説明

HCVのマクロ環状プロテアーゼ阻害剤を製造するための方法および中間体

【化1】


本発明は、マクロ環状HCV阻害剤を製造するための中間体の製造において有用なシンコニジン塩、ならびにこの塩を必要とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)のマクロ環状プロテアーゼ阻害剤の合成操作および合成中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)は慢性肝炎の主要原因であり、これは、肝硬変、末期肝臓病およびHCC(肝細胞がん腫)を惹起する肝線維症に進む可能性があるので、それを肝臓移植の主因にさせている。リバビリン(ribavirin)との組み合わせにおける(ペグ化)インターフェロン−α(IFN−α)に基づく現在の抗HCV療法は、限られた効力、有意な副作用という難点があり、そして多くの患者において許容されるには至らない。このことが、より有効な、便利な、かつより良好に許容される療法に対する探索を促進した。
【0003】
HCVのゲノムの複製は、多数の酵素、なかんずく、HCV NS3セリンプロテアーゼおよびその関連コファクター、NS4Aである酵素によって媒介される。この酵素を阻害する種々の作用物が記されている。特許文献1は、中心置換プロリン部分をもち、そして特許文献2は、中心シクロペンチル部分をもつ、直鎖状およびマクロ環状NS3セリンプロテアーゼ阻害剤を開示している。これらの中でも、マクロ環状誘導体は、HCVに対するそれらの顕著な活性および魅力ある薬動学的プロフィルに魅かれる。
【0004】
特許文献3は、後に提示される構造を有する、式(I)の化合物を含むマクロ環状シクロペンチルおよびプロリン誘導体を記述している。式(I)の化合物はHCVセリンプロテアーゼの非常に効果的な阻害剤であり、そしてその良好な薬動学的プロフィルにより特に魅力的である。その性質のために、この化合物は抗HCV薬物として開発するための潜在的候補として選択された。その結果、高い収率で、かつ高い純度をもつ生成物を提供する方法に基づく、より多量なこの有効成分を生産するニーズが存在する。特許文献4は、式(I)の化合物を製造する方法および中間体を記述している。
【0005】
【化1】

【0006】
式(I)の化合物は、中間体(VI)から出発して製造することができるが、この場合、エステル官能基が加水分解されてカルボン酸(V)を生成し、これが次に、アミド形成反応においてシクロプロピルアミノ酸(Va)と結合される。得られる中間体(IV)は、例えばイリデンRuに基づく触媒のような適当な金属触媒の存在下でオレフィンメタセシス反応によって環化される。得られるマクロ環状エステル(III)は、次いで、マクロ環状酸(IV)に加水分解される。後者は、アミド形成反応においてスルホニルアミド(V)と結合して、最終生成物(I)を生成する。これらの反応が以下の反応スキームにおいて概説される。これおよび続く反応スキームまたは個々の化合物の説明において、RはC1−4アルキルであり、特に、RはC1−3アルキルであり、より特に、RはC1−2アルキルであり、あるいは1つの実施態様では、Rはエチルである。RはC1−4アルキルであり、特に、RはC1−3アルキルであり、より特に、RはC1−2アルキルであり、あるいはRはメチルであるか;またはRはエチルである。
【0007】
【化2】

【0008】
次に、中間体(VI)は、特に、式(Xa)のヒドロキシシクロペンチルビス−エステルから出発して特許文献4に記述の操作を使用し、次に示す反応スキームにおいて概説されるように、次のいずれか
(a)エーテル形成反応においてチアゾリル置換キノリノール(VII)と式(Xa)のヒドロキシシクロペンチルビス−エステルを反応させて、式(XII)のキノリニルオキシシクロペンチルビス−エステルを得るが、ここで、式(XII)のキノリニルオキシ−シクロペンチルビス−エステルにおいてエーテル基とシス位に向かい合うベンジルエステ
ル基は、選択的にモノカルボン酸(XI)に切断され、これが次に、アミド形成反応においてアルケニルアミンと結合して、式(VI)の所望の最終生成物を得る;あるいは
(b)式(Xa)のヒドロキシシクロペンチルビス−エステルを、選択的にモノカルボン酸(IX)に転化させ、これを次に、アミド形成反応においてアルケニルアミンと結合させて、ヒドロキシシクロペンチルアミド(VIII)を生成し、これを次に、チアゾリル置換キノリノール(VII)と反応させて、式(VI)の所望の最終生成物を得る;
ことによって製造することができる。
【0009】
【化3】

【0010】
上記スキームに示される方法における各Rは、先に特定されており、好ましくは、Rはメチルである。Bnはベンジルを表す。
【0011】
式(I)の化合物およびその先行物における種々のキラル中心の存在は、キラル純度が
治療用途のために許容しうる生成物を得るのに必須である点で特殊な挑戦を提出する。中間体(VI)は3個のキラル中心を有し、そしてすべて3個の中心について正確な立体化学性を得ることは、この化合物を製造することを目的とするいかなる合成方法にとっても重要な挑戦である。したがって、(VI)を製造する方法は、望ましくない立体異性形態の実質的量の喪失とともに、扱い難い精製操作の使用をせずに許容できるキラル純度をもつ生成物を生成することが必要である。
【0012】
特許文献4は中間体(Xa)の合成操作を記述しているが、これは4−オキソ−シクロペンチル−1,2−ビス−カルボン酸(XVII)から出発し、そのケト官能基をアルコールに還元することによって4−ヒドロキシ−シクロペンチル−1,2−ビス−カルボン酸(XVI)を得て、これを次に二環式ラクトン(XV)に環化し、ここで、二環式ラクトンのカルボン酸基はベンジルアルコールによりエステル化されて、ラクトンベンジルエステル(XIV)を得る。後者のラクトンは、C1−4アルカノールの存在下でエステル交換反応によって開かれて式(X)のヒドロキシシクロペンチルビス−エステルを生成し、これが次に、鏡像異性体(Xa)および(Xb)に分割される;これは次に示す反応スキーム:
【0013】
【化4】

