説明

GM−95物質を含む抗腫瘍効果増強剤、抗腫瘍用組み合わせ製剤及び抗腫瘍剤

下記式(1):


(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、抗腫瘍性物質の抗腫瘍効果増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、2種以上の抗腫瘍作用を有する化合物を組み合わせて使用(併用)する抗腫瘍製剤に関する。より詳細には、複数個のオキサゾール環を有する抗腫瘍性化合物と他の抗腫瘍性物質とを併用した抗腫瘍製剤に関する。
【背景技術】
腫瘍細胞(癌細胞)は通常細胞より増殖速度が大きく、腫瘍細胞の死滅効果が増殖速度と同等又はそれ以下では癌の進行を抑える程度であり、癌の根本的な治療とはなりえない。また、各抗腫瘍剤には最適投与量があり、該投与量より多量の抗腫瘍剤を投与しても、それに比例して腫瘍細胞の死滅効果が上昇するというわけではなく、通常は僅かに上昇するに過ぎない。しかも多量投与による正常細胞の損傷等の悪影響の方が強く現れることが多く、1種類の抗腫瘍剤の多量投与による治療効果の増大は殆ど望めない。
このようなことから、抗腫瘍効果の向上及び副作用の軽減のため、或いは、腫瘍細胞が薬剤に対する耐性を獲得することを防止するために2種以上を組み合せた多剤併用療法が行なわれることが多い。
近年、新たな癌分子標的の一つとしてテロメラーゼが注目されている。テロメラーゼは、正常細胞では一部の組織を除き発現していないが、癌細胞では実に90%以上にもおよぶ細胞において高頻度に再発現している。テロメア長は細胞の老化と密接に関係しており、癌細胞をテロメラーゼ阻害剤で処理することにより人工的に細胞老化を引き起こすことが期待される。一方、現在臨床で使用されている薬剤の40%が、微生物代謝産物をはじめとする天然由来の化合物であり、今でも薬剤開発のソースとして広く用いられている。
以前に、本発明者らは、土壌分離放線菌(ストレプトマイセス属に属する3533−SV4株)が複数個のオキサゾール環を有する抗腫瘍性化合物(以下、「GM−95物質」とも呼ぶ。)を産生することを見出し、その詳細について既に報告した(例えば、国際公開第00/24747号パンフレット)。GM−95物質は、現在報告されているテロメラーゼ阻害剤のうち、合成化合物も含め最も強力なものであった。GM−95物質の数種の癌細胞に対する作用を検討した結果、テロメアの短縮を伴う細胞老化を誘導した。またこれらの老化細胞は、造腫瘍性が消失していたことから、抗腫瘍剤としての可能性が示唆された。
しかしながら、GM−95物質等のテロメラーゼ阻害物質と他の抗腫瘍性物質とを併用した抗腫瘍医薬及びその併用効果については何ら知られていない。
【特許文献1】国際公開第00/24747号パンフレット
【発明の開示】
本発明は、2種以上の抗腫瘍性物質を併用することにより抗腫瘍作用を相乗的に高めること、及びそのような抗腫瘍作用が相乗的に高められた抗腫瘍併用剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、GM−95物質又はその誘導体と他の抗腫瘍物質とを併用すると、それぞれ単独で用いた場合と比較して顕著に抗腫瘍活性が高くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍効果増強剤。
(2)前記抗腫瘍性物質がアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌抗生物質、微小管阻害剤、ホルモン剤、白金錯体、トポイソメラーゼ阻害剤、生物製剤及び分子標的治療剤からなる群より選択されるものである前記(1)記載の抗腫瘍効果増強剤。
(3)前記抗腫瘍性物質がマスタード薬、ニトロソウレア系化合物、葉酸系化合物、ピリミジン系化合物、プリン系化合物、アントラサイクリン系化合物、ピンアルカロイド、タキサン、抗エストロゲン薬、LH−RH作動薬、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、インターフェロン、インターロイキン、分子標的治療薬、シスプラチン、カルボプラチン及びネダプラチンからなる群より選択されるものである前記(1)記載の抗腫瘍効果増強剤。
(4)頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍、悪性リンパ腫及び白血病からなる群より選択される疾患の治療のための前記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗腫瘍効果増強剤。
(5)下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と他の抗腫瘍性物質とを併用する、前記式(1)の化合物と前記他の抗腫瘍性物質とを同時に、別々に又は順次投与するための抗腫瘍用組み合わせ製剤。
(6)前記抗腫瘍性物質がアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌抗生物質、微小管阻害剤、ホルモン剤、白金錯体、トポイソメラーゼ阻害剤、生物製剤及び分子標的治療剤からなる群より選択されるものである前記(5)記載の抗腫瘍用組み合わせ製剤。
(7)前記抗腫瘍性物質がマスタード薬、ニトロソウレア系化合物、葉酸系化合物、ピリミジン系化合物、プリン系化合物、アントラサイクリン系化合物、ピンアルカロイド、タキサン、抗エストロゲン薬、LH−RH作動薬、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、インターフェロン、インターロイキン、分子標的治療薬、シスプラチン、カルボプラチン及びネダプラチンからなる群より選択されるものである前記(5)記載の抗腫瘍用組み合わせ製剤。
(8)頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍、悪性リンパ腫及び白血病からなる群より選択される疾患の治療のための前記(5)〜(7)のいずれかに記載の抗腫瘍用組み合わせ製剤。
(9)下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と他の抗腫瘍性物質とを併用する抗腫瘍剤。
(10)前記抗腫瘍性物質がアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌抗生物質、微小管阻害剤、ホルモン剤、白金錯体、トポイソメラーゼ阻害剤、生物製剤及び分子標的治療剤からなる群より選択されるものである前記(9)記載の抗腫瘍剤。
(11)前記抗腫瘍性物質がマスタード薬、ニトロソウレア系化合物、葉酸系化合物、ピリミジン系化合物、プリン系化合物、アントラサイクリン系化合物、ピンアルカロイド、タキサン、抗エストロゲン薬、LH−RH作動薬、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、インターフェロン、インターロイキン、分子標的治療薬、シスプラチン、カルボプラチン及びネダプラチンからなる群より選択されるものである前記(9)記載の抗腫瘍剤。
(12)頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍、悪性リンパ腫及び白血病からなる群より選択される疾患の治療のための前記(9)〜(11)のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
(13)下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と他の抗腫瘍性物質とを併用するテロメラーゼ阻害剤。
