説明

IP電話交換システム、IP電話交換システムの駆動方法及び駆動プログラム

【課題】IP電話機において、パケットの転送が遅延することを抑え、音質を向上させることを目的とする。
【解決手段】RTPパケット(Real-time Transport Protocol)の相互交換により、IP電話機で通信を行うIP電話交換システムにおいて、第1のIP電話機300を有する交換機システム100と、交換機システム100に接続される第2のIP電話機600とを備え、交換機システム100は、RTPパケットのコーデックとペイロードサイズとが同じであった場合には、RTPパケットを音声データに変換せずに、SSRC番号、タイムスタンプ及びシーケンス番号を付け替えて、RTPパケットを転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP電話交換システム、IP電話交換システムの駆動方法及び駆動プログラムに関し、特に、RTPパケットを用いて通話を行うIP電話交換システム、IP電話交換システムの駆動方法及び駆動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交換機システムにIP(Internet Protocol)内線とIP外線との両方を収容し、すべてIPで構築できるシステムがある。
【0003】
IP外線の場合、キャリアがサービスするサーバに対してインターネットを通して通信する必要があり、交換機システムとキャリアのサーバとの間にNATルータを使用しなければならない。
【0004】
IP内線が、直接IP外線とRTP(Real-time Transport Protocol)セッションを張る方法ではIP内線で使用するポートをNATルータに設定する必要がある。
【0005】
交換機システムには多くのIP内線を収容することが可能である。
【0006】
そのため、IP外線と直接RTPセッションを張らすためにはルータに数多くのNAT設定が必要になる。
【0007】
また、個々のIP電話機に対してもRTPのポート番号をユニークな値に設定しなおす必要がある。
【0008】
しかし、交換機システムに音声処理をするユニットを設けることにより、IP内線からのIP外線の通話をユニット経由にすることにより、ルータに設定する項目はユニットの設定に関するもののみになり、個々のIP電話機に関しては設定の変更がいらなくなる。
【0009】
ユニットを経由させる処理の場合、IP内線から送られてきたRTPパケットをいったん音声データに変換し、再度その音声データをRTPパケットに変換する処理がおこなわれている。
【0010】
従来技術として、下記にあげる文献に記載されるものがある。
【0011】
特許文献1には、音声パケットの交換を行うシステムにおいて、RTPパケット同士の相互交換で通信できる場合は、音声データへの変換を行わずに、直接RTPパケットを送受する経路を確立して通信を行う技術が開示されている。
【0012】
特許文献2には、同一メディア変換装置内接続と認識した場合、折り返し接続を行うことにより、メディア変換せずに端末間の接続を行う技術が開示されている。
【0013】
特許文献3には、IP電話交換システムにおいて、プライベートアドレス上の装置をグローバルアドレス上の装置から制御する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−069652号公報
【特許文献2】特開2001−326724号公報
【特許文献3】特開2004−096343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、IP電話機からIP外線に発信する場合、交換機システムでIP電話機からのRTPパケットをいったん音声データに変換し、再度音声データをRTPパケットに変換してIP回線に送信するという動作が必要となる。そのため、データ変換が2回行われる。
【0015】
その結果、RTPパケットの転送に遅延が発生し、エコーなどの原因になり音質低下の原因になっていた。
【0016】
本発明は、IP電話機において、パケットの転送が遅延することを抑え、音質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、RTPパケット(Real-time Transport Protocol)の相互交換により、IP電話機で通信を行うIP電話交換システムにおいて、第1のIP電話機を有する交換機システムと、該交換機システムに接続される第2のIP電話機とを備え、前記交換機システムは、前記RTPパケットのコーデックとペイロードサイズとが同じであった場合には、前記RTPパケットを音声データに変換せずに、SSRC番号、タイムスタンプ及びシーケンス番号を付け替えて、前記RTPパケットを転送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、RTPパケットの音声データへの変換及び音声データからRTPパケットへの変換処理が省かれるので、変換処理による音声データの劣化が防がれるばかりでなく、通信相手までにRTPパケットが到達する時間が短縮されるので、エコー等が抑えられるので、その結果、通話品質が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。
【0020】
[構成の説明]
図1は、本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態では、LAN200及びインターネット400を介して、交換機システム100と、IP電話機300と、サーバ500と、IP電話機600とが接続されている。
【0022】
交換機システム100には、呼制御部101と、RTPパケット処理部102とが設けられており、交換機システム100内部では、データ線103を介して接続されている。また、呼制御部101と、RTPパケット処理部102とは、LAN200にも接続されている。
【0023】
交換機システム100は、インターネット400を介してIP外線を収容することができる。
【0024】