【0014】
において概説される。
【0015】
上記スキームに示される方法における各Rは、先に特定されており、好ましくは、Rはメチルである。
【0016】
上記方法の欠点は、それがキラルカラムクロマトグラフィー(大規模生産において作動させるのが困難な操作である)による(X)の鏡像異性体の分割を必要とすることである。
【0017】
非特許文献1は、次の出発物質:
【0018】
【化5】

【0019】
を使用する、(±)−ブレフェルジン(brefeldin)Aの合成を記述している。
【0020】
Hondaらの合成は、dl−トランス−4−オキソシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸から出発し、これが、対応するメチルエステルにエステル化され、そしてRaney−Niによりアルコールに還元される。モノカルボン酸へのの部分加水分解および臭化ベンジルによるベンジル化は、主としてジアステレオ異性体、すなわちヒドロキシとベンジルエステル基がシス位に存在するジアステレオ異性体を与える。後者のHondaらのエステルおよび化合物(X)は、ともにラセミ化合物であるが、互いのジアステレオ異性体、より正確には、ヒドロキシ基を有する炭素no.4におけるエピマーである。化合物(Xa)は、ラセミ化合物(X)からの分離によって得られる2つの鏡像体の1つである。他の鏡像体は化合物(Xb)である。
【0021】
特許文献1は、3,4−ビス(メトキシカルボニル)シクロペンタノンの鏡像体から出発する鏡像体として純粋な二環式ラクトン(8b)の合成を記述している。後者は、非特許文献2によって記述されるように製造された。トランス(3R,4R)−3,4−ビス(メトキシカルボニル)シクロペンタノン異性体が二環式ラクトン(8b)に変換された。
【0022】
【化6】

【0023】
さらに、特許文献1は、ラクトンを開裂し、そして適当に保護されたアミノ酸、例えば(1R,2S)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステルと結合させる、ラクトン(8b)のt.Buエステルへのさらなる変態を記述しており、後者の例では
【0024】
【化7】

【0025】
を得る。
【0026】
式(I)の化合物の構築は、必然的に、エーテル結合を通してシクロペンチル環上にチアゾリル置換キノリン部分を導入することを伴う。Mitsunobu反応は、芳香族アルキルエーテルを製造するために魅力的な反応経路を提案していて、ここでは、アルキルエーテルが活性化され、そしてフェノールと反応される。さらに、Mitsunobu反応は、一般に、さらなる合成段階を要するO−アリール化反応よりも効率的である。この緩和な反応では、アルキル部分の立体化学性が反転される。反応は、R’OOC−NH−NH−COOR’[式中、R’はC1−4アルキル、特にエチルまたはイソプロピルである]、他の窒素含有化合物および酸化トリフェニルホスフィンのような副生成物を生じ、これらは所望の最終生成物から分離する必要がある。
【0027】
本発明の方法は、それらが大規模生産に適する点で得策である。特にクロマトグラフィーによる面倒な精製段階が避けられる。式(I)の化合物の合成において必須なのは、その3個のキラル中心において正しい立体化学性をもつシクロペンチル部分の構築である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】WO 05/073195
【特許文献2】WO 05/073216
【特許文献3】WO 2007/014926
【特許文献4】WO 2008/092955
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Honda et al.,Tetrahedron Letter,vol.22,no.28,pp2679−2682,1981
【非特許文献2】Rosenquist et al.,Acta Chemica Scandinavica 46(1992)1127−1129
【発明の概要】
【0030】
本発明の態様の1つは、大規模な工業的応用に適する、高収率で、かつ特にキラル純度に関して高純度における中間体(VIII)を製造するための方法に関する。
【0031】
本発明は、高収率かつ高純度において、正しい立体化学性をもつシクロペンチル中間体を製造するための操作を提供することを目的とする。特に、本発明は、式(I)の化合物を製造するための操作において用途を見い出す中間体
【0032】
【化8】

【0033】
の製造に関する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1つの態様では、本発明は、シンコニジン塩(XXa)から出発し、これがアミド形成反応においてN−メチル−ヘキセンアミン(NMHA)(XIX)と反応されて二環式ラクトンアミド(XVIII)を生成し、ここで、ラクトン基が開かれて所望の生成物(VIII)を生成する、式(VIII)の化合物を製造する方法に関する。これらの反応は以下のスキームにおいて具体的に説明され、ここでRは先に特定されたとおりである。
【0035】
【化9】

【0036】
さらなる態様では、本発明は、(XXa)の選択的結晶化によるジアステレオ異性体塩混合物(XX)の分割によって得られるシンコニジン塩(XXa)の製造に関する。次いで、この塩(XX)は、ラセミの二環式ラクトンカルボン酸(XV)のシンコニジン塩を形成させることによって得られるが、これは次に示す反応スキームにおいて概説される:
【0037】
【化10】

