはHER3(および/またはHER2および/またはEGFR)配列の突然変異型であり、例えば、癌に関連するSNPなどの1以上の単一点突然変異を含む。
【0200】
特定の実施形態では、疾患は、HER3の突然変異型の異常なレベルと関連する。特定の実施形態では、疾患は、HER3の野生型の異常なレベルと関連する。本発明の一態様は、HER3の異常なレベルと関連する状態に罹患しているかまたは罹り易い患者の治療方法に関し、該方法は、治療上有効量のHER3を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲート、および有効量の小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビター(EGFRファミリーメンバーおよび/または1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するタンパク質のチロシンキナーゼドメインに結合する)を患者に投与するステップを含む。一部の実施形態では、オリゴマーは、1以上のLNA単位を含む。種々の実施形態において、PTKインヒビターは、ゲフィチニブである。
【0201】
別の実施形態では、本発明は、HER2の突然変異型の異常なレベル、もしくはHER2の野生型の異常なレベルと関連する状態に罹患しているかまたは罹り易い患者の治療方法に関し、該方法は、治療上有効量のHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲート、および有効量の小分子チロシンキナーゼインヒビター(1以上のEGFRファミリーメンバーおよび/もしくは1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するタンパク質のチロシンキナーゼドメインに結合する)を哺乳動物に投与するステップを含む。一部の実施形態では、オリゴマーは、1以上のLNA単位を含む。種々の実施形態において、PTKインヒビターは、ゲフィチニブである。
【0202】
さらに他の実施形態では、本発明は、突然変異型EGFRの異常なレベル、もしくは野生型EGFRの異常なレベルに関連する状態に罹患しているかまたは罹り易い患者の治療方法に関し、該方法は、治療上有効量のHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲート、および有効量の小分子チロシンキナーゼインヒビター(EGFRファミリーメンバーおよび/または1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するタンパク質のチロシンキナーゼドメインに結合する)を患者に投与するステップを含む。一部の実施形態では、オリゴマーは1以上のLNA単位を含む。種々の実施形態では、PTKインヒビターは、ゲフィチニブである。
【0203】
種々の実施形態において、本明細書中に記載の本発明は、治療上有効量のHER3調節オリゴマー(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を変化させるオリゴマーまたはそのコンジュゲート、および有効量のチロシンキナーゼインヒビター(EGFRファミリーメンバーおよび/または1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するタンパク質のチロシンキナーゼドメインに結合する)を、そのような療法を必要とするヒトに投与するステップを含む。
【0204】
疾患の治療または予防のために有効な少なくとも1種のオリゴマーおよび少なくとも1種のPTKインヒビターの量は、標準的な臨床的技術により決定することができる。一般的には、用量範囲は、in vitroおよびin vivo動物モデルにおいて有効であると見出されたEC50に基づいて見積もることができる。用いられるべき正確な用量は、例えば、投与経路および疾患の重症度にも依存するであろうし、医師の判断および/または各患者の状況に従って決定することができる。他のそれらの例では、バリエーションは、とりわけ、治療対象の患者の体重および健康状態(例えば、肝機能および腎機能)、治療対象の苦痛(affliction)、症状の重症度、投与間隔の頻度、いずれかの有害副作用の存在、ならびに用いる特定のオリゴヌクレオチドおよびPTKインヒビターに依存して必ず生じるであろう。
【0205】
種々の実施形態において、オリゴマーの用量は、約0.01μg〜約1g/kg体重であり、1日1回以上、週1回、月1回もしくは年1回、または2〜10年に1回でさえ投与することができ、または数時間〜数ヵ月にわたる継続的な点滴により投与することができる。特定の実施形態では、PTKインヒビターの投与量は、約50mg〜約500mg/日である。種々の実施形態において、PTKインヒビターの投与量は、約100mg〜約400mg/日である。他の実施形態では、PTKインヒビターの投与量は、約150mg〜約300mg/日である。特定の実施形態では、投与の反復率は、体液または組織中での活性薬剤の測定された滞留時間および濃度に基づいて見積もることができる。成功した治療に続いて、患者は、疾患状態の再発を予防するためにHER3標的化併用療法を用いたメンテナンス療法を受けることができる。
【実施例】
【0206】
1.8 実施例
実施例1:ErbB-3(HER3)標的化併用療法は癌細胞増殖を低減させる
実験手順
1. 細胞培養
配列番号180に示される塩基配列および設計を有するオリゴマー(本明細書中、以下で「ON180」と称する)とゲフィチニブ(EGFRインヒビター)との併用効果を、数種類の腫瘍細胞株で調べた。細胞を以下に記載する培地中で培養し、95%湿度および5%CO2で37℃で維持した。細胞を週に2〜3回、定期的に継代した。
【0207】
15PC-3(Santaris Pharma):ヒト前立腺癌細胞株15PC-3を、DMEM(ATCC)+10%ウシ胎児血清(FBS)+2mM GlutamaxTMI+ゲンタマイシン(25μg/ml)中で培養した。
【0208】
A549(ATCC):ヒト肺癌細胞株A549を、F12K培地(ATCC)+10%FBS+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0209】
DU145(ATCC):ヒト前立腺癌細胞株DU145を、イーグル最小必須培地(ATCC)+10%FBS+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0210】
A431(ATCC):ヒト類表皮癌細胞株A431を、DMEM(ATCC)+10%ウシ胎児血清(FBS)+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0211】
SKBR-3(ATCC):ヒト乳癌細胞株SKBR3を、改変マッコイ5A培地(ATCC)+10%FBS+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0212】
H1993(ATCC):ヒト肺癌細胞株H1993を、RPMI-1640(ATCC)+10%FBS+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0213】
2. ON180およびゲフィチニブを用いた併用処理
細胞を、トランスフェクションビヒクルとしてカチオン性リポソーム製剤であるLipofectamineTM-2000(InvitrogenTM)を用いて、ON180または配列番号236に示されるスクランブルした塩基配列を有するLNA含有オリゴヌクレオチド(本明細書中、以下で「ONCONT」と称する)のいずれかで処理した。細胞を6ウェルプレート(NUNCTM)に播種し、50〜60%コンフルエントの時点で処理した。ON180による細胞のトランスフェクションは、無血清OptiMEM(登録商標)(GibcoTM)および5μg/mlのLipofectamineTM-2000を用いて、製造業者により記載されているように行なった。ONCONTは陰性対照として機能した。処理した細胞を、37℃で4時間インキュベートし、続いてOptiMEM(登録商標)で洗浄し、その後、通常の血清含有培地を添加した。
【0214】
オリゴヌクレオチド(ON180またはONCONT)でのトランスフェクションの24時間後に、細胞をゲフィチニブ(Amfinecom, Inc.)(市販のEGFRインヒビター薬)(最終濃度1μM〜40μM)で48時間処理した。続いて、処理した細胞を、それぞれMTSによる増殖アッセイおよびqRT-PCRによるErbB3 mRNA定量に供した(下記を参照されたい)。各実験を、少なくとも2回行なった。
【0215】
3. 細胞増殖アッセイ(MTSアッセイ)
CellTiter 96(登録商標) Aqueous One solution reagent(Promega、Cat#358B)を製造業者の使用説明書に従って用いることにより、増殖アッセイを行なった。簡潔に言えば、MTS化合物を6ウェルプレートの培養物に添加し、37℃、95%湿度および5%CO2で測定前1〜3時間、インキュベートした。続いて、MTS試薬を含む培地を96ウェルプレートに移した。ELISAリーダー(Molecular Devices)を用いて、490nmでの吸光度を、650nmの参照と共に測定した。アッセイのバックグラウンドは、培地のみを含むウェルから測定し、細胞を含むウェルからのシグナルから差し引いた。490nmでの吸光度(OD490nm)は、培養物中の生細胞数に比例する。
【0216】
4. qRT-PCRによるErbB3 mRNAレベルの検討
Qiagen RNeasy Plus Mini Kit(Cat# 74134)を用いて、上述の処理細胞から全RNAを抽出した。QuantiTect Probe RT-PCRキット(Cat#: 204443;Qiagen)を製造業者の使用説明書に従って用いることにより、ワンステップqRT-PCRを用いて、細胞中のErbB3 mRNAレベルを調べた。プライマーおよびプローブの配列は、以下の通りである:
ヒトErbB3 PCRプライマー/プローブセット:
プローブ:CATTGCCCAACCTCCGCGTG(配列番号250)
プライマー-1:TGCAGTGGATTCGAGAAGTG(配列番号251)
プライマー-2:GGCAAACTTCCCATCGTAGA(配列番号252)
ヒトGAPDHプライマー/プローブセット:
プローブ:ACTGGCGCTGCCAAGGCTGT(配列番号253)
プライマー-1:CCACCCAGAAGACTGTGGAT(配列番号254)
プライマー-2:TTCAGCTCAGGGATGACCTT(配列番号255)。
【0217】
qRT-PCRは、120ngの全RNAサンプルを用いて、Applied Biosystems 7500 Fast Real-Time PCR Systemで行なった。GAPDH mRNAは、内部対照として機能した。
【0218】
結果
A549細胞は、ゲフィチニブに抵抗性である。この細胞株では、40μMでゲフィチニブ単独では増殖に影響しなかった(図1A)。ON180単独で、ErbB3 mRNA産生の発現(IC50<2nM;図1C)および細胞増殖(IC50<5nM)(図1A、1B)を強力に阻害した。ゲフィチニブと組み合わせた2nM ON180での処理は、A549細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に強化した(図1A、1B)。図1Bに実証されているように、40μMゲフィチニブと2nM ON180との組み合わせは、40μMゲフィチニブ単剤療法で処理したA549細胞と比較して、A549細胞の増殖率を約50%低下させた。
【0219】
H1993細胞は、ゲフィチニブに比較的反応性が低い(IC50=40nM)(図2A)。ON180単独で、ErbB3 mRNAの発現(図2C)および細胞増殖(IC50=約1nM)(図2A、2B)を強力に阻害した。1nM ON180とゲフィチニブとの組み合わせでの処理は、H1993細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を強化した(図2A、2B)。図2Bに実証されているように、40μMゲフィチニブと1nM ON180との組み合わせは、40μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、H1993細胞の増殖率を50%超低下させた。
【0220】
15PC3細胞は、ゲフィチニブに抵抗性である。この細胞株では、ゲフィチニブは20μMで増殖に影響しなかった(図3A)。ON180単独で、ErbB3 mRNA(図3C)および細胞増殖(IC50<2nM)(図3A、3B)を強力に阻害した。1nM ON180と20μMゲフィチニブとの組み合わせでの15PC3細胞の処理は、20μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、15PC3細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に(すなわち、ほとんど70%)強化した(図3A、3B)。
【0221】
DU145細胞は、ゲフィチニブに抵抗性である。この細胞株では、ゲフィチニブは40μMで増殖に影響しなかった(図4A)。ON180単独で、ErbB3 mRNAの発現(図4C)および細胞増殖(IC50<5nM)(図4A、4B)を効果的に阻害した。1nM ON180と40μMゲフィチニブとの組み合わせでのDU145細胞の処理は、40μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、DU145細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に(すなわち、約40%)強化した(図4A、4B)。
【0222】
SKBR3細胞は、ゲフィチニブに感受性である(図5A)。ON180単独へのSKBR3細胞の曝露は、ErbB3 mRNAの発現(図5C)および細胞増殖(IC50<5nM)(図5A、5B)を効果的に阻害した。1nM ON180と20μMゲフィチニブとの組み合わせでのこれらの腫瘍細胞の処理は、20μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、SKBR3細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に(すなわち、50%超)強化した(図5A、5B)。
【0223】
A431細胞は、ゲフィチニブに感受性である(図6A)。ON180単独へのこれら腫瘍細胞の曝露は、ErbB3 mRNA(図6C)および細胞増殖(IC50<1nM)(図6A、6B)を効果的に阻害した。1nM ON180と40μMゲフィチニブとの組み合わせでのA431細胞の処理は、20μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、A431細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に(すなわち、約50%)強化した(図6A、6B)。
【0224】
結論
オリゴマー性化合物ON180は、6種類の試験した癌細胞株(A549、H1993、15PC3、DU145、A431およびSKBR3)で、ErbB3 mRNAの発現および細胞増殖を強力に阻害した。細胞株のうち2種類(SKBR3およびA431)は、ゲフィチニブに感受性であり、4種類(A549、H1993、15PC3およびDU145)は、PTKインヒビターへの感受性が低いか、抵抗性である。それにもかかわらず、ON180とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の細胞増殖に対する効果は、6種類の試験した腫瘍細胞株の全てで観察された。ON180処理は、低い濃度(1〜5nM)で、ゲフィチニブに抵抗性の腫瘍細胞(A549、H1993、DU145および15PC3)の感受性を増強させた。
【0225】
本出願で引用した全ての刊行物、特許、特許出願および他の文献は、それぞれ個々の刊行物、特許、特許出願または他の文献が全ての目的のために参照により組み入れられると個別に示されているのと同程度に、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み入れられる。
【0226】
種々の具体的な実施形態を例示し、説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2008年11月7日出願の米国仮出願第61/112,549号(その全体が参照により本明細書中に組み入れられる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、細胞内でのHER3(および任意により、EGFRおよびHER2のうちの1以上)の発現および/または活性をダウンレギュレーションする方法に関し、該方法は、細胞内でHER3 mRNAを標的とする有効量のオリゴマー性化合物(オリゴマー)および有効量のタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)インヒビター、またはそれらの製薬上許容される誘導体を細胞に投与するステップを含む。本発明はさらに、細胞内でHER3 mRNAを標的とする有効量のオリゴマーおよび有効量のPTKインヒビター、またはそれらの製薬上許容される誘導体を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、疾患の治療方法に関する。本発明はさらに、HER3 mRNAを標的とする有効量のオリゴマーおよび有効量のPTKインヒビター、またはそれらの製薬上許容される誘導体を、製薬上許容される賦形剤中に含む、医薬組成物に関する。該組成物は、HER3(および任意により、EGFRおよびHER2のうちの1以上)の発現および/または活性をダウンレギュレーションするのに、かつ癌などの種々の疾患を治療するのに有用である。
【0003】
本発明は、医薬の製造のための、本明細書中に記載されるオリゴマーのうちの1以上などの、HER3を標的とするロックド核酸(「LNA」)オリゴマーの使用を提供し、ここで、該医薬は、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターとの併用での、癌の治療での使用のためのものである。本発明は、本明細書中に記載されるオリゴマーのうちの1以上などの、HER3を標的とするLNAオリゴマーを含む医薬を提供し、ここで、該医薬は、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターとの併用での、癌の治療での使用のためのものである。
【背景技術】
【0004】
1.1 背景技術
HER3は、受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーのメンバーであり、該ファミリーは、4種の異なる受容体:ErbB-1(EGFR、HER1)、ErbB-2(neu、HER2)、ErbB-3(HER3)およびErbB-4(HER4)を含む(Yardenら, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol, 2001, 2(2):127-137)。このファミリーの受容体タンパク質は、細胞外リガンド結合性ドメイン、疎水性1回膜貫通ドメインおよび細胞質チロシンキナーゼ含有ドメインから構成される。EGFファミリーには少なくとも12種類の増殖因子があり、それらはErbB受容体のうちの1種以上に結合し、受容体ホモ二量体化またはヘテロ二量体化に影響を与える。二量体化はリガンド結合した受容体の内在化およびリサイクル(またはその分解)、ならびにとりわけ細胞生存、アポトーシスおよび増殖活性を調節する下流の細胞内シグナル伝達経路の引き金を引く。HER3(ErbB3)は、チロシンキナーゼ活性を欠いていると当業者には理解されている。
【0005】
EGFR、HER2および最近ではHER3は、腫瘍形成に関連付けられている。近年の研究により、正常組織同等物と比較したときに、EGFRが多数の悪性ヒト組織で過剰発現されていることが示されている。EGFRをコードする遺伝子の過剰発現、増幅、欠失および構造的再編成の高い発生率が、乳房、肺、卵巣および腎臓の腫瘍で見出されている。多形性膠芽腫でのEGFR遺伝子の増幅は、知られている最も一貫した遺伝子変化のうちの1つである。EGFR過剰発現は、多数の非小細胞肺癌でも記録されている。HER3 mRNAレベルの上昇が、ヒト乳房腫瘍で検出されている。
【0006】
細胞のタンパク質または他の高分子を標的とし、アポトーシスを引き起こす従来の化学療法レジメンは、典型的には、急速に分裂する腫瘍細胞と、速く分裂する正常細胞とを区別しない。骨髄細胞および消化管の細胞などの正常細胞の死滅は、毒性の副作用を引き起こす。さらに、細胞毒性の化学療法による腫瘍応答は、予測不可能なものである。
【0007】
近年、数種類のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、タンパク質チロシンキナーゼ発現が調節不能となっている一部の癌に対する選択的療法として研究されている。しかしながら、そのような療法の有効性は限られており、なぜなら、多数の癌はタンパク質チロシンキナーゼインヒビター療法に応答せず、または時間が経つとインヒビターに対する抵抗性が形成されるからである(Aroraら, (2005) J. Pharmacol. and Exp. Therapies 315(3):971-971-979)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
腫瘍細胞を標的とし、従来の化学療法よりも有効かつ毒性が少なく、現在利用可能な選択的療法よりも応答率が高い癌療法への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.2 概要
特定の実施形態では、本発明は、以下の成分:(a) 隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーであって、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記オリゴマー;(b)タンパク質チロシンキナーゼインヒビター;および(c)製薬上許容される賦形剤、を含む医薬組成物に関する。
【0010】
種々の実施形態において、医薬組成物は、配列番号180に示される配列からなるオリゴマーおよびタンパク質チロシンキナーゼインヒビターであるゲフィチニブを含む。
【0011】
他の実施形態では、医薬組成物は、以下の成分:(a) 隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーのコンジュゲートであって、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記コンジュゲート;(b)タンパク質チロシンキナーゼインヒビター;および(c)製薬上許容される賦形剤、を含む。
【0012】
本発明はさらに、哺乳動物細胞の増殖を阻害する方法に関し、該方法は、細胞を、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記オリゴマー;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、と接触させるステップを含む。
【0013】
種々の実施形態において、哺乳動物細胞の増殖を阻害する方法は、細胞を、有効量の配列番号180に示される配列からなるオリゴマーおよび有効量のゲフィチニブと接触させるステップを含む。
【0014】
一部の実施形態では、本発明は、哺乳動物の身体内の細胞増殖を阻害する方法を包含し、該方法は、哺乳動物組織を、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的配列の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記オリゴマー;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、と接触させるステップを含む。
【0015】
特定の実施形態では、哺乳動物の身体内の細胞増殖を阻害する方法は、哺乳動物組織を、有効量の配列番号180に示される配列からなるオリゴマーおよび有効量のゲフィチニブと接触させるステップを含む。
【0016】
種々の実施形態において、哺乳動物の身体内で細胞増殖を阻害する方法は、哺乳動物組織を、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーの有効量のコンジュゲートであって、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記コンジュゲート;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、と接触させるステップを含む。
【0017】
本発明はさらに、哺乳動物における癌を治療する方法を包含し、該方法は、該哺乳動物に、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記オリゴマー;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、を投与するステップを含む。
【0018】
特定の実施形態では、哺乳動物における癌を治療する方法は、該哺乳動物に、有効量の配列番号180に示される配列からなるオリゴマーおよび有効量のゲフィチニブを投与するステップを含む。
【0019】
種々の実施形態において、癌は、肺癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌、上皮癌および胃癌からなる群より選択される。
【0020】
