ICタグ対応プラスチック材とICタグ及びICタグ対応容器
【課題】 タグ側に特殊な構成等を必要とすることなく、容器の材質や内容物の有無にかかわらずICタグの通信特性を良好に維持する。
【解決手段】 リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグ20が取り付けられ、被包装体となる容器30の表面を包装するプラスチック材10であって、PET樹脂等からなる基材となる樹脂層11と、樹脂層11に積層され、ICタグ20を容器30から離間させる不織布等からなる距離層12と、樹脂層11の表面に塗布により積層形成される酸化金属材料を含む電磁波シールド塗料からなり、ICタグ20の電磁波を被包装体側から遮蔽する電磁波遮蔽層13とを備える構成としてある。
【解決手段】 リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグ20が取り付けられ、被包装体となる容器30の表面を包装するプラスチック材10であって、PET樹脂等からなる基材となる樹脂層11と、樹脂層11に積層され、ICタグ20を容器30から離間させる不織布等からなる距離層12と、樹脂層11の表面に塗布により積層形成される酸化金属材料を含む電磁波シールド塗料からなり、ICタグ20の電磁波を被包装体側から遮蔽する電磁波遮蔽層13とを備える構成としてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグを取り付け可能なICタグ対応のプラスチック材と、このプラスチック材を基材として備えたICタグ及びプラスチック材を包装体としたICタグ対応容器に関し、特に、容器の材質や内容物の有無にかかわらずICタグの通信特性を良好に維持することができるICタグ対応プラスチック材とこのプラスチック材を備えたICタグ及びICタグ対応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PET樹脂等からなる樹脂製容器や、アルミニウム缶やスチール缶等の金属製容器は、例えば、ビール、コーラ、サイダー等の炭酸飲料・果汁飲料や各種お茶類等の飲料用の容器、缶詰食品の容器、各種液体製品の容器等に広く使用されている。
また、樹脂フィルム等の軟包材にAl箔等の金属層を積層した包装材料からなるパウチ容器は、軽量で柔軟性、耐久性、ガスバリア性等に優れ、加工も容易で安価に製造できることから、食品や飲料のみならず、洗剤、化粧品等の主に液体製品の容器として広く使用されている。
そして、このような樹脂製あるいは金属製の各種容器には、商品名や内容物の成分、生産者、生産地、賞味期限等の所定の商品情報が、文字やバーコード等で表示されている。この種の商品情報の表示は、通常、容器や容器を包装する包装体に印刷されたり、ラベル等に印刷されて容器に貼付されるようになっている。
【0003】
ところが、商品情報等の表示は、容器のデザイン等を損なわないよう小さく表示されるのが一般的であり、その結果、表示面積や表示される文字の大きさ、文字数等が限られたものとなり、充分な情報が表示できないという問題があった。
また、バーコード表示の場合、リーダで読み取るためにバーコード自体を容器表面に平面状に表示しなければならず、また、傷や汚れ等があると読み取り不能となってしまい、しかも、バーコードでコード化できる情報量は限られていることから、文字による表示の場合と同様に、商品情報を表示、認識する手段としては一定の限界があった。
【0004】
そこで、このような従来の商品情報表示の不利・不便を解消し、必要かつ十分な商品情報を簡易かつ正確に表示等する手段として、最近ではICタグが利用されるようになってきている。
ICタグは、非接触ICタグ、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを樹脂やガラス等で封止してタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末で、ICチップに所定の情報を記録して対象物にタグを取り付け、記録した情報を無線通信により読取装置(リーダ・ライタ)側でピックアップすることにより、ICチップに記録された情報を認識、表示するものである。
【0005】
このようなICタグは、ICチップのメモリに数百バイトのデータが記録可能であり、十分な情報等を記録でき、また、読取装置側と非接触であるため接点の磨耗や傷、汚れ等の心配もなく、さらに、タグ自体は無電源にすることができるため対象物に合わせた加工や小型化・薄型化が可能となる。
そして、このようなICタグを用いることで、商品に関する種々の情報、例えば商品の名称や重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限・賞味期限等の種々の情報が記録可能となり、従来の文字やバーコードによる商品表示では不可能であった多種多様な商品情報であっても、小型・薄型化されたタグを商品に装着するだけで利用することが可能になった。
【0006】
ところが、このようなICタグをPETボトルのような樹脂製容器に取り付けた場合、容器の内容物の影響によりタグの通信特性が劣化し、容器に内容物(例えば飲料)が入っている場合と入っていない場合とで、ICタグの通信距離が変化してしまうという問題が発生した。
ICタグを容器に取り付けると、ICタグが発生する電磁波は容器を貫通する方向に生じることになるが(図12参照)、容器に内容物が入っている状態では、内容物が有する誘電率(蓄えられる電気量の大きさ)によってアンテナ特性が変化し、容器に内容物が入っていると、容器が空の場合よりタグの通信距離が短くなってしまう。
【0007】
このため、PET容器にICタグをそのまま取り付けると、内容物の影響で通信特性が変化してしまい、内容物が入っている状態(例えば、出荷・販売時)と、内容物が入っていない状態(例えば、容器の回収・廃棄時)とで、ICタグの通信距離等が変動することになり、ICタグの動作が不安定になる等の問題が生じるおそれがあった。
特に、ICタグの周波数が高くなる程、このような内容物による影響が大きくなった。
【0008】
一方、ICタグをアルミニウム缶やスチール缶あるいはパウチ容器のような金属容器に取り付けた場合、金属容器の導電性によってICタグが影響を受けてしまい、正確な無線通信が行えなくなるという問題が発生した。
ICタグを容器に取り付けると、ICタグが発生する磁束は容器を貫通する方向に生じることになる。このため、タグを金属容器に取り付けた場合、アンテナ部が発する磁波・電磁波が金属容器側に吸収される熱損失等が生じてしまい、タグの通信特性が損なわれる事態が生じる。
【0009】
例えば、図12(a)に示すように、ICタグ120を金属製の容器130に取り付けると、図12(b)に示すように、タグ120が発する磁束により金属製の容器130の表面に渦電流が誘起され、この渦電流によって、ICタグ120の磁束が打ち消されて熱損失が生じる
また、金属製の容器130の影響によりタグ120のアンテナコイル部のインダクタンス等が変化してしまい、これによりアンテナの共振回路の共振周波数もずれてしまう。
このようにして、通常の汎用されているICタグをそのまま金属容器に取り付けると、タグが誤動作したり、リーダ・ライタとの無線通信が行えないという問題が発生した。
【0010】
ここで、従来、アルミニウム缶やスチール缶のような金属容器に取り付けるICタグとして、タグの構成を金属容器専用のものにすることで、金属容器からの影響を回避し得る金属専用ICタグの提案がなされている(例えば、特許文献1−3参照。)。
具体的には、図13に示すように、従来提案されている金属容器専用のICタグ220は、タグ内部の金属容器130と対向する側に、シート形状等に形成した磁性体(高透磁率体)221や誘電体が配設されるようになっており、これによって、ICタグ220が発する磁束を磁性体221内に通過させて、金属容器130側に渦電流が発生することを防止するようになっていた。
【0011】
【特許文献1】特開2002−207980号公報(第2−4頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−127057号公報(第3−4頁、第1図)
【特許文献3】特開2004−164055号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来提案されている金属容器用のICタグは、金属容器による影響が回避し得たとしても、上述したような樹脂容器における内容物の影響によるICタグの問題は何等解消することができなかった。
また、このような従来の金属専用のICタグでは、タグ自体が金属専用に設計・構成されたもので、既存のICタグを金属容器用に使用可能とするものではなかった。
すなわち、通常の汎用タグについて金属容器に使用した場合の問題点を解決するものではなかった。
【0013】
しかも、このように金属専用に構成されたICタグでは、内部に磁性体や誘電体が配設された複雑な構成となっており、タグが大型化、大重量化してしまい、小型・薄型で軽量であるICタグの最大の利点が損なわれるという問題も生じた。
ICタグは、安価で大量生産される汎用タグを使用してこそ、低コストで小型軽量かつ大記憶容量の無線通信手段として使用できるという特徴を最大限に生かすことができるものであり、金属専用の大型で複雑な構成で、樹脂製容器への対応ができないタグでは、汎用タグのメリットを著しく減殺するものであった。
【0014】
本発明は、以上のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、所定の距離層と電磁波遮蔽層を備えるプラスチック材を介してICタグを容器側に取り付けることにより、容器の内容物の有無によってICタグの通信特性が変化することがなく、また、容器が金属製であってもICタグの通信特性が損なわれることがなく、容器内の内容物の有無や容器の材質にかかわらずICタグの通信特性を良好に維持することができ、汎用のICタグをそのまま使用することができる、汎用性及び信頼性に優れたICタグ対応プラスチック材とICタグ及びICタグ対応容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項1に記載するように、リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグが取り付けられる包装体を構成する基材となるプラスチック材であって、ICタグを被包装体から離間させる距離層を備える構成としてある。
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項2に記載するように、ICタグの電磁波を被包装体側から遮蔽する電磁波遮蔽層を更に備える構成としてある。
【0016】
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、樹脂容器や金属容器等の被包装体を包装する包装体となるプラスチック材として、ICタグを被包装体から離間させる距離層を備えることで、樹脂容器の内容物の有無により誘電率の変化による通信特性の変化を防止することができる。
さらに、このプラスチック材に、ICタグの電磁波を被包装体側から遮蔽する電磁波遮蔽層とを積層形成することで、金属容器の影響による通信利得の熱損失と共振周波数のズレを防止することができる。
これにより、既存のどのようなICタグであっても、本発明のプラスチック材を介して樹脂容器や金属容器に取り付けられることにより、タグ本来の適正な通信範囲での正確な無線通信が行えるようになる。
【0017】
すなわち、ICタグを容器から離間させる距離層を備えることで、ICタグを容器から所定距離だけ離間させることができるので、樹脂容器の内容物の誘電率の影響を十分に抑制することができ、樹脂容器の内容物の有無によるICタグの通信特性の変動を効果的に防止することができる。
また、電磁波シールド塗料等からなる電磁波遮蔽層を備えることで、タグを金属容器に取り付けた場合にICタグの電磁波により金属容器側に生じる渦電流の発生を抑制することができるとともに、ICタグを容器から離間させる距離層によって、ICタグを金属容器から十分に離間させて金属の影響によるICタグのインダクタンスの変化を防止でき、ICタグのアンテナの共振周波数のズレを効果的に防止することができるようになる。
【0018】
これにより、本発明のプラスチック材を介することで、どのようなICタグをどのような容器に取り付けても、また、容器内に内容物があってもなくても、ICタグの通信利得を常に良好な状態に確保することができ、正確な無線通信が可能となり、既存の汎用タグであってもそのまま使用するこができ、汎用性、信頼性に優れたICタグを実現することが可能となる。
なお、本発明のプラスチック材は、少なくとも距離層を備えるものであればよく、距離層は、例えば不織布や発泡樹脂等からなる層を基材となるPET樹脂層等に積層形成することができる。また、距離層自体を基材とすることもでき、その場合にはPET樹脂層等の基材は不要となる。
そして、この距離層や基材の表面に電磁波シールド塗料等を塗布することで、電磁波遮蔽層を積層形成することができる。
【0019】
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項3に記載するように、電磁波遮蔽層が距離層の表面に塗布により積層形成される構成としてある。
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、電磁波遮蔽層として、プラスチック材の距離層や基材となるPET樹脂等のプラスチックからなる樹脂層等の表面に電磁波シールド塗料を塗布することによって、電磁波遮蔽層を塗布形成することができる。
これにより、電磁波遮蔽層は、プラスチック材の表面に電磁波シールド塗料を塗布するだけで、簡単に積層形成することができる。
【0020】
ここで、電磁波遮蔽層は、樹脂層表面の任意の箇所に塗布形成することができる。例えば、ICタグを取り付ける実装部分のみに電磁波シールド塗料を塗布することにより、使用するICタグの大きさや装着部位等に合わせて、プラスチック材の任意の部位に任意の大きさ・形状の電磁波遮蔽層を容易かつ迅速に塗布形成することができる。
また、例えばラベル缶のように缶全体がプラスチック材で包装された缶容器に、小売店においてICタグを後から取り付けるような場合には、ICタグは容器の任意の部位に無作為に取り付けられることになるので、電磁波シールド塗料をプラスチック材の全体に塗布して電磁波遮蔽層を形成する。
これにより、低コストで、任意のICタグに対応可能な汎用性、拡張性の高い包装体・プラスチック材を実現することができる。
【0021】
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項4に記載するように、電磁波遮蔽層が酸化金属材料からなる構成としてある。
具体的には、請求項5に記載するように、酸化金属材料は、Mn−Zn、Ni−Zn又はMg−Zn系の軟式フェライトからなる構成とすることができる。
また、請求項6に記載するように、酸化金属材料は、Al、C、Cu、Ag、Nb、Co、Cr、Pd、Ni、Mn、W又はSiのフレーク又は粒子を含む磁性材料からなる構成とすることもできる。
【0022】
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、ICタグの電磁波を容器側から遮蔽する電磁波遮蔽層として、任意の酸化金属材料を選択して使用することができる。
これにより、使用するICタグの出力や周波数特性に対応した好適な透磁率等を備えた電磁波遮蔽層を設定することができ、汎用性、拡張性に優れたICタグ対応型のプラスチック材を提供することができる。
【0023】
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項7に記載するように、距離層が、不織布又は発泡樹脂からなる構成としてある。
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、ICタグを容器から離間させる距離層として、不織布や発泡樹脂等を積層することができる。
【0024】
