説明

LSPRにおける酵素アッセイ

本発明は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)検出系の表面にて屈折率の変化を検出する方法を提供する。本方法は、固定化酵素を用いて酵素基質から不溶性の生成物を生成させることを含み、ここで不溶性生成物はLSPR支持表面に蓄積する。本方法はまた、LSPRを用いて、不溶性生成物の存在により生じる表面の反射光または透過光の変化を検出することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年1月3日出願の米国特許仮出願第60/878,617号(本明細書にその全体が組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
酵素反応に基づくシグナル増幅についての比色分析アッセイは、使用が簡便であり、十分な感受性を有するので、臨床診断学の分野において広く用いられてきた。感受性は、酵素標識の代謝回転速度、用いられる酵素基質、および酵素の量によって決まる。アルカリフォスファターゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼは、最も一般的な酵素標識のうちの2つである。前者はしばしば、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT)および/または5-ブロモ-4-クロロ-3'-インドリルホスフェートp-トルイジン塩(BCIP)と組み合わせて用いられる。後者はしばしば、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)、4-クロロ-1-ナフトール(4-CN)、3,3'-ジアミノベンジジンテトラハイドロクロライド(DAB)などと組み合わせて用いられる。酵素基質が酵素と反応すると、不溶性の呈色した生成物が沈殿する。不溶性生成物は、質的な結果として、または単純な光学検出器による半定量的な結果として視覚的に検出される。よって、どの程度の量の不溶性生成物が蓄積するか、および蓄積によりどの程度光学密度が変化するかは、検出限界に影響する。
【0003】
酵素作用の効率を増大させる、および光学的に密な反応生成物により基質を現像するために、多大な努力が既になされている。さらに高い温度は酵素の分解を引き起こすので、温度を上昇させることにより酵素反応を促進する余地はあまりない。酵素量を増加させることは確かに役立つが、固体表面にどの程度の量の抗体が付着できるかには限界がある。免疫クロマトグラフィーキットに用いる多孔質膜によってこの限界には既に行き着いている;劇的な改善は期待できない。比色分析法に伴う別の欠点は、測定範囲が乏しいことである。検出方法が吸光度の測定に頼る限り、正確な測定は2以下の光学密度について可能であり、最小吸光度は0.1の桁にある。よって、その範囲はたったの20であり、1桁分をわずかに超えてカバーするのみである。
【0004】
改善は確かになされるであろうが、広範な酵素/基質の組み合わせに適用可能な一般的な手法はないままである。驚くべきことに、本発明は、特定の酵素または基質の改善に依存しない、一般的な手法を提供する。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
一実施形態において、本発明は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)検出系の表面における屈折率の変化を検出する方法を提供する。この方法は、固定化酵素を用いて酵素基質から不溶性の生成物を生成することを含み、ここで不溶性生成物はLSPRの支持表面に蓄積する。この方法はまた、LSPRを用いて、不溶性生成物の存在により生じる、表面の反射光または透過光の変化を検出することを含む。
【0006】
第2の実施形態において、本発明は、第1の固体支持体、第1の固体支持体上に配置されたLSPR支持表面、LSPR支持表面にごく接近して固定化酵素、および酵素基質を有するLSPRセンサーを提供する。
【0007】
本発明の詳細な説明
I.一般事項
本発明は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)支持表面を用いて分析物を検出する方法を提供する。LSPR支持表面は、金被覆表面を含み、その上に、金被覆ナノ粒子、例えばビーズのアレイが存在する。本発明の方法は、サンドイッチアッセイを用いて分析物を検出する。本発明の方法は、LSPR支持表面のビーズの金表面上に固定化された第1の捕捉部分により分析物を捕捉することによって分析物を検出する。次いで、分析物の存在を、検出部分を有する第2の捕捉部分を用いて検出する。
【0008】
好ましい実施形態において、本サンドイッチアッセイは、捕捉部分が抗体であり、分析物が抗原である免疫アッセイである。別の好ましい実施形態において、検出部分は酵素であり、第2の捕捉部分が分析物に結合すると、可溶性の酵素基質を混合物中に導入し、酵素が酵素基質を不溶性の生成物に変換し、その生成物がLSPR支持表面上に蓄積する。不溶性生成物がLSPR支持表面に蓄積すると、反射光または透過光の波長のシフトが起こり、これは肉眼で観察できる。肉眼で観察できる波長シフトを誘導するのに非常に僅かな不溶性生成物しか必要でないのは、LSPRの性質である。本発明の方法とは対照的に、既存の方法は、比色分析法を用いて不溶性生成物の存在を直接検出するので、大量の不溶性生成物の沈着が必要である。
【0009】
本発明の方法は、LSPR支持表面上に不溶性の生成物を蓄積させることにより、比色分析酵素免疫アッセイにおける感受性を増大させる。これにより、局在表面プラズモン共鳴効果による増大した検出が得られ、低体積の反応領域においてサンプルを撹拌することによりアッセイ時間が短縮され、測定範囲が数桁分を越えて拡張される。
【0010】
LSPR支持表面に関連する近視野光学を利用することにより、比色分析酵素免疫アッセイにおける感受性を増強することができる。従来のアッセイにおいて、酵素反応からの呈色した生成物の形成は、視覚的に、または特定の波長における吸収をモニタリングするための単純な装置により、検出する。比色分析酵素免疫アッセイをLSPR支持表面において行うと、呈色した生成物の生成を、反射光または透過光の波長のシフトを検出することにより、非常に低濃度において間接的に検出することができる。固体表面上に吸着されたナノ粒子は、鋭い減衰(extinction)スペクトルを特徴とするLSPR支持表面を作り出す。鋭い減衰スペクトルは、電磁スペクトルのいずれかの部分、例えば、可視領域に存在し得る。鋭い減衰スペクトルは、局在表面プラズモン現象、すなわち局在化した自由電子の集団的振動運動に起因する。減衰スペクトルは、局所的な屈折率に対して非常に敏感な依存性を示す。LSPR支持表面上に不溶性の生成物が蓄積することにより誘導される屈折率の変化をその吸収スペクトルを介してモニターすることにより、より低い濃度において抗原を検出することができる。