本発明で用いられる化合物は下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)
で表される化合物である。
本明細書において炭素数1〜5のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基及びイソブチル基等の低級アルキルをいう。
置換基Rについてより具体的には以下のものが例示される。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。ヘテロアリール基としては、イミダゾリル基、ピリジニル基等の含窒素芳香環基、チオフェン、チアゾール等の含硫黄芳香環基、フラン、オキサゾール等の含酸素芳香環基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
また、式(1)の化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩等の有機酸塩等の酸付加塩が挙げられる。
以下、本明細書において式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩を「テロメスタチン類」と呼ぶこともある。
上記式(1)において各Rが全て水素原子である化合物を「GM−95物質」又は「テロメスタチン(TMS)」と呼ぶ。GM−95物質の物理化学的性質を以下に示す。
1)分子式:高分解能ファースト アトム ボンバードメント質量分析(high−resolution fast atomic bombardoment mass spectrometry)で測定した時、測定値(M+H)+として、583.0790を示し、これと一致する分子式はC26H15N807Sである。
2)分子量:ファースト アトム ボンバードメント質量分析(fast atomic bombardoment mass spectrometry)で測定すると、582.0712を示す。
3)融点:138〜143℃(分解)。
4)比旋光度:メタノール中、C=0.129g/100ml(メタノール)の濃度で測定。
[α]D20=−9.38°
5)紫外吸収スペクトル:図1に示す。
測定は、メタノール中(7.39μM溶液)で行った。259.5nmで最大吸収を示し、その時の吸光度は0.288であった。モル吸光係数(ε)は38982である。
6)赤外線吸収スペクトル(FT−IR):図2に示す。
νmax(cm−1):3421,3147,2958,2923,2854,1733,1670,1650,1544,1496,1438,1392,1351,1315,1267,1199,1174,1118,1087,1058,1033,975,943,929,914,883,798
7)溶剤に対する溶解性:水、アセトンに不溶。クロロホルム:メタノール=1:1に溶解する。
8)物質の色:淡黄色粉末(white yellowish powders)
9)核磁気共鳴スペクトル 重クロロホルム:重メタノール=1:1の溶液中、25℃で測定した500MHzH−NMRスペクトル(図3に示す)及び125MHz13C−NMRスペクトル(図4に示す)の化学シフトを下記に示す。
表1

10)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における保持時間(Rt)
下記の分析条件により6.1分にピークが検出される。
カラム:PEGASIL ODS(内径4.6mm×250mm、株式会社センシュー科学製)
移動相:アセトニトリル/トリフルオロ酢酸/水(70:0.1:30V/V/V)
流 速:1ml/分
検 出:254nm
GM−95物質は、例えば、本物質の生産能力を有する菌株(以下GM−95物質生産菌と称する)を、以下に示すような適当な条件下で培養することによって製造することができる。
GM−95物質生産菌としては、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する菌株が挙げられる。ストレプトマイセス属に属する菌株の一例としては、ストレプトマイセス アニュレイタス(Streptomyces anulatus)3533−SV4株又はその変異株が例示できる。ストレプトマイセス アニュレイタス3533−SV4株は、本発明者らが熊本県玉名郡天水町の土壌から新たに分離したストレプトマイセス属に属する菌株であり、日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号に住所を有する通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 経済産業省産業技術総合研究所 生命工学工業技術研究所 特許生物寄託センター)に、1998年8月12日に、微生物の表示(寄託者が付した識別のための表示)「Streptomyces anulatus 3533−SV4(GM95)」、(受託番号)「FERM BP−6460」として寄託されている。
ストレプトマイセス アニュレイタス3533−SV4の同定及び菌学的性質は、ISP(インターナショナル ストレプトマイセス プロジェクト(International Streptomyces Project)の方法に従って行った。ストレプトマイセス アニュレイタス3533−SV4株の菌学的性質は、次の通りである。
a)形態
本菌株は、ISP No.2、3、4及び5培地で27℃で14日間培養した。結果は下記の通りである。
1)胞子形成の分枝法;単純分枝
2)胞子形成の形態;螺旋状、胞子形は筒状
3)胞子の数;10〜50又はそれ以上
4)胞子の表面構造;平滑
5)胞子の大きさ;0.3〜0.5×0.7〜1.0μm
6)鞭毛胞子の有無;無し
7)胞子嚢の有無;無し
8)胞子柄の着生位置;気菌糸
9)菌核形成性の有無;無し
b)各種培地上における生育状態
各種培地における生育状態を表2に示す。表中に記載の培地性状に関する色調名は、コンティナー・コーポレーション・オブ・アメリカ(Containner Corporation of America)の「ザ・カラー・ハーモニー・マニュアル」(The Color Harmony Manual)(1958年版)に基づいて示した。
表2

c)生理的性質
1)生育温度範囲:20〜32℃最適温度;20〜30℃
2)ゼラチンの液化:+
3)スターチの加水分解:+
4)脱脂粉乳の凝固、ペプトン化:+
5)メラニン様色素の生成
チロシン寒天培地:−
ペプトン・イースト鉄寒天培地:−
トリプトン・イースト・ブロス培地:+
6)硝酸塩の還元:+
7)炭素源の同化(プリドハム・ゴトリーブ寒天培地(ISP No.9))
L−アラビノース+;D−キシロース+;D−グルコース+;D−フラクトース+;シュクロース+;イノシトール+;L−ラムノース+;ラフィノース+;D−マンニット+
d)菌体組成
日本放線菌学会編「放線菌の同定実験法−6−2−70,1985年」に記載の薄層クロマトグラフィー法により全菌体の酸加水分解物を分析した結果,LL型のジアミノピメリン酸が検出された。
本菌株の基生薗糸は分断しない。気菌糸は長い主軸を形成し、それより不規則に分枝した先端に、10〜50個またはそれ以上からなる4〜9回転の螺旋状の胞子鎖を形成する。胞子は非運動性で、円柱形あるいは楕円形を呈し、幅0.3〜0.5、長さ0.7〜1.0μmで、胞子表面は平滑である。菌核、胞子のう、その他の特殊形態は観察されない。細胞壁化学型は(I)型である。培養性状を表2に示す。気菌糸の色調は黄色系列である。基生菌糸の色調は不鮮明色を呈し、pHで変化しない。拡散性色素は全体としては認められない。生理的性状を上記c)に示す。本菌株は中温性である。本菌株の形態的性状と細胞壁化学型から、本菌株はストレプトマイセス(Streptomyces,以後、「S.」と略す。)属に位置する。
