説明

LNGの船上再ガス化

【課題】陸上へガスとして送るため液体天然ガス(LNG)を沖合再ガス化するための方法を提供する。
【解決手段】LNGを配送船12から受取り船14へ船舶間積み替え場所16で荷降ろしすること、前記受取り船が船上再ガス化施設30を含み、前記船舶間積み替え場所から、海岸に近い係留場所へ前記受取り船を移動させること、前記受取り船上のLNGを再ガス化して天然ガスを形成すること、再ガス化した天然ガスを、最終的ユーザーへ配送するための陸上ガス分配施設へ移送することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスレファレンス)
本願は、2006年3月15日に出願された「LNGの船上再ガス化」(Onboard Regasification of LNG)と題する米国特許仮出願Serial No.60/782,282、及び2006年11月13日に出願された「LNGの船上再ガス化」(Onboard Regasification of LNG)と題する完成米国特許出願Serial No.11/559,136、及び2006年9月11日に出願された「LNGの船舶間積み替え中の沸騰オフガス管理」(Boil Off Gas Management During Ship−To−Ship Transfer of LNG)と題する米国特許仮出願Serial No.60/843,395の優先権を主張するものである。上に記載した特許出願の夫々の開示は参考のため全体的にここに入れてある。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、液化天然ガス(LNG)の船上再ガス化のための方法に関する。本発明は、更に、LNGの船上再ガス化のための受け取り船に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
天然ガスは、石炭又は油のいずれよりも生ずる排気物及び汚染物質が少ないので、最もクリーンな燃焼用石化燃料である。天然ガス(NG)は、「液化天然ガス(LNG)」として液体状態で或る場所から別の場所へ輸送されるのが慣例である。天然ガスの液化は、LNGが、同じ量の天然ガスがそのガス状態で占める体積の約 1/600しか占めないので輸送するのに一層経済的である。或る場所から別の場所へのLNGの輸送は、「LNGC」と呼ばれている低温貯蔵能力を有する二重船郭海洋航行船舶を用いて達成されるのが最も一般的である。
【0004】
LNGは、LNGC船上低温貯蔵タンク中に入れて貯蔵されるのが典型的であり、その貯蔵タンクは、大気圧か又はそれより僅かに高い圧力で操作される。現存するLNGCの大部分は、120,000m〜150,000mの範囲の大きさのLNG積み荷貯蔵容量を有し、或るLNGCは、264,000mまでの貯蔵容量を有する。
【0005】
LNGは通常再ガス化された後に、最終ユーザーに必要な配布条件に合う温度及び圧力でパイプライン又は他の分配ネットワークを通して最終ユーザーへ分配される。LNGの再ガス化は、与えられた圧力でのLNG沸点より高くLNGの温度を上昇させることにより達成されるのが最も普通である。LNGCは、或る国に存在する輸出ターミナルでLNGの積み荷を受け、次にその積み荷を別の国に存在する輸入ターミナルへ海洋を渡って配送するのが普通である。輸入ターミナルに到着すると、LNGCは桟橋又は岸壁に停泊し、輸入ターミナルにある陸上貯蔵及び再ガス化施設へ液体としてLNGを荷降ろしする。再ガス化施設は、複数の熱交換器、又は気化器、ポンプ、及びコンプレッサーを含むのが典型的である。そのような陸上貯蔵及び再ガス化施設は、大きいのが典型的であり、そのような施設を建築及び操作するのに伴われるコストはかなりのものになる。
【0006】
最近、陸上再ガス化施設の安全性に対する一般民衆の関心は、居住地域及び陸上活動地域から離れた沖合の再ガス化ターミナルを建設させるに至っている。
【0007】
例えば、米国特許第6,089,022号明細書には、再気化天然ガスを海岸へ移送する前に運搬船上でLNGを再ガス化するためのシステム及び方法が記載されている。船舶を取り巻く水本体から取った海水を気化器を通して流し、LNGを加熱気化して天然ガスへ戻し、然る後、その天然ガスを陸上施設へ荷降ろしする。再ガス化は輸出ターミナルから輸入ターミナルまでの前途上LNGCと共に再ガス化施設を移動するように改造されたLNGC船上で行われている。改造LNGC船上のLNGを再ガス化し、係留ブイにライザーにより接続された海面下パイプラインを通して海岸へ送る。海水を使用することは、その腐食性が大きいため問題であり高価になる。しかし、主な関心事は、海水中に有機体が存在することであり、それらは充分殺すことができるであろうが、海洋環境へ戻される冷却された海水の環境に与える影響が存在する。
【0008】
別の例として、低温貯蔵タンクを取付けたスクリューの無い平底荷船を含めた沖合再ガス化ターミナルを用いる。平底荷船は永久的に係留ブイに係留され、その周りを風向に従って動くことができるが、それ自身の水蒸気で運行することはできない。平底荷船は、LNGCよりも長いのが典型的であり、その平底荷船に横付けしてLNGCを並べて停泊するのに役立ち、その結果LNGをLNGCからその永久的に係留された平底荷船の上の貯蔵タンク中へ荷降ろしすることができる。平底荷船は、典型的には貯蔵タンクに隣接してその前方に建設された少なくとも一つの再ガス化ユニットを含む。再ガス化天然ガスは平底荷船から海岸へ海面下パイプラインを通って流れ、そのパイプラインは、係留ブイへ接続された海洋ライザーにより平底荷船に接続される。
【0009】
LNGを再ガス化するのに種々の媒体及び種々の型の気化器が用いられてきている。
【0010】
米国特許第4,170,115号明細書には、河口域水を用いて液化天然ガスを気化するための装置が記載されている。この装置は、間接加熱の中間的流体型の一連の熱交換器を含んでいる。熱源として河口域水を用いて気化した冷凍剤であり、河口域水の凝固点以下の温度を有する加熱媒体を用いてLNGを気化する。並流多管式熱交換器を用いて、その熱交換器から気化した低温天然ガスを、熱源として働く河口域水と同方向流として接触させ、気化天然ガスを加熱する。米国特許第4,224,802号明細書は、多管式熱交換器で同じく河口域水を用いたこの型の装置の変更したものが記載されている。
【0011】