【0011】
蓄積した酵素反応生成物の直進光検出に依存する従来の比色分析法は、一桁分をわずかに超えるに過ぎない測定範囲を有する。これは、ほとんどの光学系の能力が、高精度にて0.1〜1.5の範囲内の光学密度を測定するものであることにより制限されていた。本発明の方法は、LSPR支持表面の減衰スペクトルの変化を、種々の波長にてモニターすることができる。同様のアプローチが、従来の比色分析アッセイによっても試されてきたが、従来の方法は、本発明において実施されるような間接的モニタリングよりむしろ、呈色した生成物の直接的モニタリングを利用する。さらに、LSPR支持表面の感受性は、物理学的パラメーターを操作することにより変化し得る。従って、測定範囲は数桁分にわたって拡大し得る。
【0012】
II.定義
本明細書において用いる場合、「LSPR支持表面」なる用語は、閉じ込められた自由電子の共鳴振動(一般に局在表面プラズモン共鳴と呼ばれる)を通して光学的近接場の形成が可能である表面を意味する。LSPR支持表面は、下記にて詳細に記載するように、ナノ粒子を特徴とする。LSPR支持表面は、不透明または透明であり得、光を透過するまたは反射する、または両方を行い得る。
【0013】
本明細書において用いる場合、「ナノ粒子」なる用語は、約10-9〜約10-7メートルの寸法を有する粒子およびビーズを意味する。ナノ粒子は、いずれかの適切な材料から作製することができ、ビーズ、錐体、ワイヤー、メッシュなどを含むが、これらに限定されない。当業者であれば他のナノ粒子も本発明において有用であることを理解するであろう。
【0014】
本明細書において用いる場合、「遷移金属」なる用語は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuおよびAcを含む周期表の要素を意味する。当業者であれば、上記の遷移金属がそれぞれいくつかの異なる酸化状態をとることができ、それらのすべてが本発明において有用であると理解するであろう。いくつかの例において、最も安定な酸化状態が形成されるが、他の酸化状態も本発明において有用である。
【0015】
本明細書において用いる場合、「固体支持体」なる用語は、LSPR支持表面をその上に加えることができる、またはその上にて成長させることができるいずれかの物質を意味する。適切な固体支持体の例は、ガラス(細孔性(controlled-pore)ガラスなど)、ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、シリコンゴム、水晶、ラテックス、遷移金属、磁性材料、シリコンジオキシド、シリコンニトリド、ガリウムアルセナイドおよびそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。表面上の反応部位を除いて、固体支持体材料は一般に、それらが供され得る様々な化学反応条件に耐性である。本発明において有用な固体支持体は、滑面または粗面であり得る。滑らかな表面は、その表面上において、粗さを導く特性が最小である表面である。粗い表面は、その表面上において、摩擦を作り出す多数の特性を有する表面である。本発明の固体支持体は、第1の固体支持体および第2の固体支持体を含む。固体支持体は、平らまたは平らでない、柔軟性または剛性であり得る。さらに、固体支持体は多孔性、メッシュまたは織地であり得る。固体支持体は、不透明または透明であり得、光を透過する、または反射する、または両方を行い得る。当業者であれば、他の固体支持体も本発明に有用であると理解するであろう。
【0016】
本明細書において用いる場合、「LSPR検出系」なる用語は、LSPR支持表面の屈折率の変化をモニターすることにより、標的分析物を検出する系を意味する。これらの変化は、プラズモンピークのシフト、吸収、反射もしくは透過スペクトルの形状、または付随する計量的要素、例えば、吸収、反射もしくは透過スペクトルの面積もしくは割合の改変にあり得る。
【0017】
本明細書において用いる場合、「不溶性生成物」なる用語は、LSPR支持表面上に蓄積し、LSPR支持表面の屈折率を変化させる化合物を意味する。不溶性生成物は、酵素による酵素基質の変換により形成される。不溶性生成物は、呈色する、または無色であり得る。
【0018】
本明細書において用いる場合、「酵素基質」なる用語は、酵素により不溶性の生成物へと変換され、次いでLSPR支持表面に蓄積し、LSPR支持表面の屈折率を変化させる、可溶性の化合物を意味する。本発明において酵素基質として有用な化合物の例は、下記に記載する。酵素基質は、呈色する、または無色であり得る。
【0019】
本明細書において用いる場合、「固定化酵素」なる用語は、固体支持体上に固定化され、LSPR支持表面にごく接近しており、酵素基質を不溶性の生成物へと変換する酵素を意味する。固定化される酵素および酵素を固定化するための方法の例は下記に記載する。
【0020】
本明細書において用いる場合、「免疫アッセイ」なる用語は、2つの捕捉剤を用いて分析物を検出するアッセイを意味し、典型的には、一方の捕捉剤が固体支持体物質に結合し、第2の捕捉剤が検出部分を含む。様々な免疫アッセイの型、例えば、固相ELISA免疫アッセイを用いることができる(特異的免疫反応性を測定するのに用いることができる免疫アッセイの型および条件の記載については、例えば、Harlow&Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照のこと)。分析物を検出するのに用いることができる免疫アッセイは、例えば、競合および非競合アッセイ系、例えば、ウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなどを含む。当業者であれば、他の免疫アッセイも本発明に有用であると理解するであろう。
【0021】
本明細書において用いる場合、「抗体」なる用語は、分析物(抗原)に特異的に結合し、認識する、1つの免疫グロブリン遺伝子または複数の免疫グロブリン遺伝子またはそれらのフラグメントによって実質的にコードされたポリペプチドを意味する。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンと分類され、これにより免疫グロブリンのクラス、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEが定義される。
