説明

N−ヒドロキシアミド誘導体およびその使用

本発明は、式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体、及びその使用、特に、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、癌、呼吸器系疾患、ならびに線維症、例えば多発性硬化症、骨関節症や慢性関節リウマチなどの関節炎、肺気腫、乾癬、閉塞性肺疾患、および線維症の治療および/または予防のための使用、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体、その医薬組成物、その調製方法に関し、また自己免疫疾患および/または炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、癌、呼吸器系疾患、ならびに線維症の治療および/または予防のためにそれらを使用することに関する。具体的には本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼの活性または機能の調節、特に阻害のためのN−ヒドロキシアミド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロプロテイナーゼ類は、作用部位でのそれらの金属イオン(亜鉛)への依存性にちなんで命名されたプロテイナーゼ(酵素)のスーパーファミリーである。
【0003】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、およびエラスチンなどの組織またはマトリックスの様々な成分を加水分解するそれらの能力を通じて結合組織または細胞外マトリックスの破壊を触媒することを主要な生物学的機能の一つとして有するメタロプロテイナーゼのサブファミリーを形成する。
【0004】
マトリックスメタロプロテイナーゼファミリーはそれらの機能および基質によりさらに分けられ(Visse等の論文、2003, Circ. Res., 92:827-839)、それらはコラゲナーゼ(MMP−1、MMP−8、MMP−13、およびMMP−18)、ゼラチナーゼ(MMP−2およびMMP−9)、ストメライシン(MMP−3、MMP−10、およびMMP−11)、膜型MMP(MT−MMP−1からMT−MMP−6、およびMMP−14、MMP−15、MMP−16、MMP−17、MMP−24、およびMMP−25)、マトリライシン(MMP−7およびMMP−26)、および他の分類されていないMMP、例えばメタロエラスターゼ(MMP−12)、エナメライシン(MMP−20)、エピライシン(MMP−28)、MMP−19、MMP−22、およびMMP−23を含む。
【0005】
結合組織を分解するそれらの役割に加えて、MMPはTNF−αの生合成に関与し、また翻訳後タンパク質分解過程または生物学的に重要な膜タンパク質のシェディングに関与する(Hooper等の論文、1997, Biochem J., 321:265-279)。MMPは、例えば悪性の病変部の局所的増殖および広がりに寄与することから、抗腫瘍薬開発のための標的となってきた(Fingleton等の論文、2003, Expert Opin. Ther Targets, 7(3):385-397)。関節炎のような炎症性疾患(Clark等の論文、2003, Expert Opin. Ther Targets, 7(1):19-34)や、肺気腫などの呼吸性疾患や、動脈硬化(Galis等の論文、2002, Circ. Res., 90:251-262)や、退行性神経系疾患、多発性硬化症などの神経疾患(Leppert等の論文、2001, Brain Res. Rev., 36:249-257)や、歯周炎(Ingman等の論文、1996, J. Clin. Periodontal., 23:1127-1132)や、早期陣痛(Makrakis等の論文、2003, J. Matern Fetal & Neonatal Medicine, 14(3):170-6)や、創傷治癒などの障害が、MMPの発現および/または活動性と関連があることが実証されている。
【0006】
様々なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(MMPI)が開発されている(Skiles等の論文、2001, Current Medicinal Chemistry, 8, 425-474、Henrotin等の論文、2002, Expert Opin. Ther. Patents, 12(1):29-43)。しかしながら多くのMMPIは、用量を制限する副作用として、筋骨格症候群(腱炎、線維増殖症、筋痛症(mylasia)、関節痛(arthralasia))を示す。MMP−1またはMMP−14の阻害がこれらの結果の原因である可能性があると提唱されている。
【0007】
したがって明確な特異性プロフィールを有するマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を開発する必要性が増している。
【0008】
MMP−13阻害剤(Skotnicki等の論文、2003, Current Opinion in Drug Discovery and Development, 6(5):742-759)、MMP−12阻害剤(Expert. Opin. Ther. Patents, 2004, 14(11):1637-1640)、MMP−2およびMMP−9阻害剤(Wada等の論文、2002, J. Med. Chem. 45:219-232)を含めた、特にMMP−1に対する特異的阻害剤が報告されている。
【0009】
幾つかの広く分布している疾患においてメタロプロテイナーゼ経路の関連性が高いことは、MMP類、特にMMP−12の選択的阻害剤を含めた阻害剤の開発の必要性を強調している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、卒中、癌および悪性腫瘍、呼吸器系疾患、代謝異常、アレルギーおよび皮膚病、早期陣痛、子宮内膜症、ならびに線維症の治療および/または予防に適した物質を提供することである。
【0011】
さらに本発明の目的は、多発性硬化症、骨関節症や慢性関節リウマチなどの関節炎、肺気腫、乾癬、閉塞性肺疾患、および線維症の治療および/または予防に適した物質を提供することである。
【0012】
マトリックスメタロプロテイナーゼの活性または機能、具体的には哺乳動物、特にヒトにおけるゼラチナーゼおよびエラスターゼの活性または機能を調節、特に阻害することができる化合物を提供することが、特に本発明の目的である。
【0013】
さらに本発明の目的は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、卒中、癌および悪性腫瘍、呼吸器系疾患、代謝異常、アレルギーおよび皮膚病、早期陣痛、子宮内膜症、ならびに線維症を仲介する、かつ/またはこれらから選択される障害の治療用の新しいカテゴリーの医薬製剤を提供することである。
【0014】
さらに本発明の目的は、本発明による化合物を製造するための方法を提供することである。
【0015】
最後に本発明の目的は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、卒中、癌および悪性腫瘍、呼吸器系疾患、代謝異常、アレルギーおよび皮膚病、早期陣痛、子宮内膜症、ならびに線維症から選択される障害の治療および/または予防のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第一の態様において本発明は、式(I)
【化1】