米国特許第4,331,129号明細書には、LNG気化のために太陽エネルギーを利用することが記載されている。太陽エネルギーは水のような中間的流体を加熱するのに用いる。その加熱された水を、次にLNGを再ガス化するのに用いる。水は、気化過程中水の凍結を防ぐため凍結防止添加剤を含んでいる。
【0012】
米国特許第4,399,660号明細書には、連続方式で低温液体を気化するのに適した大気による気化器が記載されている。この気化器は、周囲の空気から吸収した熱を用い、管が付けられて一緒にされている少なくとも3本の実質的に垂直な通路を含む。夫々の通路は中心管を含み、その管の周りを多数のひれが実質的に等間隔に取り巻いている。
【0013】
米国特許第5,251,452号明細書にも低温液体のための周囲空気による気化器及び加熱器が記載されている。この装置は、複数の垂直に取付け、平行に接続した熱交換管を用いている。夫々の管は、多数の外部ひれ、及び内周に沿って中心孔と流通させて対称的に配列した多数の通路を有する。固体の棒が、各管の予め定められた長さについて中心孔内に伸び、気相の低温流体と周囲の空気との間の熱移動速度を増大するようになっている。流体は管の底の沸点から、製造及び他の操作に適した頂部の温度まで上昇する。
【0014】
米国特許第6,622,492号明細書には、周囲の空気から熱を抽出し、循環水を加熱することを含めた液化天然ガスを気化する装置及び方法が記載されている。その熱交換法は、液化天然ガスを気化するための熱交換器、循環水系統、及び周囲の空気から熱を抽出して循環水を加熱するための水塔を含んでいる。年間を通してその方法を稼働させるためには、その方法に、水塔水盤に接続された沈めた燃焼加熱器を補足してもよい。
【0015】
米国特許第6,644,041号明細書には、水塔中へ水を送り、その水の温度を上昇させ、上昇した温度の水を第一熱交換器にポンプで通し、前記第一熱交換器に流体を循環させ、前記上昇した温度の水から循環流体へ熱を移動させ、液化天然ガスを第二熱交換器へ送り、第一熱交換器からの加熱された循環流体をポンプで第二熱交換器へ送り、循環流体からの熱を液化天然ガスへ移し、気化した天然ガスを第二熱交換器から排出することを含む液化天然ガスを気化する方法が記載されている。
【0016】
米国特許第5,819,542号明細書には、LNGを気化するための第一熱交換器、及びガス状天然ガスを過熱するための第二熱交換器を有する熱交換装置が記載されている。それら熱交換器はそれらの流体を加熱用媒体により加熱し、加熱された流体を対応する未加熱流体と混合するための混合装置に接続された出口を有するように構成されている。熱交換器は、共通の囲いを有し、その中でそれらには流体のための別の通路が与えられている。混合装置は、その囲いと一緒になったユニットを構成し、唯一つの流体出口を有する一つの混合室を有する。別の通路には、囲い及び混合室中にLNGを供給するためのバルブが与えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来法により達成されている進歩にも拘わらず、LNGの沖合再ガス化のための別の方法を開発する必要が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の概要)
本発明の一つの態様により、液体天然ガス(LNG)を沖合再ガス化し、ガスとして陸上へ供給する方法において、
船舶間積み替え場所で配送船から受取り船へLNGを荷降ろしすること;
前記受取り船を自身の動力で船舶間積み替え場所から、前記船舶間積み替え場所よりも海岸に近くなっている係留場所へ移動すること;
前記受取り船上の再ガス化施設を用いてLNGを再ガス化し、前記係留場所で天然ガスを形成し;そして
前記天然ガスを最終ユーザーへ配送するための陸上ガス分配施設へ移すこと;を含む方法が与えられる。
【0019】
一つの態様として、本方法は、更に、配送船から受取り船へLNGを荷降ろしする工程の前に、配送船を受取り船に係留する工程を含む。係留のための接近を行う場合、配送船又は受取り船のうち小回りのききにくい方を予め合意した速度で前進させ、二つの船舶のうち小回りのききにくい方が船尾左舷(aft port quarter)に大波(dominant swell)を受けるように船首方位を選択し、配送船が受取り船へ係留されてしまうまでその船首方位を維持する。別法として、配送船又は受取り船のうち小回りのききにくい方を予め合意した速度で前進させ、船首方位を、二つの船舶のうち小回りがきく方を吹いてくる風雨(prevailing weather:優勢な天候)に直接船首を向けるように選択し、その船首方位を配送船が受取り船へ係留されてしまうまで維持する。
【0020】
一つの態様として、配送船及び受取り船を一緒に係留し、LNGを配送船から受取り船へ荷降ろしする間並べて運行する。別法として、配送船及び受取り船を一緒に係留し、LNGを配送船から受取り船へ荷降ろしする間並べて漂流させる。更に別の態様として、配送船と受取り船を縦並びに運行しながら、LNGを配送船から受取り船へ縦並びに荷降ろしすることにより積み替える。
【0021】
貯蔵タンクがLNGで部分的に満たされている場合の船舶の安定性を維持するため、受取り船の船体中、LNGをその揺動に耐えられるタンク中に貯蔵することができ、受取り船は、それに関連した支持船体構造を有する。
【0022】
一つの態様として、受取り船は、配送船のエンジン能力と比較して小さいエンジン能力を有する。受取り船は推進システムを有し、その推進システムは二重燃料ガスタービン、二重燃料ディーゼル、又は二重燃料ディーゼル・電気システムを含んでいてもよい。受取り船の推進システムに必要な動力は、受取り船の上での再ガス化に必要な動力と共有されているのが有利である。受取り船の小回り性を改良するため、受取り船の推進システムに配送船と比較して優れた係留及び位置取り能力を受取り船に与える、船首と船尾の両方に位置する横断スラスターを有する二軸スクリュー、固定ピッチプロペラを取付ける。
【0023】
本発明の一つの態様として、係留場所は、その係留場所に受取り船を係留するための、水中に沈めることが可能で切り離し可能な係留ブイで、受取り船の船体内で船首の方に配置された凹部内に配置させることができる係留ブイを含んでいる。
【0024】
環境への影響を少なくするため、船上再ガス化施設へ熱源として周囲の空気を用いてLNGを再ガス化することができる。一つの態様として、LNGは中間的流体との熱交換により再ガス化され、その中間的流体は、熱源として周囲の空気を用いて加熱される。周囲の空気とLNG又は中間的流体との間の熱交換は、強制通風送風機を使用することにより促進される。
