説明

IP電話システム、ネットワーク管理サーバ、およびIP電話機

【課題】 ネットワーク管理サーバにより各IP電話機またはIP電話機群毎に異なる起動タイマ値(起動遅延時間)を生成することによりネットワーク管理サーバへの登録処理の負荷を分散させる。
【解決手段】 ネットワーク管理サーバ10と複数のIP電話機がネットワークを介して接続され、IP電話機は起動時にネットワーク管理サーバに登録処理を行うIP電話システムにおいて、ネットワーク管理サーバ10は、起動タイマ値算出手段125と、起動タイマ値最適化手段126とを備え、前記起動タイマ値最適化手段126の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段125がIP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信し、各IP電話機はネットワーク管理サーバ10から送信された起動タイマ値を記憶し、該起動タイマ値に基づいて、ネットワーク管理サーバ10への登録処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP電話システム、ネットワーク管理サーバ、およびIP電話機に関するものであり、特に、複数のIP電話機(インターネット電話機)が電源投入されて起動してからネットワーク管理サーバへの登録処理シーケンスを開始するまでの時間を、各IP電話機に異なる起動タイマ値(起動遅延時間)を生成して異ならせることにより、ネットワーク管理サーバへの登録処理の負荷を分散させ、ネットワーク管理サーバの過負荷や輻輳、ネットワーク負荷を分散させるようにしたIP電話システム、ネットワーク管理サーバおよびIP電話機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IP電話機は、アナログ音声をデジタル音声データに変換する変換機能を有し、音声や映像の送受信が可能である。これらのデータの送受信に関しては、呼制御サーバ、設定管理サーバ、ゲートキーパ、コールエージェント等のインターネット電話用のネットワーク管理サーバ、もしくは、パソコンがIP電話機の動作を管理している。これらのインターネット電話用のネットワーク管理サーバは、使用しているプロトコルにより呼び方が異なっているのであるが、基本的には端末であるIP電話機の登録、接続先の解決(呼制御)、帯域や接続数の管理を行うものである。具体的には、前述のネットワーク管理サーバが定期的もしくは非同期的にIP電話機へアクセスしたり、IP電話機に定期的にネットワーク管理サーバにアクセスさせたりして網アクセス制御、呼制御、端末間制御、データ送受信制御等を行う。
【0003】
一般のIP電話システムは、図5に示すように、複数のIP電話機A〜IP電話機Dと、呼制御サーバや各種設定管理を行う設定管理サーバなどのネットワーク管理サーバ、あるいは、システム管理者がウェブ設定画面を介してIP電話機A〜IP電話機Dの管理操作を行うために使用する管理者PC装置(コンピュータ装置)とがLAN等のネットワークを経由して接続され、インターネット網を介して他のネットワークに接続されたIP電話機と通話し、あるいは、ゲートウェイと公衆網を経由して加入者電話機と通話するように構成されている。
【0004】
端末がIP電話機として機能するためには初期設定が必要である。初期設定の項目としては、例えば、電話番号、ネットワーク管理サーバにログインするためのユーザーID、パスワード、着信先に表示する表示名、外線、内線の着信音や着信メロディーなどがあり、これらの初期設定値は、該当するIP電話機のMACアドレスと対応付けてシステム管理者がネットワーク管理サーバの管理データベースに登録することよって行われる。そして、IP電話機側にも同様の初期設定値が書き込まれIP電話機として動作可能となる。IP電話機への初期設定値の書き込みは、通常、ネットワーク管理サーバやIP電話機自身に用意された操作画面、キーを用いてシステム管理者や専門業者等が手動で設定する方法がとられる。最近では、IP電話機がパワーオンした時にネットワーク管理サーバにログインしてMACアドレスを送信し、ネットワーク管理サーバからMACアドレスに対応する初期設定値をIP電話機にダウンロードする方法も考慮されている。
【0005】
そして、このようなIP電話機が呼制御サーバ等のネットワーク管理サーバのもとで他のネットワークに接続されたIP電話機と通信を行うためには、ネットワーク機器としてネットワーク上で他の機器と通信するためのネットワークの設定と、呼制御サーバや設定管理サーバ等のネットワーク管理サーバへのIP電話機の登録と、IP電話機として通信するための初期設定とが必要である。ネットワークの設定は、例えば、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバなどによりネットワーク端末としての通信パラメータを設定することにより行われる。この設定によりIP電話機はネットワーク接続された呼制御サーバ等のネットワーク管理サーバと通信することが可能となり、該サーバへのIP電話機としての登録および初期設定値の設定が可能となる。
【0006】
IP電話機としての登録は、IP電話機のMACアドレスをネットワーク管理サーバに登録することで行われる。MACアドレスとは、ネットワークに接続されているネットワーク端末を特定するために使われるものであり、「イーサネット(登録商標)・アドレス」や「物理アドレス」、「ハードウェア・アドレス」などとも呼ばれている。MACアドレスは、イーサネット(登録商標)・インターフェイスごとに割り当てられている番号で、1つのネットワーク端末が複数のイーサネット(登録商標)・インターフェイスを持つ場合は、それぞれのインターフェイスごとに異なるMACアドレスが割り当てられる。このMACアドレスは「物理アドレス」であり、先のDHCPはIPアドレスをソフト的に変更されるので、一般にはMACアドレスとIPアドレスとが対になってネットワーク管理サーバに登録される。
【0007】
