説明

HIVエピトープ及び同じものを含む製薬組成物

本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列からなるエピトープを含み、且つ24アミノ酸以下の長さを有するペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HLA-DR1分子に特異的に結合し得る、且つHLA-DR1表現型及びそれらの機能的アナログを有する被験者において免疫応答を誘導し得るウイルス性抗原由来のエピトープに関する。
【0002】
本発明はまた、これらのエピトープ及び/またはそれらの機能的アナログを含有するペプチドを含む製薬組成物、並びにこれらのペプチドの使用を含む、ウイルス感染した可能性のある個体の免疫状態を測定するための診断方法に関する。
【0003】
とりわけ、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含む、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の抗原、p24タンパク質由来の免疫原性エピトープに関する。
【背景技術】
【0004】
HIV型ウイルスは、慢性感染症を引き起こす、すなわち、感染症を除去するための十分な免疫応答を誘導しないウイルスである。
【0005】
この感染症は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を引き起こす可能性がある。この疾患は、CD4+ T細胞数の著しい減少にともなう、日和見病原体による感染症に対する感受性の増大、カポジ肉腫の侵襲的形態の出現、またはB細胞リンパ腫の発症を特に特徴とする。
【0006】
この感染症と闘うための、多くのワクチン戦略が開発されている。これらの戦略のほとんどは、HIVに暴露された場合の感染症を予防するために抗体の産生を向上させることを意図した手段、または感染した細胞を検出及び破壊するために細胞毒性Tリンパ細胞(またはCD8+若しくはCTL)を活性化し、それによって感染症を制御及び除去することを意図した手段を用いる。
【0007】
HIVのウイルスキャプシドの種々のタンパク質が、抗体を産生するために用いられている。従って、抗体を産生するための、HIVのGagタンパク質のp24抗原のペプチドの使用は、US-6,593,079から既知である。
【0008】
CD4+ T細胞またはヘルパーTリンパ細胞(またはHTL)依存性の応答が、十分なCD8+細胞機能の維持及びウイルス血症の制御に重要に介在していると考えられる。
【0009】
しかし、HIVに特異的に応答するCD4+ T細胞は、HIVによって優先的に感染し且つ除去され、それによって、感染症の発症後のヘルパーT細胞を活性化する潜在的なワクチンの能力を制限している(Douek et al., Nature, 2002, 417: 95-98)。慢性的に感染した患者は、HIVの抗原及び日和見病原体の抗原の両方に対して、T細胞型の応答を誘導することができない。従って、HIV感染症を進行させる場合に、HTL応答の損失は中心的な役割を担っている。
【0010】
HIV感染症を制御する際の、これらの細胞の中心的な役割に関わらず、現在までに、ごく少数の制限された免疫原性CD4+エピトープが同定されている(Wilson et al., J. Virol, 2001, 75: 4195-4207;Kaufmann et al., J. Virol., 2004, 78: 4463-4477)。
【特許文献1】US-6,593,079
【特許文献2】WO 00/29008
【特許文献3】WO 01/29190
【非特許文献1】Wilson et al., J. Virol, 2001, 75: 4195-4207
【非特許文献2】Kaufmann et al., J. Virol., 2004, 78: 4463-4477
【非特許文献3】Pajot et al., Int. Immunol., 2004, 16: 1275-1282
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、HIVの抗原に対するCD4+ Tリンパ細胞依存性の応答が活性化され得る、新しいCD4+制限エピトープが必要である。
【0012】
さらに、HIV感染症を予防及び/または治療することを意図する製薬組成物、特にワクチンを獲得する必要がある。
【0013】
さらに、当該疾患に対する彼/彼女の感受性を測定し、且つ実施されるべき処理をよりよく調整し得るために、HIV感染症に冒される可能性のある患者の免疫応答及び/または免疫状態を説明できることが重要である。
【0014】
従って、患者の免疫状態を特徴づけし得るマーカーを獲得する必要がある。
【0015】
また、HIV感染症に冒される可能性のある被験者の免疫状態を説明でき、さらに、必要な場合には、処理に対する彼/彼女の免疫システムの応答を評価するための診断方法を獲得する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、これらの要求に十分に応えることである。本発明者は、HLA-DR1表現型に特異的な、HIVのGagタンパク質から生じるp24抗原由来の3つのエピトープを同定した。
【0017】
その第一の特徴点の1つによれば、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有する少なくとも1つのエピトープ、及びその機能的アナログを含むペプチドに関する。
【0018】
本発明者は、これらのエピトープが、p24タンパク質によってワクチン接種した、クラスII(IAβb0)H-2を欠失したHLA-DR1トランスジェニックマウス(Pajot et al., Int. Immunol., 2004, 16: 1275-1282)由来のCD+ T細胞のin vitroにおける増殖を誘導し得ることを観察した。さらに、これらのペプチドは、HIV、特にHIV-1に冒された患者由来、または血清陰性の個体由来の細胞のCD4+ T細胞型応答を誘導し得、その後、抗原提示細胞によるこれらの細胞の活性化が続く。本発明に係るペプチドに応答してCD4+ T細胞を増殖することは、HLA-DR1表現型を特徴とし、当該生物学的応答は、ELISPOTによって測定されるようなサイトカイン、IFN-γγの分泌を特徴とする。
【0019】
本発明の意味において、用語「機能的アナログ」とは、本発明に係るペプチドの免疫原性活性を模倣し得る、すなわち、HLA-DR1分子に結合し、且つCD4+ Tリンパ細胞における生物学的応答を誘導する能力を特に有する、任意のペプチドまたはペプチドアナログを意味することを意図する。
【0020】
HLAは「ヒト白血球抗原」を意味し、MHC「主要組織適合複合体」と同意義のものである。HLA(またはMHC)は、クラスI及びIIに分類される遺伝子のセットに相当し、非常に高い多型を有し、当該細胞の表面でペプチド断片を提示することをその機能とする分子をコードする。
【0021】
本発明の意味において、「免疫原」とは、免疫応答を引き起こし得る任意の物質を意味することを意図する。免疫原または免疫原性物質は、抗原とは機能的に異なる。抗原は、特異的抗体に結合し得る任意の物質であると定義される。それゆえ、すべての抗原は、抗体型の応答を誘導し得ると考えられるが、それらのいくつかは、このように作用し得るために抗原に結合しなければならない。従って、すべての免疫原は抗原であるが、すべての抗原は免疫原性ではない。
【0022】
