説明

LactococcuslactisNRRLB−30656に基づく生物高分子、LactococcuslactisNRRLの培養方法、ならびに、本生物高分子の産生方法

土壌から単離され、1種の Lactococcus lactis 株 NRRL B-30656 として同定され、これは、蔗糖を含有する培地において成育すると、細胞外転移酵素を産生し、これは、精製され、蔗糖を有する培地において、温度およびpHの適切な条件において、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)との生物高分子を産生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.本発明の分野
本発明は、ブドウ糖(グルコース)および果糖(フルクトース)の高分子、ならびに、その調製方法に関し、これは Lactococcus lactis 株を使用する。細胞外多糖は、ブドウ糖および果糖の天然高分子である。これら高分子は、諸種の植物や微生物に含まれ、食品および医薬品業界で、乳化剤、粘稠剤、および界面活性剤として利用される。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術の記述
フルクタンは天然に一般的に、果糖の分子間結合の型により異なる二形態で産出する。イヌリンは、植物に含まれる形では、果糖分子の列で形成され、ベータ(β)2−1結合による単位である。レバンは、微生物産物としての形では、β2−6結合により単位とされる果糖分子の列を持つ。植物フルクタンはより小さいが(約100残基)、微生物レバンは3,000,000以上の残基を含有する(Pontis et al., 1985, Biochemistry of Storage Carbohydrates in Green Plants, In: Dey and Dixon (eds.) Ch,5, p.205. New York, Academic Press)。
【0003】
微生物レバンは、蔗糖を基礎とする基質と共に、種々の微生物により産生される。
Acetobacters(Loewenberg, et al., 1957, Can. J. Microbiol., Vol.3, p.643)
Achromobacter sp.(Lindberg, G. 1957, Nature, Vol.180, p.1141)
Aerobacter aerogenes(Srinivasan, et al., 1958, Science, Vol.127, p.143)
Phytobacterium vitrosum(Belval, et al., 1947. 1948, Compt. Rend, Vol.224, p.847 および Vol.226, p.1859)
Xanthomonas pruni(Cooper, et al., 1935, Biochem, J. Vol.29, p.2267)
Bacillus subtilis(Dedonder, R., 1966, Meth, Enzymol., Vol.8, p.500 および Tanka, et al., 1979, J. Biochem., Vol.85, p.287)
Bacillus polymyxa(Hestrin et al., 1943, Biochem. J., Vol.3, p.450)
Aerobacter levanicum(Hestrin, et al., Ibid.)
Streptococcus sp.(Corrigen et al., 1979, Infect. immun., Vol.26, p.387)
Pseudomonas sp.(Fuchs, A., 1956, Nature, Vol.178, p.92)
Corynebacterium laevaniformans(Dias et al., 1962, Antonie Van Leewenhoeck, Vol.28, p.63)
【0004】
産業に利用される目的での、非常に低濃度および低純度のレバンの産生に関する、別の報告がある。
【0005】
