説明

KID3およびKID3に結合するKID3抗体

本発明は、疾患および癌に関連するエピトープであるKID3の同定および特徴付けを提供する。本発明は、KID3に結合する1ファミリーのモノクローナル抗体、KID3を発現する様々なヒトの癌および疾患を診断および治療する方法もさらに提供する。本発明の目的は、ヒトKID3の疾患関連活性を阻害できるそのアンタゴニストを同定することである。また別の目的は、KID3のアッセイにおいて使用するため、免疫原として使用するため、そして抗ヒトKID3抗体を選択するための新規化合物を提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、全体にわたって参考として援用される2003年9月18日に提出された米国仮特許出願第60/504,441号の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、生物学および免疫療法の分野に含まれる。より詳細には、本発明は、新規の疾患および癌に関連するエピトープであるKID3、ならびにKID3に結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体およびその他のポリペプチドに関する。本発明は、抗KID3抗体を含む、KID3に結合するアンタゴニスト、調節因子およびペプチドを用いてKID3に関連する様々なヒトの癌および疾患の診断および/または治療をさらに提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
抗体は、診断薬におけるそれらの公知の使用に加えて、治療剤として有用であることが証明されている。例えば、免疫療法または治療目的での抗体の使用は、近年癌を治療するために用いられてきた。受動的免疫療法は、癌療法におけるモノクローナル抗体の使用を含んでいる。例えば、非特許文献1を参照されたい。これらの抗体は、腫瘍細胞増殖もしくは生存の直接的阻害およびそれらが身体の免疫系の自然細胞殺滅活性を補強する能力の両方によって固有の治療的生物活性を有する可能性がある。これらの薬剤は、単独でまたは放射線もしくは化学療法剤と併用して投与することができる。非ホジキンリンパ腫および乳癌各々を治療するために承認されたリツキシマブおよびトラスツズマブは、そのような治療剤の2つの例である。あるいは、抗体は、その抗体が毒性薬剤に連結していて、腫瘍に特異的に結合することによってその薬剤を腫瘍へ方向付ける抗体複合体を作製するために使用できる。ゲムツズマブ・オゾガミシンは、白血病を治療するために使用される、承認された抗体複合体の1つの例である。癌細胞に結合して、診断および療法のために使用できる可能性があるモノクローナル抗体は、出版物に開示されている。例えば、特にある分子量の標的タンパク質を開示している以下の特許出願を参照されたい:特許文献1(200kDのc−erbB−2(Her2)およびサイズが40〜200kDであるその他の未知の抗原)ならびに特許文献2(50kDおよび55kDの癌胎児性タンパク質)。充実性腫瘍を治療するための臨床試験中および/または承認された抗体の例には:トラスツズマブ(抗原:180kD、HER2/neu)、エドレコロマブ(抗原:40〜50kD、Ep−CAM)、抗ヒト乳脂肪球(HMFG1)(抗原:>200kD、HMWムチン)、セツキシマブ(抗原:150kDおよび170kD、EGF受容体)、アレムツズマブ(抗原:21〜28kD、CD52)およびリツキシマブ(抗原:35kD、CD20)が含まれる。
【0004】
乳癌を治療するために使用されるトラスツズマブ(Her−2受容体)および数種の癌を治療するための臨床試験中のセツキシマブ(EGF受容体)の抗原標的は、皮膚、結腸、肺、卵巣、肝臓および膵臓を含む極めて多数の正常ヒト成人組織上に検出可能なレベルで存在する。これらの治療剤を使用する際の安全域は、おそらくこれらの部位での発現レベルまたは抗体の通路もしくは活性における相違によって提供される。
【0005】
また別のタイプの免疫療法は、その後で個体における免疫応答を誘発する、すなわち個体がそれらの固有の癌に対する抗体を能動的に生成するのを誘導するために、抗原の発現を指示する1つ以上の特定の癌上に存在する抗原またはDNA構築物を用いる能動免疫療法、もしくはワクチン接種である。能動免疫は、受動免疫療法もしくは免疫毒素ほど頻回には使用されていない。
【0006】
疾患(癌を含む)の進行については数種のモデルが提案されている。理論は、単一感染性/形質転換事象による因果関係から、最終的には十分な病原性もしくは悪性能力を備える疾患を導く次第に「疾患様」もしくは「癌様」組織タイプの進化へ及んでいる。一部の研究者らは、例えば癌について、悪性腫瘍を惹起するには単一突然変異事象で十分であると論じているが、他の研究者らは引き続いての変化もまた不可欠であると論じている。他の一部の研究者らは、細胞レベルでの突然変異−選択事象の連続を介する新生物形成の開始ならびに進行の両方にとって突然変異負荷および腫瘍グレードが増加することが必要であると提案している。一部の癌標的は腫瘍組織内に限定されることが見いだされているが、他方他の標的は正常組織中にも存在していて腫瘍組織中でアップレギュレーションされるおよび/または過剰発現する。そのような状態では、一部の研究者らは、過剰発現が悪性腫瘍の獲得に関連していると提案しているが、他の研究者らは過剰発現が増大する疾患状態への経路に沿った傾向の単なるマーカーに過ぎないと提案している。
【0007】
理想的な診断用および/または治療用抗体は、極めて多数の癌の上に存在する抗原に対して特異的であるが、正常組織上では存在しないか低レベルでしか存在しないであろう。1種以上のがんと特異的に結び付いている新規の抗原の発見、特徴付けおよび単離は、多くの点で有用であろう。第一に、その抗原を使用するとその抗原に対するモノクローナル抗体を作製することができよう。抗体は、理想的には癌細胞に対する生物活性を有しており、異種抗原に対する免疫系の応答を補強することができよう。抗体は単独で、もしくは現行療法と併用して投与できようまたは毒性薬剤と連結した免疫複合体を調製するために使用できよう。単独で投与したときに同一特異性を備えるが生物活性は低いもしくは備えていない抗体もまた、抗原含有細胞へ毒素を方向付ける抗体によって生物活性である結合体化形を備える、放射性同位体、毒素、化学療法剤、もしくは化学療法剤を含有するリポソームとの免疫複合体を調製するために使用でる点で有用であろう。
【0008】
理想的な診断用および/または治療用抗体のために所望である1つの態様は、様々な癌に関連している抗原の発見および特徴付けである。非癌細胞上で限定された発現を有する、多数のタイプの癌上で発現する抗原(例えば、「汎癌」抗原)はほとんどない。そのような抗原の単離および精製は、前記抗原を標的とする(例、診断用もしくは治療用)抗体を作製するために有用であろう。「汎癌」抗原に結合する抗体は、1つの特異的タイプの癌としか関連していない抗原に対する抗体とは対照的に、種々の組織中で見いだされる様々な癌を標的とすることができよう。この抗原は、さらにまた新薬(例、小分子)発見のため、そして細胞の調節、増殖および分化を詳細に特徴付けるためにも有用であろう。
【0009】
グリコシル化および分化グリコシル化の調節は、各々が癌の進行および予後において関係があるとされてきた。細胞表面糖質決定基は、悪性形質転換中に劇的に変化することがある。Lewis(ルイス)抗原は、様々な癌に関連する糖質決定基の例である。Lewis抗原などの糖質決定基に特異的なモノクローナル抗体の使用は、インビトロでの細胞の転移可能性を調節することに有効であることが証明されている(Liu,et al.,2001)。
【特許文献1】米国特許第6,054,561号明細書
【特許文献2】米国特許第5,656,444号明細書
【非特許文献1】Cancer:Principles and Practice of Oncology,2001年、第6版、第20章、p.495−508
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
必要とされるのは、標的細胞表面を特異的に認識する抗体およびその他の薬剤を用いて、そのような疾患および/または癌を診断および治療するために使用できる疾患および/または癌細胞の表面上の新規標的である。さらにまた、本明細書に開示した発見に基づいて、細胞表面上の標的を特異的に認識し、そしてKID3の疾患促進活性を減少させる、もしくは増強する工程のいずれかによって調節できる新規の抗体およびその他の薬剤に対する必要が存在する。本発明の目的は、ヒトKID3の疾患関連活性を阻害できるそのアンタゴニストを同定することである。また別の目的は、KID3のアッセイにおいて使用するため、免疫原として使用するため、そして抗ヒトKID3抗体を選択するための新規化合物を提供することである。
【0011】
以下でより詳細に記載するように、本発明者らは、本明細書に提供する新規のアンタゴニスト、モデュレータおよび抗体のエピトープ標的として同定された、我々が本明細書ではKID3と呼ぶ新規のエピトープを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、様々なヒト癌上で発現するKID3に結合するKID3アンタゴニスト、調節因子およびモノクローナル抗体を提供する。1つの態様では、本発明は、KID3に結合する1ファミリーのモノクローナル抗体である。
【0013】
また別の態様では、本発明は、2002年12月18日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)へ寄託された特許寄託番号PTA−4860を備える宿主細胞株(KIDNEY.3.11E8.2A11)によって生成されるモノクローナル抗体抗KID3である。
【0014】
さらにまた別の態様では、本発明は、疾患および/または癌細胞に反応性であるモノクローナル抗体抗KID3を生成する方法であって:(a)宿主動物を免疫原で免疫する工程と;(b)前記動物からリンパ球を入手する工程と;(c)リンパ球(b)を骨髄腫細胞株と融合させてハイブリドーマを生成する工程と;(d)モノクローナル抗体を生成するために(c)のハイブリドーマを培養する工程と;および(e)疾患および/または癌細胞もしくは細胞株に結合するが非癌細胞または正常細胞もしくは細胞株には結合しないまたは低レベルもしくは相違する方法で正常細胞に結合する抗体だけを選択するために抗体をスクリーニングする工程と、を含む方法である。
【0015】
また別の態様では、本発明は、抗KID3抗体を生成する方法であって、そのような抗体をコードする宿主細胞もしくはその子孫を、前記抗体の生成を可能にする条件下で培養する工程とおよび抗KID3抗体を精製する工程と、を含む方法である。
【0016】
また別の態様では、本発明は、適切な細胞中で前記抗体(単一軽鎖もしくは重鎖として個別の発現をしてよいまたは軽鎖および重鎖の両方が1つのベクターから発現してよい)をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを発現させる工程と、一般にはその後に当該抗体もしくはポリペプチドを回収および/または単離する工程と、を実施することによって本明細書に記載した抗体(もしくはポリペプチド)のいずれかを生成する方法を提供する。
【0017】
また別の態様では、本発明は、抗KID3抗体のKID3への優先的結合を競合的に阻害する抗KID3抗体もしくはポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)である。一部の実施形態では、本発明は、他の抗KID3抗体としてKID3上の同一もしくは相違する1つ以上のエピトープへ優先的に結合する抗体もしくはポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)である。
【0018】
さらにまた別の態様では、本発明は、KID3のエピトープに対して特異的な抗体によって結合されたKID3を含む組成物である。1つの実施形態では、前記抗体は抗KID3である。他の実施形態では、KID3の2種以上の相違するエピトープへマッピングするそのような抗体を用いて、2種以上の抗KID3抗体が投与される、あるいはまた、抗体はKID3エピトープおよび相違する細胞標的に結合する多価であってよい。一部の実施形態では、抗KID3抗体は、治療用薬剤もしくは検出可能な標識へ連結している。
【0019】
また別の態様では、本発明は、抗KID3抗体のフラグメントもしくは領域を含む抗体である。1つの実施形態では、前記フラグメントは前記抗体の軽鎖である。また別の実施形態では、前記フラグメントは前記抗体の重鎖である。さらにまた別の実施形態では、前記フラグメントは前記抗体の軽鎖および/または重鎖からの1つ以上の可変領域を含有している。さらにまた別の実施形態では、前記フラグメントは前記抗体の軽鎖および/または重鎖からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含有している。
【0020】
また別の態様では、本発明は、抗KID3抗体の、以下のa)軽鎖もしくは重鎖からの1つ以上のCDR(もしくはそのフラグメント)と;b)軽鎖からの3つのCDRと;c)重鎖からの3つのCDRと;d)軽鎖からの3つのCDRおよび重鎖からの3つのCDRと;e)軽鎖可変領域と;f)重鎖可変領域と、のうちのいずれかを含むポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)を提供する。
【0021】
また別の態様では、本発明はヒト化抗体である。一部の実施形態では、前記ヒト化抗体は非ヒト抗KID3抗体の1つ以上のCDRを含む。一部の実施形態では、前記ヒト化抗体は他の抗KID3抗体と同一もしくは相違する1つ以上のエピトープに結合する。一般に、本発明のヒト化抗体は、最初の非ヒト抗KID3抗体と同一のCDRおよび/または1つ以上のCDRに由来する1つ以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つもしくはそのフラグメント)のCDRを含んでいる。一部の実施形態では、前記ヒト抗体は他の抗KID3抗体と同一もしくは相違する1つ以上のエピトープに結合する。また別の態様では、本発明は、非ヒト抗KID3抗体の重鎖および軽鎖の可変領域に由来する可変領域ならびにヒト抗体の重鎖および軽鎖の定常領域に由来する定常領域を含むキメラ抗体である。
【0022】
また別の態様では、本発明は、ATCC番号PTA−4860の寄託番号を備える宿主細胞、もしくはその子孫によって生成するμ抗KID3抗体をコードする単離ポリヌクレオチドである。本発明は、上記に規定したいずれかの抗体の固有の結合もしくは生物活性を有する抗体ポリペプチドを含んでいる。また別の態様では、本発明は、前記抗体のいずれか(抗体フラグメントを含む)をコードするポリヌクレオチドならびに本明細書に記載したいずれか他のポリペプチドを提供する。
【0023】
また別の態様では、本発明は、例えば化学療法剤に連結した抗KID3抗体、抗KID3抗体のフラグメントを含む抗体、非ヒト抗KID3抗体のヒト化抗体、非ヒト抗KID3抗体の可変領域に由来する可変領域およびヒト抗体の定常領域に由来する定常領域を含むキメラ抗体、もしくは非ヒト抗KID3抗体の1つ以上の特性を備えるヒト抗体または化学療法剤(例えば放射性成分)に連結している本明細書に記載した抗KID3抗体のいずれかおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物などの、前記ポリペプチド(本明細書に記載した抗体のいずれかを含む)もしくは本明細書に記載したポリヌクレオチドを含む薬学的組成物である。
【0024】
1つの態様では、本発明は、疾患もしくは癌細胞上に存在するKID3に結合した抗KID3抗体を含む組成物である。好ましい実施形態では、癌細胞は、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、最長癌および乳癌細胞からなる群より選択される。一部の実施形態では、癌細胞が単離される。一部の実施形態では、癌細胞は生物学的サンプルである。一般に、生物学的サンプルは、ヒトなどの個体由来である。
【0025】
また別の態様では、本発明は、個体由来の細胞上でKID3を検出する工程によって個体における疾患、特別には個体における炎症応答もしくは自己免疫応答と関連している疾患もしくは障害を診断する方法である。本発明の他の態様では、個体における炎症応答もしくは自己免疫応答を調節するための方法が提供される。本発明の組成物および方法を使用する治療の対象である可能性がある炎症および自己免疫障害の結果として生じる疾患および状態には、例として挙げるためで限定するためではなく、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、発作、他の脳外傷、例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患、重症筋無力症、狼瘡、慢性関節リウマチ、喘息、急性若年型糖尿病、AIDS認知症、アテローム硬化症、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および急性白血球媒介性肺外傷が含まれる。
【0026】
本発明の抗体およびその他の治療用薬剤を治療使用するためのさらに他の適応には、臓器もしくは移植拒絶のリスク状態にある個体への投与が含まれる。最近の数年間にわたり、皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄などの組織および臓器を移植するための外科技術の有効性は相当に大きく向上してきた。おそらく、主要な際立った問題は、移植された同種移植片もしくは臓器に対する受容者における免疫寛容を誘導するために納得できる薬剤の欠如である。同種異系細胞もしくは臓器が宿主へ移植される場合は(すなわち、提供者および被提供者が同一種とは相違する個体である)、宿主免疫系は移植組織における異種抗原に対する免疫応答(宿主対移植片疾患)を立てる移植された組織の破壊がもたらされる可能性が高い。
【0027】
また別の態様では、本発明は、個体が癌を有するかどうかを診断するための方法であって、前記個体から選択された細胞でのKID3が発現しているかどうかを決定する工程を含み、このとき前記細胞上でのKID3の発現が前記癌の指標である方法である。一部の実施形態では、KID3の発現は抗KID3抗体を用いて決定される。一部の実施形態では、前記方法は細胞からのKID3発現のレベルを検出する工程を含んでいる。本明細書で使用する用語「検出」には、コントロールを参照してまたは参照せずに、定性的および/または定量的検出(レベルを測定する)が含まれる。
【0028】
さらにまた別の態様では、本発明は、個体における癌を、前記個体由来の細胞上もしくは細胞から遊離したKID3を検出する工程によって診断する方法であって、このとき前記癌は副腎腫瘍、AIDS関連癌、胞状軟部肉腫、星状膠細胞腫瘍、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨の癌(エナメル上皮腫、動脈瘤骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫(dhordoma)、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、大腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、癒着性小円形細胞腫瘍、上衣腫、ユーイング腫瘍、骨格外粘液性軟骨肉腫、線維形成骨形成不全(fibrogenesis imperfecta ossium)、線維性骨異形成症、胆嚢および胆管癌、絨毛性疾患、胚細胞性腫瘍、頭頸部癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪腫瘍、肝臓癌(肝芽腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜種、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、後ブドウ膜黒色腫(posterious unveal melanoma)、希少性血液学的疾患、転移性腎癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、睾丸癌、胸腺癌、胸腺腫、転移性甲状腺癌および子宮癌(子宮頸部の癌、子宮内膜癌および子宮平滑筋腫)が含まれるが、それらに限定されない群から選択される。
【0029】
また別の態様では、本発明は、個体における癌(例えば卵巣癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、大腸癌、もしくは乳癌などであるがそれらに限定されない)の診断を補助する方法であって、前記個体由来の生物学的サンプル中でのKID3の発現を決定する工程を含む方法である。一部の実施形態では、KID3の発現は抗KID3抗体を用いて決定される。一部の実施形態では、前記方法は細胞からのKID3発現のレベルを検出する。癌から遊離したKID3は、KID3もしくはその一部分の上昇したレベルの原因となることがあり、体液(例、血液、唾液もしくは腸粘液分泌物)中で検出することができる。
【0030】
さらにまた別の態様では、本発明は、癌細胞の増殖を減少させるために十分な、KID3に結合する有効量の抗体を投与する工程によって癌を治療する方法である。一部の実施形態では、前記抗体は抗KID3抗体である。所定の実施形態では、癌細胞は、副腎腫瘍、AIDS関連癌、胞状軟部肉腫、星状膠細胞腫瘍、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨の癌(エナメル上皮腫、動脈瘤骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、大腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、癒着性小円形細胞腫瘍、上衣腫、ユーイング腫瘍、骨格外粘液性軟骨肉腫、線維形成骨形成不全、線維性骨異形成症、胆嚢および胆管癌、絨毛性疾患、胚細胞性腫瘍、頭頸部癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪腫瘍、肝臓癌(肝芽腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜種、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、後ブドウ膜黒色腫(posterious unveal melanoma)、希少性血液学的疾患、転移性腎癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、睾丸癌、胸腺癌、胸腺腫、転移性甲状腺癌および子宮癌(子宮頸部の癌、子宮内膜癌および子宮平滑筋腫)が含まれるが、それらに限定されない群から選択される。所定の好ましい実施形態では、癌細胞は、乳癌、大腸癌、前立腺癌、肺癌、肉腫、転移性腎癌、転移性甲状腺癌および明細胞癌を含むがそれらに限定されない充実性腫瘍の群から選択される。
【0031】
さらにまた別の態様では、本発明は、癌を有する個体における転移の発生を遅延させる方法であって、KID3へ特異的に結合する1ファミリーの抗体のうちの少なくとも1つの有効量を投与する工程を含む方法である。1つの実施形態では、前記抗体は抗KID3抗体である。また別の態様では、本発明は、インビトロもしくは個体において癌細胞の成長および/または増殖を阻害する方法であって、化学療法剤と結び付けた(連結した、を含む)抗KID3抗体を含む有効量の組成物を細胞培養もしくはサンプルまたは前記個体へ投与する工程を含む方法である。
