Liイオン電池コンポネントの直接熱スプレー合成
前駆物質から電池部材を作製する方法は、前駆物質中に溶解した少なくとも1つのコンポネントを有する前駆物質を提供する工程および基板上に前駆物質を熱スプレー堆積させて被覆層を形成する工程を含み、前記少なくとも1つのコンポネントは、基板上に堆積される前に熱スプレー内部で合成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の利益)
本発明は、米国海軍によって授与されたグラント番号N00244-07-P-0553の下で政府の支援で行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(関連出願へのクロスリファレンス)
本出願は、2009年8月14日付けで出願された米国仮出願第61/233,863号および2010年8月13日付で出願された米国特許出願第12/855,789号の利益を主張する。本出願は、また2009年5月1日付の米国仮出願第61/174,576号の利益を主張する2010年5月3日付けの米国特許出願第12/772,342号の一部継続出願である。上記出願の各々の開示は、引用によってそれら全体をここに取り込む。
【0003】
(分野)
本開示は、Liイオン電池の製造に関するものであり、さらに詳細には、熱源によるその場微細構造改質と組み合わされた熱スプレープロセスを用いて電極材料およびコンポネントを直接合成するための堆積装置、方式およびレシピに関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
本節は、本開示に関連する背景情報を提供するが、それは、必ずしも先行技術とは限らない。
【0005】
充電式Liイオン電池は、自動車、エレクトロニクス、バイオメディカル・システム、航空宇宙システムおよびその他の個人的用途に広く応用できる。より良い比容量およびサイクル特性を達成するためにLiイオン電池用の電極特性を改善しなければならないことは、しばらく前から分かっている。この数年間、研究者は、より良い性能を達成するために、材料化学特性、微細構造および粒子サイズの制御に焦点を当てて研究を進めてきた。
【0006】
特に図1を参照すると、Liイオン電池セルは、通常、アノード、セパレータ、カソードおよびアノードとカソードとの間で電池動作を実現するためにイオンの流れを許容する電解質を含む。業界ではこれらのコンポネント用としていくつもの異なる材料が研究されている。例えば、カソード用としては、LiFePO4、LiCoO2、LiMn2O3およびLi [NixCo1-2xMnx] O2などの化学材料が開発されている。アノード用としては、グラファイト、炭素で被覆されたシリコン、Li4Ti5O12、Co3O4およびMn3O4などの化学材料が開発されている。電解質は、液体または固体またはそれらの組み合わせのいずれかである。セパレータは、典型的には多孔質メンブレンである。
【0007】
カソード用として使用される様々な材料の中で、Fe系リン酸塩は、低コストと非毒性のため魅力的な材料である。カンラン石構造のLiFePO4は、テキサス大学のJohn Goodenoughらによって1996年に初めて開発された。それ以来、LiFePO4の生産に関して粒子の表面積増大のほか、電子およびイオンの輸送を促進するための導電チャネルを提供することを目的として様々な改良がなされた。
【0008】
LiFePO4は、高温の固体化学反応、ゾル−ゲル・プロセス、熱水合成、またはスプレー熱分解などの様々なアプローチのいずれかを使用して合成できる。カンラン石相を合成することは、比較的直接的な方法であるが、これらの各方法は、また、第二鉄層(Fe2+の酸化による)を除去し、鉄原子を正しく配列させて充電/放電プロセスの間にリチウム・イオンの拡散を阻止しないようにするために不活性雰囲気中、700℃付近での材料の最終的なシンタリングを必要とする。この最終工程は、少量の材料であっても完了までに数時間を要するのが一般的である。
【0009】
LiFePO4は、理論的に非常に高い比容量を有するが、この材料は、室温で非常に低い伝導性を示す。Ravetらによって提案されたオプションは、LiFePO4の粒子を炭素などの導電性材料で被覆するものである。Songらは、単に粒子をアセチレン・ブラックでボールミル粉砕することによってLiFePO4の粒子に炭素を添加させることができた。このプロセスは、サンプルの導電率を8倍増大させた。Bewlayらは、LiCO3、FeC2O4・2H2OおよびNH4H2PO4の直接分解反応に蔗糖を添加することで、LiFePO4粒子を炭素で被覆した。炭素は、またプロパンなどの炭化水素を介してLiFePO4溶液を熱分解させることによっても挿入される。その他、少量のニオブ、チタンおよびマグネシウムなどの添加物もLiFePO4の導電率を向上させることに成功した。
【0010】
カソードまたはアノード材料の如何にかかわらず、粒子の大きさ、構造、相および添加物は、最適な電池性能のために慎重に制御すべき重要な特性である。それらの広い表面積のおかげで、適切な格子構造を持つナノ粒子材料は、Liイオンの挿入および抽出を容易にし、電池動作時に誘導される深刻な歪みを効果的に緩和する。さらに、炭素系添加物は、強化された充電/放電性能を示した。すべての合成プロセスの最終製品は、通常、粉末であり、それは、後に導電性添加物およびバインダと混合される。次にスラリー混合物が、電極を形成する膜として電荷コレクタ上に堆積される。従って、粉末の製造は、通常、セル組立ラインから切り離されたバッチで行われる。
【0011】
あるいは、パルス・レーザー堆積および高周波マグネトロン・スパッタリングなどの技術も電極上に所望の膜を直接実現するために採用されているが、このプロセスは、通常、所望の電極材料の前処理されたターゲットから始まり、通常はnm/分オーダの非常に遅い成膜速度を提供する。
【0012】
研究者はまた、特にアノード用として、プラズマ・スプレー・プロセスなどの大量生産用の堆積プロセスを用いて予め合成された粉末を堆積させるアプローチを開発してきた。大量の堆積を達成できるが、それでも粉末材料は、上記の従来のアプローチによって合成する必要がある。
【0013】
電解質に関して、液体電解質は、一般にエチレン・カーボネート(EC)およびジメチル・カーボネート(DMC)に溶解したLiPF6を含む。あるいは、EC/DMC混合液中のビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド・リチウム塩もまた液体電解質として使用できる。液体電解質は、高温動作に耐えられないため、液体電解質は、通常低温プロセスであるセル組立時にセルに追加されるのが一般的である。
【0014】
Li1+xAlxTi2-x(PO4)3[LATP](x:0.2-0.5)ベースの固体電解質がLiイオン二次電池用として研究されている。これらの材料は、NASICON型構造とLiイオンの高いイオン伝導性を有しており、高温での動作に適している。固体電解質のほとんどは、カソード材料と同様に固体またはゾル・ゲル法を通して合成され、高温アニール状態からの急速冷却によってガラス相の粉末が得られる。
【0015】
カソード、アノードおよび電解質とは別に、セパレータは、Liイオン電池の性能に重大な役割を果たす。広い表面積、多孔質および良好な機械的強度を有するセパレータは、最高の性能を得るために望ましい。過去数年間、研究者は、セパレータ用として、ポリプロピレン系の既存の材料に比べてより優れた性能を示すポリフッ化ビニリデン(PVDF)系のメンブレンに焦点を当てて研究してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本教示の産業用電池製造技術は、多段階の材料合成、コンポネント作製および組立プロセスで構成される。例えば、カソード製造に含まれる一般的な手順を図2Aに模式的に示す。結果として、Li電池の現在のコスト($ / kWh)は、非常に高い。さらに、合成および組立てプロセスは、また電池セルの幾何学的自由度を制限する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(概要)
本節は、開示の一般的な概要を提供するが、その全範囲またはそのすべての機能の包括的な開示ではない。
【0018】
本開示は、化学的/熱的処理および圧密によって電池セルの所望のコンポネント層となる高温ガス流中に注入される電池材料の適切な前駆物質の使用を含む装置、方式およびレシピを提供する。スプレー/堆積プロセスは、粉末/液体/気体の前駆物質またはそれらの組合せを用いて、直接Liイオン電池のコンポネントに必要な異なる材料の組み合わせを実現する。必要な場合には、レーザー・ビームまたは熱源などの熱源によって、電池の最適な性能に必要とされる微細構造および相を制御するための堆積材料層のその場熱処理がさらに提供される。このアプローチは、プロセス工程の省略、幾何学的自由度に関して独特な利点を提供し、またこの方法は、大面積の電極製造に拡張可能であり、従って大量生産に展開できる。
【0019】
本開示のいくつかの実施の形態で、電流コレクタ、電極、電解質ならびにセパレータ・メンブレンおよび/またはそれらの組合せは、現下の教示の原理に従って製造され、電池セル全体のすべてのコンポネントを一層ずつ作製することを可能にする。このように複雑な電池構造は、材料の合成およびセルの組み立てが直列的(in−line)に実行される場所で実現できる。
【0020】
可能な応用のそのほかの領域については、ここに提供される説明から明らかになる。本概要中の説明および特定の実施例は、例示のみの目的を意図されており、本開示の範囲を限定することを意図されていない。
【0021】
ここに記載される図面は、すべての可能な実施ではなく、選択された実施の形態を説明する目的のためだけに示されるものであって、本開示の範囲を限定することを意図されていない。分かりやすいように、すべてのコンポネントは、すべての図でレベル付けされているわけでもないし、また示された開示の各実施の形態のすべてのコンポネントが示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本開示の様々な例示的な実施の形態に従うLiイオン電池セルのコンポネントを示す模式図である。
【図2A】Liイオン電池のカソードを作製するための多段階の従来の処理アプローチを示す模式的フローチャートである。
【図2B】本教示の原理に従って、Liイオン電池のカソードを作製するための直接合成および圧密アプローチを示す模式的フローチャートである。
【図3A】図2Bのプロセス装置アセンブリを含む本開示の例示的な実施の形態の模式図である。
【図3B】指向性熱源に加えて直流プラズマ・システムを含む図3Aのスプレー装置の例示的な実施の形態の模式図である。
【図3C】燃焼フレーム・システムを含む図3Aのスプレー装置の例示的な実施の形態の模式図である。
【図3D】混合およびポンプ・システムとともに3つの液体前駆物質のリザーバを含む図3Aの前駆物質給送装置の例示的な実施の形態の模式図である。
【図3E】液体および固体の前駆物質リザーバを含む図3Aの前駆物質給送装置の例示的な実施の形態の模式図である。
【図4A】本教示の原理に従って液体前駆物質から合成された粉末の収集装置の概略図である。
【図4B】本教示の原理に従って液体および/または気体の前駆物質から合成された粒子を用いて堆積される電極材料膜の模式図である。
【図4C】本教示の原理に従って固体/液体および/または気体の前駆物質から合成された粒子を用いて堆積される電極材料膜の模式図である。
【図4D】本教示の原理に従って堆積され、その場熱処理される電極材料膜の模式図である。
【図5A】現下の教示の原理に従って合成される様々な形態学的パターンおよび材料を示す例示的なカソードの斜視図である。
【図5B】現下の教示の原理に従って液体の前駆物質から直接合成されるLiFePO4カソード膜のTEM像である。
【図5C】現下の教示の原理に従って液体の前駆物質から直接合成されるLiFePO4カソード膜のXRDパターンである。
【図5D】現下の教示の原理に従って液体の前駆物質から直接作製されるLiFePO4カソードのサイクリック容量プロットである。
【図5E】現下の教示の原理に従ってCo膜堆積およびその場リチオ化反応で作製されるLiCoO2カソードのサイクリック充電/放電プロットである。
【図6A】現下の教示の原理に従って合成される様々な形態学的パターンおよび材料を示す例示的なアノードの斜視図である。
【図6B】現下の教示の原理に従ってCo粉末前駆物質から直接合成され、その場酸化されるCo3O4アノード膜のXRDパターンである。
【図6C】現下の教示の原理に従って作製される図6BのCo3O4アノードのサイクリック充電/放電プロットである。
【図7】複数の堆積システムを含むコンポネント層のロール・ツー・ロール(roll-to-roll)作製を示す、本教示の原理に従うシステムの斜視図である。
【図8A】現下の教示の原理に従って作製される例示的な固体電解質層のXRDパターンである。
【図8B】現下の教示の原理に従って一層ずつ作製される例示的な電池セルの斜視図である。
【図8C】図8Aの例示的な電池セルの異なる層を示す分解図である。
