説明

GPSによる位置計測装置および位置計測方法

【課題】RTK法によるフィックス解が異常値になっている場合には、その異常値を除去し得るGPSによる位置計測方法を提供する。
【解決手段】基準局1及び観測局2で得られた測距データをそれぞれ4個の解演算部12に入力するとともに、これら各解演算部12にて、RTK法を用いて、観測局におけるフィックス解などのRTK解を演算し、これらのRTK解を解取得部13に入力し、ここでフィックス解の個数が複数であるか否かを判断するとともに、フィックス解が複数であると判断された場合にこれら各フィックス解同士の偏差を求め、そして全ての偏差が許容値以下であるか否かを判断するとともに、許容値以下であると判断された場合にこれらのフィックス解に所定の演算処理を施して正常なフィックス解を取得し、且つ上記各解演算部を所定時間おきにずらせて順次再起動させる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSによる位置計測装置および位置計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)を利用して、計測対象物(以下、計測点という)の3次元位置をリアルタイムに求める測位方式としてRTK(Real Time kinematic:リアルタイムキネマティック)法があり、海洋観測ブイによる津波・波浪観測にも利用されている。
【0003】
ところで、このRTK法は、予め、緯度、経度、高さが分かっている基準点でのGPS衛星からの搬送波位相による計測値を参照しながら、計測点での搬送波位相の計測を行うとともに、基準点から計測点を見たときの基線ベクトルを求め、計測点の三次元位置を精度良く計測する方法である。ここで,搬送波位相の計測値には整数値バイアスがあり、RTK法ではこれを決定することにより高精度測位が達成される。
【0004】
しかし、RTK法により、例えば連続して海面位置つまり海面の変位を計測する場合、電離層や対流圏の影響,またはGPS受信機のサイクルスリップ等の要因によって、時々、整数値バイアスを誤って確定してしまい、測距データ(GPS衛星と受信機との間の距離に相当するデータである)が急激に変化する跳躍現象が発生することがある。このようになると、測距データの信頼性が失われ、例えば津波の観測を行っている場合には、誤まった警報を発令してしまう惧れが生じる。
【0005】
このような問題を解消するものとして、現在、得られている解がフィックス解であるか、それより以下の精度が低い解であるかという情報に基づいて、跳躍現象によるGPS測位データ(GPS衛星位置と測距データとに基づき演算された三次元位置データである)の誤認識を判別するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−2975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、RTK法によると、整数値バイアスは、GPS受信機においてGPS衛星の捕捉が途切れない限り変化することがない。すなわち、RTK法のアルゴリズムにおいては、一旦、整数値バイアスが確定されると、その整数値バイアスは固定したままとなり、再計算が行われないのが一般的であり、長時間の連続測位を行っている途中で、整数値バイアスに跳躍現象が生じると、長時間に亘って、誤った測距データが出力されてしまう。
【0007】
したがって、上記特許文献1の構成によると、確かに、得られた解に基づいて測位データの誤認識を判別することは可能であるが、整数値バイアスに跳躍現象が生じてフィックス解そのものが異常値になっている場合には、対処することができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、RTK法によるフィックス解が異常値になっている場合には、その異常値を除去し得るGPSによる位置計測装置および位置計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のGPSによる位置計測装置は、地上に設置された基準GPS受信機である基準局にて得られた測距データと、位置計測対象である移動物体に配置された観測GPS受信機である観測局にて得られた測距データとに基づき移動物体の三次元位置を計測する装置であって、
基準局からの基準測距データおよび観測局からの観測測距データを入力して、リアルタイムキネマティック(RTK)法により、観測局の位置データであるフィックス解、フロート解などのRTK解を演算し得る解演算部を複数具備するとともに、これら各解演算部を所定時間おきにずらせて順番に再起動させるようになし、