ICタグに対する容器の内容物による影響を低減するには、理想的にはタグの実装部分の実効比誘電率を1.0(空気)とすることが望ましいが、これではICタグを空気中に浮揚させることを意味し、プラスチック材単体でこのような構成とすることは困難である。
不織布は、例えばPET樹脂からなる不織布であれば内部に多数の空洞ができるので、実効比誘電率をPET樹脂そのものよりも更に小さくでき、理想値である1.0により近い値に設定することが可能であり、ICタグを容器から離間させる距離層を構成する物質として最適である。同様に、発泡樹脂の場合にも、内部に空気や窒素、二酸化炭素等の気体が充填され、実行比誘電率を1.0に近い値にすることができる。
また、不織布や発泡樹脂の特長は設計の自由度にあり、所望の厚みと大きさの距離層を容易かつ低コストで形成することが可能となる。
【0025】
そこで、本発明では、ICタグを容器から離間させる距離層として不織布又は発泡樹脂を採用し、これによって、ICタグが容器に近接・接触することで生じる容器内容物の誘電率の影響による通信特性の変化や、金属容器の影響による共振周波数のズレや金属による熱損失を有効に防止することができる。
なお、距離層としては、同様の観点から、不織布や発泡樹脂以外にも、例えば樹脂塗料を格子状に塗布することで内部に空洞を有することで形成でき、これを本発明の距離層として採用することもできる。
【0026】
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項8に記載するように、距離層は、熱可塑性プラスチックの樹脂層により構成としてある。
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、包装体となるプラスチック材の基材として、PET樹脂等のプラスチックからなる樹脂層を備え、この樹脂層を、ICタグを容器側から離間させる距離層として構成することができる。
【0027】
PET樹脂等からなる樹脂層は、距離層として任意の厚みに設定可能であり、また、例えばロール状に巻き取り可能な薄膜フィルム状に薄く長く形成することができ、任意の形状や大きさの容器を包装するプラスチック材の基材として好適である。
そして、フィルム状等に形成された樹脂層には、不織布等からなる距離層を更に積層形成可能であり、また、樹脂層の表面に電磁波シールド塗料を塗布することで電磁波遮蔽層も簡単に積層形成することができる。
このように、PET樹脂等のプラスチックからなる樹脂層は、本発明に係る距離層として、また、プラスチック材の基材として好適に機能させることができる。
【0028】
また、本発明のICタグは、請求項9に記載するように、ICチップと、アンテナと、これらICチップ及びアンテナが実装される基材となるプラスチック材とを備え、プラスチック材が被包装体の包装体を構成することにより当該被包装体に取り付けられてリーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグであって、プラスチック材が請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなる構成としてある。
【0029】
このように、本発明では、ICタグを容器から離間させる距離層や、ICタグの電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層とを有するプラスチック材を、ICタグ側に一体的に備えることができ、プラスチック材付きICタグとして提供することができる。
生産性等を考慮した場合、プラスチック材とICタグとを一体的に形成することは有利であり、どのような容器に取り付けてもタグの通信特性が損なわれずにタグ本来の適正な通信範囲で正確な無線通信を可能とする本発明の特徴を、より低コストに生産性良く実現することができる。
【0030】
そして、本発明のICタグ対応容器は、請求項10に記載するように、内部に内容物を収納可能な容器本体と、この容器本体の全部又は一部を包装するプラスチック材とを備えた容器であって、プラスチック材が請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなる構成としてある。
また、本発明のICタグ対応容器は、請求項11に記載するように、内部に内容物を収納可能な容器本体を備える容器であって、容器本体の全部又は一部が、請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなる構成とすることもできる。
【0031】
このように、本発明のICタグ対応容器は、本発明に係るプラスチック材を使用して、ICタグ付きプラスチック材で包装されたPET容器や、アルミニウム缶やスチール缶等の金属缶・ラベル缶、パウチ容器等の任意の金属容器、樹脂容器を形成することができる。また、ICタグ付きプラスチック材によって、PET容器のようなプラスチック容器自体を形成することができる。
容器の包装体となるプラスチック材は、容器全体を本発明に係るプラスチック材で包装することもでき、また、容器中のICタグを実装する部位のみをプラスチック材で包装するラベルとして使用することもでき、さらに、プラスチック容器自体を構成することもできる。
このようにして、本発明によれば、任意の形状、大きさ、用途等の樹脂容器や金属容器について、どのようなICタグを取り付けても、容器の内容物の有無にかかわらず、そのICタグの通信利得を良好に確保することができるIC対応容器として提供することができる。
【0032】
さらに、本発明のICタグ対応容器は、請求項12に記載するように、容器本体と包装体の間に、ICタグを被包装体から離間させる第二の距離層を備える構成としてある。
このように、本発明のICタグ対応容器は、容器本体と包装体との間に、ICタグを容器から更に離間させる第二の距離層を備えることができる。
これにより、包装体の距離層とともに、第二の距離層によってICタグを容器側から十分に離間させることができ、樹脂容器の内容物の有無により誘電率の変化による通信特性の変化を効果的に防止できるとともに、金属容器の影響による通信利得の熱損失と共振周波数のズレも防止することができる。
【0033】
ここで、第二の距離層は、容器表面の凹凸形状や容器自体の形状を利用することで構成することができる。
例えば、容器が樹脂製のPET容器の場合には、容器胴部のビードにより形成される凹部の位置にICタグを配設することで、エンボス缶の場合と同様に、400μm〜800μm程度の深さ(厚さ)の第二の距離層を構成できる。
また、特に角型のPET容器の場合、包装体を容器胴部外周に展張状態で巻装することで、包装体と容器胴部の間に隙間を形成し、この隙間によって第二の距離層を構成することができる。
【0034】
さらに、容器が金属製の缶容器の場合には、缶胴に凹凸加工が施されるエンボス缶の凹部の位置にICタグを配設することにより、凹部によって例えば400μm〜800μm程度の深さ(厚さ)の第二の距離層を構成することができる。
このようにして、本発明では、容器表面の凹凸形状や容器自体の形状を利用して、ICタグの通信特性を良好に維持する第二の距離層を設けることができ、低コストで汎用性・信頼性の高いICタグ対応容器を実現することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、既存のどのようなICタグであっても、タグ側には特殊な構成等を必要とすることなく、容器の内容物の有無に影響を受けず、かつ、どのような材質の容器に装着しても使用することができ、タグ本来の適正な通信範囲での正確な無線通信が可能となる。
これにより、小型・薄型で軽量であるという汎用のICタグの利点を何等損なうことなく、各種の樹脂容器や金属容器について使用してもICタグ本来の良好な通信特性を得ることができる、特に、PETボトル等の樹脂容器や、アルミニウム缶やスチール缶、ラベル缶、パウチ容器等の金属容器に好適なICタグ対応プラスチック材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係るICタグ対応プラスチック材と、このプラスチック材を備えたICタグとICタグ対応容器の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
[プラスチック材]
図1は、本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材を模式的に示す要部斜視図であり、(a)はICタグを実装する前の状態を、(b)はICタグを実装した状態を示している。
図1に示すように、本実施形態のプラスチック材10は、被包装体となる樹脂容器や金属容器等の容器30を包装する包装体であり、表面の任意の箇所にリーダ・ライタ(図示せず)との間で無線通信を行うICタグ20が取り付けられるようになっている。
【0037】
具体的には、プラスチック材10、基材となる樹脂層11と、この樹脂層11の一面に積層される距離層12と、樹脂層11の他の一面に塗布形成される電磁波遮蔽層13とを備えており、距離層12の任意の箇所にICタグ20が実装されて、カバーフィルム層14でカバーされるようになっている。
プラスチック材10は、例えばPETボトルやラベル缶の包装体のように、被包装体となる容器の全体を包むように包装することもでき、また、容器の胴部に巻装等して容器の一部を包装するようにしてもよい(図3〜図6参照)。
【0038】
なお、プラスチック材10としては、容器の外周に巻装等される薄膜フィルム状の包装体として使用される他、PET樹脂容器等のプラスチック容器自体を構成する包装体としても適用することが可能である。
すなわち、本発明のプラスチック材10は、樹脂容器のシュリンクフィルムやラベル缶のラベルのように、容器全体をフィルム状に形成したプラスチック材10で包装することもでき、また、容器中のICタグを実装する部位のみをプラスチック材で包装するラベルとして使用することもできるが、さらに、プラスチック容器自体を所定の厚みと強度を有する本発明のプラスチック材10によって構成することもできる。
【0039】
[樹脂層]
樹脂層11は、プラスチック材10の基材となる層であり、PET樹脂等で薄膜フィルム状に形成されている。
具体的には、樹脂層11は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の熱可塑性プラスチックにより形成される。
例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂を薄膜形成することで樹脂層11を形成することができる。熱可塑性ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを主成分とする共重合体またはブレンド等で、融点が約200〜260℃のものを使用でき、また、ポリエステル系樹脂被膜の厚みは、通常約5〜40μm程度である。
プラスチック材10としての厚みや強度、耐久性等を考慮すると、樹脂層11の厚みは5μmから100μm程度が好ましい。
【0040】
ここで、熱可塑性ポリエステル系樹脂の薄膜は、押出しラミネート法や無延伸キャストフィルム・ラミネート法等により形成され、熱接着後急冷された非晶質で無延伸のものが好ましい。無延伸で非晶質の熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜は、展伸性と密着性に優れており、基材となる金属層11を薄肉化することによる延びや収縮変形に対しても、剥離や亀裂等の損傷を生ずることなく追従することができる。
この樹脂層11は、単層(1層)であってもよく、また、2層、3層等の多層であってもよい。多層の場合、延伸フィルムを熱接着や接着剤層を介して接着することで形成できる。
【0041】
このように、基材となる樹脂層11を備えることで、プラスチック材10は、ロール状に巻き取り可能な薄膜フィルム状に薄く長く形成することができ、任意の形状や大きさの容器を包装するプラスチック材10として好適である。
なお、この樹脂層11は、適宜省略することができる。後述するように、本実施形態のプラスチック材10は、ICタグ20を容器30から離間させる距離層12を備えており、この距離層12を基材として、距離層12に直接電磁波遮蔽層13を積層形成できれば、樹脂層11を省略することが可能である。
この意味で、樹脂層11は、距離層12の一部を構成する層と捉えることができ、不織布等からなる距離層12とともに、樹脂層11の厚みによってICタグ20を容器30から十分に離間させて、良好な通信特性を得ることができる。すなわち、距離層12とともに樹脂層11が備えられることで、ICタグ20は「距離層+樹脂層」の厚みによって容器30から十分に離間されることになる。
【0042】
[距離層]
距離層12は、樹脂層11に積層される、ICタグ20を容器30から離間させるための層であり、本実施形態では、ICタグ20がこの距離層12の表面に実装されるようになっている。
距離層12は、不織布や発泡樹脂等によって形成することができる。
ICタグ20に対する樹脂容器の内容物による影響や金属容器の影響を低減するには、理想的にはタグの実装部分の実効比誘電率を1.0(空気)とすることが望ましいが、これではICタグを空気中に浮揚させることを意味し、プラスチック材10単体でそのような構成を取ることは困難である。
そこで、本実施形態では、不織布や発泡樹脂からなる距離層12を形成することで、ICタグを空気中に浮揚させた場合に近い実効比誘電率が得られるようにしてある。
【0043】
不織布は、例えばPET樹脂からなる不織布であれば内部に多数の空洞ができるので、実効比誘電率をPET樹脂そのものよりも更に小さくでき、理想値である1.0により近い値に設定することが可能となる。同様に、発泡樹脂の場合にも、内部に空気や窒素、二酸化炭素等の気体が充填され、実行比誘電率を1.0に近い値にすることができる。
また、不織布や発泡樹脂の特長は設計の自由度にあり、所望の厚みと大きさの距離層を容易かつ低コストで形成することが可能となる。
【0044】
本実施形態では、ICタグ20を容器30から離間させる距離層12として不織布あるいは発泡樹脂を採用し、これによって、ICタグが金属に接触・近接することで生じる共振周波数のズレや金属による熱損失、内容物の影響による通信特性の劣化等を防止するようにしてある。
不織布は、例えば、合成繊維製、天然繊維製等の任意の材質のものを選択可能であり、厚みや大きさ、形状等は、実装するICタグ20に対応して任意に設定することができる。
また、距離層12に好適な発泡樹脂としては、種々の方法に形成することができるが、例えば、発泡剤を用いる方法、ポリマーを混合(混練)する際に空気や窒素ガスを注入する方法、化学反応を利用する方法等がある。
【0045】
この距離層12を構成する不織布や発泡樹脂は、基材となる樹脂層11の表面に接着剤や熱融着等で接着・積層される。
距離層12の厚みは、プラスチック材10としての厚み等を考慮すると、15μm程度とするのが好ましい。
なお、不織布や発泡樹脂以外にも、同様の観点から、例えば樹脂塗料を格子状に塗布することで内部に空洞を有する距離層を形成することができ、これを距離層12として採用することもできる。
また、不織布等からなる距離層12は、上述したように、樹脂層11が距離層12として機能してICタグの通信利得が十分確保される場合には、樹脂層11を距離層12として、不織布等からなる距離層12を省略することも可能である。
【0046】
[電磁波遮蔽層]
電磁波遮蔽層13は、樹脂層11の距離層12とは反対側の表面に積層される、ICタグ20の磁界(電磁波)を容器30側から遮蔽させる層である。
この電磁波遮蔽層13は、酸化金属材料からなり、具体的には、Mn−Zn、Ni−Zn又はMg−Zn系の軟式フェライトで構成することができる。
また、Al、C、Cu、Ag、Nb、Co、Cr、Pd、Ni、Mn、W又はSiのフレーク又は粒子を含む磁性材料により構成することができる。
このように、本実施形態では、ICタグ20の磁界を容器30側に通過させないように遮蔽する電磁波遮蔽層13として、任意の酸化金属材料を選択して使用することができ、使用するICタグ20の出力や周波数特性に対応した好適な透磁率等を備えた電磁波遮蔽層13を形成できるようになっている。
【0047】