(式中、A、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびnは下記の詳細な説明において定義する)のN−ヒドロキシアミド誘導体を提供する。
【0017】
第二の態様において本発明は、薬剤として使用するための式(I)による化合物を提供する。
【0018】
第三の態様において本発明は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、卒中、癌および悪性腫瘍、呼吸器系疾患、代謝異常、アレルギーおよび皮膚病、早期陣痛、子宮内膜症、ならびに線維症から選択される障害の治療用の医薬組成物の調製のための式(I)による化合物の使用法を提供する。
【0019】
第四の態様において本発明は、式(I)による少なくとも1種類の化合物と、その医薬として許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0020】
第五の態様において本発明は、それを必要とする患者に式(I)による化合物を投与することを含む治療方法を提供する。
【0021】
第六の態様において本発明は、式(I)による化合物の合成方法を提供する。
【0022】
第七の態様において本発明は、式(II)
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびnは上記と同様に定義され、またPG1はHか、あるいはベンジル、t−ブチル、THP、TMS、TBSなどの保護基である)による化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次の段落は、本発明による化合物を構成する様々な化学的部分の定義を提供し、またこれらは別にはっきりと設定される定義がより広い定義を与えない限り、本明細書および特許請求の範囲を通じて統一的に適用されるものである。
【0024】
用語「MMP」は「マトリックスメタロプロテイナーゼ」を指す。MMPの最近の概説についてはVisse等の論文(2003、前記)、Fingleton等の論文(2003、前記)、Clark等の論文(2003、前記)、およびDoherty等の論文、2002, Expert Opinion Therapeutic Patents 12(5):665-707を参照されたい。
【0025】
このようなMMPの実例は、これらに限定されないが、
コラゲナーゼ類(コラーゲンから作られた組織の破壊、例えば慢性関節リウマチおよび骨関節症に関係する疾患と一般に関連がある):
MMP−1(コラゲナーゼ1または繊維芽細胞コラゲナーゼとしてもまた知られる)は、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、ゼラチン、プロテオグリカンを基質とする。この酵素の過剰発現は、肺気腫、角質増殖症、およびアテローム性動脈硬化症と関連があると考えられ、これは乳頭状癌中でのみ過剰発現する。
【0026】
MMP−8(コラゲナーゼ2または好中性コラゲナーゼとしてもまた知られる)は、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンIX、ゼラチンを基質とし、その過剰発現は非治癒性慢性潰瘍につながる可能性がある。
【0027】
MMP−13(コラゲナーゼ3としてもまた知られる)は、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、コラーゲンX、コラーゲンXIV、フィブロネクチン、ゼラチンを基質とする。これは乳癌中でのみ過剰発現し、また慢性関節リウマチに関与することが最近確認された。
【0028】
ストロメライシン類:
MMP−3(ストロメライシン1としてもまた知られる)は、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンIX、コラーゲンX、ラニニン(larninin)、ナイドジェン(nidogen)を基質とし、その過剰発現はアテローム性動脈硬化症、動脈瘤、および再狭窄に関与すると考えられる。
【0029】
ゼラチナーゼ類−その阻害は癌、具体的には浸潤および転移に対して好ましい効果を発揮すると考えられえる。
【0030】
MMP−2(ゼラチナーゼA、72 kDaゼラチナーゼ、基底膜コラゲナーゼ、またはプロテオグリカナーゼとしてもまた知られる)は、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンX、コラーゲンXI、コラーゲンXIV、エラスチン、フィブロネクチン、ゼラチン、ナイドジェンを基質とし、コラーゲンIV型に対する特異性を通じて腫瘍の進行に関連があると考えられ(高い発現が充実性腫瘍中に観察され、成長させる、浸潤する、新血管を創出する、また転移させるそれらの能力に関連すると考えられる)、また急性の肺の炎症および呼吸窮迫症候群(Krishna等の論文、2004, Expert Opin. Invest. Drugs, 13(3):255-267)に関与すると考えられる。
【0031】
MMP−9(ゼラチナーゼBまたは92 kDaゼラチナーゼとしてもまた知られる)は、コラーゲンI、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンX、コラーゲンXIV、エラスチン、フィブロネクチン、ゼラチン、ナイドジェンを基質とする。この酵素は、コラーゲンIV型に対する特異性を通じて腫瘍の進行に関連があり、大気汚染物質、アレルゲン、およびウィルスなどの外因性要因に応じて好酸球によって放出され、多発性硬化症(Opdenakker等著、2003, The Lancet Neurology, 2, 747-756)および喘息における炎症反応に関与し、また急性の肺の炎症、呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および/または喘息(Krishna等の論文(2004、前記))に関与すると考えられる。MMP−9はまた、卒中(Horstmann等の論文、Stroke, 34(9):2165-70)に関与すると考えられる。
【0032】
分類されていないMMP類:
MMP−12(メタロエラスターゼ、ヒトマクロファージエラスターゼ、またはHMEとしてもまた知られる)は、フィブロネクチン、ラルニニン(larninin)を基質とし、腫瘍成長の抑制および多発性硬化症などの炎症(Vos等の論文、2003, Journal of Neuroimmunology, 138, 106-114)の調節の役割を果たし、また肺気腫、COPD(Belvisi等の論文、2003, Inflamm. Res. 52:95-100)において、またアテローム性動脈硬化、動脈瘤、および再狭窄において病理学的役割を果たすと考えられる。
【0033】
語句「MMPの関連する障害」は、本発明により治療可能な障害を意味し、またこれは少なくとも1種類のMMPの発現および/または活性をそのような障害の原因とは関係なく低下させることを必要とするあらゆる障害を包含することを意味する。そのような障害には、例えば不適切な細胞外マトリックス(ECM)の分解によってひき起されるものが挙げられる。
【0034】
このようなMMPに関連する障害の例は、これらに限定されないが、乳癌および充実性腫瘍などの癌と、例えば炎症性腸疾患および神経炎症、例えば多発性硬化症などの炎症性疾患と、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、喘息、急性肺外傷、および呼吸窮迫症候群などの肺疾患と、歯周病および歯内炎などの歯の疾病と、骨関節症および慢性関節リウマチなどの関節および骨疾患と、肝線維症、肝硬変、および慢性肝疾患などの肝疾患と、肺線維症、膵炎、狼瘡、糸球体硬化症、全身硬化性皮膚線維症、放射後発生性線維症、および嚢胞性線維症などの線維性疾患と、大動脈瘤、アテローム性動脈硬化、高血圧症、心筋症、および心筋梗塞などの血管の病変と、糖尿病性網膜症、乾性眼症候群、黄斑変性、および角膜潰瘍などの眼科学的疾患と、筋萎縮性側索硬化症などの中枢神経系の変性疾患である。
【0035】
「C1-C6アルキル」は、1から6個の炭素原子を有する一価のアルキル基を指す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシルなどの基によって例示される。類推して「C1-C12アルキル」は、1から12個の炭素原子を有する一価のアルキル基を指し、これには「C1-C6アルキル」基、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカノイル、ウンデカノイル、およびドデカノイル基が挙げられ、また「C1-C10アルキル」は、1から10個の炭素原子を有する一価のアルキル基を指し、「C1-C8アルキル」は、1から8個の炭素原子を有する一価のアルキル基を指し、「C1-C5アルキル」は、1から5個の炭素原子を有する一価のアルキル基を指す。
【0036】
「ヘテロアルキル」は、少なくとも1個の炭素がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子によって置き換えられたC1-C12アルキル、好ましくはC1-C6アルキルを指し、これには2−メトキシエチルが挙げられる。
【0037】
「アリール」は、単環(例えばフェニル)または多縮合環(例えばナフチル)を有する6から14個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環基を指す。アリールには、フェニル、ナフチル、フェナントレニルなどが挙げられる。
【0038】
「C1-C6アルキルアリール」は、C1-C6アルキル置換基を有するアリール基を指し、メチルフェニル、エチルフェニルなどが挙げられる。
【0039】
「アリールC1-C6アルキル」は、アリール置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、ベンジルなどが挙げられる。
【0040】
「ヘテロアリール」は、単環式へテロ芳香族基、あるいは二環式または三環式縮合環へテロ芳香族基を指す。へテロ芳香族基の特定の例には、任意に置換された、ピリジル、ピロリル、ピリミジル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、1, 2, 3−トリアゾリル、1, 2, 4−トリアゾリル、1, 2, 3−オキサジアゾリル、1, 2, 4−オキサジアゾリル、1, 2, 5−オキサジアゾリル、1, 3, 4−オキサジアゾリル、1, 3, 4−トリアジニル、1, 2, 3−トリアジニル、ベンゾフリル、[2, 3−ジヒドロ]ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イソベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、ベンゾイミダゾリル、イミダゾ[1, 2−a]ピリジル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリジニル、キナゾリニル、フタラジニル、キノキサリニル、シンノリニル、ナフチリジニル、ピリド[3, 4−b]ピリジル、ピリド[3, 2−b]ピリジル、ピリド[4, 3−b]ピリジル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、1, 2, 3, 4−テトラヒドロキノリル、1, 2, 3, 4−テトラヒドロイソキノリル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、キサンテニル、またはベンゾキノリルが挙げられる。
【0041】
「C1-C6アルキルヘテロアリール」は、C1-C6アルキル置換基を有するヘテロアリール基を指し、メチルフリルなどが挙げられる。
【0042】
「ヘテロアリールC1-C6アルキル」は、ヘテロアリール置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、フリルメチルなどが挙げられる。
【0043】
「C2-C6アルケニル」は、好ましくは2から6個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1または2個のアルケニル不飽和の部位を有するアルケニル基を指す。好ましいアルケニル基には、エテニル(−CH=CH2)、n−2−プロペニル(アリル、−CH2CH=CH2)などが挙げられる。
【0044】
「C2-C6アルケニルアリール」は、C2-C6アルケニル置換基を有するアリール基を指し、ビニルフェニルなどが挙げられる。
【0045】
「アリールC2-C6アルケニル」は、アリール置換基を有するC2-C6アルケニル基を指し、フェニルビニルなどが挙げられる。
【0046】
「C2-C6アルケニルへテロアリール」は、C2-C6アルケニル置換基を有するへテロアリール基を指し、ビニルピリジニルなどなどが挙げられる。
【0047】
「へテロアリールC2-C6アルケニル」は、へテロアリール置換基を有するC2-C6アルケニル基を指し、ピリジニルビニルなどが挙げられる。
【0048】
「C2-C6アルキニル」は、好ましくは2から6個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1-2個のアルキニル不飽和の部位を有するアルキニル基を指し、好ましいアルキニル基には、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CH2C≡CH)などが挙げられる。
【0049】
「C3-C8シクロアルキル」は、単環(例えばシクロヘキシル)または多縮合環(例えばノルボルニル)を有する3から8個の炭素原子の飽和炭素環基を指す。C3-C8シクロアルキルには、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニルなどが挙げられる。
【0050】
「ヘテロシクロアルキル」は、3個までの炭素原子がO、S、NR(Rは水素またはメチルと定義する)からなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられる、上記定義によるC3-C8シクロアルキル基を指す。ヘテロシクロアルキルには、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0051】
「C1-C6アルキルシクロアルキル」は、C1-C6アルキル置換基を有するC3-C8シクロアルキル基を指し、メチルシクロフェニルなどが挙げられる。
【0052】
「シクロアルキルC1-C6アルキル」は、C3-C8シクロアルキル置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、3−シクロペンチルプロピルなどが挙げられる。
【0053】
「C1-C6アルキルへテロシクロアルキル」は、C1-C6アルキル置換基を有するへテロシクロアルキル基を指し、1−メチルピペラジンなどが挙げられる。
【0054】
「へテロシクロアルキルC1-C6アルキル」は、へテロシクロアルキル置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、4−メチルピペリジルなどが挙げられる。
【0055】
「カルボキシ」は、基−C(O)OHを指す。
【0056】
「カルボキシC1-C6アルキル」は、カルボキシ置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−カルボキシエチルなどが挙げられる。
【0057】
「アシル」は、基−C(O)Rを指し、式中Rには「C1-C12アルキル」、好ましくは「C1-C6アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリールC1-C6アルキル」、「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「C3-C8シクロアルキルC1-C6アルキル」、または「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」が含まれる。
【0058】
「アシルC1-C6アルキル」は、アシル置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、アセチル、2−アセチルエチルなどが挙げられる。
【0059】
「アシルアリール」は、アシル置換基を有するアリール基を指し、2−アセチルフェニルなどが挙げられる。
【0060】
「アシルオキシ」は、基−OC(O)Rを指し、式中RにはH、「C1-C6アルキル」、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」が含まれる。
「アシルオキシC1-C6アルキル」は、アシルオキシ置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、プロピオン酸エチルエステルなどが挙げられる。
【0061】
「アルコキシ」は、基−O−Rを指し、式中Rには「C1-C6アルキル」または「アリール」または「ヘテロアリール」または「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」が含まれる。好ましいアルコキシ基には、例えばメトキシ、エトキシ、フェノキシなどが挙げられる。
【0062】
「アルコキシC1-C6アルキル」は、C1-C6アルキル置換基を有するアルコキシ基を指し、メトキシ、メトキシエチルなどが挙げられる。
【0063】
「アルコキシカルボニル」は、基−C(O)ORを指し、式中RにはH、「C1-C6アルキル」または「アリール」または「ヘテロアリール」または「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアルキル」が含まれる。
【0064】
「アルコキシカルボニルC1-C6アルキル」は、アルコキシカルボニル置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(ベンジルオキシカルボニル)エチルなどが挙げられる。
「アミノカルボニル」は、基−C(O)NRR’を指し、式中R、R’には、それぞれ独立して水素またはC1-C6アルキルまたはアリールまたはヘテロアリールまたは「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」が含まれる。これにはN−フェニルホルムアミドが挙げられる。
【0065】
「アミノカルボニルC1-C6アルキル」は、アミノカルボニル置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(ジメチルアミノカルボニル)エチル、N−エチルアセトアミド、N, N−ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0066】
「アシルアミノ」は、基−NRC(O)R’を指し、式中R、R’は、それぞれ独立して水素、「C1-C6アルキル」、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」である。
【0067】
「アシルアミノC1-C6アルキル」は、アシルアミノ置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(プロピオニルアミノ)エチルなどが挙げられる。
【0068】
「ウレイド」は、基−NRC(O)NR’R”を指し、式中R、R’、R”は、それぞれ独立して水素、「C1-C6アルキル」、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」であり、また任意にR’およびR”は、それらが結合する窒素原子と一緒に3-8員ヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0069】
「ウレイドC1-C6アルキル」は、ウレイド置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(N’−メチルウレイド)エチルなどが挙げられる。
【0070】
「カルバメート」は、基−NRC(O)OR’を指し、式中R、R’は、それぞれ独立して水素、「C1-C6アルキル」、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C1-C6アルキルアリール」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」である。
【0071】
「アミノ」は、基−NRR’を指し、式中R、R’は、それぞれ独立して水素または「C1-C6アルキル」または「アリール」または「ヘテロアリール」または「C1-C6アルキルアリール」または「C1-C6アルキルへテロアリール」または「シクロアルキル」または「ヘテロシクロアルキル」であり、また任意にRおよびR’は、それらが結合する窒素原子と一緒に3-8員ヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0072】
「アミノC1-C6アルキル」は、アミノ置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(1−ピロリジニル)エチルなどが挙げられる。
【0073】
「アンモニウム」は、正電荷を持つ基−N+RR’R”を指し、式中R、R’、R”は、それぞれ独立して「C1-C6アルキル」または「C1-C6アルキルアリール」または「C1-C6アルキルへテロアリール」または「シクロアルキル」または「ヘテロシクロアルキル」であり、また任意にRおよびR’は、それらが結合する窒素原子と一緒に3-8員ヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0074】
「アンモニウムC1-C6アルキル」はアンモニウム置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、1−エチルピロリジニウムなどが挙げられる。
【0075】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素原子を指す。
【0076】
「スルホニルオキシ」は、基−OSO2−Rを指し、式中Rは、H、「C1-C6アルキル」、ハロゲンで置換した「C1-C6アルキル」、例えば−OSO2−CF3基、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」から選択される。
【0077】
「スルホニルオキシC1-C6アルキル」は、スルホニルオキシ置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(メチルスルホニルオキシ)エチルなどが挙げられる。
【0078】
「スルホニル」は、基「−SO2−R」を指し、式中Rは、H、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C1-C6アルキル」、ハロゲンで置換した「C1-C6アルキル」、例えば−SO2−CF3基、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」から選択される。
【0079】
「スルホニルC1-C6アルキル」は、スルホニル置換基を有するC1-C5アルキル基を指し、2−(メチルスルホニル)エチルなどが挙げられる。
【0080】
「スルフィニル」は、基「−S(O)−R」を指し、式中Rは、H、「C1-C6アルキル」、ハロゲンで置換した「C1-C6アルキル」、例えば−SO−CF3基、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」から選択される。
【0081】
「スルフィニルC1-C6アルキル」は、スルフィニル置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(メチルスルフィニル)エチルなどが挙げられる。
【0082】
「スルファニル」は、基「−S−R」を指し、式中Rには、H、「C1-C6アルキル」、ハロゲンで置換した「C1-C6アルキル」、例えば−SO−CF3基、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「アルキニルヘテロアリールC2-C6」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」が含まれる。好ましいスルファニル基には、メチルスルファニル、エチルスルファニルなどが挙げられる。
【0083】
「スルファニルC1-C6アルキル」は、スルファニル置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(エチルスルファニル)エチルなどが挙げられる。
【0084】
「スルホニルアミノ」は、基−NRSO2−R’を指し、式中R、R’には、それぞれ独立して水素、「C1-C6アルキル」、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」が含まれる。
【0085】
「スルホニルアミノC1-C6アルキル」は、スルホニルアミノ置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(エチルスルホニルアミノ)エチルなどが挙げられる。
【0086】
「アミノスルホニル」は、基−SO2−NRR’を指し、式中R、R’には、それぞれ独立して水素、「C1-C6アルキル」、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「C3-C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1-C6アルキル」または「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「アリールC2-C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルケニル」、「アリールC2-C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2-C6アルキニル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」が含まれる。
【0087】
「アミノスルホニルC1-C6アルキル」は、アミノスルホニル置換基を有するC1-C6アルキル基を指し、2−(シクロヘキシルアミノスルホニル)エチルなどが挙げられる。
【0088】
「置換または非置換」:個々の置換基の定義によって別途制限されない限り、上記で述べた基は、「アルケニル」、「アルキニル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」などの基と同様に、「C1-C6アルキル」、「C2-C6アルケニル」、「C2-C6アルキニル」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリールC1-C6アルキル」、「ヘテロアリールC1-C6アルキル」、「シクロアルキルC1-C6アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル」、「アミノ」、「アンモニウム」、「アシル」、「アシルオキシ」、「アシルアミノ」、「アミノカルボニル」、「アルコキシカルボニル」、「ウレイド」、「アリール」、「カルバメート」、「ヘテロアリール」、「スルフィニル」、「スルホニル」、「アルコキシ」、「スルファニル」、「ハロゲン」、「カルボキシ」、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ等からなる群から選択される1から5個の置換基で任意に置換することができる。
【0089】
「医薬として許容される塩または錯体」は、下記で規定される式(I)の化合物の塩または錯体を指す。このような塩の例には、これらには限られないが、式(I)の化合物と、有機または無機塩基、例えばアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、またはリチウム)、アルカリ土類金属(例えばカルシウムまたはマグネシウム)からなる群から選択されるものなどの金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩との反応、あるいは有機第一、第二、または第三アルキルアミンとの反応によって形成される塩基付加塩が挙げられる。メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−Me−D−グルカミン、N, N’−ビス(フェニルメチル)−1, 2−エタンジアミン、トロメタミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルモルホリン、プロカイン、ピペリジン、ピペラジン等から誘導されるアミン塩は、本発明の範囲内にあると考えている。
【0090】
形成される塩にはまた、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)により形成される酸付加塩と、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸,マレイン酸、アスコルビン酸,安息香酸、タンニン酸、パルモ酸(palmoic acid)、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸,メタンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、およびポリガラクツロン酸などの有機酸により形成される塩と、リシンまたはアルギニンなどの塩基性アミノ酸により形成される塩が含まれる。
【0091】
「医薬として活性な誘導体」は、受容体に投与したとき本明細書中で開示された活性を直接的または間接的にもたらすことができる任意の化合物を指す。用語「間接的」はまた、内因性酵素または代謝を通じてその薬物の活性形態に転換することができるプロドラッグを包含する。上記プロドラッグは、活性な薬物化合物自体および化学的マスキング基からなる。例えば、アルコール誘導体用の化学的マスキング基は、カルボン酸エステル(例えば酢酸エステル、リシンエステル等)またはリン酸エステル(例えばリン酸モノエステル)から選択することができる。
【0092】
「鏡像異性体過剰率」(ee)は、不斉合成、すなわち非ラセミ出発材料および/または試薬を使う合成、あるいは少なくとも1つのエナンチオ選択段階を含む合成によって得られ、それによって少なくとも約52%ee程度の一方の鏡像異性体の余りが生ずる生成物を指す。
【0093】
本明細書中で用いられる「インターフェロン」または「IFN」は、文献中でそれとして定義されている任意の分子を含むものであり、例えば前述の節「背景技術」中で述べた任意の種類のIFNを含む。具体的にはIFN−α、IFN−β、およびIFN−γが、上記定義中に含まれる。IFN−βは、本発明による好ましいIFNである。本発明に合致する好適なIFN−βは、例えばRebif(登録商標)(Serono)、Avonex(登録商標)(Biogen)、またはBetaferon(登録商標)(Schering)として市販されている。
【0094】
本明細書中で用いられる用語「インターフェロン−ベータ(IFN−ベータまたはIFN−β)」は、具体的には生体液から分離によって得られる、または原核または真核宿主細胞からDNA組換え技術によって得られるヒト起源の繊維芽細胞インターフェロン、ならびにその塩、機能誘導体、変異体、類似体、および活性フラグメントを含むものである。好ましくはIFN−βは、組換えインターフェロンベータ−1aを意味するものである。
【0095】
本発明に合致する好適なIFN−βは、例えばRebif(登録商標)(Serono)、Avonex(登録商標)(Biogen)、またはBetaferon(登録商標)(Schering)として市販されている。ヒト起源のインターフェロンの使用がまた本発明に好ましい。本明細書中で用いられる用語インターフェロンは、その塩、機能誘導体、変異体、類似体、および活性フラグメントを包含するものである。
【0096】
Rebif(登録商標)(組換えインターフェロン−β)は、多発性硬化症(MS)のインターフェロン療法における最新の成果であり、治療における著しい進歩を代表している。Rebif(登録商標)は、哺乳動物細胞系から生産されるインターフェロン(IFN)ベータ−1aである。毎週3回皮下に投与されたインターフェロンベータ−1aは、再発−寛解型多発性硬化症(RRMS)の治療に効能がある。インターフェロンベータ−1aは、再発の回数および重症度を軽減し、かつMRIによって測定される疾患および疾患活動性の苦しみを軽減することによってMSの長期経過の上で陽性の結果を有する可能性がある。本発明による再発−寛解型MSの治療におけるIFN−βの投薬は、使用されるIFN−βの種類に左右される。
【0097】
本発明によればIFNが、商標Betaseron(登録商標)で市販されている、E. コリ(E. Coli)中で産生される組換えIFN−β1bの場合、一人当たり約250から300μgすなわち8 MIUから9.6 MIUの用量で1日おきに皮下に投与されることが好ましい。
【0098】
本発明によればIFNが、商標Avonex(登録商標)で市販されている、チャイニーズハムスター卵巣細胞(OHO細胞)中で産生される組換えIFN−β1aの場合、一人当たり約30μgから33μgすなわち6 MIUから6.6 MIUの用量で週1回筋内に投与されることが好ましい。
【0099】
本発明によればIFNが、商標Rebif(登録商標)で市販されている、チャイニーズハムスター卵巣細胞(OHO細胞)中で産生される組換えIFN−β1aの場合、一人当たり22から44μgすなわち6 MIUから12 MIUの用量で週3回(TIW)皮下に投与されることが好ましい。
【0100】
本発明による化合物はまた、医薬として許容されるその塩を含む。式(I)の好ましい医薬として許容される塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩または重硫酸塩、リン酸塩またはリン酸水素塩、酢酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびパラ−トルエンスルホン酸塩などの医薬として許容される酸により形成される酸付加塩である。
【0101】
本発明の化合物は、MMP−12を含めたマトリックスメタロプロテイナーゼの活性調節物質であることが分かっている。マトリックスメタロプロテイナーゼ酵素が本発明の化合物によって阻害される場合、その阻害されたMMPは、その酵素的、生物学的、および/または薬理学的作用を発揮することができない。
【0102】
したがって本発明の化合物は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、卒中、癌および悪性腫瘍、呼吸器系疾患、代謝異常、アレルギーおよび皮膚病、早期陣痛、子宮内膜症、ならびに線維症の治療および/または予防に役立つ。
【0103】
一実施形態で本発明は、式(I)の誘導体
【化3】