【0025】
本発明の第二の態様により、ガスとして陸上で配送するために液体天然ガス(LNG)を沖合再ガス化するための受取り船が与えられ、そのシステムは:
受取り船をそれ自身の動力で配送船からLNGを受取るための船舶間積み替え場所を出入りするように動かし、前記船舶間積み替え場所よりも海岸に近い係留場所へ移動させるための推進システム;
LNGを再ガス化して天然ガスを形成するための受取り船上の再ガス化施設;及び
前記天然ガスを受取り最終ユーザーへ配送するための陸上ガス分配施設;
を含む。
【0026】
流体力学的安定性を改良するため、受取り船の船体中、LNGはにその揺動に耐えられるタンク中に貯蔵することができ、受取り船はそれに関連した支持船体構造を有する。
【0027】
一つの態様として、受取り船は、配送船のエンジン能力と比較して小さいエンジン能力を有する。一層大きな効率で環境への影響を減少させるため、受取り船の推進システムは、二重燃料ガスタービン、二重燃料ディーゼル、又は二重燃料ディーゼル・電気システムを含んでいてもよい。
【0028】
受取り船の推進システムに必要な動力は、受取り船に積載された再ガス化のために必要な動力と共有されているのが有利である。配送船と比較して優れた係留及び位置取り能力を受取り船に与えるため、受取り船の推進システムには船首及び船尾の両方に位置する横断スラスターを有する二軸スクリュー、固定ピッチプロペラを取付けてもよい。
【0029】
一つの態様として、受取り船は、再ガス化場所に受取り船を係留するための水中に沈めることが可能で切り離し可能な係留ブイを受けるため、その受取り船の船体内で船首の方に配置された凹部を含む。
【0030】
環境への影響を少なくするため、船上再ガス化施設は、熱源として周囲の空気を用いてもよい。一つの態様として、LNGは中間的流体との熱交換により再ガス化され、その中間的流体は、船上再ガス化施設への熱源として周囲の空気を用いて加熱される。好ましくは、周囲の空気とLNGとの間、又は周囲の空気と中間的流体との間の熱交換は、強制通風送風機を使用することにより促進することができる。
【0031】
本発明の性質を一層詳細に理解し易くするため、本発明の幾つかの態様を、図面を参照して単なる例として次に詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、受取り船が接近しながら、前進中の配送船の模式的平面図である。
【図2】図2は、図1の配送船と受取り船との、配送船に近く受取り船が操縦されて行く時の模式的平面図である。
【図3】図3は、配送船から、船上再ガス化施設を取付けた受取り船へLNGを積み替えている時の、船舶間積み替え場所に配置された配送船と受取り船を例示する、本発明の第一の態様の模式的平面図である。
【図4】図4は、再ガス化場所と、陸上分配施設へガスを送るための海中パイプラインの模式的平面図である。
【図5】図5は、LNGが受取り船上で再ガス化され、一つ以上の海洋ライザー(単数又は複数)及び付随の海中パイプライン(単数又は複数)を通って海岸へ移送される時の、櫓係留ブイの所に係留された受取り船の模式的側面図である。
【図6】図6は、受取り船上の再ガス化施設の一つの可能な工程図である。
【図7】図7は、LNGCが接近しながら、前進中の船上再ガス化施設を有する船舶の模式的平面図である。
【図8】図8は、LNGC船が配送船に一層近く操縦された時の図7の船舶の模式的平面図である。
【図9】図9は、配送船から、船上再ガス化施設を取付けた受取り船へLNGを積み替えている時の船舶間積み替え場所に配置された図8の船舶を例示する、本発明の第二の態様の模式的平面図である。
【0033】
(好ましい態様についての詳細な記述)
ガスとして陸上へ送るためLNGを沖合で再ガス化するための、本発明の方法の特別な態様を次に記述する。ここで用いる用語は、特別な態様を記述する目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。別に定義しない限り、ここで用いる技術的及び科学的用語は、全て本発明が属する分野の当業者によって普通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0034】
用語「艀(はしけ)運搬(lightering)」は、油、アンモニア、液化石油ガス(LPG)のような液体積み荷を船舶間積み替えの過程を記述するため石油工業の分野で用いられている。艀運搬は、非常に大きな原油運搬船(VLCC)、又は超大型原油運搬船(ULCC)から、この大きさのタンカーを停泊させるには港が充分深くないか、又は充分広くない場合に小型の船舶へ原油積み荷を降ろすのに用いられる方法である。艀運搬は原油運搬船に関して確立された実施法であるが、通常操作の一部分として低温のLNGを船舶間で積み替えることは従来全く試みられていなかった。その理由の一つは、輸入ターミナルでの陸上貯蔵及び再ガス化施設は大きいのが典型的であり、そのような施設を建設及び操作するのに伴われるコストが大きく、慣用的LNG契約は輸入ターミナルの建設に伴われるコストを妥当なものにするために長期(20年)契約に基づくのが伝統的になっていたことにある。今までLNGの船舶間積み替えが用いられていなかった別の理由は、それが受取り船に高価な改造を加える必要があり、管理される必要のある技術的リスクが大きいことである。本発明は、一つにはこれらの技術的問題を解決するために開発された。
【0035】
本発明の第一の態様を、図1〜6を参照して次に記述する。配送船12には、天然ガス井又はパイプラインに伴われる陸上又は沖合液化施設でLNGの積み荷が積まれている。この態様では、配送船12は、モス型(Moss−style)タンクを具えた慣用的LNG運搬船である。その荷積み配送船12は、次にその液化施設がある出発国とは異なった国にあるのが典型的な受取りターミナルの方へ運行する。到着した時、受取り船14を急送させて、船舶間積み替え場所(一般に参照番号16で示してある)で配送船12とドッキングさせる。
【0036】