上述の諸性状を基に、「細菌名承認リスト、1980」及びそれ以後の有効名リストに記載されたS.属の種について検索し、近縁種を選出した。S.スフヱロイデス(S.spheroides)の診断的性状を比較すると、本菌株とS.スフヱロイデスの性状はよく一致しており、炭素源の同化のみ異なっている。
従って、本菌株はS.スフヱロイデスに最も近似な新菌株である。しかしながら、バージェィズ マニュアル オブ システマティク バクテリオロジー(Bergey’S Manual of Systematic Bacteriology vol.4)において、ウイリアムズ(Williams)等は、S.スフヱロイデスはS.アニュレイタスのシノニム(異名)としている。従って、本菌株3533−SV4株は、S.アニュレイタスに含まれる一菌株と同定し、ストレプトマイセス アニュレイタス(Streptomyces anulatus)3533−SV4株と称する。
本菌株と近縁種との比較を以下に示す。
表3

GM−95物質は、例えば上記3533−SV4株又は上記の菌学的性質を有する3533−SV4株の変異株などの、例えば、ストレプトマイセス属に属する各種のGM−95物質生産菌を、適当な培地で培養し、次に培養液から本発明物質を含む粗抽出物を分離し、更に、粗抽出物からGM−95物質を単離、精製することにより製造することができる。培養液には、培養濾液や菌体固形分が含まれる。
上記微生物の培養は、原則的に一般の微生物の培養に準じて行われるが、通常、液体培養による振盪培養法、通気攪拌培養法等の好気的条件下で行うのが好ましい。培養に用いられる培地としては、GM−95物質生産菌が利用できる栄養源を含有する培地であればよく、各種の合成培地、天然培地等をいずれも用いることができる。培地の炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、グリセリン、デキストリン、澱粉、糖蜜、コーン・スティープ・リカー、有機酸等を、単独又は二種以上組み合わせたものが;窒素源としては、ファーマメディア、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、大豆粉、カゼイン、アミノ酸、尿素などの有機窒素源、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の無機窒素源を、単独又は二種以上組み合わせたものが用いられる。また、培地には、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、その他の重金属塩などが必要に応じて適宜添加される。
なお、培養中発泡の著しい時は、例えば大豆油、亜麻仁油等の植物油、オクタデカノール、テトラデカノール、ヘプタデカノール等の高級アルコール類、各種シリコン化合物などの消泡剤を、適宜培地中に添加することもできる。
培地のpHは、中性付近とするのが好ましい。培養温度はGM−95物質生産菌が良好に生育する温度、通常20〜32℃、特に25〜30℃付近に保つのがよい。培養時間は、液体振盪培養及び通気攪拌培養のいずれの場合も、2〜6日間程度が好ましい。
上述した各種の培養条件は、使用微生物の種類や特性、外部条件等に応じて適宜変更でき、またそれぞれに応じて、上記範囲から最適条件を適宜選択、調節することができる。
培養液からのGM−95物質を含む粗抽出物の分離は、発酵生産物を採取する一般的な方法に準じて行うことができ、例えば溶媒抽出、クロマトグラフィー、結晶化等の通常の手段を、単独又は二種以上を任意の順序に組み合わせて用いることができる。
より詳しくは、以下の方法を用いることができる。すなわち、上記培養により生産されるGM−95物質は、主として培養濾液及び菌体中に存在するので、常法に従い、まず培養液を濾過、遠心分離等を行って、培養濾液と菌体固形分とを分離し、得られたGM−95物質を含む菌体固形分について、メタノール、アセトン等の溶媒を用いてGM−95物質の溶出を行う。次いで、減圧下に溶媒を留去すれば、GM−95物質を含む粗濃縮液を得ることができる。この粗濃縮液に、酢酸エチル、クロロホルム、ブタノール等の水と混合しない有機溶媒を加えて、GM−95物質を有機溶媒層に転溶させ、得られた溶媒層に芒硝を加えて脱水した後、溶媒を減圧下で留去すれば、GM−95物質を含む粗抽出物を得ることができる。更に、培養濾液についても有機溶媒層に転溶させる前述と同様の操作をすれば、粗抽出物を得ることができる。また、必要に応じて、水酸化ナトリウム又は塩酸にてpHを調節したり、工業用食塩を加えることにより、抽出効率を高くしたり、エマルジョン生成防止などの方法を講じることができる。
更に、粗抽出物からGM−95物質を単離、精製するためには、通常の脂溶性低分子物質の単離、精製手段、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナ、マクロポーラス非イオン系吸着樹脂等の吸着剤による種々の吸着クロマトグラフィー、又はODS−結合型シリカゲル等を用いる逆相クロマトグラフィー等が使用できる。これらのうち、溶出溶媒にクロロホルム、クロロホルム/酢酸エチル、クロロホルム/メタノール、クロロホルム/アセトン、ベンゼン/アセトン等の混合溶媒系を用いるシリカゲルクロマトグラフィー、及びアセトニトリル又はメタノール/0.05%トリフルオロ酢酸又は10mMリン酸一カリウム等の混合溶媒系を溶出に用いる逆相クロマトグラフィーが、特に好ましい。また、更に精製を必要とする場合には、上記クロマトグラフィーを繰り返し行うか、または溶出溶媒としてクロロホルム、メタノール等を用いたセファデックスLH−20(ファルマシア社製)によるカラムクロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行うことにより、高純度のGM−95物質を得ることができる。
なお、精製工程中のGM−95物質の確認は、薄層クロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーを用いて検出する方法とを併用して行うのがよい。
また、公知の化学合成技術等を用いて、上記のGM−95物質からその他のテロメスタチン類(例えば、式(1)中のRが、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−であって、前記R’が炭素数1〜5のアルキル基である化合物)を容易に得ることができる。
本発明で用いられるテロメスタチン類は、非常に強いテロメラーゼ阻害活性を有することが分かっており、該酵素の活性を阻害することにより広いスペクトルを有する抗腫瘍剤として有用である。例えば、GM−95物質について、常法に準じてテロメラーゼを含む細胞抽出物を用いたテロメラーゼ阻害活性試験を行い、細胞抽出物中のテロメラーゼ活性を50%阻害する濃度(IC50)を求めたところ、IC50は50nMであった。テロメラーゼは正常体細胞にはほとんど存在せず、広範な悪性腫瘍に存在する(皮膚、乳房、肺、胃、膵臓、卵巣、頸部、子宮、腎臓、膀胱、結腸、前立腺、中枢神経系(CNS)、網膜及び血液腫瘍細胞系を含めた全ての悪性腫瘍のうち85%以上でテロメラーゼが見出されている。)。