を提供する。
【0104】
Aは−C(B)−およびNから選択され、
BはHであるか、あるいはBはR5またはR7のどちらかと結合を形成し、
R1は、Hと、任意に置換されたC1-C6アルキルと、任意に置換されたC2-C6アルケニルと、任意に置換されたC2-C6アルキニルと、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル(これにはシクロヘキシルが含まれる)と、任意に置換されたヘテロシクロアルキルと、任意に置換されたアリール(これは任意に置換されたフェニル、例えばフェニルや、ハロフェニル(例えばフルオロフェニル(例えば2−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル)、クロロフェニル(例えば2−クロロフェニル、4−クロロフェニル)、クロロ−2−フルオロフェニル、および2−フルオロ−5−メトキシフェニル)や、シクロアルキルフェニル(例えば4−シクロヘキシルフェニル)や、アルキルフェニル(例えば4−プロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−メチルフェニル)や、アルコキシフェニル(例えばメトキシフェニル(例えば4−メトキシフェニル、3, 4−ジメトキシフェニル、3−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)、ブトキシフェニル(例えば4−tert−ブトキシフェニル)、プロポキシフェニル(例えば4−イソプロポキシフェニル、3−フルオロ−4−イソプロポキシフェニル)、およびエトキシフェニル(例えば4−エトキシフェニル、4−プロポキシフェニル、2, 2, 2−トリフルオロエトキシフェニル))や、シアノフェニル(例えば2−シアノフェニル)や、トリフルオロメチルフェニル(例えば4−トリフルオロメチルフェニル)や、トリフルオロメトキシフェニル(例えば4−トリフルオロメトキシフェニル)や、スルホニルフェニル(例えば4−(メチルスルホニル)フェニル、4−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル)や、アミノフェニル(例えば4−(ジメチルアミノ)フェニル)や、ビフェニル(例えば4−ビフェニル、メトキシビフェニル、4−フルオロビフェニル−4−イル、4−メトキシビフェニル−4−イル、4−ブロモビフェニル−4−イル)や、オキサゾリルフェニル(例えば1, 3−(オキサゾル−5−イル)フェニル)や、ベンゾフラニルフェニル(例えば1−(ベンゾフラン−3−イル)フェニル)が含まれる)と、任意に置換されたヘテロアリール(これには任意に置換されたピリジニル、例えばピリジニルや、メチルピリジニル(例えば4−メチルピリジン−2−イル、6−メチルピリジン−2−イル)や、ハロピリジニル(例えばクロロピリジニル(例えば6−クロロピリジン−2−イル、5−クロロピリジン−2−イル、3, 5−ジクロロピリジン−4−イル)や、ブロモピリジニル(5−ブロモピリジン−2−イル)や、トリフルオロメチルピリジニル(例えば3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル、4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル、5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)や、シアノピリジニル(例えば5−シアノピリジン−2−イル)や、フェニルピリジニル(例えば5−フェニルピリジン−2−イル)や、任意に置換された縮合ピリジニル(例えば4−[6−メチル−2−(トリフルオロメチル)キノリン−4−イル]、4−キノリン−3−イル、4−キノリン−5−イル)が含まれ、またこれには任意に置換されたピラジニル(例えば4−ピラジン−2−イル)が含まれ、またこれには任意に置換されたチアジアゾリル(例えば、3−フェニルチアジアゾリル(例えば3−フェニル−1, 2, 4−チアジアゾリル−5−イル))が含まれ、またこれには任意に置換されたピリミジニル(例えば4−ピリミジニル−2−イル、5−フルオロピリミジン−2−イル)が含まれ、またこれには任意に置換されたオキサジアゾリル(例えば、5−フェニル−1, 2, 4−オキサジアゾール−3−イル、4−ピリジン−4−イル−1, 2, 4−オキサジアゾール−3−イル、5−(2−チエニル)−1, 2, 4−オキサジアゾール−3−イル、および5−(4−フルオロフェニル)−1, 3, 4−オキサジアゾール−2−イル)が含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾフラニル(例えば1−ベンゾフラン−5−イル)が含まれ、またこれには任意に置換されたチエニル(例えば5−クロロ−2−チエニル)が含まれ、またこれは任意に置換されたベンゾジオキソリル(例えば1, 3−ベンゾジオキソール−5−イル、2, 2−ジフルオロ−1, 3−ベンゾジオキソール−5−イル)が含まれる)と、任意に置換されたC3-C8シクロアルキルC1-C6アルキルと、任意に置換されたヘテロシクロアルキルC1-C6アルキル(これには2−モルホリン−4−イルエチルが含まれる)と、任意に置換されたヘテロアリールC1-C6アルキル(これには2−チエニルエチルが含まれる)と、任意に置換されたアミノ(これには任意に置換されたフェニルアミノ(例えばフェニルアミノ、3−メトキシフェニルアミノ、3−(ジメチルアミノ)フェニルアミノ、4−エトキシフェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ(例えば(4−トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル、3−アミノピリジン−2−イル)が含まれる)と、任意に置換されたアルコキシ(これには4−(ピリジン−2−イルオキシ)、4−(トリフルオロメチル)フェノキシ、および2−クロロフェノキシが含まれる)とから選択され、
R2は、Hと、任意に置換されたC1-C6アルキル(これにはイソプロピルが含まれる)と、任意に置換されたC2-C6アルケニルと、任意に置換されたC2-C6アルキニルと、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル(これにはシクロペンチルが含まれる)と、任意に置換されたヘテロシクロアルキルと、任意に置換されたアルコキシ(例えばフェニル−メチレン−オキシ)と、任意に置換されたアリール(これは任意に置換されたフェニル、例えばフェニル、エトキシフェニル、またはトリフルオロメトキシフェニルが含まれる)と、任意に置換されたヘテロアリールとから選択され、
R3は、Hと、任意に置換されたC1-C6アルキルと、任意に置換されたC2-C6アルケニルと、任意に置換されたC2-C6アルキニルとから選択され、
R4、R5、R6、R7は、独立してHと、任意に置換されたC1-C6アルキル(これにはメチルが含まれる)と、任意に置換されたC2-C6アルケニルと、任意に置換されたC2-C6アルキニルとから選択されるか、またはR4およびR7が一緒に−CH2−結合を形成して、例えばピペラジン環と共に2, 5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル環を形成することができ、
nは、1、2、3、4、5、6から選択される整数であり、
炭素(2)および(3)は2つのキラル中心であり、キラル中心(2)は「S」および「R」から選択される立体配置を有し、またキラル中心(3)は「S」配置を有する。
【0105】
キラル中心(3)の「S」配置は、炭素を持つR2がCahn-Ingold-Prelogキラリティー則において炭素群の中で最も低い優先順位を有すると考えられるようなものである(「Stereochemistry of Organic compounds」Wiley Interscience中のEliel等の記述、1994参照)。更なるキラル中心が式(I)による化合物中に存在することができ、本発明はまた鏡像異性体、ジアステレオ異性体、およびそのラセミ化合物の形態、ならびにキラル中心(3)の立体配置が「S」である式(I)による化合物のその医薬として許容される塩としての光学的に活性な形態も包含することを意図している。
【0106】
好ましい実施形態では本発明の式(I)は、式(Ia)
【化4】