【0022】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、テトラマーを含む。各テトラマーは2つの同一対のポリペプチド鎖から構成され、各対が1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50-70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)なる用語は、これらの軽鎖および重鎖をそれぞれ意味する。
【0023】
抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリンとして、または様々なペプチダーゼによる消化によって産生される多数のよく特徴決定されたフラグメントとして存在する。このように、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド結合の下において抗体を切断し、F(ab)'2、Fabの二量体を産生する(Fab自体は、ジスルフィド結合によりVH-CH 1へと連結した軽鎖である)。F(ab)'2は、穏和な条件下において還元されてヒンジ領域においてジスルフィド結合が壊れ、これによりF(ab)'.sub.2ダイマーがFab'モノマーに変換され得る。Fab'モノマーは本質的にはヒンジ領域の一部を伴ったFabである(Paul(編)「Fundamental Immunology(基礎免疫学)」、第3版、Raven Press、NY (1993) を参照のこと)。様々な抗体フラグメントがインタクトな抗体の消化の観点において定義されるが、当業者であれば、かかるフラグメントは化学的にまたは組換えDNAの方法論を用いて新たに合成され得ることを理解するであろう。よって、抗体なる用語は、本明細書において用いる場合、完全抗体の改変により産生された抗体フラグメント、または組換えDNAの方法論を用いて新たに合成されたもの(例えば、単鎖Fv)も含む。
【0024】
本明細書において用いる場合、「サンドイッチアッセイ」なる用語は、捕捉された分析物の量を直接測定するアッセイを意味する。「サンドイッチ」アッセイの1つにおいて、例えば、捕捉剤は、固体担体に直接結合でき、そこで固定化される。これらの固定化された捕捉剤は、次いで、試験サンプルに存在する標的分析物を捕捉する。次いで、このように固定化された標的分析物に、検出部分をその上に有する第2の捕捉剤、例えば酵素を担持する第2の剤が結合する。あるいは、その検出部分は、第2の剤が由来する種の剤に特異的な、標識化された第3の剤であり得る。第2の剤は、第3の標識化分子、例えば酵素標識化ストレプトアビジン、が特異的に結合できる検出可能部分、例えばビオチンにより修飾することができる。その剤は、下記に記載するように、抗体またはアドネクチン(adnectin)であり得る。
【0025】
本明細書において用いる場合、「透明」なる用語は、ある物質の、光を透過する能力を意味する。本発明において、いくつかの固体支持体材料は透明であり、その物質を通過する光を少ししか吸収しない。
【0026】
III.局在表面プラズモン共鳴(LSPR)検出系の表面における屈折率の変化を検出する方法
本発明は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)検出系の表面における屈折率の変化を検出する方法を提供する。その方法は、固定化酵素を用いて酵素基質から不溶性の生成物を生成することを含み、ここで不溶性生成物はLSPR支持表面に蓄積する。その方法はまた、不溶性の生成物の存在により生じる表面の反射光または透過光の変化を、LSPRを用いて、LSPR表面により反射された光、またはLSPR表面を透過した光のスペクトルの変化を用いて、検出することを含む。
【0027】
本発明の基本原理は、ナノスケールの貴金属粒子に関連する局在表面プラズモンによる増大効果に基づいている。これらの粒子において、その寸法は5 nm〜1000 nmの範囲であり、閉じ込められた自由電子の共鳴振動による顕著な光減衰がある。電子を共振させることにより、局在化していない表面プラズモンと比較して、数桁分増大した強度を有する強く局在化した電磁場が生じる。局在化した場は、一般に光学近接場と呼ばれ、表面から数十nm広がっている。近接場内において屈折率が変化する場合、粒子による減衰は非常に感度よく改変する。この感受性を利用して、本発明は、LSPR支持表面の近傍における比色分析酵素アッセイのための方法を提供する。生成物がLSPR支持表面上に沈着すると、沈着の厚さが10 nmを下回る場合、減衰スペクトルは視覚的検出においても十分に変化する。モニターするのは酵素生成物の吸光度ではない。むしろ、近傍に生成物が存在することに感度よく影響されるLSPR支持表面の減衰スペクトルの変化である。モニターすべき波長は、必要とされる感受性に基づいて選択することができ;ピークにより近い波長領域、20〜50 nmは、高感受性に適しており、さらに遠い領域はより低い感受性に適している。よって、複数の波長または全スペクトルにおいてモニターすることにより、測定範囲を拡張することができる。
【0028】
表面吸着粒子を形成する多くの方法があるが、本発明の方法は、初めに、固体支持体上に成長した貴金属表面上に単分散粒子の単層が吸着する手法を用いる。固体支持体は、いずれかの適切な物質、例えば、シリコン、ガラスまたはポリマーであり得る。別の貴金属層を、ナノ粒子の単層の表面上に沈着させる。ナノ粒子の寸法および貴金属層の厚さを慎重に選択することにより、検出すべき光の全範囲にわたるいずれかの波長に減衰ピークがマッチし得るLSPR支持表面を作り出すことができる。例えば、可視スペクトル内のいずれかの波長がこの様式にマッチし得る。さらに、ナノ粒子寸法が異なるLSPR支持表面は、異なる感受性を示すので、複数種の、および複数の寸法の粒子を用いることは、測定範囲をさらに拡大するのに有用であり得る。本発明の粒子は、限定しないが、貴金属および他の物質から製造された、すなわち、ポリマー、金属、金属合金、または非金属合成物から作製された、球、三角形または粒子を含み、中空性(hollow)または多孔性であり、または芯が抜かれて異なる物質、液体または内部物質を有し得、5 nm〜100 umの直径、長さまたは大きさを有し得、機械的方法、真空方法または化学的方法によりパターン形成することができ、またはマスクを用いておよびまたは除去して作製することができる。
【0029】
