説明

N−ヒドロキシアミド誘導体及びその使用

本発明は、式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体、及び特に自己免疫疾患、炎症性疾患、循環器疾患、神経変性病、癌、呼吸器疾患及び線維症、例えば多発性硬化、関節炎、気腫、慢性閉塞性肺疾患、肝臓及び肺繊維症の処置及び/又は予防ためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体、それらの医薬組成物、それらを製造する方法、並びに自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患、循環器疾患、神経変性病、癌、呼吸器疾患及び線維症の処置及び/又は予防ためのそれらの使用に関する。具体的には、本発明は、マトリクス・メタロプロテイナーゼ、特にゼラチナーゼ及びメタロエラスターゼ(metalloelastase)の活性又は機能を調節、特に阻害するためのN−ヒドロキシアミド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロプロテイナーゼは、活性部位における金属イオン(亜鉛)への依存に由来するプロテイナーゼ(酵素)のスーパーファミリーである。
【0003】
マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMPs)は、組織又はマトリクスの様々な成分、例えばコラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン及びエラスチンを加水分解する1つの主な生物学的機能を有するメタロプロテイナーゼのサブファミリーを形成する。
【0004】
マトリクス・メタロプロテイナーゼは、それらの機能及び基質により更に分けられ(Visse al.,2003,Circ.Res.,92,827−839)、コラゲナーゼ(MMP−1、MMP−8、MMP−13及びMMP−18)、ゼラチナーゼ(MMP−2及びMMP−9)、ストロメライシン(MMP−3、MMP−10及びMMP−11)、膜型MMP(MT−MMP−1からMT−MMP−6及びMMP−14、MMP−15、MMP−16、MMP−17、MMP−24及びMMP−25)、マトリリシン(MMP−7及びMMP−26)及び他の未分類MMP、例えばメタロエラスターゼ(MMP−12)、エナメリシン(enamelysin)(MMP−20)、エプリシン(epilysin)(MMP−28)、MMP−19、MMP−22及びMMP−23を含んでなる。
【0005】
結合組織の分解における役割の他に、MMPは、TNF−アルファの生合成、翻訳後タンパク質分解プロセシング、又は生物学的に重要な膜タンパク質のシェディング(shedding)に関与する(Hooper et al,1997,Biochem J.,321,265−279)。MMPは、例えば悪性病変の局所的成長及び拡大に寄与するので、抗腫瘍剤の開発の標的であった(Fingleton et al,2003,Expert Opin.Ther.Targets,7(3):385−397)。疾患、例えば関節炎のような炎症性疾患(Clark et al,2003,Expert.Opin.Ther Targets,7(1):19−34及びLiu et al,2004,Arthritis and Rheumatism,50(10),3112−3117)、呼吸器疾患、例えば気腫、アテローム性動脈硬化(Galis et al,2002,Circ.Res.,90:251−262)、神経疾患、例えば変性神経系疾患、多発性硬化(Leppert et al,2001,Brain Res.Rev.,36:249−257)、歯周炎(Ingman et al,1996,J.Clin.Periodontal,23:1127−1132)、早期陣痛(Makrakis et al,2003,J.Matern Fetal & Neonatal Medicine,14(3):170−6)、及び創傷治癒は、MMPの発現及び/又は活性に関連することが実証されてきた。
【0006】
様々なマトリクス・メタロプロテイナーゼ阻害剤(MMPI)が開発されてきた(Skiles et al,2001,Current Medicinal Chemistry,8,425−474;Peterson,2004,Heart Failure Reviews,9,63−79;Henrotin et al,2002,Expert Opin.Ther.Patents,12(1):29−43)。しかしながら、多くのMMPIは、用量を制限する副作用として骨格筋(muscoskeletal)症候群(腱炎、線維増殖、ミラシア(mylasia)、関節痛(arthralasia))を示す。MMP−1又はMMP−14の阻害はこれらの作用に関与し得ることが提案されてきた。
【0007】
従って、十分に規定された特異性プロファイルを有するマトリクス・メタロプロテイナーゼ阻害剤を開発する必要性が増大している。
【0008】
特にMMP−1に対する特異的阻害剤が報告されてきた、例えばMMP−13阻害剤(Stotnicki et al,2003,Current Opinion in Drug Discovery and Development,6(5):742−759)、MMP−12阻害剤(WO 01/83461)、MMP−2及びMMP−9阻害剤(Wada et al,2002,J.Biol.Chem.45,219−232)。
【0009】
いくつかの広く拡大した疾病におけるメタロプロテイナーゼ経路の高い関連性は、MMP、特にゼラチナーゼ、例えばMMP−2及び/又はMMP−9及び/又はMMP−12の選択的阻害剤を含む阻害剤を開発する必要性を強調する。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明の目的は、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患、循環器疾患、神経変性病、卒中、癌、早期陣痛、子宮内膜症、呼吸器疾患及び線維症に関連する疾患の処置及び/又は予防に適した物質を提供することである。
【0011】
更に、本発明の目的は、多発性硬化、関節リウマチ、気腫、慢性閉塞性肺疾患及び繊維症の処置及び/又は予防に適した物質を提供することである。
【0012】
特に、本発明の目的は、哺乳動物、特にヒトにおいて、マトリクス・メタロプロテイナーゼ、特にゼラチナーゼ及びエラスターゼの活性又は機能を調節、特に阻害することのできる化合物を提供することである。
【0013】
更に、本発明の目的は、自己免疫疾患、炎症性疾患、循環器疾患、神経変性病、卒中、癌、早期陣痛、子宮内膜症、呼吸器疾患及び線維症から選択される介在された疾病の処置のための医薬製剤の新規のカテゴリーを提供することである。
【0014】
更に、本発明の目的は、本発明の化合物を製造する方法を提供することである。
【0015】
最後に、本発明の目的は、自己免疫疾患、炎症性疾患、循環器疾患、神経変性病、卒中、癌、早期陣痛、子宮内膜症、呼吸器疾患及び線維症から選択される疾患の処置及び/又は予防のための方法を提供する。
【0016】
第一の側面において、本発明は式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体を提供する
【化1】

{式中、A、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、詳細な説明において規定される}。
【0017】
第二の側面において、本発明は、薬剤としての使用のための式(II)の化合物を提供する。
【0018】
第三の側面において、本発明は、自己免疫疾患、炎症性疾患、循環器疾患、神経変性病、卒中、癌、早期陣痛、子宮内膜症、呼吸器疾患及び線維症から選択される疾患の処置のための医薬組成物の調製のための式(I)の化合物の使用を提供する。
【0019】
第四の側面において、本発明は、少なくとも1つの式(I)の化合物及び医薬として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0020】
第五の側面において、本発明は、式(I)の化合物を必要とする患者における、式(I)の化合物の投与を含んでなる処置の方法を提供する。
【0021】
第六の側面において、本発明は、式(I)の化合物の合成の方法を提供する。
【0022】
第七の側面において、本発明は、式(IV)の化合物を提供する
【化2】