さらなる実施形態では、本発明は、哺乳動物における癌を治療する方法を包含し、該方法は、該哺乳動物に、以下:(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーの有効量のコンジュゲートであって、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、上記コンジュゲート;および(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、を投与するステップを含む。
【0021】
本発明の一実施形態は、以下:
(a.) 隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域は、
5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169);および
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなる群より選択される化合物中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一であり、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該オリゴマーがHER3のアンチセンスインヒビターである、
上記オリゴマー;および
(b.)ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブおよびカネルチニブなどのEGFR(HER1)のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターおよび/またはソラフェニブなどのVEGFRファミリーメンバー、例えばVEGFR2およびVEGFR3などのタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
の、哺乳動物における癌の治療のための組み合わせでの使用を提供する。
【0022】
該実施形態の一変形では、第1領域の配列は、5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169)または5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列と同一である。該実施形態の別の変形では、オリゴマーは、5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169)または5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)であり、HER3のアンチセンスオリゴマーインヒビターである。これらの使用に対応する治療方法の実施形態も、本発明により提供される。該方法の実施形態は、癌に対する治療の必要がある哺乳動物(ヒト患者など)へのオリゴマーおよびPKIインヒビターの同時かまたはほぼ同時の投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、A549肺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図1B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、A549肺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図1C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、A549細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図2A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、H1993前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図2B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、H1993前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図2C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、H1993細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図3A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、15PC3前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図3B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、15PC3前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図3C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、15PC3細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図4A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、DU145前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図4B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、DU145前立腺癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図4C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、DU145細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図5A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、SKBR3乳癌細胞に対する抗増殖効果を示す図である。
【図5B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、SKBR3乳癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図5C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、SKBR3細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【図6A】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、A431ヒト上皮癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図6B】オリゴマー性化合物(配列番号180に示される配列および設計を有する)とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の、A431ヒト上皮癌細胞に対する抗増殖効果を示す。
【図6C】配列番号180に示される配列および設計を有するオリゴマー性化合物による、A431細胞でのHER3 mRNA発現の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.4 詳細な説明
特定の実施形態では、本発明は、HER3(および任意によりEGFRおよびHER2のうちの1以上)の発現および/または活性を変化させるための組成物および方法を提供する。特に、本発明は、細胞内条件下でHER3(および任意によりEGFRおよびHER2のうちの1以上)をコードする核酸に特異的にハイブリダイズする有効量のオリゴマー、ならびに有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター、またはそれらの製薬上許容される誘導体を、製薬上許容される賦形剤中に含む、医薬組成物を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、オリゴマーは、タンパク質チロシンキナーゼインヒビター、またはその製薬上許容される誘導体と同じ組成物中に存在する。種々の実施形態において、オリゴマーは、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを含む組成物とは別個の組成物中に存在する。特定の実施形態では、オリゴマーは、タンパク質チロシンキナーゼインヒビター組成物とは別個の組成物中に存在し、2つの組成物が組み合わせでの使用のためにパッケージ化されている。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、患者において癌などの障害を治療または予防する方法を包含し、該方法は、それを必要とする患者に、有効量の本発明の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0027】
1.5 医薬組成物
1.5.1 オリゴマー
第1の態様では、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマー性化合物(本明細書中ではオリゴマーと称する)は、例えば、哺乳動物HER3をコードする核酸分子の機能を変化させるのに有用である。特定の実施形態では、哺乳動物HER3をコードする核酸分子としては、配列番号197に示される塩基配列を有する核酸、および天然に存在するその対立遺伝子変異体が挙げられる。本発明のオリゴマーは、共有結合したモノマーから構成される。
【0028】
「モノマー」との用語は、核酸中に天然に存在し、修飾された糖または修飾された核酸塩基のいずれも含有しないヌクレオシドおよびデオキシヌクレオシド(集合的に、「ヌクレオシド」)、すなわち、リボース糖またはデオキシリボース糖が、天然に存在する、修飾されていない核酸塩基(塩基)部分(すなわち、プリンおよびピリミジン複素環アデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシル)に共有結合している化合物、および、核酸中に天然に存在するか、または核酸中に天然に存在しないヌクレオシドであって、糖部分がリボース糖もしくはデオキシリボース糖以外(二環式糖または2’修飾糖など、例えば2’置換糖)であるか、または塩基部分が修飾されている(例えば、5-メチルシトシン)、あるいはその両方である「ヌクレオシドアナログ」の両者を含む。
【0029】
「RNAモノマー」は、リボース糖および修飾されていない核酸塩基を含有するヌクレオシドである。
【0030】
「DNAモノマー」は、デオキシリボース糖および修飾されていない核酸塩基を含有するヌクレオシドである。
【0031】
「ロックド核酸モノマー」、「ロックドモノマー」または「LNAモノマー」は、二環式糖を有するヌクレオシドアナログであり、本明細書中で以下でさらに説明する。
【0032】
「対応するヌクレオシドアナログ」および「対応するヌクレオシド」との用語は、ヌクレオシドアナログ中の塩基部分とヌクレオシド中の塩基部分とが同じであることを意味する。例えば、「ヌクレオシド」がアデニンに連結した2-デオキシリボース糖を含有する場合、「対応するヌクレオシドアナログ」は、例えば、アデニン塩基部分に連結した修飾糖を含有する。
【0033】
本発明の組成物および方法での使用のために本明細書中に記載されるオリゴマーのモノマー同士は、連結基を介して結合されている。好適には、それぞれのモノマーが、3’隣接モノマーに連結基を介して連結されている。
【0034】
「連結基」または「ヌクレオシド間連結」との用語は、2つの連続するモノマー同士を共有結合させることが可能な基を意味する。具体例としては、リン酸基(隣接するヌクレオシドモノマー間にホスホジエステルを形成する)およびホスホロチオエート基(隣接するヌクレオシドモノマー間にホスホロチオエート結合を形成する)が挙げられる。
【0035】
好適な連結基としては、WO 2007/031091に列挙されているもの、例えば、WO 2007/031091(参照により本明細書中に組み入れられる)の第34頁の第1段落に列挙されている連結基が挙げられる。
【0036】
一部の実施形態では、連結基は、その通常のホスホジエステルから、ヌクレアーゼの攻撃に対してより抵抗性のものに修飾されており、そのようなものとしては例えばホスホロチオエートまたはボラノホスフェートが挙げられ、これらはRNaseHにより切断可能であり、標的遺伝子の発現のRNase媒介アンチセンス阻害を可能にする。
【0037】
「オリゴマー」、「オリゴマー性化合物」および「オリゴヌクレオチド」との用語は、本発明の文脈において交換可能に用いられ、例えば、リン酸基(ヌクレオシド間にホスホジエステル結合を形成する)またはホスホロチオエート基(ヌクレオシド間にホスホロチオエート結合を形成する)による、2以上の連続するモノマーの共有結合により形成される分子を指す。オリゴマーは、10〜50個のモノマー、例えば、10〜30個のモノマーを含むか、またはこれらからなる。
【0038】
一部の実施形態では、オリゴマーは、本明細書中で言及するように、ヌクレオシド、もしくはヌクレオシドアナログ、またはそれらの混合物を含む。「LNAオリゴマー」または「LNAオリゴヌクレオチド」は、以下の6.1.2節で定義するような、1個以上のLNAモノマーを含むオリゴヌクレオチドを指す。
【0039】
任意によりオリゴマーに含められるヌクレオシドアナログは、対応するヌクレオシドと同様に機能するものであってもよいし、特定の改良された機能を有していてもよい。モノマーのうちの一部または全部がヌクレオシドアナログであるオリゴマーは、多くの場合、天然形態よりも好ましく、これは、例えば、細胞膜に浸透する能力の向上、細胞外および/または細胞内ヌクレアーゼに対する良好な抵抗性、ならびに核酸標的に対する高い親和性および特異性のためである。LNAモノマーが特に好ましい。
【0040】
種々の実施形態において、オリゴマー中に存在する1個以上のヌクレオシドアナログは、「サイレント」であるか、または対応する天然ヌクレオシドに対して機能の面で「同等」であり、すなわち、標的遺伝子発現を阻害するためにオリゴマーが機能する方法に対して何ら機能的影響を有しない。そのような「同等」なヌクレオシドアナログは、それにもかかわらず、例えば、製造がより容易またはより安価であるか、または保存もしくは製造条件でより安定であるか、またはタグもしくは標識を取り込むことができる場合に、有用である。しかしながら、典型的には、アナログは、例えば、標的核酸の標的領域に対する増大した結合親和性および/または細胞内ヌクレアーゼに対する増大した抵抗性および/または細胞内への運搬の増大した容易さをもたらすことにより、発現を阻害するためにオリゴマーが機能する方法に機能的影響を有するであろう。
【0041】
種々の実施形態において、本発明のオリゴマーは、ヌクレオシドモノマーおよびLNAモノマーまたは他のヌクレオシドアナログモノマーなどの少なくとも1個のヌクレオシドアナログモノマーを含む。
【0042】
「少なくとも1」との用語は、1より大きいかまたは1と等しい整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などを含む。種々の実施形態において、例えば、本発明の化合物の核酸またはタンパク質標的を指す場合、「少なくとも1」との用語は、「少なくとも2」および「少なくとも3」および「少なくとも4」との用語を含む。同様に、一部の実施形態では、「少なくとも2」との用語は、「少なくとも3」および「少なくとも4」との用語を含む。
【0043】
一部の実施形態では、オリゴマーは、10〜50個の連続するモノマー、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の連続するモノマーからなる。
【0044】
一部の実施形態では、オリゴマーは、10〜25個のモノマーからなるか、10〜16個のモノマーからなるか、または12〜16個のモノマーからなる。
【0045】
種々の実施形態において、オリゴマーは、10〜25個の連続するモノマー、10〜24個の連続するモノマー、12〜25個または12〜24個または10〜22個の連続するモノマー、例えば12〜18個の連続するモノマー、例えば13〜17個または12〜16個の連続するモノマー、例えば13、14、15、16個の連続するモノマーを含む。
【0046】
種々の実施形態において、オリゴマーは、10〜22個の連続するモノマー、または10〜18個、例えば12〜18個または13〜17個または12〜16個、例えば13、14、15もしくは16個の連続するモノマーを含む。
【0047】
一部の実施形態では、オリゴマーは、10〜16個または12〜16個または12〜14個の連続するモノマーを含む。他の実施形態では、オリゴマーは、14〜18個または14〜16個の連続するモノマーを含む。
【0048】
種々の実施形態において、オリゴマーは、10、11、12、13、または14個の連続するモノマーを含む。
【0049】
種々の実施形態において、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、22個以下の連続するモノマー、例えば20個以下の連続するモノマー、例えば18個以下の連続するモノマー、例えば15、16または17個の連続するモノマーからなる。特定の実施形態では、本発明のオリゴマーは、20個未満の連続するモノマーを含む。
【0050】
種々の実施形態において、本発明のオリゴマーは、RNAモノマーを含まない。
【0051】
種々の実施形態において、オリゴマーは直鎖状分子であるか、または合成時には直鎖状である。そのような実施形態では、オリゴマーは、一本鎖分子であり、典型的には、オリゴマーが内部二本鎖を形成するような、同じオリゴマー内の別の領域に対して相補的な、例えば少なくとも3、4または5個の連続するモノマーの短い領域を含まない。種々の実施形態において、オリゴマーは、実質的に二本鎖でなく、すなわち、siRNAではない。
【0052】
一部の実施形態では、オリゴマーは、モノマーの連続する伸長部からなり、その配列は、本明細書中に開示される配列番号により特定される(例えば、表1を参照されたい)。他の実施形態では、オリゴマーは、モノマーの連続する伸長部からなる第1領域、および少なくとも1個の追加のモノマーからなる1以上の追加の領域を含む。一部の実施形態では、第1領域の配列は、本明細書中に開示される配列番号により特定される。
【0053】
1.5.2 ロックド核酸(LNA)モノマー
「LNAモノマー」との用語は、二環式糖(「LNA糖」)を含有するヌクレオシドアナログを指す。「LNAオリゴヌクレオチド」および「LNAオリゴマー」との用語は、1個以上のLNAモノマーを含有するオリゴマーを指す。
【0054】
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で使用されるオリゴヌクレオチド化合物中で用いられるLNAは、一般式Iの構造:
【化1】
【0055】
[式中、
Xは、-O-、-S-、-N(RN*)-、-C(R6R6*)-から選択され、
Bは、水素、任意により置換されているC1〜4-アルコキシ、任意により置換されているC1〜4-アルキル、任意により置換されているC1〜4-アシルオキシ、核酸塩基、DNAインターカレーター、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート基、リポーター基、およびリガンドから選択され、
Pは、後続のモノマーとのヌクレオシド間結合のためのラジカル位置、または5’-末端基を示し、そのようなヌクレオシド間結合または5’-末端基は、任意により置換基R5または同等に適用可能な置換基R5*を含み、
P*は、先行するモノマーとのヌクレオシド間結合、または3’-末端基を示し、
R4*およびR2*は一緒になって、-C(RaRb)-、-C(Ra)=C(Rb)-、-C(Ra)=N-、-O-、-Si(Ra)2-、-S-、-SO2-、-N(Ra)-、および>C=Zから選択される1〜4個の基/原子からなるビラジカルを示し、
式中、Zは、-O-、-S-、および-N(Ra)-から選択され、RaおよびRbはそれぞれ独立して、水素、任意により置換されているC1〜12-アルキル、任意により置換されているC2〜12-アルケニル、任意により置換されているC2〜12-アルキニル、ヒドロキシ、C1〜12-アルコキシ、C2〜12-アルコキシアルキル、C2〜12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1〜12-アルコキシカルボニル、C1〜12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、C1〜6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1〜6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1〜6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1〜6-アルキルチオ、ハロゲン、DNAインターカレーター、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート基、リポーター基、およびリガンドから選択され、ここで、アリールおよびヘテロアリールは任意により置換されていてもよく、2つのジェミナルな(geminal)置換基RaおよびRbは一緒になって、任意により置換されているメチレン(=CH2)を表す場合があり、
置換基R1*、R2、R3*、R5、R5*、R6およびR6*のそれぞれは、存在する場合、独立に、水素、任意により置換されているC1〜12-アルキル、任意により置換されているC2〜12-アルケニル、任意により置換されているC2〜12-アルキニル、ヒドロキシ、C1〜12-アルコキシ、C2〜12-アルコキシアルキル、C2〜12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1〜12-アルコキシカルボニル、C1〜12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、C1〜6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1〜6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1〜6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1〜6-アルキルチオ、ハロゲン、DNAインターカレーター、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート基、リポーター基、およびリガンドから選択され、ここで、アリールおよびヘテロアリールは任意により置換されていてもよく、2つのジェミナルな置換基が一緒になって、オキソ、チオキソ、イミノ、または任意により置換されているメチレンを表すか、または一緒になって、1〜5個の炭素原子のアルキレン鎖からなるスピロビラジカルを形成してもよく、このアルキレン鎖は、任意により、-O-、-S-、および-(NRN)-から選択される1以上のヘテロ原子/基により中断されているか、かつ/または終結されており、式中、RNは、水素、およびC1〜4-アルキルから選択され、2つの隣接する(ジェミナルでない)置換基は、追加の結合を表して二重結合をもたらしてもよく、RN*は、存在し、ビラジカルに含まれない場合、水素およびC1〜4-アルキルから選択される]
ならびにその塩基塩および酸付加塩を有する。
【0056】
特定の実施形態では、R5*は、H、-CH3、-CH2-CH3、-CH2-O-CH3、および-CH=CH2から選択される。
【0057】
種々の実施形態において、R4*およびR2*は一緒になって、-C(RaRb)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-C(ReRf)-O-、-C(RaRb)-O-C(RcRd)-、-C(RaRb)-O-C(RcRd)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-、-C(RaRb)-C(RcRd)-C(ReRf)-、-C(Ra)=C(Rb)-C(RcRd)-、-C(RaRb)-N(Rc)-、-C(RaRb)-C(RcRd)-N(Re)-、-C(RaRb)-N(Rc)-O-、および-C(RaRb)-S-、-C(RaRb)-C(RcRd)-S-から選択されるビラジカルを表し、ここで、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfはそれぞれ、独立して、水素、任意により置換されているC1〜12-アルキル、任意により置換されているC2〜12-アルケニル、任意により置換されているC2〜12-アルキニル、ヒドロキシ、C1〜12-アルコキシ、C2〜12-アルコキシアルキル、C2〜12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1〜12-アルコキシカルボニル、C1〜12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1〜6-アルキル)アミノ-C1〜6-アルキル-アミノカルボニル、C1〜6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1〜6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1〜6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1〜6-アルキルチオ、ハロゲン、DNAインターカレーター、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート基、リポーター基、およびリガンドから選択され、ここで、アリールおよびヘテロアリールは任意により置換されていてもよく、2つのジェミナルな置換基RaおよびRbは一緒になって、任意により置換されているメチレン(=CH2)を表してもよい。