A. LSPR支持表面
本発明のLSPR支持表面は、LSPR支持表面の減衰スペクトルの変化の検出が可能であり、ここで減衰スペクトルは生成物の存在に対して感受性である。不溶性生成物の存在により誘導される屈折率の変化をLSPR支持表面の吸収スペクトルを介してモニターすることにより、低濃度にて抗原を検出することができる。
【0030】
図1は、従来の方法および本発明の方法において行われる比色分析2ステップサンドイッチアッセイを示す。従来の場合、その方法は、抗体により被覆された表面を用いて開始する(1)。標的分子(抗原)を含有するサンプルを加えると、表面結合抗体と抗原との間に結合事象が始まる(2)。次いで、酵素が連結した二次抗体を加える(3)。基質を加えると、呈色した酵素反応生成物の形成が起こる(4)。サンプルに存在する抗原の量は、どの程度の量の呈色した生成物が表面上に形成されるかにより測定する(5)。本発明の方法において、その方法は固定化抗体を有する金粒子により被覆された表面を用いて開始する(6)。第1の抗原/抗体反応のために抗原を含有するサンプルを加える(7)。二次抗体を加え(8)、酵素反応のために基質を加える(9)。最後に、金粒子の減衰スペクトルの変化によって抗原の量を測定する(10)。全体的なシフトはより長い波長に向かう。種々の波長における、または全スペクトルにおける、スペクトルのシフトをモニターすることにより、感受性の調整が可能となる。
【0031】
図2は、1ステップアッセイと呼ばれる別の型の免疫アッセイをいかに行うことができるかを示す。ここでは、抗原および二次抗体の両方が液体相に自由に浮遊している間、抗原/二次抗体複合体の形成が可能である。複合体は表面に結合した抗体に捕捉される(2)。図1の2ステップアッセイのように、金粒子の減衰スペクトルの変化をモニターすることにより検出を行う(3)。1ステップアッセイは、より短いアッセイ時間を要求する試験に適している。
【0032】
図3(1)は、酵素反応を行った後の金粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す;標識 はアルカリフォスファターゼであり、基質はNBTとBCIPの混合物であった。粒子直径は100 nmであり、その粒子を包囲する殻は、沈着した酵素反応生成物である。沈着の厚さは約20 nmと推定される。(2)はIL-6アッセイの終わりの酵素反応過程における光学密度の最大位置の変化を示すグラフである。金粒子の減衰スペクトルのピークは570 nmであり、モニターする波長範囲は620〜630 nmであった。BCIP/NBT基質混合物をt=50秒に注射した。抗原濃度は上から下に60、6、0.6、0.06 ng/mlであった。
【0033】
LSPR支持表面は、整列化した、パターン形成した、層にした、またはそれらのいずれかを組み合わせたものであり得るナノ粒子を含み得る。ナノ粒子は、いずれかのサイズおよび形状、例えば、コロイド、メッシュ、ナノロッド、ナノワイヤーおよびビーズであり得る。ナノ粒子は、単層または多層のナノ粒子であり得る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は単層を形成する。
【0034】
LSPR支持表面のナノ粒子は、単一物質または物質の混合物から作製され得る。ナノ粒子が物質の混合物から作製される場合、その混合物は均質または不均質であり得、例えばナノ粒子において材料物質の2以上の層が形成される。ナノ粒子は中空性または多孔性であり得る。ナノ粒子は不透明または透明であり得、光を透過するまたは反射する、またはその両方を行い得る。
【0035】
本発明のLSPR支持表面のナノ粒子は、いずれかの有用な物質から作製され得る。本発明のナノ粒子として有用な物質の例は、金属、ポリマー、セラミック(例えばシリカ)およびガラスを含むが、これらに限定されない。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuおよびAcを含む遷移金属を含む。当業者であれば、前記の遷移金属はそれぞれいくつかの異なる酸化状態をとることができ、それらのすべてが本発明において有用であると理解するであろう。いくつかの例において、最も安定な酸化状態が形成されるが、他の酸化状態も本発明において有用である。さらに、本発明の遷移金属は金属酸化物であり得る。いくつかの実施形態において、遷移金属はAu、Ag、Ta、Pt、Pd、CuまたはRhであり得る。他の実施形態において、遷移金属は金であり得る。
【0037】
本発明のLSPR支持表面のナノ粒子として有用なポリマーは、いずれかの適切なポリマーであり得る。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリスチレン、ポリメタクリレートまたはポリアクリレートであり得る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、ガラス、またはポリスチレン、ポリメタクリレートまたはポリアクリレートを含むポリマーであり得る。本発明のナノ粒子として有用なセラミックは、いずれかのセラミックであり得る。いくつかの実施形態において、セラミックはSiO2またはガラスであり得る。
【0038】
他の実施形態において、LSPR支持表面のナノ粒子に物質の混合物が用いられる。物質のいずれの組合せも用いることができる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、金により被覆されたポリスチレンまたは金により被覆されたガラスであり得る。当業者であれば、他の物質も本発明のナノ粒子として有用であることを理解するであろう。
【0039】
別の実施形態において、LSPR支持表面の各ナノ粒子は、上部と下部を有するビーズであり、ここで上部は遷移金属により被覆されている。他の実施形態において、ナノ粒子ビーズはポリスチレンであり、遷移金属は金である。本発明のナノ粒子ビーズを被覆する場合、例えばガラスビーズを金により被覆する場合、被覆はいずれかの有用な厚さであり得る。いくつかの実施形態において、金被覆は1 nm以下、数ナノメーター、または数百ナノメーターの厚さであり得る。ナノ粒子の被覆は、当業者に知られる技術、例えば、蒸発、スパッタリングおよびCVDを用いて達成され得る。
【0040】
本発明のLSPR支持表面のナノ粒子は、いずれかのサイズおよび寸法であり得る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は5 nm〜約1000 nmのサイズである。いくつかの実施形態において、ビーズは約10 nm〜約1000 nmの直径を有する。さらなる他の実施形態において、ビーズは約 50 nm〜約 500 nmの直径を有する。当業者であれば、他のサイズおよび寸法のナノ粒子も本発明において有用であることを理解するであろう。