【図9A】現下の教示の原理に従って飛行機の翼に一層ずつ堆積される例示的な電池セルの斜視図である。
【図9B】現下の教示の原理に従って太陽電池の下に一層ずつ堆積される例示的な電池セルの斜視図である。
【図9C】現下の教示の原理に従って自動車の構造上に一層ずつ堆積される例示的な電池セルの斜視図である。
【0023】
対応する参照符号は、いくつかの図面を通して対応するパーツを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
本開示の非限定的な実施の形態について、模式的であって、縮尺通りに描かれることを意図されていない添付図面を参照しながら実施例によって説明する。
【0025】
最初に図2Aを参照すると、電池電極の準備のために実行される現在の合成アプローチは、多くのプロセス工程を含んでおり、数時間の処理時間を要する。処理時間を短縮すると同時に材料の化学特性および形態を適切に制御できる新たな合成戦略が極めて重要である。
【0026】
特に図2Bを参照すると、現下の教示は、適切な液体前駆物質を用いて電極および/またはその他のコンポネントを作製する製造方式を提供するが、この液体前駆物質は、化学的/熱的処理および圧密によって電極アセンブリの望みの能動層となる高温ガス流中に注入される。液体前駆物質は、高温ガスへの注入時に流れの中で熱分解して、溶融/半溶融/固体状態の所望の材料の液滴となって膜状に圧密する。さらに必要に応じて、熱源は、膜のその場熱処理を提供し、電池性能を強化するために化学特性、相および形態を最適化する。
【0027】
さらに、本開示の新規な製造方式は、化学的前駆物質から直接所望の形態学的特徴、相および組成の膜処理を提供するので、現在業界で実行されている処理工程を削除する。さらに、現下の教示に従うスプレー堆積技術は、幾何学的に複雑な電極の作成を可能にする。現下の方式に従うスプレー合成および圧密は、形成時の特定元素の望ましくない化学変換を防ぐために、制御された雰囲気(例えば、N2またはN2/H2)のもとで実行できる。いくつかの実施の形態で、コンポネント成分が完全に溶解状態にある流体前駆物質の使用は、構成要素の均質性を保証し、一般に従来のプロセスで実行されている固相反応に比べて反応速度を向上させるため、処理時間を短縮できる。
【0028】
図3Aに示すように本教示のいくつかの実施の形態で、作製装置アセンブリ100は、モーション・システム110を含み、それは、スプレー装置200を機械的に往復移動させ、ポンピング・システム310を介してリザーバ300からの一定量の液体前駆物質を用いてターゲット400上に均一な膜を構築する。いくつかの実施の形態で、ターゲット400は、流体の流れ410によって裏面から冷却される。装置アセンブリ100は、不活性雰囲気に設置できる。
【0029】
図3Bを参照すると、いくつかの実施の形態で、スプレー装置200は、液体前駆物質の注入要素202および/または205および/または206を備えたプラズマ・ガン201を含むことができる。このアプローチを使用して、複数の前駆物質を効率的にプラズマ流207に取り込むことができる。しかし、与えられた時点にすべての流体注入要素を使用する必要はない。要素202は、プラズマ装置のカソードとして電気的に充電でき、他方要素203は、アノードとして充電できる。この構成でプラズマは、一般的に文献で知られているように、直流プラズマまたはDCプラズマの原理に従って生成される。逆に、いくつかの実施の形態で要素202は、電気的に中性のままで、インジェクタ/アトマイザとしてのみ機能する。この構成でプラズマは、一般に文献で知られている誘導結合プラズマまたはICPの原理に従って、周囲を取り囲むRF誘導コイル(簡単にするため図示されていない)によって生成される。
【0030】
さらに、いくつかの実施の形態において、図3Bの液体前駆物質注入要素202は、気体および固体の前駆物質を利用するために使用される。液体前駆物質の場合には、二液アトマイザ205”が使用され、高温ガス流に取り込むべき十分微細な液滴に液体をアトマイズする。別の実施の形態では、液体前駆物質入力300および気体入力205’を有するアトマイザ・アセンブリ206が一緒に結合されてアノードの下流地点に前駆物質の液滴を導入する。アトマイズされた前駆物質の液滴は、プラズマ・パスを通って生成されるプラズマ・ジェット207による二次的なアトマイズを受けて、基板またはターゲット400上での材料合成および堆積のための微細な液滴とされる。アトマイザ・アセンブリ206は、液体または気体の前駆物質あるいはそれらの組み合わせのために好んで使用される。さらにアトマイザ・アセンブリ206を採用するいくつかの実施の形態で、前駆物質注入要素202は、DCプラズマ構成のカソードとして作用する固体要素で置き換えることができる。
【0031】
本教示のいくつかの実施の形態で、出口ノズル204は、プラズマ入口209、プラズマ出口210および気体前駆物質入力211を含む。気体前駆物質入力211は、堆積に先立って溶融粒子を所望の材料で被覆またはドープするためにアセチレンなどの気体を導入できる。この特別なアプローチは、導電度を向上させるために必要とされる炭素ドーピングのために有益である。プラズマ出口210は、円筒形、楕円形および長方形など様々な断面プロファイルを有することができる。そのような工夫は、アトマイズされた液滴中の粒径分布を制御してそれらの合成特性を向上させるために有益である。
【0032】
図3Bを参照すると、注入要素205は、プラズマ流に対して半径方向に前駆物質を導入でき、一般にラジアル・インジェクタとして知られている。このインジェクタを用いて、固体/液体/気体の前駆物質212またはそれらの組合せを注入できる。しかし、それが優先的に採用されるのは、ポリマーなどのより低い熱入力を必要とする前駆物質または本開示で後に説明するように飛行中またはターゲット400での遅延化学反応に対してである。特定のインジェクタの使用またはそれらを特定の前駆物質と組み合わせることが許容されることは、暗黙に想定されている。
【0033】
この設計によりプラズマ流207中にすべての前駆物質を取り込むことが保証され、より高い堆積効率および均質な粒子特性につながった。さらにこの設計は、またナノ粒子のバルク・マトリックスへの埋め込みを可能にし、複合膜を実現できる。
【0034】
本教示の原理に従えば、スプレー装置200は、図3Bに示されるように熱源208を備えることができ、それは、プラズマ流207によって基板上に層が堆積されるのとほぼ同時に、堆積した材料を一層ずつ処理することを可能にする。エネルギー源は、レーザー、プラズマ、放射または対流型の熱源でよい。すなわち、熱源208からのエネルギー出力は、ここに記載の方法を用いて基板上に堆積された被膜に向けることができる。この点に関して、基板上に薄く堆積される各々の層は、熱源208によって単純で同時的なやり方で直ちに改質、調整あるいはその他の処理を施される。具体的には、熱源208は、スプレー装置200に隣接して配置されるか、またはそれと一体として構成されて、処理基板にエネルギーを付与する。本教示のいくつかの実施の形態で、エネルギー・ビームは、ガウス状のエネルギー分布または矩形のエネルギー分布のいずれかを有することができる。
【0035】
スプレー装置250のいくつかの実施の形態では、図3Cに示すようにプラズマの代わりに燃焼フレームが採用される。燃焼装置は、十分に熱いフレーム257を発生させるために燃料として炭化水素または水素252のほか酸素または空気253を用いることができる。前駆物質材料は、インジェクタ要素254を介して軸方向に、および/またはインジェクタ要素254’を介して放射状にフレーム中へ注入でき、ここに記載される現下の教示の原理に従って所望の材料を合成し、それらをターゲット400上の堆積物として圧密することができる。フレームの化学的環境は、燃料と空気との比を調節することにより、酸素の豊富な環境または酸素の少ない環境のいずれかに調節できる。そのような調節は、ターゲット材料の化学特性を制御できる。このような堆積膜のその場熱処理は、本開示に示す原理に従う熱源208を用いて実行できる。
【0036】
いくつかの実施の形態で、スプレー装置250は、ターゲット400上に圧密される微細な液滴に前駆物質をアトマイズするために、予め加熱されたガス流を用いることができる。飛行中に前駆物質からの水分損失が発生しうるが、望ましい化学特性、相および粒子形態への前駆物質の変換は、ここに記載される現下の教示の原理に従ってその場熱処理によって主としてターゲット上で発生する。
【0037】
図3Dを参照すると、前駆物質給送アセンブリ300は、混合チャンバ302へ給送を行う非限定的前駆物質リザーバ301、301’および301”を含むことができ、それは、機械ポンプ310を介してスプレー装置200へ圧送される。さらに図3Eに示すように、給送アセンブリ350は、混合チャンバ352およびポンプ354を介してスプレー装置200へ圧送されるスラリーを形成する液体前駆物質ライン中に固体粉末の前駆物質を取り込むための機械的フィーダ353を含むことができる。さらに、固体前駆物質は、それとは独立して、キャリア・ガスを介してスプレー装置に直接供給できる。このような工夫の利点は、さらに本開示で後述する。
【0038】
図4Aから図4Dは、スプレー装置200からターゲット400上へスプレー合成される材料のための収集方式およびそこにおいてその場熱処理を提供する様々な非限定的実施の形態を模式的に示している。図4Aを参照すると、粒子を膜の形に圧密する代わりに、材料は、チェンバ401に収集されて、そこにおいて飛行中にアニールされて粉末402を生成する。言い換えれば、現下の教示の原理を用いることによって、従来の作製方式の電池電極および電解質のための様々な電池材料コンパウンドの粉末を製造できる。図4Bは、前駆物質化学物質から電流コレクタ451上の膜の形452へと合成される電極材料220の直接圧密を示している。さらに、図4Cは、液体または気体の前駆物質中に懸濁された予め合成された粒子を含む混合物から、複合被覆を形成する堆積技術の概要を示している。さらに、その他の前駆物質を用いて、外部インジェクタ465から電流コレクタ461上に膜462を圧密することもできる。図4Dに示すように、図4Aから図4Cに示された実施の形態に対して熱源208を使用することによって、膜472に対してその場熱処理を提供できる。
【0039】
本教示の原理に従って、具体的には熱源208を有するスプレー装置200は、適切な前駆物質を用いて電池コンポネントを直接作成するために効果的に利用できる。このように、電流コレクタ、カソード、電解質、セパレータおよびアノード層は、固体前駆物質、液体前駆物質、気体前駆物質、またはそれらの組み合わせのいずれかを使用してスプレー装置200によって堆積できる。層のその場改質は、熱源208によって達成される。熱源の性質とパワーを慎重に変化させることによって、層およびそれらの界面にわたる密度勾配を制御(すなわち、勾配を定義)することによってイオン・インターカレーションを促進できる。いくつかの実施の形態で、スプレー装置200は、カソード、電解質およびアノードの変形に関してここに記載された教示をさらに含むことができる。
【0040】
ここで述べたようなスプレー装置を用いて溶液前駆物質から、所望の化学特性、相および形態を持つ膜を直接実現することは、従来技術では決して達成されない。さらに、現下の教示の原理に従って到達できる堆積速度は、従来の薄膜堆積技術より桁違いに高い。直接合成アプローチは、飛行中およびその場で電極の化学特性を調節する機能を提供する。これらの教示は、ここに記載の例示的な材料系に限定されず、多くのその他の材料系にも採用できる。
【0041】
(革新的なカソード製造)
LiFePO4、LiCoO2およびLi [NixCo1-2xMnx] O2等、現在カソード材料として多くの化学物質が開発されている。本教示の原理に従えば、液体前駆物質(化学溶液およびキャリア溶液中の懸濁物)が図3Aのスプレー・システム20に導入されて所望の材料化学特性、相および形態を合成し、さらに図5Aに示されるように電流コレクタ501上に独自のやり方でカソード膜502を直接形成する。このプロセスは、一般に図2Bに示されており、ここでは従来技術の処理工程が省略されている。さらに、必要に応じて層または膜をさらに処理するために熱源208を採用できることを理解すべきである。図5Aは、現下の教示の原理に従って得られたLiFePO4 502’、LiCoO2 502”およびLiMn2O3 502'''カソード膜の形態を示している。
【0042】
LiFePO4/C複合カソードのための例示的前駆物質は、水、鉄シュウ酸塩、LiOH、リン酸アンモニウムおよびpHを調整された溶液中の糖を含む。pHを調整された液を得るために酸または塩基(初期の酸性または塩基性に依存して)を添加できることを理解すべきである。いくつかの実施の形態で、均質な溶液を実現するために液をpH調節することができ、そこに含まれるコンポネントは、液中に完全に溶解する。さらに、適切な硝酸塩の前駆物質を使用してZrおよびMnなどのドーパントを追加できる。いくつかの実施の形態で、図3Bのプラズマ装置201には、軸方向が優先的なアトマイズ・インジェクター205”または206が採用される。このアトマイザは、二液法を使用し、前駆物質溶液をおよそ1から50マイクロメートルのサイズの液滴に分割するために加圧されたガス流を利用する。アトマイゼーションは、プルームに溶液の流れが直接注入される場合と比べてより低い温度で液滴を完全に熱分解してLiFePO4粒子とすることを許容する。さらに、堆積速度を高めるために、ここに記載の液体前駆物質と一緒に予め合成されたLiFePO4の固体粉末をプラズマ中に注入できる。その結果、図5Aに示すようにアルミ箔などの電流コレクタ501上に溶融/半溶融のLiFePO4粒子が膜502’として堆積する。現下の教示で説明するように、気体前駆物質を介して追加の炭素を膜に添加できる。
