説明

IM−12の結晶構造を有するゼオライトを含む固体上への選択的吸着による分離方法

【課題】IM−12の構造の特定の構造を有するゼオライトを含む固体を吸着剤の集まりとして用いる吸着分離方法を提供する。
【解決手段】分子種の、該種および他の分子種を任意の比率で含む混合物からの吸着分離方法であって、該混合物を、固体吸着剤と接触させる工程を包含し、該吸着剤は、IM−12の結晶構造を有し、無水物ベースとしてかつ酸化物のモルで、化学式XO:mYO:pZ:qR2/nO(ここで、Rは1以上のn価カチオンを示し、Xはゲルマニウム以外の1以上の4価元素を示し、Yはゲルマニウムを示し、Zは少なくとも1つの3価元素を示す)によって表される化学組成を有する固体を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IM−12の構造の特定の構造を有するゼオライトを含む固体を吸着剤の集まり(adsorbent mass)として用いる吸着分離方法に関する。
【0002】
蒸留等の気液平衡に基づく技術が混合物の異なる種を分離できない場合に選択される技術は、現行では吸着分離である。
【0003】
吸着分離は、石油、石油化学および化学産業から環境および医薬用途にわたる多くの分野において気体および液体を分離および精製するために広く用いられている。
【0004】
吸着分離に対する典型的な産業用途は、産業気体(酸素、窒素、水素)の製造、炭化水素類(例えば、直鎖および分枝鎖パラフィン類、キシレン類)の分離、汚染物(硫黄含有化合物、揮発性有機化合物等)を除去するための空気、水および廃棄物処理、乾燥、キラル異性体の分離等である。
【背景技術】
【0005】
吸着分離方法は従来技術において周知である。
【0006】
当該タイプの方法の特徴の概要は、例えば、非特許文献1または2において見出され得る。
【0007】
吸着分離方法の全ての中で引用されてよいのは、模擬向流法(simulated counter current:SCC)として知られる方法(例えば特許文献1および2)、圧力スウィング吸着法(pressure swing adsorption:PSA)として知られる方法(例えば特許文献3〜6)および温度スウィング吸着法(temperature swing adsorption:TSA)として知られる方法(例えば特許文献7および8)である。
【0008】
吸着分離方法の原理は、1以上の成分のミクロ孔固体上への選択的吸着にある。
【0009】
吸着固体は、多数のタイプ、例えば、ゼオライトまたはモレキュラーシーブ、シリカゲル、アルミナ、活性炭であってよい。
【0010】
これらの固体の全ては、300〜1200m/g程度の大きな比表面積によって特徴付けられる。ゼオライトが他のタイプの固体吸着剤から区別されるのは、それらがミクロ孔結晶固体であり、吸着がその結晶内で起こる点である。用語「ミクロ孔(microporous)」は20Å未満の細孔サイズを意味する
大多数の天然または合成ゼオライトが存在し、非特許文献3に記録されている。
【0011】
それらは、それらの組成および結晶構造によって区別されている。
【0012】
結晶構造によって、ミクロ細孔容積を構成する規定サイズのチャネルおよび細孔の二次元または三次元ネットワークが説明される。
【0013】
上記細孔への接近を制御する開口のサイズも吸着分離において重要なパラメータである。
【0014】
過去約40年にわたって合成されてきたゼオライトの中で、いくつかの固体が結果として吸着分野において重要な進歩をもたらした。これらには、Yゼオライト(特許文献9)およびZSM−5ゼオライト(特許文献10)が含まれる。
【0015】
最近合成されたゼオライトの中で、IM−12(本出願人の仏国特許出願第03/11333(特願2004−185946号)において記載されている)が引用されてよい。新規な結晶構造に加えて、固体結晶IM−12は、XO:mYO:pZ:qR2/nO(Rは1以上のn価カチオンを示し、Xはゲルマニウム以外の1以上の4価元素示し、Yはゲルマニウム示し、Zは少なくとも1つの3価元素を示す)の一般式で定義される酸化物モルに関し無水物ベース(base)として表される化学組成を有する。
【0016】
文字m、p、qは、それぞれ、YO、ZおよびR2/nOのモル数を示し、mは0〜1であり、pは0〜0.5でありqは0〜0.7である。
【0017】
上記結晶固体IM−12は、14および12個のXおよび/またはYおよび/またはZ原子をそれぞれ有する開口によって画定される2つのタイプの真直ぐなチャネルを含む相互に連通されたチャネルの二次元系を有する新規なトポロジーを有し、上記原子は4配位である、すなわち、4つの酸素原子によって囲まれている。
【0018】
用語「細孔直径」は、該当する細孔に入り得る分子サイズの観点からの細孔のサイズの機能的な定義として用いられる。それは細孔の実際の寸法を定義しない。形状がしばしば不規則である(すなわち、通常は非円形である)ためにそれを決定することが通常は困難であるからである。
【0019】
効果的な細孔直径については、非特許文献4によって提供される。
【0020】
ゼオライトチャネルの断面は酸素原子の環であるので、ゼオライトの細孔サイズは、用語「員環(member ring)」(MR)によって示される環の輪状部を形成する酸素原子数によって規定されてもよい。
【0021】
