説明

GLP−1アゴニストのコンジュゲート及びその使用

本発明は、式A-X-Bを有する化合物〔式中、Aは、血液脳関門を通過した該化合物の輸送又は特定の細胞型内への輸送を増強することができるペプチドベクターであり、Xはリンカーであり、BはGLP-1アゴニスト(例えばexendin-4又はexendin-4類似体)である。〕を特徴とする。本発明の化合物は、GLP-1活性の増大が望まれる任意の疾患、例えば肥満及び糖尿病などの代謝疾患の治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドベクターに結合したGLP-1アゴニスト(例えば、exendin-4)を含む化合物及びその使用に関する。かかる使用は、糖尿病及び肥満などの代謝障害の治療、予防、及び軽減を包含する。
【背景技術】
【0002】
血糖値は食後に上昇するため、インスリンが分泌され、末梢組織(骨格筋及び脂肪)の細胞を刺激して、エネルギー源として血液からグルコースを能動的に取り込む。インスリン分泌障害又は作用障害の結果としてグルコース恒常性が失われることにより、典型的には糖尿病のような代謝障害が起こるが、これは、肥満と同時誘発されたり、又は肥満によってさらに悪化したりする可能性がある。これらの病状は往々にして致死的であることから、血流からの適切なグルコースクリアランスを回復する戦略が求められる。
【0003】
糖尿病は、膵臓に対する様々な損傷〔例えば、膵炎、腫瘍、コルチコステロイド若しくはペンタミジンのような特定の薬物の投与、鉄過負荷(例:血色症)、後天性又は遺伝性内分泌病、及び外科切除〕を引き起こすが、糖尿病の最も一般的な病態は、典型的に、インスリンシグナル伝達系の一次性障害から起こる。糖尿病には大きく分けて2つの種類、すなわち1型糖尿病〔インスリン依存型糖尿病(IDDM)としても知られる〕と2型糖尿病〔インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)としても知られる〕があり、両者は、発症機序は異なるにもかかわらず、どちらも共通の長期合併症を有する。
【0004】
1型糖尿病は、一次性糖尿病の全症例の約10%を占め、膵臓のインスリン産生β細胞の広範な破壊を特徴とする臓器特異的自己免疫疾患である。結果として起こるインスリン産生の低下は、必然的にグルコース代謝の調節解除を招く。インスリンの投与は、上記の病状を患う患者に有意な利益をもたらすが、インスリンの短い血清半減期は、正常血糖を維持する上での大きな障害となっている。これに代わる治療法として膵島移植があるが、この戦略で得られる成果は限られたものであった。
【0005】
2型糖尿病は、より大きな割合の糖尿病人口が罹患しており、インスリン分泌の調節解除及び/又はインスリンに対する末梢組織の応答の低下、すなわち、インスリン抵抗性を特徴とする。2型糖尿病の病因は依然として不明であるが、疫学研究から、この糖尿病の病態は、多数の遺伝子的欠陥又は多型が重なって起こることが示唆されており、これらの各々がそれ自体の素因リスクを賦与するものであり、環境因子によって改変されるが、このような因子として、過体重、食事、運動不足、薬物、並びに過剰アルコール消費がある。2型糖尿病の管理には多様な治療法が利用可能であるが、これらの方法は、体を衰弱させる様々な副作用を伴う。従って、2型糖尿病に罹患した又はその危険性があると診断された患者は、多くの場合、より健康的なライフスタイル、例えば、減量、食事の改善、運動、及び適度なアルコール摂取を実施するように助言される。しかし、こうしたライフスタイルの変更は、糖尿病によって引き起こされた血管及び器官の損傷を逆転するのに十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糖尿病などの代謝障害の管理のために現在利用可能な戦略が最適に達していないとすると、より有効で、しかも前述のような体を衰弱させる副作用を伴わない治療法が早急に求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、GLP-1アゴニスト(例えば、exendin-4)及びペプチドベクターを含む化合物を開発した。これらの化合物は、糖尿病や肥満などの代謝障害を治療するのに有用である。上記ペプチドベクターは、GLP-1アゴニストを、血液脳関門(BBB)を通過して輸送する、又は特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、膵臓、及び筋肉)内に輸送することができる。上記コンジュゲートは、BBBを通過してターゲティングする、又は特定の細胞型にターゲティングするため、非コンジュゲートGLP-1アゴニストと比較して、低い用量又は低い頻度の投薬を用いて治療効果を達成することができることから、副作用の重症度若しくは出現率を低減する、及び/又は効果を高めることができる。該コンジュゲートはまた、高い安定性、改善された薬物動態、又はin vivoでの分解低減も発揮しうる。
【0008】
従って、第一の態様において、本発明は、以下の式を有する化合物:
A-X-B
〔式中、Aは、血液脳関門(BBB)を通過して輸送することができる、又は特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、膵臓、及び筋肉)内に輸送することができるペプチドベクターであり、Xはリンカーであり、BはGLP-1アゴニスト(例えば、ペプチドアゴニストなど、本明細書に記載される任意のもの)である。〕
を特徴とする。BBBを通過する輸送、又は上記細胞内への輸送は、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、200%、500%、750%、1,000%、1,500%、2,000%、5,000%、又は10,000%増大しうる。上記化合物は実質的に純粋でよい。該化合物は、製薬上許容される担体(例えば、本明細書に記載のいずれか)と一緒に製剤化してもよい。
【0009】
別の態様では、本発明は、化合物A-X-Bを製造する方法を特徴とする。一実施形態では、本方法は、ペプチドベクター(A)をリンカー(X)とコンジュゲートさせるステップと、ペプチドベクター−リンカー(A-X)をGLP-1アゴニスト(B)とコンジュゲートさせることにより、化合物A-X-Bを形成するステップを含む。別の実施形態では、本方法は、GLP-1アゴニスト(B)をリンカー(X)とコンジュゲートさせるステップと、GLP-1アゴニスト/リンカー(X-B)をペプチドベクター(A)とコンジュゲートさせることにより、化合物A-X-Bを形成するステップを含む。別の実施形態では、本方法は、ペプチドベクター(A)をGLP-1アゴニスト(B)(A又はBのいずれかは、場合によりリンカー(X)を含んでもよい)とコンジュゲートさせることにより、化合物A-X-Bを形成するステップを含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、化合物A-X-Bをコードする核酸分子であって、該化合物がポリペプチドである、上記核酸分子を特徴とする。該核酸分子は、プロモーターと機能的に連結させてもよいし、核酸ベクターの一部であってもよい。該ベクターは、細胞内にあってもよく、こうした細胞として、例えば原核細胞(例:細菌細胞)又は真核細胞(例:酵母若しくは哺乳動物細胞、例えばヒト細胞)がある。
【0011】
別の態様では、本発明は、式A-X-Bの化合物を製造する方法であって、A-X-Bがポリペプチドである、上記方法を特徴とする。一実施形態では、本方法は、細胞において前記態様の核酸ベクターを発現させることにより、ポリペプチドを産生させるステップと、該ポリペプチドを精製するステップを含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、代謝障害を有する被験体を(例えば予防的に)治療する方法を特徴とする。本方法は、上記障害を治療するのに十分な量で第一態様の化合物を投与することを含む。代謝障害は、糖尿病(例えば1型若しくは2型)、肥満、肥満の結果としての糖尿病、高血糖、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン抵抗性、血糖能障害(IGT)、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管系疾患、又は高血圧であってよい。
【0013】
別の態様では、本発明は、被験体による食物摂取を減少させる方法、又は被験体の体重を減少させる方法を特徴とする。本方法は、食物摂取を減少させる、又は体重を減少させるのに十分な量で第一態様の化合物を被験体に投与することを含む。被験体は、過体重、肥満、又は過食症であってよい。
【0014】
別の態様では、本発明は、不安神経症、運動障害、攻撃性、精神病、発作、パニック発作、ヒステリー、睡眠障害、アルツハイマー病、及びパーキンソン病からなる群より選択される障害を(例えば予防的に)治療する方法を特徴とする。本方法は、上記障害を治療又は予防するのに十分な量で第一態様の化合物を被験体に投与することを含む。
【0015】
本発明はまた、被験体においてニューロン新生を増大する方法を特徴とする。本方法は、第一態様の化合物を被験体に投与することを含む。被験体は、ニューロン新生を所望する者か、又はそれを必要とする者でよい。ある実施形態では、被験体は、中枢神経系の疾患又は障害、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、発作、ADD、及び神経精神症候群に罹患していてもよい。別の実施形態では、ニューロン新生の増大により、学習を改善する、又は神経保護を増強することができる。
【0016】
別の態様では、本発明は、有効量のGLP-1アゴニストを投与することにより、被験体において、肝臓幹細胞/前駆細胞を機能的膵細胞に変換するため;β細胞の劣化を防止して、β細胞の増殖を刺激するため;肥満を治療するため;食欲を抑制して、満腹を誘導するため;過敏性腸症候群を治療するため;心筋梗塞及び卒中に関連する罹患率及び/又は死亡率を低下させるため;Q波心筋梗塞の不在を特徴とする急性冠症候群を治療するため;術後の異化変化を軽減するため;冬眠心筋又は糖尿病性心筋症を治療するため;ノルエピネフリンの血漿血中レベルを抑制するため;尿中ナトリウム排泄を増大し、尿中カリウム濃度を低下させるため;毒性循環血液量過多に関連する症状又は障害、例えば腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、及び高血圧を治療するため;変力応答を誘導して、心筋収縮能を増大するため;多嚢胞性卵巣症候群を治療するため;呼吸窮迫を治療するため;非消化経路により、すなわち静脈内、皮下、筋内、腹腔内経路により、又は他の注射若しくは注入により、栄養を改善するため;腎症を治療するため;左心室収縮機能障害(例えば左心室駆出分画率の異常を伴うもの)を治療するため;幽門洞十二指腸運動を阻害するため(例えば、下痢、術後ダンピング症候群及び過敏性腸症候群などの胃腸障害を治療又は予防するため、並びに内視鏡処置における前投与として);重症疾患多発ニューロパシー(CIPN)及び全身性炎症反応症候群(SIRS)を治療するため;トリグリセリドレベルを調節して、脂質異常症を治療するため;虚血後の血流の再かん流に起因する器官組織損傷を治療するため;あるいは冠動脈性心疾患リスク因子(CHDRF)症候群を治療するための方法を特徴とする。
【0017】
別の態様では、本発明は、被験体においてGLP-1受容体活性を増大する方法を特徴とする。本方法は、GLP-1受容体活性を増大するのに十分な量で第一態様の化合物を被験体に投与することを含む。本方法は、被験体においてグルコースレベルを低下させることができる。
【0018】
被験体への化合物の投与を含む上記方法のいずれにおいても、十分な量は、ペプチドベクターとコンジュゲートされていない場合のGLP-1アゴニストの当量に要求される量の90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%又は0.1%未満であってもよい。上記の十分な量は、ペプチドベクターとコンジュゲートされていない場合のGLP-1アゴニストの有効量の投与と比較して、副作用(例えば嘔吐、吐気、又は下痢)を軽減しうる量である。被験体は、ヒトなどの哺乳動物であってよい。
【0019】
前記態様のいずれにおいても、ペプチドベクターは、表1に示す配列、又はその断片のいずれかと実質的に同一のポリペプチドとすることができる。ある実施形態では、上記ベクターポリペプチドは、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、Angiopep-3(配列番号107)、Angiopep-4a(配列番号108)、Angiopep-4b(配列番号109)、Angiopep-5(配列番号110)、Angiopep-6(配列番号111)、又はAngiopep-7(配列番号112)の配列を有する。ペプチドベクター又はコンジュゲートは、特定の細胞型(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、及び筋肉のうち任意の1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つ)内に効率的に輸送される、又は哺乳動物BBBを効率的に通過することができる(例えばAngiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、及びAngiopep-6)。別の実施形態では、ペプチドベクター又はコンジュゲートは、特定の細胞型(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、及び筋肉のうち任意の1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)に侵入することができるが、BBBを効率的に通過しない(例えばAngiopep-7を含むコンジュゲート)。ペプチドベクターは、任意の長さ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、35、50、75、100、200、又は500アミノ酸の長さでもよいし、又はこれら数値の間の任意の範囲の長さであってもよい。ある実施形態では、ペプチドベクターは10〜50アミノ酸の長さである。ポリペプチドは、遺伝子組換え技術又は化学合成によって生産することができる。
【表1】

【0020】

【0021】

【0022】

【0023】
前記態様のいずれにおいても、ポリペプチドベクターは、以下の式を有するアミノ酸配列を含む:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
〔式中、X1〜X19の各々(例えばX1〜X6、X8、X9、X11〜X14、及びX16〜X19)は独立して、任意のアミノ酸(例えばAla、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValなどの天然に存在するアミノ酸)であるか又は存在せず、X1、X10及びX15のうち少なくとも1つ(例えば2つ若しくは3つ)はアルギニンである。〕
いくつかの実施形態では、X7は、Ser若しくはCysであるか;又はX10及びX15はそれぞれ独立して、Arg若しくはLysである。いくつかの実施形態では、X1からX19までのすべての残基は、配列番号1〜105及び107〜116(例えばAngiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、及びAngiopep-7)のうち任意の1つのアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一のものである。いくつかの実施形態では、アミノ酸X1〜X19の少なくとも1つ(例えば2つ、3つ、4つ又は5つ)はArgである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、該ポリペプチドのN末端、該ポリペプチドのC末端、又はその両方に1個以上の付加システイン残基を有する。
【0024】
前記態様のいずれか任意の態様において、GLP-1アゴニストは、ペプチドアゴニストであってもよい。GLP-1アゴニストは、GLP-1、exendin-4、exendin-3、又はその類似体若しくは断片(例えば本明細書に記載する任意の類似体若しくは断片)でよい。特定の実施形態では、GLP-1アゴニストは、[Lys39]exendin-4及び[Cys32]exendin-4からなる群より選択されるexendin-4類似体である。
【0025】
前記態様のいずれかのある実施形態では、ペプチドベクター又はペプチドGLP-1アゴニストは、改変(修飾)されている(例えば本明細書に記載のように)。ポリペプチドは、アミド化されていても、アセチル化されていてもよく、又はその両方であってもよい。ポリペプチドに対するこのような改変は、ポリペプチドのアミノ又はカルボキシ末端で施すことができる。ポリペプチドはまた、本明細書に記載するポリペプチドのいずれか任意のペプチド模倣物(例えば本明細書に記載されているもの)を含んでいてもよい。ポリペプチドは、多量体形態、例えば、二量体形態(例えば、システイン残基を介したジスルフィド結合により形成されるもの)であってもよい。
【0026】
ある実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12個の置換)、挿入、又は欠失を含む、本明細書に記載されるアミノ酸配列を有する。ポリペプチドは、例えば1〜12、1〜10、1〜5、又は1〜3個のアミノ酸置換、例えば1〜10(例:1〜9、8、7、6、5、4、3、2)個のアミノ酸置換を含んでいてもよい。アミノ酸置換は、保存的又は非保存的のいずれであってもよい。例えば、ペプチドベクターは、配列番号1、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、及びAngiopep-7の任意のアミノ酸配列の1位、10位、及び15位に対応する位置の1つ、2つ又は3つにアルギニンを有していてもよい。GLP-1アゴニストは、任意の位置にシステイン若しくはリジン置換又は付加(例えばN末端若しくはC末端位置でのリジン置換、又はexendin-4配列のアミノ酸32に対応する位置でのシステイン置換)を有していてもよい。
【0027】
前記態様のいずれかにおいて、本化合物は、配列番号1〜105及び107〜116のいずれかを含む又はこれらのいずれかからなるポリペプチド(例えばAngiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、及びAngiopep-7)を特に除外してもよい。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチド及びコンジュゲートは、配列番号102、103、104及び105のポリペプチドを除外する。
【0028】
前記態様の任意のいずれかにおいて、リンカー(X)は、当分野で公知の、又は本明細書に記載する任意のリンカーでよい。特定の実施形態では、リンカーは、共有結合(例えば、ペプチド結合)、化学結合剤(例えば、本明細書に記載されるもの)、アミノ酸又はペプチド(例えば、2、3、4、5、8、10個、又は11個以上のアミノ酸)である。ある実施形態では、リンカーは、以下の式を有する:
【化1】

【0029】
〔式中、nは2〜15の整数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15)であり;YはA上のチオールで、かつZはB上の一級アミンであるか、又はYはB上のチオールで、かつZはA上の一級アミノである〕。
【0030】
「GLP-1アゴニスト」とは、GLP-1受容体(例えば、哺乳動物又はヒトGLP-1受容体)を活性化することができる任意の化合物を意味する。アゴニストは、ペプチド又は小分子化合物(例えば、本明細書に記載するものの任意のいずれか)を含むことができる。特定の化合物がGLP-1アゴニストであるかどうかを決定するためのアッセイは、当分野において公知であり、本明細書に記載されている。
【0031】
「ペプチドベクター」とは、特定の細胞型(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、若しくは筋肉)内に輸送することができる、又はBBBを通過して輸送することができるポリペプチド又はポリペプチド模倣物などの化合物又は分子を意味する。ベクターは、薬剤(例えばGLP-1アゴニスト)に(共有若しくは非共有)結合させても、又はコンジュゲートさせてもよく、これによって、薬剤を特定の細胞型内に輸送する、又はBBBを通過して輸送することができる。ある実施形態では、ベクターは、癌細胞又は脳内皮細胞上に存在する受容体と結合させてもよく、これによって、該ベクターを、トランスサイトーシスにより癌細胞内に輸送する、又はBBBを通過して輸送することができる。ベクターは、細胞又はBBB統合性に影響することなく、高度の経内皮輸送を達成することができる分子でよい。ベクターは、ポリペプチド又はペプチド模倣物であってよく、天然に存在するものでもよいし、又は化学合成若しくは遺伝子組換え技術によって生産されたものでもよい。
【0032】
「実質的に同一の」とは、参照アミノ酸又は核酸配列と少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%又は99%の同一性を示すポリペプチド又は核酸を意味する。ポリペプチドについては、比較配列の長さは、一般に、少なくとも4(例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50又は100)個のアミノ酸である。核酸については、比較配列の長さは、一般に少なくとも60個のヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも90個のヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも120個のヌクレオチド、又は全長ヌクレオチド配列である。本来のポリペプチドのアミノ酸と同一であるか又は類似している類似体のアミノ酸同士の間に、ギャップが存在しうることは理解すべきである。ギャップは、アミノ酸を全く含まなくてもよいし、本来のポリペプチドと同一ではない又は類似していない1個以上のアミノ酸を含んでいてもよい。本発明のベクター(ポリペプチド)の生物学的に活性の類似体は本明細書に含まれる。同一性の割合(%)は、デフォルトギャップ重みを用いて、例えば、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0のnアルゴリズムGAP、BESTFIT、又はFASTAにより決定することができる。
【0033】