{式中、A、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、詳細な説明において規定される}。
【0023】
本発明の詳細な説明
以下の段落は、本発明の化合物を構成する様々な化学部分の定義を提供し、他に明確に設定された定義がより広い定義を提供する場合を除いて、明細書及び特許請求の範囲を通して一様に適用することが意図されている。
【0024】
用語「MMP」は、「マトリクス・メタロプロテイナーゼ」を指す。MMPに関する最近のレビューについては、上記のVisse et al,2003;上記のFingleton et al,2003;上記のClark et al,2003、及びDoherty et al,2002,Expert Opinion Therapeutic Patents 12(5):665−707を参照のこと。
【0025】
このようなMMPの例示的で非制限的な例は、以下のものである:
コラゲナーゼ:通常、コラーゲンベースの組織の破壊に関連する疾病、例えば関節リウマチ及び変形性関節症に関連する:
MMP−1(コラゲナーゼ又は線維芽細胞コラゲナーゼとしても知られている)、基質 コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、ゼラチン、プロテオグリカン。この酵素の過剰発現は、気腫、過角化症及びアテローム性動脈硬化に関連すると考えられ、乳頭癌において単独で過剰発現する。
MMP−8(コラゲナーゼ2、又は好中球コラゲナーゼとしても知られている)、基質 コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンIX、ゼラチン その過剰発現は、非治癒慢性潰瘍をもたらし得る。
MMP−13(コラゲナーゼ3としても知られている)、基質 コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、コラーゲンX、コラーゲンXIV、フィブロネクチン、ゼラチン、乳癌において単独で過剰発現し、関節リウマチに関与するものとして最近同定された。
ストロメライシン:
MMP−3(ストロメライシンIとしても知られている)、基質 コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンIX、コラーゲンX、ラルニニン(larninin)、ナイドジェン(nidogen)、過剰発現は、アテローム性動脈硬化、動脈瘤及び再狭窄に関与すると考えられる。
ゼラチナーゼ−阻害は、癌、特に浸潤及び転移において好ましい効果を発揮すると考えられる。
MMP−2(ゼラチナーゼA、72kDa ゼラチナーゼ、基底膜コラゲナーゼ、又はプロテオグリカナーゼとしても知られている)、基質 コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンX、コラーゲンXI、コラーゲンXIV、エラスチン、フィブロネクチン、ゼラチン、ナイドジェン、タイプIVコラーゲンに対する特異性により腫瘍進行に関連し(固形癌において高い発現が観察され、それらの成長、浸潤、新生血管の発達及び転移する能力に関連すると考えられる)、急性肺炎症及び呼吸促迫症候群に関与すると考えられる(Krishna et al,2004,Expert Opin.Invest.Drugs,13(3):255−267)。
MMP−9(ゼラチナーゼB、又は92kDa ゼラチナーゼとしても知られている)、基質 コラーゲンI、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンX、コラーゲンXIV、エラスチン、フィブロネクチン、ゼラチン、ナイドジェン。上記酵素は、タイプIVのコラーゲンに対する特異性により腫瘍進行に関連し、外因性要因、例えば大気汚染物質、アレルゲン及びウイルスに応答する好酸球により放出され、多発性硬化(Opdenakker et al,2003,The Lancet Neurology,2,747−756)及びぜんそくにおける炎症反応に関連し、そして急性肺炎症、呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び/又はぜんそく(上記のKrishna et al,2004)に関与すると考えられている。MMP−9は、卒中にも関与すると考えられている(Horstmann et al,2003,Stroke34(9),2165−70)。
未分類MMP:
MMP−12(メタロエラスターゼ、ヒトマクロファージエラスターゼ、又はHMEとしても知られている)、基質 フィブロネクチン、ラルニニン、腫瘍成長阻害及び多発性硬化などの炎症の制御において役割を果たし(Vos et al.,2003,Journal of Neuroimmunology,138,106−114)、気腫、COPD(Belvisi et al.,2003,Inflamm.Res.,52;95−100)、アテローム性動脈硬化、動脈瘤及び再狭窄において病理学的役割を果たすと考えられている。
【0026】
「MMP関連疾患」という表現は、本発明により処置可能な疾患を指し、そのような疾患の原因に関係なく、少なくとも1つのMMPの発現及び/又は活性が減少される必要がある全ての疾患を包含する。そのような疾患としては、例えば不適切な細胞外マトリクス(ECM)分解により引き起こされるものが挙げられる。
【0027】
このようなMMP関連疾患の例示的で非限定的な例:
癌、例えば乳癌及び固形腫瘍;炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患及び神経炎症(neuroinflammation)、例えば多発性硬化;肺疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、ぜんそく、急性肺損傷、及び急性呼吸促迫症候群;歯の疾病、例えば歯周病及び歯肉炎;関節及び骨疾患、例えば変形性関節症及び関節リウマチ;肝疾患、例えば肝線維症、肝硬変及び慢性肝疾患;線維症、例えば肺線維症、膵炎、狼瘡、糸球体硬化、全身性硬化皮膚線維症、放射線照射後繊維症及び嚢胞性線維症;血管病理、例えば大動脈瘤、アテローム性動脈硬化、高血圧、心筋症及び心筋梗塞;再狭窄;眼科疾患、例えば糖尿病性網膜症、乾性眼症候群、黄斑変性及び角膜潰瘍、及び中枢神経系の変性疾患、例えば筋萎縮性側索硬化。
【0028】
「C1−C6−アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基を指す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシルなどの基により例示される。 類推により、「C1−C12−アルキル」は、1〜2個の炭素原子を有する一価アルキル基を指し、例えば「C1−C6−アルキル」基及びヘプチル、オクチル、ノニル、デカノイル、ウンデカノイル、及びドデカノイル基であり、「C1−C1O−アルキル」は、1〜10個の炭素原子を有する一価アルキル基を指し、「C1−C8−アルキル」は、1〜8個の炭素原子を有する一価アルキル基を指し、「C1−C5−アルキル」は、1〜5個の炭素原子を有する一価アルキル基を指す。
【0029】
「ヘテロアルキル」は、C1−C12−アルキル、好ましくはC1−C6−アルキルを指し、ここで、少なくとも1つの炭素は、O、N又はSから選択されるヘテロ原子により置換され、例えば2−メトキシエチルである。
【0030】
「アリール」は、単環(例えば、フェニル)又は多縮合環(例えば、ナフチル)を有する、6〜14個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環式基を指す。アリールとしては、フェニル、ナフチル、フェナントレニル(phenantrenyl)などである。
【0031】
「C1−C6−アルキルアリール」は、C1−C6−アルキル置換基を有するアリール基を指し、例えばメチルフェニル、エチルフェニルなどである。
【0032】
「アリールC1−C6−アルキル」は、アリール置換基を有するC1−C6−アルキルを指し、例えば3−フェニルプロパノイル、ベンジルなどである。
【0033】
「ヘテロアリール」は、単環式芳香族複素環、又は二環式若しくは三環式縮合環芳香族複素環基を指す。芳香族複素環基の具体的な例としては、任意に置換されたピリジル、ピロリル、ピリミジニル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、l,3,4−オキサジアゾリル、l,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、ベンゾフリル、[2,3−ジヒドロ]ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イソベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾ[l,2−a]ピリジル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリジニル、キナゾリニル、フタラジニル、キノキサリニル、シノリニル、ナフチリジニル、ピリド[3,4−b]ピリジル、ピリド[3,2−b]ピリジル、ピリド[4,3−b]ピリジル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、5,6,7,8−テトラヒドロキノリル、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、キサンテニル又はベンゾキノリルが挙げられる。
【0034】
「C1−C6−アルキルヘテロアリール」は、C1−C6−アルキル置換基を有するヘテロアリール基を指し、例えばメチルフリルなどである。
【0035】
「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」は、ヘテロアリール置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えばフリルメチルなどである。
【0036】
「C2−C6−アルケニル」は、好ましくは2〜6個の炭素原子を有し、少なくとも1又は2個のアルケニル不飽和部位を有するアルケニル基を指す。好ましいアルケニル基としては、エテニル(−CH=CH2)、n−2−プロペニル(アリル、−CH2CH=CH2)などが挙げられる。
【0037】
「C2−C6−アルケニルアリール」は、C2−C6−アルケニル置換基を有するアリール基を指し、例えばビニルフェニルなどである。
【0038】
「アリールC2−C6−アルケニル」は、アリール置換基を有するC2−C6−アルケニル基を指し、例えばフェニルビニルなどである。
【0039】
「C2−C6−アルケニルヘテロアリール」は、C2−C6−アルケニル置換基を有するヘテロアリール基を指し、例えばビニルピリジニルなどである。
【0040】
「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」は、ヘテロアリール置換基を有するC2−C6−アルケニル基を指し、例えばピリジニルビニルなどである。
【0041】
「C2−C6−アルキニル」は、好ましくは2〜6個の炭素原子を有し、少なくとも1−2個のアルキニル不飽和部位を有するアルキニル基を指し、好ましいアルキニル基としては、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CH2C≡CH)などが挙げられる。
【0042】
「C3−C6−シクロアルキル」は、単環(例えば、シクロヘキシル)又は多縮合環(例えば、ノルボルニル)を有する3〜8個の炭素原子の飽和炭素環式基を指す。C3−C6−シクロアルキルとしては、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニルなどが挙げられる。
【0043】
「ヘテロシクロアルキル」は、上記の定義のC3−C6−シクロアルキル基を指し、ここで最大で3個の炭素原子は、O、S、NR(Rは、水素又はメチルとして規定される)から成る群から選択されるヘテロ原子により置換される。ヘテロシクロアルキルとしては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。
【0044】
「C1−C6−アルキルシクロアルキル」は、C1−C6−アルキル置換基を有するC3−C6−シクロアルキル基を指し、例えばメチルシクロペンチルなどである。
【0045】
「シクロアルキルC1−C6−アルキル」は、C3−C6−シクロアルキル置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば3−シクロペンチルプロピルなどである。
【0046】
「C1−C6−アルキルヘテロシクロアルキル」は、C1−C6−アルキル置換基を有するヘテロシクロアルキル基を指し、例えば1−メチルピペラジンなどである。
【0047】
「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」は、ヘテロシクロアルキル置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば4−メチルピペリジルなどである。
【0048】
「カルボキシ」は、基−C(O)OHを指す。
【0049】
「カルボキシC1−C6−アルキル」は、カルボキシ置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば2−カルボキシエチルなどである。
【0050】
「アシル」は、基−C(O)Rを指し、ここで、Rとしては、「C1−C12−アルキル」、好ましくは「C1−C6−アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C3−C6−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリールC1−C6−アルキル」、「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「C3−C8−シクロアルキルC1−C6−アルキル」、又は「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」が挙げられる。
【0051】
「アシルC1−C6−アルキル」は、アシル置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えばアセチル、2−アセチルエチルなどである。
【0052】
「アシルアリール」は、アシル置換基を有するアリール基を指し、例えば2−アセチルフェニルなどである。
【0053】
「アシルオキシ」は、基−OC(O)Rを指し、ここで、Rとしては、H、「C1−C6−アルキル」、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C8−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」が挙げられる。
【0054】
「アシルオキシC1−C6−アルキル」は、アシルオキシ置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えばプロピオン酸エチルエステルなどである。
【0055】
「アルコキシ」は、基−O−Rを指し、ここで、Rとしては、「C1−C6−アルキル」又は「アリール」又は「ヘテロアリール」又は「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」が挙げられる。好ましいアルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、フェノキシなどが挙げられる。
【0056】
「アルコキシC1−C6−アルキル」は、C1−C6−アルキル置換基を有するアルコキシ基を指し、例えばメトキシ、メトキシエチルなどである。
【0057】
「アルコキシカルボニル」は、基−C(O)ORを指し、ここでRとしては、H、「C1−C6−アルキル」又は「アリール」又は「ヘテロアリール」又は「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアルキル」が挙げられる。
【0058】
「アルコキシカルボニルC1−C6−アルキル」は、アルコキシカルボニル置換基を有するC1−C5−アルキル基を指し、例えば2−(ベンジルオキシカルボニル)エチルなどである。
【0059】
「アミノカルボニル」は、基−C(O)NRR’を指し、ここで、各R、R’は各々、独立に、水素又はC1−C6−アルキル又はアリール又はヘテロアリール又は「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」が挙げられ、例えばN−フェニルホルムアミドである。
【0060】
「アミノカルボニルC1−C6−アルキル」は、アミノカルボニル置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば2−(ジメチルアミノカルボニル)エチル、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどである。
【0061】
「アシルアミノ」は、基−NRC(O)R’を指し、ここで、R、R’は各々、独立に、水素、「C1−C6−アルキル」、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C6−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」が挙げられる。
【0062】
「アシルアミノC1−C6−アルキル」は、アシルアミノ置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば2−(プロピオニルアミノ)エチルなどである。
【0063】
「ウレイド」は、基−NRC(O)NR’R’’を指し、ここで、R、R’、R’’は各々、独立に、水素、「C1−C6−アルキル」、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C8−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」であり、R’及びR’’は、それらが結合する窒素原子と一緒に、任意に3−8−員ヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0064】
「ウレイドC1−C6−アルキル」は、ウレイド置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば2−(N’−メチルウレイド)エチルなどである。
【0065】
「カルバメート」は、基−NRC(O)OR’を指し、ここで、R、R’は各々、独立に、水素、「C1−C6−アルキル」、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C8−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C1−C6−アルキルアリール」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」である。
【0066】
「アミノ」は、基−NRR’を指し、ここで、R、R’は各々、独立に、水素又は「C1−C6−アルキル」又は「アリール」又は「ヘテロアリール」又は「C1−C6−アルキルアリール」又は「C1−C6−アルキルヘテロアリール」、又は「シクロアルキル」、又は「ヘテロシクロアルキル」であり、R及びR’は、それらが結合する窒素と一緒に、任意に3〜8員ヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0067】
「アミノC1−C6−アルキル」は、アミノ置換基を有するC1−C5−アルキル基を指し、例えば2−(l−ピロリジニル)エチルなどである。
【0068】
「アンモニウム」は、正荷電基−N+RR’R’’を指し、ここでR、R’、R’’は各々、独立に、「C1−C6−アルキル」又は「C1−C6−アルキルアリール」又は「C1−C6−アルキルヘテロアリール」、又は「シクロアルキル」、又は「ヘテロシクロアルキル」であり、R及びR’は、それらが結合する窒素と一緒に、任意に、3〜8員ヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0069】
「アンモニウムC1−C6−アルキル」は、アンモニウム置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば1−エチルピロリジニウムなどである。
【0070】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード原子を指す。
【0071】
「スルホニルオキシ」は、基−OSO2−Rを指し、ここで、Rは、H、「C1−C6−アルキル」、ハロゲンで置換された「C1−C6−アルキル」から選択され、例えば−OSO2−CF3基、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C6−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」である。
【0072】
「スルホニルオキシC1−C6−アルキル」は、スルホニルオキシ置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば2−(メチルスルホニルオキシ)エチルなどである。
【0073】
「スルホニル」は、基「−SO2−R」を指し、ここで、Rは、H、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C1−C6−アルキル」、ハロゲンで置換された「C1−C6−アルキル」から選択され、例えば−SO2−CF3基、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C8−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」、又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」である。
【0074】
「スルホニルC1−C6−アルキル」は、スルホニル置換基を有するC1−C5−アルキル基を指し、例えば2−(メチルスルホニル)エチルなどである。
【0075】
「スルフィニル」は、基「−S(O)−R」を指し、ここでRは、H、「C1−C6−アルキル」、ハロゲンで置換された「C1−C6−アルキル」から選択され、例えば−SO−CF3基、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C8−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」である。
【0076】
「スルフィニルC1−C6−アルキル」は、スルフィニル置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば2−(メチルスルフィニル)エチルなどである。
【0077】
「スルファニル」は、基−S−Rを指し、ここでRとしては、H、「C1−C6−アルキル」、ハロゲンで置換された「C1−C6−アルキル」が挙げられ、例えば−SO−CF3基、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C8−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「アルキニルヘテロアリールC2−C6」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」である。好ましいスルファニル基としては、メチルスルファニル、エチルスルファニルなどが挙げられる。
【0078】
「スルファニルC1−C6−アルキル」は、スルファニル置換基を有するC1−C5−アルキル基を指し、例えば2−(エチルスルファニル)エチルなどである。
【0079】
「スルホニルアミノ」は、基−NRSO2−R’を指し、ここでR、R’としては各々、独立して、水素、「C1−C6−アルキル」、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C8−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」が挙げられる。
【0080】
「スルホニルアミノC1−C6−アルキル」は、スルホニルアミノ置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば2−(エチルスルホニルアミノ)エチルなどである。
【0081】
「アミノスルホニル」は、基−SO2−NRR’を指し、ここでR、R’としては各々、独立して水素、「C1−C6−アルキル」、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「C3−C8−シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1−C6−アルキル」又は「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「アリールC2−C6−アルケニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルケニル」、「アリールC2−C6−アルキニル」、「ヘテロアリールC2−C6−アルキニル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」が挙げられる。
【0082】
「アミノスルホニルC1−C6−アルキル」は、アミノスルホニル置換基を有するC1−C6−アルキル基を指し、例えば2−(シクロヘキシルアミノスルホニル)エチルなどである。
【0083】
「置換又は非置換」:個々の置換基の定義により特段制限されない限り、「アルケニル」、「アルキニル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」などのような上記の基は、「C1−C6−アルキル」、「C2−C6−アルケニル」、「C2−C6−アルキニル」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリールC1−C6−アルキル」、「ヘテロアリールC1−C6−アルキル」、「シクロアルキルC1−C6−アルキル」、「ヘテロシクロアルキルC1−C6−アルキル」、「アミノ」、「アンモニウム」、「アシル」、「アシルオキシ」、「アシルアミノ」、「アミノカルボニル」、「アルコキシカルボニル」、「ウレイド」、「アリール」、「カルバメート」、「ヘテロアリール」、「スルフィニル」、「スルホニル」、「アルコキシ」、「スルファニル」、「ハロゲン」、「カルボキシ」、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロなどからなる群から選択される1〜5個の置換基で任意に置換することができる。
【0084】
「医薬として許容される塩又は複合体」は、以下で特定する式(I)の化合物の塩又は複合体を指す。このような塩の例としては、式(I)の化合物の、有機塩基又は無機塩基、例えば金属カチオン、例えばアルカリ金属(ナトリウム、カリウム又はリチウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム又はマグネシウム)からなる群において選択されるものの水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩との反応により形成される塩基付加塩が挙げられるが、これらに限定されない。メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−Me−D−グルカミン、N,N’−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミン、トロメタミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルモルホリン、プロカイン、ピペリジン、ピペラジンなどから得られるアミン塩は、本発明の範囲内であると考慮される。
【0085】
無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)により形成される酸付加塩、並びに有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、及びポリガラクツロンにより形成される塩も含まれる。
【0086】
「薬剤活性誘導体」は、受容者への投与の際に、本明細書中で開示する活性を直接的又は間接的に供することのできる任意の化合物を指す。用語「間接的」は、内因性酵素又は代謝により薬剤の活性形態に変換され得るプロドラッグも包含する。当該プロドラッグは、活性薬剤化合物自体及び化学的マスキング基から成る。このようなマスキング基は、式(I’)の環式アセトニドであることができる(ここで、Yは、メチル又は水素であり、Y’は、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、クロロ及びフロオロから選択される1〜3個の置換基により任意に置換されたメチル、C2−C4−アルキル、フェニル、ベンジル;A、R1、R2、R4、R5、R6及びR7は、詳細な説明で規定される)。
【化3】