【0058】
さらなる実施形態では、R4*およびR2*は一緒になって、-CH2-O-、-CH2-S-、-CH2-NH-、-CH2-N(CH3)-、-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-、-CH2-CH2-S-、-CH2-CH2-NH-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-O-、-CH2-CH2-CH(CH3)-、-CH=CH-CH2-、-CH2-O-CH2-O-、-CH2-NH-O-、-CH2-N(CH3)-O-、-CH2-O-CH2-、-CH(CH3)-O-、-CH(CH2-O-CH3)-O-から選択されるビラジカルを表す。
【0059】
全てのキラル中心について、不斉基はRまたはS配向のいずれかで見出すことができる。
【0060】
種々の実施形態において、オリゴマー中で用いられるLNAモノマーは、式(II)または式(III)に従う少なくとも1個のLNAモノマーを含む:
【化2】
【0061】
[式中、
Yは-O-、-O-CH2-、-S-、-NH-、またはN(RH)であり、ZおよびZ*は独立に、ヌクレオシド間結合、末端基または保護基から選択され、Bは、核酸中に天然に存在するかもしくは核酸中に天然に存在しない非修飾塩基部分または修飾塩基部分を構成し、RHは、水素およびC1〜4-アルキルから選択される]。
【0062】
本発明の種々の実施形態における使用のためのLNAモノマーは、以下の式(IV)〜(VIII)に示されている:
【化3】
【0063】
「チオ-LNA」との用語は、上記の式(II)中のYが、Sまたは-CH2-S-から選択されるLNAモノマーを指す。チオ-LNAは、β-D配置またはα-L配置のいずれかであり得る。
【0064】
「アミノ-LNA」との用語は、上記の式(II)中のYが、-N(H)-、N(R)-、CH2-N(H)-、および-CH2-N(R)-(式中、Rは水素およびC1〜4-アルキルから選択される)から選択されるLNAモノマーを指す。アミノ-LNAは、β-D配置またはα-L配置のいずれかであり得る。
【0065】
「オキシ-LNA」との用語は、上記の式(II)中のYが、-O-または-CH2-O-を表すLNAモノマーを指す。オキシ-LNAは、β-D配置またはα-L配置のいずれかであり得る。
【0066】
「ENA」との用語は、上記の式(II)中のYが、-CH2-O-(-CH2-O-の酸素原子は、塩基Bに対して2’位に連結している)であるLNAモノマーを指す。
【0067】
特定の実施形態では、LNAモノマーは、β-D-オキシ-LNAモノマー、α-L-オキシ-LNAモノマー、β-D-アミノ-LNAモノマーおよびβ-D-チオ-LNAモノマーから選択され、特にβ-D-オキシ-LNAモノマーである。
【0068】
本文脈において、「C1〜4-アルキル」との用語は、鎖が1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素鎖、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルを意味する。
【0069】
ロックド核酸(LNA)含有オリゴマーは、アンチセンスオリゴマーの新世代を代表する。従前のオリゴヌクレオチドと異なり、LNAオリゴマー中のヌクレオシドLNAモノマーは、糖の中に操作されたO2’-〜C4’-結合を有する(上記の式IV〜VIIIを参照されたい)。これは、RNA結合に都合の良い3’-末端構造コンホメーションにリボースを安定化、または「ロック」する。したがって、LNAオリゴマーは、従来のDNAオリゴマーと比較して、RNAに対して例外的に高い結合親和性を有する。さらに、LNA修飾は、ヌクレアーゼ抵抗性を著明に向上させ、オリゴヌクレオチド長の短縮を可能にする(例えば、Vester Bら, LNA (locked nucleic acid): high-affinity targeting of complementary RNA and DNA. Biochemistry. 2004 Oct 26;43(42):13233-41; Lauritsen Aら, Methylphosphonate LNA: a locked nucleic acid with a methylphosphonate linkage. Bioorg Med Chem Lett. 2003 Jan 20;13(2):253-6を参照されたい)。
【0070】
LNAモノマーおよびLNAモノマーを含むオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知のいずれかの方法により取得することができる。特定の実施形態では、LNAモノマーおよびLNAオリゴヌクレオチドは、PCT公報第WO 07/031081号およびその中で引用されている参考文献に開示されている方法により取得することができる。
【0071】
1.5.3 他のヌクレオシドアナログモノマーおよび結合
種々の実施形態において、オリゴマー中に存在するモノマーのうちの少なくとも1個が、修飾された塩基(例えば、5-メチルシトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、2-クロロ-6-アミノプリン、キサンチンおよびヒポキサンチンから選択される塩基)、および/または修飾された糖(例えば、2’-置換基をもたらすように修飾された糖部分、例えば、2’-O-アルキル-リボース糖、2’-アミノ-デオキシリボース糖、2’-フルオロ-デオキシリボース糖、および2’-O-メトキシエチル-リボース糖(2’MOE)、または上述のようなLNA糖、またはアラビノース糖(「ANAモノマー」)、または2’-フルオロ-アラビノース糖、またはd-アラビノ-ヘキシトール糖(「HNAモノマー」))を含有するヌクレオシドアナログである。
【0072】
本明細書中に記載されるオリゴマー中で有用なヌクレオシドアナログの具体例は、例えば、Freier & Altmann; Nucl. Acid Res., 1997, 25, 4429-4443およびUhlmann; Curr. Opinion in Drug Development, 2000, 3(2), 293-213に記載されているか、またはWO 2007/031091に記載されているか、もしくは参照されており、これらは参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0073】
種々の実施形態において、オリゴマー中への親和性強化ヌクレオシドアナログ(すなわち、オリゴマー/標的領域二本鎖の二本鎖安定性(Tm)を上昇させるヌクレオシドアナログ、例えば、LNAモノマーまたは2’-置換糖を含有するモノマー)の組み込み、または修飾連結基の組み込みは、ヌクレアーゼ抵抗性の上昇をもたらす。種々の実施形態において、そのような親和性強化ヌクレオシドアナログの組み込みは、オリゴマーのサイズを低減させることを可能にし、より短いオリゴマーに対するより大きな配列特異性を可能にする。特定のオリゴマー塩基配列に言及する場合、特定の実施形態では、オリゴマーが対応する親和性強化ヌクレオシドアナログ(対応するLNAモノマーまたは他の対応するヌクレオシドアナログなど)を含むことが理解されるであろう。
【0074】
ヌクレオシドおよび/またはヌクレオシドアナログモノマーを含むオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知のいずれかの方法により合成することができる。一部の実施形態では、本発明の方法および組成物での使用のためのオリゴヌクレオチドは、標準的なホスホルアミダイト化学をヨウ素による酸化と共に用いる自動化DNA合成機を用いて合成することができる。β-シアノエチルジイソプロピル-ホスホルアミダイトは、Applied Biosystems(Foster City, Calif.)から購入することができる。本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマー性化合物の製造での使用のための修飾モノマーは、当技術分野で公知のいずれかの方法、例えばJones R.およびHerdewijn P., Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry (John Wiley & Sons, Inc., eds. 2008)中に説明されているものなどにより取得することができる。
【0075】
一部の実施形態では、オリゴマーの少なくとも2つの連続するモノマー間の結合は、ホスホジエステル結合以外のものである。
【0076】
特定の実施形態では、オリゴマーは、修飾された塩基を有する少なくとも1個のモノマー、修飾された糖を有する少なくとも1個のモノマー(同じモノマーでもよい)、および少なくとも1箇所の天然に存在しないモノマー間結合を含む。
【0077】
1.5.4 ギャップマー設計
特定の実施形態では、本発明のオリゴマーはギャップマー(gapmer)である。
【0078】
「ギャップマー」は、本明細書中、以下でさらに説明するように、RNAse(例えば、RNAseH)を集結させることが可能なモノマーの連続する伸長部(本明細書中で領域Bと称される、少なくとも6または7個のDNAモノマーの領域など)を含むオリゴマーであって、ここで、領域Bは、5’末端と3’末端の両方で、それぞれ領域Aおよび領域Cと称される領域に隣接されており、領域AおよびCのそれぞれが、ヌクレオシドアナログ(例えば親和性強化ヌクレオシドアナログ、例えば1〜6個の親和性強化アナログ、例えばLNAヌクレオチドなど)を含む。
【0079】
特定の実施形態では、領域AおよびC中に存在するヌクレオシドアナログは、上記のように修飾糖部分を含み、オリゴマー中またはその領域中の全てのヌクレオシドアナログが、同じ修飾糖部分を含む。種々の実施形態において、ヌクレオシドアナログは2’-MOE糖、2’-フルオロ-デオキシリボース糖またはLNA糖を含有する。オリゴマーのヌクレオシドアナログは、独立に、これら3タイプから選択され得る。ヌクレオシドアナログを含有する特定のオリゴマーの実施形態では、ヌクレオシドアナログのうち少なくとも1個が2’-MOE-糖を含有する。種々の実施形態において、オリゴマー中の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオシドアナログが、2’-MOE-リボース糖を含有する。特定の実施形態では、ヌクレオシドアナログのうち少なくとも1個が、2’-フルオロ-デオキシリボース糖を含有する。種々の実施形態において、オリゴマー中の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオシドアナログが、2’-フルオロ-デオキシリボース糖を含有する。
【0080】
典型的には、ギャップマーは、5’から3’に、A-B-Cの領域、または任意によりA-B-C-DもしくはD-A-B-Cの領域を含み、ここで領域Aは、少なくとも1個のヌクレオシドアナログ、例えば少なくとも1個のLNAモノマー、例えば1〜6個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーを含み、領域Bは、(mRNA標的などの標的RNA分子の相補的標的領域と二本鎖を形成したとき)RNAseを集結させることが可能な少なくとも5個の連続するモノマー、例えばDNAモノマーを含み、領域Cは、少なくとも1個のヌクレオシドアナログ、例えば少なくとも1個のLNAモノマー、例えば1〜6個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなるか、またはこれを含み、領域Dは、存在する場合、1、2または3個のモノマー、例えばDNAモノマーを含む。
【0081】
種々の実施形態において、領域Aは、1、2、3、4、5または6個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマー、例えば2〜5個のヌクレオシドアナログ、例えば2〜5個のLNAモノマー、例えば3または4個のヌクレオシドアナログ、例えば3または4個のLNAモノマーからなり、かつ/または領域Cは、1、2、3、4、5または6個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマー、例えば2〜5個のヌクレオシドアナログ、例えば2〜5個のLNAモノマー、例えば3または4個のヌクレオシドアナログ、例えば3または4個のLNAモノマーからなる。一部の実施形態では、全てのヌクレオシドアナログが、LNAモノマーである。
【0082】
特定の実施形態では、領域Bは、RNAseを集結させることが可能な5、6、7、8、9、10、11または12個の連続するモノマー、またはRNAseを集結させることが可能な6〜10個、もしくは7〜9個、例えば8個の連続するモノマーを含む。特定の実施形態では、領域Bは、少なくとも1個のDNAモノマー、例えば1〜12個のDNAモノマー、または4〜12個のDNAモノマー、または6〜10個のDNAモノマー、例えば7〜10個のDNAモノマー、または8、9もしくは10個のDNAモノマーを含む。
【0083】
特定の実施形態では、領域Aは、3または4個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなり、領域Bは7、8、9または10個のDNAモノマーからなり、領域Cは3または4個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなる。そのような設計は、(A-B-C)3-10-3、3-10-4、4-10-3、3-9-3、3-9-4、4-9-3、3-8-3、3-8-4、4-8-3、3-7-3、3-7-4、4-7-3を含み、さらに領域Dを含んでもよく、これは1または2個のモノマー、例えばDNAモノマーを有し得る。
【0084】
特定の実施形態では、オリゴマーは、10、11、12、13または14個の連続するモノマーからなり、オリゴマーの該領域はパターン(5’〜3’)A-B-C、または任意によりA-B-C-DもしくはD-A-B-Cを有し、ここで、領域Aは、1、2または3個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなり、領域Bは、相補的なRNA分子(mRNA標的など)と二本鎖を形成したときに、RNAseを集結させることが可能な7、8または9個の連続するモノマーからなり、領域Cは、1、2または3個のヌクレオシドアナログ、例えばLNAモノマーからなる。存在する場合、領域Dは1個のDNAモノマーからなる。
【0085】
特定の実施形態では、領域Aは1個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Aは2個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Aは3個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Cは1個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Cは2個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Cは3個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは7個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは8個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは9個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは1〜9個のDNAモノマー、例えば、2、3、4、5、6、7または8個のDNAモノマーを含む。特定の実施形態では、領域BはDNAモノマーからなる。特定の実施形態では、領域Bは、α-L配置にある少なくとも1個のLNAモノマー、例えばα-L配置にある2、3、4、5、6、7、8または9個のLNAモノマーを含む。特定の実施形態では、領域Bは、少なくとも1個のα-L-オキシLNAモノマーを含む。特定の実施形態では、α-L配置にある領域B中のLNAモノマーの全てが、α-L-オキシLNAモノマーである。特定の実施形態では、オリゴマーのA-B-C領域中に存在するモノマーの数は、(ヌクレオシドアナログモノマー-領域B-ヌクレオシドアナログモノマー):1-8-1、1-8-2、2-8-1、2-8-2、3-8-3、2-8-3、3-8-2、4-8-1、4-8-2、1-8-4、2-8-4、または;1-9-1、1-9-2、2-9-1、2-9-2、2-9-3、3-9-2、1-9-3、3-9-1、4-9-1、1-9-4、または;1-10-1、1-10-2、2-10-1、2-10-2、1-10-3および3-10-1からなる群より選択される。特定の実施形態では、本発明のオリゴマーのA-B-C領域中に存在するモノマーの数は:2-7-1、1-7-2、2-7-2、3-7-3、2-7-3、3-7-2、3-7-4、および4-7-3からなる群より選択される。特定の実施形態では、領域AおよびCのそれぞれが2個のLNAモノマーからなり、領域Bが8または9個のヌクレオシドモノマー(特定の実施形態では、DNAモノマー)からなる。
【0086】
種々の実施形態において、他のギャップマー設計は、領域Aおよび/またはCが3、4、5または6個のヌクレオシドアナログ、例えば2’-O-メトキシエチル-リボース糖(2’MOE)を含有するモノマーまたは2’-フルオロ-デオキシリボース糖を含有するモノマーからなり、領域Bが8、9、10、11または12個のヌクレオシド、例えばDNAモノマーからなり、ここで、領域A-B-Cは5-10-5または4-12-4モノマーを有するものを含む。
【0087】
一部の実施形態では、ギャップマーは、本明細書中に提供されるものなどの硫黄含有連結基を含む。種々の実施形態において、ギャップマーは、特にギャップ領域(B)に、ホスホロチオエート連結基を含む。
【0088】
特定の実施形態では、ホスホロチオエート結合は、隣接する領域(AおよびC)中のモノマーを一緒に連結する。種々の実施形態において、ホスホロチオエート結合は、領域AまたはCを領域Dに連結し、領域D内のモノマーを一緒に連結する。
【0089】
種々の実施形態において、領域A、BおよびCは、特に、例えばヌクレオシドアナログ(例えば、LNAモノマー)の使用によって領域AおよびC内の連結基がエンドヌクレアーゼ分解から保護される場合、ホスホロチオエート以外の連結基、例えばホスホジエステル結合を含む。
【0090】
種々の実施形態において、オリゴマーの隣接するモノマーは、ホスホロチオエート結合により互いに連結されている。
【0091】
ホスホロチオエート骨格を有するオリゴマー、特に(典型的には領域Aおよび/またはC中に)ヌクレオシドアナログモノマー間またはヌクレオシドアナログモノマーに隣接してホスホロチオエート連結基を有するオリゴマーに、ホスホジエステル結合(1または2個の結合など)を含めることは、オリゴマーのバイオアベイラビリティおよび/または生体分布を変化させる場合があることが認識されている。WO 2008/053314(参照により本明細書中に組み入れられる)を参照されたい。
【0092】
上記で言及した実施形態などの一部の実施形態では、好適でありかつ具体的に示されていない場合、全ての残りの連結基はホスホジエステルもしくはホスホロチオエート、またはそれらの混合である。
【0093】
一部の実施形態では、全てのヌクレオシド間連結基がホスホロチオエートである。
【0094】
本明細書中に提供されるものなどの具体的なギャップマーオリゴヌクレオチド配列に言及する場合、種々の実施形態において、特に、ヌクレオシドアナログ(LNAモノマーなど)間の結合について、結合がホスホロチオエート結合である場合、本明細書中に開示されているものなどの代わりの結合を用いることができ、例えば、リン酸(ホスホジエステル)結合を用いることができることが理解されるであろう。
【0095】
更なるギャップマー設計は、WO 2004/046160およびWO 2007/146511A2(参照により本明細書中に組み入れられる)に開示されている。米国仮出願第60/977,409号(参照により本明細書中に組み入れられる)は、「ショートマー(shortmer)」ギャップマーオリゴマーに言及している。一部の実施形態では、本明細書中に提示されるオリゴマーは、そのようなショートマーギャップマーであり得る。
【0096】
1.5.5 オリゴマーの配列および特異性
本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマーは、HER3および/またはHER2および/またはEGFRポリペプチドをコードする核酸にハイブリダイズする。
【0097】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」との用語は、本明細書中で交換可能に用いられ、上述のような2個以上のモノマーの共有結合により形成される分子と定義される。2個以上のモノマーを含んで、「核酸」はいずれの長さでもあり得、この用語は、本明細書中に記載される長さを有する「オリゴマー」に対して包括的である。「核酸」および「ポリヌクレオチド」との用語は、一本鎖、二本鎖、部分的二本鎖、および環状分子を含む。
【0098】
種々の実施形態において、本明細書中で用いられる場合、「標的核酸」との用語は、哺乳動物HER3ポリペプチドをコードする核酸(DNAまたはRNAなど)を指す(例えば、配列番号197中の配列を有するヒトHER3 mRNA、または以下のGenBank登録番号を有する哺乳動物mRNA:NM_001005915、NM_001982およびオルタナティブスプライシング型NP_001973.2およびNP_001005915.1(ヒト);NM_017218(ラット);NM_010153(マウス);NM_001103105(ウシ);またはGenBank登録番号XM_001491896 (ウマ)、XM_001169469およびXM_509131(チンパンジー)を有する推定mRNA配列)。
【0099】
種々の実施形態において、「標的核酸」は、哺乳動物HER2ポリペプチドをコードする核酸も含む(例えば、以下のGenBank登録番号を有する哺乳動物mRNA:NM_001005862およびNM_004448(ヒト);NM_017003およびNM_017218(ラット);NM_001003817(マウス);NM_001003217(イヌ);およびNM_001048163(ネコ))。
【0100】
種々の実施形態において、「標的核酸」は、哺乳動物EGFRポリペプチドをコードする核酸も含む(例えば、以下のGenBank登録番号を有する哺乳動物mRNA:NM_201284、NM_201283、NM_201282およびNM_005228(ヒト);NM_007912およびNM_207655(マウス);NM_031507(ラット); およびNM_214007(ブタ))。
【0101】
上記で開示したGenBank登録番号は、cDNA配列を示し、mRNA配列それ自体を示すものではないことが認識される。成熟mRNAの配列は、チミン塩基(T)をウラシル塩基(U)で置き換えることにより、対応するcDNA配列から直接誘導することができる。
【0102】
種々の実施形態において、「標的核酸」は、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)コード核酸または天然に存在するその変異体、およびそこから誘導されるRNA核酸(プレmRNAまたは成熟mRNAなど)も含む。本発明に従うオリゴマーは、典型的には、標的核酸にハイブリダイズすることが可能である。
【0103】
「天然に存在するその変異体」との用語は、所定の分類群(例えば哺乳動物、例えばマウス、サル、およびヒト)内で天然に存在する、HER3(またはHER2もしくはEGFR)ポリペプチドまたは核酸配列の変異体を指す。典型的には、ポリヌクレオチドの「天然に存在する変異体」を指す場合、該用語は、HER3(またはHER2もしくはEGFR)をコードするゲノムDNA(第12染色体:54.76〜54.78Mbに見出される)のいずれかの対立遺伝子変異体(染色体転座または複製による)、およびそこから誘導されるmRNAなどのRNAも包含する場合がある。具体的なポリペプチド配列に言及する場合、例えば、該用語は、例えば翻訳と同時の修飾(co-translational modification)または翻訳後修飾(シグナルペプチド切断、タンパク質分解切断、グリコシル化、等)により、したがってプロセシングされていてもよい、タンパク質の天然に存在する形態も含む。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるオリゴマーは、オリゴマーのモノマーと標的核酸のモノマーとの間の、ワトソン・クリック塩基対形成、Hoogsteen水素結合、または逆Hoogsteen水素結合のいずれかにより、標的核酸の一領域(「標的領域」)に結合する。そのような結合は、「ハイブリダイゼーション」とも称される。他に示さない限り、結合は、相補的塩基同士(すなわち、アデニンとチミン(DNA)またはウラシル(RNA)、およびグアニンとシトシン)のワトソン・クリック対形成によるものであり、オリゴマーは、オリゴマーの配列が、標的領域の逆相補体の配列と同一であるか、または部分的に同一であるために、標的領域に結合し;本明細書中の目的のためには、オリゴマーは標的領域に「相補的」または「部分的に相補的」であると言われ、標的領域の配列に対するオリゴマー配列の「相補性」パーセントは、標的領域の配列の逆相補体に対する「同一性」パーセントである。
【0105】
他に文脈により明らかとされない限り、本明細書中の「標的領域」は、本明細書中で以下に記載するアライメントプログラムおよびパラメータを用いて、特定されたオリゴマー(またはその領域)の配列の逆相補体に最もよくアライメントする配列を有する標的核酸の領域であろう。