被験体において疾患、障害又は病状を「治療(処置)する」とは、治療薬を被験体に投与することにより、疾患、障害又は病状の少なくとも1つの症状を軽減することを意味する。
【0034】
被験体において疾患、障害又は病状を「予防的に治療する」とは、治療薬を被験体に投与することにより、疾患、障害又は病状の出現の頻度を低下させる(例えば、予防する)、又は疾患、障害、若しくは病状の重症度を低下させることを意味する。
【0035】
代謝障害のために治療を受ける被験体は、医師がそのような病状を有すると診断した者である。診断は、本明細書に記載するものなど、任意の好適な手段により実施することができる。糖尿病又は肥満の発現を予防しようとする被験体は、上記の診断を受けていても、受けていなくてもよい。当業者であれば、本発明の被験体が標準的検査を受けた者であってもよいし、又は検査なしで、1以上の危険因子、例えば、家族の病歴、肥満、特定の民族性(例:アフリカ系アメリカ人及びヒスパニック系アメリカ人)、妊娠糖尿病又は体重9ポンド以上の新生児の分娩、高血圧、肥満又は糖尿病に罹患しやすい病的状態を有する者、高い血中トリグリセリド濃度、高い血中コレステロール濃度、分子マーカーの存在(例:自己抗体の存在)、及び年齢(45歳以上)などの存在により、高い危険性がある者として識別された者であってもよいことは理解されよう。個体は、その体重が、その身長に望ましい最大体重を20%(女性は25%)以上超過している場合に肥満とみなす。100ポンドを超える過体重である成人は、病的に肥満であると考えられる。肥満はまた、30 kg/m2を超えるボディマス指数(BMI)としても定義される。
【0036】
「代謝障害」とは、被験体の代謝の変化により起こる病的状態を意味する。このような障害は、グルコース恒常性の変化によって起こるものを含み、該変化は、例えば、高血糖を招く。本発明において、グルコースレベルの変化は、典型的に、健康な個体のレベルと比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の増大である。代謝障害としては、肥満及び糖尿病(例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、MODY、及び妊娠糖尿病)、飽満及び加齢による内分泌欠陥がある。
【0037】
「グルコースレベルを低下させる」とは、グルコースのレベルを、非処置の対照と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%低下させることを意味する。望ましくは、グルコースレベルを正常血糖値、すなわち150〜60 mg/dL、140〜70 mg/dL、130〜70 mg/dL、125〜80 mg/dL、好ましくは120〜80 mg/dLまで低下させる。上記のようなグルコースレベルの低下は、血液からのグルコースのクリアランスに関連する生物学的活性(例えばインスリン産生、分泌、又は作用の増大)のいずれか1つを増大することにより達成することができる。
【0038】
「被験体」とは、ヒト又は非ヒト動物(例:哺乳動物)を意味する。
【0039】
「GLP-1受容体活性を増大する」とは、標準的技術(例:cAMP活性化)を用いて測定される受容体活性化のレベルを、例えば非処置の対照と比較して、少なくとも%、20%、50%、75%、100%、200%、又は500%増大することを意味する。
【0040】
「当量」とは、非コンジュゲートGLP-1アゴニストと比較して、本発明の化合物中に同じモル量のGLP-1アゴニストを達成するのに必要な本発明の化合物の量を意味する。例えば1.0μgのexendin-4の当量は、本明細書に記載の約1.6μgの[Lys39-MHA]exendin-4/Angiopep-2-Cys-NH2コンジュゲートである。
【0041】
「BBBを通過して効率的に輸送される」ポリペプチドとは、少なくともAngiopep-6〔すなわち、参照により本明細書に組み入れられる2007年5月29日に出願された米国特許出願第11/807,597号に記載されたin situ脳かん流アッセイにおいてAngiopep-1(250 nM)より38.5%効率性が高い〕と同じくらい効率的にBBBを通過することができるポリペプチドを意味する。従って、「BBBを通過して効率的に輸送されない」ポリペプチドは、より低いレベルで脳へと輸送される(例えば、Angiopep-6より低い効率で輸送される)。
【0042】
「特定の細胞型に効率的に輸送される」ポリペプチド又は化合物とは、該ポリペプチド又は化合物が、対照物質より、又はコンジュゲートの場合には非コンジュゲート薬と比較して、少なくとも10%(例えば、25%、50%、100%、200%、500%、1,000%、5,000%、若しくは10,000%)高い程度で、(例えば、細胞内への輸送の増加、細胞からの排出の減少、又はその組合せのいずれかによって)その細胞型に蓄積することができることを意味する。このような活性は、国際出願公開WO 2007/009229号に詳細に記載されており、該文献は参照として本明細書に組み入れるものとする。
【0043】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本明細書に記載する実験に用いられるexendin-4及びexendin-4類似体を示す表及び概略図である。
【図2】Cys-AngioPep-2、Angiopep-2-Cys-NH2、及びAngiopep-1を[Lys39-MHA] exendin-4とコンジュゲートさせるのに用いられる合成スキームの概略図である。
【図3】[Cys32] exendin-4を(マレイミドプロピオン酸(MPA))-Angiopep-2、(マレイミドヘキサン酸(MHA))-Angiopep-2、及び(マレイミドウンデカン酸(MUA))-Angiopep-2とコンジュゲートさせるのに用いられる合成スキームの概略図である。
【図4】BBBを通過するexendin-4(左)及びexendin-4/Angiopep-2(N末端、中央;C末端、右)の輸送を示すグラフである。脳内の総量と、毛細血管及び実質内の量を共に示す。
【図5】対照、exendin-4、又は[Lys39-MHA]exendin-4/Angiopep-2-Cys-NH2コンジュゲート(Exen-An2)の投与後の(ob/ob)マウスの体重の増加を示すグラフである。exendin-4及びEx-An2の両方が、対照を受けたマウスと比較して体重増加が低下しているのが観察された。
【図6】(ob/ob)マウスによる総食物消費を示すグラフであり、該マウスには対照、exendin-4、又はExen-An2を投与した。対照を受けたマウスと比較して、exendin-4及びExen-An2のいずれも食物摂取を低減することが観察された。
【図7】2つの用量(3μg/kgと30μg/kg)のexendin-4及び当量(4.8μg/kgと48μg/kg)のExen-An2の投与後の血糖の低減を示すグラフである。高用量のexendin-4と比較して、より低用量のExen-An2で同様の血糖の低減が観察された。この実験中、対照グループのマウス1匹が第12日に死亡した。
【図8A】Exendin-4-Angiopep-2二量体コンジュゲート(Ex4(Lys39(MHA))-AN2-AN2)の構造を示す概略図である。該化合物は、以下の構造を有する:HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPK(MHA)-TFFYGGSRGKRNNFKTEEYC-(MPA)-TFFYGGSRGKRNNFKTEEY-OH(MHAはマレイミドヘキサン酸であり、MPAはマレイミドプロピオン酸である)。
【図8B】対照として用いたExendin-4-スクランブル-Angiopep-2(Ex4(Cys32)-ANS4(N末端)すなわちExen-S4)の概略的構造を示す図である。該化合物は、以下の構造を有する:HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPCSGAPPPS-(MHA)-GYKGERYRGFKETNFNTFS-OH(MHAはマレイミドヘキサン酸である)。
【図9】(左から右へ)Exendin-4;Exendin-4-Angiopep-2コンジュゲートC3、C6、及びC11;Exen-S4;並びにAngiopep-2の二量体形態とコンジュゲートさせたExendin-4それぞれの、BBBを通過する能力を示すグラフである。
【図10】マウスにおける血糖を低減する、Exendin-4及びExen-An2-An2の能力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
本発明者らは、GLP-1アゴニストの例であるexendin-4及びexendin-4類似体を用いて、血液脳関門(BBB)を通過する、又は特定の細胞型(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、及び筋肉)に侵入する、増強された能力を有するGLP-1アゴニスト/ペプチドコンジュゲートを開発した。本発明のペプチドコンジュゲートは、GLP-1アゴニストと、BBBを通過する輸送を増強するペプチドベクターを含むことができる。
【0046】
本発明者らはまた、非コンジュゲートGLP-1アゴニストと比較して、低用量の本発明の化合物が、GLP-1に関連する障害の治療、例えば血糖の低減などに有効であることも明らかにした。より低用量のコンジュゲートペプチドを投与することにより、非コンジュゲートアゴニストで観察された嘔吐、吐気、及び下痢などの副作用を軽減するか、又は排除することができる。あるいは、より高い用量では効果の増大が達成される可能性がある。
【0047】
GLP-1アゴニストは、当技術分野で公知の任意のGLP-1アゴニストであってよく、以下に記載するようなペプチドが挙げられる。具体的なGLP-1アゴニストとしては、exendin-4、GLP-1、及びexendin-3断片、そのアミノ酸配列(例えば本明細書に記載のもの)への置換(例えば保存的若しくは非保存的置換、又は非天然アミノ酸の置換)及び化学的修飾が挙げられる。具体的なGLP-1アゴニストを以下に詳細に記載する。
【0048】
GLP-1アゴニスト
本発明のコンジュゲートは、当技術分野で公知の任意のGLP-1アゴニストを含みうる。具体的なGLP-1アゴニストには、GLP-1、exendin-4、及びそれらの類似体が含まれる。類似体の例を以下に記載する。
【0049】
Exendin-4及びexendin-4類似体
本発明の組成物、方法及びキットでは、Exendin-4及びexendin-4類似体も用いることができる。本発明の化合物には、exendin-4配列の断片が含まれる。Exendin-4は以下の配列を有する:
His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2
【0050】
具体的なexendin-4類似体としては、システイン置換(例えば[Cys32]exendin-4)又はリジン置換(例えば[Lys39]exendin-4)を有するものが挙げられる。
【0051】
Exendin類似体はまた米国特許第7,157,555号に記載されており、以下の式を有するものが含まれる:
X1-X2-X3-Gly-Thr-X4-X5-X6-X7-X8-Ser-Lys-Gln-X9-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-X10-X11-X12-X13-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-X14-Ser-Ser-Gly-Ala-X15-X16-X17-X18-Z
〔式中、X1はHis、Arg又はTyrであり、X2はSer、Gly、Ala又はThrであり、X3はAsp又はGluであり、X4はPhe、Tyr又はNalであり、X5はThr又はSerであり、X6はSer又はThrであり、X7はAsp又はGluであり、X8はLeu、Ile、Val、pGly又はMetであり、X9はLeu、Ile、pGly、Val又はMetであり、X10はPhe、Tyr又はNalであり、X11はIle、Val、Leu、pGly、t-BuG又はMetであり、X12はGlu又はAspであり、X13はTrp、Phe、Tyr又はNalであり、X14、X15、X16及びX17は独立して、Pro、HPro、3Hyp、4Hyp、TPro、N-アルキルグリシン、N-アルキル-pGly又はN-アルキルアラニンであり、X18はSer、Thr又はTyrであり、Zは-OH又は-NH2である(例えば、但し該化合物はexendin-3又はexendin-4ではない)〕。
【0052】
N-アルキルグリシン、N-アルキル-pGly及びN-アルキルアラニンについて好ましいN-アルキル基としては、低級アルキル基(例えばC1-6アルキル又はC1-4アルキル)がある。
【0053】
いくつかの実施形態において、X1はHis又はTyr(例えばHis)である。X2はGlyである。X9はLeu、pGly又はMetである。X13はTrp又はPheである。X4はPhe又はNalであり、X11はIle又はValであり、X14、X15、X16及びX17は独立して、Pro、HPro、TPro又はN-アルキルアラニン(例えばN-アルキルアラニンは1〜約6個の炭素原子のN-アルキル基を有する)から選択される。一態様において、X15、X16及びX17は同じアミノ酸残基である。X18はSer又はTyr(例えばSer)である。Zは-NH2である。
【0054】
他の実施形態において、X1はHis又はTyr(例えばHis)であり、X2はGlyであり、X4はPhe又はNalであり、X9はLeu、pGly又はMetであり、X10はPhe又はNalであり、X11はIle又はValであり、X14、X15、X16及びX17は独立して、Pro、HPro、TPro又はN-アルキルアラニンから選択され、X18はSer又はTyr(例えばSer)である、Zは-NH2である。
【0055】
他の実施形態において、X1はHis又はArgであり、X2はGlyであり、X3はAsp又はGluであり、X4はPhe又はナフチルアラニンであり、X5はThr又はSerであり、X6はSer又はThrであり、X7はAsp又はGluであり、X8はLeu又はpGlyであり、X9はLeu又はpGlyであり、X10はPhe又はNalであり、X11はIle、Val又はt-ブチルトリグリシン(butyltylglycine)であり、X12はGlu又はAspであり、X13はTrp又はPheであり、X14、X15、X16及びX17は独立して、Pro、HPro、TPro又はN-メチルアラニンであり、X18はSer又はTyrであり、Zは-OH又は-NH2である(例えば該化合物はexendin-3又はexendin-4ではない)。Zは-NH2である。
【0056】
別の実施形態において、X9はLeu、Ile、Val又はpGly(例えばLeu又はpGly)であり、X13はPhe、Tyr又はNal(例えばPhe又はNal)である。これらの化合物は、有利な作用持続を示すことができ、in vitro及びin vivoの両方並びに化合物の合成過程において酸化的分解を受けることが少ない。
【0057】
他のexendin類似体はまた米国特許第7,157,555号及び同第7,223,725号に記載されており、以下の式の化合物が含まれる:
X1-X2-X3-Gly-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-Ala-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25-X26-X27-X28-Z1
〔式中、X1はHis、Arg又はTyrであり、X2はSer、Gly、Ala又はThrであり、X3はAsp又はGluであり、X5はAla又はThrであり、X6はAla、Phe、Tyr又はNalであり、X7はThr又はSerであり、X8はAla、Ser又はThrであり、X9はAsp又はGluであり、X10はAla、Leu、Ile、Val、pGly又はMetであり、X11はAla又はSerであり、X12はAla又はLysであり、X13はAla又はGlnであり、X14はAla、Leu、Ile、pGly、Val又はMetであり、X15はAla又はGluであり、X16はAla又はGluであり、X17はAla又はGluであり、X19はAla又はValであり、X20はAla又はArgであり、X21はAla又はLeuであり、X22はPhe、Tyr又はNalであり、X23はIle、Val、Leu、pGly、t-BuG又はMetであり、X24はAla、Glu又はAspであり、X25はAla、Trp、Phe、Tyr又はNalであり、X26はAla又はLeuであり、X27はAla又はLysであり、X28はAla又はAsnであり、Z1は-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly-Gly-Z2、Gly-Gly-X31-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Ala-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Ala-X36-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Ala-X36-X37-Z2又はGly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Ala-X36-X37-X38-Z2であり、X31、X36、X37及びX38は独立して、Pro、HPro、3Hyp、4Hyp、TPro、N-アルキルグリシン、N-アルキル-pGly又はN-アルキルアラニンであり、Z2は-OH又は-NH2である(例えば、但しX5、X6、X8、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X19、X20、X21、X24、X25、X26、X27及びX28の3以下がAlaである)〕。N-アルキルグリシン、N-アルキル-pGly及びN-アルキルアラニンについての好ましいN-アルキル基としては1〜約6個の炭素原子(例えば1〜4個の炭素原子)の低級アルキル基がある。
【0058】
いくつかの実施形態において、X1はHis又はTyr(例えばHis)である。X2はGlyである。X14はLeu、pGly又はMetである。X25はTrp又はPheである。いくつかの実施形態において、X6はPhe又はNalであり、X22はPhe又はNalであり、X23はIle又はValである。X31、X36、X37及びX38は独立して、Pro、HPro、TPro、及びN-アルキルアラニンから選択される。いくつかの実施形態において、Z1が-NH2であるか又はZ2が-NH2である。
【0059】
別の実施形態において、X1はHis又はTyr(例えばHis)であり、X2はGlyであり、X6はPhe又はNalであり、X14はLeu、pGly又はMetであり、X22はPhe又はNalであり、X23はIle又はValであり、X31、X36、X37及びX38は独立して、Pro、HPro、TPro又はN-アルキルアラニンから選択される。特定の実施形態において、Z1は-NH2である。
【0060】
別の実施形態において、X1はHis又はArgであり、X2はGly又はAlaであり、X3はAsp又はGluであり、X5はAla又はThrであり、X6はAla、Phe又はナフチルアラニンであり、X7はThr又はSerであり、X8はAla、Ser又はThrであり、X9はAsp又はGluであり、X10はAla、Leu又はpGlyであり、X11はAla又はSerであり、X12はAla又はLysであり、X13はAla又はGlnであり、X14はAla、Leu又はpGlyであり、X15はAla又はGluであり、X16はAla又はGluであり、X17はAla又はGluであり、X19はAla又はValであり、X20はAla又はArgであり、X21はAla又はLeuであり、X22はPhe又はNalであり、X23はIle、Val又はt-BuGであり、X24はAla、Glu又はAspであり、X25はAla、Trp又はPheであり、X26はAla又はLeuであり、X27はAla又はLysであり、X28はAla又はAsnであり、Z1は-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly-Gly-Z2、Gly-Gly-X31-Z2、Gly-Gly X31-Ser-Z2、Gly-Gly-X31 Ser-Ser-Z2、Gly-Gly-X31 Ser-Ser-Gly-Z2、Gly-Gly-X31 Ser-Ser-Gly Ala-Z2、Gly-Gly-X31 Ser-Ser-Gly-Ala-X36-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Ala-X36-X37-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Ala-X36-X37-X38-Z2であり、X31、X36、X37及びX38は独立して、Pro、HPro、TPro又はN-メチルアラニンであり、Z2は-OH又は-NH2である(例えば、但しX3、X5、X6、X8、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X19、X20、X21、X24、X25、X26、X27及びX28の3以下がAlaである)。
【0061】
また別の実施形態において、X14はLeu、Ile、Val又はpGly(例えばLeu又はpGly)であり、X25はPhe、Tyr又はNal(例えばPhe又はNal)である。
【0062】
米国特許第7,220,721号に記載されているExendin類似体には、以下の式の化合物が含まれる:
X1-X2-X3-X4-X-5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-Ala-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25-X26-X27-X28-Z1