【0043】
現下の教示の原理に従って得られるカソード膜は、業界で使用される従来のカソードと同じように任意のポリマー・バインダを含んでもよいし、含まなくてもよい。バインダを含まないカソードは、より高い温度で動作できる。ただし、ここに提示した原理は、ポリマー・バインダを含むカソードの製造を制限しない。液体前駆物質との共スプレーによって、PVDFおよびPAAなどのポリマーを追加することが可能となった。
【0044】
溶液前駆物質は、オープンな雰囲気中で正常に熱分解し、基板上に堆積した。図5Bは、膜のTEM写真を示しており、アモルファス炭素で被覆されたLiFePO4のナノ微粒子構造を示している。さらに図5Cに示されたXRDによって、膜中のLiFePO4のカンラン石相が確認できる。炭素で被覆されたナノ構造のカンラン石微粒子がカソード膜として適しており、従ってここに記載された原理が、一般に業界で実際に採択される中間処理工程を省いて所望のカソードを直接生成できることを理解すべきである。さらに、こうして得られるカソード膜の放電容量が図5Dに示されており、それは、さらに現下の教示の請求項を裏付ける。
【0045】
LiCoO2/C複合カソード用の例示的前駆物質は、水、LiOH、Co硝酸塩、pHを調整された溶液中の糖を含む。さらに、溶液中にAl硝酸塩およびリン酸アンモニウムを使用することによって、アルミナまたはリン酸アルミニウム等の添加物を追加できる。溶液中の糖成分は、膜中のLiCoO2コンパウンドの化学量論的なバランスに対して重要な役割を果たす。結果の溶融/半溶融LiCoO2粒子は、図3Bのプラズマ装置201を用いることによって、図5Aに示すようにアルミ箔などの電流コレクタ501上に膜502として堆積される。オープンな雰囲気中で溶液前駆物質が正常に熱分解して基板上に堆積され、炭素で被覆されたLiCoO2微粒子が得られた。現下の教示で説明されるように、気体前駆物質211を介して膜中に追加的な炭素を添加することもできる。いくつかの実施の形態で、膜は、また図3Cの燃焼装置251およびここに説明された液体前駆物質を採用することによって、現下の教示の原理に従って得ることもできる。プラズマまたは燃焼フレームのいずれを選ぶかは、膜中の望ましい粒子の大きさおよび密度に依存する。
【0046】
Li(NiCoMn)0.33O2/C複合カソード用の例示的な前駆物質は、水、LiOH、Ni硝酸塩、Co硝酸塩およびMn硝酸塩およびpHを調整された溶液中の糖を含む。また、溶液中にAl硝酸塩およびリン酸アンモニウムを用いて、アルミナまたはリン酸アルミニウム等の添加物を追加できる。得られる溶融/半溶融のLi(NiCoMn)0.33O2粒子は、図3Bのプラズマ装置201を用いることによって、図5Aに示すようにアルミ箔などの電流コレクタ501上に膜502として堆積される。溶液前駆物質は、オープンな雰囲気中で正常に熱分解されて基板上に堆積され、炭素で被覆されたLi(NiCoMn)0.33O2ナノ構造ラメラ微粒子が得られた。現下の教示で説明されるように、気体前駆物質211を介して膜に追加の炭素を添加できる。いくつかの実施の形態で、膜は、図3Cの燃焼装置251およびここに説明される液体前駆物質を採用することによって、現下の教示の原理に従って得ることができる。さらに、電極性能を強化するために、液体前駆物質の化学特性を変化させることによって、ニッケルが豊富な層とニッケル欠乏層とを交互に積層することができる。
【0047】
現下の教示の原理に従ってカソード膜を直接作製するための例示的および非限定的な変形は、図3Bのプラズマ装置201およびコバルト固体粉末前駆物質を採用した金属コバルト膜の堆積およびコバルト固体粉末前駆物質の成膜で始まり、膜上へのLiOH液体前駆物質の直接スプレーおよび同時にその場熱処理が続く。これらの教示に従って、LiCoO2502”カソード膜が電流コレクタ501上に直接作成される。こうして得られたカソード膜の充電/放電動作が図5Eに示されているが、この図は、そのような膜のLiイオン・ハーフセル電池動作における機能を実証している。さらに、ここに記載の変形は、図5Aに示されたLiMn2O3 502'''などその他のカソード膜にも採用できる。
【0048】
ここに記載の例示的なカソード膜は、例示のみを目的としており、現下の教示の原理に従って得られたものであり、本開示の原理に従って合成できる可能な材料系の全範囲を制限する意図ではない。
【0049】
(革新的なアノード製造)
グラファイト、炭素−ケイ素、Li4Ti5O12、Co3O4およびMn3O4など様々な化学材料がアノード用として開発されているが、現在業界ではグラファイトが最も広く使用されている。現在の多くの電池製造技術は、様々な粉末材料のアノード膜を作成するためにポリマー・バインダの使用を採用している。参考のためにあるように、熱スプレー技術は、また予め合成された粉末を採用して様々な酸化物膜を堆積させるためにも採用される。
【0050】
図6Aを参照すると、各種材料のアノード膜510は、ここに記載された原理に従うその場熱処理と組み合わせることにより、固体または液体または気体の前駆物質またはそれらの組合せから電流コレクタ501上へ直接作製することもできる。Co3O4/C複合アノード用の例示的前駆物質は、水、Co硝酸塩およびpHを調整された溶液中の糖を含む。溶液をアトマイズしてプラズマまたは燃焼フレームとして液滴をCo3O4粒子に熱分解することができ、電流コレクタ上にアノード膜として圧密できる。さらに、その場熱処理を用いれば、膜の相、化学特性および形態を改質できる。
【0051】
アノード膜を直接作製するための現下の教示の例示的および非限定的変形は、図3Bのプラズマ装置201を用いた金属コバルト膜およびコバルト固体粉末前駆物質の堆積から始まり、酸素の存在下での同時的なその場熱処理が続く。図6Aに示されるように、これらの教示に従って、電流コレクタ501上にCo3O4 510”アノード膜が直接得られた。図6Bに示したXRDパターンから、この膜の所望の相が確認される。さらに、こうして得られたアノード膜の充電/放電動作が図6Cに示されているが、この図は、そのような膜のLiイオン・ハーフセル電池動作における機能を実証している。さらに、ここに記載の原理は、MnおよびTiなどの多くの遷移金属に基づくその他のアノード膜にも採用できる。
【0052】
熱スプレープロセスの利点は、大量生産と多孔質の被覆であり、これらは、後続の工程、すなわちその場での酸化/リチオ化プロセスにおける反応/酸化のより高速な反応速度のための広い表面積を提供する。また、CoおよびMnなどの遷移金属のシート状金属は、それらの粉末(粉末は、しばしばそれらの抽出プロセス、例えばMnの電解抽出の最終製品である)に比べて高価であり、プラズマ堆積は、粉末前駆物質を使用する。従って、プラズマ・スプレーによる多孔質被覆における反応速度は、バルクのシート状金属の場合よりもはるかに高速である。多くの場合、バルク金属上に生成する酸化物スケールは、体積変化に伴うひずみのために剥離し、他方、プラズマ・スプレーで形成される多孔質被覆は、ひずみを緩和して基板に付着したままに留まる。従って、優れた充電/放電サイクル性および比容量を持つナノ構造膜をコスト効率よく製造できる。さらに、ポリマーまたはバインダがないため、これらの電極は、高温の電池用として適したものとなる。
【0053】
長年にわたり、Siナノ・ワイヤおよびSiナノ粒子は、アノード用として非常に高い比容量を示すことが知られてきた。これらの材料の深刻な限界は、電極のサイクリングの間に(反復的なLiイオンの挿入と抽出のために)ナノ構造が劣化することであり、それにより容量が急激に低下し、ひいてはデバイスの劣化につながるということである。そのような材料劣化を克服するために、Siナノ粒子に対して炭素被覆が利用される。炭素被覆は、表面を保護し、電極のサイクル・テスト中にナノ構造を無傷に保持することが示されている。シリコンのナノ構造は、典型的にはCVDなどの少量生産プロセスによって実現される。
【0054】
しかし、直流プラズマ装置201によって電流コレクタ501上にシリコン被覆を堆積させ、続いてレーザー源208を用いてその場処理することによってナノ構造の表面510’を形成する能力は、単純でコスト効率的なやり方で大面積アノードの作製を可能にする。これら現下の教示のいくつかの実施の形態では、プラズマ装置201を使用して、シリコン被覆および触媒層を堆積させ、後続のその場処理によってナノ構造表面を実現できる。
【0055】
これらの教示のいくつかの実施の形態で、シリコンを含む気体前駆物質をプラズマ装置に使用して電流コレクタ501上へナノ微粒子を堆積させて、シリコンのナノ微粒子をベースとするアノード510'''を製造できる。さらに、これらのシリコンのナノ微粒子は、アセチレンなどの適切な気体前駆物質を同時に用いることによって炭素で被覆できる。さらに、炭素被覆されたシリコンのナノ微粒子は、ナノ構造シリコンまたはここに記載の金属表面(その場レーザー処理で得られる)上に堆積させて階層的なアノード構造を形成できる。あるいは、そのような炭素被覆されたシリコンのナノ微粒子を多孔質の電解メッキされた銅の上に堆積させてアノードを形成できる。
【0056】
現下の開示のいくつかの実施の形態では、複数のスプレー装置を組み合わせて、図7に示されたようなロール・ツー・ロール製造構成600で、現下の教示の原理に従って電流コレクタの両面に電極材料を堆積できる。この実施の形態で、スプレー装置は、合成された材料を通常のノズル601に導く。さらに、ロール603は、その場処理のあとで、膜を圧迫して電極材料の多孔質構造を制御できる。このような実施の形態は、カソードおよびアノードの両方に採用でき、セパレータと電解質層が組み込まれて全体のセルが形成される産業用電池の組立工程につながる。
【0057】
(革新的な電解質の製造)
固体電解質は、高温での電池動作に適している。さらに、それらは、より安全な動作環境を提供する。固体電解質のほとんどは、固体またはゾル−ゲル法によって合成され、高温のアニール状態からの急速冷却によってガラス相が実現される。
【0058】
ここに記載の前駆物質溶液からの直接合成の原理に従って、適切な液体前駆物質が図3Bのプラズマ装置201に導入されて所望の材料化学特性、相および形態を備える固体電解質が電極上に直接合成される。この能力は、モノリシック層の作製を容易にし、プラズマ・スプレー装置を用いて能動電極と固体電解質の両方を逐次堆積させることができ、それによって電池セル製造のプロセス工程およびコストを削減する。
【0059】
この目的で、液体前駆物質を用いるLi1+xAlxTi2-X(PO4)3[LATP](X:0.2から0.5)ベースの例示的な固体電解質が現下の教示の原理に従って直接合成された。例示的な溶液前駆物質は、LiOH、Al硝酸塩、Ti-イソプロポキシドおよびリン酸アンモニウムを含む。ここで説明するLATP堆積膜のX線回折パターンを図8Aに示す。この図は、固体電解質のアモルファスと結晶形の両方を達成できることを示している。その場熱処理は、膜の相を効果的に制御できる。ここに記載の合成方式で実現可能な組成変動の柔軟性を利用して、良好なイオン伝導性に好都合なように電解質組成を広範囲に変化させることができる。同様のやり方で、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3[LAGP] ベースの固体電解質も、溶液中でTiイソプロポキシドをGeイソプロポキシドで置き換えることによってここに確立されるスプレー合成の原理を用いて合成できる。
【0060】
(革新的なセパレータの製造)
最高性能を得るためには、広い表面積、多孔質および良好な機械的強度を有するセパレータが望ましい。現下の教示の原理を導入することによって、スプレー堆積装置を用いて電極または固体電解質上に直接セパレータを堆積できる。このアプローチによって、種々の溶媒に溶解させたPVDFが正常に薄膜状に堆積された。溶媒には、Nメチルピロリジノン(NMP)、アセトン、メタノール等が含まれる。スプレー法は、本質的に多孔質で連続した膜構造をもたらすので、スプレー法によって作製されたメンブレンは、電池アセンブリに適している。また、機械的強度を増やすために、セパレータ層を作製するための溶液中にファイバーやナノチューブなどの補強剤を組み込むことができる。
【0061】
(革新的なリチウム・イオン電池の製造)
