説明

IC冷却機構の取付構造

【課題】 ICにストレスが作用することがなく、その結果、プリント基板からのICの剥離を防止することのできるようなIC冷却機構の取付構造を提供する。
【解決手段】 IC2に当接する下部伝熱板23と、下部伝熱板23に当接するとともに冷却パイプ9に接触固定された上部伝熱板24と、下部伝熱板23および上部伝熱板24を一定の押圧力をもって当接させる押圧機構25とにより取付機構21を形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリント基板に実装されているICに対して冷却機構を取り付けるためのIC冷却機構の取付構造についてのものである。
【0002】
【従来の技術】従来の冷却機構の取付構造を図3,4,5により説明する。プリント基板1に実装されたIC2に下部伝熱板3を熱伝導性に優れた熱伝導性接着剤4で接着する。下部伝熱板(第一の伝熱板)3と上部伝熱板(第二の伝熱板)6とはネジ8により固定する。上部伝熱板6と冷却パイプ(冷却機構)9は特殊ネジ11により固定される。その際、上部伝熱板6の特殊ネジ11が入る穴はIC2の高さなどにバラツキがあっても高さ方向に調節できるよう長穴12にし、かつIC2が故障し交換するときは特殊ネジ11を外す時があるのでその作業中に特殊ねじ11が落ちないように口元だけネジ穴14にしてある。
【0003】下部伝熱板3と上部伝熱板6との間の接触面と、上部伝熱板6と冷却パイプ3との間の接触面には、すきまが生じてしまうと冷却ロスが生じるので、密着性を高めて接触熱抵抗低減を図るため、熱伝導性グリス15を塗布してから取付けている。
【0004】冷却について説明すると、高発熱密度のIC2を、下部伝熱板3と上部伝熱板6を設けて冷却パイプ9の中を循環する冷媒16によって熱交換することで冷却する。
【0005】冷却パイプ9をIC2に直接接触させて冷却すれば冷媒16とIC2との熱経路を短く出来るので高い冷却効果が得られるが、IC2が故障したときの交換とIC1のリード17に計測器のプローブを接触させ電気的チェックを行うことを考慮に入れて下部伝熱板3と上部伝熱板6とを設けた冷却機構の取付構造となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本来、熱伝導経路は熱の発生源であるIC2→下部伝熱板3→上部伝熱板6→冷却パイプ9→冷媒16へと熱が移動し冷媒16の熱交換にて冷却が行われるのであるが、IC2〜冷却パイプ9間が固定されているとIC2と冷却パイプ9とプリント基板1とのそれぞれに温度差が生じ、各材質の熱膨張率が異なるため熱の伸びの違いによる熱ストレスが発生し、強度の弱い部分、たとえばIC2のリード17やIC2〜下部伝熱板3間の接着面などにストレスが加わり、それが長期にわたるとプリント基板1からIC2が剥がれる原因となる。このような熱膨張率差によるストレスは数十Kg/cm2 に達することもある。
【0007】また下部伝熱板3と上部伝熱板6とをねじ8で取付け、取り外す際にもIC2のリード17には機械的ストレスがかかる。その取付け時の機械的ストレスが残留応力として加わり、続けて長期間使用すると、プリント基板1からIC2が剥離する原因になる。
【0008】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、IC冷却機構の取付構造において、ICにストレスが作用することがなく、その結果、プリント基板からのICの剥離を防止することのできるようなIC冷却機構の取付構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明においては、以下の手段を採用した。すなわち、請求項1記載の発明は、プリント基板上に実装されたICを冷却機構に対して取り付けるための取付構造であって、前記ICに当接する第一の伝熱板と、前記第一の伝熱板に当接するとともに前記冷却機構に接触固定された第二の伝熱板と、前記第一の伝熱板および第二の伝熱板とを一定の押圧力をもって当接させる押圧機構とを備えて構成されることを特徴としている。
【0010】このような構成とされるために、請求項1に係る発明においては、第一、第二の伝熱板間にストレスが作用した場合に、押圧機構によってそのストレスを吸収することができる。
【0011】請求項2記載の発明は、請求項1記載のIC冷却機構の取付構造であって、前記押圧機構は、前記第一および第二の伝熱板の一方に対して固定されるとともに、同、他方対して所定の距離寸法をもって離間する間隔保持機構と、前記間隔保持機構と前記第一および第二の伝熱板の他方との間に配置された弾性部材とを備えて構成されることを特徴としている。
【0012】このような構成とされるために、請求項2に係る発明においては、弾性部材の弾性力により一定の押圧力を実現することができる。
【0013】請求項3記載の発明は、請求項2記載のIC冷却機構の取付構造であって、前記ICの上面に前記第一の伝熱板が積層状態に配置されるとともに、さらにその上方に前記第二の伝熱板が積層状態に配置された構造とされ、前記第二の伝熱板には、上下に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔内に、前記間隔保持機構の少なくとも一部をなすスリーブ部材が、その下端が前記第一の伝熱板に固定されるとともに、その上端が前記第二の伝熱板の少なくとも一部の上方に突出した状態とされ、なおかつ、前記貫通孔の内壁に対して離間した状態で配置され、前記スリーブ部材の上端には鍔が設けられ、前記鍔は、該鍔の下方に位置する前記弾性部材を前記第二の伝熱板に対して押圧していることを特徴としている。