そして、以上のような成分からなる電磁波遮蔽層13として、本実施形態では、酸化金属材料を液体化し、樹脂層11の表面に塗布可能な導電性塗料などの電磁波シールド塗料によって構成してある。すなわち、電磁波遮蔽層13は、塗料が塗布されることにより樹脂層11の表面に積層されるようになっている。これにより、電磁波遮蔽層13の製造工程はきわめて容易かつ迅速に行えるようになっている。
また、このように電磁波シールド塗料を塗布するだけで電磁波遮蔽層13を形成できるので、ICタグ20を取り付ける実装部分のみに塗料を塗布することで、使用するICタグ20の大きさや装着部位等に合わせて、プラスチック材10の任意の部位に任意の大きさ・形状の電磁波遮蔽層13を容易かつ迅速に塗布形成することができる。
なお、ICタグ20がプラスチック材10の任意の部位に無作為に取り付けられるような場合には、樹脂層11の表面全体に電磁波シールド塗料を塗布して電磁波遮蔽層13を形成する。
【0048】
[電磁波シールド塗料の製造]
電磁波シールド塗料の製造方法としては、Fe−Siなどの磁性体粉末を、ニス、プライマー、エポキシなどの樹脂の溶媒に混入して製造することができる。磁性体の粉末は扁平状が好ましいが、球状のものでもかまわない。また、磁性体は扁平状と球状を混合してもかまわない。
使用する磁性体の扁平形状の長径は、例えば15μmから40μmの範囲のものが好ましく、磁性体が球状の場合は、粒径が15μmから30μmの範囲のものが好ましい。
溶媒には、油性又は水性の塗料を使用することができ、熱乾燥タイプやUV硬化タイプなど、特に限定はされない。
また、磁性体と溶媒の混合比としては、電磁波シールド効果や金属に塗布可能な粘度を考慮すると、溶媒が40%から75%の範囲が好適である。
【0049】
[電磁波シールド塗料の塗布方法]
電磁波シールド塗料を樹脂層11へ塗布するには、バーコータ、ロールコート、刷毛などを用いることができる。また、塗料を直接樹脂層11へ塗布してもよいが、密着性を考慮すると、樹脂層11の上にプライマーなどの接着剤を塗布した後に、その上に電磁波シールド塗料を塗布するのが好ましい。
また、樹脂層11上に電磁波シールド塗料とニス、プライマー又は樹脂などを交互に塗布し、積層させても良い。この場合、最上層は電磁波シールド塗料でないことが好ましい。
塗料の塗布厚は、磁性体粉末の溶媒への混入濃度及び粉末の大きさにもよるが、プラスチック材10としての厚みを考慮に入れた場合、50μmから300μm程度が好ましい。また、塗布厚は厚いほど電磁波のシールド効果を高めることができる。
【0050】
[ICタグ]
ICタグ20は、ICチップとアンテナを有し、これらICチップとアンテナが樹脂やガラス等からなる基材に搭載されて一体的に封止されて一つのICタグを構成している。
そして、本実施形態では、プラスチック材10がICタグ20の基材として使用され、図1に示すように、ICタグ20がプラスチック材10の距離層12の表面に実装されるようになっている。
なお、上述したように、不織布等からなる距離層12は省略も可能であり、その場合には、ICタグ20は、距離層として機能する樹脂層11の表面に実装されることになる。
【0051】
このICタグ20は、プラスチック材10により包装される容器の製造工程において、予めプラスチック材10に実装することもでき、また、製造・出荷されたプラスチック材10やプラスチック材10で包装された容器30に対して、後から取り付けることもできる。
図1に示す例では、ICタグ20がプラスチック材10の製造工程において予め実装される場合であり、距離層12の表面に実装されたICタグ20は、さらにカバーフィルム層14で覆われるようになっている。
【0052】
ここで、ICタグ20に備えられるICチップは、メモリ等の半導体チップからなり、例えば数百バイトのデータが記録可能となっている。
そして、アンテナを介してリーダ・ライタとの間で無線通信によって読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップに記録されたデータが認識されるようになっている。
ICチップに記録されるデータとしては、例えば、商品の名称や重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意の情報や各種データが記録可能であり、また、書換も可能である。データの記録や書換は専用のリーダ・ライタにより行える。
【0053】
また、ICタグ20で使用される周波数帯としては、例えば、135kHz以下の帯域、13.56MHz帯、いわゆるUHF帯に属する860M〜960MHz帯、2.45GHz帯等の数種類の周波数帯がある。
そして、使用される周波数帯によって無線通信が可能な通信距離が異なるとともに、周波数帯によって最適なアンテナ長が異なってくる。
【0054】
図2は、図1に示すプラスチック材10を介して容器30にICタグ20を実装した場合の通信特性の状態を模式的に示す説明図であり、(a)は容器30に実装されたICタグを、(b)は(a)に示すICタグが発する磁束の状態を示している。
同図に示すように、ICタグ20が無線通信を行うとアンテナコイル部に磁波・電磁波が発生する。従来は、この磁波・電磁波が容器の内容物の影響を受け、アンテナコイル部のインダクタンス等が変化してしまい、アンテナの共振周波数がずれたり、内容物の有無によって通信距離が変動したりしていた。
また、ICタグ20の磁波・電磁波が金属容器に吸収される熱損失等が生じ(図12参照)、タグの通信特性が損なわれていた。
【0055】
本実施形態のプラスチック材10は、PET樹脂等からなる樹脂層11と、不織布等かなる距離層12(又は距離層12a)を備えることで、ICタグ20を金属層11から十分に離間させることができるので、容器30の内容物の影響によるタグ側のインダクタンス等の変化も防止でき、これによって、ICタグ20のアンテナの共振周波数のズレや内容物の有無による通信距離の変動等も防止することができる。
また、電磁波シールド塗料等からなる電磁波遮蔽層13によって、金属製の容器30に渦電流等が発生することを防止できる。
【0056】
[包装体の製造方法]
次に、以上のような本実施形態のプラスチック材10の製造方法について説明する。
プラスチック材10は、まず、基材となる樹脂層11をPET樹脂等のプラスチック樹脂で薄膜形成し、この樹脂層11の表面に上述した酸化金属材料からなる電磁波シールド塗料を塗布して電磁波遮蔽層13を形成する。
このとき、樹脂層11に塗布する電磁波シールド塗料は、樹脂層11の表面全体に塗布することができ、また、ICタグ20を実装する部分のみに塗布することもできる。
【0057】
その後、樹脂層11の電磁波シールド塗料を塗布した面と反対側の表面に、不織布からなる距離層12を積層する。不織布は接着剤や熱融着等の手段によって電磁波遮蔽層13の表面に剥離しないように固着する。
また、距離層12は、樹脂層11の表面に樹脂塗料を塗布することによっても形成できる。すなわち、樹脂層11の表面の任意の部位に、樹脂塗料を格子状に塗布することで、内部に空洞を有する距離層12を形成することができる。
以上によって、本実施形態のプラスチック材10が完成する。
【0058】
なお、以上の工程順は一例であり、これ以外の工程でプラスチック材10を製造することもできる。例えば、距離層12を電磁波遮蔽層13より先に樹脂層11に積層することもできる。
また、樹脂層11と距離層12、電磁波遮蔽層13の積層順は任意に変更することができる。図2に示す例では、容器側から電磁波遮蔽層13→樹脂層11→距離層12の順に積層したが、これを距離層12→樹脂層11→電磁波遮蔽層13としたり、樹脂層11→電磁波遮蔽層13→距離層12とするように、他の積層順としてもよい。
【0059】
[容器]
次に、以上のような本実施形態のプラスチック材10によって包装される容器の一例を図3〜図6に示す。
図3は、本実施形態に係るプラスチック材10で包装されるPETボトル容器30Aの一例を示す斜視図である。同図に示すように、プラスチック材10は、PETボトル容器30Aの胴部に巻装して容器を包装することができる。ICタグ20を含むプラスチック材10は、適切な大きさに裁断され、PETボトル容器30Aの胴部に巻装され、プラスチック材10の両端部を熱溶着や接着剤等で固定・着接する。
【0060】
なお、図3に示す例では、プラスチック材10は、PETボトル容器30Aの胴部の一部のみを包むようになっているが、容器胴部の全体をプラスチック材10で包むことも勿論可能である。
また、PETボトル容器30A自体をプラスチック材10によって形成することも可能である。
【0061】
図4は、図3と同様にプラスチック材10をPETボトル容器30B,Cの胴部に巻装した一例を示す図であり、同図に示すように、PETボトル容器30は角型ボトル30B(図4(a))であっても、丸型ボトル30C(図4(b))であってもよい。
そして、図4に示すように、プラスチック材10は、PET容器の胴部のビードにより形成される凹部にICタグ20が位置するように容器30を包装することがこのましい。このようにすると、図4(c)に示すように、容器30の本体とプラスチック材10の間には空間が存在することになり、これが第二の距離層31を構成し、ICタグ20を容器30から更に離間させるようになる。
【0062】
これにより、プラスチック材10に備えられる距離層12とともに、第二の距離層31によってICタグ20を容器側から十分に離間させることができ、PET容器30の内容物の有無により誘電率の変化による通信特性の変化を防止することができる(図10参照)。
なお、第二の距離層としては、PET容器の凹部を利用して構成できる他、例えば、角型ボトルの胴部外周にプラスチック材10を展張状態で巻装することで、容器30の表面とプラスチック材10の間に間隙を形成して第二の距離層とすることもできる。
【0063】
図5は、プラスチック材10をアルミニウム缶やスチール缶等の缶容器30Dの胴部に巻装した一例を示す図である。
図5に示す例では、プラスチック材10は、缶容器30Dの胴部の一部のみを包むようになっているが、例えばラベル缶の包装体のように缶容器30Dの全体をプラスチック材10で包むこともできる。
なお、アルミニウム缶やスチール缶等の缶容器では、基材となる金属材にPET樹脂等のプラスチック樹脂を被覆した樹脂被覆缶容器が使用されることがあり、本実施形態のプラスチック材10は、このような樹脂被覆缶容器の包装にも使用できることは勿論である。樹脂被覆缶容器は、容器の外面や内面にPET樹脂等が被覆されており、この被覆樹脂層がプラスチック材10の樹脂層11や距離層12と同様に、ICタグ20を容器側から離間させる機能を果たすことから、プラスチック材10で包装することによりICタグ20の通信特性を確保する缶容器として好ましい(図8参照)。
【0064】
また、缶容器の場合にも、図4で示したPETボトル容器の場合と同様に、第二の距離層を備えることができる。
缶容器には、缶表面に任意の凹凸加工が施されるエンボス缶があり、図5に示すように、プラスチック材10を、エンボス缶の凹凸部にICタグ20が位置するように缶容器30Dを包装することで、図5(b)に示すように、缶容器30Dの本体とプラスチック材10の間に第二の距離層32を介在させることができ、ICタグ20を缶容器30Dから更に離間させることができる。
これによって、ICタグ20の通信特性を更に良好に維持することができるようになる(図11参照)。
【0065】
図6は、本実施形態のプラスチック材10によりパウチ容器30Eを包装した場合の一例である。
図6に示す例では、プラスチック材10は、パウチ容器30Eの胴部の一部に巻装されるようになっているが、例えばパウチ容器自体をプラスチック材10で形成することで、パウチ容器30Eの全体がプラスチック材10で包装されるようにしてもよい。
以上のように、本実施形態に係るプラスチック材10を用いて包装される容器は任意の金属容器や樹脂容器とすることができ、プラスチック材10は、少なくともICタグ20が実装される部位について備えられていればよく、容器の全体をプラスチック材10で包装してもよいが、容器の一部(ICタグの実装部)のみを本実施形態に係るプラスチック材10で形成し、その他の部位は、例えば、電磁波シールド塗料や不織布等を省略することもできる。
【0066】
[通信特性]
次に、本実施形態に係るプラスチック材10を介して容器30に実装されるICタグの通信特性について図7〜図11を参照して説明する。
図7は、共振周波数13.56MHzのICタグ20を、距離層12及び電磁波遮蔽層13を備える本実施形態のプラスチック材10を介して金属製の容器30に実装した場合のICタグの共振周波数と無線信号の強度の関係を示すグラフである。なお、同図は、周囲環境などの影響を考慮せずに設計されている既存の汎用タグを使用した結果を示している。
まず、実線は、空気層12の厚みを約0.5mmに設定したプラスチック材10を介してICタグを缶容器に取り付けた場合であり、ICタグは共振周波数13.56MHz帯域で30dB以上の出力で駆動している。
二点鎖線は、既存の汎用タグを、プラスチック材10を介さず、そのまま既存のアルミニウム缶に取り付けた場合であり、出力が15dB程度まで大きく低下してしまい、タグの共振周波数もずれてしまう。
【0067】
一点鎖線は、既存の汎用タグを、距離層12の厚みを0.1mmに設定したプラスチック材10を介して金属缶に取り付けた場合であり、出力は25dB程度確保されているものの、タグの共振周波数が13.4MHz帯域にずれてしまう。
破線は、内部にフェライトシート等の磁性体(高透磁率体)を備えた既存の汎用電磁波シールド材を介してタグを金属缶に取り付けた場合であり、出力は25dB程度確保されているものの、タグの共振周波数が13.3MHz帯域に大きくずれてしまっている。
以上より、距離層12及び電磁波遮蔽層13を備える本実施形態のプラスチック材10を使用して、距離層12の厚みを最適な値に設定することで、既存の汎用タグであっても、本来の通信特性を良好に確保して金属容器等に使用できることがわかる。
【0068】
図8は、共振周波数13.56MHzのICタグ20を本実施形態のプラスチック材10を介して金属製の容器30に実装した場合の、電磁波遮蔽層13の厚みとICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
同図に示すように、プラスチック材10を介して金属容器に実装されるICタグ20は、プラスチック材10の電磁波遮蔽層13の厚みに比例して通信距離が長くなっていることがわかる。
また、通常のアルミ缶やスチール缶と比較して、樹脂被覆缶の方が通信距離が長くなっていることがわかる。
【0069】
図9は、共振周波数13.56MHzのICタグ20を本実施形態のプラスチック材10を介してPET樹脂製の容器30に実装した場合の、容器内容物の有無とICタグの通信距離の変化の関係を示すグラフである。
同図に示すように、不織布(距離層12)を備えるプラスチック材10を介してPET樹脂容器に実装されるICタグ20は、容器内に内容物(水)がある場合とない場合とで、通信距離にほとんど変動が見られない。これは、プラスチック材10の電磁波遮蔽層13の膜厚が厚くなっても通信距離はほとんど影響を受けず、良好な通信特性が得られている。
【0070】
これに対して、不織布(距離層12)を備えたプラスチック材10を介さずにPET樹脂容器に直に取り付けた場合には、特に内容物がある場合に通信距離が短くなり、内容物の有無による通信距離の格差が大きくなっている。また、距離層12を備えないプラスチック材10の電磁波遮蔽層13の膜厚が厚くなると、それに比例して通信特性も劣化している。
以上の図8及び図9のグラフから、プラスチック材10は、ICタグ20を容器側から離間させる距離層12を備え、かつ、ICタグ20の電磁波をシールドする適切な膜圧の電磁波遮蔽層13を備えることで、金属容器でも樹脂容器でもICタグ20の通信特性を良好に維持し得ることがわかる。
【0071】
図10は、図9で示した共振周波数13.56MHzのICタグ20をプラスチック材10を介してPET樹脂製の容器30に実装する場合に、さらに、PET樹脂製の容器30のビード部の凹部を利用して第二の距離層31(図4参照)を介在させた場合のICタグの通信距離の変動を示すグラフである。