キサンタンおよびデキストリンゴムのような他の生物高分子が広範に、エマルションおよびアイスクリームのような発泡体における、サラダのドレッシングにおける安定剤などとして、食品業界において利用されてきた(Sharma, S.C., 1981, 1月,J. Food Tech., p.59)。微生物により産生された細胞外多糖には諸種の利用法があり、そのコストは潜在的に低い。
【0006】
一般的に、Actinomyces viscosus 又は Aerobacter levanicum 株を使用しての蔗糖の醗酵により、少量のレバンを産生する。Bacillus polymixa は一般的に、諸種の形の高分子のヘテロ多糖を産生する。遺伝子的に修飾された E. coli 株が、レバンを産生させる為に利用されてきた(Gay, P. et al., 1983, J. Bacteriol., Vol.153, p.1424)。また、好気性醗酵を用いる他の方法も、レバンの産生に利用されてきた(Jeanes, et al., 米国特許第2,673,828号明細書;Gaffor, et al., 米国特許第3,879,545号明細書;Ayerbe, et al., 米国特許第4,399,221号明細書)。これらの過程(方法)は、低収率な産生および混入の問題を発生させる不都合があるので、より高い生産性を可能にする産業用過程(プロセス)が必要とされる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の主な目的は、転移酵素により産生される生物高分子を調製することであり、これは、ブドウ糖および果糖に関する転移酵素活性を持ち、Lactococcus lactis NRRL B-30656 株から産生され、その高い転移活性により特徴付けられ、これは、進捗が簡潔で容易な産生方法により該生物高分子を得ることを可能にする。その産生は、次の段階(経過)からなる。
第一相:この微生物の成育に適した培養培地において、Lactococcus lactis NRRL B-30656 株を用いての醗酵。
第二相:遠心又は超微細濾過による、細胞外酵素の回収。
第三相:基質および酵素抽出物として蔗糖を利用する醗酵反応による、該生物高分子の産生。
第四相:溶媒を使う沈殿、又は、超微細濾過による、該生物高分子の精製、その後のこの産物の乾燥。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の目的は、多糖の混入のない、純粋な生物高分子を生産することである。該生物高分子は、土壌から単離された Lactococcus lactis 株によって産生される高分子として記述される。この株は高い転移活性を有し、これは簡潔な過程により、該生物高分子を得ることを可能にし、95%以上の純度を有する。
【0009】
本微生物
本発明では、Lactococcus lactis NRRL B-30656 株は、炭素源としての蔗糖を含有した培地を利用した選択的過程によって土壌から単離されたが、ここでは、転移酵素を産生するこれら微生物がこの基質を利用でき、そのコロニーに粘液質の外観を与えている高分子を産生できる。この培地から、この特徴を有する微生物が選択され、連続的な稀釈およびプレート中での単離による単離技術により、精製される。この株から、本発明において用いられる Lactococcus lactis NRRL B-30656 株が得られた。
【0010】
この発明に関して、Lactococcus lactis NRRL B-30656 株は、AGRICULTURAL RESEARCH SERVICE PATENT CULTURE COLLECTION NRRL寄託銀行(機関)に寄託されており、登録番号 NRRL B-30656 と帰属されたものである。この株は、ブドウ糖2〜6U/mLの転移活性を持つ酵素を産生し、蔗糖を基質に用いて、ブドウ糖と果糖との重量分子量900〜1,100キロダルトンを有する高分子を産生する。
【0011】
該株は、NRRL B-30656 と命名された。この株は単離され、コロンビア国立大学バイオテクノロジー部門(IBUN)において、特徴付けられた。該株は4℃において、培養培地を有するペトリ皿に保存され、その組成は:
蔗糖 10〜40g/L
イースト抽出物 7〜30g/L
リン酸カリウム 5〜20g/L、0.05〜05g/L
鉱物塩 10〜100ppm
であり、pH5〜9である。
【0012】
この微生物は、グラム染色を利用しながら光学顕微鏡、および、酢酸ウランおよびクエン酸鉛を用いた陽性染色を利用しながら透過電子顕微鏡により、特徴付けられた。その生化学的な特徴は、コンピューターシステムMicroScanを用いて、Bergey(Stanley,W.;Sharpe,E.;Holt,J.,1994,Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology.William & Wilkins.Baltimore)により決められた微生物学マニュアル中の記述に従って実施された。
【0013】
本培養培地
Lactococcus lactis NRRL B-30656 株を用いた発酵用の本培養培地のデザイン(構成)および最適化のために、その炭素源、窒素源、および所定の微量元素の間でバランスをとった。本培養培地は本微生物に、前記酵素を増加させ産生させるのに必要とされる栄養を供給する。
【0014】
本培養培地組成の評価結果として、以降の濃度が確立された。
【0015】
【表1】

【0016】
pHは塩酸により、pH5〜9に合わせる。培地は121℃において、15分間無菌化される。
【0017】
醗酵
予備接種は、該接種量の5〜20%に対応し、グリセロール20%を有する培地に−70℃にて保存された純粋株から活性化させる。接種時間は10〜36時間を超えず、この間に、該予備接種の純度を検証するべきである(証明しなくてはならない)。この培養は、攪拌(振とう)フラスコ中で実施され、全容積の5〜20%を占めており、20〜40℃にて、100〜400rpmの攪拌で、軌道攪拌機中でインキュベートされる。培養器の数と大きさとにより、必要な接種数が決められる。
【0018】
該酵素の成育および産生条件は:
温度20〜40℃
攪拌100〜400rpm(醗酵の進展次第である)
である。
【0019】
通風
該醗酵を促進する微生物は好気性であるから、その培養は、0.1〜1通気量/培地量/分(vvm)で通気されねばならず、そのpHは該醗酵中5〜9に保たれる。この産生過程の結果として、成分が組み合わさった培養培地が得られ、バイオマス最終濃度10〜30g/L(湿ったままの重量)に到達し、転移活性2〜6U/mLを有し、これは6〜24時間後に達成される。
【0020】
酵素の回収
本細胞外酵素は、3,000〜10,000rpmでの15分間の遠心により、もしくは、該バイオマスを分離する濾過により、回収される。このようにして、該酵素抽出物は、転移酵素活性2〜6U/mLを有する。
【0021】
生物高分子産生
酵素反応
該反応条件は、次の通りである。
反応培地:
50〜300mMホスフェートバッファー(緩衝液):pH5〜9
基 質:5〜40%の蔗糖
酵 素 量:10〜40%v/v酵素抽出物
反応時間:12〜48時間
攪 拌:100〜400rpm
【0022】
本生物高分子の回収および精製
該酵素反応以後、温度を4℃に下げ、本生物高分子を2種の形で回収できる。
【0023】
a)溶媒を使った沈殿
冷たくした反応混合物に、96%エタノールを、攪拌しながら加える。エタノール量は、反応混合物体積の1.2〜2.0倍のエタノール量に対応する。
【0024】
沈殿した生物高分子は、脱イオン化し蒸留した半量の水に再び溶解され、反応混合物体積の1.2〜2.0倍量のエタノールを用いて、新たに沈殿される。
【0025】
沈殿した生物高分子は、1/3量の水に再び溶解され、凍結乾燥又は60℃での強制送風による乾燥により、湿度5〜6%まで乾燥される。
【0026】
b)超微細濾過
該反応混合物は、残ったブドウ糖および果糖を除き終えるまで、10,000ダルトン
以上の大きさの孔を有する再生セルロース膜での超微細濾過プロセスに付される。その後
、本生物高分子は、アスピレーションによる乾燥過程に付される。
【0027】