特定のIP電話に外部から着呼があった場合、当該IP電話機が電源オフされているような場合には、ネットワーク管理サーバは当該IP電話に接続制御することができない。このため、ネットワーク管理サーバは、各IP電話機が通信可能な状態にあるかを監視する必要があり、各IP電話機のログイン、ログオフの状態を監視する方法や、各IP電話機から周期的に登録信号を受信して登録処理を行わせる方法がとられる。一般的には、IP電話機が電源投入され起動されると、各IP電話機はネットワーク管理サーバに登録信号を送信して登録処理シーケンスを開始する。登録処理シーケンスにおいては、IP電話機側に設定された初期設定情報などの設定情報とネットワーク管理サーバ側に登録されている各種の設定情報との整合がとられる。
【0008】
このため、毎日の始業時には各IP電話機がネットワーク管理サーバに対して一斉に登録処理シーケンスを開始することになる。また、落雷などによる停電復旧後、あるいは、電源瞬断などの電源トラブルの後にも各IP電話機の電源投入が行われ、停電エリアの各IP電話機がネットワーク管理装置に対して一斉に登録処理シーケンスを開始することになる。このため、始業開始時や停電復旧時にはネットワーク管理サーバに対するIP電話機の登録処理シーケンスの実行が集中して輻輳するため、ネットワーク管理サーバの負荷が一時的に大きく、過負荷となり、ネットワーク管理サーバの処理能力によっては、登録処理シーケンスの実行に障害を来すことになる。更に、ネットワーク上の負荷も大きくなり、他の通信に影響を及ぼすという問題があった。また、通信販売事業者のコールセンターや企業内のIP電話システムなど、比較的規模の大きなIP電話システムにおいては、各IP電話機の電源が集中制御されている場合が多く、この場合にも多数のIP電話機が一斉に起動され、ネットワーク管理サーバへの登録処理シーケンスの実行が集中する状態が発生する。
【0009】
特に、企業向けのIP電話システムにおいては、システム内のIP電話機が全て同一の機種、または、部門や役割り毎に数種類の機種で統一されることが多い。また、個人向けIP電話システムにおいても、現状では、通信事業者(キャリア)が認定したIP電話機を使用(購入、レンタル、配布など)するのが一般的であり、同一キャリア内のIP電話システムでは、同一機種のIP電話機が多くなる傾向となる。同一機種のIP電話機が使用される場合、その起動時間(電源投入後ネットワーク管理サーバに登録処理シーケンスを開始するまでの時間)が全て同一になるため、一斉起動時には前述のように負荷の集中が発生する。更に、過負荷が発生する特殊なケースとしては、コンピュータウィルスの問題が考えられる。すなわち、IP電話機などのネットワーク機器にも同様のウィルス問題が存在し、懸念されている。例えば、特定の時刻に自動的に機器を再起動するというウィルスに感染したIP電話機が一斉に再起動処理を開始することにより過負荷が発生する可能性を否定することができない。
【0010】
このような問題に対処するため、一般的なネットワークシステムにおいて、ネットワーク接続される各種の電子機器であるネットワークエレメントの一斉再起動におけるネットワーク負荷を軽減する技術は、例えば、下記の特許文献1(特開2000−174751号公報)に開示されている。この特許文献1に開示されたネットワークエレメント再起動システムは、停電復旧後の一斉起動時の輻輳/過負荷を軽減することを目的とし、個々のネットワークエレメントに割り振られた識別番号(ID)を使用して再起動させるための再起動タイマ値を生成する再起動タイマ値生成部を設け、ネットワーク内で停電が発生し、その後、一斉に電力が各ネットワークエレメントに供給された場合でも、前記IDより生成した再起動タイマ値を使用して各ネットワークエレメントを順次起動するようにしたものである。
【0011】
すなわち、特許文献1に開示されたネットワークエレメント再起動システムは、ネットワークエレメントの個々に設定された固有の識別IDに基づいてそれぞれのネットワークエレメントが異なる値を持つ再起動タイマ値を生成し、この再起動タイマ値に基づいてそれぞれのネットワークエレメントが起動シーケンスを実行することによって、多数のネットワークエレメントにおける再起動シーケンスの実行が分散された時間に行われるようにしたものである。
【特許文献1】特開2000−174751号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、IP電話システムにおいては、始業開始時や停電復旧時にはネットワーク管理サーバに対するIP電話機の登録処理シーケンスの実行が集中して輻輳するため、ネットワーク管理サーバの負荷が一時的に大きく、過負荷となり、ネットワーク管理サーバの処理能力によっては、登録処理シーケンスの実行に障害を来すことになる。また、ネットワーク上の負荷も大きくなり、他の通信に影響を及ぼすという問題があった。
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたネットワークエレメント再起動システムは、各ネットワークエレメントに割り振られた固有の識別番号(ID)に基づいて、それぞれのネットワークエレメントが異なるタイマ値を生成し、このタイマ値によって各ネットワークエレメントが停電復旧後の再起動シーケンスを実行するものである。従って、再起動時の負荷を分散することができるようになるが、例えば、識別番号(ID)を乱数処理してタイマ値を生成する場合、タイマ値の最大値と最小値の差が大きくなり過ぎる場合もあり、再起動処理の効率を低下させる恐れがあった。また、停電復旧時の再起動においては、該当するエリアが一部であるにも関わらず、全てのネットワークエレメントを対象としたタイマ値算出の方法となっているため、個々のネットワークエレメントのタイマ値が必ずしも適切でないという問題点も存在していた。
【0014】