本発明者らの研究によれば、テロメスタチン類と他の抗腫瘍性物質とを併用することにより、それぞれ単独で用いた場合よりも抗腫瘍活性が顕著に向上することが見出された。すなわち、式(1)のテロメスタチン類は他の抗腫瘍性物質とを併用して、その抗腫瘍効果を相乗的に増強するための化合物として有用である。
テロメスタチン類を含有する本発明の抗腫瘍効果増強剤は、他の抗腫瘍性物質を投与する前又は後に、或いは同時に投与することができる。それらを同時に投与する場合には、例えば、本発明の抗腫瘍効果増強剤に、さらに、他の抗腫瘍性物質を含ませて混合製剤の形態としてもよい。
また、式(1)のテロメスタチン類と他の抗腫瘍製物質とを併用した抗腫瘍用組み合わせ製剤又は抗腫瘍剤等の併用剤として用いてもよい。
ここで、本明細書において「併用剤」とは、式(1)のテロメスタチン類と他の抗腫瘍性物質とを含む均一混合物とする形態だけでなく、式(1)のテロメスタチン類と他の抗腫瘍性物質とを、同時に、別々に、又は順次投与(使用・服用)するためにそれぞれ独立した別個の製剤を組み合わせた形態も含む意味である。したがって、本発明の抗腫瘍用組み合わせ製剤及び抗腫瘍剤は、テロメスタチン類と他の抗腫瘍性物質との均一混合製剤の形態であってもよいし、それらを別個に投与するためにそれぞれ独立に別個の製剤に調製したものを組み合わせた組み合わせ製剤の形態のいずれであってもよい。
本発明で用いることのできる他の抗腫瘍性物質としては特に限定されるものではなく、一般に抗腫瘍活性を有する物質であればいずれのものでも用いることができる。抗腫瘍性物質はその化学構造、作用機序又は由来等により様々なタイプのものに分類され、大別すると、アルキル化剤系化合物、代謝拮抗剤系化合物、植物アルカロイド系化合物、抗癌抗生物質系化合物、白金錯体系化合物、ホルモン剤等及び前記以外以外のタイプの抗腫瘍性化合物に分類される。具体的には下記に示すような化合物及びその塩(塩酸塩、硫酸塩等の酸付加塩、アルカリ金属塩等の金属塩)が挙げられる。
アルキル化剤系抗腫瘍化合物としては、例えば、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、イフォスファミド(Ifosfamide)、メルファラン(Melphalan)、ブスルファン(Busulfan)及びカルボコン(Carboquone)等が挙げられる。
代謝拮抗剤系抗腫瘍化合物としては、葉酸代謝拮抗剤、プリン代謝拮抗剤、ピリミジン代謝拮抗剤等が挙げられ、具体的には、例えば6−メルカプトプリン(6−Mercaptopurine)、メトトレキサート(Methotrexate)、5−フルオロウラシル(5−Fluorouracil)、テガフール(Tegafur)、エノシタビン(Enocitabine)及びシタラビン(Cytarabine)等が挙げられる。
微小管阻害薬系抗腫瘍化合物としては、ビンカアルカロイド系、ポドフィリン系、タキサン系等が挙げられ、より具体的には、例えばビンクリスチン(Vincristine)、ビンデシン(Vindesine)及びビンブラスチン(Vinblastine)等が挙げられる。
抗生物質系抗腫瘍化合物としては、例えば、アクチノマイシンD(Actinomycin D)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ブレオマイシン(Bleomycin)、ペプロマイシン(Peplomycin)、マイトマイシンC(Mitomycin C)、アクラルビシン(Aclarubicin)、ネオカルチノスタチン(Neocarzinostatin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)及びエピルビシン(Epirubicin)等が挙げられる。
白金錯体系抗腫瘍化合物としては、例えば、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)及びネダプラチン等が挙げられる。
トポイソメラーゼ阻害剤としては、例えば、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、イリノテカン、ノギテカン、エトポシド及びダウノルビシン等が挙げられる。
上記以外の抗腫瘍性物質として、例えば、ニムスチン(Nimustine)、L−アスパラギナーゼ(L−Asparaginase)、プロカルバジン(Procarbazine)、ホルモン剤、、生物製剤、分子標的治療剤、マスタード薬、ニトロソウレア系化合物、アントラサイクリン系化合物、ピンアルカロイド、抗エストロゲン薬、LH−RH作動薬、インターフェロン及びインターロイキン等が挙げられる。
本発明では、式(1)の化合物と併用する抗腫瘍性物質としては、白金錯体系抗腫瘍化合物、トポイソメラーゼ阻害剤又は抗生物質系抗腫瘍化合物が好ましく、アントラサイクリン系抗腫瘍化合物、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬又は白金錯体系抗腫瘍化合物が特に好ましい。式(1)の化合物と他の抗腫瘍性物質との重量比については、併用する抗腫瘍性物質の種類や患者の症状にもよるが、通常は1:1〜1:100であり、好ましくは、1:1〜1:10である。
抗腫瘍効果増強剤、抗腫瘍用組み合わせ製剤又は抗腫瘍剤等の本発明の製剤を使用する際の薬学的投与形態としては、目的に応じて各種の薬学的投与形態を採用でき、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、丸剤、乳剤、懸濁剤等の経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、硬膏剤、貼付剤、エアゾール剤、点眼剤等の非経口剤のいずれでもよく、これら投与形態は、それぞれ当業者に公知慣用の製造方法により製造できる。
経口用固形製剤を調製する場合には、有効成分(即ち、テロメスタチン類及び/又は前記他の抗腫瘍性物質)に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤等を製造することができる。賦形剤としては、例えば乳糖、蔗糖、澱粉、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム等が、結合剤としてはポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、アラビアゴム、シェラック、白糖等が、崩壊剤としては乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が、滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、タルク等が、矯味剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が使用できる。その他、着色剤、矯臭剤等は通常公知のものを用いることができる。なお、錠剤は、必要に応じ周知の方法により通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、その他、二重錠、多層錠とすることができる。
経口用液体製剤を調製する場合は、有効成分に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて、常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合、矯味剤としては上記に挙げられたもので良く、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が使用できる。