本生物高分子は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および、30℃での10
%溶液粘度により、特徴付けられる。本生物高分子は、SC1011 Shodex カラム、70℃、
流速0.6mL/分、移動相としてHPLC級(HPLCグレード)の水を用いると、保
持時間7〜7.5分を有する。
【0028】
30℃での10%溶液粘度は、粘度計 ViscoEasy, Serie L, Schott, Ref.28.541.120
L2軸, 50 rpm を用いると、400〜800センチポイズ(cP)の範囲中にある。
【0029】
粒子の平均的な大きさ<<dvs>>(直径/体積/表面積)は、224ミクロンである。本生物高分子は、蔗糖のものに近い真の密度を持つ(1.5mg/mL)。粒子間の高い多孔性48%を有する物質(材料)である。
【実施例】
【0030】
以下の実施例が、本発明を例示する。
【0031】
実施例1
本生物高分子産生微生物の単離および同定
生物高分子産生バクテリアが、土壌から単離され、Lactococcus lactis NRRL B-30656 として同定された。10gのサンプルが、該土壌から再び選択され、炭素源として蔗糖を含有する100mLの液体培地において成育され、30℃において攪拌しながら、24時間インキュベートされた。成育したら、生理食塩水中、1:10稀釈液を4つ調製し、その1/4(つまり1つの)稀釈液に接種する。この培養は、同一組成を有する固形培地において同様に行われ、高分子産生を提示したコロニーが、選択的に単離される。その後、該培養は新鮮培地に移され、24時間培養された。一旦単離されると、該微生物は、20%グリセロールを有する蔗糖培地中に、−70℃において、凍結乾燥により、10%脱脂粉乳と共に保存される。
【0032】
単離され、蔗糖固形培地において培養された株は、顕微鏡による以下の特徴を提示した。
丸いコロニー
ゴム状の様相
画定された境界線(縁)
およそ2〜3mmの直径(24時間の培養で)
透明なクリーム色
顕微鏡レベルで、グラム染色を通じてグラム陽性菌が観察され、これらは時折個別に見られるが、一般的にはまとまりを形成しているのが見られる。
【0033】
透過電子顕微鏡による特徴付けは、その細胞壁を区別できる細胞の周囲の細胞を観察できるようにするが、電子密度顆粒、鞭毛、線毛等のような特定構造は観察されない。
【0034】
本発明の株は、Lactococcus lactis NRRL B-30656 であり、微生物GRASSとしてカタログに載っており、以下の生化学的特徴を有する。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例2
本酵素産生
1.醗酵
a)本微生物の活性化
本転移酵素を得るには、微生物 Lactococcus lactis NRRL B-30656 を使用する。このバクテリアは、−70℃の冷凍保存溶液(グリセロール)中で保存された。この株は、常温で徐々に解凍され、蔗糖培地50mL中で、30℃の温度で12時間、180r.p.mの攪拌で、活性化された。この培養液5mLを用いて、2種の接種が実施され、第1では、蔗糖寒天中、30℃にて24時間インキュベートし、粘液質の特徴を観察し、4℃にて保存し、第2では、100mLの蔗糖液中、30℃にて12時間インキュベートし、これが最終的に、1mL容れる遠心管中に配分され、20%V/Vのグリセロールと共に−70℃にて貯蔵し、その後の醗酵に利用された。最初の培養の残りの45mLを、凍結乾燥によって5mLのバイアル中に保存し、無菌脱脂粉乳を養分として利用しつつ、10%濃度とし、4℃にて保存する。
【0037】
b)予備接種および接種の準備
このロットに該当している同一組成の培地で、予備接種を準備する。蔗糖固形培地中で
貯蔵された微生物を採取し、1(単位)体積の液体培地中で、接種体積の5〜20%まで
接種し、25〜35℃において、100〜400r.p.mで攪拌しながら、12〜24
時間培養する。
【0038】
【表3】

【0039】
該微生物は、該発酵体積の5〜10%播種され、前段階の培地の肉眼での密度0.7u.a.まで、稀釈度1:10において成育され、600nmにおいて読み取られ、無菌培養培地がブランクとして利用される。
