説明

GanodermaLucidumの抽出物の投与に関連した方法及び組成物

Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物から得られるフコース含有糖タンパク質画分、フコース含有糖タンパク質画分を含む組成物、IL-1の遺伝子発現に伴う免疫調整現象を仲介する方法、炎症性サイトカインの発現を刺激する方法、炎症性サイトカインであるインターロイキン1と関連したプロテインキナーゼ経路を調整する方法、TLRによって仲介される現象を誘導する方法、単核細胞の分化を調整する方法、NK感受性腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞障害を増大させる方法、サイトカインの発現を活性化する方法、マウス脾臓B細胞又はヒトB細胞、ヒト成熟脾臓細胞又は樹状細胞でのBlimp 1の発現を誘導する方法、マクロファージ内においてLPSによって誘導される一酸化窒素の生産を阻害する方法、脾臓細胞の増殖を活性化する方法及び脾臓細胞のプロテオームを改変する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2002年8月6日に出願し、発明の名称が「IMMUNO-MODULATING ANTITUMOR ACTIVITIES OF GANODERMA LUCIDUM (REISHI) POLYSACCHARIDES」である米国特許出願番号第10/213,257号に対する一部継続出願であり、優先権を主張するものである。また、本出願は、2004年10月14日に出願し、発明の名称が「METHODS AND COMPOSITIONS ASSOCIATED WITH ADMINISTRATION OF AN EXTRACT OF GANODERMA LUCIDUM」である米国仮出願番号第60/619,263号に対し優先権の利益を主張するものであり、それらすべての内容を本願に参照により援用する。
【0002】
本発明は免疫学及び細胞生物学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
Ganoderma種(医療菌類のグループ)は本技術分野において既知である。Ganoderma Iucidum(レイシ又はLing-Zhi)は、良好な健康状態及び不老長寿を促進する漢方(TCM)として用いられており、特にレイシの抽出物は抗腫瘍剤及び免疫調整剤として使用されていた。また、レイシは肝臓の保護活性、血糖降下活性及び血小板凝集阻害活性を示すことも知られている。抽出物の化学組成は、図1に示す構造を有する多糖を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
受容体の補体受容体タイプ3(complement receptor type 3, CR3)はβ−グルカン多糖類を結合することが知られているが、抗腫瘍活性を担う受容体及び糖のエピトープは依然として確立されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、Ganoderma Lucidum(レイシ又はLing Zhi)の抽出物由来のフコース含有糖タンパク質画分が開示され、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を含む糖ペプチドが含まれる。
【0006】
第2の態様によれば、サイトカインの発現の活性化に伴う生物学的な現象を仲介する方法が開示される。特に、哺乳類細胞においてIL-1、IL6、IFN及び/又はTNFの遺伝子発現に伴う免疫調整現象を仲介する方法が開示される。該方法は、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むフコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含む。
【0007】
免疫調整現象には、インターロイキン−1、IL6、IFN及び/又はTNF、及び/又はそれらの分泌前駆体の分泌並びにインターロイキン1転換酵素の発現が含まれてもよい。
【0008】
フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、インターロイキン1及び/又はその前駆体の分泌の上方制御を誘導する量並びに/あるいはインターロイキン1転換酵素の発現の上方制御を誘導する量であってもよい。
【0009】
第3の態様によれば、哺乳類細胞において炎症性サイトカインの発現を刺激する方法が開示される。該方法は、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むフコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含む。
【0010】
第4の態様によれば、哺乳類細胞において炎症性サイトカインであるインターロイキン1と関連したプロテインキナーゼ経路を調整する方法が開示される。該方法は、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0011】
フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、細胞においてPKC、MEK1、PAK及び/又はMAPKsを活性化する量であってもよく、活性化したPKC、MEK1、PAK及び/又はMAPKsは、複数のサイトカインの生産を引き起こす。
【0012】
フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、PKC/MEK1/ERKシグナル伝達経路を活性化する量であってもよく、経路の活性化によって、インターロイキン1遺伝子発現の転写、転写後及び翻訳後の調節がもたらされる。
【0013】
第5の態様によれば、哺乳類細胞においてトール様受容体(Toll-Like Receptor,TLR)によって仲介される現象を誘導する方法が開示される。該方法は、少なくとも1種の上記のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含む。
【0014】
TLRによって仲介される現象は、炎症性サイトカイン及び炎症性サイトカインであるインターロイキン1の生産であってもよい。
【0015】
第6の態様によれば、単核細胞の分化を調整する方法が開示され、該方法は、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を単核細胞に投与することを含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0016】
フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、細胞及び細胞の単球/マクロファージ分化においてCD14+CD26+発現の増加をもたらす量であってもよい。
【0017】
また、フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、細胞及び細胞の樹状細胞分化においてCD83+CD1a+発現の増加をもたらす量であってもよい。
【0018】
さらに、フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、細胞及び細胞のNK細胞分化においてCD16+CD56+発現の増加をもたらす量であってもよい。
【0019】
第7の態様によれば、NK感受性腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞障害を増大させる方法が開示され、該方法は、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量をNK細胞に投与することを含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0020】
フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、NK感受性腫瘍細胞に対するNKの細胞障害の増大をもたらす量であってもよい。NK細胞は、CD3+CD56+NKT細胞またはCD3-CD56+NK細胞であってもよい。
【0021】
第8の態様によれば、哺乳類細胞においてIL-1発現に伴う免疫調整現象を仲介する組成物が開示される。該組成物は、適合する媒体、担体又は助剤中にて、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0022】
第9の態様によれば、哺乳類細胞において炎症性サイトカインの発現を刺激する組成物が開示される。該組成物は、適合する媒体、担体又は助剤中にて、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0023】
第10の態様によれば、哺乳類細胞において炎症性サイトカインであるインターロイキン1と関連したプロテインキナーゼ経路を調整する組成物が開示される。該組成物は、適合する媒体、担体又は助剤中にて、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0024】
第11の態様によれば、哺乳類細胞においてTLRによって仲介される現象を誘導する組成物が開示される。該組成物は、適合する媒体、担体又は助剤中にて、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。TLRによって仲介される現象は、細胞におけるインターロイキン1の生産であってもよい。
【0025】
第12の態様によれば、単核細胞の分化を調整する組成物が開示される。該組成物は、適合する媒体、担体又は助剤中にて、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0026】
第13の態様によれば、NK感受性腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞障害を増大させる組成物が開示される。該組成物は、適合する媒体、担体又は助剤中にて、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。NK細胞は、CD3+CD56+NKT細胞またはCD3-CD56+NK細胞であってもよい。
【0027】
第14の態様によれば、哺乳類細胞でのサイトカインの発現を活性化する方法が開示される。該方法は、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0028】
サイトカインは、好ましくはIL-1、IL6、IL-12、IFN-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF及びM-CSFから成る群より選択される。
【0029】
第15の態様によれば、哺乳類細胞でのBlimp 1の発現を誘導する方法が開示される。該方法は、フコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含む。
【0030】
第16の態様によれば、マクロファージ内においてLPSによって誘導される一酸化窒素の生産を阻害する方法が開示される。該方法は、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量をマクロファージに投与することを含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0031】
第17の態様によれば、脾臓細胞の増殖を活性化する方法が開示され、該方法は、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量をマウス脾臓細胞に投与することを含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【0032】
第18の態様によれば、脾臓細胞のプロテオームを改変する方法が開示される。該方法は、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量をマウス脾臓細胞に投与することを含み、該フコース含有糖タンパク質画分には、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
第1の態様によれば、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分が開示される。「フコース含有糖タンパク質画分」という句は、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含む抽出物の成分を指す。
【0034】
「糖タンパク質」又は「糖ペプチド」という語は、セリンもしくはスレオニンのOH基を介して(Oグリコシル化)、又はアスパラギンのアミドのNH2を介して(Nグリコシル化)のいずれかによって結合した、共有結合した糖単位を有する如何なる長さ及び大きさのタンパク質又はその部分を指す。「多糖」という語は、分岐状鎖又は非分岐状鎖においてグリコシド結合した単糖残基を含む如何なる長さ及び大きさのポリマーを指す。
【0035】
「抽出物」という語は、ある物質から活性成分を除去することによって得られた濃縮した調整物を指し、活性成分が溶媒中に含まれている場合には、活性成分の除去は、溶媒を総て又はほとんど総て蒸発させ、残留した塊又は粉末を定められた基準に調整することによって行われる。抽出物は、通常3つの形態、すなわち半流動体もしくはシロップのような粘度のあるもの(consistency)、丸薬もしくは固体及び乾燥粉末として用意される。「Ganoderma Lucidum」という句は、菌類のGanoderma Lucidum又はレイシを指し、それ由来の如何なる組織、部分もしくは画分及び/又はホモジェネート、懸濁液、濾液、濾過の残留物及び溶液を含めたその如何なる調整物も指す。「調整物」という語は、ある物質から出発して、処理したか、製造したか、又は配合した組成物を指し、「濃縮された調整物」とは、非活性成分の質量もしくは容積または組成物全体の質量または容積に対する活性成分の質量または容積の比率が、ある物質中の同じ比率と比較して増大した調整物を指す。「画分」という語は、物質の分離可能な成分のうちの一つを指す。
【0036】
実施例において例示されている実験手順、特に実施例5において、フコシダーゼによる処理によって、抽出物と関連した性質及び活性に影響があることが示されていることから見て、Ganoderma Lucidumのフコース含有糖タンパク質画分は、Ganoderma Lucidumの抽出物の活性成分を構成している。フコース含有糖タンパク質画分の酵素処理と生物活性との間の関係を解明する、考えられるモデルを図12に示す。フコース含有糖タンパク質画分の活性および性質に加えて、フコース含有糖タンパク質画分を用いる方法及び当該画分を含む組成物は、上記モデルによって、範囲および用途において制限されるものではなく、上記モデルは説明のために記載されているに過ぎない。
【0037】
いくつかの実施態様において、フコース含有糖タンパク質画分は、625nmにおけるO.D.が約1.8という光吸光度を示すGanoderma Lucidumの画分(本明細書では、F3、フラクション3、EORP、GL(PS)_WuまたはWuとも称される)中に含まれており、実施例1、6及び9に例示されている実験手順(一部図2参照)によってGanoderma Lucidumの水溶性抽出物(レイシ粗抽出物)から同定され、単離される。
【0038】
フラクション3は、末端のフコース残基を有するフコース含有糖タンパク質画分を含む。「末端のフコース残基」という句は、糖の鎖の遊離末端に近接した領域に位置した糖の鎖のフコース残基と見なす。また、フラクション3のフコース含有糖タンパク質画分は、α1,2−フコシド結合及びα3,4−フコシド結合で結合したフコース残基も含み、このことは、実施例5に例示される実験手順によって立証されている。
【0039】
また、フコース残基に加えて、フラクション3のフコース含有糖タンパク質画分は、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、キシロース及びラムノースを含んでもよく、このことは、実施例1、6に例示される実験手順によって立証されている(一部表1及び表6参照)。
【0040】
また、フラクション3のフコース含有糖タンパク質画分は、アミノ酸成分も含んでもよく、このことは、実施例1に例示される実験手順によって立証されている。しかしながら、フラクション3のアミノ酸成分は、フラクション3のフコース含有糖タンパク質画分と関連した活性を損なうことなく、大幅に変更されていてもよく、このことは、実施例5に例示されている実験によって示されている。
【0041】
フラクションF3は、下記の方法によって得てもよく、該方法は、Ganoderma Lucidumの植物組織をホモジェナイズするか、かつ/またはホモジェナイズしたGanoderma Lucidum由来の植物組織を用意することと、ホモジェナイズしたGanoderma Lucidumの植物組織を抽出することと、抽出したホモジェナイズした植物組織を濾過して、1又は複数の画分を得ることとを有し、該画分は、フコース残基を有する糖類成分を含む。また、上記手順において得られた画分は、プロテアーゼで処理してもよい。
【0042】
「抽出」という語は、ある物質から出発して抽出物を提供する如何なる適した手順またはプロトコールも指し、当該プロトコールの決定は、物質及び物質から除去される活性成分を含めた種々の変更可能なものに応じて当業者によって成し遂げられ得るものであり、手順の例としては、物質の成分の異なる溶媒への異なる溶解度に基づいて処理することが挙げられる。ホモジェナイズした植物組織を抽出することは、フコース含有糖タンパク質またはフコース含有多糖成分を含むGanoderma Lucidumの抽出物をホモジェナイズした植物組織から得る如何なる適した手順またはプロトコールによって行うことができ、例えば、適した手順としては、ホモジェナイズした植物組織をアルカリ性の水溶液、例えば0.1N NaOHで所定の時間処理して、粗抽出物を得ることが挙げられる。
【0043】
「濾過する」または「濾過」という語は、活性成分などの物質の成分を不純物などの物質の他の成分から分離する如何なる適した手段も指し、当該プロトコールの決定は、物質、物質の活性成分及び不活性成分を含めた種々の変更可能なものに応じて当業者によって成し遂げられ得るものであり、濾過手順の例としては、透析及びゲル濾過クロマトグラフィーが挙げられる。抽出し、ホモジェナイズした植物組織を濾過することは、例えばSephacryl S-500カラムを用いるゲル濾過クロマトグラフィーなどの粗抽出物の濾過を行い、水溶液で溶出して1または複数の画分を得ることによって行うことができる。一実施態様において、水溶液は、pH約7.0で緩衝され、例えばTris緩衝溶液である。
【0044】
フラクション3を得る上記方法の具体的な実施態様は実施例1、6及び9に例示されている。
【0045】
更なる実施態様において、フコース含有糖タンパク質画分は、フラクションF3の画分(本明細書ではまとめてサブフラクションと名付ける)中に含まれており、本明細書において該フラクションF3の画分は、F3G1、F3G2、F3G3及びF3G2のサブフラクションであるF3G2H1及びF3G2H2と特定される。サブフラクションは、実施例7及び8に例示されている実験手順によってフラクション3から単離される。
【0046】
異なるサブフラクションは、それぞれの光を吸収する能力によって識別することができる。F3G1は、480nmにおけるO.D.が約0.4の光吸光度を示し、F3G2は、480nmにおけるO.D.が約0.1の光吸光度を示し、F3G2H1は、480nmにおけるO.D.が約0.10の光吸光度を示し、F3G2H2は、480nmにおけるO.D.が約0.5の光吸光度を示し、このことは、実施例6に例示される実験手順によって立証されている(図14及び15も参照)。
【0047】
また、本明細書においてF3及びサブフラクションをまとめてフラクションと名付ける。
【0048】
また、サブフラクションに含まれるフコース含有糖タンパク質画分は、フコース残基に加えてグルコース、マンノース、ガラクトース、N−アセチルグルコサミン及びキシロースなどの他の糖も含んでもよく、このことは、実施例6に例示されている実験手順によって立証されている(特に表4参照)。
【0049】
サブフラクションF3G1、F3G2及びF3G3は、フラクション3を分離することによって得ることができる。「分離する」という語は、物質をその2または3以上の成分に分けるのに適した如何なる手順またはプロトコールも指し、当該プロトコールの決定は、物質及び分離された成分を含めた種々の変更可能なもの応じて当業者が成し遂げることができるものである。フラクション3の分離は、フラクション3を濾過することによって(例えば、Diaion-WA30陰イオン交換対などの陰イオン交換体または例えばTSK HW-75カラム上でのゲル濾過クロマトグラフィーによって)行うことができ、濾過したフラクション3からサブフラクションF3G1、F3G2及びF3G3を単離することができる(例えば、少なくとも1種のNaClを含めたアルカリ性溶液を用いて溶出することによって)。
【0050】
F3G2のサブフラクションであるF3G2H1及びF3G2H2は、さらにF3G2の分離を行うことによって得ることができる。例えば、F3G2の分離を、サブフラクションF3G2を、例えばTSK HW-75カラム上でのゲル濾過クロマトグラフィーで濾過することによって行うことができ、サブフラクションF3G2H1及びF3G2H2を、例えば濾過したサブフラクションF3G2を水溶液で溶出することによって濾過したF3G2から単離することができる。
【0051】
サブフラクションを得るための上記方法の実施態様の例を実施例6に示す。
【0052】
一態様によれば、哺乳類細胞でのサイトカインの発現の活性化に伴う生物現象を仲介する方法が開示される。「生物現象」という句は、生物学または命及び生体のプロセスのもの又は生物学または命及び生体のプロセスと関連した出来事を指す。「仲介する」という語は、「制御する」及び「調節する」と置き換えて用いることもでき、後に同定される項目を特に制御するか、又は当該項目に影響を与えることを指し、項目には、分子、経路、現象又は機能が含まれ、「仲介する」には、当該分子、経路、現象又は機能の活性化、刺激、阻害、変更又は改変によって制御することが含まれてもよい。
【0053】
サイトカインを「発現する」又はサイトカインの「発現」という語は、遺伝子のコードされている情報がサイトカインに転換されるプロセスを指す。「活性化する」という語は、サイトカインの発現などのプロセスを開始するか、かつ/もしくは促進させること、又はタンパク質、核酸、脂質、イオン又は他の化合物などの化合物を不活性な形態から活性のある形態もしくは異なる化合物に転換することを指し、該活性のある形態又は該異なる化合物は特定の生物作用を有するものである。「サイトカイン」という語は、正常なマクロファージ、繊維芽細胞、ケラチノサイト及び種々の形質転換細胞株などの細胞によって放出され、細胞間相互作用、情報交換及び他の細胞の行動に特異的な影響を及ぼし、免疫プロセス及び炎症プロセスの制御に関与し、修復プロセス並びに正常細胞の成長及び分化の制御に貢献するタンパク質又は生物因子を指す。サイトカインとしては、インターロイキン、リンフォカイン及びTNF及びインターフェロンなどのいくつかの関連したシグナル分子が挙げられる。