同図に示すように、PETボトルのビード部の凹部を利用して第二の距離層31を構成することにより、ICタグ20の通信特性が更に向上して通信距離が長くなっていることがわかる。
【0072】
そして、距離層12を備えるプラスチック材10を介して取り付けられたICタグ20は、PETボトルの内容物の有無にかかわらず、通信距離がほとんど変動せず、電磁波遮蔽層13の膜厚にもほとんど影響を受けていない。
これに対して、不織布(距離層12)を備えたプラスチック材10を介さずにPET樹脂容器に直に取り付けた場合には、特に内容物がある場合に通信距離が短くなり、内容物の有無による通信距離の格差が大きくなっている。また、距離層12を備えないプラスチック材10の電磁波遮蔽層13の膜厚が厚くなると、それに比例して通信特性も劣化している。
【0073】
図11は、図8で示した共振周波数13.56MHzのICタグ20をプラスチック材10を介して金属製の容器30に実装する場合に、さらに、金属製の容器30としてエンボス缶を採用し、第二の距離層32(図5参照)を備えた場合の、電磁波遮蔽層13の厚みとICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
同図に示すように、エンボス缶の凹凸部分を利用して第二の距離層32を構成することにより、ICタグ20の通信特性が更に向上して通信距離が長くなっている。そして、これはエンボスの凹部の深さが大きい程、すなわち、第二の距離層32の距離が大きい程、通信特性が向上している。
以上の図10及び図11のグラフから、樹脂容器、金属容器とも、プラスチック材10と容器の間に更に第二の距離層を備えることで、ICタグ20の通信特性をより向上させることが可能となることがわかる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係るICタグ対応プラスチック材によれば、被包装体となる樹脂容器や金属容器等の容器30を包装するプラスチック材10として、ICタグ20を容器30から離間させる距離層12と、ICタグ20の電磁波を容器30側から遮蔽する電磁波遮蔽層13とを積層形成することで、樹脂容器の内容物の影響による通信特性の劣化と、それに伴う内容物の有無による通信距離の変動等を防止するとともに、金属容器の影響による通信利得の熱損失と共振周波数のズレを防止することができる。
これにより、既存のどのようなICタグであっても、本実施形態のプラスチック材10を介して金属容器や樹脂容器に取り付けられることにより、タグ本来の適正な通信範囲での正確な無線通信が行えるようになる。
【0075】
すなわち、ICタグ20を容器30から離間させる距離層12を備えることで、ICタグ20を容器30から所定距離だけ離間させることができるので、樹脂容器の内容物の誘電率の影響を十分に抑制することができ、樹脂製の容器30の内容物の有無によるICタグ20の通信特性の変動を効果的に防止することができる。
また、電磁波シールド塗料等からなる電磁波遮蔽層13を備えることで、タグを金属容器に取り付けた場合には、ICタグ20の電磁波により金属容器側に生じる渦電流の発生を電磁波遮蔽層13によって抑制することができるとともに、ICタグ20を容器から離間させる不織布等からなる距離層12を備えることで、ICタグ20を金属製の容器30から十分に離間させて金属の影響によるICタグ20のインダクタンスの変化を防止でき、ICタグ20のアンテナの共振周波数のズレを効果的に防止することができる。
【0076】
これにより、本実施形態に係るプラスチック材10を介してどのようなICタグ20をどのような容器に取り付けても、また、容器30内に内容物があってもなくても、ICタグ20の通信利得を常に良好な状態に確保することができ、正確な無線通信が可能となり、既存の汎用タグであってもそのまま使用するこができ、汎用性、信頼性に優れたICタグ20を実現することができる。
【0077】
[実施例]
以下、本発明に係るICタグ対応プラスチック材の一実施例を説明する。
[実施例1]
東洋アルミニウム(株)製 ケイ素鋼ペーストRFS54CM(90.5Fe−5.5Si−4Cr、形状:フレーク、フレーク長径:20μm〜30μm)を油性塗料に約70%混入し、電磁波遮蔽塗料を作成した。この塗料を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム表面に塗布した。また、その裏側には、厚さ100μmのPET製不織布を熱圧着により積層させた。塗料厚みについては50μm〜300μmの間で厚みを変えた。
また、ICタグ(テキサス・インスツルメンツ社製、動作周波数:13.56MHz)をPET製不織布(厚さ:約100μm)上に接着させた。
このICタグラベルを、塗料面を厚さ300μm〜400μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂容器に触れるように貼り合わせて、ICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き包容器に水を入れた状態でリーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、図9に示す通り、電磁波遮蔽塗料及び不織布のないICタグ付き包装容器の場合より通信距離が長くなった。
【0078】
[実施例2]
実施例1に用いた電磁波遮蔽塗料を塗料厚み75、150、250μmとして厚さ50μmのPET樹脂フィルム表面に塗布し、その裏側には、厚さ100μmのPET製不織布を熱圧着により積層させた。また、ICタグ(テキサス・インスツルメンツ社製、動作周波数:13.56MHz)をPET製不織布上に接着させた。
このICタグラベルを、塗料面を厚さ300μm〜400μmのPET樹脂容器の深さ1mmの凹部部分(第二の距離層)にICチップ及びアンテナ部がくるように貼り合わせて、ICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き包装容器に水を入れた状態で、リーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、図10に示す通り、電磁波遮蔽塗料及び不織布のないICタグ付き包装容器の場合より通信距離が長くなった。
【0079】
[実施例3]
実施例1と同様のICタグラベルを、表側に厚さ20μmのPET樹脂、裏側に厚さ30μmのPET樹脂でティンフリースチール(TFS)に被覆した樹脂被覆金属板(厚さ0.3mm)でできた内容量が350mlの深絞り成形容器に対して、塗布面が触れるように貼り合わせてICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き包装容器を用いてリーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、図8に示すとおり、通信が可能であった。
【0080】
[比較例1]
実施例1に用いた電磁波遮蔽塗料を厚さ50μmのPET樹脂フィルム表面に50μm〜300μmの間で厚みを変えて塗布し、その反対側に実施例1と同様のICタグをそれぞれ接着してICタグラベルを作成した。
このICタグラベルを、塗料面を厚さ300μm〜400μmのPET樹脂容器に触れるように貼り合わせて、ICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き容器に水を入れた状態で、リーダ・ライタ間との通信試験を行ったところ、図9に示す通り、どの塗料厚みにおいても電磁波遮蔽塗料及び不織布のあるICタグ付き包装容器の場合と比較して通信距離が短かった。
【0081】
[比較例2]
電磁波遮蔽塗料の厚みを実施例2と同じにして不織布のないICタグラベルを作成し、厚さ300μm〜400μmのPET樹脂容器の深さ1mmの凹部部分(第二の距離層)にICチップ及びアンテナ部がくるように塗料面側と樹脂容器を貼り合わせて、ICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き包装容器に水を入れた状態で、リーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、図10に示す通り、どの塗料厚みにおいても電磁波遮蔽塗料及び不織布のあるICタグ付き包装容器の場合と比較して通信距離が短かった。
【0082】
[比較例3]
実施例1で用いたICタグを、PETフィルム(フィルム厚:45μm)で挟んでICタグラベルを作成し、これを樹脂を被覆していない厚さ0.295mmのTFSでできた内容量が350mlの深絞り成形容器に貼り付けてICタグ付き容器を作成した。
このICタグ付き容器を用いてリーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、通信距離は大きく減少した(図8参照)。
【0083】
以上、本発明のICタグ対応プラスチック材とこのプラスチック材を備えたICタグ及びICタグ対応容器について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るICタグ対応プラスチック材とICタグ及びICタグ対応容器は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本発明のプラスチック材により包装・形成される容器として、飲料や食品の容器として用いられるPETボトルや缶容器、パウチ容器を例にとって説明したが、本発明のプラスチック材を適用できる容器としては、容器の用途や収納する内容物、容器の構成成分等は特に限定されるものではない。すなわち、樹脂製や金属製の容器であれば、どのような大きさ、形状、材質等の容器であってもよく、また、容器に収納される内容物がどのようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明した本発明のICタグ対応プラスチック材は、例えば、PETボトル容器、アルミニウム缶やスチール缶等の金属缶(ラベル缶)、パウチ容器等の任意の樹脂容器、金属容器の包装体として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材とICタグを模式的に示す要部斜視図であり、(a)はICタグを実装する前の状態を、(b)はICタグを実装した状態を示している。
【図2】図1に示すプラスチック材を介してICタグを容器に実装した場合の通信特性の状態を模式的に示す説明図であり、(a)はプラスチック材を介して容器に実装されたICタグの状態を、(b)は(a)に示すICタグが発する磁束の状態を示している。
【図3】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をPETボトル容器に取り付ける状態を模式的に示す要部斜視図であり、(a)はプラスチック材を容器に取り付ける前の状態を、(b)はプラスチック材を容器に取り付けた状態を示している。
【図4】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をPETボトル容器に取り付たけた状態を示す図であり、(a)はプラスチック材を角型PETボトル容器に取り付けた状態の正面図、(b)はプラスチック材を丸型PETボトル容器に取り付けた状態の正面図、(c)は(a)に示すA−A線断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をエンボス缶容器に取り付たけた状態を示す図であり、(a)はプラスチック材を缶容器に取り付けた状態の斜視図、(b)は(a)に示すB−B線拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をパウチ容器に取り付たけた状態を示す正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材に実装されたICタグの共振周波数と無線信号の強度の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材を金属容器に取り付けた場合における、電磁波遮蔽層の厚みとICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材を樹脂容器に取り付けた場合における、容器内容物の有無とICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材を角型のPETボトル容器に取り付けた場合における、容器内容物の有無とICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をエンボス缶容器に取り付けた場合における、電磁波遮蔽層の厚みとICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
【図12】従来の一般的な金属容器にICタグを実装した場合の通信特性の状態を模式的に示す説明図であり、(a)は金属容器に実装されたICタグの状態を、(b)は(a)に示すICタグが発する磁束の状態を示している。
【図13】従来の金属専用ICタグを金属容器に実装した場合の通信特性の状態を模式的に示す説明図であり、(a)は金属容器に実装された金属専用ICタグの状態を、(b)は(a)に示す金属専用ICタグが発する磁束の状態を示している。
【符号の説明】
【0086】
10 プラスチック材
11 樹脂層
12 距離層
13 電磁波遮蔽層
14 カバーフィルム層
20 ICタグ
30 容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグを取り付け可能なICタグ対応のプラスチック材と、このプラスチック材を基材として備えたICタグ及びプラスチック材を包装体としたICタグ対応容器に関し、特に、容器の材質や内容物の有無にかかわらずICタグの通信特性を良好に維持することができるICタグ対応プラスチック材とこのプラスチック材を備えたICタグ及びICタグ対応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PET樹脂等からなる樹脂製容器や、アルミニウム缶やスチール缶等の金属製容器は、例えば、ビール、コーラ、サイダー等の炭酸飲料・果汁飲料や各種お茶類等の飲料用の容器、缶詰食品の容器、各種液体製品の容器等に広く使用されている。
また、樹脂フィルム等の軟包材にAl箔等の金属層を積層した包装材料からなるパウチ容器は、軽量で柔軟性、耐久性、ガスバリア性等に優れ、加工も容易で安価に製造できることから、食品や飲料のみならず、洗剤、化粧品等の主に液体製品の容器として広く使用されている。
そして、このような樹脂製あるいは金属製の各種容器には、商品名や内容物の成分、生産者、生産地、賞味期限等の所定の商品情報が、文字やバーコード等で表示されている。この種の商品情報の表示は、通常、容器や容器を包装する包装体に印刷されたり、ラベル等に印刷されて容器に貼付されるようになっている。
【0003】
ところが、商品情報等の表示は、容器のデザイン等を損なわないよう小さく表示されるのが一般的であり、その結果、表示面積や表示される文字の大きさ、文字数等が限られたものとなり、充分な情報が表示できないという問題があった。
また、バーコード表示の場合、リーダで読み取るためにバーコード自体を容器表面に平面状に表示しなければならず、また、傷や汚れ等があると読み取り不能となってしまい、しかも、バーコードでコード化できる情報量は限られていることから、文字による表示の場合と同様に、商品情報を表示、認識する手段としては一定の限界があった。
【0004】
そこで、このような従来の商品情報表示の不利・不便を解消し、必要かつ十分な商品情報を簡易かつ正確に表示等する手段として、最近ではICタグが利用されるようになってきている。
ICタグは、非接触ICタグ、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを樹脂やガラス等で封止してタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末で、ICチップに所定の情報を記録して対象物にタグを取り付け、記録した情報を無線通信により読取装置(リーダ・ライタ)側でピックアップすることにより、ICチップに記録された情報を認識、表示するものである。
