説明

HIVインテグラーゼを阻害するためのピリドキシン誘導体

【課題】HIVインテグラーゼ酵素の活動の阻害または調節、特に、HIV複製の阻害及びHIV感染、AIDS、HIVにより媒介される疾病及び疾患の治療に有益な化合物の提供。
【解決手段】本発明は、式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは組成物に関し、そのうちX、Y、R〜Rは明細書において定義される。式(I)で表される化合物はHIVインテグラーゼ酵素を阻害し、HIV感染、AIDSまたはエイズ関連症候群(ARC)、及びHIV感染により引き起こされるかまたは媒介されるその他の疾病および疾患の予防と治療に有益である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年1月22日に出願された米国特許仮出願61/297,450の権益を主張し、その全ては本明細書で参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、式(I)で表される化合物を1つ以上含む、式(I)で表されるピリドキシン(ビタミンB)の誘導化合物、その薬学的に許容される塩または溶媒和物、製剤、その合成、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)インテグラーゼ酵素の調節剤または阻害剤としての使用に関する。本発明の化合物は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、後天性免疫不全症候群AIDS、エイズ関連症候群(ARC)、及びHIV感染により引き起こされる、または媒介されるその他の疾病および疾患の予防、治療、発病の遅延または進行の遅延に有益である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)として指定されたレトロウイルス、特にHIV−1及びHIV−2として知られる株は、AIDS、ARC、及びHIVにより引き起こされる、または媒介されるその他の疾病および疾患の病原因子である。HIV感染及びAIDSは、レトロウイルスの迅速な複製、変異、薬剤耐性取得能力のため治療が難しい。これまで、AIDS及びHIV感染の治療とAIDS及びHIV感染向けの新薬開発は、主にウイルスRNAからウイルスDNAへの変換(逆転写)及びウイルスDNAの宿主ゲノムへの挿入(組み込み)など、レトロウイルス複製の重要なステップを標的とすることで、HIVの複製を阻害することを重視してきた。これらのステップは、逆転写酵素、プロテアーゼ、インテグラーゼを含むHIV酵素の活動に依存している。CD4(+)Tリンパ球へのウイルス結合を阻害したり(例:可溶型CD4)、ウイルス逆転写酵素をブロックしたり(例:ジダノシン及びシドブジン(AZT))、ウイルスアスパルチルプロテアーゼをブロックしたり(例:リトナビル及びインジナビル)、ウイルス粒子出芽を阻害したり(例:インターフェロン)する化合物を含む、HIV複製サイクルのさまざまな段階をブロックする多様な合成抗ウイルス剤が開発され、市販されてきた。これら抗ウイルス剤の一部は臨床試験で効果がないことが証明されており、その他特にウイルス複製の早期段階を標的としたものは持続感染細胞における感染性ウイルス粒子の産生にいかなる影響も与えない。
【0004】
さらに、これら抗ウイルス剤の治療用量の投与は、一般的に細胞毒性、及び貧血、神経毒性、骨髄抑制などの望ましくない副作用、そして急速な薬剤耐性の発生につながり、AIDS、HIV感染及びその他HIVに起因する疾病の安全かつ有効な治療が制限される。
【0005】
併用療法の使用によって単剤療法より耐性の発生を抑制することができるが、併用療法でもウイルス耐性の形成により30〜50%の患者において効果が失われる。
【0006】
逆転写酵素とプロテアーゼ阻害剤の欠点を考慮し、混合薬(併用療法)の一部として使用される場合でも、新しい抗ウイルス剤、特に現行のケアの標準で交差耐性につながらない薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、HIVインテグラーゼ酵素の活動の阻害または調節、特に、HIV複製の阻害及びHIV感染、AIDS、HIVにより媒介される疾病及び疾患の治療に有益な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ピリドキシン及びその薬学的に許容される誘導体(例:塩及び溶媒和物)から誘導される一連のインテグラーゼ阻害剤に関する。
【0009】
一態様において、本発明は式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を提供し、
【化1】

式中、
XがHまたはOHであり、
YがHまたはOHであり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がH、C1−6アルキル、C1-6フルオロアルキル、またはベンジルであり、
がH、C1−6アルキル、またはベンジルであり、かつ
がH、またはC1−6アルキルである。
【0010】
別の一態様において、本発明は式(Ia)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を提供し、
【化2】

式中、
XがOHであり、
YがHまたはOHであり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がH、C1−6アルキルまたはベンジルであり、
がH、C1−6アルキルまたはベンジルであり、かつ
がH、またはC1−6アルキルである。
【0011】
別の一態様において、本発明は式(Ib)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を提供し、
【化3】

式中、
XがOHであり、
YがHまたはOHであり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がH、C1−6アルキルまたはベンジルであり、
がH、C1−6アルキルまたはベンジルであり、かつ
がH、C1−6アルキルまたはベンジルである。
【0012】
別の一態様において、本発明は式(Ic)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を提供し、
【化4】