【0014】このような構成とされるために、請求項3に係る発明においては、簡易な構成により、第二の伝熱板を第一の伝熱板に対して押圧することができる。また、貫通孔の内壁とスリーブ部材とが離間しているために、第一および第二の伝熱板が、上下方向だけでなく水平方向にも相対移動することが可能となる。
【0015】請求項4記載の発明は、請求項3記載のIC冷却機構の取付構造であって、前記弾性部材は、波座金あるいは皿バネあるいはスプリングワッシャであることを特徴としている。
【0016】このような構成とされるために、請求項4に係る発明においては、弾性部材をスリーブ部材の鍔に対応した形状とすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、図1と2を参照してこの発明の実施の形態の一例を説明する。なお、この実施の形態において、上述の従来技術と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略することとする。
【0018】図1および図2は、本発明の一実施の形態であるIC冷却機構の取付構造21を模式的に示す図である。図中に示すように、取付構造21は、IC2の上面2aに当接するように配置された下部伝熱板(第一の伝熱板)23と、下部伝熱板23の上面23aおよび冷却パイプ9に当接するように配置された上部伝熱板(第二の伝熱板)24と、これら下部および上部伝熱板23,24を一定の押圧力をもって当接させる押圧機構25とにより概略構成されている。
【0019】押圧機構25は、ネジ27およびスリーブ28からなる間隔保持機構29と、波座金(弾性部材)30により構成されている。これらネジ27,スリーブ28,波座金30は、ともに、上部伝熱板24を上下に貫通する貫通孔31内に配置されている。ネジ27は、その先端27aが、下部伝熱板23の上面23aに設けられたネジ孔32に螺着されるとともに、その頭部27bが、スリーブ28の上端28aを固定する構成となっている。
【0020】また、スリーブ28は、ネジ27の周囲を囲むように配置されるとともに、ネジ27により、下部伝熱板23側に固定された構成となっており、さらに、貫通孔31の内壁31aから離間した状態で配置されている。また、スリーブ28の上端28aには鍔33が設けられている。
【0021】ネジ27の頭部27bおよびスリーブ28の鍔33は、ともに貫通孔31内に形成された水平な座ぐり面35の上方に位置している。また、鍔33は、この座ぐり面35に対して波座金30を押圧している。
【0022】このような構成の取付構造21を得るには、プリント基板1に実装されたIC2の上面2aに、熱伝導性に優れた熱伝導性接着剤15により、下部伝熱板23を接着する。そして、下部伝熱板23の上方からネジ27により上部伝熱板24と下部伝熱板23とを固定する際に、ネジ27と上部伝熱板24との間にスリーブ28と波座金30を取付ける。このとき、スリーブ28によって、鍔33の裏面33aと座ぐり面35との間に波座金30を取付けるのに適切なスペース36が保たれる。さらに、波座金30が、このスペース36において一定量たわませて取り付けられることにより、鍔33から波座金30を介して下部伝熱板23が一定の押圧力をもって押しつけられる。
【0023】また、スリーブ28は貫通孔31の内壁31aから離間して設けられるために、スリーブ28と貫通孔31の内壁31aとの間には、下部伝熱板23と上部伝熱板24の固定時にY方向(図2参照)の逃げとなるスペース37が保たれる。
【0024】波座金30の材質は、例えばステンレスバネSUS301製,またはリン青銅製などのバネ特性の良い材質を用いる。また厚みは0.1〜0.2ミリの厚さであれば軽度の押圧が得られ、熱抵抗が安定した接触状態が保持でき、かつIC2のパッケージの押付圧力も低く抑えられるのでIC2のパッケージに加わるストレスは少なくて済む。
【0025】上述の取付構造21においては、下部および上部伝熱板23,24を一定の押圧力をもって当接させる押圧機構25が備えられているために、これら下部および上部伝熱板23,24を完全に固定しないフローティング構造を実現することができ、熱ストレス,機械的ストレスがあってもIC2のリード17に多大な負荷がかかることがなく、IC2がプリント基板1から剥離することがない。
【0026】また、上述の取付構造21においては、間隔保持機構29と上部伝熱板24との間にスペース36が形成されて一定の間隔が保持され、なおかつ、間隔保持機構29を構成するスリーブ28と上部伝熱板24との間に波座金30が設けられるために、波座金30により一定の押圧力を得ることができる。
【0027】さらに、上述の取付構造21においては、スリーブ28の鍔33により波座金30を上部伝熱板24に押圧するために、簡易な構成により上部伝熱板24に対して押圧力を付与することができる。さらに、スリーブ28と貫通孔31との間に、スペース37が形成されて一定の間隔が保持されるために、上部伝熱板24と下部伝熱板23とが水平方向にも相対変位可能となり、熱ストレス、機械的ストレス等に対する耐久性をより一層向上させることができる。