【0032】
さらにまた別の態様では、本発明は、癌を有する個体における癌細胞へ治療剤を送達する方法であって、KID3へ特異的に結合する1ファミリーの抗体のうちの少なくとも1メンバーの有効量を投与する工程を含む方法である。他の実施形態では、抗KID3抗体はまた別の治療剤と併用して(連結した、を含む)個体へ送達される。
【0033】
一部の実施形態では、抗KID3抗体は本明細書で指名した抗体由来のヒト化抗体である(概して、前記抗体の1つ以上の部分もしくは無傷CDRを含むが、必ずしも含まない)。一部の実施形態では、前記抗KID3抗体は指名した抗体の1つ以上の特性を備えるヒト抗体である。一部の実施形態では、化学療法剤(毒素もしくは放射性分子など)が、癌細胞中へ送達される(内在化させられる)。一部の実施形態では、前記薬剤はサポリンである。
【0034】
また別の態様では、本発明は、個体において癌を治療する方法であって、化学療法剤と結び付けた(連結した、を含む)抗KID3抗体を含む有効量の組成物を前記個体へ投与する工程を含む方法である。
【0035】
本発明は、KID3と細胞質シグナルパートナーとの結び付きを、強化する、もしくは減少させる工程のいずれかによって調節する方法をさらに提供する。KID3と細胞質シグナルパートナーとの結び付きは、細胞表面上に提示されているKID3分子を、KID3へのシグナルパートナーの結合を調節する薬剤と接触させる工程によって大きな影響を及ぼすことができる。KIDとその結合および/またはシグナルパートナーとの結び付きを遮断もしくは減少させる薬剤を使用すると、KID3媒介性炎症もしくは免疫応答に関係している生物学的および病理学的プロセスを調節することができる。この作用に関係する病理学的プロセスには、腫瘍関連性細胞増殖ならびにアポトーシスによる細胞死、壊死、腫瘍症もしくはその他の細胞死経路の誘導が含まれる。
【0036】
薬剤は、それらがKID3と例えば抗KID3抗体などの結合パートナーとの結び付きを遮断する、減少させる、強化するまたはさもなければ調節する能力について試験することができる。詳細には、薬剤は、KID3相互作用部位(典型的にはそれが無傷の生きている細胞上で存在するように自然の立体構造における)を含むペプチドを結合パートナーおよび試験物質と一緒にインキュベートする工程とおよび前記試験物質が前記結合パートナーの前記KID3ペプチドへの結合を減少させる、もしくは増強するかどうかを決定する工程とによって、相互作用などを調節する能力について試験することができる。
【0037】
KID3機能のアゴニスト、アンタゴニストおよびその他の調節因子は、明らかに本発明の範囲内に含まれる。これらのアゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子は、KID3内の1つ以上の抗原決定基部位を含むまたはそのような部位の1つ以上のフラグメント、そのような部位の変異体、もしくはそのような部位のペプチドミメティックを含むポリペプチドである。これらの作用性、拮抗性およびKID3調節性化合物は線状形もしくは環状形で提供され、さらに任意で、自然には一般には見いだされない少なくとも1つのアミノ酸残基または少なくとも1つのアミド同配体を含んでいる。これらの化合物はグリコシル化されてよい。本発明のKID3機能のアゴニスト、アンタゴニストおよびその他の調節因子は、望ましくは、抗体を参照しながら上記に記載した実施形態および方法のすべてにおいて使用される。
【0038】
本発明の他の態様は、本明細書でKID3であると同定かつ言及した新規のエピトープに関する。このエピトープは、免疫原として使用するため、そして様々な研究、診断および治療目的に適合する。
【0039】
所定の態様では、本発明は、個体における疾患の診断を補助するための方法であって:(i)個体から入手した血液もしくは組織サンプル中のKID3の存在をアッセイする工程と;(ii)前記サンプルが正常(非疾患)血液もしくは組織サンプルに比較して増加した量のKID3マーカーを有するかどうかを検出する工程と;および(iii)増加した量の前記マーカーを疾患についての陽性診断に相関付ける工程、もしくは増加した量の前記マーカーの不在を疾患についての陰性診断に相関付ける工程と、を含む方法である。所定の実施形態では、前記マーカーは抗KID3抗体を用いて検出される。所定の実施形態では、本方法は、放射性核種イメージング、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学検査からなる群より選択される技術によって実施される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(発明の詳細な説明)
本発明は、免疫原としてまたは診断薬もしくは治療剤として直接に使用できる新規の炭水化物エピトープ−−KID3−−を提供する。さらに、本発明は、KID3の発現および/または過剰発現に関連しているヒトの癌を含む、様々な疾患を診断および治療するためのモノクローナル抗体、ポリペプチドおよびその他の組成物を提供する。
【0041】
(I.一般的技術)
本発明の実践では、他に特に明記しない限り、当技術分野の技術の範囲内に含まれる分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来型技術が使用されるであろう。そのような技術は、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993−8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies (P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988−1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)などの文献に十分に説明されている。
【0042】
(II.定義)
「KID3」は、それに対して本発明の抗体が向けられる新規の炭水化物エピトープを意味する。KID3エピトープは、制限なくそれが付着するタンパク質もしくはポリペプチドもしくはその他の構造を参照して、抗KID3抗体に結合された炭水化物構造である。KID3は、大腸癌および数種のタイプの癌に存在する。現在は、KID3はそれらの正常組織対応物に比較して、所定の癌細胞中で過剰発現する可能性があると考えられている。
【0043】
KID3は、N−グリカナーゼを用いたKID3−発現タンパク質の処置後の抗KID3抗体結合の消失によって決定されるN−連結炭水化物である。これまでに行なわれた試験は、KID3が、直接結合および交差競合アッセイによって決定されるような、以前に報告されたムチンもしくはLewis血液型癌関連炭水化物の1つではないことを示している。抗KID3抗体を用いたヒト腫瘍細胞株膜抽出物のウェスタンブロット分析は、KID3が約25kDaから250kDa超の分子量範囲内の様々な膜関連タンパク質上に存在することを証明した。抗KID3抗体感受性(インビボおよびインビトロ)細胞株Colo201、Colo205、SU86.86およびSNU−16について決定されたKID3反応性の横縞像は完全25kDaから>250kDaの範囲に及び、これらのKID3関連性タンパク質の1サブセットしか発現しないと思われる抗KID3抗体非感受性腫瘍細胞株の大多数について観察された範囲とは定性的に異なると思われる。本明細書には示していないデータは、KID3を発現するタンパク質が、以前にはE−カドヘリン結合および機能に帰せられていない新規の相互作用部位を通るE−カドヘリン結合を支持することを示している。
【0044】
用語「RAAG12」は、新規のKID3エピトープを意味する。用語「RAAG12」、「KID3エピトープ」および「KID3」は、本出願において互換的に使用される。
【0045】
用語「エピトープ」は、免疫応答を誘発できる、そしてそのような応答によって生成する特異的抗体と結合できる抗原の表面上の分子領域を意味する。用語「エピトープ」および「抗原決定基」は、本出願において互換的に使用する。
【0046】
KID3機能のアゴニスト、アンタゴニストおよびその他の調節因子は、明らかに本発明の範囲内に含まれる。これらのアゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子は、KID3内の1つ以上の抗原決定基部位またはKID3のエピトープフラグメントもしくは変異体と相互作用するポリペプチド、ペプチドミメティック、小分子またはその他の化合物もしくは組成物である。これらの作用性、拮抗性およびKID3調節性化合物は線状形もしくは環状形で提供され、さらに任意で、自然には一般には見いだされない少なくとも1つのアミノ酸残基または少なくとも1つのアミド同配体を含んでいる。これらの化合物は、グリコシル化されていてよいまたは他の翻訳後修飾を有していてよい。
【0047】
より詳細には、本明細書で使用する用語「KID3アゴニスト」、「アンタゴニスト」もしくは「調節因子」は、(1)ヒトKID3とその天然リガンドもしくは抗KID3抗体との間の相互作用を妨害もしくは遮断することができる;(2)ヒトKID3およびその天然リガンドもしくは抗KID3抗体に結合することができる;(3)ヒトKID3およびその天然リガンドもしくは抗KID3抗体に結合できる抗体を惹起する際に使用できる抗原決定基を含有している;(4)ヒトKID3およびその天然リガンドもしくは抗KID3抗体に結合できる抗体のスクリーニングに使用できる抗原決定基を含有している;(5)ヒトKID3とその天然リガンドもしくは抗KID3抗体との間の相互作用を妨害もしくは遮断することができる抗体を惹起する際に使用できる抗原決定基を含有している;(6)ヒトKID3とその天然リガンドもしくは抗KID3抗体との間の相互作用を妨害もしくは遮断することができる抗体のスクリーニングに使用できる抗原決定基を含有している、のうちのいずれかの化合物であると規定する。
【0048】
KID3アゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子には、KID3変異体、KID3アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチドミメティックおよび小分子が含まれる。KID3アゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子にはさらに、抗KID3抗体および免疫グロブリン変異体、キメラ免疫グロブリン、ヒト化免疫グロブリン、ならびに炭水化物置換、欠失および付加変異体またはそれらのいずれかの組み合わせを含むヒトKID3に対して反応性である抗KID3抗体が含まれる。本発明のKID3アゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子は、ヒトKID3のその天然リガンドもしくは抗KID3抗体への結合に関係する抗原決定基を本発明者らが同定したことに基づいている。そこで、本発明は、抗KID3抗体の1つ以上のKID3結合ドメインを繰り返す、もしくは模擬する分子構造を備えるKID3アゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子を提供する。
【0049】
本明細書で使用する用語「KID3変異体」は、いずれかのKID3アゴニスト、アンタゴニスト、もしくは調節因子と相互作用する糖置換、欠失および付加変異体またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、ヒトKID3のいずれかの炭水化物変異体を意味する。この用語の定義には、さらにまた当該分子の1つ以上の変異体領域を含むKID3変異体分子のフラグメントも含まれる。
【0050】
「抗体」は、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的へ、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つのエピトープ認識部位を通して特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用するこの用語は、無傷ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体を含むだけではなく、それらのフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、天然型変異体、必要とされる特異性のエピトープ認識部位を備える抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ならびに必要とされる特異性のエピトープ認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の修飾された形状もまた含んでいる。
【0051】
「モノクローナル抗体」は同種抗体集団を意味するが、このときモノクローナル抗体はエピトープの選択的結合に関係しているアミノ酸(天然型および非天然型)からなる。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一エピトープに対して向けられる。用語「モノクローナル抗体」は、無傷モノクローナルもしくは全長モノクローナル抗体を含むだけではなく、それらのフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、天然型変異体、必要とされる特異性のエピトープ認識部位を備える抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ならびに必要とされる特異性のエピトープ認識部位およびエピトープに結合する能力を含む免疫グロブリン分子の他の修飾された形状もまた含んでいる。抗体の起源またはそれが作製される方法(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現トランスジェニック動物など)に関して限定することは意図されていない。この用語には、免疫グロブリン全体、ならびに「抗体」の定義の下で上述したフラグメントが含まれる。
【0052】
「ヒト化」抗体は、一般に組換え技術を用いて調製される、非ヒト種からの免疫グロブリン由来のエピトープ結合部位ならびにヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく分子の残りの免疫グロブリン構造を有するキメラ分子を意味する。抗原結合部位は、定常ドメインへ融合した完全可変ドメインまたは前記可変領域内の適切なフレームワーク領域へ移植された相補性決定領域(CDR)だけのいずれかを含んでいてよい。エピトープ結合部位は、野生型であっても、1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよい。これは、ヒト個体における免疫原としての定常領域を排除するが、異種可変領域に対する免疫応答の可能性は残っている(LoBuglio,A.F.et al.,(1989)Proc Natl Acad Sci USA 86:4220−4224)。また別のアプローチは、ヒト由来定常領域を提供することだけではなく、ヒト形にできる限り近付けてそれらを再構築できるように可変領域も同様に修飾することに焦点を当てている。重鎖および軽鎖両方の可変領域が、所定の種では相当に保存されており、CDRのための足場を提供すると推定される4つのフレームワーク領域(FR)に両側から挟まれた、問題のエピトープに反応して変動し、結合能力を決定する3つの相補性決定領域(CDR)を含有することは知られている。非ヒト抗体が特定エピトープに関して調製される場合は、可変領域は、修飾されるべきヒト抗体内に存在するFR上の非ヒト抗体に由来するCDRを移植する工程によって「再構築」または「ヒト化」することができる。種々の抗体へのこのアプローチの適用は、Sato,K.,et al.,(1993)Cancer Res 53:851−856.Riechmann,L.,et al.,(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen,M.,et al.,(1988)Science 239:1534−1536;Kettleborough,C.A.,et al.,(1991)Protein Engineering 4:773−3783;Maeda,H.,et al.,(1991)Human Antibodies Hybridoma 2:124−134;Gorman,S.D.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:4181−4185;Tempest,P.R.,et al.,(1991)Bio/Technology 9:266−271;Co,M.S.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:2869−2873;Carter,P.,et al.,(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:4285−4289;およびCo,M.S.et al.,(1992)J Immunol 148:1149−1154によって報告されている。一部の実施形態では、ヒト化抗体はすべてのCDR配列を保存している(例えば、マウス抗体由来の全6つのCDRを含有するヒト化マウス抗体)。他の実施形態では、ヒト化抗体は、最初の抗体由来の1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも呼ばれる、最初の抗体に比較して変化させられている1つ以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)のCDRを有する。
【0053】
抗体もしくはポリペプチドへ「特異的に結合する」もしくは「優先的に結合する」(本明細書では互換的に使用する)エピトープは、当技術分野において明確に理解されている用語であり、そのような特異的もしくは優先的結合を決定するための方法も同様に当技術分野においてよく知られている。分子は、それが特定の細胞もしくは物質と、別の細胞もしくは物質と反応する、もしくは結び付く場合よりも長い期間および/またはより大きな親和性で、より頻回に、より迅速に反応する、もしくは結び付く場合に、「特異的結合」もしくは「優先的結合」を示すと言われる。抗体は、それが他の物質に結合するより大きな親和性、結合活性でより容易におよび/またはより長い期間にわたって結合する場合は、標的へ「特異的に結合する」もしくは「優先的に結合する」。例えば、KID3エピトープへ特異的もしくは優先的に結合する抗体は、それが他のKID3エピトープもしくは非KID3エピトープに結合するより大きな親和性、結合活性で、より容易におよび/またはより長い期間にわたってこのKID3エピトープに結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば第1標的へ特異的もしくは優先的に結合する抗体(または成分もしくはエピトープ)は第2標的へは特異的もしくは優先的に結合する場合もしない場合もあることもまた理解される。したがって、「特異的結合」もしくは「優先的結合」は、(それを含むことはできるが)排他的結合を必ずしも必要としない。結合は、必ずではないが一般には優先的結合を意味する。
【0054】
エピトープに関して「免疫学的活性」もしくは「残存免疫学的活性」という用語は、様々な条件下、例えばエピトープが還元および変性条件に曝露させられた後に、抗体(例、抗KID3抗体)がエピトープに結合する能力を意味する。
【0055】
抗KID3抗体には、KID3(卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、もしくは乳癌細胞を含むがそれらに限定されない癌細胞上に存在するKID3を含む)に結合する能力と;インビトロもしくはインビボで生きている細胞の表面上に露出しているKID3の一部分に結合する能力と;KID3を発現する癌細胞(卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、もしくは乳癌細胞など)へ化学療法剤を送達する能力と;KID3を発現する癌細胞中へ治療剤もしくは検出可能なマーカーを送達する能力と;アポトーシス、壊死、腫瘍症もしくはその他の細胞死経路を介して細胞死事象に影響を及ぼす能力と、を含むがそれらに限定されない様々な生物学的機能が結び付いている。
【0056】
「腫瘍症」もしくは「腫瘍性」事象は、アポトーシスとは識別できる細胞死の形態である。腫瘍症は、骨細胞の虚血性細胞死を記述するために1910年に初めて使用された(Trump,et al.,1997)。腫瘍性細胞は、細胞および細胞小器官の膨潤、空胞化および上昇した膜透過性を特徴とする。腫瘍症は、通常は傷害後に急速に発生し、細胞の形状および体積の変化を生じる早期変化を伴う。腫瘍症の基礎にある分子学的および生化学的機序については、いまだ十分には解明されていない。一部の形では、腫瘍症は細胞膜中のイオンチャンネル調節障害および細胞ATPの減少したレベルの結果として発生することがあり、ナトリウムの流入を招き、細胞膨潤および溶解を引き起こす(Barros,et al.2001)。本明細書で考察するように、KID3もしくはKID3抗体、ならびに本明細書に記載したその他の薬剤、アンタゴニスト、調節因子およびポリペプチド(抗体を含む)は、これらの特性もしくは生物学的作用のいずれか1つ以上を有している可能性がある。
【0057】
「抗KID3等価抗体」もしくは「抗KID3等価ポリペプチド」は、例えば結合特異性などの抗KID3抗体と結び付いた1つ以上の生物学的機能を有する抗体もしくはポリペプチドを意味する。
【0058】
本明細書で使用する「薬剤」は、生物学、製薬学、もしくは化学的化合物を意味する。非限定的例には、単純もしくは複合有機もしくは無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素、もしくは化学療法化合物が含まれる。様々な化合物、例えば小分子およびオリゴマー(例、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)、ならびに様々なコア構造に基づく合成有機化合物を合成できる。さらに、様々な天然源は、植物もしくは動物抽出物などをスクリーニングするための化合物を提供できる。当業者であれば、本発明の薬剤の構造的性質に関して制限がないことを容易に理解することができる。
【0059】
本発明の方法に使用される薬剤は、無作為に選択できるまたは合理的に選択もしくは設計することができる。本明細書で使用するように、薬剤は、KID3とその天然結合パートナーもしくは知られている抗体との結び付きに関係している特定配列を考察せずに薬剤が無作為に選択される場合に、無作為に選択されると言われる。無作為に選択された薬剤の例は、化学ライブラリーもしくはペプチド・コンビナトリアルライブラリーの使用である。
【0060】