(式中、Aは−CHおよびNから選択され、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびnは詳細な説明において定義する)を有する。
別の好ましい実施形態では本発明の式(I)は、式(Ib)
【化5】

(式中、Aは炭素原子であり、R1、R2、R3、R4、R6、R7、およびnは詳細な説明において定義する)を有する。
【0107】
別の好ましい実施形態では本発明は、R1が任意に置換されたアリールおよび任意に置換されたヘテロアリールから選択される式(I)の誘導体を提供する。
【0108】
別の好ましい実施形態では本発明は、R2が、H、任意に置換されたC1-C6アルキル、任意に置換されたC2-C6アルケニル、および任意に置換されたC2-C6アルキニルから選択される式(I)の誘導体を提供する。
【0109】
別の好ましい実施形態では本発明は、R2が、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル(シクロペンチルを含めた)および任意に置換されたヘテロシクロアルキルから選択される式(I)の誘導体を提供する。
【0110】
別の好ましい実施形態では本発明は、R2が任意に置換されたアルコキシ、例えばフェニル−メチレン−オキシである式(I)の誘導体を提供する。
【0111】
別の好ましい実施形態では本発明は、R2がアリール、例えば任意に置換されたフェニルである式(I)の誘導体を提供する。
【0112】
別の好ましい実施形態では本発明は、R3がHである式(I)の誘導体を提供する。
【0113】
別の好ましい実施形態では本発明は、R4、R5、R7がHである式(I)の誘導体を提供する。
【0114】
別の好ましい実施形態では本発明は、R6が、Hおよび任意に置換されたC1-C6アルキル(メチルを含めた)から選択される式(I)の誘導体を提供する。
【0115】
更なる実施形態では本発明は、R6がHである式(I)の誘導体を提供する。
【0116】
更なる実施形態では本発明は、R6がメチルである式(I)の誘導体を提供する。
【0117】
別の好ましい実施形態では本発明は、R4およびR7が一緒に−CH2−結合を形成して、例えばピペラジン環と共に2, 5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル環を形成することができる式(I)の誘導体を提供する。
【0118】
別の好ましい実施形態では本発明は、AがNである式(I)の誘導体を提供する。
【0119】
別の好ましい実施形態では本発明は、Aが−CHである式(I)の誘導体を提供する。
【0120】
別の好ましい実施形態では本発明は、
R1が、任意に置換されたアリール(これには任意に置換されたフェニル、例えばフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、シアノフェニル、トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ビフェニル、4−クロロ−2−フルオロフェニル、2−フルオロ−5−メトキシフェニル、アルキルフェニル、メトキシフェニル、ブトキシフェニル、プロポキシフェニル、エトキシフェニル、スルホニルフェニル、アミノフェニル、オキサゾリルフェニル、およびベンゾフランフェニルが含まれる)と、任意に置換されたヘテロアリール(これには任意に置換されたピリジニル、例えばピリジニル、メチルピリジニル、クロロピリジニル、トリフルオロメチルピリジニル、シアノピリジニル、フェニルピリジニル、および任意に置換された縮合ピリジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたピラジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたチアジアゾリル、例えば3−フェニルチアジアゾリルが含まれ、またこれには任意に置換されたピリミジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたオキサジアゾリルが含まれ、またこれには任意に置換されたキノリニルが含まれ、またこれには任意に置換されたチエニルが含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾフラニルが含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾジオキソリルが含まれる)とから選択され、
R2が、Hと、任意に置換されたC1-C6アルキル(イソプロピルを含めた)と、任意に置換されたC2-C6アルケニルと、任意に置換されたC2-C6アルキニルと、任意に置換されたアルコキシ(フェニル−メチレン−オキシを含めた)とから選択され、
R3、R4、R5、R7がHであり、R6がHおよびメチルから選択され、AがNであり、またnが1、2、3、4、5、6から選択され、好ましくは1、2、3から選択される、式(I)の誘導体を提供する。
【0121】
別の好ましい実施形態では、本発明は、
R1が、任意に置換されたアリール(これには任意に置換されたフェニル、例えばフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、シアノフェニル、トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ビフェニル、4−クロロ−2−フルオロフェニル、2−フルオロ−5−メトキシフェニル、アルキルフェニル、メトキシフェニル、ブトキシフェニル、プロポキシフェニル、エトキシフェニル、スルホニルフェニル、アミノフェニル、オキサゾリルフェニル、およびベンゾフランフェニルが含まれる)と、任意に置換されたヘテロアリール(これには任意に置換されたピリジニル、例えばピリジニル、メチルピリジニル、クロロピリジニル、トリフルオロメチルピリジニル、シアノピリジニル、フェニルピリジニル、および任意に置換された縮合ピリジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたピラジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたチアジアゾリル、例えば3−フェニルチアジアゾリルが含まれ、またこれには任意に置換されたピリミジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたオキサジアゾリルが含まれ、またこれには任意に置換されたキノリニルが含まれ、またこれには任意に置換されたチエニルが含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾフラニルが含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾジオキソリルが含まれる)とから選択され、
R2が、Hと、任意に置換されたC1-C6アルキル(イソプロピルを含めた)と、任意に置換されたC2-C6アルケニルと、任意に置換されたC2-C6アルキニルと、任意に置換されたアルコキシ(フェニル−メチレン−オキシを含めた)とから選択され、
R3、R4、R5、R7がHであり、R6がHおよびメチルから選択され、Aが−CHであり、またnが1、2、3、4、5、6から選択される整数であり、好ましくは1、2、3から選択される、式(I)の誘導体を提供する。
【0122】
別の好ましい実施形態では、本発明は、
R1が、任意に置換されたアリール(これには任意に置換されたフェニル、例えばフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、シアノフェニル、トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ビフェニルおよび4−クロロ−2−フルオロフェニル、2−フルオロ−5−メトキシフェニル、アルキルフェニル、メトキシフェニル、ブトキシフェニル、プロポキシフェニル、エトキシフェニル、スルホニルフェニル、アミノフェニル、オキサゾリルフェニル、およびベンゾフランフェニルが含まれる)と、任意に置換されたヘテロアリール(これには任意に置換されたピリジニル、例えばピリジニル、メチルピリジニル、クロロピリジニル、トリフルオロメチルピリジニル、シアノピリジニル、フェニルピリジニル、および任意に置換された縮合ピリジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたピラジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたチアジアゾリル、例えば3−フェニルチアジアゾリルが含まれ、またこれには任意に置換されたピリミジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたオキサジアゾリルが含まれ、またこれには任意に置換されたキノリニルが含まれ、またこれには任意に置換されたチエニルが含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾフラニルが含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾジオキソリルが含まれる)とから選択され、
R2が、Hと、任意に置換されたC1-C6アルキル(イソプロピルを含めた)と、任意に置換されたC2-C6アルケニルと、任意に置換されたC2-C6アルキニルと、任意に置換されたアルコキシ(フェニル−メチレン−オキシを含めた)とから選択され、
R3およびR5がHであり、R6がHおよびメチルから選択され、R4およびR7が一緒に−CH2結合を形成することができ、AがNであり、またnが1、2、3、4、5、6から選択される整数であり、好ましくは1、2、3から選択される、式(I)の誘導体を提供する。
【0123】
別の好ましい実施形態では本発明は、
R1が、任意に置換されたアリール(これには任意に置換されたフェニル、例えばフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、シアノフェニル、トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ビフェニルおよび4−クロロ−2−フルオロフェニル、2−フルオロ−5−メトキシフェニル、アルキルフェニル、メトキシフェニル、ブトキシフェニル、プロポキシフェニル、エトキシフェニル、スルホニルフェニル、アミノフェニル、オキサゾリルフェニル、およびベンゾフランフェニル(例えば1−ベンゾフラン−3−イル)が含まれる)と、任意に置換されたヘテロアリール(これには任意に置換されたピリジニル、例えばピリジニル、メチルピリジニル、クロロピリジニル、トリフルオロメチルピリジニル、シアノピリジニル、フェニルピリジニル、および任意に置換された縮合ピリジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたピラジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたチアジアゾリル、例えば3−フェニルチアジアゾリルが含まれ、またこれには任意に置換されたピリミジニルが含まれ、またこれには任意に置換されたオキサジアゾリルが含まれ、またこれには任意に置換されたキノリニルが含まれ、またこれには任意に置換されたチエニルが含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾフラニルが含まれ、またこれには任意に置換されたベンゾジオキソリルが含まれる)とから選択され、
R2が、Hと、任意に置換されたC1-C6アルキル(イソプロピルを含めた)と、任意に置換されたC2-C6アルケニルと、任意に置換されたC2-C6アルキニルと、任意に置換されたアリールと、任意に置換されたヘテロアリールと、任意に置換されたアルコキシ(フェニル−メチレン−オキシを含めた)とから選択され、
R3、R4、R6がHであり、またnが1、2、3、4、5、6から選択される整数であり、好ましくは1、2、3から選択される、式(Ib)の誘導体を提供する。
【0124】
本発明の化合物は、具体的には
ヒドロキシ((2S)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンチル)ホルムアミド、および
{(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルフェニル}ヒドロキシホルムアミド
の群から選択されるものが挙げられる。
【0125】
本発明の別の実施形態では、薬剤として使用するための式(I)によるN−ヒドロキシアミド誘導体が提供される。
【0126】
本発明の別の実施形態では、本発明による少なくとも1種類のN−ヒドロキシアミド誘導体と、その医薬として許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0127】
本発明の別の実施形態では、自己免疫疾患、炎症性疾患、卒中、循環器疾患、神経変性疾患、癌および悪性腫瘍、代謝異常、アレルギーおよび皮膚病、呼吸器系疾患、および線維症(多発性硬化症、炎症性腸疾患、関節炎、乾癬、喘息、肺気腫、早期陣痛、子宮内膜症、慢性閉塞性肺疾患、肝臓と肺臓の線維症、膵線維症、皮膚線維症、および肝線維症を含めた)から選択される障害の予防および/または治療用の薬剤の調製のための式(I)によるN−ヒドロキシアミド誘導体の使用法が提供される。
【0128】
本発明の更なる実施形態では、炎症性腸疾患、多発性硬化症、骨関節症、および慢性関節リウマチから選択される障害の予防および/または治療用の薬剤の調製のための式(I)によるN−ヒドロキシアミド誘導体の使用法が提供される。
【0129】
本発明の更なる実施形態では、喘息、肺気腫、および慢性閉塞性肺疾患から選択される障害の予防および/または治療用の薬剤の調製のための式(I)によるN−ヒドロキシアミド誘導体の使用法が提供される。
【0130】
本発明の更なる実施形態では、肺、膵、皮膚、および肝線維症から選択される障害の予防および/または治療用の薬剤の調製のための式(I)によるN−ヒドロキシアミド誘導体の使用法が提供される。
【0131】
本発明の別の更なる実施形態では、癌および悪性腫瘍の障害の予防および/または治療用の薬剤の調製のための式(I)によるN−ヒドロキシアミド誘導体の使用法が提供される。
【0132】
本発明の別の実施形態では、マトリックスメタロプロテイナーゼ活性の調節、特に阻害のための式(I)によるN−ヒドロキシアミド誘導体の使用法が提供される。具体的には上記マトリックスメタロプロテイナーゼがMMP−12である本発明による使用法が提供される。
【0133】
別の実施形態では本発明による化合物は、MMP−2、MMP−9、および/またはMMP−2以上MMP−12までから選択されるメタロプロテイナーゼの選択的阻害剤である。
【0134】
別の実施形態では本発明は、それを必要とする患者に式(I)による化合物を投与することを含む、自己免疫疾患、炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、卒中、アレルギーおよび皮膚病、代謝異常、癌および悪性腫瘍、呼吸器系疾患、および線維症(多発性硬化症、関節炎、慢性関節リウマチ、骨関節症、喘息、肺気腫、早期陣痛、子宮内膜症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝臓と乾癬と皮膚と肺臓の線維症を含む)から選択される疾患の治療および/または予防方法を提供する。
【0135】
別の実施形態では本発明は、式(II)の化合物を式(FA)のホルミル化剤と反応させるステップ
【化6】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびnは上記と同様に定義され、PG1はHまたは保護基、例えばベンジル、t−ブチル、THP、TMS、TBSであり、またLG1は脱離基、例えば−OH、−OAc、−OPiv、−OCH2CN、−OCH2CF3、−OPh、および−OPfpである)を含む、式(I)によるN−ヒドロキシアミド誘導体の調製方法を提供する。
【0136】
更なる実施形態では本発明は、
(2S)−N−(ベンジルオキシ)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンタン−1−アミン、および
(2S)−N−(ベンジルオキシ)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンタン−1−アミン
の群から選択される式(II)による化合物を提供する。
【0137】
本発明の化合物は、Advanced Chemistry Development Inc., ACD/Labs (7.00 Release)によるプログラム「ACD/Name」中で使用されている基準に従って命名した。
【0138】
式(I)の化合物は、自己免疫疾患、炎症性疾患、循環器疾患、神経変性疾患、卒中、癌および悪性腫瘍、アレルギーおよび皮膚病、代謝異常、呼吸器系疾患、早期陣痛、子宮内膜症、および線維症(多発性硬化症、関節炎、慢性関節リウマチ、骨関節症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、肝臓と肺臓の線維症を含む)の治療および/または予防に役立つ。
【0139】
別の実施形態では本発明の化合物は、自己免疫疾患、特に多発性硬化症などの脱髄疾患の治療に単独または自己免疫疾患の治療に有効な助剤と併用して使用することができ、この助剤は、例えば次の化合物、すなわち
(a)インターフェロン、例えば皮下、筋内、または経口経路により投与される、例えばPEG化または非PEG化インターフェロン、好ましくはインターフェロンベータ、
(b)グラチラマー(glatiramer)、例えば酢酸塩形態のもの、
(c)任意選択の抗増殖/抗腫瘍作用を有する免疫抑制剤、例えばミトキサントロン(mitoxantrone)、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、あるいはステロイド類、例えばメチルプレドニソロン、プレドニソロン、またはデキサメタゾン、あるいはステロイド分泌剤、例えばACTH、
(d)アデノシンデアミナーゼ阻害剤、例えばクラドリビン(Cladribine)、
(e)VCAM−1発現の阻害剤、またはその配位子のアンタゴニスト、例えばα4/β1インテグリンVLA−4および/またはアルファ−4−ベータ−7インテグリンのアンタゴニスト、例えばナタリズマブ(ANTEGREN)
から選択される。
【0140】
抗炎症薬などの更なる助剤(具体的には多発性硬化症などの脱髄疾患用)を下記に述べる。すなわち
更なる抗炎症薬は、国際公開第02/080897号に記載されているテリフルノミド(Teriflunomide)
【化7】