【0038】
なおさらなる態様では、本発明は、式
【0039】
【化11】

【0040】
のシンコニジン塩に関する。
【0041】
この塩は、中間体(VIII)の製造における中間体として、したがってまた、HCV阻害剤(I)の製造において有用である。
【0042】
本発明の合成操作は、シクロペンチル部分における正確な立体化学性が得られ、そしてこれがキラルクロマトグラフィーを使用せずに得られるという長所を提供する。シンコニジン塩(XXa)は高いキラル純度をもって選択的に結晶化することが見い出された。
【0043】
シンコニジン塩(XXa)とNMHA(XIX)との反応は、アミド形成反応であり、これは、反応に不活性な溶媒中、場合によっては塩基の存在下で、出発物質をアミドカップリング剤と反応させることを含む。使用できる溶媒は、ジクロロメタン(DCM)またはクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)または2−メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)のようなエーテル、メタノールまたはエタノールのようなアルコール、トルエンまたはキシレンのような炭化水素溶媒、DMF、DMA、アセトニトリルのような双極性非プロトン性溶媒、またはそれらの混合液を含む。ジクロロメタン、MeTHF、メタノール、エタノール、トルエン、またはそれらの混合液が好適である。アミドカップリング剤は、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、N−イソプロポキシカルボニル−2−イソプロポキシ−1,2−ジヒドロキノリン、特にその塩酸塩、(IIDQ)、ヘキサフルオロリン酸N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)ウロニ
ウム、ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾル−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム(PyBOP(R)として市販)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDIまたはEDCI)ならびにその塩酸塩、ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)または1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、ヘキサフルオロリン酸O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム(HBTU)などを含む。触媒、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)または4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が添加されてもよい。反応は、通常、塩基、特に第3級アミンのようなアミン塩基、例えばトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、(後者はまたHuenig塩基、DIPEAまたはDIEAと呼ばれる)の存在下で実施される。好ましくは、塩基は使用されない。1つの実施態様では、反応は、反応混合液の還流温度において、場合によっては反応の末期にメタノールを添加して、EEDQを用いてDCMまたはMeTHF中で実施される。
【0044】
その他の実施態様では、塩(XXa)はシンコニジンおよび二環式ラクトンに分けられてもよく、そして後者は上記のようにアミド形成反応においてNMHAと反応することができる。シンコニジン塩(XXa)それ自体がアミド形成反応において使用でき、そして後に、シンコニジンは、反応混合液の仕上げにおいて、例えば後者をHClのような酸により処理し、そして副生成物を水相で洗浄することによって容易に除去できることが見い出された。
【0045】
得られる二環式ラクトンアミド(XVIII)におけるラクトン官能基は、アルコールを用いるエステル交換反応によって開かれ、これがまた、酸の存在下で、溶媒、特にメタノールまたはエタノールのようなC1−4アルカノールとして役立てられてもよい。使用できる酸は、スルホン酸、特にメタンスルホン酸のような強い有機酸である。エーテル、特にTHFまたはMeTHFのような溶媒、あるいはトルエンまたはキシレンのような炭化水素溶媒が添加されてもよい。エステル交換反応は使用されるアルコールのエステルを生成する、例えば、メタノール中で反応が実施される場合は、メチルエステルが形成される。
【0046】
次いで、シンコニジン塩(XX)は、ラセミの二環式ラクトンカルボン酸(XV)をシンコニジンと処理することによって製造できる。典型的には、ラセミ塩(XX)は単離されないが、溶液中に保たれ、その間に所望の異性体(XXa)が晶出される。1つの実施態様では、シンコニジンの懸濁液がやや高い温度において(XV)の溶液に添加され、続いて混合液を冷却させ、それによって所望の塩(XXa)が晶出する。さらなる精製が再結晶化を含んでもよい。(XV)を溶解するために適当な溶媒は、酢酸エチルのようなエステル溶媒を含み、一方、シンコニジン懸濁液のために適当な溶媒はアセトニトリルを含む。1つの実施態様では、塩形成は約50〜約70℃の温度、特に約60℃で実施され、そして混合液はほぼ室温、例えば約20〜約25℃の範囲の温度、例えば約22℃において冷却される。さらなる精製は、適当な溶媒または溶媒混合液、特にC1−4アルカノールのようなアルコール、例えばイソプロパノールからの再結晶化によるか、あるいは溶媒または溶媒混合液、例えば5%/95%(w/w)水/エタノール混合液のようなエタノール/水混合液中に再スラリー化することによって実施することができる。
【0047】
塩(XXa)が結晶化によって単離できるという発見は、高い鏡像体純度において二環式ラクトンを得る優れた方法を提供する。再結晶化または再スラリー化は、この塩のさらなる精製を可能にする。(XXa)は、前述のように中間体(XVIII)および(VIII)のさらなる合成において出発材料として使用できる。次に後者は、中間体(VI)、式(I)の化合物の製造における重要な構築ブロックに転化することができる。
【0048】
ラセミの二環式ラクトンカルボン酸(XV)は、WO2008/092955に記述され、かつ(Xa)および(Xb)の製造を具体的に説明するスキームにおいて先に概説されたように製造される。特に、(XV)は、ケトシクロペンタンビスカルボン酸(XVII)を対応するヒドロキシシクロペンタンビスカルボン酸(XVI)に還元され、これが続いてラクトン形成によって(XV)に転化されることによって製造される。(XVIII)におけるヒドロキシへのケトの還元は、反応に不活性な溶媒、例えば水中で、貴金属触媒、例えば炭素に担持されたロジウム(Rh/C)またはRaney Niの存在下、水素によって実施することができる。得られるヒドロキシシクロペンタンビスカルボン酸(XVI)は、塩、例えばトリエチルアミン塩のような第3級アミン塩に転化できる。
【0049】
(XVII)のラクトン形成を経る環化は、クロロギ酸エステル、例えばクロロギ酸エチルまたはメチルとの反応によって実施できる。この反応は、ケトン、特にアセトンのような反応に不活性な溶媒、またはTHFまたはMeTHFのようなエーテル、またはアセトニトリル中で実施される。塩基、例えば、トリエチルアミンのような第3級アミンが添加されてもよい。
【0050】
【化12】