本明細書で使用するように、薬剤は、その薬剤の作用と結び付けて標的部位の配列および/またはその立体構造を考慮に入れる非無作為ベースで選択される場合に、合理的に選択もしくは設計されると言われる。抗KID3薬剤はKID3/抗KID3相互作用を遮断する。本発明は、さらにまたKID3とその天然結合パートナーとの相互作用の部位で作用する薬剤を含んでいるが、他のリガンドおよびそれらの活性KID3−相互作用部位もまた、現在知られているか、後に同定されるかにかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。薬剤は、受容体/リガンドおよび/またはKID3/抗KID3抗体複合体の接触部位を作り上げるペプチド配列もしくは炭水化物構造を利用することによって、合理的に選択もしくは合理的に設計することができる。例えば、合理的に選択された薬剤は、その天然環境では生きている細胞の表面上に露出しているので、その三次構造がKID3と同一であるペプチドもしくは炭水化物であってよい。そのような薬剤は、抗KID3抗体とKID3との結び付きまたはKID3とその天然リガンドの結び付きを、抗KID3抗体もしくは天然リガンドに結合させることによって、必要に応じて減少させる、もしくは遮断するであろう。
【0061】
本明細書で使用する用語「標識」は、抗体に関しては、放射性薬剤もしくは蛍光体(例、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)もしくはフィコエリトリン(PE))などの検出可能な薬剤を抗体に結合させる(すなわち、物理的連結)による直接標識、ならびに検出可能な薬剤を用いた反応性によるプローブもしくは抗体の間接的な標識を含むことが意図されている。
【0062】
本明細書で使用する用語「結び付き」には、抗体に関しては、薬剤(例、化学療法剤)への共有および非共有付着もしくは結合が含まれる。抗体は、直接結合もしくは共通プラットフォームへの付着を介する間接結合によって薬剤(化学療法剤)と結び付けることができるので、抗体は薬剤の局在をそれに抗体が結合する癌細胞へ方向付け、そしてこのとき薬剤がそれに抗体が結合する同一癌細胞を標的としないまたはその薬剤の効力が減少しないように、抗体および薬剤は生理学的条件で実質的に解離しない。
【0063】
「生物学的サンプル」は、個体から入手した様々なサンプルタイプを含んでおり、診断もしくは監視アッセイにおいて使用できる。この用語には、唾液、血液およびその他の生物学的起源のサンプル、例えば生検標本もしくは組織培養もしくはそれらに由来する細胞などの固形組織サンプル、ならびにそれらの子孫、例えば好ましい実施形態では卵巣癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、大腸癌および乳癌組織から癌を有することが疑われる個体から収集された組織サンプルから入手された細胞を含んでいる。この用語の定義には、さらにまた試薬を用いた処置、可溶化またはタンパク質もしくはポリヌクレオチドなどの所定成分の濃縮または切片作製のための半固体もしくは固体マトリックス中への包埋などの、それらの取得後にいずれかの方法で操作されているサンプルが含まれる。用語「生物学的サンプル」は、臨床サンプルを含んでおり、そしてさらに培養中の細胞、細胞上澄み、細胞溶解液、血清、血漿、生体液および組織サンプルを含んでいる。
【0064】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチドインサートを組み込むための1つ以上のベクターであってよいまたは1つ以上のベクターのためのレシピエントであった個別細胞もしくは細胞培養を含んでいる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれ、その子孫は自然、偶発的、もしくは作為的突然変異に起因して、必ずしも最初の親細胞と完全に同一(形態もしくはゲノムDNA補体において)でなくてもよい。宿主細胞には、本発明の1つ以上のポリヌクレオチドを用いてインビボでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0065】
本明細書で使用する「転移の発生を遅延させる」は、転移の発生を先送りする、妨げる、緩徐化する、遅らせる、安定化するおよび/または先延ばしにすることを意味する。この遅延は、治療される癌および/または個体の病歴に依存して、時間の長さを変化させることであってよい。当業者には明白であるように、十分もしくは重大な遅延は、実質的に、個体が転移を発生しないという点で予防を含むことができる。
【0066】
薬学的組成物の「有効量」は、1つの実施形態では、腫瘍のサイズを収縮させる(例えば乳癌もしくは前立腺癌の状況において)、癌細胞増殖を遅延させる、転移の発生を遅延させる、疾患の結果として生じる症状を減少させる、疾患に罹患している患者のクオリティ・オブ・ライフを向上させる、疾患を治療するために必要とされる他の医薬品の用量を減少させる、標的化および/または内在化によるなどの他の医薬品の作用を増強する、疾患の進行を遅延させるおよび/または個体の余命を延長させるなどの臨床結果を制限なく含む、有益もしくは所望の結果を生じさせるために十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与できる。本発明のためには、薬物、化合物もしくは薬学的組成物の有効量は、癌細胞の増殖を減少させる(もしくは妨害する)ために、そして直接的もしくは間接的のいずれかで、癌細胞の転移の発生、もしくは増殖を減少および/または遅延させるために十分な量である。一部の実施形態では、薬物、化合物、もしくは薬学的組成物の有効量は、他の薬物、化合物、もしくは薬学的組成物と結び付けて達成されても、結び付けずに達成されてもよい。そこで、「有効量」は、1種以上の化学療法剤を投与する状況において考察することができ、単一薬剤は、1種以上の他の薬剤と結び付けて所望の結果を達成できる可能性があるまたは達成される場合は、有効量で投与されると見なすことができる。個々の必要は相違するが、各構成要素の有効量の最適範囲の決定は、当業者の技術範囲に含まれる。典型的用量は0.1〜100mg/kg(体重)を含んでいる。好ましい用量は1〜100mg/kg(体重)を含んでいる。最も好ましい用量は10〜100mg/kg(体重)を含んでいる。
【0067】
本明細書で使用するように、核酸分子もしくは薬剤、抗体、組成物もしくは細胞などは、前記核酸分子もしくは薬剤、抗体、組成物もしくは細胞などがその最初の起源由来の汚染核酸分子もしくは薬剤、抗体、組成物もしくは細胞などから実質的に分離されている場合に単離されていると言われる。
「個体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、家畜、競技用動物、ペット、霊長類、マウスおよびラットが含まれるが、それらに限定されない。
【0068】
本明細書では、用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、あらゆる長さのアミノ酸の重合体を意味するために互換的に使用する。重合体は直鎖状もしくは分枝状であってよく、組換えアミノ酸を含んでいてよく、そして非アミノ酸が割り込んでいてもよい。これらの用語は、さらにまた自然にまたは例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または標識成分とのコンジュゲーションなどの他の操作もしくは修飾などの介入によって遺伝子組換えされているアミノ酸重合体を含んでいる。この用語の定義には、例えばアミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つ以上のアナログ、ならびに当技術分野において知られている他の修飾を含有するポリペプチドもまた含まれる。本発明のポリペプチドは抗体をベースとしているので、これらのポリペプチドは一本鎖または関連鎖として発生する可能性があることは理解されている。
【0069】
本発明の範囲内には、さらにまた本明細書に記載したKID3アゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子(抗KID3抗体を含む)のペプチドミメティックもまた含まれる。そのようなペプチドミメティックには、少なくとも1つのアミノ酸残基が、例えばアミノ酸のD異性体もしくはアミノ酸のN−アルキル化種などの、一般に自然には見いだされないアミノ酸残基と置換されているペプチドが含まれる。他の実施形態では、ペプチドミメティックは、KID3アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子中の少なくとも1つのアミノ結合(−−C(.dbd.O)−−NH−−)をアミド同配体と置換することによって構築される。適切なアミド同配体には、−−CH.sub.2−−NH−−、−−CH.sub.2−−S−−、−−CH.sub.2−−S(O).sub.n−−(式中、nは1もしくは2である)、−−CH.sub.2−−CH.sub.2−−、−−CH.dbd.CH−−(EもしくはZ)、−−C(.dbd.O)−−CH.sub.2−−、−−CH(CN)−−NH−−、−−C(OH)−−CH.sub.2−−および−−O−−C(.dbd.O)−−NH−−が含まれる。アミド同配体と置換するための適切な候補であるKID3アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子中のアミド結合には、KID3アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子処置の所定の対象である内因性エステラーゼもしくはプロテアーゼにより加水分解可能な結合が含まれる。ペプチドミメティックは、天然KID3に対するそれらの類似性をより効果的に増加させるために炭水化物様構造的特徴を有していてよい。
【0070】
本明細書で使用するように、「実質的に純粋」は、少なくとも85%純粋(すなわち、汚染物質を含んでいない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より好ましくは少なくとも99%純粋、もしくはよりいっそう純粋であることを意味する。
【0071】
「毒素」は、細胞内で不都合な反応を生じさせるあらゆる物質を意味する。例えば、癌細胞に向けられる毒素は、癌細胞に不都合な、ときには有害な作用を有するであろう。毒素の例には、放射性同位体、カリケアマイシンおよびメイタンシノイドが含まれるが、それらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用するように、「治療」もしくは「治療する工程」は、好ましくは臨床的結果を含む有益もしくは所望の結果を入手するためのアプローチである。本発明のためには、有益もしくは所望の臨床的結果には、下記の、癌細胞もしくは他の疾患細胞の増殖を減少させる(もしくは妨害する)、癌において見いだされる癌細胞の転移を減少させる、腫瘍のサイズを収縮させる、疾患の結果として生じる症状を減少させる、疾患に罹患している患者のクオリティ・オブ・ライフを向上させる、疾患を治療するために必要とされる他の医薬品の用量を減少させる、疾患の進行を遅延させるおよび/または個体の余命を延長させる、のうちの1つ以上が含まれるが、それらに限定されない。
【0073】
(III.抗体およびポリペプチドを作製する方法)
モノクローナル抗体を作製する方法は、当技術分野において知られている。使用できる1つの方法は、Kohler and Milstein,Nature 256:495−497(1975)の方法またはその変法である。典型的には、モノクローナル抗体は、マウスなどの非ヒト種において発生させられる。一般に、免疫のためにはマウスもしくはラットが使用されるが、他の動物もまた使用できる。抗体は、ヒトKID3を含有する免疫原性量の細胞、細胞抽出物、もしくはタンパク質製剤を用いてマウスを免疫する工程によって生成される。免疫原は、一次細胞、培養細胞株、癌細胞、核酸、もしくは組織であってよいが、それらに限定されない。1つの実施形態では、ヒト胎児腎上皮細胞が使用される。また別の実施形態では、ヒト膀胱もしくは膵臓前駆細胞が使用される。ヒト胎児腎細胞を単離および培養する方法は、実施例1に詳述する。例えばヒト胎児腎、膀胱細胞もしくはヒト膵臓前駆細胞などの免疫のために使用する細胞は、免疫原として使用する前にある期間(少なくとも24時間)にわたり培養されてよい。細胞(例、ヒト胎児腎、膀胱細胞もしくはヒト膵臓前駆細胞)は、それ自体をまたはRibiなどの非変性性アジュバントと組み合わせて免疫原として使用することができる。一般に、細胞は無傷で、そして免疫原として使用する場合に好ましくは生育性でなければならない。無傷細胞は、破裂した細胞より免疫された動物によってエピトープをより良好に検出することが可能である。例えばフロイントの(Freud)アジュバントなどの変性性もしくは刺激性アジュバントの使用は、ヒト胎児腎もしくは他の細胞を破裂させることがあるので、推奨されない。免疫原は、例えば2週に1回、もしくは週1回などの定期的間隔をあけて複数回投与されてよいまたは動物(例えば、組織組換え体において)における生育性を維持できるような方法で投与されてよい。実施例2は、抗KID3抗体を生成するために使用する方法を記述しており、KID3に結合する他のモノクローナル抗体を生成するために使用できる。
【0074】
1つの実施形態では、KID3に結合するモノクローナル抗体は、免疫原としてKID3を過剰発現する宿主細胞を使用することによって入手される。そのような細胞には、例えば、限定的ではなく、ヒト胎児腎細胞およびヒト大腸癌細胞が含まれる。
【0075】
抗体反応を監視するために、動物から小さな生物学的サンプル(例、血液)を入手し、免疫原に対する抗体力価について検査することができる。脾臓および/または数個の大きなリンパ節を除去し、単細胞に分離することができる。所望であれば、プレートもしくはエピトープを塗布したウェルへ細胞懸濁液を適用することによって、(非特異的付着性細胞を除去した後に)脾臓細胞をスクリーニングすることができる。エピトープに対して特異的な膜結合免疫グロブリンを発現しているB細胞はプレートに結合し、懸濁液の残りと一緒に洗い流されることはない。結果として生じるB細胞または分離したすべての脾臓細胞は、次に骨髄腫細胞(例、X63−Ag8.653およびSalk Institute,Cell Distribution Center、カリフォルニア州サンディエゴからの骨髄腫細胞)と融合させることができる。ポリエチレングリコール(PEG)を使用すると脾細胞もしくはリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成することができる。ハイブリドーマは次に選択培地(例、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、さもなければ「HAT培地」として知られている培地)中で培養される。結果として生じたハイブリドーマは、次に希釈率を限定することによって平板培養され、FACSもしくは免疫組織化学検査(IHCスクリーニング)を用いて免疫原(例えば、ヒト胎児腎細胞の表面、癌細胞株の表面、Ag−KID3、胎児膀胱切片など)に対して特異的に結合する抗体の生成についてアッセイされる。選択されたモノクローナル抗体分泌性ハイブリドーマは次に、インビトロ(例、組織培養瓶もしくは中空糸反応装置内で)またはインビボ(例えば、マウスにおける腹水として)のいずれかで培養される。実施例3は、抗KID3抗体を入手およびスクリーニングするために利用される方法についての詳細をさらに提供する。
【0076】
細胞融合技術のまた別の代替法として、EBV不死化B細胞を使用して本発明のモノクローナル抗体を生成することができる。ハイブリドーマが拡大およびサブクローニングされ、所望であれば、上澄みが従来型アッセイ法(例、FACS、IHC、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイなど)によって抗免疫原活性についてアッセイされる。
【0077】
また別の代替法では、抗KID3モノクローナル抗体およびその他の等価の抗体をシーケンシングし、当技術分野において知られているいずれかの手段(例えば、ヒト化、完全ヒト抗体を生成するためのトランスジェニックマウスの使用、ファージ提示テクノロジーなど)によって組換え生成することができる。1つの実施形態では、抗KID3モノクローナル抗体がシーケンシングされ、次にポリヌクレオチド配列が発現もしくは増殖のためにベクター内にクローニングされる。当該抗体をコードする配列は宿主細胞内のベクター内に維持することができ、次に宿主細胞を拡大して将来使用するために冷凍される。
【0078】
図7は、天然シグナル配列を含む、抗KID3モノクローナル抗体であるμ抗KID3のκ軽鎖の核酸および対応する翻訳タンパク質配列を示している。天然シグナル配列はアミノ酸1−20、ヌクレオチド残基1−60である。軽鎖可変領域はアミノ酸21−131、ヌクレオチド残基61−393にある。ヒトκ定常領域はアミノ酸132−238、ヌクレオチド残基394−714にある。終止コドンは、ヌクレオチド残基715−717にある。
【0079】
図8は、天然シグナル配列を含む、抗KID3モノクローナル抗体であるμ抗KID3のG1重鎖の核酸および対応する翻訳タンパク質配列を示している。天然シグナル配列はアミノ酸1−18、ヌクレオチド残基1−54である。重鎖可変領域はアミノ酸19−138、ヌクレオチド残基55−414にある。ヒトγ1定常領域はアミノ酸139−468、ヌクレオチド残基415−1404にある。終止コドンは、ヌクレオチド残基1405−1407にある。
【0080】
モノクローナル抗体抗KID3および他の等価の抗体のポリヌクレオチド配列を遺伝子操作に使用すると「ヒト化」抗体を生成し、前記抗体の親和性、もしくはその他の特性を改良することができる。抗体をヒト化する際の一般的原理は、抗体の非ヒト残余配列をヒト抗体配列と交換しながら、抗体のエピトープ結合部分の塩基配列を保持することを含んでいる。モノクローナル抗体をヒト化するためには一般的に4つの工程がある。これらは:(1)出発抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予測アミノ酸配列を決定する工程と、(2)ヒト化抗体を設計する工程、すなわちヒト化プロセス中に使用する抗体フレームワーク領域を決定する工程と、(3)実際的なヒト化方法/技術とおよび(4)ヒト化抗体をトランスフェクトおよび発現させる工程と、である。例えば、米国特許第4,816,567号;第5,807,715号;第5,866,692号;および第6,331,415号を参照されたい。
【0081】
ヒト定常ドメインへ融合した齧歯類もしくは組換え齧歯類V領域およびそれらの関連相補性決定領域(CDR)を有するキメラ抗体を含む、非ヒト免疫グロブリンに由来するエピトープ結合部位を含む多数の「ヒト化」抗体分子については記載されている。例えば、Winter et al.Nature 349:293−299(1991),Lobuglio et al.Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220−4224(1989),Shaw et al.J Immunol.138:4534−4538(1987)およびBrown et al.Cancer Res.47:3577−3583(1987)を参照されたい。他の参考文献は、適切なヒト抗体定常ドメインとの融合前にヒト支持フレームワーク領域(FR)内へ移植された齧歯類CDRについて記載している。例えば、Riechmann et al.Nature 332:323−327(1988),Verhoeyen et al.Science 239:1534−1536(1988)およびJones et al.Nature 321:522−525(1986)を参照されたい。また別の参考文献は、組換え上張り齧歯類フレームワーク領域によって支持された齧歯類CDRについて記載している。例えば、欧州特許公開第519,596号を参照されたい。これらの「ヒト化」分子は、ヒト受容者におけるそれらの成分の治療的適用の期間および有効性を制限する、齧歯類抗ヒト抗体分子に向けられる望ましくない免疫学的応答を最小限に抑えるために設計される。同様に利用できる抗体をヒト化する他の方法は、Daugherty et al.,Nucl.Acids Res.,19:2471−2476(1991)によって、そして米国特許第6,180,377号;第6,054,297号;第5,997,867号;および第5,866,692号に開示されている。
【0082】
本発明は、μ抗KID3などの、本発明の抗体の一本鎖可変領域フラグメント(「scFv」)もまた含んでいる。一本鎖可変領域フラグメントは、短い連結ペプチドを使用することにより、軽鎖および/または重鎖可変領域を連結させる工程によって作製される。Bird et al.(1988)Science 242:423−426は、1つの可変領域のカルボキシ末端と他の可変領域のアミノ末端との間の約3.5nmを架橋する連結ペプチドの例について記載している。他の配列のリンカーは設計され使用されている、Bird et al.(1988)。リンカーは順に、薬物の付着もしくは固体支持体への付着などの他の機能について修飾することができる。一本鎖変異体は、組換えにより、もしくは合成によるいずれかで生成できる。scFvを合成生成するためには、自動合成装置を使用できる。scFvの組換え生成のためには、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適切なプラスミドを例えば酵母、植物、昆虫もしくは哺乳動物細胞などの真核細胞または例えばE.coliなどの原核細胞のいずれかの適切な宿主細胞内へ導入することができる。当該scFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーションなどの日常的操作によって作製することができる。結果として生じたscFvは、当技術分野において知られている標準的なタンパク質精製技術を用いて単離できる。
【0083】
本発明は、それらの特性に有意な影響を及ぼさない機能的に等価の抗体およびポリヌクレオチドならびに増強もしくは減少した活性を有する変異体を含む、KID3アゴニスト、アンタゴニスト、調節因子および抗体に対する修飾を含んでいる。ポリペプチドの修飾は当技術分野において日常的実践であり、本明細書において詳細に記載する必要はない。修飾されたポリペプチドの例には、アミノ酸残基の保存的置換、機能的活性を有意に有害に変化させないアミノ酸の1つ以上の欠失もしくは付加または化学的アナログの使用を伴うポリペプチドが含まれる。相互に保存的に置換できるアミノ酸残基には:グリシン/アラニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;セリン/トレオニン;リシン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシン(tryosine)が含まれるがそれらに限定されない。これらのポリペプチドは、さらにグリコシル化および非グリコシル化ポリペプチド、ならびに例えば相違する糖を用いたグリコシル化、アセチル化およびリン酸化などの他の翻訳後修飾を備えるポリペプチドを含んでいる。好ましくは、アミノ酸置換は保存的であろう、すなわち置換されたアミノ酸は最初のアミノ酸と類似の化学的特性を有するであろう。そのような保存的置換は当技術分野において知られており、例は上記に提供されている。アミノ酸置換は、1つ以上のアミノ酸を変化させる、もしくは修飾することから可変領域などの領域の完全な再設計までに及ぶことがある。可変領域内の変化は、結合親和性および/または特異性を変化させることができる。その他の修飾方法には、酵素的手段、酸化的置換およびキレート化を含むがそれらに限定されない、当技術分野において知られている結合技術を使用することが含まれる。修飾は、例えばラジオイムノアッセイのための放射性成分の付着などの、イムノアッセイのための標識を付着させるために使用できる。修飾ポリペプチドは、当技術分野において確立された方法を用いて作製することができ、当技術分野において知られている標準的アッセイ法を用いてスクリーニングすることができる。