さらに上記各解演算部から出力されたRTK解を入力して正常なフィックス解を取得する解取得部を具備し、
且つ上記解取得部に、入力されたフィックス解の個数が複数であるか否かを判断する個数判断部と、この個数判断部にてフィックス解の個数が複数であると判断された場合にこれら各フィックス解同士の偏差を求める偏差演算部と、この偏差演算部にて演算された各偏差が許容値以下であるか否かを判断する許容値判断部とを具備させるとともに、この許容値判断部にて全ての偏差が許容値以下であると判断された場合にこれらのフィックス解に基づき正常なフィックス解を取得するようにしたものであり、
また上記位置計測装置において、観測局が所定海域に係留された観測ブイに設置されており、演算される位置データを海面位置とするものである。
【0010】
さらに、本発明のGPSによる位置計測方法は、地上に設置された基準GPS受信機である基準局にて得られた基準測距データと、位置計測対象である移動物体に配置された観測GPS受信機である観測局にて得られた観測測距データとをそれぞれ複数の解演算部に入力するとともに、これら各解演算部にて、リアルタイムキネマティック(RTK)法を用いて、観測局の位置データであるフィックス解、フロート解などのRTK解を演算し、
次に上記求められたフィックス解の個数が複数であるか否かを判断するとともに、フィックス解が複数であると判断された場合にこれら各フィックス解同士の偏差を求め、
次に上記求められた各偏差が許容値以下であるか否かを判断するとともに、全ての偏差が許容値以下であると判断された場合にこれらのフィックス解に基づき正常なフィックス解を取得し、
且つ上記各解演算部を所定時間おきにずらせて順次再起動させる方法であり、
また上記位置計測方法において、観測局が所定海域に係留された観測ブイに設置されており、演算される位置データを海面位置とするものである。
【発明の効果】
【0011】
上記位置計測装置および位置計測方法によると、RTK法を用いた解演算部を複数具備させ、これら各解演算部で得られたフィックス解同士の偏差と許容値とを比較するとともに全ての偏差が許容値以下である場合に、これらのフィックス解に基づき正常なフィックス解を取得するようにしたので、ほぼ常に、正常なフィックス解を得ることができる。すなわち、異常値のフィックス解を、より確実に除去することができる。
【0012】
さらに、各解演算部を所定時間おきにずらせて再起動させるようにしているので、たとえフィックス解が異常値になった場合でも、所定時間以内に異常値が発生した解演算部で求められる整数値バイアスが正常に戻るため、正常なフィックス解が得られる。
【0013】
したがって、従来のように、一旦、フィックス解が異常値になると、誤った位置データが出力され続けるという事態が防止されるため、この位置計測装置および位置計測方法を用いて津波などを検出する際には、精度の良い検出を行うことができ、延いては、誤った津波警報の発令が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るGPSによる位置計測装置および位置計測方法を、図1〜図6に基づき説明する。
この位置計測装置および位置計測方法は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を利用して移動物体の位置、具体的には海面位置を精度良く計測するために用いられるもので、リアルタイムキネマティック[以下、RTK(Real Time Kinematic)という]方式すなわち搬送波位相を用いた相対測位方式(干渉測位方式ともいう)が採用されている。
【0015】
そして、本実施の形態では、この位置計測装置を用いた海面位置計測装置について説明するとともに、位置計測方法についても、海面位置計測方法の要部として説明する。
まず、位置計測装置を具備した海面位置計測装置の概略構成を図1に基づき説明する。
【0016】
この海面位置計測装置は、RTK方式を用いたものであり、図1に示すように、地上に設置された基準GPS受信機(以下、基準局という)1および所定海域に係留された観測ブイ(位置計測対象である移動物体の一例)3に設置された観測GPS受信機(以下、観測局という)2にて得られたGPS衛星Sからの電波による測距データに基づき、当該所定海域での海面位置を計測するために用いられるものである。
【0017】