【0054】
「哺乳類細胞」という句は、哺乳類由来、特にヒト又はマウスの細胞を指し、哺乳類の内部又は外部に位置することができる。哺乳類細胞は、Tリンパ球、ヒト及びマウスのマクロファージ及びマウス脾臓細胞などのヒト又はマウスの細胞であってもよい。
【0055】
サイトカインは、IL-1、IL6、IFN-γ、TNF-α、IL-12、GM-CSF、G-CSF及び/又はM-CSFであってもよく、哺乳類細胞は、Tリンパ球、ヒト及びマウスのマクロファージ及びマウス脾臓細胞などのヒト又はマウスの細胞であってもよい。
【0056】
哺乳類細胞でのサイトカインの発現の活性化に伴う生物現象を仲介する方法は、フコース含有糖タンパク質画分の有効量を哺乳類細胞に投与することを含む。
【0057】
化合物の「有効量」という語は、望ましい効果を最小限度に達成するのに、より好ましくは最適に達成するのに必要である化合物の少なくとも最小限の量である。ある方法において使用されるフコース含有糖タンパク質画分の有効量は、遭遇した特定の状況(例えば、濃度、細胞の種類及び数など)に応じて、本願明細書、特に実施例の部を読むことにより、過度の実験をすることなく当業者によって容易に決定され得るものである。
【0058】
「投与する」という語は、化合物、特にフコース含有糖タンパク質画分を細胞と接触させるのに適した如何なるプロセス又はプロトコールも指し、「接触」という語又は「接触させる」という句は、化合物、特にフコース含有糖タンパク質画分と細胞を、相互の空間的関係において化合物と細胞の間の生物相互作用が実現可能なように設置することを意味する。「生物相互作用」という句は、化合物、特にフコース含有糖タンパク質画分が細胞の正常な機能及び/もしくは生存を制御するか、それに影響するか、又は作用するプロセスを指す。そのようなプロトコールの決定は、細胞の種類、接触がインビトロ、インビボ又はエキソビボで生じるかどうかを含めた種々の変更可能なものに応じて当業者によって成し遂げられ得ることである。フコース含有糖タンパク質画分を投与するための受け入れ可能なプロトコールには、個々の用量サイズ、投与回数、投与頻度並びに局部的な投与、局所投与又はインビボでの口腔内投与、インビトロでのインキュベーション及びアッセイ、例えば単離した造血細胞へのエキソビボでの投与などの投与形態が含まれ、本明細書、特に実施例の部を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0059】
特に、生物現象を仲介するフコース含有糖タンパク質画分の有効量及び適した投与形態は、仲介される生物現象及びサイトカインの発現が活性化されている細胞に照らして、本明細書、特に実施例の部を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0060】
いくつかの実施態様において、生物現象は造血であり、哺乳類細胞は造血細胞であり、サイトカインはGM-CSF、G-CSF及びM-CSFである。「造血」という語は、生体内での(特に哺乳類の骨髄内での)血液細胞の形成を指す。「造血細胞」という語は、B細胞、マクロファージ、樹状細胞及びナチュラルキラー細胞などの造血プロセスにかかわる細胞を指す。
【0061】
いくつかの実施態様において、生物現象は造血であり、フコース含有糖タンパク質画分は、できる限りF3G1と組み合わせた、F3、F3G2H1及び/又はF3G2H1中に含まれ、造血を仲介するのに有効な量および適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例3、7、8及び12を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0062】
フコース含有糖タンパク質画分がフラクション3中に含まれている実施態様において、造血を仲介するのに有効な量および適した投与形態は、実施例3、7及び12に例示されている実験に基づいて、本明細書を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0063】
フコース含有糖タンパク質画分がサブフラクションF3G2、F3G2H1及び/又はF3G1の1つ又は複数に含まれている実施態様において、造血を仲介するのに有効な量および適した投与形態は、実施例7及び8に例示されている実験に基づいて、本明細書を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0064】
いくつかの実施態様において、生物現象は免疫調整現象であり、サイトカインはIL-1、IL6、IFN及び/又はTNFであり、哺乳類細胞は、Tリンパ球、ヒト及びマウスのマクロファージ及びマウス脾臓細胞などのヒト又はマウスの細胞であってもよい。
【0065】
「免疫調整現象」という語は、1種又は複数の免疫機能の制御と関連した出来事を指し、該制御としては、免疫機能の活性化、刺激、阻害又は変更もしくは改変が挙げられる。免疫調整現象の例としては、インターロイキン1、IL6、IFN及び/もしくはTNFなどのサイトカインの分泌並びに/又はそれらの分泌前駆体、炎症反応及び抗腫瘍活性、特に哺乳類細胞でのIL-1、IL6、IFN及び/又はTNFの遺伝子発現に伴う抗腫瘍活性がある。
【0066】
サイトカインの発現の活性化に伴う免疫調整現象を仲介するために投与されるフコース含有糖タンパク質画分の有効な量および適した投与形態は、活性化される免疫調整現象に照らして、本明細書、詳細には実施例、特に実施例3、6、7、8及び12に開示されている手順を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0067】
いくつかの実施態様において、免疫調整現象は炎症反応であり、サイトカインは、IL-1、IL6及びTNF-αであり、フコース含有糖タンパク質画分は、F3、F3G2、F3G2H1及び/又はF3G2H2の単独に、又はこれらとF3G1及びF3G3と組み合わせたもの含まれてもよい。「炎症反応」という句は、生物の一部の損傷、負傷又は破壊により生物の免疫システムによって誘発される一連の生物現象を指し、該一連の現象は、有害な物質及び負傷した部分の両方を破壊するか、希釈するか又は囲む(隔離する)役割を果たす。哺乳類などの生物において、生物現象には、タンパク質の生産、浸透性及び血流の増加による小動脈、毛細血管及び小静脈の拡張、炎症の中心への血漿タンパク質及び白血球の移動を含めた液体の滲出などの生化学的な及び組織学的な現象が含まれる。
【0068】
フコース含有糖タンパク質画分がフラクション3中に含まれている実施態様において、炎症反応を仲介するのに有効な量および適した投与形態は、実施例3、7及び12に例示されている実験に基づいて、本明細書を読むことにより特定できるものである。
【0069】
いくつかの実施態様において、フコース含有糖タンパク質画分は1つ又は複数のサブフラクションに含まれ、炎症反応を仲介するのに有効な量および関連した投与手順は、実施例7及び8に例示されている実験に基づいて特定できるものである。
【0070】
いくつかの実施態様において、免疫調整現象は抗腫瘍活性であり、サイトカインはINF-γ及びTNF-αであり、フコース含有糖タンパク質画分は、F3、F3G2、F3G2H1及び/又はF3G2H2の単独に、又はこれらとF3G1及びF3G3と組み合わせたものに含まれ、哺乳類細胞はTリンパ球、ヒト及びマウスのマクロファージ、マウス脾臓細胞などのヒト又はマウスの細胞である。「抗腫瘍活性」という句は、腫瘍の形成又は増殖を妨げるために免疫システムによって誘発される一連の生物現象を指す。
【0071】
フコース含有糖タンパク質画分がF3中に含まれている実施態様において、抗腫瘍活性を仲介するのに有効な量および関連した投与手順は、実施例3、7及び12に例示されている実験に基づいて特定できるものである。
【0072】
フコース含有糖タンパク質画分が1つ又は複数のサブフラクションに含まれている実施態様において、抗腫瘍活性を仲介するのに有効な量および関連した投与手順は、実施例7及び8に例示されている実験に基づいて本明細書を読むことにより特定できるものである。
【0073】
いくつかの実施態様において、フコース含有糖タンパク質画分を、ヒト又はマウスの細胞などの哺乳類細胞での炎症性サイトカインの発現を刺激する方法に使用することができる。炎症性サイトカインには、IL-1、IL6及びTNFが含まれる。「炎症性サイトカイン」という句は、発現が生物における炎症反応の誘発と関連しているサイトカインを指す。
【0074】
該方法は、特に各々のフラクション単独に又はフラクション同士組み合わせたものに含まれているフコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含む。
【0075】
別の態様によれば、ヒト又はマウスの細胞などの哺乳類細胞にてトール様受容体(Toll-like Receptor、TLR)によって仲介される現象を誘導する方法が開示される。TLRによって仲介される現象は、トール様受容体ファミリー(TLRファミリー)に属する1種又は複数の受容体によって仲介される生物現象である。
【0076】
詳細には、TLRによって仲介される現象は、TLRファミリーのメンバーであるTLR4(Muzio及びMantovani,2000;Akiraら2001;Hsu及びWen 2002、Mambulaら2002;Aderem及びUlevitch 2000;Brownら2002)によって仲介される現象であってもよい。TLRによって仲介される現象は、炎症性サイトカイン、特に炎症性サイトカインであるインターロイキン1の生産であってもよく、IL-1分泌及びプロIL-1(IL-1の前駆体)並びにIL-1転換酵素の発現の上方制御が含まれる。また、TLRによって仲介される現象としては、IL-1R関連キナーゼ(IRAK)、セリン/スレオニンキナーゼなどのTLR4シグナル経路に関与し、またTLRシグナル複合体へ補充されるタンパク質のリン酸化及び/又は分解も挙げられる。
【0077】
TLRによって仲介される現象を誘導する方法は、特にF3及び/又はサブフラクションF3G1、F3G2、F3G2H1、F3G2H2、F3G2H1A及びF3G2H1Bの少なくとも1つに含まれるフコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含む。
【0078】
TLRによって仲介される現象を誘導するのに有効な量および適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例10、11及び12(実施例7及び図20〜21、23〜25及び59〜60も参照)を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0079】
別の態様によれば、ヒト又はマウスの細胞などの哺乳類細胞において炎症性サイトカインであるインターロイキン1と関連したプロテインキナーゼ経路を調節する方法が開示される。
【0080】
「プロテインキナーゼ経路」とは、少なくとも1種のプロテインキナーゼの活性化を含むシグナル伝達経路を指し、「シグナル伝達経路」は、一部の細胞から別の細胞へ伝達するように向けられ、細胞と化合物の相互作用によってシグナルが生成し、シグナルによって細胞の応答がもたらされる少なくとも1種の反応を含む一連の生化学的な反応を指す。
【0081】
プロテインキナーゼ経路は、プロテインキナーゼであるPKC、MEK1、PAK、Rac-1及び/又はERK、JNK及びp38などのMAPKs(PKC:プロテインキナーゼC、MEK1:マイトジェン活性化プロテインキナーゼ/細胞外シグナル制御キナーゼ、PAK:p21活性化キナーゼ、ERK:細胞外シグナル制御キナーゼ;JNK:c-Jun N末端キナーゼ;p38:p38-マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)の活性化を含む経路であってもよく、様々なシグナルの関連した伝達によって、複数のサイトカインの生産又はIL-1といった特定のサイトカインの生産などの種々の生化学反応及び細胞応答がもたらされる。
【0082】
プロテインキナーゼ経路には、一部の細胞から別の細胞へのシグナル伝達に関与する分子を含めた種々の化合物が含まれ、関与する分子の例としては、細胞表面受容体、すなわち細胞の原形質膜を越えたシグナル伝達に関与する分子及び分子の複合体、並びに細胞内シグナル伝達分子、すなわち細胞の原形質膜から細胞の原形質を介して、及び/又は細胞の核へシグナルを伝達するのに関与する分子又は分子の複合体がある。タンパク質、脂質、核酸又はイオンなどの他の化合物が関与してもよい。化合物は経路内において活性化されて、シグナルを伝達し、活性化によって生じた活性型の化合物又は異なる化合物は、シグナルを伝達する機能及び/又はシグナルを細胞応答に転換する機能を有する。
【0083】
該方法は、F3に特に含まれるフコース含有糖タンパク質画分の有効量を哺乳類細胞に投与することを含み、プロテインキナーゼ経路を調節するのに有効な量および適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例11〜15を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0084】
フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、細胞においてPKC、MEK1、PAK及び/又はMAPKsを活性化する量であってもよく、PKC、MEK1、PAK及び/又はMAPKsの活性化によって、複数のサイトカインの生産がもたらされる。
【0085】
フコース含有糖タンパク質画分の有効量は、PKC/MEK1/ERKシグナル伝達経路を活性化する量であってもよく、該経路の活性化によって、インターロイキン1遺伝子発現の転写調節、転写後の調節及び翻訳後の調節がもたらされる。
【0086】
少なくとも1種のサブフラクションに含まれるフコース含有糖タンパク質画分が、炎症性サイトカインであるインターロイキン1と関連した1種又は複数の上記プロテインキナーゼ経路を調節する実施態様は、IL-1発現を誘導するサブフラクションの能力に基づいて、本明細書、特に実施例11〜15を読むことにより、実施例7に照らして、当業者が想定できることである。
【0087】
いくつかの実施態様において、PTK/PKC/MEK1/ERK経路、すなわちPTK及びERKを含む経路を仲介するのに有効な量のフコース含有糖タンパク質画分を投与し、化合物がPTKの上流で活性化され、MEKの上流でPKCが活性化することによって、化合物がPKC及びMEKを含むPTKとERKの間で活性化され、化合物がERKの下流で活性化される。詳細には、PTK/PKC/MEK1/ERK経路は、PTKによって仲介されるリン酸化反応後、PKsを誘導し、MAPKs:ERK、JNK及びp38を活性化することを含む。具体的な実施態様において、該経路は、PTK→PKC→MEK-1→ERK(一つの矢印は、矢印の頭に対し遠位の化合物と矢印の頭に近接した化合物との間に化合物が全く活性化されていないことを示し、二つの矢印は、1種または複数の化合物が、矢印の頭に対し遠位の化合物と矢印の頭に近接した化合物との間の経路において活性化されていることを示す)を含む。
【0088】
PTK/PKC/MEK1/ERK経路を仲介するのに有効な量および適した投与形態は、本明細書を読むことにより、実施例13及び14に例示された実験に基づいて当業者が特定できるものである。
【0089】
いくつかの実施態様において、PTK/Rac1/PAK/p38経路、すなわち、PTK及びp38を含む経路を仲介するのに有効な量のF3を投与し、化合物がPTKの上流で活性化され、化合物がRac1及びPAKを含むPTKとp38の間で活性化され、PAKの上流でRac1が活性化し、化合物がp38の下流で活性化される。詳細には、PTK/Rac1/PAK/p38経路は、PTKによって仲介されるリン酸化反応後、Rac1、PAKが誘導され、JNK及びp38の上流でのRac1及びPAKの活性化によってMAPKs:JNK及びp38が活性化されることを含む。第1の具体的な実施態様において、該経路は、PTK→Rac1→PAK→→p38という経路を含む。第2の具体的な実施態様において、該経路は、PTK→Rac1→PAK→→JNKを含む。
【0090】
PTK/Rac1/PAK/p38経路を仲介するのに有効な量および適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部、詳細には実施例11〜15を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0091】
いくつかの実施態様において、PI3Kシグナル経路を仲介するのに有効な量のF3を投与し、有効な量及び適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例15を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0092】
「PI3Kシグナル経路」は、例えばPTK及びERKを伴う経路の共通のメンバーにPI3Kタンパク質の制御が集中する経路から実質的に独立しているシグナル伝達経路をPI3Kタンパク質が制御するシグナル伝達経路を指す。より詳細には、PI3Kシグナル経路には、PI3Kタンパク質の下流にある成分が含まれ、該経路が一連のシグナル伝達現象の下流へ続く。
【0093】
プロテインキナーゼ経路の略図を図54及び55に示す。フコース含有糖タンパク質画分の活性及び性質に加えて1種又は複数のフコース含有糖タンパク質画分を用いる方法及び1種又は複数の該画分を含む組成物は、上記モデルによって範囲及び用途が制限されるものではなく、上記モデルは例示のためにのみ用いられるものである。
【0094】
別の態様によれば、単核細胞の分化を仲介する方法が開示され、該方法は、フコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含み、有効量は本明細書、特に実施例の部及び実施例16を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0095】
「分化する」又は「分化」という語は、別個の細胞のタイプに成熟した細胞として細胞が受けるプロセスを指し、分化した細胞は、独特の特徴を有し、特有の機能を果たし、あまり分裂しない。「細胞のタイプ」という語は、細胞の別個の形態的な又は機能的な型を指す。細胞の分化は、表現型の変化によって特徴付けることができ、細胞の「表現型」は、細胞によって示される総ての特徴を指し、環境因子の特定の組み合わせの下、特徴が遺伝子型と環境との間の相互作用から生じ、「成熟した表現型」は、自然な成長又は発達において完全な細胞によって示される表現型である。「表現型の変化」という句は、細胞の表現型の変更を指し、「免疫−表現型の変化」という句は、細胞と関連した免疫機能に影響を及ぼす細胞の表現型の変更を指す。
【0096】
いくつかの実施態様において、単核細胞の免疫−表現型の変化を誘導するのに有効な量のフラクション3に含まれるフコース含有糖タンパク質画分を単核細胞に投与し、該免疫−表現型の変化は、CD14+CD26+発現などの単核細胞の単球/マクロファージへの分化を特徴付けるものであって、該有効な量は、本明細書を読むことにより、実施例16に例示された実験に基づいて当業者が特定できるものである。
【0097】
いくつかの実施態様において、単核細胞の免疫−表現型の変化を誘導するのに有効な量のフラクション3に含まれるフコース含有糖タンパク質画分を単核細胞に投与し、該免疫−表現型の変化は、CD83+CD1a+発現などの単核細胞の樹状細胞への分化を特徴付けるものであって、該有効な量は、本明細書を読むことにより、実施例16に例示された実験に基づいて当業者が特定できるものである。
【0098】
いくつかの実施態様において、単核細胞の免疫−表現型の変化を誘導するのに有効な量のフラクション3に含まれるフコース含有糖タンパク質画分を単核細胞に投与し、該免疫−表現型の変化は、CD16+CD56+発現などの単核細胞のNK細胞への分化を特徴付けるものであって、該有効な量は、本明細書を読むことにより、実施例16に例示された実験に基づいて当業者が特定できるものである。
【0099】
別の態様によれば、初代単球及び/又は樹状細胞におけるMHCII、CD80及び/又はCD86の発現を活性化する方法が開示され、該方法は、フコース含有糖タンパク質画分の有効量を単球及び/又は樹状細胞に投与することを含み、該有効量は、本明細書、特に実施例の部及び実施例19を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0100】
別の態様によれば、NK感受性腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞障害を増大させる方法が開示される。細胞障害という語は、NK細胞の固有の細胞に対し有毒である性質を指し、該性質には、例えば抗体依存性細胞介在反応又は抗体非依存性細胞介在反応がある。
【0101】
該方法は、例えば少なくとも1種のフラクションに含まれるフコース含有糖タンパク質画分の有効量をNK細胞に投与することを含み、該有効量は、本明細書、特に実施例の部及び実施例17及び18を読むことにより当業者が特定できるものである。NK細胞は、CD3+CD56+ NKT細胞又はCD3-CD56+ NK細胞であってもよい。
【0102】
いくつかの実施態様において、有効量のフコース含有糖タンパク質画分は、NK感受性腫瘍細胞、例えば腫瘍細胞株K562に対するNK細胞、例えばCD56+ NK細胞の細胞障害を増大させるのみならず、細胞表面マーカーの発現を仲介する。それらの効果を達成するのに有効なフコース含有糖タンパク質画分の量及び適した投与形態は、本明細書を読むことにより、実施例17及び18に例示された実験に基づいて当業者が特定できるものである。
【0103】
いくつかの実施態様において、有効量のフコース含有糖タンパク質画分によって、NKT細胞とUCB細胞との比率が変更され、フコース含有糖タンパク質画分で処理した後、UCBのNKT細胞の割合が減少する一方で、NK細胞の割合が増加する。それらの効果を達成するのに有効なフコース含有糖タンパク質画分の量及び適した投与形態は、本明細書を読むことにより、実施例18に例示された実験に基づいて当業者が特定できるものである。
【0104】
別の態様によれば、ヒト又はマウスなどの哺乳類細胞での1種又は複数のサイトカインの発現を活性化する方法が開示される。哺乳類細胞は、Tリンパ球、ヒト及びマウスのマクロファージ及びマウス脾臓細胞などのヒト又はマウスの細胞であってもよい。
【0105】
1種又は複数のサイトカインとしては、IL-1、IL6、IFN-γ、TNF-α、IL-12、GM-CSF、G-CSF及びM-CSFが挙げられ、該方法は、フコース含有糖タンパク質画分の有効量を哺乳類細胞に投与することを含む。
【0106】