本願の発明者は、前記の問題点を解決すべく種々検討を重ねた結果、ネットワーク管理サーバがネットワークに接続される全てのIP電話機の設定情報(MACアドレス、IPアドレス、電話番号、設置場所その他設定情報)、設置場所ごとのIP電話機数、ネットワーク上のIP電話機総数を管理している点に着目し、ネットワーク管理サーバが各IP電話機の電源投入から登録処理シーケンス実行までの時間(本明細書においては、この時間を「起動タイマ値(起動遅延時間)」ということとする)を、全てのまたは一定の設置場所に接続されるIP電話機毎に異なる値になるように設定することにより、前記の問題点を解消できることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明は、前記の問題点を解決することを課題とし、ネットワーク管理サーバにより各IP電話機またはIP電話機群毎に異なる起動タイマ値(起動遅延時間)を生成することにより、ネットワーク管理サーバへの登録処理の負荷を分散させ、ネットワーク管理サーバの過負荷や輻輳、ネットワーク負荷を分散させ、最適化するようにしたIP電話システム、ネットワーク管理サーバおよびIP電話機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
ネットワーク管理サーバと複数のIP電話機がネットワークを介して接続され、各IP電話機が電源投入されて起動した際に、各IP電話機またはIP電話機群毎に当該IP電話機に設定された起動タイマ値に基づいて前記各IP電話機が前記ネットワーク管理サーバに登録処理を行うIP電話システムであって、
前記ネットワーク管理サーバは、起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信し、
前記各IP電話機はネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を記憶し、該起動タイマ値に基づいて、ネットワーク管理サーバへの登録処理を実行することを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、特定の時点において前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする。
【0019】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、設置場所毎のIP電話機の数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする。
【0020】
また、本願の請求項5にかかる発明は、
ネットワーク管理サーバと複数のIP電話機がネットワークを介して接続され、各IP電話機が電源投入されて起動した際に、各IP電話機またはIP電話機群毎に当該IP電話機に設定された起動タイマ値に基づいて前記各IP電話機が前記ネットワーク管理サーバに登録処理を行うIP電話システムを構成するネットワーク管理サーバであって、
前記ネットワーク管理サーバは、起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信することを特徴とする。
【0021】
また、本願の請求項6にかかる発明は、請求項5にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする。
【0022】
また、本願の請求項7にかかる発明は、請求項5にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、特定の時点において前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする。
【0023】
また、本願の請求項8にかかる発明は、請求項5にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、設置場所毎のIP電話機の数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする。
【0024】
また、本願の請求項9にかかる発明は、
起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信するネットワーク管理サーバと複数のIP電話機がネットワークを介して接続され、各IP電話機が電源投入されて起動した際に、各IP電話機またはIP電話機群毎に当該IP電話機に設定された起動タイマ値に基づいて前記各IP電話機が前記ネットワーク管理サーバに登録処理を行うIP電話システムを構成するIP電話機であって、
前記IP電話機はネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を記憶し、該起動タイマ値に基づいて、ネットワーク管理サーバへの登録処理を実行することを特徴とする。
【0025】
また、本願の請求項10にかかる発明は、請求項9にかかる発明において、
前記IP電話機は、ネットワーク管理サーバへの初回の登録処理、または、前記ネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を喪失した場合、当該IP電話機に固有の値を用いて、他のIP電話機と異なる起動タイマ値を生成して記憶し、以後のネットワーク管理サーバへの登録処理を、当該記憶した起動タイマ値に基づいて実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1にかかる発明においては、ネットワーク管理サーバは、起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信し、各IP電話機はネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を記憶し、該起動タイマ値に基づいて、ネットワーク管理サーバへの登録処理を実行する。
【0027】
従って、各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値がそれぞれ異なる値となり、始業時や停電復旧後のネットワーク管理サーバへの登録処理シーケンスの開始時間を分散させることができ、ネットワーク管理サーバの負荷を分散することができるようになる。