すなわち、図2に示すように、この海面位置計測装置11には、基準局1からの基準測距データおよび観測局2からの観測測距データを入力して、RTK法により観測局2の海面位置データ(三次元位置データであり、測位データでもある)を求める複数個、例えば4個の解演算部(RTK演算部ともいえる)12(12A〜12D)と、これら各解演算部12から出力された各RTK解を入力するとともに所定の演算処理を施して正常なフィックス解を取得して出力する解取得部13と、この解取得部13から出力されたフィックス解つまり海面位置データを入力し海面変位を解析して波浪・潮位・津波の各成分を抽出するデータ解析部14と、このデータ解析部14にて抽出されたデータを例えば画面等に表示するデータ表示装置(具体的には、モニターであり、プリンターであってもよい)15とが具備されたもので、さらに上記各解演算部12は、所定時間おきに例えば1時間おきにずらされて、順番に、起動および再起動するように構成されている。すなわち、各解演算部12を順番に起動および再起動(初期化またはリセットと呼ぶこともできる)させるための起動制御部16が具備されている。なお、再起動とは、駆動用の電源は切らずに、内部の演算処理に必要とされる初期値がリセットされるとともに、或る演算処理で前回の演算値を必要とする場合のこれら演算値についてもリセット(例えば、ゼロに)される。勿論、解演算部12ので電源を入れ直すこともできる。
【0018】
ここで、RTK法を、すなわち解演算部12での演算手順を、図3のフローチャートに基づき概略的に説明しておく。
観測局(以下、受信機ともいう)2にて得られたGPS衛星Sから発射された電波が入力されると、まず、捕捉されている複数のGPS衛星Sの位置と、各GPS衛星Sまでの擬似距離[衛星から受信機までの電波到達時間×電波速度(光速)]とをそれぞれ計算する[ステップ1(1A)]。
【0019】
次に、電離層や対流圏の影響による誤差および受信機での時計誤差を推定する[ステップ2(2A)]。
次に、ステップ2(2A)で求められた推定誤差および推定時計誤差を用いて、GPS衛星Sまでの擬似距離を補正する[ステップ3(3A)]。
【0020】
次に、ステップ3(3A)で求められた擬似距離を、下記(1)式に基づき平滑化(スムージングともいう)する[ステップ4(4A)]。この平滑化は、擬似距離には観測雑音が多いので、観測雑音が少ない搬送波位相を用いて、観測雑音の影響を少なくするためのものである。
【0021】
【数1】

次に、ステップ4(4A)で求められた擬似距離を用いて単独測位を行う[ステップ5(5A)]。
【0022】
上記ステップ1(1A)〜ステップ5(5A)までの手順が、基準局2側でも並行して行われる[ステップ1(1B)〜ステップ5(5B)]。
次に、基準局1で求められた擬似距離と当該基準局1で予め求められた高精度な位置とから擬似距離に重畳している誤差分を求めるとともに、この誤差分を観測局2で求められた擬似距離から差し引いて、正確な距離すなわちD−GPS解を求める(ディファレンシャアルGPS測位)(ステップ6)。
【0023】
次に、下記(2)式に基づき、GPS衛星Sから発射される2種類の周波数信号(L1,L2)より、ワイドレーンでの整数値バイアスを求める。
【0024】
【数2】

L1の搬送波の波長が19.0cm、L2の搬送波の波長が24.4cmであるのに対して、ワイドレーンでの波長は、86.2cmとかなり長くなっているので、整数値バイアスの候補を絞りやすくなる。したがって、ワイドレーンでの整数値バイアスを決定した後、L1での整数値バイアスを絞り込むようにしている。
【0025】
ワイドレーンでの整数値バイアスが決定されれば、ワイドレーンでの測位の演算を行うことができる(ワイドレーン測位)(ステップ7)。
次に、ワイドレーンでの整数値バイアスに基づき、L1での整数値バイアスを決定する。L1での整数値バイアスが決定されれば、L1での測位の演算を行うことができる(L1測位)(ステップ8)。
【0026】
上記の各ステップにより、RTK解が得られることになる。
上記解取得部13には、図4に示すように、各解演算部12からのRTK解を入力しフィックス解を選択する解選択部21と、この解選択部21にて選択されたフィックス解の個数が複数であるか否かを判断する個数判断部22と、この個数判断部22にてフィックス解の個数が複数であると判断された場合にこれら各フィックス解同士の偏差(単に、「差」と呼ぶこともできる)を求める偏差演算部23と、この偏差演算部23にて演算された全ての偏差が許容値(閾値でもある)以下であるか否かを判断する許容値判断部24と、この許容値判断部24にて許容値以下であると判断された場合にこれらフィックス解に所定の演算処理を施して正常(適正、または最適ともいえる)なフィックス解を求める演算処理部25とが具備されている。