1種又は複数のサイトカインの発現を活性化するのに有効なフコース含有糖タンパク質画分の量及び適した投与形態は、発現が活性化されたサイトカイン及び発現が活性化されている細胞に照らして、本明細書、特に実施例の部及び実施例3、7、8及び12を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0107】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、IL-1、IL6、IFN及びTNF-αであり、フコース含有糖タンパク質画分は、F3、F3G1、F3G2、F3G3、F3G2、F3G2H1及び/又はF3G2H2中に含まれ、有効量及び適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例3、7、8及び12を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0108】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、IL-1、IL6、IFN-γ、TNF-α、IL-12、GM-CSF、G-CSF及び/又はM-CSFであり、フコース含有糖タンパク質画分はF3中に含まれ、有効量及び適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例3、7及び12を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0109】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、IL-1、IL6、IFN、TNF-α、IL-12及びG-CSFであり、フコース含有糖タンパク質画分は、F3G1、F3G2、F3G2H1及び/又はF3G2H1中に含まれ、有効量及び適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例7及び8を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0110】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、IL-12、GM-CSF、G-CSF及びM-CSFであり、フコース含有糖タンパク質画分は、F3G2、F3G2H1及び/又はF3G2H1中に含まれ、有効量及び適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例7及び8を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0111】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、IL-1、IL-12、TNF-α及びG-CSFであり、フコース含有糖タンパク質画分は、F3G1中に含まれ、有効量及び適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例7及び8を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0112】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、IL-1、IL6、IL-12、、IFN-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF及びM-CSFであり、フコース含有糖タンパク質画分は、F3G2中に含まれ、有効量及び適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例7及び8を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0113】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、IL-1及びTNF-αであり、フコース含有糖タンパク質画分は、F3G3中に含まれ、有効量及び適した投与形態は、本明細書、特に実施例の部及び実施例7及び8を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0114】
有効量の1種又は複数のフコース含有糖タンパク質画分によって、1種又は複数の上記のサイトカインの発現が1種又は複数のタイプの哺乳類細胞にて活性化される更なる実施態様は、本明細書を読むことにより当業者が想定できるものであり、さらに詳細を説明しない。
【0115】
別の態様によれば、Blimp 1の発現を活性化する方法が開示され、Blimp 1は、マウス成熟B細胞及びヒト成熟樹状細胞などの哺乳類細胞における形質細胞の分化のマスター制御因子である(Calameら2003)。該方法は、特にF3及び/又はF3G2に含まれるフコース含有糖タンパク質画分の有効量を投与することを含み、該有効量は、本明細書、特に実施例の部及び実施例20及び21を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0116】
いくつかの実施態様において、有効量のF3に含まれるフコース含有糖タンパク質画分は、成熟したマウスの脾細胞にてBlimp 1の発現を活性化することができ、該有効量及び適した投与形態は、本明細書及び特に実施例20を読むことにより、当業者が特定できるものである。
【0117】
別の態様によれば、マクロファージ内でリポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)によって誘導された一酸化窒素の生産を阻害する方法が開示される。該方法は、特にフラクション3に含まれるフコース含有糖タンパク質画分の有効量をマクロファージに投与することを含み、該有効量は、本明細書、特に実施例の部及び実施例22を読むことにより当業者が特定できるものである。
【0118】
別の態様によれば、脾臓細胞の増殖を活性化する方法が開示され、該方法は、フコース含有糖タンパク質画分の有効量を、特にF3を細胞に投与することを含み、有効量及び投与経路は、本明細書、特に実施例の部及び実施例2を読むことにより、当業者が特定できるものである。
【0119】
別の態様によれば、脾臓細胞のプロテオームを改変する方法が開示され、該方法は、特にF3に含まれるフコース含有糖タンパク質画分の有効量を細胞に投与することを含み、有効量及び投与経路は、本明細書、特に実施例の部及び実施例4を読むことにより、当業者が特定できるものである。
【0120】
別の態様によれば、フコース含有糖タンパク質画分を、更なる活性物質、担体、媒体又は助剤とともに組成物中に含めることができ、このことは本明細書を読むことにより、当業者が特定できるものである。「活性剤」という句は、哺乳類細胞との生物相互作用が可能な如何なる化合物も指す。「媒体」という語は、適した粘度を与えるか、又は組成物に形成するために処方に添加される多少の不活性物質を指す。「担体」という語は、フコース含有糖タンパク質画分を哺乳類細胞に投与するのに適した少なくとも1種の方法又はプロトコールにおいてフコース含有糖タンパク質画分を輸送することが可能な物質を指す。「助剤」という句は、本明細書に開示されている少なくとも1つの方法においてフコース含有糖タンパク質画分を補佐するか、高めるか、又は補助するのに適した化合物を指す。特に、フコース含有糖タンパク質画分をそれぞれ上記有効量のうちの一つの量で含む種々の組成物を想定することができる。
【0121】
別の態様によれば、1種または複数の部分のキットを当業者であれば想定することができ、該部分のキットは本明細書に開示されている少なくとも1つの方法を行うためのものであり、該部分のキットは、2つ又は3以上の組成物を含み、該組成物は、上記方法の少なくとも1つにおけるフコース含有糖タンパク質画分の有効量を、単独で又は組み合わせて含む。
【0122】
また、できる限り、キットは、フコース含有糖タンパク質画分以外の活性物質、生物現象の確認物、又は本明細書及び特に実施例の部を読むことにより当業者が特定可能な他の化合物を有する組成物も含む。「確認物」という語は、当業者が特定可能な手順の下で、生物現象の実存、存在もしくは事実を発見するか、もしくは決定するか、又は生物現象を検出することが可能な抗体、DNAもしくはRNAオリゴヌクレオチドなどの分子、代謝産物又は他の化合物を指す。確認物の例としては、実施例に記載されている、抗体、Greiss試薬及びオリゴヌクレオチドがあり、手順の例としては、実施例に記載されている、ウェスタンブロット、亜硝酸アッセイ及びRT-PCRがある。生物現象の例としては、サイトカイン発現又は他の免疫調整現象があり、フコース含有糖タンパク質画分以外の活性物質の例としてはLPSがある。
【0123】
また、キットは、有効量のフコース含有糖タンパク質画分を有する少なくとも1種の組成物および/または細胞株も含む。部分のキットの組成物及び細胞株は、本明細書に開示されている少なくとも1種の方法を当業者が特定可能な手順に従って行うために使用されるものである。
【0124】
当業者であれば、本明細書、特に実施例の部を読むことにより種々の実施態様を想定でき、以下、そのような実施態様の詳細をさらに説明しない。
【0125】
以下の実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものである。これらの実施例は例示にすぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0126】
以下の実施例で用いられている材料及び方法及び統計分析は、Wongら2002、Hsuら2004、Chienら2004及びChenら2004に記載されており、それぞれの内容を本願に参照により援用する。
【0127】
(実施例1:レイシ抽出物F1、F2、F3、F4及びF5の調整及び分析)
レイシ粗抽出物(アルカリ抽出(0.1N NaOH)、中和及びエタノール沈殿によって調整)を、Pharmanex Co.(CA,USA)から入手した。28mgの粗抽出物を2mLのTris緩衝液(pH7.0、0.1N)に溶解し、遠心して不溶物質(7mg)を除去した。上清を、Sephacryl S-500カラム(100x1.6cm)を用いるゲル濾過クロマトグラフィーによって、溶離液として0.1N Tris緩衝液(pH7.0)を用いて精製した。流速を0.5mL/分に設定し、溶出物(チューブあたり7.5mL)を回収した。5つのフラクションを回収し(フラクション1〜5)、それぞれを透析して過剰な塩を除去し、凍結乾燥して、1.0mg、6.2mg、5.3mg、2.1mg及び1mg以下のものをそれぞれ得た。
【0128】
結果を図2に図示する。図2において、フラクション1〜フラクション5は下記の通りに特定できる:フラクション1:100-130mL;フラクション2:130-155mL;フラクション3:155-205mL;フラクション4:205-220mL;フラクション5:220-255mL。
【0129】
O.D.625において約1.8の光吸光度を有する主要なフラクションをフラクション3と名付けた(図2)。クロマトグラフィー後、粗抽出物及び単離した各フラクションのアントロン分析(Somaniら1987;Jarmynら1975;HalhoulおよびI.Kleinberg 1972)を行って、糖成分を検出した。
【0130】
(糖成分分析:アントロン比色法)
氷水浴中に浸した一連の試験チューブ中の各1.5mLのアントロン(9,10−ジヒドロ−9−オキソアントラセン)溶液(0.2gのアントロンを100mLの濃硫酸に溶解したもの)を1.5mLのサンプル(20〜40μg/mLのグルコース又はそれに相当する物)で注意深く覆った。総ての添加を行った後、チューブを素早く振り、次いで氷水浴中に再び置いた。チューブを5分間沸騰水浴中で加熱し、次いで冷却した。光学濃度を蒸留水に対し625nmにおいて1時間以内に読み取った。他の糖源による汚染が起こるおそれがあるので、スタンダード、試薬のブランク及び未知のものを三連で行った。光学濃度が糖濃度に正比例しているのを基準として計算した。
【0131】
(糖成分分析−TMS法)
単糖分析のために、多糖抽出物/フラクションを、0.5Mメタノール性HCl(Supelco)を用いて80度で16時間メタノール化し(methanolyzed)、500μLのメタノール、10μLのピリジン及び50μLの無水酢酸で再びN−アセチル化し、次いでSylon HTP(登録商標)トリメチルシリル化試薬(Supelco)を用いて、室温で20分間処理し、乾燥し、ヘキサンに再溶解した。トリメチルシリル化誘導体のGC-MS分析を、HP 5973 Mass Selective Detectorに接続したHewlett-Packard(HP)Gas Chromatograph 6890を用いて行った。サンプルをヘキサンに溶解し、HP-5MS融合シリカキャピラリーカラム(30mx0.25mm内径、HP)へスプリットなしでインジェクションした。カラムヘッドの圧力を、ヘリウムをキャリアガスとして用いて、約56.54kPa(約8.2psi)に維持して、1mL/分の一定の流速を生じさせた。オーブン温度を最初は60℃で1分間維持し、25℃/分で140℃まで、5℃/分で250℃まで、次いで10℃/分で300℃まで上昇させた。
【0132】
以下に、粗抽出物の糖組成を表1に示し、フラクション3の糖組成を表2に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
アンペロメトリック電気化学検出法分析による高−pH 陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC/PAD)によって、F3が糖タンパク質又はフコース残基を有する多糖を含むことが確認された。
【0136】
また、H2SO4/フェノール分析によって、F3における全体の多糖濃度(85%)が粗抽出物のもの(60%)より高いことが示された。
【0137】
(アミノ酸組成物分析)
既知の方法(Spachmanら1958;Loら1990)に基づいて分析を行った。レイシの粗抽出物のサンプル(6mg)を6M HCl及びTFA(4/1)の溶液1mLに溶解し、140℃で3時間加熱した。混合物を濃縮して、乾燥した残留物を得、100μLのクエン酸緩衝液に溶解した。少量の一定分量(4μL)を抜き取り、アミノ酸アナライザー(Jeol JLC-6AH)によって組成分析を行った。
【0138】
結果として得られたレイシ粗抽出物のアミノ酸組成を以下の表3に示す。
【0139】
【表3】

【0140】
レイシ粗抽出物及びフラクション3中のタンパク質濃度の調査に向けられた分析によって、BSAをスタンダードとして用いたLowey法において、F3が〜10%、粗抽出物が〜20%であることが示された。
【0141】
さらに、F3の組成に関して示されたこと、レイシの粗抽出物の組成との違い及びF3を得る手段はChenら2004に記載されており、その全体の内容を本願に援用する。
【0142】
(実施例2:レイシ抽出物F3で処理した脾臓細胞のマイトジェンによって誘導される増殖及び比色分析のMTTアッセイ)
レイシ抽出物で処理したマウス脾臓細胞を、マイトジェンによって誘導される増殖及び比色分析のMTTアッセイ(Mosmanni 1983)によって試験した。詳細には、全脾臓細胞をBALB/cの雄マウス(6週齢)から回収し、10%FCS(ウシ胎仔血清)含有RPMI-1640培地中に懸濁し、遠心して上清を取り除いた。回収した沈殿細胞を最初に1mLのRBC溶解緩衝液(8%NH4Cl)に懸濁し、次いで14mLの同じ溶解緩衝液をさらに添加して、赤血球細胞を破壊した。1分後、溶液を15mLのRPMI-1640培地で希釈して、反応を停止し、遠心して細胞を回収し、RPMI-1640培地で細胞の最終濃度を2x106細胞/mLに調整した。コンカナバリンA(Con A、最終濃度:1μg/mL)を生じた混合物に添加した。細胞をレイシ抽出物(もしくは一部精製したフラクション)を用いるか、又は用いないで、96ウェルのELISAプレート内で、37℃、5%CO2で、72時間インキュベートした。細胞の増殖をMTTアッセイに基づいて測定した。
【0143】
MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)を5mg/mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、濾過して滅菌し、MTTのいくつかのバッチ中に存在する少量の不溶性残留物を除去した。下記に示す時間にMTT溶液(25μL)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で4時間インキュベートした。酸−イソプロパノール(100μLの0.04N HClのイソプロパノール溶液)を総てのウェルに添加し、完全に混合して、紺青色の結晶を溶解した。総ての結晶が溶解したことを確実にするために、室温で数分経った後、プレートを、570nmのテスト波長と620nmの参照波長を用いてPerkin-Elmer ELISAリーダー(HTS 7000 plus)で読み取った。プレートを通常はイソプロパノール添加後1時間以内に読み取った。
【0144】
結果を図3及び図4に図示する。図示された結果は、マウス脾臓細胞の細胞増殖活性は、対照実験(非処理サンプル)と比較して、フラクション3で処理することによって著しく増大し、フラクション2で処理することによってわずかに増大したことを示す。フラクション3の最適濃度は0.01〜0.1μg/mLであり、レイシの粗抽出物の最適濃度は0.1〜1.0μg/mLであった(図3及び図4)。
【0145】
これらの結果は、フコース含有糖タンパク質画分がマウス脾臓細胞の増殖を活性化するという結論を支持するものである(下記実施例5も参照)。
【0146】
(実施例3:レイシ抽出物F3で処理したマウス脾臓細胞におけるサイトカイン発現)
レイシ抽出物で処理したマウス脾臓細胞におけるサイトカイン発現をさらに試験した(Bowdenら 1999;Murphyら 1993)。詳細には、マウス脾臓細胞を健康なマウス(BALB/cの雄マウス、6週齢)から無菌で摘出し、理想の細胞濃度(4x106細胞/mL)に調整し、10%FCS(ウシ胎仔血清)含有RPMI-1640培地内で、37℃、5%CO2でインキュベートした。6時間後、Qiagen RNAeasy mini kitを用いて細胞のRNA抽出を行って、1μgの望ましいRNAを得た。逆転写(RT)を、Gibco BRL社のThermoscript R/T PCR System及びThermoscript system protocol Iを用いて行い、以下の通り反応を行った。8μlのRNA、2μlのプライマー[オリゴ(dT)20]、2μLの10mM dNTP混合物及びDEPC H2O(0.1%のジエチルピロカーボネートで処理したH2O)を各チューブに添加し、次いで65℃で5分間インキュベートし、直ちに氷上に置いた。以下の溶液:4μLの5 x cDNA緩衝液、1μLの0.1M ジチオスレイトール(DTT)、1μLのRNaseOut(リボヌクレアーゼ阻害剤)、1μLのThermoscript R/T、1μLのDEPC水を各チューブに8μLの混合物として添加した。混合物を、室温で10分間、次いで55℃で30分間インキュベートして、cDNAの最初の鎖の合成を可能にした。85℃で5分間反応物をインキュベートすることによって酵素活性を終了させ、次いでチューブを氷上に10分間置いた。サンプルをPCRに使用するまで-20℃で貯蔵した。
【0147】
各サンプル(3μL)を各反応チューブに添加し、以下の試薬:5μLの10xPCR緩衝液、4μLの10mM dNTP混合物、2μLの各プライマー(10 OD/mL、センス及びアンチセンス)、33μLのDEPC H2O、及び1μLのProZyme(登録商標)(DNAポリメラーゼ、PROtech Technology社)を47μLの混合物として添加した。反応チューブをStrategene PCR Robocycler(Gradient 96)に設置し、以下の条件:92℃で2分間の1サイクル(最初の変性)、次に91℃で10秒間の30の連続サイクル(変性)、59℃で25秒間(プライマーのアニーリング)及び72℃で25秒間(プライマーの伸張)の下で実施した。反応物をゲル電気泳動によって分析した。
【0148】
結果を図5〜7に示す。図示された結果は、ハウスキーピング遺伝子(ヒポキサンチン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)の発現とサイトカインの発現を比較したところ、試験した6つのサイトカイン、すなわちIL-1、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-4及びIL-6のうち、最初の3つは、フラクション3(10μg/mL)で処理したマウス脾臓細胞によって著しく発現していたことを示す。他方で、細胞を同じ濃度(10μg/mL)のレイシ粗抽出物(RCE)で処理した際、どのサイトカインも検出されなかった。
【0149】
(実施例4:レイシ抽出物F3で処理したマウス脾臓細胞のプロテオーム)
レイシ抽出物で処理したマウス脾臓細胞を、8M 尿素、2%CHAPS、65mM DTE、2%容積/容積の均一濃度のpH勾配(isocratic pH gradient,IPG)の緩衝液pH3〜10 NL(非線形)及びブロモフェノールブルーのトレースを含有する溶解緩衝液350μLに溶解した。サンプルを13,000rpmで10分間遠心した。サンプル中の総タンパク質濃度をBIo-Radタンパク質濃度アッセイキットを用いて測定した。500μgのタンパク質に相当するサンプルを二次元電気泳動用の固定化pH勾配ストリップ(pH3〜10 NL、18cm)上に添加した。
【0150】
(二次元電気泳動及び画像処理)
Sanchezら2001によって記載されている通りに分離を行った。等電点電気泳動をIPGPhor装置(Amersham Pharmacia Biotech社)にて行った。2次元目を10〜15%のポリアクリルアミド勾配ゲルにて、Protean II x L 2D multi cell(Bio-Rad社)を用いて行った。タンパク質のスポットを蛍光染色Sypro Ruby(商標)(Molecular Probes社)を用いて染色した。
【0151】
Sypro Rubyで染色したゲルを、蛍光レーザースキャナ(Bio-Rad社)でスキャンし、10Mbの画像を生成した。画像をImageMaster(商標)ソフトウェア(Amersham Pharmacia Biotech社)で分析した。各ゲルについて、初期状態のスポット検出パラメータを用いてスポットを検出し、自動的に定量した。ゲルの目視検査に従ってマニュアルのスポット編集を行った。タンパク質の添加及びゲル染色における如何なる差異も補正するために相対容積を計算した。また、Sypro Rubyで染色したゲルのMALDI-TOF MS分析も行った。
【0152】
(MALDI-TOF MS分析)