式中、
XがOまたはN−OHであり、
YがHまたはOHであり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がH、C1−6アルキルまたはベンジルであり、
がH、C1−6アルキルまたはベンジルであり、かつ
がH、C1−6アルキルまたはベンジルである。
【0013】
別の一態様において、本発明は、N5−(4−フルオロベンジル)−N2,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2,5−ジカルボキシアミド、N5−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−N2,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2,5−ジカルボキシアミド、N5−(3,4−ジクロロベンジル)−N2,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2,5−ジカルボキシアミド、5−(ベンジルオキシメチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミドから選択された、式(I)で表される化合物を提供する。
【0014】
別の一態様において、本発明は、(R)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N−ヒドロキシ−N,2,2−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキサミド、5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)−N−メチルピコリンアミド、5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−3−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)−N−メトキシピコリンアミド、5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド、5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド、5−(4−フルオロベンゾイル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド、(E)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシイミノ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド、(S)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミドから選択される化合物を提供する。
【0015】
別の一態様において、本発明は、少なくとも1つの本発明の化合物、及びその薬学的に許容される塩または溶媒和物の治療有効量を含む、医薬組成物、及び薬学的に許容される製剤を提供する。
【0016】
本発明の化合物は、HIV−1及びHIV−2の両方を含むHIVインテグラーゼを阻害し、HIV−1及びHIV−2株を含むHIVに対する抗ウイルス剤として使用することができる。
【0017】
本発明の化合物は、HIV−1及びHIV−2感染を含むHIV感染、またはHIV感染により引き起こされた、または媒介された疾病または疾患の発病または進行の予防、治療、遅延に有益である。
【0018】
一態様において、本発明は、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物の複製を阻害する量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるHIV複製を阻害する方法を提供する。
【0019】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤の阻害量に細胞を接触させることを含む、細胞におけるHIV複製を阻害する方法を提供する。
【0020】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤のインテグラーゼを阻害する量にインテグラーゼ酵素を接触させることを含む、HIVインテグラーゼ酵素の活動を阻害する方法を提供する。この方法は細胞を直接接触させること、または本発明の化合物をHIVに感染した哺乳動物に投与することを含む。
【0021】
本発明の別の一態様は、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるHIV感染の治療方法を含む。
【0022】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるAIDSの治療方法を提供する。
【0023】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を1つ以上の別のHIV阻害剤と組み合わせて哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるAIDSの治療方法を提供する。
【0024】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてHIV感染により引き起こされた、または媒介された疾病または疾患の治療方法を提供する。
【0025】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるHIV感染を予防または防止する方法を提供する。
【0026】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるHIV複製を阻害する方法を提供する。
【0027】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤と少なくとも1つの別のHIV阻害剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるHIV複製を阻害する方法を提供する。
【0028】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるHIV複製を阻害する方法を提供し、そのうちHIVが少なくとも1つのHIVプロテアーゼ阻害剤に対して耐性がある。
【0029】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を哺乳動物に投与することを含む、HIVに感染した哺乳動物におけるHIV複製を阻害する方法を提供し、そのうちHIVが少なくとも1つのHIV逆転写酵素阻害剤に対して耐性がある。
【0030】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を哺乳動物に投与することを含む、HIVに感染した哺乳動物におけるHIVウイルス量を低減する方法を提供する。
【0031】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤を1つ以上の別のHIV阻害剤と組み合わせて哺乳動物に投与することを含む、HIVに感染した哺乳動物におけるHIVウイルス量を低減する方法を提供する。
【0032】
本発明はさらに、HIV感染の治療のための医薬組成物の製造のための少なくとも1つの本発明の化合物の使用を提供する。
【0033】
本発明はさらに、AIDSまたはARCの治療のための医薬組成物の製造のための少なくとも1つの本発明の化合物の使用を提供する。
【0034】
本発明はさらに、AIDSまたはARCの防止または予防のための医薬組成物の製造のための少なくとも1つの本発明の化合物の使用を提供する。
【0035】
本発明はさらに、HIV感染の防止または予防のための医薬組成物の製造のための少なくとも1つの本発明の化合物の使用を提供する。
【0036】
上述の本発明のあらゆる態様において、前記哺乳動物(例:ヒト)はHIV感染またはAIDS或いはHIVにより媒介される疾病または疾患を有する、または有する疑いがある。前記哺乳動物(例:ヒト)は、HIV感染またはAIDS或いはHIVにより媒介される疾病または疾患に対する抗ウイルス剤またはその他治療的化合物で以前に治療されたことがある、またはないものとできる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
本明細書で使用される用語「ヒト免疫不全ウイルス」、「HIV」、「HIV−1」、または「HIV−2」は、後天性免疫不全症候群(AIDS)及びAIDSに関連する疾病、疾患、または日和見感染の原因病原体であるレトロウイルスを指す。HIVの旧名として、ヒトT細胞白血病ウイルスIII型(HTLV−III)、リンパ節症随伴ウイルス(LAV)、およびAIDS関連レトロウイルス(ARV)が含まれる。
【0038】
本明細書で使用される用語「HIV逆転写酵素」、「逆転写酵素」、または「RT」は、ウイルスRNAからDNAへの変換(逆転写)またはプロウイルスの生成を触媒または媒介するレトロウイルスゲノムによってエンコードされた酵素を指す(Haseltine W. A. FASEB J. vol. 5, p.2349〜2360(1991))。
【0039】
本明細書で使用される用語「逆転写酵素阻害剤」または「HIV逆転写酵素阻害剤」は、一本鎖HIVウイルスRNAをHIVウイルスDNAに変換する働きを担うHIV逆転写酵素の正常な働きに干渉する化合物または化合物の組み合わせを指す。
【0040】
本明細書で使用される用語「HIVインテグラーゼ」または「インテグラーゼ」は、プロウイルスDNA(レトロウイルス二本鎖DNA)の宿主のゲノムDNAへの組み込みを触媒または媒介するレトロウイルスゲノムによってエンコードされた酵素を指す。インテグラーゼ酵素は、ウイルス複製につながる宿主の転写系によるウイルス遺伝子発現のテンプレートとして作用する(Roth et al.,Cell、1989 Jul 14、58(1):47〜54;Bukrinsky M. I.,Proc. Natn. Acad. Sci. USA 1992、vol. 89、p.6580〜6584;Gallay et al.,Cell. 1995 Nov 17,83(4):569〜76)。
【0041】
本明細書で使用される用語「インテグラーゼ阻害剤」または「HIVインテグラーゼ阻害剤」は、HIVの遺伝子を宿主細胞のDNAに挿入する作用を担うHIVインテグラーゼ酵素の正常な働きに干渉する化合物または化合物の組み合わせを指す。
【0042】
本明細書で使用される用語「組み込み」は、インテグラーゼ酵素によって媒介される、ウイルスDNA、レトロウイルスDNA、プロウイルス、またはプロウイルスDNAの宿主ゲノムへの挿入を指す。組み込みは一般に、宿主の核でインテグラーゼとウイルスDNAが組込み前複合体(PIC)と結合し、宿主の核に組込み前複合体の一部としてウイルスDNAが取り込まれて発生する(Goldgur Y et al Proc Natl Acad Sci USA.1999 Nov 9;96(23):13040〜3;Sayasith K,Sauve G and Yelle J. Expert Opin Ther Targets.2001 Aug;5(4):443〜464;Debyser Z et al Methods Mol Biol. 2001;160:139〜55)。
【0043】
本明細書で使用される用語「プロテアーゼ阻害剤」または「HIVプロテアーゼ阻害剤」は、ウイルスタンパク質の長鎖を切断してウイルスコアを構成する個々のタンパク質にする作用を担うHIVプロテアーゼ酵素の正常な働きに干渉する化合物または化合物の組み合わせを指す。
【0044】
本明細書で使用される用語「融合阻害剤」または「HIV融合阻害剤」は、CD4細胞表面上のgp41エンベロープタンパク質に結合し、ウイルスが細胞と融合するために必要な構造変化をブロックする、化合物または化合物の組み合わせを指す。
【0045】
本明細書で使用される用語「ウイルス量」および「HIVウイルス量」は、ヒトなど哺乳動物の循環血液中におけるHIVの量を指す。哺乳動物の血中におけるHIVウイルス量は、当業者が知るところである方法を使用して血中におけるHIVのRNA数を測定することで判定することができる。
【0046】
本明細書で使用される用語「レトロウイルス」は、レトロウイルス科に属するウイルスを指し、RNAゲノムを有するウイルスを含み、DNA中間体を介して複製する。
【0047】
本明細書で使用される用語「ビタミンB」は、一般にビタミンBと呼ばれるピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシンの3つの化合物の1つ以上を指す。ピリドキシンはピリドキサミンと4の位置の置換基で異なる。ピリドキシンはピリジン環にヒドロキシ、メチル、ヒドロキシメチル置換基を有し、体内でピリドキシンの生物学的活性型であるピリドキサール5−リン酸に変換される。
【0048】
用語「含む」及び「含有」はオープンで非限定的な意味で使用される。
【0049】
本明細書で使用される用語「C1−6アルキル」は、直鎖または分岐状で1〜6個の炭素原子を有する飽和一価炭化水素基を指す。C1−6アルキル基は置換もしくは非置換とすることができる。このような基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル等を含むが、これらに限らない。
【0050】
本明細書で使用される用語「ベンジル」および「フェニル」は、置換及び非置換のベンジル基とフェニル基をそれぞれ指す。
【0051】
用語「フルオロアルキル」は、本明細書で定義されるC1−6アルキル基において、アルキル基に結合した1つ以上の水素基がフッ化物基(fluoride radical)で置換されたものを表す。フルオロアルキル基は、C1−6アルキル基に対してここで説明される任意の置換基でさらに置換されることもできる。フルオロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどがある。
【0052】