【0087】
「鏡像体過剰」(ee)は、不斉合成、すなわち非ラセミ出発物質及び/又は試薬を必要とする合成、或いは少なくとも1つのエナンチオ選択性段階を含んで成る合成(それにより、少なくとも約52%eeのオーダーで過剰の1つの鏡像体が得られる)により得られる生成物を指す。
【0088】
「インターフェロン」又は「IFN」は、本明細書中で用いる場合、文献におけるようなものとして規定される任意の分子を含むことが意図されており、例えば上記の「背景技術」において言及した任意のタイプのIFNを含む。特に、IFN−α、IFN−β及びIFN−γは、上記の定義に含まれる。IFN−βは、本発明の好ましいIFNである。本発明に適したIFN−βは、例えばRebif(登録商標)(Serono)、Avonex(登録商標)(Biogen)又はBetaferon(登録商標)(Schering)として市販されている。
【0089】
用語「インターフェロン−ベータ(IFN−ベータ又はIFN−β)」は、本明細書中で用いる場合、体液から単離することにより得られる或いは原核生物宿主又は真核生物宿主からDNA組み換え技術により得られる、特にヒト起源の線維芽細胞インターフェロン、並びにその塩、機能的誘導体、変異体、類似体及び活性フラグメントを含むことが意図されている。好ましくは、IFN−ベータは、組み換えインターフェロンベータ−1aを意味することが意図されている。
【0090】
本発明に適したIFN−βは、例えばRebif(登録商標)(Serono)、Avonex(登録商標)(Biogen)又はBetaferon(登録商標)(Schering)として市販されている。ヒト起源のインターフェロンの使用も、本発明により好ましい。用語インターフェロンは、本明細書中で用いる場合、その塩、その機能的誘導体、変異体、類似体及び活性フラグメントを包含することが意図されている。
【0091】
Rebif(登録商標)(組み換えインターフェロン−β)は、多発性硬化(MS)に対するインターフェロン治療における最新の開発成果であり、処置において顕著な進歩を示す。Rebif(登録商標)は、インターフェロン(IFN)−β 1aであり、哺乳動物細胞株から産生される。1週間に3回インターフェロンベータ−1aを皮下に与えると、再発寛解型多発性硬化(RRMS)の処置において効果があることが確立された。インターフェロンベータ−1aは、再発の回数及び重度を軽減し、疾患及びMRIで測定した場合の疾患活動性の負荷を軽減することにより、MSの長期的な治療において好ましい効果を有し得る。
【0092】
本発明の再発寛解型多発性硬化の処置におけるIFN−βの用量は、用いるIFN−βのタイプに依存する。
【0093】
本発明によると、IFNがE.コリ(E.Coli)において産生される組み換えIFN−β1b(商標Betaseron(登録商標)の下で市販)である場合、それは、好ましくは、一人あたり、約250〜300μg又は8MIU〜9.6MIUの用量で、一日おきに皮下に投与することができる。
【0094】
本発明によると、IFNがチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)において産生される組み換えIFN−β1a(商標Avonex(登録商標)の下で市販)である場合、それは、好ましくは、一人あたり、約30〜33μg又は6MIU〜6.6MIUの用量で、週に1回筋肉内に投与することができる。
【0095】
本発明によると、IFNがチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)において産生される組み換えIFN−β1a(商標Rebif(登録商標)の下で市販)である場合、それは、好ましくは、一人あたり、約22〜44μg又は6MIU〜12MIUの用量で、週に3回(TIW)皮下に投与することができる。
【0096】
本発明の化合物は、医薬として許容されるその塩も含んで成る。式(I)の好ましい医薬として許容される塩は、医薬として許容される酸により形成される酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩若しくは重硫酸塩、リン酸塩若しくはリン酸水素、酢酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、及びパラ−トルエンスルホン酸塩である。
【0097】
本発明の化合物は、マトリクス・メタロプロテイナーゼ、特にゼラチナーゼ及びエラスターゼ、例えばMMP−2及び/又はMMP−9及び/又はMMP−12のモジュレーターであることが見出された。マトリクス・メタロプロテイナーゼが本発明の化合物により阻害される場合、阻害されたMMPは、その酵素学的、生物学的及び/又は薬理学的効果を発揮することができない。従って、本発明の化合物は、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患、循環器疾患、早期陣痛、子宮内膜症、神経変性病、卒中、癌、呼吸器疾患及び線維症の処置及び予防に有用である。
【0098】
1つの実施態様において、本発明は式(I)の誘導体を提供する
【化4】