例えば、非特許文献3は、構造型FAUを有するゼオライトが12MR結晶チャネル(すなわち、12個の酸素原子によって構成される)のネットワークを有することを示す。結晶固体IM−12は、14および12MR開口によって画定される2タイプの真直ぐなチャネルを含む相互連通されたチャネルの二次元ネットワークを有する。この画定は当業者に周知であり、下記において用いられることになる。
【0022】
吸着分離は、吸着剤固体の表面と吸着される分子との間の特定の相互作用に起因して原料を構成する種々の気体または液体成分の(熱力学的または速度論的のいずれかの)選択的な吸着に基づく。
【0023】
簡単のため、以降においては、用語「吸着剤(adsorbent)」は固体の吸着剤を示すために用い、「吸着質分子(adsorbate molecule)」または「吸着質(adsorbate)」は、吸着される種を示すために用いることにする。
【0024】
吸着分離は、立体、速度論または熱力学平衡作用に基づいてよい。
【0025】
立体作用に伴われる場合、細孔直径未満の臨界直径(critical diameter)を有する分子のみが吸着剤に吸着される。
【0026】
混合物に含まれる種々の種がこのようにしてこれらの種の分子サイズに応じて分離される。
【0027】
このタイプの分離の典型的な例は、本出願人による特許文献11および12において例示されたように、5Aゼオライトを用いる直鎖および分枝鎖アルカン類の分離である。
【0028】
立体作用に加えて、分子種の混合物は、種の一つが混合物に含まれる他の種よりもはるかに速いかより遅く吸着されるのであれば速度論作用によって分離されてよい。
【0029】
立体または速度論作用のいずれが支配するかは、ミクロ孔のサイズおよび分布に依存する。
【0030】
吸着質の分子の臨界直径が吸着剤の細孔の直径と類似すれば、立体および速度論作用が引き起こされてもよい。最も小さい吸着質分子がより迅速に吸着するかもしれないからである。このような作用は、例えば、特許文献13に例示されるように、10MRの開口を有する第一チャネルおよび少なくとも12MRの開口を有する第二チャネルを備えた混合構造を有するゼオライト吸着剤上で多分枝パラフィン類を分離する場合に起こる。
【0031】
この特許文献には、構造型NESを有するゼオライト(例えば、NU−85またはNU−86ゼオライト)を用いて、1分子当たりの炭素原子数が5〜8である炭化水素類(特に、直鎖、単分枝および多分枝パラフィン類)を含む炭化水素原料油から多分枝パラフィン類を分離する方法が記載されている。
【0032】
熱力学的平衡作用に基づく吸着分離は、分離されるべき混合物に含まれるうちの一つの化合物の他の化合物に対する優先的な吸着に基づく。「熱力学的」分離と称される上記分離の場合には、吸着剤は、分子のマクロ孔拡散を促進させるために、分離される分子の臨界直径より大きい細孔直径、実際には可及的に大きい直径を有する。このタイプの分離の一例は、キシレン類およびエチルベンゼンを含む原料油からのパラキシレンのホージャサイト型ゼオライト上での分離である。この従来技術の分離は、特許文献14に例示される。
【0033】
吸着技術の一つの必須の特徴は、その一時的かつ一般的なサイクル機能である。なぜならば、吸着期の後、吸着固体は、次の使用のために部分的または完全に再生されなければならない、すなわち、一般的には脱離溶媒を用いるか、圧力を低減させるか(PSA処理)、または温度作用(TSA処理)によって、吸着された種が除かれなければならないからである。
【0034】
この力学的な機能の結果、吸着および脱離サイクルの設備、処理制御、容積および最適化に関して吸着方法にある種の複雑さが生じる。
【0035】
分離性能は、熱力学的性質だけではなく速度論および水力学的性質にも依存する。特に、吸着剤は、可及的に大きい細孔容積および所望の分離タイプに適するように整形されたサイズを有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第2985589号明細書
【特許文献2】仏国特許第2681066号明細書
【特許文献3】米国特許第6641664号明細書
【特許文献4】仏国特許第2655980号明細書
【特許文献5】仏国特許第2837722号明細書
【特許文献6】仏国特許第2774386号明細書
【特許文献7】米国特許第6432171号明細書
【特許文献8】欧州特許第1226860号明細書
【特許文献9】米国特許第3130007号明細書
【特許文献10】米国特許第3702886号明細書
【特許文献11】欧州特許第0820972号明細書
【特許文献12】米国特許第6353144号明細書
【特許文献13】仏国特許第2813310号明細書
【特許文献14】欧州特許第0531191号明細書
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】「ウルマンズ・エンサイクロペディア(Ullmann’s Encyclopedia)」,第B3巻,9頁37行−50行
【非特許文献2】「ハンドブック・オフ・ポーラス・ソリッド(Handbook of porous solids)」,ウィリー・アンド・ソンズ(Wiley & Sons),第4巻
【非特許文献3】シー・エイチ・ベアロッカー(Ch Baelocher)、ダブリュー・エム・マイヤー(W M Meier)およびディー・エイチ・オルソン(D H Olson)著,「アトラス・オフ・ゼオライト・ストラクチャー・タイプス(Atlas of Zeolite Structure Types)」,第5版,概説,2001年,エルセヴィア(Elsevier),インターナショナル・ゼオライト・アソシエーション(International Zeolite Association:IZA)から出版