〔式中、X1はHis、Arg、Tyr、Ala、NorVal、Val又はNorLeuであり、X2はSer、Gly、Ala又はThrであり、X3はAla、Asp又はGluであり、X4はAla、NorVal、Val、NorLeu又はGlyであり、X5はAla又はThrであり、X6はPhe、Tyr又はNalであり、X7はThr又はSerであり、X8はAla、Ser又はThrであり、X9はAla、NorVal、Val、NorLeu、Asp又はGluであり、X10はAla、Leu、Ile、Val、pGly又はMetであり、X11はAla又はSerであり、X12はAla又はLysであり、X13はAla又はGlnであり、X14はAla、Leu、Ile、pGly、Val又はMetであり、X15はAla又はGluであり、X16はAla又はGluであり、X17はAla又はGluであり、X19はAla又はValであり、X20はAla又はArgであり、X21はAla又はLeuであり、X22はPhe、Tyr又はNalであり、X23はIle、Val、Leu、pGly、t-BuG又はMetであり、X24はAla、Glu又はAspであり、X25はAla、Trp、Phe、Tyr又はNalであり、X26はAla又はLeuであり、X27はAla又はLysであり、X28はAla又はAsnであり、Z1は-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly-Gly-Z2、Gly-Gly-X31-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Z2、Gly-Gly-X31 Ser-Ser-Gly-Ala-Z2、Gly-Gly-X31-Ser-Ser-Gly-Ala-X13-Z2、Gly-Gly-X31 Ser-Ser-Gly-Ala-X36-X37-Z2、Gly-Gly X31 Ser Ser Gly Ala X36 X37 X31 -Z2又はGly Gly X31 Ser Ser Gly Ala X36 X37 X38 X39 -Z2であり、ここでX31、X36、X37及びX38は独立して、Pro、HPro、3Hyp、4Hyp、TPro、N-アルキルグリシン、N-アルキル-pGly又はN-アルキルアラニンであり、Z2は-OH又は-NH2である(例えば、但しX3、X4、X5、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X19、X20、X21、X24、X25、X26、X27及びX28の3以下がAlaである、並びに/あるいは、但しX1がHis、Arg又はTyrである場合には、X3、X4及びX9の少なくとも1つがAlaである)〕。
【0063】
exendin-4類似体の具体的な例としては、exendin-4(1-30)、exendin-4(1-30)アミド、exendin-4(1-28)アミド、[Leu14,Phe25]exendin-4アミド、[Leu14,Phe25]exendin-4(1-28)アミド、及び[Leu14,Ala22,Phe25]exendin-4(1-28)アミドが挙げられる。
【0064】
米国特許第7,329,646号は、以下の一般式を有するexendin-4類似体を記載している:
His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-X14-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-X20-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-X40
〔式中、X14はArg、Leu、Ile又はMetであり、X20はHis、Arg又はLysであり、X40はArg-OH、-OH、-NH2又はLys-OHである〕。いくつかの実施形態において、X14がMetであり、X20がArgである場合には、X40は-NH2ではない。他のexendin-4誘導体としては、[(Ile/Leu/Met)14,(His/Lys)20,Arg40]exendin-4、[(非Lys/非Arg)12,(非Lys/非Arg)20,(非Lys/非Arg)27,Arg40]exendin-4、及び[(非Lys/非Arg)20,Arg40]exendin-4がある。具体的なexendin-4類似体としては、[Lys20,Arg40]exendin-4、[His20,Arg40]exendin-4、及び[Leu14,Lys20,Arg40]exendin-4がある。
【0065】
本発明はまた、exendin-4の切断型又は本明細書に記載の任意のexendin類似体を使用しうる。切断型は、N末端から、C末端から又はそれらの組合せからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸の欠失を含みうる。具体的なexendin-4断片としてはExendin-4(1-31)が挙げられる。exendin-4の他の断片は米国特許出願公開第2007/0037747号に記載されており、以下の式を有する:
His-Gly-Glu-Gly-Thr-X6-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-X14-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-X20-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-X30-Pro-X32
〔式中、X6はPhe又はTyrであり、X14はMet、Ile又はLeuであり、X20はLysであり、X30はGlyであるか又は存在せず、X32はArgであるか又は存在しない〕。
【0066】
GLP-1及びGLP-1類似体
本発明の組成物、方法及びキットにおいて用いるGLP-1アゴニストは、GLP-1又はGLP-1類似体とすることができる。いくつかの実施形態において、GLP-1類似体は、切断型であってもよく、野生型配列(例えばヒト野生型配列)の1若しくは複数の置換を有していてもよく、又は他の化学的修飾を有していてもよいペプチドである。GLP-1アゴニストはまた、例えば、米国特許第6,927,214号に記載されているような非ペプチド化合物であってもよい。具体的な類似体としては、LY548806、CJC-1131、及びリラグルチド(Liraglutide)が挙げられる。
【0067】
GLP-1類似体は、GLP-1の切断型であってもよい。GLP-1ペプチドは、そのN末端から、そのC末端から、又はそれらの組合せから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、20個又はそれ以上の残基が切断されていてもよい。いくつかの実施形態において、切断型GLP-1類似体は、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、若しくはGLP-1(7-37)ヒトペプチド、又はそのC末端アミド化形態である。
【0068】
本発明の他の実施形態では、切断型GLP-1ペプチドの改変型を使用する。類似体の例は米国特許第5,545,618号に記載されており、以下のアミノ酸配列を有する:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-(Gly)-(Arg)-(Gly)
〔式中、(Gly)、(Arg)及び(Gly)は、指定の鎖長に応じて存在するか又は存在せず、以下からなる群より選択される少なくとも1つの改変を有する:(a)26位及び/若しくは34位におけるLysの中性アミノ酸、Arg若しくはLysのD形態での置換、並びに/又は36位におけるArgの中性アミノ酸、Lys若しくはArgのD形態での置換;(b)31位におけるTrpの酸化耐性アミノ酸での置換;(c)以下の少なくとも1つの置換:16位におけるValの代わりのTyr;18位におけるSerの代わりのLys;21位におけるGluの代わりのAsp;22位におけるGlyの代わりのSer;23位におけるGlnの代わりのArg;24位におけるAlaの代わりのArg;及び26位におけるLysの代わりのGln;(d)以下の少なくとも1つを含む置換:8位におけるAlaの代わりの別の小さな中性アミノ酸;9位におけるGluの代わりの別の酸性アミノ酸又は中性アミノ酸;10位におけるGlyの代わりの別の中性アミノ酸;及び15位におけるAspの代わりの別の酸性アミノ酸;並びに(e)7位におけるHisの、別の中性アミノ酸、若しくはAsp、又はHisのN-アシル化若しくはアルキル化形態での置換〕。改変(a)、(b)、(d)及び(e)に関して、置換アミノ酸はD形態とすることができる。7位で置換されるアミノ酸は、N-アシル化又はN-アルキルアミノ酸であってもよい。GLP-1類似体の例としては、[D-His7]GLP-1(7-37)、[Tyr7]GLP-1(7-37)、[N-アセチル-His7]GLP-1(7-37)、[N-イソプロピル-His7]GLP-1(7-37)、[D-Ala8]GLP-1(7-37)、[D-Glu9]GLP-1(7-37)、[Asp9]GLP-1(7-37)、[D-Asp9]GLP-1(7-37)、[D-Phe10]GLP-1(7-37)、[Ser22,Arg23,Arg24,Gln26]GLP-1(7-37)、及び[Ser8,Gln9,Tyr16,Lys18,Asp21]GLP-1(7-37)が挙げられる。
【0069】
他のGLP-1断片は米国特許第5,574,008号に記載されており、以下の式を有する:
R1-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-X-Gly-Arg-R2
〔式中、R1は、H2N;H2N-Ser;H2N-Val-Ser;H2N-Asp-Val-Ser;H2N-Ser-Asp-Val-Ser;H2N-Thr-Ser-Asp-Val-Ser;H2N-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser;H2N-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser;H2N-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser;H2N-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser;又はH2N-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Serであり、XはLys又はArgであり、R2はNH2、OH、Gly-NH2又はGly-OHである〕。
【0070】
他のGLP-1類似体は、米国特許第5,118,666号に記載されており、以下の配列を有するものが含まれる。His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-X
〔式中、XはLys、Lys-Gly又はLys-Gly-Argである〕。
【0071】
GLP-1類似体はまた以下の式のペプチドを含む:
H2N-X-CO-R1
〔式中、R1はOH、OM又は-NR2R3であり、Mは製薬上許容されるカチオン又は低級分枝状若しくは非分枝状アルキル基(例えばC1-6アルキル)であり、R2及びR3は独立して、水素及び低級分枝状若しくは非分枝状アルキル基(例えばC1-6アルキル)からなる群より選択され、Xは配列His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala -Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Argを含むペプチドであり、NH2はXのアミノ末端のアミン基であり、COはXのカルボキシ末端のカルボニル基、その酸付加塩、及びその保護された又は部分的に保護された誘導体である〕。これらの化合物は、GLP-1(1-36)又はGLP-1(1-37)を超えるインスリン分泌促進活性を有しうる。
【0072】
他のGLP-1類似体は米国特許第5,981,488号に記載されており、以下の式を有する:
R1-X-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Y-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Z-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-R2
〔式中、R1はHis、D-His、デスアミノ-His、2-アミノ-His、β-ヒドロキシ-His、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-His又はα-メチル-Hisであり、XはMet、Asp、Lys、Thr、Leu、Asn、Gln、Phe、Val又はTyrであり、Y及びZは独立して、Glu、Gln、Ala、Thr、Ser及びGlyから選択され、R2はNH2及びGly-OHから選択される(例えば、但しR1がHis、XがVal、YがGlu、ZがGluである場合に、R2はNH2である)〕。
【0073】
他のGLP-1類似体は米国特許第5,512,549号に記載されており、以下の式を有する:
R1-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Xaa-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys(R2)-Gly-Arg-R3
〔式中、R1は4-イミダゾプロピオニル(デス-アミノ-ヒスチジル)、4-イミダゾアセチル又は4-イミダゾ-α、αジメチル-アセチルであり、Lysの側鎖に(例えばε アミノ基を介して)結合しているR2は、C6-10非分枝状アシルであるか又は存在せず、R3はGly-OH又はNH2であり、XaaはLys又はArgである〕。
【0074】
また他のGLP-1類似体は米国特許第7,084,243号に記載されている。一実施形態において、GLP-1類似体は以下の式を有する:
His-X8-Glu-Gly-X11-X12-Thr-Ser-Asp-X16-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-X22-X23-X24-Ala-X26-X27-Phe-Ile-Ala-X31-Leu-X33-X34-X35-X36-R
〔式中、X8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser又はThrであり、X11はAsp、Glu、Arg、Thr、Ala、Lys又はHisであり、X12はHis、Trp、Phe又はTyrであり、X16はLeu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、Tyr、Glu又はAlaであり、X22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys又はCyaであり、X23はHis、Asp、Lys、Glu又はGlnであり、X24はGlu、His、Ala又はLysであり、X26はAsp、Lys、Glu又はHisであり、X27はAla、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、Arg又はLysであり、X30はAla、Glu、Asp、Ser又はHisであり、X33はAsp、Arg、Val、Lys、Ala、Gly又はGluであり、X34はGlu、Lys又はAspであり、X35はThr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、His又はGluであり、X36はArg、Glu又はHisであり、RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、-NH2、Gly、Gly-Pro若しくはGly-Pro-NH2であるか又は削除されている(例えば、但し上記ポリペプチドはGLP-1(7-37)OH又はGLP-1(7-36)-NH2の配列を有するものではなく、また但し上記ポリペプチドはGly8-GLP-1(7-37)OH、Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Val8-GLP-1(7-37)OH、Val8-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-GLP-1(7-37)OH、Leu8-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-GLP-1(7-37)OH、Ile8-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-GLP-1(7-37)OH、Ser8-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-GLP-1(7-37)OH又はThr8-GLP-1(7-36)NH2、Ala11-Glp-1(7-37)OH、Ala11-Glp-1(7-36)NH2、Ala16-Glp-1(7-37)OH、Ala16-Glp-1(7-36)NH2、Ala27-Glp-1(7-37)OH、Ala27-Glp-1(7-36)NH2、Ala27-Glp-1(7-37)OH、Ala27-Glp-1(7-36)NH2、Ala33-Glp-1(7-37)OH又はAla33-Glp-1(7-36)NH2ではない)〕。
【0075】
別の実施形態において、ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を有する:
His-X8-Glu-Gly-Thr-X12-Thr-Ser-Asp-X16-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-X22-X23-Ala-Ala-X26-Glu-Phe-Ile-X30-Trp-Leu-Val-Lys-X35-Arg-R
〔式中、X8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser又はThrであり、X12はHis、Trp、Phe又はTyrであり、X16はLeu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、Glu又はAlaであり、X22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys又はCyaであり、X23はHis、Asp、Lys、Glu又はGlnであり、X26はAsp、Lys、Glu又はHisであり、X30はAla、Glu、Asp、Ser又はHisであり、X35はThr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、His又はGluであり、RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、-NH2、Gly、Gly-Pro、Gly-Pro-NH2であるか又は削除されている(例えば、但し上記ポリペプチドはGLP-1(7-37)OH又はGLP-1(7-36)-NH2の配列を有するものではなく、また但し上記ポリペプチドはGly8-GLP-1(7-37)OH、Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Val8-GLP-1(7-37)OH、Val8-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-GLP-1(7-37)OH、Leu8-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-GLP-1(7-37)OH、Ile8-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-GLP-1(7-37)OH、Ser8-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-GLP-1(7-37)OH、Thr8-GLP-1(7-36)NH2、Ala16-GLP(7-37)OH又はAla16-GLP-1(7-36)NH2ではない)〕。
【0076】
別の実施形態において、ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を有する:
His-X8-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-X22-X23-Ala-Ala-Lys-X27-Phe-Ile-X30-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-R
〔式中、X8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser又はThrであり、X22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys又はCyaであり、X23はHis、Asp、Lys、Glu又はGlnであり、X27はAla、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、Arg又はLysであり、X30はAla、Glu、Asp、Ser又はHisであり、RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、-NH2、Gly、Gly-Pro若しくはGly-Pro-NH2であるか又は削除されている(例えば、但し上記ポリペプチドはGLP-1(7-37)OH又はGLP-1(7-36)NH2の配列を有するものではなく、また但し上記ポリペプチドはGly8-GLP-1(7-37)OH、Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Val8-GLP-1(7-37)OH、Val8-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-GLP-1(7-37)OH、Leu8-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-GLP-1(7-37)OH、Ile8-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-GLP-1(7-37)OH、Ser8-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-GLP-1(7-37)OH、Thr8-GLP-1(7-36)NH2、Ala16-GLP-1(7-37)OH、Ala16-Glp-1(7-36) NH2、Glu27-Glp-1(7-37)OH又はGlu27-Glp-1(7-36)NH2ではない)〕。
【0077】
別の実施形態において、ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を有する:
X7-X8-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-X22-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-R