【0106】
本発明の組成物および方法で用いるためのオリゴマー(またはその領域)と哺乳動物HER3(またはHER2もしくはEGFR)をコードする核酸の標的領域(本明細書中に開示されているものなど)との間の「相補性」の程度を決定するに当たって、「相補性」(また、「相同性」)の程度は、オリゴマー(またはその領域)の配列と、それに最もよくアライメントする標的領域の配列の逆相補体との間の同一性パーセントとして表現される。パーセンテージは、2つの配列間で同一なアライメントした塩基の数をカウントし、オリゴマー(またはその領域)中の連続するモノマーの総数で除算し、これに100を乗算することにより算出される。そのような比較では、ギャップが存在する場合、そのようなギャップが、領域(ギャップ内のモノマーの数が本発明のオリゴマーと標的領域との間で異なる)ではなく、単なるミスマッチであるのが好ましい。
【0107】
アミノ酸およびポリヌクレオチドアライメント、配列同一性パーセンテージ、および相補性の程度は、本発明の目的のためには、ClustalWアルゴリズムを用いて標準的な設定を用いて決定することができる:http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.htmlを参照されたい、Method: EMBOSS::water (local): Gap Open = 10.0、Gap extend = 0.5、Blosum 62 (タンパク質)、またはヌクレオチド/核酸塩基配列についてはDNAfullを使用。
【0108】
理解されるであろうように、文脈に依存して、「ミスマッチ」は、配列中の非同一性(例えば、オリゴマーの核酸塩基配列と、それが結合する標的領域の逆相補体との間の、例えば、2つのアライメントされたHER3コード核酸の塩基配列間での)、または、配列中の非相補性(例えば、オリゴマーとそれが結合する標的領域との間の)を指す。
【0109】
好適には、オリゴマー(または以下でさらに説明されるようなコンジュゲート)は、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)遺伝子の発現を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害することが可能である。
【0110】
種々の実施形態において、本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマーは、処理直前の発現レベルと比較して、HER3(および任意により、HER2およびEGFRのうちの1以上)mRNA発現の少なくとも10%、少なくとも20%、より好ましくは処理直前の発現レベルと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の阻害を及ぼす。種々の実施形態において、本発明のオリゴマーは、処理直前の発現レベルと比較して、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)タンパク質発現の少なくとも10%、少なくとも20%、より好ましくは処理直前の発現レベルと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の阻害を及ぼす。一部の実施形態では、そのような阻害は、1nMの本発明のオリゴマーまたはコンジュゲートを用いた場合に見られる。種々の実施形態において、そのような阻害は、25nMのオリゴマーまたはコンジュゲートを用いた場合に見られる。
【0111】
種々の実施形態において、mRNA発現の阻害は、100%未満(すなわち、発現の完全な阻害未満)、例えば98%未満の阻害、95%未満の阻害、90%未満の阻害、80%未満の阻害、例えば70%未満の阻害である。種々の実施形態において、タンパク質発現の阻害は、100%未満(すなわち、発現の完全な阻害未満)、例えば98%未満の阻害、95%未満の阻害、90%未満の阻害、80%未満の阻害、例えば70%未満の阻害である。
【0112】
あるいは、発現レベルの変化は、mRNAレベルを測定することによって、例えば、ノザンブロッティングまたは定量的RT-PCRによって、決定することができる。mRNAレベルを介して測定する場合、適切な投与量(1nMおよび25nMなど)を用いた場合の阻害レベルは、種々の実施形態において、典型的には本発明の化合物なしでのレベルの10〜20%のレベルまでである。
【0113】
発現レベルの変化(すなわち、阻害または増大)は、タンパク質レベルを測定することによっても、例えば、SDS-PAGEとそれに続く標的タンパク質に対して生起された好適な抗体を用いるウエスタンブロッティングにより、決定することができる。
【0114】
一部の実施形態では、本発明は、HER3 mRNAおよび/またはそこから誘導されるタンパク質の1種以上のオルタナティブスプライシングアイソフォームの発現を阻害(例えば、ダウンレギュレート)するオリゴマーを提供する。一部の実施形態では、本発明は、HER3の1種以上のオルタナティブスプライシングタンパク質アイソフォーム(GenBank登録番号NP_001973.2および同NP_001005915.1)の発現および/またはHER3タンパク質アイソフォームをコードする核酸(GenBank登録番号NM_001982および同NM_001005915.1)の発現を阻害するオリゴマーを提供する。一部の実施形態では、HER3アイソフォーム1をコードするmRNAが標的核酸である。他の実施形態では、HER3アイソフォーム2をコードするmRNAが標的核酸である。特定の実施形態では、HER3アイソフォーム1およびHER3アイソフォーム2をコードする核酸が標的核酸であり、例えば、配列番号180の配列を有するオリゴマーである。
【0115】
種々の実施形態において、本発明は、HER3核酸中の標的領域の配列に相補的な塩基配列を有するオリゴマー、またはその第1領域を提供し、オリゴマーはHER3 mRNAおよび/またはHER3タンパク質発現をダウンレギュレーションし、HER2および/またはEGFRなどの1種以上の他のErbB受容体チロシンキナーゼファミリーメンバーのmRNAおよび/またはタンパク質の発現をダウンレギュレーションする。2種類の異なるErbB受容体ファミリー核酸(例えば、HER2およびHER3 mRNA)の標的領域に効果的に結合し、かつ両方の標的のmRNAおよび/またはタンパク質発現をダウンレギュレーションするオリゴマー、またはその第1領域は、「二重特異的(bispecific)」と名付けられる。3種類の異なるErbB受容体ファミリーメンバーの標的領域に結合し、3種類の遺伝子全てを効果的にダウンレギュレーションすることが可能なオリゴマー、またはその第1領域は、「三重特異的(trispecific)」と名付けられる。種々の実施形態において、本発明のオリゴマー性化合物は多重特異的(polyspecific)であり、すなわち、受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーの複数のメンバーの標的核酸の標的領域に結合し、それらの発現をダウンレギュレーションすることが可能なものであり得る。本明細書中で用いられる場合、「二重特異的」および「三重特異的」との用語は、どのようにも限定的ではないことが理解される。例えば、「二重特異的オリゴマー」が第3の標的核酸に対して何らかの作用を有する場合があり、「三重特異的オリゴマー」がその3種類の標的核酸のうちの1つに対して非常に弱く、したがって著明でない作用を有する場合がある。
【0116】
種々の実施形態において、二重特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3核酸中の標的領域およびHER2標的核酸中の標的領域に結合し、HER3およびHER2 mRNAおよび/またはタンパク質の発現を効果的にダウンレギュレーションすることが可能である。特定の実施形態では、二重特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質とHER2 mRNAおよび/またはタンパク質の発現を同じ程度にはダウンレギュレーションしない。他の実施形態では、本発明の二重特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3標的核酸中の標的領域およびEGFR標的核酸中の標的領域に結合し、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質ならびにEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を効果的にダウンレギュレーションすることが可能である。種々の実施形態において、二重特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質とEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を同じ程度にはダウンレギュレーションしない。さらに他の実施形態では、三重特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3標的核酸中の標的領域、および2種類の他のErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼ標的核酸中の標的領域に結合し、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質ならびに受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーの2つの他のメンバーのmRNAおよび/またはタンパク質の発現を効果的にダウンレギュレーションすることが可能である。種々の実施形態において、三重特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質の発現、HER2 mRNAおよび/またはタンパク質の発現、ならびにEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を効果的にダウンレギュレーションすることが可能である。種々の実施形態において、三重特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質、HER2 mRNAおよび/またはタンパク質ならびにEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を同じ程度にはダウンレギュレーションしない。
【0117】
本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、典型的には、ヒトHER3および/またはヒトHER2および/またはヒトEGFRのmRNAの標的領域に結合し、したがって、例えば、配列番号197、配列番号198および/または配列番号199の塩基配列に相補的または部分的に相補的な塩基配列を有する領域を含むかまたはそれからなる。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーの配列は、任意により、配列番号197、198または199の最もよくアライメントする標的領域の配列と比較したときに、1、2、3、4個以上の塩基ミスマッチを含む。
【0118】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物および方法で用いられるオリゴマーは、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列と同一の配列を有する(本明細書中、下記の表1を参照されたい)。他の実施形態では、本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマーは、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列と比較したときに、1、2、または3塩基で異なる配列を有する。一部の実施形態では、オリゴマーは、10〜16個の連続するモノマーを含む。16個の連続するモノマーからなるオリゴマーの配列の例は、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140である。より短い配列をそこから誘導することができ、例えば、より短いオリゴマーの配列が、配列番号200〜227、1〜140および228〜233の塩基配列を有するものから選択されるオリゴマーの領域中にそのまま存在し得る。種々の実施形態において、より長いオリゴマーが、配列番号200〜227、1〜140および228〜233中にそのまま存在する少なくとも10個の連続するモノマーの配列を有する領域を含む。配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140の配列を有するオリゴマーに相補的なヒトHER3 mRNAの標的領域が、図1に示されている(太字および下線部、対応するオリゴマーの配列番号が上に示されている)。
【0119】
種々の実施形態において、オリゴマーは、配列番号141〜168に示される塩基配列を有する。特定の実施形態では、オリゴマーはLNAオリゴマーであり、例えば、配列番号169〜196および234の配列を有するもの、特に配列番号169、170、173、174、180、181、183、185、187、188、189、190、191、192および194の塩基配列を有するものである。種々の実施形態において、オリゴマーは、配列番号169、170、172、174、175、176および179の塩基配列を有するものなどのLNAオリゴマーである。一部の実施形態では、オリゴマーまたはその領域は、配列番号169、180または234に示される塩基配列からなるか、それを含む。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、配列番号169、180または234に示される塩基配列を有するオリゴマーを含む。
【0120】
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で用いられるオリゴマーは、好適には、配列番号200〜227から選択される配列などの特定の配列を有する領域を含み、この配列は、これもまた本発明の組成物および方法で用いることができる、より短いオリゴマー中にそのまま存在する。種々の実施形態では、該領域は10〜16個のモノマーを含む。例えば、配列番号200〜227の塩基配列を有するオリゴマーがそれぞれ、その配列が、それぞれ、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140の配列を有するより短いオリゴマー中にそのまま存在する1つの領域を含む。一部の実施形態では、16個未満のモノマー(例えば、10、11、12、13、14、または15モノマー)を有するオリゴマーは、その配列が配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140の配列を有するオリゴマー中にそのまま存在する、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または15個の連続するモノマーの領域を有する。したがって、種々の実施形態において、より短いオリゴマーの配列が、より長いオリゴマーの配列から誘導される。一部の実施形態では、本明細書中に開示した配列番号を有するオリゴマーの配列、またはその少なくとも10個の連続するモノマーの配列が、より長いオリゴマー中にそのまま存在する。典型的には、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140中にそのまま存在する配列を有する第1領域を含み、オリゴマーが配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140中にそのまま存在する第1領域よりも長い場合、オリゴマーの隣接領域は、標的核酸の標的領域に隣接する配列に相補的な配列を有する。2つのそのようなオリゴマーは、配列番号1および配列番号54である。
【0121】
種々の実施形態において、オリゴマーは、哺乳動物HER3をコードする標的核酸の標的領域に完全に相補的な(完璧に相補的な)モノマーの配列を含むか、またはそれからなる。
【0122】
しかしながら、一部の実施形態では、オリゴマーの配列は、HER3標的核酸の最もよくアライメントする標的領域と比較して1、2、3、または4個(またはそれ以上)のミスマッチを含み、かつ依然として十分に標的領域に結合し、HER3 mRNAまたはタンパク質発現の阻害を及ぼす。ワトソン・クリック水素結合二本鎖に対するミスマッチの不安定化効果は、例えば、オリゴマーの長さを増すこと、および/またはオリゴマー中に存在するヌクレオシドアナログ(LNAモノマーなど)の数を増やすことによって補償することができる。
【0123】
種々の実施形態において、オリゴマー塩基配列は、例えば、哺乳動物HER3をコードする標的核酸の最もよくアライメントする標的領域の塩基配列と比較して、3箇所以下、例えば2箇所以下のミスマッチを含む。
【0124】
本発明の組成物および方法での使用のためのオリゴマーまたはその領域の塩基配列は、種々の実施形態において、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、100%さえも同一である。
【0125】
オリゴマーまたはその第1領域の塩基配列は、種々の実施形態において、配列番号197、198および/または199中に存在する標的領域の配列に対して少なくとも80%相補的、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、100%さえも相補的である。
【0126】
種々の実施形態において、オリゴマー(またはその第1領域)の配列は、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択され、または配列番号200〜227、1〜140および228〜233の少なくとも10個の連続するモノマーからなる群より選択される。他の実施形態では、本発明の医薬組成物および方法で用いられるオリゴマーまたはその第1領域の配列は、任意により、選択された配列またはその領域と最適にアライメントしたときに、配列番号200〜227、1〜140および228〜233の配列、またはその少なくとも10個の連続するモノマーの配列を有するオリゴマー中のものとは異なる、1、2または3個の塩基部分を含む。
【0127】
特定の実施形態では、モノマー領域は、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29個の連続するモノマー、例えば、10〜15、12〜25、12〜22個、例えば12〜18個のモノマーからなる。好適には、種々の実施形態において、該領域は本発明のオリゴマーと同じ長さのものである。
【0128】
一部の実施形態では、オリゴマーは、5’または3’末端に追加のモノマーを含み、例えば、オリゴマーの5’末端および/または3’末端に独立して1、2、3、4または5個の追加のモノマーを含み、これらは標的領域の配列に相補的でない。
【0129】
種々の実施形態において、本発明のオリゴマーは、5’および/または3’に追加のモノマーが隣接した、標的に相補的な領域を含む。種々の実施形態において、該領域の3’末端に1、2もしくは3個のDNAまたはRNAモノマーが隣接している。3’ DNAモノマーは、オリゴマーの固相合成でしばしば用いられる。種々の実施形態において、同じかまたは異なってよいが、オリゴマーの5’末端に1、2もしくは3個のDNAまたはRNAモノマーが隣接している。特定の実施形態では、追加の5’または3’モノマーは、ヌクレオシド、例えばDNAまたはRNAモノマーである。種々の実施形態において、5’または3’モノマーは、本明細書中でギャップマーオリゴマーの文脈で言及した領域Dを表す場合がある。
【表1】
【0130】
ギャップマー配列(配列番号141〜196および234)に関して、太字の大文字は、ヌクレオシドがLNA糖を含有していることを示し、小文字は2’-デオキシヌクレオシドを示す。下付き「s」は、隣接するヌクレオシド間のホスホロチオエート結合を示す。LNAモノマー中の全てのシトシン塩基は、5-メチルシトシンである。24ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチド(配列番号211〜227)に関して、表1に示した太字および下線の文字は、より長いオリゴヌクレオチドに組み込まれているより短いオリゴマー性化合物の塩基配列を示す。
【0131】
1.5.6 コンジュゲート
本開示の文脈において、「コンジュゲート」との用語は、それ自体核酸またはモノマーでない1以上の部分(「コンジュゲート部分」)との本明細書中で記載されるオリゴマーの共有結合(「コンジュゲーション」)により形成される化合物を示す。そのようなコンジュゲート部分の例としては、タンパク質、脂肪酸鎖、糖残基、糖タンパク質、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどの高分子化合物が挙げられる。典型的には、タンパク質は標的タンパク質に対する抗体であり得る。典型的なポリマーはポリエチレングリコールであり得る。WO 2007/031091は、好適な部分およびコンジュゲートを提供しており、それらは参照により本明細書中に組み入れられる。
【0132】
したがって、一部の実施形態では、本発明の組成物および方法は、本明細書中に記載されるオリゴマーおよび少なくとも1つのコンジュゲート部分(核酸またはモノマーではなく、オリゴマーに共有結合されている)を含むコンジュゲートを利用する。したがって、オリゴマーが本明細書中に記載される特定された塩基配列を有する連続するモノマーからなる特定の実施形態では、コンジュゲートは、オリゴマーに共有結合された少なくとも1つのコンジュゲート部分も含む。
【0133】
種々の実施形態において、コンジュゲートは、オリゴマーの活性、細胞内分布または細胞内取り込みを強化する場合がある。そのような部分としては、限定するものではないが、抗体、ポリペプチド、コレステロール部分などの脂質部分、コール酸、チオエーテル(例えば、ヘキシル-s-トリチルチオール)、チオコレステロール、脂肪鎖(例えば、ドデカンジオール残基またはウンデシル残基)、リン脂質(例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたは1,2-ジ-o-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-h-ホスホン酸トリエチルアンモニウム)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が挙げられる。
【0134】
特定の実施形態では、オリゴマーは、オリゴマー性化合物の細胞内取り込みを増大させる部分にコンジュゲートされている。
【0135】
特定の実施形態では、オリゴマーは、活性薬物、例えば、アスピリン、イブプロフェン、サルファ剤、抗糖尿病薬、抗細菌剤または抗生物質にコンジュゲートされている。
【0136】
特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、コレステロールなどのステロールである。
【0137】
種々の実施形態において、コンジュゲート部分は、正に荷電したポリマー、例えば、1〜50個、例えば2〜20個、例えば3〜10個のアミノ酸残基長の正に荷電したペプチド、および/またはポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール)を含むかまたはそれからなる。WO 2008/034123を参照されたい(参照により本明細書中に組み入れられる)。好適には、ポリアルキレンオキシドなどの正に荷電したポリマーは、WO 2008/034123に記載されている放出可能なリンカー(releasable linker)などのリンカーを介して、オリゴマーに連結されていてもよい。
【0138】
1.5.6.1.1 活性化オリゴマー
本明細書中で用いられる場合、「活性化オリゴマー」との用語は、1以上のコンジュゲート部分(すなわち、それ自体核酸またはモノマーでない部分)とのオリゴマーの共有結合を可能にし、本明細書中に記載されるコンジュゲートを形成させる少なくとも1つの官能性部分に共有結合した(すなわち、官能化された)、上記のオリゴマーなどのオリゴマーを指す。典型的には、官能性部分は、例えば、アデニン塩基の3’-ヒドロキシル基または環外NH2基を介してオリゴマーに共有結合することが可能な化学基、一部の実施形態では親水性のスペーサー、およびコンジュゲート部分に結合することが可能な末端基(例えば、アミノ基、スルフヒドリル基またはヒドロキシル基)を含むであろう。一部の実施形態では、末端基は保護されておらず、例えば、NH2基である。他の実施形態では、末端基は、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」(Theodora W GreeneおよびPeter G M Wuts著, 第3版 (John Wiley & Sons, 1999))に記載されているものなどのいずれかの好適な保護基により、保護されている。好適なヒドロキシル保護基の例としては、エステル(例えば酢酸エステル)、アラルキル基(例えばベンジル、ジフェニルメチル、またはトリフェニルメチル)、およびテトラヒドロピラニルが挙げられる。好適なアミノ保護基の例としては、ベンジル、α-メチルベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、およびアシル基(例えばトリクロロアセチルまたはトリフルオロアセチル)が挙げられる。
【0139】
一部の実施形態では、官能性部分は自己切断性である。他の実施形態では、官能性部分は生分解性である。例えば、米国特許第7,087,229号を参照されたい(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)。