別の特徴点によれば、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有するエピトープ、及び後者の機能的アナログを含み、且つ24アミノ酸以下の長さを有するペプチドに関する。
【0023】
別の特徴点によれば、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有する少なくとも1つのエピトープ、及びその機能的アナログを含む複数エピトープペプチドに関する。
【0024】
さらに別の目的によれば、本発明は、HLA-DR1表現型の患者におけるヒト免疫不全ウイルスによる感染症を予防及び/または治療することを意図した製薬組成物を調製するための、本発明に係る少なくとも1つのペプチド及び/または前記配列をコードする1つの核酸の使用に関する。
【0025】
さらに別の目的によれば、本発明は、タイプIIのHLAのα鎖(DRα)及びβ鎖(DRβ)、スペーサーアーム、並びにストレプトアビジンからなるビオチン化複合体と結合し、クラスII四量体を形成する、本発明に係るペプチドに関する。
【0026】
さらに別の特徴点によれば、本発明は、製薬上許容し得るキャリア、賦形剤、希釈剤、及び/またはアジュバントと組み合わせた、少なくともある有効な量の本発明に係る少なくとも1つのペプチドを含む製薬組成物に関する。
【0027】
[ペプチド]
本発明に係るペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有する少なくとも1つのエピトープ、及びその機能的アナログを含む単離ペプチドである。
【0028】
本発明の意味において、「ペプチド」とは、ペプチド結合によって連結したアミノ酸鎖を意味し、DまたはL型のアミノ酸、及びアミノ酸の任意の誘導体、例えば、シトルリン、オルニチン、β−アミノ酪酸、並びに本発明に好都合であろう非天然アミノ酸も含んでよい。通常、ペプチドは2-30個のアミノ酸、特に6-25個、とりわけ12-20個のアミノ酸を含んでよい。
【0029】
本発明の意味において、「エピトープ」とは、抗体によって認識される抗原領域、または抗原の受け手を意味する。エピトープはまた、「抗原決定基」とも称される。T細胞エピトープは、タンパク質性抗原由来の短いペプチドである(CD8+ T細胞に対しては6-10アミノ酸、CD4+ T細胞に対しては12-24アミノ酸)。
【0030】
特に、本発明に係るペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有するエピトープ、及びその機能的アナログを含み、且つ24アミノ酸以下の長さを有する単離ペプチドである。
【0031】
とりわけ、本発明に係るペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有するペプチド、及びその機能的アナログを含む単離ペプチドである。
【0032】
機能的アナログまたは同等の生物学的機能的アナログは、本発明に係るペプチドと比較して構造的変化を含むが、一方で、本発明に係るペプチドの免疫原性特性(または機能的生物学的特性)を保持する(これらのペプチドのHLA-DR1分子との相互作用の能力、及びCD4+ Tリンパ細胞における生物学的応答の誘導によって定義される)ペプチドを指すものであると、当業者に解される。種々の考え得る変化は、物理的、化学的、及び/または生物学的手段、例えば、1つ以上のアミノ酸を他のもので置換する、1つ以上のアミノ酸を挿入する、及び/または1つ以上のアミノ酸を欠失させる等によって導入されてよい。
【0033】
都合のよい代替例によれば、本発明に係るペプチドの機能的アナログは、機能的生物学的特性を向上させるものから選択される。
【0034】
それらの比較的小さいサイズのために、本発明に係るペプチドは、当業者に既知である任意のペプチド合成技術、例えば、溶液中における合成方法または固相における合成方法等によって得ることができる。
【0035】
ペプチド合成とは別に、他の方法、特に組換えDNA技術によって本発明に係るペプチド得ることもまた、後に記載されるように、考慮されてよい。
【0036】
他の実施態様によれば、本発明に係るペプチドまたはそのアナログは、それらの免疫原性特性を増大させるための他のペプチドと結合させてもよい。例えば、本発明に係るペプチドを、特にスペーサーアームを用いて、例えば、細胞毒性Tリンパ細胞の応答に対する刺激活性を有するエピトープを含む他のペプチドと結合させてよい。細胞毒性Tリンパ細胞応答を活性化し得るHIV抗原由来のエピトープを含むペプチドの例として、WO 00/29008出願に言及されているペプチドを挙げることができる。
【0037】
前記スペーサーアームは、アミノ酸等の比較的小さいサイズの分子で、且つ生理学的条件下で物質的に中性であるものを含んでよい。
【0038】
それが存在する場合、前記スペーサーアームは、同一または異なる、少なくとも1つまたは2つのアミノ酸、特に3-15個のアミノ酸、とりわけ6-10個のアミノ酸を含んでよい。
【0039】
他の代替例によれば、本発明に係るペプチドは、いずれのスペーサーアームなしで、他のペプチドに連結させてよい。
【0040】
本発明の他の実施態様によれば、本発明に係る少なくとも1つのペプチドは、複数エピトープペプチドコンストラクト中に含まれてよい。
【0041】
ポリペプチド若しくはペプチド、またはポリエピトープ若しくは複数エピトープは、組換えまたは合成技術によって、1つのポリペプチド中に結合した2-50個の免疫原性ペプチド、特に4-20個、とりわけ8-12個の免疫原性ペプチドを例えば含んでよい。
【0042】
前記複数エピトープペプチドは、線状または分枝状であってよい。それらを、化学合成方法によってまたは組換えDNA技術によって作製することができる。
【0043】
前記複数エピトープコンストラクトは、ヘテロ多量体またはホモ多量体型のものであってよい。
【0044】
それは、ヘルパーTリンパ細胞及び/または細胞毒性Tリンパ細胞の活性を刺激するエピトープを含んでよい。
【0045】
本発明に係るペプチドは、そのように都合よく用いられ、あるいはHIV感染症、特にHIV-1感染症を予防及び/または治療するための、以下に定義される例としての製薬組成物中に配合される。
【0046】
[核酸及び発現ベクター]
当業者は、本発明に係るペプチドを得るために、組換えDNAに基づく方法に従って、例えば、マニュアル「Molecular Cloning - a Laboratory Manual」(第2版), Sambrook et al., 1989, vol. 1-III, Coldspring Harbor Laboratory, Cold spring Harbor Press, NY, (Sambrook)を用いることができる。
【0047】
遺伝子コードの縮重のために、核酸のコンストラクトを保存している多くの異型に関して、機能的に同一のアミノ酸の配列を得ることが可能であると解される。
【0048】
本発明に係る核酸の配列中に変化を導入する結果は、任意の既知の免疫学的試験を用いて、核酸の配列によりコードされるペプチドの免疫原性特性を測定し、且つ変化させたペプチドに関して得られた結果と、変化させないペプチドに関して得られたものとの比較をおそらく含むことによって特に評価され得る。
【0049】
先に言及した複数エピトープコンストラクトの獲得は、酵素(例えば、リガーゼ型の)によるまたは化学合成による、エピトープを含むペプチドのそれぞれをコードする組換えまたは合成の核酸配列の連結によって実施され得る。