〔式中、X7はL-His、D-His、デスアミノ-His、2アミノ-His、β-ヒドロキシ-His、ホモ-His、α-フルオロメチル-His又はα-メチル-Hisであり、X8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser又はThr(例えばGly、Val、Leu、Ile、Ser又はThr)であり、X22はAsp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys又はCyaであり、Rは-NH2又はGly(OH)である〕。
【0078】
別の実施形態において、GLP-1化合物は、8位にアラニン以外のアミノ酸、及び22位にグリシン以外のアミノ酸を有する。GLP-1化合物の具体的な例としては、[Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Arg22]GLP-1(7-37)OH、[Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Cya22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Arg22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Cya22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Arg22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Cya22]GLP-1(7-37)OH、[Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Arg22]GLP-1(7-36)NH2、[Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Cya22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Arg22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Cya22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Arg22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Cya22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Lys23]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Ala27]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu30]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Glu30]GLP-1(7-37)OH、[Val8,His35]GLP-1(7-37)OH、[Val8,His37]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu22,Lys23]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu22,Glu2]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu22,Ala27]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Gly34,Lys35]GLP-1(7-37)OH、[Val8,His37]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,His37]GLP-1(7-37)OHが挙げられる。
【0079】
他のGLP-1類似体は米国特許第7,101,843号に記載されており、以下の式を有するものが含まれる:
X7-X8-Glu-Gly-Thr-X12-Thr-Ser-Asp-X16-Ser-X18-X19-X20-Glu-X22-Gln-Ala-X25-Lys-X27-Phe-Ile-X30-Trp-Leu-X33-Lys-Gly-Arg-X37
〔式中、X7はL-His、D-His、デスアミノ-His、2-アミノ-His、β-ヒドロキシ-His、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-His又はα-メチル-Hisであり、X8はAla、Gly、Val、Leu、Ile、Ser又はThrであり、X12はPhe、Trp又はTyrであり、X16はVal、Trp、Ile、Leu、Phe又はTyrであり、X18はSer、Trp、Tyr、Phe、Lys、Ile、Leu又はValであり、X19はTyr、Trp又はPheであり、X20はLeu、Phe、Tyr又はTrpであり、X22はGly、Glu、Asp又はLysであり、X25はAla、Val、Ile又はLeuであり、X27はGlu、Ile又はAlaであり、X30はAla又はGluであり、X33はVal又はIleであり、X37はGly、His、NH2であるか又は存在しない(例えば、但し上記化合物は以下の配列:GLP-1(7-37)OH、GLP-1(7-36)-NH2、[Gly8]GLP-1(7-37)OH、[Gly8]GLP-1(7-36)NH2、[Val8]GLP-1(7-37)OH、[Val8]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8]GLP-1(7-37)OH、[Leu8]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8]GLP-1(7-37)OH、[Ile8]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8]GLP-1(7-37)OH、[Ser8]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8]GLP-1(7-37)OH、[Thr8]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Tyr12]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Tyr12]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Tyr16]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Tyr16]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Leu8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Ile8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Leu8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Ile8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Leu8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Ile8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Ser8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Thr8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Ser8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Thr8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Ser8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Thr8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Glu2]GLP-1(7-36)NH2、[Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Ala27]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu22,Ala27]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu30]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu30]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Glu30]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Glu30]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8,Glu30]GLP-1(7-37)OH、[Leu8,Glu30]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8,Glu30]GLP-1(7-37)OH、[Ile8,Glu30]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8,Glu30]GLP-1(7-37)OH、[Ser8,Glu30]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8,Glu30]GLP-1(7-37)OH、[Thr8,Glu30]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,His37]GLP-1(7-37)OH、[Val8,His37]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,His37]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,His37]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8,His37]GLP-1(7-37)OH、[Leu8,His37]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8,His37]GLP-1(7-37)OH、[Ile8,His37]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8,His37]GLP-1(7-37)OH、[Ser8,His37]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8,His37]GLP-1(7-37)OH、[Thr8,His37]GLP-1(7-36)NH2を有するものではない)〕。
【0080】
米国特許第7,101,843号に記載されている他のGLP-1類似体は、以下の式を有する:
X7-X8-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-X16-Ser-X18-Tyr-Leu-Glu-X22-Gln-Ala-X25-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-X33-Lys-Gly-Arg-X37
〔式中、X7はL-His、D-His、デスアミノ-His、2-アミノ-His、β-ヒドロキシ-His、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-His又はα-メチル-Hisであり、X8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser又はThrであり、X16はVal、Phe、Tyr又はTrpであり、X18はSer、Tyr、Trp、Phe、Lys、Ile、Leu又はValであり、X22はGly、Glu、Asp又はLysであり、X25はAla、Val、Ile又はLeuであり、X33はVal又はIleであり、X37はGly、NH2であるか又は存在しない(例えば、但し上記GLP-1化合物は、以下の配列:GLP-1(7-37)OH、GLP-1(7-36)-NH2、[Gly8]GLP-1(7-37)OH、[Gly8]GLP-1(7-36)NH2、[Val8]GLP-1(7-37)OH、[Val8]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8]GLP-1(7-37)OH、[Leu8]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8]GLP-1(7-37)OH、[Ile8]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8]GLP-1(7-37)OH、[Ser8]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8]GLP-1(7-37)OH、[Thr8]GLP-1(7-36)NH2、[Val8-Tyr16]GLP-1(7-37)OH、[Val8-Tyr16]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Val8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Val8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Gly8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Gly8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Leu8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Ile8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8,Asp22]GLP1(7-37)OH、[Leu8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Ile8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Leu8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Leu8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Ile8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Ile8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Ser8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8,Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Thr8,Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Ser8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8,Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Thr8,Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Ser8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Ser8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Thr8,Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Thr8,Lys22]GLP-1(7-36)NH2、[Glu22]GLP-1(7-37)OH、[Glu22]GLP-1(7-36)NH2、[Asp22]GLP-1(7-37)OH、[Asp22]GLP-1(7-36)NH2、[Lys22]GLP-1(7-37)OH、[Lys22]GLP-1(7-36)NH2を有するものではない)〕。
【0081】
GLP-1類似体はまた、米国特許第7,238,670号に記載されており、以下の構造を有する:
A-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-Y-Z-B
〔式中、
X1-9はそれぞれ天然又は非天然のアミノ酸残基であり、Y及びZはアミノ酸残基であり、Y及びZのα-炭素原子における置換の1つは、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アリールアルキル及びヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルアルキルからなる群より選択される一次置換基(primary substituent group)で置換されていてもよく、該一次置換基は、場合によりシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリール基から選択される二次置換基で置換されていてもよく;該一次又は二次置換基のいずれかは、さらにH、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、シアノ、アミノ、アシルアミノ、アジド、グアニジノ、アミジノ、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシアミドアルキル、ホルミル、アシル、カルボキシルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクロオキシ(heterocycleoxy)、アシルオキシ、メルカプト、メルカプトアルキル、メルカプトアリール、メルカプトアシル、ハロ、シアノ、ニトロ、アジド、アミノ、グアニジノアルキル、グアニジノアシル、スルホン酸、スルホンアミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル又はホスホン酸基の1つ以上で置換されていてもよく;ここで、一次又は二次置換基は、場合により共有結合によって架橋されて、互いに1又は複数の縮合環系又は複素環系を形成してもよく;ここでYのα炭素における他の置換は、H、C1-6アルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル又はカルボキシアルキルで置換されていてもよく;Zのα炭素における他の置換は、水素、C1-12アルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル又はカルボキシアルキルで置換されていてもよく;
A及びBは、場合により存在してもよく、Aが存在する場合、AはH、アミノ酸、又は約1〜15個のアミノ酸残基を含むペプチド、R基、R-C(O)(アミド) 基、カルバメート基RO-C(O)、尿素R4R5N-C(O)、スルホンアミドR-SO2又はR4R5N-SO2であり;Rは、水素、C1-12アルキル、C3-10シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシアルキル、ヘテロアリールアルキル及びヘテロアリールオキシアルキルからなる群より選択され、R4及びR5は互いに独立して、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシアルキル、ヘテロアリールアルキル及びヘテロアリールオキシアルキルからなる群より選択され、X1のα-アミノ基はH又はアルキル基で置換され、該アルキル基は場合によりAと一緒に環を形成してもよく、Bが存在する場合、BはOR1、NR1R2、又はアミノ酸、若しくはカルボキシアミドとしてC末端で終了している1〜15個(例えば1〜10個、若しくは1〜5個)のアミノ酸残基を含むペプチド、置換カルボキシアミド、エステル、遊離カルボン酸、又はアミノ-アルコールであり、R1及びR2は独立して、H、C1-12アルキル、C3-10シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシアルキル、ヘテロアリールアルキル又はヘテロアリールオキシアルキルから選択される〕。
【0082】
Y及びZのα-炭素原子における置換の例としては、ヘテロアリールアリールメチル、アリールヘテロアリールメチル、及びビフェニルアラニン残基を形成するビフェニルメチルが挙げられ、これらのいずれかは場合により以下の1以上で置換されていてもよい:水素、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、シアノ、アミノ、アシルアミノ、アジド、グアニジノ、アミジノ、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシアミドアルキル、ホルミル、アシル、カルボキシルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクロオキシ(heterocycleoxy)、アシルオキシ、メルカプト、メルカプトアルキル、メルカプトアリール、メルカプト アシル、ハロ、シアノ、ニトロ、アジド、アミノ、グアニジノアルキル、グアニジノアシル、スルホン酸、スルホンアミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル及びホスホン酸基。
【0083】
他の実施形態には、Yのα-炭素における他の置換がH、メチル又はエチルで置換されており、Zのα-炭素における他の置換がH、メチル又はエチルで置換されている、単離されたポリペプチドが挙げられる。
【0084】