である。
さらに別の抗炎症薬は、欧州特許第627406号および国際公開第2004/028521号に記載されているフィンゴリモド(Fingolimod)
【化8】

である。
【0141】
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第99/55678号に記載されているラキニモド(Laquinmod)
【化9】

である。
【0142】
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第02/28866号に記載されているテンシロリムス(Tensirolimus)
【化10】

である。
【0143】
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第98/48802号に記載されているザリプロデン(Xaliprodene)
【化11】

である。
【0144】
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第03/068230号に記載されているデスカル ピルフェニドン(Deskar Pirfenidone)
【化12】

である。
【0145】
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第01/47920号に記載されているベンゾチアゾール誘導体
【化13】

である。
【0146】
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第03/070711号に記載されているヒドロキサム酸誘導体
【化14】

である。
【0147】
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第2004/043965号に記載されているMLN3897
【化15】

である。
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第99/67230号に記載されているCDP323
【化16】

である。
さらに別の抗炎症薬は、国際公開第01/45698号に記載されているシンバスタチン(Simvastatin)
【化17】

である。
【0148】
さらに別の抗炎症薬は、米国特許第5,540,938号に記載されているファムプリジン(Fampridine)
【化18】

である。
【0149】
本発明による化合物はまた、その互変異性体、その幾何異性体、その鏡像異性体、ジアステレオマーとしての光学活性形態、およびそのラセミ化合物の形態、ならびにそれらの医薬として許容される塩を含む。
【0150】
本発明において例示される誘導体は、容易に入手できる出発材料から次の一般的な方法および手順を用いて調製することができる。典型的なまたは好ましい実験条件(すなわち反応温度、時間、試薬のモル量、溶媒等)が与えられた場合、他の実験条件もまた、別段の指定がない限り使用することができることを理解されたい。最適反応条件は使用されるその特定の反応物または溶媒により変わる可能性があるが、そのような条件は日常的な最適化手法を用いて当業者が決めることができる。
【0151】
医薬品として使用される場合、本発明の化合物は一般には医薬組成物の形態で投与される。したがって本発明の化合物と、医薬として許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物もまた本発明の範囲内にある。当業者ならば、医薬組成物を調合するのに適した様々なそのような担体、希釈剤、または賦形剤の化合物の全種類について知っている。
【0152】
本発明の化合物は、通常使用される佐剤、担体、希釈剤、または賦形剤と共に医薬組成物の形態およびその単位剤形にすることができ、そのような形態に関しては、錠剤または充填カプセル剤などの固形物として、もしくは水剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、またはこれらを充填したカプセル剤などの液体として(すべて経口使用される)、あるいは非経口(皮下使用を含めた)用の滅菌した注射用水剤の形態で使用することができる。このような医薬組成物およびその単位剤形は、場合によっては追加の活性化合物または成分と共に通常の比率でこれら成分を含むことができ、またそのような単位剤形は、意図した1日当りの使用すべき用量範囲に比例した任意の適切な有効量の活性成分を含有することができる。
【0153】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、製薬業界でよく知られている方法で調製することができ、少なくとも1種類の活性化合物を含む。一般に本発明の化合物は、医薬として有効な量が投与される。実際に投与される化合物の量は、治療すべき状態、選択した投与経路、投与される実際の化合物、年齢、体重、および個々の患者の反応、患者の症状の重症度等を含めた関連する状況に照らして医師によって一般には決められることになる。
【0154】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋内、および鼻腔内を含めた様々な経路により投与することができる。経口投与用の組成物は、バルクの液状の水剤または懸濁剤あるいはバルクの散剤の形態を取ることができる。しかしより一般的にはこれら組成物は正確な投薬を容易にするために単位剤形で与えられる。用語「単位剤形」は、ヒト被検者および他の哺乳動物用のまとまった用量として適切な物理的に分離された単位を指し、各単位は適切な賦形剤と共同して望ましい治療効果を生むように計算された所定の量の活性物質を含有する。典型的な単位剤形には、予め充填し予め計量された液状組成物のアンプルまたは注射器、あるいは固体組成物の場合は丸剤、錠剤、カプセル等が挙げられる。このような組成物では、本発明の誘導体は通常は少量成分(約0.1から約50重量%、または好ましくは約1から約40重量%)であり、残りは様々なビヒクルまたは担体および所望の投薬形態を形成するのに役立つ加工助剤である。
【0155】
経口投与に適した液状の形態は、適切な水性または非水性ビヒクルを緩衝液、懸濁化および分配剤、着色剤、香味剤等と共に含むことができる。固形物の形態は、例えば次の成分、すなわち微結晶性セルロース、ゴム質トラガント、もしくはゼラチンなどの結合剤、またはデンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、またはアルギン酸、プリモゲル(Primogel)、もしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤、またはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、またはコロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、またはスクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ風味などの着香剤、またはこれらと同様の性質の化合物のいずれかを含むことができる。
【0156】
注射用組成物は、一般に注射可能な滅菌生理的食塩水またはリン酸緩衝生理的食塩水、あるいは当業界で知られている他の注射可能な担体をベースに作られる。前述のようにそのような組成物中の式(I)のN−ヒドロキシアミドは一般に少量成分であり、しばしば0.05から10重量%の間の範囲にあり、残りは注射可能な担体等である。
【0157】
経口投与または注射用組成物の上記成分は、単に代表的なものにすぎない。更なる材料および加工技術などは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th edition, 2000, Marck Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaの第5巻に詳述されており、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0158】
本発明の化合物はまた持続放出形態で、または持続放出薬物送達システムから投与することもできる。代表的持続放出材料についての記述もまた、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに取り込まれている材料中に見出すことができる。
【0159】
本発明の化合物の合成:
式(I)による新規な誘導体は、容易に入手できる出発材料から、溶液相の化学および固相の化学の両方のプロトコールを用いた幾つかの合成手法により調製することができる。この意図のための合成経路の例を述べることにする。
【0160】
次の省略形は、それぞれ下記の定義を指す。すなわち
aq(水性)、atm(気圧)、Boc(tert−ブトキシカルボニル)、Bn(ベンジル)、h(時間)、g(グラム)、L(リットル)、mg(ミリグラム)、MHz(メガヘルツ)、min.(分)、mm(ミリメートル)、mmol(ミリモル)、mM(ミリモル-)、m.p.(融点)、eq(当量)、ml(ミリリットル)、μl(マイクロリットル)、Ac(アセチル)、ACN(アセトニトリル)、Bu(ブチル)、c‐hex(シクロヘキサン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DCM(ジクロロメタン)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ESI(エレクトロスプレーイオン化)、HATU(ジメチルアミノ−([1, 2, 3]トリアゾロ[4, 5−b]ピリジン−3−イルオキシ)−メチレン]−ジメチル−アンモニウムヘキサフルオロホスファート)、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)、iPr(イソプロピル)、LC(液体クロマトグラフィー)、Me(メチル)、MS(質量分析法)、NMM(N−メチルモルホリン)、NMR(核磁気共鳴)、Pfp(ペタフルオロフェニル)、PyBOP(登録商標)(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、rt(室温)、Rt(保持時間)、TBS(tert−ブチル−ジメチルシリル)、TBTU(2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1, 1, 3, 3−テトラメチルウロミウムテトラフルオロボラート)、TEA(トリエチルアミン)、THF(テトラヒドロフラン)、THP(テトラヒドロピラニル)、TMS(トリメチルシリル)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、UV(紫外線)、Z(ベンジルオキシカルボニル)。
【0161】
合成アプローチ:
一般に式(I)の化合物は、式(II)の化合物(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびnは上記と同様に定義され、またPG1はHか、またはベンジル、t−ブチル、THP、TMS、またはTBSなどの保護基である)を式(FA)のホルミル化剤でホルミル化することによって得ることができる(下記スキーム1)。PG1がHでない場合、周知の脱保護のステップが、ホルミル化のステップに続くか、またはそれに先行するべきである。
【0162】
このようなホルミル化の一般的なプロトコールは、下記の例に示される。LG1が−OH、−OAc、−OPiv、−OCH2CN、−OCH2CF3、−OPh、および−OPfpなどの脱離基であるホルミル化剤(FA)の使用は、当業者にはよく知られている。例えばホルミル化剤は、ギ酸と無水酢酸の間の反応によって得ることができる。
【化19】

【0163】
式(II)の化合物の調製のための好ましい合成法は、式(IV)のカルボン酸を、式(V)(式中、R2、R3、PG1、およびnは上記と同様に定義され、PG2はHか、またはBoc、Z、Bnなどの保護基である)のアミンと結合させることにある(下記スキーム2)。このようなカップリングのための幾つかのプロトコールは、当業者によく知られている条件および方法を用いてアミンおよびカルボン酸またはカルボン酸誘導体(例えば酸塩化物)から、DCM、THF、またはDMFなどの適切な溶媒に溶かしたTEA、DIEA、NMMなどの塩基の存在下または非存在下で、場合によっては例えばDIC、EDC、TBTU、DCC、HATU、PyBOP(登録商標)、クロロギ酸イソブチル、ヨウ化1−メチル−2−クロロピリジニウム(Mukaiyama試薬)またはその他の標準的なカップリング剤によりアミド結合を調製する下記の実施例に示される。PG2がHでない場合、周知の脱保護のステップがカップリングのステップに続くか、またはそれに先行するべきである(下記スキーム2)。
【化20】

【0164】
式(IV)(式中、R2、R3、PG1、PG2、およびnは上記と同様に定義される)の化合物は、式(VI)(式中、Gはキラル補助剤、例えばEvanのキラルオキサゾリジノンである)の化合物の加水分解によって調製することができる。好ましい条件は、THFなどの溶媒に溶かした水性過酸化物の存在下での水酸化リチウムの使用を伴う(下記スキーム3)。
【化21】

