説明

ILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具

【課題】ケーブルの自重により空中線素子又はケーブルにダメージを与えることなく、ローカライザ空中線装置を長期的に運用できるILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具を提供する。
【解決手段】一端が支柱の上端部に取り付けられた空中線素子に接続され且つ他端が支柱内を挿通して支柱の下端部を介して分配器に接続されるケーブルを、支柱内で保持するILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具であって、ジグザグ状に形成された部材からなる保持部を有し、保持部は、内側の面が所定角度で内側に傾斜し傾斜した内側の面でケーブルを固定する第1乃至第4傾斜固定部と、第1乃至第4傾斜固定部の隣接する2つの傾斜固定部を連結する第1乃至第3曲部とを有し、ケーブルは、第1傾斜固定部の下を潜り、第2傾斜固定部と第3傾斜固定部とを這い、第4傾斜固定部の下を潜り抜ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、航空機を滑走路に誘導するILS(Instrument Landing System:計器着陸システム)のローカライザ空中線素子に給電する同軸ケーブルを保持するILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
ILSは、着陸のために進入している航空機に対し、空港付近の地上施設から指向性を有する電波を発射し、滑走路への進入コースを指示する無線着陸援助装置であり、悪天候などの視界不良時であっても航空機を安全に滑走路まで誘導することができる。ILSは、主に、滑走路への進入コースの中心から左右のずれを示すローカライザ(LOC:Localizer)と適切な進入角を示すグライドスロープ(GS:Glide Slope)を備えている。
【0003】
ILSは、滑走路への進入コースを指示する電波を空中線素子から放射する。ILSのローカライザ空中線装置を設置する際には、工事により取り付けられた架台に、空中線素子用の例えば2mの支柱を固定し、この支柱に空中線素子が取り付けられる。空中線素子用の給電ケーブルは、屋外に露出することを回避するために、支柱内に挿通されている。給電ケーブルは、空中線素子内で保持されて、空中線素子から架台まで垂れ下げられ、空中線素子の設置高に比例し、保持への負荷が大きくなっている。
【0004】
また、近年、国際規約(ICAO)の改正に伴い、機材に対して脆弱性を配慮する必要があり、機材となるILSのローカライザ空中線装置の設置要領においても脆弱性を配慮する必要がある。現状のILSのローカライザ空中線装置は、架台がなくなり、地面の基礎部から支柱を立ち上げる構造となり、設置空港の条件によつては、支柱の高さを4.5mまで伸ばす必要がある。即ち、脆弱性に対応するために、4m級の支柱を準備する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−212057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかながら、支柱を延ばした場合、ケーブルの自重が負荷となり、空中線素子又はケーブルにダメージを与える可能性がある。
【0007】
長期運用に対し障害の発生確率を軽減する方法としてケーブル保持具を考案する必要があった。
本発明が解決しようとする課題は、ケーブルの自重により空中線素子又はケーブルにダメージを与えることなく、ローカライザ空中線装置を長期的に運用できるILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態に係るILS用のローカライザ空中線用ケーブル保持具によれば、一端が支柱の上端部に取り付けられた空中線素子に接続され且つ他端が前記支柱内を挿通して前記支柱の下端部を介して分配器に接続されるケーブルを、前記支柱内で保持するILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具であって、ジグザグ状に形成された部材からなる保持部を有し、前記保持部は、内側の面が所定角度で内側に傾斜し傾斜した内側の面で前記ケーブルを固定する第1乃至第4傾斜固定部と、前記第1乃至第4傾斜固定部の隣接する2つの傾斜固定部を連結する第1乃至第3曲部とを有し、前記ケーブルは、前記第1傾斜固定部の下を潜り、前記第2傾斜固定部と前記第3傾斜固定部とを這い、前記第4傾斜固定部の下を潜り抜けることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係るILSのローカライザ空中線装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係るILSのローカライザ空中線装置で使用される空中線用ケーブル保持具の保持部の構造を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係るILSのローカライザ空中線装置で使用される空中線用ケーブル保持具の保持部の斜視図である。
【図4】図2及び図3に示す保持部のジグザグ部分を挿通するケーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るILSのローカライザ空中線装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
このILSのローカライザ空中線装置において、細長い円筒状の支柱2の上端部2bにはLOC空中線素子1が取り付けられ、LOC空中線素子1にはケーブル5の先端が取り付けられている。支柱2内には保持部4を含むケーブル保持具3が設けられており、ケーブル5は、保持部4及びケーブル保持具3内を挿通して支柱2の下端部2aを介して図示しない分配器に接続されている。