注射剤を調製する場合には、有効成分に、希釈剤、pH調製剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により静脈内、筋肉内、皮下、皮内並びに腹腔内用注射剤を製造できる。希釈剤としては、例えば、水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用できる。pH調製剤及び緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸、チオ乳酸等が使用できる。等張化剤としては塩化ナトリウム、ブドウ糖等が、局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が使用できる。
坐剤を調製する場合には、有効成分に基剤、さらに必要に応じて界面活性剤等を加えた後、常法により坐剤を製造することができる。基剤としては、例えばマクロゴール、ラノリン、カカオ油、脂肪酸トリグリセライド、ウィテップゾール(ダイナマイト ノーベルズ社製)等の油性基剤を用いることができる。
軟膏剤を調製する場合は、有効成分に通常使用される基剤、安定化剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。基剤としては流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が、保存剤としてはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が使用できる。
貼付剤を製造する場合は、通常の支持体に有効成分と前記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すれば良い。支持体としては綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布や軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルムあるいは発泡体シートが使用できる。
更に、上記各製剤には、必要に応じて、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を医薬製剤中に含有せしめてもよい。
本発明の製剤に含有されるべき有効成分(即ち、テロメスタチン類及び/又は前記他の抗腫瘍性物質)の量は、特に限定されず広範囲より適宜選択されるが、通常それらの製剤中1〜70重量%とするのがよい。
かくして得られる本発明の製剤の投与方法は、特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、疾患の程度等に応じて適宜決定される。例えば、注射剤形態の医薬製剤は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内投与などにより投与され得る。これは必要に応じてブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与することもできる。錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤などの固剤形態や経口投与用液剤形態の本発明の抗腫瘍剤は、経口投与又は経腸投与され得る。坐剤は直腸内投与できる。
上記の各投与単位形態中に配合されるべき有効成分の量は、これを適用すべき患者の症状によりあるいはその剤型等により適宜設定できるが、一般に投与単位形態あたり経口剤では約1〜1000mg、注射剤では約0.1〜500mg、坐剤では約5〜1000mgとするのが望ましい。
また、上記投与形態を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別、その他の条件等に応じて適宜選択されるが、通常成人1日あたり約0.1〜1000mg/kg、好ましくは約1〜100mg/kgとすれば良く、これを1日1回又は2〜4回程度に分けて投与することができる。
本発明の製剤を投与することにより治療できる腫瘍としては、特に制限はなく、例えば、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍等の固形の悪性腫瘍、悪性リンパ腫、白血病などが挙げられ、好ましくは固形の悪性腫瘍である。
本明細書は本願の優先権の基礎である特願2003−057632号の明細書に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
図1は、GM−95物質の紫外吸収スペクトルである。
図2は、GM−95物質の赤外線吸収スペクトルである。
図3は、GM−95物質の500MHzH−NMRスペクトルである。
図4は、GM−95物質の125MHz13C−NMRスペクトルである。
図5は、実施例3で測定したMCF−7細胞とHT−29細胞の増殖曲線(PDL)である。
図6は、MCF−7細胞をGM−95物質とエトポシド又はシスプラチンとの存在下で48時間培養したときの生存細胞数をMTT法により測定した結果を示すグラフである。
図7は、MCF−7細胞をGM−95物質とエトポシド又はシスプラチンとの存在下で72時間培養したときの生存細胞数をMTT法により測定した結果を示すグラフである。
図8は、HT−29細胞をGM−95物質とエトポシド、シスプラチン、カンプトテシン又はアドリアマイシンとの存在下で24時間培養したときの生存細胞数をMTT法により測定した結果を示すグラフである。
図9は、SKOV−3細胞をGM−95物質とエトポシド又はシスプラチンとの存在下で24時間培養したときの生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。
図10は、SKOV−3細胞をGM−95物質とカンプトテシン又はアドリアマイシンとの存在下で24時間培養したときの生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。
図11は、SKOV−3細胞をGM−95物質とエトポシド又はシスプラチンとの存在下で48時間培養したときの生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。
図12は、SKOV−3細胞をGM−95物質とカンプトテシン又はアドリアマイシンとの存在下で48時間培養したときの生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。
図13は、HT1080細胞をGM−95物質とエトポシド又はシスプラチンとの存在下で24時間培養したときの生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。
図14は、HT1080細胞をGM−95物質とアドリアマイシンとの存在下で24時間培養したときの生存細胞数を測定した結果を示すグラフである。
図15は、GM−95物質とイマニチブとの併用によるK562細胞に対するアポトーシス誘導の測定結果を表すグラフである。
図16は、GM−95物質とダウノルビシン(DNR)との併用によるK562細胞に対するアポトーシス誘導の測定結果を表すグラフである。
図17は、GM−95物質とミトキサントロン(MIT)との併用によるK562細胞に対するアポトーシス誘導の測定結果を表すグラフである。
図18は、GM−95物質とビンクリスチン(VCR)との併用によるK562細胞に対するアポトーシス誘導の測定結果を表すグラフである。
図19は、実施例5(A)の結果を示すグラフである。
図20は、実施例5(B)の結果を示すグラフである。
図21は、実施例5(C)の結果を示すグラフである。