【0051】
1つの実施態様では、本発明は、式(I)の化合物の製造における中間体としての式(XX)または(XXa)の化合物の使用、またはそれの塩に関する。
【0052】
その他の実施態様では、本発明は式(XX)または(XXa)の化合物それ自体に関する。これらの化合物は単離された形態または溶液において存在してもよい。特に、式(XX)または(XXa)の化合物は固体形態において単離される。
【0053】
式(I)の最終生成物への式(VIII)の化合物のさらなる処理は、前記反応スキームおよび特にWO2008/092955において概説されたとおりである。さらなる処理はMitsunobu反応を含み、これはヒドロキシ基を担持しているシクロペンチル炭素の立体化学性の反転を必要とする。
【0054】
式(VI)の中間体は、特にアルコール性溶媒と混合された場合に、より特にC1−4アルカノールと混合された場合に結晶化することができる。式(VI)の中間体の結晶化は、この化合物ならびに続く操作段階でそれから誘導されるすべての化合物の純度のコントロールを可能にする。特に、この性質は、より高い鏡像異性体純度における式(VI)の中間体の製造を可能にする。
【0055】
中間体(VI)のこの結晶化は、これらの化合物を生成するMitsunobu反応の副生成物の除去のみならず、単純な方法でその反応混合物からの続いての中間体(VI)の分離も可能にする。この分離は、溶媒の変更を実施することによって、特に、Mitsunobu反応から得られる反応混合液にアルコール溶媒を添加することによって、いかなるさらなる反応混合物またいかなるその成分をも操作することなく、容易に実施される。さらに、中間体(VI)は、副生成物が存在していてもアルコール溶媒中では溶解しないので、このことが、反応混合物からの中間体(VI)の直接精製を提供する。
【0056】
これ以前および以後に使用されるように、別に指示されない限り、次に示す定義が適合する。用語ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードに対する一般名である。用語「C1−4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピルを定義する。「C1−3アルキル」は、メチル、エチル、1−プロピルおよび2−プロピルに対する一般名である。「C1−3アルキル」は、メチルおよびエチルに対する一般名である。用語「C1−4アルカノール」は、C1−4アルキル基から誘導されるアルコールを指す。
【0057】
ここにまた付け加えられる立体化学的化合物を表す一般的に受け入れられる慣例は、次の通りである:
− ステレオボンドなしに表される化合物、例えば化合物(XV)はラセミ体であるか、または立体形成中心の配置が定義されない。
− ステレオボンドおよび記述子「(±)」、「rel」、または「rac」の1つにより表される化合物はラセミ体であり、そして立体化学性は相対的である。
− ステレオボンドをもつが記述子「(±)」、「rel」、または「rac」なしに表される化合物は非ラセミ化合物(scalemic substance)またはenantio−enrichedを指す、すなわち立体化学性は絶対的である。
【0058】
例えば、Hondaらの引用文献では、命名「(±)」は項目の表題において使用され、ラセミ中間体によるラセミ合成が記述されていることを意味する。しかしながら、上記慣例はすべての出版物において必ずしも追随されているものではない。
【0059】
キラル純度は鏡像異性体比率(e.r.)として与えられる。塩では、e.r.値はジアステレオマー混合物における2種の鏡像体の比を指す。例えば、中間体(XV)参照。
【0060】
ある実施態様では、数値に関して使用される場合の用語「約(about)」は、正確な値が意味されるように省かれてもよい。その他の実施態様では、この用語は、それが結合されている数値±10%、または±5%、または±1%を意味してもよい。
【実施例】
【0061】
次に示す実施例は本発明を具体的に説明することを意図しており、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。
【0062】
例1
【0063】
【化13】

【0064】
窒素雰囲気下で水237.5ml中中間体(XVII)(ラセミ)の32.7g(0.19mol)の懸濁液に、50%wt/wtNaOH水溶液1.0ml(0.019mol)を添加した。混合液を60℃まで加温し、Rh/C(5%wt/wt)2.5gを添加した。反応フラスコに水素をパージし、そして完全な転化が達成されるまで水素雰囲気下で撹拌した。温かい反応混合液をCelite上で濾過した。濾過ケーキを水10mlで2回洗浄した。トリエチルアミン(55.61ml,0.40mol)を添加し、溶媒
容量の80%を30mbarの圧力下で溜去した。反応フラスコを2−メチル−テトラヒドロフランを満たされるDean−Starkトラップに固定した。2−メチルテトラヒドロフラン(100ml)を反応フラスコに添加し、これを4時間還流して残存する水を除去した。溶媒容量の80%を周囲圧力下で溜去した。混合液を50℃まで冷却し、そしてアセトン(380ml)を添加した。混合液をさらに22℃まで冷却し、再びアセトン(760ml)を添加した。得られる懸濁液を窒素雰囲気下で−5℃まで冷却し、そしてトリエチルアミン(27.8ml,20.24g,0.2mol)を添加した。次いで、クロロギ酸エチル(22.68g,0.21mol)を滴下し、混合液を0℃で3時間撹拌した。反応混合液を22℃に加温し、さらに12時間撹拌し、次いで、dicalite上で濾過し、そして固形物をアセトン(100ml)で洗浄した。アセトン中(XV)の得られる溶液を次の実施例で使用して、そのシンコニジン塩を製造した。
【0065】
例2:シンコニジン塩(XXa)の製造
【0066】
【化14】