【0050】
従って、本発明は、本発明に係る少なくとも1つのペプチド、及びそれらの機能的アナログをコードする核酸の配列に関する。
【0051】
さらにある実施態様によれば、少なくとも1つの本発明に係る核酸の配列を、任意の適切な発現ベクター中に導入してよい。
【0052】
次いで、これらのベクターを、宿主細胞を形質転換するために、及び所望の組換えペプチドを作製するために用いることができる。
【0053】
宿主細胞における少なくとも1つの組換えペプチドの発現を可能にするために、後者をコードする核酸の配列を、発現ベクター中で、その開始及び終始コドンの位置で、それぞれプロモーター領域及びターミネーター領域、並びに通常複製システムと機能的に結合させてよい。
【0054】
先に定義された発現ベクターを用いることによる、本発明に係るペプチドを産生するための宿主細胞、例えば、細菌、酵母、昆虫、哺乳類、または植物細胞の使用も、本発明の範囲内で考慮されてよい。
【0055】
都合よくは、本発明に係る核酸を含む発現ベクターを発現し得る哺乳類細胞は、例えば、抗原提示細胞であってよい。
【0056】
任意の適切な技術、例えば、リン酸カルシウムまたはエレクトロポレーションを用いたトランスフェクションによって、宿主細胞を形質転換するために、本発明に係るペプチドをコードする核酸の配列を含む発現ベクターを用いることができる。
【0057】
[抗体]
別の実施態様によれば、本発明はまた、本発明に係る少なくとも1つのペプチドによって獲得され得る少なくとも1つの抗体に関する。この抗体は、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含むエピトープに、特異的に結合する能力を有する。
【0058】
従って、本発明に係るペプチドを、当業者に既知の異なる技術を用いて、抗体を作製するために用いることができる(Current Protocols in Immunology, Willey/Greene NYに記載されるもの等;及び抗体:Laboratory Manual Harlow, Harlow and Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。
【0059】
それによって得られる抗体を、HIV感染症に冒される可能性のある個体における、例えば、診断的及び/または治療的手法として用いることができる。
【0060】
本発明に係るペプチドを、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を獲得するためのものとして用いることができ、あるいはそれらを、他の免疫原、例えば、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンA等の免疫原性特性を有する細菌タンパク質の他の断片と、または複数エピトープペプチドコンストラクト中にある、またはHLA-DR1分子若しくはその断片と結合した他のエピトープと結合させてよい。
【0061】
ある実施態様によれば、本発明に係る抗体は、特異的複合体型であってよく、且つ本発明に係るエピトープ及びHLA-DR1分子を含む複合体に特異的に結合し得る。
【0062】
本発明に係る抗体は、本発明に係るペプチドに結合する能力を有する抗体断片(例えば、Fab断片)、及び組換え一本鎖型の抗体(例えば、scFv抗体)を含む。
【0063】
前記モノクローナル抗体は、所望の抗体を分泌する細胞、例えば、培養中のBリンパ細胞またはハイブリドーマ等から得ることができる。
【0064】
[四量体]
さらに他の実施態様によれば、本発明に係るペプチドを、四量体を調製するために用いることができる。
【0065】
四量体の調製及び使用は、当業者に公知である(特に、Novak et al., J. Clin. Invest., 1999, 104: R63-R67;Cochran et al., Immunity, 2000, 12: 241-250を参照)。
【0066】
本発明に係るペプチドを含む四量体は、以下の方法で得ることができる。HLA-DR1分子の合致するα及びβ重鎖は、それらに結合し得るペプチドの存在下で保持され、複合体を作る。
【0067】
他の実施態様によれば、Iyasere et al.(J. Virol., 2003)に記載されるように、DRβ鎖のN末端に、遺伝子操作によって結合したペプチドを用いることができる。
【0068】
次いで、当該複合体は、例えば、組換えDNA技術によって付加されたビオチン化部位を含む、HLA-DR1分子のDRβ重鎖のC末端においてビオチン化される。その後、四量体の形成は、ストレプトアビジンを添加することによって誘導される。
【0069】
HLA-DR1分子のDRα及びDRβ重鎖の両方とも、昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞中、すなわち細菌、例えば、大腸菌中のどちらかで産生され(Cochran JR et al., Immunity, 2000, 12: 241-250)、且つ例えば、ロイシンジッパードメインによって、及びビオチン−ストレプトアビジン−PE(フィコエリスリン)相互作用(Novak et al., J. Clin. Invest., 1999)によって連結される。
【0070】
蛍光プローブを用いて標識されたストレプトアビジンを用いた場合、例えば、フローサイトメトリーによって抗原の特異的細胞を同定するために、当該四量体複合体を用いることができる。
【0071】
そのような方法を、治療的及び/または予防的処理の前、間、及び/または後に、HLA-DR1表現型の個体の免疫状態を診断及び/または予後判定する目的のために用いることができる。
【0072】
先に記載した方法を用いて同定された細胞を、特にin vitroにおける増幅及び個体への注入後に、治療目的のために用いることができる。
【0073】
[細胞]
ある実施例によれば、本発明に係るペプチドまたはそれらの機能的アナログを用いて単離され、且つ活性化されたヘルパー(またはCD4+)Tリンパ細胞のクローンを、HIV感染症、特にHIV-1感染症に対する予防的及び/または治療的薬剤として用いることができる。
【0074】
従って、その目的の1つによれば、本発明はまた、HLA-DR1分子及び本発明に係るペプチドを含む複合体を特異的に認識するレセプターを含む単離ヘルパーTリンパ細胞の少なくとも1つのクローンに関する。
【0075】
本発明はさらに、有効な量の少なくとも1つの本発明に係るヘルパーTリンパ細胞クローンを個体に投与することからなる少なくとも1つの工程を含む、ヒト免疫不全ウイルスによる感染症を治療及び/または予防するための方法に関する。
【0076】
本発明の意味において、「クローン」または「クローン集団」は、1つの細胞に由来する遺伝的に同一の細胞の群を意味する。クローン集団のT細胞のそれぞれの表面に存在するT細胞レセプター(またはTcR)は同一であり、且つ与えられた抗原の正確な部分を特異的に認識する。
【0077】
ヘルパーTリンパ細胞は、血球分離を用いて採取された末梢血の単核細胞(PBMC)から得ることができる。
【0078】
活性化されたヘルパーTリンパ細胞は、樹状細胞等の抗原提示細胞の供給源及び適切な免疫原性ペプチドの存在下で、前駆体細胞を培養することによって得ることができる。都合よくは、抗原提示細胞は、照射後(例えば、約5,000ラドへの暴露によって)に増幅しなくさせることができる。必要な場合、栄養細胞(例えば、照射された自己由来のB細胞)も存在してよい。適切な培養時間(例えば、約7-28日)の後、その間、前駆体細胞は活性化され、且つエフェクター細胞として増殖し、得られた細胞、すなわち、活性化ヘルパーTリンパ細胞を、ヒト免疫不全ウイルスに対する免疫応答を誘導するために、それらを採取した個体中に再灌流することができる。