船舶間積み替え場所16は、配送船12と受取り船14が、夫々一緒に係留されて配送船12から受取り船14へのLNGの積み替えをし易くすることができるどのような場所でもよい。船舶間積み替え場所の選択は、水深、海の状態、いつも吹く風、標準的要件、及び交通量を含めた数多くの関連因子に依存する。船舶間積み替え場所16の海岸からの距離は広く変えることができるが、配送国の領海の外で、海岸から12〜200海里の範囲の距離にあるのが好ましい。船舶間積み替えが与えられた国の領海内で行われる場合、係留及び積み替え操作中、2艘の船舶の各々の統制を与えるため地方条例は政府機関を必要とする場合がある。そのようなシナリオでは、支援船28を用いて係留マスター(Mooring Master)を配送船又は受取り船へ送り、他の船には係留マスター助手を常住させておく。別法として、夫々の船舶の艦長の指揮の下で公海上で船舶間積み替えを行なってもよい。
【0037】
受取り船14は改造された海洋航行LNG船、又は再ガス化施設30を含むように特注建造された船舶にすることができる。経済的であるためには、配送船12は、液化施設と受取り施設との間の距離の大部分を運行し、受取り船14を船舶間積み替え場所16と再ガス化場所20との間のできるだけ短い距離を運行させるようにすべきである。しかし、もし必要ならば、受取り船14には、それを自身の動力で輸入ターミナルと輸出ターミナルとの間の海洋又は海を横切って運行できるようにする動力システムを取付けることができることを理解すべきである。
【0038】
現在の海洋航行LNG船舶群の操作は、動力のために水蒸気推進プラントに依存している。水蒸気は、LNG船舶上のLNG貯蔵タンクからの沸騰オフガスを燃焼させ易いため主に用いられている。LNG船舶のための別の型の動力プラント及びタービンシステムに関し、次のものを含めた多数の特許が公告されている:米国特許第6,609,360号;米国特許第6,598,401号;米国特許第6,581,368号;米国特許第6,374,591号;米国特許第6,367,258号;米国特許第5,457,951号;米国特許第4,995,234号;及び米国特許出願No.20050061002;それらは全て参考のためここに入れてある。
【0039】
本発明の一つの態様として、受取り船14には、一つ以上の二重燃料供給エンジン、例えば、水蒸気タービンよりも適しているガスとディーゼルのエンジンの組合せが配備されている。なぜなら、それらは、さもなければ水蒸気タービンの場合に必要になる操作及び管理の専門乗り組み員を必要としないからである。別の態様では、二重燃料供給ディーゼルエンジンを直接発電機に結合し、それにより発生した電力を電気モーターへ送り、プロペラシャフトを駆動するのみならず、船上再ガス化施設30に伴われるどのような電動LNGポンプ、扇風機、又は他の設備でも駆動する。電気は、受取り船14に積載された宿泊設備38に伴われる宿泊装備負荷のためにも用いられる。二重燃料供給エンジンを使用することにより受取り船14が前進している時のその受取り船14に積載された推進システム18、及び受取り船14が再ガス化場所20に停泊している時の再ガス化施設30へ動力を送ることができる。それは、係留をし易くするため船首及び船尾を横断するスラスター48のような操縦装置への動力供給も簡単にする。上に記載した動力共有は、最も効率的なエンジンを利用できるようにすることにより、配備された動力及び全ての動力発生の全体的減少を可能にする。
【0040】
船舶間積み替え場所16で配送船12から受取り船14へLNGを積み替えた後、配送船12は液化施設、輸出ターミナル、又は別の場所へ再び積み荷するために航行して戻ることができる。永久的に係留された沖合貯蔵構造体よりも受取り船14を使用することの重要な利点は、受取り船14がそれ自身の動力で沖合を航行し、或は海岸線を上下して航行し、極端な天候状態を回避するか、又はテロの脅威を回避し、或は造船場へ輸送し、或は別のLNG輸入又は輸出ターミナルへ輸送することができることである。この場合には、受取り船14はその航海中、船に貯蔵されたLNGがあっても無くてもそのように行動することができる。同様に、特定の場所でもはやガスが不必要になったならば、受取り船14は、必要が大きな別の場所へ自力で航行することができる。
【0041】
二つの船舶が接近し、係留される仕方を次に記述する。もし必要ならば、係留マスター及び彼らの助手をそれら船舶に常住させ、接近、係留、切り離し操作を行わせる。殆どの状況で、二つの船舶の中で大きい方を予め合意した速度で前進させ、二つの船舶のうち大きい方が目的とする係留側と反対側の船尾側に吹いてくる風雨を受けるように船の向きを選択するか、又は二つの船舶の中で大きい方が吹いてくる風雨に直接船の向きをとるようにするのが最も安全である。この船の向きを、二つの船舶が互いに係留されてしまうまで維持する。このやり方で、二つの船舶のうち大きい方が小さい方の船舶を風下にし、それにより風雨の防壁として働き、二つの船舶のうち小さい方が大きい方へ近づくのを安全にする。二つの船舶のうち大きい方は、配送船12か、又は配送船14にすることができる。
【0042】
しかし、或る状況では、二つの船舶のうち(大きさには無関係に)操縦し易い方を、吹いてくる風雨の方へ向けて予め合意した速度で前進させている操縦しにくい船に接近させる、即ち、吹いている風雨を向かい風側にして接近させるのが最も安全である。
【0043】
どちらのシナリオでも、最終的接近及び係留中の好ましい速度は、3〜6ノットの範囲にある。しかし、速度は、夫々の場合で両方の船舶の操縦性を最適にし、夫々の船舶のエンジンアイドリング速度のような相対的因子及び起きている環境条件(風、波、及び流れ)を考慮に入れて調節する。配送船12又は受取り船14のどちらかが一層操縦し易いであろう。例えば、受取り船14に電気推進システムが配備され、高い操縦可能特性を持つ場合、0ノットを含めたどのような速度でアイドリングさせてもよい。
【0044】
図1〜3に例示した態様では、配送船12が設定されたコースを維持し、予め合意した速度で吹いてくる風雨に直接向かって前進している。両方の船舶が吹いてくる状況に向かって進み、接近を行うことも同様に可能である。受取り船14のコース及び速度が配送船12のコース及び速度と一致するまで、配送船12に近づけるように操縦することにより、受取り船14を配送船12に横付けする。二つの船舶の接近角度は、二つの船舶の間の平行間隔が相対的進行角度を名目上2〜5度にして減少するにつれて、一般に減少する。次に、どちらかの船舶が、両方の船舶を平行にするように進行方向を変えることができる。
【0045】
