説明

III族窒化物結晶の製造方法

【課題】窒素プラズマ合成法において、より大きな結晶粒度を有するIII族窒化物結晶、或いはバルク状のIII族窒化物結晶を生成できるIII族窒化物結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】III族元素を含む融液7に対し窒素プラズマ及び水素プラズマを含む混合プラズマPを接触させることによってIII族窒化物結晶を生成する。この方法により、より大きな結晶粒度のIII族窒化物結晶、或いは肉眼にて視認可能な程度にまで成長したバルク状III族窒化物結晶を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物結晶の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばGaNといった塊状(バルク)のIII族窒化物結晶を成長させるための一つの方法として、III族元素と窒素(N)とを高温高圧の反応条件下にて直接合成する高温高圧融液成長法がある。また、バルクのIII族窒化物結晶を成長させるための他の方法としては、フラックス法やアンモサーマル法がある。フラックス法では、1000℃且つ数十気圧の窒素雰囲気中に金属Naまたはアジ化ナトリウム(NaN)を導入し、Naまたはアジ化ナトリウムを媒介としてIII族元素と窒素とを反応させることによりIII族窒化物結晶を成長させる。また、アンモサーマル法では、数十気圧の超臨界アンモニアを600℃でIII族元素と反応させることにより、III族窒化物結晶を成長させる。
【0003】
また、III族窒化物結晶を成長させるための上記以外の方法として、窒素プラズマ合成法がある。窒素プラズマ合成法では、数百℃且つ1気圧以下といった低温低圧の反応条件下でIII族元素の融液に窒素プラズマを接触させることにより、III族窒化物結晶を生成する。このような窒素プラズマ合成法については、例えば非特許文献1に記載されている。
【非特許文献1】T.Ozawa他3名、「Synthesis ofGaN bulk crystals and melt growth of GaN layers under nitrogen plasma」、Journalof crystal growth、第310号、2008年、1785−1789頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した各方法のうち、高温高圧融液成長法、フラックス法およびアンモサーマル法には次の問題がある。すなわち、高温高圧融液成長法ではIII族元素と窒素(N)とを合成する為に2000℃以上且つ数万気圧の反応条件を実現しなければならず、また、フラックス法およびアンモサーマル法においても上述したように極めて高温・高圧の反応条件を実現しなければならない。したがって、これらの方法ではIII族窒化物結晶を成長させる際の安全性に関して十分に注意する必要がある。
【0005】
これに対し、窒素プラズマ合成法では反応条件が低温低圧で済むので、上記問題を回避できる。しかし、III族窒化物結晶の核形成密度は極めて高く、融液表面において強いGa−N結合が生じるので、結果的に極めて小さな結晶(微結晶)が生成されるのみとなる。したがって、従来の窒素プラズマ合成法では極めて小さな結晶粒度をもつ多結晶塊しか生成できず、単結晶からなるバルク結晶の実現には程遠いという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、窒素プラズマ合成法において、より大きな結晶粒度を有するIII族窒化物結晶、或いはバルク状のIII族窒化物結晶を生成できるIII族窒化物結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法は、III族元素を含む融液に対し窒素プラズマ及び水素プラズマを含む混合プラズマを接触させることによってIII族窒化物結晶を生成することを特徴とする。本発明者は、従来の窒素プラズマ合成法における窒素プラズマに加え、水素プラズマをIII族元素の融液に接触させることを試みた。その結果、より大きな結晶粒度のIII族窒化物結晶、或いは肉眼にて視認可能な程度にまで成長したバルク状III族窒化物結晶が得られることを見出した。すなわち、このIII族窒化物結晶の製造方法によれば、窒素プラズマ合成法において、より大きな結晶粒度を有するIII族窒化物結晶、或いはバルク状のIII族窒化物結晶を生成することが可能となる。
【0008】
また、上述したIII族窒化物結晶の製造方法においては、III族元素がガリウムであり、III族窒化物結晶が窒化ガリウムであることが好適である。
【0009】