【0140】
一部の実施形態では、本発明の組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、該オリゴマーの5’末端へのコンジュゲート部分の共有結合を可能にするために、5’末端で官能化されている。他の実施形態では、オリゴマーは3’末端で官能化されていることができる。さらに他の実施形態では、オリゴマーは、骨格に沿って、または複素環塩基部分で官能化されていることができる。また別の実施形態では、オリゴマーは、5’末端、3’末端、骨格および塩基から独立に選択される2以上の位置で官能化されていることができる。
【0141】
一部の実施形態では、活性化オリゴマーは、官能性部分に共有結合する1個以上のモノマーを、合成中に取り込ませることにより合成される。他の実施形態では、本発明の活性化オリゴマーは、官能化されていないモノマーを用いて合成され、該オリゴマーは合成の完了後に官能化される。
【0142】
一部の実施形態では、オリゴマーは、アミノアルキルリンカーを含有するヒンダード(hindered)エステルを用いて官能化され、ここでアルキル部分は式(CH2)wを有し、wは1〜10の整数、例えば約6であり、アルキルアミノ基のアルキル部分は直鎖または分岐鎖であり得、官能基はエステル基(-O-C(O)-(CH2)wNH)を介してオリゴマーに連結されている。
【0143】
他の実施形態では、オリゴマーは、(CH2)w-スルフヒドリル(SH)リンカーを含有するヒンダードエステルを用いて官能化され、wは1〜10の整数、例えば約6であり、アルキルアミノ基のアルキル部分は直鎖または分岐鎖であり得、官能基はエステル基(-O-C(O)-(CH2)wSH)を介してオリゴマーに連結されている。一部の実施形態では、スルフヒドリル活性化オリゴヌクレオチドは、ポリエチレングリコールまたはペプチドなどのポリマー部分と(ジスルフィド結合の形成を介して)コンジュゲート化される。
【0144】
少なくとも1つの官能性部分に共有結合された活性化オリゴマーは、当技術分野で公知のいずれかの方法により、特に米国特許第7,595,304号、WO 2008/034122およびWO 2008/034119(これらはそれぞれが参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)、ならびにZhaoら, (2007) J. Controlled Release 119:143-152;およびZhaoら, (2005) Bioconjugate Chem. 16:758-766に開示されている方法により、合成することができる。
【0145】
さらに他の実施形態では、本発明の医薬組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、米国特許第4,962,029号および同第4,914,210号に実質的に記載されている官能化試薬(すなわち、一方の末端にホスホルアミダイトを有し、親水性スペーサー鎖により反対側の末端(保護または未保護スルフヒドリル基、アミノ基またはヒドロキシル基を含む)に連結されている実質的に直鎖の試薬)を用いて、オリゴマー中にスルフヒドリル基、アミノ基またはヒドロキシル基を導入することにより官能化される。そのような試薬は、主としてオリゴマーのヒドロキシル基と反応する。一部の実施形態では、そのような活性化オリゴマーは、オリゴマーの5’-ヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。他の実施形態では、活性化オリゴマーは、3’-ヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。さらに他の実施形態では、活性化オリゴマーは、オリゴマーの骨格のヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。またさらなる実施形態では、オリゴマーは、米国特許第4,962,029号および同第4,914,210号(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)に記載されている2以上の官能化試薬を用いて官能化される。そのような官能化試薬をを合成し、それらをモノマーまたはオリゴマーに組み入れる方法は、米国特許第4,962,029号および同第4,914,210号に開示されている。
【0146】
一部の実施形態では、固相結合オリゴマーの5’-末端をジエニルホスホルアミダイト誘導体で官能化し、続いて、脱保護したオリゴマーを、例えば、Diels-Alder付加環化反応を介してアミノ酸またはペプチドとコンジュゲートする。
【0147】
種々の実施形態において、2’-糖修飾(例えば、2’-カルバメート置換糖または2’-(O-ペンチル-N-フタルイミド)-デオキシリボース糖)を含有するモノマーのオリゴマーへの組み込みは、オリゴマーの糖へのコンジュゲート部分の共有結合を促進する。他の実施形態では、1個以上のモノマーの2’位にアミノ含有リンカーを有するオリゴマーは、例えば、5’-ジメトキシトリチル-2’-O-(e-フタルイミジルアミノペンチル)-2’-デオキシアデノシン-3’-N,N-ジイソプロピル-シアノエトキシホスホルアミダイトなどの試薬を用いて調製される。例えば、Manoharanら, Tetrahedron Letters, 1991, 34, 7171を参照されたい。
【0148】
またさらなる実施形態では、オリゴマーは、N6プリンアミノ基、グアニンの環外N2、またはシトシンのN4もしくは5位を含む核酸塩基上に、アミノ含有官能性部分を有する。一部の実施形態では、そのような官能化は、オリゴマー合成において既に官能化されている市販の試薬を用いることにより達成される場合がある。
【0149】
いくつかの官能性部分が市販されており、例えば、ヘテロ二官能性連結部分およびホモ二官能性連結部分は、Pierce Co.(Rockford, Ill.)から入手可能である。他の市販の連結基は、5'-Amino-Modifier C6および3'-Amino-Modifier試薬(両方ともGlen Research Corporation(Sterling, Va.)から入手可能)である。5'-Amino-Modifier C6は、ABI(Applied Biosystems Inc., Foster City, Calif.)からAminolink-2としても入手可能であり、3'-Amino-Modifierは、Clontech Laboratories Inc.(Palo Alto, Calif.)からも入手可能である。
【0150】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、2種類または3種類全ての標的核酸さえも標的化するために、2種以上のオリゴマーを含む。種々の実施形態において、本発明は、HER3を標的とするオリゴマー、およびHER2発現を標的としてダウンレギュレーションするオリゴマーを含む医薬組成物に関する。他の実施形態では、同じかまたは異なり、本発明は、HER3を標的とするオリゴマー、およびEGFR発現を標的としてダウンレギュレーションするさらなるオリゴマーを含む医薬組成物に関する。
【0151】
一部の実施形態では、HER2および/またはEGFR mRNAを標的とするオリゴマー(またはそのコンジュゲート)は、HER3を標的とするオリゴマーと同じ設計(例えば、ギャップマー、ヘッドマー(headmer)、テイルマー(tailmer))を有する。種々の実施形態において、HER2および/またはEGFR mRNAを標的とするオリゴマー(またはそのコンジュゲート)は、HER3を標的とするオリゴマーと異なる設計を有する。
【0152】
一部の実施形態では、本発明の組成物および方法での使用のためのオリゴマーは、細胞膜を通過するオリゴマーの送達のために、コンジュゲート部分に共有結合されている。細胞膜を通過するオリゴマーの送達のためのコンジュゲート部分の例は、コレステロールなどの親油性部分である。種々の実施形態において、本発明の医薬組成物での使用のためのオリゴマーは、リポソームを形成する脂質製剤を用いて製剤化される(Lipofectamine 2000またはLipofectamine RNAiMAXなど、両方ともInvitrogenから市販されている)。一部の実施形態では、オリゴマーは、1種以上の脂質様の天然に存在しない小分子(「リピドイド(lipidoid)」)の混合物を用いて製剤化される。リピドイドのライブラリーは、慣用の合成化学法により合成することができ、特定のサイズのオリゴマーの選択された投与経路による標的化組織への効果的な送達のためのビヒクルを開発するために、リピドイドの種々の量および組み合わせをアッセイすることができる。好適なリピドイドのライブラリーおよび組成物は、例えば、Akincら, (2008) Nature Biotechnol.(http://www.nature.com/nbt/journal/vaop/ncurrent/abs/nbt1402.htmlで入手可能、参照により本明細書中に組み入れられる)の中に見出すことができる。
【0153】
1.6 タンパク質チロシンキナーゼインヒビター
本明細書中で交換可能に用いられる場合、「タンパク質チロシンキナーゼインヒビター」、「PTKインヒビター」、および「チロシンキナーゼインヒビター」との用語は、1以上のチロシンキナーゼドメインに結合し、その活性を阻害する分子を指す。タンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、本明細書中に記載されるHER3を標的とするオリゴマーではない。一部の実施形態では、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、モノクローナル抗体である。他の実施形態では、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、1000Da未満、例えば300〜700Daの分子量を有する小分子である。
【0154】
特定の実施形態では、PTKインヒビターは、1以上のEGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼに結合し、これを阻害する。種々の実施形態において、PTKインヒビターは、1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するか、またはそれにより調節される1以上のタンパク質(例えば、1以上のEGFRファミリーメンバーから始まる1以上のシグナル伝達カスケードに含まれるタンパク質)のチロシンキナーゼに結合し、これを阻害する。一部の実施形態では、チロシンキナーゼは受容体チロシンキナーゼであり、すなわち、細胞外リガンド結合ドメインを有するより大きなタンパク質の細胞内ドメインであり、1以上のリガンドの結合により活性化される。特定の実施形態では、タンパク質チロシンキナーゼは、非受容体チロシンキナーゼである。チロシンキナーゼ酵素は、1以上のシグナル伝達経路中の他のタンパク質の活性を、それらをリン酸化することにより調節する。
【0155】
種々の実施形態において、本発明の組成物および方法で有用なタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、EGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼドメインに選択的に結合する小分子インヒビターを含む。特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で有用なタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、タンパク質のEGFRファミリーの2以上のメンバーのチロシンキナーゼドメインに結合し、その活性を阻害する小分子インヒビターを含む。他の実施形態では、本発明の組成物および方法で有用なタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、受容体チロシンキナーゼのEGFRファミリーに選択的に結合するのではなく、VEGFR、PDGFR、および/またはRafなどのタンパク質の他のファミリーのチロシンキナーゼドメインにも結合するPTKインヒビターを含む。特定の実施形態では、PTKインヒビターは、可逆的インヒビターであり、すなわち、それらはタンパク質に結合するが、これを不可逆的に変化させはしない。種々の実施形態において、PTKインヒビターは不可逆的インヒビターであり、すなわち、それらはPTK受容体二量体を共有結合によって架橋することにより、PTKを阻害する。
【0156】
種々の実施形態において、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターの製薬上許容される誘導体を含む医薬組成物を包含する。本明細書中で用いられる場合、「製薬上許容される誘導体」との用語は、PTKインヒビターのいずれかの製薬上許容される塩、プロドラッグ、放射標識形態、立体異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、他の立体異性体形態、ラセミ混合物、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物(例えば、水和物)、無定形固体形態または結晶性固体形態を含む。一実施形態では、製薬上許容される誘導体は、PTKインヒビターの製薬上許容される塩、放射標識形態、立体異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、他の立体異性体形態、ラセミ混合物、幾何異性体、および/または互変異性体である。別の実施形態では、製薬上許容される誘導体は、PTKインヒビターの製薬上許容される塩である。
【0157】
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で用いられるPTKインヒビターは、塩でない形態(例えば、遊離酸または遊離塩基の形態)にある。他の実施形態では、本発明の組成物および方法で用いられるPTKインヒビターは、製薬上許容される塩の形態にある。本明細書中で用いられる場合、「製薬上許容される塩」は、所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒性作用の許容可能なレベルを示す塩を指す。
【0158】
チロシンキナーゼインヒビターの製薬上許容される塩形態は、慣用の方法により調製することができる。PTKインヒビターが酸基を含む場合、好適な塩は、化合物を好適な塩基と反応させ、対応する塩基付加塩をもたらすことにより形成させることができる。そのような塩基としては、限定するものではないが、アルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含む);アルカリ土類金属水酸化物(水酸化バリウム、および水酸化カルシウムなど);アルカリ金属アルコキシド(例えば、カリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド);および種々の有機塩基(ピペリジン、ジエタノールアミンおよびN-メチルグルタミンなど)が挙げられる。
【0159】
あるいは、化合物を製薬上許容される有機および無機酸で処理することにより、PTKインヒビターの酸付加塩を形成させることができる(例えば、ハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素など)、他の鉱物酸および対応するその塩(硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩など)ならびにアルキルおよびモノアリールスルホン酸塩(エタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩)、ならびに他の有機酸および対応するその塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩など)。したがって、PTKインヒビターの製薬上許容される酸付加塩としては、限定するものではないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギネート(arginate)、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩(besylate))、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、臭化物、酪酸塩、カンホレート(camphorate)、カンファースルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩(digluconate)、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクテレート(galacterate)(粘液酸(mucic acid)からの)、ガラクツロネート(galacturonate)、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸、リン酸一水素塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩が挙げられる。
【0160】
本発明の方法および組成物で有用なPTKインヒビターとしては、限定するものではないが、ゲフィチニブ(ZD-1839、Iressa(登録商標))、エルロチニブ(OSI-1774、TarcevaTM)、カネルチニブ(CI-1033)、バンデタニブ(ZD6474、Zactima(登録商標))、チルホスチンAG-825(CAS 149092-50-2)、ラパチニブ(GW-572016)、ソラフェニブ(BAY43-9006)、AG-494(CAS 133550-35-3)、RG-13022(CAS 149286-90-8)、RG-14620(CAS 136831-49-7)、BIBW 2992(Tovok)、チルホスチン9(CAS 136831-49-7)、チルホスチン23(CAS 118409-57-7)、チルホスチン25(CAS 118409-58-8)、チルホスチン46(CAS 122520-85-8)、チルホスチン47(CAS 122520-86-9)、チルホスチン53(CAS 122520-90-5)、ブテイン(1-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オン 2’,3,4,4’-テトラヒドロキシカルコン;CAS 487-52-5)、クルクミン((E,E)-1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン;CAS 458-37-7)、N4-(1-ベンジル-1H-インダゾール-5-イル)-N6,N6-ジメチル-ピリド-[3,4-d]-ピリミジン-4,6-ジアミン(202272-68-2)、AG-1478、AG-879、シクロプロパンカルボン酸-(3-(6-(3-トリフルオロメチル-フェニルアミノ)-ピリミジン-4-イルアミノ)-フェニル)-アミド(CAS 879127-07-8)、N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N2-(1-メチルピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、2HCl(CAS 196612-93-8)、4-(4-ベンジルオキシアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン(CAS 179248-61-4)、N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル)2-ブチナミド(CAS 881001-19-0)、EKB-569、HKI-272、およびHKI-357が挙げられる。
【0161】
一部の実施形態では、PTKインヒビターは、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブおよびソラフェニブから選択される。
【0162】
特定の実施形態では、チロシンキナーゼインヒビターはゲフィチニブである。
【0163】
PTKインヒビターは、当技術分野で公知のいずれかの方法により取得することができる。一部の実施形態では、PTKインヒビターは、例えば、Sigma-Aldrich(登録商標)およびCayman Chemicalから市販されている。種々の実施形態において、PTKインヒビターは、例えば、AstraZeneca、Roche、GlaxoSmithKlineおよびBayer Pharmaceuticalsから処方により入手可能である。他の実施形態では、PTKインヒビターは、当技術分野で公知の方法により、例えば、Rewcastle, G.W.ら, (1996) J. Med. Chem. 39:918-928で説明されている方法により合成することができる。
【0164】
種々の実施形態において、本発明の組成物は、2種以上のチロシンキナーゼインヒビターを含む。一部の実施形態では、一方のチロシンキナーゼインヒビターが特定の受容体チロシンキナーゼに対して選択的であり(例えば、ゲフィチニブ)、第2のチロシンキナーゼインヒビターは比較的、非選択的である(例えば、ソラフェニブ)。種々の実施形態において、第2のチロシンキナーゼインヒビターは、2以上のEGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼドメインに結合する(例えば、ラパチニブ)。またさらなる実施形態では、第2のチロシンキナーゼインヒビターは、VEGFRなどの異なるファミリーのPTK受容体のチロシンキナーゼドメインに結合する。
【0165】
1.6.1 製薬上許容される賦形剤および投与剤形
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、少なくとも1種のオリゴマー性化合物、少なくとも1種のPTKインヒビターまたは製薬上許容されるその誘導体、および好適な量の製薬上許容される賦形剤を含み、それにより患者への適正な投与のための剤形がもたらされる。本明細書中で用いられる場合、「患者」との用語は、限定するものではないが、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、ペットまたは家畜、例えば、ウシ、サル、ヒヒ、チンパンジー、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットを含む。種々の実施形態において、少なくとも1種のオリゴマー性化合物および少なくとも1種のPTKインヒビターは、単一の医薬組成物中にある。他の実施形態では、少なくとも1種のオリゴマー性化合物および少なくとも1種のPTKインヒビターは、別個の医薬組成物中にある。有効成分が別個の組成物中にあるそのような実施形態では、組成物は、HER3標的化併用療法での使用のために一緒に梱包することができる(同梱)。
【0166】
製薬的賦形剤は、希釈剤、懸濁化剤、溶解剤、結合剤、崩壊剤、保存料、着色料、滑沢剤、等であり得る。製薬的賦形剤は、液体であり得、例えば、水または石油、動物、植物もしくは合成由来のものなどの油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油、等である。製薬的賦形剤は、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素、等であり得る。さらに、添加剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤および着色料を用いることができる。一実施形態では、製薬上許容される賦形剤は、患者に投与するときに無菌である。オリゴマーまたはPTKインヒビターが静脈内投与される場合、水は特に有用な賦形剤である。生理食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射可能溶液のために、液体賦形剤として用いることができる。好適な製薬的賦形剤としてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、等が挙げられる。本発明の組成物は、所望であれば、少量の湿潤化剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。経口投与剤形を製剤化するために用いることができる製薬上許容される賦形剤の具体例は、the Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (1986)に記載されている。
【0167】
本発明の医薬組成物は、溶液剤、懸濁液剤、エマルジョン剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、持続放出製剤、坐薬、エマルジョン剤、エアゾール剤、噴霧剤、懸濁液剤の形態、または使用のために好適ないずれかの他の剤形であり得る。好適な製薬的賦形剤の他の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences 1447-1676 (Alfonso R. Gennaro編, 第19版, 1995)(参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0168】