図7〜9に例示した別の態様では、受取り船14が、船尾左舷側22に大波を受けるように設定されたコースを維持し、配送船12が風下側24から受取り船14に接近する。両方の船舶が吹いてくる状況に船首を向けて接近を行うことも同様に可能である。この態様では、配送船12が、配送船12のコース及び速度が受取り船14のコース及び速度と一致するまで、受取り船14に近づけるように操縦することにより、受取り船14に横付けする。二つの船舶の接近角度は、二つの船舶の平行間隔が、相対的進行角度を名目上2〜5度にして減少するにつれて一般に減少する。この態様では、受取り船14の推進システム18は、船首及び船尾の両方か、又は船首だけに配置された、受取り船14に係留及び位置付け能力を与える横断スラスター48を有する二軸スクリュー、固定ピッチプロペラを含む。この大きなレベルの操縦可能性は、接近、係留、及び切り離し操作中、或は受取り船14が乾ドック(図示されていない)へ移送される場合に有用になる。
【0046】
配送船12又は受取り船14には、二つの船舶を一緒にする場合に伴われる力を吸収するために緩衝設備26が配備されている。緩衝設備は、油を艀で運搬する操作中に用いられるものと同じ型のものであり、例えば、クッションが二つの船舶の間で水に浮かぶように、ゴムタイヤで被覆された複数の空気で膨らませたゴム「クッション」である。二つの船舶が一緒に近づいてくる時、緩衝設備26を通って衝撃荷重が出来るだけ均等に分配されるような仕方でそれら船舶を操縦する。緩衝設備26は、配送船12又は受取り船14の船上に配備してそれと共に運行されるか、又は配送船12又は受取り船14の船上に、或はそれら二つの船舶の間に緩衝設備26を配置するのに役立つ別の補助船28を用いて船舶間積み替え場所16へ送ることも同様にできる。
【0047】
二つの船舶が接近を完了した後、配送船12を受取り船14に適当な構成の係留ライン31を用いて係留する。この構成には、スプリングライン32、船尾ライン34、及び船首ライン36が含まれる。一緒に係留したならば、船舶間積み替え操作中、二つの船舶を前進させ続けるか、又は一緒に漂流させるか、投錨する。本発明の一つの好ましい態様として、係留した後、それら船舶を漂流させ、小さい方の船舶の推進システムを止める。大きい方の船舶の推進システムは、もし必要ならば両方の船舶をコース上に維持するように僅かな調節を行えるように作動し続ける。このシナリオでは、係留ライン31の構成は、大きな船舶が漂流中小さい船舶を周りに効果的に曳航できるように充分な係留ライン31を含む。
【0048】
配送船12から受取り船14へのLNGの積み替えは、天候、海流、船舶の相対的大きさ、係留ライン及び緩衝設備の構成、LNG積み替えシステムを接続させるマニホルド構成の型、或る海の状態の運動特性、及び操縦特性のような関連因子により二つの船舶を、前進、漂流、又は投錨させて行うことができる。受取り船14の乾舷が、もし望むならば、LNG積み替え操作中に配送船12のそれと実質的に同じに確実に維持されるようにバラスト装置(図示されていない)を用いることができる。
【0049】
配送船12から受取り船14への船舶間積み替えは、どのような適当なLNG積み替え設備40でも、例えば、米国特許第6,637,479号明細書に記載されたLNG沖合積み替えのためのシステムを用いて行われる。そのシステムは、可撓性パイプ機構の一方の端に取付けられたカップリングヘッドで、一方の船の一方の端にある甲板に、それが用いられていない時に取付けられるように構成されたカップリングヘッドと、他方の船の一方の端に取付けた接続ユニットで、前記カップリングヘッドに組込まれたバルブ機構を通って前記他方の船の積み替えパイプに前記パイプ機構を接続することができるロック位置までカップリングヘッドを誘導差し込みするための漏斗状嵌込み具を含む接続ユニットとを含む。カップリングヘッドは、誘導部材が与えられており、カップリングヘッドを接続ユニットの中に、他方の船にあるその手段により誘導嵌込みするための少なくとも一つの嵌込みワイヤーに接続されている。米国特許第6,637,479号のシステムは、LNG船舶の艦尾デッキに取付けられた可撓性パイプ又は他のLNG積み替え手段により10,000m/時のLNGの通常の積み替え速度になる規模に作られている。主要なカップラーは、低温積み替えの極端に低い温度(−163℃)では酷い着氷を受ける事になるため、緊急事態では迅速に切り離しができるように、緊急切り離しシステムを有するのが好ましい。
【0050】
LNG移し替え設備40又はホースは、配送船12又は受取り船14に夫々配備される。LNG移し替え設備40は、緩衝設備を配送する補助船と同じ補助船か、又は他の補助船である補助船を用いて、船舶間移し替え場所16へ同様に配送することができる。配送船12から受取り船14へLNGを移し替える間、移し替え速度は、漏洩することなく流れが確立したことが確認されるまで、最初は遅い速度に設定し、次に移し替え速度を一層大きい速度へ増大する。稼働の長さ及び配送船12から受取り船14へのLNGの移し替え速度により、移し替え操作中係留船を旋回させることが必要になることがある。何れの場合でも、特定の船舶間移し替え場所で充分長い稼働を行うことができないならば、それら船舶を移し替え操作中円状に運行させることができる。
【0051】
LNGは、配送船12の上の一つ以上の低温貯蔵タンク42の中に貯蔵される。受取り船14にも、同様に一つ以上の低温貯蔵タンク(単数又は複数)46が配備されている(図5で最も良く分かる)。受取り船14を配送船12に横付けして係留した後、配送船12上の貯蔵タンク(単数又は複数)42からLNGを、受取り船14の上の貯蔵タンク(単数又は複数)46へ移し替える。
【0052】
LNG船舶上で使用するように設計された主要な4つの型のLNG貯蔵タンクが存在し、これらは自立(self−supporting)型又は膜型として大略分類されている。自立型タンクの最も一般的な型は、「モス(Moss)タンク」と当分野で呼ばれている球状アルミニウムタンク及び石川島播磨重工業(IHI)により開発された角柱型自立タンクである。最もよく知られている型の膜タンクは、テクニガズ(Technigaz)により開発されたTGZマーク(Mark)IIIであり、それは、タンクが冷却された時の熱収縮を吸収する「ワッフル(waffle)」を有するステンレス鋼膜を含み、ガス・トランスポート(Gaz Transport)により開発されたGT NO96は、殆ど熱収縮を示さない鉄・ニッケル合金FeNi36により作られた一次及び二次薄膜からなる。絶縁体は、パーライトのような軽量絶縁材料で満たされた合板ボックスから構成されている。適当な貯蔵システムの例には、次の米国特許に記載されている低温貯蔵システムが含まれるが、それらに限定されるものではない:米国特許第6,378,722号;米国特許第6,263,818号;米国特許第5,727,492号;米国特許第5,529,239号;又は米国特許第5,099,779号;それらの内容は参考のためここに入れてある。