また、上述したIII族窒化物結晶の製造方法は、融液を収容したチャンバ内の圧力を1気圧以下とし、融液に混合プラズマを接触させることを特徴としてもよい。上述したIII族窒化物結晶の製造方法によれば、このように低い圧力下においてIII族窒化物結晶を生成できる。
【0010】
また、上述したIII族窒化物結晶の製造方法は、混合プラズマがIII族元素を含む固体材料に対して与える熱により該固体材料を融解させて融液を生成することを特徴としてもよい。上述したIII族窒化物結晶の製造方法によれば、プラズマによる温度上昇程度の比較的低い温度でもってIII族窒化物結晶を生成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法によれば、窒素プラズマ合成法において、より大きな結晶粒度を有するIII族窒化物結晶、或いはバルク状のIII族窒化物結晶を生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態によるIII族窒化物結晶の製造方法において使用される製造装置の一部を模式的に示す図である。この製造装置1は、反応室2と、反応室2に通じるガス導入管3と、反応室2の内部に設置されたBN坩堝4と、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器5と、このマイクロ波を導波する導波管6と、を備えている。BN坩堝4内には、図示しないサファイア(Al)基板と、III族元素を含む融液7とが収容されている。この融液7は、BN坩堝4にIII族元素を含む固体材料を収容した後に、この固体材料が加熱されることによって得られる。この加熱は、後述する混合プラズマPが固体材料に対して与える熱により行われることができる。BN坩堝4には熱電対8が取り付けられており、BN坩堝4に収容された融液7の温度を検出することが可能である。
【0014】
反応室2の内部は、図示しない真空ポンプによって、たとえば反応室2の内部圧力が3×10−3[Pa]程度になるまで一旦排気される。その後、反応室2の上部に設置されたガス導入管3から窒素ガスおよび水素ガスを含む混合ガスGを反応室2内に導入する。同時に、反応室2の上部に設けられた導波管6を介して、たとえば周波数2.45[GHz]のマイクロ波MWが混合ガスGに印加される。これにより、窒素プラズマおよび水素プラズマを含む混合プラズマPが生成する。そして、この混合プラズマPが融液7に接触することで、サファイア基板上にIII族窒化物結晶が成長する。
【0015】
固体材料に含まれるIII族元素としては、例えばガリウム(Ga),インジウム(In),またはアルミニウム(Al)を挙げることができる。これらのIII族元素は固体材料中に単独で含まれてもよく、幾つかの種類のIII族元素が混在していてもよい。また、サファイア基板上に成長するIII族窒化物結晶としては、GaN,InN,AlNの他、InGaNやAlGaNなどの三元混晶や、InAlGaNといった四元混晶を挙げることができる。
【0016】
図2は、本実施形態によるIII族窒化物結晶の製造方法における各工程を示すフローチャートである。まず、III族元素を含む固体材料(例えば金属Ga粉末)およびサファイア基板を用意する(準備工程S1)。その際、サファイア基板としては、(0001)面を板面とするものを用意することが望ましい。そして、固体材料およびサファイア基板をBN坩堝4内に収容する(試料設置工程S2)。
【0017】
続いて、反応室2内に窒素ガスを送り込むことにより、反応室2内のパージすなわち残留酸素の除去を行う(回順パージ工程S3)。このとき、反応室2内に窒素ガスを送り込んだのち排気する操作を5回程度繰り返すとよい。その後、反応室2内の真空引き(排気)を行う(真空引き工程S4)。
【0018】
続いて、窒素プラズマおよび水素プラズマを含む混合プラズマPを生成する(プラズマ生成工程S5)。すなわち、窒素ガスおよび水素ガスを含む混合ガスGを反応室2内へ導入しつつ、マイクロ波MWを混合ガスGへ印加する。このとき、混合ガスGの圧力を例えば1000[Pa]、流量を例えば100[ccm(立方センチメートル毎分)]とし、プラズマ出力を例えば380[W]〜420[W]とするとよい。また、好ましくは、混合ガスGにおける水素ガスの流量比を10〜50[%]とするとよい。なお、ここでいう水素ガスの流量比とは、窒素の流量をUN2[ccm]、水素の流量をUH2[ccm]として、
水素流量比[%]={UH2/(UN2+UH2)}×100
として表される。
【0019】
ここで、図3は、BN坩堝4の内部温度の遷移を示すグラフである。BN坩堝4に収容された固体材料へ混合プラズマPの照射を開始すると、混合プラズマPが固体材料に対して与える熱により固体材料が加熱されて融解し、融液7が生成される。そして、或る温度(例えば700℃)で融液7の温度が保たれる。この間、混合プラズマPが融液7に接触することで、サファイア基板上にIII族窒化物結晶が成長する。