種々の実施形態において、組成物は、ヒトへの経口投与に適合した組成物として、慣用の手順に従い製剤化される。経口送達するためのオリゴマーまたは小分子PTKインヒビターは、例えば、錠剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、カプレット剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性溶液剤、懸濁液剤、顆粒剤、散剤、エマルジョン剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であり得る。活性薬剤が経口用錠剤中に組み入れられる場合、そのような錠剤は、圧縮錠剤、粉薬錠剤(例えば、粉末化錠剤または崩壊錠剤)、腸溶コーティング錠剤、糖衣錠剤、フィルムコーティング錠剤、多圧縮錠剤または多層錠剤であり得る。固体経口投与剤形を製造するための技術および組成は、Marcel Dekker, Inc出版のPharmaceutical Dosage Forms: Tablets (Lieberman, LachmanおよびSchwartz編, 第2版)に記載されている。錠剤(圧縮錠剤および成形錠剤)、カプセル剤(ハードおよびソフトゼラチン)および丸剤を製造するための技術および組成は、Remington's Pharmaceutical Sciences 1553-1593 (Arthur Osol編, 第16版, Mack Publishing, Easton, PA 1980)にも記載されている。
【0169】
液体経口投与剤形は、水性および非水性溶液剤、エマルジョン剤、懸濁液剤、ならびに不活性顆粒から再調製される溶液剤および/または懸濁液剤を含む(任意により1種以上の好適な溶媒、保存料、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、着色料、香味剤、等を含有する)。液体経口投与剤形を製造するための技術および組成は、Marcel Dekker, Inc.出版のPharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, (Lieberman, RiegerおよびBanker編)に記載されている。
【0170】
本発明の組成物が非経口的に注入されるものである場合、それらは、例えば、等張無菌溶液剤の形態であり得る。あるいは、組成物が吸入されるものである場合、それらは、乾燥エアゾール剤に製剤化することができるか、または水性もしくは部分的に水性の溶液剤に製剤化することができる。
【0171】
経口投与用組成物は、製薬的に口当たりが良い調製物をもたらすために、1種以上の薬剤、例えば、甘味料(フルクトース、アスパルテームまたはサッカリンなど);香味剤(ペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリーなど);着色料;および保存料を含有することができる。さらに、医薬組成物の錠剤または丸剤の剤形は、消化管での崩壊および吸収を遅延させるためにコーティングして、それにより長時間にわたる持続作用をもたらすことができる。浸透活性駆動化合物を囲む選択的透過性膜も、経口投与用組成物に好適である。これらの後者のプラットフォームでは、カプセルを囲む環境からの体液が駆動化合物により吸収されて、該化合物が膨潤して開口部を通過して薬剤または薬剤組成物を置き換える。これらの送達プラットフォームは、即時放出製剤の急上昇する(spiked)プロフィールとは逆に、実質的にゼロオーダーの送達プロフィールをもたらすことができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの遅延物質を用いることもできる。経口用組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースおよび炭酸マグネシウムなどの標準的な賦形剤を含むことができる。一実施形態では、賦形剤は製薬グレードのものである。
【0172】
別の実施形態では、組成物は静脈内投与のために製剤化することができる。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌等張水性緩衝液を含む。必要である場合、組成物は溶解剤も含むことができる。静脈内投与用の組成物は、任意により、ベンゾカインまたはプリロカインなどの局所麻酔薬を含んで、注入部位の痛みを低減させることができる。一般的に、例えば、活性薬剤の量を示したアンプルもしくはサシェなどの密閉容器中の凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として、成分を別個に供給するか、または単一投与剤形として一緒に混合することができる。組成物が点滴による投与のためのものである場合、例えば、無菌の製薬グレード水または生理食塩水が入った輸液ボトルと共に供給することができる。活性薬剤を注射により投与する場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用無菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0173】
本発明の医薬組成物は、制御放出手段もしくは徐放手段により、または当業者に公知の送達デバイスにより、投与することができる。例としては、限定するものではないが、米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;同第4,008,719号;同第5,674,533号;同第5,059,595号;同第5,591,767号;同第5,120,548号;同第5,073,543号;同第5,639,476号;同第5,354,556号;および同第5,733,566号(そのそれぞれが参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されているものなどが挙げられる。そのような投与剤形は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、マルチ顆粒、リポソーム、ミクロスフェア、またはそれらの組み合わせを用い、1種以上の有効成分の制御放出または徐放をもたらすために用いて、様々な割合での所望の放出プロフィールをもたらすことができる。本明細書中に記載するものをはじめとする当業者に公知の好適な制御放出製剤または徐放製剤は、本発明の有効成分を用いた使用のために容易に選択することができる。したがって、本発明は、制御放出または徐放に適合した、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、およびカプレット剤などの、経口投与に好適な単一の単位投与剤形を包含する。
【0174】
本明細書中に記載した医薬組成物の投与は、経口、肺内、局所(例えば、表皮、経皮、眼内ならびに膣内および腸内送達をはじめとする粘膜)、あるいは静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射または点滴をはじめとする非経口的であり得る。一実施形態では、治療用オリゴマーを含有する医薬組成物は、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)またはボーラス注射として投与される。本発明の多くの態様で、非経口経路が好ましい。適正な製剤は、選択された投与経路、すなわち、局所または全身治療が施されるかどうかに依存する。少なくとも1種のオリゴマーおよび少なくとも1種のPTKインヒビターが別個の組成物中に製剤化される種々の実施形態において、医薬組成物は同じ剤形(例えば、固体剤形、液体剤形、エアゾール)である必要はなく、同じ経路(例えば、経口、非経口、局所)により、または同時に投与される必要はない。例えば、本発明は、オリゴマーが経口投与用の剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、経口用シロップ等)に製剤化され、PTKインヒビターが静脈内投与または吸入による投与用の剤形に製剤化される医薬組成物を包含する。
【0175】
1.6.2 投与レジメン
HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーは、3日〜2週間の範囲の定期的な間隔(「投与間隔」または「DI」)で投与することができる。一部の実施形態では、DIは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13日である。種々の実施形態において、DIは約1週間である。またさらなる実施形態では、DIは、6、7または8日である。好適には、2回の投与間にDIを有して、少なくとも2回投与し、例えば、3、4、5、6、7、8、9または10回投与し、それぞれがLNAオリゴマーの連続する投与間にDIを有する。各投与間のDI期間は同じであり得る。一部の実施形態では、DI期間は3日〜2週間である。他の実施形態では、DI期間は4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13日である。また別の実施形態では、DI期間は約1週間である。特定の実施形態では、DI期間は、6、7または8日である。
【0176】
一部の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーの各用量は、約0.25mg/kg体重〜約10mg/kg体重、例えば約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、または約9mg/kgである。一部の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーの各用量は、約2mg/kg〜約8mg/kg、または約4〜約6mg/kg、または約4m/kg〜約5mg/kgである。一部の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーの各用量は、少なくとも2mg/kg、例えば2、3、4、5、6、7または8mg/kgである。種々の実施形態において、各用量は6mg/kgである。
【0177】
LNAオリゴマーの投与は、典型的には、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または腹腔内投与により行なわれる。特定の実施形態では、投与は静脈内である。
【0178】
一部の実施形態では、LNAオリゴマーの投与レジメンは、最初の投与レジメンの後に繰り返される。種々の実施形態において、投与レジメンは、疾患の進行を治療または予防するために必要である場合に繰り返される。
【0179】
特定の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーは、継続的よりもむしろ比較的短い期間にわたって投与される。種々の実施形態において、患者が長期にわたって病院に拘束される必要がないので、短い投与期間は患者の生活の質に著明な改善をもたらす。したがって、種々の実施形態において、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーは、継続的な点滴によっては投与されない。したがって、LNAオリゴマーの各用量は、12時間未満の時間、例えば約8時間未満、例えば約4時間未満、例えば約3時間未満で患者に投与することができる。したがって、LNAオリゴマーの各用量は、約1時間〜約4時間、例えば約2時間〜約3時間、または約2時間の時間で患者に投与することができる。LNAオリゴマーは、少なくとも30分、例えば少なくとも1時間の時間で患者に投与することができる。そのような投与は、例えば、静脈内に行なうことができる。
【0180】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターの製薬上有効な用量は、一部の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするLNAオリゴマーの1以上の製薬上有効な用量の投与の前に、それと同時に、またはそれに続いて投与することができる。典型的には、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターの1以上の有効な用量を投与して、LNAオリゴマーとタンパク質チロシンキナーゼの両方が、患者に対して同時に治療的利益をもたらすようにする。
【0181】
1.6.3 キット
本発明は、第1の構成要素および第2の構成要素を含むキットも提供する。種々の実施形態において、第1の構成要素は、HER3の発現を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害することが可能な少なくとも1種のオリゴマー、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物を含み、第2の構成要素は、1種以上のEGFRファミリーメンバーに選択的な少なくとも1種の小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを含む。他の実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドまたはPTKインヒビター以外の治療剤、例えば化学療法剤(例えば、タキソール)である第3の構成要素を含む。一部の実施形態では、本発明のキットは、過剰増殖障害(癌など)の治療方法で用いられ、該方法は、それを必要とする患者に、キットの第1の構成要素および第2の構成要素の有効量を投与するステップを含む。種々の実施形態において、第1および第2の構成要素は、同じ時点でまたは同時に投与される。他の実施形態では、第1および第2の構成要素は、逐次的かついずれかの順番で投与される。
【0182】
一部の実施形態では、キットは、HER3の発現を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害することが可能な本発明のオリゴマー、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物を含む第1の構成要素、およびタンパク質チロシンキナーゼインヒビターである第2の構成要素、ならびに本明細書中に記載されるHER2およびEGFRのうちの1以上の発現を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害することが可能なオリゴマー、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物である第3の構成要素を含む。
【0183】
本発明の一実施形態は、キット内の別々の組成物中に、少なくとも1種のオリゴマー性化合物および少なくとも1種のPTKインヒビターを含むキットを提供する。例えば、本発明の1つのキットの実施形態は、それぞれキット内の別々の組成物として、配列番号180に従うオリゴマー性化合物およびPTKインヒビターであるゲフィチニブを含む。
【0184】
1.7 方法
特定の実施形態では、本発明は、細胞内でHER3の発現および/または活性を阻害する方法を包含し、該方法は、細胞を、有効量のオリゴマー性化合物(またはそのコンジュゲート)および有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターと接触させ、それにより、細胞内でのHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)の発現および/または活性の阻害(例えば、ダウンレギュレーション)を及ぼすようにするステップを含む。特定の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)のmRNA発現を阻害する。他の実施形態では、HER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)のタンパク質発現を阻害する。また別の実施形態では、EGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼの活性を阻害する(例えば、ダウンレギュレーションする)。種々の実施形態において、細胞へのHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)の内在化を阻害する(例えば、ダウンレギュレーションする)。種々の実施形態において、細胞は哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。
【0185】
特定の実施形態において、接触はin vitroで行なわれる。他の実施形態では、接触は、本発明の組成物を哺乳動物に投与することによりin vivoで行なわれる。種々の実施形態において、本発明は、HER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現、および/または細胞へのHER3の内在化、ならびに細胞内でのHER2タンパク質および/もしくはmRNAの発現および/またはHER2チロシンキナーゼの活性、および/または細胞へのHER2の内在化を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害する方法を提供する。ヒトHER2 mRNAの配列は、配列番号199に示されている。またさらなる実施形態では、本発明は、細胞内でのHER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現、および/または細胞へのHER3の内在化、ならびに細胞内でのEGFRタンパク質および/もしくはmRNAの発現、および/またはEGFRチロシンキナーゼの活性、および/または細胞へのEGFRの内在化を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害する方法を提供する。ヒトEGFR mRNAの配列は、配列番号198に示されている。またさらなる実施形態では、本発明は、細胞内でのHER3、HER2およびEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現、ならびに/またはHER2およびEGFRチロシンキナーゼの活性、ならびに/または細胞へのHER3、HER2およびEGFRの内在化を(例えば、ダウンレギュレーションすることにより)阻害する方法を提供する。
【0186】
特定の実施形態では、本発明は、患者での疾患を治療する方法に関し、該方法は、それを必要とする患者に、有効量の少なくとも1種のオリゴマーまたはそのコンジュゲート、有効量の少なくとも1種の小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビターおよび製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物を投与するステップを含む。本明細書中で用いられる場合、「治療する」および「治療」との用語は、既存の疾患(例えば、本明細書中で以下で言及する疾患または障害)の治療、または疾患の防止、すなわち予防の両方を指す。
【0187】
種々の実施形態において、本発明は、患者での疾患の治療方法に関し、ここでオリゴマー(またはそのコンジュゲート)およびタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは異なる医薬組成物中にある。特定の実施形態では、2種類の組成物を同じ時点でまたは同時に投与することができる。他の実施形態では、2種類の組成物を逐次的にいずれかの順番で投与することができる。種々の実施形態において、オリゴヌクレオチド(またはそのコンジュゲート)を含む組成物およびタンパク質チロシンキナーゼインヒビターを含む組成物は、異なる投与スケジュールで、かつ異なる濃度で、異なる剤形で、かつ異なる投与経路により投与することができる。
【0188】
投与方法としては、限定するものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、非経口、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、経口、舌下、脳内、膣内、経皮、直腸内、吸入により、または局所的に、特に耳、鼻、眼または皮膚への投与が挙げられる。投与方法は、医師の裁量に任されている。
【0189】
例えば、吸入器もしくはネブライザ、およびエアゾール化剤を含む製剤を用いることにより、またはフルオロカーボンもしくは合成肺表面活性物質中の灌流を介して、肺内投与を用いることもできる。特定の実施形態では、オリゴマー(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターを、トリグリセリドなどの慣用の結合剤および賦形剤とともに坐薬として製剤化することができる。
【0190】
オリゴマー(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターを、注入(例えば、継続的な点滴またはボーラス注射)による非経口投与のために組み込む場合、非経口投与用製剤は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、エマルジョンの形態であり得、そのような製剤は、製薬上必要な添加剤、例えば、1種以上の安定化剤、懸濁剤、分散剤等をさらに含み得る。オリゴマー(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、注入可能な製剤として再構成するための粉末の形態であることもできる。
【0191】
他の実施形態では、オリゴマー(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、ベシクル、特にリポソーム中で送達することができる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);およびTreatら, Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer 317-327および353-365 (1989)を参照されたい)。
【0192】
また別の実施形態では、オリゴマー性化合物(もしくはそのコンジュゲート)および/またはタンパク質チロシンキナーゼインヒビターは、制御放出系または徐放系で送達することができる(例えば、Goodson, "Dental Applications" (pp. 115-138), Medical Applications of Controlled Release, Vol. 2, Applications and Evaluation, R.S. LangerおよびD.L. Wise編, CRC Press (1984); Langer, Science 249:1527-1533 (1990)を参照されたい)。種々の実施形態において、制御放出送達または徐放送達は、ポンプにより行なうことができ(Langer, Science 249:1527-1533 (1990); Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwaldら, Surgery 88:507 (1980); およびSaudekら, N. Engl. J. Med. 321:574 (1989))、またはポリマー性材料を用いることで行なうことができる(Medical Applications of Controlled Release (LangerおよびWise編, 1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance (SmolenおよびBall編, 1984); RangerおよびPeppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983); Levyら, Science 228:190 (1985); Duringら, Ann. Neurol. 25:351 (1989); およびHowardら, J. Neurosurg. 71:105 (1989)を参照されたい)。
【0193】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、細胞増殖を阻害するために有用である。種々の実施形態において、抗増殖効果は、未処理の細胞サンプルと比較して、細胞増殖において少なくとも10%の減少、少なくとも20%の減少、少なくとも30%の減少、少なくとも40%の減少、少なくとも50%の減少、少なくとも60%の減少、少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、または少なくとも90%の減少である。他の実施形態では、抗増殖効果は、オリゴマー性化合物または小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビターいずれか単独で処理(「単剤療法」)された細胞サンプルと比較して、細胞増殖において少なくとも10%の減少、少なくとも20%の減少、少なくとも30%の減少、少なくとも40%の減少、少なくとも50%の減少、少なくとも60%の減少、少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、または少なくとも90%の減少である。種々の実施形態において、細胞は癌細胞である。一部の実施形態では、癌細胞は、乳癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、および上皮癌細胞から選択される。
【0194】
したがって、本発明の組成物は、癌などの過剰増殖疾患を治療するのに有用である。一部の実施形態では、本発明のHER3標的化併用療法により治療する対象の癌は、リンパ腫および白血病(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫)、大腸癌、直腸癌、上皮癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、黒色腫、頭頸部癌、脳の癌、未知の原発部位の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、稀突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫、重鎖病、転移、または制御されていないか異常な細胞増殖により特徴づけられるいずれかの疾患もしくは障害からなる群より選択される。
【0195】
特定の実施形態では、疾患は、肺癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌、上皮癌、および胃癌からなる群より選択される癌である。
【0196】