【0005】
このようなICタグは、ICチップのメモリに数百バイトのデータが記録可能であり、十分な情報等を記録でき、また、読取装置側と非接触であるため接点の磨耗や傷、汚れ等の心配もなく、さらに、タグ自体は無電源にすることができるため対象物に合わせた加工や小型化・薄型化が可能となる。
そして、このようなICタグを用いることで、商品に関する種々の情報、例えば商品の名称や重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限・賞味期限等の種々の情報が記録可能となり、従来の文字やバーコードによる商品表示では不可能であった多種多様な商品情報であっても、小型・薄型化されたタグを商品に装着するだけで利用することが可能になった。
【0006】
ところが、このようなICタグをPETボトルのような樹脂製容器に取り付けた場合、容器の内容物の影響によりタグの通信特性が劣化し、容器に内容物(例えば飲料)が入っている場合と入っていない場合とで、ICタグの通信距離が変化してしまうという問題が発生した。
ICタグを容器に取り付けると、ICタグが発生する電磁波は容器を貫通する方向に生じることになるが(図12参照)、容器に内容物が入っている状態では、内容物が有する誘電率(蓄えられる電気量の大きさ)によってアンテナ特性が変化し、容器に内容物が入っていると、容器が空の場合よりタグの通信距離が短くなってしまう。
【0007】
このため、PET容器にICタグをそのまま取り付けると、内容物の影響で通信特性が変化してしまい、内容物が入っている状態(例えば、出荷・販売時)と、内容物が入っていない状態(例えば、容器の回収・廃棄時)とで、ICタグの通信距離等が変動することになり、ICタグの動作が不安定になる等の問題が生じるおそれがあった。
特に、ICタグの周波数が高くなる程、このような内容物による影響が大きくなった。
【0008】
一方、ICタグをアルミニウム缶やスチール缶あるいはパウチ容器のような金属容器に取り付けた場合、金属容器の導電性によってICタグが影響を受けてしまい、正確な無線通信が行えなくなるという問題が発生した。
ICタグを容器に取り付けると、ICタグが発生する磁束は容器を貫通する方向に生じることになる。このため、タグを金属容器に取り付けた場合、アンテナ部が発する磁波・電磁波が金属容器側に吸収される熱損失等が生じてしまい、タグの通信特性が損なわれる事態が生じる。
【0009】
例えば、図12(a)に示すように、ICタグ120を金属製の容器130に取り付けると、図12(b)に示すように、タグ120が発する磁束により金属製の容器130の表面に渦電流が誘起され、この渦電流によって、ICタグ120の磁束が打ち消されて熱損失が生じる
また、金属製の容器130の影響によりタグ120のアンテナコイル部のインダクタンス等が変化してしまい、これによりアンテナの共振回路の共振周波数もずれてしまう。
このようにして、通常の汎用されているICタグをそのまま金属容器に取り付けると、タグが誤動作したり、リーダ・ライタとの無線通信が行えないという問題が発生した。
【0010】
ここで、従来、アルミニウム缶やスチール缶のような金属容器に取り付けるICタグとして、タグの構成を金属容器専用のものにすることで、金属容器からの影響を回避し得る金属専用ICタグの提案がなされている(例えば、特許文献1−3参照。)。
具体的には、図13に示すように、従来提案されている金属容器専用のICタグ220は、タグ内部の金属容器130と対向する側に、シート形状等に形成した磁性体(高透磁率体)221や誘電体が配設されるようになっており、これによって、ICタグ220が発する磁束を磁性体221内に通過させて、金属容器130側に渦電流が発生することを防止するようになっていた。
【0011】
【特許文献1】特開2002−207980号公報(第2−4頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−127057号公報(第3−4頁、第1図)
【特許文献3】特開2004−164055号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来提案されている金属容器用のICタグは、金属容器による影響が回避し得たとしても、上述したような樹脂容器における内容物の影響によるICタグの問題は何等解消することができなかった。
また、このような従来の金属専用のICタグでは、タグ自体が金属専用に設計・構成されたもので、既存のICタグを金属容器用に使用可能とするものではなかった。
すなわち、通常の汎用タグについて金属容器に使用した場合の問題点を解決するものではなかった。
【0013】
しかも、このように金属専用に構成されたICタグでは、内部に磁性体や誘電体が配設された複雑な構成となっており、タグが大型化、大重量化してしまい、小型・薄型で軽量であるICタグの最大の利点が損なわれるという問題も生じた。
ICタグは、安価で大量生産される汎用タグを使用してこそ、低コストで小型軽量かつ大記憶容量の無線通信手段として使用できるという特徴を最大限に生かすことができるものであり、金属専用の大型で複雑な構成で、樹脂製容器への対応ができないタグでは、汎用タグのメリットを著しく減殺するものであった。
【0014】
本発明は、以上のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、所定の距離層と電磁波遮蔽層を備えるプラスチック材を介してICタグを容器側に取り付けることにより、容器の内容物の有無によってICタグの通信特性が変化することがなく、また、容器が金属製であってもICタグの通信特性が損なわれることがなく、容器内の内容物の有無や容器の材質にかかわらずICタグの通信特性を良好に維持することができ、汎用のICタグをそのまま使用することができる、汎用性及び信頼性に優れたICタグ対応プラスチック材とICタグ及びICタグ対応容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項1に記載するように、リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグが取り付けられる包装体を構成する基材となるプラスチック材であって、ICタグを被包装体から離間させる距離層を備える構成としてある。
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項2に記載するように、ICタグの電磁波を被包装体側から遮蔽する電磁波遮蔽層を更に備える構成としてある。
【0016】
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、樹脂容器や金属容器等の被包装体を包装する包装体となるプラスチック材として、ICタグを被包装体から離間させる距離層を備えることで、樹脂容器の内容物の有無により誘電率の変化による通信特性の変化を防止することができる。
さらに、このプラスチック材に、ICタグの電磁波を被包装体側から遮蔽する電磁波遮蔽層とを積層形成することで、金属容器の影響による通信利得の熱損失と共振周波数のズレを防止することができる。
これにより、既存のどのようなICタグであっても、本発明のプラスチック材を介して樹脂容器や金属容器に取り付けられることにより、タグ本来の適正な通信範囲での正確な無線通信が行えるようになる。
【0017】
すなわち、ICタグを容器から離間させる距離層を備えることで、ICタグを容器から所定距離だけ離間させることができるので、樹脂容器の内容物の誘電率の影響を十分に抑制することができ、樹脂容器の内容物の有無によるICタグの通信特性の変動を効果的に防止することができる。
また、電磁波シールド塗料等からなる電磁波遮蔽層を備えることで、タグを金属容器に取り付けた場合にICタグの電磁波により金属容器側に生じる渦電流の発生を抑制することができるとともに、ICタグを容器から離間させる距離層によって、ICタグを金属容器から十分に離間させて金属の影響によるICタグのインダクタンスの変化を防止でき、ICタグのアンテナの共振周波数のズレを効果的に防止することができるようになる。
【0018】
これにより、本発明のプラスチック材を介することで、どのようなICタグをどのような容器に取り付けても、また、容器内に内容物があってもなくても、ICタグの通信利得を常に良好な状態に確保することができ、正確な無線通信が可能となり、既存の汎用タグであってもそのまま使用するこができ、汎用性、信頼性に優れたICタグを実現することが可能となる。
なお、本発明のプラスチック材は、少なくとも距離層を備えるものであればよく、距離層は、例えば不織布や発泡樹脂等からなる層を基材となるPET樹脂層等に積層形成することができる。また、距離層自体を基材とすることもでき、その場合にはPET樹脂層等の基材は不要となる。
そして、この距離層や基材の表面に電磁波シールド塗料等を塗布することで、電磁波遮蔽層を積層形成することができる。
【0019】
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項3に記載するように、電磁波遮蔽層が距離層の表面に塗布により積層形成される構成としてある。
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、電磁波遮蔽層として、プラスチック材の距離層や基材となるPET樹脂等のプラスチックからなる樹脂層等の表面に電磁波シールド塗料を塗布することによって、電磁波遮蔽層を塗布形成することができる。
これにより、電磁波遮蔽層は、プラスチック材の表面に電磁波シールド塗料を塗布するだけで、簡単に積層形成することができる。
【0020】
ここで、電磁波遮蔽層は、樹脂層表面の任意の箇所に塗布形成することができる。例えば、ICタグを取り付ける実装部分のみに電磁波シールド塗料を塗布することにより、使用するICタグの大きさや装着部位等に合わせて、プラスチック材の任意の部位に任意の大きさ・形状の電磁波遮蔽層を容易かつ迅速に塗布形成することができる。
また、例えばラベル缶のように缶全体がプラスチック材で包装された缶容器に、小売店においてICタグを後から取り付けるような場合には、ICタグは容器の任意の部位に無作為に取り付けられることになるので、電磁波シールド塗料をプラスチック材の全体に塗布して電磁波遮蔽層を形成する。
これにより、低コストで、任意のICタグに対応可能な汎用性、拡張性の高い包装体・プラスチック材を実現することができる。
【0021】
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項4に記載するように、電磁波遮蔽層が酸化金属材料からなる構成としてある。
具体的には、請求項5に記載するように、酸化金属材料は、Mn−Zn、Ni−Zn又はMg−Zn系の軟式フェライトからなる構成とすることができる。
また、請求項6に記載するように、酸化金属材料は、Al、C、Cu、Ag、Nb、Co、Cr、Pd、Ni、Mn、W又はSiのフレーク又は粒子を含む磁性材料からなる構成とすることもできる。
【0022】
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、ICタグの電磁波を容器側から遮蔽する電磁波遮蔽層として、任意の酸化金属材料を選択して使用することができる。
これにより、使用するICタグの出力や周波数特性に対応した好適な透磁率等を備えた電磁波遮蔽層を設定することができ、汎用性、拡張性に優れたICタグ対応型のプラスチック材を提供することができる。
【0023】
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項7に記載するように、距離層が、不織布又は発泡樹脂からなる構成としてある。
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、ICタグを容器から離間させる距離層として、不織布や発泡樹脂等を積層することができる。
【0024】
ICタグに対する容器の内容物による影響を低減するには、理想的にはタグの実装部分の実効比誘電率を1.0(空気)とすることが望ましいが、これではICタグを空気中に浮揚させることを意味し、プラスチック材単体でこのような構成とすることは困難である。
不織布は、例えばPET樹脂からなる不織布であれば内部に多数の空洞ができるので、実効比誘電率をPET樹脂そのものよりも更に小さくでき、理想値である1.0により近い値に設定することが可能であり、ICタグを容器から離間させる距離層を構成する物質として最適である。同様に、発泡樹脂の場合にも、内部に空気や窒素、二酸化炭素等の気体が充填され、実行比誘電率を1.0に近い値にすることができる。
また、不織布や発泡樹脂の特長は設計の自由度にあり、所望の厚みと大きさの距離層を容易かつ低コストで形成することが可能となる。
【0025】
そこで、本発明では、ICタグを容器から離間させる距離層として不織布又は発泡樹脂を採用し、これによって、ICタグが容器に近接・接触することで生じる容器内容物の誘電率の影響による通信特性の変化や、金属容器の影響による共振周波数のズレや金属による熱損失を有効に防止することができる。
なお、距離層としては、同様の観点から、不織布や発泡樹脂以外にも、例えば樹脂塗料を格子状に塗布することで内部に空洞を有することで形成でき、これを本発明の距離層として採用することもできる。
【0026】
また、本発明のICタグ対応プラスチック材は、請求項8に記載するように、距離層は、熱可塑性プラスチックの樹脂層により構成としてある。
このような構成からなる本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、包装体となるプラスチック材の基材として、PET樹脂等のプラスチックからなる樹脂層を備え、この樹脂層を、ICタグを容器側から離間させる距離層として構成することができる。
【0027】
PET樹脂等からなる樹脂層は、距離層として任意の厚みに設定可能であり、また、例えばロール状に巻き取り可能な薄膜フィルム状に薄く長く形成することができ、任意の形状や大きさの容器を包装するプラスチック材の基材として好適である。
そして、フィルム状等に形成された樹脂層には、不織布等からなる距離層を更に積層形成可能であり、また、樹脂層の表面に電磁波シールド塗料を塗布することで電磁波遮蔽層も簡単に積層形成することができる。
このように、PET樹脂等のプラスチックからなる樹脂層は、本発明に係る距離層として、また、プラスチック材の基材として好適に機能させることができる。
【0028】
また、本発明のICタグは、請求項9に記載するように、ICチップと、アンテナと、これらICチップ及びアンテナが実装される基材となるプラスチック材とを備え、プラスチック材が被包装体の包装体を構成することにより当該被包装体に取り付けられてリーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグであって、プラスチック材が請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなる構成としてある。
【0029】
このように、本発明では、ICタグを容器から離間させる距離層や、ICタグの電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層とを有するプラスチック材を、ICタグ側に一体的に備えることができ、プラスチック材付きICタグとして提供することができる。
生産性等を考慮した場合、プラスチック材とICタグとを一体的に形成することは有利であり、どのような容器に取り付けてもタグの通信特性が損なわれずにタグ本来の適正な通信範囲で正確な無線通信を可能とする本発明の特徴を、より低コストに生産性良く実現することができる。
【0030】
そして、本発明のICタグ対応容器は、請求項10に記載するように、内部に内容物を収納可能な容器本体と、この容器本体の全部又は一部を包装するプラスチック材とを備えた容器であって、プラスチック材が請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなる構成としてある。
