説明

IC搭載媒体及びIC搭載媒体読取システム

【課題】IC読取装置と交信させるためには、指紋照合と体温検知が常に必要となり、非接触ICカード本来の利便性が損なわれる問題があった。
【解決手段】非接触ICカード内のデータメモリー領域を仮想的に分けて存在させる。一つのメモリ領域には、非接触ICカードに設けた制御回路により外部からのICカード読取装置によりアクセスできる領域とする。もう一つのメモリ領域は、ある温度に達しないとデータ通信しないスイッチ回路を設け、これにより本人の意思が伴わないとICカード読取装置が存在してもデータ通信を行わないようにする。これにより、ICカード読取装置と勝手にデータ通信を行う非接触ICカード本来の機能と重要な情報は温度検知というICカード持ち主本人の意思を伴った状態でデータ通信し、重要な情報の漏洩を防ぐことができるという両面をあわせ持つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード等のIC搭載媒体及びその読取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、個人認証等を行うためのツールとして、磁気カードがまだ主流であるがデータ容量の大きさ及び、非接触で読み取りが可能という手軽さから非接触型のICカードが磁気カードに代わって普及してきている。非接触型ICカードでは、ICカード読取装置に近づけることによりデータ通信し、本人の認証を行っている。
【0003】
しかし、この非接触型ICカードは、読取り装置を近づけることによりICカード持ち主本人の意思と関係なく通信してしまうため、(それが便利である要因であるが、)本人が気づかぬうちにデータを出力してしまい、それが重要なデータであった場合には問題となるケースが生じてくる。
【0004】
また、このような問題を解決するために特許文献1では、ICカード内に使用者の指紋読取部と体温検知部を設けて、ICカード持ち主の指紋照合と体温がなければIC読み取り装置とのデータ交信が出来ないセキュリティを追加している。
【0005】
【特許文献1】特開平9-171547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1の技術では、IC読取装置と交信させるためには、指紋照合と体温検知が常に必要となり、非接触ICカード本来の利便性が損なわれる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらを解決するために、例えば、非接触ICカード内のデータメモリー領域を仮想的に分けて存在させる。一つのメモリ領域には、非接触ICカードに設けた制御回路により外部からのICカード読取装置によりアクセスできる領域とする。もう一つのメモリ領域は、ある温度に達しないとデータ通信しないスイッチ回路を設け、これにより本人の意思が伴わないとICカード読取装置が存在してもデータ通信を行わないようにする。
【発明の効果】
【0008】
これにより、ICカード読取装置と勝手にデータ通信を行う非接触ICカード本来の機能と重要な情報は温度検知というICカード持ち主本人の意思を伴った状態でデータ通信し、重要な情報の漏洩を防ぐことができるという両面をあわせ持つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図により説明する。図1に非接触型ICカード読取装置2(以下読取装置と略す)と非接触型ICカード1(以下ICカードと略す)の通信状態を示す。なお、非接触ICカードを利用することが手軽に情報を送受信できる観点から望ましいが、非接触型ではなく接触型であってもよい。また、カード形状に限られず、携帯電話やPDAのような媒体に内蔵されたものであってもよい。
【0010】
通常ICカード1は、読取装置2から磁界を受けその磁界により電源を起動し、読取装置とのデータ送受信を開始する。データの送受信経路は、制御回路5により呼び出されたICカードメモリ内の簡易データ6を読取装置に出力する。この時ICカード1の持ち主は、自分の意思とは無関係にデータ通信を行うことになる。例えば、百貨店においてこの簡易データ6にICカード持ち主のIDと今までの購入品情報を記録しておけばこの顧客がどのような商品に興味があり今後何を購入したいのかをいち早く百貨店側は情報入手できる。このように簡易データ6には、ICカード持ち主本人に直接影響しないデータの入力及び読取を行う領域として設定し、百貨店側にとって有利な情報を得ることが可能となる。
【0011】