基(例:C1−6アルキル基、ベンジル基、フェニル基など)が置換される場合、その基は、例えば1、2、3、4、5、または6つの置換基で置換されてもよい。C1−6アルキル基の任意の置換基としては、C3−9シクロアルキル、C3−9シクロアルケニル、3〜9個の環原子を有するヘテロシクリル、5〜12個の環原子を有するヘテロアリール、アジド(−N)、ニトロ(−NO)、シアノ(−CN)、アシルオキシ(−OC(=O)R')、アシル(−C(=O)R')、アルコキシ(−OR')、アミド(−NR'C(=O)R"または−C(=O)NRR')、アミノ(−NRR')、カルボン酸(−COH)、カルボン酸エステル(−COR')、カルバモイル(−OC(=O)NR'R"または−NRC(=O)OR')、ヒドロキシ(−OH)、イソシアノ(−NC)、スルホン酸(−S(=O)OR)、スルホンアミド(−S(=O)NRR'または−NRS(=O)R')、またはスルホニル(−S(=O)R)が含まれるがこれらに限定されず、そのうち各RまたはR'はそれぞれ独立してH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−9シクロアルキル、3〜9個の環原子を有するヘテロシクリル、C6−10アリール、5〜12個の環原子を有するヘテロアリールから選択される。フェニル基またはベンジル基の任意の置換基としては、アルキル基に対してここで説明した任意の置換基、及びC1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−10アリール、ハロゲン(例:F、Cl、Br、またはI)置換基が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
用語「HIV複製を阻害する」とは、細胞内でのヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を(例えば、少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)低減または防止することを指す。前述の細胞は、体外で存在する、或いは体内、例えばヒトなどの哺乳動物内で存在することができる。上述の阻害は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩或いは溶媒和物を直接細胞に、または哺乳動物にHIV複製を阻害するに足る量を投与することで達成可能である。哺乳動物の体内など細胞内におけるHIV複製の阻害は、当業者の既知である方法を使用して測定または監視することができる。例えば、哺乳動物に対して、ある量の本発明の化合物を単独または薬学的に許容される製剤の一部として投与することができる。その後哺乳動物から血液試料を採取し、当業者に既知の方法を使用して試料中のHIVウイルス量を定量化することができる。本発明の化合物を投与する前の血液中におけるHIVウイルス量と比較した試料中のHIVウイルス量の低減は、哺乳動物におけるHIVウイルス複製の阻害を表す。別の例では、陽性標準試料(例:HIV保有者で本発明の化合物で治療を受けていない被験者からの血液)におけるHIVウイルス量と比較した試料中のHIVウイルス量の低減は、哺乳動物におけるHIVウイルス複製の阻害を表す。哺乳動物体内などの細胞に対する本発明の化合物の投与は、単回投与または一連の投与の形式とすることができる。1回を超える投与の場合、用量は1日以内に、または2日以上にわたって投与することができる。
【0054】
本明細書で使用される用語「HIV阻害剤」、「HIV抗ウイルス剤」、または「抗HIV薬」は、哺乳動物体内など細胞内におけるHIV複製を阻害することができる、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含むが、これに限らない化合物を指す。前述の化合物は当業者に既知の任意のメカニズムを通してHIV複製を阻害することができる。HIV阻害剤の非限定的例としては、エントリー阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤が含まれる。
【0055】
本明細書で使用される用語「ヒト免疫不全ウイルスを阻害する量」または「HIVを阻害する量」は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)複製を哺乳動物などの体内で、または体外で阻害するために必要な、HIV阻害剤、またはその薬学的に許容される塩或いは溶媒和物の量を指す。前述の阻害を引き起こすために必要な前記化合物の量は、本明細書で説明する方法及び当業者に既知の方法を使用して、過度な実験を必要とせずに決定することができる。
【0056】
本明細書で使用される用語「HIVインテグラーゼ酵素の活性を阻害する」とは、HIVインテグラーゼ酵素の体外またはヒトを含む哺乳動物などの体内のいずれかにおける活動または働きを(例:少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上)低減させることを指す。
【0057】
本明細書で使用される用語「HIVインテグラーゼ酵素を阻害する量」は、HIVインテグラーゼ酵素の哺乳動物などの体内、または培養細胞株内などの体外のいずれかにおける活動を低減させるために必要な、HIV阻害剤またはその薬学的に許容される塩或いは溶媒和物の量を指す。一例において、前述の阻害は本発明の化合物がHIVインテグラーゼ酵素に直接結合することによって起こることがある。また、HIVインテグラーゼ酵素の活動は、酵素と本発明の化合物間の直接結合が起こらない場合、本発明の化合物の存在によって低減することがある。
【0058】
さらに、前述の阻害は拮抗、非拮抗または不拮抗とすることができる。HIVインテグラーゼの阻害は、体外または体内のシステム、或いは両方の組み合わせを使用して、当業者に既知の方法を用い、確定することができる。
【0059】
本明細書で使用される用語「溶媒和物」は、本発明の化合物の薬学的に許容される溶媒和物であり、前記化合物の生物学的効果を保持しているものを指す。溶媒和物の例としては、本発明の化合物と、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、またはそれらの混合との組み合わせを含むが、これに限定されない。本発明の一実施例において、1個の溶媒分子が本発明の化合物の1個の分子と結合される(例えば水和物)。本発明の別の一実施例において、1個を超える溶媒分子が本発明の化合物の1個の分子と結合される(例えば二水和物)。加えて、1個未満の溶媒分子が本発明の化合物の1個の分子と結合される(例えば半水和物)ことも本発明においては考えられる。さらに、本発明の溶媒和物は、非水和形態の化合物の生物学的効果を保持する本発明の化合物の溶媒和物を含む。
【0060】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される塩」は、薬理学的に許容できるアニオンまたはカチオンを含み、生物学的にまたはその他で好ましくないものでなく、遊離酸の生物学的有効性と指定の誘導体のベースを保有している塩を指す。薬学的に許容される塩の例としては、酢酸塩、アクリル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸エステル(例えばクロロ安息香酸、安息香酸メチル、ジニトロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸)、重炭酸塩、硫酸水素塩、重亜硫酸塩、酒石酸水素塩、硼酸塩、臭化物、ブチン−1、4−ジカルボン酸、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸、炭酸塩、塩化物、カプロン酸塩、カプリル酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、デカン酸塩、二塩酸塩、リン酸二水素、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、エチルコハク酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸、グリコリルアルサニレート、ヘプタン酸、ヘキシン−1,6−ジカルボン酸、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸メチル、燐酸一水素、粘液酸塩、ナプシル酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、硝酸塩、オレイン酸塩、蓚酸塩、パモ酸塩(パモ酸)、パルミチン酸塩、パントテン酸、酢酸フェニル、フェニル酪酸、フェニルプロピオン酸、フタレート、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクトウロン酸塩、プロパンスルホン酸塩、プロピオン酸、プロピオール酸、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、亜硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオドード、吉草酸塩、及びカチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど)を含むが、これらに限らない。
【0061】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される製剤」は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩或いは溶媒和物と、本発明の化合物と親和性があり、かつその服用者に対して有害でない担体、希釈剤および/または賦形剤の組み合わせを指す。製剤は当業者に既知の手順で調製することができる。例えば、本発明の化合物は一般的な賦形剤、希釈剤、または担体と共に製剤化し、錠剤、カプセルなどにすることができる。前記製剤に適した賦形剤、希釈剤、及び担体の例としては、充填剤及び増量剤(でんぷん、糖、マンニトール、ケイ酸誘導体等)、結合剤(カルボキシメチルセルロース及びその他セルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等)、保湿剤(グリセロール等)、崩壊剤(ポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等)、溶出遅延剤(agents for retarding dissollution)(パラフィン等)、吸収促進剤(第四アンモニウム化合物等)、界面活性剤(セチルアルコール、グリセロールモノステアレート等)、吸着担体(カオリン及びベントナイト等)、滑沢剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール等)が含まれる。最終的な剤形は使用される賦形剤の種類に応じて、丸剤、錠剤、粉剤、ロゼンジ、サシェ剤、カシェ剤、滅菌封入粉末剤等とすることができる。また、本発明の薬学的に許容される製剤は1つを超える有効成分を含むことが具体的に考慮される。例えば、前記製剤は1つを超える本発明による化合物を含んでもよい。あるいは、前記製剤は1つ以上の本発明の化合物及び1つ以上の追加の抗HIV薬を含んでもよい。薬学的に許容される製剤は、服用者または患者への投与により、本発明の化合物、活性代謝物またはその残留物が直接または間接的に提供される構造を有する、式(I)の化合物以外の化合物を含むことができるが、それに限定されない。
【0062】
「低減する」または「阻害する」とは、測定される生物活性またはレベルにおいて10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の全体的低下を引き起こす能力を指す。
【0063】
本明細書で使用される用語「治療有効量」は、前記治療を必要とする哺乳動物に投与されたとき、本明細書で定義される治療の効果を生じるに足る、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の量を指す。従って、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、HIVインテグラーゼ酵素の活性によって媒介される疾病の症状が低減または緩和されるように、HIVインテグラーゼ酵素の活性を調節または阻害するに足る量である。
【0064】
用語「治療する」、「治療している」、または「治療」とは、HIV感染或いはHIVまたはAIDSによって媒介される疾病または疾患の治療的処置と予防または防止策の両方を指す。「疾病を治療する」、または「治療的処置」への使用は、既に罹患している被験者に対し、被験者の症状を改善するために治療を施すことを指す。治療には、疾病または疾患の調節または阻害(例:進行を停止させる)、疾病または疾患の軽減(例:疾病または疾患の退行を引き起こす)、ウイルス量の低減、または原因となっている疾病または疾患に対処してまたは対処せずに、疾病または疾患、あるいは疾病または疾患に起因する症状を軽減および/または緩和することを含むことができる。「疾病を防止する」とは、まだ罹患していないが、特定の疾病を患いやすい、または患う危険に曝されている被験者に予防治療を行うことを指す。予防治療には、HIVまたはAIDSに関連する1つ以上の症状の防止も含むことができる。従って、請求項及び実施例において、治療には治療または予防目的のため哺乳動物に投与することが含まれる。
【0065】
「被験者」とは、ヒトまたはヒト以外のサル、ウシ、イヌ、ウマ、ネコなどの哺乳動物を含むが、これらに限定されない哺乳動物を指す。
【0066】
本明細書で使用される用語「耐性のある」、「耐性」及び「耐性HIV」とは、HIVウイルスが特定の薬剤に対する感度の低下を示すことを指す。特定の抗HIV薬または薬剤の組み合わせに耐性のあるHIVに感染した哺乳動物は通常、薬剤の継続的投与にもかかわらずHIVウイルス量の増加を示す。耐性は、HIV遺伝子構造における変異の発生を意味する遺伝子型、または耐性が抗HIV薬または薬剤の組み合わせが存在する中でのHIVウイルスの培養検査で増殖が発見される表現型のいずれかであり得る。
【0067】
本明細書で使用される用語「併用投与」、「併用投与される」、「併用投与する」、「併用投与された」、または「併用療法」は、少なくとも1つの第1剤と1つの第2剤を組み合わせた投与を指し、2つ以上の薬剤を含むことができる。前記併用投与は、2つまたは複数の薬剤が同一の組成物の一部または同一の単位投薬剤形(unitary dosage form)の一部である、あるいは別の組成物または投薬剤形(dosage form)であるものとして実施することができる。併用投与には、第1剤と第2剤、または2つを超える薬剤を個別に、かつ同一の治療法の一部として投与することも含まれる。薬剤は、個別に投与される場合、実質的に同時に投与される必要はないが、必要であればそうすることもできる。従って、併用投与には、例えば第1剤と第2剤を個別の投与量(dosage)または投薬剤形(dosage form)として、ただし同時に投与することが含まれる。また、併用投与には個別に、異なる時間に、任意の順序で、投与することも含まれる(例:順次、または1つの薬剤を別の薬剤と交互になど)。
【0068】
用語「本発明の化合物」とは、式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)の化合物、及び以下の例に示される化合物を指し、かつそれら化合物の薬学的に許容される塩を含む。
【0069】
本明細書で使用される略語は以下を指す。