また、本発明のICタグ対応容器は、請求項11に記載するように、内部に内容物を収納可能な容器本体を備える容器であって、容器本体の全部又は一部が、請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなる構成とすることもできる。
【0031】
このように、本発明のICタグ対応容器は、本発明に係るプラスチック材を使用して、ICタグ付きプラスチック材で包装されたPET容器や、アルミニウム缶やスチール缶等の金属缶・ラベル缶、パウチ容器等の任意の金属容器、樹脂容器を形成することができる。また、ICタグ付きプラスチック材によって、PET容器のようなプラスチック容器自体を形成することができる。
容器の包装体となるプラスチック材は、容器全体を本発明に係るプラスチック材で包装することもでき、また、容器中のICタグを実装する部位のみをプラスチック材で包装するラベルとして使用することもでき、さらに、プラスチック容器自体を構成することもできる。
このようにして、本発明によれば、任意の形状、大きさ、用途等の樹脂容器や金属容器について、どのようなICタグを取り付けても、容器の内容物の有無にかかわらず、そのICタグの通信利得を良好に確保することができるIC対応容器として提供することができる。
【0032】
さらに、本発明のICタグ対応容器は、請求項12に記載するように、容器本体と包装体の間に、ICタグを被包装体から離間させる第二の距離層を備える構成としてある。
このように、本発明のICタグ対応容器は、容器本体と包装体との間に、ICタグを容器から更に離間させる第二の距離層を備えることができる。
これにより、包装体の距離層とともに、第二の距離層によってICタグを容器側から十分に離間させることができ、樹脂容器の内容物の有無により誘電率の変化による通信特性の変化を効果的に防止できるとともに、金属容器の影響による通信利得の熱損失と共振周波数のズレも防止することができる。
【0033】
ここで、第二の距離層は、容器表面の凹凸形状や容器自体の形状を利用することで構成することができる。
例えば、容器が樹脂製のPET容器の場合には、容器胴部のビードにより形成される凹部の位置にICタグを配設することで、エンボス缶の場合と同様に、400μm〜800μm程度の深さ(厚さ)の第二の距離層を構成できる。
また、特に角型のPET容器の場合、包装体を容器胴部外周に展張状態で巻装することで、包装体と容器胴部の間に隙間を形成し、この隙間によって第二の距離層を構成することができる。
【0034】
さらに、容器が金属製の缶容器の場合には、缶胴に凹凸加工が施されるエンボス缶の凹部の位置にICタグを配設することにより、凹部によって例えば400μm〜800μm程度の深さ(厚さ)の第二の距離層を構成することができる。
このようにして、本発明では、容器表面の凹凸形状や容器自体の形状を利用して、ICタグの通信特性を良好に維持する第二の距離層を設けることができ、低コストで汎用性・信頼性の高いICタグ対応容器を実現することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のICタグ対応プラスチック材によれば、既存のどのようなICタグであっても、タグ側には特殊な構成等を必要とすることなく、容器の内容物の有無に影響を受けず、かつ、どのような材質の容器に装着しても使用することができ、タグ本来の適正な通信範囲での正確な無線通信が可能となる。
これにより、小型・薄型で軽量であるという汎用のICタグの利点を何等損なうことなく、各種の樹脂容器や金属容器について使用してもICタグ本来の良好な通信特性を得ることができる、特に、PETボトル等の樹脂容器や、アルミニウム缶やスチール缶、ラベル缶、パウチ容器等の金属容器に好適なICタグ対応プラスチック材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係るICタグ対応プラスチック材と、このプラスチック材を備えたICタグとICタグ対応容器の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
[プラスチック材]
図1は、本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材を模式的に示す要部斜視図であり、(a)はICタグを実装する前の状態を、(b)はICタグを実装した状態を示している。
図1に示すように、本実施形態のプラスチック材10は、被包装体となる樹脂容器や金属容器等の容器30を包装する包装体であり、表面の任意の箇所にリーダ・ライタ(図示せず)との間で無線通信を行うICタグ20が取り付けられるようになっている。
【0037】
具体的には、プラスチック材10、基材となる樹脂層11と、この樹脂層11の一面に積層される距離層12と、樹脂層11の他の一面に塗布形成される電磁波遮蔽層13とを備えており、距離層12の任意の箇所にICタグ20が実装されて、カバーフィルム層14でカバーされるようになっている。
プラスチック材10は、例えばPETボトルやラベル缶の包装体のように、被包装体となる容器の全体を包むように包装することもでき、また、容器の胴部に巻装等して容器の一部を包装するようにしてもよい(図3〜図6参照)。
【0038】
なお、プラスチック材10としては、容器の外周に巻装等される薄膜フィルム状の包装体として使用される他、PET樹脂容器等のプラスチック容器自体を構成する包装体としても適用することが可能である。
すなわち、本発明のプラスチック材10は、樹脂容器のシュリンクフィルムやラベル缶のラベルのように、容器全体をフィルム状に形成したプラスチック材10で包装することもでき、また、容器中のICタグを実装する部位のみをプラスチック材で包装するラベルとして使用することもできるが、さらに、プラスチック容器自体を所定の厚みと強度を有する本発明のプラスチック材10によって構成することもできる。
【0039】
[樹脂層]
樹脂層11は、プラスチック材10の基材となる層であり、PET樹脂等で薄膜フィルム状に形成されている。
具体的には、樹脂層11は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の熱可塑性プラスチックにより形成される。
例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂を薄膜形成することで樹脂層11を形成することができる。熱可塑性ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを主成分とする共重合体またはブレンド等で、融点が約200〜260℃のものを使用でき、また、ポリエステル系樹脂被膜の厚みは、通常約5〜40μm程度である。
プラスチック材10としての厚みや強度、耐久性等を考慮すると、樹脂層11の厚みは5μmから100μm程度が好ましい。
【0040】
ここで、熱可塑性ポリエステル系樹脂の薄膜は、押出しラミネート法や無延伸キャストフィルム・ラミネート法等により形成され、熱接着後急冷された非晶質で無延伸のものが好ましい。無延伸で非晶質の熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜は、展伸性と密着性に優れており、基材となる金属層11を薄肉化することによる延びや収縮変形に対しても、剥離や亀裂等の損傷を生ずることなく追従することができる。
この樹脂層11は、単層(1層)であってもよく、また、2層、3層等の多層であってもよい。多層の場合、延伸フィルムを熱接着や接着剤層を介して接着することで形成できる。
【0041】
このように、基材となる樹脂層11を備えることで、プラスチック材10は、ロール状に巻き取り可能な薄膜フィルム状に薄く長く形成することができ、任意の形状や大きさの容器を包装するプラスチック材10として好適である。
なお、この樹脂層11は、適宜省略することができる。後述するように、本実施形態のプラスチック材10は、ICタグ20を容器30から離間させる距離層12を備えており、この距離層12を基材として、距離層12に直接電磁波遮蔽層13を積層形成できれば、樹脂層11を省略することが可能である。
この意味で、樹脂層11は、距離層12の一部を構成する層と捉えることができ、不織布等からなる距離層12とともに、樹脂層11の厚みによってICタグ20を容器30から十分に離間させて、良好な通信特性を得ることができる。すなわち、距離層12とともに樹脂層11が備えられることで、ICタグ20は「距離層+樹脂層」の厚みによって容器30から十分に離間されることになる。
【0042】
[距離層]
距離層12は、樹脂層11に積層される、ICタグ20を容器30から離間させるための層であり、本実施形態では、ICタグ20がこの距離層12の表面に実装されるようになっている。
距離層12は、不織布や発泡樹脂等によって形成することができる。
ICタグ20に対する樹脂容器の内容物による影響や金属容器の影響を低減するには、理想的にはタグの実装部分の実効比誘電率を1.0(空気)とすることが望ましいが、これではICタグを空気中に浮揚させることを意味し、プラスチック材10単体でそのような構成を取ることは困難である。
そこで、本実施形態では、不織布や発泡樹脂からなる距離層12を形成することで、ICタグを空気中に浮揚させた場合に近い実効比誘電率が得られるようにしてある。
【0043】
不織布は、例えばPET樹脂からなる不織布であれば内部に多数の空洞ができるので、実効比誘電率をPET樹脂そのものよりも更に小さくでき、理想値である1.0により近い値に設定することが可能となる。同様に、発泡樹脂の場合にも、内部に空気や窒素、二酸化炭素等の気体が充填され、実行比誘電率を1.0に近い値にすることができる。
また、不織布や発泡樹脂の特長は設計の自由度にあり、所望の厚みと大きさの距離層を容易かつ低コストで形成することが可能となる。
【0044】
本実施形態では、ICタグ20を容器30から離間させる距離層12として不織布あるいは発泡樹脂を採用し、これによって、ICタグが金属に接触・近接することで生じる共振周波数のズレや金属による熱損失、内容物の影響による通信特性の劣化等を防止するようにしてある。
不織布は、例えば、合成繊維製、天然繊維製等の任意の材質のものを選択可能であり、厚みや大きさ、形状等は、実装するICタグ20に対応して任意に設定することができる。
また、距離層12に好適な発泡樹脂としては、種々の方法に形成することができるが、例えば、発泡剤を用いる方法、ポリマーを混合(混練)する際に空気や窒素ガスを注入する方法、化学反応を利用する方法等がある。
【0045】
この距離層12を構成する不織布や発泡樹脂は、基材となる樹脂層11の表面に接着剤や熱融着等で接着・積層される。
距離層12の厚みは、プラスチック材10としての厚み等を考慮すると、15μm程度とするのが好ましい。
なお、不織布や発泡樹脂以外にも、同様の観点から、例えば樹脂塗料を格子状に塗布することで内部に空洞を有する距離層を形成することができ、これを距離層12として採用することもできる。
また、不織布等からなる距離層12は、上述したように、樹脂層11が距離層12として機能してICタグの通信利得が十分確保される場合には、樹脂層11を距離層12として、不織布等からなる距離層12を省略することも可能である。
【0046】
[電磁波遮蔽層]
電磁波遮蔽層13は、樹脂層11の距離層12とは反対側の表面に積層される、ICタグ20の磁界(電磁波)を容器30側から遮蔽させる層である。
この電磁波遮蔽層13は、酸化金属材料からなり、具体的には、Mn−Zn、Ni−Zn又はMg−Zn系の軟式フェライトで構成することができる。
また、Al、C、Cu、Ag、Nb、Co、Cr、Pd、Ni、Mn、W又はSiのフレーク又は粒子を含む磁性材料により構成することができる。
このように、本実施形態では、ICタグ20の磁界を容器30側に通過させないように遮蔽する電磁波遮蔽層13として、任意の酸化金属材料を選択して使用することができ、使用するICタグ20の出力や周波数特性に対応した好適な透磁率等を備えた電磁波遮蔽層13を形成できるようになっている。
【0047】
そして、以上のような成分からなる電磁波遮蔽層13として、本実施形態では、酸化金属材料を液体化し、樹脂層11の表面に塗布可能な導電性塗料などの電磁波シールド塗料によって構成してある。すなわち、電磁波遮蔽層13は、塗料が塗布されることにより樹脂層11の表面に積層されるようになっている。これにより、電磁波遮蔽層13の製造工程はきわめて容易かつ迅速に行えるようになっている。
また、このように電磁波シールド塗料を塗布するだけで電磁波遮蔽層13を形成できるので、ICタグ20を取り付ける実装部分のみに塗料を塗布することで、使用するICタグ20の大きさや装着部位等に合わせて、プラスチック材10の任意の部位に任意の大きさ・形状の電磁波遮蔽層13を容易かつ迅速に塗布形成することができる。
なお、ICタグ20がプラスチック材10の任意の部位に無作為に取り付けられるような場合には、樹脂層11の表面全体に電磁波シールド塗料を塗布して電磁波遮蔽層13を形成する。
【0048】
[電磁波シールド塗料の製造]
電磁波シールド塗料の製造方法としては、Fe−Siなどの磁性体粉末を、ニス、プライマー、エポキシなどの樹脂の溶媒に混入して製造することができる。磁性体の粉末は扁平状が好ましいが、球状のものでもかまわない。また、磁性体は扁平状と球状を混合してもかまわない。
使用する磁性体の扁平形状の長径は、例えば15μmから40μmの範囲のものが好ましく、磁性体が球状の場合は、粒径が15μmから30μmの範囲のものが好ましい。
溶媒には、油性又は水性の塗料を使用することができ、熱乾燥タイプやUV硬化タイプなど、特に限定はされない。
また、磁性体と溶媒の混合比としては、電磁波シールド効果や金属に塗布可能な粘度を考慮すると、溶媒が40%から75%の範囲が好適である。
【0049】
[電磁波シールド塗料の塗布方法]
電磁波シールド塗料を樹脂層11へ塗布するには、バーコータ、ロールコート、刷毛などを用いることができる。また、塗料を直接樹脂層11へ塗布してもよいが、密着性を考慮すると、樹脂層11の上にプライマーなどの接着剤を塗布した後に、その上に電磁波シールド塗料を塗布するのが好ましい。
また、樹脂層11上に電磁波シールド塗料とニス、プライマー又は樹脂などを交互に塗布し、積層させても良い。この場合、最上層は電磁波シールド塗料でないことが好ましい。
塗料の塗布厚は、磁性体粉末の溶媒への混入濃度及び粉末の大きさにもよるが、プラスチック材10としての厚みを考慮に入れた場合、50μmから300μm程度が好ましい。また、塗布厚は厚いほど電磁波のシールド効果を高めることができる。
【0050】
[ICタグ]
ICタグ20は、ICチップとアンテナを有し、これらICチップとアンテナが樹脂やガラス等からなる基材に搭載されて一体的に封止されて一つのICタグを構成している。
そして、本実施形態では、プラスチック材10がICタグ20の基材として使用され、図1に示すように、ICタグ20がプラスチック材10の距離層12の表面に実装されるようになっている。
なお、上述したように、不織布等からなる距離層12は省略も可能であり、その場合には、ICタグ20は、距離層として機能する樹脂層11の表面に実装されることになる。
【0051】
このICタグ20は、プラスチック材10により包装される容器の製造工程において、予めプラスチック材10に実装することもでき、また、製造・出荷されたプラスチック材10やプラスチック材10で包装された容器30に対して、後から取り付けることもできる。
図1に示す例では、ICタグ20がプラスチック材10の製造工程において予め実装される場合であり、距離層12の表面に実装されたICタグ20は、さらにカバーフィルム層14で覆われるようになっている。
【0052】
ここで、ICタグ20に備えられるICチップは、メモリ等の半導体チップからなり、例えば数百バイトのデータが記録可能となっている。
そして、アンテナを介してリーダ・ライタとの間で無線通信によって読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップに記録されたデータが認識されるようになっている。
