説明

IC内蔵基板及びその製造方法

【課題】樹脂基板の強度不足を解消すると共に、モジュール製品としての機能及び特性を高めることが可能なIC内蔵基板を提供することにある。
【解決手段】IC内蔵基板100は、樹脂多層基板11と、樹脂多層基板11内に埋め込まれたICチップ12と、ICチップ12と共に樹脂多層基板11内に埋め込まれた金属フレーム13とを備えている。樹脂多層基板11の内層にはリング状の金属フレーム13が埋め込まれており、リング状の金属フレーム13はICチップ12を周回するように設けられているので、金属フレーム13を放熱板として機能させることができる。さらに、金属フレーム13はICチップ12と同じ層に設けられているので、ICチップ12と同等な厚みを確保することができ、補強材として十分な強度を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC内蔵基板及びその製造方法に関し、特に、樹脂製の多層基板を用いたIC内蔵基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICチップが埋め込まれたモジュール基板であるIC内蔵基板が知られている。従来のIC内蔵基板400は、図21に示すように、樹脂製の多層基板11の内層にICのベアチップが埋め込まれた構造を有している。ICチップ12の各端子は内層の配線パターン14やビアホール導体15に接続されている。また多層基板11の表層には受動素子のチップ部品16が実装されている。
【0003】
IC内蔵基板に埋め込まれるICとしては、CPU、DSP、各種コントローラIC等、種々のICが考えられるが、パワーアンプIC等の発熱性の高いICを埋め込む場合には、その放熱が問題となる。放熱性を高める従来の方法としては、例えば、基板内にヒートパイプを埋め込む方法や基板の表裏面に放熱塗膜を形成する方法が知られている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−138485号公報
【特許文献2】特開2004−216376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のIC内蔵基板において、低背化のために樹脂基板の厚みを薄くした場合には、セラミック等の他の基板材料に比べて強度が弱くなりすぎてしまい、実用に供する基板性能が得られないという問題があった。特に、一枚の基板から多数の電子部品を取得する集合基板では、集合基板の厚みに比べて平面方向の面積が大きく、このため基板強度が不足すると製造上の取り扱いが難しくなる等の問題があった。
【0005】
このため、通常の樹脂基板には、ガラス繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上させたガラスエポキシ基板が用いられているが、ヤング率が15〜30GPaと低い為、高機能で比較的大型のIC埋蔵モジュール基板を低背化させる場合に用いる構造材としては強度上問題となることがある。特に最近ではICの低背化にともないIC内蔵基板の厚さを1mm以下に低背化することが求められており、基板強度の向上が切望されている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、樹脂基板の強度不足を解消することが可能なIC内蔵基板及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、樹脂基板の強度不足を解消すると共に、モジュール製品としての機能及び特性を高めることが可能なIC内蔵基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によるIC内蔵基板は、配線導体パターンが形成された樹脂多層基板と、樹脂多層基板の内層に埋め込まれたICチップと、ICチップを取り囲むように樹脂多層基板内に埋め込まれた金属フレームとを備え、ICチップと金属フレームは樹脂多層基板内の同じ層に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ICチップを埋め込むことによる樹脂基板の強度不足を補うことができ、IC内蔵基板の機械的強度を確保することができる。
【0010】
本発明において、金属フレームは、樹脂多層基板中の配線導体パターンとは異なる材料からなることが好ましい。特に、金属フレームは配線導体パターンよりも高いヤング率を有することが好ましい。通常、ICを内蔵する高周波モジュールでは基板の配線として銅(Cu)や銀(Ag)のような低抵抗材料が用いられる。しかしながら、Cuは110〜130GPa、Agは80〜90GPaのヤング率を有し、金属としては比較的柔らかい材料である為、配線導体パターンよりも高いヤング率を有する鉄、各種ステンレス(SUS631,410,430,303等)、ニッケル等のようにヤング率が200GPa前後の比較的硬い材料を用いることが好ましい。更に、補強材として使用する各種ステンレス(SUS631,410,430,303等)、ニッケル等の金属表面は、金、銀、銅のような低抵抗且つ熱伝導率の高い材料でめっき等により被覆されることが好ましい。
【0011】