【0070】
詳細な説明
本明細書で検討される医薬組成物は、少なくとも1つの本発明の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物または製剤と、薬学的に許容される担体またはアジュバント、ビヒクルを含む。本発明の医薬組成物で使用可能な薬学的に許容される担体、アジュバント、ビヒクルには、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミン等)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物等)、水、塩、または電解質(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛の塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、リポソーム、羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
当業者においては、本発明の化合物、その塩または溶媒和物が、本発明及び指定の調合の範囲内の異なる結晶または多形相で存在し得ることが理解される。
【0072】
本発明の塩基性化合物は、無機酸(塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等)、有機酸(酢酸等)、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、蓚酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(グルクロン酸またはガラクツロン酸等)、α−ヒドロキシ酸(クエン酸または酒石酸等)、アミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸等)、芳香族酸(安息香酸またはケイ皮酸等)、スルホン酸(p-トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸等)での遊離塩基の処理を含む、当業者が知るところである適切な方法を使用して、塩として製造することができる。
【0073】
本発明の塩基性化合物は、多様な無機酸及び有機酸の塩を形成することができる。前記塩は動物に対する投与に薬学的に許容されるものである必要があるが、一般的にはまず、本発明の化合物を薬学的に許容されない塩として単離した後、アルカリ性試薬で処理して遊離塩基化合物とし、さらにこの遊離塩基化合物を薬学的に許容される酸付加塩に変換する。本発明の塩基化合物の酸付加塩は、水性溶媒または適切な有機溶媒(メタノールまたはエタノール等)において、実質的に等しい量の選択された鉱酸または有機酸でこの塩基化合物を処理することで製造することができる。
【0074】
本発明の酸性化合物は、遊離酸を無機塩基または有機塩基(アミン(第一級、第二級、または第三級)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物または類似物)で処理することを含む、当業者が既知の適切な方法を使用して塩として製造することができる。好適な塩の例としては、アミノ酸(グリシン及びアルギニン等)、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、及び環状アミン(ピペリジン、モルホリン、ピペラジン等)から誘導される有機塩、及びナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、リチウムから誘導される無機塩が含まれる。
【0075】
本発明の酸性化合物は、多様な薬理学的に許容可能なカチオンと塩基性塩を形成することができる。前記塩の例には、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、そして特に、ナトリウム塩及びカリウム塩が含まれる。これらの塩は従来の方法を使用して製造可能である。本発明の薬学的に許容される塩基性塩の製造における試薬として適した化学塩基は、本発明の酸性化合物と無毒性の塩基性塩を形成するものである。前記無毒性の塩基性塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の前記薬理学的に許容可能なカチオンから誘導されるものが含まれる。これらの塩は、対応する酸性化合物を所望される薬理学的に許容可能なカチオンを含む水溶液で処理した後、好ましくは減圧下で、得られた水溶液を蒸発乾固させることで製造することができる。または、酸性化合物の低級アルカノール溶液と所望されるアルカリ金属アルコキシドを混合し、その後同様に得られた溶液を蒸発乾固させることで製造することもできる。いずれの場合も、反応の完全性と所望される最終生成物の最大収量を確約するために、試薬の化学量論量を用いることが好ましい。
【0076】
HIVにより引き起こされた、または媒介された疾病または疾患を治療または防止するために、少なくとも1つの本発明の化合物を含む医薬組成物が、治療有効量の前記化合物と活性化合物の薬学的に許容される製剤への加工処理を促進する希釈剤、賦形剤、助剤を含む1つ以上の薬学的に適した担体を組み合わせることで製造された薬学的に許容される製剤中で投与される。使用する担体は、固体または液体とすることができる。固体の担体の例としては、乳糖、蔗糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等がある。液体の担体の例としては、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、水等がある。同様に、本発明の組成物には、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の時間遅延または時間放出材料が、単独で、あるいはろう、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸メチルまたは類似物と友に含まれてもよい。所望される製剤の特性を得るためにさらなる添加剤または賦形剤を加えてもよい。例えば、Labrasol(登録商標)、Gelucire(登録商標)等の生物学的利用能増強剤(bioavailability enhancer)またはCHIC(カルボキシメチルセルロース)、PG(プロピレングリコール)またはPEG(ポリエチレングリコール)などのフォーミュレーター(formulator)も加えてもよい。有効成分を光、湿気、および酸化より保護する半固体の担体であるGelucire(登録商標)を、例えば、カプセル製剤を製造する場合、加えてもよい。
【0077】
固体担体を使用する場合、調製物は、錠剤化しても、粉末またはペレットの形態で硬ゼラチンカプセル剤に入れても、またはトローチ剤またはロゼンジに成型してもよい。固体担体の量は変動してよいが、一般には、約25mg〜約1gであろう。液体担体を使用する場合、調製物は、シロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤、無菌注射溶液剤、またはアンプルまたはバイアル中の懸濁液剤、または非水系の液体懸濁液剤の形態としてもよい。本発明の組成物は、投与(例えば、非経口または経口の投与)に適した単位剤形で製造される。
【0078】
安定した水溶性の剤形を得るには、本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、コハク酸またはクエン酸の0.3M溶液などの有機酸または無機酸の水溶液に溶解させてもよい。可溶性の塩型が利用可能でなければ、この剤を好適な共溶媒または共溶媒の組み合わせに溶解させてもよい。適した共溶媒の例は、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリン等が全体量の0〜60%の濃度で含まれる。例示の一態様では、本発明の化合物がDMSOに溶解され、水で希釈される。本組成物は、有効成分の塩型の、水または等張生理食塩水またはデキストロース溶液などの適した水系ビヒクル中の溶液の形態であってもよい。
【0079】
経口使用のための医薬調製物は、固体賦形剤を有効成分(剤)と混合して使用し、得られる混合物を随意に粉砕して、所望される場合、錠剤または糖剤コア(dragee core)を得るために、好適な助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工処理して得ることができる。好適な賦形剤には、糖(乳糖、蔗糖、マンニトール、またはソルビトールが含まれる)、及びセルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはポリビニルピロリドン(PVP)等の充填剤が含まれる。所望される場合、架橋連結ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、またはその塩(アルギン酸ナトリウム等)の崩壊剤も加えることができる。
【0080】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、好適な固相またはゲル相の担体または賦形剤を含んでもよい。これらの担体および賦形剤は、溶解性に劣る薬剤のバイオアベイラビリティの顕著な改善が可能である。そのような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、カルシウム、リン酸塩、糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーが含まれる。さらに、Gelucire(登録商標)、Capryol(登録商標)、Labrafil(登録商標)、Labrasol(登録商標)、Lauroglycol(登録商標)、Plurol(登録商標)、Peceol(登録商標)、Transcutol(登録商標)等の添加剤または賦形剤が使用可能である。さらに、前記医薬組成物は、薬剤の皮膚上への直接送達用の皮膚パッチ剤へ取り込むこともできる。
【0081】
予防及び治療の方法、用量レベル及び要件は、当業者が利用可能な方法及び技法から選択することができる。
【0082】
本発明の化合物は、選択的な生物学的特性を強化するために好適な機能を追加して調整してもよい。前記調整は当業者の知るところであり、特定の生体系(例:血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透性を高めるもの、経口バイオアベイラビリティを高めるもの、注射による投与を可能にするため溶解性を高めるもの、代謝を改変させるもの、または排泄速度を改変させるものを含む(Pharmacokinetic Optimization in Drug Research, Testa, B. et al, 2001, Wiley−VCH,VCHA)。
【0083】
本発明の医薬組成物は、経口、静脈注射、非経口、吸入噴霧で、局所的に、経直腸、経鼻、口腔内に、経膣、または埋め込みリザーバー経由で投与することができ、好ましくは経口または非経口で投与される。本発明の医薬組成物は、任意の従来の無毒性の薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含んでもよい。本明細書において用いられる用語「非経口」または「非経口的に」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨下、髄腔内、病巣内、頭蓋内注射法または点滴法を含む。
【0084】
静脈内投与において、本発明の医薬組成物は、注射可能な滅菌製剤の形態としてもよく、例えば、注射可能な滅菌水性または油性懸濁剤とすることができる。この懸濁剤は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween 80など)と懸濁剤を使用して、当業者の周知の方法に従って製剤化することができる。前記注射可能な滅菌製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液など、無毒な非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液、または懸濁剤とすることもできる。使用可能である許容可能なビヒクル及び溶媒としては、マンニトール、水、リンガー溶液、生理食塩液がある。さらに、滅菌固定油も溶媒または懸濁媒体として通常使用される。この目的で、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、いずれの銘柄の固定油も使用可能である。さらに、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸、及びオリーブ油またはヒマシ油のような天然の薬学的に許容される油剤、特にそれらのポリオキシエチレン化物もまた、注射剤の調製において有用である。
【0085】
本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、及び水性懸濁剤及び溶液を含むが、これらに限定されない、任意の経口的に許容される投薬剤形で経口投与することができる。経口用錠剤の場合、一般的に使用される担体には、乳糖とコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も、一般的に添加される。カプセル剤での経口投与に有用な希釈剤には、乳糖と乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁剤を経口投与する場合、有効成分は乳化剤及び懸濁剤と組み合わされる。所望される場合、特定の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤を加えてもよい。
【0086】
本発明の医薬組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与してもよい。これら組成物は、室温では固体であるが、直腸温度では液体であり、従って、直腸で溶解して有効成分を放出する、適当な非刺激性賦形剤と本発明の化合物を混合することにより製造することができる。かかる材料としては、カカオバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の医薬組成物はまた、鼻腔エアロゾールまたは吸入により投与してもよい。このような組成物は医薬製剤の分野で周知の技術に従って製造され、ベンジルアルコールまたはその他の公的な防腐剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロ炭素および/またはその他の周知の可溶化剤または分散剤を用い、生理食塩水中の溶液として製造することができる。
【0088】
本発明の薬剤の実際の投与量は、使用される特定の薬剤、製剤化される特定の組成物、投与の形式、並びに、治療される特定の部位、宿主、及び疾患に従って変動するものである。当業者は、慣用の投与量決定試験を特定の化合物の実験データに照らして使用し、特定の状態のセットに最適の投与量を確定することができる。経口投与では、HIV感染を含むウイルス感染の防止と治療に有用な有効成分の化合物の一般的に利用する例示の1日用量は、約0.001〜約1000mg/kg(体重)であり、治療のクールが適正な間隔で繰り返され、好ましくは、1日当たり0.01〜約25mg/kg(体重)であり、より好ましくは1日当たり約0.5〜約25mg/kg(体重)である。
【0089】
さらに、本発明の薬学的に許容される製剤は、本発明の化合物、その薬学的に許容される塩あるいは溶媒和物を約10mg〜約2000mg、または約10mg〜約1500mg、または約10mg〜約1000mg、または約10mg〜約750mg、または約10mg〜約500mg、または約25mg〜約500mg、または約50〜約500mg、または約100mg〜約500mgの量で含有してもよい。さらに、本発明の薬学的に許容される製剤は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を約0.5(w/w)%〜約95(w/w)%、または約1(w/w)%〜約95(w/w)%、または約1(w/w)%〜約75(w/w)%、または約5(w/w)%〜約75(w/w)%、または約10(w/w)%〜約75(w/w)%、または約10(w/w)%〜約50(w/w)%の量で含有してもよい。
【0090】
本発明の医薬組成物は、持続点滴として、1日1回、1日複数回(例えば、1日約1〜約5回)、週1回、週2回、週3回、1日おき、1週間おき、または医師の決めるとおりに投与することができる。このような投与は、慢性期または急性期治療として使用することができる。担体材料と組み合わせて単一の投薬剤形を形成することができる有効成分の量は、治療を受ける患者と投与方法によって異なる。一般的な製剤は約5%〜約75(w/w)%の活性化合物を含む。好ましくは、前記製剤が約20%〜約50%の活性化合物を含む。
【0091】
患者の症状の改善に際し、本発明の化合物、組成物、または組み合わせの維持投与量を必要に応じて、または所望される場合、投与してもよい。その後は投与量または投与頻度、あるいはその両方を、病状に応じて症状の改善が保たれるレベルまで減少してもよい。症状が所望されるレベルまで緩和されたとき、少なくとも原則的に、治療は停止されるべきである。ただし、患者は疾病の再発、特にAIDSに際して長期的に断続的な治療が必要なことがある。
【0092】
上述の用量よりは少ない、または多い用量が必要とされることがあると当業者は理解すべきである。特定の患者に対する特定の投与量および治療レジメンは、用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食習慣、投与時間、排泄速度、薬剤の組み合わせ、感染の重篤度及び経過、感染に対する患者の体質、及び治療する医師の判断を含む、さまざまな因子によって異なる。
【0093】
本発明の化合物に関して、特定の医薬製剤、投与量、及びそのような治療を必要とする哺乳動物への1日につき与える投薬の回数が、いずれも当業者の知識内で選択可能であり、過度の実験なしに決定可能であることを当業者は理解されよう。例えば、http://aidsinfo.nih.gov/Guidelines/Default.aspx?MenuItem=Guidelinesで利用可能な米国厚生省「Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV−1 Infected Adults and Adolescents(HIV−1被感染成人及び青年における抗レトロウイルス剤の使用についてのガイドライン)」を参照のこと。
【0094】
本発明の化合物は、HIVインテグラーゼに効果的に結合する市販試薬としても有用である。市販試薬として、本発明の化合物、及びその誘導体は、標的DNA分子の組み込みをインテグラーゼによりブロックするために使用することができ、またはアフィニティークロマトグラフィ適用のための係留基質(tethered substrate)として、安定的な樹脂に結合するように誘導体化されてもよい。市販のインテグラーゼ阻害剤を特徴付けるこれら及びその他の用途は当業者の周知である。
【0095】
本発明の化合物は、単独で(単剤療法)、または以下に示すような当業者に周知の追加の本発明の化合物またはエントリー阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない、1つ以上の別のHIV阻害剤と組み合わせて用いることができる。
【0096】
一実施例において、本発明の化合物は、追加のHIVインテグラーゼ阻害剤と組み合わせて使用することができる。HIVインテグラーゼを効果的に阻害する化合物は、HIV感染の治療によりよい抗ウイルス剤及び組成物を提供できる(Wai, J.S. et al., J. Med. Chem. 43:4923〜4926(2000)、Grobler, J. et al., PNAS 99:6661〜6666(2002)、Pals, G.C.G. et al., J. Med. Chem. 45:3184〜3194(2002)、Young, S. D., Curr. Opin. Drug Disc. & Devel. 4(4):402〜410(2001)、Godwin, C.G. et al., J. Med. Chem. 45:3184〜3194(2002)、Opar, A. Nature Reviews, Drug Discovery, vol. 6, p. 258〜259,(2007))。当該分野で周知のその他のインテグラーゼ阻害剤には、特許出願番号WO200510305、WO2004039803、WO2004067531、WO2008/048538、WO2003082881、WO2007000043、WO09146555で開示されるものが含まれる。
【0097】
本発明の化合物は、レトロウイルス複製サイクルのほかのステップを標的とする抗ウイルス剤と組み合わせて使用してもよい。例えば、併用投与される抗ウイルス剤は、細胞侵入、逆転写、ウイルスDNAの細胞DNAへの組み込みなどウイルスのライフサイクルの初期事象を標的とするものとすることができる。このようなライフサイクルの初期事象を標的とする抗ウイルス剤には、ジダノシン(ddI)、ザルシタビン(ddC)、スタブジン(d4T)、シドブジン(AZT)、ポリ硫酸化多糖類、宿主細胞へのウイルス付着または吸収をブロックするsT4(可溶性CD4)、及びCD4陽性Tリンパ球上のCD4受容体へのウイルス結合をブロックするその他化合物が含まれる。AZTの誘導体などその他レトロウイルス逆転写酵素阻害剤も、本発明の化合物と併用投与してウイルス感染価及びそれに関連する症状の低減または排除のための治療的処置を提供することができる。その他抗ウイルス剤の例には、ガンシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノホルメート三ナトリウム(trisodium phosphonoformiate)、エフロルニチン、リバビリン、アシクロビル、αインターフェロン、トリメノトレキサートが含まれる。さらに、逆転写酵素の非ヌクレオシド系阻害剤(例えば、TIBO、エファビレンツ、ネビラピン、デラビルジン)は、ウイルス非コーティング阻害剤、トランス活性化タンパク質の阻害剤(例えば、tatまたはrev)、またはウイルスプロテアーゼの阻害剤と同様に、本発明の化合物の効果を強化するために用いられ得る。これらの化合物は、その他HIVインテグラーゼの阻害剤と併用投与してもよい。
【0098】
本発明に従った併用療法は、HIV複製を阻害する相加効果または複合効果を発揮する。これは、組み合わせられた各治療薬剤が、HIV複製の異なる部位で作用する、または相乗効果を生じるためである。例えば、このような併用療法の使用は、薬剤が単剤療法として投与される場合と比較して、所望の治療効果または予防効果の提供に必要とされる各抗レトロウイルス剤の投与量を有利に低減することも可能にする。各治療薬剤の投与量の低減は、単剤療法と比較して副作用または毒性を低減または排除さえし得ることがよくある。さらに併用療法は単剤療法と比較して薬剤に対するウイルス耐性形成の可能性を低減することができる。
【0099】
好ましい併用療法には、本発明の化合物をAZT、3TC、ddI、ddC、d4T、テノフォビル、FTC、コンビビル(登録商標)(AZT/3TCの組み合わせ)、アバカビル、エファビレンツ、ネビラピン、デラビルジンと組み合わせて投与することが含まれる。また、本発明の化合物は、サクイナビル、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、アタザナビル、ダルナビル、アンプレナビル等のその他HIVプロテアーゼ阻害剤と併用投与してもよい。本発明の化合物とそのようなプロテアーゼ阻害剤の組み合わせは、さまざまなHIVウイルス変異株、HIV疑似種またはその他緊密に関連するウイルスに対する治療または予防効果を高めることができる。
【0100】
本発明の化合物は、ヌクレオシド系または非ヌクレオシド系レトロウイルス逆転写酵素阻害剤(例えば、AZTの誘導体またはHIVアスパルチルプロテアーゼ阻害剤)、HIVエントリー阻害剤、HIVインテグラーゼ阻害剤、免疫調節剤(例えば、ブロピリミン、抗ヒトαインターフェロン抗体、IL-2、GM−CSF、メチオニンエンケファリン、インターフェロンα、ジエチルジチオカルバメート、腫瘍壊死因子、ナルトレキソン、rEPO)、抗生物質(例えば、ペンタミジンイセチオレート)、ワクチン、またはその組み合わせと組み合わせて投与してもよい。
【0101】
本発明の化合物とほかの薬剤の併用療法における患者への投与は、順番で、または同時に行うことができる。さらに、本発明の医薬または予防組成物は、本発明の化合物のインテグラーゼ阻害剤と別の治療または予防薬剤あるいはHIV阻害剤の組み合わせを含んでもよい。AIDS及びHIVの治療に有用な、及び本発明の化合物との併用療法に好適なほかの薬剤の例を次の表1と表2に示す。
【0102】
(表1)