【0041】
本発明に用いられるLSPR支持表面のナノ粒子のサイズおよび形状により、LSPR支持表面の減衰ピークを、いずれかの波長、例えば、可視光の全範囲にわたる波長にマッチするように、変えることができる。LSPR支持表面の測定範囲および感受性も、ナノ粒子の異なる形状、サイズおよび材料を用いて変えることができる。
【0042】
本発明の固体支持体は、LSPR支持表面を支持するいずれかの物質であり得る。固体支持体に有用な物質は、遷移金属、セラミック、ポリマーおよびガラスを含むが、これらに限定されない。当業者であれば、他の物質も本発明において有用であることを理解するであろう。
【0043】
固体支持体の表面は、例えば、表面を滑らかにすることにより、または表面を粗くすることにより改変させ、ナノスケール特性を創出することができる。いくつかの実施形態において、固体支持体は、遷移金属、例えば上記に記載のものにより被覆する。いくつかの実施形態において、固体支持体は金により被覆する。被覆は、1 nm未満から、数ナノメーター、数百ナノメーターまでを含め、いずれかの有用な厚さであり得る。
【0044】
LSPR支持表面および固体支持体物質は、LSPR支持表面の屈折率の変化を検出するのに用いる光の波長において不透明または透明であり得る。いくつかの実施形態において、LSPR支持表面の屈折率の変化を検出するのに反射光を用いる。他の実施形態において、LSPR支持表面の屈折率の変化を検出するのに透過光を用いる。いくつかの実施形態において、不溶性生成物の存在を検出するのに反射光と透過光の両方を用いる。
【0045】
B. アッセイ、酵素および酵素基質
本発明の方法は、いずれかの適切なアッセイにおいて実施することができ、ここで分析物は捕捉部分により捕捉され、次いで検出部分を用いて検出する。典型的には、捕捉剤および検出剤を含むサンドイッチアッセイである。最も一般的には、その物質は抗体であるが、ホルモン受容体、アドネクチン、または分析物結合剤のいずれかの他の組み合わせであり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、アッセイは免疫アッセイである。様々な型の免疫アッセイを用いることができ、固相ELISA免疫アッセイを含むが、これに限定されない(特異的免疫反応性を測定するのに用いることができる免疫アッセイの型および条件の記載については、例えば、Harlow&Lane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988)を参照のこと)。分析物を検出するのに用いることができる免疫アッセイは、例えば、競合および非競合アッセイ系、例えば、ウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなどを含む。好ましい実施形態において、アッセイは、サンドイッチアッセイ、例えば、ELISAアッセイである。ELISAアッセイは、未知の量の抗原を表面に添加し、次いで、抗原に結合できるように、表面全体にわたって特異的抗体を流すことを含む。この抗体は、酵素に連結し、最終工程において酵素がいくつかの検出可能シグナルに変化することができるような物質を加える。よって、蛍光ELISAの場合には、光がサンプルに当たると、いずれかの抗原/抗体複合体が蛍光を発しサンプル中の抗原の量を測定することができるであろう。
【0047】
ELISAの実施は、特定の抗原に特異性を有する少なくとも1つの抗体を含む。未知の量の抗原を含むサンプルは、非特異的に(表面への吸着を介して)または特異的に(「サンドイッチ」ELISAにおいて同じ抗原に特異的な別の抗体による捕捉を介して)、固体支持体上に固定化される。抗原が固定化した後、検出抗体を加え、抗原との複合体を形成させる。検出抗体は、酵素に共有結合し得る、または検出抗体自体が、バイオコンジュゲーションを介して酵素と連結する二次抗体によって検出され得る。各工程の間、プレートは典型的には穏和な洗浄剤溶液により洗浄し、特異的結合をしないいずれかのタンパク質または抗体を除去する。最後の洗浄工程後、プレートを酵素基質を加えることにより現像し、サンプル中の抗原量を示す可視シグナルを生じさせる。
【0048】
本発明において有用な酵素は、可溶性の化合物を不溶性の化合物に変換するものである。本発明において有用な酵素の例は、アルカリフォスファターゼおよび西洋わさびペルオキシダーゼを含むが、これらに限定されない。当業者であれば、他の酵素も本発明に有用であると理解するであろう。
【0049】
本発明において有用な酵素基質は、酵素により可溶性の化合物から不溶性の化合物へ変換されるものを含む。いくつかの実施形態において、可溶性の化合物は無色であり、不溶性の化合物は呈色する。酵素基質の例は、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3'-インドリルホスフェートp-トルイジン塩(BCIP)、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)、4-クロロ-1-ナフトール(4-CN)および3,3'-ジアミノベンジジンテトラハイドロクロライド(DAB)を含むが、これらに限定されない。さらなる酵素基質には、ECLおよびECL Plusとして知られる電気化学発光(ElectroChemiLuminescent)化学薬品が含まれる。当業者であれば、他の酵素基質も本発明において有用であることを理解するであろう。
【0050】
他の実施形態において、酵素は抗体に付着することにより固定化される。いくつかの他の実施形態において、酵素はサンドイッチアッセイを介して固定化される。
【0051】
多数の種々の方法が、捕捉剤の位置を定めるのに利用できる。最も直接的な方法においては、LSPR支持表面の表面上に剤を直接配置する。金粒子と異なる表面上に捕捉剤を付着させることもできる。この表面は、金粒子に対して適切な位置に、恒久的に、または酵素反応の持続期間だけ、設定される。例えば、捕捉剤は、固体支持体上に、または第2の固体支持体上に、例えば磁性ビーズ上に固定化することができる。いくつかの実施形態において、捕捉剤は抗体である。
【0052】