【0079】
別の代替例によれば、それによって得られた細胞を、前記細胞を提供した個体とは異なるが、HLAレベルにおいて適合している、または適合させ得る個体中に再灌流することができる。
【0080】
前記抗原提示細胞は、樹状細胞、Bリンパ細胞、または表面にHLA-DR1分子を有する任意の他の細胞であってよい。
【0081】
それを用いてリンパ細胞を獲得し得、且つ本発明に適用するのに適した方法の例として、特許出願WO 01/29190に記載の方法を挙げることができる。
【0082】
さらに、前記抗原提示細胞を、それを用いて免疫応答を獲得し得る手段としても用いることができる。これらの細胞に、本発明に係るペプチド及び/またはそれらの機能的アナログ及び/または複数エピトープコンストラクト、及び/または本発明に係る核酸の配列を供給することができる。
【0083】
従って、本発明の目的はさらに、表面において、本発明に係る少なくとも1つのペプチド及び/または少なくとも1つの核酸と結合したHLA-DR1分子を有する、少なくとも1つの単離抗原提示細胞である。
【0084】
本発明に適用するように適した抗原提示細胞は、例えば、樹状細胞、Bリンパ細胞、マクロファージ、及びいわゆる人工抗原提示細胞であってよい。
【0085】
それを用いて抗原提示細胞を獲得し得る方法の例として、特許出願WO 97/44441、WO 03/089629、WO 93/02185、及びWO 97/29182、またはBrossart et al.,(Blood, 1998, 92: 4238-4247)に記載の技術を挙げることができる。
【0086】
[製薬組成物]
本発明に係るペプチド及びそれらの機能的アナログを、HLA-DR1患者における、ヒト免疫不全ウイルスによる感染症を予防及び/または治療することを意図した製薬組成物を調製するためにも用いることができる。特に、前記ヒト免疫不全ウイルスはHIV-1であってよい。
【0087】
特定の実施態様によれば、前記製薬組成物は、都合よくはワクチンである。
【0088】
本発明に係る製薬組成物は、製薬上許容し得る溶剤、賦形剤、希釈剤、及び/またはアジュバントと組み合わせて、本発明に係るペプチド、それらの機能的アナログ、先に定義されたような複数エピトープペプチド、先に定義されたような核酸の配列、必要な場合には発現ベクター、先に定義されたような抗体、及びそれらの混合物を含んでよい。これらの要素は、以降、「活性剤」という表現で称される。
【0089】
本発明に係る製薬組成物に適用するのに適していると考えられる賦形剤は、例えば、緩衝及びpH調整剤、溶媒の張度を調整するための薬剤、湿潤剤であってよい。
【0090】
本発明に係る製薬組成物を、例えば、局部経路を介して、経口経路、局所的経路、あるいは非経口経路、例えば、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内経路を介して投与することができる。
【0091】
従って、本発明に係る製薬組成物は、製薬上許容し得る無菌キャリア、例えば、水性媒体等に、都合よくは溶解または懸濁した、先に定義されたような活性剤を含んでよい。
【0092】
それによって得られた水溶液を、その後、そのようなものとしての使用または凍結乾燥のために調整することができる。その後、凍結乾燥調製物をその投与前に無菌水溶液と組み合わせる。
【0093】
治療的応用の範囲内で、本発明に係る組成物を、HIVにすでに感染している個体に、生体内におけるウイルスの増殖を止める、または当該疾患及びその合併症の症状を少なくとも部分的に止めるのに十分な量で、投与することができる。
【0094】
AIDSに関して、用語「治療」は、例えば、CD4+ Tリンパ細胞の消失を低減させることによる、当該疾患の重症度の低減を示す。
【0095】
AIDSに関して、用語「予防」は、当該疾患を進行させる前に、例えば、本発明に係る製薬組成物を投与することによって、AIDSの発症を予防するという事実を示す。このことは、CD4+ Tリンパ細胞数の減少を特に防ぐための予防的薬剤として、本発明に係る製薬組成物を用いることができるということを示している。
【0096】
それを用いて、これを達成し得る活性剤の1つの適切な量は、有効な量として定義される。
【0097】
活性剤の有効な量は、前記薬剤の性質、当該疾患の重症度、注入される組成物、患者の体重及び全体的状態に従って調節されるべきである。
【0098】
例として、約70kgの患者に対して、例えば、本発明に係るペプチドの範囲内の有効な量は、約100μg/注入/日から約3,000μg/注入/日で変化させてよく、特に数回の服用で約1,500μg/注入/日であってよい。
【0099】
ある実施態様によれば、投与方法は、一次注入、次いで1回以上のブースター投与を含んでよい。
【0100】
別の実施例によれば、先に定義されたような活性剤を、リポソーム等の投与ベクター(またはキャリア)、エキソソーム、または先に定義されたような抗原提示細胞(樹状細胞またはマクロファージ)、あるいはそれらの混合物と結合させてよい。ベクターと結合した活性剤を、後者の内部及び/または表面に位置づけることができる。
【0101】
リポソームによる投与により、リンパ系組織等の特定の組織を活性剤の標的にさせることが可能になる。都合よくは、リポソームにより、活性剤の半減期を増加させることも可能になる。
【0102】
投与ベクターとしてリポソームを含む製薬組成物において、単独または例えば、リンパ系及び/または骨髄系細胞と結合するのを促す分子、例えば、CD45、CD43またはCD86、あるいはDC-SIGNまたはL-SIGN等の表面マーカーに結合するモノクローナル抗体等と組み合わせて、活性剤をリポソーム中に組み入れてよい。従って、本発明に係る活性剤と結合したリポソームを、リンパ系及び/または骨髄系細胞を含む組織に導き、それによって活性剤をより効果的に放出することができる。
【0103】
リポソームを調製するための多くの方法、例えば、US-4,235,971またはUS-4,837,028に記載の方法等が当業者に既知である。
【0104】
特に、供給されるべき活性剤及び処理されるべき個体の状態に依存した量に従って、静脈内経路を介して、局部的に、または局所的に、リポソーム懸濁液を投与することができる。
【0105】
前記活性剤をエキソソームとしても投与することができる。エキソソームは、樹状細胞の成熟の際に、それらから得られる約50-90nmの小胞である。これらの小胞は、特徴的タンパク質組成を有し、タイプI及びIIのHLA分子、並びに他の共刺激分子を特に含み、それによって先天性及び適応性の免疫応答の刺激を提供する。
【0106】
前記エキソソームを、例えば、血球分離により採取し、次いでIL-4及びGM-CSFを含む培地中で増殖させた末梢血単核細胞に由来する樹状細胞、あるいは出願WO 97/44441に定義される条件に従って、得ることができる。
【0107】
本発明に適用するのに適したエキソソームを、例えば、米国特許第6,812,023号に記載の方法に従って調製することができる。
【0108】
本発明の目的はまた、HLA-DR1表現型を有する患者において、ヒト免疫不全ウイルス、特にHIV-1による感染症を予防及び/または治療することを意図した製薬組成物を調製するための、先に定義されたような少なくとも1つの活性剤、例えば、本発明に係るペプチド及び/または核酸等の使用である。