【0067】
方法1
溶媒容量の約80%を大気圧下で溜去した。酢酸エチル(190ml)を添加し、そして有機溶液をHCl水溶液(2M,114ml)で洗浄して、酢酸エチル中(XV)の溶液を得た。酢酸エチル中(XV)の溶液を60℃においてアセトニトリル(760ml)中シンコニジン(55.94g,0.19mol)の懸濁液に添加した。得られる混合液を60℃で10分間撹拌し、次いで22℃まで冷却し、濾過した。固体をイソプロパノール(1500ml)から再晶出させて、乾燥後白色固体の24.8g(収率29%)を得た。キラル純度:e.r.:89/11
【0068】
H−NMR(DMSO−d6−400MHz),δppm 1.45−1.86(m,6H),1.93−2.19(m,3H),2.32(br s,1H),2.56−2.80(m,2H),2.90−3.07(m,2H),3.12−3.29(m,1H),3.30−3.52(m,1H),4.93−5.03(m,3H),5.52(d,J=5.6Hz,1H),5.80−5.89(m,1H),7.5(d,J=4.2Hz,1H),7.6(t,J=5.6Hz,1H),8.0(d,J=9.3Hz,1H),8.3(d,J=8.1Hz,1H),8.8(d,J=4.6Hz,1H),
【0069】
方法2
溶媒容量の約80%を大気圧下で溜去した。酢酸エチル(522ml)を添加し、そして溶媒容量の約50%を溜去した。残液を22℃まで冷却し、酢酸エチル(180ml)を添加した。得られる懸濁液を濾過し、そして濾液をアセトニトリル(760ml)中シンコニジン(55.94g,0.19mol)の懸濁液に添加した。この混合液を60℃まで加温し、10分間撹拌し、次いで22℃まで冷却し、濾過した。固体をイソプロパノール(1500ml)から再晶出させて、乾燥後白色固体の24.8g(収率29%)を得た。キラル純度:e.r.:90/10
【0070】
方法3
方法2の操作に従うが、アセトニトリル(760ml)中シンコニジン(55.94g,0.19mol)の懸濁液を、イソプロパノール(325ml)とエタノール(325ml)中シンコニジン(55.94g,0.19mol)の懸濁液に変更して、白色固体の24.8g(29%)を得た。キラル純度:e.r.:92/8
【0071】
(XXa)の化学的純度ならびにe.r.は、次の3操作に記述されるように、塩の再結晶化または再スラリー化のいずれかによっても増加させることができる。
【0072】
粗(XXa)(化学的純度:酸滴定 96.2%、塩基滴定 102.2%;キラル純度:e.r.:78.7/21.3)の12gを、還流する2−プロパノール500ml中に溶解した。混合液を徐々に冷却させた。晶出が自然に始まらない場合は、40℃で混合液に(XXa)の種晶を添加し、次いで、この温度で2時間撹拌した。室温まで冷却後、混合液をさらに2時間撹拌し、濾過し、そして2−プロパノール50mlで洗浄して、50℃で真空乾燥後、白色生成物5.51gを得た。化学的純度:酸滴定 99.6%、塩基滴定 98.4%;キラル純度:e.r.:88.1/11.9
【0073】
e.r.:87.0/13.0を有する(XXa)5.3gおよびe.r.:90.6/9.4を有する(XXa)0.5gの混合物を水5wt%を含有する還流エタノール160ml中に溶解した。清澄溶液を徐々に冷却させた。晶出が自然に始まらない場合は、45℃で混合液に(XXa)の種晶を添加した。室温まで冷却後、混合液をさらに14時間撹拌し、濾過し、そして水5wt%を含有するエタノール10mlで洗浄して、50℃で真空乾燥後、白色生成物4.21gを得た。キラル純度:e.r.:96.5/3.5
【0074】
e.r.:87.0/13.0を有する(XXa)25gおよびe.r.:90.6/9.4を有する(XXa)2.5gの混合物を、水5wt%を含有するエタノール160ml中で加熱還流した。還流1時間後、スラリーを2時間かけて室温まで冷却させ、そしてさらに14時間撹拌した。次いで、混合液を濾過し、そして水5wt%を含有するエタノール15mlで洗浄して、50℃で真空乾燥後、白色生成物22.96gを得た。キラル純度:e.r.:97.6/2.4
【0075】
例3:(XVI)およびそのトリエチルアミン塩(XVIa)の製造
【0076】
【化15】