本発明において、金属フレームの厚みは、配線導体パターンの厚みよりも大きいことが好ましい。これによれば、金属フレームの強度を十分に高めることができ、補強材としての性能を十分に発揮することができる。
【0012】
本発明において、金属フレームは、ICチップを取り囲むように形成されたメインフレームと、メインフレームからICチップに向けて延設されたリード部とを有し、リード部の先端部がICチップに近接していることが好ましい。この場合、リード部は、ICチップの各辺に対応して設けられていることが好ましい。これによれば、金属フレームをICチップの放熱板として機能させることができ、ICチップが発する熱を拡散させることができる。
【0013】
本発明において、金属フレームは、ICチップの信号出力端子に接続(C結合による入出力も含む)されており、アンテナとして機能することが好ましい。ICチップにて生成される高周波信号を電磁波として放射するアンテナを兼ねることが好ましい。これによれば、IC内蔵基板をモジュールとして組み込んだ最終製品においてアンテナを別途設ける必要がなく、製品の小型化が可能となる。
【0014】
本発明において、金属フレームは、配線パターンのうちのグランドラインに接続されており、シールド材として機能することが好ましい。これによれば、ICチップの周囲がシールド材としての金属フレームで囲まれているので、外来ノイズや放射ノイズを遮断することができる。
【0015】
本発明によるIC内蔵基板の製造方法は、第1の樹脂基板上にICチップ及びICチップを取り囲む金属フレームを実装する工程と、第1の樹脂基板上に第2の樹脂基板を張り合わせて多層基板を形成すると共に、ICチップ及び金属フレームを多層基板内に埋め込む工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、コア基板上にICチップ及び金属フレームを搭載した後、ビルドアップ層となる樹脂層を張り合わせてICチップと金属フレームとを同時に埋め込むので、特に工程を増やすことなく、ICチップと同等の厚みを有する金属フレーム13を埋め込むことができる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、樹脂基板の強度不足を解消することが可能なIC内蔵基板及びその製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、樹脂基板の強度不足を解消すると共に、モジュール部品としての機能及び特性を高めることが可能なIC内蔵基板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態によるIC内蔵基板の構造を示す略側面断面図である。また、図2は図1のA−A線に沿ったIC内蔵基板の略平面断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、IC内蔵基板100は、樹脂多層基板11と、樹脂多層基板11内に埋め込まれたICチップ12と、ICチップ12と共に樹脂多層基板11内に埋め込まれた金属フレーム13とを備えている。
【0021】
樹脂多層基板11は絶縁層に樹脂材料を用いた多層基板である。樹脂多層基板11の表層及び内層には配線導体パターン14が形成されており、また上下の導体層間を接続するビアホール導体15が設けられている。また、樹脂多層基板11の上面11aにはチップ抵抗、チップキャパシタ、チップインダクタ等のチップ部品16が実装されている。また、樹脂多層基板11の底面11bには配線導体パターンの一種であるパッド17a〜17cが形成されている。
【0022】
樹脂多層基板11は主にガラス繊維で補強されたFR4(Flame Retardant 4)基板がコア基板として用いられ、樹脂基板材料としては、一般に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂を使用することが多い。また、ポリアミド樹脂、メチルメタアクリレートなどの熱可塑性樹脂を用いた繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP:Fiber Reinforced Thermo Plastics)もある。これらの樹脂材料を使用して、ICが埋め込まれたSES(Semiconductor Embedded Substrate)基板は構成されている。
【0023】
樹脂多層基板11内に埋め込まれるICチップ12は、例えばパワーアンプICのベアチップであり、発熱量の大きいICである。ICチップ12の各端子はバンプ18を介して対応する配線導体パターン14に接続されている。配線導体パターン14は、狭義の配線のみならず、ランド、グランドパターン、LCパターン等を含む広義の導体パターンである。本実施形態によれば、ICチップ12を樹脂多層基板11内に埋め込むことにより、モジュール全体の小型低背化を図ることができると共に、ICチップ12を機械的且つ化学的に保護することができる。また、ICチップ12や受動素子のチップ部品を含む所定の電子回路をワンパッケージにすることができ、さらなる小型化を図ることができる。
【0024】
金属フレーム13は樹脂多層基板11の機械的強度を補強する役割を果たし、ICチップ12を取り囲むように設けられている。低背化の要求に応えるべく樹脂多層基板11を薄くするとその機械的強度が低下するが、金属フレーム13を埋め込むことにより十分な強度を確保することができる。