【0028】また、上述の取付構造21は、スリーブ28の鍔33の形状に対応した波座金30が用いられるために、鍔33から上部伝熱板24を良好に押圧できる。
【0029】なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、他の構成を採用するようにしてもよい。例えば、上記実施の形態における波座金30の代わりに皿バネやスプリングワッシャ等を使用するようにしてもよい。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係るIC冷却機構の取付構造においては、第一および第二の伝熱板を一定の押圧力をもって当接させる押圧機構が備えられているために、これら第一および第二の伝熱板を完全に固定しないフローティング構造を実現することができ、熱ストレス,機械的ストレスによりICのリードに多大な負荷がかかることがなく、ICのプリント基板からの剥離を防止して耐久性を向上させることができる。
【0031】請求項2に係るIC冷却機構の取付構造においては、間隔保持機構と第二の伝熱板との間にスペースが形成されて一定の間隔が保持され、なおかつ、間隔保持機構と第二の伝熱板との間に弾性部材が設けられるために、弾性部材により一定の押圧力を得ることができ、請求項1に係る発明を良好に実現することができる。
【0032】請求項3に係るIC冷却機構の取付構造においては、スリーブに設けられた鍔により、弾性部材を第二の伝熱板に押圧するために、簡易な構成により第二の伝熱板に対して押圧力を付与することができる。さらに、スリーブと貫通孔との間に一定の間隔が保持されるために、第一および第二の伝熱板が水平方向に相対変位可能となり、熱ストレス、機械的ストレス等に対する耐久性をより一層向上させることができる。
【0033】請求項4に係るIC冷却機構の取付構造においては、弾性部材が、波座金、皿バネ、スプリングワッシャのうちのいずれかにより構成されるために、弾性部材を、スリーブの鍔に対応した形状とすることができ、第二の伝熱板に対して良好に押圧力を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を模式的に示すIC冷却機構の取付構造の斜視分解組立図である。
【図2】 図1に示した取付機構のA−A線矢視断面図である。
【図3】 本発明の従来の技術を模式的に示すIC冷却機構の取付構造の斜視分解組立図である。
【図4】 図3に示した取付機構のA−A線矢視断面図である。
【図5】 図3に示した取付機構のB−B線矢視断面図である。
【符号の説明】
1 プリント基板
2 IC
9 冷却パイプ(冷却機構)
21 取付構造
23 下部伝熱板(第一の伝熱板)
23a 上面
24 上部伝熱板(第二の伝熱板)
25 押圧機構
28 スリーブ
28a 上端
29 間隔保持機構
30 波座金(弾性部材)
31 貫通孔
31a 内壁
33 鍔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント基板上に実装されたICを冷却機構に対して取り付けるための取付構造であって、前記ICに当接する第一の伝熱板と、前記第一の伝熱板に当接するとともに前記冷却機構に接触固定された第二の伝熱板と、前記第一の伝熱板および第二の伝熱板とを一定の押圧力をもって当接させる押圧機構とを備えて構成されることを特徴とするIC冷却機構の取付構造。
【請求項2】 請求項1記載のIC冷却機構の取付構造であって、前記押圧機構は、前記第一および第二の伝熱板の一方に対して固定されるとともに、同、他方対して所定の距離寸法をもって離間する間隔保持機構と、前記間隔保持機構と前記第一および第二の伝熱板の他方との間に配置された弾性部材とを備えて構成されることを特徴とするIC冷却機構の取付構造。
【請求項3】 請求項2記載のIC冷却機構の取付構造であって、前記ICの上面に前記第一の伝熱板が積層状態に配置されるとともに、さらにその上方に前記第二の伝熱板が積層状態に配置された構造とされ、前記第二の伝熱板には、上下に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔内に、前記間隔保持機構の少なくとも一部をなすスリーブ部材が、その下端が前記第一の伝熱板に固定されるとともに、その上端が前記第二の伝熱板の少なくとも一部の上方に突出した状態とされ、なおかつ、前記貫通孔の内壁に対して離間した状態で配置され、前記スリーブ部材の上端には鍔が設けられ、前記鍔は、該鍔の下方に位置する前記弾性部材を前記第二の伝熱板に対して押圧する構成とされていることを特徴とするIC冷却機構の取付構造。
【請求項4】 請求項3記載のIC冷却機構の取付構造であって、前記弾性部材は、波座金あるいは皿バネあるいはスプリングワッシャであることを特徴とするIC冷却機構の取付構造。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開2000−58726(P2000−58726A)
【公開日】平成12年2月25日(2000.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−218319
【出願日】平成10年7月31日(1998.7.31)
【出願人】(000117744)安藤電気株式会社 (17)
【Fターム(参考)】