説明

MMSE等化回路、受信装置、及び通信システム、並びにその方法及びプログラム

【課題】MIMO−OFDMシステムに装備されるMMSE等化回路等を、少ない演算量で実現し、処理可能な通信容量の増大と、装置の小型化、省電力化を図ること。
【解決手段】MIMO−OFDM通信システムに装備され、複数の送信アンテナ毎に設けられた復調部で復調されたベースバンド信号を成分とする復調信号ベクトルを等化し推定送信信号ベクトルを生成するMMSE等化回路であり、MIMOチャネルの特性を表すチャネル応答行列と,予め算定された雑音標準偏差を単位行列に乗算して得られる行列とにより拡散応答行列を形成し且つ当該拡散応答行列をQR分解してユニタリ行列を生成するユニタリ行列生成手段19を備え、この生成されたユニタリ行列から二つの部分行列を生成し且つ前記復調信号ベクトルに前記二つの部分行列と前記雑音標準偏差の逆数とを順次乗算して前記推定送信信号ベクトルを算出する送信ベクトル推定部15を備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MMSE等化回路、受信装置、及び通信システム、並びにその方法及びプログラムに係り、特に、高速無線通信の実現技術であるMIMO技術にあって1次変調にOFDM(直交周波数分割多重)を用いたOFDM通信方式におけるMMSE等化回路、受信装置、及び通信システム、並びにその方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速無線通信実現技術として、MIMO(Multi-Input Multi-Output)技術が注目を集めている。MIMO技術は、複数の送信部と送信アンテナ、及び受信アンテナと受信部とを用いて、混信が生じるチャネル( 以下、「MIMOチャネル」という) を使用しながら、混信を除去するチャネル等化方法を用いてチャネル分離し(「空間分離」ともいう)、空間分離したチャネルに対し独立したストリームデータを送信することにより、伝送容量を大幅に増加させることができる。
【0003】
MIMO技術の適用規格として、例えば、IEEE802. 11n、IEEE802.
16eが挙げられる。これらの規格は、1次変調にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)を用いたMIMO−OFDM通信方式が採用されている。
MIMOチャネル利用のOFDM通信方式は、多数のキャリアを備え各キャリア毎の周波数帯域は狭く、周波数選択性フェージングが生ずるMIMOチャネルを、各キャリア毎に見ればその帯域内では受信信号レベル変動、位相変動が事実上周波数に依存しないで一様(周波数特性がフラット)とみなせるので、フラットフェージングのMIMOチャネルに分離することができ、優れた耐フェージング特性を示す。そのため、例えば、MIMO−OFDM通信方式は、通信チャネルを共有する複数の無線通信端末と、これら無線通信端末を管理する基地局からなる通信システムに採用されている。
【0004】
MIMOシステムのチャネル間の混信を除去する空間分離方式の一つとして、線形等化方式がある。線形等化方式では、受信側でOFDM復調を行いキャリア単位に分割したMIMOチャネルの復調信号ベクトルyに対し、等化用の重み付けフィルタ行列Mを掛けて等化し、送信信号ベクトルxを分離検出する。
【0005】
即ち、送信部jから受信部iまでのチャネル応答hijを成分とするチャネル応答行列をHとし、受信部iでの雑音nを成分とする雑音ベクトルnとすると、復調信号ベクトルyは、「y=Hx+n」と表され、これに等化用の重み付けフィルタ行列Mを掛けて等化すると、等化後の推定送信信号ベクトル〈x〉=sは、「s=My」となる。
【0006】
線形等化方式には、ZF(Zero-forcing)法と最小2乗平均誤差(MMSE:Minimum
Mean Squared Error)法の2方式がある。
ZF(Zero-forcing)法の等化処理は、原理的には、重み付けフィルタ行列MとしてHの逆行列H−1を用いたものであり、推定送信信号ベクトルsは、「s=H−1y=x+H−1n」となり、各送信信号xをチャネル間の混信(「クロストーク」ともいう)なしに取り出すことができる。しかし、実際の等化方式として、チャネル応答行列の逆行列を直接用いることは、それを求める計算量の膨大さや、動作の安定性等の点から問題点があり、次のような手法が知られている。
【0007】
即ち、チャネル応答行列HのQR分解の結果を用いて、推定送信信号ベクトルsを、復調信号ベクトルyから次式のように求めるものである。
【0008】
【数1】

ここで、RとQはチャネル応答行列HをQR分解して得られる上三角行列とユニタリ行列であり、次式の関係を有する。
尚、Qは、Qのエルミート転置であり、以降、行列のエルミート転置を上付添字tで表す。
【0009】
【数2】

尚、このZF法では、雑音が「H−1n」になり、強調されて受信特性が劣化する場合がある。
【0010】
一方の最小2乗平均誤差法(以下「MMSE法」と呼ぶ)の等化処理は、原理的には、等化用の重み付けフィルタ行列、M=(HH+σI)−1を用いるものであり、雑音とクロストークの総和が最小になるように等化処理を行うものである。
【0011】
ここで、チャネル応答行列H及び復調信号ベクトルyを、それぞれ次の数式3、数式4に示すように拡張した拡張チャネル応答行列,及び拡張復調信号ベクトルを用いれば、等化用の重み付けフィルタ行列M=(HH+σI)−1を用いるMMSE等化方式による推定送信信号ベクトルsが、数式1と同形式の数式5から得られることが知られている(非特許文献1)。
【0012】
【数3】