【0027】
この演算処理部25では、例えば複数のフィックス解の平均値が求められて、この平均フィックス解が正常なフィックス解として、解取得部13から出力される。なお、平均値の代わりに、中央値(データが偶数ある場合には、中央の2つのデータの平均値が用いられる)を用いるようにしてもよい。
【0028】
また、上記データ解析部14には、解取得部13にて取得されたフィックス解つまり海面位置データを入力して、波浪を抽出する波浪抽出部31と、潮位を抽出する潮位抽出部32と、津波を抽出する津波抽出部33とが具備されている。
【0029】
上記波浪抽出部31においては、海面位置データにハイパスフィルタ(例えば、FIR型フィルタが用いられる)処理が施され、短周期成分である波浪成分だけが抽出される。
また、上記潮位抽出部32においては、海面位置データにローパスフィルタ処理が施され、波浪成分などの短周期成分が除去されて長周期成分である潮位が抽出される(津波成分については残っている)。このローパスフィルタとしてはFIR型のものが用いられ(計算方法は、重み付きの移動平均に相当する)、波形を歪ませることなく短周期成分を除去することができる。
【0030】
さらに、上記津波抽出部33には、海面位置データに対してFIR型のローパスフィルタ処理を施し、波浪成分などの短周期成分を除去して実際の潮位(以下、実測潮位という)を得る実測潮位検出部と、潮位推定式を用いて潮位を推定する潮位推定部と、上記実測潮位検出部で得られた実測潮位と潮位推定部で得られた推定潮位を入力するとともに実測潮位から推定潮位を減算して津波を検出する津波検出部とが具備されている。すなわち、実測潮位から推定潮位を引くことにより、波浪より周期が長い津波成分を抽出することができる。
【0031】
次に、上述した海面位置計測装置11により、正常なフィックス解を得る手順を含めた海面位置計測方法を、図5に示すフローチャートに基づき説明する。
なお、上述したように、この海面位置計測装置11には、4個の解演算部12が具備されているとともに、起動制御部16により、所定時間おきに例えば1時間おきに、起動および再起動が行われている。図6に、起動および再起動スケジュールを示しておく。なお、図面における「T」は、最初に起動した解演算部12の起動時刻を示し、「T+1時間」、「T+2時間」および「T+3時間」は、それぞれ2番目、3番目および4番目に起動した解演算部12の起動時刻を示している。
【0032】
すなわち、図5に示すように、基準局1と観測局2とで得られた測距データは各解演算部12に入力されて、RTK法により精度の高いフィックス解(FIX解)が求められる。勿論、フィックス解の他に、当該フィックス解よりも精度が低いフロート解、D−GPS解、単独測位解なども求められている。
【0033】
そして、各解演算部12で得られたフィックス解、フロート解、D−GPS解、単独測位解などのRTK解は解取得部14の解選択部21に入力され、フィックス解が選択される。
【0034】
次に、解選択部21で選択されたフィックス解が個数判断部22に入力され、フィックス解の個数が求められる。
次に、この個数判断部22において、フィックス解の個数が複数である場合には、各フィックス解が偏差演算部23に入力されてフィックス解同士の差である偏差がそれぞれ求められる。
【0035】
次に、各偏差が許容値判断部24に入力されて偏差の絶対値と予め設定された設定値とが比較されて、全ての偏差が許容値以下であるか否かが判断される。
そして、全ての偏差が許容値以下であると判断された場合には、全てのフィックス解が正常値であると判断されるとともに、これら各フィックス解が演算処理部25に入力され、ここで、全てのフィックス解の平均値が演算される。この平均値が海面位置データとして出力される。
【0036】
ところで、個数判断部22において、フィックス解が1個であると判断された場合には、このフィックス解が解取得部13から出力される。
また、許容値判断部24において、全ての偏差が許容値以下でない場合、すなわちいずれかの偏差が許容値を超えている場合には、整数値バイアスに跳躍現象が発生しフィックス解が異常値になっていると判断されるため、今回、得られたフィックス解は全て無効とされる。
【0037】