別の実施形態としては、上述したような単離されたポリペプチドであって、X1が天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素における置換の1つは、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル及びアリールアルキルからなる群より選択される一次置換基であり、該一次置換基は場合によりヘテロアリール又はヘテロシクリルから選択される二次置換基で置換されていてもよく、またα-炭素における他の置換はH又はアルキルであり;X2は天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素における置換の1つはアルキル又はシクロアルキルであり、該アルキル基は場合によりX2の窒素と一緒に環を形成してもよく、またα-炭素における他の置換はH又はアルキルであり;X3は天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素における置換の1つはカルボキシアルキル、ビス-カルボキシアルキル、スルホニルアルキル、ヘテロアルキル又はメルカプトアルキルであり、α-炭素における他の置換は水素又はアルキルであり、X4は天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素は置換されていないか、又はα-炭素における置換の1つがアミノアルキル、カルボキシアルキルヘテロアリールアルキル又はヘテロシクリル(heterocycyl)アルキルであり;X5は天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素における置換の1つはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、またα-炭素における他の置換は水素又はアルキルであり;X6は天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素における置換の1つは、C1-12アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アリールアルキル、又はヘテロアリールアルキル基であり、またα-炭素における他の置換はH又はアルキルであり;X7は天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素における置換の1つはヒドロキシルアルキル基であり;X8は天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素における置換の1つは、C1-12アルキル、ヒドロキシルアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はカルボキシアミドアルキルであり、またα-炭素における他の置換はH又はアルキルであり;X9は天然又は非天然アミノ酸残基であり、ここでα-炭素における置換の1つは、カルボキシルアルキル、ビス-カルボキシルアルキル、カルボキシルアリール、スルホニルアルキル、カルボキシルアミドアルキル、又はヘテロアリールアルキルであり;ここでAは、H、アミノ酸又は約1〜約5個のアミノ酸残基を含むペプチド、R基、R-C(O)アミド基、カルバメート基RO-C(O)、尿素R4R5N-C(O)、スルホンアミドR-SO2又はR4R5N-SO2である、単離されたポリペプチドが含まれる。
【0085】
特定の実施形態において、X1はHis、D-His、N-メチル-His、D-N-メチル-His、4-チアゾリルAla、又はD-4-チアゾリルAlaであり;X2はAla、D-Ala、Pro、Gly、D-Ser、D-Asn、Nma、D-Nma、4-チオPro、4-Hyp、L-2-Pip、L-2-Azt、Aib、S-又はR-Iva及びAcc3であり;X3はGlu、N-メチル-Glu、Asp、D-Asp、His、Gla、Adp、Cys、又は4-チアゾリルAlaであり;X4はGly、His、Lys、又はAspであり;X5はThr、D-Thr、Nle、Met、Nva、又はL-Aocであり;X6はPhe、Tyr、Tyr(Bzl)、Tyr(3-NO2)、Nle、Trp、Phe(ペンタフルオロ)、D-Phe(ペンタフルオロ)、Phe(2-フルオロ)、Phe(3-フルオロ)、Phe(4-フルオロ)、Phe(2,3-ジフルオロ)、Phe(3,4-ジフルオロ)、Phe(3,5-ジフルオロ)、Phe(2,6-ジフルオロ)、Phe(3,4,5-トリフルオロ)、Phe(2-ヨード)、Phe(2-OH)、Phe(2-OMe)、Phe(3-OMe)、Phe(3-シアノ)、Phe(2-クロロ)、Phe(2-NH2)、Phe(3-NH2)、Phe(4-NH2)、Phe(4-NO2)、Phe(4-Me)、Phe(4-アリル)、Phe(n-ブチル)、Phe(4-シクロヘキシル)、Phe(4-シクロヘキシルオキシ)、Phe(4-フェニルオキシ)、2-Nal、2-ピリジルAla、4-チアゾリルAla、2-Thi、α-Me-Phe、D-α-Me-Phe、α-Et-Phe、D-α-Et-Phe、α-Me-Phe(2-フルオロ)、D-α-Me-Phe(2-フルオロ)、α-Me-Phe(2,3-ジフルオロ)、D-α-Me-Phe(2,3-ジフルオロ)、α-Me-Phe(2,6-ジフルオロ)、D-α-Me-Phe(2,6-ジフルオロ)、α-Me-Phe(ペンタフルオロ)及びD-α-Me-Phe(ペンタフルオロ)であり;X7はThr、D-Thr、Ser又はhSerであり;X8はSer、hSer、His、Asn又はα-Me-Serであり;X9はAsp、Glu、Gla、Adp、Asn、又はHisである。
【0086】
さらなる実施形態としては、以下のものが含まれる:YがBip、D-Bip、L-Bip(2-Me)、D-Bip(2-Me)、L-Bip(2’-Me)、L-Bip(2-Et)、D-Bip(2-Et)、L-Bip(3-Et)、L-Bip(4-Et)、L-Bip(2-n-プロピル)、L-Bip(2-n-プロピル, 4-OMe)、L-Bip(2-n-プロピル,2’-Me)、L-Bip(3-Me)、L-Bip(4-Me)、L-Bip(2,3-ジ-Me)、L-Bip(2,4-ジ-Me)、L-Bip(2,6-ジ-Me)、L-Bip(2,4-ジ-Et)、L-Bip(2-Me, 2’-Me)、L-Bip(2-Et, 2’-Me)、L-Bip(2-Et, 2’-Et)、L-Bip(2-Me,4-OMe)、L-Bip(2-Et,4-OMe)、D-Bip(2-Et,4-OMe)、L-Bip(3-OMe)、L-Bip(4-OMe)、L-Bip(2,4,6-トリ-Me)、L-Bip(2,3-ジ-OMe)、L-Bip(2,4-ジ-OMe)、L-Bip(2,5-ジ-OMe)、L-Bip(3,4-ジ-OMe)、L-Bip(2-Et,4,5-ジ-OMe)、L-Bip(3,4-メチレン-ジ-オキシ)、L-Bip(2-Et, 4,5-メチレン-ジ-オキシ)、L-Bip(2-CH2OH, 4-OMe)、L-Bip(2-Ac)、L-Bip(3-NH-Ac)、L-Bip(4-NH-Ac)、L-Bip(2,3-ジ-クロロ)、L-Bip(2,4-ジ-クロロ)、L-Bip(2,5-ジ-クロロ)、L-Bip(3,4-ジ-クロロ)、L-Bip(4-フルオロ)、L-Bip(3,4-ジフルオロ)、L-Bip(2,5-ジフルオロ)、L-Bip(3-n-プロピル)、L-Bip(4-n-プロピル)、L-Bip(2-イソ-プロピル)、L-Bip(3-イソ-プロピル)、L-Bip(4-イソ-プロピル)、L-Bip(4-tert-ブチル)、L-Bip(3-フェニル)、L-Bip(2-クロロ)、L-Bip(3-クロロ)、L-Bip(2-フルオロ)、L-Bip(3-フルオロ)、L-Bip(2-CF3)、L-Bip(3-CF3)、L-Bip(4-CF3)、L-Bip(3-NO2)、L-Bip(3-OCF3)、L-Bip(4-OCF3)、L-Bip(2-OEt)、L-Bip(3-OEt)、L-Bip(4-OEt)、L-Bip(4-SMe)、L-Bip(2-OH)、L-Bip(3-OH)、L-Bip(4-OH)、L-Bip(2-CH2-COOH)、L-Bip(3-CH2-COOH)、L-Bip(4-CH2-COOH)、L-Bip(2-CH2-NH2)、L-Bip(3-CH2-NH2)、L-Bip(4-CH2-NH2)、L-Bip(2-CH2-OH)、L-Bip(3-CH2-OH)、L-Bip(4-CH2-OH)、L-Phe[4-(1-プロパルギル)]、L-Phe[4-(1-プロペニル)]、L-Phe[4-n-ブチル]、L-Phe[4-シクロヘキシル]、Phe(4-フェニルオキシ)、L-Phe(ペンタフルオロ)、L-2-(9,10-ジヒドロフェナントレニル)-Ala、4-(2-ベンゾ(b)フラン)-Phe、4-(4-ジベンゾフラン)-Phe、4-(4-フェノキサチン(phenoxathiin))-Phe、4-(2-ベンゾ(b)チオフェン)-Phe、4-(3-チオフェン)-Phe、4-(3-キノリン)-Phe、4-(2-ナフチル)-Phe、4-(1-ナフチル)-Phe、4-(4-(3,5-ジメチルイソキサゾール))-Phe、4-(2,4-ジメトキシピリミジン)-Phe、ホモPhe、Tyr(Bzl)、Phe(3,4-ジ-クロロ)、Phe(4-ヨード)、2-ナフチル-Ala、L-α-Me-Bip、又はD-α-Me-Bipであり;ZがL-Bip、D-Bip、L-Bip(2-Me)、D-Bip(2-Me)、L-Bip(2'-Me)、L-Bip(2-Et)、D-Bip(2-Et)、L-Bip(3-Me)、L-Bip(4-Me)、L-Bip(3-OMe)、L-Bip(4-OMe)、L-Bip(4-Et)、L-Bip(2-n-プロピル,2’-Me)、L-Bip(2,4-ジ-Me)、L-Bip(2-Me, 2’-Me)、L-Bip(2-Me,4-OMe)、L-Bip(2-Et, 4-OMe)、D-Bip(2-Et,4-OMe)、L-Bip(2,6-ジ-Me)、L-Bip(2,4,6-トリ-Me)、L-Bip(2,3,4,5,-テトラ-Me)、L-Bip(3,4-ジ-OMe)、L-Bip(2,5-ジ-OMe)、L-Bip(3,4-メチレン-ジ-オキシ)、L-Bip(3-NH-Ac)、L-Bip(2-イソ-プロピル)、L-Bip(4-イソ-プロピル)、L-Bip(2-フェニル)、L-Bip(4-フェニル)、L-Bip(2-フルオロ)、L-Bip(4-CF3)、L-Bip(4-OCF3)、L-Bip(2-OEt)、L-Bip(4-OEt)、L-Bip(4-SMe)、L-Bip(2-CH2-COOH)、D-Bip(2-CH2-COOH)、L-Bip(2’-CH2-COOH)、L-Bip(3-CH2-COOH)、L-Bip(4-CH2-COOH)、L-Bip(2-CH2-NH2)、L-Bip(3-CH2-NH2)、L-Bip(4-CH2-NH2)、L-Bip(2-CH2-OH)、L-Bip(3-CH2-OH)、L-Bip(4-CH2-OH)、L-Phe(3-フェニル)、L-Phe[4-n-ブチル]、L-Phe[4-シクロヘキシル]、Phe(4-フェニルオキシ)、L-Phe(ペンタフルオロ)、L-2-(9,10-ジヒドロフェナントレニル)-Ala、4-(3-ピリジル)-Phe、4-(2-ナフチル)-Phe、4-(1-ナフチル)-Phe、2-ナフチル-Ala、2-フルオレニル-Ala、L-α-Me-Bip、D-α-Me-Bip、L-Phe(4-NO2)、又はL-Phe(4-ヨード)であり;AがH、アセチル、β-Ala、Ahx、Gly、Asp、Glu、Phe、Lys、Nva、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr、カプロラクタム、Bip、Ser(Bzl)、3-ピリジルAla、Phe(4-Me)、Phe(ペンタフルオロ)、4-メチルベンジル、4-フルオロベンジル、n-プロピル、n-ヘキシル、シクロヘキシルメチル、6-ヒドロキシペンチル、2-チエニルメチル、3-チエニルメチル、ペンタフルオロベンジル、2-ナフチルメチル、4-ビフェニルメチル、9-アントラセニルメチル、ベンジル、(S)-(2-アミノ-3-フェニル)プロピル、メチル、2-アミノエチル、又は(S)-2-アミノプロピルであり;BがOH、NH2、Trp-NH2、2-ナフチルAla-NH2、Phe(ペンタフルオロ)-NH2、Ser(Bzl)-NH2、Phe(4-NO2)-NH2、3-ピリジルAla-NH2、Nva-NH2、Lys-NH2、Asp-NH2、Ser-NH2、His-NH2、Tyr-NH2、Phe-NH2、L-Bip-NH2、D-Ser-NH2、Gly-OH、β-Ala-OH、GABA-OH、又はAPA-OHである。
【0087】
特定の実施形態において、Aが存在せず、X1がR基、R-C(O) (アミド)基、カルバメート基RO-C(O)、尿素R4R5N-C(O)、スルホンアミドR-SO2、又はR4R5N-SO2である場合には;RはH、C1-12アルキル、C3-10シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールオキシアルキル、又はヘテロアリールアルコキシアルキルであり;R4及びR5はそれぞれ独立して、H、C1-12アルキル、C3-10シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロアリールオキシアルキルである。
【0088】
特定の実施形態において、Bが存在せず、ZがOR1、NR1R2、又はアミノ-アルコールである場合には;R1及びR2は独立して、H、C1-12アルキル、C3-10シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロ環、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロアリールオキシアルキルである。特定の実施形態において、X1(適用可能である場合)、X2及びX3は、N-H又はN-アルキル化(例えばN-メチル化)アミノ酸残基である。ポリペプチドは、10-merから15-merとすることができ、GLP-1受容体に結合しかつ活性化することができる。
【0089】
略語
Nal=ナフチルアラニン
pGly=ペンチルグリシン
t-BuG=t-ブチルグリシン
TPro=チオプロリン
HPro=ホモプロリン
NmA=N-メチルアラニン
Cya=システイン酸
Thi=β2-チエニル-Ala
hSer=ホモセリン
Aib=a-アミノイソ酪酸
Bip=ビフェニルアラニン
Nle=ノルロイシン
Ahx=2-アミノヘキサン酸
Nva=ノルバリン
【0090】
GLP-1類似体の改変型
本明細書に記載する任意のペプチドGLP-1類似体は、例えば本明細書に記載のように又は当技術分野で公知のように改変(修飾)することができる。米国特許第6,924,264号に記載のように、ポリペプチドをポリマーに結合させて、その分子量を増加させることができる。ポリマーの例としては、ポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ酸、アルブミン、ゼラチン、スクシニル-ゼラチン、(ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、脂肪酸、多糖、脂質アミノ酸及びデキストランが挙げられる。
【0091】
一例では、ポリペプチドは、アルブミン(例えばヒトアルブミン)、又はその類似体若しくは断片、又は免疫グロブリンのFc部分の付加により修飾する。このような手法は、例えば米国特許第7,271,149号に記載されている。
【0092】
一例では、ポリペプチドは、PCT公開WO 98/08871号に記載されているような親油性置換基の付加により修飾することができる。親油性置換基としては以下が挙げられる:部分的に又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナスレン骨格、直鎖状又は分枝状アルキル基;直鎖状又は分枝状脂肪酸のアシル基(例えばCH3(CH2)nCO-又はHOOC(CH2)mCO-などの基(n又はmは4〜38である))、直鎖状又は分枝状アルカンα,ω-ジカルボン酸のアシル基;CH3(CH2)p((CH2)q,COOH)CHNH-CO(CH2)2CO-(p及びqは整数であり、p+qは8〜33である)、CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CO-(rは10〜24である)、CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CO-(sは8〜24である)、COOH(CH2)tCO-(tは8〜24である)、-NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)uCH3(uは8〜18である)、-NHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)wCH3(wは10〜16である)、-NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)xCH3(xは10〜16である)、あるいは-NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NHCO(CH2)yCH3(yは1〜22である)。
【0093】
他の実施形態において、GLP-1ペプチドは、米国特許第6,593,295号に記載のように、マレイミド基などの化学反応基の付加により修飾することができる。これらの基は、共有結合を形成するように血液成分上の利用可能な反応性官能基と反応することができ、修飾型インスリン分泌促進ペプチドの有効な治療薬のin vivo半減期を延長することができる。タンパク質上の官能基と共有結合を形成するために、化学反応基として多様な活性カルボキシル基(例えばエステル)を用いることができ、ここでヒドロキシル部分はペプチドを修飾するために必要とされるレベルで生理学的に許容可能なものである。具体的な作用剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)、マレイミドヘキサン酸(MHA)、及びマレイミドウンデカン酸(MUA)が挙げられる。
【0094】
一級アミンは、NHSエステルの主要な標的である。タンパク質のN末端に存在するアクセス可能なα-アミン基又はリジンのε-アミンはNHSエステルと反応する。アミド結合は、NHSエステルコンジュゲート反応が一級アミンと反応してN-ヒドロキシスクシンイミドを放出する場合に形成される。反応基を含むこれらのスクシンイミドは、本明細書においてスクシンイミジル基と称する。本発明のいくつかの実施形態において、タンパク質上の官能基はチオール基であり、化学反応基はマレイミド含有基、例えばγ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBA又はMPA)である。そのようなマレイミド含有基を本明細書においてマレイド基(maleido groups)と称する。
【0095】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5〜7.4である場合にペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0において、マレイミド基とスルフヒドリル(例えば血清アルブミン又はIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応の速度は、アミンとの反応よりも1000倍速い。従って、マレイミド基とスルフヒドリルとの間の安定なチオエーテル結合が形成され、これは生理学的条件下で切断されることはない。
【0096】
ペプチドベクター
本発明の化合物は、本明細書に記載される任意のポリペプチド、例えば、表1に記載される任意のペプチド(例えば、AngioPep-1若しくはAngioPep-2)、又はその任意の断片若しくは類似体を特徴とする。ある実施形態では、ポリペプチドは、本明細書に記載されるポリペプチドと少なくとも35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は更に100%の同一性を有しうる。ポリペプチドは、本明細書に記載される配列の1つに対して1又は複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個)の置換を有しうる。他の改変は、以下により詳細に記載する。
【0097】
本発明はまた、これらのポリペプチドの断片(例えば、機能的断片)を特徴とする。ある実施形態では、断片は、特定の細胞型(例えば、肝臓、目、肺、腎臓、若しくは脾臓)に効率的に輸送され又は蓄積し得る、あるいはBBBを通過して効率的に輸送され得る。ポリペプチドの切断は、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端又はその組合せのいずれかからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はそれ以上のアミノ酸でありうる。他の断片としては、ポリペプチドの内部が欠失された配列が含まれる。
【0098】
更なるポリペプチドは、本明細書に記載されるアッセイ又は方法の1つを用いて同定することができる。例えば、候補ポリペプチドは従来のペプチド合成によって産生され、パクリタキセルとコンジュゲートされ、実験動物に投与されうる。生物学的活性を有するポリペプチドコンジュゲートは、例えば、腫瘍細胞に注入されコンジュゲートで処置された動物が、コンジュゲートで処置されなかった(例えば、非コンジュゲート薬剤で処置された)対照と比較して生存率を上昇させるその能力に基づいて同定することができる。例えば、生物学的活性を有するポリペプチドは、in situ脳かん流アッセイにおける脳実質でのその位置に基づいて同定することができる。
【0099】
他の組織での蓄積を測定するアッセイを、同様に実施してもよい。ポリペプチドの標識コンジュゲートを動物に投与し、様々な器官での蓄積を測定することができる。例えば、検出可能な標識(例えば、Cy5.5のような近赤外蛍光分光標識)にコンジュゲートされたポリペプチドは、生きたままのin vivoでの可視化を可能にする。このようなポリペプチドを、動物に投与し、器官中のポリペプチドの存在を検出することができるため、目的とする器官でのポリペプチドの蓄積速度及び蓄積量の測定が可能となる。他の実施形態では、ポリペプチドは、放射性同位体(例えば、125I)で標識され得る。その後、ポリペプチドを動物に投与する。一定期間後、動物を犠牲にし、器官を摘出する。各器官中の放射性同位体の量は、その後、当技術分野において公知の任意の方法を用いて測定し得る。特定の器官中の標識された候補ポリペプチドの量を、標識された対照ポリペプチドの量と比較することによって、候補ポリペプチドが特定の組織に到達及び蓄積する能力を確認できる。適切な陰性対照としては、特定の細胞型に効率的に輸送されないことが知られている任意のペプチド又はポリペプチドが挙げられる(例えば、BBBを通過しないAngiopepに関連するペプチド、又は他の任意のペプチド)。
【0100】