【非特許文献4】ディー・ダブリュー・ブレック(D W Breck)著,「ゼオライト・モレキュラー・シーブス(Zeolite Molecular Sieves)」,ジョン・ウィリー・アンド・ソンズ(John Wiley & Sons),ニューヨーク,1974年,p.633−641
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明は、IM−12の構造の特定の構造を有するゼオライトを含む固体を吸着剤の集まり(adsorbent mass)として用いる吸着分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明は、IM−12固体の結晶構造を有し、かつ、化学式XO:mYO:pZ:qR2/nO(ここで、Rは1以上のn価カチオンを示し、Xは1以上のゲルマニウム以外の4価元素を示し、Yはゲルマニウムを示し、Zは少なくとも1つの3価元素を示す)によって酸化物のモルに関して無水物ベースとして表される化学組成を有する固体を含むことを特徴とする吸着剤を用いて吸着分離する一群の方法に関する。
【0040】
分離されるべき分子種を含む混合物は、炭化水素類のあらゆる混合物であってよく、これは、混合物を形成する各種が任意の数の炭素原子を含んでよいことを意味する。
【0041】
炭化水素混合物から分離されるべき分子種が炭化水素でなくてもよい。
【0042】
本発明は、石油、石油化学および化学産業から環境および医薬用途にわたる多くのかつ広い分野において適用可能である。
【0043】
本発明の方法は、液相および気相の両方において実施されてよい。分離装置のための操作条件は、所望の流れのそれぞれの収率および純度の程度に依存する。例えば、循環PSAまたはTSAタイプの方法は、所望の種の吸着および脱着を可能にする温度および圧力で機能する。一般に、温度は、約0〜400℃、好ましくは50〜250℃に固定される。
【0044】
圧力は、約0.01〜15MPa、好ましくは約0.05〜5MPaであってよい。脱着は、多数の方法、例えば、圧力を低減させる(PSA)かまたは温度を上昇させる(TSAプロセス)かによって実施される。
【0045】
同様にして、模擬向流法(simulated counter current)が、通常は約20〜250℃、好ましくは60〜210℃に固定される温度で機能する。圧力は、系全体にわたり液相を維持するために、分離されるべき種の沸騰圧力(bubble pressure)より高い。脱着剤の原料に対する容積比は、一般的には、0.5〜30である。
【0046】
分子種の一つが不純物である、すなわち、分子種の一つの濃度が典型的には1重量%未満、より特定的には0.1重量%〜数重量ppmである場合には、本発明の方法は、−50〜300℃、好ましくは−50〜100℃の温度範囲に低減されて、処理される流れを1以上の吸着剤の床を通じて通すようにしてもよい。1つまたは複数の床は、この不純物を吸着剤から脱着させるために−50〜300℃、好ましくは−50〜150℃の温度で1以上の床を通り抜けるパージガスを用いて再生されてよい。
【0047】
吸着剤は、構想される用途に適合されることになる。このため、X/Ge比、(X+Ge)/Z比、カチオンR(単数または複数)の性質等のいくつかのパラメータが、本方法の最適性能を確実にするために調節されることになる。同様にして、吸着剤が用いられることになる形態(押出物状、粉体状、ビーズ状)は、用いられる方法のタイプに依存することになる。
【0048】
本発明は、キシレン異性体(オルト−、メタ−またはパラ−キシレン)またはエチルベンゼンの、該C8芳香族炭化水素類を必然的に含む炭化水素原料からの分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法である。
【0049】
また、本発明は、キシレン異性体(オルト−、メタ−またはパラ−キシレン)またはエチルベンゼンの、該C8芳香族炭化水素類を必然的に含む炭化水素原料からの分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、用いられる脱着剤がトルエンであり、該脱着剤の該原料に対する容積比が0.5〜2.5、好ましくは1〜2であり、温度が20〜250℃、好ましくは90〜210℃、より特定的には160〜200℃であり、圧力が大気圧〜2MPaである、方法である。
【0050】
また、本発明は、直鎖パラフィン類の、それらを含む任意の炭化水素類混合物からの分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、該分離は、PSAタイプの方法を用いる気相で実施され、カラム内の圧力が、好ましくは、吸着期中には0.2〜3MPa、脱着期中には0.05〜0.5MPaであり、用いられる脱着剤が水素または窒素等の不活性ガスまたはC3−C6パラフィン類等の炭化水素である、方法である。
【0051】
また、本発明は、直鎖パラフィン類の、それらを含む任意の炭化水素類混合物からの分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、該分離は、模擬移動床タイプの方法を用いる液相で実施され、温度が100〜250℃であり、圧力が0.2〜2MPaであり、用いられる脱着剤が、好ましくは炭化水素、特にはC3−C6パラフィンまたはC3−C6パラフィン類の混合物である、方法である。