【0028】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出する。
【0029】
従って、各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値がネットワーク管理サーバの処理能力に応じて最適化されたそれぞれ異なる値となり、始業時や停電復旧後のネットワーク管理サーバへの登録処理シーケンスの開始時間を分散させることができ、ネットワーク管理サーバの負荷を分散することができるようになる。
【0030】
請求項3にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、特定の時点において前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出する。
【0031】
従って、各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値が、ある特定の時点においてネットワーク管理サーバに接続されているIP電話機の数に応じて最適化されたそれぞれ異なる値となり、始業時や停電復旧後のネットワーク管理サーバへの登録処理シーケンスの開始時間を分散させることができ、ネットワーク管理サーバの負荷を分散することができるようになる。
【0032】
請求項4にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、設置場所毎のIP電話機の数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出する。
【0033】
従って、各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値が、設置場所毎にネットワーク管理サーバに接続されているIP電話機の数に応じて最適化されたそれぞれ異なる値となり、始業時や停電復旧後のネットワーク管理サーバへの登録処理シーケンスの開始時間を分散させることができ、ネットワーク管理サーバの負荷を分散することができるようになる。
【0034】
また、IP電話機が設置される場所が異なれば、同じ起動タイマ値を設定することができ、起動タイマ値の分散を小さくすることができるようになり、IP電話機に無駄な遅延時間を設定せずに済むようになる。
【0035】
請求項5にかかる発明においては、
ネットワーク管理サーバは、起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信する。従って、請求項1の発明にかかるネットワーク管理サーバを提供することができるようになる。
【0036】
請求項6にかかる発明においては、請求項5にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出する。従って、請求項2の発明にかかるネットワーク管理サーバを提供することができるようになる。
【0037】
請求項7にかかる発明においては、請求項5にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、特定の時点において前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出する。従って、請求項3にかかる発明のネットワーク管理サーバを提供することができるようになる。
【0038】
請求項8にかかる発明においては、請求項5にかかる発明において、
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、設置場所毎のIP電話機の数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出する。従って、請求項4にかかる発明のネットワーク管理サーバを提供することができるようになる。
【0039】
請求項9にかかる発明においては、
起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信するネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機がネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を記憶し、該起動タイマ値に基づいて、ネットワーク管理サーバへの登録処理を実行する。
【0040】
従って、各IP電話機またはIP電話機群の起動遅延時間がそれぞれ異なる値となり、始業時や停電復旧後のネットワーク管理サーバへの登録処理シーケンスの開始時間を分散させることができ、ネットワーク管理サーバの負荷を分散することができるようになる。
【0041】
請求項10にかかる発明においては、請求項9にかかる発明において、
前記IP電話機は、ネットワーク管理サーバへの初回の登録処理、または、前記ネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を喪失した場合、当該IP電話機に固有の値を用いて、他のIP電話機と異なる起動タイマ値を生成して記憶し、以後のネットワーク管理サーバへの登録処理を当該記憶した起動タイマ値に基づいて実行する。
【0042】
従って、初回の登録処理、または、前記ネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を喪失した場合にも、各IP電話機またはIP電話機群の起動遅延時間がそれぞれ異なる値となり、始業時や停電復旧後のネットワーク管理サーバへの登録処理シーケンスの開始時間を分散させることができ、ネットワーク管理サーバの負荷を分散することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明にかかるIP電話システムにおけるネットワーク管理サーバの構成を示すブロック図、図2は、本発明にかかるIP電話システムにおけるIP電話機の構成を示すブロック図、図3は、ネットワーク管理サーバにおけるIP電話機の管理データベースの構成を示す模式図である。図4は、IP電話機とネットワーク管理サーバとの間の登録処理シーケンスに関するコマンドシーケンスを示す図である。