ICチップに記録されるデータとしては、例えば、商品の名称や重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意の情報や各種データが記録可能であり、また、書換も可能である。データの記録や書換は専用のリーダ・ライタにより行える。
【0053】
また、ICタグ20で使用される周波数帯としては、例えば、135kHz以下の帯域、13.56MHz帯、いわゆるUHF帯に属する860M〜960MHz帯、2.45GHz帯等の数種類の周波数帯がある。
そして、使用される周波数帯によって無線通信が可能な通信距離が異なるとともに、周波数帯によって最適なアンテナ長が異なってくる。
【0054】
図2は、図1に示すプラスチック材10を介して容器30にICタグ20を実装した場合の通信特性の状態を模式的に示す説明図であり、(a)は容器30に実装されたICタグを、(b)は(a)に示すICタグが発する磁束の状態を示している。
同図に示すように、ICタグ20が無線通信を行うとアンテナコイル部に磁波・電磁波が発生する。従来は、この磁波・電磁波が容器の内容物の影響を受け、アンテナコイル部のインダクタンス等が変化してしまい、アンテナの共振周波数がずれたり、内容物の有無によって通信距離が変動したりしていた。
また、ICタグ20の磁波・電磁波が金属容器に吸収される熱損失等が生じ(図12参照)、タグの通信特性が損なわれていた。
【0055】
本実施形態のプラスチック材10は、PET樹脂等からなる樹脂層11と、不織布等かなる距離層12(又は距離層12a)を備えることで、ICタグ20を金属層11から十分に離間させることができるので、容器30の内容物の影響によるタグ側のインダクタンス等の変化も防止でき、これによって、ICタグ20のアンテナの共振周波数のズレや内容物の有無による通信距離の変動等も防止することができる。
また、電磁波シールド塗料等からなる電磁波遮蔽層13によって、金属製の容器30に渦電流等が発生することを防止できる。
【0056】
[包装体の製造方法]
次に、以上のような本実施形態のプラスチック材10の製造方法について説明する。
プラスチック材10は、まず、基材となる樹脂層11をPET樹脂等のプラスチック樹脂で薄膜形成し、この樹脂層11の表面に上述した酸化金属材料からなる電磁波シールド塗料を塗布して電磁波遮蔽層13を形成する。
このとき、樹脂層11に塗布する電磁波シールド塗料は、樹脂層11の表面全体に塗布することができ、また、ICタグ20を実装する部分のみに塗布することもできる。
【0057】
その後、樹脂層11の電磁波シールド塗料を塗布した面と反対側の表面に、不織布からなる距離層12を積層する。不織布は接着剤や熱融着等の手段によって電磁波遮蔽層13の表面に剥離しないように固着する。
また、距離層12は、樹脂層11の表面に樹脂塗料を塗布することによっても形成できる。すなわち、樹脂層11の表面の任意の部位に、樹脂塗料を格子状に塗布することで、内部に空洞を有する距離層12を形成することができる。
以上によって、本実施形態のプラスチック材10が完成する。
【0058】
なお、以上の工程順は一例であり、これ以外の工程でプラスチック材10を製造することもできる。例えば、距離層12を電磁波遮蔽層13より先に樹脂層11に積層することもできる。
また、樹脂層11と距離層12、電磁波遮蔽層13の積層順は任意に変更することができる。図2に示す例では、容器側から電磁波遮蔽層13→樹脂層11→距離層12の順に積層したが、これを距離層12→樹脂層11→電磁波遮蔽層13としたり、樹脂層11→電磁波遮蔽層13→距離層12とするように、他の積層順としてもよい。
【0059】
[容器]
次に、以上のような本実施形態のプラスチック材10によって包装される容器の一例を図3〜図6に示す。
図3は、本実施形態に係るプラスチック材10で包装されるPETボトル容器30Aの一例を示す斜視図である。同図に示すように、プラスチック材10は、PETボトル容器30Aの胴部に巻装して容器を包装することができる。ICタグ20を含むプラスチック材10は、適切な大きさに裁断され、PETボトル容器30Aの胴部に巻装され、プラスチック材10の両端部を熱溶着や接着剤等で固定・着接する。
【0060】
なお、図3に示す例では、プラスチック材10は、PETボトル容器30Aの胴部の一部のみを包むようになっているが、容器胴部の全体をプラスチック材10で包むことも勿論可能である。
また、PETボトル容器30A自体をプラスチック材10によって形成することも可能である。
【0061】
図4は、図3と同様にプラスチック材10をPETボトル容器30B,Cの胴部に巻装した一例を示す図であり、同図に示すように、PETボトル容器30は角型ボトル30B(図4(a))であっても、丸型ボトル30C(図4(b))であってもよい。
そして、図4に示すように、プラスチック材10は、PET容器の胴部のビードにより形成される凹部にICタグ20が位置するように容器30を包装することがこのましい。このようにすると、図4(c)に示すように、容器30の本体とプラスチック材10の間には空間が存在することになり、これが第二の距離層31を構成し、ICタグ20を容器30から更に離間させるようになる。
【0062】
これにより、プラスチック材10に備えられる距離層12とともに、第二の距離層31によってICタグ20を容器側から十分に離間させることができ、PET容器30の内容物の有無により誘電率の変化による通信特性の変化を防止することができる(図10参照)。
なお、第二の距離層としては、PET容器の凹部を利用して構成できる他、例えば、角型ボトルの胴部外周にプラスチック材10を展張状態で巻装することで、容器30の表面とプラスチック材10の間に間隙を形成して第二の距離層とすることもできる。
【0063】
図5は、プラスチック材10をアルミニウム缶やスチール缶等の缶容器30Dの胴部に巻装した一例を示す図である。
図5に示す例では、プラスチック材10は、缶容器30Dの胴部の一部のみを包むようになっているが、例えばラベル缶の包装体のように缶容器30Dの全体をプラスチック材10で包むこともできる。
なお、アルミニウム缶やスチール缶等の缶容器では、基材となる金属材にPET樹脂等のプラスチック樹脂を被覆した樹脂被覆缶容器が使用されることがあり、本実施形態のプラスチック材10は、このような樹脂被覆缶容器の包装にも使用できることは勿論である。樹脂被覆缶容器は、容器の外面や内面にPET樹脂等が被覆されており、この被覆樹脂層がプラスチック材10の樹脂層11や距離層12と同様に、ICタグ20を容器側から離間させる機能を果たすことから、プラスチック材10で包装することによりICタグ20の通信特性を確保する缶容器として好ましい(図8参照)。
【0064】
また、缶容器の場合にも、図4で示したPETボトル容器の場合と同様に、第二の距離層を備えることができる。
缶容器には、缶表面に任意の凹凸加工が施されるエンボス缶があり、図5に示すように、プラスチック材10を、エンボス缶の凹凸部にICタグ20が位置するように缶容器30Dを包装することで、図5(b)に示すように、缶容器30Dの本体とプラスチック材10の間に第二の距離層32を介在させることができ、ICタグ20を缶容器30Dから更に離間させることができる。
これによって、ICタグ20の通信特性を更に良好に維持することができるようになる(図11参照)。
【0065】
図6は、本実施形態のプラスチック材10によりパウチ容器30Eを包装した場合の一例である。
図6に示す例では、プラスチック材10は、パウチ容器30Eの胴部の一部に巻装されるようになっているが、例えばパウチ容器自体をプラスチック材10で形成することで、パウチ容器30Eの全体がプラスチック材10で包装されるようにしてもよい。
以上のように、本実施形態に係るプラスチック材10を用いて包装される容器は任意の金属容器や樹脂容器とすることができ、プラスチック材10は、少なくともICタグ20が実装される部位について備えられていればよく、容器の全体をプラスチック材10で包装してもよいが、容器の一部(ICタグの実装部)のみを本実施形態に係るプラスチック材10で形成し、その他の部位は、例えば、電磁波シールド塗料や不織布等を省略することもできる。
【0066】
[通信特性]
次に、本実施形態に係るプラスチック材10を介して容器30に実装されるICタグの通信特性について図7〜図11を参照して説明する。
図7は、共振周波数13.56MHzのICタグ20を、距離層12及び電磁波遮蔽層13を備える本実施形態のプラスチック材10を介して金属製の容器30に実装した場合のICタグの共振周波数と無線信号の強度の関係を示すグラフである。なお、同図は、周囲環境などの影響を考慮せずに設計されている既存の汎用タグを使用した結果を示している。
まず、実線は、空気層12の厚みを約0.5mmに設定したプラスチック材10を介してICタグを缶容器に取り付けた場合であり、ICタグは共振周波数13.56MHz帯域で30dB以上の出力で駆動している。
二点鎖線は、既存の汎用タグを、プラスチック材10を介さず、そのまま既存のアルミニウム缶に取り付けた場合であり、出力が15dB程度まで大きく低下してしまい、タグの共振周波数もずれてしまう。
【0067】
一点鎖線は、既存の汎用タグを、距離層12の厚みを0.1mmに設定したプラスチック材10を介して金属缶に取り付けた場合であり、出力は25dB程度確保されているものの、タグの共振周波数が13.4MHz帯域にずれてしまう。
破線は、内部にフェライトシート等の磁性体(高透磁率体)を備えた既存の汎用電磁波シールド材を介してタグを金属缶に取り付けた場合であり、出力は25dB程度確保されているものの、タグの共振周波数が13.3MHz帯域に大きくずれてしまっている。
以上より、距離層12及び電磁波遮蔽層13を備える本実施形態のプラスチック材10を使用して、距離層12の厚みを最適な値に設定することで、既存の汎用タグであっても、本来の通信特性を良好に確保して金属容器等に使用できることがわかる。
【0068】
図8は、共振周波数13.56MHzのICタグ20を本実施形態のプラスチック材10を介して金属製の容器30に実装した場合の、電磁波遮蔽層13の厚みとICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
同図に示すように、プラスチック材10を介して金属容器に実装されるICタグ20は、プラスチック材10の電磁波遮蔽層13の厚みに比例して通信距離が長くなっていることがわかる。
また、通常のアルミ缶やスチール缶と比較して、樹脂被覆缶の方が通信距離が長くなっていることがわかる。
【0069】
図9は、共振周波数13.56MHzのICタグ20を本実施形態のプラスチック材10を介してPET樹脂製の容器30に実装した場合の、容器内容物の有無とICタグの通信距離の変化の関係を示すグラフである。
同図に示すように、不織布(距離層12)を備えるプラスチック材10を介してPET樹脂容器に実装されるICタグ20は、容器内に内容物(水)がある場合とない場合とで、通信距離にほとんど変動が見られない。これは、プラスチック材10の電磁波遮蔽層13の膜厚が厚くなっても通信距離はほとんど影響を受けず、良好な通信特性が得られている。
【0070】
これに対して、不織布(距離層12)を備えたプラスチック材10を介さずにPET樹脂容器に直に取り付けた場合には、特に内容物がある場合に通信距離が短くなり、内容物の有無による通信距離の格差が大きくなっている。また、距離層12を備えないプラスチック材10の電磁波遮蔽層13の膜厚が厚くなると、それに比例して通信特性も劣化している。
以上の図8及び図9のグラフから、プラスチック材10は、ICタグ20を容器側から離間させる距離層12を備え、かつ、ICタグ20の電磁波をシールドする適切な膜圧の電磁波遮蔽層13を備えることで、金属容器でも樹脂容器でもICタグ20の通信特性を良好に維持し得ることがわかる。
【0071】
図10は、図9で示した共振周波数13.56MHzのICタグ20をプラスチック材10を介してPET樹脂製の容器30に実装する場合に、さらに、PET樹脂製の容器30のビード部の凹部を利用して第二の距離層31(図4参照)を介在させた場合のICタグの通信距離の変動を示すグラフである。
同図に示すように、PETボトルのビード部の凹部を利用して第二の距離層31を構成することにより、ICタグ20の通信特性が更に向上して通信距離が長くなっていることがわかる。
【0072】
そして、距離層12を備えるプラスチック材10を介して取り付けられたICタグ20は、PETボトルの内容物の有無にかかわらず、通信距離がほとんど変動せず、電磁波遮蔽層13の膜厚にもほとんど影響を受けていない。
これに対して、不織布(距離層12)を備えたプラスチック材10を介さずにPET樹脂容器に直に取り付けた場合には、特に内容物がある場合に通信距離が短くなり、内容物の有無による通信距離の格差が大きくなっている。また、距離層12を備えないプラスチック材10の電磁波遮蔽層13の膜厚が厚くなると、それに比例して通信特性も劣化している。
【0073】
図11は、図8で示した共振周波数13.56MHzのICタグ20をプラスチック材10を介して金属製の容器30に実装する場合に、さらに、金属製の容器30としてエンボス缶を採用し、第二の距離層32(図5参照)を備えた場合の、電磁波遮蔽層13の厚みとICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
同図に示すように、エンボス缶の凹凸部分を利用して第二の距離層32を構成することにより、ICタグ20の通信特性が更に向上して通信距離が長くなっている。そして、これはエンボスの凹部の深さが大きい程、すなわち、第二の距離層32の距離が大きい程、通信特性が向上している。
以上の図10及び図11のグラフから、樹脂容器、金属容器とも、プラスチック材10と容器の間に更に第二の距離層を備えることで、ICタグ20の通信特性をより向上させることが可能となることがわかる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係るICタグ対応プラスチック材によれば、被包装体となる樹脂容器や金属容器等の容器30を包装するプラスチック材10として、ICタグ20を容器30から離間させる距離層12と、ICタグ20の電磁波を容器30側から遮蔽する電磁波遮蔽層13とを積層形成することで、樹脂容器の内容物の影響による通信特性の劣化と、それに伴う内容物の有無による通信距離の変動等を防止するとともに、金属容器の影響による通信利得の熱損失と共振周波数のズレを防止することができる。
これにより、既存のどのようなICタグであっても、本実施形態のプラスチック材10を介して金属容器や樹脂容器に取り付けられることにより、タグ本来の適正な通信範囲での正確な無線通信が行えるようになる。
【0075】
すなわち、ICタグ20を容器30から離間させる距離層12を備えることで、ICタグ20を容器30から所定距離だけ離間させることができるので、樹脂容器の内容物の誘電率の影響を十分に抑制することができ、樹脂製の容器30の内容物の有無によるICタグ20の通信特性の変動を効果的に防止することができる。
また、電磁波シールド塗料等からなる電磁波遮蔽層13を備えることで、タグを金属容器に取り付けた場合には、ICタグ20の電磁波により金属容器側に生じる渦電流の発生を電磁波遮蔽層13によって抑制することができるとともに、ICタグ20を容器から離間させる不織布等からなる距離層12を備えることで、ICタグ20を金属製の容器30から十分に離間させて金属の影響によるICタグ20のインダクタンスの変化を防止でき、ICタグ20のアンテナの共振周波数のズレを効果的に防止することができる。
【0076】
これにより、本実施形態に係るプラスチック材10を介してどのようなICタグ20をどのような容器に取り付けても、また、容器30内に内容物があってもなくても、ICタグ20の通信利得を常に良好な状態に確保することができ、正確な無線通信が可能となり、既存の汎用タグであってもそのまま使用するこができ、汎用性、信頼性に優れたICタグ20を実現することができる。
【0077】
[実施例]
以下、本発明に係るICタグ対応プラスチック材の一実施例を説明する。
[実施例1]