本発明の酵素は、いずれかの適切な様式にてナノ粒子または固体支持体に固定化することができる。酵素の固定化は、とりわけ、共有結合形成、イオン結合形成、水素結合およびファンデルワールス力によってなされ得る。図4は、抗体が付着することができる様々な方法を示す。抗体は、(1)におけるようにLSPR支持表面のナノ粒子上に、またはナノ粒子に接近した別個の領域上に(2)、直接付着し得る。あるいは、抗体被覆表面に接近して配置することができる別の表面上に抗体を付着させることができ;ここで支持表面は、抗原の抗体への到達を確実にするために、および調べるための光が抗体被覆表面に達するように、多孔性ならびに透明に作製される。別の手法においては、外部の磁石により金粒子被覆表面と接触させることができる抗体被覆磁性ビーズを用いる(4)。酵素反応生成物が沈着した後、磁性ビーズを除去し、光学的読み取りを促進することができる。別の表面上に抗体を付着させる利点は、シグナルが増大することであり;抗体により既に被覆されたLSPR支持表面よりむしろ、裸のLSPR支持表面上に酵素反応生成物が沈着すると、変化がより大きくなる。
【0053】
別の実施形態において、LSPR支持表面は第1の固体支持体上にある。他の実施形態において、酵素は第1の固体支持体上に固定化される。いくつかの他の実施形態において、酵素は第2の固体支持体上に固定化され、ここで第2の固体支持体は、生成工程の間、LSPR支持表面に近接している。さらなる他の実施形態において、第2の固体支持体は透明である。さらなる他の実施形態において、第2の固体支持体は磁性ビーズである。別の実施形態において、第1の固体支持体の表面は滑面である。さらに別の実施形態において、第1の固体支持体の表面は粗面である。
【0054】
権利請求する発明において有用な、磁性ビーズまたは粒子、例えば、磁性ラテックスビーズおよび酸化鉄粒子は、当業者に知られている。例えば、磁性粒子は、米国特許第4,672,040号明細書に記載されている。磁性粒子は、例えば、PerSeptive Biosystems, Inc.(Framingham Mass.)、Ciba Coming(Medfield Mass.)、Bangs Laboratories(Carmel Ind.)、およびBioQuest, Inc.(Atkinson N.H.)から市販購入し得る。
【0055】
他の化合物が、抗体と同様の様式にて標的を標的とし、結合するように開発されてきた。これらの「抗体模倣物」は、抗体の可変領域の替わりのタンパク質フレームワークとして、非免疫グロブリンタンパク質骨格(scaffold)を用いる。
【0056】
例えば、Ladnerら(米国特許第5,260,203号明細書)は、凝集しているが、分子的には分離している抗体の軽鎖および重鎖可変領域と同様の結合特異性を有する、単一ポリペプチド鎖に結合する分子を記載している。単一鎖結合分子は、ペプチドリンカーにより連結された抗体の重鎖および軽鎖可変領域の両方の抗原結合部位を含有し、その2ペプチド抗体と同様の構造に折り畳まれるであろう。単一鎖結合分子は、従来の抗体に対して、より小さいサイズ、より高い安定性および、より容易に改変されるなどのいくつかのの利点を示す。
【0057】
Kuら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(14):6552-6556 (1995))は、チトクロムb562に基づく抗体に替わるものを開示している。Kuら(1995)はチトクロムb562の2つのループをランダム化し、ウシ血清アルブミンに対する結合について選択するライブラリーを作製した。個々の突然変異体は、抗BSA抗体と同様に、BSAに選択的に結合することが見出された。
【0058】
Lipovsekら(米国特許第6,818,418号および7,115,396号明細書)は、フィブロネクチンまたはフィブロネクチン様タンパク質骨格および少なくとも1つの可変ループを特徴とする抗体模倣物を開示している。アドネクチンとして知られる、これらのフィブロネクチンに基づく抗体模倣物は、天然または遺伝子工学的抗体と同じ、いずれかの標的化されたリガンドに対する高い親和性および特異性などの多くの特徴を示す。新たなまたは改善された結合タンパク質を導き出すいずれかの技術が、これらの抗体模倣物とともに用いられ得る。
【0059】
これらのフィブロネクチンに基づく抗体模倣物の構造は、IgG重鎖の可変領域の構造と同様である。それ故に、これらの模倣物は、性質および親和性においてネイティブな抗体と同様の抗原結合特性を示す。さらに、これらのフィブロネクチンに基づく抗体模倣物は、抗体および抗体フラグメントに対してある利点を示す。例えば、これらの抗体模倣物は、ネイティブの折り畳みの安定性のためのジスルフィド結合に頼らず、それ故に、通常は抗体を破壊し得る条件下において安定である。さらに、これらのフィブロネクチンに基づく抗体模倣物の構造はIgG重鎖と同様であるので、イン・ビボにおける抗体の親和性成熟の過程と同様の、ループのランダム化およびシャッフリングの過程をイン・ビトロにて用い得る。
【0060】
Besteら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96(5):1898-1903 (1999))は、リポカリン骨格に基づく抗体模倣物(アンチカリン(Anticalin(登録商標)))を開示している。リポカリンは、タンパク質の末端に4つの高頻度可変性ループを有するβ-バレルから構成される。Beste(1999)は、ループをランダム突然変異誘発にかけ、例えばフルオレセンとの結合について選択した。3つの変異体がフルオレセンとの特異的結合を示し、1つの変異体が抗フルオレセン抗体と同様の結合を示した。さらなる分析により、ランダム化した位置はすべて可変性であることが判明し、アンチカリン(登録商標)は抗体の代替物として適切に用い得ることを示している。
【0061】
アンチカリン(登録商標)は、小さな、典型的には160〜180残基の、単鎖ペプチドであり、抗体に対していくつかの有利な点を提供し、より安い生産コスト、増大した貯蔵安定性、および減少した免疫学的反応を含む。
【0062】
Hamiltonら(米国特許第5,770,380号明細書)は、結合部位として用いられる多重可変性ペプチドループと結合した、剛性の、カリックスアレーンの非ペプチド有機骨格を用いる、合成抗体模倣物を開示している。ペプチドループはすべて、カリックスアレーンの幾何的に同じ側から、互いに対面して突き出ている。この幾何学的コンホメーションのために、すべてのループが結合に利用でき、リガンドに対する結合親和性が増大する。そのようでありながら、他の抗体模倣物と比較すると、カリックスアレーンに基づく抗体模倣物は、ペプチドのみからなるのではなく、それ故にプロテアーゼ酵素による攻撃に対する脆弱性がより低い。その骨格が純粋にペプチド、DNAまたはRNAからなるのではないことは、抗体模倣物が、極端な環境条件において比較的安定であり、長い寿命を有することを意味する。さらに、カリックスアレーンに基づく抗体模倣物は比較的小さいので、免疫原性反応が作り出される可能性は低い。