{式中:
Aは−C(B)−及びNから選択され;
BはHであるか、或いはBはR5又はR7のいずれかとの結合を形成し;
1は以下のものから選択される、H;任意に置換されたC1−C6アルキル;
任意に置換されたC2−C6アルケニル;任意に置換されたC2−C6アルキニル;
任意に置換されたC3−C8−シクロアルキル、例えばシクロヘキシル;
任意に置換されたヘテロシクロアルキル;
任意に置換されたアリール、例えば任意に置換されたフェニル、例えばフェニル、フルオロフェニル(例えば、2−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、3−クロロフェニル)、クロロフェニル(例えば、2−クロロフェニル、4−クロロフェニル)、メトキシフェニル(例えば、4−メトキシフェニル)、エトキシフェニル(例えば、4−エトキシフェニル)、シアノフェニル(例えば、2−シアノフェニル)、トリフルオロメチルフェニル(例えば、4−トリフルオロメトキシフェニル)、ビフェニル(例えば、4−ビフェニル)及び4−クロロ−2−フルオロフェニル、2−フルオロ−5−メトキシフェニル;
任意に置換されたヘテロアリール、例えば任意に置換されたピリジニル、例えばピリジニル、メチルピリジニル(例えば、4−メチルピリジン−2−イル、6−メチルピリジン−2−イル)、クロロピリジニル(例えば、6−クロロピリジン−2−イル、5−クロロピリジン−2−イル、3,5−ジクロロピリジン−4−イル)、トリフルオロメチルピリジニル(例えば、3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル、4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル、5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)、シアノピリジニル(例えば、5−シアノピリジン−2−イル)、フェニルピリジニル(例えば、5−フェニルピリジン−2−イル)、及び任意に置換された縮合ピリジニル(例えば、4−[6−メチル−2−(トリフルオロメチル)キノリン−4−イル]);例えば、任意に置換されたピラジニル(例えば、4−ピラジン−2−イル);例えば、任意に置換されたチアジアゾリル、例えば3−フェニルチアジアゾリル(例えば、3−フェニル−l,2,4−チアジアゾリル−5−イル);例えば、任意に置換されたピリミジニル(例えば、4−ピリミジニル−2−イル);例えば、任意に置換されたオキサジアゾリル、例えば5−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、4−ピリジン−4−イル−l,2,4−オキサジアゾール−3−イル、及び5−(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル;
任意に置換されたC3−C8−シクロアルキルC1−C6アルキル;
任意に置換されたヘテロシクロアルキルC1−C6アルキル、例えば2−モルホリン−4−イルエチル;任意に置換されたヘテロアリールC1−C6アルキル、例えば2−チエニルエチル;
任意に置換されたアミノ、例えば任意に置換されたフェニルアミノ(例えば、フェニルアミノ、3−メトキシフェニルアミノ、3−(ジメチルアミノ)フェニルアミノ、4−エトキシフェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ(例えば、4−トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル、3−アミノピリジン−2−イル);及び
任意に置換されたアルコキシ、例えば4−(ピリジン−2−イルオキシ)、4−(トリフルオロメチル)フェノキシ、2−クロロフェノキシ;
2は、Hであり;
3は、H、任意に置換されたC1−C6アルキル、任意に置換されたC2−C6アルケニル、及び任意に置換されたC2−C6アルキニルから選択され;
4、R5、R6及びR7は独立に以下のものから選択され、H;任意に置換されたC1−C6アルキル、例えばメチル;任意に置換されたC2−C6アルケニル;任意に置換されたC2−C6アルキニル;又は、R4及びR7は、一緒に−CH2−結合を形成することができ、例えばピペラジン環と一緒に、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル環を形成する}、
及び、鏡像体、ジアステレオマー及びそのラセミ酸塩形態のような光学活性形態、及びその医薬として許容される塩。
【0099】
好ましい実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、R1は、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリールから選択される)。
【0100】
更に好ましい実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、R1は、任意に置換されたアリール、例えば任意に置換されたフェニル、例えばフルオロフェニル(例えば、4−フルオロフェニル)、メトキシフェニル(例えば、4−トリフルオロメトキシフェニル)、及びビフェニル(例えば、4−ビフェニル−4イル)である)。
【0101】
別の好ましい実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、R3はHである)。
【0102】
別の好ましい実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、R5、R6及びR7はHである)。
【0103】
別の好ましい実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、R4は、H及び任意に置換されたC1−C6アルキル、例えばメチルから選択される)。
【0104】
更なる実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、R4はHである)。
【0105】
更なる実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、R4はメチルである)。
【0106】
別の好ましい実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、AはNである)。
【0107】
別の好ましい実施態様において、本発明は、式(I)の誘導体を提供する(ここで、R1は、任意に置換されたアリール、例えば任意に置換されたフェニルであり;R3、R5、R6及びR7は、Hであり;R4は、H及びメチルから選択され;AはNである)。
【0108】
本発明の化合物は、特に以下の群から選択されるものを含む:
(2R)−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド;
(2S)−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド;
(2S)−N,2−ジヒドロキシ−4−{(2R)−2−メチル−4−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}−4−オキソブタンアミド;
(2S)−4−[(2R)−4−ビフェニル−4−イル−2−メチルピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド。
【0109】
本発明の別の実施態様において、薬剤としての使用のための式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体が提供される。
【0110】
本発明の別の実施態様において、少なくとも1つの本発明のN−ヒドロキシアミド誘導体、及びその医薬として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含んで成る医薬組成物が提供される。
【0111】
本発明の別の実施態様において、自己免疫疾患、炎症性疾患、卒中、循環器疾患、神経変性病、癌、早期陣痛、子宮内膜症、呼吸器疾患及び線維症、例えば多発性硬化、炎症性腸疾患、関節リウマチ、気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝臓及び繊維症、例えば肝臓及び肺、膵臓線維症及び肝臓繊維症から選択される疾患の予防及び/又は処置のための薬剤の調製のための式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体の使用が提供される。
【0112】
本発明の別の実施態様において、マトリクス・メタロプロテイナーゼ活性の調節、特に阻害のための医薬製剤の調製のための式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体の使用を提供する。特に、本発明の使用が提供され、ここで、当該マトリクス・メタロプロテイナーゼは、MMP−2、MMP−9及びMMP−12から選択される。好ましくは、本発明の化合物は、MMP−1を超えてMMP−2、MMP−9及び/又はMMP−12から選択されるメタロプロテイナーゼの選択的阻害剤である。
【0113】
別の実施態様において、本発明は、式(I)の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含んで成る、疾病の処置及び/又は予防の方法を提供し、ここで、当該疾病は、自己免疫疾患、炎症性疾患、循環器疾患、早期陣痛、子宮内膜症、神経変性病、卒中、癌、呼吸器疾患及び線維症、例えば多発性硬化、関節リウマチ、気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び繊維症、例えば肝臓及び繊維症、例えば肺、膵臓及び肝臓線維症から選択される。
【0114】
別の実施態様において、本発明は、式(IV)の化合物を誘導体H2NO−R8と反応させる段階を含んで成る、本発明のN−ヒドロキシアミド誘導体の調製のための方法を提供する:
【化5】