本開示に記載された教示に従う、カソード、アノード、固体電解質およびセパレータを逐次的に直接作製する方法は、従来の電池業界では一般的でないモノリシックな電池を構築するためのユニークな利点を有する。図8Bおよび図8Cを参照すると、いくつかの例示的な実施の形態で、電流コレクタ501、カソード502、電解質511、オプションのセパレータ512、アノード510および第2の電流コレクタ501を含む電池セル全体700は、モノリシックな構造として逐次的に構築できる。電流コレクタは、Al、Cuまたはステンレス鋼などの導電性金属の固体粉末前駆物質を用いてプラズマ・スプレー装置によって構築できる。この能力は、ここに実証される製造技術に対して多大な幾何学的および機能的な能力を提供する。
【0062】
図9Aを参照すると、現下の教示の原理に従って、スプレー装置200を用いて複雑な電池セル602を飛行機の翼またはフレーム上に構造の輪郭に沿うように構築できる。そのような電池セルは、スペースを節約し、航空宇宙システムに巨大な蓄電機能を提供できる。この種の蓄電システムは、形状および空間を大幅に変更することなしに無人飛行システム全体に対してパワーを提供できる。
【0063】
さらに、現下の教示のいくつかの実施の形態では、図9Bに示すように、モノリシック電池を太陽電池の下に構築して局所的な蓄電機能を提供できる。このような機能は、中央蓄電ユニットの必要性を排除できる。さらに、電池のオープン・アーキテクチャにより、そのような電池の熱管理が簡単になる。
【0064】
いくつかの実施の形態では、図9Cに示すように、現下の教示に従うモノリシック電池は、自動車のボディ構造上に構築できる。現在の電気自動車は、電池パックの利用可能な形状の周りに設計される。ここで説明する可能な幾何学的自由度の範囲内で、自動車の構造は、機能およびスタイルのニーズに従って設計でき、また電池は、利用可能なスペースに収容されるように作製できる。
【0065】
ここで述べる例示的な構成は、説明のためだけのものであり、それらは、本開示の原理に従って実現できる可能な構成およびそれらの組み合わせの完全な範囲を制限するものではない。現下の教示の原理は、電極または電解質またはセパレータまたはそれらの任意の組み合わせなど個々のコンポネントに適用できる。
【0066】
実施の形態の上記の説明は、例示および説明の目的のために提供された。排他的であること、あるいは本発明を制限することは、意図されていない。特定の実施の形態の個々の要素または機能は、一般にその特定の実施の形態に限定されるものではなく、むしろ該当する場所では、具体的に表示または説明されていなくても、交換可能であり、選択された実施の形態に使用できる。それらは、また多様に変化して現れる。そのような変形は、発明から逸脱するものと見なされず、すべてのそのような変更は、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0067】
実施例は、本開示が完全なものとなり、当業者に対してその範囲を十分に伝えるようにするために提供される。本開示の実施の形態の完全な理解を提供するために、特定のコンポネント、デバイスおよび方法の例など数多くの特定の詳細が提示されている。特定の詳細を必ずしも採用する必要がないこと、実施例が多くの異なる形態で具体化されること、そして開示の範囲を限定すると解釈されるべきでないことは、当業者に明らかである。いくつかの実施例では、よく知られたプロセス、よく知られたデバイス構造およびよく知られた技術については、詳細に記述されない。
【0068】
ここで使用される用語は、特定の実施例を説明するためだけのものであり、限定する意図はない。ここで使用されるように、文脈上別途明確に示されない限り、名詞は、単数の意味と同時に複数の意味を含むものとして意図されている。“含む”、“含んでいる”、“有する”および“有している”という表現は、包含的であり、従って言及される特徴、整数、工程、動作、要素および/またはコンポネントの存在を示すが、1つ以上のその他の特徴、整数、工程、動作、要素、コンポネントおよび/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。ここに記載の方法の工程、プロセスおよび操作は、具体的な実行順序を指定されない限り、それらを必ず特別な順序に実行しなければならないと解釈されるべきでない。また、追加または代替の工程を用いてもよいことを理解すべきである。
【0069】
要素または層が別の要素または層に対して、“上に”、“連結されて”、“接続されて”、“結合されて”いると言及される場合、それは、別の要素または層に対して直接上に、連結している、接続されている、または結合していてよいが、そうでなければ仲介する要素または相が存在してもよい。これと対照的に、要素が別の要素または層に対して“直接上に”、“直接連結されて”、“直接接続されて”、“直接結合されて”あると表現される場合は、仲介する要素または層が存在しない。要素間の関係を記述するために使用されるその他の単語も同様に解釈すべきである(例えば、“間に”と“直接間に”、“隣接して”と“直接隣接して”等)。ここで使用されるように、“および/または”という用語は、1つ以上の関連する列挙項目の任意およびすべての組合せを含む。
【0070】
第1、第2、第3等の用語は、ここで様々な要素、コンポネント、領域、層および/またはセクションについて説明するために使用されるが、これらの要素、コンポネント、領域、層および/またはセクションは、それらの用語によって制限されるべきでない。これらの用語は、1つの要素、コンポネント、領域、層またはセクションを別の領域、層またはセクションから区別するためだけに使用される。“第1の”、“第2の”およびその他の順序を示す用語がここで使用される場合、文脈によって明確に示されない限り、順序または順番を意味しない。従って、以下で説明する第1の要素、コンポネント、領域、層またはセクションは、例えば、実施例の教示から逸脱することなく、第2の要素、コンポネント、領域、層またはセクションと呼んでもかまわない。
【0071】
ここで“内側”、“外側”、“下方”、“下側”、“下位”、“上方”、“上位”などの空間的に相対的な用語は、図面に示されるように、1つの要素または構造の、別の要素(単数または複数)または構造(単数または複数)に相対的な関係を説明するために便宜的に使用される。空間的に相対的な用語は、図に示す向きに加えて、使用または操作される装置の異なる向きを包含することを意図される。例えば、図中の装置がひっくり返された場合、別の要素または構造の“下方”または“真下”にあると記述された装置は、今度は別の要素または構造の“上方”に位置することになる。従って、用語例“下方”は、上下の向きの両方を包含することになる。装置は、そうでなければ別の向きに配向することができ(90度回転されて、あるいは別の向きに)、ここで使用される空間的に相対的な記述は、それに応じて解釈される。
【技術分野】
【0001】
(政府の利益)
本発明は、米国海軍によって授与されたグラント番号N00244-07-P-0553の下で政府の支援で行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(関連出願へのクロスリファレンス)
本出願は、2009年8月14日付けで出願された米国仮出願第61/233,863号および2010年8月13日付で出願された米国特許出願第12/855,789号の利益を主張する。本出願は、また2009年5月1日付の米国仮出願第61/174,576号の利益を主張する2010年5月3日付けの米国特許出願第12/772,342号の一部継続出願である。上記出願の各々の開示は、引用によってそれら全体をここに取り込む。
【0003】
(分野)
本開示は、Liイオン電池の製造に関するものであり、さらに詳細には、熱源によるその場微細構造改質と組み合わされた熱スプレープロセスを用いて電極材料およびコンポネントを直接合成するための堆積装置、方式およびレシピに関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
本節は、本開示に関連する背景情報を提供するが、それは、必ずしも先行技術とは限らない。
【0005】
充電式Liイオン電池は、自動車、エレクトロニクス、バイオメディカル・システム、航空宇宙システムおよびその他の個人的用途に広く応用できる。より良い比容量およびサイクル特性を達成するためにLiイオン電池用の電極特性を改善しなければならないことは、しばらく前から分かっている。この数年間、研究者は、より良い性能を達成するために、材料化学特性、微細構造および粒子サイズの制御に焦点を当てて研究を進めてきた。
【0006】
特に図1を参照すると、Liイオン電池セルは、通常、アノード、セパレータ、カソードおよびアノードとカソードとの間で電池動作を実現するためにイオンの流れを許容する電解質を含む。業界ではこれらのコンポネント用としていくつもの異なる材料が研究されている。例えば、カソード用としては、LiFePO4、LiCoO2、LiMn2O3およびLi [NixCo1-2xMnx] O2などの化学材料が開発されている。アノード用としては、グラファイト、炭素で被覆されたシリコン、Li4Ti5O12、Co3O4およびMn3O4などの化学材料が開発されている。電解質は、液体または固体またはそれらの組み合わせのいずれかである。セパレータは、典型的には多孔質メンブレンである。
【0007】
カソード用として使用される様々な材料の中で、Fe系リン酸塩は、低コストと非毒性のため魅力的な材料である。カンラン石構造のLiFePO4は、テキサス大学のJohn Goodenoughらによって1996年に初めて開発された。それ以来、LiFePO4の生産に関して粒子の表面積増大のほか、電子およびイオンの輸送を促進するための導電チャネルを提供することを目的として様々な改良がなされた。
【0008】
LiFePO4は、高温の固体化学反応、ゾル−ゲル・プロセス、熱水合成、またはスプレー熱分解などの様々なアプローチのいずれかを使用して合成できる。カンラン石相を合成することは、比較的直接的な方法であるが、これらの各方法は、また、第二鉄層(Fe2+の酸化による)を除去し、鉄原子を正しく配列させて充電/放電プロセスの間にリチウム・イオンの拡散を阻止しないようにするために不活性雰囲気中、700℃付近での材料の最終的なシンタリングを必要とする。この最終工程は、少量の材料であっても完了までに数時間を要するのが一般的である。
【0009】
LiFePO4は、理論的に非常に高い比容量を有するが、この材料は、室温で非常に低い伝導性を示す。Ravetらによって提案されたオプションは、LiFePO4の粒子を炭素などの導電性材料で被覆するものである。Songらは、単に粒子をアセチレン・ブラックでボールミル粉砕することによってLiFePO4の粒子に炭素を添加させることができた。このプロセスは、サンプルの導電率を8倍増大させた。Bewlayらは、LiCO3、FeC2O4・2H2OおよびNH4H2PO4の直接分解反応に蔗糖を添加することで、LiFePO4粒子を炭素で被覆した。炭素は、またプロパンなどの炭化水素を介してLiFePO4溶液を熱分解させることによっても挿入される。その他、少量のニオブ、チタンおよびマグネシウムなどの添加物もLiFePO4の導電率を向上させることに成功した。
【0010】
カソードまたはアノード材料の如何にかかわらず、粒子の大きさ、構造、相および添加物は、最適な電池性能のために慎重に制御すべき重要な特性である。それらの広い表面積のおかげで、適切な格子構造を持つナノ粒子材料は、Liイオンの挿入および抽出を容易にし、電池動作時に誘導される深刻な歪みを効果的に緩和する。さらに、炭素系添加物は、強化された充電/放電性能を示した。すべての合成プロセスの最終製品は、通常、粉末であり、それは、後に導電性添加物およびバインダと混合される。次にスラリー混合物が、電極を形成する膜として電荷コレクタ上に堆積される。従って、粉末の製造は、通常、セル組立ラインから切り離されたバッチで行われる。
【0011】
あるいは、パルス・レーザー堆積および高周波マグネトロン・スパッタリングなどの技術も電極上に所望の膜を直接実現するために採用されているが、このプロセスは、通常、所望の電極材料の前処理されたターゲットから始まり、通常はnm/分オーダの非常に遅い成膜速度を提供する。
【0012】
研究者はまた、特にアノード用として、プラズマ・スプレー・プロセスなどの大量生産用の堆積プロセスを用いて予め合成された粉末を堆積させるアプローチを開発してきた。大量の堆積を達成できるが、それでも粉末材料は、上記の従来のアプローチによって合成する必要がある。
【0013】
電解質に関して、液体電解質は、一般にエチレン・カーボネート(EC)およびジメチル・カーボネート(DMC)に溶解したLiPF6を含む。あるいは、EC/DMC混合液中のビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド・リチウム塩もまた液体電解質として使用できる。液体電解質は、高温動作に耐えられないため、液体電解質は、通常低温プロセスであるセル組立時にセルに追加されるのが一般的である。
【0014】
Li1+xAlxTi2-x(PO4)3[LATP](x:0.2-0.5)ベースの固体電解質がLiイオン二次電池用として研究されている。これらの材料は、NASICON型構造とLiイオンの高いイオン伝導性を有しており、高温での動作に適している。固体電解質のほとんどは、カソード材料と同様に固体またはゾル・ゲル法を通して合成され、高温アニール状態からの急速冷却によってガラス相の粉末が得られる。