【0025】
金属フレーム13は樹脂多層基板11中の配線導体パターン14とは異なる材料からなる。具体的には、配線導体パターン14が銅(Cu)や銀(Ag)等の高導電性材料からなるのに対し、金属フレーム13には鉄、各種ステンレス(SUS631,410,430,303等)、ニッケル等のようにヤング率が200GPa前後の材料が用いられる。このような金属フレーム13は配線導体パターン14よりも高いヤング率を有することから、樹脂多層基板11の機械的強度を補強するのに好適である。
【0026】
金属フレーム13の厚みは、構造体としての補強効果を得るためには、配線導体パターン14の厚みよりも大きいことが好ましい。一方、ICを内蔵して且つ低背化を実現するためにはベアの半導体チップと同等の厚みかそれよりも薄いことが必要である。具体的には、ICチップ12の厚みが60〜120μm程度、配線導体パターン14の厚みが10〜15μm程度であるのに対し、金属フレーム13の厚みは60〜120μm程度であることが好ましい。金属フレーム13がこの程度の厚みを有していれば、補強材としての機能を十分に発揮させることができる。
【0027】
金属フレーム13は、樹脂多層基板11内においてICチップ12と同一平面上(つまり同一層)に設けられている。ICチップ12は比較的厚みのある部材であることから、金属フレーム13をICチップ12と同じ層に設ければ、ICチップ12と同程度の厚みを有する金属フレーム13を容易に埋め込むことができ、補強材としての性能を十分に発揮させることができる。
【0028】
本実施形態による金属フレーム13は、ICチップ12を周回するように形成されたリング状のメインフレーム13aと、メインフレーム13aからICチップ12に向けて延設されたリード部13bとを有している。メインフレーム13aは、ICチップ12を周回すると共に、樹脂多層基板11の外周に沿って設けられている。
【0029】
本実施形態のリード部13bは、ICチップ12の4つの辺に対応して設けられており、リード部13bの先端部はICチップ12の側面に近接している。このような形状を有することから、金属フレーム13は放熱板としても機能する。ICチップ12で発生する熱はリード部13bに伝わり、熱伝導性の高い金属フレーム13を通じて基板全体に拡散し、放熱される。尚、リード部13bは金属フレーム13の構成に必須ではないが、リード部13bを設けた場合には、ICチップ12からの熱を金属フレーム13により伝えやすくすることができる。
【0030】
絶縁層を構成する樹脂の熱抵抗(熱容量)は高いため、金属フレーム13がICチップ12に近接するほど熱伝導はよくなるが、金属フレーム13のリード部13bはICチップ12に直接接することはICチップ12及び金属フレーム13の実装精度やICチップ12の強度等の理由から好ましくない。よって、樹脂を介して近接させることが好ましく、これにより放熱性と実装上の問題の両方を解決することができる。金属フレーム13の材料であるSUSの熱抵抗は種々の金属材料の中で特別に低くはないが、樹脂に比べると十分に低い。よって、補強材としてのSUS材をヒートシンクとして使用ことにより、IC内蔵基板100の機械的強度と放熱性の両方を向上させることができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のIC内蔵基板100によれば、樹脂多層基板11の内層にリング状の金属フレーム13を埋め込んでいるので、樹脂多層基板11の薄型化による強度不足を補うことができ、IC内蔵基板100の機械的強度を確保することができる。また、リング状の金属フレーム13がICチップ12を周回するように設けられているので、金属フレーム13を放熱板として機能させることができる。さらに、金属フレーム13はICチップ12と同じ層に設けられているので、ICチップ12と同等な厚みを確保することができ、補強材として十分な強度を確保することができる。
【0032】
次に、IC内蔵基板100の製造方法について詳細に説明する。IC内蔵基板100の製造では、量産化のため、通常は一枚の大きな基板から複数個の完成品を得るいわゆる多数個取りが実施される。
【0033】
図3乃至図14は、IC内蔵基板100の製造方法を説明するための模式図であって、IC内蔵基板100の略側面断面図である。
【0034】
IC内蔵基板100の製造では、まず図3に示すように、コア基板21となる両面銅張り基板を用意する。両面銅張り基板は、樹脂基板21aとその両面に貼り付けられた銅箔21b,21cからなる。樹脂基板21aの材料としては、一般に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂を使用することが多い。また、熱可塑性樹脂を用いることもでき、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等を用いることができる。また、ガラスクロス、アラミド、芳香族ポリエステル等の不織布に上記樹脂を含浸させた材料や、上記樹脂にフィラーを含有させた材料を用いてもよい。
【0035】