特定の他の実施形態では、肺癌は非小細胞肺癌である。
【0197】
以下の実施例に示すように、本発明の併用療法レジメンは、例えば、ゲフィチニブまたは別のPTKインヒビターでの単剤療法に抵抗性の癌の治療を可能にする。
【0198】
種々の実施形態において、本発明による疾患の治療は、放射線療法、化学療法または免疫療法などの1種以上の他の抗癌治療と組み合わせることができる。
【0199】
特定の実施形態では、疾患は、HER3遺伝子(および/もしくはHER2遺伝子および/もしくはEGFR遺伝子)またはそのタンパク質産物がHER3に関連するかこれと相互作用する遺伝子中の突然変異を伴う。一部の実施形態では、突然変異した遺伝子は、チロシンキナーゼドメインに突然変異を有するタンパク質をコードする。種々の実施形態において、チロシンキナーゼドメイン中の突然変異は、小分子PTKインヒビターの結合部位および/またはATP結合部位におけるものである。したがって、種々の実施形態において、標的mRNAはHER3(および/またはHER2および/またはEGFR)配列の突然変異型であり、例えば、癌に関連するSNPなどの1以上の単一点突然変異を含む。
【0200】
特定の実施形態では、疾患は、HER3の突然変異型の異常なレベルと関連する。特定の実施形態では、疾患は、HER3の野生型の異常なレベルと関連する。本発明の一態様は、HER3の異常なレベルと関連する状態に罹患しているかまたは罹り易い患者の治療方法に関し、該方法は、治療上有効量のHER3を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲート、および有効量の小分子タンパク質チロシンキナーゼインヒビター(EGFRファミリーメンバーおよび/または1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するタンパク質のチロシンキナーゼドメインに結合する)を患者に投与するステップを含む。一部の実施形態では、オリゴマーは、1以上のLNA単位を含む。種々の実施形態において、PTKインヒビターは、ゲフィチニブである。
【0201】
別の実施形態では、本発明は、HER2の突然変異型の異常なレベル、もしくはHER2の野生型の異常なレベルと関連する状態に罹患しているかまたは罹り易い患者の治療方法に関し、該方法は、治療上有効量のHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲート、および有効量の小分子チロシンキナーゼインヒビター(1以上のEGFRファミリーメンバーおよび/もしくは1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するタンパク質のチロシンキナーゼドメインに結合する)を哺乳動物に投与するステップを含む。一部の実施形態では、オリゴマーは、1以上のLNA単位を含む。種々の実施形態において、PTKインヒビターは、ゲフィチニブである。
【0202】
さらに他の実施形態では、本発明は、突然変異型EGFRの異常なレベル、もしくは野生型EGFRの異常なレベルに関連する状態に罹患しているかまたは罹り易い患者の治療方法に関し、該方法は、治療上有効量のHER3(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲート、および有効量の小分子チロシンキナーゼインヒビター(EGFRファミリーメンバーおよび/または1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するタンパク質のチロシンキナーゼドメインに結合する)を患者に投与するステップを含む。一部の実施形態では、オリゴマーは1以上のLNA単位を含む。種々の実施形態では、PTKインヒビターは、ゲフィチニブである。
【0203】
種々の実施形態において、本明細書中に記載の本発明は、治療上有効量のHER3調節オリゴマー(および任意によりHER2およびEGFRのうちの1以上)を変化させるオリゴマーまたはそのコンジュゲート、および有効量のチロシンキナーゼインヒビター(EGFRファミリーメンバーおよび/または1以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するタンパク質のチロシンキナーゼドメインに結合する)を、そのような療法を必要とするヒトに投与するステップを含む。
【0204】
疾患の治療または予防のために有効な少なくとも1種のオリゴマーおよび少なくとも1種のPTKインヒビターの量は、標準的な臨床的技術により決定することができる。一般的には、用量範囲は、in vitroおよびin vivo動物モデルにおいて有効であると見出されたEC50に基づいて見積もることができる。用いられるべき正確な用量は、例えば、投与経路および疾患の重症度にも依存するであろうし、医師の判断および/または各患者の状況に従って決定することができる。他のそれらの例では、バリエーションは、とりわけ、治療対象の患者の体重および健康状態(例えば、肝機能および腎機能)、治療対象の苦痛(affliction)、症状の重症度、投与間隔の頻度、いずれかの有害副作用の存在、ならびに用いる特定のオリゴヌクレオチドおよびPTKインヒビターに依存して必ず生じるであろう。
【0205】
種々の実施形態において、オリゴマーの用量は、約0.01μg〜約1g/kg体重であり、1日1回以上、週1回、月1回もしくは年1回、または2〜10年に1回でさえ投与することができ、または数時間〜数ヵ月にわたる継続的な点滴により投与することができる。特定の実施形態では、PTKインヒビターの投与量は、約50mg〜約500mg/日である。種々の実施形態において、PTKインヒビターの投与量は、約100mg〜約400mg/日である。他の実施形態では、PTKインヒビターの投与量は、約150mg〜約300mg/日である。特定の実施形態では、投与の反復率は、体液または組織中での活性薬剤の測定された滞留時間および濃度に基づいて見積もることができる。成功した治療に続いて、患者は、疾患状態の再発を予防するためにHER3標的化併用療法を用いたメンテナンス療法を受けることができる。
【実施例】
【0206】
1.8 実施例
実施例1:ErbB-3(HER3)標的化併用療法は癌細胞増殖を低減させる
実験手順
1. 細胞培養
配列番号180に示される塩基配列および設計を有するオリゴマー(本明細書中、以下で「ON180」と称する)とゲフィチニブ(EGFRインヒビター)との併用効果を、数種類の腫瘍細胞株で調べた。細胞を以下に記載する培地中で培養し、95%湿度および5%CO2で37℃で維持した。細胞を週に2〜3回、定期的に継代した。
【0207】
15PC-3(Santaris Pharma):ヒト前立腺癌細胞株15PC-3を、DMEM(ATCC)+10%ウシ胎児血清(FBS)+2mM GlutamaxTMI+ゲンタマイシン(25μg/ml)中で培養した。
【0208】
A549(ATCC):ヒト肺癌細胞株A549を、F12K培地(ATCC)+10%FBS+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0209】
DU145(ATCC):ヒト前立腺癌細胞株DU145を、イーグル最小必須培地(ATCC)+10%FBS+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0210】
A431(ATCC):ヒト類表皮癌細胞株A431を、DMEM(ATCC)+10%ウシ胎児血清(FBS)+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0211】
SKBR-3(ATCC):ヒト乳癌細胞株SKBR3を、改変マッコイ5A培地(ATCC)+10%FBS+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0212】
H1993(ATCC):ヒト肺癌細胞株H1993を、RPMI-1640(ATCC)+10%FBS+2mM GlutamaxTMI+ペニシリン(100u/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)中で培養した。
【0213】
2. ON180およびゲフィチニブを用いた併用処理
細胞を、トランスフェクションビヒクルとしてカチオン性リポソーム製剤であるLipofectamineTM-2000(InvitrogenTM)を用いて、ON180または配列番号236に示されるスクランブルした塩基配列を有するLNA含有オリゴヌクレオチド(本明細書中、以下で「ONCONT」と称する)のいずれかで処理した。細胞を6ウェルプレート(NUNCTM)に播種し、50〜60%コンフルエントの時点で処理した。ON180による細胞のトランスフェクションは、無血清OptiMEM(登録商標)(GibcoTM)および5μg/mlのLipofectamineTM-2000を用いて、製造業者により記載されているように行なった。ONCONTは陰性対照として機能した。処理した細胞を、37℃で4時間インキュベートし、続いてOptiMEM(登録商標)で洗浄し、その後、通常の血清含有培地を添加した。
【0214】
オリゴヌクレオチド(ON180またはONCONT)でのトランスフェクションの24時間後に、細胞をゲフィチニブ(Amfinecom, Inc.)(市販のEGFRインヒビター薬)(最終濃度1μM〜40μM)で48時間処理した。続いて、処理した細胞を、それぞれMTSによる増殖アッセイおよびqRT-PCRによるErbB3 mRNA定量に供した(下記を参照されたい)。各実験を、少なくとも2回行なった。
【0215】
3. 細胞増殖アッセイ(MTSアッセイ)
CellTiter 96(登録商標) Aqueous One solution reagent(Promega、Cat#358B)を製造業者の使用説明書に従って用いることにより、増殖アッセイを行なった。簡潔に言えば、MTS化合物を6ウェルプレートの培養物に添加し、37℃、95%湿度および5%CO2で測定前1〜3時間、インキュベートした。続いて、MTS試薬を含む培地を96ウェルプレートに移した。ELISAリーダー(Molecular Devices)を用いて、490nmでの吸光度を、650nmの参照と共に測定した。アッセイのバックグラウンドは、培地のみを含むウェルから測定し、細胞を含むウェルからのシグナルから差し引いた。490nmでの吸光度(OD490nm)は、培養物中の生細胞数に比例する。
【0216】
4. qRT-PCRによるErbB3 mRNAレベルの検討
Qiagen RNeasy Plus Mini Kit(Cat# 74134)を用いて、上述の処理細胞から全RNAを抽出した。QuantiTect Probe RT-PCRキット(Cat#: 204443;Qiagen)を製造業者の使用説明書に従って用いることにより、ワンステップqRT-PCRを用いて、細胞中のErbB3 mRNAレベルを調べた。プライマーおよびプローブの配列は、以下の通りである:
ヒトErbB3 PCRプライマー/プローブセット:
プローブ:CATTGCCCAACCTCCGCGTG(配列番号250)
プライマー-1:TGCAGTGGATTCGAGAAGTG(配列番号251)
プライマー-2:GGCAAACTTCCCATCGTAGA(配列番号252)
ヒトGAPDHプライマー/プローブセット:
プローブ:ACTGGCGCTGCCAAGGCTGT(配列番号253)
プライマー-1:CCACCCAGAAGACTGTGGAT(配列番号254)
プライマー-2:TTCAGCTCAGGGATGACCTT(配列番号255)。
【0217】
qRT-PCRは、120ngの全RNAサンプルを用いて、Applied Biosystems 7500 Fast Real-Time PCR Systemで行なった。GAPDH mRNAは、内部対照として機能した。
【0218】
結果
A549細胞は、ゲフィチニブに抵抗性である。この細胞株では、40μMでゲフィチニブ単独では増殖に影響しなかった(図1A)。ON180単独で、ErbB3 mRNA産生の発現(IC50<2nM;図1C)および細胞増殖(IC50<5nM)(図1A、1B)を強力に阻害した。ゲフィチニブと組み合わせた2nM ON180での処理は、A549細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に強化した(図1A、1B)。図1Bに実証されているように、40μMゲフィチニブと2nM ON180との組み合わせは、40μMゲフィチニブ単剤療法で処理したA549細胞と比較して、A549細胞の増殖率を約50%低下させた。
【0219】
H1993細胞は、ゲフィチニブに比較的反応性が低い(IC50=40nM)(図2A)。ON180単独で、ErbB3 mRNAの発現(図2C)および細胞増殖(IC50=約1nM)(図2A、2B)を強力に阻害した。1nM ON180とゲフィチニブとの組み合わせでの処理は、H1993細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を強化した(図2A、2B)。図2Bに実証されているように、40μMゲフィチニブと1nM ON180との組み合わせは、40μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、H1993細胞の増殖率を50%超低下させた。
【0220】
15PC3細胞は、ゲフィチニブに抵抗性である。この細胞株では、ゲフィチニブは20μMで増殖に影響しなかった(図3A)。ON180単独で、ErbB3 mRNA(図3C)および細胞増殖(IC50<2nM)(図3A、3B)を強力に阻害した。1nM ON180と20μMゲフィチニブとの組み合わせでの15PC3細胞の処理は、20μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、15PC3細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に(すなわち、ほとんど70%)強化した(図3A、3B)。
【0221】
DU145細胞は、ゲフィチニブに抵抗性である。この細胞株では、ゲフィチニブは40μMで増殖に影響しなかった(図4A)。ON180単独で、ErbB3 mRNAの発現(図4C)および細胞増殖(IC50<5nM)(図4A、4B)を効果的に阻害した。1nM ON180と40μMゲフィチニブとの組み合わせでのDU145細胞の処理は、40μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、DU145細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に(すなわち、約40%)強化した(図4A、4B)。
【0222】
SKBR3細胞は、ゲフィチニブに感受性である(図5A)。ON180単独へのSKBR3細胞の曝露は、ErbB3 mRNAの発現(図5C)および細胞増殖(IC50<5nM)(図5A、5B)を効果的に阻害した。1nM ON180と20μMゲフィチニブとの組み合わせでのこれらの腫瘍細胞の処理は、20μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、SKBR3細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に(すなわち、50%超)強化した(図5A、5B)。
【0223】
A431細胞は、ゲフィチニブに感受性である(図6A)。ON180単独へのこれら腫瘍細胞の曝露は、ErbB3 mRNA(図6C)および細胞増殖(IC50<1nM)(図6A、6B)を効果的に阻害した。1nM ON180と40μMゲフィチニブとの組み合わせでのA431細胞の処理は、20μMゲフィチニブ単剤療法での処理と比較して、A431細胞に対するゲフィチニブの抗増殖効果を著明に(すなわち、約50%)強化した(図6A、6B)。
【0224】
結論
オリゴマー性化合物ON180は、6種類の試験した癌細胞株(A549、H1993、15PC3、DU145、A431およびSKBR3)で、ErbB3 mRNAの発現および細胞増殖を強力に阻害した。細胞株のうち2種類(SKBR3およびA431)は、ゲフィチニブに感受性であり、4種類(A549、H1993、15PC3およびDU145)は、PTKインヒビターへの感受性が低いか、抵抗性である。それにもかかわらず、ON180とゲフィチニブとの組み合わせでの処理の細胞増殖に対する効果は、6種類の試験した腫瘍細胞株の全てで観察された。ON180処理は、低い濃度(1〜5nM)で、ゲフィチニブに抵抗性の腫瘍細胞(A549、H1993、DU145および15PC3)の感受性を増強させた。
【0225】
本出願で引用した全ての刊行物、特許、特許出願および他の文献は、それぞれ個々の刊行物、特許、特許出願または他の文献が全ての目的のために参照により組み入れられると個別に示されているのと同程度に、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み入れられる。
【0226】
種々の具体的な実施形態を例示し、説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(a.)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーであって、
5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169);および
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなる群より選択される化合物中に存在する、少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一である、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログである、
上記オリゴマー;および
(b.)EGFR(HER1)のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
の、哺乳動物における癌の治療のための組み合わせでの使用。
【請求項2】
EGFR(HER1)のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブおよびカネルチニブからなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
EGFR(HER1)のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
第1領域の配列が、配列番号169または180中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列と同一である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記オリゴマーの第1領域が、10〜18個の連続するモノマーからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記オリゴマーの第1領域が、16個の連続するモノマーからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
各ヌクレオシドアナログが、LNAモノマー、2’-O-アルキル-リボース糖を含有するモノマー、2’-O-メチル-リボース糖を含有するモノマー、2’-アミノデオキシリボース糖を含有するモノマー、および2’フルオロ-デオキシリボース糖を含有するモノマーからなる群より独立に選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
ヌクレオシドアナログがLNAモノマーである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
オリゴマーが、
5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169);および
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
オリゴマーが、
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
癌が、肺癌、前立腺癌、乳癌、上皮癌および類表皮癌からなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
癌が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、大腸癌、直腸癌、上皮癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、黒色腫、頭頸部癌、脳の癌、未知の原発部位の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、稀突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫からなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
以下の成分:
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記オリゴマー;
(b)タンパク質チロシンキナーゼインヒビター;および
(c)製薬上許容される賦形剤
を含む医薬組成物。
【請求項15】
前記オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号1〜140および169〜234中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号1、54、200または211中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号169または180中に存在する少なくとも10個の連続したモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、カネルチニブ、バンデタニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、AG-494、RG-13022、RG-14620、BIBW 2992、チルホスチンAG-825、チルホスチン9、チルホスチン23、チルホスチン25、チルホスチン46、チルホスチン47、チルホスチン53、ブテイン、クルクミン、AG-1478、AG-879、シクロプロパンカルボン酸-(3-(6-(3-トリフルオロメチル-フェニルアミノ)-ピリミジン-4-イルアミノ)-フェニル)-アミド、N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N2-(1-メチルピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、2HCl(CAS 196612-93-8)、4-(4-ベンジルオキシアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン、N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル)2-ブチナミド(CAS 881001-19-0)、EKB-569、HKI-272、およびHKI-357からなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブおよびソラフェニブからなる群より選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
第1領域中の前記少なくとも1個のモノマーが、LNAモノマー、2’-O-アルキル-リボース糖を含有するモノマー、2’-O-メチル-リボース糖を含有するモノマー、2’-アミノ-デオキシリボース糖を含有するモノマー、および2’フルオロ-デオキシリボース糖を含有するモノマーからなる群より選択されるヌクレオシドアナログである、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
第1領域中の前記少なくとも1個のモノマーがLNAモノマーである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
以下の成分:
(a)配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなるオリゴマー;
(b)ゲフィチニブ;および
(c)製薬上許容される賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項23】
以下の成分:
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーのコンジュゲートであって、
該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記コンジュゲート;
(b)タンパク質チロシンキナーゼインヒビター;および
(c)製薬上許容される賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記コンジュゲートが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなるオリゴマーのコンジュゲートであり;かつ
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
哺乳動物細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞を、
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記オリゴマー;および
(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項26】
前記オリゴマーが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなり;かつ