【0040】
該発酵中、予備接種および接種を、これが実施される発酵機の容積に鑑みて実施することが必要であり、最終接種におけるような形で(産生用該発酵機に入れられた培養培地の10%)、細胞のこの反応機中での潜伏相を避けるための必要量を得、該予備接種と先立つ接種との間の体積1:10の関係、もしくは、接種するために充分な細胞密度を保存するよう試みながら、その純度における厳密な制御、および、接種もしくは予備接種として用いられる培養の栄養状態を維持する。
【0041】
c)培養用および接種用の培地の調製
該培養培地のpHが、pH7.0に調整される。該予備接種を準備するための培地を有する長頸フラスコが、121℃15分間の無菌化に付される。
【0042】
d)操作条件
活性成分産生は、この確立した培地を利用しているロットにおける発酵により実施される。その操作条件が、以下の表中にある。
【0043】
【表4】

【0044】
2.本酵素の回収
a)遠心
本細胞外酵素は、5,000rpm15分間の遠心で回収され、バイオマスを分離させる。酵素抽出物は、2〜6U/mLのブドウ糖転移酵素活性を有する。
【0045】
b)超微細濾過
醗酵上清を回収するもう1つ別の方式は、0.45〜2ミクロンの孔の大きさを有する
超微細濾過膜の使用による。
【0046】
実施例3
本生物高分子の産生および回収
a)酵素反応
該反応条件は、次の通りである。
反応培地:
50〜200mMホスフェート緩衝液のpH:5〜7
基質 :蔗糖8〜20%
酵素量 :酵素抽出物10〜30%v/v(200〜500U/L)
反応時間 :20〜40時間
攪拌 :100〜400rpm
【0047】
本酵素は遠心で分離され、8〜20%の蔗糖を含有する培地において、pH5〜8、温度25〜35℃にて20〜30時間置かれ、30〜60g/Lの濃縮高分子を得、その基質に関し40〜60%の収率に対応している。報告されたその他の過程(方法、プロセス)では、該高分子産生に5〜10日かかる。報告された微生物は、より低濃縮の高分子を産生する(表1)。
【0048】
b)本生物高分子の精製
該酵素反応後、温度を4℃に下げ、該生物高分子が、2つの形で回収され得る。
#溶媒を用いた沈殿
冷たい反応混合物に、攪拌しながら、96%エタノールを加える。加えられるエタノール量は、反応混合物体積につき、エタノール1.0〜3.0体積に対応する。
沈殿した生物高分子を、脱イオン化し蒸留した半量の水に再溶解させ、新たに、反応混合物体積につき1.0〜3.0体積のエタノールで沈殿させる。
沈殿した生物高分子を、1/3体積の水に再溶解させ、凍結乾燥により、もしくは、60〜80℃の強制送風による乾燥により、湿度5〜10%まで乾燥させる。
【0049】
【表5】

【0050】
#超微細濾過
該反応混合物は、10,000ダルトンより大きな孔の大きさを有する再生セルロース膜において、グルコース残渣およびフルクトース残渣の除去の終了まで、超微細濾過プロセスに付される。後に、該生物高分子は、アスピレーションによる乾燥プロセスに付される。
【0051】
この微生物に関しての本生物高分子産生は基質濃度に依り、8〜24%にて最適であり、そのより高い収率と共に、より高い純度を有する生物高分子を産生する(表2)。
【0052】
【表6】

【0053】
c)乾燥
得られた最終生成物は白い粉(白色粉末)であり、凍結乾燥か、もしくは、80℃以下の温度での乾燥熱によって乾燥され得る。
【0054】
実施例4
本生物高分子の特徴付け
1.可溶性
該生成物は水溶性生物高分子で、最高50%濃度まで、水性ゲルタイプの均一な分散体を形成し得る。1.0gの生物高分子は、32mLの5%塩酸、50mLの10%水酸化ナトリウム、30mLの氷酢酸に溶ける。
【0055】
エタノール、イソプロパノール、アセトン、鉱油、植物油、およびポリエチレングリコールには溶けない。
【0056】
該生成物は沸点にて、0.5%蓚酸にやや溶ける。
【0057】
2.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