{式中、A、R1、R2、R4、R5、R6及びR7は上記で規定され、R8は、H及び保護基、例えばt−ブチル、ベンジル、トリアルキルシリル、テトラヒドロピラニルから選択される}。
【0115】
更なる実施態様において、本発明は、脱保護段階(R8除去、R8はHでない場合)を任意に更に含んで成る、本発明のN−ヒドロキシアミド誘導体の調製のための方法を提供する。
【0116】
別の実施態様において、本発明は、式(IV)の化合物を提供する:
【化6】

{式中、A、R1、R2、R4、R5、R6及びR7は上記で規定される}。
【0117】
更なる実施態様において、本発明は、以下の群から選択される式(IV)の化合物を提供する:
(5R)−5−{2−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン;
(5S)−5−{2−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン;
(5S)−2,2−ジメチル−5−[2−((2R)−2−メチル−4−{4−[(トリフルオロメチル)オキシ]フェニル}ピペラジン−1−イル)−2−オキソエチル]−1,3−ジオキソラン−4−オン;
(5S)−5−{2−[(2R)−4−ビフェニル−4−イル−2−メチルピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン;
【0118】
本発明の化合物は、Advanced Chemistry Development Inc.,ACD/Labs(7.06 Release)からのプログラム「ACD/Name」において用いられる基準により名前をつけた。
【0119】
式(I)の化合物は、自己免疫疾患、炎症性疾患、循環器疾患、早期陣痛、子宮内膜症、神経変性病、卒中、癌、早期陣痛、子宮内膜症、呼吸器疾患及び線維症、例えば多発性硬化、関節リウマチ、気腫、慢性閉塞性肺疾患及び繊維症、例えば肝臓及び繊維症、例えば肺、膵臓及び肝臓線維症の処置及び/又は予防に有用である。
【0120】
別の実施態様において、本発明の化合物は、自己免疫疾患、特に脱髄疾患、例えば多発性硬化の処置において、単独又は自己免疫疾患の処置に有用な補助剤(co−agent)と併用して用いることができ、ここで、当該補助剤は、例えば以下の化合物から選択される:
(a)インターフェロン、例えばペグ化又は非ペグ化インターフェロン、例えば皮下、筋肉内又は経口投与されるインターフェロン、好ましくはインターフェロンベータ;
(b)グラチラマー、例えば酢酸塩形態のグラチラマー;
(c)任意に抗増殖/抗腫瘍活性を有する免疫抑制剤、例えばミトキサントロン、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミド、又はステロイド、例えばメチルプレドニゾロン、プレドニゾン又はデキサメタゾン、又はステロイド分泌剤、例えばACTH;
(d)アデノシン・デアミナーゼ阻害剤、例えばクラドリビン;
(e)VCAM−1発現の阻害剤又はそのリガンドのアンタゴニスト、例えばα4/β1インテグリンVLA−4及び/又はアルファ−4−ベータ−7インテグリンのアンタゴニスト、例えばナタリズマブ(ANTEGRENO)。
【0121】
更なる補助剤、例えば抗炎症剤(特に、脱髄疾患、例えば多発性硬化のための)を以下に記載する:
【0122】
更なる抗炎症剤は、WO02/080897に記載されたテリフルノミドである。
【化7】

【0123】
また、更なる抗炎症剤は、EP−727406、WO2004/028251及びWO2004/028251に記載されたフィンゴリモドである。
【化8】

【0124】
また、更なる抗炎症剤は、WO99/55678に記載されたラキニモドである。
【化9】

【0125】
また、更なる抗炎症剤は、WO02/28866に記載されたテンシロリムス(Tensirolimus)である。
【化10】

【0126】
また、更なる抗炎症剤は、WO98/48802に記載されたキサリプロデン(xaliprodene)である。
【化11】

【0127】
また、更なる抗炎症剤は、WO03/068230に記載されたデスカル・ピルフェニドン(deskar pirfenidone)である。
【化12】

【0128】
また、更なる抗炎症剤は、WO01/47920に記載された以下のベンゾチアゾール誘導体である。
【化13】

【0129】
また、更なる抗炎症剤は、WO03/070711に記載されたヒドロキサム酸誘導体の1つである。
【0130】
また、更なる抗炎症剤は、WO2004/043965に記載されたMLN3897である。
【化14】

【0131】
また、更なる抗炎症剤は、WO99/67230に記載されたCDP323である。
【化15】

【0132】
また、更なる抗炎症剤は、WO01/45698に記載されたシンバスタチンである。
【化16】

【0133】
また、更なる抗炎症剤は、US5,540,938に記載されたファンプリジンである。
【0134】
本発明の化合物は、その互変異性体、その幾何異性体、鏡像体、ジアステレオマーのようなその光学活性形態、及びそのラセミ酸形態、並びにその医薬として許容される塩も含む。式(VI)の好ましい医薬として許容される塩は、医薬として許容される酸により形成される酸付加塩であり、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩又は重硫酸塩、リン酸塩又はリン酸水素、酢酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、及びパラ−トルエンスルホン酸塩である。
【0135】
本発明において例示される誘導体は、以下の一般的な方法及び手順を用いて、容易に入手可能な出発物質から調製することができる。典型的な又は好ましい実験条件(すなわち、反応温度、時間、試薬のモル、溶媒など)が与えられた場合、別段断りのない限り、他の実験条件を用いることもできることが理解されるだろう。最適な実験条件は、用いる特定の反応物質又は溶媒により変わり得るが、そのような条件は、当業者によりルーチンな最適化手順を用いて決定することができる。
【0136】
医薬として用いる場合、本発明の化合物は、典型的には、医薬組成物の形態で投与される。従って、本発明の化合物及びその医薬として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含んで成る医薬組成物も、本発明の範囲内である。当業者は、医薬組成物を製剤化するのに適した様々なそのような担体、希釈剤又は賦形剤化合物を認識している。
【0137】
本発明の化合物は、通常用いられるアジュバント、担体、希釈剤又は賦形剤と共に、医薬組成物及びその単位用量の形態に入れることができ、そのような形態においては、固体、例えば錠剤又は充填カプセル、又は液体、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル剤、又はそれを充填したカプセル、経口的使用のための全てのもの、非経口(例えば、皮下的使用)用の滅菌注入可能溶液の形態のものとして用いることができる。このような医薬組成物及びその単位用量形態は、更なる活性化合物又は主成分(principle)を含み又は含まずに、通常の比率で原料を含んで成ることができ、このような単位用量形態は、用いられる意図された1日投与量の範囲に相応する活性成分の任意の適切な有効量を含むことができる。
【0138】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、医薬技術において周知の方法で調製することができ、少なくとも1つの活性化合物を含んで成る。一般的に、本発明の化合物は、医薬有効量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、関連状況、例えば処置する症状、選択した投与経路、投与する実際の化合物、年齢、体重、個々の患者の応答、患者の症状の重度などを考慮して、医師により決定されるだろう。
【0139】
本発明の医薬組成物は、様々な経路、例えば経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内及び鼻腔内により投与することができる。経口投与用の組成物は、バルク液体溶液又は懸濁液、或いはバルク粉末の形態をとることができる。しかしながら、より一般的には、組成物は、正確な投薬を容易にする単位用量形態で与えられる。用語「単位用量形態」は、単位用量としてヒト及び他の哺乳動物に適した、物理的に分離した単位を指し、各単位は、適切な医薬賦形剤と共に、所望の治療効果を得るように計算された活性物質の所定の量を含む。典型的な単位用量形態としては、液体組成物の前充填、前測定アンプル又は注射器、或いは固体組成物の場合には丸薬、錠剤、カプセルなどが挙げられる。このような組成物中では、本発明の誘導体は、通常、微量成分(約0.1〜約50重量%、又は好ましくは約1〜約40重量%)であり、残りは様々な賦形剤又は担体及び所望の用量形態を形成するのを助ける加工助剤である。
【0140】
経口投与に適した液体形態としては、適切な水性又は非水性の緩衝液を含む賦形剤、懸濁化剤及び分散剤、着色剤、香料などが挙げられる。固体形態としては、例えば任意の以下の成分、又は類似の性質の化合物が挙げられる:結合剤、例えば微結晶性セルロース、トラガカント・ゴム又はゼラチン;賦形剤、例えばデンプン又はラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル、又はトウモロコシデンプン;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロース又はサッカリン;或いは、着香料、例えばペパーミント、サルチル酸メチル、又はオレンジ香味料。
【0141】
注入可能な組成物は、典型的には、注入可能な滅菌生理食塩水又はリン酸緩衝化生理食塩水又は当業界で知られた他の注入可能な担体に基づいている。上記の通り、このような組成物中の式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体は、典型的には微量成分であり、しばしば0.05〜10重量%の範囲であり、残りは注入可能な担体などである。
【0142】
上記の経口投与のための成分又は注入可能な組成物は、単なる代表である。更なる物質及び加工技術などは、Remington’s Pharmaceutical Sciences(20th Edition,2000,Marck Publishing Company,Easton,Pennsylvania)のパート5に記載されており、これは引用文献により本明細書中に組み込まれる。
【0143】
本発明の化合物は、持続放出形態において又は持続放出薬物送達システムから投与されることもできる。代表的な持続放出物質の記載も、Remington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて組み込まれた物質の中に見出すことができる。
【0144】
本発明の化合物の合成
式(I)の新規の誘導体は、溶液相及び固相化学プロトコルの双方を用いて、いくつかの合成アプローチにより容易に入手可能な出発物質から調製することができる。合成経路の例について説明する。
【0145】
以下の省略は、各々以下の定義を表す:
aq(水性)、eq(当量)、h(時)、g(グラム)、i.p.(腹腔内)、L(リットル)、mg(ミリグラム)、MHz(メガヘルツ)、min.(分)、mm(ミリメーター)、μm(マイクロメーター)、mmol(ミリモル)、mM(ミリモラー)、m.p.(融点)、mL(ミリリットル)、μL(マイクロリットル)、p.o.(経口)、s.c.(皮下)、BINAP(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン)、CDCl3(重水素化クロロホルム)、CH3CN(アセトニトリル)、c−hex(シクロヘキサン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DCM(ジクロロメタン)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、DIEA(ジイソプロピルエチル−アミン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMSO−dβ(重水素化ジメチルスルホキシド)、EDC(l−(3−ジメチル−アミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド)、ESI(エレクトロスプレーイオン化)、Et2O(ジエチルエーテル)、HATU(ジメチルアミノ ([1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イルオキシ)−メチレン]−ジメチル−アンモニウムヘキサフルオロリン酸塩)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、i−PrOH(2−プロパノール)、LC(液体クロマトグラフィー)、MeOH(メタノール)、MS(質量分析)、MTBE(メチルtert−ブチルエーテル)、NMM(N−メチルモルホリン)、NMR(核磁気共鳴)、RT(室温)、PyBOP(登録商標)(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩)、Rt(保持時間)、TBTU(2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩)、TEA(トリエチルアミン)、TFA(トリフルオロ酢酸)、THF(テトラヒドロフラン)、THP(テトラヒドロピラニル)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、UV(紫外線)。
【0146】
合成アプローチ
式(I)の化合物を調製するための好ましい方法は、式(II)のジオキソラン保護ジカルボン酸を適当なアミン(III)とカップリングさせ、中間体(IV)を形成させることから構成される(ここで、A、R1、R2、R4、R5、R6及びR7は、上記で規定される)(以下のスキーム1)。このようなカップリングのための一般的なプロトコルは、以下の実施例において与えられ、標準的なカップリング剤、例えばDIC,EDC、TBTU、DCC、HATU、PyBOP(登録商標)、クロロギ酸イソブチル、1−メチル−2−クロロピリジニウムヨウ化物(Mukaiyama’s試薬)又は他のものを用いて或いは用いずに、塩基、例えばTFA、DIEA、NMMの存在下又は不存在下で、適切な溶媒、例えばDCM、THF又はDMF中で、アミン及びカルボン酸又はカルボン酸誘導体(例えば、塩化アシル)からアミド結合を調製するための当業者に周知の条件及び方法を用いる。
【0147】
【化17】