東洋アルミニウム(株)製 ケイ素鋼ペーストRFS54CM(90.5Fe−5.5Si−4Cr、形状:フレーク、フレーク長径:20μm〜30μm)を油性塗料に約70%混入し、電磁波遮蔽塗料を作成した。この塗料を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム表面に塗布した。また、その裏側には、厚さ100μmのPET製不織布を熱圧着により積層させた。塗料厚みについては50μm〜300μmの間で厚みを変えた。
また、ICタグ(テキサス・インスツルメンツ社製、動作周波数:13.56MHz)をPET製不織布(厚さ:約100μm)上に接着させた。
このICタグラベルを、塗料面を厚さ300μm〜400μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂容器に触れるように貼り合わせて、ICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き包容器に水を入れた状態でリーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、図9に示す通り、電磁波遮蔽塗料及び不織布のないICタグ付き包装容器の場合より通信距離が長くなった。
【0078】
[実施例2]
実施例1に用いた電磁波遮蔽塗料を塗料厚み75、150、250μmとして厚さ50μmのPET樹脂フィルム表面に塗布し、その裏側には、厚さ100μmのPET製不織布を熱圧着により積層させた。また、ICタグ(テキサス・インスツルメンツ社製、動作周波数:13.56MHz)をPET製不織布上に接着させた。
このICタグラベルを、塗料面を厚さ300μm〜400μmのPET樹脂容器の深さ1mmの凹部部分(第二の距離層)にICチップ及びアンテナ部がくるように貼り合わせて、ICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き包装容器に水を入れた状態で、リーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、図10に示す通り、電磁波遮蔽塗料及び不織布のないICタグ付き包装容器の場合より通信距離が長くなった。
【0079】
[実施例3]
実施例1と同様のICタグラベルを、表側に厚さ20μmのPET樹脂、裏側に厚さ30μmのPET樹脂でティンフリースチール(TFS)に被覆した樹脂被覆金属板(厚さ0.3mm)でできた内容量が350mlの深絞り成形容器に対して、塗布面が触れるように貼り合わせてICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き包装容器を用いてリーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、図8に示すとおり、通信が可能であった。
【0080】
[比較例1]
実施例1に用いた電磁波遮蔽塗料を厚さ50μmのPET樹脂フィルム表面に50μm〜300μmの間で厚みを変えて塗布し、その反対側に実施例1と同様のICタグをそれぞれ接着してICタグラベルを作成した。
このICタグラベルを、塗料面を厚さ300μm〜400μmのPET樹脂容器に触れるように貼り合わせて、ICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き容器に水を入れた状態で、リーダ・ライタ間との通信試験を行ったところ、図9に示す通り、どの塗料厚みにおいても電磁波遮蔽塗料及び不織布のあるICタグ付き包装容器の場合と比較して通信距離が短かった。
【0081】
[比較例2]
電磁波遮蔽塗料の厚みを実施例2と同じにして不織布のないICタグラベルを作成し、厚さ300μm〜400μmのPET樹脂容器の深さ1mmの凹部部分(第二の距離層)にICチップ及びアンテナ部がくるように塗料面側と樹脂容器を貼り合わせて、ICタグ付き包装容器を作成した。
このICタグ付き包装容器に水を入れた状態で、リーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、図10に示す通り、どの塗料厚みにおいても電磁波遮蔽塗料及び不織布のあるICタグ付き包装容器の場合と比較して通信距離が短かった。
【0082】
[比較例3]
実施例1で用いたICタグを、PETフィルム(フィルム厚:45μm)で挟んでICタグラベルを作成し、これを樹脂を被覆していない厚さ0.295mmのTFSでできた内容量が350mlの深絞り成形容器に貼り付けてICタグ付き容器を作成した。
このICタグ付き容器を用いてリーダ・ライタ間との通信試験を行った結果、通信距離は大きく減少した(図8参照)。
【0083】
以上、本発明のICタグ対応プラスチック材とこのプラスチック材を備えたICタグ及びICタグ対応容器について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るICタグ対応プラスチック材とICタグ及びICタグ対応容器は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本発明のプラスチック材により包装・形成される容器として、飲料や食品の容器として用いられるPETボトルや缶容器、パウチ容器を例にとって説明したが、本発明のプラスチック材を適用できる容器としては、容器の用途や収納する内容物、容器の構成成分等は特に限定されるものではない。すなわち、樹脂製や金属製の容器であれば、どのような大きさ、形状、材質等の容器であってもよく、また、容器に収納される内容物がどのようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明した本発明のICタグ対応プラスチック材は、例えば、PETボトル容器、アルミニウム缶やスチール缶等の金属缶(ラベル缶)、パウチ容器等の任意の樹脂容器、金属容器の包装体として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材とICタグを模式的に示す要部斜視図であり、(a)はICタグを実装する前の状態を、(b)はICタグを実装した状態を示している。
【図2】図1に示すプラスチック材を介してICタグを容器に実装した場合の通信特性の状態を模式的に示す説明図であり、(a)はプラスチック材を介して容器に実装されたICタグの状態を、(b)は(a)に示すICタグが発する磁束の状態を示している。
【図3】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をPETボトル容器に取り付ける状態を模式的に示す要部斜視図であり、(a)はプラスチック材を容器に取り付ける前の状態を、(b)はプラスチック材を容器に取り付けた状態を示している。
【図4】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をPETボトル容器に取り付たけた状態を示す図であり、(a)はプラスチック材を角型PETボトル容器に取り付けた状態の正面図、(b)はプラスチック材を丸型PETボトル容器に取り付けた状態の正面図、(c)は(a)に示すA−A線断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をエンボス缶容器に取り付たけた状態を示す図であり、(a)はプラスチック材を缶容器に取り付けた状態の斜視図、(b)は(a)に示すB−B線拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をパウチ容器に取り付たけた状態を示す正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材に実装されたICタグの共振周波数と無線信号の強度の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材を金属容器に取り付けた場合における、電磁波遮蔽層の厚みとICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材を樹脂容器に取り付けた場合における、容器内容物の有無とICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材を角型のPETボトル容器に取り付けた場合における、容器内容物の有無とICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施形態に係るICタグ対応プラスチック材をエンボス缶容器に取り付けた場合における、電磁波遮蔽層の厚みとICタグの通信距離の関係を示すグラフである。
【図12】従来の一般的な金属容器にICタグを実装した場合の通信特性の状態を模式的に示す説明図であり、(a)は金属容器に実装されたICタグの状態を、(b)は(a)に示すICタグが発する磁束の状態を示している。
【図13】従来の金属専用ICタグを金属容器に実装した場合の通信特性の状態を模式的に示す説明図であり、(a)は金属容器に実装された金属専用ICタグの状態を、(b)は(a)に示す金属専用ICタグが発する磁束の状態を示している。
【符号の説明】
【0086】
10 プラスチック材
11 樹脂層
12 距離層
13 電磁波遮蔽層
14 カバーフィルム層
20 ICタグ
30 容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグが取り付けられる包装体を構成する基材となるプラスチック材であって、
ICタグを被包装体から離間させる距離層を備えることを特徴とするICタグ対応プラスチック材。
【請求項2】
ICタグの電磁波を被包装体側から遮蔽する電磁波遮蔽層を更に備える請求項1記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項3】
前記電磁波遮蔽層が、前記距離層の表面に塗布により積層形成される請求項2に記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項4】
前記電磁波遮蔽層が、酸化金属材料からなる請求項1乃至3のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項5】
前記酸化金属材料は、Mn−Zn、Ni−Zn又はMg−Zn系の軟式フェライトからなる請求項4記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項6】
前記酸化金属材料は、Al、C、Cu、Ag、Nb、Co、Cr、Pd、Ni、Mn、W又はSiのフレーク又は粒子を含む磁性材料からなる請求項4記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項7】
前記距離層が、不織布又は発泡樹脂からなる請求項1乃至6のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項8】
前記距離層が、熱可塑性プラスチックの樹脂層からなる請求項1乃至7のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項9】
ICチップと、アンテナと、これらICチップ及びアンテナが実装される基材となるプラスチック材とを備え、プラスチック材が被包装体の包装体を構成することにより当該被包装体に取り付けられてリーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグであって、
前記プラスチック材が、請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなることを特徴とするICタグ。
【請求項10】
内部に内容物を収納可能な容器本体と、
この容器本体の全部又は一部を包装するプラスチック材と、を備えた容器であって、
前記プラスチック材が、請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなることを特徴とするICタグ対応容器。
【請求項11】
内部に内容物を収納可能な容器本体を備える容器であって、
容器本体の全部又は一部が、請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなることを特徴とするICタグ対応容器。
【請求項12】
前記容器本体と包装体の間に、ICタグを被包装体から離間させる第二の距離層を備える請求項10又は11記載のICタグ対応容器。
【請求項1】
リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグが取り付けられる包装体を構成する基材となるプラスチック材であって、
ICタグを被包装体から離間させる距離層を備えることを特徴とするICタグ対応プラスチック材。
【請求項2】
ICタグの電磁波を被包装体側から遮蔽する電磁波遮蔽層を更に備える請求項1記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項3】
前記電磁波遮蔽層が、前記距離層の表面に塗布により積層形成される請求項2に記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項4】
前記電磁波遮蔽層が、酸化金属材料からなる請求項1乃至3のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項5】
前記酸化金属材料は、Mn−Zn、Ni−Zn又はMg−Zn系の軟式フェライトからなる請求項4記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項6】
前記酸化金属材料は、Al、C、Cu、Ag、Nb、Co、Cr、Pd、Ni、Mn、W又はSiのフレーク又は粒子を含む磁性材料からなる請求項4記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項7】
前記距離層が、不織布又は発泡樹脂からなる請求項1乃至6のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項8】
前記距離層が、熱可塑性プラスチックの樹脂層からなる請求項1乃至7のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材。
【請求項9】
ICチップと、アンテナと、これらICチップ及びアンテナが実装される基材となるプラスチック材とを備え、プラスチック材が被包装体の包装体を構成することにより当該被包装体に取り付けられてリーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグであって、
前記プラスチック材が、請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなることを特徴とするICタグ。
【請求項10】
内部に内容物を収納可能な容器本体と、
この容器本体の全部又は一部を包装するプラスチック材と、を備えた容器であって、
前記プラスチック材が、請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなることを特徴とするICタグ対応容器。
【請求項11】
内部に内容物を収納可能な容器本体を備える容器であって、
容器本体の全部又は一部が、請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグ対応プラスチック材からなることを特徴とするICタグ対応容器。
【請求項12】
前記容器本体と包装体の間に、ICタグを被包装体から離間させる第二の距離層を備える請求項10又は11記載のICタグ対応容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−318025(P2006−318025A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137362(P2005−137362)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】
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