【0013】
【数4】

ここで、σは雑音標準偏差、INTはN行N列の単位行列、ONTはN行1列の零ベクトルである。
【0014】
【数5】

ここで、は、それぞれ拡張チャネル応答行列をQR分解して得られる上三角行列とユニタリ行列である。
【0015】
MIMO−OFDM通信方式では、前述の拡張復調信号ベクトル、および拡張チャネル応答行列は、各キャリア毎に存在しており、拡張チャネル応答行列のQR分解を実行する場合の演算負荷が高く膨大な計算量が必要になる。
そのため、このQR分解の単位時間当たりの実行回数を削減して、演算量を大幅に削減する次のような方式が提案されている(非特許文献1,2参照)。
【0016】
即ち、OFDM通信方式の全キャリアについて直接に拡張チャネル応答行列のQR分解を求めるのではなく、一部のキャリアをベースポイント(内挿処理におけるいわゆる「分点」)として取り扱い、このベースポイントの拡張チャネル応答行列に対するQR分解結果から、ベースポイント以外のキャリアにおけるユニタリ行列および上三角行列を内挿処理により求め、その後、キャリア毎に数式5を用いて推定送信ベクトルs を求める方式が提案されている(非特許文献1,2)。以下、ベースポイントに関する特性値には「ベース」を冠し、このベース特性値から内挿処理により算出されたものには「内挿」を付して区別する。
【0017】
図8は、上述の内挿を利用して演算量を減らした従来技術によるMMSE等化回路の構成例を示している。
このMMSE等化回路1000は、復調信号ベクトルを用いてベースポイントにおけるチャネル応答行列であるN行N列のベース応答行列を求めるベース応答算出部1100、雑音標準偏差を求める雑音推定部1200、雑音標準偏差とベース応答行列を用いて拡張応答行列をベースユニタリ行列とベース上三角行列に分解処理するQR分解部1300、ベースユニタリ行列を内挿処理し全キャリアにおける内挿ユニタリ行列を求める内挿処理部1400、ベース上三角行列を内挿処理し全キャリアにおける内挿上三角行列を求めるR内挿処理部1700、各キャリアの内挿上三角行列の逆行列を求めるR逆行列算出部1800、キャリア毎に数式5を用いて推定送信ベクトルを求め出力する送信ベクトル推定部1500とを備えて構成されている。
【0018】
次に、上記MMSE等化回路1000の動作を説明する。
OFDM復調された復調信号ベクトルがMMSE等化回路1000に入力されると、ベース応答算出部1100と雑音推定部1200と送信ベクトル推定部1500に供給される。尚、この復調信号ベクトルは、N行1列のベクトルであり、その第i成分は、第i受信アンテナに対応している。
【0019】
ベース応答算出部1100は、復調信号ベクトルを用いてベースポイントにおけるチャネル応答行列であるN行N列のベース応答行列Hを求めQR分解部1300に供給する。ベース応答行列の第(i,j)成分は、第j送信アンテナと第i受信アンテナ間のチャネル応答hijを表す。雑音推定部1200は、復調信号ベクトルをチャネルの時間および周波数相関情報を基に補正し、補正前後の差分を雑音として雑音標準偏差を推定し、QR分解部1300と送信ベクトル推定部1500へ供給する。
【0020】
QR分解部1300は、雑音標準偏差とベース応答行列を用いて拡張応答行列をQR分解処理し、ベースユニタリ行列とベース上三角行列を、それぞれ、内挿処理部1400とR内挿処理部1700へ供給する。内挿処理部1400は、ベースユニタリ行列を内挿処理し全キャリアにおける内挿ユニタリ行列を求め送信ベクトル推定部1500へ供給する。R内挿処理部1700は、ベース上三角行列を内挿処理し、全キャリアにおける内挿上三角行列を求めR逆行列算出部1800へ供給する。
【0021】
ここで、上記各行列の内挿処理は、ベース行列を基に、内挿行列の各要素が、ベースポイント数より低い次数のローラン(Laurent )多項式で表現できるように内挿処理を行っている。R逆行列算出部1800は、各キャリアの内挿上三角行列の逆行列を求め、送信ベクトル推定部1500へ供給する。
送信ベクトル推定部1500は、キャリア毎に上記の数式5を用いて推定送信信号ベクトルを求め出力する。
【0022】
尚、上三角行列の逆行列演算−1の代わりに、上三角行列を用いた後退代入処理により送信ベクトルを推定する方式もある。
【特許文献1】特開2006−345500号公報
【非特許文献1】カスケト,「MIMO−OFDMシステムにおける内挿に基づくQR分解」(D. Cescato, Interpolation-based QR decomposition. in MIMO-OFDM systems, )in Proc. IEEE SPAWC 2004, pp. 945949, June 2005.
【非特許文献2】ヴュベン、カムヤ、「P−SQRDを使ったアンテナ毎に符号化されたMIMO−OFDMシステムにおける内挿に基づく逐次干渉除去法」(D. Wubben and K.D. Kammeyer,Inter polation-Based Successive Interference Cancellation for Per-Antenna-Coded MIMO-OFDM Systems using P-SQRD), 1International ITG/IEEE Workshop on Smart Antennas (WSA 2006)
【非特許文献3】ステューバ、バレ、マクローリン、リー、イングラム、プラット、「広帯域MIMO−OFDM無線通信」(Stuber, G.L.; Barry, J.R.; McLaughlin, S.W.; Ye Li; Ingram,M.A.; Pratt, T.G.,Broadband MIMO-OFDM wireless communications ”), Proceedings of the IEEE Volume 92, Issue 2, Feb 2004 Page(s):271 - 294
【非特許文献4】サイモン・ヘイキン, (Simon Haykin)「適応フィルタ理論」, 科学技術出版, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述した従来技術によるMIMO−OFDMシステムにおけるMMSE等化方法および等化回路については、その実行内容にあって演算量が膨大となり演算時間が長くなるという不都合が常に存在する。その原因は、キャリア毎に演算負荷の大きな内挿上三角行列Rの逆行列演算が必要となり、また、更に演算負荷の大きな上三角行列Rの内挿処理が必要とされる点があるからである。
そのため、MIMO−OFDMシステムにおけるMMSE等化回路を実現する際に、一定の通信容量を確保するには、回路規模が大きく、且つ高速演算素子の使用により消費電力も大きくなるという実装上の問題が常に存在していた。
【0024】
〔発明の目的〕
本発明は、上記課題に鑑み、少ない演算量に基づいたMMSE等化回路,等化処理方法,及び等化処理プログラム等を実現し、これを組み込んだ装置およびシステムにおける通信容量の増大、あるいは装置の小型化、経済化、および省電力化に資することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するため、本発明に係る第1の発明(MMSE等化回路)では、MIMOチャネルを利用した通信システムに装備され、複数の受信アンテナ毎に設けられた復調部で各別に復調されたベースバンド信号を成分とする復調信号ベクトルを等化し、これによって推定送信信号ベクトルを生成するMMSE等化回路であって、前記MIMOチャネルの有する特性を表して成るチャネル応答行列と,雑音標準偏差を単位行列に乗算して得られる行列とにより拡張応答行列を形成し且つ当該拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を生成するユニタリ行列生成手段を備え、前記ユニタリ行列に基づいて二つの部分行列を生成すると共に前記復調信号ベクトルに前記二つの部分行列と前記雑音標準偏差の逆数とを乗算して前記推定送信信号ベクトルを算出し外部出力する機能を備えた送信ベクトル推定部を装備する。そして、前述したユニタリ行列生成手段を、前記復調信号ベクトルの一部を内挿のためのベースポイントとし、前記復調信号ベクトルを用いて前記ベースポイントにおけるベース応答行列を算出するチャネル応答算出部(ベース応答算出部)と、前記拡張応答行列をQR分解してベースユニタリ行列を算出するQR分解部と、前記算出されたユニタリ行列を内挿処理して全ポイントの内挿ユニタリ行列を算出する内挿処理部とにより構成したことを特徴とする。
【0026】
ここで、前述した送信ベクトル推定部は、前記受信アンテナ数がNで送信アンテナ数がNのとき、前記ユニタリ行列の第1乃至第N行目で形成される部分行列をエルミート転置して成る第1行列と,前記ユニタリ行列の第〔N+1〕乃至第〔N+N〕行目で形成される第2行列とを算定する機能を有すると共に、前記復調信号ベクトルに前記第1行列,前記第2行列,および前記雑音標準偏差の逆数、の順に掛け算して前記推定送信信号ベクトルを算出する機能を具備した構成としてもよい。
【0027】
上記目的を達成するため、本発明に係る第2の発明(MIMOチャネル受信装置)では、MIMO−通信システムの一部を成すMIMOチャネル受信装置であって、受信される受信信号ベクトルを復調して復調信号ベクトルを生成する復調部と、前記復調信号ベクトルを等化して推定送信信号ベクトルを生成する前述したMMSE等化回路と、前記推定送信信号ベクトルを判定して判定送信信号ベクトルを生成し受信データとして出力する送信信号ベクトル判定部とを備える、という構成を採っている。
ここで、前述した復調部は、前記受信信号ベクトルをフーリエ変換して直交周波数分割多重復調するように構成してもよい。
【0028】
上記目的を達成するため、本発明に係る第3の発明(MIMOチャネル通信システム)では、送信信号ベクトルを入力し変調信号ベクトルを生成する送信装置と、前記変調信号ベクトルを受信信号ベクトルとして受信装置へ伝達するチャネルとを備え、前記受信装置を、前述したMIMOチャネル受信装置で構成したことを特徴とする。
ここで、前述した受信装置が備えているMMSE等化回路にあっては、前記ベースポイントにおけるベース応答行列の算出に際しては前記ベースポイントを周波数域で間引いて配置した構成としてもよい。又、前述した受信装置が備えているMMSE等化回路にあって、前記ベースポイントにおけるベース応答行列の算出に際しては、前記ベースポイントを時間的に間引いて配置した構成としてもよい。
【0029】
更に、本発明に係るMIMOチャネル通信システムでは、所定のチャネルを介して相互に通信可能に構成された複数の通信端末と、これら各通信端末の通信状態を管理する基地局とを備えたMIMOチャネル通信システムにあって、前記通信端末と基地局の少なくとも何れか一方が、前述したMIMOチャネル受信装置を備えた構成としてもよい。
【0030】
上記目的を達成するため、本発明に係る第4の発明(MMSE等化処理方法)では、MIMOチャネルを利用したOFDM通信システムに装備され、複数の受信アンテナ毎に設けられた復調部で各別に復調されたベースバンド信号を成分とする復調信号ベクトルを等化し、これによって推定送信信号ベクトルを生成するMMSE等化回路にあって、前記MIMOチャネルの有する特性を表して成るチャネル応答行列と,雑音標準偏差を単位行列に乗算して得られる行列とに基づいて拡張応答行列を形成すると共にこの拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を生成するユニタリ行列生成工程と、この工程で生成されたユニタリ行列と前記雑音標準偏差とを取り込む送信ベクトル推定工程とを備えている。そして、上述した送信ベクトル推定工程では、前記ユニタリ行列に基づいて二つの部分行列を生成し、前記復調信号ベクトルに前記二つの部分行列と前記雑音標準偏差の逆数を乗算して前記推定送信信号ベクトルを算出するように構成する。更に、上述したユニタリ行列生成工程を、前記復調信号ベクトルの一部を内挿するためのベースポイントとし前記復調信号ベクトルを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列を算出するチャネル応答算出工程と、前記拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を算出するQR分解工程と、この算出されたユニタリ行列を内挿処理して全ポイントの内挿ユニタリ行列を算出する内挿処理工程とを含む工程としたことを特徴とする。
【0031】
上記目的を達成するため、本発明に係る第5の発明(MIMOチャネル受信方法)では、MIMO−OFDM通信システムの一部を成す受信装置にあって、受信した受信データを出力する場合のMIMOチャネル受信方法において、前記受信データである受信信号ベクトルを復調して復調信号ベクトルを生成する復調工程と、前記復調信号ベクトルを等化して推定送信信号ベクトルを生成する前述したMMSE等化処理方法と、これにより生成された前記推定送信信号ベクトルを判定して判定送信信号ベクトルを生成し受信データとして出力する送信信号ベクトル判定工程とを備える、という構成を採っている。
【0032】
又、本発明に係る第6の発明(MIMOチャネル通信方法)では、送信信号ベクトルを受けて変調信号ベクトルを生成し出力する信号送信工程と、前記変調信号ベクトルを所定のチャネルを介して受信信号ベクトルとして受信する信号受信工程とを備え、この信号受信工程を、前述したMIMOチャネル受信方法によって実行するように構成したことを特徴とする。
【0033】
上記目的を達成するため、本発明に係る第7の発明(等化処理プログラム)では、MIMOチャネルを利用した通信システムに装備され、複数の受信アンテナ毎に設けられた復調部で各別に復調されたベースバンド信号を成分とする復調信号ベクトルを等化し、これによって推定送信信号ベクトルを生成するMMSE等化回路にあって、前述したMIMOチャネルの有する特性を表して成るチャネル応答行列と,雑音標準偏差を単位行列に乗算して得られる行列とに基づいて拡張応答行列を形成すると共にこの拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を生成するユニタリ行列生成機能と、このユニタリ行列生成機能が実行されて生成されるユニタリ行列と前記雑音標準偏差とを取り込む送信ベクトル推定機能とを有する。そして、前述した送信ベクトル推定機能を、前記ユニタリ行列に基づいて二つの部分行列を生成すると共に前記復調信号ベクトルに前記二つの部分行列と前記雑音標準偏差の逆数を乗算して前記推定送信信号ベクトルを算出する内容とする。更に、前述したユニタリ行列生成機能については、これを前記復調信号ベクトルの一部を内挿するためのベースポイントとし前記復調信号ベクトルを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列を算出するチャネル応答算出機能と、前記拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を算出するQR分解機能と、この算出されたユニタリ行列を内挿処理して全ポイントの内挿ユニタリ行列を算出する内挿処理機能とを含む内容とし、これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする。
【0034】
又、本発明に係る第8の発明(受信処理プログラム)は、チャネルを利用した通信システムの一部を成す受信装置にあって、受信した受信データを出力処理する機能を備えた受信処理プログラムにおいて、前述した受信データである受信信号ベクトルを復調して復調信号ベクトルを生成する復調処理機能、この復調された復調信号ベクトルを等化して推定送信信号ベクトルを生成する前述した等化処理プログラム、及びこれにより生成される前記推定送信信号ベクトルを判定して判定送信信号ベクトルを生成し受信データとして出力処理する送信信号ベクトル判定機能を備え、これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明は以上のように構成され機能するので、これによると、推定送信信号ベクトルの推定に際して従来必要とされていた上三角行列の内挿処理と逆行列演算処理とを使用することなく送信ベクトル推定部が推定送信信号ベクトルを算定するようにしたので、前述した上三角行列の内挿処理と逆行列演算処理が不要となり、これがため、少ない演算量に基づいたMMSE等化回路,等化処理方法,及び等化処理プログラム等を実現可能となり、更にこれを組み込んだ装置およびシステムにおける通信容量の増大を図り、装置の小型化、経済化、および省電力化を図ることができる、という従来にない優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図1ないし図2に基づいて説明する。
先ず最初に、本第1実施形態の中心的な内容(本発明の要部)を説明し、続いて具体的な構成およびその動作等について説明する。
【0037】
(MMSE等化処理の特徴)
最初に、MMSE等化処理の特徴について説明する。
このMMSE等化処理の特徴は、下記の数式9で表されるように、復調信号ベクトルyに、内挿ユニタリ行列Q,Qと、雑音標準偏差σの逆数を乗算することによって推定送信信号ベクトルsを求める点にある。
【0038】
ここで、数式9は、次のように導かれる。
即ち、拡張チャネル応答行列をQR分解して得られる拡張ユニタリ行列を、次の数式6に示すように、部分行列Q,Qに分けて表示する。ここで、Qの第1〜第N行から成る部分行列、Qの第〔N+1 〕〜第〔N+N〕行から成る部分行列である。
【0039】
【数6】