【0052】
また、本発明は、直鎖パラフィン類および単分枝パラフィン類の、多分枝パラフィン類からのこれらを含む混合物における分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、該分離は、PSAタイプの方法による気相で実施され、カラム内の圧力は、吸着期中には0.2〜3MPa、脱着期中には0.05〜0.5MPaであり、用いられる脱着剤が、水素または窒素等の不活性ガスまたはC3−C6パラフィン類等の炭化水素である、方法である。
【0053】
また、本発明は、直鎖パラフィン類および単分枝パラフィン類の多分枝パラフィン類からの、これらを含む混合物における分離への上記に記載の吸着分離方法の適用方法であって、該分離は、模擬移動床方法の手段によって実施される、方法である。
【0054】
また、本発明は、1以上のジメチルナフタレン異性体の、芳香族C12炭化水素類を必然的に含む炭化水素原料からの分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、該分離は、模擬移動床で実施され、好ましい脱着剤がトルエンであり、脱着剤の原料に対する容積比が、0.5〜2.5、好ましくは1〜2であり、温度が、一般的には20〜300℃、好ましくは90〜260℃、より特定的には160〜250℃であり、圧力が大気圧〜2MPaである、方法である。
【0055】
また、本発明は、1以上のオレフィン類の、オレフィン類を必然的に含むかまたはパラフィン類およびオレフィン類を必然的に含む炭化水素原料からの分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法である。
【0056】
また、本発明は、1以上のジクロロベンゼン異性体(オルト、メタまたはパラジクロロベンゼン)の、ジクロロベンゼン類を必然的に含む原料からの分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、該分離は、模擬移動床で実施され、好ましい脱着剤はトルエン、パラキシレン、メタキシレンまたはキシレン類混合物であり、温度が、20〜250℃、好ましくは90〜210℃、より特定的には120〜200℃であり、圧力が、大気圧〜2MPaである、方法である。
【0057】
また、本発明は、水素化分解残渣に存在する重質芳香族化合物(多環式芳香族:PNA)の分離への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、吸着剤は、固定床で用いられ、温度は、一般的には20〜350℃、より特定的には50〜250℃であり、圧力が、大気圧〜4MPaである、方法である。
【0058】
また、本発明は、硫黄含有および/または窒素含有不純物を含む炭化水素類の流れの精製への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、硫黄含有および/または窒素含有化合物の量が、500ppm未満、好ましくは50ppm未満であり、吸着期中の温度が20〜400℃、好ましくは100〜280℃、より特定的には150〜250℃であり、圧力が、0.3〜15MPaである、方法である。
【0059】
また、本発明は、チオール類を含む天然ガスの精製への上記記載の吸着分離方法の適用方法であって、該分離は、TSA技術を用いて実施され、吸着期が、2〜10MPaの圧力、−40〜100℃の温度で実施され、チオール脱着期が、好ましくは、0.5〜10MPaの圧力、0〜150℃の温度で実施される、方法である。
【発明の効果】
【0060】
本発明の方法は、分離されるべき種の、該種および他の分子種を任意の比率で含む混合物からの吸着分離方法であって、該混合物を固体吸着剤と接触させる工程を包含し、該吸着剤は、IM−12の結晶構造を有し、無水物ベースとしてかつ酸化物のモルで、化学式XO:mYO:pZ:qR2/nO(ここで、Rは1以上のn価カチオンを示し、Xはゲルマニウム以外の1以上の4価元素を示し、Yはゲルマニウムを示し、Zは少なくとも1つの3価元素を示す)によって表される化学組成を有する固体を含むので、可及的に大きい細孔容積および所望の分離タイプに適するように整形されたサイズを有し、石油、石油化学および化学産業から環境および医薬用途にわたる多くの分野において気体および液体を分離および精製するために広く用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1に記載された方法を用いて合成されたシリコゲルマネートIM−12の77Kにおける窒素吸着等温線を示す。
【図2】同一のIM−12シリコゲルマネートを用いた150℃でのパラキシレン/オルトキシレン混合物からのパラキシレンの分離および純粋なトルエンによって構成された脱着のクロマトグラフィー表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、IM−12固体の結晶構造を有する固体を含み、かつ、化学式XO:mYO:pZ:qR2/nO(ここで、Rは1以上のn価カチオンを示し、Xは1以上のゲルマニウム以外の4価元素を示し、Yはゲルマニウムを示し、Zは少なくとも一つの3価元素を示す)によって酸化物のモルに関して無水物ベースとして表される化学組成を有することを特徴とする吸着剤を用いる、分離方法と一般的に称されることになる一群の吸着分離方法を提供する。仏国特許出願03/1133(この出願に基づいた日本国の優先権主張出願は、特願2004−185946である)には、ゼオライトIM−12およびその分離方法が記載されている。
