説明

ICカード

【課題】市場で過酷な使い方をされても、カード基材に亀裂や破損が生じさせないようにする。
【解決手段】カード基材1と、このカード基材1に設けられた第1の収納用凹部3、及びこの第1の収納用凹部3の内底平面部に設けられた第2の収納用凹部4と、モジュール基板7及びこのモジュール基板7に取り付けられたLSI5とで構成され、モジュール基板7がカード基材1の第1の収納用凹部3、LSI5が第2の収納用凹部4内に収納されるICモジュール2とを具備し、カード基材1の第1の収納用凹部3の内底角部3a、及び第2の収納用凹部4の内底角部4aをそれぞれ湾曲状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式のICカードに係わり、特に、ICモジュールを収納する収納用凹部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードとしては、例えば、図17に示すようなものが知られている。
【0003】
即ち、ICカード101は、カード基材102とこのカード基材102に設けられるICモジュール103を有して構成されている。カード基材102には第1の収納凹部104が形成され、この第1の収納凹部104の内底部には第2の収納凹部105が形成されている。
【0004】
ICモジュール103はモジュール基板107とこのモジュール基板107に取り付けられるLSI108と、このLSI108を封止する封止材109とによって構成されている。ICモジュール103はそのモジュール基板107をカード基材102の第1の収納凹部104内に収納し、LSI108の封止材109を第2の収納凹部105内に収納して取り付けられている。
【0005】
しかしながら、上記した第1の収納凹部104の内底角部104a、及び第2の収納凹部105の内底角部105aは、限りなく直角に近いものとなっていたため、ICカード101が繰り返し曲げられたり、捻じられたり、或いはローラー搬送された場合などには、第1及び第2の収納凹部104,105の内底角部104a,105aに応力が集中し、図18に示すように亀裂や破損110a〜110dが生じるという問題があった。
【0006】
そこで、従来においては、LSI108の封止材109が収納されるカード基材102の第2の収納凹部105の断面形状を封止材109の外形状に近似するように切削加工することにより、曲げや捻りに対する耐久性を向上するようにしたものが開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−308505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開2003−308505号公報では、カード基材102の第2の収納凹部105の断面形状を切削幅2.0mm以下の段付きすりばち形状に形成していたため、カード基材102が繰り返し曲げられたり、捻じられたりすると、段付きすりばち部の角部に応力が集中し、やはり、亀裂や破損が生じてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、市場で過酷な使い方をされても、カード基材に亀裂や破損が生じないようにした耐久性の高いICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、カード基材と、このカード基材に設けられた第1の収納用凹部、及びこの第1の収納用凹部の内底平面部に設けられた第2の収納用凹部と、モジュール基板と、このモジュール基板に取り付けられたLSIとで構成され、前記モジュール基板が前記カード基材の第1の収納用凹部、前記LSIが前記第2の収納用凹部内に収納されるICモジュールとを具備し、前記カード基材の第1の収納用凹部の内底角部、及び前記第2の収納用凹部の内底角部をそれぞれ湾曲状に形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項7記載の発明は、カード基材と、このカード基材に設けられた収納用凹部と、モジュール基板と、このモジュール基板に取り付けられるLSIとにより構成され、前記収納用凹部内に収納されるICモジュールとを具備し、前記収納用凹部の内底角部を湾曲状に形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項12記載の発明は、カード基材と、このカード基材に設けられた収納用凹部と、モジュール基板と、このモジュール基板に取り付けられるLSIとにより構成され、前記収納用凹部内に収納されるICモジュールとを具備し、前記収納用凹部の内底面部を全面的に湾曲状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、市場で過酷な使い方をされても、カード基材に亀裂や破損が生じないようにした耐久性の高いICカードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態である接触式ICカードK1を示す平面図である。