【0148】
式(III)の化合物は市販されており、又は本明細書中に記載のプロトコルから得ることができる。
【0149】
式(IV)の中間体は、ヒドロキシルアミン又は保護ヒドロキシルアミンH2NO−R8(式中、R8は、保護基、例えばt−ブチル、ベンジル、トリアルキルシリル又は任意の適切な保護基である)と反応させることができ、その後の既知の脱保護段階により、式(I)の化合物を形成する(以下のスキーム2)。
【0150】
【化18】

【0151】
式(II)の中間体は、既知の方法又は本明細書中に記載のプロトコルにより調製することができる。
【0152】
式(I)の化合物を調製するための代替経路は、標準的なカップリング剤、例えばDIC、EDC、TBTU、DCC、HATU、PyBOP(登録商標)、イソブチル、クロロギ酸イソブチル、1−メチル−2−クロロピリジニウムヨウ化物(Mukaiyama’s試薬)を用いる又は用いない、式(V)のカルボン酸のヒドロキシルアミン又は保護ヒドロキシルアミンH2NO−R8(式中、R8は、保護基、例えばt−ブチル、ベンジル、トリアルキルシリル、テトラヒドロピラニル(THP)又は任意の適切な保護基である)とのカップリングであり、その後の既知の脱保護段階により式(I)の化合物を形成することができる(以下のスキーム3)。
【0153】
【化19】

【0154】
以下に記載の実施例において提供するHPLCデータは、以下のように得られた。
HPLCカラム:条件A及びBに対して、Waters Xterra(登録商標) MS C8カラム 50mm×4.6mm 2mL/分の流量 。条件C及びDに対して、Waters Xterra(登録商標) MS C8カラム 150mm×4.6mm 1mL/分の流量。
条件A:H2O中の0.1%のTFAからCH3CN中の0.07%のTFAの8分間のグラジエント。
条件B:95%のH2Oから100%のCH3CNの8分間のグラジエント。
条件C:95%のH2Oから100%のCH3CNの20分間のグラジエント。
条件D:95%のH2Oから40%のCH3CNの20分間のグラジエント。全ての条件に対して、UV検出(マックスプロット(maxplot))。
【0155】
分取HPLCは、Waters Xterra(登録商標) Prep MS C8 10μm カラム 300mm×30mm;UV検出(254nM及び220nM);流量:30mL/分により得られた。以下に記載の実施例中で提供されるMSデータは、以下のように得られた:マススペクトル:LC/MS Waters ZMD(ESI)。以下に記載の実施例中で提供されるNMRデータは、以下のように得られた:1H−NMR:Bruker DPX−300MHz。
【0156】
更なる一般的な方法により、式(I)の化合物は、当業者に周知の適切な相互変換技術を用いて式(I)の代替化合物に変換することができる。
【0157】
上記の一連の一般的な合成方法を、式(I)の化合物及び/又は式(I)の化合物の合成に必要な中間体を得るのに適用することができない場合、当業者に知られた適切な調製方法を用いるべきである。一般的に、式(I)の任意の個々の化合物に対する合成経路は、各分子の具体的な置換基及び必要な中間体の入手容易性に依存するだろう;この場合も、このような因子は、当業者により理解される。全ての保護及び脱保護方法に関しては、Kocienski「Protecting Groups」(Georg Thieme Verlag Stuttgart,New York,1994)、及びGreene and Wuts「Protective Groups in Organic Synthesis」(Wiley Interscience,3rd Edition 1999)を参照のこと。分子上の潜在的に反応性の官能基がマスク又は保護された場合に、特定の反応が最も良く実施され、それにより副反応を回避し、そして/或いは反応の収率を増大させることを、当業者は認識するだろう。保護基部分の例は、上記のKocienski(1994)及び上記のGreene et al.(1999)の中に見出すことができる。特定の反応に対する保護基の必要性及び選択は、当業者に知られており、保護する官能基(ヒドロキシ、アミノ、カルボキシなど)の性質に依存し、その置換基の分子の構造及び安定性は、反応条件の一部分である。
【0158】
本発明の化合物は、適切な溶媒の蒸発からの結晶化により、溶媒分子と共に単離又は精製することができる。式(I)の化合物の医薬として許容される酸付加塩(塩基性中心を有する)は、通常の方法で調製することができる。例えば、遊離塩基の溶液は、適切な酸を用いて、適切に又は適切な溶液中で処理することができ、得られた塩は、ろ過又は反応溶媒の減圧下での蒸発により単離される。医薬として許容される塩基付加塩は、式(I)の化合物の溶液を適切な塩基で処理することにより、類似の方法で得ることができる。両方のタイプの塩が形成され、或いはイオン交換樹脂技術を用いて相互変換され得る。
【0159】
以下において、本発明は、いくつかの実施例により説明されるが、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0160】
以下の市販の試薬/樹脂を用いた:
2,2−ジメトキシプロパン(Fluka)、塩化銅(II)(Aldrich)、HOBt(Aldrich)、EDC(Aldrich)、1−(4−フルオロフェニル)ピペラジン二塩酸塩(Aldrich)、(R)−(−)−2−メチルピペラジン(Astatech)、1−ブロモ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(Aldrich)、4−ブロモビフェニル(Fluka)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン(Fluka)。
【0161】
中間体1:(3R)−1−ビフェニル−4−イル−3−メチル−ピペラジン
【化20】

トルエン(700.00mL)を、30分間窒素を用いて脱気した。(R)−2−メチルピペラジン(30.0g;299.5mmol;1.0当量)、4−ブロモフェニル(73.3g;314.5mmol;1.05当量)、tBuONa(43.18g;449.3mmol;1.5当量)、酢酸パラジウム(II)トリマー(3.36g;15.0mmol;0.05当量)及び(+/−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン(7.46g;12mmol;0.04当量)を、溶液に添加し、その全てを一晩還流しながら加熱した。最初に反応混合物をろ過し、Et2Oを添加して、ホスフィンを沈殿させた。溶媒の蒸発により、黒色固体を得た(133g)。分取クロマトグラフィー(800gのシリカ;DCM:MeOH 90:10)による精製により、黒色固体を得た。この固体をEt2O中に注ぎ、最少量のDCMを添加して、溶解を完了した。活性炭を添加し、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。セライトのベッド上でろ過し、オフホワイトの粉末の白色沈殿が得られるまで溶媒を蒸発させた。反応混合物を、−20℃に冷却し、ろ過により生成物を得た。この固体を冷たい(0℃)のEt2Oですすぎ、45℃、減圧下で乾燥させて、白色粉末として表題の化合物の第一のクロップ(crop)を得た(17.3g)。母液について結晶化を繰り返し、白色の固体の第二のクロップを得た(13.8g、41%の全収率)。
【化21】