【0077】
(a)(XVII)344mg(2mmol)および水酸化テトラメチルアンモニウム5水和物725mg(4mmol)を、メタノール2.5mlおよびMeTHF2.5mlの混合液中に溶解した。この溶液を、触媒として湿潤炭素担持の5%ロジウム82mgの存在下、水素雰囲気下の室温で一夜撹拌した。触媒を濾別し、そして濾液をメタノールにより100mlの最終容量まで希釈した。LC分析では、46%(XVI)がそのビス(テトラメチルアンモニウム)塩として形成され、一方41%(XVII)がそのビス(テトラメチルアンモニウム)塩としてなお存在することが分かった。
【0078】
(b)水中6.6wt/wt%(XVI)溶液の400gに、トリエチルアミン44.4mlを添加した。溶媒330gを真空下で溜去し、次いで油状残渣を50℃まで冷却させ、そしてアセトン51.5mlを添加して懸濁液を得た。この懸濁液を室温まで冷却し、さらなるアセトン155mlを添加した。懸濁液を5℃まで冷却し、そしてその温度で一夜撹拌した。固形物を濾過し、冷アセトンで洗浄し、真空下70℃で乾燥して、白色結晶粉末として、種々の量のトリエチルアミンをもつその錯体(XVIa)としての(XVI)15.05gを得た。収率:37%。例えば、1/3または2トリエチルアミンをもつその錯体としての(XVI)を得ることができた。
【0079】
【化16】

【0080】
式中、xは1/3〜3の間である、例えばxは1/3である;xは2である。
【0081】
(XVIa)の精製
(a)粗(XVIa)2.00gをアセトン10.4ml中に懸濁し、その懸濁液を還流させ、その後室温まで冷却させた。固形物を濾過し、アセトンで洗浄し、真空下50℃で乾燥して、白色粉末として純(XVIa)210mgを得た。収率:35%。
【0082】
(b)粗(XVIa)2.00gをブタノール10.4ml中に懸濁し、その懸濁液を還流させ、その後室温まで冷却させた。固形物を濾過し、アセトンで洗浄し、真空下50℃で乾燥して、白色粉末として精製(XVIa)190mgを得た。収率:14%。
【0083】
例4:(XVIII)の製造
【0084】
【化17】

【0085】
(a)(XXa)(e.r.:90/10)14.18g(31.5mmol)、NMHA3.92g(34.6mmol)およびEEDQ8.56g(34.6mmol)を、DCM157ml中に懸濁し、得られた懸濁液を一夜還流させた。メタノール47.2mlを添加し、そして還流を一夜継続した。次いで、反応混合液を真空濃縮し、残渣をトルエン47mlと1MHCl水溶液79ml間に分配した。有機層を水31.5ml、1MNaOH水溶液31.5mlおよび水31.5mlで連続して洗浄し、次いで、真空濃縮して粗(XVIII)(e.r.90/10)11.93gを得て、これを精製することなく次の段階で使用した。
【0086】
(b)(XXa)2.50g(5.55mmol)、NMHA691mg(6.10mmol)およびEEDQ1.51g(6.10mmol)を、THF28ml中に懸濁し
、この懸濁液を2日間還流した。トルエン22mlを添加し、そして溶媒28mlを溜去した。50−60℃に冷却後、1NHCl水溶液19.4mlを添加し、2層を分離した。有機層を水5.6mlで洗浄し、次いで、真空濃縮し、その残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、(XVIII)910mgを得た。収率:65%。
【0087】
H−NMR(CDCl,600MHz,2種の回転異性体の存在,比55/45):ppm 1.26−1.38(m,2H),1.43−1.60(m,2H),2.01(m,2H),2.07−2.21(m,4H),2.86(s,3H−少量の回転異性体),2.89−2.97(m,2H),2.97(s,3H−多量の回転異性体),3.21(ddd,1H−少量の回転異性体,J=14.7,9.1,5.8Hz),3.29(m,1H−少量の回転異性体),3.31(t,2H,J=7.6Hz−多量の回転異性体),4.87−4.93(m,2H),4.96(d,1H,J=16.2Hz),5.71(m,1H).
13C NMR(CDCl,150MHz,2種の回転異性体の存在):多量の回転異性体:ppm 25.86,26.39,33.24,33.94,35.17,37.43,37.97,45.71,47.95,80.67,114.71,138.26,170.91,177.33−少量の回転異性体:ppm 25.7,27.72,33.14,33.69,34.29,36.72,38.02,46.19,49.61,80.64,115.22,137.73,171.17,177.28.
【0088】
(c)(XXa)(e.r.:97.6/2.4)17.85g(39.6mmol)、4.71g(41.6mmol)およびEEDQ10.78g(43.6mmol)を、MeTHF 198ml中に懸濁した。この懸濁液を2日間還流し、次いで、室温まで冷却した。固形物質(ほとんどシンコニジンからなる)を濾別して除き、トルエンで洗浄した。合わせた濾液に水40mlおよび濃HCl 7.14mlを添加した。得られる2層を分離し、有機層を水20mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空濃縮した。その残渣をシリカゲルを通してクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル−ヘプタン:65/35)によって精製して、油状物として(XVIII)9.35gを得た。収率:68%。
【0089】
例5:Rがメチルである式(VIII)の中間体である(VIIIa)の製造
【0090】
【化18】