ここで、QRの関係と、数式6の関係から、
【数7】

の関係が成立し、したがって、σI=Qの関係が成り立つ。これから
【0040】
【数8】

の関係が導かれ、これを数式5の−1に適用すれば、次式9が求まる。
【0041】
【数9】

ここで、QはQのエルミート転置であり、Q,Qは、数式6に示すユニタリ行列のそれぞれ部分行列である。
【0042】
このMMSE等化回路は、上記数式9に示すように、復調ベクトルyと拡張チャネル行列から作られるユニタリ行列の部分行列Q,Qと、雑音標準偏差の逆数σ−1から、目的とする推定送信ベクトルsを算定する。
この式で特徴的なのは、従来技術(数式5)で必要であった拡張上三角行列の逆行列−1を求める演算処理が不要になり、替わってQR分解の過程で算出されるQ,Qを用いている点である。
【0043】
これにより、従来技術(数式5参照)において必要であった拡張上三角行列の逆行列−1を求める演算処理、及び多数キャリアに対する内挿処理が不要となり演算量が大幅に削減でき、一定のハードウェアで処理可能な通信容量の増大、更には装置の小型,経済化及び省電力化を図ることができる。
【0044】
次に、本発明の第1実施形態に係るMMSE等化回路について具体的に説明する。
本実施形態及び以下の実施形態においては、送信アンテナ数をNとし受信アンテナ数をNとし、チャネル応答の時間変動が無視できるMIMOチャネルを利用した通信システムにおけるMMSE等化回路を前提にしている。
【0045】
図1は、本MMSE等化回路の構成を示すブロック図である。
この等化回路10は、N個の送信アンテナと、N個の受信アンテナから成るMIMOチャネル(図示せず)において、チャネル時間変動が無視できるMIMOチャネルを利用した通信システムのMMSE等化に用いられる。
【0046】
即ち、本実施形態にあって、MMSE等化等化回路10は、MIMOチャネルを利用した通信システムに装備され、複数の受信アンテナ毎に設けられた復調部で各別に復調されたベースバンド信号を成分とする復調信号ベクトルを等化し、これによって推定送信信号ベクトルを生成する機能を備えている。
このMMSE等化回路10は、図1に示すように、前記MIMOチャネルの有する特性を表して成るチャネル応答行列と雑音標準偏差を単位行列に乗算して得られる行列とにより拡張応答行列を形成し且つ当該拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列(ベースユニタリ行列)を生成するユニタリ行列生成手段19を備えている。又、このユニタリ行列生成手段19で生成されたユニタリ行列と前記雑音標準偏差とを取り込む送信ベクトル推定部15を備えている。
【0047】
この送信ベクトル推定部15は、詳細は後述するが前記ユニタリ行列に基づいて二つの部分行列を生成する機能と、前記復調信号ベクトルに前記二つの部分行列と前記雑音標準偏差の逆数を乗算して前記推定送信信号ベクトルを算出する機能とを備えている。
これにより、推定送信信号ベクトルを算出に際し従来技術で必要とされていた上三角行列の内挿処理と逆行列演算処理が不要となり少ない演算量でMIMOチャネルを利用したMMSE等化回路の実現が可能となる。
【0048】
前述したユニタリ行列生成手段19は、前記復調信号ベクトルの一部を内挿のためのベースポイントとし、前記復調信号ベクトルを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列(ベース応答行列)を算出するチャネル応答算出部(ベース応答算出部)11と、前記拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列(ベースユニタリ行列)を算出するQR分解部13と、前記算出されたユニタリ行列を内挿処理して全ポイントの内挿ユニタリ行列を算出する内挿処理部14とにより構成されている。
ここで、上述したユニタリ行列生成手段19については、前記復調信号ベクトルを用いて前記チャネル応答行列を算出するチャネル応答算出部11と、前記拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を算出するQR分解部13とにより構成し、内挿処理部14を装備しない構成としてもよい。
【0049】
又、このユニタリ行列生成手段19には、前述した雑音標準偏差を算定する雑音推定部12が併設されている。この雑音推定部12は、前記復調信号ベクトルをチャネルの時間及び周波数相関情報に基づいて補正し且つ当該補正前後の前記復調信号ベクトルの差分を算定すると共に当該算定した差分を雑音とする雑音算定機能を備えている。
【0050】
次に、上記各構成要素及びその機能等について詳細に説明する。
【0051】
前述したベース応答算出部11は、復調信号ベクトルを用いてベースポイントにおけるチャネル応答行列であるN行N列のベース応答行列を求めるように機能する。このベース応答算出部11は、具体的には、復調信号ベクトルに基づいてベースポイントでのベース応答行列Hを算出する。
【0052】
即ち、このベース応答算出部11は、前記復調信号ベクトルと既知のパイロット信号レプリカとを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列(ベース応答行列)を算出する機能を備えている。ベース応答行列Hは、第j送信アンテナと第i受信アンテナ間でのチャネル応答hijを,その行列の第(i, j)成分にもつ。キャリア毎に異なる値をとることを明示するため、以下では(k番目のキャリアに関するものであることを明示するため)Hと表す。ベース応答行列Hの算出方式として、本実施形態では、次式で表されるような復調信号ベクトルと既知パイロット信号レプリカから算出している。
【0053】
【数10】

ここで、yk,n は、第〔n〕OFDMシンボルの第kキャリアに対する復調信号ベクトルであり、SはN行N列の既知パイロット信号レプリカ行列であり、Sの第〔i,j〕成分は第〔n+j−1〕OFDMシンボルの第i送信アンテナの第kキャリア成分である。Sは一般にユニタリ行列が用いられる。Bはベースポイントに対応するキャリアの集合を表しており、予め全キャリアから選択されたキャリアをベースポイントしていることを示している。
【0054】
雑音推定部12は、チャネルの時間および周波数相関情報を基に復調信号ベクトルを補正して補正前後の差分を雑音として雑音標準偏差σを推定する機能を備えている。即ち、この雑音推定部12は、チャネルの時間および周波数相関情報と復調信号ベクトルを受け、チャネルの時間および周波数相関情報を基に復調信号ベクトルを補正し、補正前後の差分を雑音として雑音標準偏差σを算定する。
本実施形態では、既知パイロット信号レプリカを用いる補正方式を用いている。具体的には、数式10に従い、復調信号ベクトルとパイロット信号レプリカを用いてチャネル応答を求め、その時間平均をとった時間平均チャネル応答にパイロット信号レプリカを掛けたものを補正復調信号ベクトルとする。
【0055】
QR分解部13は、前述した雑音標準偏差σとベース応答行列を受けてQR分解処理を行う。このQR分解部13は、雑音標準偏差σとベース応答行列を受け、次式に示すQR分解処理を行う。
【0056】
【数11】