HPLC(条件A):室温:2.5分(HPLC純度:98.5%)。
【0162】
中間体2:(3R)−3−メチル−1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−ピペラジン
【化22】

窒素雰囲気下の乾燥トルエン(50mL)中の(R)−2−メチルピペラジン(3.0g、30mmol)、4−トリフルオロメトキシブロモベンゼン(6.6g、27.5mmol)、及びナトリウムtert−ブトキシド(3.56g、37.5mmol)の混合物に、Pd(OAc)2(0.28g、12.5mmol)を添加し、その後BINAP(0.62g、1mmol)を添加し、16時間還流した。 その後、反応混合物を濃縮し、粗化合物を、溶離液としてクロロホルム及びメタノールを用いたシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製して、暗褐色の液体として表題の化合物を得た(3 g、38%)。
【0163】
実施例1:(2R)−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド(1)
【化23】

【0164】
段階a)(5R)−5−{2−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オンの形成
【化24】

DCM(60mL)中の[(4R)−2,2−ジメチル−5−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]酢酸(3.48g;20.0mmol;1.0当量)、TEA(6.07g;60.0mmol;3.0当)の溶液に、HOBt(2.97g;22.0mmol;1.1当量)を添加し、混合物を0℃まで冷却した。その後、EDC(4.6g;24.0mmol;1.2当量)を添加し、得られた反応混合物を、0℃で15分間撹拌した。1−(4−フルオロフェニル)ピペラジン二塩酸塩(5.57g;22.0mmol;1.1当量)を添加し、得られた混合物を、室温で一晩撹拌した。フラッシュクロマトグラフィー(AcOEt/c−Hex:50/50)による精製により、無色の油として表題の化合物を得た(5.12g、76%)。M+(ESI):337.2。HPLC(条件A):室温:2.5分(HPLC純度:97.4%)。
【0165】
段階b)(2R)−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド(1)の形成
i−PrOH/THF(25/75)(5mL)中の(5R)−5−{2−[4−(4−フルオロフェニル)−1−ピペラジニル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン(336mg;1.0mmol;1.0当量)の溶液に、ヒドロキシアミンの水溶液(50%、0.295mL;5.0mmol;5.0当量)を添加した。室温での3時間の撹拌後に、溶媒を蒸発させて、固体を得た。この固体をAcOEt(Et2O及びc−Hexの添加により)から結晶化し、白色の粉末として表題の化合物を得た(250mg、80%)。
【化25】

HPLC(条件A):室温:1.6分(HPLC純度:85.6%)。
【0166】
実施例2:(2S)−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロオキシ−4−オキソブタンアミド(2)
【化26】

【0167】
段階a)(5S)−5−{2−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オンの形成
【化27】

[(4S)−2,2−ジメチル−5−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]酢酸(300mg;1.72mmol;1.0当量)から出発する以外は、実施例1(段階a)の調製のための手順に従って、表題の生成物を調製し、白色の泡として表題の化合物を得た(350mg、60%)。
【化28】

HPLC(条件A):室温:2.6分(HPLC純度:96.9%)。
【0168】
段階b)(2S)−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド(2)の形成
(5S)−5−{2−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン(343mg、1.02mmol)から出発すること以外は、実施例1(段階b)の調製のための手順に従って、表題の生成物を調製し、白色の粉末として表題の化合物を得た(220mg、69%)。
【化29】

HPLC(条件A):室温:1.2分(HPLC純度:93.2%)。
【0169】
実施例3:(2S)−N,2−ジヒドロキシ−4−{(2R)−2−メチル−4−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル]−4−オキソブタンアミド(3)
【化30】

【0170】
段階a)(5S)−2,2−ジメチル−5−[2−((2R)−2−メチル−4−{4−[(トリフルオロメチル)オキシ]フェニル}ピペラジン−1−イル)−2−オキソエチル]−1,3−ジオキソラン−4−オンの形成
【化31】

[(4S)−2,2−ジメチル−5−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]酢酸(150mg;0.86mmol;1.0当量)及び(3R)−3−メチル−1−{4−[(トリフルオロメチル)オキソ]フェニル}ピペラジン(中間体2、247mg、0.95mmol、1.1当量)から出発すること以外は、実施例1(段階a)の調製のための方法に従って、表題の生成物を調製し、無色の油として表題の化合物を得た(123mg、34%)。
【化32】

PLC(条件A):室温:4.3分(HPLC純度:97.2%)。
【0171】
段階b)(2S)−N,2−ジヒドロキシ−4−{(2R)−2−メチル−4−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}−4−オキソブタンアミド(3)の形成
(5S)−2,2−ジメチル−5−[2−((2R)−2−メチル−4−{4−[(トリフルオロメチル)オキシ]フェニル}ピペラジン−1−イル)−2−オキソエチル]−1,3−ジオキソラン−4−オン(117mg、0.28mmol)から出発すること以外は、実施例1(段階b)の調製のための方法に従って、表題の生成物を調製し、白色の粉末として表題の化合物を得た(81mg、74%)。M+(ESI):392.2;M(ESI):390.2。PLC(条件A):室温:3.0分(HPLC純度:93.8%)。
【0172】
実施例4:(2S)−4−[(2R)−4−ビフェニル−4−イル−2−メチルピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド(4)
【化33】

【0173】
段階a)(5S)−5−{2−[(2R)−4−ビフェニル−4−イル−2−メチルピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オンの形成
【化34】

[(4S)−2,2−ジメチル−5−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]酢酸(150mg;0.86mmol;1.0当量)及び(3R)−1−ビフェニル−4−イル−3−メチルピペラジン(中間体1、239mg、0.95mmol、1.1当量)から出発する以外は、実施例1(段階a)の調製のための方法に従って、表題の生成物を無色の油として調製した(107mg、30%)。M+(ESI):409.3。PLC(条件A):室温:4.3分(HPLC純度:98.1%)。
【0174】
段階b) (2S)−4−[(2R)−4−ビフェニル−4−イル−2−メチルピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド(4)の形成
(5S)−5−{2−[(2R)−4−ビフェニル−4−イル−2−メチルピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン(90mg、0.22mmol)から出発すること以外は、実施例1(段階b)の調製の方法に従って、表題の生成物を調製した。逆相クロマトグラフィーによる粗生成物の精製により、白色の粉末として表題の生成物を得た(60mg、71%)。M+(ESI):384.2;M-(ESI):382.2。HPLC(条件A):室温:3.0分(HPLC純度:99.0%)。
【0175】
生物学的試験:
本発明の化合物は、以下の試験の対象とされ得る:
【0176】
実施例5:酵素阻害試験
本発明の化合物を試験し、MMP−1、MMP−2、MMP−9及びMMP−12の阻害剤としての活性を評価した。
【0177】
MMP−9試験プロトコル
本発明の化合物は、クマリン標識ペプチド基質、(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2,4−ジニトロフェニル]−L−2,3ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)を用いた試験において、92kDaゼラチナーゼ(MMP−9)に対する阻害活性を試験した(Knight et al,1992,FEBS Lett,263−266)。
【0178】
ストック溶液を以下のように作製した:試験バター(Butter):100mMのNaCl、10mMのCaCl2、及び0.05%のBrij 35を含む100mMのTris−HCI pH 7.6。
基質:100%のDMSO中の0.4mMのMcaPLGLDpaAR(Bachem)(0.437mg/ml)ストック溶液(−20℃で保存)。試験バター(butter)中に8μMまで希釈。
酵素:試験バター(butter)中に適切に希釈した、組み換えヒト92kDaゼラチナーゼ(MMP−9;APMA(4−アミノフェニル第二水銀酢酸塩)−必要であれば活性化)。
【0179】
最初に試験化合物を100%のDMSO中の10mMの化合物溶液として調製し、100%のDMSO中で1mMまで希釈し、その後96−ウエルのマイクロタイタープレートのカラム1−10にわたって、100%のDMSO中で連続的に3倍希釈した。濃度範囲、100μM(カラム1)から5.1nM(カラム10)。
【0180】
96−ウエルのマイクロタイタープレートにおいて、1ウエルあたり100μLの総体積で試験を実施した。活性化酵素(20μL)をウエルに添加し、その後20μLの試験バター(butter)を添加した。次いで、10μLのDMSO中に溶解した適切な濃度の試験化合物を添加し、その後50μLのMcaPLGLDpaAR(8μM、試験バター(butter)中のDMSOストックの希釈により調製)を添加した。10の濃度の試験化合物のそれぞれについて、繰り返し試験した。コントロールのウエルは、酵素又は試験化合物のいずれかを欠いている。反応物を、37℃で2時間インキュベートした。反応を止めずに、320nmの励起を用いて、SLT Fluostar fluorometer(SL T Labinstruments GmbH、Groig、Austria)により405nmの蛍光を直ちに測定した。
【0181】
試験化合物の効果を、10個の重複濃度の阻害剤により得られた用量応答曲線から測定した。IC50(50%の酵素活性の減少をもたらすのに必要な化合物の濃度)を、以下の等式にデータを挿入することにより得た、Y=a+((b−a)/(1+(c/X)d))。(Y=特定の用量に対して得られた阻害;X=用量(nM);a=最小のy又はゼロ%の阻害;b=最大のy又は100%の阻害;c=IC50;d=勾配)。結果は、1つの有効な数値へ四捨五入した。
【0182】
MMP−12試験プロトコル
本発明の化合物を、クマリン標識ペプチド基質を用いる試験において、メタロエラスターゼ(MMP−12)に対する阻害活性を試験した、(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2,4ジニトロフェニル]−L−2,3−ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)(上記のKnight et al,1992)。この試験のためのプロトコルは、上記のMMP−9に対して記載したとおりであった。
【0183】
MMP−1試験プロトコル
本発明の化合物を、クマリン標識ペプチド基質を用いる試験において、コラゲナーゼ(MMP−1)に対する阻害活性を試験した、(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2,4ジニトロフェニル]−L−2,3−ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)(上記のKnight et al,1992)。この試験のためのプロトコルは、上記のMMP−9に対して記載したとおりであった。
【0184】
MMP−2試験プロトコル
本発明の化合物を、クマリン標識ペプチド基質を用いる試験において、ゼラチナーゼA(MMP−2)に対する阻害活性を試験した、(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Pro−Leu−Gly−Leu−(3−[2,4ジニトロフェニル]−L−2,3−ジアミノプロピオニル)−Ala−Arg−NH2(McaPLGLDpaAR)(上記のKnight et al,1992)。この試験のためのプロトコルは、上記のMMP−9に対して記載したとおりであった。
【0185】
結果をIC50に関して表し(50%の酵素活性の減少を得るのに必要な化合物の濃度)、式(I)の化合物に対して以下の表1に示す。
【表1】