【0063】
Muraliら(Cell Mol Biol 49(2):209-216 (2003))は、抗体を、より小さなペプチド模倣物へと縮小させる方法論を記載しており、彼らはこれを「抗体様結合ペプチド模倣物」(ABiP)と名付け、これも抗体の代替物として有用であり得る。
【0064】
非免疫グロブリンタンパク質フレームワークに加えて、RNA分子および非天然オリゴマーを含む化合物においても抗体の特性は模倣されてきた(例えば、プロテアーゼ阻害剤、ベンゾジアゼピン、プリン誘導体およびベータターン模倣物)。
【0065】
表面に酵素を連結するためのさらなる方法は、ホモ二官能性およびヘテロ二官能性リンカーの使用を含む。ゼロ長(Zero-length)架橋結合試薬は、いずれかの外因性物質を導入せずに、2つのリガンドの直接的なコンジュゲーションを誘導する。ジスルフィド結合の形成を触媒する物質はこのカテゴリーに属する。別の例は、カルボキシ基および一次アミノ基を凝縮させアミド結合の形成を誘導する試薬、例えば、カルボジイミド、クロロギ酸エチル、ウッドワード試薬K1、カルボニルジイミダゾールなどである。ホモ二官能性試薬は、2つの同一官能基を担持し、ヘテロ二官能性試薬は2つの異なる官能基を含有する。ヘテロ二官能性の架橋結合剤の大部分は、一次アミン反応基およびチオール反応基を含有する。ホルミルをチオールにカップリングするための新規なヘテロ二官能性リンカーが、(Heindel, N. D. et al., Bioconjugate Chem. 2, 427-430 (1991))に開示されている。好ましい実施形態において、共有架橋結合剤は、ジスルフィド(-S-S-)、グリコール(-CH(OH)-CH(OH)-)、アゾ(-N=N-)、スルホン(-S(=O2)-)またはエステル(-C(=O)-O-)の橋を形成することができる試薬から選択される。
【0066】
別の手法において、リガンドはそれらのオリゴ糖を介して連結される。ポリペプチドリガンド上のオリゴ糖の、アルデヒドへの化学的または酵素学的酸化により、分子上に特有の官能基が生じ、例えば、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、またはセミカルバジドを含有する化合物と反応し得る。グリコシル化部位はポリペプチド分子においてよく定義されているので、酸化されたオリゴ糖部分を介する選択的カップリングにより、他のカップリング方法よりも統一的な生成物が生じ、リガンドの受容体結合特性に対する有害作用がより少ないことが期待される。炭水化物を標的とするヘテロ二官能性架橋結合剤は、例えば、同時係属の1992年8月5日に出願された特許出願第07/926,077号、米国特許第5,329,029号明細書に開示されている。
【0067】
C. 検出
本発明の方法における色の変化の検出は、いずれかの検出方法によりなされ得る。いくつかの実施形態において、検出方法は、適切な装置を用いる比色分析検出による。他の実施形態において、検出は肉眼による。LSPR支持表面における屈折率の変化の検出は、いずれかの波長、特に約200〜約1000 nmの波長を有する光にて行われる。LSPR支持表面の屈折率の変化を検出するのに有用な検出機器は、UV-Vis分光計およびプレートリーダーを含むが、これらに限定されない。
【0068】
IV. LSPRセンサー
本発明のLSPRは、第1の固体支持体、上記のような、第1の固体支持体上に配置されたLSPR支持表面、LSPR支持表面に近接して固定化酵素、および酵素基質を含む。
【0069】
V. キット
いくつかの実施形態において、本発明は、上記のようなLSPRセンサー、および酵素基質を有するキットを提供する。本発明のキットはまた、溶剤、緩衝剤、安定剤および説明書も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、従来の方法および本発明の方法において行われる比色分析2ステップサンドイッチアッセイの比較を示す。
【図2】図2は、本発明の方法を用いる1ステップアッセイを示す。
【図3】図3は、酵素反応を行った後の金ナノ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真(1)、およびIL-6アッセイの終わりの酵素反応過程における光学密度の変化を示すグラフ(2)を示す。
【図4】図4は、ナノ粒子(1)、第1の固体支持体(2)、および第2の固体支持体(3,4)のいずれかに抗体を付着させることができる様々な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
VI. 実施例
実施例1:LSPR表面の屈折率の変化の検出
LSPR表面上における免疫アッセイのプロトコルは、以下に記載する様々な工程に従って進行する。
【0072】
工程1 捕捉抗体の固定化:
はじめに、ガラス基質上に金を沈着させ、次いで金被覆ガラス基質上にポリスチレンビーズの単層を形成させ、次いで表面全体にわたって金の別の層を沈着させることを含む、当業者に知られる方法を用いて、LSPR支持表面を調製した。次いで9:1の比率のヒドロキシル-アルカンチオールおよびカルボキシル-アルカンチオールの混合物を有する自己集合膜(SAM)によって金被覆表面を修飾する。
【0073】
SAM機能化LSPR支持表面を0.05%Tween20/水により洗浄した。次いで、ddH2Oによりリンスし、乾燥させた。報告されているように、つまり、Greg T. Hermanson, Bioconjugate Techniques、Academic Press, San Diego, 1996に記載のように、LSPR支持表面のカルボン酸基を、溶液(0.1 M MES 緩衝液中、100 mM NHS+400 mM EDC)により15〜30分間活性化させた。
【0074】
30分のインキュベーション後、溶液を洗い流し、500 nMの抗体溶液と置換した。抗体溶液はアミン不含緩衝液、例えばPBS中であった。抗体の固定化を30分から24時間の間行った。例えば、C反応性タンパク質検出のための捕捉抗体は、Biodesign、カタログ番号M86007Mからのマウスのモノクローナル抗CRP抗体である。残存するEDC/NHS活性化カルボン酸基を、表面を50 mM アミノ-ポリエチレンオキシド/水の溶液と30分間反応させてクエンチした。