ここで、QBは〔N+ N〕行N列のベースユニタリ行列である。σは雑音標準偏差である。INTはN行N列の単位行列、RはN行N列の上三角行列である。QR分解処理は,例えば、よく知られたGram−Schmidtの直交化法を用いて、拡張ベース応答行列の列ベクトルを直交化することによって実行できる。
【0057】
内挿処理部14は、ベースユニタリ行列を内挿処理して全キャリアにおける内挿ユニタリ行列を求めるように機能する。この内挿処理部14は、本実施形態では、内挿処理を適用する時間周波数範囲内の前記ベースポイント数よりも低い次数のローラン多項式で前記内挿ユニタリ行列の各要素を表現できるように、前記ベースユニタリ行列を内挿処理する構成としている。
この内挿処理部14は、具体的にはベースポイントにおけるベースユニタリ行列QBを内挿処理して、全キャリアにおける内挿ユニタリ行列Qを求める。本実施形態では、内挿処理の方法として、内挿ユニタリ行列Qの各要素が、ベースユニタリ行列QBを係数とし、ベースポイント数より低い次数のローラン(Laurent )多項式で表現できるように内挿処理を行うようにした。
【0058】
送信ベクトル推定部15は、前述した雑音標準偏差σと内挿ユニタリ行列と復調信号ベクトルとに基づいて推定送信信号ベクトルを算定する機能を備えている。
この送信ベクトル推定部15は、雑音標準偏差σ,内挿ユニタリ行列Q,復調信号ベクトルyk,n を受け、これに基づいて次式を用いて推定送信信号ベクトルを求め、これをMMSE等化回路10の出力となっている。
【0059】
【数12】

ここで、sk,n は、第〔n〕OFDMシンボル、第kキャリアの推定送信信号ベクトルであり、その第i成分は、第i送信アンテナに対応している。Qk,1 は、第kキャリアに対応する内挿ユニタリ行列Qの第1 〜第N行、Qk,2 は、内挿ユニタリ行列Qの第〔N+1〕〜第〔N+N〕行であり、次式の関係を持つQの部分行列である。
【0060】
【数13】