図22は、実施例6(D)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:GM−95物質の製造
(a)培養工程
試験管(50ml)に、可溶性澱粉1.0%、ポリペプトン1.0%、糖蜜1.0%、1.0%牛肉エキスよりなる培地(pre−culture medium)(pH7.2)15mlを加え、滅菌後、ストレプトマイセス アニュレイタス3533−SV4菌株(FERM BP−6460)を一白金耳量接種し、レシプロカルシェーカー上にて27℃で2日間振盪培養した。
次に、グリセリン2.0%、糖蜜1.0%、カゼイン0.5%、ポリペプトン0.1%、炭酸カルシウム0.4%よりなる培地(production medium)(pH7.2)を、500mlの三角フラスコに100mlずつ分注し、滅菌後(121℃、15分)、上記種菌を2%(v/v)の割合で添加し、27℃、3日間、回転振盪培養した(毎分220回、振幅7cm)。
次に、上記培地を3個の50L用ジャーファーメンター(株式会社丸菱理化学装置研究所)に、それぞれ30,000mlずつ分注した。消泡剤(ディスホーム(CC−118、日本油脂株式会社)15ml、信越シリコーン(KM−68−2F、信越化学工業株式会社)15ml及びサラダオイル(味の素株式会社)15ml)を加え、滅菌後(120℃、20分)、上記種菌を2%(v/v)の割合で添加し、27℃、3日間培養した(通気攪拌:400rpm(攪拌)、30L/min(通気))。
(b)分離工程
上記手順により得られた培養液84.0Lを採取し、培養菌体を遠心分離により分離した。上澄は捨て、培養菌体をアセトン10.0Lで時々攪拌しながら2時間抽出する。抽出物を濾過し、再度アセトン5.0Lで抽出を繰り返し分離する。アセトン抽出液を合わせ、最終容量2Lになるまで蒸留濃縮する。減圧下、アセトンと水が完全になくなるまで溶媒を留去する。得られた油状の残渣をメタノール450mlに溶解し、濾過後、減圧下蒸発乾固する。
(c)単離精製工程
得られた油状の残渣を、クロロホルム:メタノール(20:1)(v/v)から成る混合溶媒400mlに溶解する。シリカゲルカラム(Wakogel C−200(粒径75〜150μm)、内径6cm×45cm)にふし、最初と同じクロロホルム−メタノール混合溶媒5Lで溶出させた。活性物質を含むフラクションは、クロロホルム:メタノール(10:1v/v)で溶出した。活性物質を含むフラクションを集め、減圧下、蒸発乾固させる。次に、粗精製物をシリカゲルカラム(粒径75〜150μm、内径3.6cm×30cm)にふし、クロロホルム:メタノール:29%アンモニア水溶液(700:100:1v/v/v)の混合溶媒にて溶出させた。
活性物質を含む溶出液を、分取し、蒸発乾固した。残渣を前記10mlの移動相に溶解し、更にPEGASIL ODSカラム(株式会社センシュー科学、内径20mm×250mm)(移動相をアセトニトリル:トリフルオロ酢酸:水(70:0.1:30v/v/v)、流速を10.0ml/分、254nm(0.5mm UVセルで検出))を用いての高速液体クロマトグラフィーにふした。1回あたり抽出液0.8mlをインジェクションした。GM−95物質を含むフラクションを分取し、減圧下蒸発乾固した。
残渣を10%メタノール水溶液に懸濁し、更にPEGASIL ODSカラム(株式会社センシュー科学、内径1.0cm×3cm)にふした。10%メタノール水溶液で洗浄させた後、70%メタノール水溶液で溶出させた。得られた溶出液を減圧下留去し、GM−95物質を3.2mg得た。
なお、GM−95物質を含むフラクションの検出は、精製の各段階においてPEGASIL ODSカラム(株式会社センシュー科学,内径4.6mm×250mm)(移動相をアセトニトリル:トリフルオロ酢酸:水(70:0.1:30v/v/v)、流速を1.0ml/分)を用いての高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。
GM−95物質の物理化学的性質は下記の通りである。
1)分子式:高分解能ファースト アトム ボンバードメント質量分析(high−resolution fast atomic bombardoment mass spectrometry)で測定した時、測定値(M+H)+として、583.0790を示し、これと一致する分子式はC26H15N807Sである。
2)分子量:ファースト アトム ボンバードメント質量分析(fast atomic bombardoment mass spectrometry)で測定すると、582.0712を示す。
3)融点:138〜143℃(分解)。
4)比旋光度:メタノール中、C=0.129g/100ml(メタノール)の濃度で測定。
[α]D20=−9.38°
[α]D20=−9.38°
5)紫外吸収スペクトル:図1に示す。
測定は、メタノール中(7.39μM溶液)で行った。259.5nmで最大吸収を示し、その時の吸光度は0.288であった。モル吸光係数(ε)は38982である。
6)赤外線吸収スペクトル(FT−IR):図2に示す。
νmax(cm−1):3421,3147,2958,2923,2854,1733,1670,1650,1544,1496,1438,1392,1351,1315,1267,1199,1174,1118,1087,1058,1033,975,943,929,914,883,798
7)溶剤に対する溶解性:水、アセトンに不溶。クロロホルム:メタノール=1:1に溶解する。
8)物質の色:淡黄色粉末(white yellowish powders)
9)核磁気共鳴スペクトル 重クロロホルム:重メタノール=1:1の溶液中、25℃で測定した500MHzH−NMRスペクトル(図3に示す)及び125MHz13C−NMRスペクトル(図4に示す)の化学シフトを下記に示す。
表4

10)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における保持時間(Rt)
下記の分析条件により6.1分にピークが検出される。
カラム:PEGASIL ODS(内径4.6mm×250mm、株式会社センシュー科学製)
移動相:アセトニトリル/トリフルオロ酢酸/水(70:0.1:30 V/V/V)
流 速:1ml/分
検 出:254nm
上記物理科学的データからGM−95物質の化学構造は以下の様であると同定された。

実施例2:薬理試験(GM−95物質及び5−フルオロウラシルの抗腫瘍作用)
表5に記載の腫瘍細胞を、10%牛退治血清添加RPMI1640培地に浮遊させ、培養プレート(38mm)に各々2×10個ずつ播種し、37℃15%CO条件下炭酸ガス培養器にて一晩培養した。その後、10%牛胎児血清添加RPMI1640培地を用いて種々の濃度に希釈した被験薬(GM−95物質及び5−フルオロウラシル)を加え、更に72時間培養した。培養終了後、細胞を25%グルタールアルデヒドで15分間固定し、水で3回洗浄した。次に、20%メタノール水溶液に希釈した0.05%クリスタルバイオレットで細胞を染色後、水で3回洗浄し、乾燥させた。0.05Mリン酸二水素ナトリウム/エタノール(1/1(v/v))100μLでクリスタルバイオレットを抽出し、540nmの吸光度を自動分光器にて測定した。IC50はコントロールの吸光度に対し50%減じるのに必要な濃度と定義した。結果を下記に示す。
表5

本発明化合物はインビトロにおける各種腫瘍細胞の発育を阻止することができた。
実施例3:GM−95物質(テロメスタチン:Telomestatin)と他の抗腫瘍性物質との併用効果