【0014】
接触式ICカードK1は、カード基材1とICモジュール2とで構成されている。カード基材1には図2及び図3に示すように第1の収納用凹部3が形成され、この第1の収納用凹部3の内底面部には第2の収納用凹部4が形成されている。第1の収納用凹部3の内底角部3a、及び第2の収納用凹部4の内底角部4aはそれぞれ湾曲状に形成されている。
【0015】
ICモジュール2は、モジュール基板7とこのモジュール基板7に取り付けられるLSI5と、これらモジュール基板7とLSI5とを電気的に接続する金ワイヤ6とを有している。LSI5と金ワイヤ6とは、例えば、エポキシ系樹脂である封止材8によって被覆されて保護されている。ICモジュール2のモジュール基板7は第1の収納用凹部3内に収納されて熱圧着シート10により接着固定され、LSI5を封止する封止材8は、第2の収納用凹部4内に収納されている。
【0016】
上記したカード基材1の第1及び第2の収納用凹部3,4は、フライス加工機またはNC加工機によって加工される。フライス加工機またはNC加工機には、エンドミルと呼ばれる工具が取り付けられている。このエンドミルの先端形状と、回転速度、切り込み量、送り量の3つを適切に調整して第1及び第2の収納用凹部3,4が切削加工されるようになっている。
【0017】
次に、ICカードK1の製造方法について説明する。
【0018】
まず、カード基材1にエンドミルを使用して、ICモジュール2のモジュール基板7の外形よりやや大きめに、かつモジュール基板7の厚さよりやや深めに第1の収納用凹部3を切削加工する。この加工時には、切削角が曲面となるエンドミルを使用して第1の収納用凹部3の内底角部3aが湾曲状になるように削加工する。
【0019】
続いて、エンドミルを使用して第1の収納用凹部3の内底面中央部に封止材8の外形よりやや大きく、かつ封止材8の厚さよりやや深く第2の収納用凹部4を切削加工する。この加工時には、切削角が曲面となるエンドミルを使用して第2の収納用凹部4の内底角部4aが湾曲状になるように切削加工する。
【0020】
このようにして第1及び第2の収納用凹部3,4を切削加工したのち、第1の収納用凹部3の内底面部に熱圧着シート10を設け、ICモジュール2のモジュール基板7を第1の収納用凹部3内に収納するとともに、LSI5の封止材8を第2の収納用凹部4内に収納する。こののち熱圧着シート10に熱と圧力をかけてカード基材1とICモジュール2とを接着固定する。
【0021】
この第1の実施の形態では、第1及び第2の収納用凹部3,4内の内底角部3a,4aを湾曲状に切削加工するため、ICカードK1が繰り返し曲げられたり、捻じられたり、或いはローラー搬送されても、内底角部3a,4aに応力が集中することがなく、亀裂や破損の発生を防止することができる。
【0022】
なお、図3では、ICモジュール2のモジュール基板7とLSI5とを金ワイヤ6で接続して封止材8で封止したが、これに限られることなく、図4に示すように、ICモジュール2をそのLSI5の入出力端子に突起電極(バンプ)を介してモジュール基板7を接合する、いわゆるフリップチップ実装するものであってもよい。
【0023】
この場合には、封止材8がない分だけ、ICモジュール2の厚さを薄くして第2の収納凹部4の深さを浅くでき、より応力集中に強い構造とすることができる。
【0024】
また、上記した図3、図4では、熱圧着シート10を用いてICモジュール2を接着固定したが、これに限られることなく、図5、図6に示すように、液状接着剤9を用いてICモジュール2を接着固定するようにしても良い。
【0025】
また、上記した図3、図4では、カード基材1の第2の収納用凹部4の内底角部4aを湾曲状に形成して内底面部を平面状に形成したが、これに限られることなく、図7、図8に示すように第2の収納用凹部4の内底面部を全面的に湾曲状に形成するようにしても良い。
【0026】
また、図7、図8では、熱圧着シート10を用いてICモジュール2を接着固定したが、これに限られることなく、図9、図10に示すように、液状接着剤9を用いてICモジュール2を接着固定するようにしても良い。
【0027】
図11は、本発明の第2の実施の形態であるICカードK2を示すものである。
【0028】