別の配列が、米国特許第5,807,980号(例えば本明細書中の配列番号102)、同第5,780,265号(例えば配列番号103)、同第5,118,668号(例えば配列番号105)に記載されている。アプロチニン類似体をコードするヌクレオチド配列の例は、atgagaccag atttctgcct cgagccgccg tacactgggc cctgcaaagc tcgtatcatc cgttacttct acaatgcaaa ggcaggcctg tgtcagacct tcgtatacgg cggctgcaga gctaagcgta acaacttcaa atccgcggaa gactgcatgc gtacttgcgg tggtgcttag;配列番号6;Genbankアクセッション番号X04666)である。アプロチニン類似体の他の例は、国際特許出願PCT/CA2004/000011号に開示されている合成アプロチニン配列(又はその一部)を用いてタンパク質BLAST(Genbank: www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を実施することにより見出すことができる。アプロチニン類似体の例はまた、アクセッション番号CAA37967(GI:58005)及び1405218C(GI:3604747)でも見出される。
【0101】
改変型ポリペプチド
本発明において用いるペプチドベクター及びペプチドGLP-1アゴニストは改変されたアミノ酸配列を有していてもよい。特定の実施形態では、改変は、望ましい生物学的活性(例えばBBBを通過する能力又はGLP-1アゴニスト活性)を顕著には破壊しない。改変は、元のポリペプチドの生物学的活性を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、又は95%)低減する、該活性に影響を及ぼさない、又は該活性を(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、若しくは1000%)上昇させる。改変型ペプチドは、ポリペプチドの特徴を有する又は最適化することができ、この特徴として、in vivoでの安定性、生体利用性、毒性、免疫学的活性、免疫学的同一性及びコンジュゲート特性がある。
【0102】
改変には、翻訳後プロセシングのような天然プロセス、又は当技術分野において公知の化学修飾技術が含まれる。改変(修飾)は、ポリペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端又はカルボキシ末端を含むポリペプチドのあらゆる場所に起こりうる。同じ種類の改変(修飾)は所定のポリペプチドのいくつかの部位に同程度又は様々な程度で存在してもよく、ポリペプチドは複数の種類の改変(修飾)を含んでもよい。ポリペプチドはユビキチン化の結果として分岐してもよく、それらは分岐を持つ又は持たない環状であってもよい。環状ポリペプチド、分岐ポリペプチド、及び分岐環状ポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスにより生じるものであってもよいし、又は合成されてもよい。他の改変(修飾)には、PEG付加、アセチル化、アシル化、アセトアミドメチル(acetomidomethyl)(Acm)基の付加、ADPリボシル化、アルキル化、アミド化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フラビン(fiavin)への共有結合、ヘム部分への共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、薬物の共有結合、マーカー(例えば蛍光標識若しくは放射標識)の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化反応、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化のようなトランスファーRNAを介したタンパク質へのアミノ酸の付加及びユビキチン化がある。
【0103】
改変型ポリペプチドはまた、(例えば、このような変化がポリペプチドの生物学的活性を実質的に変化させない場合)ポリペプチド配列へのアミノ酸の挿入、欠失、又は保存的若しくは非保存的置換(例えば、D-アミノ酸、デスアミノ酸(desamino acid))を含む。特に、本発明のポリペプチドのいずれかのアミノ又はカルボキシ末端への1又は複数のシステイン残基の付加によって、これらのポリペプチドのコンジュゲートが、例えばジスルフィド結合により容易となりうる。例えば、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)又はAngiopep-7(配列番号112)は、アミノ末端に単一システイン残基を含むように(それぞれ配列番号71、113及び115)又はカルボキシ末端に単一システイン残基を含むように(配列番号72、114及び116)改変することができる。アミノ酸置換は、保存的(すなわち、残基は同一の一般型若しくはグループの別の残基に置換される)又は非保存的(すなわち、残基は別の種類のアミノ酸に置換される)でありうる。加えて、天然には存在しないアミノ酸が、天然に存在するアミノ酸と置換されうる(すなわち、天然には存在しない保存的アミノ酸置換又は天然には存在しない非保存的アミノ酸置換)。
【0104】
合成されたポリペプチドは、天然にはDNAによってコードされないアミノ酸(例えば、天然には存在しないすなわち非天然アミノ酸)の置換を含みうる。天然には存在しない(非天然)アミノ酸の例は、D-アミノ酸、システインの硫黄原子に結合するアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸、PEG付加されたアミノ酸、式NH2(CH2)nCOOH(式中、nは2〜6である)のωアミノ酸、中性非極性アミノ酸、例えばサルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、及びノルロイシンなどを含む。フェニルグリシンは、Trp、Tyr、又はPheと置換しうる。シトルリン及びメチオニンスルホキシドは中性非極性であり、システイン酸は酸性であり、オルニチンは塩基性である。プロリンはヒドロキシプロリンと置換され、立体配座付与(conformation conferring)特性を保持しうる。
【0105】
類似体は、置換突然変異誘発によって生成され、本来のポリペプチドの生物学的活性を保持しうる。「保存的置換」と認識される置換の例は、表2に示される。このような置換が望ましくない変化をもたらす場合、表2において「置換の例」と表示される、又はアミノ酸のクラスについて本明細書に更に記載されるような、他の種類の置換が導入され、その産物がスクリーニングされる。
【0106】
機能又は免疫学的同一性の実質的な改変は、
(a)例えば、シート若しくはへリックス構造のような、置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖の体積、の維持に対するそれらの効果が著しく異なる置換を選択することによって実現される。天然に存在する残基は、共通の側鎖の特性に基づいて以下のグループに分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、
(2)中性親水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、
(3)酸性/陰性荷電:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、
(4)塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、
(6)芳香族性:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、
(7)極性:Ser、Thr、Asn、Gln、
(8)塩基性陽性荷電:Arg、Lys、His、及び
(9)荷電:Asp、Glu、Arg、Lys、His。
【0107】
他のアミノ酸置換は、表2に記載される。
【表2】

【0108】
ポリペプチド誘導体及びペプチド模倣物の調製
天然に存在するアミノ酸からなるポリペプチドに加えて、ペプチド模倣物又はポリペプチド類似体もまた、本発明に包含され、本発明の化合物において使用するペプチドベクター又はGLP-1アゴニストを形成しうる。ポリペプチド類似体は、製薬産業において、テンプレートポリペプチドと類似した特性を有する非ペプチド薬として、一般的に使用される。その非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物(peptide mimetics又はpeptidomimetics)」と呼ばれる(Fauchereら、Infect. Immun. 54:283-287, 1986;Evansら、J. Med. Chem. 30:1229-1239, 1987)。治療上有用なペプチド又はポリペプチドと構造的に関連しているペプチド模倣物は、同等の又は強化された治療又は予防効果をもたらすために使用されうる。通常、ペプチド模倣物は、天然に存在する受容体結合ポリペプチドのようなパラダイム(paradigm)ポリペプチド(すなわち、生物学的活性又は薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当技術分野において周知の方法によって、例えば-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シス及びトランス)、-CH2SO-、-CH(OH)CH2-、-COCH2-などの結合により場合により置換されていてもよい1つ以上のペプチド結合を有する(Spatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1:267, 1983;Spatolaら、Life Sci. 38:1243-1249, 1986;Hudsonら、Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979;及びWeinstein, 1983, Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein編、Marcel Dekker, New York)。このようなポリペプチド模倣物は、より経済的な製造、より高い化学的安定性、薬理学的特性の向上(例えば、半減期、吸収、効力、効率性)、抗原性の低下などを含む、天然に存在するポリペプチドより大きな利点を有しうる。
【0109】
本明細書に記載されるペプチドベクターは、BBBを効率的に通過し、特定の細胞型(例えば、本明細書に記載されるもの)を標的としうるが、それらの有効性はプロテアーゼの存在によって低下しうる。同様に、本発明において用いるGLP-1アゴニストの有効性も同様に低下しうる。血清プロテアーゼは特異的な基質要件を有し、例えば切断のためのL-アミノ酸及びペプチド結合がある。更に、血清中のプロテアーゼ活性の最大の成分であるエキソペプチダーゼは、通常、ポリペプチドの最初のペプチド結合に作用し、遊離のN-末端を必要とする(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。これを考慮すると、改変型のポリペプチドの使用は、しばしば有利である。改変型ポリペプチドは、本来のL-アミノ酸ポリペプチドの構造的特性を保持するが、有利なことにプロテアーゼ及び/又はエキソペプチダーゼによる切断を容易には受けにくい。
【0110】
コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸と同種のD-アミノ酸との体系的な置換(例えば、エナンチオマー;L-リジンの代わりにD-リジン)は、より安定なポリペプチドを生成するために使用されうる。従って、本明細書に記載されるようなポリペプチド誘導体又はペプチド模倣物は、すべてL-、すべてD-又はD、L混合のポリペプチドでありうる。ペプチダーゼはD-アミノ酸を基質として利用できないため、N-末端又はC-末端D-アミノ酸の存在は、ポリペプチドのin vivoでの安定性を上昇させる(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。リバースD-ポリペプチドは、L-アミノ酸を含むポリペプチドに対して逆順で配置されるD-アミノ酸を含むポリペプチドである。従って、L-アミノ酸ポリペプチドのC-末端残基は、D-アミノ酸ポリペプチドのN-末端になり、以降も同様である。リバースD-ポリペプチドは、L-アミノ酸ポリペプチドと同じ三次構造、従って同じ活性を保持するが、in vitro及びin vivoでの酵素分解に対してより安定であり、従って本来のポリペプチドより大きな治療効果を有する(Brady及びDodson, Nature 368:692-693, 1994;Jamesonら、Nature 368:744-746, 1994)。リバースD-ポリペプチドに加えて、コンセンサス配列又は実質的に同一なコンセンサス配列変化を含む拘束性ポリペプチド(constrained polypeptide)は、当技術分野において周知の方法によって作製されうる(Rizoら, Ann. Rev. Biochem. 61:387-418, 1992)。例えば、拘束性ポリペプチド(constrained polypeptide)は、ジスルフィド架橋を形成できるシステイン残基の付加によって作製され、それによって環状ポリペプチドを生じることができる。環状ポリペプチドは遊離のN-又はC-末端を持たない。従って、それらは当然、ポリペプチド末端で切断しないエンドペプチダーゼに対しては感受性であるが、それらはエキソペプチダーゼによるタンパク質分解を受けにくい。N-末端又はC-末端D-アミノ酸を有するポリペプチド及び環状ポリペプチドのアミノ酸配列は、それぞれ、N-末端若しくはC-末端D-アミノ酸残基の存在、又はそれらの環状構造の存在以外、それらが対応するポリペプチドの配列と通常同一である。
【0111】
分子内ジスルフィド結合を有する環状誘導体は、アミノ末端及びカルボキシ末端などの環化のために選択された部位に、適切なS-保護システイン又はホモシステイン残基を取り込みながら、従来の固相合成によって調製することができる(Sahら、J. Pharm. Pharmacol. 48:197, 1996)。ポリペプチド鎖合成の完了後、環化は、(1)S-保護基の選択的除去、その結果として起こる対応する2つの遊離SH-官能基の支持体上での酸化(S-S結合を形成する)、それに続く慣用的な支持体からの生成物の除去及び適切な精製処理によって、又は(2)完全な側鎖脱保護と並行した支持体からのポリペプチドの除去、それに続く高度に希釈した水溶液中での遊離SH-官能基の酸化によって実施され得る。
【0112】
分子内アミド結合を有する環状誘導体は、環化のために選択された部位に、適切なアミノ側鎖及びカルボキシル側鎖が保護されたアミノ酸誘導体を取り込みながら、従来の固相合成によって調製することができる。分子内-S-アルキル結合を有する環状誘導体は、環化のために選択された部位に、適切なアミノ保護側鎖を有するアミノ酸残基、及び適切なS-保護システイン又はホモシステイン残基を取り込みながら、従来の固相化学によって調製することができる。
【0113】
ポリペプチドのN-末端又はC-末端残基に作用するペプチダーゼに対して抵抗性をもたらす他の効果的なアプローチは、修飾されたポリペプチドがもはやペプチダーゼの基質ではないように、ポリペプチド末端に化学基を付加することである。このような化学修飾の1つは、どちらか一方又は両方の末端でのポリペプチドのグリコシル化である。いくつかの化学修飾、特にN-末端グリコシル化は、ヒト血清中のポリペプチドの安定性を上昇させることが示されている(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。血清安定性を向上させる他の化学修飾としては、アセチル基のような1〜20個の炭素の低級アルキルからなるN-末端アルキル基の付加、及び/又はC-末端アミド若しくは置換アミド基の付加が挙げられるが、それらに限定されるものではない。具体的には、本発明は、N-末端アセチル基及び/又はC-末端アミド基を有するポリペプチドからなる改変型(修飾)ポリペプチドを包含する。
【0114】
また、その誘導体がポリペプチドの望ましい機能的活性を保持するならば、通常はポリペプチドの一部ではない更なる化学的部分を有する他の種類のポリペプチド誘導体も、本発明に含まれる。このような誘導体の例としては、(1)アミノ末端又は他の遊離アミノ基のN-アシル誘導体(そこでのアシル基は、アルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)若しくはF-moc(フルオレニルメチル-O-CO-)のようなブロック基でありうる);(2)カルボキシ末端又は他の遊離カルボキシ基若しくはヒドロキシル基のエステル;(3)アンモニア若しくは適切なアミンとの反応によって生じる、カルボキシ末端又は他の遊離カルボキシル基のアミド;(4)リン酸化誘導体;(5)抗体又は他の生物学的リガンドとコンジュゲートした誘導体、及び他の種類の誘導体がある。
【0115】
本明細書に記載されるポリペプチドへの更なるアミノ酸残基の付加により生じる、より長いポリペプチド配列もまた、本発明に包含される。このようなより長いポリペプチド配列は、上述のポリペプチドと同様の生物学的活性及び特異性(例えば、細胞指向性)を有することが期待され得る。相当数の更なるアミノ酸を有するポリペプチドは除外されないが、いくつかの大きなポリペプチドは、有効な配列を遮蔽する立体配置をとり、その結果、標的(例えば、LRP又はLRP2などのLRP受容体ファミリーのメンバー)との結合を妨げうることが認識される。これらの誘導体は競合的拮抗薬として作用し得るかもしれない。従って、本発明は、伸張を有する本明細書に記載されるポリペプチド又はポリペプチドの誘導体を包含するが、望ましくは、その伸張はポリペプチド又はその誘導体の細胞標的化活性を損なわない。
【0116】
本発明に包含される他の誘導体は、直接的に、又はアラニン残基の短いストレッチ若しくはタンパク質分解の推定部位(例えばカテプシンによる、例えば、米国特許第5,126,249号及び欧州特許第495 049号参照)によるスペーサーを介して、互いに共有結合した、本明細書に記載されるような、2つの同一の又は2つの異なるポリペプチドからなるデュアルポリペプチド(dual polypeptides)である。本明細書に記載されるポリペプチドの多量体は、同一の又は異なるポリペプチド又はその誘導体から形成される分子の重合体からなる。
【0117】
本発明はまた、そのアミノ末端若しくはカルボキシ末端、又は両方で、異なるタンパク質のアミノ酸配列と結合した、本明細書に記載されるポリペプチド又はその断片を含むキメラタンパク質又は融合タンパク質であるポリペプチド誘導体を包含する。このようなキメラタンパク質又は融合タンパク質は、そのタンパク質をコードする核酸の組換え発現によって産生されうる。例えば、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、記載されたポリペプチドの1つと共有される少なくとも6アミノ酸を含み、望ましくは同等の又はより大きな機能的活性を有するキメラタンパク質又は融合タンパク質をもたらす。
【0118】
ペプチド模倣物を同定するためのアッセイ
上述のように、本明細書に記載されるポリペプチドの骨格構造及びファーマコフォア(pharmacophore)提示を再現するために作製された非ペプチド性化合物(ペプチド模倣物)は、しばしば、より高い代謝的安定性、より高い効力、より長い作用持続時間、及びより良好な生体利用性の特性を有する。
【0119】
ペプチド模倣物化合物は、生物学的ライブラリー、空間的に位置指定可能な(spatially addressable)並行固相若しくは液相ライブラリー、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、及びアフィニティークロマトクラフィー選抜を用いる合成ライブラリー法を含む、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法での多数のアプローチのいずれかを用いて入手され得る。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物の小分子ライブラリー(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)に適用できる。分子ライブラリーの合成方法の例は、当技術分野において、例えば、DeWittら、(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909, 1993);Erbら、(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994);Zuckermannら、(J. Med. Chem. 37:2678, 1994);Choら、(Science 261:1303, 1993);Carellら、(Angew. Chem, Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994及び同書 2061);並びにGallopら、(Med. Chem. 37:1233, 1994)に見出すことができる。化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992)又はビーズ上(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ上(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌若しくは胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869, 1992)又はファージ(Scott及びSmith, Science 249:386-390, 1990)、又はルシフェラーゼ、並びに適切な基質の生成物への変換の測定によって検出される酵素標識で提供されうる。
【0120】
本明細書に記載されるようなポリペプチドを同定した後、それは、溶解度の違い(例えば、沈殿)、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティー、イオン交換、及びサイズ排除)を含むが、それらに限定されない多くの標準的方法のいずれかによって、又はペプチド、ペプチド模倣物、若しくはタンパク質の精製に使用される他の任意の標準的技術によって、単離及び精製されうる。目的とする同定されたポリペプチドの機能的特性は、当技術分野において公知の任意の機能アッセイを用いて評価されうる。望ましくは、細胞内シグナル伝達における下流の受容体機能を評価するアッセイが使用される(例えば、細胞増殖)。
【0121】