【0063】
従来技術と比較して、本発明の方法は、下記の利点を有する。
【0064】
・所望の作用が立体および/または速度論作用である場合には、大きい細孔を有するゼオライトの使用によって、大きな分子が分離され得る。これは、CIT−5(米国特許第6043179号明細書)、SSZ−53またはSSZ−59(Burton A et al,Chemistry:A Eur Journal,提出済)、OSB−1、UTD−1F(Wessels T,Baerlocher C,McCusker L B,Creyghton E J,J Am Chem Soc 121,6242-6247(1999))またはAIPO−8(Dessau R M,Schlenker J L,Higgins J B,Zeolites,10,522-24(1990))等の他のゼオライトにより予見されたが、上記のものは、IM−12の細孔容積よりはるかに小さい細孔容積を有する。さらに、IM−12は、上記ゼオライトのうちでは、最も小さい直径のチャネルが8MRより大きいチャネルの二次元系を有する唯一のものである。
【0065】
・分離が熱力学平衡に基づく場合には、本発明の方法は、良好な分離品質を提供し、固体IM−12が、14および12MRの開口によって規定される大きな容量および広い真直ぐなチャネルの両方を有し、相互に連通されたチャネルの二次元系を形成するという利点を有する。大きな相互に連通されたチャネルのこの二次元系によって、実際に、分子種を細孔内に良好に拡散させることができ、これにより、吸着された分子種の拡散抵抗が低減させられる。
【0066】
・最後に、全ての場合において、IM−12固体は、高い熱安定性を有し、これは、用いられる固体の分解を避けるために、特に、TSAタイプの方法において重要である。実際に、IM−12固体は、いくつかの600℃での焼成サイクルに抵抗し得、この温度は、実質的に、吸着分離方法において一般的に出くわす温度(典型的には最大400℃)より高い。
【0067】
IM−12固体の結晶構造は、四面体によって形成された三次元構造である。特に、それは、4つの四面体型からなる二重環のユニットを含む。各四面体の頂点は、酸素原子によって占められる。IM−12固体結晶は、それぞれ14および12個のXおよび/またはYおよび/またはZ原子の開口によって規定される2タイプの真直ぐなチャネルを含む相互に連通されたチャネルの二次元系を有する新規なトポロジーを有し、上記原子は4配位であり、すなわち、4つの酸素原子によって囲まれている。
【0068】
上記チャネルの寸法は、それぞれ、14MRチャネルでは9.5×7.1Åであり、12MRチャネルでは8.5×5.1Åである。
【0069】
図1に示されるシリコゲルマネートIM−12の77Kでの窒素吸着等温線は、IUPAC命名による、純粋なミクロ孔タイプ「Ia」物質(material)を特徴とし、これは、第二ミクロ孔およびメソ孔を欠くことを示している。ミクロ孔容積は0.26cm/gであり、BET比表面積は670m/gである。
【0070】
比較のために、ファージャサイトタイプのゼオライト(最も大きいミクロ細孔容積および最も大きい細孔開口を有する)は、77Kでの窒素吸着によって測定される約0.35cm/gのミクロ細孔容積、7.4×7.4Åの開口部(window)の直径を有する(上記に引用されたCh Baerlocher、W M MeierおよびD H Olsonによる「Atlas of Zeolite Structure Types」(第5版、概説),2001年、Elsvier)。ファージャサイトの場合には、細孔容積の部分(ソーダライトケージ)に水および窒素以外の分子が接近できないことが留意されるべきである。したがって、例えば、2,2,4−トリメチルペンタン等の多分枝アルカンが接近可能な細孔容積は0.27cm/gである。
【0071】
生成物または一群の生成物を、それらを含む原料から分離することを目的とする一群の吸着分離方法が本発明の主題を形成する。
【0072】
このため、本発明は、石油、石油化学および化学産業から環境および医薬用途にわたる多くのかつ広い分野に適用可能である。
【0073】
より詳細には、予見される用途は、産業ガス(酸素、窒素、水素)の製造、炭化水素類の分離および汚染物(硫黄含有化合物、揮発性有機化合物等)の除去である。
【0074】
好ましくは、本発明に関する分離は、次の通りである。
【0075】
・1種のキシレン異性体(オルト−、メタ−またはパラ−キシレン)またはエチルベンゼンの、C8芳香族炭化水素類を必然的に含む炭化水素原料からの分離。この場合、用いられる技術は、好ましくは、模擬移動床(simulated moving bed)法である。好ましい脱着剤は、一般的にはトルエンであるが、パラ−ジエチルベンゼン、パラジフルオロベンゼンまたはジエチルベンゼン混合物等の他の脱着剤も適切であり得る。
【0076】
脱着剤の原料に対する比は、好ましくは0.5〜2.5、より好ましくは1〜2である。
【0077】
温度は、一般的には20〜250℃、好ましくは90〜210℃、より特定的には160〜200℃であり、圧力は、大気圧〜20バール(1バール=0.1MPa)である。