【0015】
カソード、アノードおよび電解質とは別に、セパレータは、Liイオン電池の性能に重大な役割を果たす。広い表面積、多孔質および良好な機械的強度を有するセパレータは、最高の性能を得るために望ましい。過去数年間、研究者は、セパレータ用として、ポリプロピレン系の既存の材料に比べてより優れた性能を示すポリフッ化ビニリデン(PVDF)系のメンブレンに焦点を当てて研究してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本教示の産業用電池製造技術は、多段階の材料合成、コンポネント作製および組立プロセスで構成される。例えば、カソード製造に含まれる一般的な手順を図2Aに模式的に示す。結果として、Li電池の現在のコスト($ / kWh)は、非常に高い。さらに、合成および組立てプロセスは、また電池セルの幾何学的自由度を制限する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(概要)
本節は、開示の一般的な概要を提供するが、その全範囲またはそのすべての機能の包括的な開示ではない。
【0018】
本開示は、化学的/熱的処理および圧密によって電池セルの所望のコンポネント層となる高温ガス流中に注入される電池材料の適切な前駆物質の使用を含む装置、方式およびレシピを提供する。スプレー/堆積プロセスは、粉末/液体/気体の前駆物質またはそれらの組合せを用いて、直接Liイオン電池のコンポネントに必要な異なる材料の組み合わせを実現する。必要な場合には、レーザー・ビームまたは熱源などの熱源によって、電池の最適な性能に必要とされる微細構造および相を制御するための堆積材料層のその場熱処理がさらに提供される。このアプローチは、プロセス工程の省略、幾何学的自由度に関して独特な利点を提供し、またこの方法は、大面積の電極製造に拡張可能であり、従って大量生産に展開できる。
【0019】
本開示のいくつかの実施の形態で、電流コレクタ、電極、電解質ならびにセパレータ・メンブレンおよび/またはそれらの組合せは、現下の教示の原理に従って製造され、電池セル全体のすべてのコンポネントを一層ずつ作製することを可能にする。このように複雑な電池構造は、材料の合成およびセルの組み立てが直列的(in−line)に実行される場所で実現できる。
【0020】
可能な応用のそのほかの領域については、ここに提供される説明から明らかになる。本概要中の説明および特定の実施例は、例示のみの目的を意図されており、本開示の範囲を限定することを意図されていない。
【0021】
ここに記載される図面は、すべての可能な実施ではなく、選択された実施の形態を説明する目的のためだけに示されるものであって、本開示の範囲を限定することを意図されていない。分かりやすいように、すべてのコンポネントは、すべての図でレベル付けされているわけでもないし、また示された開示の各実施の形態のすべてのコンポネントが示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本開示の様々な例示的な実施の形態に従うLiイオン電池セルのコンポネントを示す模式図である。
【図2A】Liイオン電池のカソードを作製するための多段階の従来の処理アプローチを示す模式的フローチャートである。
【図2B】本教示の原理に従って、Liイオン電池のカソードを作製するための直接合成および圧密アプローチを示す模式的フローチャートである。
【図3A】図2Bのプロセス装置アセンブリを含む本開示の例示的な実施の形態の模式図である。
【図3B】指向性熱源に加えて直流プラズマ・システムを含む図3Aのスプレー装置の例示的な実施の形態の模式図である。
【図3C】燃焼フレーム・システムを含む図3Aのスプレー装置の例示的な実施の形態の模式図である。
【図3D】混合およびポンプ・システムとともに3つの液体前駆物質のリザーバを含む図3Aの前駆物質給送装置の例示的な実施の形態の模式図である。
【図3E】液体および固体の前駆物質リザーバを含む図3Aの前駆物質給送装置の例示的な実施の形態の模式図である。
【図4A】本教示の原理に従って液体前駆物質から合成された粉末の収集装置の概略図である。
【図4B】本教示の原理に従って液体および/または気体の前駆物質から合成された粒子を用いて堆積される電極材料膜の模式図である。
【図4C】本教示の原理に従って固体/液体および/または気体の前駆物質から合成された粒子を用いて堆積される電極材料膜の模式図である。
【図4D】本教示の原理に従って堆積され、その場熱処理される電極材料膜の模式図である。
【図5A】現下の教示の原理に従って合成される様々な形態学的パターンおよび材料を示す例示的なカソードの斜視図である。
【図5B】現下の教示の原理に従って液体の前駆物質から直接合成されるLiFePO4カソード膜のTEM像である。
【図5C】現下の教示の原理に従って液体の前駆物質から直接合成されるLiFePO4カソード膜のXRDパターンである。
【図5D】現下の教示の原理に従って液体の前駆物質から直接作製されるLiFePO4カソードのサイクリック容量プロットである。
【図5E】現下の教示の原理に従ってCo膜堆積およびその場リチオ化反応で作製されるLiCoO2カソードのサイクリック充電/放電プロットである。
【図6A】現下の教示の原理に従って合成される様々な形態学的パターンおよび材料を示す例示的なアノードの斜視図である。
【図6B】現下の教示の原理に従ってCo粉末前駆物質から直接合成され、その場酸化されるCo3O4アノード膜のXRDパターンである。
【図6C】現下の教示の原理に従って作製される図6BのCo3O4アノードのサイクリック充電/放電プロットである。
【図7】複数の堆積システムを含むコンポネント層のロール・ツー・ロール(roll-to-roll)作製を示す、本教示の原理に従うシステムの斜視図である。
【図8A】現下の教示の原理に従って作製される例示的な固体電解質層のXRDパターンである。
【図8B】現下の教示の原理に従って一層ずつ作製される例示的な電池セルの斜視図である。
【図8C】図8Aの例示的な電池セルの異なる層を示す分解図である。
【図9A】現下の教示の原理に従って飛行機の翼に一層ずつ堆積される例示的な電池セルの斜視図である。
【図9B】現下の教示の原理に従って太陽電池の下に一層ずつ堆積される例示的な電池セルの斜視図である。
【図9C】現下の教示の原理に従って自動車の構造上に一層ずつ堆積される例示的な電池セルの斜視図である。
【0023】
対応する参照符号は、いくつかの図面を通して対応するパーツを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
本開示の非限定的な実施の形態について、模式的であって、縮尺通りに描かれることを意図されていない添付図面を参照しながら実施例によって説明する。
【0025】
最初に図2Aを参照すると、電池電極の準備のために実行される現在の合成アプローチは、多くのプロセス工程を含んでおり、数時間の処理時間を要する。処理時間を短縮すると同時に材料の化学特性および形態を適切に制御できる新たな合成戦略が極めて重要である。
【0026】
特に図2Bを参照すると、現下の教示は、適切な液体前駆物質を用いて電極および/またはその他のコンポネントを作製する製造方式を提供するが、この液体前駆物質は、化学的/熱的処理および圧密によって電極アセンブリの望みの能動層となる高温ガス流中に注入される。液体前駆物質は、高温ガスへの注入時に流れの中で熱分解して、溶融/半溶融/固体状態の所望の材料の液滴となって膜状に圧密する。さらに必要に応じて、熱源は、膜のその場熱処理を提供し、電池性能を強化するために化学特性、相および形態を最適化する。
【0027】
さらに、本開示の新規な製造方式は、化学的前駆物質から直接所望の形態学的特徴、相および組成の膜処理を提供するので、現在業界で実行されている処理工程を削除する。さらに、現下の教示に従うスプレー堆積技術は、幾何学的に複雑な電極の作成を可能にする。現下の方式に従うスプレー合成および圧密は、形成時の特定元素の望ましくない化学変換を防ぐために、制御された雰囲気(例えば、N2またはN2/H2)のもとで実行できる。いくつかの実施の形態で、コンポネント成分が完全に溶解状態にある流体前駆物質の使用は、構成要素の均質性を保証し、一般に従来のプロセスで実行されている固相反応に比べて反応速度を向上させるため、処理時間を短縮できる。
【0028】
図3Aに示すように本教示のいくつかの実施の形態で、作製装置アセンブリ100は、モーション・システム110を含み、それは、スプレー装置200を機械的に往復移動させ、ポンピング・システム310を介してリザーバ300からの一定量の液体前駆物質を用いてターゲット400上に均一な膜を構築する。いくつかの実施の形態で、ターゲット400は、流体の流れ410によって裏面から冷却される。装置アセンブリ100は、不活性雰囲気に設置できる。
【0029】
図3Bを参照すると、いくつかの実施の形態で、スプレー装置200は、液体前駆物質の注入要素202および/または205および/または206を備えたプラズマ・ガン201を含むことができる。このアプローチを使用して、複数の前駆物質を効率的にプラズマ流207に取り込むことができる。しかし、与えられた時点にすべての流体注入要素を使用する必要はない。要素202は、プラズマ装置のカソードとして電気的に充電でき、他方要素203は、アノードとして充電できる。この構成でプラズマは、一般的に文献で知られているように、直流プラズマまたはDCプラズマの原理に従って生成される。逆に、いくつかの実施の形態で要素202は、電気的に中性のままで、インジェクタ/アトマイザとしてのみ機能する。この構成でプラズマは、一般に文献で知られている誘導結合プラズマまたはICPの原理に従って、周囲を取り囲むRF誘導コイル(簡単にするため図示されていない)によって生成される。
【0030】
さらに、いくつかの実施の形態において、図3Bの液体前駆物質注入要素202は、気体および固体の前駆物質を利用するために使用される。液体前駆物質の場合には、二液アトマイザ205”が使用され、高温ガス流に取り込むべき十分微細な液滴に液体をアトマイズする。別の実施の形態では、液体前駆物質入力300および気体入力205’を有するアトマイザ・アセンブリ206が一緒に結合されてアノードの下流地点に前駆物質の液滴を導入する。アトマイズされた前駆物質の液滴は、プラズマ・パスを通って生成されるプラズマ・ジェット207による二次的なアトマイズを受けて、基板またはターゲット400上での材料合成および堆積のための微細な液滴とされる。アトマイザ・アセンブリ206は、液体または気体の前駆物質あるいはそれらの組み合わせのために好んで使用される。さらにアトマイザ・アセンブリ206を採用するいくつかの実施の形態で、前駆物質注入要素202は、DCプラズマ構成のカソードとして作用する固体要素で置き換えることができる。
【0031】
本教示のいくつかの実施の形態で、出口ノズル204は、プラズマ入口209、プラズマ出口210および気体前駆物質入力211を含む。気体前駆物質入力211は、堆積に先立って溶融粒子を所望の材料で被覆またはドープするためにアセチレンなどの気体を導入できる。この特別なアプローチは、導電度を向上させるために必要とされる炭素ドーピングのために有益である。プラズマ出口210は、円筒形、楕円形および長方形など様々な断面プロファイルを有することができる。そのような工夫は、アトマイズされた液滴中の粒径分布を制御してそれらの合成特性を向上させるために有益である。
【0032】
図3Bを参照すると、注入要素205は、プラズマ流に対して半径方向に前駆物質を導入でき、一般にラジアル・インジェクタとして知られている。このインジェクタを用いて、固体/液体/気体の前駆物質212またはそれらの組合せを注入できる。しかし、それが優先的に採用されるのは、ポリマーなどのより低い熱入力を必要とする前駆物質または本開示で後に説明するように飛行中またはターゲット400での遅延化学反応に対してである。特定のインジェクタの使用またはそれらを特定の前駆物質と組み合わせることが許容されることは、暗黙に想定されている。
【0033】
この設計によりプラズマ流207中にすべての前駆物質を取り込むことが保証され、より高い堆積効率および均質な粒子特性につながった。さらにこの設計は、またナノ粒子のバルク・マトリックスへの埋め込みを可能にし、複合膜を実現できる。
【0034】
本教示の原理に従えば、スプレー装置200は、図3Bに示されるように熱源208を備えることができ、それは、プラズマ流207によって基板上に層が堆積されるのとほぼ同時に、堆積した材料を一層ずつ処理することを可能にする。エネルギー源は、レーザー、プラズマ、放射または対流型の熱源でよい。すなわち、熱源208からのエネルギー出力は、ここに記載の方法を用いて基板上に堆積された被膜に向けることができる。この点に関して、基板上に薄く堆積される各々の層は、熱源208によって単純で同時的なやり方で直ちに改質、調整あるいはその他の処理を施される。具体的には、熱源208は、スプレー装置200に隣接して配置されるか、またはそれと一体として構成されて、処理基板にエネルギーを付与する。本教示のいくつかの実施の形態で、エネルギー・ビームは、ガウス状のエネルギー分布または矩形のエネルギー分布のいずれかを有することができる。