【0109】
本発明はまた、有効な量の少なくとも1つの先に定義されたような活性剤、例えば本発明に係るペプチド及び/または核酸を個体に投与することからなる少なくとも1つの工程を含む、ヒト免疫不全ウイルスによる感染症を治療及び/または予防するための方法に関する。
【0110】
この方法に適用される本発明に係るペプチド及び/または核酸を、先に定義されたような製薬組成物中に含んでよい。
【0111】
[診断方法]
別の実施態様によれば、本発明はまた、ヒト免疫不全ウイルス、特にHIV-1による感染症を有する可能性のある個体の免疫状態を測定するための診断方法であって、少なくとも以下の工程:
−前記個体から単離されたヘルパーTリンパ細胞を、本発明に係るペプチドまたはそれらの機能的アナログとin vitroにおいて接触させる工程:及び
−生物学的応答を評価する工程:
を含む診断方法に関する。
【0112】
単離ヘルパーTリンパ細胞を、本発明に係るペプチドまたはそれらの機能的アナログとin vitroにおいて接触させる工程は、直接的にまたは先に定義されたような抗原提示細胞を用いて実施されてよい。
【0113】
ある実施態様によれば、前記個体はHLA-DR1表現型のものである。
【0114】
当該評価された生物学的応答は、例えば、増殖(または刺激)指標、細胞外培地中または細胞質中の1つ以上の生体分子の分泌、当該細胞と結合した1つ以上の分子の出現及び/または消失、並びにこれらの応答の組合せであってよい。
【0115】
例として、ヘルパーTリンパ細胞において得られた生物学的応答を、本明細書の実験的部分または特許出願WO 04/050909に記載の方法に従って評価することができる。
【0116】
検出され得るヘルパーTリンパ細胞と結合した生体分子は、例えば、サイトカイン及び/またはケモカイン及び/または酵素及び/または表面決定基であってよく、これを用いて、特定のヘルパーT細胞の集団の表現型を特徴づけすることができる。サイトカインの例として、IFN-γγ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10を挙げることができる。
【0117】
ヘルパーTリンパ細胞の活性化後にそれらによって分泌される生体分子を、ELISPOT技術を用いて検出することもできる。
【0118】
Forsthubert et al.(Sciences, 1996, 271: 1728-1730)に記載されているように、T細胞を本発明に係るペプチドとともにインキュベーション後に(他の末梢血単核細胞の存在下または非存在下で)、例えば、IFN-γγをELISPOT試験を用いて検出することができる。
【0119】
その出現または消失(あるいは存在または非存在)を測定し得る表面決定基の例として、CD4、CD28、CD69、CTLA-4、CD45-RA、CD45-RO、CD62-Lを挙げることができる。
【0120】
表面決定基の検出は、検出されるべき分子を、蛍光プローブ、例えば、蛍光抗体を用いて標識した後、当業者に既知の任意の技術によって、特にフローサイトメトリーによって実施されてよい。
【0121】
生物学的応答として、ヘルパーTリンパ細胞を、本発明に係る1つ以上のペプチドまたはそれらの機能的アナログとin vitroにおいて接触させた後に、ヘルパーTリンパ細胞の増殖(または刺激)指標を測定することも可能である。
【0122】
増殖(または刺激)の測定は、例えば、[3H]-チミジンの取込みを測定することによって(本明細書の実験的部分に記載されるような)、あるいは出願WO 04/050909、Lyons(J. Immunol. Methods, 2000, 243: 147-154)、またはGivan et al.(J. Immunol. Methods, 1999, 230: 99-112)に記載されるような蛍光プローブの希釈方法によって実施されてよい。
【0123】
本発明はまた、それを用いて、ヒト免疫不全ウイルスによる感染症を有する可能性のある被験者の免疫状態を測定し得る診断方法に関するものであって、前記被験者由来の単離リンパ細胞の集団において、HLA-DR1分子及び本発明に係るペプチド、または後者の機能的アナログを含む複合体と接触させることによって活性化され得るリンパ細胞を定量化することからなる工程を少なくとも含む。
【0124】
この定量化は、被験者由来の単離リンパ細胞を刺激するための予備的工程を用いて、または用いずに実施されてよい。
【0125】
従って、被験者中のTリンパ細胞をサンプリング後、蛍光プローブで標識された抗体を用いて、例えば、フローサイトメトリーによって、その後検出を実施することができ、このレセプターに特異的であり得る。
【0126】
別の代替例によれば、例えば、Novak et al., J. Clin. Invest., 1999, 104: R63-R67、またはCochran et al., Immunity, 2000, 12: 241-250に記載の方法に従って蛍光プローブで標識された、先に記載されたような四量体を用いて、これらのヘルパーTリンパ細胞を検出することが可能である。
【0127】
本発明はまた、それを用いて、先に記載された方法を特に適用でき、本発明に係る少なくとも1つのペプチドまたはそれらの機能的アナログを含む、診断キットに関する。
【0128】
本発明はまた、それを用いて、先に記載された方法を特に適用でき、先に定義されたような少なくとも1つの四量体を含む、診断キットに関する。
【0129】
本明細書に記載の本発明は、変化及び修正を受ける可能性がある。本発明は、これらの変化及び修正を含む。
【0130】
以下の実施例を読むことにより、本発明をより理解することができる。しかし、後者を本発明の範囲を制限するものとして解すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0131】
[材料と方法]
《配列分析》
HIV-1のGagタンパク質を、TEPITOPEプログラムを用いて分析し(Hammer et al., Adv. Immunol., 1997, 66: 67-100)、HLA-DR1分子に結合するためのパターンを含む20アミノ酸の長さを有するペプチドの存在を調べた。予測閾値を4%に設定した。
【0132】
《ペプチド合成》
15及び20mer重なり合った、Gag分子の全体を網羅するペプチドが、国立衛生研究所-米国NIHによって合成され、提供された。当該ペプチドを、10% DMSOを含むPBS(リン酸緩衝食塩水)バッファー中に1mg/mLの量で溶液中に入れた。
【0133】
《トランスジェニックマウス》
Pajot et al.(Int. Immunol., 2004, 16: 1275-1282)によってあらかじめ確立された系統である、HLA-DR1トランスジェニック及びクラスII(IAβb0)H-2欠失マウスを、種々の実験に用いた。
【0134】
《免疫化及び増殖試験》
種々の実験に用いるHIV-1のp24組換えタンパク質を、ABCYSS(Paris, France)から得た。
【0135】
75mg/kgのペントバルビタール(Ceva, Sante Animale, Linourne, France)で麻酔したマウスに、アルミニウムアジュバントと結合させた組換えタンパク質4μgを供給した。
【0136】