Sypro Rubyで染色したタンパク質のスポットをゲルから切り出し、50mM重炭酸アンモニウム(pH8.5)緩衝液の50%CH3CN溶液200μLで洗浄した。CH3CN内での脱水と高速の真空遠心(speed vacuum centrifugation)後、ゲル片を、100mM重炭酸アンモニウム(pH8.5)、1mM CaCl2、10%CH3CN及び50ngのシークエンスグレードのトリプシンを含有する消化緩衝液に膨潤させた。一晩消化した後、生じたペプチドを50%CH3CN/5%TFAで抽出した。ペプチド混合物の1μLの一定分量をMALDIターゲット96ウェルプレート上に沈着させ、数秒後、1μLのマトリックス溶液(α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸の50%CH3CN/0.1%TFA溶液)を添加した。混合物を外界温度で乾燥させた。正イオンマススペクトルを、窒素レーザーを備えたMALDI reflection time-of-flight mass spectrometer MALDI(Micromass UK社,Manchester,UK)で測定した。記録したスペクトルを50〜100レーザーショットから集めた。
【0153】
結果を図8〜10に図示する。図示した結果は、フラクション3(10μg/mL)でマウス脾臓細胞を処理することによって、プロテオームの顕著な変化がもたらされたことを示す。図8(非処理、コントロール)は623、図9(フラクション3で処理)は568の二次元電気泳動における検出可能なスポットをそれぞれ示す。更なる分析は、〜191のスポットがフラクション3処理後消失したことと(図10)、137のスポットがフラクション3処理後出現したこと(図11)を示した。データ画像の比較によって、プロテオームが50%変化したことが実証された。全体として、431のスポットが処理の前後で一致したが、137のスポット(24.1%)が一致しなかった。
【0154】
これらの結果は、フコース含有糖タンパク質画分がマウス脾臓細胞のプロテオームを改変するという結論を支持するものである(下記実施例5も参照)。
【0155】
(実施例5:α1,2−又はα1,3/4−フコシダーゼで処理したレイシ抽出物の活性)
10mgのレイシ抽出物又はフラクション3の50mMクエン酸緩衝液(pH6.0)のサンプルをα1,2−又はα1,3/4−フコシダーゼ(5ユニット)によって37℃で一定期間(2〜12時間)処理した。混合物を沸騰水中で5分間加熱して、酵素活性を破壊し、H2Oに対し4℃で透析し、凍結乾燥して活性調査用の乾燥粉末を得た。処理したフラクション3の活性を上記実施例2〜4に記載されている通りに分析した。
【0156】
結果は、α1,2−フコシダーゼによる糖分解切断がフラクション3の活性を完全に消滅させた(MTTアッセイに基づく)ことを示す。対照的に、α1,3/4−フコシダーゼによる処理後、フラクション3の活性はわずかに減少した。
【0157】
さらにフラクション3の組成及び活性を理解するために、フラクション3をプロテアーゼKで処理して、タンパク質成分を部分的に破壊した。結果は、Con Aによって刺激された脾臓細胞の増殖に変化がなかったことを示す。
【0158】
これらの実験によって、活性成分が、α1,2−結合を有する末端のフコース残基を含有する多糖又は糖ペプチドであることが確証された。全体として、主要な活性成分は、α1,2−結合を有する必須の末端のフコース残基を含有する糖タンパク質である。考えられ、かつ拘束力のないモデルを図12に図示するチャートに示す。
【0159】
(実施例6:レイシ抽出物F3−F3G1 F3G2、F3GH1及びF3GH2の調整及び精製)
レイシ粗抽出物(アルカリ抽出(0.1N NaOH)、中和及びエタノール沈殿によって調整)をPharmanex社(CA, USA)から入手した。特に指示がない限り、総ての薬品及び試薬はSigma社(St. Louis,MO,USA)から入手したものである。
【0160】
レイシの粗抽出物(100g)を3Lの再蒸留水に溶解し、4℃で24時間攪拌し、1時間遠心して、不溶物を除去した。生じた溶液を35℃で濃縮して、小容量のものを得、凍結乾燥して、70gの暗褐色の粉末を得、その2.5gを小容量のTris緩衝液(pH7.0、0.1N)に溶解し、Sephacryl S-500カラム(95x2.6cm)を用い、溶離液として0.1N Tris緩衝液(pH7.0)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーで精製した。流速は0.6mL/分に設定し、チューブ当たり7.5mLを回収した。クロマトグラフィー後、各フラクションのアントロン分析又はフェノール−硫酸法を上記実施例1に記載されている通りに行って糖成分を検出した。5つのフラクションを回収し(フラクション1〜5)、それぞれ透析して過剰な塩を除去し、凍結乾燥して、各フラクション、特にF3を450mg得た。
【0161】
さらに、F3をDiaion-WA30陰イオン交換体(Cl-型、40x3.5cm)のカラムにかけ、0.2及び0.8MのNaClで、流速0.5mL/分で溶出し、図14に示すように2つのフラクションをそれぞれF3G1(F3に基づく収量11%)、F3G2(F3に基づく収量10%)とした。別のフラクション(F3G3、F3に基づく収量11%)を、カラムをさらに2M NaOHで溶出した際に得た。
【0162】
F3G1、F3G2及びF3G3の糖の組成をアントロン比色分析法及びTMS法によって決定した。結果を以下の表4に示す。
【0163】
【表4】

【0164】
結果は、フラクション3と、サブフラクションF3G1、F3G2及びF3G3はともにグルコース及びマンノースを主要成分として、フコース・N−アセチルグルコサミン、キシロース及びラムノースを含めたより少量の他の糖と共に含むことを示す。F3G2及びF3G3においてガラクトースのパーセンテージは他のフラクションのものより明らかに少ない。
【0165】
F3G2のゲル濾過クロマトグラフィーをTSK HW-75カラム(130x2.6cm)上で行い、再蒸留水で流速0.5mL/分で溶出した。図15に示すように、2つのフラクション、F3G2H1(F3G2に基づく収量19%)及びF3G2H2(F3G2に基づく収量69%)を回収した。
【0166】
さらに、F3G1、F3G2、F3G3、F3G2H1及びF3G2H2の組成及びサブフラクションを得る手段に関して、Chenら2004に示されており、その内容全体を本願に援用する。
【0167】
(実施例7:レイシ抽出物F3及びサブフラクションで処理したマウス脾臓細胞におけるサイトカインの発現)
(逆転写(RT)及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR))
逆転写(RT)及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、Hsuら2001に既に記載されている通りに行った。マウス脾臓細胞を健康なマウス(BALB/cの雄マウス、6週齢)から無菌で摘出し、理想の細胞濃度(3x106細胞/mL)に調整し、10%のFCS(ウシ胎仔血清)を含むRPMI-1640培地中にて37℃、5%CO2でインキュベートした。6時間後、細胞のRNA抽出をQiagen RNAeasy mini kitを用いて行って、〜1μgの望ましいRNAを得た。逆転写(RT)を、Gibco BRL社のThermoscript R/T PCR System及びThermoscript system protocol Iを用いて行った。反応を以下の通りに行った。1μgのRNA、1μLのプライマー(オリゴ(dT)20)及び2μLの10mMdNTP混合物を各0.2mLチューブに添加し、総容積をDEPC H2O(0.1%ジエチルピロカーボネートによって処理したH2O)で12μLに調整した。
【0168】
混合物を65℃で5分間インキュベートし、直ちに氷上で冷却した。以下のもの:4μLの5 x cDNA緩衝液、1μLの0.1M ジチオスレイトール(DTT)、1μLのRNaseOut(リボヌクレアーゼ阻害剤)、1μLのThermoscript R/T、1μLのDEPC水を各チューブに8μLの混合物として添加した。混合物を室温で10分間、次いで50℃で1時間インキュベートして、cDNAの最初の鎖の合成を可能にした。85℃で5分間反応物をインキュベートすることによって酵素活性を終了させ、次いでチューブを氷上に10分間置いた。サンプルを-20℃でPCRに使用するまで貯蔵した。
【0169】
各サンプル(2μL)を各反応チューブに添加し、以下の試薬:2.5μLの10xPCR緩衝液、2μLの10mM dNTP混合物、2.5μLの10mMの各プライマー(センス及びアンチセンス)、13μLのDEPC H2O、及び1μLのProZyme(登録商標)(DNAポリメラーゼ、PROtech Technology社)を25μLの混合物として添加した。反応チューブをStrategene PCR Robocycler(Gradient 96)に設置し、以下の条件:94℃で2分間の1サイクル(最初の変性)、次に94℃で1分間の25の連続サイクル(変性)、プライマーのアニーリング(プライマーに応じて種々の温度、表5参照)1分間及び72℃で1分間(プライマーの伸張)の下で実施した。反応物をゲル電気泳動によって分析した。
【0170】
RT-PCRを、表5に示す特定のプライマー及び実験条件で行った。
【0171】
【表5】

【0172】
結果を図13に図示し、表6にまとめる。該結果は、非処理の細胞をネガティブコントロールとして、Con Aで処理した細胞をポジティブコントロールとして用いた、マウス脾臓細胞と濃度が0.1、1、10、100ppmであるF3との6時間のインキュベーションにより、サイトカインの発現が変化したことを示す。
【0173】
【表6】

【0174】
特に、表6に図示した結果は、レイシ粗抽出物及びフラクション3の両方が同じ投与量(0.1〜100μg/mL)で同様のパターンのサイトカインの発現を誘導したが、F3は、レイシ粗抽出物より、はるかに高いレベルでの上記のサイトカイン、特にIL-1β、IL-6、IFN-γ、TNF-α、GM-CSF及びG-CSFの誘導発現を示すことを示すものである。この結果は、レイシ粗抽出物の主要な活性がF3に集中しているという結論を支持するものである。
【0175】
また、表6及び図13に示す結果は、0.1〜1000ppmの範囲内の濃度でフラクション3を投与することによって、試験した10のサイトカイン、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF及びM-CSFのうちIL-2及びIL-4を除いた多くのものの顕著な上方制御が誘導されることを示す(ネガティブコントロール(処理なし)及びポジティブコントロール(Con A)と比較した場合において、図13参照)。レイシの多糖の好中球に対する抗アポトーシス効果が主としてGM-CSFの発現に依存するという報告(Kleinら2000)に照らして、結果は、フラクション3がIL-1、IL-6及びTNF-αの発現に伴う炎症反応、INF-γ及びTNF-αの発現に伴う抗腫瘍活性(一部Wangら1997参照)及びGM-CSF、G-CSF及びM-CSFの発現に伴う造血を刺激できるという結論を支持するものである。
【0176】
また、サイトカイン発現に対するF3サブフラクションの投与効果を試験する実験も行った。
【0177】
詳細には、マウスのマクロファージをF3、F3G1、F3G2、F3G2H1、F3G2H2、F3G2H1A及びF3G2H1Bで処理し、細胞を溶解し、全細胞溶解物を、IL-1モノクローナル抗体を用いるウェスタンブロット分析に使用した。結果を図59に図示する。図示した結果は、試験したF3及び各サブフラクションでの処理により、マウスマクロファージによるインターロイキン1の発現が誘導されたことを示すものである。
【0178】
また、サイトカイン発現に対するサブフラクションの投与効果を試験する更なる実験も行った。結果は、F3G2での処理によって上記10のサイトカインの顕著な発現がもたらされることを示し、このことは、このフラクションがF3の活性成分を豊富に含むことを示す。また、F3G2のサブフラクションに関する更なるデータによって、F3G2H1フラクションが、同じ投与量のF3G2及びG2H2より、IL-1β、IL-6、IFN-γ、TNF-α及びGM-CSFの発現においてはるかに高い活性を有することが明らかとなった。
【0179】
更なる結果は、F3G1及びF3G3の投与によりTNF-α及びIL-1の発現が検出可能であることを示し、両フラクションが炎症経路を誘発することができるという結論を支持するものである。
【0180】
(実施例8:比色分析のサンドウィッチELISAによるサイトカイン活性の検出)
新鮮な脾臓細胞を、BALB/cのマウス(6〜10週齢)から採取し、RBC溶解緩衝液で処理して、赤血球を破壊し、3x106細胞/mLに調整した。次に、脾臓細胞を、100μg/mLのF3、F3G1、F3G2のいずれかで処理し、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン及び10%FBSを含むRPMI-1640培地(GIBCO社)中にて37℃、5%CO2でインキュベートした。示した時間間隔で、300gで10分間遠心することによって上清を回収した。インビトロのIFN-γ及びGM-CSF活性を、Quantokine(登録商標) Murine ELISA kit(R&D System Inc.社、Minneapolis,USA)を用いて、製造業者の指示に従って決定した。
【0181】
手順を以下に簡潔に記載する。アッセイの希釈剤(50μL)と、50μLのサンプル上清、スタンダード及びコントロールを穏やかに混合し、個々のウェルに添加した。室温で2時間インキュベートした後、各ウェルを吸引し、400μLの洗浄緩衝液で5回洗浄し、100μLの二次抗体溶液(西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したもの)を用いて室温で2時間負荷した。
【0182】
同様の吸引及び洗浄手順を行い、次に100μLの基質溶液を各ウェルに添加し、暗黒下、室温で30分間インキュベートした。最終的には、酵素反応を100μLの停止溶液を添加することによって終了させた。光学濃度を、450nmに設定し、補正波長が540nm又は570nmであるマイクロプレートリーダーを用いて決定した。放出されたサイトカインの濃度を、スタンダード曲線に対しサンプルの読み取り値をプロットすることによって決定した。起こりうるLPSのコンタミネーションを除外するために、種々の濃度のLPSを投与することによるTNF-αの発現も測定した。
【0183】
上記実験の結果を図16(GM-CSF)、図17(IFN-γ)並びに図18及び19(TNF-α)に図示する。レイシ粗抽出物、F3及びF3G2によるマウス脾臓細胞の個々の処理によって、72時間のインキュベーション後、レイシ粗抽出物では0.91pg/mL、F3では10.4pg/mL、F3G2ではでは24.0pg/mLの濃度のGN-CSFがそれぞれ生産された。同様の増加がELISAアッセイをIFN-γ発現について行った際に見られた(図17)。F3G2及びF3による処理によって、脾臓細胞が刺激されて、48時間のインキュベーション後に、F3G2では143pg/mL、F3では8.6pg/mLのIFN-γをそれぞれ生成することができた。
【0184】
さらに、F3G2によって誘導されたTNF-α発現とLPSによって誘導されたTNF-α発現との間の比較に続いて、それぞれの用量依存のプロファイルは異なっているように見え(図18及び19)、LPSが10μg/mLの濃度で水平状態に達した一方で、F3G2のプロファイルはS字状曲線のように見える。詳細には、F3G2は100μg/mLより高い投与量でLPSより大きい活性を有していることを示し、結果はLPSのコンタミネーションの可能性を除外するものであり、2つの分子によって活性化される分子機構が異なるという結論を支持するものである。
【0185】
(実施例9:レイシ抽出物フラクション3の調整)
0.1N NaOHによるアルカリ抽出後、中和及びエタノール沈殿を行うことによって調整したG. Lucidum PS粗抽出物をPharmanex社(CA)から入手した。G. Lucidumの粗抽出物(100g)を3Lの再蒸留水に溶解し、4℃で24時間攪拌した。溶液を4℃で1時間遠心し(16,000g)、上清を35℃で濃縮した。次に、スラリー生成物を凍結乾燥して、70gの水溶性の暗褐色のG. Lucidum抽出物を得た。抽出物(2.5g)をSephacryl S-500カラム(95x2.6cm)上で、溶離液として0.1N Tris緩衝液(pH7.0)を用いて分画した。流速を0.6mL/分に設定し、チューブ当たり7.5mLを回収した。5つのフラクションを回収し、それぞれ透析して過剰な塩を除去し、凍結乾燥して、フラクション1〜5を得、実施例1に記載されている通りに各フラクションを特徴付けた。フコース含有糖タンパク質画分(20〜30%収量)すなわちフラクション3又はF3を単離した。
【0186】
LPSコンタミネーションを回避するために、G. Ludidumの粗製の材料及びPS抽出物を成長から収穫まで、Pharmanex社よりGMPグレードとして用意し、起こりうる細菌のコンタミネーションを、注意深く食品医薬品局の基準を満たすように監視した。F3の調整のための試薬及び器具は、内毒素がないグレートのものであるか、又は50μg/mLのポリミキシンB(PMB)含有PBSで洗浄し、次いでPBSで濯いだものである。F3は、<1ngのLPS/25μgを含み、これはLALアッセイ(Sigma-Aldrich社)で測定したものである。さらに、LPSコンタミネーションの実験のためにLALによって特定の試薬を定期的に調査した。
【0187】
さらに、Wangら2002に記載されている手順を行い、その内容全体を参照により本願に援用する。直接遠心することを含むWantら2002に記載されている手順の変更されたバージョンに従って、F3と同様の成分を示した水溶性のレイシサンプルから多糖を単離した。
【0188】
手順は下記の通りである。レイシの粗粉末由来の水溶性の多糖1gを4℃で1時間遠心して(5000r.p.m.,2800g)、MWCOが100Kである遠心濾過機によって多糖を分離し、多糖画分を回収し、凍結乾燥してF3(F3>100K)172mg(17%)を得た。多糖のこの部分は、F3と類似したHPLCプロファイルを示すものであり、前述のF3機能と同様にマウス脾臓細胞に対する増殖効果及びサイトカインの放出などのその生物機能アッセイを分析した。
【0189】
(実施例10:F3の受容体として機能し、F3によって誘導されるシグナルの伝達を仲介するTLR4)
TLR4がF3によって仲介されるシグナル伝達に関与するかどうか調べるために、2つの遺伝子特異的なマウスマクロファージ細胞株であるHeNC2(機能的なTLR4を有する野生型C3H/HeNマウス由来の腹膜マクロファージ)及びGG2EE(機能的なTLR4を欠くC3H/HeJマウス由来の腹膜のマクロファージ)を最初に選択した(Lehnerら2001;Hoshinoら1999;Poltorakら1998;Qureshiら1999)。HeNC2及びGG2EEを実施例9で調整したF3(25μg/mL)とLPS(1μg/mL)でそれぞれ6時間処理した。全細胞溶解物を、Hsuら2001及びHsuら2002に既に記載されている通りに抗IL-1抗血清を用いてウェスタンブロットで分析した。
【0190】
結果を図20に図示する。図示した結果は、HeNC2がF3の刺激(25μg/mL)によるプロIL-1の生産を示し(図20、サンプル3)、一方で、F3で処理したGG2EEにおいてプロIL-1を全く検出できなかった(図20、サンプル3対6)。同様に、LPS試験において、HeNC2からLPSによって誘導された(1μg/mL)プロIL-1の生産が検出され、GG2EEにおいてはLPSによって誘導されたプロIL-1の生産が全く検出されなかった(図20、サンプル2対5)。これらの結果は、TLR4がF3によって制御されるプロIL-1の発現に関与しているという結論を支持するものである。
【0191】
HeNC2及びGG2EEにて行った実験の結果を確認するために、ヒト血中単球由来マクロファージにおいて更なる実験を行った。該実験では、ヒト血中単球由来マクロファージを、LPSによって誘導されるTLR4を介したシグナリングを特異的に阻害することが知られているマウス抗ヒトTLR4 mAb(HTA125)(Shimazuら1999)と予めインキュベートした。また、CR3受容体の考えられる関与について試験するために、ヒト血中単球由来マクロファージをマウス抗ヒトCR3 mAbと予めインキュベートした。
【0192】
詳細には、ヒト初代マクロファージをマウス抗ヒトTLR4 mAb(HTA125)又はマウス抗ヒトCR3 mAb(10μg/mL)と30分間予めインキュベートし、続いてF3(25μg/mL)及びLPS(1μg/mL)でそれぞれ6時間処理した。プロIL-1のウェスタンブロット分析をHsuら2001及びHsuら2002に既に記載されている通りに実施した。
【0193】
結果を図21に示す。HTA125 mAbは、LPSによって誘導され、TLR4によって仲介されるプロIL-1発現の誘導を阻害し(図21、サンプル3)、F3によって仲介されるプロIL-1発現を阻害した(図21、サンプル5)。他方で、CR3 mAbは、F3によって誘導されるプロIL-1の生産を阻止することができず(図21、サンプル4対7)、このことは、F3がCR3によって認識されないことを示す。
【0194】
上記の結果は、TLR4がF3の受容体であり、CR3がF3の受容体でないことを裏付けるものである。
【0195】
また、アダプタータンパク質である骨髄分化因子88(MyD88)と共にTLRシグナリング複合体に含まれ、セリン/スレオニンキナーゼであるIL-1R関連キナーゼ(IL-1R associated kinase、IRAK)に対するF3投与の効果を試験するために更なる実験を行った。
【0196】
マクロファージをF3又はLPSと0〜120分の範囲内の時間間隔で培養し、細胞を溶解し、全細胞溶解物を、IRAK抗体を用いるウェスタンブロット分析に使用した。結果を図60に図示する。図示した結果は、LPSとF3の両方が同様の速度でIRAKタンパク質の急速な分解を誘導することを示す。
【0197】
それらの結果は、TLR4がF3受容体であるという結論をさらに支持するものである。
【0198】
(実施例11:ROSの生産、PMB存在下でのプロIL-1の刺激、及びタンパク質のチロシンリン酸化(protein tyrosine phosphorylation、PTP)においてLPSフリーであり、LPSとは異なるF3)
グラム陰性細菌のLPSによって仲介されるシグナリングにおけるTLR4の役割は広く評価されている(Akiraら2001;Hsu及びWen 2002;Mambulaら2002;Aderem及びUlevitch 2000;Brownら2002)ので、LPSのコンタミネーションを除外するために一連の実験を行った。詳細には、F3及びLPSによって誘導される生化学反応及び細胞シグナリングにおけるF3とLPSとの差異を試験する実験を行った。
【0199】
最初に、細胞内のF3及び/又はLPSの細胞内ROS生産について、マウスマクロファージにおいて、5(及び−6−)クロロメチル−2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセイン・ジアセテート、アセチルエステル(CMH2DCFDA)(Molecular Probes社、Eugene,OR)の蛍光強度を検出することによって、Hisら2002に既に記載されているとおりに試験した。詳細には、J774A.1細胞を、CM-H2DCFDA(2μM)と30分間予めインキュベートし、続いて、更なるインキュベーションのために、示した時間、F3(25μg/mL)又はLPS(1μg/mL)を含有する培地と置換した。フルオロフォアであるCM-H2DCFの相対的な蛍光強度をHsuら2002に既に記載されている通りに検出した。