【0053】
好ましい態様として、受取り船14は、激しい多方向の環境状態を受取り船14が受けている時に、中間的積載量から受ける荷重に耐えることができる支持船体構造44を有する。受取り船14上の貯蔵タンク(単数又は複数)46は、再ガス化場所20に停泊したまま陸上分配施設62へ天然ガスを移送する間、貯蔵タンク46が部分的に満たされているか、又は受取り船14が嵐を乗り切る場合、LNGの揺動に対し頑丈にできているか、又はそれを減少する。揺動の影響を少なくするため、貯蔵タンク(単数又は複数)46に、複数の内部バッフル及び/又は補強膜を配備してもよく、SPB型B膜タンクが好ましい選択である。自立球状低温貯蔵タンク、例えばモス型タンクは、もし受取り船14に船上再ガス化施設30が取付けてあるならば、適当とは考えられない。なぜなら、モス型タンクは、受取り船14の甲板上に再ガス化施設30を配置するのに利用できる甲板面積を少なくするからである。
【0054】
受取り船14上の貯蔵タンク(単数又は複数)46の保有容量は、配送船12上のLNGの全積載量を受取り船14に移し替えることができるように、配送船12上の貯蔵タンク(単数又は複数)42の保有容量と同じか、同様か、又はそれより大きくてもよい。1回の船舶間積み替え操作で配送船12を空にすることが好ましいが、受取り船14上の貯蔵タンク(単数又は複数)46の保有容量を、配送船12上の貯蔵タンク(単数又は複数)42の保有容量より大きくすることも同様に可能である。このシナリオでは、受取り船14は、2艘以上の配送船12からLNGを受取ることができる。
【0055】
一つの態様として、受取り船14には、4個又は7個の貯蔵タンクが配備されており、夫々のタンクは30,000〜50,000mの範囲の総貯蔵容量を有する。例えば、移し替え体積は、二つの船舶上の貯蔵タンクの相対的大きさにより、125,000〜220,000mの範囲にある。貯蔵タンク42が揺動に対し頑丈に設計される必要はないが、それは、貯蔵タンク(単数又は複数)42中のLNGのレベルが船舶間積み替え中に低下していくに従って、発生する力に一層よく耐えられるので有利であると考えられる。
【0056】
配送船12から受取り船14へのLNG荷降ろしが完了した後、受取り船14を配送船12から切り離し、出航させ、船舶間積み替え場所16から海岸60に近い再ガス化場所20へ自身の水蒸気で航行する。本発明の好ましい態様として、受取り船14には、船上再ガス化施設30が配備され、受取り船14上に貯蔵されたLNGを受取り船14上で再ガス化し、天然ガス(NG)を形成し、次にそれを、下に一層詳細に記述するように、陸上ガス分配施設62へ移送する。
【0057】
図5に例示した態様に関し、受取り船14上に配備された再ガス化施設30で生成した天然ガスをガス配送管72により櫓状係留ブイ64へ移す。受取り船14を係留ブイ64に接続して、それを再ガス化場所20に係留する。可撓性海洋ライザー(単数又は複数)66(図5で最もよく分かる)を用いて天然ガスを再ガス化施設30から陸上ガス分配施設62へ移す。海洋ライザー(単数又は複数)66は、その上端を櫓状係留ブイ64に流通接続し、その下端を海中パイプライン(単数又は複数)68に流通接続する。そのパイプラインは海岸線70を横切って陸上ガス分配施設62へ通じている。
【0058】
図5に例示した態様に関し、受取り船14を凹所、即ち、「ムーンプール(moonpool)」74を含むように設計又は改造し、内部櫓状係留ブイ64と受取り船14とのドッキングをし易くする。これは、櫓状係留ブイ64の周りに風向きに受取り船14を回転できるようにする仕方で行われる。風向きに回転し易くするように、ムーンプール74は、受取り船14の船首58の方に配置する。適当な型の櫓状係留システムの一例は、米国特許第6,688,114号明細書に記載されており、その内容は参考のためここに入れてある。
【0059】
係留ブイ64は、錨線76により海底78に係留する。係留ブイ64には、再ガス化天然ガスを係留ブイ64を通って海底パイプライン(単数又は複数)68へ送るための導管として働く一つ以上の海洋ライザー66が配備されている。海洋ライザー66の入口と、受取り船14上の再ガス化施設30からのガス配送管72との間を流通接続する。受取り船の船首を越えて櫓状係留ライザーへの堅い腕による接続も同様に用いることができるであろうが、好ましいものではない。受取り船14が補助なしで係留ブイ64を取り込むことができるように、受取り船14を極めて操縦し易いものにする。
【0060】
幾つかの会社が適当な係留システムに関する特許方法を開発している。それらには次のものが含まれる:シングル・ブイ・ムーリングス社(Single Buoy Moorings Inc.(米国特許第6,811,355号、米国特許第6,692,192号、米国特許第6,623,043号、米国特許第6,623,043号、米国特許第6,517,290号);ブルーウォーター・ターミナル・システムズ・N.V.(Bluewater Terminal Systems N.V.)(米国特許第6,354,376号、米国特許第6,244,920号、米国特許第6,109,830号、米国特許第5,944,840号、米国特許第5,584,607号);ソフェック社(SOFEC Inc.)(米国特許第5,292,271号、米国特許第5,240,466号、米国特許第5,129,848号、米国特許第5,372,531号、米国特許第5,356,321号、米国特許第5,316,509号、米国特許第5,306,186号);及びFMCテクノロジーズ(FMC Technologies)(米国特許出願No.20040094082、No.20040025772、及びNo.20030226487)。これらの特許は、全て参考のためここに入れてある。
【0061】
図5に関し、再ガス化施設30を受取り船14の甲板56上に配置する。船上高圧パイプシステム33を用いて、タンク一つ当たり少なくとも一つの低温ポンプ80により貯蔵タンク46から再ガス化施設30へLNGを送る。適当な低温ポンプの例には、渦巻きポンプ、容積式ポンプ、スクリューポンプ、速度水頭ポンプ、回転ポンプ、歯車式ポンプ、プランジャーポンプ、ピストンポンプ、羽根形ポンプ、ラジアル・プランジャーポンプ、回転斜板ポンプ、平滑流ポンプ、脈流ポンプ、又は気化器に必要な排出ヘッド及び流量条件に合う他のポンプが含まれる。ポンプの容量は、設置される気化器の型及び数量、気化器の表面積及び効率、及び希望の余剰度に基づいて選択される。それらは、慣用的輸入ターミナルで受取り船14が10,000m/時(公称)の速度、ピーク時には12,000m/時の速度でその積荷を下ろすことができるような大きさにもなっている。