最後の免疫化の12日後、Ficollを用いた精製によって赤血球から分離した脾細胞(5×106細胞/25cm2培養フラスコ(TECHNO PLASTIC PRODUCT, TPP社, Trasadingen, Switzerland))を、Loirat et al.(Journal of Immunology, 2000, 165: 4748-4755)に記載されるように、10% FCS(ウシ胎児血清)、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、5×10-5Mメルカプト-2-エタノール、100 IU/mLペニシリン、及び100μgストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で、LPSで活性化した芽細胞の存在下で共培養し(5×106細胞/培養フラスコ)、ペプチドを供給し(20μg/mL)、γ線を照射した(180 Gy)。
【0137】
当該芽細胞に、試験ペプチドGag301-320、Gag321-340、またはGag331-350、あるいはHIVの抗原由来のネガティブコントロールペプチドRT171-190、あるいはHIVのp24抗原由来のポジティブコントロールペプチドGag291-310をそれぞれ供給した。
【0138】
培養の7日後、96ウェル平底プレート中に、LPSで刺激された芽細胞の存在下で、照射され、且つペプチドを供給された細胞(2×105細胞/ウェルの量で)(TTPから得た)由来の5×105細胞/ウェルを分配後、増殖試験を実施した。当該増殖試験を、72時間の期間にわたり、3% SVFを補充した十分なRPMI培地中で実施した。
【0139】
TOMTECコレクターを備えたフィルター(Perkin Elmer Applied Biosystem社)で回収する前に、当該細胞を最後の16時間、1ウェルあたり1μCiの[3H]-チミジンとともにインキュベートした。取り込まれた放射活性をマイクロ−βカウンター(Perkin Elmer Applied Biosystem社)で測定した。
【0140】
当該結果を、コントロールペプチドとのインキュベーション後に測定されたcpmに対する、試験ペプチドとのインキュベーション後に測定されたcpmの割合に相当する刺激指標(SI)として表す。
【0141】
《集団調査》
HIV-1血清陰性の個体を、それらのHLA-DR1プロフィールに関して選択した。
【0142】
HIV-1に感染した個体を、フランスの集団ALTから選択し、且つそれらのHLA-DR1プロフィールに関して選択した。600細胞/mm3レベル以上の安定なCD4+ T細胞数を有し、いずれの抗レトロウイルス治療もなく、長期間進行しない状態の患者を、少なくとも8年間の無症候HIV感染症として定義した(Candotti et al., J. Med. Virol. 1999, 58: 256-263)。
【0143】
《ELISPOT試験》
先に記載されたように(Forsthubert et al., Science, 1996, 271: 1728-1730)、種々のペプチドに対するHIV-1特異的ヒトCD4+ T細胞応答を、末梢血の凍結した単核細胞(PBMC:末梢血単核細胞)についてELISPOT試験を用いて定量化した。
【0144】
ELISPOT 96ウェルプレート(Millipore社, Molsheim, France)を、ヒトIFN-γγに対する抗体(IgG1/B-B1, Diaclone社, Strasburg, France)で被覆した。
【0145】
10% SVFを含む培地の存在下におけるブロッキング工程の後、1×105個のPBMCをウェルに分配した。当該実験を3回行った。細胞は、融解後、夜間に増殖した。次に、当該プレートを、HIV-1のGagタンパク質由来のペプチド2μg/mL(15-merまたは20-mer重なり合ったペプチド、表3と比較)の存在下で、35℃で18時間インキュベートした。
【0146】
フィトヘマグルチニン(Murex社, Paris, France, 1μg/nL)及び培地のみを、それぞれポジティブ及びネガティブコントロールとして用いた。
【0147】
その後、当該ウェルを洗浄し、ビオチンで標識されたヒトIFN-γγに対する検出抗体(B-G1-Diaclone)(4時間、37℃)を添加することによってスポットを検出し、次いで、ストレプトアビジン及び基質(5-ブロモ-4-3-インドリル-ホスフェート/4-ニトロ-ブルー-テトラゾリウム;Sigma社, Saint-Quentin Falavier, France)の上にアルカリホスファターゼを添加した(1時間、37℃)。青のドットが現れるまで、インキュベーションを室温で維持した。抗原に特異的なスポット形成細胞(SFC)の頻度を、自動化顕微鏡システム(ZEISS社, Munich, Germany)を用いて測定し、最低50 SFC/1×106個のPBMCがバックグラウンドノイズより高く検出された場合に、プラスとしてカウントした。抗CD8磁気ビーズ(Dynabeads CD8, Dynal社)を用いてCD8+ T細胞を除去した後、ELISPOT試験を繰返した。当該PBMCから99.8%を越えるCD8+細胞が除去されたという事実を、フローサイトメトリー(EPICS, XL COULTER)によって確かめることができる。
【0148】
《樹状細胞(DC)の調製及び抗原の供給》
樹状細胞を、Brossart et al.(Blood, 1998, 92: 4238-4247)によって先に記載されたように、調製した。フィコール−ハイパーク密度勾配を用いた遠心分離によって、HLA-DRB1*01+の健常ドナーの血液からPBMCを単離した。
【0149】
当該PBMCを、6ウェルプレート中で培養し(10-15×106細胞/ウェル)、1時間37℃で付着させた。付着しない細胞を除去し、付着した単細胞を、10% FCS、ペニシリン/ストレプトマイシン(50 U/mL-50μg/mL)、10mM Hepes、10mMグルタミン、1,000 U/mL IL-4(R&D社, France)、及び500 U/mL GM-CSF(Leucomax社, Aventis, France)を含むRPMI中で培養した。調製された樹状細胞は、未成熟細胞の表現型:CD1a+、CD4a+、CD14-、低CD83+、低CD86+、HLA-DR+、DC-SIGN+を有する。その後、当該DCを凍結(4%ヒトアルブミン(LFB, France)を含むPBS中で)または抗原を供給した。
【0150】
HIV、または2時間37℃で成熟剤Ribomunyl(登録商標)(1μg/mL)及びIFN-γγ(500 U/mL)とともにaldrithiol-2(AT-2)によって不活性化したMN HIV-1の組換えp24タンパク質(10μg/mL, Sigma社, France)を、当該DCに供給した。
【0151】
《T細胞誘導》
ネガティブ除去及び磁気ビーズ(Miltenyl Biotec社, France)を用いて、PBMCの付着しない画分から、CD4+ T細胞を単離した。それらを凍結して保持し、その後T細胞を刺激する前に融解した。
【0152】
照射(5,000ラド)成熟自己由来のDCの存在下で(5/1の割合で)、並びに10%ヒト血清(Institut Jacques BOY社, France)、非必須アミノ酸(GIBCO社, France)、1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO社, France)、10mM Hepes、10mMグルタミンを含むRPMI培地中で、照射(5,000ラド)自己由来B細胞の存在下で(1/2の割合で)、精製されたCD4+ T細胞を培養し、抗原を供給した。