【実施例】
【0044】
本発明の実施例にかかるIP電話システムは、図1に示すネットワーク管理サーバ10と、図2に示すIP電話機900が複数、ネットワークを介して接続される構成となっている。ネットワーク管理サーバ10は、図1に示すように、制御部12と、入力部13と、表示部14と、LANインターフェイス部11を備えている。ネットワーク管理サーバ10はまた、通信処理手段22を備え、ハードディスク装置等の大容量の記憶装置20に設けられた管理データベース21にデータを書込み、あるいは管理データベース21からデータを読出す。管理データベース21には、ネットワークを介してネットワーク管理サーバ10に接続される複数のIP電話機のネットワーク設定や通信のための初期設定の値が記憶されている。また、後述するように、ネットワークを介してネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数、各IP電話機の設置場所(エリア)、設置場所(エリア)毎のIP電話機の台数などが記憶される。
【0045】
制御部12は、状態監視手段121、時間監視手段122、設定値処理手段124、起動タイマ値算出手段125、起動タイマ値最適化手段126を備えている。状態監視手段121は、IP電話機の状態を監視し、状態の変化に応じた機能を実行させる。例えば、IP電話機の電源のオン・オフを監視し、また、呼接続の対象となったIP電話機の通話の開始・切断、異常状態を監視する等の処理を行う。時間監視手段122は、時間を監視し、設定されたスケジュールでIP電話機やネットワーク管理サーバ10の各部の動作を監視する。また、起動タイマ値算出手段125と起動タイマ値最適化手段126は、後述する方法により、ネットワーク管理サーバ10におけるIP電話機の登録処理シーケンスの実行負荷を分散するための最適化制御を行い、起動タイマ値算出手段125において、各IP電話機の起動タイマ値を算出させる。
【0046】
設定値処理手段124は、ネットワーク管理者からのコマンドや利用者からのメッセージにより管理データベース21やIP電話機の設定値を設定したり、編集したりするものであり、登録手段1241、セット手段1242、編集手段1243を備えている。登録手段1241は、ネットワーク管理者が管理データベース21にネットワーク設定の設定値や通話のための初期設定の設定値を登録するものであり、セット手段1242は、登録手段1241によって登録された設定値をIP電話機に送信して保存させるものである。また、編集手段1243は、IP電話機から送られるメッセージを解析し、編集するためのものである。
【0047】
一方、IP電話機900は、図2に示すように、音声出力のためのスピーカ930、音声入力のためのマイク940、音声コーデック950を有している。音声コーデック950は、音声の符号化と複合化、すなわち音声のアナログとディジタルの変換を行っている。この音声コーデック950は、その他に受話音量やマイクの感度変更の機能を備えている。IP電話機900は、また、ディスプレイパネルによる表示部960、入力部970、制御回路910を備えている。制御回路910はマイクロプロセッサを含む論理演算回路で構成され、各種プログラムの格納されたROM981、制御回路910が動作する際に一時記憶として使用されるRAM982を用いて各部の動作を制御する。表示部960および入力部970は、IP電話機900の状態表示や操作入力に用いられる。
【0048】
また、IP電話機900は、初期設定値などの設定値をMACアドレスと対応付けて記憶するための記憶手段であるEEPROM983を備えている。EEPROM983には、ネットワーク管理サーバ10によってIP電話機900毎に算出された起動タイマ値(起動時間)が設定値の1つとして記憶される。起動タイマ値は、IP電話機900の電源が投入され起動してから、ネットワーク管理サーバに登録するための登録処理シーケンスを実行するまでの時間である。従って、IP電話機900は、電源が投入されて起動すると、起動タイマ値に設定された時間をおいて、ネットワーク管理サーバ10への登録処理シーケンスを実行する。登録処理のシーケンスについては、後に詳細に説明する。
【0049】
図3は、ネットワーク管理サーバ10におけるIP電話機の管理データベース21の構成を示す模式図である。図3に示すように、管理データベース21は、各IP電話機900の登録初期値等を蓄積する登録初期値フィールド801と、IP電話機900の設置場所毎の接続台数を蓄積する設置場所/接続台数フィールド802とからなる。登録初期値フィールド801には、各IP電話機900毎に、MACアドレス、IPアドレス、電話番号、設置場所などの初期設定値、通信設定値、その他の設定値が登録されている。図3においては、本発明に関連する一部の情報のみを例示している。設置場所/接続台数フィールド802には、設置場所A〜Z毎に各設置場所において接続されるIP電話機の台数が蓄積されている。ここでいう設置場所とは、例えば、都道府県等のエリアをいい、企業内でいえば、各都道府県内の支店や工場などであり、停電復旧などの再登録処理において、設置場所を単位として起動タイマ値を生成して登録処理シーケンスを実行するIP電話機の分散の最適化を図ることができる。この最適化の方法については後に詳細に説明する。
【0050】
次に、ネットワーク管理サーバ10における各IP電話機900の起動タイマ値を算出する手順について説明する。先に説明したように、ネットワーク管理サーバ10の管理データベース21に全てのIP電話機900の初期設定値や通信設定値、設置場所などの登録初期値、および、設置場所毎のIP電話機900の接続台数、総接続台数などの情報が蓄積、管理されている。従って、起動タイマ値算出手段125は、起動タイマ値最適化手段126による最適化方法に従って管理データベース21に蓄積された個々のIP電話機900の登録初期値、設置場所毎の接続台数、接続台数の総数などの情報に基づいて、それぞれ異なる値の起動タイマ値を算出することができる。