このようにして得られた正常なフィックス解は海面位置データとして、データ解析部14に送られ、ここで、波浪、潮汐、津波などに分析された後、データ表示装置15に送られ、例えば画面にて表示される。
【0038】
なお、上記解演算部12の再起動に際しては、例えば平滑化処理においては過去に計測した擬似距離および搬送波位相が用いられるため、これらが初期化されることになる。
上述した海面位置計測装置および海面位置計測方法によると、RTK法を用いた解演算部12を複数具備させ、これら各解演算部12で得られたフィックス解同士の偏差と許容値とを比較するとともに全ての偏差が許容値以下である場合に、これらのフィックス解に基づき正常なフィックス解を取得するようにしたので、ほぼ常に、正常なフィックス解を得ることができる。すなわち、異常値のフィックス解を、より確実に除去することができる。
【0039】
さらに、各解演算部12を所定時間おきにずらせて再起動させるようにしているので、たとえフィックス解が異常値になった場合でも、所定時間以内に、異常値が発生した解演算部12での整数値バイアスが正常に戻り、正常なフィックス解が得られる。
【0040】
したがって、従来のように、一旦、フィックス解が異常値になると、誤った位置データが出力され続けるという事態が防止されるため、この海面位置計測装置および海面位置計測方法を用いて津波などを検出する際には、精度の良い検出を行うことができ、延いては、誤った津波警報の発令を防止することができる。
【0041】
なお、上述の説明では、位置計測装置を海面位置計測装置の要部として説明したが、例えば位置計測装置として捉えた場合には、解演算部12と解取得部13とから構成されることになる。
【0042】
ところで、上述した実施の形態においては、解演算部を4個具備させるとともに、所定時間おきにずらせて順番に再起動させる海面位置計測装置および海面位置計測方法について説明したが、これらと同様の効果を奏し得る参考例としての海面位置計測装置および海面位置計測方法を、以下、簡単に説明しておく。
【0043】
この海面位置計測装置においては、2個の解演算部が具備されるとともに、一方を主解演算部(メイン)に、他方を副解演算部(サブ)となし、さらに副解演算部を所定時間おきに再起動させるとともに、主解演算部については、両解演算部にて得られたフィックス解の偏差が許容値を超えている場合にだけ、且つその時点で再起動させるようにしたものである。
【0044】
この海面位置計測方法を、図7のフローチャートに基づき簡単に説明しておく。
すなわち、2つの解演算部にて求められたRTK解を解取得部の解選択部に入力して、その中からフィックス解を選択した後、解判断部(実施の形態における個数判断部に対応する)にて、両方ともフィックス解であるか否かを判断するとともに、一方だけがフィックス解である場合には、いずれの解演算部からの解がフィックス解であるかを判断する。
【0045】
両方ともフィックス解であると判断された場合には、偏差が求められた後、この偏差と予め求められている許容値とが比較されて、偏差が許容値以下であるか否かが判断される。
【0046】
偏差が許容値以下であると判断された場合には、主解演算部からのフィックス解が正常なフィックス解として取得される。偏差が許容値を越えている場合には、両フィックス解とも無効にされるとともに主解演算部だけが再起動される。
【0047】
そして、上記解判断部において、両方ともフィックス解でないと判断された場合には、まず、主解演算部からの解がフィックス解であるか否かが判断される。主解演算部からの解がフィックス解であると判断された場合には、このフィックス解が正常なフィックス解として取得される。
【0048】
次に、上記解判断部において、主解演算部からの解がフィックス解でないと判断された場合には、副解演算部からの解がフィックス解であるか否かが判断される。副解演算部からの解がフィックス解であると判断された場合には、このフィックス解が正常なフィックス解として取得され、フィックス解でないと判断された場合には、いずれの解もフィックス解でないため、フィックス解無しと判断される。この場合における各解演算部の再起動スケジュールを図8に示しておく。
【0049】
上述した参考例における海面位置計測装置および海面位置計測方法においても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