【0200】
結果を図22及び23に図示する。図示された結果は、LPSは、マウスマクロファージJ774A.1細胞においてROSの生産をすぐに刺激しする一方で、F3は、はるかに少ないROSを短い又は長い期間で誘導することを示す(図22及び23)。さらに、F3で予め処理した細胞はLPSによって刺激されたROSの生産を著しく減少させた(図22及び23)。PMBは、DCFHのみのサンプルのもの(コントロール)と同様の基礎レベルにLPSによって誘導されたROSの生産を減少させたが、PMBの存在下と非存在下でのF3によって誘導されたROSに顕著な違いはなかった(データ示さず)。
【0201】
第2に、J774A.1細胞におけるプロIL-1の誘導に対するF3及びLPSの効果について、PMBの存在下及び非存在下において試験した。詳細には、F3よって刺激されたプロIL-1タンパク質の発現とLPSによって刺激されたプロIL-1タンパク質の発現におけるPMBの阻害の違いをJ774A.1細胞において試験した。J774A.1細胞を10μg/mLのPMBで30分間予めインキュベートするか、又はPMBなしで30分間予めインキュベートし、続いて、F3(25〜200μg/mL)又はLPS(0.01〜1μg/mL)で6時間処理した。全細胞溶解物を、Hsuら2002及びHsuら2001に既に記載されている通りに、抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロットで分析した。
【0202】
結果を図24に図示する。図示された結果は、PMB(10μg/mL)で予め処理した場合又はPMBで予め処理していない場合、25〜200μg/mL濃度のF3は用量依存的にプロIL-1の活性化を刺激することを示す。対照的に、PMBは、細胞においてLPS(0.01〜1μg/mL)によって誘導されるプロIL-1を効果的に阻害した。これらの結果は、PMBが効果的にLPS活性を阻害し、フラクション3の活性を阻害しないことを明らかに実証するものである。
【0203】
さらに、LPSとマクロファージのインキュベーションによって、多くのリン酸化チロシルタンパク質の出現が誘導される(Hsuら2002)ことから、F3処理後のタンパク質のチロシンリン酸化を、ヒト血中単球由来マクロファージのLPS処理後のチロシンリン酸化と比較した。従って、細胞をF3(25μg/mL)又はLPS(1μg/mL)を用いて、又は用いずに、それぞれ15及び60分間LPSで処理し、処理後、SDS-PAGE及び抗リン酸化チロシン mAb(抗P-Tyr Ab 4G10)を用いたウェスタンブロット分析を行った(Hsuら2002)。
【0204】
結果を図25に図示する。図示された結果は、LPS又は培地単独を用いた処理によるリン酸化チロシルタンパク質の出現と比較して、F3とヒトマクロファージのインキュベーションによって、多くのリン酸化チロシルタンパク質の出現が誘導されることを示す。例えば、F3又はLPSを用いた15分及び60分の刺激により、分子量が38、42〜44及び〜52kDaのいくつかのチロシン−リン酸化タンパク質が確認され(図25、サンプル1対2、3、4及び5)、抗p38 IgG(38kDa)、抗ERK IgG(42〜44kDa)及び抗JNK IgG(〜52kDa)のそれぞれと免疫反応した(データ示さず)。しかしながら、更なるリン酸化チロシルタンパク質が、F3処理によりのみ見られ(図25、*で示す)、このことは、F3によって誘導されるシグナリングがLPSのものとは異なり(実施例9〜11も参照)、LPSとは独立したものであるという結論を支持するものである。
【0205】
要約すれば、F3によって誘導されるIL-1の生産が、LPSによって誘導されるIL-1の生産と異なることが示された(図24)。また、以下の実験手順は、F3及びLPS処理後の活性酸素種の生産、ポリミキシンBの阻害及びタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)について試験するために向けられたものであり、F3におけるLPSのコンタミネーションの可能性を除外したものである(図23〜25)。
【0206】
(実施例12:ヒトマクロファージ及びJ774A.1細胞において、IL-1の分泌、プロIL-1タンパク質、及びメッセージ発現を上方制御し、IL-1転換酵素(ICE又はカスパーゼ1)の活性を刺激するF3)
IL-1の分泌に対するF3の効果を検出するために、Hsuら2001及びHsuら2002に既に記載されている通りにELISA実験を行って、J774A.1細胞の馴化培地中の成熟したIL-1の分泌を定量した。
【0207】
詳細には、J774A.1細胞をF3(25μg/mL)又はLPS(1μg/mL)で処理し、24時間以内の示した時間に馴化培地を回収した。馴化培地を、IL-1特異的ELISAを用いてIL-1濃度についてアッセイした。
【0208】
4つの実験(n=4)のうち1つの結果を図26に図示する。該結果は、F3処理した細胞がIL-1タンパク質を生産することを示す。詳細には、〜60、140及び200pg/mLの分泌されたIL-1タンパク質が6時間、12時間及び24時間F3処理した細胞の馴化培地中においてそれぞれ検出された(図26)。処理した細胞によるIL-1の生産を、コントロール細胞によるもの(検出可能レベル以下の生産)と比較して検出し、該処理した細胞によるIL-1の生産は36時間後に300pg/mLまで上昇し続けた。LPSの誘導により検出したIL-1に対するF3の誘導により検出したIL-1は、それぞれ〜40pg/mL(6時間)、130pg/mL(12時間)及び160pg/mL(24時間)であり、その後36時間後に減少した。
【0209】
次に、IL-1の分泌の分子機構を調べた。まず、F3によって誘導されるプロIL-1発現を、ウェスタンブロット分析をHsuら2001及びHsuら2002に既に記載されている通りに行うことによって検出した。
【0210】
詳細には、細胞を、F3(12.5及び25μg/mL)又はLPS(0.5及び1μg/mL)で6時間処理した。次に、種々の量のF3及び/又はLPSで処理した全細胞溶解物を、Hsuら2001及びHsuら2002に記載されている通りに、抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロットによって分析した。
【0211】
結果を図27に図示する。図示された結果は、プロIL-1の誘導に対するF3及びLPSの相加効果が、F3(12.5μg)プラスLPS(0.5μg)で処理した細胞由来のサンプル(図27のサンプル4)及びF3(25μg)プラスLPS(1μg)で処理した細胞由来のサンプル(図27のサンプル7)において見られた。各サンプルは、F3単独(サンプル3及び6)又はLPS単独(サンプル2及び5)より多くプロIL-1を誘導した(図27)。
【0212】
次に、J774A.1細胞及びヒトマクロファージにおけるF3によって誘導されるプロIL-1及びプロIL-1のmRNAの発現を0〜24時間までの時間的経過において試験した。細胞を、図28及び29に示す種々の時間及び濃度のF3で処理し、次に、全細胞溶解物を、Hsuら2001及びHsuら2002に記載されている通りに、抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロットによって分析した。
【0213】
J774A.1細胞及びヒトマクロファージにおけるIL-1の分泌及びプロIL-1発現に対するF3の効果を図28及び図29に示し、図28は、F3処理した細胞におけるプロIL-1発現の時間的経過を図示し、図29は、F3処理した細胞におけるプロIL-1発現の用量反応を図示するものである。
【0214】
図28に図示される結果は、IL-1によって誘導された生産が、3〜12時間の間に検出され、6時間でピークになり、12時間後に減少を開始し、その後、24時間後に基礎レベルに徐々に戻ることを示す(図28)。同様に、F3処理したヒトマクロファージにおけるプロIL-1発現を〜6時間において検出した(図28)。
【0215】
同様のメカニズムがヒトマクロファージにおけるF3によって誘導されたプロIL-1発現において見られた(図29参照)。図29で見られるように、プロIL-1発現は、F3濃度が増加するにつれて用量依存的に増加した(〜6−50μg/mL)。
【0216】
J774A.1細胞及びヒトマクロファージにおけるIL-1の分泌、プロIL-1の発現及びプロIL-1 mRNAの発現に対するF3の投与の効果を、細胞におけるプロIL-1 mRNAのRT-PCR分析によって試験した。全RNAを、F3で1〜24時間の間に処理した細胞から単離した。563bpの増幅したプロIL-1 mRNAを用い、GAPDH mRNA(450bp)のRT-PCRとの比較によって正規化したエチジウムブロマイド染色アガロースゲルを、プロIL-1及びGAPDHの矢印とともに示す。
【0217】
図30において4つの実験のうちの1つを図示している結果は、コントロールと比較した場合に、1時間のF3とマクロファージのインキュベーションによってプロIL-1のmRNAの発現が誘導され、発現のレベルが4〜8時間の間に最大に達し(図30)、その後mRNA発現が12時間後に減少し始め、コントロール細胞のものより高いままであったことを示す(図30参照)。24時間後、プロIL-1のメッセージは、ほぼ基礎レベルにもどった。また、プロIL-1のmRNAの同様の上方制御が、ノーザン分析によっても検出された(データ示さず)。
【0218】
インターロイキン転換酵素(ICE)を介したIL-1の分泌へのプロIL-1タンパク質の転写後制御及びプロセシングは、LPSによるものがマクロファージを含めた種々の細胞において報告されている(Hsuら2002)。F3とマクロファージをインキュベーションすることによって、プロIL-1の発現が誘導され、IL-1の分泌が時間に依存して増加したので(図28対26)、IL-1の分泌の間のF3によって誘導されるICE活性を試験した。
【0219】
細胞を、種々の時間、F3で処理するか、又は18時間LPSで処理した。次に、細胞抽出物(90μgのタンパク質)を蛍光のICEの基質であるAc-YVAD-AMC(50μM)の存在下で、30℃で1時間インキュベートした。ICE活性を、Hsuら2001及びHsuら2002に既に記載されている通りに、360nMでの励起と460nMでの発光によって蛍光定量的に測定した。
【0220】
図31に示すように、F3は、コントロール細胞及び18時間LPSで処理した細胞と比較して、6〜12時間の間にICE活性を1.5倍にまで増加させ、24時間で2倍に徐々に達した。
【0221】
要約すれば、ここに例示した実験手順によって、IL-1もプロIL-1もどちらも静止状態のヒト血中単球由来マクロファージ及びマウスのマクロファージであるJ774A.1細胞中に元から存在しておらず、その代わり、F3の投与後に誘導されることが示された(図26、29参照)。詳細には、F3の刺激により、6時間後にIL-1を検出でき、12〜24時間以内にF3は>150pg/mLのIL-1分泌を誘導した(図28及び30)。同様に、著しいTNFの生産が、F3で処理した細胞におけるELISAによって検出された(データ示さず)。IL-1の分泌は、プロIL-1のmRNA及びプロIL-1の逐次合成に加えて、F3の刺激後のICE活性の誘導(図31)とも一致している(図31参照)。
【0222】
(実施例13:J774A.1細胞及びヒトマクロファージにおけるMAPKのリン酸化及び活性を活性化するF3)
前述の結果は、LPS(Hsuら2002)又はPSフコイダン(Hsuら2001)が、IL-1発現の上方制御に関与するPKによって制御されたシグナル経路を伝達したことを立証するものであった。IL-1遺伝子発現の制御におけるF3によって仲介されるシグナル伝達経路を調べるために、最初に、MAPKのF3による刺激について試験した。
【0223】
詳細には、F3で処理したJ774A.1細胞におけるERK1/2、JNK1/2及びp38のリン酸化及び活性の時間的経過の分析を行った。細胞を、F3(25μg/mL)で刺激し、細胞の溶解物を異なる時間にて回収した。細胞の溶解物を、Hsuら2001及びHsuら2002に既に記載されている通りに、抗二リン酸化p44/42、抗二リン酸化JNK1/2(活性化したThr183/Tyr185リン酸化型のJNKを認識する)又は抗二リン酸化p38 mAb(活性化したThr180/Tyr182リン酸化型のp38を特異的に認識するAb)を用いるウェスタンブロットによって分析した。インビトロでのキナーゼアッセイのために、J774A.1細胞を上記のように処理した。
【0224】
活性化したERK及びp38を、特異的な抗体を用いて細胞溶解物から免疫沈降させた。組み換え型のElk-1融合タンパク質とATF-2融合タンパク質をそれぞれERKとp38の基質として用いた。F3によって誘導されたERK及びp38の活性を基質のリン酸化によって観測した。これらを、ホスホ−Elk-1(Ser383)抗体及びホスホ−ATF-2(Thr71)抗体をそれぞれ用いて定量的にイムノブロットすることによって測定した。図35及び36に示すヒストグラムは、J774A.1細胞サンプルにおけるF3によって刺激されたホスホERK1/2、ホスホ−JNK1/2及びホスホ−p38のホスホイメージャーによる、Amersham Pharmacia Biotech社(Sunnyvale,CA)のImageQuaNTソフトウェアを用いた定量を表す。
【0225】
J774A.1細胞サンプルにおけるF3によって刺激されたホスホ−ERK1/2、ホスホ−JNK1/2及びホスホ−p38の活性並びにF3によって刺激されたERK1/2及びp38の活性を、ホスホイメージによって、Amersham Pharmacia Biotech社のImageQuaNTソフトウェアを用いて定量した。
【0226】
相対的な活性の総てのデータを非処理の細胞との比較として表した(t=0;コントロールの細胞のリン酸化を1として定義)。上記の実験を3回繰り返し、代表的な結果を図32〜36に示す。
【0227】
活性化した、Tyr202/Tyr204−リン酸化型のERKをF3のJ774A.1細胞への投与により検出した。詳細には、F3の刺激により、リン酸化したERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)をJ774A.1細胞において〜10分にて検出し、20分で最大のレベルに達し、そのとき、濃度が最初に検出した濃度と比較して3倍高くなった。60分後、ERKのリン酸化は徐々に基礎レベルに戻り、〜120分で再び検出した(図32及び35)。ヒトマクロファージにおける更なる調査によって、ERKのリン酸化において同様の傾向が示された(データ示さず)。さらに、ERK活性のF3による刺激が、ERKの下流の基質であるElkのリン酸化によって明らかとなった(図32及び36)。
【0228】
細胞のF3とのインキュベートによって、JNKのリン酸化が示され、該JNKのリン酸化は10分で次第に増加し、〜20分で最大レベル(8倍増加)に達し、120分後に、誘導されたJNKのリン酸化は4倍に戻った(図32及び34)
【0229】
F3の刺激により、p38のリン酸化は次第に増加した(図34及び36)。F3によって誘導されるp38のリン酸化の時間的経過の調査によって、20分後に、p38が、リン酸化においてコントロール細胞のものと比較して7倍の増加を示し、120分後に、基礎レベルに戻ったことが示された(図34及び35)。同様の傾向が、ヒトマクロファージにおけるp38のリン酸化において見られた(データ示さず)。F3によって誘導されるp38活性の効果をさらに分析するために、インビトロでのキナーゼアッセイを実施した。F3の刺激により、p38の下流の基質である活性化転写因子−2(activating transcription factor-2、ATF-2)のリン酸化が10分で検出され、60分で最大レベル(>15倍)に達し、その後、120分後にわずかに減少した。
【0230】
これらの反応は、特定のマイトジェン、サイトカイン(Hsu及びTwu 2000)、フコイダン(Hsuら2001)又はLPS(Hsuら2002)で処理した細胞において検出されたものと類似している。
【0231】
(実施例14:プロIL-1発現の制御におけるF3によって誘導されるPKの役割)
プロIL-1タンパク質発現の制御におけるF3によって誘導されるPKによって仲介される種々のシグナル経路の役割をさらに調べるために、プロテインキナーゼC(PKC)、MEK1、JNK、p38及びPI3Kをそれぞれ阻害するRo-31-8220、PD98059、SP600125、SB203580及びLY294002などの特定の特異的な薬理学的なアンタゴニストを用いて更なる実験を行った。
【0232】
特異的なPK阻害剤における用量反応を、直接個々のキナーゼ活性をアッセイすることによって観測し、PK阻害剤の有効な濃度を決定した(データ示さず)。
【0233】
最初に、PKC/MEK1/ERK経路が、プロIL-1の制御において、F3によって誘導されるPKの下流のシグナルカスケードの一つであるかどうか調べるために、J774A.1細胞を、示した濃度の阻害剤に曝し、続いてF3とインキュベーションした。詳細には、F3によって誘導されるプロIL-1発現において、J774A.1細胞を、Ro-31-8220、PD98059、SP600125及びSB203580で処理した。細胞を、図37〜40に示されている種々の濃度の阻害剤と1時間予めインキュベートし、続いてさらに6時間F3(25μg/mL)で刺激した。インキュベーション後、サンプルのプロIL-1のウェスタンブロット分析を、Hsuら2001及びHsuら2002に既に記載されている通りに行った。上記の実験を3回繰り返し、代表的な結果を図37〜40に示す。
【0234】
Ro-31-8220(図37)及びPD98059(図38)は、F3によって誘導されるプロIL-1発現をそれぞれ5及び50μMで阻害した。これらの結果は、PKC/MEK1/ERK経路がF3によって誘導されるプロIL-1発現に関与していることを示す。
【0235】
代わりに、SP600125(1〜20μMの濃度)は、F3によって誘導されるプロIL-1発現に対し何ら影響を与えなかった(図39)。
【0236】
SB203580は、コントロールの細胞と比較して、上記の0.5μMの濃度でF3によって誘導されるプロIL-1を完全に阻害し(図40、サンプル2対4)、0.1μMより下の濃度で投与した場合、阻害の減少を示した(図40、サンプル3)。
【0237】
(実施例15:f3によって誘導されたjnk及びp38の活性並びにプロIL-1及びIL1分泌のF3による制御に対するly294002(pi3kの阻害剤)の影響)
F3によって仲介されるシグナル伝達が、プロIL-1発現と関連したPKC/MEK1/ERK経路以外の経路を活性化するかどうか調査するために、PI3Kの特異的な阻害剤であるLY294002を使用した。詳細には、LY294002をJ774A.1細胞に投与して、JNK及びp38のF3によって仲介される活性化へのPI3Kの関与が起こりうるか調べた。この目的のために、J774A.1細胞を種々の濃度のLY294002(5、25、50及び100μM)で1時間予め処理し、その後、さらに20分間F3(25μg/mL)で刺激し、続いてJNK及びp38のリン酸化を前述したように測定した。
【0238】
図41に3つの別個の実験の代表的なデータ(n=3)を図示する。図41に図示されている結果は、LY294002の非存在下で、F3が、コントロール(図41、サンプル1)と比較して、JNKのリン酸化を〜13倍(図41、サンプル2対1)、p38のリン酸化を10倍(図41、サンプル2対1)にそれぞれ誘導したことを示す。驚いたことに、100μMと同程度の高さの濃度でLY294002と予めインキュベートし、続いてF3で処理した細胞では、JNK及びp38のリン酸化の変化が全くなかったことが示され(図41、サンプル3、4、5及び6対2)、このことは、PI3KがJNK及びp38のF3による活性化とあまり関連していないか、全く関連していないことを示すものである。
【0239】
プロIL-1及びIL1の分泌のF3によって仲介される制御におけるPI3Kの役割をさらに調べた。J774A.1細胞をLY294002(50μM)で1時間予め処理し、続いてF3(25μg/mL)とさらに6時間インキュベーションし、プロIL-1の発現のウェスタンブロット分析をHsuら2001及びHsuら2002に既に記載されている通りに実施した。3つの別個の実験において同様の結果が得られた。
【0240】
結果を図42に図示する。図示された結果は、LY294002と予めインキュベーションし、F3で処理した細胞が、F3で処理した細胞と比較してプロIL-1の生産を著しく減少させたことを示す(図42、サンプル2対4)。さらに、F3によって誘導されるIL-1分泌に対するLY294002の影響をELISAによって検出した。F3処理前にLY294002と予めインキュベートした細胞では、馴化培地中で、分泌されたIL-1が、対応するF3で処理したコントロール細胞よりはるかに低い値である5pg/mL(6時間)、14pg/mL(12時間)及び18pg/mL(24時間)にそれぞれ著しく減少したことが示された。
【0241】
これらの結果は、たとえ内生のPI3Kも、JNK及びp38のPI3Kと関連した下流のシグナリングも、F3によって仲介されるJNK及びp38の活性化に関与していないとしても、PI3Kによって仲介される経路は、F3によって誘導されるプロIL-1/IL-1発現に関与しているという結論を支持するものである(図41、42参照)。
【0242】
また、本実施例で図示されている結果及び、実施例11〜14に示されている結果は、当業者に既知であるMAPKsとPAKSとの特性及び相互関係(一部分として、Manserら1995;Hsuら2001;Hsuら2002参照)に照らして、F3が、炎症性サイトカインであるIL-1と関連したプロテインキナーゼ(PK)によって仲介されるシグナル伝達経路を区別して調節するという結論を支持するものである。さらに、上記の結果は、2つのMAPK経路であるPTK/Rac1/PAK/JNK及びPTK/Rac1/PAK/p38のF3によって仲介されるシグナリングがプロIL-1/IL-1の発現と関連しているという結論も支持するものである。
【0243】
(実施例16:UCBの表現型変化のフローサイトメトリーアッセイ)
臍帯血は、より多くの前駆細胞を保有することが知られており、単核細胞のサブセットに対するF3の効果を調べるための優れた候補であるので、単核細胞に対する効果を調査するためにヒト臍帯血(UCB)の単核細胞(MNC)を使用するのが好都合である。UCBを用いて、F3の投与による表現型変化を、特定の細胞の表現型と関連した表面抗原を検出することによって調べた。
【0244】