【0084】
本発明は、本発明のポリペプチドおよび抗体からの1つ以上のフラグメントもしくは領域を含む融合タンパク質をさらに含んでいる。1つの実施形態では、軽鎖可変領域の少なくとも10連続アミノ酸および重鎖可変領域の少なくとも10アミノ酸を含む融合タンパク質が提供される。また別の実施形態では、融合ポリペプチドは異種免疫グロブリン定常領域を含有している。また別の実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書に記載したATCCに寄託されたハイブリドーマから生成された抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有している。本発明のために、抗体融合タンパク質は天然分子ではそれに付着されていない1つ以上の抗KID3ポリペプチドおよびまた別のアミノ酸配列、例えば異種配列もしくは別の領域由来の同種配列を含んでいる。
【0085】
抗KID3ポリペプチドおよびその他のKID3アゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子は、例えば合成による、もしくは組換えによる、当技術分野において知られている方法によって作製できる。KID3ペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子を生成する1つの方法は、ポリペプチドの化学合成、その後に天然立体構造、すなわち精確なジスルフィド結合リンケージを入手するために適切な酸化条件下での処理を含んでいる。これは、当業者にはよく知られている方法を用いると実施できる(例えば、Kelley,R.F.& Winkler,M.E.in Genetic Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.,ed.,Plenum Press,N.Y.,vol.12,pp 1−19(1990);Stewart,J.M.& Young,J.D.Solid Phase Peptide Synthesis Pierce Chemical Co.Rockford,111.(1984)を参照されたい;さらに、米国特許第4,105,603号;第3,972,859号;第3,842,067号;および第3,862,925号も参照されたい)。
【0086】
本発明のポリペプチドは、便宜的にも固相ペプチド合成法を用いて調製することができる(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1964);Houghten,Proc.Natl.Acal.Sci.USA 82:5132(1985))。
【0087】
さらにまた別の実施形態では、完全ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように遺伝子組換えされている市販で入手できるマウスを使用することによって入手することができる。ヒト化もしくはヒト抗体を生成するためには、より所望の(例えば、完全ヒト抗体)またはより堅固な免疫応答を生成するために設計されているトランスジェニック動物を使用することもできる。そのような工学技術の例は、Abgenix,Inc.(カリフォルニア州フリーモント)製のXenomouse(商標)およびMedarex,Inc.(ニュージャージー州プリンストン)製のHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)である。
【0088】
また別の実施形態では、抗体は当技術分野において知られている方法を用いて組換えによりに作製して発現させることができる。抗体は、最初に宿主動物から作製した抗体を単離し、遺伝子配列を入手し、そしてその遺伝子配列を使用して宿主細胞(例、CHO細胞)中で組換えにより抗体を発現させる工程によって組換えにより作製することができる。使用できるまた別の方法は、植物(例、タバコもしくはトランスジェニック乳汁中で抗体配列を発現させる方法である。植物もしくは乳汁中で抗体を組換えにより発現させる方法は、以前に開示されている。例えば、Peeters,et al.(2001)Vaccine 19:2756;Lonberg,N.and D.Huszar(1995)Int.Rev.Immunol 13:65;およびPollock,et al.(1999)J Immunol Methods 231:147を参照されたい。抗体の誘導体、例えばヒト化抗体、一本鎖抗体を作製する方法は、当技術分野において知られている。また別の実施形態では、抗体は、ファージ提示テクノロジーによって組換えにより作製することができる。例えば、米国特許第5,565,332号;第5,580,717号;第5,733,743号;第6,265,150号;およびWinter et al.,Annu.Rev.Immunol.12:433−455(1994)を参照されたい。
【0089】
当該の抗体もしくはタンパク質には、当業者にはよく知られているエドマン分解法によるシーケンシングを受けさせることができる。質量分析法もしくはエドマン分解法から生成されたペプチド情報を使用すると、当該タンパク質をクローニングするために使用されるプローブもしくはプライマーを設計することができる。
【0090】
当該タンパク質をクローニングするまた別の方法は、例えば当該の抗体もしくはタンパク質を発現する細胞に対して精製KID3もしくはその部分を用いて「パンニング」することによる方法である。「パンニング」法は、当該の抗体もしくはタンパク質を発現する組織もしくは細胞からcDNAライブラリーを入手する工程と、第2細胞タイプにおいて前記cDNAを過剰発現させる工程と、そして第2細胞タイプのトランスフェクトされた細胞をKID3への特異的結合についてスクリーニングする工程と、によって実施される。「パンニング」によって細胞表面タンパク質をコードする哺乳動物遺伝子をクローニングする際に使用する方法についての詳細な説明は、当技術分野において見いだすことができる。例えば、Aruffo,A.and Seed,B.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,8573−8577(1987)およびStephan,J.et al.,Endocrinology 140:5841−5854(1999)を参照されたい。
【0091】
抗KID3抗体およびその他のKID3ペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子をコードするcDNAは、当技術分野における標準方法にしたがって特定細胞タイプからmRNAを逆転写させる工程によって入手できる。詳細には、mRNAは、上記のSambrook,et al.(上述)に記載の方法にしたがって様々な溶解酵素もしくは化学溶液を用いて単離できるまたは市販で入手できる核酸結合樹脂によって製造業者(例、Qiagen社、Invitrogen社、Promega社)が提供する添付の取扱説明書にしたがって抽出できる。合成されたcDNAは次に、第2細胞タイプにおいて当該の抗体もしくはタンパク質を生成するために発現ベクター内に導入される。発現ベクターは、エピソームとしてまたは染色体DNAの統合部分のいずれかとして宿主細胞中で複製可能でなければならないことは含意されている。適切な発現ベクターには、プラスミド、例えばアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクターおよびコスミドが含まれるが、それらに限定されない。
【0092】
当該のポリヌクレオチドを含有するベクターは、エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、もしくは他の物質を使用するトランスフェクション;マイクロプロジェクタイル・ボンバードメント;リポフェクション;および感染(例、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染性物質である場合)を含む多数の適切な手段のいずれかによって宿主細胞内へ導入できる。導入するベクターもしくはポリヌクレオチドの選択は、宿主細胞の特徴にしばしば依存するであろう。
【0093】
異種DNAを過剰発現できる宿主細胞は、当該の抗体、ポリペプチドもしくはタンパク質をコードする遺伝子を単離するために使用できる。哺乳動物宿主細胞の非限定的例には、COS、HeLaおよびCHO細胞が含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、宿主細胞はcDNAを、宿主細胞中に存在する場合は、当該の対応する内因性抗体もしくはタンパク質の約5倍以上、より好ましくは10倍以上、いっそうより好ましくは20倍以上のレベルで発現する。KID3への特異的結合についての宿主細胞のスクリーニングは、イムノアッセイまたはFACSによって実行する。当該の抗体もしくはタンパク質を過剰発現する細胞を同定できる。
【0094】
現在では、親KID3ペプチドアゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子に比較して結果として生じるタンパク質のアミノ酸配列における付加、欠失、もしくは変化をコードする突然変異KID3ペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子を生成するために使用できる様々な技術もまた利用可能である。
【0095】
本発明は、本発明の抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含んでいる。本発明のポリペプチドは、当技術分野において知られている方法によって作製できる。ポリペプチドは、抗体のタンパク質分解もしくはその他の分解によって、上述した組換え法(すなわち、単一もしくは融合ポリペプチド)によってまたは化学的合成によって生成できる。抗体のポリペプチド、詳細には約50アミノ酸までの短いポリペプチドは、便宜的にも化学的合成によって作製される。化学的合成方法は当技術分野において知られており、市販で入手できる。例えば、抗KID3ポリペプチドは、固相法を使用する自動ポリペプチド合成装置によって生成できよう。
【0096】
(VII.IV.ポリペプチドおよびモノクローナル抗体をスクリーニングする方法)
KID3に結合するポリペプチドおよびモノクローナル抗体をスクリーニングするためには数種の方法を使用できる。「結合する」は、生物学的もしくは免疫学的に関連する結合、すなわちそれに対して免疫グロブリン分子がコードされるまたはそれにポリペプチドが方向付けられる固有の抗原決定基に特異的である結合を意味する。これは、免疫グロブリンが非特異的標的に対して極めて高濃度で使用される場合に発生することのある非特異的結合を意味していない。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、標準スクリーニング技術を用いてKID3への結合についてスクリーニングされる。この方法で、抗KID3モノクローナル抗体を入手した。ブダペスト条約にしたがって、抗KID3モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマは、2002年12月18日に特許寄託番号PTA−4860を付けてアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)10801 University Blvd.,Manassas VA 20110−2209に寄託されている。
【0097】
KID3に結合するモノクローナル抗体は、癌組織および非癌細胞への結合についてスクリーニングされる。1つの実施形態では、KID3に結合し、さらにヒト癌細胞もしくは組織へ交差反応性であるが、正常細胞もしくは組織へは同程度に交差反応性ではないモノクローナル抗体が選択される。スクリーニングのために使用できる1つの方法は、免疫組織化学検査(IHC)である。標準免疫組織化学検査技術は、当業者には知られている。例えば、Animal Cell Culture Methods(J.P.Mather and D.Barnes,eds.,Academic Press,Vol.57,Ch.18 and 19,pp.314−350,1998)を参照されたい。生物学的サンプル(例、組織)は、生検、剖検、もしくは屍検から入手できる。KID3が癌細胞上にしか存在しないことを確証するために、抗KID3抗体を使用して癌を有する個体からの組織上のKID3の存在を検出でき、他方では癌に罹患している個体からの他の非癌組織または癌を有していない個体からの組織がコントロールとして使用する。組織は、冷凍中の損傷を防止する固形もしくは半固形物質(例えば、アガロースゲルもしくはOCT)中に包埋し、次に染色するために切片作製することができる。相違する臓器からの、そして相違するグレードにある癌を使用すると、モノクローナル抗体をスクリーニングすることができる。スクリーニング目的に使用できる組織の例には、卵巣、乳房、肺、前立腺、大腸、腎臓、皮膚、甲状腺、脳、心臓、肝臓、胃、神経、血管、骨、上部消化管および膵臓が含まれるが、それらに限定されない。スクリーニング目的に使用できる様々な癌のタイプの例には、癌腫、腺癌、肉腫、腺肉腫、リンパ腫および白血病が含まれるが、それらに限定されない。
【0098】
さらにまた別の実施形態では、SK−Ov−3(ATCC番号HTB 77)、LnCap(ATCC番号CRL−1740)、A549(ATCC番号CCL 185)、PANC−1(ATCC番号CRL 1469)、SK−BR−3(ATCC番号HTB 30)、SK−MES−1(ATCC番号HTB 58)、HT−29(HTB−38)、SW 480(ATCC番号CCL 228)、AsPC−1(ATCC番号CRL 1682)、Capan−1(ATCC番号HTB 79)、CFPAC−1(ATCC番号CRL 1918)、HPAF−II(ATCC番号CRL−1997)、Hs−700T(ATCC番号HTB 147)、ES−2(ATCC番号CRL−1978)、PC−3(ATCC番号CRL 1435)、Du−145(ATCC番号HTB−81)、Calu3(ATCC番号HTB−55)、A498(ATCC番号CRL−7908)、Caki−2(ATCC番号HTB−47)、786−O(ATCC番号CRL−1932)、Hs 766T(ATCC番号HTB−134)、MCF7(ATCC番号HTB−22)、BT−474(ATCC番号HTB−20)、Rav CA130(Raven Biotechnologies社で開発された占有権のある肺癌細胞株)、Rav9926(Raven社で開発された占有権のある膵臓癌細胞株)および22Rvl(ATCC番号CRL−2505)などの癌細胞株およびそれらの各組織由来の正常細胞を使用して癌組織に対して特異的であるモノクローナル抗体についてスクリーニングすることができる。卵巣、乳房、肺、前立腺、大腸、腎臓、皮膚、甲状腺、大動脈平滑筋および内皮細胞を含むが、それらに限定されない様々な器官からの正常組織由来の一次、もしくは低継代細胞培養は、陰性コントロールとして使用できる。癌細胞もしくは非癌細胞は、スライドガラスもしくはカバーガラス上でまたはプラスチック表面上で増殖させて、あるいは国際公開番号WO01/43869に記載されたようにCellArray(商標)内で調製して、組織について上述したようにIHCを用いて抗体の結合についてスクリーニングすることができる。あるいは、細胞は非タンパク質溶解手段を用いて増殖表面から取り出し、ペレットにスピニングし、これを次に包埋して上述したようにIHC分析のための組織と同様に処置することができる。細胞は免疫不全動物に接種し、腫瘍を増殖させ、次にこの腫瘍を収集し、包埋し、IHC分析のための組織源として使用することができる。また別の実施形態では、単細胞を一次抗体、蛍光分子と連結した二次「レポーター」抗体と一緒にインキュベートすることによってスクリーニングすることができ、次に蛍光活性化細胞分離分析(FACS)装置を用いて分析することができる。
【0099】
組織切片への抗体の結合を検出するためには、数種の検出システムを利用できる。典型的には、免疫組織化学検査には、一次抗体を組織に結合させる工程と、次にその一次抗体がそれから生成された種に対して反応性の二次抗体を生成し、検出可能なマーカー(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)もしくはジアミノベンジジン(DAB))に結合体化させる工程が含まれる。使用できる1つの代替法は、ポリクローナル鏡像相補的抗体もしくはpolyMICAである。D.C.Mangham and P.G.Isaacson(Histopathology(1999)35(2):129−33)によって報告されたPolyMICA(ポリクローナル鏡像相補性抗体)技術を使用すると、正常組織および癌組織への一次抗体(例、抗KID3抗体)の結合を検査することができる。The Binding Site Limited(P.O.Box 4073 Birmingham B29 6AT England)から数種のpolyMICA(商標)検出キットを市販で入手できる。製品番号HK004.Dは、DAB色原体を使用するpolyMICA(商標)検出キットである。製品番号HK004.Aは、AEC色原体を使用するpolyMICA(商標)検出キットである。あるいは、一次抗体は検出可能なマーカーを用いて直接的に標識されてよい。
【0100】
適切な抗体を選択するためのIHCスクリーニングにおける最初の工程は、マウスにおいて立てられた一次抗体(例、抗KID3抗体)を1つ以上の免疫原(例、細胞もしくは組織サンプル)に結合させる工程である。1つの実施形態では、組織サンプルは様々な器官からの冷凍組織の切片である。細胞もしくは組織サンプルは、癌性であっても非癌性であってもよい。
【0101】
冷凍組織は、固定して、もしくは固定せずに調製し、切片作製し、そして当業者には知られている多数の方法のいずれかによってIHCを実施できる。例えば、Stephan et al.Dev.Biol.212:264−277(1999)およびStephan et al.Endocrinology 140:5841−54(1999)を参照されたい。
【0102】
(V.抗KID3抗体を特徴付ける方法)
抗KID3抗体を特徴付けるためには数種の方法を使用できる。1つの方法は、それが結合するエピトープを同定することである。エピトープマッピングは、KID3を構築するコア炭水化物を合成することによって達成できる。合成された炭水化物は、さらにまた「新規タンパク質」を構築するためにウシ血清アルブミン(BSA)もしくはヒト血清アルブミン(HSA)などのキャリア分子へ合成により付着させることもできる。新規タンパク質の合成は、例えばLundonia Biotech AB(スウェーデン国ルンド)およびDextra Laboratories(英国レディング)などの様々な入手源から市販で入手できる。これらの新規タンパク質は、次に他の抗KID3抗体の発見におけるスクリーニング標的として使用できる。
【0103】
抗KID3抗体を特徴付けるために使用できるさらにまた別の方法は、同一エピトープに結合することが知られている他の抗体、すなわち抗KID3抗体が他の抗体と同一エピトープに結合するかどうかを決定するためにKID3を用いる競合アッセイを使用する方法である。KID3に対する市販で入手できる抗体の例は入手可能であり、本明細書に教示した結合アッセイを用いて同定することができる。競合アッセイは当業者にはよく知られており、そのような方法および代表的データについては実施例において詳細に記載する。抗KID3抗体は、さらにまたそれに結合する組織、癌のタイプもしくは腫瘍のタイプによって詳細に特徴付けることができる。
【0104】
(VI.抗KID3抗体およびKID調節因子を用いて癌を診断する方法)
本明細書に開示した方法によって作製したKID3に対するモノクローナル抗体は、診断目的で、卵巣、乳房、肺、前立腺、大腸、腎臓、皮膚、甲状腺、脳、心臓、肝臓、胃、神経、血管、骨、上部消化管および膵臓が含まれるが、それらに限定されない様々な組織中の癌細胞の存在もしくは非存在を同定するために使用できる。本明細書に開示した方法によって作製したKID3に対するモノクローナル抗体は、充実性腫瘍から遊離した後に血液中を循環している癌細胞の存在もしくは非存在またはその抗原決定基のレベル同定するためにも使用できる。そのような循環している抗原決定基は、無傷KID3エピトープまたは本明細書に教示した方法にしたがって検出される能力を保持しているそのフラグメントであってよい。そのような検出は、当技術分野において一般に使用される標準方法を用いるFACS分析によって実行されてよい。
【0105】
これらの使用は、KID3とKID3へ特異的に結合する抗体との複合体の形成を含むことができる。そのような抗体の例には、番号PTA−4860を付けてATCCに寄託されているハイブリドーマによって生成する抗KID3モノクローナル抗体を含むが、それらに限定されない。そのような複合体の形成は、インビトロであってもインビボであってもよい。理論によって結び付けなくても、モノクローナル抗体抗KID3はKID3に結合し、その後内在化することができる。
【0106】
本発明の診断方法の好ましい実施形態では、抗体は検出可能な標識を有する。使用できる標識の例には、放射性薬剤または例えばフルオロイソチオシアネートもしくはフィコエリトリンなどの蛍光体が含まれる。
【0107】
診断および治療目的のために市販で使用される他の知られている抗体と同様に、本発明の標的エピトープは、正常組織中で広範囲に発現する。これは一部の腫瘍ではさらにアップレギュレートされる。このため、診断薬もしくは治療剤として使用される本発明の抗体の特定用量および送達経路は、特定腫瘍もしくは当面の疾患状態、ならびに治療される特定の個体に合わせて特別仕立てされるであろう。
【0108】
診断のために抗体を使用する1つの方法は、抗体を放射性もしくは放射線不透過性薬剤へ連結させる工程と、前記抗体を個体へ投与する工程とおよびX線もしくは他のイメージング装置を使用してエピトープを発現する癌細胞の表面で標識抗体の局在位置を視認する工程とによる、インビボ腫瘍イメージング法である。抗体は、生理的条件で結合を促進する濃度で投与される。
【0109】
KID3を検出するためのインビトロ技術は当技術分野において日常的に使用されており、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降法、免疫蛍光法、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびウェスタンブロット分析法が含まれる。
【0110】