【0078】
・直鎖パラフィン類の、それらを含む炭化水素類の混合物からの分離。
【0079】
分離されるべきパラフィン類の長さに応じて、上記分離は、気相(軽質化合物)または液相(重質化合物)で実施されてよい。上記分離が気相で実施される場合には、PSAタイプの方法が好ましく用いられる。
【0080】
吸着期中のカラム内の圧力は、好ましくは0.2〜3MPaであり、脱着期中では、圧力は0.05〜0.5MPaである。用いられる脱着剤は、不活性ガス(水素または窒素等)または炭化水素(C3−C6パラフィン類等)であってよい。分離が液相で実施される場合には、模擬移動床タイプの方法が好ましく用いられる。この場合、装置の操作温度は、好ましくは100〜250℃である。装置内の圧力は、好ましくは0.2〜2MPaである。用いられる脱着剤は、好ましくは炭化水素であり、特には、C3−C6パラフィンまたはC3−C6パラフィン類の混合物である。
【0081】
・直鎖、単分枝および多分枝パラフィン類の混合物における、直鎖および単分枝パラフィン類の多分枝パラフィン類からの分離。分離されるべきパラフィン類の長さに応じて、上記分離は、気相(軽質化合物)または液相(重質化合物)で実施されてよい。上記分離が気相で実施される場合には、PSAタイプの方法が好ましく用いられる。吸着期中のカラム内の圧力は、好ましくは0.2〜3MPaであり、脱着期中には、その圧力は0.05〜0.5MPaである。
【0082】
用いられる脱着剤は、不活性ガス(水素または窒素等)または炭化水素(C3−C6パラフィン類等)であってよい。水素が上記分離のための特に適切な脱着剤である。脱着質(desorbate)(直鎖および分枝パラフィン類を豊富に含む、脱着装置からの流出物)と共に直接的に異性化反応器に再循環され得るからである。
【0083】
上記分離が液相で実施される場合には、模擬移動床タイプの方法が好ましく用いられる。この場合、装置の操作温度は、好ましくは100〜250℃である。装置内の圧力は、好ましくは0.2〜2MPaである。用いられる脱着剤は、好ましくは炭化水素であり、特には、C3−C6パラフィンまたはC3−C6パラフィン類の混合物である。
【0084】
・ジメチルナフタレン(例えば、2,6−ジメチルナフタレン)の1以上の異性体の、C12芳香族炭化水素類を必然的に含む炭化水素の原料からの分離。この場合、用いられる技術は、好ましくは模擬移動床法である。
【0085】
好ましい脱着剤は、一般的にはトルエンであるが、パラジエチルベンゼン、パラジフルオロベンゼンまたはジエチルベンゼン混合物等の他の脱着剤も適切であり得る。脱着剤の原料に対する容量比は、好ましくは0.5〜2.5、より好ましくは1〜2である。温度は、一般的には20〜300℃、好ましくは90〜260℃、より特定的には160〜250℃であり、圧力は大気圧〜2MPa、好ましくは0.2〜2MPaである。
【0086】
・1以上のオレフィン類の、オレフィン類を必然的に含むまたはパラフィン類およびオレフィン類を必然的に含む炭化水素原料からの分離(例えば、1,3−ブタジエンの、1,3−ブタジエン、イソブタン、n−ブタン、イソブタン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテンの混合物からの分離、エタン/エチレンの分離、プロパン/プロピレンの分離またはイソプレンの、C5オレフィン類の混合物からの分離)。
【0087】
・ジクロロベンゼン(オルト−、メタ−またはパラ−ジクロロベンゼン)異性体のうちの一つの、ジクロロベンゼン類を必然的に含む原料からの分離。この場合、用いられる技術は、好ましくは模擬移動床法である。好ましい脱着剤は、一般的にはトルエンであるが、パラキシレン、メタキシレンまたはキシレン混合物等の他の脱着剤も適切であり得る。温度は、一般的には20〜250℃、好ましくは90〜210℃、より特定的には120〜200℃であり、圧力は、大気圧〜2MPa、好ましくは0.2〜2MPaである。
【0088】
・水素化分解残渣に存在する重質芳香族化合物(多環式芳香族:PNA)の分離。この場合、吸着剤は、一般的には、固定床に配置される。好ましくは、並列または直列に配置された複数の床が用いられる。吸着期中の温度および圧力は、好ましくは、炭化水素類を液相に維持するように選択される。温度は、一般的には20〜350℃、より特定的には50〜250℃であり、圧力は、大気圧〜4MPa、好ましくは0.2〜4MPaである。
【0089】
・硫黄含有および/または窒素含有不純物を含む炭化水素類の流れ(例えば、軽油またはガソリンの脱硫)の精製。好ましくは、この流れは、硫黄含有および/または窒素含有の化合物量を500ppm未満、理想的には50ppm未満に低減するために前もって水素化処理される。吸着期中、温度は、一般的には20〜400℃、好ましくは100〜280℃、より特定的には150〜250℃であり、圧力は、0.3〜3MPaである。
【0090】
・チオール類を含む天然ガスの精製。この場合、用いられる技術は、好ましくはTSA(温度スウィング吸着法(temperature swing adsorption))である。精製工程は、好ましくは2〜10MPaの圧力および−40〜100℃の温度で実施される。チオール脱着工程は、好ましくは、0.5〜10MPaの圧力および0〜150℃の温度で実施される。
【0091】