例えば、本発明のペプチド模倣物化合物は、下記の3段階のプロセス:すなわち、(1)本明細書に記載されるポリペプチドを解析して、本明細書に記載される特定の細胞型を標的とするために必要な二次構造の領域を同定する段階;(2)立体配座を拘束したジペプチド代替物を使用して、骨格構造(backbone geometry)を改良し、これらの代替物に対応する有機基本骨格を提供する段階;及び(3)最良の有機基本骨格を使用して、天然のポリペプチドの望ましい活性を模倣するために設計された候補ライブラリーにおいて有機ファーマコフォアを提示する段階、を用いて入手されうる。より詳細には、3つの段階は下記の通りである。第一段階では、リード候補ポリペプチドを解析し、それらの構造を削減し、それらの活性のための必要条件を同定する。一連の原型ポリペプチド類似体が合成される。第二段階では、立体配座を拘束したジペプチド代替物を用いて、最良のポリペプチド類似体を検討する。インドリジジン-2-オン、インドリジジン-9-オン及びキノリジジノン(quinolizidinone)アミノ酸(それぞれI2aa、I9aa及びQaa)は、最良のペプチド候補の骨格構造(backbone geometry)を研究するための基本骨格として使用される。これら及び関連の基本骨格(Halabら、Biopolymers 55:101-122, 2000;及びHanessianら、Tetrahedron 53:12789-12854, 1997において概説される)は、ポリペプチドの特定の領域に導入され、ファーマコフォアを異なる方向に配向しうる。これらの類似体の生物学的評価は、活性のための幾何学的必要条件を模倣する改善されたリードポリペプチドを同定する。第三段階では、最も活性の高いリードポリペプチド由来の基本骨格を使用して、天然のペプチドの活性に関与するファーマコフォアの有機代替物を提示する。ファーマコフォア及び骨格は、並行合成方式で一体化される。ポリペプチドの誘導及び上記の段階は、当技術分野において公知の方法を用いた他の方法によって行ってもよい。
【0122】
本明細書に記載されるポリペプチド、ポリペプチド誘導体、ペプチド模倣物又は他の小分子から決定される構造機能相関は、同様の又はより良好な特性を有する類似の分子構造を改善及び作製するために使用することができる。従って、本発明の化合物はまた、本明細書に記載されるポリペプチドの構造、極性、荷電特性及び側鎖特性を共有する分子をも包含する。
【0123】
要約すると、本明細書の開示に基づき、当業者は、特定の細胞型(例えば、本明細書に記載されるもの)に薬剤を標的化するための化合物の同定に有用な、ペプチド及びペプチド模倣物スクリーニングアッセイを開発することができる。本発明のためのアッセイは、ロースループット(low-throughput)、ハイスループット、又はウルトラハイスループットスクリーニング方式のために開発しうる。本発明のアッセイは、自動化の可能なアッセイを含む。
【0124】
リンカー
GLP-1アゴニストは、ベクターペプチドと、直接的に(例えばペプチド結合などの共有結合を介して)結合してもよいし、又はリンカーによって結合してもよい。リンカーには、化学架橋剤(例えば切断可能なリンカー)及びペプチドがある。
【0125】
いくつかの実施形態において、リンカーは化学架橋剤である。GLP-1アゴニスト及びベクターペプチドは、スルフヒドリル基、アミノ基(アミン)、及び/若しくは炭水化物、又は任意の適当な反応基を介してコンジュゲートさせることができる。ホモ二官能性及びヘテロ二官能性架橋剤(コンジュゲート剤)は、多くの市販供与源から入手可能である。架橋に利用可能な領域は、本発明のポリペプチドに見出すことができる。架橋剤は、フレキシブルなアーム、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の炭素原子を含みうる。架橋剤の例としては、BS3([ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート];BS3はアクセス可能な一級アミンを標的とするホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである)、NHS/EDCはN-ヒドロキシスクシンイミド及びN-エチル-’(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;NHS/EDC(一級アミン基とカルボキシル基とのコンジュゲートを可能にする)、スルホ-EMCS([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド;スルホ-EMCSはスルフヒドリル及びアミノ基に対して反応性のヘテロ二官能性反応基(マレイミド及びNHS-エステル)である)、ヒドラジド(大部分のタンパク質は露出した炭水化物を含み、ヒドラジドはカルボキシル基と一級アミンとを連結するための有用な試薬である)、及びSATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート;SATAはアミンに対して反応性であり、保護されたスルフヒドリル基を付加する)が挙げられる。
【0126】
共有結合を形成するために、化学反応基として多様な活性カルボキシル基(例えばエステル)を用いることができ、ここでヒドロキシル部分はペプチドを修飾(改変)するために必要とされるレベルで生理学的に許容可能なものである。具体的な作用剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)、マレイミドヘキサン酸(MHA)、及びマレイミドウンデカン酸(MUA)が挙げられる。
【0127】
一級アミンは、NHSエステルの主要な標的である。タンパク質のN末端に存在するアクセス可能なα-アミン基又はリジンのε-アミンはNHSエステルと反応する。アミド結合は、NHSエステルコンジュゲート反応が一級アミンと反応してN-ヒドロキシスクシンイミドを放出する場合に形成される。反応基を含むこれらのスクシンイミドは、本明細書においてスクシンイミジル基と称する。本発明のいくつかの実施形態において、タンパク質上の官能基はチオール基であり、化学反応基はマレイミド含有基、例えばγ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBA又はMPA)である。そのようなマレイミド含有基を本明細書においてマレイド基(maleido groups)と称する。
【0128】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5〜7.4である場合にペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0において、マレイミド基とスルフヒドリル(例えば血清アルブミン又はIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応の速度は、アミンとの反応よりも1000倍速い。従って、マレイミド基とスルフヒドリルとの間の安定なチオエーテル結合が形成される。
【0129】
他の実施形態において、リンカーとしては、少なくとも1個のアミノ酸(例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、40又は50アミノ酸のペプチド)が挙げられる。いくつかの実施形態において、リンカーは単一アミノ酸(例えばCysなどの任意の天然アミノ酸)である。他の実施形態において、グリシンに富むペプチド、例えば配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(nは1、2、3、4、5又は6である)を有するペプチドなどを、米国特許第7,271,149号に記載のように用いる。他の実施形態において、セリンに富むペプチドリンカーを、米国特許第5,525,491号に記載のように用いる。セリンに富むペプチドリンカーには、式[X-X-X-X-Gly]y(Xの2つまではThrであり、残りのXはSerであり、yは1〜5である)(例えばSer-Ser-Ser-Ser-Gly(yは1より大きい))のものがある。いくつかの場合には、リンカーは単一アミノ酸(例えばGly又はCysなどの任意のアミノ酸)である。
【0130】
好適なリンカーの例は、コハク酸、Lys、Glu及びAsp、又はジペプチド、例えばGly-Lysが挙げられる。リンカーがコハク酸である場合には、そのカルボキシル基の一方がアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、その他方のカルボキシル基は、例えばペプチドのアミノ基又は置換基とアミド結合を形成する。リンカーがLys、Glu又はAspである場合には、そのカルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そのアミノ基は、例えば置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成しうる。Lysをリンカーとして用いる場合、さらなるリンカーをLysのε-アミノ基と置換基との間に挿入してもよい。1つの特定の実施形態において、さらなるリンカーはコハク酸であり、これは例えばLysのε-アミノ基と、置換基に存在するアミノ基と、アミド結合を形成する。一実施形態において、さらなるリンカーはGlu又はAsp(例えばLysのε-アミノ基とアミド結合を、及び置換基に存在するカルボキシル基と別のアミド結合を形成する)であり、すなわち、置換基はNε-アシル化リジン残基である。
【0131】
GLP-1アゴニスト活性アッセイ
化合物がGLP-1アゴニスト活性を有するかどうかの決定は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて実施することができる。GLP-1受容体(例えばヒト受容体)を発現する細胞からの環状AMP(cAMP)産生を化合物の存在下及び不在下において測定することができ、cAMP産生の増大は該化合物がGLP-1アゴニストであることを示す。
【0132】
米国特許出願公開第2008/0207507号に記載されている一例において、クローン化ヒトGLP-1受容体を発現する乳児ハムスター腎臓(BHK)細胞(BHK-467-12A)を100 IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、5%ウシ胎仔血清及び0.5 mg/mL Geneticin G-418(Life Technologies)を添加したDMEM培地中で増殖させた。細胞をリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、Verseneを用いて回収した。バッファー1(20 mM HEPES-Na、10 mM EDTA、pH 7.4)におけるUltraturraxを用いたホモジネートにより形質膜を細胞から調製した。ホモジネートを48,000×gで4℃にて15分遠心した。ペレットをホモジネートによりバッファー2(20 mM HEPES-Na、0.1 mM EDTA、pH 7.4)中に懸濁し、続いて48,000×gで4℃にて15分遠心した。洗浄手順をもう1回繰り返した。最終ペレットをバッファー2に懸濁し、それをすぐにアッセイに使用するか又は−80℃で保存した。
【0133】
機能的受容体アッセイは、インスリン分泌促進剤による刺激に応答したcAMPを測定することにより行った。形成されたcAMPは、AlphaScreenTM cAMPキット(Perkin Elmer Life Sciences)により定量した。96ウエルマイクロタイタープレートの半分の領域で、総量50μLのバッファー3(50 mM Tris-HCl、5 mM HEPES、10 mM MgCl2、pH 7.4)で、また以下:1 mM ATP、1μM GTP、0.5 mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、0.01% Tween-20、0.1% BSA、6μgの膜調製物、15μg/ml アクセプタービーズ、20μg/ml ドナービーズ(6 nMビオチニル-cAMPと共にプレインキュベート)を添加して、インキュベーションを行った。アゴニスト活性について試験しようとする化合物は、バッファー3に溶解し希釈した。各実験のためにGTPを新たに調製した。プレートを暗所にて穏やかに撹拌しながら室温で3時間インキュベートし、続いてFusionTM装置(Perkin Elmer Life Sciences)においてカウントした。濃度応答曲線を個々の化合物についてプロットし、Prism v. 4.0(GraphPad, Carlsbad, Calif.)による4パラメータロジスティックモデルを用いてEC50値を推定した。
【0134】
治療用途
本発明の化合物は、脳又は特定の組織においてGLP-1アゴニスト活性が望まれる、任意の治療用途に用いることができる。GLP-1アゴニスト活性は、インスリン分泌の刺激(すなわちインクレチンホルモンとして作用する)、及びグルカゴン分泌の阻害と関連しており、それにより食後血糖移動の制限に寄与している。GLP-1アゴニストはまた消化管運動及び消化管分泌を阻害することができ、そのためエンテロガストロン及び「回腸抑制(ileal brake)」機構の一部として作用する。またGLP-1は食欲及び食物摂取の生理学的調節因子でもあるようである。これらの作用のため、GLP-1及びGLP-1受容体アゴニストは、例えばKinzig et al., J Neurosci 23:6163-6170, 2003において概説されているような代謝障害の治療に用いることができる。そのような障害としては、肥満、高血糖、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン抵抗性、IGT、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管系疾患及び高血圧が挙げられる。
【0135】
GLP-1はまた、米国特許第5,846,937号に記載されているように鎮静作用又は抗不安作用を含む神経学的作用を有する。従って、GLP-1アゴニストは、不安神経症、攻撃性、精神病、発作、パニック発作、ヒステリー又は睡眠障害の治療に用いることができる。GLP-1アゴニストはアミロイド-βペプチド及びグルタミン酸誘発アポトーシスに対してニューロンを保護することが示されている(Perry et al., Curr Alzheimer Res 2:377-85, 2005)ため、GLP-1アゴニストはまたアルツハイマー疾患の治療に用いることもできる。
【0136】
GLP-1アゴニストの他の治療用途としては、学習の改善、神経保護の増強、並びに例えばニューロン新生の調節による中枢神経系の疾患又は障害(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、卒中、ADD及び神経精神病症候群)の症状の緩和(米国特許第6,969,702号及び米国特許出願第2002/0115605号)がある。GLP-1アゴニストを用いたニューロン新生の刺激は、例えばBertilsson et al., J Neurosci Res 86:326-338, 2008に記載されている。
【0137】
また他の治療用途としては、肝臓幹細胞/前駆細胞の機能的膵臓細胞への変換(米国特許出願公開第2005/0053588号);β細胞劣化の防止(米国特許第7,259,233号及び同第6,569,832号)及びβ細胞増殖の刺激(米国特許出願公開第2003/0224983号);肥満の治療(米国特許第7,211,557号);食欲の抑制及び満腹の誘導(米国特許出願公開第2003/0232754号);過敏性腸症候群の治療(米国特許第6,348,447号);心筋梗塞(米国特許第6,747,006号)及び卒中(PCT公開WO00/16797号)に関連する罹患率及び/又は死亡率の低減;Q波心筋梗塞の不在を特徴とする急性冠症候群の治療(米国特許第7,056,887号);術後異化変化の軽減(米国特許第6,006,753号);冬眠心筋又は糖尿病性心筋症の治療(米国特許第6,894,024号);ノルエピネフリンの血漿血中レベルの抑制(米国特許第6,894,024号);尿中ナトリウム排泄の増大、尿中カリウム濃度の低下(米国特許第6,703,359号);毒性循環血液量過多に関連する症状又は障害、例えば腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、及び高血圧の治療(米国特許第6,703,359号);変力反応の誘導及び心筋収縮能の増大(米国特許第6,703,359号);多嚢胞性卵巣症候群の治療(米国特許第7,105,489号);呼吸窮迫の治療(米国特許出願公開第2004/0235726号);非消化経路による、すなわち静脈内、皮下、筋内、腹腔内又は他の注射若しくは注入による栄養改善(米国特許第6,852,690号);腎症の治療(米国特許出願公開第2004/0209803号);左心室収縮機能障害、例えば左心室駆出分画率の異常を伴うものの治療(米国特許第7,192,922号);例えば胃腸障害(下痢、術後ダンピング症候群及び過敏性腸症候群など)の治療又は予防のため、及び内視鏡処置における前投与としての、幽門洞十二指腸運動の阻害(米国特許第6,579,851号);重症疾患多発ニューロパシー(CIPN)及び全身性炎症反応症候群(SIRS)の治療(米国特許出願公開第2003/0199445号);トリグリセリドレベルの調節及び脂質異常症の治療(米国特許出願公開第2003/0036504号及び同第2003/0143183号);虚血後の血流の再かん流によって生じた器官組織損傷の治療(米国特許第6,284,725号);冠動脈性心疾患リスク因子(CHDRF)症候群の治療(米国特許第6,528,520号)などがある。
【0138】
投与及び用量
本発明はまた、治療上有効な量の本発明の化合物を含有する医薬組成物を特徴とする。組成物は、様々な薬物送達系で用いるために製剤化され得る。1つ以上の生理的に許容される賦形剤又は担体もまた、適切な製剤のために組成物に含め得る。本発明における使用のために適切な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed., 1985に見られる。薬物送達方法の短い総説については、例えば、Langer(Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0139】
医薬組成物は、予防的及び/又は治療的処置のための、非経口投与、鼻腔内投与、局所(topical)投与、経口投与、又は経皮手段による投与のような局所(local)投与を目的とする。医薬組成物は、非経口的に(例えば、静脈注射、筋肉注射、又は皮下注射によって)、あるいは経口摂取によって、あるいは血管症状又は癌症状に侵された部位への局所(topical)適用又は関節内注射によって投与され得る。更なる投与経路は、血管内投与、動脈内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、脳室内投与、硬膜内投与、並びに経鼻投与、点眼投与、強膜内投与、眼窩内投与、直腸投与、局所(topical)投与、又はエアロゾル吸入投与を含む。デポー注射又は浸食性インプラント若しくは成分のような手段による持続放出性投与もまた、明確に本発明に包含される。従って、本発明は、許容される担体、好ましくは、例えば、水、緩衝水、生理食塩水、PBSなどの水性担体に溶解又は懸濁した上述の薬剤を含有する非経口投与用組成物を提供する。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、等張性調整剤、湿潤剤、界面活性剤などの、近似の生理条件に必要とされるような、製薬上許容される助剤物質を含有しうる。本発明はまた、経口送達用組成物を提供し、それは、錠剤、カプセルなどの製剤のために、結合剤又は充填剤のような不活性成分を含有しうる。更に、本発明は、局所(local)投与用組成物を提供し、それは、クリーム、軟膏などの製剤のために、溶媒又は乳化剤のような不活性成分を含有しうる。
【0140】
これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌されてもよく、又はろ過滅菌されてもよい。その結果得られた水溶液は、そのまま使用のために包装されても、又は凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥調製物は投与前に滅菌した水性担体と混合される。調製物のpHは、通常3〜11であり、より好ましくは5〜9又は6〜8、最も好ましくは7〜8(例えば7〜7.5)である。得られた固形の組成物は、それぞれ一定量の上述の薬剤(1若しくは複数)を含有する、錠剤又はカプセルの密封包装のような、多数の単回投与単位に包装されうる。固形の組成物はまた、局所に適用可能なクリーム又は軟膏用に作られた絞り出しチューブのような、量を調節できる容器に包装され得る。
【0141】
有効量を含有する組成物は、予防的又は治療的処置のために投与され得る。予防的適用では、組成物は、臨床的に決定される素因、あるいは代謝障害又は神経学的疾患に対する感受性の上昇を有する被験体に投与し得る。本発明の組成物は、臨床疾患の発症を遅延させる、減少させる、又は好ましくは予防するために十分な量で、患者(例えば、ヒト)に投与し得る。治療的適用では、組成物は、既に疾患(例えば本明細書に記載するもののような代謝障害又は神経学的疾患)に罹患している被験体(例えば、ヒト)に、疾患の症状及びその合併症を回復させる、又は少なくとも部分的に抑制するために十分な量で投与する。この目的を達成するために適切な量は、「治療上有効な量」、すなわち疾患又は病状に関連するいくつかの兆候を実質的に改善するために十分な化合物の量と定義される。例えば、代謝障害(例えば本明細書に記載のものなど)の治療では、疾患又は症状の任意の兆候を減少、予防、遅延、抑制、又は阻止する薬剤又は化合物は、治療上有効であると思われる。治療上有効な量の薬剤又は化合物は、疾患又は症状を治癒する必要はないが、個体において、疾患若しくは症状の発症が遅延、阻害、若しくは予防されるような、又は疾患若しくは症状の兆候が改善されるような、又は疾患若しくは症状の期間が変化するような、又は、例えば、比較的軽症であるような、又は回復が促進されるような、疾患又は症状の治療を提供するであろう。
【0142】