【0035】
スプレー装置250のいくつかの実施の形態では、図3Cに示すようにプラズマの代わりに燃焼フレームが採用される。燃焼装置は、十分に熱いフレーム257を発生させるために燃料として炭化水素または水素252のほか酸素または空気253を用いることができる。前駆物質材料は、インジェクタ要素254を介して軸方向に、および/またはインジェクタ要素254’を介して放射状にフレーム中へ注入でき、ここに記載される現下の教示の原理に従って所望の材料を合成し、それらをターゲット400上の堆積物として圧密することができる。フレームの化学的環境は、燃料と空気との比を調節することにより、酸素の豊富な環境または酸素の少ない環境のいずれかに調節できる。そのような調節は、ターゲット材料の化学特性を制御できる。このような堆積膜のその場熱処理は、本開示に示す原理に従う熱源208を用いて実行できる。
【0036】
いくつかの実施の形態で、スプレー装置250は、ターゲット400上に圧密される微細な液滴に前駆物質をアトマイズするために、予め加熱されたガス流を用いることができる。飛行中に前駆物質からの水分損失が発生しうるが、望ましい化学特性、相および粒子形態への前駆物質の変換は、ここに記載される現下の教示の原理に従ってその場熱処理によって主としてターゲット上で発生する。
【0037】
図3Dを参照すると、前駆物質給送アセンブリ300は、混合チャンバ302へ給送を行う非限定的前駆物質リザーバ301、301’および301”を含むことができ、それは、機械ポンプ310を介してスプレー装置200へ圧送される。さらに図3Eに示すように、給送アセンブリ350は、混合チャンバ352およびポンプ354を介してスプレー装置200へ圧送されるスラリーを形成する液体前駆物質ライン中に固体粉末の前駆物質を取り込むための機械的フィーダ353を含むことができる。さらに、固体前駆物質は、それとは独立して、キャリア・ガスを介してスプレー装置に直接供給できる。このような工夫の利点は、さらに本開示で後述する。
【0038】
図4Aから図4Dは、スプレー装置200からターゲット400上へスプレー合成される材料のための収集方式およびそこにおいてその場熱処理を提供する様々な非限定的実施の形態を模式的に示している。図4Aを参照すると、粒子を膜の形に圧密する代わりに、材料は、チェンバ401に収集されて、そこにおいて飛行中にアニールされて粉末402を生成する。言い換えれば、現下の教示の原理を用いることによって、従来の作製方式の電池電極および電解質のための様々な電池材料コンパウンドの粉末を製造できる。図4Bは、前駆物質化学物質から電流コレクタ451上の膜の形452へと合成される電極材料220の直接圧密を示している。さらに、図4Cは、液体または気体の前駆物質中に懸濁された予め合成された粒子を含む混合物から、複合被覆を形成する堆積技術の概要を示している。さらに、その他の前駆物質を用いて、外部インジェクタ465から電流コレクタ461上に膜462を圧密することもできる。図4Dに示すように、図4Aから図4Cに示された実施の形態に対して熱源208を使用することによって、膜472に対してその場熱処理を提供できる。
【0039】
本教示の原理に従って、具体的には熱源208を有するスプレー装置200は、適切な前駆物質を用いて電池コンポネントを直接作成するために効果的に利用できる。このように、電流コレクタ、カソード、電解質、セパレータおよびアノード層は、固体前駆物質、液体前駆物質、気体前駆物質、またはそれらの組み合わせのいずれかを使用してスプレー装置200によって堆積できる。層のその場改質は、熱源208によって達成される。熱源の性質とパワーを慎重に変化させることによって、層およびそれらの界面にわたる密度勾配を制御(すなわち、勾配を定義)することによってイオン・インターカレーションを促進できる。いくつかの実施の形態で、スプレー装置200は、カソード、電解質およびアノードの変形に関してここに記載された教示をさらに含むことができる。
【0040】
ここで述べたようなスプレー装置を用いて溶液前駆物質から、所望の化学特性、相および形態を持つ膜を直接実現することは、従来技術では決して達成されない。さらに、現下の教示の原理に従って到達できる堆積速度は、従来の薄膜堆積技術より桁違いに高い。直接合成アプローチは、飛行中およびその場で電極の化学特性を調節する機能を提供する。これらの教示は、ここに記載の例示的な材料系に限定されず、多くのその他の材料系にも採用できる。
【0041】
(革新的なカソード製造)
LiFePO4、LiCoO2およびLi [NixCo1-2xMnx] O2等、現在カソード材料として多くの化学物質が開発されている。本教示の原理に従えば、液体前駆物質(化学溶液およびキャリア溶液中の懸濁物)が図3Aのスプレー・システム20に導入されて所望の材料化学特性、相および形態を合成し、さらに図5Aに示されるように電流コレクタ501上に独自のやり方でカソード膜502を直接形成する。このプロセスは、一般に図2Bに示されており、ここでは従来技術の処理工程が省略されている。さらに、必要に応じて層または膜をさらに処理するために熱源208を採用できることを理解すべきである。図5Aは、現下の教示の原理に従って得られたLiFePO4 502’、LiCoO2 502”およびLiMn2O3 502'''カソード膜の形態を示している。
【0042】
LiFePO4/C複合カソードのための例示的前駆物質は、水、鉄シュウ酸塩、LiOH、リン酸アンモニウムおよびpHを調整された溶液中の糖を含む。pHを調整された液を得るために酸または塩基(初期の酸性または塩基性に依存して)を添加できることを理解すべきである。いくつかの実施の形態で、均質な溶液を実現するために液をpH調節することができ、そこに含まれるコンポネントは、液中に完全に溶解する。さらに、適切な硝酸塩の前駆物質を使用してZrおよびMnなどのドーパントを追加できる。いくつかの実施の形態で、図3Bのプラズマ装置201には、軸方向が優先的なアトマイズ・インジェクター205”または206が採用される。このアトマイザは、二液法を使用し、前駆物質溶液をおよそ1から50マイクロメートルのサイズの液滴に分割するために加圧されたガス流を利用する。アトマイゼーションは、プルームに溶液の流れが直接注入される場合と比べてより低い温度で液滴を完全に熱分解してLiFePO4粒子とすることを許容する。さらに、堆積速度を高めるために、ここに記載の液体前駆物質と一緒に予め合成されたLiFePO4の固体粉末をプラズマ中に注入できる。その結果、図5Aに示すようにアルミ箔などの電流コレクタ501上に溶融/半溶融のLiFePO4粒子が膜502’として堆積する。現下の教示で説明するように、気体前駆物質を介して追加の炭素を膜に添加できる。
【0043】
現下の教示の原理に従って得られるカソード膜は、業界で使用される従来のカソードと同じように任意のポリマー・バインダを含んでもよいし、含まなくてもよい。バインダを含まないカソードは、より高い温度で動作できる。ただし、ここに提示した原理は、ポリマー・バインダを含むカソードの製造を制限しない。液体前駆物質との共スプレーによって、PVDFおよびPAAなどのポリマーを追加することが可能となった。
【0044】
溶液前駆物質は、オープンな雰囲気中で正常に熱分解し、基板上に堆積した。図5Bは、膜のTEM写真を示しており、アモルファス炭素で被覆されたLiFePO4のナノ微粒子構造を示している。さらに図5Cに示されたXRDによって、膜中のLiFePO4のカンラン石相が確認できる。炭素で被覆されたナノ構造のカンラン石微粒子がカソード膜として適しており、従ってここに記載された原理が、一般に業界で実際に採択される中間処理工程を省いて所望のカソードを直接生成できることを理解すべきである。さらに、こうして得られるカソード膜の放電容量が図5Dに示されており、それは、さらに現下の教示の請求項を裏付ける。
【0045】
LiCoO2/C複合カソード用の例示的前駆物質は、水、LiOH、Co硝酸塩、pHを調整された溶液中の糖を含む。さらに、溶液中にAl硝酸塩およびリン酸アンモニウムを使用することによって、アルミナまたはリン酸アルミニウム等の添加物を追加できる。溶液中の糖成分は、膜中のLiCoO2コンパウンドの化学量論的なバランスに対して重要な役割を果たす。結果の溶融/半溶融LiCoO2粒子は、図3Bのプラズマ装置201を用いることによって、図5Aに示すようにアルミ箔などの電流コレクタ501上に膜502として堆積される。オープンな雰囲気中で溶液前駆物質が正常に熱分解して基板上に堆積され、炭素で被覆されたLiCoO2微粒子が得られた。現下の教示で説明されるように、気体前駆物質211を介して膜中に追加的な炭素を添加することもできる。いくつかの実施の形態で、膜は、また図3Cの燃焼装置251およびここに説明された液体前駆物質を採用することによって、現下の教示の原理に従って得ることもできる。プラズマまたは燃焼フレームのいずれを選ぶかは、膜中の望ましい粒子の大きさおよび密度に依存する。
【0046】
Li(NiCoMn)0.33O2/C複合カソード用の例示的な前駆物質は、水、LiOH、Ni硝酸塩、Co硝酸塩およびMn硝酸塩およびpHを調整された溶液中の糖を含む。また、溶液中にAl硝酸塩およびリン酸アンモニウムを用いて、アルミナまたはリン酸アルミニウム等の添加物を追加できる。得られる溶融/半溶融のLi(NiCoMn)0.33O2粒子は、図3Bのプラズマ装置201を用いることによって、図5Aに示すようにアルミ箔などの電流コレクタ501上に膜502として堆積される。溶液前駆物質は、オープンな雰囲気中で正常に熱分解されて基板上に堆積され、炭素で被覆されたLi(NiCoMn)0.33O2ナノ構造ラメラ微粒子が得られた。現下の教示で説明されるように、気体前駆物質211を介して膜に追加の炭素を添加できる。いくつかの実施の形態で、膜は、図3Cの燃焼装置251およびここに説明される液体前駆物質を採用することによって、現下の教示の原理に従って得ることができる。さらに、電極性能を強化するために、液体前駆物質の化学特性を変化させることによって、ニッケルが豊富な層とニッケル欠乏層とを交互に積層することができる。
【0047】
現下の教示の原理に従ってカソード膜を直接作製するための例示的および非限定的な変形は、図3Bのプラズマ装置201およびコバルト固体粉末前駆物質を採用した金属コバルト膜の堆積およびコバルト固体粉末前駆物質の成膜で始まり、膜上へのLiOH液体前駆物質の直接スプレーおよび同時にその場熱処理が続く。これらの教示に従って、LiCoO2502”カソード膜が電流コレクタ501上に直接作成される。こうして得られたカソード膜の充電/放電動作が図5Eに示されているが、この図は、そのような膜のLiイオン・ハーフセル電池動作における機能を実証している。さらに、ここに記載の変形は、図5Aに示されたLiMn2O3 502'''などその他のカソード膜にも採用できる。
【0048】
ここに記載の例示的なカソード膜は、例示のみを目的としており、現下の教示の原理に従って得られたものであり、本開示の原理に従って合成できる可能な材料系の全範囲を制限する意図ではない。
【0049】
(革新的なアノード製造)
グラファイト、炭素−ケイ素、Li4Ti5O12、Co3O4およびMn3O4など様々な化学材料がアノード用として開発されているが、現在業界ではグラファイトが最も広く使用されている。現在の多くの電池製造技術は、様々な粉末材料のアノード膜を作成するためにポリマー・バインダの使用を採用している。参考のためにあるように、熱スプレー技術は、また予め合成された粉末を採用して様々な酸化物膜を堆積させるためにも採用される。
【0050】
図6Aを参照すると、各種材料のアノード膜510は、ここに記載された原理に従うその場熱処理と組み合わせることにより、固体または液体または気体の前駆物質またはそれらの組合せから電流コレクタ501上へ直接作製することもできる。Co3O4/C複合アノード用の例示的前駆物質は、水、Co硝酸塩およびpHを調整された溶液中の糖を含む。溶液をアトマイズしてプラズマまたは燃焼フレームとして液滴をCo3O4粒子に熱分解することができ、電流コレクタ上にアノード膜として圧密できる。さらに、その場熱処理を用いれば、膜の相、化学特性および形態を改質できる。
【0051】
アノード膜を直接作製するための現下の教示の例示的および非限定的変形は、図3Bのプラズマ装置201を用いた金属コバルト膜およびコバルト固体粉末前駆物質の堆積から始まり、酸素の存在下での同時的なその場熱処理が続く。図6Aに示されるように、これらの教示に従って、電流コレクタ501上にCo3O4 510”アノード膜が直接得られた。図6Bに示したXRDパターンから、この膜の所望の相が確認される。さらに、こうして得られたアノード膜の充電/放電動作が図6Cに示されているが、この図は、そのような膜のLiイオン・ハーフセル電池動作における機能を実証している。さらに、ここに記載の原理は、MnおよびTiなどの多くの遷移金属に基づくその他のアノード膜にも採用できる。
【0052】