次に、図4に示すように、コア基板21にSUS板22を貼り付けてコア基板21を補強する。コア基板21とSUS板22との接着には熱剥離シートを用いることができる。
【0036】
次に、図5に示すように、コア基板21の一方の主面の銅箔21bをパターニングして所望の配線導体パターン14を形成する。これにより、コア基板21上には配線パターンやランドが形成される。さらにビアホールを形成し、ビアホール内をメッキすることによりビアホール導体15を形成する。特に限定されるものではないが、ビアホールの形成はレーザ加工によって行うことができ、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等を用いることができる。
【0037】
次に、図6に示すように、コア基板21上の所定の位置にICチップ12を実装する。ICチップ12の実装は通常のマウンターを用いて行うことができる。これにより、ICチップ12はバンプ18を介してコア基板21上の配線導体パターン14(ランド)に接続される。
【0038】
次に、図7に示すように、ICチップ12が実装されたコア基板21上に金属フレーム13を実装する。金属フレーム13はICチップ12と同一平面上であってICチップ12を取り囲むように配置される。
【0039】
次に、図8に示すように、第1のビルドアップ層となる片面銅張り基板23を用意する。片面銅張り基板23は、樹脂基板23aと、樹脂基板23aの一方の主面に貼り付けられた銅箔23bからなる。樹脂基板23aとしては、リフロー耐久性を有する材料であれば熱硬化性や熱可塑性を問わず用いることができる。具体的にはエポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂(BTレジン)、フェノール樹脂、ビニルベンジル樹脂、ポリフェニレンエーテル(ポリフェニレンエーテルオキサイド)樹脂(PPE,PPO)、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などを選択することができる。また、ガラスクロス、アラミド、芳香族ポリエステル等の不織布に上記樹脂を含浸させた材料や上記樹脂にフィラーを含有させた材料を用いてもよい。
【0040】
その後、図8に示すように、ICチップ12及び金属フレーム13が実装されたコア基板21の一方の主面に片面銅張り基板23を重ね合わせ、熱プレスすることにより、コア基板21上に第1のビルドアップ層を形成する。これにより、ICチップ12及び金属フレーム13は樹脂基板内に埋め込まれた状態となる。その後、図9に示すように、片面銅張り基板23上の銅箔23bをパターニングして配線導体パターン14を形成した後、ビアホール導体15(不図示)をさらに形成する。
【0041】
さらに、図10に示すように、第2のビルドアップ層となる片面銅張り基板24を用意し、これを第1のビルドアップ層23の主面に重ね合わせ、熱プレスすることにより、第1のビルドアップ層23上に第2のビルドアップ層を形成する。片面銅張り基板24は、上述の片面銅張り基板23と同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。さらに、図11に示すように、片面銅張り基板24上の銅箔24bをパターニングして配線導体パターン14を形成した後、ビアホール導体15をさらに形成する。
【0042】
次に、図12に示すように、SUS板22を剥離した後、コア基板21の他方の主面に形成された銅箔21cをパターニングして多層基板11の底面に配線導体パターン17を形成し、さらに図13に示すように、多層基板11の上面にチップ部品16を実装する。その後、図14に示すように、多層基板11をダイシングして固片の基板を切り出す。以上により、IC内蔵基板100が完成する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のIC内蔵基板100の製造方法によれば、第1の樹脂基板であるコア基板21上にICチップ12及び金属フレーム13を搭載した後、第2の樹脂基板である片面銅張り基板を張り合わせてICチップ12と金属フレーム13とを同時に埋め込むので、特に工程を増やすことなく、ICチップ12と同等の厚みを有する金属フレーム13を容易に埋め込むことができる。
【0044】
図15(a)及び(b)は、第1の実施形態によるIC内蔵基板100の変形例を示す略平面図である。
【0045】
図15(a)に示すIC内蔵基板110は、金属フレーム13が基板内に完全に埋め込まれておらず、金属フレーム13の外側の側面13sが露出している点を特徴としている。その他の構造は図1に示したIC内蔵基板100と同様であることから、同一の構成要素に同一の符号を付して重複する説明を省略する。この構造によれば、金属フレームによる放熱効果をさらに高めることができる。
【0046】
図15(b)に示すIC内蔵基板120は、金属フレーム13が完全なリング状ではなく、メインフレーム13aの一部が切り欠かれており、隙間13cが設けられている点を特徴としている。その他の構造は図1に示したIC内蔵基板100と同様であることから、同一の構成要素に同一の符号を付して重複する説明を省略する。金属フレーム13がこのような形状であっても、完全なリング状の金属フレーム13と同様、IC内蔵基板の機械的強度と放熱性の両方を向上させることができる。