なお、チャネルが時間変動する場合は、ベースポイントをキャリア−OFDMシンボル平面上の特定の点に拡張することによって対応できる。また、本実施形態は、周波数−時間平面上の任意のポイントのチャネル応答が行列で表されるようなシステムに適用可能である。
【0061】
次に、上記MMSE等化回路10の動作を図2に基づいて説明する。
先ず、復調信号ベクトルyと既知パイロット信号レプリカから、ベース応答算出部11において、数式10で表されるようにベース応答行列を算出するベース応答算出工程が行なわれる(ステップS1001:ベース応答算出処理)。
【0062】
次に、この得られたベース応答行列Hと、後述する予め何らかの方法で準備されている雑音標準偏差σがQR分解部13へ供給されると、拡張ベース応答行列が構成され、更に、これをベースユニタリ行列と上三角行列の積に分解表示するQR分解工程が行なわれる(ステップS1002:QR分解処理)。
【0063】
続いて、ベースユニタリ行列をベースポイントにして、内挿処理部14で内挿ユニタリ行列が生成される内挿処理工程がなされる(ステップS1003:内挿処理)。
【0064】
最後に、内挿ユニタリ行列 [Qk,2 k,1 ] 、雑音標準偏差σから、数式12により推定送信信号ベクトルsを推定する送信ベクトル推定工程が行なわれ(ステップS1004:送信ベクトル推定処理)、MMSE等化された信号が出力される。
【0065】
ここで、雑音標準偏差σを予め準備する方法は、後述する実施形態2又は3にも示すように様々な方法がある。
本実施形態では、チャネルの時間および周波数相関情報と復調信号ベクトルを雑音推定部120で受けて、チャネルの時間および周波数相関情報を基に復調信号ベクトルを補正し、補正前後の差分を雑音として雑音標準偏差を算定する雑音推定工程を、少なくともQR分解工程の前に備えた構成になっている(ステップS1005:雑音推定処理)。
【0066】
ここで、上述したの各工程については、これに対応する各処理内容をプログラム化しコンピュータに実行させるように構成してもよい。
【0067】
本実施形態は、以上のように構成され動作するので、従来技術で必要とされた上三角行列の内挿処理と逆行列演算処理とが不要となり、少ない演算量でMIMO−OFDM方式のMMSE等化回路を実現可能にしている。これによって、ハードウェア性能を所与のものとすると、削減された演算処理機能を他へ使うことにより等化回路の通信容量の増大を図ることも可能であり、また素子の動作速度の低下に使えば、回路の小型・経済化、消費電力の削減等にも大きな効果を発揮する。
【0068】
尚、上記説明では、ベース応答算出部11及び雑音推定部12が、本MMSE等化回路10内に含まれるものとして説明して来た。実装する際には、これら各部は各別に本MMSE等化回路10の外に設けられていてもよい。ベース応答算出部11及び雑音推定部12の処理結果を等化回路10だけでなく受信装置の他の機能に共通に使用するような場合もあるからである。また、上記説明では一部のキャリアをベースポイントと扱ったが、例えば全キャリアについてキャリア応答行列が与えられるようなシステムにおいては内挿処理が不要となるにで、かかる場合には内挿処理14を省くこともできる。
【0069】
また、本実施形態においては、一部のキャリアをベースポイントとして取り扱い、その配置は予め決められているものとして説明してきた。しかしながら、チャネル応答が時間変動する場合には、内挿処理のベースポイントを時間軸上にも拡張したキャリア−OFDMシンボル平面(即ち周波数―時間平面)上の点に拡張して考えることによって、時間変動のあるチャネルにも対応できる。即ち、この場合には、内挿処理は周波数軸と時間軸の両方に関して行うこととなる。このとき本実施形態及び以下の実施形態の適用範囲は、周波数時間平面上の任意のポイントのチャネル応答行列が推定乃至算定されるあらゆるシステムを含むものに拡張可能である。
【0070】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明にかかるMMSE等化回路の第2の実施形態を、図3に基づいて説明する。
この図3に示す第2の実施形態においては、雑音推定部およびその推定方法が前述した第1の実施形態(図1〜図2)と異なる点に特徴を有する。
【0071】
この図3に示すMMSE等化回路20において、雑音推定部22は、ベース応答算出部11で生成されたベース応答行列と送信ベクトル推定部15で生成された推定送信信号ベクトルsに基づいて雑音標準偏差を推定し、これをQR分解部13と送信ベクトル推定部15へ供給する。具体的には、ベースポイントに対応する推定送信信号ベクトルsに最近接している送信信号ベクトルxを探索し、最近接送信信号ベクトルxと推定送信信号ベクトルsの差分を判定雑音とする。この判定雑音にベース応答行列を掛けてスケーリングを施し、雑音標準偏差を算定し、QR分解部13と送信ベクトル推定部15へ供給する構成となっている。
その他の構成およびその動作は、前述した第1実施形態と同一となっている。
【0072】
以上によって、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、少ない演算量でMIMO−OFDM方式のMMSE等化回路を実現することができ、これによって、等化回路ひいては受信装置の通信容量の増大、或いは、小型・経済化、消費電力の削減に貢献できる。
【0073】
尚、この第2の実施形態では、雑音の算定に、本等化回路20の等化動作に必要な推定送信信号ベクトルsとベース応答行列が使われるが、雑音標準偏差の算定にのみ用いられるチャネルの時間および周波数相関情報は使われない。この点は第1の実施形態に比べて簡易化されている。
【0074】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明にかかるMMSE等化回路の第3実施形態を図4に基づいて説明する。
この図4に示すMMSE等化回路30においては、前述した第1(又は第2)の実施形態に係る雑音推定部12(又は22)に代えて、予め与えられる雑音標準偏差を記憶した記憶部16が装備され、QR分解部13と送信ベクトル推定部15へ、その記憶した雑音標準偏差値を供給する構成となっている。雑音標準偏差の変動に対して受信特性の影響が無視できるような場合には、事前にシミュレーションにより求めた雑音標準偏差の典型値を、オフライン時に記憶部16へ設定する。
その他の構成及びその動作は前述した第1又は第2の実施形態と同一となっている。
【0075】
これにより、前述した第1又は第2の実施形態に比して、その雑音推定部12の構成を簡易化できる。したがって、第1及び第2の実施形態に係るMMSE等化回路10,20の効果である通信容量の増大、回路の小型・経済化、低消費電力化に加えて、本実施形態では、さらに雑音推定部の簡易化による回路全体の小型化・経済化、低消費電力化に貢献できる。
【0076】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態として、前述したMMSE等化回路10,20又は30を装備したMIMO−チャネル受信装置100について説明する。
図5にこれを示す。この図5に第4の実施形態にあって、MIMO−チャネル受信装置100は、復調部101,MMSE等化回路10,送信ベクトル判定部102を備えて構成されている。
【0077】
ここで、各アンテナでの受信信号をその成分とする受信信号ベクトルは、入力として復調部101へ供給される。この復調部101では、受信信号ベクトルを復調して復調信号ベクトルを生成し、MMSE等化回路10へ供給する。MIMO−OFDM通信システムの場合は、復調部101は、受信信号ベクトルを受信アンテナ成分毎にフーリエ変換、具体的には高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)し、OFDM( 直交周波数分割多重) 復調する。
【0078】
又、送信ベクトル判定部102は、推定送信信号ベクトルから送信信号ベクトルを判定し、これを受信データとして出力する機能を備えている。
【0079】
ここで、MMSE等化回路10は、復調信号ベクトルを等化して推定送信信号ベクトルを生成し、送信ベクトル判定部300へ供給する。この場合、受信装置の一構成要素として、前記第1乃至第3の実施形態に係るMMSE等化回路10に代えて、MMSE等化回路20又は30を装備してもよい。
【0080】
これにより、本受信装置100は、第1乃至第3の実施形態に係るMMSE等化回路100を用いているので、前述したように、本受信装置の通信容量の増大、受信装置の小型・経済化、低消費電力化の効果をそのまま発揮できる。
【0081】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態として、前述した受信装置100を装備したMIMO−チャネル通信システム200について説明する。
図6にこれを示す。この図6に示す第5の実施形態にあって、MIMO−チャネル通信システム200は、送信装置201,チャネル202,及び受信装置100を備えて構成されている。この内、送信装置201は、送信データを送信信号ベクトルに変換し、これを変調処理して変調信号ベクトルを生成する。生成した変調信号ベクトルはチャネル202に供給される。チャネル202では、変調信号ベクトルを受けて受信信号ベクトルとして受信装置100へ伝達される。
【0082】
この受信装置100は、前述した第4実施形態で説明したように、復調,MMSE等化および送信ベクトル判定処理を行い、受信データを出力する。この第5の実施形態における通信システム200は、第4の実施形態における受信装置100(図5参照)がその一構成要素として用いられている。
尚、本第5実施形態では、周波数時間平面上の任意のポイントのチャネル応答が行列で表されるあらゆるシステムに適用できる。その際、ベースポイントは、周波数時間平面上の任意の点に設定できるので、例えば、周波数領域で間引いて飛び飛びに配置したベースポイント、あるいは時間領域で間引いて飛び飛びに配置したベースポイントさらにこれら二つを組み合わせた周波数−時間領域の両方で間引いて配置したベースポイントを使うことができるので、環境に適合して最もふさわしいベースポイントを選択することが可能である。
【0083】
これにより、本実施形態におけるMIMO−チャネル通信システム200では、前述した受信装置100、或いはMMSE等化回路10をその内部に用いているので、前述したように、システム全体としても、その通信容量の増大、システムの小型・経済化、低消費電力化の効果をそのまま発揮できる。