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
同じタイプの未処理の細胞の増殖と比較して、前記細胞の増殖が少なくとも約30%阻害される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
細胞が、前立腺癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞および上皮癌細胞からなる群より選択される癌細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞を、
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーの有効量のコンジュゲートであって、
該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記コンジュゲート;および
(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項30】
前記コンジュゲートが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなるオリゴマーのコンジュゲートであり、
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物の身体内の細胞の増殖を阻害する方法であって、哺乳動物組織を、
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記オリゴマー;および
(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項32】
前記オリゴマーが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなり;かつ
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、該哺乳動物に、
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記オリゴマー;および
(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項34】
前記オリゴマーが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなり;かつ
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
癌が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、大腸癌、直腸癌、上皮癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、黒色腫、頭頸部癌、脳の癌、未知の原発部位の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、稀突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記オリゴマーおよび前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを別々に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記オリゴマーおよび前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを併用してまたは同時に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記オリゴマーおよび前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを逐次的に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記オリゴマーおよび前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、経口投与に好適な医薬剤形である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記オリゴマーが静脈内投与に好適な医薬剤形であり、前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが経口投与に好適な医薬剤形である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
癌が、肺癌、前立腺癌、乳癌および上皮癌からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
哺乳動物がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
医薬の製造のための、HER3を標的とするLNAオリゴマーの使用であって、該医薬がタンパク質チロシンキナーゼインヒビターと組み合わせて癌の治療で使用するためのものである、上記使用。
【請求項44】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、カネルチニブ、バンデタニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、AG-494、RG-13022、RG-14620、BIBW 2992、チルホスチンAG-825、チルホスチン9、チルホスチン23、チルホスチン25、チルホスチン46、チルホスチン47、チルホスチン53、ブテイン、クルクミン、AG-1478、AG-879、シクロプロパンカルボン酸-(3-(6-(3-トリフルオロメチル-フェニルアミノ)-ピリミジン-4-イルアミノ)-フェニル)-アミド、N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N2-(1-メチルピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、2HCl(CAS 196612-93-8)、4-(4-ベンジルオキシアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン、N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル)2-ブチナミド(CAS 881001-19-0)、EKB-569、HKI-272、およびHKI-357からなる群より選択される、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブおよびソラフェニブからなる群より選択される、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
HER3を標的とするLNAオリゴマーを含む医薬であって、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターとの組み合わせて癌の治療で使用するための、上記医薬。
【請求項48】
タンパク質チロシンキナーゼおよびHER3を標的とするLNAオリゴマーを含む、癌の治療での使用のためのキット。
【請求項1】
以下:
(a.)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーであって、
5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169);および
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなる群より選択される化合物中に存在する、少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一である、少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログである、
上記オリゴマー;および
(b.)EGFR(HER1)のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
の、哺乳動物における癌の治療のための組み合わせでの使用。
【請求項2】
EGFR(HER1)のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブおよびカネルチニブからなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
EGFR(HER1)のタンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
第1領域の配列が、配列番号169または180中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列と同一である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記オリゴマーの第1領域が、10〜18個の連続するモノマーからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記オリゴマーの第1領域が、16個の連続するモノマーからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
各ヌクレオシドアナログが、LNAモノマー、2’-O-アルキル-リボース糖を含有するモノマー、2’-O-メチル-リボース糖を含有するモノマー、2’-アミノデオキシリボース糖を含有するモノマー、および2’フルオロ-デオキシリボース糖を含有するモノマーからなる群より独立に選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
ヌクレオシドアナログがLNAモノマーである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
オリゴマーが、
5'-GsMeCsTscscsasgsascsastscsasMeCsTsMeC-3'(配列番号169);および
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
オリゴマーが、
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
癌が、肺癌、前立腺癌、乳癌、上皮癌および類表皮癌からなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
癌が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、大腸癌、直腸癌、上皮癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、黒色腫、頭頸部癌、脳の癌、未知の原発部位の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、稀突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫からなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
以下の成分:
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記オリゴマー;
(b)タンパク質チロシンキナーゼインヒビター;および
(c)製薬上許容される賦形剤
を含む医薬組成物。
【請求項15】
前記オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号1〜140および169〜234中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号1、54、200または211中に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号169または180中に存在する少なくとも10個の連続したモノマーの領域の配列に対して少なくとも80%同一である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、カネルチニブ、バンデタニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、AG-494、RG-13022、RG-14620、BIBW 2992、チルホスチンAG-825、チルホスチン9、チルホスチン23、チルホスチン25、チルホスチン46、チルホスチン47、チルホスチン53、ブテイン、クルクミン、AG-1478、AG-879、シクロプロパンカルボン酸-(3-(6-(3-トリフルオロメチル-フェニルアミノ)-ピリミジン-4-イルアミノ)-フェニル)-アミド、N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N2-(1-メチルピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、2HCl(CAS 196612-93-8)、4-(4-ベンジルオキシアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン、N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル)2-ブチナミド(CAS 881001-19-0)、EKB-569、HKI-272、およびHKI-357からなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブおよびソラフェニブからなる群より選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
第1領域中の前記少なくとも1個のモノマーが、LNAモノマー、2’-O-アルキル-リボース糖を含有するモノマー、2’-O-メチル-リボース糖を含有するモノマー、2’-アミノ-デオキシリボース糖を含有するモノマー、および2’フルオロ-デオキシリボース糖を含有するモノマーからなる群より選択されるヌクレオシドアナログである、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
第1領域中の前記少なくとも1個のモノマーがLNAモノマーである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
以下の成分:
(a)配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなるオリゴマー;
(b)ゲフィチニブ;および
(c)製薬上許容される賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項23】
以下の成分:
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーのコンジュゲートであって、
該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記コンジュゲート;
(b)タンパク質チロシンキナーゼインヒビター;および
(c)製薬上許容される賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記コンジュゲートが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなるオリゴマーのコンジュゲートであり;かつ
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
哺乳動物細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞を、
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記オリゴマー;および
(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項26】
前記オリゴマーが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなり;かつ
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
同じタイプの未処理の細胞の増殖と比較して、前記細胞の増殖が少なくとも約30%阻害される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
細胞が、前立腺癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞および上皮癌細胞からなる群より選択される癌細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞を、
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーの有効量のコンジュゲートであって、
該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記コンジュゲート;および
(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項30】
前記コンジュゲートが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなるオリゴマーのコンジュゲートであり、
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物の身体内の細胞の増殖を阻害する方法であって、哺乳動物組織を、
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記オリゴマー;および
(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項32】
前記オリゴマーが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなり;かつ
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、該哺乳動物に、
(a)隣接するモノマー同士がリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合されている10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーであって、
少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、
該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシドアナログであり、
該第1領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最もよくアライメントする標的領域の逆相補体に対して少なくとも80%同一である、
上記オリゴマー;および
(b)有効量のタンパク質チロシンキナーゼインヒビター
を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項34】
前記オリゴマーが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3'(配列番号180)
[配列中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付き「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含有するβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す]
からなり;かつ
前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
癌が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、大腸癌、直腸癌、上皮癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、黒色腫、頭頸部癌、脳の癌、未知の原発部位の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、稀突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記オリゴマーおよび前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを別々に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記オリゴマーおよび前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを併用してまたは同時に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記オリゴマーおよび前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターを逐次的に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記オリゴマーおよび前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、経口投与に好適な医薬剤形である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記オリゴマーが静脈内投与に好適な医薬剤形であり、前記タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが経口投与に好適な医薬剤形である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
癌が、肺癌、前立腺癌、乳癌および上皮癌からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
哺乳動物がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
医薬の製造のための、HER3を標的とするLNAオリゴマーの使用であって、該医薬がタンパク質チロシンキナーゼインヒビターと組み合わせて癌の治療で使用するためのものである、上記使用。
【請求項44】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、カネルチニブ、バンデタニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、AG-494、RG-13022、RG-14620、BIBW 2992、チルホスチンAG-825、チルホスチン9、チルホスチン23、チルホスチン25、チルホスチン46、チルホスチン47、チルホスチン53、ブテイン、クルクミン、AG-1478、AG-879、シクロプロパンカルボン酸-(3-(6-(3-トリフルオロメチル-フェニルアミノ)-ピリミジン-4-イルアミノ)-フェニル)-アミド、N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N2-(1-メチルピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、2HCl(CAS 196612-93-8)、4-(4-ベンジルオキシアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン、N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル)2-ブチナミド(CAS 881001-19-0)、EKB-569、HKI-272、およびHKI-357からなる群より選択される、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブおよびソラフェニブからなる群より選択される、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
タンパク質チロシンキナーゼインヒビターがゲフィチニブである、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
HER3を標的とするLNAオリゴマーを含む医薬であって、タンパク質チロシンキナーゼインヒビターとの組み合わせて癌の治療で使用するための、上記医薬。
【請求項48】
タンパク質チロシンキナーゼおよびHER3を標的とするLNAオリゴマーを含む、癌の治療での使用のためのキット。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【公表番号】特表2012−508244(P2012−508244A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535663(P2011−535663)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/063357
【国際公開番号】WO2010/054051
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【出願人】(510144465)サンタリス ファーマ アー/エス (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/063357
【国際公開番号】WO2010/054051
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【出願人】(510144465)サンタリス ファーマ アー/エス (6)
【Fターム(参考)】
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