抗腫瘍性物質
GM−95物質と併用する抗腫瘍性物質として、エトポシド(ETP;ブリストルマイヤーズスクイブ社製)、シスプラチン(cDDP;ブリストルマイヤーズスクイブ社製)、アドリアマイシン(Adreamycin、ADM;SIGMA社製)及びカンプトテシン(Camptothecin、CTP;SIGMA社製)を用いた。
腫瘍細胞
腫瘍細胞として、MCF−7(乳癌、ATCC HTB−22)、SKOV−3(卵巣癌)、HT−29(大腸癌)及びHT1080(ザルコーマ、ATCC CRL−12012)細胞を使用した。各細胞は東京大学分子細胞生物学研究所鶴尾研究室より分譲して戴いた。MCF−7細胞についてはDMEM(SIGMA社製)培地に10%FCS、200000U/Lペニシリン、及び100mg/Lストレプトマイシンを添加した培地にて培養した。SKOV−3、HT1080及びHT−29細胞については、RPMI1640(SIGMA社製)培地に10%FCS、200000U/Lペニシリン、及び100mg/Lストレプトマイシンを添加した培地にて培養した。
GM−95物質と他の抗腫瘍性物質との存在下での腫瘍細胞の長期培養
上記細胞を5×10cells/mlとなるように調製し、12穴プレート又は6穴プレート(各SUMITOMOベークライト社製)にそれぞれ、500μL及び1mLずつ添加した。各細胞を、終濃度が2.0μM、1.0μM及び0.5μMとなるようにGM−95物質を添加し、コンフルエントになるまで培養した。植え継ぎ時に各処理群の細胞数を計測し、増殖曲線(PDL)を作製した(図5)。それぞれの細胞によってGM−95物質に対する感受性が異なるため、各週毎に細胞を回収し、それぞれの細胞について、テロメア長の測定及び各抗腫瘍性物質との併用効果を検討した。併用効果については、処理細胞を5×10cells/mlとなるように調製した後、96穴プレート(SUMITOMOベークライト社製)に100μLずつ分注し、12〜15時間インキュベートした後、GM−95物質と上記各抗腫瘍性物質とを併用した抗腫瘍製剤を添加し24時間毎に経時変化を追った。各時間ごとに生存細胞を、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル テトラゾリウム ブロミド)法により定量した。MTT法は、次の通り行った。MTT(SIGMA社製)をPBSで5g/100mLとなるように調製し、各ウェルに10μLずつ添加し、産生されるホルマザンを検鏡にて観察しながら、十分にホルマザンが産生された時点で培地を吸引した。ジメチルスルホキシド(DMSO)を各ウェルに100μLずつ添加し、撹拌後比色定量した。比色定量は、ARVO SX(Perkin Elmer社製)を用いて、570nmの吸光度を測定することで行った。GM−95物質と上記各抗腫瘍性物質との併用効果の結果について図6〜14に示した。なお、図中、「TMS」はGM−95物質(テロメスタチン)を意味し、「control」は対照を意味する。
実施例4:GM−95物質と他の抗腫瘍性物質との併用によるK562細胞のアポトーシス誘導
K562細胞(ATCC(Rockville,MD)より入手可能)をテロメスタチン(GM−95物質;Telomestatin)2μMの存在下で10日間培養し、次いでそのテロメスタチン処理したK562細胞を各種の濃度のイマニチブ(Imanitib)、ダウノルビシン(DNR)、ミトキサントロン(MIT)又はビンクリスチン(VCR)とともに72時間インキュベートした。アポトーシスの発現はFITCコンジュゲートAPO2.7モノクローナル抗体(ミトコンドリア膜タンパク質(7A6抗原)に対して産生され、アポトーシスが起こっている細胞で発現される)を用いるフローサイトメトリー分析(flow cytometric analysis)により測定した。その結果を図15〜18に示す。なお、図中、「control」、「TMS」、「Imanitib」、「DNR」、「MIT」及び「VCR」は、それぞれ、対照、GM−95物質(テロメスタチン)、イマニチブ、ダウノルビシン、ミトキサントロン及びビンクリスチンを意味する。
イマニチブ、ダウノルビシン、ミトキサントロン及びビンクリスチンはそれぞれ作用機序が異なる抗腫瘍性物質であるが、図15〜18の結果から明らかなように、テロメスタチン類は各種の抗腫瘍性物質と併用することによりそれらが相乗的に作用して腫瘍細胞のアポトーシス誘導効果が顕著に向上することが分かる。
実施例5:GM−95物質と他の抗腫瘍性物質との併用効果(HT1080細胞)
実施例3に準じて、GM−95物質と他の抗腫瘍物質とを用いて以下の条件下で腫瘍細胞を培養し、一定期間経過後の腫瘍細胞の生存率を測定した。
抗腫瘍性物質
GM−95物質と併用する抗腫瘍性物質として、
塩酸ドキソルビシン(DDP)(和光純薬工業株式会社、No.040−21521);
5−フルオロウラシル(5−FU)(和光純薬工業株式会社、No.064−01403);
cis−ジアンミン−ジクロロ白金(III)(CTP)(和光純薬工業株式会社、No.047−22511);
リン酸エトポシド(ETP)(和光純薬工業株式会社、No.058−06341);
を用いた。
腫瘍細胞
腫瘍細胞としてHT1080細胞を用いた。なお以下の実験では、腫瘍細胞はRPMI1640(SIGMA,R8758)に10%FBSを添加した培地にて、COインキュベーター(温度37℃、湿度100%、二酸化炭素濃度5%)により培養した。
実験方法
以下の(A)〜(C)の条件でHT1080細胞を培養し、培養終了後にMTT法により腫瘍細胞の生存率を測定した。
(A):0.5μMのGM−95物質と所定濃度の上記抗腫瘍性物質とを同時に添加して腫瘍細胞を2日間培養し、培養後の腫瘍細胞の生存率を測定した。
(B):予め0.5μM又は1μMのGM−95物質とともに腫瘍細胞を7日間培養し、次いでGM−95物質の非存在下で所定濃度の上記抗腫瘍性物質を添加して2日間培養し、培養後の腫瘍細胞の生存率を測定した。
(C):予め0.5μM又は1μMのGM−95物質とともに腫瘍細胞を7日間又は14日間培養し、次いでGM−95物質の存在下で所定濃度の上記抗腫瘍性物質を添加して2日間培養し、培養後の腫瘍細胞の生存率を測定した(なお、1μMのGM−95物質で14日間培養した細胞群は、生存細胞数が少ないため測定できなかった)。
結果
上記(A)〜(C)での結果を、図19〜図21にそれぞれ示す。図19〜図21に示されるように、GM−95物質と抗腫瘍性物質との併用(同時併用及び逐次的な併用のいずれにおいても)により抗腫瘍作用が増強されることが分かる。特に、(B)及び(C)の場合のように予めGM−95物質(0.5μM又は1μM)で7日間又は14日間処理した場合では、GM−95物質の存在下及び非存在下のいずれにおいても各種抗腫瘍性物質との併用効果が顕著であり、また、併用する抗腫瘍性物質が極低濃度であっても優れた併用効果を示した(図20及び図21)。なお、図19〜図21において、○は上記抗腫瘍性物質を単独で使用した場合の結果である。
実施例6:GM−95物質と他の抗腫瘍性物質との併用効果(MCF−7細胞)
実施例5と同様にして、GM−95物質と他の抗腫瘍物質とを用いて以下の条件下で腫瘍細胞を培養し、一定期間経過後の腫瘍細胞の生存率を測定した。
抗腫瘍性物質
GM−95物質と併用する抗腫瘍性物質として、
塩酸ドキソルビシン(DDP)(和光純薬工業株式会社、No.040−21521);
5−フルオロウラシル(5−FU)(和光純薬工業株式会社、No.064−01403);
cis−ジアンミン−ジクロロ白金(III)(CTP)(和光純薬工業株式会社、No.047−22511);