本発明の態様では、腫瘍もしくは新生物をX線撮影する方法、もしくは放射標識抗体を用いる治療方法の有効性を測定する方法は、本発明の実践にしたがって個体へ放射標識した腫瘍特異的抗体を投与する工程を含んでいる。放射標識抗体は、好ましくはテクネチウム−99m、インジウム−111、ヨウ素−131、レニウム−186、レニウム−188、サマリウム−153、ルテチウム−177、銅−64、スカンジウム−47、イットリウム−90からなる群より選択される放射標識を含むモノクローナルもしくはポリクローナル抗体であってよい。例えばヨウ素131、レニウム−188、ホルミウム−166、サマリウム−153およびスカンジウム−47などの、抗体の免疫応答性を弱めることがなく、インビボで破壊されない治療用放射性核種を用いて標識されたモノクローナル抗体が特に好ましい。当業者であれば、他の放射性同位体が知られており、特定の用途に適合する可能性があることを理解するであろう。X線イメージングは、単光子放射断層撮影法(SPECT)、ポジトロンエミッション断層撮影法(Position Emmission Tomography)(PET)、コンピュータ断層撮影法(CT)もしくは磁気共鳴イメージング(MRI)を用いて実施されてよい。放射免疫イメージングによって所在が確認された転移の場所のより確実な解剖学的規定を許容する相関的イメージングもまた企図されている。
【0111】
他の方法では、癌細胞が切除され、組織が当技術分野においてよく知られている方法(例えば、固定して、もしくは固定せずに、冷凍化合物中への包埋、冷凍および切片作製;エピトープ回収および対染色の様々な方法を使用して、もしくは使用せずに、固定およびパラフィン包埋)によって免疫組織化学検査のために調製される。モノクローナル抗体は、様々な発達段階にある癌細胞を同定するためにも使用できる。抗体は、さらに個体のどの腫瘍がそれらの表面上のエピトープを規定レベルで発現するのか、したがって前記エピトープに対して向けられた抗体を用いた免疫療法にとっての候補であるのかを決定するためにも使用できる。抗体は、KID3を発現する卵巣、前立腺および膵臓の原発癌および転移癌ならびに肺の原発癌のどちらも認識できる。本明細書で使用するように、検出には定性的および/または定量的検出を含むことができ、そして癌細胞中でのKID3の発現の上昇したレベルについて、測定したレベルを正常細胞と比較する工程を含むことができる。
【0112】
本発明は、KID3に結合するいずれかの抗体およびKID3発現のレベルを決定するために使用できる他の方法を用いて、個体において癌(卵巣癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、大腸癌、もしくは乳癌など)の診断を補助する方法をさらに提供する。本明細書で使用する「診断を補助する」方法は、これらの方法が癌の分類もしくは性質に関する臨床的決定を下す際に役立つ、そして確定診断に比較して結論的であっても、結論的でなくてもよいことを意味する。したがって、癌の診断を補助する方法は、個体からの生物学的サンプル中のKID3のレベルを検出する工程および/または前記サンプル中のKID3発現のレベルを決定する工程を含むことができる。エピトープもしくはその一部分を認識する抗体は、血液、唾液、尿、肺分泌液もしくは腹水を含むがそれらに限定されない体液中の生きている、もしくは死んでいる癌細胞から遊離もしくは分泌された抗原決定基を検出するための診断的イムノアッセイを作製するためにも使用できる。
【0113】
当該の特定腫瘍中の全細胞がKID3を発現するわけではなく、そして他の組織中の癌細胞がKID3を発現することもあるので、個体は、望ましくは前記個体における免疫療法の有用性を決定するために癌細胞上のKID3の存在もしくは非存在についてスクリーニングされる。本明細書に開示した方法によって作製した抗KID3抗体は、癌を有すると診断された個体がKID3に対して向けられた抗体を用いる免疫療法の候補であると見なせるかどうかを決定するために使用できる。1つの実施形態では、癌性腫瘍もしくは生検サンプルが、KID3に対して向けられた抗体を用いて、KID3の発現について検査されてよい。KID3を発現する癌細胞を有する個体は、KID3に対して向けられた抗体を用いる免疫療法にとって適切な候補である。抗KID3抗体を用いた染色もまた、正常組織から癌組織を識別するために使用することができる。
【0114】
診断目的に抗KID3抗体を使用する方法は、どの腫瘍が所定の療法に応答する可能性が最も高いのか、癌を有する個体の予後、腫瘍のサブタイプもしくは転移性疾患の起源および疾患の進行もしくは治療への応答を決定するために、例えば化学療法もしくは放射線療法などのいずれかの形態の抗癌療法の前および後のどちらにおいても有用である。
【0115】
本発明の組成物は、他の疾患(非癌)細胞を用いる適用において一般に上述した方法を用いて、癌以外の他の疾患状態を診断するためにも適合する。本発明の方法において使用するために適合する疾患状態には、個体における炎症反応もしくは自己免疫応答に関連する疾患もしくは障害が含まれるが、それらに限定されない。上述した方法は、個体における炎症反応もしくは自己免疫応答を調節するために使用できる。本発明の組成物および方法を使用する診断および/または治療にとって対象である可能性がある炎症および自己免疫障害の結果として生じる疾患および状態には、例証するためで限定するためではなく、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、発作、他の脳外傷、例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患、重症筋無力症、狼瘡、慢性関節リウマチ、喘息、急性若年型糖尿病、AIDS認知症、アテローム硬化症、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および急性白血球媒介性肺外傷が含まれる。
【0116】
本発明の抗体およびその他の治療用薬剤を診断および/または治療使用するためのさらに他の適応には、臓器もしくは移植拒絶のリスク状態にある個体への投与が含まれる。最近の数年間にわたり、皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄などの組織および臓器を移植するための外科技術の有効性においては相当に大きな向上が得られてきた。おそらく、主要な際立った問題は、移植された同種移植片もしくは臓器に対する受容者における免疫寛容を誘導するために納得できる薬剤の欠如である。同種異系細胞もしくは臓器が宿主へ移植される場合は(すなわち、提供者および被提供者が同一種とは相違する個体である)、宿主免疫系は移植された組織の破壊を招く移植組織における異種抗原決定基に対する免疫応答(宿主−対−移植片疾患)を立てる可能性が高い。
【0117】
抗KID3抗体についてのそれらの使用を列挙している本出願のいずれかに記載した使用は、本明細書に記載した他のKID3アゴニスト、アンタゴニストおよび調節因子の使用もさらに含んでいる。そのような実施形態では、KID3アゴニスト、アンタゴニストもしくはその他の非抗体調節因子は本明細書に記載した工程においてKID3抗体と置換され、置換されたKID3調節組成物へ本発明を特別仕立てするために当業者の技術の範囲内に含まれる変更が加えられる。
【0118】
(VII.本発明の組成物)
本発明は、抗KID3抗体、抗KID3抗体に由来するポリペプチド、抗KID3抗体をコードする配列を含むポリヌクレオチドおよび本発明に記載した他の薬剤を含む薬学的組成物を含む組成物も包含している。本明細書で使用するように、組成物はKID3、KID3アゴニスト、アンタゴニスト、調節因子に結合する1つ以上の抗体、ポリペプチドおよび/またはタンパク質および/またはKID3に結合する1つ以上の抗体、ポリペプチドおよびタンパク質をコードする配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドをさらに含んでいる。
【0119】
本発明は、いずれかのKID3アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子と、特定のKID3アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子の1つ以上の意図される機能を支持する追加の化学構造との複合体もさらに提供する。これらの複合体には、本明細書で考察する診断方法、スクリーニング方法もしくは精製方法に使用される不溶性の固体支持体マトリックスなどの高分子へ共有結合したKID3アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子が含まれる。適切なマトリックス材料には、化学的に無活性である、高多孔性を有し、さらにペプチドリガンドと共有連結を形成できる極めて多数の官能基を有する物質が含まれる。マトリックス材料の例およびマトリックス−リガンド複合体を調製する方法は、Dean et al.(eds)Affinity Chromatography:A Practical Approach,IRL Press(1985);Lowe,“An Introduction to Affinity Chromatography”,in Work et al.(eds)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Vol.7,Part II,North−Holland(1979);Porath et al.,“Biospecific Affinity Chromatography”,in Neurath et al.(eds),The Proteins,3rd ed.,Vol.1,pp.95−178(1975);およびSchott,Affinity Chromatography,Dekker(1984)に記載されている。
【0120】
本明細書には、KID3アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子と、本明細書で考察する診断方法に使用されるいずれかのレポーター成分との複合体もまた提供される。
【0121】
抗KID3抗体を含む本発明のKID3アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節因子、ポリペプチドおよびタンパク質は、以下の基準:(a)KID3(卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、もしくは乳癌細胞を含むがそれらに限定されない癌細胞上のKID3を含む)に結合する能力;(b)それに最初の抗体が優先的に結合する同一KID3エピトープへ優先的に結合する能力を含む、KID3への知られている抗KID3抗体の優先的結合を競合的に阻害する能力;(c)インビトロもしくはインビボで生きている細胞の表面上に露出しているKID3の一部分に結合する能力;(d)卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、もしくは乳癌細胞などを含むがそれらに限定されない生きている癌細胞の表面上に露出しているKID3の一部分に結合する能力;(e)KID3を発現する癌細胞(卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、もしくは乳癌細胞などを含むがそれらに限定されない)へ化学療法剤もしくは検出可能なマーカーを送達する能力;(f)KID3を発現する癌細胞(卵巣癌細胞などであるがそれに限定されない)内へ治療剤を送達する能力、のうちのいずれか(1つ以上)によって詳細に同定および特徴付けられる。
【0122】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、ATCC番号PTA−4860の寄託番号を備える宿主細胞、もしくはその子孫によって生成する抗体である。本発明は、これらの寄託されたハイブリドーマおよび等価の抗体もしくはポリペプチドフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、一本鎖(ScFv)、それらの突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、ならびに必要な特異性の認識部位であるエピトープ(KID3)を含むこれらもしくは等価の抗体のいずれかの他の組換え構成によって生成した抗体の様々な調製物をさらに包含している。本発明は、抗KID3ファミリーメンバーの1つ以上の生物学的特性を提示するヒト抗体をさらに提供する。抗KID3ファミリーの等価の抗体(ヒト化抗体およびヒト抗体を含む)、ポリペプチドフラグメント、ならびにこれらのフラグメントのいずれかを含むポリペプチドは、上述した5つの基準のいずれか(1つ以上)によって同定および特徴付けられる。
【0123】
一部の実施形態では、KID3に結合する本発明の抗体、ポリペプチドおよびタンパク質は、本明細書に明記したKID3への抗KID3抗体の優先的結合を競合的に阻害する抗体、ポリペプチドおよびタンパク質である。一部の実施形態では、抗体、ポリペプチドおよびタンパク質は、μ抗KID3抗体が優先的に結合するのと同一のKID3エピトープへ優先的に結合する。
【0124】
したがって、本発明は、以下の:(a)上記に同定した寄託番号を備える宿主細胞もしくはその子孫によって生成した抗体と;(b)そのような抗体のヒト化形と;(c)そのような抗体の1つ以上の軽鎖および/または重鎖可変領域を含む抗体と;(d)そのような抗体の重鎖および軽鎖の可変領域と同種もしくはそれに由来する可変領域、ならびにヒト抗体の重鎖および軽鎖の定常領域と同種もしくはそれに由来する定常領域を含むキメラ抗体と;(e)そのような抗体の1つ以上(少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ)の軽鎖および/または重鎖CDRを含む抗体と;(f)そのような抗体の重鎖および/または軽鎖を含む抗体と;(g)そのような抗体と等価であるヒト化抗体と、のうちのいずれか(または、上記のいずれかを含む薬学的組成物を含む組成物)を提供する。抗体のヒト化形は、最初の抗体または上記で同定した寄託番号を備える宿主細胞によって生成した抗体と同一のCDRを有していても、有していなくてもよい。CDR領域の決定は、当業者の技術の範囲内に含まれる。一部の実施形態では、本発明は、上記に同定した寄託されたハイブリドーマ(または、一部の実施形態ではこれらの抗体の1つの全6つのCDRと実質的に相同であるまたはこれらの抗体の1つに由来する)の1つによって生成した抗体の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つのCDRと実質的に相同である少なくとも1つのCDRを含む抗体または上記に同定した寄託番号を備える宿主細胞によって生成した抗体を提供する。他の実施形態は、本明細書に同定した寄託されたハイブリドーマから生成された抗体またはそのような抗体に由来する抗体の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDRと実質的に相同である少なくとも2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDRを有する抗体を含んでいる。本発明の目的では、結合特異性および/または総合活性(これは癌細胞の成長および/または増殖を減少させるため、癌細胞におけるアポトーシス性細胞死を誘導するため、転移の発生を遅延させるためおよび/または姑息的に治療するために化学療法剤を癌細胞へ、もしくは癌細胞内へ送達することに関してであってよい)は概して維持されるが、活性の程度は寄託されたハイブリドーマによって生成した抗体と比較すると相違することがある(大きくなることも小さくなることもある)。本発明は、これらの抗体のいずれかを作製する方法も提供する。抗体を作製する方法は当技術分野において知られており、本明細書で記載する。
【0125】
本発明は、本発明の抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドをも提供する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、前記抗体の1つ以上の軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでいる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、前記抗体の軽鎖および/または重鎖CDRの1つ以上を含んでいる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、前記抗体の3つの軽鎖および/または重鎖のCDRを含んでいる。一部の実施形態では、ポリペプチドは以下の:最初の抗体の配列の少なくとも5連続アミノ酸、少なくとも8連続アミノ酸、少なくとも約10連続アミノ酸、少なくとも約15連続アミノ酸、少なくとも約20連続アミノ酸、少なくとも約25連続アミノ酸、少なくとも約30連続アミノ酸のうちのいずれかを有する抗体のアミノ酸配列を含み、このとき前記アミノ酸の少なくとも3つは抗体の可変領域由来である。1つの実施形態では、可変領域は最初の抗体の軽鎖由来である。また別の実施形態では、可変領域は前記抗体の重鎖由来である。また別の実施形態では、5(もしくはそれ以上)連続アミノ酸は、前記抗体の相補性決定領域(CDR)由来である。
【0126】
一部の実施形態では、KID3を発現する本発明の細胞、KID3の一部分、本発明の抗KID3抗体もしくはその他のKID3結合性ポリペプチドは、それらのインビボKID3生物活性を調節するために個体へ直接的に投与される。
【0127】
(治療目的でKID3調節因子および抗KID3抗体を使用する方法)
KID3に対するモノクローナル抗体は、癌もしくは他の疾患を備える個体において治療目的で使用されてよい。抗KID3抗体を用いた治療は、上述したようにインビトロおよびインビボ両方における複合体の形成を包含することができる。1つの実施形態では、抗KID3モノクローナル抗体は、癌細胞に結合してその増殖を減少させることができる。抗体は、生理的(例、インビボ)条件で結合を促進する濃度で投与されると理解されている。別の実施形態では、KID3に対するモノクローナル抗体は、例えば大腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌および例えば肉腫などの他のタイプの癌の様々な組織の癌細胞へ向けられる免疫療法のために使用できる。また別の実施形態では、KID3に対するモノクローナル抗体は、単独で癌細胞に結合して細胞分割を減少させることができる。また別の実施形態では、KID3に対するモノクローナル抗体は、癌細胞に結合して転移の発生を遅延させることができる。さらにまた別の実施形態では、癌を備える個体に抗KID3抗体を用いる姑息的治療が与えられる。癌を有する個体の姑息的治療には、疾患の不都合な症状または癌の進行には直接の影響を及ぼさずにその疾患に対して与えられる他の治療の結果として生じる胃原性症状を治療もしくは減少させる工程が含まれる。これは、疼痛、栄養補給、性機能障害、心理的苦悩、抑うつ、疲労、精神障害、悪心、嘔吐などを緩和するための治療を含んでいる。
【0128】
そのような状態では、抗KID3抗体は、ADCCを強化する薬剤などの個体固有の免疫応答を強化もしくは指令する薬剤と一緒に投与されてよい。ADCCを強化する、もしくは減少させるために、抗KID3抗体のグリコシル化パターンもまた修飾することができる。抗体の差別的グリコシル化がADCC反応を増加させることは証明されている(米国特許第6,602,684号)。抗体へのフコシル化の減少もまたADCC反応の増加と結び付いている(Yamane−Ohnuki,et al.,2004)。ADCCを減少させる修飾は、一般に当技術分野において知られており、一部の実施形態では適用可能である。
【0129】
さらにまた別の実施形態では、抗KID3抗体は、放射性分子、毒素(例、カリケアマイシン)、化学療法用分子リポソーム、もしくは化学療法用化合物を含有するその他の小胞と結合体化する、もしくは結び付けることができ、抗体によって認識されるエピトープを含有する癌細胞へこれらの化合物を向かわせるため、したがって癌細胞もしくは疾患細胞を排除するためにそのような治療を必要とする個体へ投与される。何らかの特定の理論に限定しなくても、抗KID3抗体はその表面にKID3を有する細胞によって内在化され、したがって治療作用を誘導するために結合体化された成分を細胞へ送達する。さらにまた別の実施形態では、抗体は、転移の発生を遅延させるためにエピトープを発現する癌の外科的除去時点にアジュバント療法として使用できる。抗体は、腫瘍のサイズを減少させるため、したがって手術を可能もしくは単純化し、手術中に組織を切除せずに残すためおよび/または結果として生じる傷跡を減少させるために、エピトープを発現する腫瘍を備える個体に手術前に投与する(ネオアジュバント療法)こともできる。
【0130】
本発明の実践においては、細胞周期に会わせた投与が企図されている。そのような実施形態では、事前に決定した時期に腫瘍もしくはその他の標的疾患細胞の細胞周期に同期化するために化学療法剤が使用される。それに引き続いて、本発明の抗KID3抗体の投与(単独でまたは追加の治療成分と一緒に)が行なわれる。また別の実施形態では、抗KID3抗体は第2ラウンドの治療の投与前に細胞周期に同期化して細胞分割を減少させるために使用される;第2ラウンドは抗KID3抗体および/または追加の治療成分の投与であってよい。
【0131】
化学療法剤には、癌細胞、薬剤およびリポソームもしくは化学療法化合物を含有するその他の小胞にとって有害であるあらゆる物質を含む、放射性分子、例えば細胞毒素もしくは細胞毒性物質とも呼ばれる毒素が含まれる。適切な化学療法剤の例には、1−デヒドロテストステロン、5−フルオロウラシルデカルバジン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、アンスラマイシン(AMC)、細胞分裂抑制薬、cis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗物質、アスパラギナーゼ、BCG生ワクチン(嚢内)、リン酸ベタメタゾンナトリウムおよび酢酸ベタメタゾン、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ロイクオリンカルシウム、カリケアマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、結合体化卵胞ホルモン、シクロホスファミド、シクロトスファミド、シトラビン、シトラビン、サイトカラシンB、サイトキサン、デカルバジン、ダクチノマイシン、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、塩酸ダウニルビシン、クエン酸ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デクサラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドセタキセル、メシル酸ドラステロン、塩酸ドキソルビシン、ドロナビノール、大腸菌L−アスパラギナーゼ、エメチン、エポエチンアルファ、エルウィニアL−アスパラギナーゼ、エステル化卵胞ホルモン、エストラジオール、リン酸エストラムスチンナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシドシトロロルム因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾール、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、塩酸ゲムシタビン、糖質コルチコイド、酢酸ゴセレリン、グラミシジンD、塩酸グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα−2b、塩酸イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、塩酸レバミソール、リドカイン、ロムスチン、メイタンシノイド、塩酸メクロレタミン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、塩酸メルファラン、mercaptipurine、メスナ、メトトレキセート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトーテン、ミトキサントロン、ニルタミド、酢酸オクトレオチド、塩酸オンダンセトロン、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペントスタチン、塩酸ピロカルピン、プリマイシン、カルムスチンインプラントを伴うポリフェプロサン20、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、塩酸プロカルバジン、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テノポシド、テストラクトン、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、チオグアニン、チオテーパ、塩酸トポテカン、クエン酸トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチンおよび酒石酸ビノレルビンが含まれるが、それらに限定されない。