【0084】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態にかかる通信システムについて説明する。
図7にこれを示す。この図7に示す第6実施形態にあって、MIMO−チャネル通信システム200は、チャネル202と複数の通信端末50〜50と、この各通信端末50〜50を管理する基地局400とを備えて構成されている。
【0085】
又、この図7には、一例として、通信端末1と通信端末N宛てのデータが、図示しない他の基地局等から基地局400に送信され、それらデータがチャネル202を介して通信端末1と通信端末Nに受信され、また、通信端末1と通信端末2からの送信データがチャネル202を介して、基地局400へ伝送され、さらに基地局400から図示しない相手基地局等へ送出される様子を示している。チャネル202は、基地局400と複数の通信端末50〜50で共有されており、また、基地局400及び通信端末50〜50の少なくとも一つが、第4の実施形態(図5に記載)に開示した受信装置100を含んで構成されている。
【0086】
これにより、本通信システムでも、前記受信装置100、あるいはMMSE等化回路10をその内部に用いているので、前述したように、システム全体としてもその通信容量の増大、システムの小型・経済化、低消費電力化の効果をそのまま発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1実施形態に係るMMSE等化回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に開示したMMSE等化回路の動作を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るMMSE等化回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るMMSE等化回路の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る受信回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図8】従来のMMSE等化回路の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0088】
10,20,30 MMSE等化回路
11 ベース応答算出部(チャネル応答算出部)
12,22 雑音推定部
13 QR分解部
14 内挿処理部
15 送信ベクトル推定部
16 記憶部
19 ユニタリ行列生成手段
50〜50 通信端末1〜通信端末N
100 受信装置(MIMOチャネル受信装置)
101 復調部
102 送信ベクトル判定部
200,300 MIMOチャネル通信システム
201 送信装置
202 チャネル
400 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMOチャネルを利用した通信システムに装備され、複数の受信アンテナ毎に設けられた復調部で各別に復調されたベースバンド信号を成分とする復調信号ベクトルを等化し、これによって推定送信信号ベクトルを生成するMMSE等化回路であって、
前記MIMOチャネルの有する特性を表して成るチャネル応答行列と,雑音標準偏差を単位行列に乗算して得られる行列とにより拡張応答行列を形成し且つ当該拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を生成するユニタリ行列生成手段を備え、前記ユニタリ行列に基づいて二つの部分行列を生成すると共に前記復調信号ベクトルに前記二つの部分行列と前記雑音標準偏差の逆数とを乗算して前記推定送信信号ベクトルを算出し外部出力する機能を備えた送信ベクトル推定部を装備し、
前記ユニタリ行列生成手段を、前記復調信号ベクトルの一部を内挿のためのベースポイントとし、前記復調信号ベクトルを用いて前記ベースポイントにおけるベース応答行列を算出するチャネル応答算出部と、前記拡張応答行列をQR分解してベースユニタリ行列を算出するQR分解部と、前記算出されたユニタリ行列を内挿処理して全ポイントの内挿ユニタリ行列を算出する内挿処理部とにより構成したことを特徴とするMMSE等化回路。
【請求項2】
前記請求項1に記載のMMSE等化回路において、
前記送信ベクトル推定部は、前記受信アンテナ数がNで送信アンテナ数がNのとき、前記ユニタリ行列の第1乃至第N行目で形成される部分行列をエルミート転置して成る第1行列と,前記ユニタリ行列の第〔N+1〕乃至第〔N+N〕行目で形成される第2行列とを算定する機能を有すると共に、前記復調信号ベクトルに前記第1行列,前記第2行列,および前記雑音標準偏差の逆数、の順に掛け算して前記推定送信信号ベクトルを算出する機能を具備したことを特徴とするMMSE等化回路。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のMMSE等化回路において、
前記ユニタリ行列生成手段が、予め算定された雑音標準偏差を記憶する雑音標準偏差記憶機能を備えていることを特徴としたMMSE等化回路。
【請求項4】
前記請求項1又は2に記載のMMSE等化回路において、
前記ユニタリ行列生成手段に、前記雑音標準偏差を算定する雑音推定部を併設すると共に、
この雑音推定部が、前記復調信号ベクトルをチャネルの時間及び周波数相関情報に基づいて補正し且つ当該補正前後の前記復調信号ベクトルの差分を算定すると共に当該算定した差分を雑音とする雑音算定機能を備えていることを特徴としたMMSE等化回路。
【請求項5】
前記請求項1又は2に記載のMMSE等化回路において、
前記ユニタリ行列生成手段に、前記雑音標準偏差を算定する雑音推定部を併設すると共に、
この雑音推定部が、前記推定送信信号ベクトルとこの推定送信信号ベクトルを判定した結果である判定送信信号ベクトルとの差分を算定しこれを判定雑音とする判定雑音算定機能と、この算定された判定雑音に前記チャネル応答算出部で生成されるベース応答行列を掛けてスケーリングして雑音標準偏差を算定する機能とを備えていることを特徴としたMMSE等化回路。
【請求項6】
前記請求項1又は2に記載のMMSE等化回路において、
前記内挿処理部は、内挿処理を適用する時間周波数範囲内の前記ベースポイント数よりも低い次数のローラン多項式で前記内挿ユニタリ行列の各要素を表現できるように、前記ベースユニタリ行列を内挿処理する構成としたことを特徴とするMMSE等化回路。
【請求項7】
前記請求項1又は2に記載のMMSE等化回路において、
前記チャネル応答算出部は、前記復調信号ベクトルと既知のパイロット信号レプリカとを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列を算出する機能を備えていることを特徴としたMMSE等化回路。
【請求項8】
MIMOチャネルを利用した通信システムの一部を成すMIMOチャネル受信装置であって、
受信される受信信号ベクトルを復調して復調信号ベクトルを生成する復調部と、前記復調信号ベクトルを等化して推定送信信号ベクトルを生成する前記請求項1乃至7の何れか一つに記載されたMMSE等化回路と、前記推定送信信号ベクトルを判定して判定送信信号ベクトルを生成し受信データとして出力する送信信号ベクトル判定部とを備えていることを特徴としたMIMOチャネル受信装置。
【請求項9】
前記請求項8に記載のMIMOチャネル受信装置において、
前記復調部は、前記受信信号ベクトルをフーリエ変換して直交周波数分割多重復調するように構成されていることを特徴としたMIMOチャネル受信装置。
【請求項10】
送信信号ベクトルを入力し変調信号ベクトルを生成する送信装置と、前記変調信号ベクトルを受信信号ベクトルとして受信装置へ伝達するチャネルとを備え、
前記受信装置を、前記請求項8又は9に記載のMIMOチャネル受信装置で構成したことを特徴とするMIMOチャネル通信システム。
【請求項11】
前記請求項10に記載のMIMOチャネル通信システムにおいて、
前記MIMOチャネル受信装置が備えているMMSE等化回路にあって、前記ベースポイントにおけるベース応答行列の算出に際しては、前記ベースポイントを周波数域で間引いて配置したことを特徴とするMIMOチャネル通信システム。
【請求項12】
前記請求項10に記載のMIMOチャネル通信システムにおいて、
前記受信装置が備えているMMSE等化回路にあって、前記ベースポイントにおけるベース応答行列の算出に際しては、前記ベースポイントを時間的に間引いて配置したことを特徴とするMIMOチャネル通信システム。
【請求項13】
所定のチャネルを介して相互に通信可能に構成された複数の通信端末と、これら各通信端末の通信状態を管理する基地局とを備えたMIMOチャネル通信システムにおいて、
前記通信端末と基地局の少なくとも何れか一方が、前記請求項8又は9に記載の受信装置を備えていることを特徴としたMIMOチャネル通信システム。
【請求項14】
前記請求項8又は9に記載のMIMOチャネル受信装置を装備した通信端末。
【請求項15】
前記請求項8又は9に記載のMIMOチャネル受信装置を装備した基地局。
【請求項16】
MIMOチャネルを利用したOFDM通信システムに装備され、複数の受信アンテナ毎に設けられた復調部で各別に復調されたベースバンド信号を成分とする復調信号ベクトルを等化し、これによって推定送信信号ベクトルを生成するMMSE等化回路にあって、
前記MIMOチャネルの有する特性を表して成るチャネル応答行列と,雑音標準偏差を単位行列に乗算して得られる行列とに基づいて拡張応答行列を形成すると共にこの拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を生成するユニタリ行列生成工程と、この工程で生成されたユニタリ行列と前記雑音標準偏差とを取り込む送信ベクトル推定工程とを備え、
この送信ベクトル推定工程では、前記ユニタリ行列に基づいて二つの部分行列を生成し、前記復調信号ベクトルに前記二つの部分行列と前記雑音標準偏差の逆数を乗算して前記推定送信信号ベクトルを算出するように構成し、
前記ユニタリ行列生成工程を、前記復調信号ベクトルの一部を内挿するためのベースポイントとし前記復調信号ベクトルを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列を算出するチャネル応答算出工程と、前記拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を算出するQR分解工程と、この算出されたユニタリ行列を内挿処理して全ポイントの内挿ユニタリ行列を算出する内挿処理工程とを含む工程としたことを特徴とするMMSE等化処理方法。