【0103】
(表2)


【0104】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能である抗感染症薬には、アトバクオン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、トリメトプリム、トロバフロキサシン、ピリメタミン、ダウノルビシン、プリマキンと一緒のクリンダマイシン、フルコナゾール、パスチル、オルニジル、エフロルニチンペンタミジン、リファブチン、スピラマイシン、イントラコナゾール−R51211、トリメトレキセート、ダウノルビシン、組換えヒトエリスロポエチン、組換えヒト成長ホルモン、酢酸メゲストロール、テステロン、及び完全経腸栄養剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能である抗真菌薬には、アニデュラファンギン、C31G、カスポファンギン、DB−289、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミカファンギン、ポサコナゾール、及びボリコナゾールが含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能である他の化合物には、アクマンナン、アンサマイシン、LM427、AR177、BMS−232623、BMS−234475、CI−1012、硫酸クルドラン、硫酸デキストラン、STOCRINE EL10、ヒペリシン、ロブカビル、ノバプレン、ペプチドTオクタペプチド配列、ホスホノギ酸三ナトリウム、プロブコル、およびRBC−CD4が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
さらに、本発明の化合物は、カポシ肉腫のような症状の治療用の抗増殖剤と組み合わせて使用可能である。そのような薬剤には、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、A−007、ベバシズマブ、BMS−275291、ハロフギノン、インターロイキン−12、リツキシマブ、パクリタキセル、ポルフィマーナトリウム、レビマスタット、およびCOL−3が含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
本発明の化合物は、化合物のバイオアベイラビリティを高める、または代謝を遅らせる添加剤または医薬組成物と組み合わせて投与してもよい。化合物のバイオアベイラビリティを高める、または代謝を遅らせる添加剤または医薬組成物には、シトクロムP450(CYP450)酵素の少なくとも1つのアイソフォームの阻害剤、好ましくはCYP1A2、CYP2d6、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A4が含まれる。CYP3A4を阻害するために使用可能である好適な薬剤には、デラビルジンとリトナビルが含まれるが、これらに限定されない。そのような組み合わせは、ある化合物または本発明の化合物が単一の製剤に存在するように投与されるか、または個別の製剤の形態で存在し、適切な間隔の時間をあけて順に投与されるか、同時に投与されるものとしてもよい。前記化合物または本発明の化合物を単一または複数の添加剤と同一の製剤内に含めるか否かの選択は、当業者の周知の範囲である。
【実施例】
【0109】
中間体及び化合物の調製
本発明の化合物の調製には、4つの一般的なアプローチ(合成スキーム)が用いられる。
【0110】
第一のアプローチ(スキーム1)は、まずPaul et al. J. Med. Chem., 1977, 20 p745で説明される方法を使用して、ピリドキシンが修飾され(modified)、中間体アルデヒドIが生成される。この中間体とアリールグリニャール試薬の反応により、中間体アルコールIIが得られる。一連の制御された酸化を通して中間体ケトエステルVIIが取得され、確立されたキラルボラン化学を使用してこれをキラルアルコールエステルVIIIに選択的に還元することができる。その後、アセトニドのギ酸での脱保護の後、ヒドロキシルアミンでエステルをヒドロキサム酸に変換することで、最終化合物IXが形成される。
【0111】
第二のアプローチ(スキーム2)は、WO09146555で説明されるとおり、中間体メチル5−((4−メトキシベンジルオキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラートXIIの脱保護と酸化を行い、対応するアルデヒド−エステルXIVを生成することを含む。その後この中間体がグリニャール試薬と反応され、(rac)アルコールエステルVIII中間体が得られる。そしてスキーム1で説明された手順に従い、化合物VIIが最終産物IX、XIに変換される。
【0112】
第三のアプローチ(スキーム3)は、WO09146555で説明されるとおり、メチル3−(ヒドロキシ)−5−ホルミル−4−メチルピコリン酸の選択的ベンジル化によって得られる中間体であるメチル3−(ベンジルオキシ)−5−ホルミル−4−メチルピコリン酸XVから開始する。さらにアリールグリニャール試薬との反応を経てアルコールエステルXVIが得られる。このアルコールXVIが無水酢酸でアシル化され、触媒水素化を通してメチレンXVIIIに還元される。さらに、スキーム1で説明された方法を使用して、最終化合物XIXに変換することができる。
【0113】
第四のアプローチ(スキーム4)は、スキーム3で取得したアルコールエステル中間体XVIで開始される。このアルコールがケトンXXに酸化され、ヒドロキシルアミンと反応される。脱保護とその後のクロマトグラフィーによりそれぞれヒドロキシルアミンXXIII及びXXIIのモノ及びビス付加生成物である2つの化合物が得られる。
【0114】