詳細には、特定の細胞の分化のマーカーである以下の表面抗原:CD1a、CD14、CD19、CD26、CD56、CD83について調べた。詳細には、CD19は、B細胞に特異的な抗原であり、Bリンパ球の発達、活性化及び分化を制御する重要なシグナル伝達分子である(Carterら2002)。CD14は、単球/マクロファージの分化のマーカーである(Dobrovolskaja及びVogel 2002)。CD26は細胞表面のプロテアーゼであり、いくつかのCD4+T細胞及びマクロファージを含めた免疫システムの多くの細胞において発現している(Morimoto及びSchlossman 1998)、抗ヒトCD56抗体及び抗ヒトCD16抗体は両方とも、表面抗原であるCD16及びCD56の異なる発現に従ってナチュラルキラー(NK)細胞及びその亜集団の同定に使用される(Cooperら2001)。CD83及びCD1aは、樹状細胞において発現しており、抗CD83抗体及び抗CD1a抗体は、ヒト樹状細胞の表現型のキャラクタリゼーションのための有用なマーカーとして役立つことができる(Foleyら2001)。
【0245】
6人の健康なボランティア由来のヒト臍帯血をEDTAで被覆したチューブに吸い込んだ。満期出産乳児が出産された後、子宮から胎盤が分離する前に血液を回収した。無菌手段を用いて、18ゲージの針を臍静脈に挿入し、試験用の臍帯血を吸い込んだ。サンプルを室温で貯蔵し、回収後24時間以内に処理した。臍帯血(50〜100mL)をFicoll-Paque(密度1.077;Pharmacia Biotech社;Uppsala,Sweden)による密度勾配遠心によって処理した。
【0246】
軟膜の境界面を回収し、Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水([PBS]pH7.4)及びEDTA(0.2mM)で洗浄した。それを、RPMI-1640、2mM L-グルタミン、100 IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Gibco BRL社)からなる完全培地に再懸濁し、次いで20%ウシ胎仔血清(FBS)を追加した。これらの手順によって単離した単核細胞を106細胞/mLの最終濃度に調整した。
【0247】
(UCBの表現型変化のフローサイトメトリー分析)
F3処理の準備にあたって、6種の臍帯血試料から単離した単核細胞を、6つのT75培養フラスコ内に5x105細胞/mLの密度で入れた。
【0248】
細胞を播種した後、フラスコを37℃、5%CO2のインキュベーター内で1時間維持して平衡化した後、100μg/mLのG. LucidumのF3抽出物を各培養物に添加した。総ての実験においてF3フラクションをPBSに溶解した。コントロールの培養物には、等容量のF3なしのPBSが添加され、ポジティブコントロールは、グラム陰性菌の細胞壁由来のLPS(Sigma社)100μg/mLで処理されたものである。
【0249】
細胞を処理後7日間培養した。フローサイトメトリーを進めるために、細胞(1−2x106)をペレット状にし、2mLの染色緩衝液(0.2mM EDTA、2%FBSのリン酸緩衝食塩水[PBS])に再懸濁した。10μLの蛍光抱合抗体を含む染色緩衝液(100μL)を細胞懸濁液に標識のために添加した。4℃で40分間インキュベーション後、次に、総てのサンプルを1500rpmで5分間遠心し、続いて洗浄緩衝液(0.2mM EDTA、2%FBSのリン酸緩衝食塩水(PBS))で2回ペレットを洗浄した。その後、細胞を異なる濃度のF3とLPSで処理し、その後、表面抗原に特異的なモノクローナル抗体で処理して、種々の細胞のタイプを同定した。CD45、CD3、CD16、CD19、CD56、CD83及びCD1aを含めた表面抗原に対する総てのモノクローナル抗体は、Coulter Immunotech社(USA)から入手した。
【0250】
(フローサイトメトリー)
FACSciburサイトメーター(Becton Dickinson社)を用いてフローサイトメトリーを行った。機器を、FACScompソフトウェアを用いた2色分析用に設定し、デブリを除くために、Calibrite beads(Becton Dickinson社)を用いて、FSCにおける閾値200で校正した。データをリストモードで収集し、CellQuestソフトウェア バージョン3.1f(Becton Dickinson社)及びWin MIDI バージョン2.8ソフトウェアを用いて分析を行った。少なくとも10,000のターゲット細胞を収集し、分析した。総てのサンプルを二連で試験し、結果を平均値で示した。
【0251】
F3で処理した単核細胞の免疫表現型の変化を示す結果を図43〜46に記載する。F3の濃度は、本明細書でに記載されている予備試験に基づいて選択した。CD14+CD26+の単球/マクロファージ発現は、コントロールと比較した場合、F3処理後に2.9倍の因子に増加した(図43)。また、図44及び45に示すように、F3(10〜100μg/mL)で処理したCD83+CD1a+樹状細胞及びCD16+CD56+ NK細胞も、それぞれ非処理のコントロールのものよりCD83+CD1a+樹状細胞では2.3倍及びCD16+CD56+ NK細胞では1.5倍(p<0.05)高い値に達した。主要な観察によって、CD3の発現が、F3の濃度が10μg/mLの培養物では3%、100μg/mLの培養物では20%減少したことが明らかとなった。
【0252】
表7に記載されている上述したF3濃度によるCD19+MNCsにおける有意な変化は全く検出されなかった。
【0253】
【表7】

【0254】
ヒト臍帯血(UCB)由来の単核細胞を約10〜100μg/mLのF3に7日間曝した結果として、CD14+CD26+単球/マクロファージ、CD83+CD1a+樹状細胞及びCD16+CD56+ NK細胞の集団が増加した。
【0255】
(増殖細胞の計数及び決定)
生細胞のトリパンブルーを除く能力に基づいて、光学顕微鏡を用いて細胞数を決定した。ナトリウム・(2,3)−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキサニリド・分子内塩(XTT)による活性の減少(Rohemら1991;Scudieroら1988)によって細胞の増殖を評価した。簡単に説明すると、100μLの2x105細胞/mLを種々の濃度のF3と48時間インキュベートした。フェナジンメトサルフェートを含むXTT溶液を、最終濃度がXTTで0.2mg/mL、フェナジンメトサルフェートで25mMとなるように4時間添加した。吸光度をスペクトロメーターで、テスト波長450nm及び参照波長650nmを用いて測定した。各実験を三連で行い、少なくとも3回繰り返した。結果を平均値±SEMで表した。
【0256】
図47に結果を図示する。図示された結果は、F3がヒト細胞にインビトロで害を及ぼさないことを示す(図47参照)。
【0257】
本実験で示した結果は、単核細胞をF3で処理した結果、非処理細胞と比較して、CD14+CD26+単球/マクロファージ発現、CD83+CD1a+樹状細胞及びCD16+CD56+ NK細胞が増加するなどの、F3で処理した単核細胞の一連の免疫表現型の変化がもたらされるという結論を支持するものである(図43〜46)。その代わり、現状のF3濃度では、CD19+MNCsにおいて有意な変化が全くなかった(表7参照)。
【0258】
従って、本実施例で示した結果は、単球へのF3の投与は、単球/マクロファージ及び樹状細胞において単球の分化を促進する効果を有することを支持するものである。
【0259】
また、更なる実験によって、F3又は他のフラクションなどのGanoderma lusidumの画分で単核細胞を処理することによって、単球の分化が促進されたことが確認された。CD14+CD26+単球/マクロファージ、CD83+CD1a+樹状細胞及びCD16+CD56+ NK細胞の増加が見られたが、CD34+造血幹細胞の集団においては有意な変化が見られなかった。
【0260】
上記の結果は、他のフラクション、特にいずれのサブフラクションによる処理が、単核細胞の一連の免疫表現型の変化において同様の結果を有するという結論を支持するものである。
【0261】
(実施例17:CD56+ NK細胞の濃縮後のK562細胞の溶解)
UCB単核細胞から単離したCD56+ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を、ポジティブ磁気ビーズ細胞分離法(MACS、Miltenyi Biotec社)によって濃縮した。ヒト臍帯血の軟膜由来のMNCを上述したFicoll-Paque(登録商標)を用いて単離し、細胞を30μmのナイロンメッシュ(Millipore社)に通過させて凝集塊を除いた(フィルターは使用前にリンスすべきである)。フィルターを通った細胞を緩衝液(0.1%アジ化ナトリウム、1%ヒト血清アルブミン及び0.15%クエン酸ナトリウムを含有するPBS)で2回洗浄した。細胞のペレットを500μLのこの緩衝液及び200μLのFcR阻害試薬(Miltenyi Biotec社)に懸濁し、15分間氷上でインキュベートして、FcRを阻害した。その後、108の全細胞あたり200μLのCD56+マイクロビーズを添加し、続いて、氷上でさらに30分間インキュベーションし、次に、緩衝液で2回洗浄した。細胞を1mLの緩衝液に再懸濁した。1mLの緩衝液中の磁気によって標識された細胞を、Vario MACSyセパレーター(Miltenyi Biotec社)の磁場内で緩衝液で平衡化した2つのMACSy RS1分離カラム(Miltenyi Biotec社)にアプライした(Gritzapisら2002)。ネガティブ細胞を2mLの緩衝液を用いてカラムから洗い流した。保持された細胞を、カラム上に2mLの緩衝液をピペットで置くことによって、カラムに付属したプランジャーを用いて、磁場外でカラムから溶出した。
【0262】
区別した細胞の一定量をPC5標識抗CD56+モノクローナル抗体(Coulter Immunotech社)によって染色して、CD56+ NK細胞の純度を分析した。単離したNK細胞の純度を、フローサイトメトリー分析によって決定し、純度は最大95%まで達していた。
【0263】
(エフェクター細胞の活性化)
高濃縮したCD56+ NK細胞懸濁液をRPMI-1640を追加した培地で24時間(37℃、10%CO2)培養した。後の細胞障害試験の前のプレインキュベーション処理として、段階希釈による100〜3.125μg/mLの範囲内の6種の種々の濃度のF3又はLPSを細胞懸濁液に添加した。コントロールのグループはPBSで処理した。
【0264】
7日間のインキュベーション後、培養物を、リン酸緩衝食塩水([PBS]pH7.4)で2回洗浄し、次いで20%FBSを含む培地に再懸濁し、細胞障害アッセイに備えた。
【0265】
(ターゲット細胞の調整)
ヒト赤白血病細胞株であるK562(CCL-243、ATCC)を、細胞障害アッセイのNK感受性ターゲットとして用いた。
【0266】
細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS、Gibco社)と1%の抗生物質(P/S、ペニシリン100 IU/mLとストレプトマイシン100μg/mL、Gibco社)を含有するRPMI-1640培地(Gibco Laboratories社)で75cm2培養フラスコ(Falcon社)内で2x105細胞/mLの濃度に培養した。試験の日に、細胞をPBSで1回洗浄し、2x105/mLの濃度で完全培地に再懸濁した。
【0267】
種々の濃度の活性化したエフェクター細胞、すなわちF3で処理したCD56+ NK細胞と、ターゲット細胞、すなわちK562を6ウェルのプレート(Falcon社)内で三連で共培養した。エフェクター対ターゲット細胞(E:T)の比率はそれぞれ5:1、20:1及び80:1とした。細胞を越えた膜電位が生じた際に還元により色を変化させる比色分析の指標であるAlamar Blue(Alamar BioSciences社,Sacramento,CA)(Zhangら2000)を用いて、NK細胞の細胞障害活性を測定した。エフェクター細胞とターゲット細胞の共培養から12時間後、Alamar Blueの指標を培養ウェルに200μLの指標:2mLの培地の比率で添加した。その後、プレートをさらに37℃で4時間インキュベートした。色の吸光度をELISAリーダーで570nm及び595nmの波長で測定した。また、培地及びAlamar Blue試薬のみ含有し、4時間インキュベートしたコントロールも同じ波長で測定した。製造業者のマニュアル中の提示に従って計算を行った。CD56+ NK細胞によって仲介された細胞障害へのF3の効果の結果をコントロールに対するF3処理グループのK562細胞の生存の比率として表す。
【0268】
結果を図48〜51に示す。該図において記載されているデータは3つの独立した実験の平均値±SDである。最も高いレベルの細胞障害が、エフェクター細胞を100μg/mLの濃度のF3で予めインキュベートした場合のE/Tの比率が20:1のものにおいて認められた。三連で行った実験において、NKの細胞障害が、非処理のコントロールと比較した場合に、100μg/mLのF3で予め処理した後は31.7%(P<0.01)、50μg/mLのF3で予め処理した後は20.1%(P<0.05)増加した(図48〜50)。E/Tの比率が5:1であるものの細胞障害は、コントロールと比較して有意なものではなかった。他方で、E/Tの比率が80:1と同程度である場合、おそらく細胞数の過飽和により、高い細胞障害効果が全くみられなかった(データ示さず)。同じ濃度のLPSで予め処理したエフェクター細胞をポジティブコントロールとして使用し、F3によって増大されるNKの細胞障害はこれらのポジティブコントロールに匹敵するものであった。NKの細胞障害は、100μg/mLのLPSで予めインキュベートした際には48.2%、50μg/mLのLPSで予めインキュベートした際には40.7%(P<0.01)と著しく増加した(図49、50)。F3での処理によって、LPSでの処理後に示された細胞障害に匹敵する細胞障害が生じた。
【0269】
上記の結果は、F3又は他のフラクションを含めたフコース含有糖タンパク質画分がCD56+ NK細胞の細胞障害をヒト及びマウスの両方のシステムにおいて増大させることができるという結論を支持するものである。
【0270】
(実施例18:個体の分散)
NK細胞のマイナーなサブタイプがF3による影響を受けるかどうか調べるために、UCB MNCsを6人のボランティアから収集した。これらのMNCsを100μg/mLのF3で処理した後7日間培養した。次に、NK細胞を回収し、2色のフローサイトメトリー分析を用いて細胞表面マーカー(CD56及びCD3)について試験した。コントロールのグループはPBSのみで処理した。
【0271】
結果を図52に示す。図示された結果は、CD3-CD56+ NK細胞の数が特定の個体において著しく増加した(114〜286%)。
【0272】
総ての6つのサンプルでは、CD3-CD56+ NK細胞が大きく増加したが、CD3+CD56+ NKT細胞が減少した(36.5〜84.7%)ことが示された(図52)。
【0273】
これらのデータは、NK細胞の表現型の変化がNK細胞の細胞障害効果の増大の原因であり、高濃度のF3で処理することによって、T細胞の増殖が減少するという結論を支持するものである。
【0274】
(実施例19:ヒトの初代の単球及び樹状細胞における表面マーカーの発現に対するレイシの効果)
抗原提示細胞によって発現したMHC分子上の抗原ペプチドはT細胞と相互に作用し、自然免疫反応と適応免疫反応との間の中心的な役割を占める抗原特異的なT細胞のクローン増殖を促進する。同時刺激の分子(CD80及びCD86を含めた)及びCD28/CTLA-4の間の相互作用はT細胞の活性化及び寛容の制御において重要である。この現象に着目して、発明者らは、MHCクラスI(HLA-DA、DB及びDC)、MHCクラスII(HLA-DR、DP及びDQ)に対するレイシのフラクション3の効果と、ヒトの初代の単球、マクロファージ及び樹状細胞などの抗原提示細胞におけるCD80/CD86の発現を調べることとした。ヒトの初代の単球及び樹状細胞を、台湾血液センター(台北、台湾)から入手した健康な人の血液から単離した。
【0275】
ヒトの初代の単球又は樹状細胞を100mg/mLのレイシと48時間インキュベートし、MHC I、MHC II、CD80及びCD86の細胞表面の発現をフローサイトメトリーによって決定した。結果を表8に示す。
【0276】
【表8】

【0277】
レイシとインキュベートした単球又は樹状細胞は、表面のMHCクラスII発現の増加を示したが、MHCクラスIの発現には何ら変化を示さなかった。さらに、レイシは、単球及び樹状細胞上での同時刺激の分子であるCD80及びCD86の表面発現を増加させた。
【0278】
これらの発見によって、レイシが、免疫に直接関係している抗原提示細胞の細胞表面マーカーの発現を変化させることが明らかに示された。さらに、これらの結果は、レイシ抽出物の成分が、自然免疫と適応免疫との間の関係に直接関与し、かつ影響を及ぼすことを示し、このことは、健康改善及び治療用途におけるフコース含有糖タンパク質画分の考えられる役割を示唆するものであった。
【0279】
(実施例20:精製したマウス脾臓B細胞におけるBlimp-1の誘導と関連しているレイシF3)
転写因子Blimp-1(Bリンパ球誘導成熟タンパク質1(B lymphocyte-induced maturation protein-1))は、形質細胞の分化の間に重要な役割を果たす。Blimp-1の異所性の発現は、形質細胞の形成及びマウスB細胞における成熟したB細胞からイムノグロブリンの分泌を誘導するのに充分なものである。Blimp-1をコードする遺伝子であるB細胞に特異的なprdm1を欠くマウスは、形質細胞の分化において深刻な欠陥を明らかに示した。
【0280】
F3又はLPSの存在下で培養した精製したマウス脾臓B細胞上でのBlimp-1の発現をRT-QPCR及びウェスタンブロット分析によって検出した。この点で、精製したマウス脾臓B細胞を、2.5μg/mLのLP又は10μg/mLのレイシF3で処理するか、又はネガティブコントロールとしてどの物質とも処理しなかった。0日目又は3日目に細胞を回収し、その後、該細胞のRNA単離とBlimp-1に特異的なプローブのRT反応(RT-QPCR)を行い、PPIAの発現レベルに正規化した。または、該回収した細胞を溶解し、全細胞溶解物を、Blimp-1のモノクローナル抗体及びコントロールとしてアクチン抗体を用いるウェスタンブロット分析に使用した。
【0281】
結果を図55および56に図示する。図示された結果は、レイシのF3で処理した後、Blimp-1タンパク質がマウス脾臓B細胞の培養物において誘導され(図56)、マウス脾臓B細胞をレイシのF3で刺激した際にBlimp-1のmRNAが高度に誘導された(図55)ことを示す。
【0282】
また、精製したヒト末梢B細胞へのF3投与の効果も試験した。この点で、種々のドナー(ドナー#1)、(ドナー#2)および(ドナー#3)由来の精製したヒト末梢B細胞をレイシのF3で6日間処理し、次いで、RNAの単離とRT反応を、Blimp-1に対するプライマー及びプローブのセットを用いて行い、PPIAの発現レベルに正規化した。
【0283】
結果を図57に図示する。図示された結果は、レイシのF3の処理によって、少なくとも3つの独立したドナーのB細胞からBlimp-1のmRNAの発現が約4倍に誘導された。
【0284】
更なる実験によって、レイシのF3またはF3G2フラクションによって、マウス脾臓B細胞培養物における3日間の処理後にBlimp-1のmRNAおよびタンパク質の上方制御がもたらされたことが示された。詳細には、RT-QPCRおよびウェスタンブロットを用いて、Blimp-1のmRNAおよびタンパク質の誘導を決定した。B細胞培養物への添加の前に乾燥したレイシのF3粉末をH2Oに溶解した。3日間レイシで処理した細胞のRNAの単離を行った。リアルタイム定量RT-PCRを用いて、Blimp-1のmRNAの発現の倍率の変化を観測した。Blimp-1のmRNAの誘導を内生のL32のmRNAレベルに正規化した。結果は、10μg/mLが、本明細書の他の部分に記載されている結果とより一致する結果であるように見えても、2.5μg/mLのレイシのF3がマウス脾臓B細胞においてBlimp-1のmRNAを誘導するのに充分なものであったことを示す。
【0285】
これらの更なる結果によって、レイシのような免疫調節剤と転写プログラムとの間の関連性が示された。
【0286】
総合すれば、これらの結果は、Blimp-1が、マウス脾臓B細胞およびヒト末梢B細胞におけるレイシの刺激と関連した分子マーカーであるという結論を支持するものである。
【0287】
(実施例21:ヒト樹状細胞においてBlimp-1のmRNAの発現を誘導するレイシのF3)
健康なドナー由来のヒト樹状細胞をレイシのF3で処理し、Blimp-1のmRNAのレベルを決定した。
【0288】
詳細には、単離したヒト樹状細胞を10μg/mLのレイシのF3で処理し、Blimp-1に対するプライマーおよびプローブのセットを用いて7日目にRT-QPCRを行い、PPIAの発現レベルに正規化し、非処理のヒト樹状細胞をコントロールとして用いた。
【0289】
図58に結果を示す。示された結果は、ヒト樹状細胞培養物におけるレイシのF3で処理していない細胞と比較して、7日目に約4倍のBlimp-1のmRNAが誘導されたことを示す。
【0290】
これらのデータは、Blimp-1がヒト成熟樹状細胞において発現されたことを示し、レイシのF3の処理がBlimp-1の誘導と関連しているという結論をさらに支持するものである。
【0291】
(実施例22:LPSによって誘導されるiNOSのPS阻害マクロファージ(RAW264.7)の発現)
マクロファージが、哺乳類の初期の免疫反応の重要な役割を果たす。初期の免疫反応におけるマクロファージの免疫機能として、インターフェロンγなどの特定のサイトカインにマクロファージを曝すことにより、iNOS、eNOS、タイプII NOSなどの誘導型一酸化窒素合成酵素によって生成される一酸化窒素(NO)の生産が挙げられる。マクロファージによるNOの生産は、Janus Kinase Family(JAK)およびシグナル伝達性転写因子(signal transuducer and activator of transcription、STAT)のタンパク質を含めた一連のシグナルトランスデューサーを介して仲介される。
【0292】
表9は、発現、律速、生産量、染色体位置、酵素位置および分子量(Mw)を含めた種々の一酸化窒素合成酵素のアイソザイムの特徴を示す。
【0293】
【表9】

【0294】
さらに、タイプII NOSの特徴および敗血症における抗炎症剤の臨床試験をそれぞれ表10および11に示す。
【0295】
【表10】

【0296】
【表11】

【0297】
詳細には、iNOSがLPSによって誘導された敗血症において生産され、このことには、血管弛緩性の介在物質の直接的な放出を含む初期段階(0〜1.5時間)と、iNOSのアイソフォームに加えて他の誘導酵素であるPLA2-II(タイプII ホスホリパーゼA)およびCOX-II(シクロオキシゲナーゼ-II)の発現を含む遅延段階(1.5〜24時間)が含まれる。
【0298】
LPSによって誘導されるiNOSの生産へのフラクション3の効果を試験するために、図61に図示した手順に従って、マウスマクロファージ(細胞株RAW264.7)をLPSおよびフラクション3で処理した。
【0299】