吸着剤は、予見される用途に適合される。このため、X/Ge比、(X+Ge)/Z比、1つまたは複数のカチオンRの性質等のいくつかのパラメータが本方法の最適な性能を確実にするように調整される。同様にして、吸着剤が用いられる形態(押出物状、粉体状、ビーズ状)は、用いられる方法のタイプに依存することになる。
【0092】
(実施例)
本発明は、本発明を例示するが本発明の範囲を制限するものではない、下記実施例によってより理解されることになる。
【0093】
実施例1は、立体および速度論作用に基づく吸着分離を例示する。
【0094】
実施例2は、キシレン類の分離に関する。
【0095】
実施例3は、オルトキシレンの、キシレン類およびエチルベンゼンの混合物からの分離方法を例示する。
【0096】
(実施例1)
水素化分解反応は、所望でない重質の芳香族化合物(重質多環式芳香族:HPNA)を生成する。この重質の芳香族化合物は、設備の機能を妨げ、触媒の耐用期間の短くする。それらの形成は、原料の転化率および平均分子量に伴って増加する。
【0097】
一般に、未転化部分は、反応器からの出口にて再循環される必要がある。操作中に、重質芳香族化合物は、この再循環において蓄積する。上記蓄積の結果、一層さらに反応器の機能が妨げられる。しかしながら、このような問題を発生させるのは最も重い化合物のみである。このため、分離方法を用いてそれらを再循環流れから除去することが重要である。非常に大きい細孔を有するIM−12が、上記分離のために選択される吸着剤である。
【0098】
IM−12シリコゲルマネートは、本出願人の特許出願03/11333(特願2004−185946)の実施例1にしたがって製造された。それは、ビーカー内で下記を混合し、
・(6R,10S)−6,10−ジメチル−5−アゾニアスピロ[4,5]デカン水酸化物(ROH)の20%水溶液 5.78g、および、
・非晶質ゲルマニウム酸化物(Aldrich) 0.872g
その後、上記酸化物を溶解させた後、攪拌しながら、コロイドシリカ(Ludox(登録商標) HS−40(Aldrich)) 2.5gおよび水 6.626gを加える工程からなる。
【0099】
均質化した後、得られたゲルを、オートクレーブ内に配置し、攪拌しながら170℃で6日間にわたって加熱した。ろ過後、生成物を、蒸留水で洗浄し、70℃で乾燥させた。次いで、サンプルを、一定の空気が流れるマッフル炉内において550℃の最大温度で焼成させた。
【0100】
シリコゲルマネートIM−12が、焼成形態で得られ、化学式SiO:0.23GeOを有していた。
【0101】
下記表1は、Henry W Haynes Jr、Jon F ParcherおよびNorman E Heimer(Ind Eng Chem Process Des Dev,22,401−409(1983))により計算された1以上の芳香族環を含む種々の分子の速度論直径(diameter)を示す。
【表1】

【0102】
IM−12のチャネルの寸法は、それぞれ、14MRチャネルについて9.5×7.1Åであり、12MRチャネルについて8.5×5.1Åであった。したがって、立体および速度論作用に基づく吸着分離は、コロネンより大きいまたは小さい分子量を有する生成物、例えば、オバレン(8個の芳香族環)、それらのアルキル化誘導体、コロネンの二量体、より一般的には、コロネンの分子直径より大きい分子直径を有するあらゆる分子を単離することができる。
【0103】
上記分離のために、吸着剤は、並列して配置された複数の固体床内に置かれた。吸着期中の温度は、50〜250℃であり、圧力は、大気圧〜4MPaであった。
【0104】
(実施例2)
この実施例のために、IM−12がオルトキシレンを他のキシレン類から分離する能力を判定するためにドリルテスト(drilling test)(テスト1)(前端クロマトグラフィー)を実施した。
【0105】
IM−12は、実施例1に記載された方法を用いて合成された。
【0106】
次いで、吸着剤がカラム内に置かれた。各テストのために用いられた量は2.63gであった。各テストのために、カラムの温度は150℃に維持され、圧力は、相が液体であることを保証するのに十分であった(すなわち、約1MPa)。用いられた脱着剤はトルエンであった。
【0107】
カラムからの流出物は、サンプリングされ(30サンプル)、次いで、種々の時間間隔での流出物の組成を判定するためにガスクロマトグラフィーによって分析された。
【0108】
最初のテストでは、原料の組成は下記の通りであった。
【0109】
パラキシレン:45重量%
メタキシレン:45重量%
イソオクタン:10重量%(非選択的な容積を推定するための追跡剤として用いられ、分離に含まれない)
二番目のテスト(テスト2)では、原料の組成は下記の通りであった。
【0110】
パラキシレン:50重量%
オルトキシレン:50重量%
上記原料に対応して得られたドリル曲線が図2に示されている。
【0111】
次の操作方式が採用された。
【0112】
・カラムをふるい(sieve)で充填し、テスト実験台に置き;
・周囲温度で溶媒を満たし;
・トルエン流(0.2cm/分)中で150℃まで徐々に昇温し;
・原料を注入するために溶媒/原料の置換を行い(0.2cm/分);
・原料を注入し、次いで、熱力学的平衡に到達するのに十分な期間にわたって維持し、
・流出物を集めて分析する。
【0113】