【0020】
その後、混合ガスGの供給およびマイクロ波MWの出力を停止すると(図3のタイミングT1)、BN坩堝4内の融液7が急速に冷却される(急冷却工程S6)。そして、反応室2からBN坩堝4を取り出し、サファイア基板上に成長したIII族窒化物結晶をBN坩堝4から取り出したのち(取り出し工程S7)、HF/HNO溶液(好ましくは、HFとHNOとの体積比が4:1)を使用した5分程度のエッチングにより表面処理を行う(表面処理工程S8)。最後に、必要であれば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用したエネルギー分散型X線分光法(EDS)による分析、或いはフォトルミネッセンス(PL)測定等によりIII族窒化物結晶の組成分析を行う(分析工程S9)。
【0021】
図4は、上述した製造方法によりIII族窒化物結晶が成長するしくみについて模式的に説明する図である。なお、図4は、III族元素がGaであり、作製されるIII族窒化物結晶がGaNである場合を例に説明しているが、他のIII族元素(In,Alなど)の場合においてもこれと同様のしくみによって結晶が成長すると考えられる。
【0022】
まず、図4(a)に示すようにBN坩堝4に収容されたGa融液7に対し、窒素プラズマPNおよび水素プラズマPHが接触する。なお、Ga融液7の中にはサファイア基板9が設置されている。すると、図4(b)に示すように、Ga、N、およびHが相互に作用して、アンモニア(NH)に近い組成の中間体Iが融液7中に生成する。この中間体Iは、GaおよびNの結晶化を抑制しながら融液7中を沈降し、サファイア基板9上に達する。そして、図4(c)に示すように、この中間体Iから徐々に水素原子が抜けてGaN結晶となる。したがって、従来の窒素プラズマのみを用いた方法よりも大きな結晶粒度を有するGaN結晶が得られる。或いは、このGaN結晶がサファイア基板9の表面と格子整合してエピタキシャル成長することにより、バルク状のGaN結晶10が生成される。
【0023】
図5及び図6は、混合ガスGに含まれる水素ガスの流量比を変化させたときの、GaN結晶の外観およびその窒化部分を示す写真である。図5(a),(c),(e)および図6(a),(c),(e)は、サファイア基板9およびGaN結晶10の上から見た外観(表面写真)を示しており、図5(b),(d),(f)および図6(b),(d),(f)は、サファイア基板9上においてGaが窒化した領域Aと、窒化していない領域B(黒く塗りつぶした領域)とを示している。また、水素ガスの流量比については、図5(a)及び(b)は10[%]の場合を示しており、図5(c)及び(d)は20[%]の場合を示しており、図5(e)及び(f)は30[%]の場合を示している。更に、図6(a)及び(b)は40[%]の場合を示しており、図6(c)及び(d)は50[%]の場合を示しており、図6(e)及び(f)は60[%]の場合を示している。なお、下の表1は、各水素流量比における、図5及び図6の対応関係および窒化率(サファイア基板の面積に対する窒化領域の割合)を示す表である。また、図7は、水素ガスの流量比と窒化率との関係を示すグラフである。
【表1】

【0024】
表1及び図7を参照すると、水素ガスの流量比が60[%]より小さい場合には、高い確率でGaが窒化していることがわかる。また、水素ガスの流量比が30[%]以下の場合、図5(b),(d),(f)を参照するとGaが窒化した領域が有色となっているが、水素ガスの流量比が40[%]〜50[%]の場合には、図6(b)及び(d)を参照すると、Gaが窒化した領域が半透明になっている(特に図6(d))。
【0025】
ここで、図8(a)は図5(c)に示した表面写真(すなわち水素ガスの流量比が20[%]の場合)であり、図8(b)及び(c)は、図8(a)の一部を拡大して示す電子顕微鏡写真である。また、図9(a)は図6(c)に示した表面写真(すなわち水素ガスの流量比が50[%]の場合)であり、図9(b)及び(c)は、図9(a)の一部を拡大して示す電子顕微鏡写真である。図8(b)及び(c)に示すように、Gaが窒化して有色となっている場合、小さなGaN結晶粒子が多数堆積してGaNの多結晶塊を構成している。このGaN多結晶塊の結晶粒度は、従来の窒素プラズマのみ照射する方法により作製されたGaN多結晶塊の結晶粒度と比較して大きなものであった。また、図9(b)及び(c)に示すように、Gaが窒化して半透明となっている場合、GaN結晶が一つの単結晶塊となっており、サファイア基板9上にエピタキシャル成長したことがわかる。なお、組成分析の結果、図8(b)に示した部分はGaの組成が72%、Nの組成が28%であり、図8(c)に示した部分はGaの組成が66%、Nの組成が34%であった。また、図9(b)に示した部分はGaの組成が48%、Nの組成が52%であり、図9(c)に示した部分はGaの組成が54%、Nの組成が46%であった。