熱スプレープロセスの利点は、大量生産と多孔質の被覆であり、これらは、後続の工程、すなわちその場での酸化/リチオ化プロセスにおける反応/酸化のより高速な反応速度のための広い表面積を提供する。また、CoおよびMnなどの遷移金属のシート状金属は、それらの粉末(粉末は、しばしばそれらの抽出プロセス、例えばMnの電解抽出の最終製品である)に比べて高価であり、プラズマ堆積は、粉末前駆物質を使用する。従って、プラズマ・スプレーによる多孔質被覆における反応速度は、バルクのシート状金属の場合よりもはるかに高速である。多くの場合、バルク金属上に生成する酸化物スケールは、体積変化に伴うひずみのために剥離し、他方、プラズマ・スプレーで形成される多孔質被覆は、ひずみを緩和して基板に付着したままに留まる。従って、優れた充電/放電サイクル性および比容量を持つナノ構造膜をコスト効率よく製造できる。さらに、ポリマーまたはバインダがないため、これらの電極は、高温の電池用として適したものとなる。
【0053】
長年にわたり、Siナノ・ワイヤおよびSiナノ粒子は、アノード用として非常に高い比容量を示すことが知られてきた。これらの材料の深刻な限界は、電極のサイクリングの間に(反復的なLiイオンの挿入と抽出のために)ナノ構造が劣化することであり、それにより容量が急激に低下し、ひいてはデバイスの劣化につながるということである。そのような材料劣化を克服するために、Siナノ粒子に対して炭素被覆が利用される。炭素被覆は、表面を保護し、電極のサイクル・テスト中にナノ構造を無傷に保持することが示されている。シリコンのナノ構造は、典型的にはCVDなどの少量生産プロセスによって実現される。
【0054】
しかし、直流プラズマ装置201によって電流コレクタ501上にシリコン被覆を堆積させ、続いてレーザー源208を用いてその場処理することによってナノ構造の表面510’を形成する能力は、単純でコスト効率的なやり方で大面積アノードの作製を可能にする。これら現下の教示のいくつかの実施の形態では、プラズマ装置201を使用して、シリコン被覆および触媒層を堆積させ、後続のその場処理によってナノ構造表面を実現できる。
【0055】
これらの教示のいくつかの実施の形態で、シリコンを含む気体前駆物質をプラズマ装置に使用して電流コレクタ501上へナノ微粒子を堆積させて、シリコンのナノ微粒子をベースとするアノード510'''を製造できる。さらに、これらのシリコンのナノ微粒子は、アセチレンなどの適切な気体前駆物質を同時に用いることによって炭素で被覆できる。さらに、炭素被覆されたシリコンのナノ微粒子は、ナノ構造シリコンまたはここに記載の金属表面(その場レーザー処理で得られる)上に堆積させて階層的なアノード構造を形成できる。あるいは、そのような炭素被覆されたシリコンのナノ微粒子を多孔質の電解メッキされた銅の上に堆積させてアノードを形成できる。
【0056】
現下の開示のいくつかの実施の形態では、複数のスプレー装置を組み合わせて、図7に示されたようなロール・ツー・ロール製造構成600で、現下の教示の原理に従って電流コレクタの両面に電極材料を堆積できる。この実施の形態で、スプレー装置は、合成された材料を通常のノズル601に導く。さらに、ロール603は、その場処理のあとで、膜を圧迫して電極材料の多孔質構造を制御できる。このような実施の形態は、カソードおよびアノードの両方に採用でき、セパレータと電解質層が組み込まれて全体のセルが形成される産業用電池の組立工程につながる。
【0057】
(革新的な電解質の製造)
固体電解質は、高温での電池動作に適している。さらに、それらは、より安全な動作環境を提供する。固体電解質のほとんどは、固体またはゾル−ゲル法によって合成され、高温のアニール状態からの急速冷却によってガラス相が実現される。
【0058】
ここに記載の前駆物質溶液からの直接合成の原理に従って、適切な液体前駆物質が図3Bのプラズマ装置201に導入されて所望の材料化学特性、相および形態を備える固体電解質が電極上に直接合成される。この能力は、モノリシック層の作製を容易にし、プラズマ・スプレー装置を用いて能動電極と固体電解質の両方を逐次堆積させることができ、それによって電池セル製造のプロセス工程およびコストを削減する。
【0059】
この目的で、液体前駆物質を用いるLi1+xAlxTi2-X(PO4)3[LATP](X:0.2から0.5)ベースの例示的な固体電解質が現下の教示の原理に従って直接合成された。例示的な溶液前駆物質は、LiOH、Al硝酸塩、Ti-イソプロポキシドおよびリン酸アンモニウムを含む。ここで説明するLATP堆積膜のX線回折パターンを図8Aに示す。この図は、固体電解質のアモルファスと結晶形の両方を達成できることを示している。その場熱処理は、膜の相を効果的に制御できる。ここに記載の合成方式で実現可能な組成変動の柔軟性を利用して、良好なイオン伝導性に好都合なように電解質組成を広範囲に変化させることができる。同様のやり方で、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3[LAGP] ベースの固体電解質も、溶液中でTiイソプロポキシドをGeイソプロポキシドで置き換えることによってここに確立されるスプレー合成の原理を用いて合成できる。
【0060】
(革新的なセパレータの製造)
最高性能を得るためには、広い表面積、多孔質および良好な機械的強度を有するセパレータが望ましい。現下の教示の原理を導入することによって、スプレー堆積装置を用いて電極または固体電解質上に直接セパレータを堆積できる。このアプローチによって、種々の溶媒に溶解させたPVDFが正常に薄膜状に堆積された。溶媒には、Nメチルピロリジノン(NMP)、アセトン、メタノール等が含まれる。スプレー法は、本質的に多孔質で連続した膜構造をもたらすので、スプレー法によって作製されたメンブレンは、電池アセンブリに適している。また、機械的強度を増やすために、セパレータ層を作製するための溶液中にファイバーやナノチューブなどの補強剤を組み込むことができる。
【0061】
(革新的なリチウム・イオン電池の製造)
本開示に記載された教示に従う、カソード、アノード、固体電解質およびセパレータを逐次的に直接作製する方法は、従来の電池業界では一般的でないモノリシックな電池を構築するためのユニークな利点を有する。図8Bおよび図8Cを参照すると、いくつかの例示的な実施の形態で、電流コレクタ501、カソード502、電解質511、オプションのセパレータ512、アノード510および第2の電流コレクタ501を含む電池セル全体700は、モノリシックな構造として逐次的に構築できる。電流コレクタは、Al、Cuまたはステンレス鋼などの導電性金属の固体粉末前駆物質を用いてプラズマ・スプレー装置によって構築できる。この能力は、ここに実証される製造技術に対して多大な幾何学的および機能的な能力を提供する。
【0062】
図9Aを参照すると、現下の教示の原理に従って、スプレー装置200を用いて複雑な電池セル602を飛行機の翼またはフレーム上に構造の輪郭に沿うように構築できる。そのような電池セルは、スペースを節約し、航空宇宙システムに巨大な蓄電機能を提供できる。この種の蓄電システムは、形状および空間を大幅に変更することなしに無人飛行システム全体に対してパワーを提供できる。
【0063】
さらに、現下の教示のいくつかの実施の形態では、図9Bに示すように、モノリシック電池を太陽電池の下に構築して局所的な蓄電機能を提供できる。このような機能は、中央蓄電ユニットの必要性を排除できる。さらに、電池のオープン・アーキテクチャにより、そのような電池の熱管理が簡単になる。
【0064】
いくつかの実施の形態では、図9Cに示すように、現下の教示に従うモノリシック電池は、自動車のボディ構造上に構築できる。現在の電気自動車は、電池パックの利用可能な形状の周りに設計される。ここで説明する可能な幾何学的自由度の範囲内で、自動車の構造は、機能およびスタイルのニーズに従って設計でき、また電池は、利用可能なスペースに収容されるように作製できる。
【0065】
ここで述べる例示的な構成は、説明のためだけのものであり、それらは、本開示の原理に従って実現できる可能な構成およびそれらの組み合わせの完全な範囲を制限するものではない。現下の教示の原理は、電極または電解質またはセパレータまたはそれらの任意の組み合わせなど個々のコンポネントに適用できる。
【0066】
実施の形態の上記の説明は、例示および説明の目的のために提供された。排他的であること、あるいは本発明を制限することは、意図されていない。特定の実施の形態の個々の要素または機能は、一般にその特定の実施の形態に限定されるものではなく、むしろ該当する場所では、具体的に表示または説明されていなくても、交換可能であり、選択された実施の形態に使用できる。それらは、また多様に変化して現れる。そのような変形は、発明から逸脱するものと見なされず、すべてのそのような変更は、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0067】
実施例は、本開示が完全なものとなり、当業者に対してその範囲を十分に伝えるようにするために提供される。本開示の実施の形態の完全な理解を提供するために、特定のコンポネント、デバイスおよび方法の例など数多くの特定の詳細が提示されている。特定の詳細を必ずしも採用する必要がないこと、実施例が多くの異なる形態で具体化されること、そして開示の範囲を限定すると解釈されるべきでないことは、当業者に明らかである。いくつかの実施例では、よく知られたプロセス、よく知られたデバイス構造およびよく知られた技術については、詳細に記述されない。
【0068】
ここで使用される用語は、特定の実施例を説明するためだけのものであり、限定する意図はない。ここで使用されるように、文脈上別途明確に示されない限り、名詞は、単数の意味と同時に複数の意味を含むものとして意図されている。“含む”、“含んでいる”、“有する”および“有している”という表現は、包含的であり、従って言及される特徴、整数、工程、動作、要素および/またはコンポネントの存在を示すが、1つ以上のその他の特徴、整数、工程、動作、要素、コンポネントおよび/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。ここに記載の方法の工程、プロセスおよび操作は、具体的な実行順序を指定されない限り、それらを必ず特別な順序に実行しなければならないと解釈されるべきでない。また、追加または代替の工程を用いてもよいことを理解すべきである。
【0069】
要素または層が別の要素または層に対して、“上に”、“連結されて”、“接続されて”、“結合されて”いると言及される場合、それは、別の要素または層に対して直接上に、連結している、接続されている、または結合していてよいが、そうでなければ仲介する要素または相が存在してもよい。これと対照的に、要素が別の要素または層に対して“直接上に”、“直接連結されて”、“直接接続されて”、“直接結合されて”あると表現される場合は、仲介する要素または層が存在しない。要素間の関係を記述するために使用されるその他の単語も同様に解釈すべきである(例えば、“間に”と“直接間に”、“隣接して”と“直接隣接して”等)。ここで使用されるように、“および/または”という用語は、1つ以上の関連する列挙項目の任意およびすべての組合せを含む。
【0070】
第1、第2、第3等の用語は、ここで様々な要素、コンポネント、領域、層および/またはセクションについて説明するために使用されるが、これらの要素、コンポネント、領域、層および/またはセクションは、それらの用語によって制限されるべきでない。これらの用語は、1つの要素、コンポネント、領域、層またはセクションを別の領域、層またはセクションから区別するためだけに使用される。“第1の”、“第2の”およびその他の順序を示す用語がここで使用される場合、文脈によって明確に示されない限り、順序または順番を意味しない。従って、以下で説明する第1の要素、コンポネント、領域、層またはセクションは、例えば、実施例の教示から逸脱することなく、第2の要素、コンポネント、領域、層またはセクションと呼んでもかまわない。
【0071】
ここで“内側”、“外側”、“下方”、“下側”、“下位”、“上方”、“上位”などの空間的に相対的な用語は、図面に示されるように、1つの要素または構造の、別の要素(単数または複数)または構造(単数または複数)に相対的な関係を説明するために便宜的に使用される。空間的に相対的な用語は、図に示す向きに加えて、使用または操作される装置の異なる向きを包含することを意図される。例えば、図中の装置がひっくり返された場合、別の要素または構造の“下方”または“真下”にあると記述された装置は、今度は別の要素または構造の“上方”に位置することになる。従って、用語例“下方”は、上下の向きの両方を包含することになる。装置は、そうでなければ別の向きに配向することができ(90度回転されて、あるいは別の向きに)、ここで使用される空間的に相対的な記述は、それに応じて解釈される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆物質から電池部材を製造する方法であって、
前記前駆物質に溶解した少なくとも1つのコンポネントを有する前駆物質を提供する工程と、