詳細には、RAW264.7(5x105細胞/ウェル)をDMEM 10%FCSにて24時間培養し、DMEM 0%FCSにてさらに4時間培養した。次に、培地をDMEM 2%FCSと交換し、細胞を10〜1000μg/mLのF3で、3、5および10ng/mLのLPSとともに、又はLPSなしで処理した。培地中のNO2-濃度の測定および細胞生存度の測定を24時間後に行った。
【0300】
(NO2-濃度−亜硝酸塩アッセイ)
NO2-濃度を、図62に概略して示した手順に従って、インビトロでの亜硝酸塩アッセイによって測定した。
【0301】
詳細には、細胞培養物からの上清を、Greiss試薬と1:1の比率で10分間混合し、生じたODにおける光吸光度を550nmで測定した。
【0302】
LPS及び/又はF3処理なしでは、5x105の細胞において、5x105M/細胞のNO2-濃度に相当する>3μMのNO2-濃度を検出した。
【0303】
LPSとF3を組み合わせた処理の後、検出したNO2-濃度は、図63及び64に図示されるように変化し、このことは、培地中のLPSによって誘導されるNO2生産に対するF3の阻害効果を示す。
【0304】
(細胞生存度アッセイ)
細胞の生存度を、当業者に既知である手順に従って、alama Blueアッセイによって測定した。
【0305】
結果を図65に図示する。図示された結果は、LPSとともに、又はLPSなしでF3(ここでは、GL(PS)_Wu又はWuとも称す)で処理したことによって、培地中の細胞の生存度に影響がなかったことを示す。
【0306】
本実施例で示した実験は、フコース含有糖タンパク質画分がマクロファージにおけるLPSによって誘導されるiNOS発現を阻害するという結論を支持するものである。
【0307】
要約すれば、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物から得られるフコース含有糖タンパク質画分、IL-1遺伝子発現に伴う免疫調整現象を仲介する方法、炎症性サイトカインの発現を刺激する方法、炎症性サイトカインであるインターロイキン1と関連したプロテインキナーゼ経路を調整する方法、TLRによって仲介される現象を誘導する方法、単核細胞の分化を調整する方法、NK感受性腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞障害を増大させる方法、サイトカインの発現を活性化する方法、マウス脾臓B細胞又はヒトB細胞、ヒトの成熟した脾臓細胞もしくは樹状細胞におけるBlimp-1の発現を誘導する方法、マクロファージにおけるLPSによって誘導される一酸化窒素の生産を阻害する方法が提供される。
【0308】
分子、プローブ、試薬、濃度、処方、媒体、担体、助剤に関する更なる詳細は、本明細書を読むことにより当業者が確認できる。
【0309】
上記の教示に照らして、多くの改変及び変形が可能である。上記の記載は、本発明の好ましい実施態様を記載するものであり、説明のために示したものである。本発明を開示されている形態のみに限定するものではない。
【0310】
本明細書で引用している、一部を形成する添付のいずれの論文も含む公報及び参考文献のすべての内容を参照により本願に援用する。
【0311】
(参考文献)





【図面の簡単な説明】
【0312】
【図1】図1は、本技術分野において既知であるレイシの多糖画分のバックボーンの略図である。
【図2】図2は、Sephacryl S-500カラムを用いて行われたレイシ抽出物のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示す図である。X軸は溶出の容積(mL)を示し、y軸は溶出のOD625における光吸光度を示す。
【図3】図3は、レイシ粗抽出物で処理したマウス脾臓細胞のCon-Aによって刺激された細胞増殖についての比色分析アッセイ(MTT)を示す図である。X軸はレイシ粗抽出物の濃度(μg/mL)を示し、y軸は(-)コントロールと比較した指数を示す。
【図4】図4は、フラクション3で処理したマウス脾臓細胞のCon-Aによって刺激された細胞増殖についての比色分析アッセイ(MTT)を示す図である。X軸はレイシ粗抽出物の濃度(μg/mL)を示し、y軸は(-)コントロールと比較した指数を示す。
【図5】図5は、フラクション3とインキュベートしたマウス脾臓細胞においてIL-1の発現を検出するためのRT-PCR実験のゲル電気泳動の結果を示す図である。レーン1は分子量マーカー(50bpラダー)を示し、レーン2はフラクション3の存在下でのハウスキーピング遺伝子(200bp)の発現を示し、レーン3はフラクション3の存在下でのIL-1の発現を示し、レーン4はフラクション3の非存在下でのハウスキーピング遺伝子の発現を示し、レーン5はフラクション3の非存在下でのIL-1の発現を示し、断片の寸法を矢印によって左に示す。
【図6】図6は、フラクション3とインキュベートしたマウス脾臓細胞においてIL-2の発現を検出するためのRT-PCR実験のゲル電気泳動の結果を示す図である。レーン1は分子量マーカー(50bpラダー)を示し、レーン2はフラクション3の存在下でのハウスキーピング遺伝子(200bp)の発現を示し、レーン3はフラクション3の存在下でのIL-2の発現を示し、レーン4はフラクション3の非存在下でのハウスキーピング遺伝子の発現を示し、レーン5はフラクション3の非存在下でのIL-2の発現を示し、断片の寸法を矢印によって左に示す。
【図7】図7は、フラクション3とインキュベートしたマウス脾臓細胞においてIFN-γの発現を検出するためのRT-PCR実験のゲル電気泳動の結果を示す図である。レーン1は分子量マーカー(50bpラダー)を示し、レーン2はフラクション3の存在下でのハウスキーピング遺伝子(200bp)の発現を示し、レーン3はフラクション3の存在下でのIFN-γの発現を示し、レーン4はフラクション3の非存在下でのハウスキーピング遺伝子の発現を示し、レーン5はフラクション3の非存在下でのIFN-γの発現を示し、断片の寸法を矢印によって左に示す。
【図8】図8は、フラクション3で処理していないマウス脾臓細胞のプロテオーム分析の結果を示す図である。
【図9】図9は、フラクション3で処理した後のマウス脾臓細胞のプロテオーム分析の結果を示す図である。
【図10】図10は、図9のプロテオーム分析と比較した際に図8のプロテオーム分析から消失するスポットを示す図である。
【図11】図11は、図9のプロテオーム分析と比較した際に図8のプロテオーム分析において出現するスポットを示す図である。
【図12】図12は、フラクション3の酵素処理と生物活性との関係を説明するモデルを示すチャートである。
【図13】図13は、マウス脾臓細胞を、0.1ppm(0.1ppm)、1ppm(1ppm)、10ppm(10ppm)もしくは100ppm(100ppm)の濃度のF3と6時間インキュベーションした後の、またはネガティブコントロールとしてF3なし(非処理)で6時間インキュベーションした後の、又はポジティブコントロールとしてConA 1ppm(ConA(1ppm))で処理した後の10種の種々のサイトカインの発現を示すRT-PCR実験のゲル電気泳動を示す図である。サイトカインを左にそれらの頭文字で示し、該当する発現(+)又は非発現(-)を右に示す。
【図14】図14は、0.2及び0.8M NaClで流速0.5mL/分で溶出したDiaion-WA30(Cl-型、40x3.5cm)のカラムで行われた陰イオン交換クロマトグラフィーの結果を示す図である。x軸はチューブのナンバーによって特定される光吸光度について分析したサンプルを示し、y軸は480nmにおける光吸光度を示し、フラクションF3G1及びF3G2と称される曲線の部分はそれぞれの頭文字で図において特定される。
【図15】図15は、再蒸留水で流速0.5mL/分で溶出したゲルろ過カラムTSK HW-75(130x2.6cm)で行われたクロマトグラフィーの結果を示す図である。x軸は光吸光度について分析したサンプルを示し、サンプルはチューブのナンバーによって特定される。y軸は480nmにおける光吸光度を示す。フラクションF3G2H1(G2H1)及びF3G2H2(G2H2)と称される曲線の部分はそれぞれの頭文字で図において特定される。
【図16】図16は、図に示されている100μg/mLのレイシ粗抽出物(WSR)、F3(F3)、F3G1(F3G1)及びF3G2(F3G2)で処理した後の種々の時間間隔におけるマウス脾臓細胞(3.0x106細胞/mL)によるGM-CSFのインビトロでの生産を示す図である。x軸は時間で表した測定の時間を示し、y軸はGM-CSFの測定された濃度(pg/mL)を示す。
【図17】図17は、図に示されている100μg/mLのレイシ粗抽出物(WSR)、F3(F3)、F3G1(F3G1)及びF3G2(F3G2)で処理した後の種々の時間間隔におけるマウス脾臓細胞(3.0x106細胞/mL)によるIFN-γのインビトロでの生産を示す図である。x軸は時間で表した測定の時間を示し、y軸はIFN-γの測定された濃度(pg/mL)を示す。
【図18】図18は、示されている種々の濃度のF3G2又はLPSのいずれかの投与によるマウス脾臓細胞によるTNF-αのインビトロでの発現を示す表を示す。第1列はF3G2又はLPSの濃度(サンプル濃度)をμg/mLで示し、第2列はF3G2の投与後に検出されたTNF-αの濃度をpg/mLで示し、第3列はLPSの投与後に検出されたTNF-αの濃度をpg/mLで示す。
【図19】図19は、示されている種々の濃度のF3G2又はLPのSいずれかの投与によるマウス脾臓細胞によるTNF-αのインビトロでの発現を示す三次元のチャートである。長さの軸はF3G2又はLPSの濃度(サンプル濃度)をμg/mLで示し、高さの軸はF3G2又はLPSの投与後に検出されたTNF-αの濃度をpg/mLで示す。
【図20】図20は、示されている通り、25μg/mLのF3(F3)及び/もしくは1μg/mLのLPS(LPS)で6時間処理した(+)、又は処理していない(-)HeNC2細胞及びGG2EE細胞の全細胞溶解物のウェスタンブロットの結果を示す図である。検出したプロIL-1及びアクチン(内部のコントロールとして)の発現を矢印で右に示す。
【図21】図21は、示されている通り、10μg/mLのマウス抗ヒトTLR4 mAb HTA125(TLR4Ab)もしくは10μg/mLのCR3 mAb(CR3Ab)で30分間予め処理するか(+)、又は予め処理せずに(-)、その後に示されている通りマクロファージを25μg/mLのF3(F3)及び/もしくは1μg/mLのLPS(LPS)で6時間(+)処理した、又は処理していない(-)ヒト初代マクロファージの全細胞溶解物のウェスタンブロットの結果を示す図である。検出したプロIL-1及びアクチン(内部のコントロールとして)の発現を矢印で右に示す。
【図22】図22は、示されている通り、J774A.1細胞を2μMのCM-H2DCFDAと30分間予めインキュベーションし、続いて0〜20分間の短い期間に渡る更なるインキュベーションの間に、25μg/mLのF3(F3)及び/もしくは1μg/mLのLPS(LPS)を含む培地と交換するか、又は更なる交換をしない(DCPHのみ)ことにより、F3によって誘導されるJ774A.1細胞によるROSの生産とLPSによって誘導されるJ774A.1細胞によるROSの生産を示す図である。x軸は分で表した測定時間を示し、y軸はフルオロフォアであるCM-H2DCFの相対的な蛍光強度を示す。
【図23】図23は、示されている通り、J774A.1細胞を2μMのCM-H2DCFDAと30分間予めインキュベーションし、続いて0〜24時間の長い期間に渡る更なるインキュベーションの間に、25μg/mLのF3(F3)及び/もしくは1μg/mLのLPS(LPS)を含む培地と交換するか、又は更なる交換をしない(DCPHのみ)ことにより、F3によって誘導されるJ774A.1細胞によるROSの生産とLPSによって誘導されるJ774A.1細胞によるROSの生産を示す図である。x軸は時間で表した測定時間を示し、y軸はフルオロフォアであるCM-H2DCFの相対的な蛍光強度を示す。
【図24】図24は、示されている通り、10μg/mLのPMBと30分間(PMB)予めインキュベートするか、又は予めインキュベートせずに(ブランク)、続いて25μg/mL(25)、100μg/mL (100)、200μg/mL (200)のF3(F3)もしくは0.1μg/mL(.1)、1μg/mL(1)のLPS(LPS)で6時間処理したJ774A.1細胞の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示し、増大した発現の存在又は非存在および増大した発現の強度を図の下部に示す(倍)。
【図25】図25は、示されている通り、25μg/mLのF3(F3)、1μg/mLのLPS(LPS)又は培地(CTR)で分で表される種々の時間予め処理したヒト血中単球由来マクロファージ抗ホスホチロシン mAb(抗P-Tyr Ab 4G10)を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。サンプル1、非処理のサンプル;サンプル2、1μg/mL LPS、15分;サンプル3、1μg/mL LPS、60分;サンプル4、25μg/mL F3、15分;サンプル5、25μg/mL F3、60分。分子量(kDa)をバーで左側に示す。特異的なAbsによって確認されたMAPKsの発現をバーで右側に示す。F3によって誘導され、かつLPSによって誘導されていない幾つかの更なるホスホチロシルタンパク質をアスタリスクで右側に示す(*)。
【図26】図26は、25μg/mLのF3(F3)、1μg/mLのLPS(LPS)又はLY2940002/EORP(LY2940002/EORP)のJ774A.1及びヒトマクロファージにおけるIL-1分泌及びプロIL-1発現への効果を示す図である。x軸は時間で表した測定時間を示し、y軸は検出したIL-1濃度(pg/mL)を示す。
【図27】図27は、示されている通り、12.5μg/mLもしくは25μg/mLのF3(F3 μg/mL)又は0.5μg/mLもしくは1μg/mLのLPS(LPS μg/mL)で6時間処理したJ774A.1細胞(J774A.1細胞)の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。
【図28】図28は、示されている通り、F3で、具体的に0時間(0)、3時間(3)、6時間(6)、9時間(9)、12時間(12)、24時間(24)処理したJ774A.1細胞(J774A.1細胞)及びヒト初代マクロファージ(ヒト初代マクロファージ)の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。
【図29】図29は、示されている通り、具体的に0μg/mL(0)、0.3μg/mL(0.3)、1.5μg/mL(1.5)、3.1μg/mL(3.1)、6.3μg/mL(6.3)、12.5μg/mL(12.5)、25μg/mL(25)、50μg/mL(50)のF3で処理したJ774A.1細胞(J774A.1細胞)の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。
【図30】図30は、示されている通り、F3で、具体的に0時間(0)、1時間(1)、2時間(2)、4時間(4)、6時間(6)、8時間(8)、12時間(12)、18時間(18)、24時間(24)処理したJ774A.1細胞(J774A.1細胞)から単離した全RNAのプロIL-1に特異的なプローブを用いたRT-PCR分析の結果を示す図である。プロIL-1及びGAPDH(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。増大した発現の存在又は非存在と増大した発現の強度を図の下部に示す(倍率)。
【図31】図31は、F3(F3)又はLPS(LPS)で処理したJ774A.1細胞の時間に依存したF3によって誘導されるICE活性を示す図である。x軸は、時間で表した測定時間を示し、y軸は蛍光により測定されたICE活性を示す。
【図32】図32は、示されている通り、0分(0)、10分(10)、20分(20)、30分(30)、60分(60)、120分(120)、25μg/mLのF3で予め処理したJ774A.1(J774A.1)の全細胞溶解物の抗二リン酸化p44/42を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。p-ERK、pElk及びERKの検出した発現を矢印で右に示す。
【図33】図33は、示されている通り、0分(0)、10分(10)、20分(20)、30分(30)、60分(60)、120分(120)、25μg/mLのF3で予め処理したJ774A.1(J774A.1)の全細胞溶解物の抗二リン酸化JNK1/2を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。p-JNK及びJNKの検出した発現を矢印で右に示す。
【図34】図34は、示されている通り、0分(0)、10分(10)、20分(20)、30分(30)、60分(60)、120分(120)、25μg/mLのF3で予め処理したJ774A.1(J774A.1)の全細胞溶解物の抗二リン酸化p38 mAbを用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。p-p38、pATF-2及びp38の検出した発現を矢印で右に示す。
【図35】図35は、示されている通り、上記の図32〜34に記載されている通りに試験したJ774A.1細胞のサンプルにおけるF3によって刺激されたホスホERK1/2(p- ERK1/2)、ホスホ−JNK1/2(P-JNK1/2)及びホスホ−p38(p-p38)の、ホスホイメージャーによる、Amersham Pharmacia Biotech社(Sunnyvale,CA)のImageQuaNTソフトウェアを用いた定量を示す図である。x軸は、分で表された測定時間を示し、y軸は相対的な倍率を示す。
【図36】図36は、上記の図32〜34に記載されている通りに試験したJ774A.1細胞のサンプルにおけるF3によって刺激されたERK1/2(ERK)及びp38(p38)の活性の、ホスホイメージャーによる、Amersham Pharmacia Biotech社のImageQuaNTソフトウェアを用いた定量を示す図である。x軸は、分で表された測定時間を示し、y軸は相対的なMAPKs活性を示す。
【図37】図37は、示されている通り、0μM(0)、0.1μM(0.1)、1μM(1)、5μM(5)又は10μM(10)のRo-31-8220(Ro-31-8220)と1時間予めインキュベートし、続いて示されている通り、25μg/mLのF3(F3)でさらに6時間刺激したか(+)、又は刺激していない(-)J774A.1細胞(J774A.1細胞)の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。
【図38】図38は、示されている通り、0μM(0)、5μM(5)、25μM(25)、50μM(50)又は100μM(100)のPD98059(PD98059)と1時間予めインキュベートし、続いて示されている通り、25μg/mLのF3(F3)でさらに6時間刺激したか(+)、又は刺激していない(-)J774A.1細胞(J774A.1細胞)の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。
【図39】図39は、示されている通り、0μM(0)、1μM(1)、5μM(5)、10μM(10)又は20μM(20)のSP600125(SP600125)と1時間予めインキュベートし、続いて示されている通り、25μg/mLのF3(F3)でさらに6時間刺激したか(+)、又は刺激していない(-)J774A.1細胞(J774A.1細胞)の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。
【図40】図40は、示されている通り、0μM(0)、0.1μM(0.1)、0.5μM(0.5)、1μM(1)又は2μM(2)のSB203580(SB203580)と1時間予めインキュベートし、続いて示されている通り、25μg/mLのF3(F3)でさらに6時間刺激したか(+)、又は刺激していない(-)J774A.1細胞(J774A.1細胞)の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。
【図41】図41は、示されている通り、0μM(0)、5μM(5)、25μM(25)、50μM(50)又は100μM(100)のLY294002と1時間予めインキュベートし、続いて示されている通り、25μg/mLのF3(F3)でさらに20分間刺激したか(+)、又は刺激せずに(-)、次いでJNKのリン酸化を測定したJ774A.1細胞(J774A.1細胞)の全細胞溶解物の抗二リン酸化JNK1/2及び抗二リン酸化p38 mAbを用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。p-JNK、JNK、p-p38及びp38の検出した発現を矢印で右に示す。
【図42】図42は、50μM(50)のLY294002(LY294002)と1時間予めインキュベートするか(+)、又は予めインキュベートしないで(-)、続いて示されている通り、25μg/mLのF3(F3)でさらに6時間刺激したか(+)、又は刺激していない(-)J774A.1細胞(J774A.1細胞)の全細胞溶解物の抗IL-1抗血清を用いたウェスタンブロット分析の結果を示す図である。プロIL-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を矢印で右に示す。
【図43】図43は、示されている通り、100μg/mLのLPS(100μg/mL LPS)、10μg/mLのF3(10μg/mL F3)又は100μg/mLのF3(100μg/mL F3)の存在下で培地内で増殖したCD14+単球/マクロファージ(CD14+)、CD14+CD26-単球/マクロファージ(CD14+CD26-)又はCD14+CD26+単球/マクロファージ(CD14+CD26+)のフローサイトメトリー分析を示す図である。x軸は、F3及びLPSの投与濃度を示し、y軸は、コントロールと比較した、示したマーカーを発現する細胞の比率を示す。
【図44】図44は、示されている通り、100μg/mLのLPS(100μg/mL LPS)、10μg/mLのF3(10μg/mL F3)又は100μg/mLのF3(100μg/mL F3)の存在下で培地内で増殖したCD83+樹状細胞(CD83+)、CD83+CD26-樹状細胞(CD83+CD26-)又はCD83+CD26+樹状細胞(CD83+CD26+)のフローサイトメトリー分析を示す図である。x軸は、F3及びLPSの投与濃度を示し、y軸は、コントロールと比較した、示したマーカーを発現する細胞の比率を示す。
【図45】図45は、示されている通り、100μg/mLのLPS(100μg/mL LPS)、10μg/mLのF3(10μg/mL F3)又は100μg/mLのF3(100μg/mL F3)の存在下で培地内で増殖したCD56+ NK細胞(CD56+)、CD56+CD16- NK細胞(CD56+CD16-)又はCD56+CD16+ NK細胞(CD56+CD16+)のフローサイトメトリー分析を示す図である。x軸は、F3及びLPSの投与濃度を示し、y軸は、コントロールと比較した、示したマーカーを発現する細胞の比率を示す。