【0132】
好ましい実施形態では、細胞毒素は、非分裂細胞が比較的に毒性作用を受けないので、分裂細胞もしくは急速分裂細胞において特に有効である。
【0133】
本発明の抗体は、それらが結合する疾患もしくは癌細胞内に内在化させることができるので、このため例えばそれらの不都合な活性のために内在化させる必要がある細胞毒素内へ送達するなどの、治療適用のために特に有用である。そのような毒素の例には、サポリン、カリケアマイシン、アウリスタチン(auristatin)およびメイタンシノイドが含まれるが、それらに限定されない。
【0134】
本発明の抗体、ポリペプチドまたはその他の治療剤もしくは診断薬は、直接的もしくは間接的に、放射性分子、毒素、もしくはその他の治療剤へまたは共有的もしくは非共有的に治療剤を含有するリポソームもしくはその他の小胞へ結び付ける(結合体化もしくは連結を含む)ことができる。抗体は、前記抗体がその標的KID3に結合できる限り、前記抗体に沿ったあらゆる場所で放射性分子、毒素、もしくは化学療法用分子へ連結させることができる。
【0135】
毒素もしくは化学療法剤は、直接的もしくは間接的(例えば、リンカー基を介して、あるいは米国特許第5,552,391号に記載されているようにプラットフォーム分子などの適切な付着部位を備える連結分子を介して)のいずれかで適切なモノクローナル抗体へカップリング(例えば共有結合)させることができる。本発明の毒素および化学療法剤は、当技術分野において知られている方法を用いて特定の標的タンパク質へ直接的にカップリングさせることができる。例えば、薬剤と抗体との間の直接的反応は、各々が相互に反応できる置換体を有する場合に可能である。例えば、一方の上のアミノ基もしくはスルフヒドリル基などの求核基は、他方の上の無水物もしくは酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基とまたは良好な離脱基(例、ハロゲン化物)を含有するアルキル基と反応することができる。
【0136】
本発明の抗体もしくはポリペプチドまたはその他の治療剤もしくは診断薬は、マイクロキャリアを介して化学療法剤へ連結させることもできる。マイクロキャリアは、水に不溶性であり、サイズが約150、120もしくは100μm未満、より一般的には約50〜60μm未満、好ましくは約10、5、2.5、2もしくは1.5μm未満のサイズを有する生分解性もしくは非生分解性粒子を意味する。マイクロキャリアには、約1μm未満、好ましくは約500nm未満のサイズを有するマイクロキャリアである「ナノキャリア」が含まれる。そのような粒子は当技術分野において知られている。固相マイクロキャリアは、アガロースもしくは架橋アガロースから形成されたマイクロキャリア、ならびに当技術分野において知られている他の生分解性物質を含んでいるまたは含んでいない生体適合性の天然ポリマー、合成ポリマーもしくは合成コポリマーから形成された粒子であってよい。生分解性固相マイクロキャリアは、哺乳動物の生理的条件下で、分解性(例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびそれらのコポリマー)、腐食性(例えば、3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)などのポリ(オルトエステル)もしくはセバシン酸のポリ(無水物)などのポリ(無水物))であるポリマーから形成することができる。マイクロキャリアは、その液相マイクロキャリアが生分解性であることを条件に、抗原決定基を含まないリポソーム、もしくはiscom(コレステロールおよびリン脂質、アジュバント−活性サポニンの安定性複合体である、免疫刺激複合体)などの液相(例、油もしくは脂質を基剤とする)または水中油型もしくは油中水型エマルジョン中で見いだされる液滴もしくはミセルであってもよい。生分解性液相マイクロキャリアは、典型的には、スクアレンおよび植物油を含む多数が当技術分野において知られている生分解性油を組み込んでいる。マイクロキャリアは、典型的には球形であるが、球形とは相違するマイクロキャリアもまた容認できる(例、楕円形、棒形など)。それらの(水に関して)不溶性の性質のために、マイクロキャリアは水および水を基剤とする(水性)溶液から濾過できる。
【0137】
本発明の抗体、ポリペプチドまたは他の治療剤もしくは診断薬を含む本発明の複合体は、毒性薬剤もしくは化学療法剤へカップリングすることのできる基と抗体へカップリングすることのできる基の両方を含有する二官能リンカーを含んでいてよい。リンカーは、結合能力への干渉を回避するために抗体を薬剤から離しておくためのスペーサーとして機能できる。リンカーは、開裂可能もしくは非開裂可能であってよい。リンカーは、さらにまた薬剤もしくは抗体への置換体の化学的反応性を増加させるため、したがってカップリング効率を上昇させるために機能することもできる。化学的反応性の上昇は、さもなければ不可能であろう薬剤または薬剤上の官能基の使用も促進することができる。二官能リンカーは、当技術分野において知られている手段によって抗体へカップリングさせることができる。例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの活性エステル成分を含有するリンカーは、アミド連結を介して抗体内のリシン残基へカップリングするために使用できる。また別の実施例では、求核性アミンもしくはヒドラジン残基を含有するリンカーは、抗体炭水化物残基の糖分解酸化によって生成したアルデヒド基へカップリングさせることができる。これらの直接的カップリング方法に加えて、リンカーはアミノデキストランなどの中間キャリアによって抗体へ間接的にカップリングさせることができる。これらの実施形態では、修飾された連結は、リシン、炭水化物または中間キャリアのいずれかを介して行われる。1つの実施形態では、リンカーはタンパク質内の遊離チオール残基へ部位選択的にカップリングさせられる。タンパク質上のチオール基への選択的カップリングのために適切な成分は、当技術分野においてよく知られている。実施例には、ジスルフィド化合物、α−ハロカルボニルおよびα−ハロカルボキシル化合物およびマレイミドが含まれる。α−ハロカルボニルもしくはカルボキシル基と同一分子中に求核アミン官能基が存在する場合は、アミンの分子内アルキル化を介して環化が発生する可能性が存在する。この問題を防止するための方法は、例えばアミンおよびα−ハロ官能基が、望ましくない環化を立体化学的に好ましくないものにするアリール基もしくはトランス−アルケンなどの柔軟性ではない基によって分離されている分子の調製によるように、当業者にはよく知られている。ジスルフィド成分を介するメイタンシノイドと抗体との複合体の調製については、米国特許第6,441,163号を参照されたい。
【0138】
抗体―薬物複合体を調製するために使用できる開裂可能なリンカーの1つは、受容体媒介性エンドサイトーシス中に遭遇するエンドソームおよびリポソームなどの様々な細胞内構成要素の酸性環境を利用するcis−アコニット酸に基づく酸不安定性リンカーである。例えば、ダウノルビシンと高分子キャリアとの複合体の調製についてはShen et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.102:1048−1054(1981);ダウノルビシンと抗黒色腫抗体との複合体の調製についてはYang et al.,J.Natl.Canc.Inst.80:1154−1159(1988);ダウノルビシンと抗T細胞抗体との複合体を調製するための類似方法で酸不安定性リンカーを使用することについてはDillman et al.,Cancer Res.48:6097−6102(1988);ペプチドスペーサーアームを介してダウノルビシンを抗体へ連結させることについてはTrouet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.79:626−629(1982)を参照されたい。
【0139】
本発明の抗体(もしくはポリペプチド)または他の治療剤もしくは診断薬は、当技術分野において知られているいずれかの方法によって放射性分子に結合体化(連結)させることができる。抗体を放射標識するための方法の考察については、“Cancer Therapy with Monoclonal Antibodies T”,D.M.Goldenberg ed.(CRC Press,Boca Raton,1995)を参照されたい。
【0140】
あるいは、抗体は米国特許第4,676,980号にSegalによって記載されたように抗体ヘテロ複合体を形成するために第二抗体に結合体化させることができる。架橋結合抗体の形成は、免疫系の標的を例えばKID3を発現する癌もしくは疾患細胞などの特定タイプの細胞へ合わせることができる。
【0141】
本発明は、化学療法剤へ連結したKID3に結合する抗KID3抗体もしくは他の実施形態を使用して、癌(前立腺癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、もしくは大腸癌を含むがそれらに限定されない)を備える個体における転移の発生を遅延させる方法をさらに提供する。一部の実施形態では、前記抗体は非ヒト抗KID3抗体のヒト化形もしくはキメラ形である。
【0142】
さらにまた別の実施形態では、抗体は、転移の発生を遅延させるためにエピトープを発現する癌の外科的切除時点にアジュバント療法として使用できる。抗体もしくは化学療法剤と結び付けられた抗体は、腫瘍のサイズを減少させるため、したがって手術を可能もしくは単純化し、手術中に組織を切除せずに残すためおよび/または結果として生じる傷跡を減少させるために、エピトープを発現する腫瘍を備える個体に手術前に投与する(ネオアジュバント療法)こともできる。
【0143】
さらにまた別の実施形態では、本明細書に記載したKID3結合実施形態のいずれかは、KID3を発現する癌細胞に結合することができ、KID3を発現する癌細胞中で細胞死事象を誘導する。一部の場合は、細胞死事象はアポトーシス経路を通ってまたは壊死性経路を通ってまたは腫脹性経路を通って発生する。
【0144】
さらにまた別の実施形態では、本明細書に記載したKID3結合実施形態のいずれかは、KID3を発現する癌細胞に結合することができ、KID3を発現する癌細胞に対して活性免疫応答を誘導する。一部の場合は、活性免疫応答は、癌細胞の死を引き起こす(例えば、癌細胞に結合する抗体がアポトーシス性細胞死を誘導する)または癌細胞の増殖を阻害する(例えば、細胞周期進行を遮断する)ことができる。他の場合には、本明細書に記載した新規抗体のいずれかは癌細胞に結合することができ、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)はそれに抗KID3抗体が結合する癌細胞を排除することができる。したがって、本発明は、本明細書に記載した組成物のいずれかを投与する工程を含む、免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0145】
一部の場合には、抗体結合は細胞性および体液性免疫応答をどちらも活性化し、そしてより多くの天然キラー細胞または癌細胞を破壊するために個体の免疫系をいっそう活性化するサイトカイン(IL−2、IFN−γ、IL−12、TNF−α、TNF−βなど)の産生増加を補強することができる。さらにまた別の実施形態では、抗KID3抗体は癌細胞に結合することができ、マクロファージもしくは他の食細胞は癌細胞をオプソニン化することができる。
【0146】
投与のためには抗KID3抗体もしくはそのフラグメントの様々な調製物が使用されてよい。一部の実施形態では、抗KID3抗体もしくはそのフラグメントの様々な調製物がそのまま投与されてよい。薬学上活性な薬剤に加えて、本発明の組成物は、当技術分野においてよく知られており、薬学上の有効な薬剤の投与を促進する、もしくは活性化合物を作用部位へ送達するために医薬上使用できる調製物へ加工するのを促進する相当に不活性な物質である賦形剤および助剤を含む適切な薬学的に受容可能なキャリアを含んでいてよい。例えば、賦形剤は形状もしくは粘稠度を与えることができるまたは希釈剤として機能できる。適切な賦形剤には、安定剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、カプセル化剤、緩衝剤および皮膚浸透強化剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0147】
腸管外投与のために適合する調製物には、例えば水溶性塩などの水溶性形にある活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、注射用油性懸濁液のために適切な活性化合物の懸濁液もまた投与することができる。適切な親油性溶媒もしくはビヒクルには、例えばゴマ油などの脂肪油または例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルが含まれる。注射用水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有していてよく、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランが含まれる。任意で、懸濁液は安定剤もまた含有していてよい。リポソームは、細胞内へ送達するために薬剤を被包化するためにも使用できる。
【0148】
本発明による全身性投与のための医薬調製物は、経腸、腸管外もしくは局所投与用に調製することができる。実際に、全3種のタイプの調製物は、有効成分の全身性投与を達成するために同時に使用されてよい。腸管外および非腸管外薬物送達のための賦形剤ならびに調製物については、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)に述べられている。
【0149】
経口投与のために適切な調製物には、硬質もしくは軟質ゼラチンカプセル、ピル剤、コーティング錠を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、もしくは吸入剤およびそれらの徐放型が含まれる。
【0150】
一般に、これらの薬剤は注射(例、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)による投与のために調製されるが、他の投与形態(例、経口、経粘膜など)もまた使用できる。したがって、抗KID3抗体は、好ましくは食塩液、リンゲル液、ブドウ糖液などの薬学的に受容可能なビヒクルと結合される。
【0151】
特定投与レジメン、すなわち用量、時期および反復回数は、特定の個体およびその個体の病歴に依存するであろう。一般に、少なくとも約100μg/kg(体重)、より好ましくは少なくとも約250μg/kg(体重)、いっそうより好ましくは少なくとも約750μg/kg(体重)、いっそうより好ましくは少なくとも約3mg/kg(体重)、いっそうより好ましくは少なくとも約5mg/kg(体重)、いっそうより好ましくは少なくとも約10mg/kg(体重)が投与される。
【0152】
半減期などの経験による考察が、一般に用量の決定に寄与するであろう。抗体の半減期を延長させるため、そして抗体が宿主の免疫系によって攻撃されるのを防止するためには、ヒト化抗体または完全ヒト抗体などのヒト免疫系と適合する抗体を使用できる。投与頻度は治療を進行しながら決定および調整することができ、癌細胞数の減少、癌細胞の減少の維持、癌細胞の増殖の減少または転移の発生の遅延に基づいている。あるいは、抗KID3抗体の連続徐放性調製物が適切なことがある。徐放性を達成するための様々な調製物および器具は当技術分野において知られている。
【0153】
1つの実施形態では、抗KID3抗体の用量は、1回以上の投与が与えられている個体において経験的に決定することができる。個体には、抗KID3抗体が用量を増量させながら投与される。抗KID3抗体の有効性を評価するためには、特定の癌の疾患状態についてのマーカーを追跡することができる。これらには、触診もしくは目視観察による腫瘍サイズの直接的測定、X線もしくは他のイメージング技術による腫瘍サイズの間接的測定;直接腫瘍生検および腫瘍サンプルの顕微鏡検査によって評価されるような改善;間接的腫瘍マーカー(例、前立腺癌についてのPSA)の測定、疼痛もしくは麻痺の減少;腫瘍に関連する発語、視力、呼吸もしくはその他の障害の改善;食欲の増加;または容認された検査によって測定されるクオリティ・オブ・ライフの向上もしくは余命の延長が含まれる。当業者には、用量が個体、癌のタイプ、癌の病期、癌が個体における他の場所へ転移し始めているかどうか、そして以前に使用されたおよび現在使用されている併用療法に依存して変動することは明白であろう。
【0154】
その他の調製物には、リポソームなどのキャリアを含むがそれに限定されない、当技術分野において知られている適切な送達形が含まれる。例えば、Mahato et al.(1997)Pharm.Res.14:853−859を参照されたい。リポソーム製剤には、サイトフェクチン、多重膜小胞および単膜小胞が含まれる。
【0155】
一部の実施形態では、2つ以上の抗体が存在してよい。これらの抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよい。そのような組成物は、癌腫、腺癌、肉腫または腺肉腫に対して反応性である少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの相違する抗体を含有していてよい。抗KID3抗体は、卵巣、乳房、肺、前立腺、大腸、腎臓、皮膚、甲状腺、骨、上部消化管および膵臓を含むがそれらに限定されない器官における癌腫、腺癌、肉腫、もしくは腺肉腫に対して反応性である1つ以上の抗体と混合することができる。1つの実施形態では、相違する抗KID3抗体の混合物が使用される。抗体の混合物は、当技術分野においてしばしば示されているように、極めて広い範囲の個体集団を治療する際に特に有用なことがある。
【0156】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく例示するために提供する。
【実施例】
【0157】
(実施例1.免疫原としてのヒト腎細胞の調製)
妊娠齢10から18週のヒト胎児腎を、カリフォルニア州アラメダ郡に所在するAdvanced Biosciences Researchから入手した。腎臓を入手し、氷の上の組織培養培地に入れて研究所へ輸送された。到着後直ちに、腎臓を洗浄培地(ペニシリン/ストレプトマイシンおよびゲンタマイシンを含有する低温PBS)へ移した。ピンセットで外側の膜を取り除き、70%エタノール中で腎臓を短時間洗浄し、次に洗浄培地中で2回洗い流した。腎臓を100mm乾燥培養皿内で外科用剪刀を用いて1mmの立方体へ切り刻んだ。これらの組織片を、本明細書ではI/3Fと呼ぶ10mLの規定血清無含有培地中で平板培養した。
【0158】
本実施例のために使用した培地は、以下の構成成分を含有していた:pH7.2、浸透圧295mMで、0.18g/Lの塩化カルシウム(CaCl)、0.298g/Lの塩化カリウム(KCl)、0.000012629g/Lの硝酸カリウム(KNO)、0.068g/Lの硫酸マグネシウム(MgSO)(無水物)、0.037g/Lの塩化マグネシウム−6HO、6.2g/Lの塩化ナトリウム(NaCl)、1.2g/Lの重炭酸ナトリウム(NaHCO)、0.043g/Lのリン酸ナトリウム(NaHPO−HO)、0.088g/Lの二塩基性リン酸ナトリウム(NaHPO)、0.000012629g/Lの亜セレン酸ナトリウム(NaSeO−5HO)、0.000000351g/Lのメタバナジン酸アンモニウム、0.00000372g/Lのモリブデン酸−4HO(molybdic acide−4H0)(アンモニウム)、0.00000075g/Lの硫酸銅−5HO、0.0002502g/Lの硫酸第一鉄−7HO、4.53E−08g/Lの硫酸マンガン、0.0002589g/Lの硫酸亜鉛−7HO、2g/Lのフルクトース、3.57g/LのHepes、0.0000483g/Lのプトレッシン−2HCl、0.0000618g/Lのチオクト酸、0.11003g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.00002523g/Lのリノール酸、0.020173g/LのL−アラニン、0.0175g/LのL−アスパラギン(フリーベース)、0.0045g/LのL−アスパラギン−HO、0.12201g/LのL−アルギニン−HCl、0.024993g/LのL−アスパラギン酸、0.06398g/LのL−システイン−2HCl、0.005268g/LのL−システイン−HCl−HO、0.056913g/LのL−グルタミン酸、0.6g/LのL−グルタミン、0.023253g/Lのグリシン、0.035691g/LのL−ヒスチジンHCl−HO、0.074682g/LのL−イソロイシン、0.077436g/LのL−ロイシン、0.113162g/LのL−リシン−HCl、0.022344g/LのL−メチオニン、0.047688g/LのL−フェニルアラニン、0.038359g/LのL−プロリン、0.032553g/LのL−セリン、0.070073g/LのL−トレオニン、0.011812g/LのL−トリプトファン、0.0751688g/LのL−チロシン(二ナトリウム塩)、0.069316g/LのL−バリン、0.000011299g/Lのビオチン、0.0028714g/LのD−パントテン酸カルシウム、0.006988g/Lの塩化コリン、0.0031972g/Lの葉酸、0.010446g/LのI−イノシトール、0.00281098g/Lのナイアシンアミド、0.0028g/Lの塩酸ピロドキサール、0.00001851g/Lの塩酸ピリドキシン、0.00029128g/Lのリブロフラビン(ribroflavin)、0.0029011g/Lの塩酸チアミン、0.0000499g/LのビタミンB12。本発明の実施では一般に使用される様々な細胞培養培地を使用できるが、現在好ましい実施形態は、血清無含有のフルクトースをベースとする細胞培養培地を使用する。そのような培地は、その開示が全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願第60/504,674号の中に見いだすことができる。