【0091】
(a)(XVIII)1.05g(4.2mmol)をメタノール25ml中に溶解した。メタンスルホン酸0.014ml(0.2mmol)を添加し、反応混合液を室温で3日間撹拌した。揮発物を真空下で除去し、そして残渣をトルエン−0.33M NaOH水溶液の混合液各15ml)中に再溶解した。層を分離し、その有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空濃縮して油状物として粗(VIIIa)330mg(収率:28%)を得た。
【0092】
(b)(XXa)20.0g(44.4mmol)、NMHA5.53g(48.8mmol)およびEEDQ12.08g(48.8mmol)を、メタノール222ml中
に懸濁した。この混合液を24時間還流し、次いで。トルエン178mlを添加した。溶媒250mlを溜去し、得られる懸濁液を30℃に冷却した。1MHCl水溶液155mlを添加し、2層を分離した。水層をトルエン44mlで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して、トルエン中4.1wt/wt%(VIIIa)溶液の122.78gを得た。収率:40%。
【0093】
(c)トルエン中4.1wt/wt%(VIIIa)溶液の18.42gを真空濃縮し、その残渣をフラッシュクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル−DCM:15/85)によって精製して、化学的に純粋な(VIIIa)680mgを得た。
【0094】
(d)(XXa)(e.r.:92.4/7.6)44.06g(97.8mmol)、NMHA12.18g(107.6mmol)およびEEDQ26.60g(107.6mmol)を、メタノール490ml中に懸濁した。この混合液を一夜還流し、次いで。トルエン391mlを添加し、溶媒の750mlを溜去した。水156mlおよび濃HCl30.8mlをこの残渣に添加した。得られる2層を分離し、そして水層をトルエン98mlで、次にMeTHF98mlで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して、MeTHF−トルエン中3.6wt/wt%(VIIIa)溶液384gを得た。収率:50%。
【0095】
(e)(XXa)(e.r.:93.4/6.6)19g(42.2mmol)、NMHA5.01g(44.3mmol)およびEEDQ11.46g(46.4mmol)を、THF210ml中に懸濁した。この懸濁液を一夜還流し、次いで、室温まで冷却した。固形物質(ほとんどシンコニジン)を濾別し、トルエン84mlで洗浄した。合わせた濾液に、水42mlおよび濃HCl 7.6mlを添加した。2層を分離し、有機層を水21mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空濃縮した。その残渣をメタノール84ml中に溶解し、メタンスルホン酸0.14mlを添加し、そしてこの溶液を室温で一夜撹拌し、次いで24時間還流した後室温まで冷却した。炭酸ナトリウム223mgを添加し、この混合液を室温で1時間撹拌した。トルエン295mlを添加し、そして溶媒160mlを溜去して、トルエン中5.3wt/wt%(VIIIa)溶液184.9gを得た。収率:82%。
【0096】
(f)(XXa)(e.r.:93.4/6.6)19g(42.2mmol)、NMHA5.34g(47.2mmol)およびEEDQ12.51g(50.5mmol)を、トルエン210ml中に懸濁した。この懸濁液を2日間還流し、次いで、室温まで冷却した。定量分析では、(XVIII)の80%インサイチュー収率であった。固形物質(ほとんどシンコニジン)を濾別し、トルエン42mlで洗浄した。合わせた濾液に、水42mlおよび濃HCl 7.6mlを添加した。2層を分離し、有機層を水21ml、次にブライン21mlで洗浄し、そして溶媒206mlの溜去によって濃縮した。この濃縮液に、メタノール84mlおよびメタンスルホン酸0.14mlを添加した。得られる溶液を室温で一夜撹拌した。炭酸ナトリウム223mgを添加し、そしてさらに1−2時間撹拌を継続した。トルエン295mlを添加し、そして得られる固形物質を濾別した。溶媒183mlを溜去して、トルエン中2.7wt/wt%(VIIIa)溶液180.5gを得た。(VIIIa)の全収率:41%。
【0097】
例6:Rがメチルである式(VI)の中間体である(VIa)の製造
【0098】
【化19】