【0062】
図6に関し、再ガス化施設30は、LNGを天然ガスへ再ガス化するための少なくとも一つの気化器82を含む。LNGは、気化器82で再ガス化され、天然ガス(NG)の形で気化器82を出る。船上再ガス化に必要な熱は、多くの可能な熱源から得ることができる。周囲の空気を熱源として用いる気化器が、環境への影響を少なくし、亜酸化窒素、二酸化硫黄、二酸化炭素、及び粒状物質の放出を最小に維持するのに好ましい。周囲空気の加熱容量を利用するため、気化器82は、受取り船14の甲板56上に構成されるのが好ましい。周囲空気は、LNGを再ガス化するための主要な、又は唯一の熱源として用いてもよく、或は第二熱源と組合せて用いることができる。
【0063】
第二熱源は、寒い天候の時にLNGを再ガス化するため、或は既に再ガス化された天然ガスを過熱するために用いることができる。適当な第二熱源には、推進システムから回収された廃熱、ボイラー又は他の源からの水蒸気、沈めた燃焼気化器、太陽エネルギー、受取り船14が係留されている時の推進プラントの余剰発電能力を用いた水電熱器、ディーゼルエンジン及びガスタービンの燃焼廃棄物に適合させた排気ガス熱交換器、又は天然ガス燃焼熱水又は熱油ヒーターが含まれる。第二熱源は、付加的熱が必要な場合に、燃料ガスを直接燃焼することにより同様に発生させることができる。第二熱源は、LNG又は天然ガスと熱交換する中間的流体を加熱するのにも同様に用いることができる。適当な中間的流体は、グリコール、プロパン、塩水又は淡水、当業者に一般に知られている許容可能な熱容量及び沸点を有する他の全ての流体である。
【0064】
気化器82は、周囲空気がLNGと直接熱交換するか、又は周囲空気が別の熱交換器84で中間的流体を加熱し、加熱された中間的流体を次にポンプで気化器へ送り、そこで再ガス化されるLNGと熱交換ことができるように、構成することができる。図3に例示した態様では、中間的流体は、ポンプ86を用いて気化器82を通る閉じた経路を回って循環する。中間的流体とLNGとの熱交換は、LNGを天然ガスに再ガス化し、中間的流体をかなり冷却する結果になる。中間的流体は、熱交換器84で周囲空気又は他の熱源、例えば、上で言及した第二熱源のいずれかを用いて再加熱する。これは、中間的流体に熱を加え易くし、それにより気化器82の凍結を抑制する。周囲空気と中間的流体との熱交換は、一つ以上の強制通風扇風機85を用いて促進することができる。
【0065】
船上再ガス化のための熱源として周囲空気を使用することは、以前には使用も提案もされていなかった。現存する陸上気化器は、船上再ガス化効率のためには必ずしも適さない。複数の管中にLNGを確実に均一に分布させ、気化器の外側表面上の凝縮を除去し、LNGと再ガス化のための熱源との間の熱収縮差に順応させ、気化器の周りに発生する霧を抑制し、船体運動により加わる荷重に順応するように、改修を行う。船上再ガス化施設30に伴われるポンプ、気化器、及び配管のために使用される材料は、海水の腐食効果に耐えられるように選択すべきである。海洋環境中で用いるのに適した種々の材料が、関連する分野の当業者によく知られている。
【0066】
気化器は、運行しているか、又は沖合に係留されているLNG船の甲板に配置されていることに伴われる構造的荷重に耐えられるように設計する。強制システムのための扇風機も、同様に、船の運動に伴われる荷重及び恐らく新鮮な水の荷重を含めた、嵐の中で気化している間の船の動揺に伴われる荷重に耐えられるように、設計されている。
【0067】
気化器82の大きさ及び表面積は、再ガス化されたLNGを送る体積及び流量、及び用いられる熱源の種類により広く変えることができる。周囲空気を熱源として用いる場合、周囲空気の温度は季節によって変わることがある。熱交換のための充分な表面積を与えるため、複数の気化器82を種々の形状、例えば、直列又は並列に配列することができる。同様に気化器の型は、管形(shell and tube)熱交換器、ひれ付き管形(finned tube)熱交換器、曲管・固定管板形交換器、渦巻き管形交換器、板形熱交換器、中間的流体気化器、沈めた燃焼気化器、又は再ガス化されるLNGに必要な温度、体積、及び熱吸収条件に合った当業者に一般に知られている他のどのような熱交換器にでもすることができるであろう。
【0068】
本発明の幾つかの態様を詳細に記述してきたが、基本的発明の概念から離れることなく多くの変更及び修正を行えることは、関連する分野の当業者に明らかであろう。そのような修正及び変更は、全て本発明の範囲に入るものと考えられ、本発明の本質は上記記述及び添付の特許請求の範囲から決定されるべきである。
【0069】
本明細書に引用された特許は、全て参考のためここに入れてある。数多くの従来技術の刊行物がここに言及されているが、この言及は、これらの文書のいずれでもオーストラリア又は他のいずれかの国で当分野の普通の一般的知識の一部を形成していることを承認するものではない。本発明の要約として、次の記述及び特許請求の範囲は、内容が、言葉又は必要な暗示を表現することにより、他のことを必要としない限り、用語「含む」又はその変化したもの、例えば、「含んでいる」又は「含むこと」は包括的な意味で用いられている。即ち、記述した特徴の存在を特定化するために用いられており、本発明の種々の態様の更に別の特徴の存在又は追加を排除するものではない。
【0070】
本発明の諸態様は、以下のようにまとめられる。
[1].陸上へガスとして送るため液体天然ガス(LNG)を沖合再ガス化するための方法において、
LNGを配送船から受取り船へ船舶間積み替え場所で荷降ろしすること;
前記受取り船を自身の動力で前記船舶間積み替え場所から、前記船舶間積み替え場所よりも海岸に近い係留場所へ移動させること;
前記受取り船上の再ガス化施設を用いてLNGを再ガス化し、前記係留場所で天然ガスを形成すること;及び
前記天然ガスを、最終的ユーザーへ送るための陸上ガス分配施設へ移送すること;
を含む、再ガス化法。
[2].更に、配送船からLNGを受取り船へ荷降ろしする工程の前に、配送船を受取り船に係留する工程を含む、上記[1]項に記載の方法。