【0013】
ケーブル保持具3は、細長い円筒管であり、この円筒管内にケーブル5が挿通されている。ケーブル保持具3の先端部には保持部4の一端部が取り付けられている。
【0014】
図2は、第1の実施形態に係るILSのローカライザ空中線装置で使用される空中線用ケーブル保持具の保持部の構造を示す図である。図3は、第1の実施形態に係るILSのローカライザ空中線装置で使用される空中線用ケーブル保持具の保持部の斜視図である。
【0015】
保持部4は、ジグザグ状に形成された鉄などの金属部材からなり、傾斜固定部4a,4b,4c,4dと、曲部40a,40b,40cとを有している。
【0016】
傾斜固定部4a,4b,4c,4dは、図2に示す状態で略水平方向に延びており、且つ内側の面が所定角度で内側に傾斜し、傾斜した内側の面でケーブル5を固定するようになっている。
【0017】
曲部40aは、傾斜固定部4aと傾斜固定部4bとを曲げながら連結する部分であり、曲部40bは、傾斜固定部4bと傾斜固定部4cとを曲げながら連結する部分であり、曲部40cは、傾斜固定部4cと傾斜固定部4dとを曲げながら連結する部分である。曲部40bの曲率は、曲部40a,40cの曲率よりも大きく設定されている。
【0018】
図4は、図2及び図3に示す保持部のジグザグ部分を挿通するケーブルを示す図である。図4に示すように、ケーブル5は、保持部4の傾斜固定部4aの下を潜り、傾斜固定部4bと傾斜固定部4cとを這い、傾斜固定部4dの下を潜り抜けている。
【0019】
このように第1の実施形態の空中線用ケーブル保持具によれば、図4に示すように、ケーブル5が保持部4の傾斜固定部4bと傾斜固定部4cとに所定の傾斜で固定され、且つケーブル5が傾斜固定部4aと傾斜固定部4dとに引っ掛かるので、ケーブル5の自重を傾斜固定部4a〜4dで受けることができる。
【0020】
したがって、ケーブルの自重により空中線素子1と支柱2との接合部にダメージを与えることなく、ローカライザ空中線装置を長期的に運用できるという効果がある。また、ケーブルの保持が十分となるため、通信障害を発生することはなくなる。
【0021】
また、傾斜固定部4a,4b,4c,4dの各々には、滑り止め(ケーブル保護)としてゴム材10a,10b,10c,10d(熱収縮チューブなど)が設けられている。ゴム材10a,10b,10c,10dと傾斜固定部4b,4cとの摩擦により、ケーブル5が傾斜固定部4b,4cに確実に固定される。このため、ケーブルの自重により空中線素子1と支柱2との接合部にダメージを与えることなく、ローカライザ空中線装置を長期的に運用できるという効果がさらに大となる。また、ゴム材は傾斜固定部4a,4b,4c,4dのいずれか1つ又は2つ又は3つに設けても良い。
【0022】
また、インシュロック帯11a,11bによりケーブル5と傾斜固定部4a,4b,4c,4dの各々とを結束している。インシュロック帯11a,11bを用いることにより、ケーブル5が傾斜固定部4a〜4dに確実に固定される。このため、ケーブルの自重により空中線素子1と支柱2との接合部にダメージを与えることなく、ローカライザ空中線装置を長期的に運用できるという効果がさらに大となる。また、インシュロック帯は、傾斜固定部4a,4b,4c,4dのいずれか1つ又は2つ又は3つに設けても良い。
【0023】
さらに、第1の実施形態では、3ターン(3T)だけジグザグ状に形成された保持部4を例示したが、保持部4は4ターン以上ジグザグ状に形成された保持部4を用いても良い。この場合には、さらにその効果が大となる。
【0024】
以上のように、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1 LOC空中線素子
2 支柱
2a 支柱の上端部
2b 支柱の下端部
3 ケーブル保持具
4 保持部
4a〜4d 傾斜固定部
5 ケーブル
10a〜10d ゴム材
11a,11b インシュロック帯
40a〜40c 曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が支柱の上端部に取り付けられた空中線素子に接続され且つ他端が前記支柱内を挿通して前記支柱の下端部を介して分配器に接続されるケーブルを、前記支柱内で保持するILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具であって、
ジグザグ状に形成された部材からなる保持部を有し、
前記保持部は、内側の面が所定角度で内側に傾斜し傾斜した内側の面で前記ケーブルを固定する第1乃至第4傾斜固定部と、前記第1乃至第4傾斜固定部の隣接する2つの傾斜固定部を連結する第1乃至第3曲部とを有し、
前記ケーブルは、前記第1傾斜固定部の下を潜り、前記第2傾斜固定部と前記第3傾斜固定部とを這い、前記第4傾斜固定部の下を潜り抜けることを特徴とするILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具。
【請求項2】
前記第1乃至第4傾斜固定部の表面には、摩擦部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具。
【請求項3】
前記第1乃至第4傾斜固定部の各々と前記ケーブルとを結束する結束バンドを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のILSのローカライザ空中線用ケーブル保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−205452(P2012−205452A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69686(P2011−69686)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】