Exendin-4は、典型的には、糖尿病の治療のために、用量当たり5μg又は10μgのいずれかで1日に2回摂取される。本発明の化合物は、exendin-4について特定していたのと当量で投与することができ、当量のより高い用量で投与してもよいし(例えば10%、25%、50%、100%、200%、500%、1000%多い用量)又は当量のより低い用量で投与してもよい(例えば当量の90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.1%)。この用途に有効な量は、疾患又は症状の重症度並びに患者の体重及び全身状態に依存しうるが、通常、1用量あたり患者あたり約0.05μg〜約1000μg(例えば0.5〜100μg)当量のexendin-4の薬剤の範囲である。初回投与及び追加投与のための適切な投薬計画は、初回投与に続く1回以上の、1時間に1回、1日1回、週1回、又は月1回の次の投与までの間隔での反復投与が典型的である。本発明の組成物に含まれる薬剤の全有効量は、哺乳動物に、ボーラスとして又は比較的短時間の点滴によって1回用量で投与でき、あるいは、複数回投与がより長期間にわたって(例えば、4〜6、8〜12、14〜16、若しくは18〜24時間に1回、又は2〜4日に1回、1〜2週間に1回、1ヶ月に1回)投与される分割治療プロトコールを用いて投与され得る。別法としては、血中で治療上有効な濃度を維持するために十分な持続静脈注射が想定される。
【0143】
本発明の組成物内に存在し、哺乳動物(例えば、ヒト)に適用される本発明の方法に使用される、1つ以上の薬剤の治療上有効な量は、哺乳動物の年齢、体重、及び症状の個体差を考慮して、当業者によって決定され得る。本発明の特定の化合物はBBBを通過する能力の増大を示すため、本発明の化合物の投与量は、非コンジュゲートGLP-1アゴニストの治療効果に必要とされる当量の用量よりも低くすることができる(例えば該用量の約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.1%より低い又はそれに等しい)。本発明の薬剤は、被験体(例えば、ヒトのような哺乳動物)に、処置される被験体に望ましい結果(例えば血糖の低下、体重増加の低下、体重減少の増大、及び食物摂取の低下)をもたらす量である有効な量で投与される。治療上有効な量もまた、当業者によって実験的に決定され得る。
【0144】
患者はまた、1週間あたり1回以上(例えば、1週間あたり2、3、4、5、6、又は7回以上)、1用量あたりexendin-4と比較して約0.05μg〜1000μg当量の範囲の薬剤を、1週間あたり0.1〜2,500(例えば、2,000、1,500、1,000、500、100、10、1、0.5、又は0.1)μg用量で、投与を受けうる。患者はまた、2又は3週間毎に1回、1用量あたり0.1〜3,000μgの範囲で、組成物の薬剤の投与を受けうる。
【0145】
有効量を含む本発明の組成物の単回投与又は複数回投与は、治療している医師によって選択される用量レベル及び投与様式で実施され得る。用量及び投与計画は、臨床医が通常行う方法又は本明細書に記載される方法に従い治療期間にわたって観察されうる、患者の疾患又は症状の重症度に基づいて決定及び調整され得る。
【0146】
本発明の化合物は、従来の処置又は治療方法と併用して使用されてもよく、あるいは従来の処置又は治療方法とは別に使用されてもよい。
【0147】
本発明の化合物が他の薬剤による治療と併用して投与される場合、それらは順次又は同時に個体に投与されうる。別法としては、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載されるような製薬上許容される賦形剤、及び当技術分野において公知の別の治療薬又は予防薬と組み合わせた本発明の化合物との組合せで構成されうる。
【0148】
実施例
【実施例1】
【0149】
GLP-1アゴニスト-Angiopepコンジュゲートの合成
GLP-1コンジュゲートの例であるexendin-4-cysAn2 N末端、及びExendin-4-cysAn2 C末端、並びにAngiopep-1/Exendin-4コンジュゲートは、cys-An2(配列番号113)、An2-cys(配列番号114)、又は Angiopep-1(配列番号67)におけるスルフィドと[Lys(マレイミドヘキサン酸)39]exendin-4を1 x PBSバッファー中で1時間かけてコンジュゲートさせることにより作製した。これによって、図2に示すように、exendin-4/Angiopepコンジュゲートが生成された。
【0150】
第二セットのexendin-4/Angiopepコンジュゲートは、図3に示すように、N末端に結合したマレイミドプロピオン酸(MPA)、マレイミドヘキサン酸(MHA)、又はマレイミドウンデカン酸(MUA)を有するAngiopep-2と、[Cys32]exendin-4を反応させて、コンジュゲートを形成することにより作製した。
【実施例2】
【0151】
in situでのexendin-4/Angiopep-2コンジュゲートの脳への取込み
exendin-4/Angiopep-2コンジュゲートの脳への取込みを測定するために、in situかん流アッセイを用いた。米国特許出願公開第2006/0189515号に記載されたアッセイを以下のように実施する。標識したexendin-4及びexendin-4/Angiopep-2コンジュゲートの取込みを、本発明者らの実験室においてマウス脳内の薬物取込みの研究のために改変したin situかん流法を用いて測定した(Dagenaisら、J Cereb Blood Flow Metab. 20:381-6, 2000;Cisterninoら、Pharm Res 18, 183-190, 2001)。簡単に説明すると、ケタミン/キシラジン(140/8 mg/kg腹腔内)で麻酔したマウスの右総頸動脈を露出させ、後頭動脈に対し吻側の、総頸動脈の分岐部のレベルで連結した。次いで、該総頸動脈に、ヘパリン(25 U/ml)を充填し、26ゲージの注射針に取り付けたポリエチレンチューブを吻側でカテーテルとして挿入した。かん流液(95%O2及び5%CO2ガスを供給した、pH7.4のKrebs/重炭酸バッファー中の[125I]-タンパク質又は[125I]-ペプチド)を含む注射器を注入ポンプ(HarvardポンプPHD 2000;Harvard Apparatus)内に配置して、カテーテルに接続した。かん流に先立ち、心室を断つことにより、対側の血流寄与を排除した。脳を流速1.15 ml/分で5分間かん流した。放射標識した分子のかん流後、脳をKrebsバッファーでさらに60秒間かん流することにより、過剰[125I]-タンパク質を洗い流した。次に、マウスの頭部を切断することにより、かん流を停止してから、右半球を氷上に分離した後、毛細血管の枯渇(depletion)を実施した。ホモジネート、上清、ペレット、及びかん流液のアリコートを取得して、それらの内容物を測定し、見かけの分布容積を評価した。
【0152】
上記の実験から、両方のexendin-4/Angiopep-2コンジュゲートの脳分布は、非コンジュゲートexendin-4と比較して15〜50倍増加した。exendin-4の脳分布は、0.2 ml/100 g/2分で観察されたのに対し、N末端が修飾されたコンジュゲートは、3 ml/100 g/2分で観察され、C末端が修飾されたコンジュゲートは、10 ml/100 g/2分で観察された。結果を図4に示す。
【実施例3】
【0153】
exendin-4/Angiopep-2コンジュゲートによる肥満マウスの処置
肥満マウス(ob/obマウス)に[Lys39-MHA]exendin-4/Angiopep-2-Cys-NH2コンジュゲート(Exen-An2)を投与した。
【表3】

【0154】
1.6μg/kg用量のExen-An2は、1μg/kg用量のexendin-4と当量である。各マウスの体重を毎日計量した。食物摂取は、各グループの平均値に基づいて推定し、処置から1時間後に血糖を測定した。10日の処置後、exendin-4又はコンジュゲートのいずれについても、高用量で処置したマウスの体重増加及び食物摂取は、対照より低かった(図5)。食物摂取もまた、対照と比較して、exendin-4又はコンジュゲートのいずれについても、高用量を受けたマウスほど低下した(図6)。
【0155】
血糖の測定値から、低用量のコンジュゲートが、高用量のexendin-4又はExen-An2と同じ効果を有することがわかった(図7)。従って、exendin-4と比較して、コンジュゲートを用いた場合、血糖について1/10の用量で同様の効果が観察される。
【実施例4】
【0156】
Exendin-4-Angiopep-2二量体コンジュゲートの作製
本明細書に記載のコンジュゲーション化学又は同様の化学を用いて、図8Aに示す構造のExendin-4-Angiopep-2二量体を作製した。簡単に説明すると、[Lys39] Exendin-4のC末端リジンにおけるアミン基を、Angiopep-2二量体と、第一Angiopep-2ペプチドのN末端トレオニンにおいてMHAリンカーを介してコンジュゲートさせた。N-スクシンイミジル-S-アセチルチオプロピオネート(SATP)リンカーをAngiopep-2-CysペプチドとそのN末端で結合した。このシステインを介して、Angiopep-2-Cysペプチドを第二のAngiopep-2-ペプチド(MPAリンカーを含むように改変されている)とコンジュゲートさせた。該二量体を、MHAリンカーにより[Lys39] Exendin-4と結合させた。また、対照分子(Exen-S4)も、そのN末端で、[Cys32]Exendin-4のシステインとMHAリンカーを介してコンジュゲートさせたAngiopep-2のスクランブル形態を用いて作製した(図8B)。これらのコンジュゲートは、トリフルオロ酢酸(TFA)塩として調製した。
【実施例5】
【0157】
exendin-4-Angiopep-2二量体コンジュゲートの特性決定
GLP-1アゴニストの一例であるexendin-4の脳取込みを、非コンジュゲートのもの、単独のAngiopep-2とコンジュゲートしたもの、スクランブルAngiopep-2(S4)とコンジュゲートしたもの、又はAngiopep-2の二量体形態とコンジュゲートしたものについて、in situで測定した。実験は、前記の実施例2に記載したように実施した。
【0158】
これらの結果から、exendin-4類似体とAngiopep-2の二量体形態のコンジュゲートによって、非コンジュゲートexendin-4、又は単独のAngiopep-2とコンジュゲートしたexendin-4のいずれと比較しても、驚くほど高いBBB通過能力を有するコンジュゲートが得られることがわかった(図9)。
【0159】
また、DIOマウスにおいて血糖を低減するexendin-4-Angiopep-2二量体コンジュゲートの能力も試験した。マウスに、対照、exendin-4、又はexendin-4-Angiopep-2二量体コンジュゲートを含むボーラスを注射した。exendin-4又はコンジュゲートのいずれかを受けたマウスは、対照を受けたマウスと比較して、血糖の低減を示した(図10)。
【実施例6】
【0160】
exendin-4-Angiopep-2二量体コンジュゲートの特性決定
GLP-1アゴニストの一例であるexendin-4の脳への取込みを、非コンジュゲートのもの、単独のAngiopep-2とコンジュゲートしたもの、S4とコンジュゲートしたもの、又はAngiopep-2の二量体形態とコンジュゲートしたものについて、in situで測定した。実験は、前述の実施例2に記載したように実施した。
【0161】
これらの結果から、exendin-4類似体とAngiopep-2の二量体形態のコンジュゲートによって、非コンジュゲートexendin-4、又は単独のAngiopep-2とコンジュゲートしたexendin-4のいずれと比較しても、驚くほど高いBBB通過能力を備えたコンジュゲートが得られることがわかった(図8)。
【0162】
また、DIOマウスにおいて血糖を低減するexendin-4-Angiopep-2二量体コンジュゲートの能力も試験した。マウスに、対照、exendin-4、又はexendin-4-Angiopep-2二量体コンジュゲートを含むボーラスを注射した。exendin-4又はコンジュゲートのいずれかを受けたマウスは、対照を受けたマウスと比較して、血糖の低減を示した(図9)。
【0163】
その他の実施形態
本明細書において言及される特許、特許出願(2008年10月15日に出願された米国特許仮出願第61/105,618号など)、及び刊行物はすべて、あたかもそれぞれの独立した特許、特許出願、又は刊行物が、参照として組み込まれると明示的かつ個別に示されていたかの如く、それと同じ範囲まで、参照として本明細書に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を有する化合物:
A-X-B
〔式中、Aは血液脳関門を通過することができるペプチドであり;Xはリンカーであり;BはGLP-1アゴニストである。〕
又はその製薬上許容される塩。
【請求項2】
Aが、配列番号1〜105、107〜111、113、及び114からなる群より選択される配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、及びAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択される配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記配列同一性が少なくとも90%である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、及びAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、及びAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Aが二量体ポリペプチドである、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
AがAngiopep-2の二量体である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、以下の構造:
【化1】

又はその製薬上許容される塩を含む、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Bがポリペプチドを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Bが、exendin-4、又はGLP-1アゴニスト活性を有するその類似体若しくは断片を含む、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Bが、exendin-4、[Lys39]exendin-4、又は[Cys32]exendin-4である、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
Aが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、又はAngiopep-2-cys(配列番号114)を含む、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Xが、式:
【化2】

〔式中、nは2〜15の整数であり;YはA上のチオールで、かつZは、B上の一級アミンであるか、又はYはB上のチオールで、かつZはA上の一級アミンである。〕
を有する、請求項1〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
nが3、6、又は11である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Aがcys-AngioPep-2(配列番号113)、AngioPep-2-cys-NH2(配列番号114)であり、Bが[Lys39]exendin-4であり、YがAのシステイン上のチオール基であり、ZがBのLys39のε-アミンである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Bがポリペプチドであり、Xがペプチド結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
Bがポリペプチドであり、Xが少なくとも1個のアミノ酸であり、A及びBはそれぞれ、ペプチド結合によりXに共有結合している、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の化合物をコードする核酸分子。
【請求項20】
プロモーターに機能的に連結されている請求項19に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターによってコードされるポリペプチドを細胞において発現させるステップと、該ポリペプチドを精製するステップを含む、請求項17又は18に記載の化合物を製造する方法。
【請求項22】
固体支持体上で前記化合物を合成するステップを含む、請求項17又は18に記載の化合物を製造する方法。
【請求項23】
代謝障害を有する被験体の治療方法であって、該障害を治療するのに十分な量で、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項24】
前記十分な量が、ペプチドベクターとコンジュゲートされていない場合のGLP-1アゴニストの当量に必要な量の50%未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記量が15%未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記代謝障害が、糖尿病、肥満、肥満の結果としての糖尿病、高血糖、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン抵抗性、血糖能障害(IGT)、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管系疾患、又は高血圧である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記障害が糖尿病である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記障害が2型糖尿病である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記障害が肥満である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
被験体の食物摂取を減少させる又はその体重を減少させる方法であって、食物摂取を減少させる又は体重を減少させるのに十分な量で請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を被験体に投与することを含む方法。
【請求項31】
前記被験体が過体重又は肥満である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記被験体が過食症である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
不安神経症、運動障害、攻撃性、精神病、発作、パニック発作、ヒステリー、睡眠障害、アルツハイマー病、及びパーキンソン病からなる群より選択される障害を治療又は予防する方法であって、上記障害を治療又は予防するのに十分な量で、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を被験体に投与することを含む方法。
【請求項34】
被験体においてニューロン新生を増大させる方法であって、請求項1〜18のいずれかに記載の有効量の化合物を該被験体に投与することを含む方法。
【請求項35】
前記被験体が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、発作、ADD、又は神経精神症候群に罹患している、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ニューロン新生の増大により、前記被験体の学習を改善する又は神経保護を増強する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
被験体において、肝臓幹細胞/前駆細胞を機能的膵細胞に変換するため;β細胞の劣化を防止して、β細胞の増殖を刺激するため;肥満を治療するため;食欲を抑制して、満腹を誘導するため;過敏性腸症候群を治療するため;心筋梗塞及び卒中に関連する罹患率及び/又は死亡率を低下させるため;Q波心筋梗塞の不在を特徴とする急性冠症候群を治療するため;術後の異化変化を軽減するため;冬眠心筋又は糖尿病性心筋症を治療するため;ノルエピネフリンの血漿血中レベルを抑制するため;尿中ナトリウム排泄を増大し、尿中カリウム濃度を低下させるため;毒性循環血液量過多に関連する症状又は障害、例えば腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、及び高血圧を治療するため;変力応答を誘導して、心筋収縮能を増大するため;多嚢胞性卵巣症候群を治療するため;呼吸窮迫を治療するため;非消化経路により、すなわち静脈内、皮下、筋内、腹腔内経路により、又は他の注射若しくは注入により、栄養を改善するため;腎症を治療するため;左心室収縮機能障害(例えば左心室駆出分画率の異常を伴うもの)を治療するため;幽門洞十二指腸運動を阻害するため(例えば、下痢、術後ダンピング症候群及び過敏性腸症候群などの胃腸障害を治療又は予防するため、並びに内視鏡処置における前投与として);重症疾患多発ニューロパシー(CIPN)及び全身性炎症反応症候群(SIRS)を治療するため;トリグリセリドレベルを調節して、脂質異常症を治療するため;虚血後の血流の再かん流に起因する器官組織損傷を治療するため;あるいは冠動脈性心疾患リスク因子(CHDRF)症候群を治療するための方法であって、請求項1〜18のいずれかに記載の有効量の化合物を前記被験体に投与することを含む方法。
【請求項38】
被験体においてGLP-1受容体活性を増大する方法であって、GLP-1受容体活性を増大するのに十分な量で請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を被験体に投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−505637(P2012−505637A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531313(P2011−531313)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001476
【国際公開番号】WO2010/043047
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(509110839)アンジオケム,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】