#浸透クロマトグラフィーで、1.5%の生物高分子溶液は、重量分子量900〜1,100KDaを有し、カラム Shodex OHPak KB-803 で求められた。該クロマトグラフィー条件は、次の通りであった。
温 度:55℃
移動相:NaCl 0.1M 溶液
流 速:0.9mL/分
【0058】
#該高分子の純度は95%より高く、次の条件下で、HPLCにおいて尖ったピークにより証明される。カラム商品名ShodexSC1011。
移動相:蒸留し脱イオン化した水
流 速:0.6mL/分
温 度:70℃
備 品:Waters510、屈折率検出器付き、商品名Waters2410
【0059】
これらの条件下で、該生物高分子は、保持時間7〜7.5分を有する。
【0060】
利用された比較基準は、分析用試薬級(グレード)の、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、蔗糖、およびレバンであった。
【0061】
#該生物高分子は、pH2〜9の緩衝液との該高分子の接触後、HPLCにより証明され
たpH範囲の幅の中では安定である。
【0062】
3.粘度
10%溶液の粘度を30℃おいて求め、粘度計 ViscoEasy, Serie L, Schott, Ref.28.541.120, L2軸, 50rpmを用いた。分析したサンプルは、1,000〜3,000センチポイズ(cP)の範囲中の粘度を有した。擬似可塑性の振る舞い(挙動)を呈した(カッティングすると痩せる)。該生物高分子溶液の粘度は、カッターもしくは剪断機の速度を上げると減少し、温度を下げると増加する。
【0063】
4.寸法の特徴
該生物高分子は、蔗糖のそれ(1.5mg/mL)に近い真の密度を持つ。粒子間で48%の高い多孔性を有する物質(材料)である。粒子の平均的大きさ<<dvs>>(直径/容積/表面積)は、224ミクロンである。
【0064】
5.湿気の吸収
水分吸収能は、相対湿度に依り、6.12mg/g〜353.20mg/gの間を上下する。このことはこれを、やや吸湿性の材料にする。高分子であり親水性であるその構造のために、該生物高分子は、水に触れると限りなく多孔性(スポンジ状)になることができ、含む水の量によって変化できる仕組みのシステムを形成することができ、果ては、その高粘度により特徴付けられる水っぽい分散体の形成に至る。
【0065】
6.湿気
60℃の真空炉(オーブン)中での乾燥で、10%以下の水分が失われる。
【0066】
7.熱的特徴
該生物高分子は、2点のガラス転移温度を有する。第1は20℃〜30℃で、第2は190℃〜220℃である。走査差動カロリー計によって、求められる。
【0067】
8.微生物学的性質
該生物高分子は、次の微生物学的検体数を有する。
【0068】
【表7】

【0069】
9.使用
a)該生物高分子は、医薬産業において、稠密剤、粘稠剤、安定剤、拡散剤、皮膜形成剤、分解剤、代用血漿、潤滑剤、および抗生物質前駆体として、用いられ得る。
【0070】
b)該生物高分子は、食品産業において、粘稠剤、稠密剤、安定剤、拡散剤、繊維、ならびに、脂、油、および、エーテルおよびエステル主体の炭水化物の代用品として、用いられ得る。
【0071】
c)該生物高分子は、押出しにより得られる製品において、柔軟で生分解性の包装を生産するのに適したフィルムを形成するために、ならびに、水処理用凝固剤生産における射出もしくはモールドにより得られる生分解性製品を得ることにおいて、用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NRRL B-30656 のコードの下で寄託された Lactococcus lactis 株の代謝産物から得られた、ブドウ糖と果糖との生物高分子。
【請求項2】
前記代謝産物が、ブドウ糖転移酵素(グルコシルトランスフェラーゼ)と果糖転移酵素(フルクトシルトランスフェラーゼ)の2種の活性を有する酵素による、請求項1の生物高分子。
【請求項3】
ブドウ糖/果糖の割合0.2〜0.7を維持する組成を持つ、請求項1の生物高分子。
【請求項4】
以下の特性:
分子量900〜11,000キロダルトン