【0115】
基本手順
シリカゲル60(EM Science製)を使い、適切な溶出速度となるよう指定の溶媒系及び正圧でのフラッシュクロマトグラフィー、またはBiotage SP4(商標)自動クロマトグラフィーシステムで、分取クロマトグラフィーが行われた。化合物の検出は、溶出プレート(分析用または分取用)をヨウ素、紫外光に暴露する、および/または分析用プレートを3%硫酸と1%酢酸を含有するエタノール中のp−アニスアルデヒドの2%溶液で処理した後加熱することによって実施された。または、分析用プレートは3%酢酸を含有するエタノール中の0.3%ニンヒドリン溶液および/または濃硫酸(90mL)を含有する水(750mL)中の(NHMo2420gとCe(SO多価水和物8.3gからなるCAM溶液で処理することができる。
【0116】
別途記載がある場合を除き、すべての開始材料は、Aldrich Co.またはSigma Co.などの市販のものが購入された。融点(mp)は毛管式Buchi 530融点測定装置(未修正)で測定された。マススペクトルはHewlett Packard LC/MSD 1100システムAPCI負モードまたは正モードのいずれかで記録された。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは逆プローブまたはQNPプローブを搭載したBruker AMX 400で記録された。
【0117】
データ取得のため試料は重水素クロロホルム(CDCl)、酸化重水素(DO)または重水素ジメチルスルホキシド(DMSO−d)中で溶解され、テトラメチルシランが内部基準物質として使用された。化学シフト値(δ)はppm(百万分の一)単位、結合定数(J)はHz(ヘルツ)単位、多重度は一重項がs、二重項がd、二重項の二重項がdd、三重項がt、四重項がq、五重項がquint、多重項がm、ブロード一重項(broad singlet)がbr sでそれぞれ表した。
【実施例1】
【0118】
(R)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミドの調製
【0119】
工程1a:(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(2,2,8−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−5−イル)メタノールの調製
50mmol削り屑状マグネシウム1.2gを洗浄し、炎で乾燥して、3N RBFとエーテル30mLを添加した。40mmolの(1−ブロモ−4−フルオロ−3−クロロ)−ベンゼン8.3gをエーテル20mLで希釈し、アルゴン下で削り屑状マグネシウムに滴状に添加した。その後短時間加熱することでグリニャール反応を開始させ、2時間後までに完了した。30mmolの2,8−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−5−カルバルデヒド6.2gをエーテル25mL中で希釈し、滴状に室温でグリニャール試薬に添加した。
【0120】
グリニャール試薬添加の終わり近くに高粘度のペーストが形成された。完了後、混合物を短時間超音波分解し、マグネシウム塩の凝集を分解した。30分後、前記混合物にaq.NHC1を添加してクエンチし、濾過によりMgOを除去して分配した。エーテル相を収集してMgSOで乾燥させ、蒸発させて高粘稠性オイルを得た。その後、この高粘稠性オイルをEtOAcで希釈し、そしてその生成物を結晶化させて沈殿させた。ヘキサン0.1volumeを添加し、混合物を冷却した。濾過によりクリーンな白い生成物(6.4g)が得られ、濃縮溶液の更なる放置(further standing)で別途1.2g(20.8mmol)(収率70%)を得た。
【0121】
工程1b:(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(2,2,8−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−5−イル)メタノンの調製
(4−フルオロフェニル)(2,2,8−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−5−イル)メタノール6.6gを150mLのCHCl中で加熱溶解した。この溶液にMnO 12gを添加し、懸濁剤を2時間還流させた。その後MnOをシリカゲルの1cmパッド上で濾過し、透明な有機相を蒸発させて純粋な(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(2,2,8−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−5−イル)メタノンを得た。
【0122】
工程1c:5−(3−クロロ−4−フルオロベンゾイル)−2,2,8−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン7−オキシドの調製
(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(2,2,8−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−5−イル)メタノン(1b)6.2gを130mLのCHClに溶解させ、70%メタ−クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)6gを一分量に添加した。反応混合物を25分間撹拌して反応を完了させた。100mLの1M KCOを添加し、有機相を抽出した。残りの水相を50mLずつのCHClで2回抽出し、有機相を合わせた。25gのCaCOをこの有機相に添加し、15分間撹拌した。CaC0を濾過してクリーンな生成物の淡黄色溶液を得た。蒸発させて所望される生成物6.2g(1c)を得た。
【0123】
工程1d:(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(8−(ヒドロキシメチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−5−イル)メタノンの調製
5−(4−フルオロベンゾイル)−2,2,8−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン7−オキシド5.5gをトリフルオロ酢酸無水物(TFAA)5mL中のジクロロメタン(DCM)20mLに溶解し、続いて激しく沸騰させ、沸騰が治まったらTFAA30mLを追加し、溶液を一晩(14時間)撹拌する。TLCが反応完了を示した(REtOAc;(s.m.0.2)、product 0.9)。蒸発によってDCMを除去し、溶媒をMeOH(100mL)に変えた。この溶液を30分間撹拌し、その後蒸発させて高粘稠性オイルを得た。トルエンを添加して、高真空で除去し、所望される生成物を含む泡沫を得た(1d)。
【0124】
工程1e:5−(3−クロロ−4−フルオロベンゾイル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルバルデヒドの調製
(4−フルオロフェニル)(8−(ヒドロキシメチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−5−イル)メタノン(工程1dからの全収量)を200mLのCHClと15gのMnOに添加した。得られた懸濁剤を完了まで4時間還流させた。その後セライトを通した濾過によりMnOを除去し、CHCLで2回洗浄した。溶媒を蒸発させて粗生成物5gを得、これを更なる精製なしで使用した。
【0125】
工程1f:メチル5−(3−クロロ−4−フルオロベンゾイル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラートの調製
粗5−(4−フルオロベンゾイル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルバルデヒド4.0g(11.5mmol)を150mLのMeOHに溶解されたカリウムトリメチルシラノエート4gを含む溶液に添加し、その後I粉末4gを添加した。この混合物を室温で1時間撹拌した。その後メタノールを除去し、EtOAcで置き換え、メタ重亜硫酸塩(5% lvol)を含む飽和NaHCOに対して抽出された。有機相を乾燥させて蒸発させ、残油を熱いヘキサンに溶解させて、活性炭を添加した。この混合物を熱濾過し、濃縮された淡黄色の溶液を得、これを4℃まで冷却し、固体を分離した。この固体4.0gを濾過し、乾燥させて熱いTBME(及び浄化のためのDCM数滴)に溶解させた。その後この溶液を−10℃で1時間冷却した。オフホワイトの固形物を濾過し、一晩乾燥させて所望される生成物2.6g(収率60%)を得た(1f)。上清を蒸発させて所望される粗生成物を含む粘性の固体を得た。
【0126】
工程1g:(R)−メチル5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラートの調製
R−メチル(CBS)100mgを10mLのTHFに溶解した。3mLの1.0MボランTHFを添加し、混合物をアルゴン雰囲気中で−20℃まで冷却した。ケトン1gを10mLのTHFに溶解し、ゆっくりと室温まで温めながら1.5時間かけて撹拌しながら滴状に添加し、2時間置いた。その後10mLの無水MeOHを添加し、混合物を〜50℃まで加熱して反応(H発生)をクエンチした。溶媒を蒸発させて無水MeOHで置き換え、30分撹拌して再度蒸発させた。
【0127】
工程1h:(R)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミドの調製
工程1gからの粗生成物、(R)−メチル5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラートをピリジン4mLと50%ヒドロキシルアミン1.5mLに水中で溶解し、透明な黄色い溶液を生成した後、これを80℃まで1時間加熱した(変換を完了)。その後含水ピリジンを真空蒸留で脱気し(evacuated)、残油をEtAcに溶解した。10%クエン酸での抽出で残ったピリジンとヒドロキシルアミンを除去した。アセトニドの脱保護が開始されて有機相が混濁した。EtAcを除去し、残油を70%ギ酸3mL中に溶解した。この溶液を室温に30分間置き、それを以って脱保護が完了した。前記油を20mLの水と70mLのEtAcで希釈し、生成物を有機相に抽出した。黒い含水層が形成され、これを一分量50mLのEtAcで抽出した。この抽出後、有機相を(20mLに)濃縮し、0.1N NaOH(2x20mL)で抽出した。その後前記含水層を除去し、ヘキサンで洗浄した。前記含水層を再び除去し、生成物(酸pH)の完全な沈殿が見られるまで酸性化した。その後、前記沈殿物をEtAcに抽出し、前記含水層を逆抽出した。溶媒を蒸発させ、泡沫状生成物を得た。MeCN(1mL)を溶解のため添加し、さらにヘキサンを添加して二相混合物を生成した。30分間撹拌して結晶粉末沈殿物を得、これを濾過してオフホワイトの粉末0.56gを得た。