【請求項17】
前記請求項16に記載のMMSE等化処理方法において、
前記送信ベクトル推定工程では、前記受信アンテナ数がNで送信アンテナ数がNのとき、前記ユニタリ行列の第1乃至第N行目で形成される部分行列をエルミート転置した第1行列と、前記ユニタリ行列の第〔N+1〕乃至第〔N+N〕行目で形成される第2行列とを算定し、前記復調信号ベクトルに前記第1行列、前記第2行列、前記雑音標準偏差の逆数の順に掛け算して前記推定送信信号ベクトルを算出するようにしたことを特徴とするMMSE等化処理方法。
【請求項18】
前記請求項16又は17に記載のMMSE等化処理方法において、
前記ユニタリ行列生成手段に、前記雑音標準偏差を推定する雑音推定工程を併設すると共に、
この雑音推定工程では、前記復調信号ベクトルをチャネルの時間及び周波数相関情報に基づいて補正し且つ当該補正前後の前記復調信号ベクトルの差分を算定しこれを雑音とするようにしたことを特徴とするMMSE等化処理方法。
【請求項19】
前記請求項16又は17に記載のMMSE等化処理方法において、
前記ユニタリ行列生成工程に、前記雑音標準偏差を推定する雑音推定工程を併設すると共に、
この雑音推定工程では、前記推定送信信号ベクトルと,この推定送信信号ベクトルを判定した結果である判定送信信号ベクトルとの差分を算定しこれを判定雑音とし、更にこの算定された判定雑音に前記チャネル応答算出部で生成されるチャネル応答行列を掛けてスケーリングして雑音標準偏差を算定するようにしたことを特徴とするMMSE等化処理方法。
【請求項20】
前記請求項16又は17に記載のMMSE等化処理方法において、
前記内挿処理工程では、内挿処理を適用する時間周波数範囲内の前記ベースポイント数よりも低い次数のローラン多項式で前記内挿ユニタリ行列の各要素を表現できるように、前記ベースユニタリ行列を内挿処理する構成としたことを特徴とするMMSE等化処理方法。
【請求項21】
前記請求項16又は17に記載のMMSE等化処理方法において、
前記チャネル応答算出工程を、前記復調信号ベクトルと既知のパイロット信号レプリカとを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列を算出するように構成したことを特徴とするMMSE等化処理方法。
【請求項22】
MIMOチャネルを利用した通信システムの一部を成す受信装置にあって、受信した受信データを出力する場合のMIMOチャネル受信方法において、
前記受信データである受信信号ベクトルを復調して復調信号ベクトルを生成する復調工程と、前記復調信号ベクトルを等化して推定送信信号ベクトルを生成する前記請求項16乃至21の何れか一つに記載されたMMSE等化処理方法と、これにより生成された前記推定送信信号ベクトルを判定して判定送信信号ベクトルを生成し受信データとして出力する送信信号ベクトル判定工程とを備えていることを特徴としたMIMOチャネル受信方法。
【請求項23】
前記請求項22に記載のMIMOチャネル受信方法において、
前記復調工程を、前記受信信号ベクトルをフーリエ変換して直交周波数分割多重復調するように構成したことを特徴とするMIMOチャネル受信方法。
【請求項24】
送信信号ベクトルを受けて変調信号ベクトルを生成し出力する信号送信工程と、前記変調信号ベクトルを所定のチャネルを介して受信信号ベクトルとして受信する信号受信工程とを備え、
この信号受信工程を、前記請求項22又は23に記載の受信方法によって実行するように構成したことを特徴とするMIMOチャネル通信方法。
【請求項25】
MIMOチャネルを利用した通信システムに装備され、複数の受信アンテナ毎に設けられた復調部で各別に復調されたベースバンド信号を成分とする復調信号ベクトルを等化し、これによって推定送信信号ベクトルを生成するMMSE等化回路にあって、
前記MIMOチャネルの有する特性を表して成るチャネル応答行列と雑音標準偏差を単位行列に乗算して得られる行列とに基づいて拡張応答行列を形成し且つ該拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を生成するユニタリ行列生成機能、
このユニタリ行列生成機能が実行されて生成されるユニタリ行列と前記雑音標準偏差とを取り込む送信ベクトル推定機能とを有し、
前記送信ベクトル推定機能を、前記ユニタリ行列に基づいて二つの部分行列を生成すると共に前記復調信号ベクトルに前記二つの部分行列と前記雑音標準偏差の逆数を乗算して前記推定送信信号ベクトルを算出する内容とし、
前記ユニタリ行列生成機能を、前記復調信号ベクトルの一部を内挿するためのベースポイントとし前記復調信号ベクトルを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列を算出するチャネル応答算出機能と、前記拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を算出するQR分解工程と、この算出されたユニタリ行列を内挿処理して全ポイントの内挿ユニタリ行列を算出する内挿処理機能とを含む内容とし、
これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする等化処理プログラム。