第1のガラス転移温度が20〜30℃で、第2のガラス転移温度が190〜220℃の、2種のガラス転移温度
pH2〜9の値を有する水溶液中での安定性
温度30℃で、水溶液中10〜20%の濃度となっている場合、1,000〜3,000センチポイズの粘度
非吸湿性
水中での高い溶解性、最高50%重量/体積の濃度まで、水性ゲルタイプの均質な分散液を形成する能力
を有する、請求項1〜3のいずれか1項の生物高分子。
【請求項5】
Lactococcus lactis NRRL B-30656 株により産生される、ブドウ糖転移酵素と果糖転移酵素との2種の活性を有する酵素の産生方法であって:
a)炭素源としての蔗糖、窒素源としての蛋白質、および鉱物塩を含有する培地を用
いつつ、微生物 Lactococcus lactis NRRL B-30656 を活性化させ;
b)炭素源としての蔗糖、窒素源としての蛋白質、および鉱物塩を含有する培養培地
を用いつつ、微生物 Lactococcus lactis NRRL B-30656 を醗酵させ;
c)遠心もしくは超微細濾過を用いつつ、該酵素を該醗酵培地から分離する
ことからなる、酵素の産生方法。
【請求項6】
前記微生物を活性化させるステップにおいて、炭素源としての蔗糖(糖蜜、葡萄酒、砂
糖、およびその他蔗糖源)、窒素源としての蛋白質(イースト抽出物、硫安、肉抽出物、
およびその他窒素源)、および鉱物塩を含有する培地に接種し、10〜36時間、25℃
、100〜400rpm、およびpH5〜9においてインキュベートする、請求項5の酵
素の産生方法。
【請求項7】
前記微生物を醗酵させるステップにおいて、炭素源としての蔗糖(糖蜜、葡萄酒、砂糖
、およびその他蔗糖源)、窒素源としての蛋白質(イースト抽出物、硫安、肉抽出物、お
よびその他窒素源)、および鉱物塩を含有する培養培地を用いつつ、12〜36時間、2
5℃、100〜400rpm、1〜2vvm、およびpH5〜9においてインキュベート
して、微生物 Lactococcus lactis NRRL B-30656 を培養する、請求項5の酵素の産生方
法。
【請求項8】
前記酵素を分離するステップにおいて、前記微生物の懸濁液を、3,000〜7,000rpmで遠心しつつ、もしくは、0.22〜0.45ミクロンの膜を用いて超微細濾過することにより、該酵素を、前記発酵培地から分離する、請求項5の酵素の産生方法。
【請求項9】
前記微生物を用いる醗酵ステップにおいて、炭素源としての蔗糖(糖蜜、葡萄酒、砂糖
、およびその他蔗糖源)、窒素源としての蛋白質(イースト抽出物、硫安、肉抽出物、お
よびその他窒素源)、および鉱物塩を含有する培養培地を用いつつ、12〜36時間、2
5℃、100〜400rpm、1〜2vvm、およびpH5〜9においてインキュベート
して、微生物 Lactococcus lactis NRRL B-30656 を用いる予備接種が実施される、請求
項5の酵素の産生方法。
【請求項10】
請求項2、5〜8のいずれか1項の、転移酵素活性を有する酵素の産生方法であって:
a.炭素源としての蔗糖(糖蜜、葡萄酒、砂糖、およびその他蔗糖源)を10〜40
g/Lの濃度で、窒素源としての蛋白質(イースト抽出物、硫安、肉抽出物、その他窒素
源)を7〜30g/Lの濃度で、および鉱物塩を含有する培地に接種して、10〜36時
間、25℃、100〜400rpm、およびpH5〜9においてインキュベートして、微
生物 Lactococcus lactis NRRL B-30656 を活性化させ;
b.炭素源としての蔗糖(糖蜜、葡萄酒、砂糖、およびその他蔗糖源)、窒素源とし
ての蛋白質(イースト抽出物、硫安、肉抽出物、およびその他窒素源)、および鉱物塩を
含有する培養培地を用いて、12〜36時間、25℃、100〜400rpm、1〜2v
vm、およびpH5〜9においてインキュベートして、微生物 Lactococcus lactis NRRL
B-30656 を用いて予備接種し;
c.炭素源としての蔗糖(糖蜜、葡萄酒、砂糖、およびその他蔗糖源)、窒素源とし
ての蛋白質(イースト抽出物、硫安、肉抽出物、およびその他窒素源)、および、鉱物塩
HPO、FeSO.7HO、MgSO.7HO、MnSO.HO、CaCl.