【0159】
組織片を、15mL遠心チューブ内へ移し、この組織片を1,000×gで5分間にわたり遠心した。組織片を、インスリン(10μg/mL)、トランスフェリン(10μg/mL)、上皮増殖因子(20ng/mL)、ソマトトロピン(0.005IU/mL)、ブタ下垂体抽出物(0.2%)、ニワトリ血清(0.1%)、ゲンタマイシン(100μg/mL)、ペニシリン/ストレプトマイシン(1×)およびコラゲナーゼ/ディスパーゼ(0.1%)を含有するI/3F培地中に懸濁させ、4℃で一晩インキュベートした。翌日、消化された組織片を1,000×gで5分間遠心し、I/3F培地を用いて2回洗浄した。ペレットを、インスリン(10μg/mL)、トランスフェリン(10μg/mL)、上皮増殖因子(20ng/mL)、ソマトトロピン(0.005IU/mL)、ブタ下垂体抽出物(0.2%)およびニワトリ血清(0.1%)含有するI/3F培地中に再懸濁させ、フィブロネクチンを事前に塗布しておいた10cmプレート内で培養した。
【0160】
これらの培養条件下で、ヒト胎児腎細胞を基質を塗布したプレートへ付着させ、単層として増殖した。培養培地は週2回取り換えた。
【0161】
細胞を収集するために、細胞単層をカルシウムおよびマグネシウム無含有のハンクス生理食塩液を用いて1回洗い流し、37℃で15分間にわたりハンクス生理食塩液中の10mM EDTA中でインキュベートした。細胞を、静かにピペッティングすることによって培養表面から剥離した。この細胞懸濁液を1,000×gで5分間遠心することによってペレット化した。上澄みを取り除き、細胞を適切に非変性性アジュバントを含む血清無含有培地(I/3F培地)中に再懸濁させた。
【0162】
(実施例2.モノクローナル抗体の生成)
非変性性アジュバント(Ribi,R730,Corixa、モンタナ州ハミルトン)をリン酸緩衝食塩液中で再水和させて4mLとした。この再水和アジュバント100μLを400μLのハンクス平衡食塩液で希釈し、これを引き続き免疫のために使用する実施例1からの細胞ペレットの一部と静かに混合した。細胞ペレットの残りの部分は、アジュバントを含めないこと以外は上記と同様に溶液中で免疫のためにハンクス平衡食塩液中で調製した。
【0163】
マウス1匹当たりおよそ10個のヒト胎児腎細胞をほぼ週1回もしくは2回、足蹠を介してBalb/cマウスに注射した。精確な免疫スケジュールは以下のとおりである:第0日、免疫プラスRibi。第3日、Ribiとともに免疫。第7日、Ribiとともに免疫。第38日、Ribiなしで免疫。第42日、Ribiなしで免疫。第45日、Ribiなしで免疫。第49日、Ribiなしで免疫。第56日、Ribiなしで免疫。第63日、Ribiなしで免疫。第82日、力価検査のために採血。第84日、Ribiとともに免疫。第87日、Ribiとともに免疫。第94日、Ribiとともに免疫。第101日、灌流による追加刺激(Ribiなし)。第104日、融合のためにリンパ節を収集。
【0164】
第82日に、FACS分析を用いてヒト胎児腎細胞に対する抗体の力価を検査するために、各免疫動物の尾から1滴の血液を採血した。力価が少なくとも1:2000に達した時点で、マウスをCOチャンバー内で頸椎脱臼により致死させた。ハイブリドーマ調製のために、リンパ節を収集した。
【0165】
最高力価を示したマウス由来のリンパ節を、35%ポリエチレングリコール4000を用いてマウス骨髄腫細胞株X63−Ag8.653と融合させた。融合から10日後に、ハイブリドーマ上澄みを蛍光活性化細胞分離分析(FACS)によってヒト胎児腎細胞特異的モノクローナル抗体の存在についてスクリーニングした。各ハイブリドーマからの馴化培地をヒト胎児腎細胞のアリコートと一緒に30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞サンプルを洗浄し、0.1mL希釈液中に再懸濁させ、4℃で30分間、ヤギ抗マウスIgGの1μg/mLのFITC結合体化F(ab’)フラグメントと一緒にインキュベートした。細胞を洗浄し、0.5mLのFACS希釈液中に再懸濁させ、FACScan細胞分析装置(Becton Dickinson、カリフォルニア州サンホゼ)を用いて分析した。FACSによって評価された1つ以上の癌細胞株の表面への結合に基づいて、その後の増殖、クローニングおよび特徴付けのためにハイブリドーマクローンを選択した。KID3と名付けられたエピトープに結合するμ抗KID3と名付けられたモノクローナル抗体を作製するためのハイブリドーマを選択した。
【0166】
(実施例3.μ抗KID3を含む、抗KID3抗体の精製)
ヒト胎児腎細胞を10.0mM EDTAの存在下で組織培養フラスコから剥離し、1,400rpmで5分間遠心し、1%BSAおよび2mM EDTA(FACS希釈液)を含有するPBS中に再懸濁させた。細胞を計数し、10個/mLへ調整した。約0.1mLの細胞を37℃で30分間、100μLのFACS希釈液中で100μLのハイブリドーマ上澄みと一緒にインキュベートした。ヒト胎児腎細胞に結合するモノクローナル抗体を、プロテインG親和性クロマトグラフィーを用いて組織培養上澄みから精製した。抗体精製工程には以下の材料を使用した:ハイブリドーマ組織培養上澄み、Immunopure(G)IgG結合バッファー(Pierce番号21011、イリノイ州ロックフォード)、Immunopure IgG溶離バッファー(Pierce番号21009)、濃塩酸(pH調整用)、Corning社製1リットルのPES(ポリエーテルスルホン)、0.22μmフィルター(Corning番号431098、ニューヨーク州コーニング)、Amersham Pharmacia社製GradiFracシステム(Amersham Pharmacia社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、プロテインG−セファロース4 Fast Flow(Amersham Pharmacia番号17−0618−02)、3M KSCN/50mM Tris(pH7.8)であるストリッピングバッファーおよびPBS(リン酸緩衝食塩液)3M Tris(pH9.0)。
【0167】
本明細書ではμ抗KID3と呼ぶマウス抗ヒトKID3抗体を精製するために、上澄みの容量を測定し、この上澄みに等量の結合バッファ―を添加した。混合液を室温へ平衡させた。上澄みを0.22μmフィルターに通過させることにより透明化させた。GradiFracシステム(Pharmacia Biotech社)を用いて、この上澄みをプロテインGカラムへ装填した。このカラムをカラム容量の5〜10倍の結合バッファーを用いて洗浄した。溶離バッファーを用いてモノクローナル抗体を溶離し、2mLのフラクションを収集した。フラクションのOD280示度を入手し、モノクローナル抗体を含有するフラクションをプールした。1/20量の3M Trisを添加することによって、溶離したモノクローナル抗体フラクションを中和した。このサンプルを4℃で1×PBS中で透析した(1回の交換に付き少なくとも3時間かけてバッファーを3回交換した)。精製モノクローナル抗体を無菌濾過(0.2μM)し、2〜8℃で保存した。
【0168】
ハイブリドーマ上澄みからのμ抗KID3モノクローナル抗体の精製後、ヒト胎児腎細胞への結合について再検査した。細胞サンプルを上述したとおりに調製し、様々な濃度で精製抗体と一緒にインキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、0.1mL希釈液中に再懸濁させ、4℃で30分間、ヤギ抗マウスIgGの1μgのFITC結合体化F(ab’)フラグメントと一緒にインキュベートした。細胞を洗浄し、0.5mLのFACS希釈液中に再懸濁させ、FACScanセルソーター(Becton Dickinson、カリフォルニア州サンホゼ)を用いて分析した。FACScanヒストグラム上の右へのシフトは、精製抗体がまだヒト胎児腎細胞に結合することを示していた。
【0169】
他の実験では、生細胞ELISAを用いてKID3へのμ抗KID3の結合を検査した。下記の方法を使用したが、当分野において一般に知られている他の方法も適用できる。細胞(SKOV3、SKBR3、SKMES、SW480、HT−29およびHPAF−II−−すべてをATCC、メリーランド州ベセスダから購入した)を、組織培養処置96ウェル組織培養プレート(Falcon)上の培地を含有する10%ウシ胎児血清(FBS)中でコンフルエントな状態になるまで増殖させた。細胞から培養培地を洗い流し、室温で1時間、1% BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含有するハンクス平衡食塩液(HBSS)中で所望の濃度の50μLの所望の抗体と一緒にインキュベートした。細胞を次に1ウェル当たり100μLのHBSSを用いて3回洗浄し、その後に室温で30分間、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化二次抗体(HBSS中で1ウェル当たり50μLに希釈)と一緒にインキュベートした。細胞を最後にHBSSを用いて3回洗浄し、プレートに1ウェル当たり100μLで変色基質(TMB基質、KPL)を添加した。1ウェル当たり100μLの1Mリン酸を添加して変色反応を停止させた。発色したプレートを450nmの光学密度で読み取った。
【0170】
μ抗KID3抗体を産生するハイブリドーマは、PTA−4860のATCC番号を有している。
【0171】
(実施例4.免疫組織化学検査方法)
癌患者からの冷凍組織サンプルをOCT化合物中に包埋し、ドライアイスを用いてイソペンタン中で急速冷凍した。凍結切片を、厚さ5μmのLeica製3050CMマイクロトームを用いて切断し、vectaboundを塗布したスライド上に載せて解凍した。切片は−20℃でエタノールを用いて固定し、室温で一晩かけて風乾させた。固定した切片は、使用時まで−80℃で保存した。免疫組織化学検査のために、組織切片を取り出し、最初に室温で30分間ブロッキングバッファー(PBS、5%正常ヤギ血清、0.1%Tween 20)中でインキュベートし、次に120分間、ブロッキングバッファー中に希釈したμ抗KID3およびコントロールのモノクローナル抗体(1μg/mL)と一緒にインキュベートした。切片を次にブロッキングバッファーを用いて3回洗浄した。結合したモノクローナル抗体は、0.1M酢酸ナトリウムバッファー(pH5.05)および0.003%過酸化水素(Sigma社製品番号H1009)中のヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)F(ab’)−ペルオキシダーゼ結合体およびペルオキシダーゼ基質ジアミノベンジジン(1mg/mL、Sigma社製品番号D5637)を用いて検出した。染色したスライドをヘマトキシリンを用いて対染色し、Nikon製顕微鏡下で検査した。
【0172】
一部の場合には、適切な抗原決定基回収方法を使用した後に、免疫組織化学検査のためにパラフィン包埋ホルムアルデヒド固定組織を使用した。そのような抗原決定基回収方法の1つは、Mangham and Isaacson,Histopathology 35:129−33(1999)に記載されている。当業者であれば、抗原決定基回収および/または検出の他の方法を使用できよう。凍結組織または適切な場合は抗原回収を行なった固定組織を用いて実施した類似の実験からの結果およびpolyMICA検出を実施した。様々な正常および癌組織への抗KID3抗体の結合について評価した。すべての場合に、コントロール固定組織中での抗体結合を凍結組織の抗体結合と相関付けた。凍結組織からの結果は、コントロールにおいて2つが適合しなかった場合にのみ使用した。
【0173】
便宜上、相違する起源からの凍結外科組織を用いた数回の実験の結合結果の要約は、以下の表1に示した。μ抗KID3/試験総数に結合する腫瘍の数を列挙し、陽性結合のパーセンテージを括弧内に示した。
【0174】
【表1】

IHCおよび抗KID3抗体を用いてKID3発現を詳細に特徴付けるために、追加の組織サンプルをスクリーニングした。これを要約すると、90%を超えるヒト大腸、胃および膵臓腺癌腫の臨床サンプルが抗KID3抗体に結合し、このことは、KID3の発現を示している。評価した64%を超えるサンプルは、腫瘍上皮全体にわたってKID3を一様に(腫瘍上皮中で75%を超える染色と定義した)発現した。正常な非角質化上皮は多数の組織においてKID3を様々に(10%未満から一様まで)発現したが、これらは典型的にはそれから対応するKID3陽性腺癌腫が発生する組織である。心血管、内分泌、血液リンパ、神経筋および中枢神経系由来のほとんどの正常ヒト組織は、KID3を発現しない。腫瘍中でのKID3発現パターンは、対応する正常上皮中の発現パターンとは相違している。正常上皮中でのKID3発現の大半は細胞質中であるが、例えば大腸や胃などの正常有極上皮中での膜KID3発現は主として頂端膜に限定されている。これとは対照的に、胃および大腸腺癌腫などの腫瘍は、高分化腫瘍中での基底外側から低分化腫瘍での膜表面全体に及ぶ発現へ進行して、他の膜ドメイン上でKID3を発現する傾向を示す。
【0175】
(実施例5.免疫組織化学検査の結果)
μ抗KID3モノクローナル抗体を使用して、様々なタイプの組織由来の様々な細胞株との反応性を検査した。結果は、弱陽性染色については、「+」、中陽性染色については「++」、強陽性染色については「+++」、そして陰性染色については「−」と記録した。
【0176】
免疫組織化学検査の結果を、PCT国際特許出願第01/43869号に記載されたように、CellArray(商標)テクノロジーを用いて入手した。様々な樹立細胞株由来の細胞はプロテアーゼを使用せずに増殖表面から取り出し、ひとまとめにしてOCT化合物中に包埋した。細胞を冷凍して切片作製し、標準IHCプロトコールを用いて染色した。
【0177】
様々なヒト樹立正常細胞株および腫瘍細胞株へのμ抗KID3抗体の結合についての結果を、便宜的に表2へまとめた。表2に示した実験には、本明細書に記載した方法を用いたFACS、生細胞ELISAおよびCellArray(商標)が含まれている。
【0178】
(表2.ヒト樹立腫瘍細胞株および正常細胞株へのμ抗KID3抗体の結合)
【0179】
【表2−1】

【0180】
【表2−2】

【0181】
【表2−3】


【0182】
(実施例6.μ抗KID3の腫瘍組織および正常組織への結合)
外科的切除によって入手した(ヒト)正常組織および腫瘍組織を、実施例4と同様に冷凍してスライドガラス上に載せた。凍結切片を、厚さ5μmのLeica製3050CMマイクロトームを用いて切断し、vectaboundを塗布したスライド上に解凍して載せた。切片を−20℃でエタノールを用いて固定し、室温で一晩かけて風乾させた。スライドをNikon製顕微鏡下で検査した。PolyMICA(商標)検出キットを使用してμ抗KID3の組織への結合を決定した。一次μ抗KID3抗体は1μg/mLの最終濃度で使用した。
【0183】
結果を、弱陽性染色については、「1+」、中陽性染色については「2+」、強陽性染色については「3+」、そして陰性染色については「−」と記録した。限局性染色は「Foc」と示した。正常組織とμ抗KID3との染色結果は表3に示した。表4は、μ抗KID3抗体の腫瘍組織サンプルへの結合を示している。
【0184】
【表3】

【0185】
【表4−1】

【0186】
【表4−2】

【0187】
【表4−3】

【0188】
【表4−4】

乳癌の病期判定は、他に明記しない限りNSABPである。
大腸癌の病期判定はAJCCである。
【0189】
(実施例7.KID3を含有するタンパク質の単離)
それに対してμ抗KID3が反応性であるエピトープを同定するために、免疫沈降(Ippt)実験を実施した。Ipptのために、30個の175cmフラスコに含まれるColo205細胞を30mLの溶解バッファー(フラスコ1個に付き1mL)を用いて溶解させた。溶解バッファーは、2% Triton X−100、プロテアーゼ阻害剤カクテル(5mL溶解バッファーに付き完全ミニEDTA無含有プロテアーゼカクテル(Roche Molecular Biochemicals社)1錠)、0.1%アジ化ナトリウムおよび2mM PMSFを用いて強化したハンクス平衡食塩液(HBSS+)から構成した。細胞溶解液を4℃で30分間、24,000×gで遠心し、その後に1mLのプロテインG(Amersham Pharmacia社)からなるカラムの上方を通過させた。次に事前に透明化したColo205細胞溶解液をプロテインG吸着μ抗KID3(10μgのμ抗KID3を5μLのプロテインGと一緒に室温で30分間プレインキュベートした)と一緒に4℃で2時間インキュベートした。ビーズ(事前に透明化したプロテインGビーズとプロテインG吸着μ抗KID3ビーズの両方)を次に溶解バッファーで3回洗浄し、その後に30μLのSDSサンプルバッファー(3% SDS、20%グリセロール、10mM DTT、2%ブロモフェノールブルー、0.1M Tris、pH8.0)を用いて溶離した。25μLの溶離液を次にSDS−PAGEによって分解させ、クーマシー(commassie)染色を通して視認した。5μLの溶離液をSDS−PAGEによって分解させ、さらにウェスタンブロッティング法のためにニトロセルロースへ移した。
【0190】
ブロットはμ抗KID3を用いて検査し、エピトープ認識を確認するためにWestern Blottingキット(Invitrogen社製品番号WB7103)を用いて展開させた。マウスIgGに対するμ抗KID3およびμ抗KID3溶離液を用いたウェスタンブロッティングによって、90kDaから250kDaに及ぶμ抗KID3溶離液に固有の高度にグリコシル化したタンパク質が観察された。クーマシー(commassie)染色によって、多数の、極めて弱いがおよそ100kDからおよそ200kDaに及ぶ高度にグリコシル化したタンパク質に典型的なμ抗KID3固有のスメアが観察された。
【0191】
SDS−PAGEゲルからの染色したタンパク質バンドは清潔なメスの刃を用いて切除し、清潔なエッペンドルフ試験管に入れた。切除したバンドは、質量分析法によるタンパク質同定のために使用するまで、―20℃で保存した。
【0192】
(実施例8.タンデム質量分析法(MS/MS)を用いたμ抗KID3が結合するエピトープの特徴付け)
μ抗KID3が結合するエピトープを実施例7に記載したとおりに単離し、Kane et al.,2002.の方法にしたがってタンデム質量分析法にかけた。タンパク質はSDS−PAGEによって分離し、コロイド状クーマシーブルー試薬(Invitrogen)を用いてゲルを染色した。当該タンパク質をゲル内でトリプシンを用いて消化した。トリプシンペプチドは、Wu et al.,2000に記載されているとおりに、イオントラップ質量分析計(Thermo−Finnigan LCDQ DECA XP)上でのマイクロキャピラリー液体クロマトグラフィーによってシーケンシングした。
【0193】
あるいは、本発明の実践においては、例えばMLADI質量分析法などの他の一般的に知られている質量分析方法も使用できる。
【0194】
質量分析実験の結果は、μ抗KID3特異的バンドが様々なタンパク質から構成されることを指摘した。
【0195】
(実施例9.KID3を同定するための他の特徴付け実験)
KID3を備えるタンパク質の炭水化物特性を試験するために、μ抗KID3に対して反応性であるサイズの相違する2つの調製物(1つの調製物は85〜100kDaの範囲のタンパク質、そしてもう1つの調製物は100kDaを超えるタンパク質を含有していた)は、N−グリカナーゼ、O−グリカナーゼ、シアリダーゼおよびフコシダーゼ(Prozyme、カリフォルニア州)を用いて脱グリコシル化を受けさせた。製造業者のプロトコールにしたがった方法を使用したが、当分野において一般に知られている他の方法も適用できる。N−グリカナーゼ処置した85kDa〜100kDaのタンパク質調製物は、μ抗KID3を用いてウェスタンブロット上で分解させたときにμ抗KID3反応性を示さなかった。N−グリカナーゼ処置した>100kDaのタンパク質調製物は、μ抗KID3を用いてウェスタンブロット上で分解させたときにμ抗KID3反応性の約60%減少を示した。さらにN−グリカナーゼ処置>100kDaタンパク質調製物は、μ抗KID3を用いてウェスタンブロット上で分解させたときにμ抗KID3反応性を示さなかった。これらの結果は、KID3が、フコースを含有していてもしていなくてもよい、N−連結炭水化物である可能性が高いことを指摘している。
【0196】
KID3を含有する精製タンパク質をマイクロタイターウェル(NUNC Maxisorb、NUNC)上で不動化し、1%BSAを含有するHBSSを用いてブロッキングした。ブロックしたプレートへ、非シアリル化形およびシアリル化形両方のLewis抗原LeA、LeB、LeXおよびLeY(Calbiochem、カリフォルニア州サンディエゴ)に対して立てた抗体を導入した。これらの抗体は20μg/mL、50μL/ウェルで使用し、室温で1時間かけてKID3を含有するタンパク質に結合させ、ブロッキングバッファー中で希釈した。インキュベーション時間の終了後、プレートをHBSSを用いて洗浄し、HBSS中の1:1000で使用したHRP結合体化二次抗体(Jackson Immuno Research Laboratories,Inc.、ペンシルベニア州)をプレート上の状態の半分へ導入した。残り半分へは、50μL/ウェルの容量でHRP結合体化ストレプトアビジン(2μg/mL)およびビオチニル化μ抗KID3(2μg/mL)の混合物を導入した。ビオチニル化μ抗KID3はHBSS中で希釈し、二次抗体およびμ抗KID3の両方を室温で30分間かけてプレート上で相互作用するに任せた。30分間のインキュベーション時間の終了後、プレートをHBSSで洗浄し、各ウェルに100μL/ウェルの基質溶液(TMB基質、KPL、オハイオ州クリーブランド)を添加した。変色を観察し、室温で5分後に100μLの1M リン酸を添加して停止させた。このプレートを450nmの光学密度で読み取った。これらの実験から得られたデータは、KID3を発現するタンパク質が、Lewis抗原LeAに対して惹起された抗体によって認識されることを指摘している。しかしLeAに対する抗体は、μ抗KID3と同一結合部位に対して競合することはできなかった。これは、KID3がLeAを用いて同時に見いだすことはできるが、実際にはLewis抗原とは無関係のエピトープであることを示しているであろう。
【0197】
(実施例10.μ抗KID3が大腸癌細胞株に及ぼす作用)
単層として増殖させたときに抗体がインビトロで細胞数を減少させる能力を、様々な量の試験もしくはコントロール精製抗体の存在もしくは非存在下で増殖させた細胞単層を用いて評価し、さらにMTTを用いて細胞数の変化を評価した。MTTは、ミトコンドリア酵素の活性を測定し、相対生育性細胞数と相関付ける色素である。当該細胞は、96ウェルプレート内で10%ウシ胎児血清を補給したF12/DMEM(1:1)増殖培地中で平板培養して増殖させた。下記の細胞株を96ウェルプレートの3つずつのウェル内で、下記の密度で平板培養した:Colo205およびCalu3、各々1500個および1800個/ウェル。平板培養の直後に、μ抗KID3を添加した。細胞は、5日間にわたり37℃、5% CO/大気に設定した加湿インキュベータ内で.インキュベートした。アッセイの終了時に、MTTをPBS(5mg/mL)中に溶解させ、1:10の希釈率でウェルへ直接的に添加した。プレートを4時間にわたりインキュベータ内へ戻した。インキュベーション後、培地を取り除き、MTT沈降物を可溶化するために100μLのDMSOを添加した。プレートを540に設定したプレートリーダー上で読み取った。