なお、上記した第1の実施の形態で説明した部分と同一部分については、同一番号を付してその詳細な説明は省略する。
【0029】
ICカードK2はカード基材1を有し、このカード基材1には単一の収納用凹部12が形成されている。収納用凹部12内にはICモジュール2が収納され、このICモジュール2は熱圧着シート10により接着固定されている。また、収納用凹部12の内底角部12aは湾曲状に形成されている。
【0030】
次に、ICカードK2の製造方法について説明する。
【0031】
まず、エンドミルを使用してICモジュール2のモジュール基板7の外形よりやや大きめに、かつICモジュール2の厚さよりやや深めにカード基材1を切削して収納用凹部12を加工する。このとき、収納用凹部12の切削角が曲面となるエンドミルを使用して、収納用凹部12の内底角部12aを湾曲状に切削加工する。
【0032】
このように収納用凹部12を形成したのち、収納用凹部12の内底平面部に熱圧着シート10を載置してから、ICモジュール2をそのLSI5の封止材8側から収納する。この状態から熱圧着シート10に熱と圧力をかけてICモジュール2を接着固定して製造を終える。
【0033】
なお、図11では、熱圧着シート10を用いてカード基材1とICモジュール2を接着固定したが、これに限られることなく、図12に示すようにカード基材1とICモジュール2とを液状接着剤9によって接着固定するようにしても良い。
【0034】
また、図11、図12では、ICモジュール2のLSI3と金ワイヤ6を封止する封止材8の外形寸法がモジュール基板7の外形寸法の1/2程度と小さくなっているが、これに限られることなく、図13、図14に示すように、モジュール基板7の外形寸法と略等しい大きさの封止材8でLSI5と金ワイヤ6を封止して熱圧着シート10、液状接着剤9を用いてカード基材1とICモジュール2とを接着固定するようにしても良い。
【0035】
この場合には、封止材8を大きくした分だけICモジュール2の強度を向上させることができる。
【0036】
なお、図15は、本発明の第3の実施の形態であるICカードK3を示すものである。
【0037】
なお、上記した第2の実施の形態で説明した部分と同一部分については、同一番号を付してその詳細な説明は省略する。
【0038】
ICカードK3はカード基材1を有し、このカード基材1には単一の収納用凹部22が形成されている。この収納用凹部22の内底面部は全面的に湾曲状に形成されている。収納用凹部12内にはICモジュール2が収納され、このICモジュール2は液状接着剤9によって収納用凹部22の内底面部に接着固定されている。
【0039】
次に、ICカードK3の製造方法について説明する。
【0040】
まず、エンドミルを使用してICモジュール2のモジュール基板7の外形よりやや大きめに、かつICモジュール2の厚さよりやや深めに、カード基材1を切削して収納用凹部22を加工する。このとき、収納用凹部22の切削角が曲面となるエンドミルを使用して、収納用凹部22の内底面部22aを全面的に湾曲状をなすように切削する。
【0041】
このように収納用凹部22を形成したのち、収納用凹部22の内底面部22aに液状接着剤9を塗布してから、ICモジュール2をそのLSI5の封止材8側から収納して接着固定して製造を終える。
【0042】
図15では、ICモジュール2のモジュール基板7とLSI5とを金ワイヤ6で接続して封止材8で封止したが、これに限られることなく、図16に示すように、ICモジュール2において、LSI5の入出力端子に突起電極(バンプ)を介してモジュール基板7を接合する、いわゆるフリップチップ実装するものであってもよい。
【0043】
この場合には、封止材8がない分だけ、ICモジュール2の厚さを薄くして第2の収納凹部4の深さを浅くでき、より応力集中に強い構造となる。
【0044】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態である接触式のICカードを示す全体図。
【図2】図1のICカードからICモジュユールを取り外した状態を示す平面図。
【図3】図1中A−A線に沿って示す断面図。
【図4】図3のICモジュユールの変形例を示す図。
【図5】図3のICモジュユールの他の接着例を示す図。
【図6】図4のICモジュユールの他の接着例を示す図。
【図7】図3の第2の収納用凹部の変形例を示す図。
【図8】図4の第2の収納用凹部の変形例を示す図。
【図9】図7のICモジュユールの他の接着例を示す図。
【図10】図8のICモジュユールの他の接着例を示す図。
【図11】本発明の第2の実施の形態である接触式のICカードを示す図。
【図12】図11のICモジュユールの他の接着例を示す図。