【0051】
すなわち、ネットワーク管理サーバ10は、個々のIP電話機900の起動タイマ値を算出するにあたって、管理データベース21に全てのIP電話機900の総数や設置位置などの情報を把握しているため、その情報から起動タイマ値の分散の最適化を図りつつ個々のIP電話機の起動タイマ値を算出することが可能となる。ところで、ネットワークやネットワーク管理サーバ10の過負荷や輻輳を避けるためには、可能な限り各IP電話機900の登録処理シーケンスの実行を分散させる方が好ましい。しかしながら、分散が余りにも大きくなりすぎると、起動タイマ値(起動遅延時間/電話機が使用可能になるまでの時間)が極端に長くなるIP電話機900が発生し、使用者の利便性を損ねる結果を招いてしまう。
【0052】
従って、登録処理シーケンスの集中に伴う過負荷や輻輳が発生しない範囲で、なるべく各IP電話機の起動タイマ値(起動遅延時間)の分散を小さくし、最適化することが好ましい。本実施例においては、ネットワーク管理サーバ10が全てのIP電話機900の情報を把握しているため、起動タイマ値最適化手段126を設け、この起動タイマ値最適化手段126の制御のもとで起動タイマ値算出手段125が個々のIP電話機900の起動タイマ値を算出するように構成している。各ネットワークエレメントが固有の識別番号に基づいてそれぞれ異なる起動タイマ値を算出する前記特許文献1の算出方法ではこのような最適化を図ることはできない。
【0053】
なお、ネットワーク管理サーバ10における起動タイマ値の算出式は、IP電話システム毎に異なり、一意に定めることはできないが、本実施例においては、以下の考え方を基本に最適化の具体的方法を定めている。(1)ネットワーク管理サーバ10の処理能力を超えないようにアクセス(登録処理シーケンスの実行)を分散させる。(2)起動タイマ値の分散(各IP電話機の登録処理シーケンス実行までの起動時間の差)を最小にする。というものである。
【0054】
以下に、ネットワーク管理サーバ10が各IP電話機900の起動タイマ値を最適化するための具体的な手段についていくつかの実施態様を説明する。
【0055】
「ネットワーク管理サーバ10の能力から起動遅延時間を最適化」
ネットワーク管理サーバ10が非常に高性能な処理能力を有していれば、IP電話機900からの登録処理が極端に集中してもネットワーク管理サーバ10がダウンすることはない。従って、各IP電話機900の起動タイマ値(起動遅延時間)の分散を小さくすることができる。逆に、ネットワーク管理サーバ10の処理能力が非常に低い場合は、起動タイマ値の分散を大きくし、ネットワーク管理サーバ10への登録処理の集中が発生しないようにする必要がある。このように、ネットワーク管理サーバ10の自己の処理能力(例えば1秒当たり何台分のIP電話機900の登録処理を処理することが可能かという能力)から起動タイマ値の分散を最適化することができる。この場合、起動タイマ値最適化手段126は、1秒当たりの処理台数と管理データベース21に蓄積されたIP電話機900の総数から1台あたりの遅延時間を設定し、起動タイマ値算出手段125に送り、起動タイマ値算出手段125は、この遅延時間に基づいて個々のIP電話機900の起動タイマ値を算出していく。
【0056】
「ネットワーク管理サーバ10に接続されるIP電話機900の総数から起動遅延時間を最適化」
例えば、極端な例であるが、ネットワーク管理サーバ10の配下に100万台のIP電話機900が存在し、それが1台のネットワーク管理サーバ10に接続される可能性があったとしても、停電等があった時点で実際にサーバに接続されているのが1台のIP電話機900のみであれば、登録処理シーケンスの実行時間(起動時間)を散らす必要は全くない。ネットワーク管理サーバ10は、配下のIP電話機の総数を常に把握しているため、その情報を用いて最適化することができる。これに対し、前記特許文献1のように、単純に各ネットワークエレメントに割り振られた固有の識別番号(ID)で再起動タイマ値を生成する方法では、起動遅延時間が必要以上に大きくなり過ぎる危険性がある。
【0057】
従って、本発明においては、例えば、起動タイマ値最適化手段126は、1秒当たりの処理台数と、ある特定の時点においてネットワーク管理サーバ10に実際に接続されたIP電話機900の総数とから1台あたりの遅延時間を設定し、起動タイマ値算出手段125に送り、起動タイマ値算出手段125は、この遅延時間に基づいて個々のIP電話機900の起動タイマ値を算出していく。
【0058】
「IP電話機900の位置情報によって起動遅延時間を最適化」
IP電話機900の位置情報(設置場所の情報)を利用して、離れた位置にあるIP電話機が一斉に再起動する確率は低いという推定条件下で、起動タイマ値(起動遅延時間)の分散を小さくすることが可能である。例えば、全国の支店に設置されたIP電話機900を本店のネットワーク管理サーバ10で集中管理するような企業内IP電話システムにおいて、沖縄支店と北海道支店のIP電話機群が停電などの電源トラブルによって、一斉に再起動する確率は非常に低いと言える。従って、本発明においては、例えば、起動タイマ値最適化手段126は、ネットワーク管理サーバ100の1秒当たりの処理台数と管理データベース21に蓄積された設置場所(エリア)毎のIP電話機900の台数とから1台あたりの遅延時間を設定し、起動タイマ値算出手段125に送り、起動タイマ値算出手段125は、この遅延時間に基づいて個々のIP電話機900の起動タイマ値を算出していく。
【0059】
例えば、ネットワーク管理サーバ10が算出する設置場所毎のIP電話機900の起動タイマ値(起動遅延時間)は、次のようなものである。
北海道 IP電話機1は0.002秒、IP電話機2は0.003秒・・・
関東 IP電話機1は0.002秒、IP電話機2は0.003秒・・・
・・・・・・
沖縄 IP電話機1は0.002秒、IP電話機2は0.003秒・・・