【0099】
(a)(XXa)20.0g(44.4mmol)、NMHA5.53g(48.8mmol)およびEEDQ12.08g(48.8mmol)を、メタノール222ml中に懸濁した。この混合液を24時間還流し、次いで。トルエン178mlを添加した。溶媒250mlを溜去し、得られる懸濁液を30℃まで冷却した。1MHCl水溶液155mlを添加し、そして2層を分離した。水層をトルエン44mlで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して、トルエン中4.1wt/wt%(VIIIa)溶液の122.78gを得た。この溶液を98.22gに、(VII)11.17g(35.5mmol)およびトリフェニルホスフィン9.78g(37.3mmol)を添加し、そして混合液を0℃に冷却した。DIAD7.4ml(37.3ml)を滴下し、次いで、得られる反応混合液を0℃において、沈殿が現れる間2時間撹拌した。酢酸0.1mlを添加し、沈殿を溜去した。濾液を真空濃縮し、残渣を沸騰イソプロパノール71mlに溶解した。この溶液を0℃まで冷却して(VIa)を晶出させた。固体を濾過し、冷イソプロパンールで洗浄し、真空乾燥して(VIa)(e.r.:97.2/2.8)6.32gを得た。(XXa)からの収率:31%。
【0100】
(b)MeTHF−トルエン中3.6wt/wt%(48.6mmol)(VIIIa)溶液382.8gに、(VII)18.53g(48.6mmol)およびトリフェニルホスフィン19.7g(75.4mmol)を添加した。溶媒の118gを溜去し、得られる残液を0℃まで冷却した。DIAD14.9ml(75.4mmol)を滴下し、そして反応混合液を0℃において2時間撹拌した。得られる固形沈殿(ほとんど酸化トリフェニルホスフィン)を濾別し、そして冷トルエンで洗浄した。合わせた濾液から溶媒140gを溜去し、次いで、1−ブタノール97mlを添加し、そして溶媒77gを溜去した。混合液を80℃まで冷却し、そしてイソプロパノール97mlおよびdicalite2.43gを添加した。数分間、還流温度で撹拌した後、混合液を熱時濾過し、そして得られる濾液を40℃まで冷却した。(VIa)14mgを種晶として添加し、そして混合液を0℃まで冷却した。0℃で一夜撹拌した後、イソプロパノール48mlを添加し、撹拌を0℃で2時間継続した。(VIa)を濾過によって単離し、冷イソプロパノール9.7mlで洗浄し、70℃において真空乾燥した。(VIa)8.77gの第1部分を得た(収率:28%)。母液を真空濃縮し、残渣をシリカゲルをとおしてフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、(VIa)の第2の回収物を得た(12.1g−収率:43%)。
【0101】
(c)トルエン中4wt/wt%(VIIIa)溶液58.9g(8.3mmol)に、(VII)2.86g(9mmol)およびトリフェニルホスフィン2.29g(10.2mmol)を添加した。溶媒27mlを溜去することによって懸濁液を乾燥し、次いで0℃まで冷却した。DIAD8.7ml(10.2mmol)を滴下し、そして反応混合液を0℃において1−2時間撹拌した。固形物質を濾別し、そしてトルエン4.2mlで洗浄した。合わせた濾液から溶媒27mlを溜去した。1−ブタノール25mlを添加
し、そして溶媒25mlを溜去した。残留物を80℃まで冷却し、イソプロパノール25mlおよびdicalite415mgを添加し,懸濁液を還流し、そして熱時濾過した。濾液を30℃まで冷却し、そして(VIa)2.4mgを種晶として添加した。懸濁液を0℃まで冷却し、この温度で一夜撹拌した。(VIa)を濾過し、冷イソプロパンール2.5mlで洗浄し、そして真空乾燥して、白色粉末24.3gを得た。収率:80%。
【0102】
【表1−1】

【0103】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のスキームに示されるように、シンコニジン塩(XXa)から出発し、これがアミド形成反応においてN−メチル−ヘキセンアミン(NMHA)(XIX)と反応されて二環式ラクトンアミド(XVIII)を生成し、ここで、ラクトン基が開かれて所望の生成物(VIII)を生成する、式(VIII)の化合物を製造する方法であって、RがC1−4アルキルである、上記方法。
【化1】

【請求項2】
がメチルである、請求項1の方法。
【請求項3】
アミド形成反応が、反応に不活性な溶媒中、場合によっては塩基の存在下、アミドカップリング剤の存在下で実施される、請求項1または2の方法。
【請求項4】
溶媒が、ジクロロメタン(DCM)またはクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)または2−メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)のようなエーテル、メタノールまたはエタノールのようなアルコール、トルエンまたはキシレンのような炭化水素溶媒、DMF、DMA、アセトニトリルのような双極性非プロトン性溶媒、またはそれらの混合液を含む、請求項3の方法。
【請求項5】
アミド形成剤が、場合によっては1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)または4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)のような触媒の存在下で、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、N−イソプロポキシカルボニル−2−イソプロポキシ−1,2−ジヒドロキノリン(IIDQ)、ヘキサフルオロリン酸N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)ウロニウム、ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾル−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム、CDI、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)またはその塩酸塩、ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、またはヘキサフルオロリン酸O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム(HBTU)を含む、請求項3の方法。
【請求項6】
任意の塩基が第3級アミン、例えばトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンである、請求項3の方法。
【請求項7】
結晶化によってラセミ塩(XX)から得られる、シンコニジン塩(XXa)の製造方法。
【化2】

【請求項8】
ラセミ塩(XX)が二環式ラクトンカルボン酸(XV)をシンコニジンと接触させることによって得られる、請求項7の方法。
【化3】

【請求項9】
シンコニジンの懸濁液がやや高い温度において(XV)の溶液に添加され、続いて混合液を冷却させ、それによって所望の生成物(XXa)が晶出する、請求項8の方法。
【請求項10】
(XV)が酢酸エチルのようなエステル溶媒から選ばれる溶媒中に溶解され、そしてシンコニジン懸濁液のための溶媒がアセトニトリルを含む、請求項7または8の方法。
【請求項11】
塩形成が約50〜約70℃の温度、特に約60℃で実施され、そして混合液がほぼ室温、例えば約20〜約25℃の範囲の温度まで冷却される、請求項9または10の方法。
【請求項12】
塩が適当な溶媒または溶媒混合液からの再結晶化によるか;あるいは溶媒または溶媒混合液中に再スラリー化することによってさらに精製される、請求項9または10の方法。
【請求項13】
再結晶化における溶媒が、C1−4アルカノール、例えばイソプロパノールであるか、または再スラリー化において溶媒または溶媒混合液が、5%/95%(w/w)水/エタノール混合液のようなエタノール/水混合液である、請求項12の方法。
【請求項14】

【化4】

のシンコニジン塩。
【請求項15】
中間体(VIII)の製造における中間体としての、請求項4に定義されたシンコニジン塩(XXa)の使用。

【公表番号】特表2012−513381(P2012−513381A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541509(P2011−541509)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067715
【国際公開番号】WO2010/072742
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511069080)ジヤンセン・フアーマシユーチカルズ・インコーポレーテツド (6)
【氏名又は名称原語表記】Janssen Pharmaceuticals,Inc.
【Fターム(参考)】