【0165】
式(VI)の化合物は、ヒドロキシルアミンまたはヒドロキシルアミン誘導体(VIII)(式中、PG1はHか、またはベンジル、t−ブチル、THP、TMS、TBSなどの保護基であり、PG2はHか、またはBoc、Z、Bnなどの保護基である)のジアステレオ選択的付加反応によって調製することができる。
【0166】
式(VII)の化合物は、当業者によりよく知られている条件に従って式(IX)(式中、R2、R3、およびnは上記と同様に定義される)のカルボン酸をキラル補助剤(GH)と結合させることによって得ることができる(下記スキーム4)。式(IX)の化合物は、文献(例えば国際公開第02/102790号)のプロトコールに従って得ることができる。
【化22】

【0167】
式(I)の化合物およびその式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)の前駆体は、少なくとも1個のキラル中心(3S)を含有し、すべての個々の光学活性形態とそれらの組合せ、およびそれらの対応するラセミ化合物が本発明において開示される。
【0168】
上記スキーム、具体的にはスキーム1、2、および3中で略述した方法は、純粋立体異性体として、あるいはラセミ形態の状態でまたはジアステレオ異性体の混合物として、式(I)の化合物およびその式(II)、(III)、(IV)、(VI)の前駆体を与える。後者の場合、純粋立体異性体は、立体異性体の混合物から、例えばキラルHPLCによる鏡像異性体の分離、あるいはジアステレオ異性体の混合物に対する結晶化および/またはクロマトグラフィーを含めた当業者によりよく知られている手順を用いて得ることができる。
【0169】
例えば、これに代わる式(IV)(式中、R2、R3、PG1、PG2、およびnは上記と同様に定義される)の化合物の調製法は、式(VIIa)(式中、R2、R3、PG1、PG2、およびnは上記と同様に定義され、またR8はHか、あるいはメチルまたはエチルなどのC1-C2アルキル基である)の不飽和エステルに対する式(VIII)のヒドロキシルアミン誘導体のミカエル付加反応によって得られる式(IVa)の化合物の混合物の鏡像異性体またはジアステレオマーの分離であることができる(下記スキーム5)。
【化23】

更なる一般的な方法によれば式(I)の化合物は、当業者によりよく知られている適切な相互転換技術を使用して式(I)の代替化合物に転化することができる。
【0170】
式(I)による化合物および/または式(I)の化合物の合成に必要な中間体を得るために上記の一連の一般的な合成方法が適用できない場合は、当業者により知られている適切な調製方法を使用するべきである。一般には式(I)の任意の個々の化合物の合成経路は、それぞれの分子の特定の置換基によって、また必要な中間体の入手しやすさ、さらには通常の当業者ならば分かるような要因によって決まることになる。保護および脱保護のあらゆる方法に関しては「Protecting Groups」Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York, 1994中のPhilip J. Kocienskiの記述、ならびに「Protecting Groups in Organic Synthesis」Wiley Intersciences, 3rd Edition 1999中のTheodora W. GreeneおよびPeter G. M. Wutsの記述を参照されたい。当業者は、その分子上の潜在的な反応性官能基がマスキングまたは保護されている場合、ある種の反応は最もうまく行われること、すなわち副反応が避けられ、かつ/または反応の収率を上げられることを認めるはずである。保護基部分の例は、上記Philip J. Kocienski、1994の記述中および上記Greene等、1999の記述中に見出すことができる。特定の反応に対する保護基の必要性および選択については当業者に知られており、保護すべき官能基(水酸基、アミノ、カルボキシなど)の性質、その構造、およびその分子(その置換基がその分子の反応条件の一部である)の安定性によって決まる。
【0171】
本発明の化合物は、適切な溶媒の蒸発により結晶化させることにより、溶剤分子と共に単離することができる。塩基性の中心を含有する式(I)の化合物の医薬として許容される酸付加塩は、通常のやり方で調製することができる。例えば遊離塩基の溶液を、生のまたは適切な溶液の状態の適切な酸で処理し、その得られた塩を濾過または反応溶媒の真空下での蒸発のいずれかによって単離することができる。医薬として許容される塩基付加塩は、類似のやり方で式(I)の化合物の溶液を適切な塩基で処理することによって得ることができる。両方の型の塩は、イオン交換樹脂技術を使用して形成または相互に転換することができる。
【0172】
下記に本発明を幾つかの実施例によって例示することにする。これらは、本発明の範囲を限定するものとはみなされないものと解釈される。
【実施例】
【0173】
下記の市販の試薬を使用した。すなわち
イソブチルマロン酸(Kortylewiez等の論文、1990, J. Med. Chem. 33, 263-273の記載に従って調製した)、二炭酸ジ−tert−ブチル(Aldrichから市販されている)、1−ビフェニル−4−イルピペラジン(Apolloから市販されている)、1−(4−メトキシフェニル)−ピペラジン(Chessから市販されている)、HATU(Aldrichから市販されている)。
【0174】
中間体A:(2S)−2−{[(ベンジルオキシ)(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]メチル}−4−メチルペンタン酸
【化24】

ステップa):tert−ブチル((2S)−2−{[(4R)−4−ベンジル−2−オキソ−1, 3−オキサゾリジン−3−イル]カルボニル}−4−メチルフェニル)(ベンジルオキシ)カルバメートの形成
【化25】

DCM(10 ml)に溶かした4−ベンジル−3−[2−(ベンジルオキシアミノ−メチル)−4−メチル−ペンタノイル]−オキサゾリジン−2−オン(1.0 g、2.44ミリモル、1.0当量、国際公開第02/102790号に記載のプロトコールに従って調製したがイソブチルマロン酸から出発)と、二炭酸ジ−tert−ブチル(585 mg、2.7ミリモル、1.1当量)との溶液に、トリエチルアミン(416μl、2.9ミリモル、1.2当量)を加え、この反応混合物を室温で一晩撹拌した。DMAP(0.1当量)、次いで二炭酸ジ−tert−ブチル(200 mg)を加え、この混合物を室温で一晩撹拌した。HClの水溶液(1 N)を加え、この反応混合物をEtOAc(3 x)で抽出した。その一緒にした有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過し、蒸発させて無色の油を得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、c−Hexに溶かした13%EtOAc)による精製の結果、標題の生成物を無色の油として得た(920 mg、74%)。HPLC、保持時間5.33分(純度88.9%)。
【0175】
ステップb):(2S)−2−{[(ベンジルオキシ)(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]メチル}−4−メチルペンタン酸の形成
tert−ブチル((2S)−2−{[(4R)−4−ベンジル−2−オキソ−1, 3−オキサゾリジン−3−イル]カルボニル}−4−メチルフェニル)(ベンジルオキシ)カルバメート(1.66 g、3.25ミリモル)とLiOH(156 mg、6.5ミリモル、2当量)とH2O2の水溶液(30%、1.33 ml、4当量)との溶液を一晩撹拌した。Na2SO3の飽和溶液を0℃で加えた。この混合物をNaHCO3の飽和溶液で抽出し、DCM(3 x)で洗浄した。水性層をNaClで飽和させ、HClの水溶液(5 N)でpH 2まで酸性化し、次いでDCM(2 x)、EtOAc(2 x)、Et2O(2 x)で抽出した。その一緒にした有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過し、蒸発させて、次のステップにおいてそのまま使用される標題の生成物300 mgを無色の油として得た。M-(LC−MS(ESI)):350.3。
【0176】
実施例1:ヒドロキシ((2S)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンチル)ホルムアミド(1)
【化26】

ステップa):tert−ブチル(ベンジルオキシ)((2S)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンチル)カルバメートの形成
【化27】

DMF(3 ml)に溶かした(2S)−2−{[(ベンジルオキシ)(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]メチル}−4−メチルペンタン酸(中間体A、120 mg、0.34ミリモル、1.0当量)と、DIEA(115 mg、0.9ミリモル、2.1当量)との冷(0℃)溶液に、HATU(124 mg、0.47ミリモル、1.1当量)を一度に加えた。得られた溶液を0℃で2分間撹拌し、次いで1−(4−メトキシフェニル)−ピペラジン(72 mg、0.38ミリモル、1.1当量)を加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。Et2Oを加え、その混合物を水で洗浄(3 x)し、MgSO4上で乾燥し、濾過し、蒸発させて標題の生成物を油として得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、c−Hexに溶かした25%EtOAcから33%EtOAcまでの勾配)による精製の結果、標題の生成物を無色の油として得た(110 mg、61%)。HPLC、保持時間4.04分(純度100%)。M+(LC−MS(ESI)):526.3。
【0177】
ステップb):(2S)−N−(ベンジルオキシ)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンタン−1−アミンの形成
【化28】

tert−ブチル(ベンジルオキシ)((2S)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンチル)カルバメート(134 mg、0.25ミリモル、1.0当量)と、ジオキサンに溶かした4 M HCl(0.938 ml、15当量)とをDCM(1 ml)に溶かした溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させて標題の生成物を黄色の油として得た(130 mg、100%)。HPLC、保持時間2.9分(純度95.9%)。M+(LC−MS(ESI)):426.4。
【0178】
ステップc):N−(ベンジルオキシ)−N−((2S)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンチル)ホルムアミドの形成
【化29】

THF(2 ml)に溶かした(2S)−N−(ベンジルオキシ)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンタン−1−アミン(122 mg、0.29ミリモル、1.0当量)と、トリエチルアミン(123μl、0.86ミリモル、3.0当量)との溶液に、ギ酸酢酸無水物(63 mg、0.72ミリモル、2.5当量、Organic Syntheses Coll. Vol 6, p8中のKrimen等の記述に従って調製した)を加えた。この溶液を室温で4.5時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/c−Hex(1/1))により精製して標題の生成物を無色の油として得た(105 mg、81%)。HPLC、保持時間3.17分(純度100%)。M+(LC−MS(ESI)):454.4。
【0179】
ステップd):N−ヒドロキシ−N−((2S)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンチル)ホルムアミドの形成
N−(ベンジルオキシ)−N−((2S)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンチル)ホルムアミド(100 mg、0.22ミリモル)の溶液を、pd/C(10%、23 mg、0.02ミリモル、0.1当量)の存在下、1気圧の水素中で室温で2時間水素化した。この混合物をセライトの吸着床上で濾過し、蒸発させて標題の生成物をオレンジ色の泡として得た(60 mg、75%)。HPLC、保持時間1.95分(純度100%)。M+(LC−MS(ESI)):364.4。
【0180】
実施例2:{(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンチル}ヒドロキシホルムアミド(2)
【化30】

ステップa):tert−ブチル(ベンジルオキシ){(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンチル}カルバメートの形成
【化31】

標題の生成物を実施例1(ステップa))のプロトコールに従って、しかし中間体1(300 mg、0.85ミリモル)および1−ビフェニル−4−イルピペラジン(357 mg、0.94ミリモル、1.1当量)から出発して得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、c−Hexに溶かした33%EtOAcから50%EtOAcまでの勾配)による精製の結果、標題の生成物を無色の油として得た(240 mg、49%)。HPLC、保持時間5.33分(純度100%)。M+(LC−MS(ESI)):572.1。
【0181】
ステップb):(2S)−N−(ベンジルオキシ)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンタン−1−アミンの形成
【化32】

標題の生成物を実施例1(ステップb))のプロトコールに従って、しかしtert−ブチル(ベンジルオキシ){(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンチル}カルバメート(232 mg、0.41ミリモル、1.0当量)から出発して褐色の固体として得た(219 mg、99%)。HPLC、保持時間4.19分(純度93.6%)。M+(LC−MS(ESI)):472.4。
【0182】
ステップc):N−(ベンジルオキシ)−N−{(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンチル}ホルムアミドの形成
【化33】