しかし一方では、例えば満員電車などの人ごみで、リーダをかざされることによって非接触で気付かれずに情報が漏洩する危険性がある。そこで重要データ7を簡易データ6とは仮想的に別の領域とする。重要データ7には、ICカード持ち主本人に直接影響されるデータ(生年月日、現住所、TEL NO.等)を入力し、主に本人照合の場合に用いる。この重要データ7はICカード持ち主にとって重要は情報であるため、アクセスする必要がある場合は制御回路5にICカード持ち主本人の同意がないとデータ通信しないように設定する。本人の同意については、制御回路5の上位に存在する温度検知回路4のスイッチをONすることにより重要データ7と交信できる。この温度検知回路4では、例えば体温に近い35℃に設定し、35℃以上になると重要データ7と交信できるようにする。ICカード表面に温度検知部を設け、その部分を指で押さえることで温度検知させる。スイッチをOFFさせるためには、温度検知部の温度が低下してから、所定時間(数秒や数分)でOFFさせるような設定を行えば、簡単な操作で温度検知回路スイッチのON/OFFが可能となる。読取装置は、通信可能となった重要データ7の情報を読取装置2内のデータ又はサーバ8,9と交信を行い本人の照合確認を行う。このように温度をスイッチにすることで、身体に触れるだけの手軽な認証等が可能となり、また、満員電車などで読取装置を近づけても読み取れず、加熱して読み取ろうとすると熱によって持ち主が情報盗難に気付くという効果がある。
【0012】
図1の、読取装置とアンテナ等を介してデータを送受信する送受信回路3、温度センサ等の温度検知回路4、制御回路5、半導体メモリ等の簡易データ記憶部6、重要データ記憶部7は一つのICチップに載っていることがコストの面から望ましい。複数の記憶部(物理的に分かれているものや仮想的に分割されているものを含む)が一つのICチップに載っているため、それらからの情報の読み出し可否を制御回路5が判断する。
【0013】
図2にICカードの制御回路のフローチャートを示す。ICカード1は読取装置2が存在するとステップ201で勝手にデータの通信を行う。この交信はICカード持ち主本人の意思と関係なく、最初に簡易データ6の情報を送受信する。この簡易データとの交信はICカード持ち主本人の同意がないため、ICカード1と読取装置2との間で交信ができ、ステップ202で期待した情報の入手ができた時点でICカード持ち主本人の認識なく勝手に終了となる。すなわち読取装置2からの情報取得要求が終了すると終了する。
【0014】
またステップ201で交信ができなかったり、ステップ202で期待した情報入手が出来なくてもICカード1と読取装置2の交信は勝手に行われる動作であり、ICカード持ち主側にとっては何の影響もないため終了となる。この動作は、あくまでICカード持ち主本人(顧客)の簡易データ6の情報を勝手に入手でき、その情報によって利用する側がよいサービスを行うための動作である。
【0015】
読取装置2から重要データ7との交信(個人照合確認)を要求されている場合は、ステップ203を実行する。ここでは、ステップ204で温度検知回路4のスイッチがONになっているか否かを判断し、ONになっている場合にはステップ205で重要データ7を呼び出して交信する。通信した結果、ステップ206で個人照合(暗証番号一致等)されれば、目的が達成され、終了となるが、照合されなければステップ207でもともとICカード持ち主本人に権限がなかったことになる。
【0016】
なお、所定の温度を検知していないときに重要データを読み出させず簡易データのみを読み出させ、所定の温度を検知しているときには重要データと簡易データとの両方を読み出させるようにしたが、所定の温度を検知しているときには重要データのみを読み出して簡易データは読み出させないようにしてもよい。また、領域の分け方は重要/簡易以外の分け方であってもよい。
【0017】
図3にはICカードを活用した場面を示す。通常状態では、ICカード1の簡易データが読取装置2,2’に読取れ、あらかじめ登録情報としてもっている簡易データ情報管理サーバ8と交信を行い、顧客情報8’を入手することができる。この情報には、ICカード持ち主本人の本店舗における情報、例えば今までの購入品リスト、来店回数 等を記録しておき、来店の際にその情報をいち早く入手することにより、その顧客に対してきめ細かなサービスを提供することができる。また、この情報は別の場所に設置してある読取装置2,2’でも同じように読み取りが可能で別の店舗においても、同じ様に顧客データを入手できる。その結果、顧客が引越しして別の地域に行ったとしても、今までの情報を活用することが可能となる。
【0018】