【0047】
図16(a)乃至(c)は、第1の実施形態によるIC内蔵基板100のさらなる変形例を示す略平面図である。
【0048】
図16(a)乃至(c)に示すIC内蔵基板130〜150は、樹脂多層基板11が長方形であり、金属フレーム13もこれに対応した長方形のリング形状を有する点を特徴としている。特に、図16(a)に示すIC内蔵基板130は、樹脂多層基板11の外周に沿って設けられた長方形のリングフレームと、ICチップ12を取り囲む正方形のリングフレームとが組み合わされた形状を有する点を特徴としている。また、図16(b)に示すIC内蔵基板140は、基板の外周に沿って設けられた長方形のリングフレームのみからなる点を特徴としている。さらに、図16(c)に示すIC内蔵基板150は、樹脂多層基板11の外周に沿って設けられた長方形のリングフレームと、ICチップ12を取り囲む正方形のリングフレームとが組み合わされた形状において、正方形のリングフレームの一部が切り欠かれており、隙間13cが設けられている点を特徴としている。
【0049】
このように、上述のIC内蔵基板130〜150はいずれも、樹脂多層基板11の内層にリング状の金属フレーム13を埋め込んでいるので、樹脂多層基板11の薄型化による強度不足を補うことができ、IC内蔵基板100の機械的強度を確保することができる。また、金属フレーム13がICチップ12を概ね周回するように設けられているので、金属フレーム13を放熱板として機能させることができる。さらに、金属フレーム13はICチップ12と同じ層に設けられているので、ICチップ12と同等な厚みを確保することができ、補強材として十分な強度を確保することができる。
【0050】
図17は、本発明の第2の実施形態によるIC内蔵基板の構造を示す側面断面図である。また、図18は、図17のA−A線に沿ったIC内蔵基板の略平面断面図である。
【0051】
図17及び図18に示すように、本実施形態のIC内蔵基板200は、金属フレーム13をアンテナとして使用することを特徴としている。そのため、金属フレーム13は、第1の実施形態と同じくICチップ12を取り囲むように構成されているが、第1の実施形態のような閉ループではなく、オープンループを構成しており、折り返し構造により所望の電気長が確保されている。
【0052】
本実施形態の金属フレーム13は、容量結合タイプの逆Fアンテナとして構成されている。金属フレーム13の一方の端部13dは開放端をなし、他方の端部は二分岐されてそのうちの一端13eがビアホール導体15eを介してグランドラインに接続され、他端13fはビアホール導体15f及びインピーダンス整合素子31を介してICチップ12の信号出力端子(バンプ18f)に容量結合されている。
【0053】
このように、本実施形態のIC内蔵基板200によれば、金属フレーム13をアンテナとして使用するので、IC内蔵基板をモジュールとして組み込んで最終製品となったときにおいても、アンテナを別途設ける必要がなく、製品の小型化が可能となる。また、基板の側面からの電力放射となるので、配線導体パターンによる伝送損失や導体損失を軽減することができる。また、第1の実施形態によるIC内蔵基板100と同様、金属フレーム13を通じて熱が拡散することから、放熱効果も期待できる。
【0054】
図19は、本発明の第3の実施形態によるIC内蔵基板の構造を示す断面図である。また、図20は、図19のA−A線に沿ったIC内蔵基板の略平面断面図である。
【0055】
図19及び図20に示すように、本実施形態のIC内蔵基板300は、金属フレーム13をシールド材として使用することを特徴としている。そのため、金属フレーム13はビアホール19を通じてグランドパターン(パッド)17cに接続されている。シールド材がない場合には、外来ノイズの影響を受けてICチップ12の特性が低下したり、またICチップ12から発生するノイズが外部機器に影響を与えたりする可能性がある。しかし、ICチップ12の周囲がシールド材としての金属フレーム13で囲まれている場合には、外来ノイズや放射ノイズを遮断することができる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0057】
上記実施形態においては、ICチップがパワーアンプICである場合について説明したが、本発明はパワーアンプICに限定されるものではなく、CPUやDSPのようなデジタルICであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態によるIC内蔵基板の構造を示す略側面断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿ったIC内蔵基板の略平面断面図である。
【図3】IC内蔵基板の製造工程(コア基板の用意)を説明するための模式図である。
【図4】IC内蔵基板の製造工程(SUS板の張り付け)を説明するための模式図である。
【図5】IC内蔵基板の製造工程(配線導体パターン及びビアホール導体の形成)を説明するための模式図である。
【図6】IC内蔵基板の製造工程(ICチップの実装)を説明するための模式図である。
【図7】IC内蔵基板の製造工程(金属フレームの実装)を説明するための模式図である。