2HO、NaClを含有する培養培地を用いて、12〜36時間、25℃、100〜4
00rpm、1〜2vvm、およびpH5〜9においてインキュベートし、微生物 Lacto
coccus lactis NRRL B-30656 を培養し;
d.該微生物の懸濁液を、3,000〜7,000rpmで遠心して、もしくは、0.22〜0.45ミクロンの孔の大きさを有する膜を用いて超微細濾過することにより、該酵素を該醗酵培地から分離する
ことからなる、酵素の産生方法。
【請求項11】
請求項1の、ブドウ糖と果糖との高分子の産生方法であって:
a)請求項10による発酵により得られた転移酵素を、蔗糖源を含有する培地中で、前記生物高分子産生に適した、攪拌、温度、pH、酵素および基質の濃度、および反応時間条件下にインキュベートし;
b)沈殿もしくは超微細濾過により、該生物高分子を回収し精製する
ことからなる、高分子の産生方法。
【請求項12】
請求項10による生物高分子の産生方法であって、前記酵素をインキュベートするステップが:
該酵素を、蔗糖源(葡萄酒、糖蜜、砂糖)を含有する培地中で、該生物高分子産生に適した、攪拌(100〜400rpm)、温度、pH(5〜9)、酵素濃度(10〜40%v/v酵素抽出物)および基質濃度(5〜40%)、および反応時間(12〜48時間)条件下にインキュベートする
ことからなる、高分子の産生方法。
【請求項13】
請求項10の酵素の産生方法であって、前記生物高分子を沈殿により回収し精製するステップが:
冷たい反応混合物に、96%の1.2〜2.0体積のエタノールを、攪拌しながら加え(加えられるエタノール量は、エタノール/反応混合物体積に相当);
沈殿した生物高分子を、脱イオン化され蒸留された半分の体積の水に溶解させ、新たに、反応混合物体積につき1.2〜2.0体積のエタノールを用いて沈殿させ;
沈殿した生物高分子を、1/3体積の水に溶解させ、凍結乾燥により、もしくは、50〜80℃の強制通風による乾燥により、湿度5〜6%まで乾燥させる
ことからなる、酵素の産生方法。
【請求項14】
請求項10の酵素の産生方法であって、前記生物高分子を、超微細濾過により回収し精製するステップが:
前記反応混合物を用い、10,000〜30,000ダルトン以上の孔の大きさを有する再生セルロース膜を用い、超微細濾過プロセスを、ブドウ糖残渣および果糖残渣を除去し終えるまで実施し、該生物高分子を、送風による乾燥プロセスに付す
ことからなる、酵素の産生方法。
【請求項15】
コロンビアの土壌から単離され、コード NRRL B-30656 下に寄託されている Lactococcus lactis 株微生物。
【請求項16】
請求項14の微生物であって、ブドウ糖転移酵素と果糖転移酵素との2種の活性を有する酵素を産生する、微生物。
【請求項17】
請求項14の微生物であって、請求項1および4のいずれか1項の生物高分子を産生するために利用される、微生物。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれか1項の微生物の保存方法であって、該微生物の凍結乾燥からなり:
a)該微生物を、蔗糖液中で、25〜35℃において、12〜24時間培養し;
b)該培養を、10〜20%v/vの無菌脱脂粉乳と共に、1mL容量の遠心管に配分し;
c)該培養を、凍結乾燥させる
ステップを含む、保存方法。
【請求項19】
請求項14〜16のいずれか1項の微生物の保存方法であって、該微生物の冷凍からなり:
a)該微生物を、蔗糖液中で、25〜35℃において、12〜24時間培養し;
b)該培養を、20%v/vのグリセロールと共に、1mL容量の遠心管に配分し、
−70℃において保管する
ステップを含む、保存方法。
【請求項20】
請求項1〜4のいずれか1項の生物高分子であって、稠密剤、粘稠剤、安定剤、拡散剤、皮膜形成剤、分解剤、代用血漿、潤滑剤、および抗生物質前駆体として、医薬産業において利用される、生物高分子。
【請求項21】
請求項1〜4のいずれか1項の生物高分子であって、粘稠剤、稠密剤、安定剤、拡散剤、繊維、ならびに、脂、油、および、エーテルおよびエステル主体の炭水化物の代用品として、食品産業において利用される、生物高分子。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれか1項の生物高分子であって、押出しにより得られる製品において、柔軟で生分解性の包装を生産するのに適したフィルムを形成し、水処理用凝固剤生産における射出もしくはモールドにより得られる製品において利用される、生物高分子。

【公表番号】特表2007−516335(P2007−516335A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546384(P2006−546384)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004224
【国際公開番号】WO2005/064003
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(506217977)ユニヴァーシダッド・ナシオナル・デ・コロンビア (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD NACIONAL DE COLOMBIA
【住所又は居所原語表記】Rectoria General, Ciudad Universitaria, Universidad Nacional de Colombia, Bogota, 6 Colombia
【Fターム(参考)】