また、その店舗で購入品の支払いとして顧客承認等が必要な場合、重要データ7を読み取る必要がある。この場合には温度検知回路5をONさせ1’、ICカード持ち主同意のもと同一の読取装置2,2’から読込み、重要データ情報の管理サーバ9と交信させる。この管理サーバ9内の重要情報9’と照合が確認できた場合に支払いが可能となる。
【0019】
図4には、ICカードを使用した具体的は別の場面を示す。ある銀行の顧客11がICカードを持ってATMコーナ10に入って行くと、まず出入り口付近の読取装置2とICカードとの間で交信する。この交信では、ICカード持ち主の知らないところで情報交換がされる。
このとき、顧客情報があれば、入出金に関した目的で来店した顧客11となるが、情報がない顧客についてはその目的が不明なため、不審者が侵入したことなり、防犯カメラの解像度をUPさせるなど、警戒レベルを上げることが可能となる。入出金目的で来店された顧客11はそのままATM12の正面で今度は、ATMに取り付られた読取装置2と交信する必要がある。このときICカード持ち主の顧客11は、ICカードの温度検知回路4をONさせ、個人照合を得た後、入出金を行うことが可能となる。なお、店舗やATMコーナ等のように他と区切られていて出入口を有する空間を捨てP−スともいう。
【0020】
また、図5には、ある会社の従業員証にICカードを用いた場合を示す。この場合のICカード内の温度検知には胸又は、ズボンのポケット等の人体に近いポケットに入れることでICカード持ち主の体温をカード全体で検知させる。従業員13が会社に出社するときの従業員証明には、会社構内15の出入り口に読取装置を設置し、従業員13の持つICカードとの交信で簡単な証明が可能となる。また、会社構内に読取装置を多く設置することで、従業員の居場所をICカードの電波で管理することも可能である。従業員は、昼休みには本ICカードをポケットから別の位置に移すことにより、温度検知回路4が体温を検知しなくなって定時時間外では居場所を検知させず、私的行動を必要以上に知られることを防ぐことも可能となる。この場合は、ポケットにICカードを入れることで常時ICカード持ち主の同意が取れていることとなり、高度なセキュリティが必要な場所14に出入りする場合もその出入り口に設置した読取装置により権限がある場合のみ入出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】基本回路
【図2】非接触型ICカード制御回路フローチャート
【図3】非接触型ICカードの適用具体例1
【図4】非接触型ICカードの適用具体例2
【図5】非接触型ICカードの適用具体例3
【符号の説明】
【0022】
1・・・・非接触型ICカード
1’・・・非接触型ICカード(温度検知回路ON動作)
2・・・・非接触型ICカード読取装置
2’・・・非接触型ICカード読取装置内制御部
3・・・・送受信回路
4・・・・温度検知回路
5・・・・制御回路
6・・・・簡易データ
7・・・・重要データ
8・・・・簡易データ情報の管理サーバ
8’・・・簡易データ管理サーバ登録情報
9・・・・重要データ情報の管理サーバ
9’・・・重要データ管理サーバ登録情報
10・・・ATMコーナ
11・・・顧客
12・・・ATM
13・・・会社従業員
14・・・高度なセキュリティが必要な場所
15・・・会社構内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IC搭載媒体であって、
所定温度の検出信号を発する検出手段と、
情報を記憶する第1記憶部及び第2記憶部と、
前記温度検出手段で所定温度の検出信号を発しているとき、前記第1記憶部及び前記第2記憶部のうち少なくとも前記第1記憶部から情報の読み出しを許可し、前記温度検出手段で所定温度の検出信号を発していないとき、前記第1記憶部と前記第2記憶部のうち、前記第2記憶部のみから情報の読み出しを許可する制御手段とを有する。
【請求項2】
IC搭載媒体から情報を取得するIC搭載媒体読取システムであって、
複数の端末が設置されたスペースの入り口に温度検出手段を有するIC搭載媒体から前記温度検出手段による検出不要の情報を取得する第1読取部と、
前記端末に温度検出手段を有するIC搭載媒体から前記温度検出手段による検出要の情報を取得する第2読取部とを有する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−18542(P2006−18542A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195125(P2004−195125)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】