【0153】
100 U/mLの量のrhIL-2(Proleukin社, Chiron, France)を刺激の5日後に添加した。
【0154】
刺激の10日後、当該T細胞を1/20の割合で照射DCを用いて再刺激し、並びに、1/5の割合に応じた自己由来の栄養細胞の存在下で、コントロールペプチドであるSM 28GST190-211のGag331-350ペプチド(Shistosoma masoniの28kDaグルタチオンS-トランスフェラーゼの抗原の190-211エピトープ)を供給した。
【0155】
次いで、当該CD4+ T細胞培養物を、EBV(エプスタイン−バルウイルス、EBV B細胞)で形質転換した自己由来のB細胞で10-15日ごとに再刺激し、照射し、1/2の割合に応じた、及び1/4の割合に応じた照射同種異系PBMCの、ペプチドを供給した。
【0156】
《ヒトT細胞増殖試験》
当該培養物中のT細胞を、50μg/mLの量のGag331-350ペプチドまたはSM 28GST190-211ペプチドに、3時間37℃で接触させ、次いで、96ウェル平底プレート中に分配した(5×105細胞/ウェル)。1μCi [3H]-チミジンで20時間パルス標識する前に、当該細胞をrhIL-2の非存在下で3日間、T細胞用の培地中で培養した。
【0157】
当該細胞を、TOMTECコレクター(Perkin Elmer Applied Biosystems社)を用いることによってフィルター上に回収し、取り込まれた放射活性を、マイクロ−βカウンター(Perkin Elmer Applied Biosystems社)で測定した。
【0158】
当該結果を、コントロールペプチドとのインキュベーション後に測定されたカウントに対する、試験ペプチドとのインキュベーション後に測定されたカウントの割合を示す刺激指標(SI)として表す。
【実施例】
【0159】
<実施例1:HLA-DR1トランスジェニックマウスにおける、新しいHLA-DR1エピトープの同定及び抗原性>
HLA-DR1特異性を有する新規なペプチドを同定するために、Gagタンパク質のアミノ酸配列を精査し、TEPITOPEアルゴリズムを用いてHLA-DR1特異的パターンを調べた。
【0160】
HLA-DR1パターン、並びに付加的なN-及びC-末アミノ酸を含む9アミノ酸のコア領域を含む20アミノ酸を有するペプチドを選択し、その中から、3つの新規なペプチドGag301-320、Gag321-340、Gag331-350、及び既知のペプチドGag291-310(Iyasere et al., J. Virol., 2003, 77: 10900-10909)(表1)が見出された。表1はまた、同定された配列がB群のHIV-1系統中に存在する頻度も示している。保存パーセンテージを表すこの頻度は、B群に属する同じアミノ酸配列を有するHIV系統の数について測定されたものである(HIVデータベース, NIHのLos Alamos国立研究所, http://hiv-web.lan1.gov/cgi-bin/EPILIGN/epilign.cgi)。
【0161】
HLA-DR1制限エピトープGag301-320、Gag321-340、及びGag331-350の免疫原性を評価するために、クラスII H-2を欠失させたHLA-DR1のトランスジェニックマウスをHIVのp24タンパク質で免疫化した。その後、脾臓由来のT細胞を、in vitroにおいて、試験されるペプチド及びポジティブコントロールペプチドGag291-310、またはネガティブコントロールペプチドRT171-190で再刺激した。
【0162】
図1は、Iyasere et al(J. Virol. 2003, 77: 10900-10909)によって、HLA-DR1制限免疫優性ペプチドが、HIVに感染したHLA-DR1個体から単離したCD4+ T細胞において応答を誘導し得ると先に同定されたように、クラスII H-2を欠失したHLA-DR1トランスジェニックマウスが、制限HLA-DR1 Gag291-310ペプチド、並びにGag301-320、Gag321-340、及びGag331-350ペプチドに対する増殖性の細胞応答を進行させ得ることを示している。
【0163】
HIV-1のRT抗原由来のコントロールペプチドを用いて刺激されたCD4+ T細胞においては、なんの応答も誘導されなかった。
【0164】
表2は、クラスII H-2を欠失したHLA-DR1トランスジェニックマウスの11匹のうちの2匹が、2-3の刺激指標を有するGag301-320ペプチドに応答し、11匹のうちの4匹がGag321-340ペプチドに応答し、及び11匹のうちの3匹がGag331-350ペプチドに応答することを示している。
【0165】
さらに、これらのペプチドを用いたin vitroにおける付加的なブースター投与によって、増殖指標は3から5へ増大し、それによって、応答の特異性が立証される。
【0166】
<実施例2:HIVに感染したHLA-DR1+患者による、HIV p24のGag321-340及びGag331-350エピトープの認識>
HIVに感染したHLA-DR1+の患者から単離したCD4+細胞による、同定されたエピトープの認識を、ELISPOT試験を用いることによって評価する。p24抗原全体及び/またはp24タンパク質を網羅する15-mer重なり合うペプチドのセットに応答するすべての患者の群において、PBMCを単離した(表3)。
【0167】
従って、表3に示すように、HLA-DR1エピトープとして先に記載したエピトープGag291-310は、11.020/4の患者においてCD4+ T細胞を刺激し得、且つCD8+細胞の除去後にプラスの及び変わらない応答を誘導し得る。
【0168】
Gag331-350ペプチド、及びGag331-350エピトープを含む15-merペプチドのセットは、5.002/1の患者のCD4+ T細胞によって認識される。
【0169】
Gag321-340ペプチドは、9.002/1の患者におけるCD4+ T細胞による検出閾値で応答を誘導し、同程度の大きさで当該ペプチドのセットも認識する。
【0170】
従って、クラスII H-2を欠失したHLA-DR1トランスジェニックマウスにおいて免疫原性である、両方の新規なHLA-DR1制限エピトープGag321-340及びGag331-350はまた、HIVに感染したHLA-DR1患者においても応答を誘導し得る。
【0171】
<実施例3:エピトープGag331-350による、血清陰性のHLA-DR1個体から単離したCD4+細胞の刺激>
HIV-1血清陰性のHLA-DR1個体(BRE個体)のPBMCを単離し、且つ自己由来のDCを用いてin vitroにおいて誘導し(HIVのp24タンパク質、またはaldrithiol-2(MNAT2)で不活性化したMNウイルス全体を供給し)、またCD4+ T細胞を他の細胞から分離し、且つ培養した。
【0172】
その後、当該CD4+ T細胞を、抗原提示細胞である照射自己由来EBV B細胞の存在下で2週間in vitroで培養し、HIVのp24ペプチドまたはMNAT2ウイルスを供給した。
【0173】
次いで、当該CD4+ T細胞を、Gag331-350ペプチドまたはSM 28GST190-211コントロールペプチドによって誘導された特異的増殖応答に関して試験した。
【0174】
抗原とのインキュベーションの3日後に、[3H]-チミジンの取込みを測定した。2より大きい刺激指標を有意であると見なした。