【図8】IC内蔵基板の製造工程(第1のビルドアップ層の形成)を説明するための模式図である。
【図9】IC内蔵基板の製造工程(配線導体パターン及びビアホール導体の形成)を説明するための模式図である。
【図10】IC内蔵基板の製造工程(第2のビルドアップ層の形成)を説明するための模式図である。
【図11】IC内蔵基板の製造工程(配線パターン及びビアホール導体の形成)を説明するための模式図である。
【図12】IC内蔵基板の製造工程(SUS板の剥離及び配線導体パターンの形成)を説明するための模式図である。
【図13】IC内蔵基板の製造工程(チップ部品の実装)を説明するための模式図である。
【図14】IC内蔵基板の製造工程(多層基板のダイシング)を説明するための模式図である。
【図15】(a)及び(b)は、第1の実施形態によるIC内蔵基板の変形例を示す略平面図である。
【図16】(a)乃至(c)は、第1の実施形態によるIC内蔵基板のさらなる変形例を示す略平面図である。
【図17】本発明の第2の実施形態によるIC内蔵基板の構造を示す側面断面図である。
【図18】図17のA−A線に沿ったIC内蔵基板の略平面断面図である。
【図19】本発明の第3の実施形態によるIC内蔵基板の構造を示す断面図である。
【図20】図19のA−A線に沿ったIC内蔵基板の略平面断面図である。
【図21】従来のIC内蔵基板の構造を示す略断面図である。
【符号の説明】
【0059】
11 樹脂多層基板
11a 樹脂多層基板の上面
11b 樹脂多層基板の底面
12 ICチップ
13 金属フレーム
13a メインフレーム
13b リード部
13c 隙間
13d 金属フレームの一端
13e 金属フレームの分岐部の一端
13f 金属フレームの分岐部の他端
13s メインフレームの側面
14 配線導体パターン
15 ビアホール導体
15e,15f ビアホール導体
16 チップ部品
17a パッド
17b パッド
17c パッド(グランドパターン)
18,18f バンプ
19 ビアホール導体
21 両面銅張り基板(コア基板
21a 樹脂基板
21b,21c 銅箔
22 SUS板
23 片面銅張り基板(第1のビルドアップ層)
23a 樹脂基板
23b 銅箔
24 片面銅張り基板(第2のビルドアップ層)
24a 樹脂基板
24b 銅箔
31 インピーダンス整合素子
100 IC内蔵基板
110〜150 IC内蔵基板
200〜400 IC内蔵基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線導体パターンが形成された樹脂多層基板と、前記樹脂多層基板の内層に埋め込まれたICチップと、前記ICチップを取り囲むように前記樹脂多層基板内に埋め込まれた金属フレームとを備え、前記ICチップと前記金属フレームは前記樹脂多層基板内の同じ層に設けられていることを特徴とするIC内蔵基板。
【請求項2】
前記金属フレームは、前記樹脂多層基板中の配線導体パターンとは異なる材料からなることを特徴とする請求項1に記載のIC内蔵基板。
【請求項3】
前記金属フレームは、前記配線導体パターンよりも高いヤング率を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のIC内蔵基板。
【請求項4】
前記金属フレームの厚みは、前記配線導体パターンの厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のIC内蔵基板。
【請求項5】
前記金属フレームは、前記ICチップを取り囲むように形成されたメインフレームと、前記メインフレームから前記ICチップに向けて延設されたリード部とを有し、前記リード部の先端部が前記ICチップに近接していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のIC内蔵基板。
【請求項6】
前記リード部は、前記ICチップの各辺に対応して設けられていることを特徴とする請求項5に記載のIC内蔵基板。
【請求項7】
前記金属フレームは、前記ICチップの信号出力端子に接続されており、アンテナとして機能することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のIC内蔵基板。
【請求項8】
前記金属フレームは、前記配線パターンのうちのグランドラインに接続されており、シールド材として機能することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のIC内蔵基板。
【請求項9】
第1の樹脂基板上にICチップ及び前記ICチップを取り囲む金属フレームを実装する工程と、前記第1の樹脂基板上に第2の樹脂基板を張り合わせて多層基板を形成すると共に、前記ICチップ及び前記金属フレームを前記多層基板内に埋め込む工程とを備えることを特徴とするIC内蔵基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−21423(P2010−21423A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181579(P2008−181579)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】