基板上に前駆物質を熱スプレー堆積させて被覆層を形成し、前記少なくとも1つのコンポネントが前記基板上への堆積の前に前記熱スプレー中で合成されるようにする工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質中に溶解した少なくとも1つのコンポネントを有する前駆物質を提供する前記工程が、前記前駆物質溶液中に化学的に溶解した少なくとも1つのコンポネントを有する前駆物質を提供する工程を含む前記方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、さらに
前記被覆層を熱処理して、予め決められた化学特性、相または形態を実現する工程、
を含む前記方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、レーザー源を使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、プラズマ源を使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、燃焼フレームを使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、炉を使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、誘導加熱を使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記熱処理工程が、後続の被覆層の堆積の前に少なくとも部分的に完了している前記方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質中に溶解した少なくとも1つのコンパウンドを有する前駆物質を提供する前記工程が、液体前駆物質を提供する工程を含む前記方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質中に溶解した少なくとも1つのコンパウンドを有する前駆物質を提供する前記工程が、気体前駆物質を提供する工程を含む前記方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、シュウ酸鉄、LiOH、リン酸アンモニウムおよびpHを調整された溶液中の糖を含む前記方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、LiOH、Co硝酸塩、およびpHを調整された溶液中の糖を含む前記方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、LiOH、LiOH、Ni硝酸塩、Co硝酸塩、Mn硝酸塩およびpHを調整された溶液中の糖を含む前記方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、LiOH、Al硝酸塩、TiイソプロポキシドおよびpHを調整された溶液中のリン酸アンモニウムを含む前記方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、LiOH、Al硝酸塩、GeイソプロポキシドおよびpHを調整された溶液中のリン酸アンモニウムを含む前記方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記熱スプレーがプラズマ源を含む前記方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記熱スプレーが燃焼源を含む前記方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、前記熱スプレーが予熱された気体源を含む前記方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、さらに
予め決められたpHレベルを達成するために、前記前駆物質に対して酸または塩基の一方を追加する工程、
を含む前記方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が全体として溶液であって、その中に所望のカソード・コンパウンドのための元素源および炭素源を含む前記方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が全体として溶液であって、その中に所望のアノード・コンパウンドのための元素源および炭素源を含む前記方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が全体として溶液であって、その中に所望の電解質コンパウンドのための元素源を含む前記方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が全体として溶液であって、その中に所望のセパレータ・コンパウンドのための元素源を含む前記方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質がスラリーであって、その中に所望のカソード・コンパウンドのための懸濁粒子および溶液を含む前記方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質がスラリーであって、その中に所望のアノード・コンパウンドのための懸濁粒子および溶液を含む前記方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質がスラリーであって、その中に所望の電解質コンパウンドのための懸濁粒子および溶液を含む前記方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質がスラリーであって、その中に所望のセパレータ・コンパウンドのための懸濁粒子および溶液を含む前記方法。
【請求項1】
前駆物質から電池部材を製造する方法であって、
前記前駆物質に溶解した少なくとも1つのコンポネントを有する前駆物質を提供する工程と、
基板上に前駆物質を熱スプレー堆積させて被覆層を形成し、前記少なくとも1つのコンポネントが前記基板上への堆積の前に前記熱スプレー中で合成されるようにする工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質中に溶解した少なくとも1つのコンポネントを有する前駆物質を提供する前記工程が、前記前駆物質溶液中に化学的に溶解した少なくとも1つのコンポネントを有する前駆物質を提供する工程を含む前記方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、さらに
前記被覆層を熱処理して、予め決められた化学特性、相または形態を実現する工程、
を含む前記方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、レーザー源を使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、プラズマ源を使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、燃焼フレームを使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、炉を使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法であって、前記被覆層を熱処理する前記工程が、誘導加熱を使用して前記被覆を熱処理する工程を含む前記方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記熱処理工程が、後続の被覆層の堆積の前に少なくとも部分的に完了している前記方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質中に溶解した少なくとも1つのコンパウンドを有する前駆物質を提供する前記工程が、液体前駆物質を提供する工程を含む前記方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質中に溶解した少なくとも1つのコンパウンドを有する前駆物質を提供する前記工程が、気体前駆物質を提供する工程を含む前記方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、シュウ酸鉄、LiOH、リン酸アンモニウムおよびpHを調整された溶液中の糖を含む前記方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、LiOH、Co硝酸塩、およびpHを調整された溶液中の糖を含む前記方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、LiOH、LiOH、Ni硝酸塩、Co硝酸塩、Mn硝酸塩およびpHを調整された溶液中の糖を含む前記方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、LiOH、Al硝酸塩、TiイソプロポキシドおよびpHを調整された溶液中のリン酸アンモニウムを含む前記方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が水、LiOH、Al硝酸塩、GeイソプロポキシドおよびpHを調整された溶液中のリン酸アンモニウムを含む前記方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記熱スプレーがプラズマ源を含む前記方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記熱スプレーが燃焼源を含む前記方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、前記熱スプレーが予熱された気体源を含む前記方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、さらに
予め決められたpHレベルを達成するために、前記前駆物質に対して酸または塩基の一方を追加する工程、
を含む前記方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が全体として溶液であって、その中に所望のカソード・コンパウンドのための元素源および炭素源を含む前記方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が全体として溶液であって、その中に所望のアノード・コンパウンドのための元素源および炭素源を含む前記方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が全体として溶液であって、その中に所望の電解質コンパウンドのための元素源を含む前記方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質が全体として溶液であって、その中に所望のセパレータ・コンパウンドのための元素源を含む前記方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質がスラリーであって、その中に所望のカソード・コンパウンドのための懸濁粒子および溶液を含む前記方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質がスラリーであって、その中に所望のアノード・コンパウンドのための懸濁粒子および溶液を含む前記方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質がスラリーであって、その中に所望の電解質コンパウンドのための懸濁粒子および溶液を含む前記方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法であって、前記前駆物質がスラリーであって、その中に所望のセパレータ・コンパウンドのための懸濁粒子および溶液を含む前記方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【公表番号】特表2013−502045(P2013−502045A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524896(P2012−524896)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/045431
【国際公開番号】WO2011/019988
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(507238218)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/045431
【国際公開番号】WO2011/019988
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(507238218)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (4)
【Fターム(参考)】
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