[3].配送船又は受取り船のうち小回りのききにくい方を予め合意した速度で前進させ、二つの船舶のうち小回りのききにくい方が船尾左舷に大波を受けるように船首方位を選択し、配送船が受取り船へ係留されてしまうまでその船首方位を維持する上記[2]項に記載の方法。
[4].配送船又は受取り船のうち小回りのききにくい方を予め合意した速度で前進させ、船首方位を、二つの船舶のうち小回りがきく方を吹いてくる風雨に直接船首を向けるように選択し、その船首方位を配送船が受取り船へ係留されてしまうまで維持する、上記[2]項に記載の方法。
[5].配送船と受取り船を一緒に係留し、LNGを配送船から受取り船へ荷降ろしする間並べて運行させながら前進させる、上記[1]項に記載の方法。
[6].配送船と受取り船を一緒に係留し、LNGを配送船から受取り船へ荷降ろしする間並べて漂流させる、上記[1]項に記載の方法。
[7].配送船と受取り船を縦並びに運行させながら、LNGを配送船から受取り船へ縦並び荷降ろしにより荷降ろしする、上記[1]項に記載の方法。
[8].受取り船の船体中、LNGをその揺動に耐えられるタンク中に貯蔵し、前記受取り船がそれに関連した支持船体構造を有する、上記[1]〜[7]項のいずれか1項に記載の方法。
[9].受取り船が、配送船のエンジン能力と比較して小さいエンジン能力を有する、上記[1]〜[8]項のいずれか1項に記載の方法。
[10].受取り船が推進システムを有し、前記推進システムが二重燃料ガスタービン、二重燃料ディーゼル、又は二重燃料ディーゼル・電気システムを含んでいる、上記[1]〜[9]項のいずれか1項に記載の方法。
[11].受取り船の推進システムに必要な動力が、受取り船上の再ガス化に必要な動力と共有されている、上記[1]〜[10]項のいずれか1項に記載の方法。
[12].受取り船の推進システムに、配送船と比較して優れた係留及び位置取り能力を受取り船に与える船首と船尾の両方に位置する横断スラスターを有する二軸スクリュー、固定ピッチプロペラが取付けてある、上記[1]〜[11]項のいずれか1項に記載の方法。
[13].係留場所が、その係留場所で受取り船を係留するための、水中に沈めることが可能で切り離し可能な係留ブイで、受取り船の船体内で船首の方に配置された凹部内に位置させることができる係留ブイを含む上記[1]〜[12]項のいずれか1項に記載の方法。
[14].船上再ガス化施設へ熱源として周囲の空気を用いてLNGを再ガス化する、上記[1]〜[13]項のいずれか1項に記載の方法。
[15].LNGが中間的流体との熱交換により再ガス化され、前記中間的流体が、熱源として周囲の空気を用いて加熱される上記[1]〜[14]項のいずれか1項に記載の方法。
[16].周囲の空気とLNG又は中間的流体との間の熱交換が、強制通風送風機を使用することにより促進される、上記[1]〜[15]項のいずれか1項に記載の方法。
[17].ガスとして陸上で配送するために液体天然ガス(LNG)を沖合再ガス化するための受取り船において、そのシステムが:
受取り船をそれ自身の動力で、配送船からLNGを受取るための船舶間積み替え位置を出入りするように動かし、前記船舶間積み替え場所よりも海岸に近い係留場所へ移動させるための推進システム;
LNGを再ガス化して天然ガスを形成するための受取り船上の再ガス化施設;及び
前記天然ガスを受取り、最終ユーザーへ配送するための陸上ガス分配施設;
を含む、受取り船。
[18].受取り船の船体中に、LNGをその揺動に耐えられるタンク中に貯蔵し、前記受取り船がそれに関連した支持船体構造を有する、上記[17]項に記載の船。
[19].受取り船が、配送船のエンジン能力と比較して小さいエンジン能力を有する、上記[17]又は[18]項に記載の船。
[20].受取り船の推進システムが、二重燃料ガスタービン、二重燃料ディーゼル、又は二重燃料ディーゼル・電気システムを含む、上記[17]〜[19]項のいずれか1項に記載の船。
[21].受取り船の推進システムに必要な動力が、受取り船上の再ガス化のために必要な動力と共有されている、上記[17]〜[20]項のいずれか1項に記載の船。
[22].受取り船の推進システムに、配送船と比較して優れた係留及び位置取り能力を受取り船に与える船首及び船尾の両方に位置する横断スラスターを有する二軸スクリュー、固定ピッチプロペラが取付られている、上記[17]〜[20]項のいずれか1項に記載の船。
[23].受取り船が、再ガス化場所で受取り船を係留するための、水中に沈めることが可能で切り離し可能な係留ブイを受けるため、前記受取り船の船体内で船首の方に配置された凹部を含む、上記[17]〜[22]項のいずれか1項に記載の船。
[24].船上再ガス化施設が、熱源として周囲の空気を用いる、上記[17]〜[23]項のいずれか1項に記載の船。
[25].LNGが中間的流体との熱交換により再ガス化され、前記中間的流体が、船上再ガス化施設への熱源として周囲の空気を用いて加熱される、上記[17]〜[24]項のいずれか1項に記載の船。
[26].周囲の空気とLNG、又は周囲の空気と中間的流体との間の熱交換が、強制通風送風機を使用することにより促進される、上記[17]〜[25]項のいずれか1項に記載の船。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上へガスとして送るため液体天然ガス(LNG)を沖合再ガス化するための方法において、
LNGを配送船から受取り船へ船舶間積み替え場所で荷降ろしすること;
前記受取り船を自身の動力で前記船舶間積み替え場所から、前記船舶間積み替え場所よりも海岸に近い係留場所へ移動させること;
前記受取り船上の再ガス化施設を用いてLNGを再ガス化し、前記係留場所で天然ガスを形成すること;及び
前記天然ガスを、最終的ユーザーへ送るための陸上ガス分配施設へ移送すること;
を含む、再ガス化法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79069(P2013−79069A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−254540(P2012−254540)
【出願日】平成24年11月20日(2012.11.20)
【分割の表示】特願2008−558589(P2008−558589)の分割
【原出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(506396984)ウッドサイド エナジー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】