【図13】図11のICモジュユールの封止材の他の例を示す図。
【図14】図13のICモジュユールの他の接着例を示す図。
【図15】本発明の第3の実施の形態である接触式のICカードを示す図。
【図16】図15のICモジュユールの他の例を示す図。
【図17】従来のICカードを示す図。
【図18】図17のICカードの収納凹部の内底角部に亀裂が生じた状態を示す図。
【符号の説明】
【0046】
1…カード基材、3…第1の収納用凹部、4…第2の収納用凹部、3a…第1の収納用凹部の内底角部、4a…第2の収納用凹部の内底角部、5…LSI、6…金ワイヤ、7…モジュール基板、8…封止材、9…液状接着剤、10…熱圧着シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材と、
このカード基材に設けられた第1の収納用凹部、及びこの第1の収納用凹部の内底平面部に設けられた第2の収納用凹部と、
モジュール基板と、このモジュール基板に取り付けられたLSIとで構成され、前記モジュール基板が前記カード基材の第1の収納用凹部、前記LSIが前記第2の収納用凹部内に収納されるICモジュールとを具備し、
前記カード基材の第1の収納用凹部の内底角部、及び前記第2の収納用凹部の内底角部をそれぞれ湾曲状に形成したことを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記第1の収納用凹部の内底平面部に熱圧着シートを設け、この熱圧着シートにより前記ICモジュールを接着固定したことを特徴とする請求項1記載のICカード。
【請求項3】
前記第2の収納用凹部の内底平面部に液状接着剤を塗布し、この液状接着剤により前記ICモジュールを接着固定したことを特徴とする請求項1記載のICカード。
【請求項4】
前記第2の収納用凹部は、その内底面部が湾曲状に形成されたことを特徴とする請求項1記載のICカード。
【請求項5】
前記LSIは金ワイヤを介して前記モジュール基板に接続され、前記LSI及び前記金ワイヤは封止材によって封止されたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載されたICカード。
【請求項6】
前記LSIは前記モジュール基板にフリップチップ実装されたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項7】
カード基材と、
このカード基材に設けられた収納用凹部と、
モジュール基板と、このモジュール基板に取り付けられるLSIとにより構成され、前記収納用凹部内に収納されるICモジュールとを具備し、
前記収納用凹部の内底角部を湾曲状に形成したことを特徴とするICカード。
【請求項8】
前記収納用凹部の内底平面部に熱圧着シートを設け、この熱圧着シートにより前記ICモジュールを接着固定したことを特徴とする請求項7記載のICカード。
【請求項9】
前記収納用凹部の内底平面部に液状接着剤を設け、この液状接着剤により前記ICモジュールを接着固定したことを特徴とする請求項7記載のICカード。
【請求項10】
前記LSIは金ワイヤを介して前記モジュール基板に接続され、前記LSI及び前記金ワイヤは封止材によって封止されたことを特徴とする請求項8または9記載のICカード。
【請求項11】
前記封止材は前記モジュール基板と略等しい外形寸法を有することを特徴とする請求項10記載の記載のICカード。
【請求項12】
カード基材と、
このカード基材に設けられた収納用凹部と、
モジュール基板と、このモジュール基板に取り付けられるLSIとにより構成され、前記収納用凹部内に収納されるICモジュールとを具備し、
前記収納用凹部の内底面部を全面的に湾曲状に形成したことを特徴とするICカード。
【請求項13】
前記LSIは金ワイヤを介して前記モジュール基板に接続され、前記LSI及び前記金ワイヤは封止材によって封止されたことを特徴とする請求項12記載のICカード。
【請求項14】
前記LSIは前記モジュール基板にフリップチップ実装されたことを特徴とする請求項12記載のICカード。
【請求項15】
前記収納用凹部の湾曲状の内底面部に液状接着剤を設け、この液状接着剤により前記ICモジュールを接着固定したことを特徴とする請求項13または14記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−73003(P2010−73003A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240871(P2008−240871)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】