すなわち、北海道と関東や沖縄が同時に停電になる可能性は、きわめて少ないとの考えで、設置エリアが異なるIP電話機900には同じ起動タイマ値を設定し、起動タイマ値の分散の値を小さくすることにより、不必要に登録処理シーケンスの実行までの時間を大きくせずに済むように最適化することができる。
【0060】
なお、上記の例では、設置場所毎に個々のIP電話機全ての起動タイマ値を異なる値にしているが、設置場所毎に、IP電話機の機種、すなわち、IP電話機群によって起動タイマ値を異ならせてもよい。例えば、次のように起動タイマ値を設定する。
北海道 IP電話機機種Aは0.002秒、IP電話機機種Bは0.003秒・・・
関東 IP電話機機種Aは0.002秒、IP電話機機種Bは0.003秒・・・
・・・・・・
沖縄 IP電話機機種Aは0.002秒、IP電話機機種Bは0.003秒・・・
この考え方は前述した最適化の方法の何れにおいても適用可能である。
【0061】
以上のようにしてネットワーク管理サーバ10が算出したIP電話機900の起動タイマ値は、管理データベース21に蓄積され、各IP電話機900の登録処理シーケンスによって、ネットワーク管理サーバ10に各IP電話機900が登録する際に、各IP電話機900に送られ、IP電話機900の初期設定値などの設定値をMACアドレスと対応付けて記憶するための記憶手段であるEEPROM983(図2参照)に記憶される。
【0062】
この登録処理シーケンスについて、図4のシーケンス図を参照して説明する。図4は、本発明を実際にSIP電話システムに適用した場合の例を示すシーケンス図であり、IP電話機900とネットワーク管理サーバ10との間の登録処理シーケンスに関するコマンドシーケンスを示す図である。図4において、
図中イの「REGISTER」は、IP電話機が接続されSIPサーバへ自電話機を登録するコマンドである。このコマンドを受けてSIPサーバはIP電話機を登録する。
【0063】
図中ロの「200OK」は、SIPサーバから登録されたIP電話機への正常受付完了を通知するコマンドである。
【0064】
IP電話機900は、起動時(電源投入時、停電復旧後の電源再投入時)に、先ず、最初に、この登録処理シーケンスを実行する。なお、このシーケンス図では、認証処理等が省略されているため、実際のシーケンスではもう少し処理が複雑になる場合もある。図4に示すように、先ず、IP電話機900(SIP電話機)からネットワーク管理サーバ10へ登録要求メッセージを送信する。図4イの「REGISTER」がこれに相当する。この処理によって、IP電話機900の電話番号とIPアドレスが関連付けられてネットワーク管理サーバ10の管理データベース21に登録されるとともに、該当電話番号が有効になる。
【0065】
次に、ネットワーク管理サーバ10は、該当IP電話機900の起動タイマ値を算出し、ネットワーク管理サーバ10は、上記の登録要求メッセージから該当IP電話機900を特定し、自己の有する管理データベースから設置場所情報などの必要な情報を取得する。また、その時点における配下のIP電話機900の総数や設置場所情報を同様に取得する。そして、ネットワーク管理サーバ10はこれらの情報や自己の処理能力から、前述した起動タイマ値最適化手段126、起動タイマ値算出手段が該当IP電話機900に与えるべき起動タイマ値を算出する。
【0066】
次に、ネットワーク管理サーバ10はIP電話機900へ起動タイマ値の通知をする。すなわち、ネットワーク管理サーバ10は、上記で算出した起動タイマ値をレスポンスコードに付加して該当IP電話機900に通知する。図4ロの「200OK」がこれに相当する。
【0067】
次に、IP電話機900はネットワーク管理サーバ10から通知された起動タイマ値を不揮発性メモリEEPROM983(図2参照)に格納する。すなわち、上記のようにしてネットワーク管理サーバ10で算出された起動タイマ値を反映して電源断を伴う再起動時の登録処理が行えるように、不揮発性メモリEEPROM983に、その値を格納し、次回起動時から、実際にその起動タイマ値を用いてネットワーク管理サーバ10への登録処理を行う。
【0068】
以上の手順により、ネットワーク管理サーバ10側で算出したIP電話機900の起動遅延時間が、該当IP電話機900の登録処理に反映される。
【0069】
なお、工場出荷後の初回起動時や、ユーザ操作等により不揮発性メモリEEPROM983の内容が初期化されて起動タイマ値を喪失したような場合には、上記手順でネットワーク管理サーバ10から送られる起動タイマ値が未だ格納されていないため、この場合に限っては、IP電話機900側で以下のようにして起動タイマ値を自己算出する。
【0070】
すなわち、各IP電話機900が異なった起動タイマ値を算出するように、MACアドレスやIPアドレス、電話番号などの各IP電話機に固有の値をシードとして乱数を発生させる方法を適用することができる。これにより、確実に各IP電話機900毎に異なった起動タイマ値を算出することが可能となる。更に、この場合、当該IP電話機900の設置場所(エリア)の情報が保持されていれば、その情報に基づいて、設置場所毎にIP電話機900に固有の値から起動タイマ値を算出することにより、起動タイマ値の分散の幅を小さくすることができる。
【0071】
以上の処理によって、停電復旧時や落雷による瞬停時など、多数のIP電話機900が一斉に再起動するような事態が発生しても、各IP電話機900が起動してから実際にネットワーク管理サーバ10に対して登録処理シーケンスを実行するタイミングが分散され、極端な登録処理の集中に伴うネットワークおよびネットワーク管理サーバ10が過負荷になるような事態の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明にかかるIP電話システムにおけるネットワーク管理サーバの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明にかかるIP電話システムにおけるIP電話機の構成を示すブロック図である。