【0175】
図2に示すように、BRE個体のCD4+ T細胞はGag331-350ペプチドに応答して増殖するが、SM 28GST190-211コントロールペプチドまたは培地のみの存在下では、なんの応答も観察されなかった。当該刺激指標は10に相当する。
【0176】
従って、クラスII H-2を欠失したHLA-DR1トランスジェニックマウスにおいて免疫原性でもあるGag331-350エピトープは、HIV-1血清陰性のHLA-DR1ドナーにおけるCD4+ T細胞の応答を誘導し得る。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】この図は、HIVのp24タンパク質を用いて免疫化した、クラスII H-2を欠失したHLA-DR1トランスジェニックマウス(IAβb0)由来のCD4+ Tリンパ細胞の刺激指標を示す。前記CD4+ T細胞を、LPSで活性化した芽細胞によってin vitroにおいて再刺激し、ペプチドGag291-310、Gag301-320、Gag321-340、Gag331-350、及びコントロールとしてRT171-190を供給した。当該刺激指標は、コントロールペプチドの存在下でのTリンパ細胞による[3H]-チミジンの取込みによって測定される放射活性に対する、特定のペプチドの存在下でのTリンパ細胞による[3H]-チミジンの取込み後に測定された放射活性の割合を示す。
【図2】血清陰性のHLA-DR1患者から単離し、HIV-1のp24抗原(図2A)またはaldrithiol-2(MNAT2)で不活性化されたMN HIV-1(図2B)を供給された樹状細胞によって誘導されたCD4+リンパ細胞に対する刺激指標。その後、当該細胞を、Gag331-350ペプチドまたはSM 28GST190-211コントロールペプチドで刺激した。
【図3】表1−この表に、Gag301-320、Gag321-340、Gag331-350、及びGag291-310エピトープの配列、並びにB群のHIV-1ウイルスにおけるそれらの頻度を示す。 表2−この表に、Gag301-320、Gag321-340、Gag331-350、及びGag291-310エピトープに相当するマウスの数、並びに観察された増殖応答の強さを示す。
【図4】表3−この表に、HIV-1に感染したHLA-DR1患者から単離したCD4+ T細胞によるIFN-γγの分泌をともなう応答を示す。HIV-1の特異的ヒトCD4+ T細胞の応答を、「材料と方法」の章に記載のELISPOTによって評価した。当該応答を、CD8+ T細胞を除去してまたは除去せずに評価した。PBMCを刺激するために用いたペプチドは、15アミノ酸の長さが重なり合ったペプチドのセット(11の連続的ペプチドのセット)、または長さが20アミノ酸のペプチドのどちらかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有するエピトープを含むペプチドであって、前記ペプチドは、タイプIIのHLAのα鎖(DRα)及びβ鎖(DRβ)、スペーサーアーム、並びにストレプトアビジンからなるビオチン化複合体と結合し、クラスII四量体を形成するペプチド。
【請求項2】
配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有するエピトープ、または前記エピトープ及びHLA-DR1分子を含む複合体と特異的に結合し得る抗体。
【請求項3】
HLA-DR1表現型の患者におけるヒト免疫不全ウイルスによる感染症を予防及び/または治療することを意図した製薬組成物を調製するための、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有する少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも1つのペプチド、及び/または前記配列をコードする核酸の使用。
【請求項4】
前記ペプチド及び/または前記核酸が、リポソーム、エキソソーム、及び表面においてHLA-DR1分子を有する抗原提示細胞から選択されるキャリアと結合している、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記抗原提示細胞が樹状細胞またはマクロファージである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
表面において、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有する少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも1つのペプチド、及び/または前記配列をコードする核酸と結合したHLA-DR1分子を有する、単離抗原提示細胞。
【請求項7】
HLA-DR1分子と、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有するエピトープを含むペプチドとを有する複合体を特異的に認識するレセプターを含む、単離ヘルパーTリンパ細胞クローン。
【請求項8】
ヒト免疫不全ウイルスによる感染症を有する可能性のある個体の免疫状態を測定するための診断方法であって、少なくとも以下の工程:
−前記個体から単離されたヘルパーTリンパ細胞を、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有する少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも1つのペプチドと、in vitroにおいて接触させる工程:及び
−生物学的応答を評価する工程:
を含む診断方法。
【請求項9】
前記生物学的応答が、増殖、生体分子の分泌、前記細胞と結合した分子の出現及び/または消失、並びにこれらの応答の組合せから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ヒト免疫不全ウイルスによる感染症を有する可能性のある個体の免疫状態を測定するための診断方法であって、HLA-DR1分子と、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有するエピトープを含むペプチドとを有する複合体と接触させることによって活性化され得る、前記個体から単離されたリンパ細胞をin vitroにおいて定量化することからなる工程を少なくとも含む方法。
【請求項11】
前記定量化の工程が請求項1に定義される四量体の使用を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択されるアミノ酸の配列を含有する少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも1つのペプチドを含む、診断キット。
【請求項13】
請求項1に定義される少なくとも1つの四量体を含む、診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−531530(P2008−531530A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556639(P2007−556639)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050167
【国際公開番号】WO2006/090090
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】