標題の生成物を実施例1(ステップc))のプロトコールに従って、しかしtert−ブチル(ベンジルオキシ){(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンチル}カルバメート(219 mg、0.46ミリモル)と、前もって形成したギ酸(875μl、23.2ミリモル、50当量)および無水酢酸(220μl、2.32ミリモル、5.0当量)の混合物(0℃において30分で形成される混合物)とから出発して得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、c−Hexに溶かした33%EtOAcから50%EtOAcまでの勾配)による精製の結果、標題の生成物を白色固体として得た(120 mg、52%)。HPLC、保持時間4.60分(純度99.7%)。M+(LC−MS(ESI)):500.4。
【0183】
ステップd):N−{(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンチル}−N−ヒドロキシホルムアミドの形成
標題の生成物を実施例1(ステップd))のプロトコールに従って、しかしN−(ベンジルオキシ)−N−{(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンチル}ホルムアミド(110 mg、0.22ミリモル、1.0当量)から出発して白色粉末として得た(62 mg、78%)。HPLC、保持時間3.57分(純度88.2%)。M+(LC−MS(ESI)):410.0、M-(LC−MS(ESI)):408.3。
【0184】
バイオアッセイ:
本発明の化合物は、下記のアッセイにかけることができる。
【0185】
実施例3:酵素阻害アッセイ
本発明の化合物を試験し、MMP−1、MMP−2、MMP−9、MMP−14、およびMMP−12の阻害剤としてのそれらの活性を評価した。
【0186】
MMP−9のアッセイプロトコール:
本発明の化合物を、クマリンで標識したペプチド基質(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2, 4−ジニトロフェニル]−L−2, 3−ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)を用いたアッセイ(Knight等の論文、FEBS Lett. 1992; 263-266)を使って、92 kDaゼラチナーゼ(MMP−9)に対する阻害活性について試験した。
【0187】
原液を次のように作製した。すなわち
アッセイバター(Assay Butter): 100 mM NaCl、10 mM CaCl2、および0.05%ブリジ35を含有する100 mMトリス−HCl(pH 7.6)。
基質:100%DMSOに溶かした0.4 mM McaPLGLDpaAR(Bachemから入手)(0.437 mg/ml)の原液(−20℃で保管)。アッセイバター中で8μMに希釈する。
酵素:アッセイバター中で適切に希釈した組換えヒト92 kDaゼラチナーゼ(MMP−9;必要ならばAPMA(酢酸4−アミノフェニル水銀(II))で活性化する)。
【0188】
試験化合物は、まず100%DMSOに溶かした10 mM化合物溶液として調製し、100%DMSO中で1 mMに希釈し、次いで96ウェルマイクロタイタープレートのアッセイ濃度範囲をカラム1-10にわたって100μM(カラム1)から5.1 nM(カラム10)まで100%DMSOで連続的に3倍に希釈した。
【0189】
アッセイは、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて1ウェル当たり100μlの総体積で行った。これらウェルに活性化した酵素(20μl)、続いてアッセイバター20μlを加えた。次いで10μlのDMSO中に溶解した適切な濃度の試験化合物を加え、続いて50μlのMcaPLGLDpaAR(8μM、アッセイバター中でDMSO原液を希釈することによって調製した)を加えた。各試験について10種類の濃度の試験化合物を二重反復して試験した。対照ウェルは、酵素または試験化合物のどちらかを欠いている。これら反応物を37℃で2時間インキュベートした。405 nmにおける蛍光を、反応を停止することなく320 nmの励起を用いてSLT Fluostar蛍光光度計(SL T Labinstruments GmbH、Grodig、Austria)により直接測定した。
【0190】
試験化合物の効果は、阻害剤の10種類の二重反復濃度によって生成した用量反応曲線から求めた。IC50(酵素活性の50%低下をもたらすのに必要な化合物の濃度)は、等式Y=a+((b−a)/(1+(c/X)d))にデータを当てはめることによって得た(Y=ある特定の用量について得られる阻害、X=単位nMで表した用量、a=最少のyすなわち0%の阻害、b=最大のyすなわち100%の阻害、c=IC50、d=勾配)。結果は、四捨五入して有効数字1桁にした。
【0191】
MMP−12のアッセイプロトコール:
本発明の化合物を、クマリンで標識したペプチド基質(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2, 4−ジニトロフェニル]−L−2, 3−ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)を用いたアッセイ(上記Knight等の論文、1992)使って、メタロエラスターゼ(MMP−12)に対する阻害活性について試験した。このアッセイ用のプロトコールは、上記MMP−9のアッセイについて述べたものと同様である。
【0192】
MMP−1のアッセイプロトコール:
本発明の化合物を、クマリンで標識したペプチド基質(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2, 4−ジニトロフェニル]−L−2, 3−ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)を用いたアッセイ(上記Knight等の論文、1992)使って、コラゲナーゼ(MMP−1)に対する阻害活性について試験した。このアッセイ用のプロトコールは、上記MMP−9のアッセイについて述べたものと同様である。
【0193】
MMP−14のアッセイプロトコール:
本発明の化合物を、クマリンで標識したペプチド基質(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2, 4−ジニトロフェニル]−L−2, 3−ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)を用いたアッセイ(上記Knight等の論文、1992)使って、MMP−14に対する阻害活性について試験した。このアッセイ用のプロトコールは、上記MMP−9のアッセイについて述べたものと同様である。
【0194】
MMP−2のアッセイプロトコール:
本発明の化合物を、クマリンで標識したペプチド基質(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2, 4−ジニトロフェニル]−L−2, 3−ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)を用いたアッセイ(上記Knight等の論文、1992)使って、ゼラチナーゼA(MMP−2)に対する阻害活性について試験した。このアッセイ用のプロトコールは、上記MMP−9のアッセイについて述べたものと同様である。
これらの結果はIC50(酵素活性の50%低下をもたらすのに必要な化合物の濃度)で表され、下記の表1に示す。
【表1】

【0195】
実施例4:IL−2に誘発される腹膜のリンパ球動員
IL−2の腹膜内投与はリンパ球の腹膜腔への移動をひき起す。これは炎症の間に起る細胞運動のモデルである。
【0196】
プロトコール:
C3H/HENマウス(Elevage Janvier、France)に、IL−2(生理的食塩水に溶かした20μg/kg)を腹膜内注射した。
【0197】
本発明の化合物を0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)/0.25%トゥイーン−20中に懸濁させ、IL−2の投与の15分前にs. c.またはp. o.経路により投与した(10 ml/kg)。
【0198】
IL−2の投与の24時間後に腹膜の白血球を、5 mlのリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)−1 mM EDTA(+4℃)による腹膜腔の連続する3回の洗浄によって採取した。この懸濁液を遠心分離(4℃で1700 g×10分間)した。得られたペレットを1 mlのPBS−1 mM EDTA中に懸濁させた。
【0199】
リンパ球をBeckman/Coulter計測器を用いて識別し、計数した。
【0200】
実験計画法:
動物を6集団(各グループに付きマウス6匹)に分けた。すなわち
第1集団:0.5%CMC/0.25%トゥイーン−20(本発明の化合物のビヒクル)と生理的食塩水(IL−2のビヒクル)とを投与したもの(ベースライン)、
第2集団:0.5%CMC/0.25%トゥイーン−20とIL−2の注射剤とを投与したもの(対照IL−2)、
第3集団:本発明の化合物とIL−2の注射剤とを投与した実験グループ(本発明の化合物の用量1)、
第4集団:本発明の化合物とIL−2の注射剤とを投与した実験グループ(本発明の化合物の用量2)、
第5集団:本発明の化合物とIL−2の注射剤とを投与した実験グループ(本発明の化合物の用量3)、
第6集団:基準化合物デキサメタゾンとIL−2の注射剤とを投与した基準グループ。
【0201】
計算:
リンパ球動員の阻害は、
【数1】

に従って計算した(式中、Ly 1=第1集団におけるリンパ球の数(E3/μl)、Ly 2=第2集団におけるリンパ球の数(E3/μl)、Ly X=第X(3-5)集団におけるリンパ球の数(E3/μl))。
【0202】
式(I)による化合物に対する結果を下記の表2に示す。
【表2】