【0026】
図10は、水素ガス流量比を50[%]とした場合のサファイア基板上の生成物を、PL測定により分析した結果を示すグラフである。なお、このPL測定では、光源としてのXeランプの出力を150[W]とし、温度を300[K]とし、励起波長を325[nm]とした。図10に示すように、フォトルミネッセンスのピーク波長は365[nm]となっており、サファイア基板上の生成物が良質のGaN結晶であることが確認された。
【0027】
また、図11(a)及び(b)は、水素ガス流量比を50[%]とした場合のサファイア基板上の生成物を、X線回折測定により分析した結果を示すグラフである。図11(a)に示すように、サファイア(Al)によるピーク(図中のX1)以外に、GaNによるピーク(図中のX2)が確認された。また、図11(b)に示す結果は六方晶系の化合物がサファイア基板上に成長していることを示しており、GaN結晶が成長したことを示唆している。
【0028】
図12(a)は、比較例として、窒素プラズマのみを用いる従来の方法により作製したGaN結晶の側断面を示す電子顕微鏡写真である。また、図12(b)及び(c)は、本実施形態により混合プラズマPを用いて作製したGaN結晶の側断面を示す電子顕微鏡写真である。図12(b)は混合プラズマPの接触を開始してから300分後の断面を示しており、図12(c)は混合プラズマPの接触を開始してから420分後の断面を示している。なお、図12(a)〜(c)において、領域Cはサファイア基板の断面を示しており、領域DはGaN結晶の断面を示している。
【0029】
図12(a)に示すように、従来の方法により作製されるGaN結晶はその表面が平坦にならず、また前述したように、このGaN結晶は極めて小さな微結晶の集合体である。これに対し、図12(b),(c)に示されるように、本実施形態の製造方法によれば、GaN結晶の表面を平坦にでき、混合プラズマPの照射時間に応じてGaN結晶の厚さを増すことができるので、良質の単結晶GaNを任意の厚さに形成することができる。
【0030】
図13は、混合プラズマPの照射時間と、GaN結晶の成長膜厚との関係を示すグラフである。図13に示すように、混合プラズマPの照射を開始してから約250分が経過するまではサファイア基板上にGaN結晶は殆ど成長せず、約300分から約350分にかけて急激に成長する。そして、その後は成長速度が低下するが、時間経過に応じて徐々に成長する。なお、混合プラズマPの照射を開始して250分が経過してから420分が経過するまでの平均成長速度は、0.7[μm/時]であった。
【0031】
本実施形態の製造方法においては、図4(b)に示したように、Ga、N、およびHが相互に作用して、アンモニア(NH)に近い組成の中間体Iが融液7中に生成する。そして、この中間体IがGaおよびNの結晶化を抑制しながら融液7中を沈降してサファイア基板9上に達したのち、徐々に水素原子が抜けてGaN結晶となる。図13において、約250分が経過するまでサファイア基板上にGaN結晶が殆ど成長しないのは、中間体IがGaおよびNの結晶化を抑制しながら融液7中を沈降しているためであり、約300分から約350分にかけて急激に成長するのは、この間に中間体Iから水素原子が抜けてGaN結晶が生成しているためと考えられる。
【0032】
以上に説明したように、本発明者は、従来の窒素プラズマ合成法における窒素プラズマに加えて水素プラズマをIII族元素の融液に接触させた結果、より大きな結晶粒度のIII族窒化物結晶、或いは肉眼にて視認可能な程度にまで成長したバルク状III族窒化物結晶を得ることに成功した。すなわち、本実施形態に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、窒素プラズマ合成法において、より大きな結晶粒度を有するIII族窒化物結晶、或いはバルク状のIII族窒化物結晶を生成することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、融液7を収容した反応室2(チャンバ)内の圧力を1気圧以下として、融液7に混合プラズマPを接触させる。このように、本実施形態に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、低い圧力下においてIII族窒化物結晶を生成できる。
【0034】
また、本実施形態では、混合プラズマPがIII族元素を含む固体材料に対して与える熱により該固体材料を融解させて融液7を生成している。このように、本実施形態に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、混合プラズマPによる温度上昇程度の比較的低い温度でもってIII族窒化物結晶を生成できる。