すなわち、従来のように、解演算部が1個である場合よりも、正常なフィックス解が得られやすくなるので、異常値であるフィックス解の除去をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る位置計測装置が用いられて海面位置を計測するための海面位置計測装置の設置環境を示す概略全体構成図である。
【図2】同位置計測装置が用いられる海面位置計測装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】同海面位置計測装置に用いられるRTK法を説明するフローチャートである。
【図4】同海面位置計測装置の解取得部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】同海面位置計測装置により海面位置を計測する手順を示すフローチャートである。
【図6】同海面位置計測装置における解演算部の起動および再起動のスケジュールを示す図である。
【図7】本発明の海面位置計測装置の参考例の概略構成を示すブロック図である。
【図8】同参考例に係る海面位置計測装置における解演算部の起動および再起動のスケジュールを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 基準GPS受信機
2 観測GPS受信機
3 観測ブイ
11 海面位置計測装置
12 解演算部
13 解取得部
14 データ解析部
16 起動制御部
21 解選択部
22 個数判断部
23 偏差演算部
24 許容値判断部
25 演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置された基準GPS受信機である基準局にて得られた測距データと、位置計測対象である移動物体に配置された観測GPS受信機である観測局にて得られた測距データとに基づき移動物体の三次元位置を計測する装置であって、
基準局からの基準測距データおよび観測局からの観測測距データを入力して、リアルタイムキネマティック(RTK)法により、観測局の位置データであるフィックス解、フロート解などのRTK解を演算し得る解演算部を複数具備するとともに、これら各解演算部を所定時間おきにずらせて順番に再起動させるようになし、
さらに上記各解演算部から出力されたRTK解を入力して正常なフィックス解を取得する解取得部を具備し、
且つ上記解取得部に、入力されたフィックス解の個数が複数であるか否かを判断する個数判断部と、この個数判断部にてフィックス解の個数が複数であると判断された場合にこれら各フィックス解同士の偏差を求める偏差演算部と、この偏差演算部にて演算された各偏差が許容値以下であるか否かを判断する許容値判断部とを具備させるとともに、この許容値判断部にて全ての偏差が許容値以下であると判断された場合にこれらのフィックス解に基づき正常なフィックス解を取得するようにしたことを特徴とするGPSによる位置計測装置。
【請求項2】
観測局が所定海域に係留された観測ブイに設置されており、演算される位置データが海面位置であることを特徴とする請求項1に記載のGPSによる位置計測装置。
【請求項3】
地上に設置された基準GPS受信機である基準局にて得られた基準測距データと、位置計測対象である移動物体に配置された観測GPS受信機である観測局にて得られた観測測距データとをそれぞれ複数の解演算部に入力するとともに、これら各解演算部にて、リアルタイムキネマティック(RTK)法を用いて、観測局の位置データであるフィックス解、フロート解などのRTK解を演算し、
次に上記求められたフィックス解の個数が複数であるか否かを判断するとともに、フィックス解が複数であると判断された場合にこれら各フィックス解同士の偏差を求め、
次に上記求められた各偏差が許容値以下であるか否かを判断するとともに、全ての偏差が許容値以下であると判断された場合にこれらのフィックス解に基づき正常なフィックス解を取得し、
且つ上記各解演算部を所定時間おきにずらせて順次再起動させることを特徴とするGPSによる位置計測方法。
【請求項4】
観測局が所定海域に係留された観測ブイに設置されており、演算される位置データが海面位置であることを特徴とする請求項3に記載のGPSによる位置計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−78382(P2010−78382A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245056(P2008−245056)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】