【0203】
実施例5:CCl4で誘発される肝線維症モデル
四塩化炭素(CCl4)は腹膜内に投与された場合に肝線維症を誘発する(Bulbena O, Culat J, Bravo ML., Inflammation 1997 Oct; 21(5):475-88)。本発明の化合物は、CCl4で誘発されるそれらの線維組織形成の防止能力について評価することができる。
【0204】
動物:
雄のSprangue-Dawleyラット(生後7週、体重約300 g、Charles River/Iffa-Credo, St-Germain/l’Arbresle, Franceから入手したもの)。
【0205】
ラットを、実験開始前5日間、空調室内、1ケージに付き2匹、温度22℃±2、相対湿度55%±10、照明:12時間サイクル(7 a.m.-7 p.m.)、ケージ:Makrolon(登録商標)cage(それぞれステンレス鋼製カバー−フィードラックを備えた42.5×26.6×15のもの)で環境順化させる。
【0206】
この検討には、次に示すようにそれぞれ8匹のグループを使用する。
第1集団:「偽処理(Sham)」動物は、CCl4ビヒクル(i. p.)と、一日1回試験物質のビヒクル(s. c.)とを投与される。
第2集団:陽性対照グループは、CCl4(i. p.)と、一日1回の試験物質のビヒクル(s. c.)とを投与される。
第3集団:実験グループは、CCl4(i. p.)と、一日1回の本発明による化合物2 mg/kg(s. c.)とを投与される。
第4集団:実験グループは、CCl4(i. p.)と、一日1回の本発明による化合物10 mg/kg(s. c.)とを投与され、
第5集団:実験グループはCCl4(i. p.)と、一日1回の本発明による化合物20 mg/kg(s. c.)を投与される。
【0207】
ラットにはそれらの尾に標識を付けた。標識は、毎回CCl4注射の後に照合し、必要に応じて更新する。
【0208】
手順:
オリーブ油に溶かしたCCl4(Prolabo)(体重1 kg当たり0.25 mlのCCl4:0.5 ml/kgの合計量を1 : 1(vol/vol)の油で希釈したもの)を腹腔内注射により2日おきに3週間投与する。毎日動物を計量する。体重が最初の体重の10%を超えて減少したならば、その動物を検討から除外する。
【0209】
ビヒクルおよび化合物は次のように使用する。すなわち
a)CCl4は、オリーブ油(Prolabo)中で1 : 1に希釈して投与する、
b)本発明の化合物は、0.25%トゥイーン−80と0.25%カルボキシメチルセルロースとを滅菌した0.9%NaClに溶かした中に懸濁させる。この溶液は実験の間ずっと4℃に保たれ、懸濁液の調製に毎日使用される。
【0210】
本発明の化合物を、5 ml/kgの投与量で皮下(s. c.)注射により毎日投与する。第1集団および第2集団には、5 ml/kgのビヒクルをs. c.により投薬する。毎日の実験には新たに調製した溶液を使用する。投与は毎日同じ時間に行う。
【0211】
この検討の集団の処理は、各動物に対して最初のCCl4投与時に開始し、連続して21日間続ける。試験物質またはビヒクルの最後の投与は、動物を犠牲にする1日前に行う。
【0212】
結果:
死亡の日付を記録し、また推定される原因を記録する。
【0213】
血清の酵素濃度:
動物を最初のCCl4投与後21日目にイソフランの吸入により屠殺した。血液を犠牲時、すなわち試験物質またはビヒクルの最後の投与後1日目に個々に抜き取る。血液を4℃で遠心分離する。血漿を慎重に収集し、3部分に等分する。肝臓壊死を評価するために血漿のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)の濃度を測定する。血清中のASATおよびALAT濃度の増加は、肝臓の障害と関連がある。対照動物および3種類の異なる用量の本発明の化合物で処理した動物についての平均ASATおよびALAT濃度を記録する。
【0214】
肝線維症の組織学的評価:
肝線維症を、顕微鏡切片作成法を用いて肝臓中の線維症の面積を測定することによって評価する。
【0215】
肝臓を取り出し、3つの葉を切開し、試料を取り出し、10%ホルムアルデヒド中で固定するか、または−80℃で冷凍する。
【0216】
肝臓の薄片をパラフィンのブロック中に埋め込む。切出しおよびSirius redによる染色を行う。肝臓中の線維症の数量化は、肝臓中の様々な場所から取った最低3個の薄片について行う。定量分析は、画像解析器(Imstar)およびそのソフトウェアMorphostarを用いて行う。
【0217】
異なる集団の動物の肝臓中の線維症の平均面積の割合を計算する。
【0218】
実施例6:慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデル
本発明の化合物を、タバコの煙で誘発されるCOPDのそれらの防止能力について評価することができる。
【0219】
雌のAJマウス(Harlan、17-25 g)を、5つのグループについて個々の透明なチャンバー中で連続して11日間毎日タバコの煙(CS)に曝す。暴露の6日目および12日目には処理に先立って動物を計量する。CSは、The Institute of Tobacco Research, University of Kentucky, USAから購入した1R1シガレットを用いて発生させ、100 ml/分の流量でチャンバーに入れる。
【0220】
毎日高濃度のCSに繰返し曝すことによってひき起されるいかなる潜在的な問題も最小限に抑えるために、TSに対するマウスの暴露を最高でシガレット6本まで5日目から11日目まで時間とともに次第に増加する(約48分の暴露)。
【0221】
マウスの偽処理グループもまた毎日、対照(CS暴露なし)と同じ長さの時間空気に曝す。
【0222】
処理:
本発明の化合物は、ビヒクルとしての0.5%カルボキシメチルセルロースNa塩(CMC、Sigma参照C−4888)中で調製される。
【0223】
動物は、5 ml/kgの用量を空気またはCS暴露の1時間前および暴露休止の6時間後に摂食によって一日2回経口的に投薬される。
【0224】
偽処理動物(n=10)は、ビヒクルを投与され、1日に付き最高50分まで空気に曝される。対照グループ(n=10)は、ビヒクルを投与され、CS(1日に付き最高でシガレット6本までの)に曝される。さらなるグループは、CS(1日に付き最高でシガレット6本までからの)に曝され、かつ試験化合物または基準化合物のうちの一方で処理される。
【0225】
気管支肺胞洗浄およびサイトスピン分析:
最後のCS暴露の24時間後、気管支肺胞洗浄を次のように行う。
気管を深い麻酔(ペントバルビトンナトリウム)の下で切開し、約8 mmまで短くしたPortexナイロン製静脈カニューレを用いて気管にカニューレを挿入する。ヘパリンを10単位/ml含有するリン酸緩衝生理的食塩水(PBS、Gibco)(0.4 ml)を静かに点滴注入し、3回抜き取る。この洗浄液をエッペンドルフチューブに入れ、その後の測定まで氷上で保存する。次いで遠心分離により洗浄液を細胞から分離する。上清を取り出し、その後の分析のために冷凍する。細胞ペレットをPBS中に再懸濁し、血球計数器を用いて染色アリコート(Turks染色)を顕微鏡下で計数することによって総細胞数を計算する。
【0226】
次いで細胞の分画を次のように行う。その残った細胞ペレットを1 ml当たり細胞約105個まで希釈する。500μlの量をサイトスピンのスライドガラスの漏斗に入れ、800 rpmで8分間遠心分離する。このスライドガラスを空気乾燥し、「Kwik-Diff」溶液(Shandon)を用いて購入者の取扱説明書に従って染色する。スライドガラスを乾燥し、カバーガラスをかぶせ、光学顕微鏡を用いて細胞の分画を行う。各スライドガラスについて細胞400個まで計数する。細胞を標準的な形態計測技術を用いて区別する。
【0227】
統計的解析:
平均値+/−S.D.を各実験グループについて計算する。
結果を一元配置分散分析(ANOVA)、続いて多重比較用ボンフェローニ補正を用いて解析する。統計的有意差はp<0.05であると考えられる。
【0228】
実施例7:実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)モデル
本発明による化合物をマウスの多発性硬化症モデルでのそれらの活性について評価することができる。
【0229】
動物:
C57BL/6NCr1BR雌マウスを使用する。各マウスは、ステンレス鋼製フィーダを備えたワイヤーケージ(32 cm×14 cm×高さ13 cm)中で飼育され、標準的飼料(4RF21、Charles River、Italy)および水を常食として自由に与えられる。7日目からは毎日ウェットペレットをまたケージの底に置く。自動給水システムに加えてプラスチック製ボトルを使用する。
【0230】
実験手順:
マウスを、0.5 mgの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含有する完全フロインドアジュバント(CFA, Difco, Detroit, U.S.A)に溶かした200μgのMOG35-55ペプチド(Neosytem, Strasbourg, France)からなる0.2 mlのエマルションを左脾腹にs.c.注射することによって免疫にする(日=0)。直後にそれら動物に、400μlの緩衝液(0.5 M NaCl、0.017%トリトンX−100、0.015 Mトリス、pH=7.5)中に溶解した500 ngの百日咳毒素(List Biological Lab.、Cambell, CA, U.S.A)のi.p.注射液を投与する。2日目に動物に第二回目の500 ngの百日咳毒素の注射を行う。
【0231】
7日目にマウスは、CFAに溶かしたMOG35-55ペプチド200μgの二回目の用量を右脾腹にs.c.注射により投与される。この手順は、8-10日目頃から始まる進行性麻痺をひき起し、麻痺は尾部から起り前肢まで上昇する。
【0232】
動物は個々に計量され、麻痺の存在が検査される。その麻痺は下記の評点システム(1)に従って評点が付けられる。すなわち
0=疾患の徴候なし
0.5=部分的な尾部の麻痺
1=尾部の麻痺
1.5=尾部の麻痺+部分的な片側後肢の麻痺
2=尾部の麻痺+両側後肢の衰弱または部分的な麻痺
2.5=尾部の麻痺+部分的な後肢の麻痺(下部骨盤部)
3=尾部の麻痺+完全な後肢の麻痺
3.5=尾部の麻痺+後肢の麻痺+失禁
4=尾部の麻痺+後肢の麻痺+前肢の衰弱または部分的な麻痺
5=瀕死または死
死亡数および臨床的徴候は、それら処理について知らない専門家によって各処理グループにおいて毎日監視される。
【0233】
化合物、それらのビヒクル、または基準化合物による毎日の処理は、すべてのグループにおいて7日目に開始され、連続して15日間または21日間継続した。
【0234】
組織病理学的考察:
処理期間の終りに各動物をペントバルビタールナトリウムで麻酔し、左心室を介し心臓を通して4%パラホルムアルデヒドを潅流−固定させる。次いで固定された脊髄を慎重に切開する。
【0235】
脊髄の薄片をパラフィンのブロック中に埋め込む。切出し、ならびに炎症に対するヘマトキシリン−エオシンおよびCD45染色法による染色と、脱髄および軸索減損の検出のためのKluver−PAS法(ルクソールファーストブループラス過ヨウ素酸シッフ染色法)およびBielchowski染色法による染色とを行う。
【0236】
脊髄では全薄片の面積の合計を、1格子当たり0.4×0.4 mmを拡大したものの10×10個の格子の交点として各動物について測定する。血管周囲の炎症浸潤物の数を各動物に対する合計値を得るために各薄片について数え、1 mm2当りの浸潤物の数として評価する。脱髄および軸索減損の面積を、1格子当たり0.1×0.1 mmを拡大したものの10×10個の格子の交点として各動物について測定し、各薄片の総面積に対する総脱髄面積の割合として表す。
【0237】
データの評価および統計学的解析:
臨床的および組織病理学的観察の結果を、各処理グループについて平均(±SEM)評点として表す。試験薬物で処理したグループで得られた値を、陽性対照グループの値と比較する。臨床的評点に関係するグループ間の差の有意性を一元配置ANOVAにより解析し、有意性(p<0.05)の場合は、続いてフィッシャー検定により解析する。
【0238】
血管周囲の炎症浸潤物の存在ならびに脊髄中の脱髄および軸索減損の度合いに関するグループ間の差と、体重のデータとを一元配置ANOVAにより解析し、有意性(p<0.05)の場合は、続いてフィッシャー検定により解析する。
【0239】
実施例8:医薬製剤の調製
下記の製剤例は、これらには限定されないが、本発明による代表的な医薬組成物を例示するものである。
【0240】
製剤1−錠剤
本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤と約1 : 2の重量比で混ぜ合わせる。少量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。この混合物を錠剤成形機で成形して240-270 mgの錠剤(1錠当たり活性なN−ヒドロキシアミド誘導体80-90 mg)にする。
【0241】
製剤2−カプセル剤
本発明の化合物を、乾燥粉末としてデンプン希釈剤と約1 : 1の重量比で混ぜ合わせる。この混合物を充填して250 mgのカプセル(1カプセル当たり活性なN−ヒドロキシアミド誘導体125 mg)にする。
【0242】
製剤3−液剤
本発明の化合物(1250 mg)、スクロース(1.75 g)、およびキサンタンガム(4 mg)をブレンドし、10番メッシュの米国ふるいを通し、次いで水に溶かした微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの前もって調製した溶液(11 : 89、50 mg)と混合する。安息香酸ナトリウム(10 mg)、香味剤、および着色剤を水で希釈し、撹拌しながら加える。次いで十分な水を加えて5 mlの総量を作り出す。
【0243】
製剤4−錠剤
本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤と約1 : 2の重量比で混ぜ合わせる。少量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。この混合物を錠剤成形機で成形して450-900 mgの錠剤(1錠当たり活性なN−ヒドロキシアミド誘導体150-300 mg)にする。
【0244】
製剤5−注射剤
本発明の化合物を、緩衝した滅菌生理的食塩水の注射可能な水性媒体中に約5 mg/mlの濃度で溶解させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

のN−ヒドロキシアミド誘導体であって、
式中、Aが−C(B)−およびNから選択され、
BがHであるか、あるいはBがR5またはR7のどちらかと結合を形成し、
R1が、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C3〜C8シクロアルキルC1〜C6アルキル、ヘテロシクロアルキルC1〜C6アルキル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、アミノ、およびアルコキシから選択され、
R2が、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリール、およびヘテロアリールから選択され、
R3が、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、およびC2〜C6アルキニルから選択され、
R4、R5、R6、R7が、独立してH、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルから選択されるか、またはR4およびR7が一緒に−CH2−結合を形成し、
nが、1、2、3、4、5、6から選択される整数であり、
炭素(2)および(3)が2つのキラル中心であり、キラル中心(2)が「S」および「R」から選択される立体配置を有し、かつキラル中心(3)が「S」配置を有する、N−ヒドロキシアミド誘導体と、その医薬として許容される塩。
【請求項2】
式(Ia)
【化2】

を有し、
式中、AがCHおよびNから選択され、
R1が、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C3〜C8シクロアルキルC1〜C6アルキル、ヘテロシクロアルキルC1〜C6アルキル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、アミノ、およびアルコキシから選択され、
R2が、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリール、およびヘテロアリールから選択され、
R3が、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、およびC2〜C6アルキニルから選択され、
R4、R5、R6、R7が、独立してH、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルから選択されるか、またはR4およびR7が一緒に−CH2−結合を形成し、
nが、1、2、3、4、5、6から選択される整数であり、
炭素(2)および(3)が2つのキラル中心であり、キラル中心(2)が「S」および「R」から選択される立体配置を有し、かつキラル中心(3)が「S」配置を有する、請求項1に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体と、その医薬として許容される塩。
【請求項3】
R1がアリールおよびヘテロアリールから選択される、請求項1又は2に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項4】
R2がH、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、およびC2〜C6アルキニルから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項5】
R3がHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項6】
R4、R5、R7がHである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項7】
AがNである、請求項1〜6のいずれかに記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項8】
R1がアリールおよびヘテロアリールから選択され、R2がH、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびアルコキシから選択され、R3、R4、R5、R7がHであり、R6がHおよびメチルから選択され、AがNであり、かつnが1、2、3から選択される整数である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項9】
ヒドロキシ((2S)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンチル)ホルムアミドおよび{(2S)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンチル}ヒドロキシルホルムアミドの群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項10】
薬剤として使用される請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
炎症性疾患、神経変性疾患、循環器疾患、卒中、癌、早期陣痛、子宮内膜症、線維症、および呼吸器系疾患の予防および/または治療用の薬剤の調製のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物およびそれらの混合物の使用。
【請求項12】
前記疾患が、炎症性腸疾患、多発性硬化症、および慢性関節リウマチから選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疾患が、喘息、肺気腫、および慢性閉塞性肺疾患を含む群の中から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記疾患が、肺線維症、膵線維症、皮膚線維症、および肝線維症を含む群の中から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
メタロプロテイナーゼの調節のための請求項1〜9のいずれか1項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体の使用。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1種類のN−ヒドロキシアミド誘導体と、それらの医薬として許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項17】
式(II)の化合物を式(FA)のホルミル化剤と反応させるステップ
【化3】

を含み、
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびnが請求項1〜6中で定義されたものと同様であり、PG1がHか、またはベンジル、t−ブチル、THP、TMS、およびTBSから選択される保護基であり、またLG1が−OH、−OAc、−OPiv、−OCH2CN、−OCH2CF3、−OPh、および−OPfpから選択される脱離基である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体の調製方法。
【請求項18】
式(II)
【化4】

の化合物であって、
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびnが請求項1〜6中で定義されたものと同様であり、PG1がHか、またはベンジル、t−ブチル、THP、TMS、およびTBSから選択される保護基である、化合物。
【請求項19】
(2S)−N−(ベンジルオキシ)−2−{[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−4−メチルペンタン−1−アミンおよび(2S)−N−(ベンジルオキシ)−2−[(4−ビフェニル−4−イルピペラジン−1−イル)カルボニル]−4−メチルペンタン−1−アミンの群から選択される、請求項18に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−517364(P2009−517364A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541710(P2008−541710)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068574
【国際公開番号】WO2007/060132
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507348713)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (29)
【Fターム(参考)】