【図3】ネットワーク管理サーバにおけるIP電話機の管理データベースの構成を示す模式図である。
【図4】IP電話機とネットワーク管理サーバとの間の登録処理シーケンスに関するコマンドシーケンスを示す図である。
【図5】一般的なIP電話システムの構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0073】
10・・・・ネットワーク管理サーバ
11・・・・LANインターフェイス部
12・・・・制御部
13・・・・入力部
14・・・・表示部
20・・・・記憶装置
21・・・・管理データベース
22・・・・通信処理手段
121・・・状態監視手段
122・・・時間監視手段
124・・・設定値処理手段
125・・・起動タイマ値算出手段
126・・・起動タイマ値最適化手段
1241・・登録手段
1242・・セット手段
1243・・編集手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク管理サーバと複数のIP電話機がネットワークを介して接続され、各IP電話機が電源投入されて起動した際に、各IP電話機またはIP電話機群毎に当該IP電話機に設定された起動タイマ値に基づいて前記各IP電話機が前記ネットワーク管理サーバに登録処理を行うIP電話システムであって、
前記ネットワーク管理サーバは、起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信し、
前記各IP電話機はネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を記憶し、該起動タイマ値に基づいて、ネットワーク管理サーバへの登録処理を実行することを特徴とするIP電話システム。
【請求項2】
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする請求項1に記載のIP電話システム。
【請求項3】
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、特定の時点において前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする請求項1に記載のIP電話システム。
【請求項4】
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、設置場所毎のIP電話機の数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする請求項1に記載のIP電話システム。
【請求項5】
ネットワーク管理サーバと複数のIP電話機がネットワークを介して接続され、各IP電話機が電源投入されて起動した際に、各IP電話機またはIP電話機群毎に当該IP電話機に設定された起動タイマ値に基づいて前記各IP電話機が前記ネットワーク管理サーバに登録処理を行うIP電話システムを構成するネットワーク管理サーバであって、
前記ネットワーク管理サーバは、起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信することを特徴とするネットワーク管理サーバ。
【請求項6】
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする請求項5に記載のネットワーク管理サーバ。
【請求項7】
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、特定の時点において前記ネットワーク管理サーバに接続されるIP電話機の総数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする請求項5に記載のネットワーク管理サーバ。
【請求項8】
前記起動タイマ値最適化手段は、ネットワーク管理サーバのIP電話機の登録処理能力と、設置場所毎のIP電話機の数から単位時間におけるIP電話機1台あたりの遅延時間を設定し、前記起動タイマ値算出手段が前記遅延時間に基づいて各IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出することを特徴とする請求項5に記載のネットワーク管理サーバ。
【請求項9】
起動タイマ値算出手段と、起動タイマ値最適化手段とを備え、前記起動タイマ値最適化手段の制御に基づいて、前記起動タイマ値算出手段が前記IP電話機またはIP電話機群の起動タイマ値を算出し、各IP電話機に当該算出した起動タイマ値を送信するネットワーク管理サーバと複数のIP電話機がネットワークを介して接続され、各IP電話機が電源投入されて起動した際に、各IP電話機またはIP電話機群毎に当該IP電話機に設定された起動タイマ値に基づいて前記各IP電話機が前記ネットワーク管理サーバに登録処理を行うIP電話システムを構成するIP電話機であって、
前記IP電話機はネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を記憶し、該起動タイマ値に基づいて、ネットワーク管理サーバへの登録処理を実行することを特徴とするIP電話システム。
【請求項10】
前記IP電話機は、ネットワーク管理サーバへの初回の登録処理、または、前記ネットワーク管理サーバから送信された起動タイマ値を喪失した場合、当該IP電話機に固有の値を用いて、他のIP電話機と異なる起動タイマ値を生成して記憶し、以後のネットワーク管理サーバへの登録処理を、当該記憶した起動タイマ値に基づいて実行することを特徴とする請求項9に記載のIP電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−42176(P2006−42176A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222024(P2004−222024)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】