【0075】
次いで、表面を水によりリンスし、Pierce chemicalsからのStartingBlock緩衝液中において15分間インキュベーションすることにより、非特異的結合に対してさらにブロックした。次いで、捕捉抗体により活性化したLSPR支持表面をddH2Oによりリンスし、センサーを用いるまで湿潤環境において維持した。
【0076】
2.抗原の捕捉:
C反応性タンパク質またはCRPを、リン酸緩衝食塩水(PBS)、1 mM Ca2+、0.01%v/v Tween 20および10 uM BSA(ウシ血清アルブミン)から作製した緩衝液(緩衝液A)中1 pM(10-12 M)〜1 uM(10-6 M)の様々な濃度に希釈した。次いで、抗原を、5分〜2時間の範囲の間、抗体活性化LSPR支持表面とともにインキュベートした。
【0077】
3.第2の抗抗原抗体の捕捉:
次に、センサーを、緩衝液A中250 nMの濃度のポリクローナルヤギ抗ヒトCRP抗体(Bethyl Labs、カタログ番号A80-125A)とともにインキュベートした。この抗体は酵素またはプローブ(例えばビオチン)により標識化できる。15〜30分のインキュベーション後、第2の抗体を緩衝液により洗い流した。
【0078】
4.第2の抗抗原抗体に対する酵素連結抗体:
次いで、酵素連結抗体、Bethyl Lab、カタログ番号A50-101APからのロバ抗ヤギIgG抗体アルカリフォスファターゼコンジュゲートを、約2〜30分間反応させ、次いで緩衝液Aにより洗い流した。
【0079】
5.比色分析の現像:
酵素基質をLSPR支持表面に加え、30秒〜10分間インキュベートした。未反応の酵素基質を水により洗い流した。次いで、表面の吸収スペクトルまたは反射スペクトルを測定した。
【0080】
理解を明確にするために、説明および実施例によって詳細に上述の発明を記載したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内において変化および改変を行い得ることを理解するであろう。さらに、本明細書において提供される参照物はそれぞれ、参照により個々に組み込まれたかのように、参照によりその全体が同程度に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局在表面プラズモン共鳴(LSPR)検出系の表面の屈折率の変化を検出する方法であって、以下を含む方法:
a) 固定化酵素を用いて酵素基質から不溶性の生成物を生成させる、ここで不溶性生成物はLSPR支持表面に蓄積する;および
b) LSPRを用いて、不溶性生成物の存在により生じる表面の反射光または透過光の変化を検出する。
【請求項2】
表面がナノ粒子を含み、各ナノ粒子が約5 nm〜約1000 nmのサイズである、請求項1の方法。
【請求項3】
各ナノ粒子がAu、Ag、Ta、Pt、Pd、RhおよびCuからなる群から選択される遷移金属を含む、請求項2の方法。
【請求項4】
遷移金属が金である、請求項3の方法。
【請求項5】
各ナノ粒子が、ガラス、またはポリスチレン、ポリメタクリレートおよびポリアクリレートからなる群から選択されるポリマーをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項6】
ナノ粒子が上部および下部を有するビーズであり、上部が金属によって被覆されている、請求項5の方法。
【請求項7】
ナノ粒子ビーズがポリスチレンを含み、金属が金を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
酵素基質が、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3'-インドリルホスフェートp-トルイジン塩(BCIP)、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)、4-クロロ-1-ナフトール(4-CN)および3,3'-ジアミノベンジジンテトラハイドロクロライド(DAB)からなる群から選択されるメンバーである、請求項1の方法。
【請求項9】
酵素が、アルカリフォスファターゼおよび西洋わさびペルオキシダーゼからなる群から選択されるメンバーである、請求項1の方法。
【請求項10】
酵素が抗体との結合によって固定化される、請求項2の方法。
【請求項11】
酵素がサンドイッチアッセイを介して固定化される、請求項10の方法。
【請求項12】
検出工程が、LSPRを用いて、不溶性生成物の存在により生じる表面の反射光の変化を検出することを含む、請求項1の方法。
【請求項13】
検出工程が、LSPRを用いて、不溶性生成物の存在により生じる表面の透過光の変化を検出することを含む、請求項1の方法。
【請求項14】
LSPR支持表面が第1の固体支持体上にある、請求項2の方法。
【請求項15】
酵素が第1の固体支持体上に固定化される、請求項14の方法。
【請求項16】
酵素が第2の固体支持体上に固定化され、不溶性生成物の生成工程において、第2の固体支持体がLSPR支持表面に近接している、請求項14の方法。
【請求項17】
第2の固体支持体が透明である、請求項16の方法。
【請求項18】
第2の固体支持体が磁性ビーズである、請求項16の方法。
【請求項19】
第1の固体支持体の表面が滑面である、請求項14の方法。
【請求項20】
第1の固体支持体の表面が粗面である、請求項14の方法。
【請求項21】
以下を含むLSPRセンサー:
第1の固体支持体;
第1の固体支持体上に配置されたLSPR支持表面;および
LSPR支持表面に近接している固定化酵素。
【請求項22】
以下を含むキット:
請求項21のLSPRセンサー;および
酵素基質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−515080(P2010−515080A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544960(P2009−544960)
【出願日】平成20年1月2日(2008.1.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/050034
【国際公開番号】WO2008/086054
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(509188816)ラムダジェン・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】LAMDAGEN CORPORATION
【Fターム(参考)】