【0035】
本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では混合プラズマPにより固体材料を加熱して融液を生成しているが、ヒータを用いて固体材料を加熱し、融液を生成してもよい。また、混合プラズマを生成して融液に接触させる前に、水素プラズマのみを生成して固体材料表面のクリーニングを行っても良い。
【0036】
また、上記実施形態ではIII族窒化物結晶を成長させる基板としてサファイア基板を用いているが、この他にも例えばSiC基板、GaAs基板、或いはSi基板など様々な基板を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】III族窒化物結晶を製造する際に使用される製造装置の一部を模式的に示す図である。
【図2】III族窒化物結晶の製造方法における各工程を示すフローチャートである。
【図3】BN坩堝の内部温度の遷移を示すグラフである。
【図4】III族窒化物結晶が成長するしくみについて模式的に説明する図である。
【図5】混合ガスGに含まれる水素ガスの流量比を変化させたときの、GaN結晶の外観((a),(c),(e))およびその窒化部分((b),(d),(f))を示す写真である。
【図6】混合ガスGに含まれる水素ガスの流量比を変化させたときの、GaN結晶の外観((a),(c),(e))およびその窒化部分((b),(d),(f))を示す写真である。
【図7】水素ガスの流量比と窒化率との関係を示すグラフである。
【図8】(a)は、図5(c)に示した表面写真(すなわち水素ガスの流量比が20[%]の場合)であり、(b)及び(c)は、(a)の一部を拡大して示す電子顕微鏡写真である。
【図9】(a)は、図6(c)に示した表面写真(すなわち水素ガスの流量比が50[%]の場合)であり、(b)及び(c)は、(a)の一部を拡大して示す電子顕微鏡写真である。
【図10】水素ガス流量比を50[%]とした場合のサファイア基板上の生成物を、PL測定により分析した結果を示すグラフである。
【図11】水素ガス流量比を50[%]とした場合のサファイア基板上の生成物を、X線回折測定により分析した結果を示すグラフである。
【図12】(a)は、比較例として、窒素プラズマのみを用いる従来の方法により作製したGaN結晶の側断面を示す電子顕微鏡写真である。(b)及び(c)は、本実施形態により混合プラズマを用いて作製したGaN結晶の側断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図13】混合プラズマの照射時間と、GaN結晶の成長膜厚との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1…製造装置、2…反応室、3…ガス導入管、4…BN坩堝、5…マイクロ波発生器、6…導波管、7…融液、8…熱電対、9…サファイア基板、10…結晶、MW…マイクロ波、P…混合プラズマ、PH…水素プラズマ、PN…窒素プラズマ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族元素を含む融液に対し窒素プラズマ及び水素プラズマを含む混合プラズマを接触させることによってIII族窒化物結晶を生成することを特徴とする、III族窒化物結晶の製造方法。
【請求項2】
前記III族元素がガリウムであり、前記III族窒化物結晶が窒化ガリウムであることを特徴とする、請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項3】
前記融液を収容したチャンバ内の圧力を1気圧以下とし、前記融液に前記混合プラズマを接触させることを特徴とする、請求項1または2に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項4】
前記混合プラズマが前記III族元素を含む固体材料に対して与える熱により該固体材料を融解させて前記融液を生成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図10】
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【図13】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−58990(P2010−58990A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223767(P2008−223767)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(597139170)学校法人静岡理工科大学 (3)
【Fターム(参考)】