【図46】図46は、示されている通り、100μg/mLのLPS(100μg/mL LPS)、10μg/mLのF3(10μg/mL F3)又は100μg/mLのF3(100μg/mL F3)の存在下で培地内で増殖したCD34+造血幹細胞(CD34+)、CD34+ CD45-造血幹細胞(CD34+ CD45-)又はCD34+ CD45+造血幹細胞(CD34+ CD45+)のフローサイトメトリー分析を示す図である。x軸は、F3及びLPSの投与濃度を示し、y軸は、コントロールと比較した、示したマーカーを発現する細胞の比率を示す。
【図47】図47は、示されている通り、100μg/mL(100μg/mL )、50μg/mL(50μg/mL )、25μg/mL(25μg/mL )、12.5μg/mL(12.5μg/mL )、6.5μg/mL(6.5μg/mL )、3.125μg/mL(3.125μg/mL )、1.56μg/mL(1.56μg/mL )、0.78μg/mL(0.78μg/mL )、0.39μg/mL(0.39μg/mL )のF3(F3)もしくはLPS(LPS)で処理したヒト臍帯血MNC増殖又は非処理(コントロール)のヒト臍帯血MNC増殖において行われたXTTアッセイの結果を示す図である。x軸は、投与されたF3の濃度を示し、y軸は、コントロールと比較した、示したマーカーを発現する細胞の比率を示す。
【図48】図48は、示されている通り、100μg/mL(100μg/mL )、50μg/mL(50μg/mL )、25μg/mL(25μg/mL )、12.5μg/mL(12.5μg/mL )、6.5μg/mL(6.5μg/mL )、3.125μg/mL(3.125μg/mL )のF3とNK細胞を7日間予めインキュベーションするか、又は処理しない(コントロール)ことによる、CD56+ NK細胞によって仲介される細胞障害に対するF3の効果を示す図である。x軸は、エフェクターとターゲットとの比率20:1でK562細胞の溶解をAlamar Blueアッセイによって評価したことを示し、y軸は、コントロールに対する生存のパーセンテージとして表した結果を示す。
【図49】図49は、示されている通り、100μg/mL(100μg/mL )、50μg/mL(50μg/mL )、25μg/mL(25μg/mL )、12.5μg/mL(12.5μg/mL )、6.5μg/mL(6.5μg/mL )、3.125μg/mL(3.125μg/mL )のLPSとNK細胞を7日間予めインキュベーションするか、又は処理しない(コントロール)ことによる、CD56+ NK細胞によって仲介される細胞障害に対するF3の効果を示す図である。x軸は、エフェクターとターゲットとの比率20:1でK562細胞の溶解をAlamar Blueアッセイによって評価したことを示し、y軸は、コントロールに対する生存のパーセンテージとして表した結果を示す。
【図50】図50は、示されている通り、100μg/mL(100μg/mL )、50μg/mL(50μg/mL )、25μg/mL(25μg/mL )、12.5μg/mL(12.5μg/mL )、6.5μg/mL(6.5μg/mL )、3.125μg/mL(3.125μg/mL )のF3とNK細胞を7日間予めインキュベーションするか、又は処理しない(コントロール)ことによる、CD56+ NK細胞によって仲介される細胞障害に対するF3の効果を示す図である。x軸は、エフェクターとターゲットとの比率5:1でK562細胞の溶解をAlamar Blueアッセイによって評価したことを示し、y軸は、コントロールに対する生存のパーセンテージとして表した結果を示す。
【図51】図51は、示されている通り、100μg/mL(100μg/mL )、50μg/mL(50μg/mL )、25μg/mL(25μg/mL )、12.5μg/mL(12.5μg/mL )、6.5μg/mL(6.5μg/mL )、3.125μg/mL(3.125μg/mL )のLPSとNK細胞を7日間予めインキュベーションするか、又は処理しない(コントロール)ことによる、CD56+ NK細胞によって仲介される細胞障害に対するF3の効果を示す図である。x軸は、エフェクターとターゲットとの比率5:1でK562細胞の溶解をAlamar Blueアッセイによって評価したことを示し、y軸は、コントロールに対する生存のパーセンテージとして表した結果を示す。
【図52】図52は、示されている通り、等量のPBSに対し100μg/mLのF3で予め処理した細胞において誘導されるNKのサブタイプCD56+CD3-(CD56+CD3-)、CD56+CD3+(CD56+CD3+)、CD56(CD56)における違いを示す図である。x軸上には、文字a、b、c、d、e及びfで特定される6人の個人のボランティアを示し、y軸上には、コントロールと比較した、示されているマーカーを発現する細胞の比率を示す。
【図53】図53は、RPSのTLRとの提案された結合現象によって引き起こされるシグナル経路示す第1のチャートである。
【図54】図54は、RPSのTLRとの提案された結合現象によって引き起こされるシグナル経路示す第2のチャートである。
【図55】図55は、示されているとおり、2.5μg/mLのLPS(LPS)、10μg/mLのレイシのF3(F3)を用いて、又は処理しないまま(非処理)培養し、細胞を0日目(0日目)又は3日目(3日目)に回収した、精製したマウス脾臓B細胞においてBlimp-1に特異的なプローブを用いて行われたRT-QPCRの結果を示す図である。x軸は処理及び物質を投与した時間を示し、y軸は、L32 mRNAに正規化したBlimp-1のmRNAの誘導の倍率を示す。
【図56】図56は、示されているとおり、2.5μg/mLのLPS(LPS)、10μg/mLのレイシのF3(レイシ F3)を用いて、又は処理しないまま(非処理)培養し、0日目(0日目)又は3日目(3日目)に回収し、処理した細胞を溶解し、全細胞溶解物をウェスタンブロット分析に用いた、精製したマウス脾臓B細胞においてBlimp-1モノクローナル抗体とコントロールとしてアクチン抗体を用いて行われたウェスタンブロットの結果を示す図である。第1レーンは非処理 0日目、第2レーンはLPS処理 3日目、第3レーンはレイシ F3 3日目であり、Blimp-1及びアクチン(内部のコントロール)の検出した発現を右に示す。
【図57】図57は、種々のドナー(ドナー#1)、(ドナー#2)及び(ドナー#3)に由来し、レイシのF3(F3)で6時間処理した、精製したヒト末梢B細胞においてBlimp-1に対するプライマー及びプローブのセットを用い、PPIAの発現レベルに正規化したRT-QPCRの結果を示す図である。x軸は日で表した処理の時間を示し、y軸は、PPIA mRNAに正規化したBlimp-1のmRNAの誘導の倍率として表したBlimp-1の検出した発現を示す。
【図58】図58は、10μg/mLのレイシのF3(レイシ F3)で処理し、又は処理せずにRT-QPCRを7日目に行った、単離したヒト樹状細胞においてBlimp-1に対するプライマー及びプローブのセットを用い、PPIAの発現レベルに正規化したRT-QPCRの結果を示す図である。x軸は投与した物質を示し、y軸は、PPIA mRNAに正規化したBlimp-1のmRNAの誘導の倍率として表したBlimp-1の検出した発現を示す。
【図59】図59は、示されている通り、F3(F3)、F3G1(F3G1-1、F3G1-2、F3G1-3)、F3G2(F3G2-1及びF3G2-2)、F3G2H1(F3G2H1)、F3G2H2(F3G2H2)、F3G2H1A(F3G2H1A)及びF3G2H1B(F3G2H1B)を用いて又は処理しないまま(非処理)培養したマウスマクロファージにおいてIL-1のモノクローナル抗体を用いて行ったウェスタンブロットの結果を示す図である。第1レーンは非処理、第2レーンはF3、第3レーンはF3G2H1、第4レーンはF3G2H2、第5レーンはF3G2H1A、第6レーンはF3G2H1B、第7レーンはF3G1-1、第8レーンはF3G1-2、第9レーンはF3G1-3、第10レーンはF3G2-1、第11レーンはF3G2-2であり、IL-1の検出した発現を右に示す。
【図60】図60は、示されている通り、0分(0)、10分(10)、20分(20)、30分(30)、60分(60)又は120分(120)、F3(F3)又はLPS(LPS)で培養したマウスマクロファージにおいてIRAKモノクローナル抗体を用いて行ったウェスタンブロットの結果を示す図である。第1レーンは0分、第2レーンは10分、第3レーンは20分、第4レーンは30分、第5レーンは60分、第6レーンは120分であり、投与した物質(F3又はLPS)を左に示し、IRAKの検出した発現を右に示す。
【図61】図61は、実施例22に記載されているLPSおよびF3を用いたRAW 264.7細胞の処理の概略を示すフローチャートである。
【図62】図62は、実施例22に記載されているインビトロでの亜硝酸塩アッセイに関与する反応の概略を示す図である。
【図63】図63は、RAW 264.7細胞においてLPSによって誘導される一酸化窒素の生産に対するフラクション3のバックグラウンドを引いたフラクション3(GL(PS)_Wu又はWu)の効果を示す図である。x軸は、μg/mLで表した培地に投与したフラクション3の濃度を示し、y軸は、μMで表した一酸化窒素の検出した濃度を示す。
【図64】図64は、RAW 264.7細胞においてLPSによって誘導される一酸化窒素の生産に対するフラクション3のバックグラウンドを引いたフラクション3(GL(PS)_Wu又はWu)の効果を示す図である。x軸は、μg/mLで表した培地に投与したフラクション3の濃度を示し、y軸は、LPSと共に又はLPSなしでフラクション3を用いて処理したRAW 264.7細胞における一酸化窒素の生産の、パーセンテージで表した阻害を示す。
【図65】図65は、RAW 264.7細胞に対するフラクション3(GL(PS)_Wu又はWu)の細胞障害効果を示す図である。x軸は、μg/mLで表した培地に投与したフラクション3の濃度を示し、y軸は、LPSと共に又はLPSなしでフラクション3を用いて処理したRAW 264.7細胞の、パーセンテージで表した細胞生存度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分。
【請求項2】
前記画分が糖類成分を含み、該糖類成分がα1,2−フコシド結合で結合したフコース残基を含む請求項1記載のフコース含有糖タンパク質画分。
【請求項3】
前記画分が糖類成分を含み、該糖類成分が末端のフコース残基を含む請求項1記載のフコース含有糖タンパク質画分。
【請求項4】
哺乳類細胞においてIL-1の遺伝子発現に伴う免疫調整現象を仲介する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該細胞に投与することを含む該免疫調整現象を仲介する方法。
【請求項5】
前記免疫調整現象が、インターロイキン1及び/又はその前駆体の分泌を含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量が、インターロイキン1及び/又はその前駆体の分泌の上方制御を誘導する量である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体がプロIL-1タンパク質である請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記免疫調整現象がインターロイキン1転換酵素の発現を含む請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量が、インターロイキン1転換酵素の発現の上方制御を誘導する量である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記細胞がヒトマクロファージ又はマウスマクロファージである請求項4記載の方法。
【請求項11】
前記細胞がマウス脾臓細胞である請求項4記載の方法。
【請求項12】
哺乳類細胞において炎症性サイトカインの発現を刺激する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該細胞に投与することを含む該炎症性サイトカインの発現を刺激する方法。
【請求項13】
前記炎症性サイトカインがインターロイキン1である請求項12記載の方法。
【請求項14】
哺乳類細胞において炎症性サイトカインであるインターロイキン1と関連したプロテインキナーゼ経路を調整する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該細胞に投与することを含む該プロテインキナーゼ経路を調整する方法。
【請求項15】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量が、細胞においてPKC、MEK1、PAK及び/又はMAPKsを活性化し、活性化したPKC、MEK1、PAK及び/又はMAPKsによって、複数のサイトカインの生産がもたらされる量である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記有効量が、PKC/MEK1/ERKシグナル伝達経路を活性化し、経路の活性化によって、インターロイキン1遺伝子発現の転写、転写後及び翻訳後の調節がもたらされる量である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記インターロイキン1遺伝子発現の翻訳後調節の制御がインターロイキン1転換酵素の活性化を含む請求項16記載の方法。
【請求項18】
シグナル伝達経路がPTK→PKC→MEK1→ERK経路を含む請求項16記載の方法。
【請求項19】
シグナル伝達経路がPTK→Rac1→PAK→→p38経路を含む請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記経路がPTK→Rac1→PAK→→JNKである請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記経路がPI3Kシグナル経路である請求項16記載の方法。
【請求項22】
哺乳類細胞においてTLRによって仲介される現象を誘導する方法であって、Ganoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該細胞に投与することを含む該TLRによって仲介される現象を誘導する方法。
【請求項23】
前記TLRによって仲介される現象が炎症性サイトカインの生産である請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記炎症性サイトカインがインターロイキン1である請求項23記載の方法。
【請求項25】
単核細胞の分化を調整する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該単核細胞に投与することを含む該単核細胞の分化を調整する方法。
【請求項26】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量が、細胞及び細胞の単球/マクロファージ分化においてCD14+CD26+発現の増加をもたらす量である請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量が、細胞及び細胞の樹状細胞分化においてCD83+CD1a+発現の増加をもたらす量である請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量が、細胞及び細胞のNK細胞分化においてCD16+CD56+発現の増加をもたらす量である請求項25記載の方法。
【請求項29】
NK感受性腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞障害を増大させる方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量をNK細胞に投与することを含む該NK細胞の細胞障害を増大させる方法。
【請求項30】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量が、NK感受性腫瘍細胞に対するNKの細胞障害の増大をもたらす量である請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記NK細胞が、CD3+CD56+NKT細胞またはCD3-CD56+NK細胞である請求項30記載の方法。
【請求項32】
適合する媒体、担体又は助剤中にて、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含む、哺乳類細胞においてIL-1遺伝子発現に伴う免疫調整を仲介する組成物。
【請求項33】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量がインターロイキン1及び/又はその前駆体の分泌の上方制御を誘導する量である請求項32記載の組成物。
【請求項34】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量がインターロイキン1転換酵素の発現の上方制御を誘導する量である請求項32記載の組成物。
【請求項35】
前記細胞がヒトマクロファージ、マウスマクロファージ又はマウス脾臓細胞である請求項32記載の組成物。
【請求項36】
適合する媒体、担体又は助剤中にて、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含む、哺乳類細胞において炎症性サイトカインの発現を刺激する組成物。
【請求項37】
適合する媒体、担体又は助剤中にて、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含む、哺乳類細胞において炎症性サイトカインであるインターロイキン1と関連したプロテインキナーゼ経路を調整する組成物。
【請求項38】
前記有効量が、細胞においてPKC、MEK1、PAK及び/又はMAPKsを活性化し、活性化したPKC、MEK1、PAK及び/又はMAPKsによって、複数のサイトカインの生産がもたらされる量である請求項37記載の組成物。
【請求項39】
前記有効量が、PKC/MEK1/ERKシグナル伝達経路を活性化し、経路の活性化によって、インターロイキン1遺伝子発現の転写、転写後及び翻訳後の調節がもたらされる量である請求項37記載の組成物。
【請求項40】
前記インターロイキン1遺伝子発現の翻訳後調節の制御が、インターロイキン1転換酵素の活性化を含む請求項37記載の組成物。
【請求項41】
適合する媒体、担体又は助剤中にて、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含む、哺乳類細胞においてTLRによって仲介される現象を誘導する組成物。
【請求項42】
前記TLRによって仲介される現象が、細胞におけるインターロイキン1の生産である請求項41記載の組成物
【請求項43】
適合する媒体、担体又は助剤中にて、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含む、単核細胞の分化を調整する組成物
【請求項44】
前記有効量が、細胞及び細胞の単球/マクロファージ分化においてCD14+CD26+発現の増加をもたらす量である請求項43記載の組成物。
【請求項45】
前記有効量が、細胞及び細胞の樹状細胞分化においてCD83+CD1a+発現の増加をもたらす量である請求項43記載の組成物。
【請求項46】
前記有効量が、細胞及び細胞のNK細胞分化においてCD16+CD56+発現の増加をもたらす量である請求項43記載の組成物。
【請求項47】
適合する媒体、担体又は助剤中にて、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含む、NK感受性腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞障害を増大させる組成物。
【請求項48】
前記NK細胞が、CD3+CD56+NKT細胞またはCD3-CD56+NK細胞である請求項47記載の組成物。
【請求項49】
哺乳類細胞でのサイトカインの発現を活性化する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該細胞に投与することを含む、該サイトカインの発現を活性化する方法。
【請求項50】
サイトカインが、IL-1、IL6、IL-12、IFN-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF及びM-CSFから成る群より選択される請求項49記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を含む、哺乳類細胞でのサイトカインの発現を活性化する組成物。
【請求項52】
マウス脾臓B細胞又はヒトB細胞でのBlimp 1の発現を活性化する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該細胞に投与することを含む、該Blimp 1の発現を活性化する方法。
【請求項53】
ヒト成熟樹状細胞でのBlimp 1の発現を活性化する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該細胞に投与することを含む、該Blimp 1の発現を活性化する方法。
【請求項54】
前記フコース含有糖タンパク質画分の有効量が、細胞においてBlimp-1のmRNAを誘導する請求項53記載の方法。
【請求項55】
マクロファージにおいてLPSによって誘導される一酸化窒素の生産を阻害する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該マクロファージに投与することを含む、該一酸化窒素の生産を阻害する方法。
【請求項56】
脾臓細胞の増殖を活性化する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該脾臓細胞に投与することを含む、該脾臓細胞の増殖を活性化する方法。
【請求項57】
脾臓細胞のプロテオームを改変する方法であって、少なくとも1種の多糖とフコース残基を有する糖ペプチドとを含むGanoderma Lucidum(レイシ)の抽出物のフコース含有糖タンパク質画分の有効量を該脾臓細胞に投与することを含む、該脾臓細胞のプロテオームを改変する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【公表番号】特表2008−517100(P2008−517100A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536927(P2007−536927)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/036961
【国際公開番号】WO2006/044616
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(307039835)
【Fターム(参考)】