リン酸エトポシド(ETP)(和光純薬工業株式会社、No.058−06341);
を用いた。
腫瘍細胞
腫瘍細胞としてMCF−7細胞を用いた。なお以下の実験では、腫瘍細胞はDMEM(SIGMA,D6046)に10%FBSを添加した培地にて、COインキュベーター(温度37℃、湿度100%、二酸化炭素濃度5%)により培養した。
実験方法
以下の(D)又は(E)の条件でMCF−7細胞を培養し、培養終了後にMTT法により腫瘍細胞の生存率を測定した。
(D):予め1μM又は2μMのGM−95物質とともに腫瘍細胞を7日間培養し、次いでGM−95物質の非存在下で所定濃度の上記抗腫瘍性物質を添加して2日間培養し、培養後の腫瘍細胞の生存率を測定した。
(E):予め1μM又は2μMのGM−95物質とともに腫瘍細胞を14日間培養し、次いでGM−95物質の非存在下で所定濃度の上記抗腫瘍性物質を添加して2日間培養し、培養後の腫瘍細胞の生存率を測定した。
結果
上記(D)及び(E)での結果を、図22にそれぞれ示す。図22に示されるように、MCF−7細胞の場合においても、予めGM−95物質(1μM又は2μM)で7日間又は14日間処理し、次いでGM−95物質の存在下/非存在下で上記抗腫瘍性物質と併用すると、抗腫瘍作用が増強されることが示された。なお、図22において、○は上記抗腫瘍性物質を単独で使用した場合の結果である。
製剤例1:注射剤
下記の配合割合で常法により注射剤を調製することができる。
GM−95物質 5mg
シスプラチン 5mg
注射用蒸留水 5ml
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
【産業上の利用の可能性】
GM−95(テロメスタチン)を用いる本発明の組み合わせ製剤は、特に抗腫瘍剤として有用である。
本発明の抗腫瘍効果増強剤、抗腫瘍用組み合わせ製剤又は抗腫瘍剤は、GM−95物質と他の抗腫瘍性物質とを併用することにより、該抗腫瘍性物質の抗腫瘍性効果が増強されて、又は抗腫瘍効果が相乗的に作用してそれぞれ単独で用いた場合と比較して顕著な抗腫瘍活性を示す。また、低用量で投与することが可能となるため安全性にも優れている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍効果増強剤。
【請求項2】
前記抗腫瘍性物質がアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌抗生物質、微小管阻害剤、ホルモン剤、白金錯体、トポイソメラーゼ阻害剤、生物製剤及び分子標的治療剤からなる群より選択されるものである請求の範囲第1項記載の抗腫瘍効果増強剤。
【請求項3】
前記抗腫瘍性物質がマスタード薬、ニトロソウレア系化合物、葉酸系化合物、ピリミジン系化合物、プリン系化合物、アントラサイクリン系化合物、ピンアルカロイド、タキサン、抗エストロゲン薬、LH−RH作動薬、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、インターフェロン、インターロイキン、分子標的治療薬、シスプラチン、カルボプラチン及びネダプラチンからなる群より選択されるものである請求の範囲第1項記載の抗腫瘍効果増強剤。
【請求項4】
頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍、悪性リンパ腫及び白血病からなる群より選択される疾患の治療のための請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項記載の抗腫瘍効果増強剤。
【請求項5】
下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と他の抗腫瘍性物質とを併用する、前記式(1)の化合物と前記他の抗腫瘍性物質とを同時に、別々に又は順次投与するための抗腫瘍用組み合わせ製剤。
【請求項6】
前記抗腫瘍性物質がアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌抗生物質、微小管阻害剤、ホルモン剤、白金錯体、トポイソメラーゼ阻害剤、生物製剤及び分子標的治療剤からなる群より選択されるものである請求の範囲第5項記載の抗腫瘍用組み合わせ製剤。
【請求項7】
前記抗腫瘍性物質がマスタード薬、ニトロソウレア系化合物、葉酸系化合物、ピリミジン系化合物、プリン系化合物、アントラサイクリン系化合物、ピンアルカロイド、タキサン、抗エストロゲン薬、LH−RH作動薬、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、インターフェロン、インターロイキン、分子標的治療薬、シスプラチン、カルボプラチン及びネダプラチンからなる群より選択されるものである請求の範囲第5項記載の抗腫瘍用組み合わせ製剤。
【請求項8】
頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍、悪性リンパ腫及び白血病からなる群より選択される疾患の治療のための請求の範囲第5項〜第7項のいずれか1項記載の抗腫瘍用組み合わせ製剤。
【請求項9】
下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と他の抗腫瘍性物質とを併用する抗腫瘍剤。
【請求項10】
前記抗腫瘍性物質がアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌抗生物質、微小管阻害剤、ホルモン剤、白金錯体、トポイソメラーゼ阻害剤、生物製剤及び分子標的治療剤からなる群より選択されるものである請求の範囲第9項記載の抗腫瘍剤。
【請求項11】
前記抗腫瘍性物質がマスタード薬、ニトロソウレア系化合物、葉酸系化合物、ピリミジン系化合物、プリン系化合物、アントラサイクリン系化合物、ピンアルカロイド、タキサン、抗エストロゲン薬、LH−RH作動薬、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、インターフェロン、インターロイキン、分子標的治療薬、シスプラチン、カルボプラチン及びネダプラチンからなる群より選択されるものである請求の範囲第9項記載の抗腫瘍剤。
【請求項12】
頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍、悪性リンパ腫及び白血病からなる群より選択される疾患の治療のための請求の範囲第9項〜第11項のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
【請求項13】
下記式(1):

(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、R’O−、R’(C=O)−、R’(C=O)O−又はR’O(C=O)−である。但し、R’は炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と他の抗腫瘍性物質とを含むテロメラーゼ阻害剤。

【国際公開番号】WO2004/078764
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503104(P2005−503104)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002746
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(392033288)株式会社そーせい (3)
【Fターム(参考)】