呼制御部101は、IPを用いて呼制御メッセージをLAN200を介してIP電話機300とやりとりし通話制御を行う。また、呼制御部101は、データ線103を介して、RTPパケット処理部102に指示を出したり、トーンや呼び出し音1000などをデータ線103を介して送信したりする。
【0025】
RTPパケット処理部102は、データ線103を介して入ってきた音声データをRTPパケットに変換し、LAN200を介してIP電話機300などに送信する。また、RTPパケット処理部102は、LAN200から入ってきたRTPパケットを音声データに変換し、データ線103を介して送信する。
【0026】
IP電話機300は、交換機システム100に収容される電話機であり、交換機システム100を介してIP電話機600などと通話することができる。
【0027】
サーバ500は、インターネット400に接続されており、IPアドレスと電話番号を管理する。また、サーバ500にはIP電話機600の電話番号とIPアドレスが登録されており、交換機システム100に割り当てられる外線番号とIPアドレスも登録されている。
【0028】
IP電話機600は、サーバ500に登録されており、IPで通話することができる。
【0029】
[動作の説明]
図2、3及び4は、本実施の形態の動作を示すフローチャートであり、図5、6及び7は、ネットワーク上でのやりとりの内容を示すブロック図である。
【0030】
本実施の形態では、IP電話機300でIP電話機600と通話する場合について説明する。
【0031】
図2及び図5は、IP電話機600における受け付けが完了するまでの動作を示すものである。
【0032】
図2に示すように、IP電話機300において外線ボタンが押されると、外線ボタンを押したことによる情報は呼制御部101に送信される(ステップS1)。
【0033】
交換機システム100は、外線ボタンが押されたことを示す情報を受信すると、IP電話機300との間で通話に使用する音声コーデックとペイロードサイズを決定させるためにネゴシエーションを確立するための動作を行う(ステップS2)。
【0034】
ネゴシエーションが完了し、使用するコーデックとペイロードサイズが決定すると、呼制御部101はIP電話機300とRTPパケット処理部102に、その間にRTPパケットのセッションを張る指示を出す(ステップS3)。
【0035】
RTPパケットのセッションを張る指示を受信したRTPパケット処理部102は、チャネル1を使用して、データ線103から入ってくる音声データをRTPパケット700にしIP電話機300に送信する。また、IP電話機300から送られるRTPパケット701を音声データに変換しデータ線103に出力する(ステップS4)。
【0036】
呼制御部101はIP電話機300に外線補足したことを知らせるために、ダイヤルトーンをデータ線103を介してRTPパケット処理部102に送信する(ステップS5)。
【0037】
RTPパケット処理部102は送信されたダイヤルトーンをIP電話機300に送信する(ステップS6)。
【0038】
IP電話機300のユーザは、ダイヤルトーンを聴取することにより、外線補足したことを確認する(ステップS7)。
【0039】
IP電話機300のユーザは、ダイヤルトーンを聴取後、IP電話機600の番号をダイヤルする(ステップS8)。
【0040】
IP電話機300から送られたダイヤル情報[0000]を受信した呼制御部101はインターネット400を通して、サーバ500にダイヤル[0000]への発信要求を出す(ステップS9)。
【0041】
サーバ500は、交換機システム100からの発信要求を受け付けると、IP電話機600に着信を入れる(ステップS10)。
【0042】
IP電話機600は着信を受け付けると、受付完了メッセージを交換機システム100に送信する(ステップS11)。
【0043】
受付完了メッセージを受信した呼制御部101は、呼び出し音1000をRTPパケット処理部102を介してIP電話機300に送信する(ステップS12)。
【0044】
図3及び図6は、通話が確立するまでの動作を示すものである。
【0045】
IP電話機600が着信に応答し、交換機システム100とIP電話機600との間で通話に使用するコーデックとペイロードサイズを決定するためのネゴシエーションを確立するための動作を行う(ステップS51)。
【0046】
ネゴシエーションを完了し、使用するコーデックとペイロードサイズを決定すると、呼制御部101は呼び出し音1000を停止し、RTPパケット処理部102にIP電話機600に、例えば、チャネル2を使用してRTPパケットを送信するように指示を出す(ステップS52)。
【0047】
RTPパケット処理部102は、チャネル2を使用して、データ線103から入ってくる音声データをRTPパケットに変換しIP電話機600に送信する(ステップS53)。
【0048】
また、IP電話機600から送信されるRTPパケットを音声データに変換しデータ線103に出力する(ステップS54)。
【0049】
この時点で、IP電話機300とIP電話機600とは、RTPパケット処理部102のチャネル1及び2を使用してデータ線103を経由することで通話することができている。
【0050】
図4及び図7は、通話が確立してからの動作を示すものである。
【0051】
通話が確立した後、呼制御部101はIP電話機300とRTPパケット処理部102との間で使用されている音声コーデックとペイロードサイズがIP電話機600とRTPパケット処理部102との間で使用されている音声コーデックとペイロードサイズが一致するか確認する(ステップS101)。
【0052】
音声コーデックとペイロードサイズとが一致した場合、呼制御部101はRTPパケット処理部102にRTPパケットの直接転送指示を出す(ステップS102)。
【0053】
直接転送指示を受信したRTPパケット処理部102は、受信している音声パケット701を音声データに変換しデータ線103に出力する処理を停止するとともに、受信している音声パケット800を音声データに変換する処理を停止させる(ステップS103)。
【0054】
また、チャネル1及び2から入ってきた音声データをRTPデータにして送信する処理も停止させる(ステップS104)。
【0055】