次いで、ふるいの容量およびその選択性が計算され、下記表に示される。選択性αOX/PXはテスト2から計算された。テスト1により、選択性αPX/MXが計算され得る。選択性は、αOX/MXは先行する2つの選択性の成果として計算された。
【表2】

【0114】
他の吸着剤と比較して、オルトキシレン分離のためにIM−12が満足な結果を生じ得ることが理解され得る。
【0115】
最も近い性能を有するゼオライトは、鉛で交換されたCSZ−1ゼオライトであった。明らかに、鉛等の重金属の存在は、環境上の理由のため避けられるべきである。さらに、全ての場合において、IM−12は、他の吸着剤より大きい細孔サイズを有していた。これにより、分子がより良好に細孔に拡散することができ、このために、移送抵抗の問題が少なくなる。
【0116】
(実施例3)
オルトキシレンが、模擬移動床を用い、向流方式で下記重量組成を有するキシレン類およびエチルベンゼンの混合物を含む原料から精製された。装置は、24の同等の床からなり、各床は、381cmの容積を有しており、実施例1に記載された方法を用いて製造され、ビーズ状に成形されたIM−12を含んでいる。用いられた溶媒はトルエンであった。
【0117】
パラキシレン:1.0重量%
メタキシレン:63.8重量%
オルトキシレン:28.0重量%
エチルベンゼン:7.2重量%
操作温度は150℃であり、再循環ポンプ取り入れ口における圧力は1MPaに維持された。注入されたかまたは抜き出された流れの全ては、加圧制御下にあるラフィネート(raffinate)以外は、制御された流速にあった。
【0118】
脱着剤注入と抽出抜き出しとの間にある床は5個であり、抽出抜き出しと原料注入との間にある床は9個であり、原料注入とラフィネート抜き出しとの間にある床は7個であり、ラフィネート抜き出しと脱着剤注入との間にある床は3個であった。下記注入および抜き出し速度が用いられた。
【0119】
原料:25.2cm/分
溶媒(トルエン):37.8cm/分
抽出物:12.0cm/分
ラフィネート:51.0cm/分
再循環流量(帯域1での):134cm/分
バルブ置換時間(期間)は140秒であった。
【0120】
抽出物は下記組成を有していた。
【0121】
パラキシレン:0.01重量%
メタキシレン:0.24重量%
オルトキシレン:55.76重量%
エチルベンゼン:0.03重量%
トルエン:43.96重量%
ラフィネートは下記組成を有していた。
【0122】
パラキシレン:0.49重量%
メタキシレン:31.47重量%
オルトキシレン:0.72重量%
エチルベンゼン:3.55重量%
トルエン:63.77重量%
トルエンを蒸留させた後、得られた抽出物は、99.5%の純度のオルトキシレンを与え、収率は94.8%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシレン異性体(オルト−、メタ−またはパラ−キシレン)またはエチルベンゼンを、該C8芳香族炭化水素類を含む炭化水素原料から分離する吸着分離方法であって、
用いられる脱着剤がトルエンであり、該脱着剤の該原料に対する容積比が0.5〜2.5であり、温度が20〜250℃であり、圧力が大気圧〜2MPaであり、
該混合物を固体吸着剤と接触させる工程を包含し、該吸着剤は、14個および12個の酸素原子数によって規定される14および12員環(MR)の開口によって画定される2タイプの真直ぐなチャネルを含む相互連通されたチャネルの二次元ネットワークを有する結晶構造を有し、かつ、無水物ベースとしてかつ酸化物のモルで、化学式XO:mYO:pZ:qR2/nO(ここで、Rは1以上のn価カチオンを示し、Xはゲルマニウム以外の1以上の4価元素を示し、Yはゲルマニウムを示し、Zは少なくとも1つの3価元素を示す。m、p、qは、それぞれ、YO、ZおよびR2/nOのモル数を示し、mは0〜1であり、pは0〜0.5であり、qは0〜0.7である)によって表される化学組成を有する固体を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
吸着されるべき分子種の脱着が圧力を吸着のために用いられた圧力と比較して低減させることによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の吸着分離方法。
【請求項3】
吸着されるべき分子種の脱着が吸着のために用いられた温度に対して温度を上昇させることによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の吸着分離方法。
【請求項4】
模擬向流タイプにより行われることを特徴とする請求項1に記載の吸着分離方法。
【請求項5】
用いられる脱着剤がトルエンであり、該脱着剤の該原料に対する容積比が1〜2であり、温度が90〜210℃であり、圧力が大気圧〜2MPaであることを特徴とする請求項1に記載の吸着分離方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−153711(P2012−153711A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94504(P2012−94504)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【分割の表示】特願2005−315557(P2005−315557)の分割
【原出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】