【0198】
μ抗KID3は、腫瘍性細胞死の誘導を通して容量依存性方法で大腸癌細胞Colo205の増殖を阻害した。しかし、μ抗KID3は肺癌細胞Calu3(μ抗KID3が結合しない)もしくはHT29(低レベルのKID3を発現するもう1つの大腸癌細胞株)の増殖を10μg/mLの最終濃度で阻害しなかった。本実施例の方法にしたがった抗KID3抗体の能力を測定した数種のインビトロ実験の結果は図4に示した。図5は、化学療法剤イリノテカンおよび5FUと併用した場合の抗KID3抗体のインビトロ活性を示している。
【0199】
(実施例11.μ抗KID3および毒素結合体化抗マウスIgGの内在化)
Mab−ZAP(Advanced Targeting Systems、カリフォルニア州サンディエゴ)は、タンパク質合成を阻害する毒素であるサポリンに結合体化した抗マウスIgGである。この毒素は、細胞膜不透過性である。モノクローナル抗体が内在化可能である細胞表面抗原決定基に結合すると、毒素複合体は結合モノクローナル抗体に結合して内在化し、最終的には細胞を死滅させることができる。毒性活性を証明するための内在化に依存して、Mab−ZAPは、所定の表面エピトープが、細胞毒性作用を発現する内在化に依存するいずれかの毒素にとって適切な標的として機能するかどうかを評価するために機能することができる。したがって、Mab−ZAPは、例えばメイタンシノイドおよびカリケアマイシンなどのそのような内在化依存性毒素のためのモデルとして機能する。
【0200】
腫瘍細胞によるμ抗KID3およびサポリン結合体化抗マウスIgGの内在化ならびにサポリンの内在化後の腫瘍細胞の殺滅作用を試験するために、10mM EDTAを含む保存フラスコからヒト大腸癌細胞であるColo205を取り出し、遠心した。細胞を適切な培地中に50,000/mLで再懸濁させ、96ウェルプレート内に1ウェル当たり100μLで平板培養した。μ抗KID3抗体を10倍濃縮液として適切なウェルに直ちに添加して、最終濃度を10μg/mLとした。室温に15分間置いた後、Mab−ZAP(製品番号IT−04、Advanced Targeting Systems、カリフォルニア州サンディエゴ)を10倍濃縮液として適切なウェルへ添加し、最終濃度を0.001nMから10nMとした。4日間にわたり増殖させた後、37℃で4時間かけてMTT(ストック5mg/mL PBS、ウェル内で1:10の希釈率)を添加した。次に全部のウェルから培地を取り除き、100μL/ウェルのDMSOを添加した。プレートを静かに回転させて青色のMTT沈降物を溶解させ、540nmに設定したプレートリーダーでプレートを読み取った。
【0201】
0.01nMを超えるMab−ZAPを添加した場合は、μ抗KID3の非存在下での染色に比較してμ抗KID3の存在下ではColo205におけるMTT染色の減少が見られ、これは、ヒト大腸癌細胞Colo205の増殖がμ抗KID3およびMab−ZAPの存在下では阻害されたこと、そしてμ抗KID3および毒素結合体化抗マウスIgGがColo205に内在化されたことを指摘していた。Mab−ZAPを10nMで使用した場合は、MTT染色における約90%の減少が見られたが、これはμ抗KID3およびMab−ZAPの結合によるColo205の増殖の約90%阻害に相当した。本実施例の方法による内在化実験の結果は、図6に示した。
【0202】
(実施例12.ヌードマウス中のヒト大腸癌細胞(Colo205およびHT29)を備える抗KID3抗体の有効性)
ヒト大腸癌細胞をヌード(nu/nu)マウスの腎被膜下に移植した。処置動物については、Colo205癌細胞を左腎へ移植し、HT29癌細胞を右腎へ移植した。各腎臓について1回の移植を実施した(コラーゲンゲル中に5×10個の細胞)。移植片は2日間増殖させた。クローンμ抗KID3である抗KID3モノクローナル抗体を第3日に100mg/kgの負荷容量で腹腔内注射し、引き続いて2日毎に3回の注射を実施した。コントロールマウスには生理食塩液だけを注射した。最終注射の3日後、動物に麻酔をかけ、移植片を含む腎臓について検査した。移植片とそれを取り囲む領域を固定し、パラフィンブロック中へ包埋し、全移植片領域を通して切片作製した。
【0203】
類似のプロトコールにしたがった他の実験では、Colo205大腸癌細胞(腎被膜下のコラーゲンゲル中の5×10個の細胞)を2日間にわたり樹立させ、第3日に100mg/kgの負荷容量、さらに2日毎に3〜50mg/kgの用量を投与した。これらの実験では、腎臓を最終投与の4日後に収集した。
【0204】
腎被膜モデル内にColo205ヒト大腸癌細胞が植え込まれた一部の動物の腎臓は図1に示した。図1の上方パネルはコントロール(非処置)動物から、下方パネルはKID3処置動物からである。
【0205】
図2は、抗KID3抗体に対する腎被膜モデルにおけるColo205大腸癌細胞の反応率を評価した数例の腎被膜実験の結果についてのグラフ表示を示している。その図では、(CR)は、いずれの切片においても腫瘍細胞が見られなかったことを意味する完全応答を示している;PRは、結果として生じた腫瘍サイズがコントロールの<50%であることを意味する部分応答を示している;そしてNRは、結果として生じた腫瘍サイズがコントロール腫瘍の50〜100%であることを意味する応答なしを示している。図1に示した結果は部分応答物と評価され、Colo205−2と表示されている。
【0206】
(実施例13.ヒト大腸癌の皮下モデルにおけるKID3抗体の抗腫瘍有効性)
本試験は、大腸癌の皮下モデルにおいて抗KID3抗体についての用量反応性抗腫瘍データを試験するために設計された。陽性コントロールとして、細胞毒性化学療法剤であるフルオロウラシルを使用した。
【0207】
培養Colo205ヒト大腸癌細胞をトリプシン化し、培地中で洗浄し、遠心沈降させ、培地1mL当たり10個で培地中に再懸濁させ(用量0.05mLに付き5×10個)、次に最終注射用量が0.1mLとなるように等量のマトリゲル(登録商標)と混合した。試験中には72匹のNCR.nu/nuホモ接合性マウスに腹腔内投与した。試験群は、(1)0.2mLの生理食塩液コントロールを週2回ずつで10回の処置、(2)50mg/kgのμ抗KID3抗体を週2回ずつで10回の処置、(3)50mg/kgのフルオロウラシル(5FU)を週1回ずつで4回の処置、(4)35mg/kgのフルオロウラシル(5FU)を週1回ずつで4回の処置、(5)50mg/kgの抗KID3抗体を週2回ずつで10回の処置に、50mgのフルオロウラシル(5FU)を週1回ずつで4回の処置を加える、(6)50mg/kgの抗KID3抗体を週2回ずつで10回の処置に、35mg/kgのフルオロウラシル(5FU)を週1回ずつで4回の処置を加える。
【0208】
経時的な腫瘍増殖を評価して抗腫瘍活性を決定した。腫瘍は、療法開始前に触知可能であった。抗体療法に応答した動物は、腫瘍再増殖までの時間を決定するために治療終了後も維持した。
【0209】
この実験の結果は図3に示した。全処置群が癌細胞の増殖を阻害することに関して生理食塩液より有効であるのを見て取ることができる。
【0210】
本明細書に記載した実施例および実施形態は単に例示することを目的としていること、そして当業者にはそれらに照らせば様々な改変もしくは変更が示唆されること、そして本出願の精神および範囲に含まれるべきであることを理解されたい。本明細書に言及したすべての出版物、特許および特許出願は、各個別の出版物、特許および特許出願が詳細に、そして個別に参考として援用されるのと同程度に本明細書に全体にわたって参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】腎被膜モデル内に植え込まれたColo205ヒト大腸癌細胞を有する一部の動物の腎臓を示した図である。図1の上方パネルはコントロール(非処置)動物からであり、下方パネルは処置動物からである。
【図2】抗KID3抗体の全身性投与に対する腎被膜異種移植片モデル内のColo205およびHT−29大腸癌細胞の応答率を示したグラフである。
【図3】皮下モデルにおいてヒト大腸癌細胞株Colo205に抗KID3抗体が及ぼす作用を示した図である。
【図4】抗KID3抗体による単層中で増殖したヒト大腸癌細胞株のインビトロ阻害を例示している数種の実験結果を表したグラフである。
【図5】化学療法剤イリノテカンおよび5FUと併用した場合の抗KID3抗体のインビトロ活性を示した図である。
【図6】ヒト大腸癌細胞株Colo205の増殖にμ抗KID3およびMab−ZAP(サポリンへの抗IgG複合体)が及ぼす作用を示したグラフである。
【図7】天然シグナル配列を含む、抗KID3モノクローナル抗体であるμ抗KID3のκ軽鎖の核酸配列を示した図である。対応するタンパク質翻訳はDNA配列の上方に含まれている。
【図8】天然シグナル配列を含む、抗KID3モノクローナル抗体であるμ抗KID3のG1重鎖の核酸配列を示した図である。対応するタンパク質翻訳はDNA配列の上方に含まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に精製された免疫グロブリンポリペプチドまたはそのエピトープ結合フラグメントであって、KID3へ特異的に結合し、そして以下の特性:
a.癌細胞でKID3に結合する能力、
b.インビトロまたはインビボにおいて生細胞の表面上に露出されるKID3の一部分に結合する能力、
c.KID3を発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、および
d.KID3を発現する癌細胞内に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
のうちの少なくとも1つ以上を有する、精製された免疫グロブリンポリペプチドまたはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項2】
前記癌細胞が、副腎腫瘍、AIDS関連癌、胞状軟部肉腫、星状膠細胞腫瘍、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨の癌(エナメル上皮腫、動脈瘤骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、大腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、癒着性小円形細胞腫瘍、上衣腫、ユーイング腫瘍、骨外粘液性軟骨肉腫、線維形成骨形成不全、線維性骨異形成症、胆嚢および胆管癌、絨毛性疾患、胚細胞性腫瘍、頭頸部癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪腫瘍、肝臓癌(肝芽腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜種、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、後ブドウ膜黒色腫、希少性血液学的疾患、転移性腎癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、睾丸癌、胸腺癌、胸腺腫、転移性甲状腺癌および子宮癌(子宮頸部の癌、子宮内膜癌および子宮平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、請求項1に記載の精製された免疫グロブリンポリペプチドまたはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項3】
前記免疫グロブリンが、非ヒト抗KID3抗体、非ヒト抗KID3抗体のヒト化抗体、非ヒト抗KID3抗体の可変領域由来の可変領域とヒト抗体の定常領域由来の定常領域とを含むキメラ抗体、または非ヒト抗KID3抗体の1つ以上の特性を備えるヒト抗体からなる群より選択される、請求項1に記載の精製された免疫グロブリンポリペプチドまたはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項4】
請求項1に記載の免疫グロブリンポリペプチドまたはそのエピトープ結合フラグメントをコードする、単離された核酸配列。
【請求項5】
前記核酸がプロモーターに作動可能に連結される、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記プロモーターおよび前記核酸が発現ベクターに含まれる、請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
前記ポリペプチドがモノクローナル抗体である、請求項4に記載の核酸。
【請求項8】
請求項4に記載の核酸を含むベクターを用いてトランスフェクト、形質転換または感染した、細胞株。
【請求項9】
実質的に精製された免疫グロブリンポリペプチドまたはそのエピトープ結合フラグメントを生成する方法であって、以下の工程:
a.該免疫グロブリンポリペプチドまたはそのエピトープ結合フラグメントが発現される条件下で請求項4に記載の核酸を用いて形質転換された細胞株を増殖させる工程、および
b.該発現された免疫グロブリンポリペプチドまたはフラグメントを収集する工程、
を包含する、方法。
【請求項10】
前記細胞株がハイブリドーマである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ハイブリドーマがATCC番号PTA−4860である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリンポリペプチドがモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
治療有効量の請求項1に記載の精製された免疫グロブリンポリペプチドまたはエピトープ結合フラグメントを、薬学的に受容可能なキャリアとともに含む、薬学的組成物。
【請求項14】
治療有効量のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを、薬学的に受容可能なキャリアとともに含む薬学的組成物であって、該モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、KID3に特異的に結合し、以下の特性:
a.癌細胞でKID3に結合する能力、
b.インビトロまたはインビボにおいて生細胞の表面上に露出されるKID3の一部分に結合する能力、
c.KID3を発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、および
d.KID3を発現する癌細胞内に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
のうちの少なくとも1つ以上を有する、薬学的組成物。
【請求項15】
前記組成物がさらなる治療成分を含む、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
ATCC番号PTA−4860からなる単離された細胞株またはその子孫。
【請求項17】
癌細胞に化学療法剤を送達するための方法であって、該方法は、該化学療法剤に結合された抗KID3抗体を含む組成物を投与する工程を包含し、ここで、該癌細胞は、副腎腫瘍、AIDS関連癌、胞状軟部肉腫、星状膠細胞腫瘍、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨の癌(エナメル上皮腫、動脈瘤骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、大腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、癒着性小円形細胞腫瘍、上衣腫、ユーイング腫瘍、骨格外粘液性軟骨肉腫、線維形成骨形成不全、線維性骨異形成症、胆嚢および胆管癌、絨毛性疾患、胚細胞性腫瘍、頭頸部癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪腫瘍、肝臓癌(肝芽腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜種、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、後ブドウ膜黒色腫、希少性血液学的疾患、転移性腎癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、睾丸癌、胸腺癌、胸腺腫、転移性甲状腺癌および子宮癌(子宮頸部の癌、子宮内膜癌および子宮平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項18】
前記化学療法剤が個体に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ハイブリドーマが、ATCC番号PTA−4860またはその子孫である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
個体における癌細胞の増殖を阻害する方法であって、該方法は、化学療法剤に結合された抗KID3抗体を含む有効量の組成物を該個体に投与する工程を包含し、ここで、該癌細胞は、副腎腫瘍、AIDS関連癌、胞状軟部肉腫、星状膠細胞腫瘍、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨の癌(エナメル上皮腫、動脈瘤骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、大腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、癒着性小円形細胞腫瘍、上衣腫、ユーイング腫瘍、骨格外粘液性軟骨肉腫、線維形成骨形成不全、線維性骨異形成症、胆嚢および胆管癌、絨毛性疾患、胚細胞性腫瘍、頭頸部癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪腫瘍、肝臓癌(肝芽腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜種、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、後ブドウ膜黒色腫、希少性血液学的疾患、転移性腎癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、睾丸癌、胸腺癌、胸腺腫、転移性甲状腺癌および子宮癌(子宮頸部の癌、子宮内膜癌および子宮平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項21】
前記化学療法剤が、前記癌細胞内に送達される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗KID3抗体が、ハイブリドーマATCC番号PTA−4860またはその子孫によって発現されたモノクローナル抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
個体における癌細胞の存在または非存在を検出するための方法であって、該方法は、該個体由来の細胞を抗KID3抗体と接触させる工程、ならびに該細胞および該抗体に由来するKID3の複合体を検出する工程を包含し、ここで、該癌細胞は、副腎腫瘍、AIDS関連癌、胞状軟部肉腫、星状膠細胞腫瘍、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨の癌(エナメル上皮腫、動脈瘤骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、大腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、癒着性小円形細胞腫瘍、上衣腫、ユーイング腫瘍、骨格外粘液性軟骨肉腫、線維形成骨形成不全、線維性骨異形成症、胆嚢および胆管癌、絨毛性疾患、胚細胞性腫瘍、頭頸部癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪腫瘍、肝臓癌(肝芽腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜種、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、後ブドウ膜黒色腫、希少性血液学的疾患、転移性腎癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、睾丸癌、胸腺癌、胸腺腫、転移性甲状腺癌および子宮癌(子宮頸部の癌、子宮内膜癌および子宮平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項24】
以下のKID3とKID3結合パートナーとの相互作用:
a.癌細胞でKID3に結合する能力、
b.インビトロまたはインビボにおいて生細胞の表面上に露出されるKID3の一部分に結合する能力、
c.KID3を発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、および
d.KID3を発現する癌細胞内に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
のうちの少なくとも1つを遮断する、薬剤。
【請求項25】
請求項24に記載の治療有効量の薬剤を、薬学的に受容可能なキャリアとともに含む、薬学的組成物。
【請求項26】
KID3調節因子であって、以下の特性:
a.ヒトKID3と天然KID3リガンドとの相互作用を妨害または遮断する能力、
b.ヒトKID3と抗KID3抗体との相互作用を妨害または遮断する能力、
c.ヒトKID3に結合する能力、
d.ヒトKID3に対する天然リガンドに結合する能力、
e.抗KID3抗体に結合する能力、
f.ヒトKID3、天然KID3リガンドまたは抗KID3抗体に結合し得る抗体を惹起する際に使用され得る抗原決定基部位を含む、
g.ヒトKID3、天然KID3リガンドまたは抗KID3抗体に結合し得る抗体をスクリーニングする際に使用され得る抗原決定基部位を含む、
h.ヒトKID3と天然KID3リガンドとの間の相互作用またはKID3と抗KID3抗体との間の相互作用を妨害または遮断し得る抗体を惹起する際に使用され得る抗原決定基部位を含む、
i.ヒトKID3と天然KID3リガンドとの間の相互作用またはKID3と抗KID3抗体との間の相互作用を妨害または遮断し得る抗体をスクリーニングする際に使用され得る抗原決定基部位を含む、
のうちの少なくとも1つを有する、KID3調節因子。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−529197(P2007−529197A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527095(P2006−527095)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030676
【国際公開番号】WO2005/028498
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501250429)レイヴェン バイオテクノロジーズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】