【実施例2】
【0128】
5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミドの調製
【0129】
工程2a:メチル5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラートの調製
4−フルオロフェニルマグネシウム臭化物溶液(テトラヒドロフラン中1M0.438mL、30.0mmol、1.1eq)を−78℃でメチル5−ホルミル−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラート溶液(テトラヒドロフラン5.0mL中0.100g、0.398mmol、1eq.)に添加した。反応混合物を20分間−78℃で撹拌した。飽和重炭酸塩溶液を添加し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮し、粗生成物メチル5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラート2a 0.065gを(47%収率)白色固体として得た。
H−NMR.MS−ESI m/z348[MH]
【0130】
工程2b:メチル5−((4−フルオロフェニル)(アセトキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラートの調製
トリエチルアミン(0.031g、0.300mmol、3eq)と無水酢酸(0.011g、0.111mmol、1.1eq)をジクロロメタン4.0mLに溶解したメチル5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラート2a溶液に添加した。この反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで飽和重炭酸塩溶液を添加した。その後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相を合わせて減圧下で濃縮し、粗生成物2b(100%収率)0.039gを白色固体として得た。
H−NMR.MS−ESIm/z390[MH]
【0131】
工程2c:メチル5−(4−フルオロベンジル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラートの調製
メチル5−((4−フルオロフェニル)(アセトキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラート(0.100mmol、1eq)0.039gと10%Pd/C 5mgをメタノール4.0mLに添加し、大気水素下で一晩撹拌した。触媒を濾過し、粗生成物をシリカゲル(40%酢酸エチル/ヘキサン)で精製して所望される生成物2c 0.016g(50%収率)を白色固体として得た。
MS−ESIm/z332[MH]
【0132】
工程2d:5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミドの調製
ヒドロキシルアミン溶液5.0mL(50重量%、水に溶解)をテトラヒドロフラン5.0mL中のメチル5−(4−フルオロベンジル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラート(0.045mmol、1eq)0.015gの溶液に添加した。この反応混合物を還流状態で6時間撹拌した。pHを6に調整し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮し、所望される生成物(2d)0.006g(40%収率)を白色固体として得た。

【実施例3】
【0133】
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミドの調製
水3.0mL中のヒドロキシルアミン50%をテトラヒドロフラン5.0mL中のメチル5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラート2a(0.030g、0.086mmol、1eq)に添加した。反応混合物を一晩還流状態で撹拌した。pHを6に調整し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をバイオタージ逆相クロマトグラフィーで精製し、0.015gの3(58%収率)を白色固体として得た。

【実施例4】
【0134】
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N−ヒドロキシ−N,2,2−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキサミドの調製
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液(1.809mmol、9eq、1M テトラヒドロフラン中)1.8mLをテトラヒドロフラン(−78℃)5.0mL中に溶解されたN−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩0.041g(0.249mmol、1.1eq.)に添加して10分間78℃で撹拌した。テトラヒドロフラン3.0mLに溶解されたメチル5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラート溶液(0.201mmol、1eq.)0.070gを添加して30分間−78℃で撹拌した。次いで反応混合物に水を添加し、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を合わせ、減圧下で濃縮して粗生成物0.01g(14%収率)を白色固体として得た。
MS−ESIm/z363[MH]
【実施例5】
【0135】
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)−N−メチルピコリンアミドの調製
ギ酸2.0mLを5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N−ヒドロキシ−N,2,2−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキサミド(0.010g、0.028mmol、1eq)に添加した。この反応混合物を室温で10分間撹拌した。その後前記ギ酸を真空下で濃縮し、所望される生成物(5)0.005g(56%収率)を黄色油として得た。
MS−ESIm/z323[MH]
【実施例6】
【0136】
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−3−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)−N−メトキシピコリンアミドの調製
【0137】
工程6a:5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N−メトキシ−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキサミドの調製
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(テトラヒドロフラン中の1M溶液2.25mL、2.25mmol、6eq.−78℃)をテトラヒドロフラン5.0mL中のメトキシルアミン塩酸塩(0.413mmol、1.1eq)0.034gに添加した。この反応混合物を10分間撹拌し、テトラヒドロフラン5.0mL中のメチル5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−2,2−ジメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキシラート0.130g(0.375mmol、1eq)の溶液を添加した。反応混合物を30分間−78℃で撹拌し、飽和アンモニウム塩化物溶液を添加した。その後反応混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機相を合わせて減圧下で濃縮し、粗生成物6a(100%収率)0.136gを白色固体として得た。
MS−ESIm/z390[MH]
【0138】
工程6b:5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−3−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)−N−メトキシピコリンアミドの調製
ギ酸2.0mLを工程6aの生成物(0.376mmol、1eq)0.136gに添加して室温で1時間撹拌した。その後ギ酸を真空下で濃縮し、所望される生成物6(88%)を含む黄色油0.105gを得た。
MS−ESIm/z323[MH]
【実施例7】
【0139】
5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミドの調製
【0140】
工程7a:メチル3−(ベンジルオキシ)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−4−メチルピコリン酸の調製
メチル3−(ベンジルオキシ)−5−ホルミル−4−メチルピコリン酸(3.50mmol、1eq)1.0gをテトラヒドロフラン20.0mLに溶解し、4−フルオロフェニルマグネシウム臭化物溶液(テトラヒドロフラン中の1M、4.20mmol、1.2eq)4.2mLを1時間にわたり−78℃で添加した。次いで反応混合物を20分間−78℃で撹拌した。飽和重炭酸塩溶液を添加し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル(50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、所望される生成物7a(53%収率)を含む無色油0.70gを得た。
MS−ESIm/z382[MH]
【0141】
工程7b:メチル5−(アセトキシ(4−フルオロフェニル)メチル)−3−(ベンジルオキシ)−4−メチルピコリン酸の調製
5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド0.70gをジクロロメタン10.0mlに溶解し、トリエチルアミン(2.78mmol、5eq.)0.281g、DMAP2.0mg及び無水酢酸(1.669mmol、3eq.)0.170gを溶液に添加した。この反応混合物を室温で1時間撹拌し、重炭酸塩の飽和溶液を添加した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相を合わせて減圧下で濃縮し、粗生成物7b(93%収率)0.260gを白色固体として得た。
MS−ESIm/z424[MH]
【0142】
工程7c:メチル5−(4−フルオロベンジル)−3−ヒドロキシ−4−メチルピコリン酸の調製
工程7bの生成物(0.260g、0.615mmol、1eq)とメタノール(4.0mL)中の10%Pd/C(20mg)を大気水素下で一晩撹拌した。その後触媒を濾過し、粗生成物をシリカゲル(40%酢酸エチル/ヘキサン)で精製して7c(100%)0.169gを白色固体として得た。
MS−ESIm/z276[MH]
【0143】
工程7d:5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミドの調製
ヒドロキシルアミン溶液(50重量%、水中)5.0mLをテトラヒドロフラン5.0mL中のメチル5−(4−フルオロベンジル)−3−ヒドロキシ−4−メチルピコリン酸7c(0.615mmol、1eq)0.169gの溶液に添加した。反応混合物を還流状態で一晩撹拌した。pHを6に調整し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させて、真空下で濃縮した。粗生成物をバイオタージ逆相クロマトグラフィーで精製し、所望される生成物7(71%収率)0.120gを白色固体として得た。
MS−ESIm/z277[MH]
【実施例8】
【0144】
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミドの調製
【0145】
工程8a:3−(ベンジルオキシ)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N−ヒドロキシ−4−メチルピコリンアミドの調製
ヒドロキシルアミン溶液(50重量%、水中)5.0mLをテトラヒドロフラン5.0mL中のメチル3−(ベンジルオキシ)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−4−メチルピコリン酸(0.627mmol、1eq.、実施例7工程7aの生成物)0.239gの溶液に添加した。反応混合物を還流状態で一晩撹拌し、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮し、所望される生成物8a(84%収率)0.200gを白色固体として得た。
MS−ESIm/z383[MH]
【0146】
工程8b:5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミドの調製
3−(ベンジルオキシ)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N−ヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド(0.110g、0.288mmol、1eq)と10%Pd/C(5mg)をメタノール4.0mLに溶解し、大気水素下で1時間撹拌した。その後触媒を濾過し、反応混合物を真空下で濃縮した。粗生成物をバイオタージ逆相クロマトグラフィーで精製し、所望される生成物8(65%収率)0.055gを白色固体として得た。
MS−ESIm/z293[MH]
【実施例9】
【0147】
5−(4−フルオロベンゾイル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミドの調製
【0148】
工程9a:メチル3−(ベンジルオキシ)−5−(4−フルオロベンゾイル)−4−メチルピコリン酸の調製
2−ヨードキシ安息香酸(0.577g、2.06mmol、3eq.)を酢酸エチル(0.627mmol、1eq.)250mL中のメチル3−(ベンジルオキシ)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−4−メチルピコリン酸(実施例7工程7aの生成物)0.239gの溶液に添加し、還流状態で1時間撹拌した。その後固体を濾過し、溶液を濃縮した。粗生成物をシリカゲル(10%エチル酢酸塩/ヘキサン)で精製し、所望される生成物9a(85%収率)0.222gを白色固体として得た。
MS−ESIm/z380[MH]
【0149】
工程9b:3−(ベンジルオキシ)−5−(4−フルオロベンゾイル)−N−ヒドロキシ−4−メチルピコリンアミドの調製
ヒドロキシルアミン溶液(50重量%、水中)5.0mLをテトラヒドロフラン(0.586mmol、1eq)5.0mL中のメチル3−(ベンジルオキシ)−5−(4−フルオロベンゾイル)−4−メチルピコリン酸(9a)0.222gの溶液に添加した。反応混合物を還流状態で一晩撹拌し、次いで酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮し、所望される生成物9b(89%収率)0.200gを白色固体として得た。
MS−ESIm/z430[MH]
【実施例10】
【0150】
(E)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシイミノ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミドの調製
3−(ベンジルオキシ)−5−(4−フルオロベンゾイル)−N−ヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド(9b;0.237mmol、1eq.)0.090gと、10%Pd/C 5mgをメタノール4.0mLに溶解し、大気水素下で1時間撹拌した。その後触媒を濾過し、反応混合物を真空下で濃縮した。粗生成物をバイオタージ逆相クロマトグラフィーで精製し、5−(4−フルオロベンゾイル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド(実施例9工程9bの生成物)(22%収率)0.015gと対応するオキシム(E)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシイミノ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド(10)(22%収率)0.015gをいずれも白色固体として得た。
MS−ESIm/z291[MH]
MS−ESIm/z306[MH]
【実施例11】
【0151】
(S)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミドの調製
実施例1の手順に続いて、工程1gで(S)−CBSをキラル還元剤として使用した。
【0152】
(表3)実施例の化合物一覧