RTPパケット処理部102は変換処理停止後、音声パケット800のRTPヘッダに格納されているSSRC番号をRTPパケット700で使用していたものに置き換え、シーケンス番号はRTPパケット700の送信を停止した際の番号にプラス1した値を設定し、タイムスタンプを設定しなおして、音声パケット800をIP電話機300に転送する(ステップS105)。
【0056】
また、RTPパケット処理部102は、RTPパケット801のRTPヘッダに格納されているSSRC番号をRTPパケット701のRTPヘッダで使用していたものに置き換え、シーケンス番号はRTPパケット801の送信を停止した際の番号にプラス1した値を設定し、タイムスタンプを設定しなおして、音声パケット701をIP電話機600に転送する(ステップS106)。
【0057】
図8は、本実施の形態で使用されるRTPパケットを示す図である。
【0058】
RTPパケット700/701/800/801は、図8に示すようなパケットフォーマットになっており、ネゴシエーションで決定したペイロードサイズの間隔で送信されるものになっている。
【0059】
図8に示すように、本実施の形態のRTPパケットは、IPヘッダと、UDPヘッダと、RTPヘッダがあり、その後に音声データが続いている。
【0060】
RTPヘッダには、タイムスタンプ情報(パケットが送信された時刻)と、シーケンス番号(パケット送信の順番を示す情報)と、SSRC(音声ストリームを識別する識別子)とが含まれている。
【0061】
したがって、これらの値は個々のストリームごとに違う値が設定されることになる。
【0062】
SSRCが受信していたものから変更されてしまうと、IP電話機は違うストリームが送信されたと判断し、音声の再生を止めてしまう。
【0063】
また、シーケンス番号に関しては、今まで受信していた番号よりも早い番号を受信してしまうと、パケットが遅延して送られたように見えるため、RTPパケットは破棄されてしまい、音声にならないという動作になる。
【0064】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、データ線103への入出力処理にかかる処理時間がなくなるため、遅延を減らすことが可能となる。そのため、その遅延などによるエコーなどを低減させることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、IP電話機をつなぐ交換機システムに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図5】ネットワーク上でのやりとりの内容を示すブロック図である。
【図6】ネットワーク上でのやりとりの内容を示すブロック図である。
【図7】ネットワーク上でのやりとりの内容を示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施の形態で使用されるRTPパケットを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
100 交換機システム
101 呼制御部
102 RTPパケット処理部
103 データ線
200 LAN
300 IP電話機
400 インターネット
500 サーバ
600 IP電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RTPパケット(Real-time Transport Protocol)の相互交換により、IP電話機で通信を行うIP電話交換システムにおいて、
第1のIP電話機を有する交換機システムと、該交換機システムに接続される第2のIP電話機とを備え、
前記交換機システムは、前記RTPパケットのコーデックとペイロードサイズとが同じであった場合には、前記RTPパケットを音声データに変換せずに、SSRC番号、タイムスタンプ及びシーケンス番号を付け替えて、前記RTPパケットを転送することを特徴とするIP電話交換システム。
【請求項2】
前記第2のIP電話機は、サーバに接続されており、該サーバには、前記第2のIP電話機の電話番号とIPアドレスが登録されていることを特徴とする請求項1記載のIP電話交換システム。
【請求項3】
前記サーバには、前記交換機システムに割り当てられる外線番号及びIPアドレスが登録されていることを特徴とする請求項2記載のIP電話交換システム。
【請求項4】
前記サーバと前記第2のIP電話機は、インターネットを介して接続されることを特徴とする請求項3記載のIP電話交換システム。
【請求項5】
RTPパケット(Real-time Transport Protocol)の相互交換によりIP電話機で通信を行い、第1のIP電話機を有する交換機システムと、該交換機システムに接続される第2のIP電話機とを備えるIP電話交換システムの駆動方法において、
前記交換機システムは、前記RTPパケットのコーデックとペイロードサイズとが同じであった場合には、前記RTPパケットを音声データに変換せずに、SSRC番号、タイムスタンプ及びシーケンス番号を付け替えて、前記RTPパケットを転送することを特徴とするIP電話交換システムの駆動方法。
【請求項6】
RTPパケット(Real-time Transport Protocol)の相互交換によりIP電話機で通信を行い、第1のIP電話機を有する交換機システムと、該交換機システムに接続される第2のIP電話機とを備えるIP電話交換システムの駆動プログラムにおいて、
前記交換機システムに、前記RTPパケットのコーデックとペイロードサイズとが同じであった場合には、前記RTPパケットを音声データに変換せずに、SSRC番号、タイムスタンプ及びシーケンス番号を付け替えて、前記RTPパケットを転送させることを特徴とするIP電話交換システムの駆動プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−214989(P2007−214989A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33888(P2006−33888)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】