【請求項26】
前記請求項25に記載の等化処理プログラムにおいて、
前記送信ベクトル推定機能では、前記受信アンテナ数がNで送信アンテナ数がNのとき、前記ユニタリ行列の第1乃至第N行目で形成される部分行列をエルミート転置した第1行列と、前記ユニタリ行列の第〔N+1〕乃至第〔N+N〕行目で形成される第2行列とを算定し、前記復調信号ベクトルに前記第1行列、前記第2行列、前記雑音標準偏差の逆数の順に掛け算して前記推定送信信号ベクトルを算出する構成とし、
これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする等化処理プログラム。
【請求項27】
前記請求項25又は26に記載の等化処理プログラムにおいて、
前記ユニタリ行列生成機能を、前記復調信号ベクトルを用いて前記チャネル応答行列を算出するチャネル応答算出機能と、前記拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を算出するQR分解機能とを含む内容とし、
これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする等化処理プログラム。
【請求項28】
前記請求項25又は26に記載の等化処理プログラムにおいて、
前記ユニタリ行列生成機能を、各復調信号ベクトルの一部を内挿のためのベースポイントとし前記復調信号ベクトルを用いて前記ベースポイントにおけるベース応答行列を算出するチャネル応答算出機能と、前記拡張応答行列をQR分解してユニタリ行列を算出するQR分解機能と、前記算出されたユニタリ行列を内挿処理して全ポイントの内挿ユニタリ行列を求める内挿処理機能とを含む内容とし、
これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする等化処理プログラム。
【請求項29】
前記請求項25又は26に記載の等化処理プログラムにおいて、
前記ユニタリ行列生成機能に、前記雑音標準偏差を推定する雑音推定機能を併設すると共に、
この雑音推定機能を、前記復調信号ベクトルをチャネルの時間及び周波数相関情報に基づいて補正し且つ当該補正前後の前記復調信号ベクトルの差分を算定してこれを雑音とするように構成し、
これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする等化処理プログラム。
【請求項30】
前記請求項25又は26に記載の等化処理プログラムにおいて、
前記ユニタリ行列生成機能に、前記雑音標準偏差を推定する雑音推定機能を併設すると共に、
この雑音推定機能を、前記推定送信信号ベクトルと,この推定送信信号ベクトルを判定した結果である判定送信信号ベクトルとの差分を算定しこれを判定雑音とし、更にこの算定された判定雑音に前記チャネル応答算出部で生成されるチャネル応答行列を掛けてスケーリングして雑音標準偏差を算定するように構成し、
これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする等化処理プログラム。
【請求項31】
前記請求項25又は26に記載の等化処理プログラムにおいて、
前記内挿処理機能を、内挿処理を適用する時間周波数範囲内の前記ベースポイント数よりも低い次数のローラン多項式で前記内挿ユニタリ行列の各要素を表現できるように前記ベースユニタリ行列を内挿処理する構成とし、
これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする等化処理プログラム。
【請求項32】
前記請求項25又は26に記載の等化処理プログラムにおいて、
前記チャネル応答算出機能を、前記復調信号ベクトルと既知のパイロット信号レプリカとを用いて前記ベースポイントにおけるチャネル応答行列を算出するように構成し、
これをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする等化処理プログラム。
【請求項33】
MIMOチャネルを利用した通信システムの一部を成す受信装置にあって、受信した受信データを出力処理する機能を備えた受信処理プログラムにおいて、
前記受信データである受信信号ベクトルを復調して復調信号ベクトルを生成する復調処理機能、この生成された復調信号ベクトルを等化して推定送信信号ベクトルを生成する前記請求項25乃至32の何れか一つに記載された等化処理プログラム、及びこれにより生成される前記推定送信信号ベクトルを判定して判定送信信号ベクトルを生成し受信データとして出力処理する送信信号ベクトル判定機能を備え、
これらをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする受信処理プログラム。
【請求項34】
前記請求項33に記載の受信処理プログラムにおいて、
前記復調機能を、前記受信信号ベクトルをフーリエ変換して直交周波数分割多重復調するように構成し、
これをコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする受信処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−283393(P2008−283393A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124905(P2007−124905)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】