【実施例12】
【0153】
生物学的評価。インビトロインテグラーゼ阻害アッセイ
鎖転移アッセイで生成したデータに基づき、本発明の化合物のIC50を決定した。IC50は、組換えHIV−1インテグラーゼによる3'プロセス(processed)オリゴヌクレオチドの組み込みを阻害する試験化合物の能力の評価である。
【0154】
鎖転移アッセイは本質的にHazuda,D.J.;Felock,P.;Hastings,J.C.;Pramanik,B.;Wolfe,A.J.Virol.1997、71、7005〜7011に記載されるように実施された。鎖の5'末端がビオチン標識され、インテグラーゼによりプロセスされたドナーDNA(1.5pmol/ウェル)をストレプトアビジンコートマイクロタイタープレート上に固定した。30mM MnClを含む反応バッファー(20mM Hepes、pH7.6、5mM B−メルカプトエタノール、50μg/mLウシ血清アルブミン)中で固定されたドナーオリゴヌクレオチドに組換えインテグラーゼ(250ng/ウェル)をアセンブルした。過剰な酵素を除去し、複合体(complex)をよく洗浄した後、標的DNA基質を添加した。標的DNA(0.75pmole/ウェル)基質の各3'末端にFITCで標識した。鎖転移後、アルカリホスファターゼ(Roche)及び化学発光基質(Tropix CSPDとSapphire IIエンハンサー、Applied Biosystems)と結合された抗FITC抗体を使用してFITC標識生成物を検出した。アッセイは最終濃度10%DMSOで実施された。鎖転移の阻害を具体的に評価するため、化合物はアセンブリの後、標的DNA添加の前に加えられた。
【0155】
インテグラーゼ鎖転移アッセイの結果はIC50値として報告する。IC50値はシグモイド用量反応式を使用して決定される。阻害%の算出に使用された式は、阻害%=[1−(試料数/陽性対照平均)]*100である。HIV−1インテグラーゼ活性の阻害%を化合物濃度(M)の対数に対してグラフ化した。GraphPad PrismまたはActivityBase(IDBS)ソフトウェアを使用し、次のシグモイド用量反応式に従ってIC50を算出した。
Y=(A+((B−A)/(1+((C/X)^D))))
式中、Aは下方プラトー(約0%)、Bは上方プラトー(約100%)、CはIC50、Dは勾配、Xは化合物濃度(M)、Yは阻害%である。
【0156】
IC50により表された鎖転移の阻害は、本発明の化合物がHIVインテグラーゼを阻害し、市販のHIVインテグラーゼ阻害剤であるラルテグラビル、及び現在臨床開発中のインテグラーゼ阻害剤であるL−708906と類似のIC50を有することを示している(表4)。
【0157】
(表4)鎖転移アッセイIC50のデータ

【実施例13】
【0158】
抗ウイルス有効性
培養MT−4細胞を使用する2つの異なるインビトロHIV感染アッセイ、(1)野生型NL−4.3に細胞を感染させたマルチサイクル感染、及び(2)ルシフェラーゼを有するエンベロープ欠損(env−)NL−4.3ウイルスであって、HIV−1 env(HXBc2)の偽型であるウイルスに細胞を感染させた単サイクル感染、から取得したEC50値に基づいて、本発明のインテグラーゼ阻害剤化合物の抗ウイルス有効性を評価した。
【0159】
マルチサイクル感染アッセイのインキュベーション期間は6日とした。比色分析MTTアッセイ(A.J.Japour et al,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,37,1095〜1101,1993及びR.Pauwels et al.Journal of Virological Methods,20,309〜321,1988)を使用して細胞生存率(細胞保護)及びEC50を決定した。
【0160】
単サイクル感染アッセイのインキュベーション期間は48時間とした。ある範囲の薬物濃度にわたるルシフェラーゼシグナルの測定値に基づいて、Chen et al.,Journal of Virology,Feb.1994,Vol.68,No. 2,p.654〜660に記載のようにEC50を決定した。
【0161】
これらのアッセイの結果を表5に示す。本発明のインテグラーゼ阻害剤は、スキーム1〜15及び本明細書に記載の実施例に記載の合成方法を使用して調製した。表5に列挙する化合物の参照番号(実施例番号)は先に記載の実施例1〜11の実施例番号に対応している。これらのデータは、インテグラーゼ阻害剤としての、並びにHIV感染及びAIDSの治療用の本発明の化合物の抗ウイルス有効性を示す。試験化合物は強力な抗ウイルス活性を示し(EC50<100nM)、かつ選択的細胞インテグラーゼであることを示す。さらに、HIV−1エンベロープをVSV−Gで置き換えた場合に、同様の抗ウイルス活性が観察され、これは本発明の化合物がエントリー後阻害剤であることを証明している。
【0162】
(表5)細胞保護−細胞毒性アッセイの結果

【実施例14】
【0163】
抗ウイルス活性に対するタンパク質結合の効果
ヒト血清が存在しない状況と存在する状況におけるマルチサイクル抗ウイルス活性をNL4.3ウイルス感染の6日後にp24 ELISA測定によって判定した。
【0164】
表6に示すように、結果には抗ウイルス活性に対するタンパク質結合の中程度の効果が示された。
【0165】
(表6)抗ウイルス活性に対するタンパク質結合の効果

【0166】
他の態様
本明細書に示す実施例、合成スキーム及び手順は例示のみを目的とする。それらは、網羅的であること、または本発明の範囲を本明細書に記載の具体例、合成スキーム及び手順に限定することを意図していない。いくつかの態様を参照して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に開示される本発明の精神および範囲から逸脱することなく各種の修正を行うことができるということを当業者は理解するであろう。他の態様は特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物:
【化1】

式中、
XがHまたはOHであり、
YがHまたはOHであり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がH、C1−6アルキル、C1−6フルオロアルキル、またはベンジルであり、
がH、C1−6アルキル、またはベンジルであり、かつ
がHまたはC1−6アルキルである。
【請求項2】
式(Ia)の化合物である、請求項1記載の化合物:
【化2】

式中、
XがOHであり、
YがHまたはOHであり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がH、C1−6アルキル、またはベンジルであり、
がH、C1−6アルキル、またはベンジルであり、かつ
がHまたはC1−6アルキルである。
【請求項3】
式(Ib)の化合物である、請求項1記載の化合物:
【化3】

式中、
XがOHであり、
YがHまたはOHであり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がH、C1−6アルキル、またはベンジルであり、
がH、C1−6アルキル、またはベンジルであり、かつ
がHまたはC1−6アルキルである。
【請求項4】
式(Ic)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物:
【化4】

式中、
XがOまたはN−OHであり、
YがHまたはOHであり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がHまたはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、
がH、C1−6アルキル、またはベンジルであり、
がH、C1−6アルキル、またはベンジルであり、かつ
がHまたはC1−6アルキルである。
【請求項5】
(R)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、
5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N−ヒドロキシ−N,2,2−トリメチル−4H−[1,3]ジオキシノ[4,5−c]ピリジン−8−カルボキサミド、
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)−N−メチルピコリンアミド、
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−3−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)−N−メトキシピコリンアミド、
5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド、
5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド、
5−(4−フルオロベンゾイル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド、
(E)−5−((4−フルオロフェニル)(ヒドロキシイミノ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−メチルピコリンアミド、および
(S)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、
から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
(R)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、
5−(4−フルオロベンジル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、および
(S)−5−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)−N,3−ジヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ピコリンアミド、
からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物及び希釈剤の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物、少なくとも1つの追加のHIV阻害剤、および希釈剤の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
HIV感染の治療のための医薬の製造における請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項10】
後天性免疫不全症候群(AIDS)またはエイズ関連症候群の治療のための医薬の製造における請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項11】
C型肝炎感染症の治療のための医薬の製造における請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項12】
哺乳動物におけるHIV感染を治療または防止する方法であって、HIV感染の治療または防止に有効な量の請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物を前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
哺乳動物におけるAIDSまたはエイズ関連症候群を治療または防止する方法であって、AIDSまたはエイズ関連症候群の治療または防止に有効な量の請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物を前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項14】
哺乳動物におけるHIV複製を阻害する方法であって、哺乳動物におけるHIV複製を阻害するために有効な量の請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物を前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
細胞におけるHIV複製を阻害する方法であって、細胞をHIV複製の阻害に充分な量の請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項16】
少なくとも1つの追加のHIV阻害剤を前記哺乳動物に投与するか、または前記細胞に接触させることをさらに含む、請求項12〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
HIV阻害剤が、エントリー阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、融合阻害剤、およびインテグラーゼ阻害剤からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
HIVが少なくとも1つのHIV阻害剤に対して耐性である、請求項12、14、または15記載の方法。

【公表番号】特表2013−517302(P2013−517302A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549212(P2012−549212)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/CA2011/000041
【国際公開番号】WO2011/088549
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(312016610)タイメッド バイオロジクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】