【0186】
実施例6:リンパ球のIL−2−誘導性腹膜漸増(recruitment)
IL−2の投与は、リンパ球の腹腔内腔への移動を引き起こす。これは、炎症の間に生じる細胞移動に対するモデルである。
【0187】
プロトコル
C3H/HENマウス(Elevage Janvier、France)に、IL−2(Serono Pharmaceutical Research Institute、20μg/kg、生理食塩水中)を腹腔内に注入する。
【0188】
本発明の化合物を、0.5%のカルボキシメチルセルロース(CMC)/0.25%のtween−20中に懸濁し、IL−2の投与の15分前に、皮下又は経口の経路(10ml/kg)により投与する。
【0189】
IL−2投与の24時間後に、5mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)−1mMのEDTA(+4℃)を用いた腹膜腔の3回の連続的洗浄により、腹膜腔の白血球を回収する。懸濁液を遠心する(1700g×10分間、4℃)。得られたペレットを、1mMのPBS−1mMのEDTA中に懸濁する。
リンパ球を同定し、Beckman/Coulterカウンターを用いて数える。
【0190】
実験設計
動物を6つのグループに分ける(各グループには6匹のマウス):
グループ1:(ベースライン)0.5%のCMC/0.25%のtween−20(本発明の化合物の賦形剤)及び生理食塩水(IL−2の賦形剤)を受ける;
グループ2:(コントロールIL−2)0.5%のCMC/0.25%のtween−20及びIL−2の注入を受ける;
グループ3:実験グループ(本発明の化合物 用量1)は、本発明の化合物及びIL−2の注入を受ける;
グループ4: 実験グループ(本発明の化合物 用量2)は、本発明の化合物及びIL−2の注入を受ける;
グループ5:実験グループ(本発明の化合物 用量3)は、本発明の化合物及びIL−2の注入を受ける;
グループ6:基準グループは、基準化合物デキサメタゾン及びIL−2の注入を受ける。
【0191】
計算
リンパ球漸増の阻害を以下のように計算する:
【化35】

ここで、Ly1=グループ1におけるリンパ球の数(E3/μl)、Ly2=グループ2におけるリンパ球の数(E3/μl)、LyX=グループX(3−5)おけるリンパ球の数(E3/μl)。
【0192】
式(I)の化合物に対する結果を、以下の表2に示す。
【表2】

【0193】
実施例7:慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデル
本発明の化合物は、たばこ煙誘導性COPDを防ぐ能力に関して評価することができる。
【0194】
雌性AJマウス(Harlan、17−25g)を、個々の透明のチャンバー中で、5つのグループにおいて、11日間連続でたばこの煙(CS)に毎日曝露する。曝露の6日目及び12日目において、処理前に動物を計量した。Institute of Tobacco Research(University of Kentucky、USA)から購入した1R1たばこを用いてCSを発生させ、100ml/分の流速でチャンバーに入るようにする。
【0195】
毎日の高濃度CSへの繰り返しの曝露により引き起こされる任意の潜在的な問題を最小にするために、マウスのTSへの曝露を時間と共に徐々に増加させ、5日目から11日目では最大で6個のたばこ(約48分間の曝露)とする。
【0196】
シャムグループのマウスにも、コントロールと同等の長さの時間、毎日空気に曝露させる(CSを曝露しない)。
【0197】
処理
本発明の化合物を、賦形剤として0.5%のカルボキシメチルセルロースNa塩(CMC、Sigma reference C−4888)中で調製する。
【0198】
5ml/kgの用量体積で、経管栄養により、毎日2回動物に経口投与する(空気又はCSへの曝露の1時間前及び曝露の停止の6時間後)。
【0199】
シャム動物(n=10)は、賦形剤を受け、一日あたり最大で50分間空気に曝露される。コントロールグループ(n=10)は、賦形剤を受け、CSに曝露される(一日あたり最大で6個のたばこ)。追加のグループは、CSに曝露され(一日あたり最大で6のたばこ)、1つの試験化合物又は基準化合物で処理される。
【0200】
気管支肺胞洗浄及びサイトスピン動物
最後のCS曝露の24時間後に、以下のように気管支肺胞洗浄を実施する:
気管を、深い麻酔(ペントバルビタール・ナトリウム)下で解剖し、約8mmに短くしたPortex ナイロン静脈内カニューレを挿入する。10ユニット/mlのヘパリン(0.4ml)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、Gibco)を、3回徐々に注入し回収する。洗浄液をエッペンドルフチューブに取り、その後の測定の前に氷上で保持する。その後、洗浄液を遠心により細胞から分離する。上清を除去し、その後の分析のために凍結する。細胞ペレットをPBS中に再懸濁し、血球計算器を用いて顕微鏡下で、染色したアリコート(Turks染色)を数えることにより、全細胞数を計算する。
【0201】
その後、異なる示差細胞計数を、以下のように実施する:残留細胞ペレットを、約105細胞/mlまで希釈する。500μlの体積を、サイトスピンスライドの漏斗中に置き、800rpmで8分間遠心する。スライドを空気乾燥し、購入者の使用説明書に従って、「Kwik−Diff」溶液(Shandon)を用いて染色する。スライドを乾燥させ、カバースリップし、分画細胞計数を、光学顕微鏡を用いて実施する。各スライドについて、400個の細胞まで数える。標準的な形態計測技術を用いて、細胞を区別する。
【0202】
統計分析
平均+/−S.D.を、各実験グループについて計算する。
【0203】
一方向分散分析(ANOVA)を用いて、結果を分析し、その後多重比較のためにボンフェローニ補正をする。統計的有意性を、p<0.05により考慮する。
【0204】
実施例8:実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)モデル
本発明の化合物は、マウスの多発性硬化のためのモデルにおけるそれらの活性について評価することができる。
【0205】
動物
C57BL/6NCrlBR雌性マウスを用いる。ステンレス鋼供給機付きの飼育ケージ(cm 32×14×13h)中に保持し、標準的な食事(4RF21、Charles River、Italy)及び水を自由に摂食させる。7日目から、ケージの底に、湿ったペレットも毎日置く。自動給水システムに加えて、プラスチックボトルを用いる。
【0206】
実験手順
0.5mgの結核菌を含む、完全フロインドアジュバント(CFA、Difco、Detroit、U.S.A)中の200μgのMOG35-55ペプチド(Neosystem、Strasbourg、France)から構成される0.2mlのエマルジョンを、左横腹への皮下注射により、マウスを免疫化する(0日目)。直後に、それらは、400μLの緩衝液(0.5MのNaCl、0.017%のTriton X−100、0.015MのTris、pH=7.5)に溶解した500ngの百日咳毒素(List Biological Lab.、Campbell、CA、U.S.A.)の腹腔内注射を受ける。2日目に、それらの動物は、500ngの百日咳毒素の2回目の注射を受ける。
【0207】
7日目に、右横腹の皮下注射により、CFA中の200μgのMOG35-55ペプチドの2回目の投与を受ける。約8〜10日目に始まって、この方法は、進行性麻痺を引き起こし、尾部から生じて、前肢へと上昇する。
【0208】
それらの動物を個々に計量し、麻痺の存在を調べ、以下の採点システムにより採点する:
0=疾患の徴候がない
0.5=部分的な尾部麻痺
1=尾部麻痺
1.5=尾部麻痺+部分的な片側後肢麻痺
2=尾部麻痺+両側後肢麻痺又は部分的な麻痺
2.5=尾部麻痺+部分的な後肢麻痺(低い骨盤)
3=尾部麻痺+完全な後肢麻痺
3.5=尾部麻痺+後肢麻痺+失禁
4=尾部麻痺+後肢麻痺+前肢の衰弱又は部分的な麻痺
5=瀕死状態又は死亡
【0209】
処理について知らない技術者により、処理の各グループにおいて、死亡率及び臨床的徴候が毎日観察される。
【0210】
化合物、それらの賦形剤又は基準化合物による毎日の処理を、全てのグループにおいて、7日目から開始し、連続した15日間又は21日間継続した。
【0211】
組織病理学的試験
処理期間の終わりに、各動物を、ペントバルビタールナトリウムで麻酔し、左心室から4%のパラホルムアルデヒドを経心的に灌流−固定する。その後、固定した脊髄を、慎重に別々にする。
【0212】
脊髄スライスをパラフィンブロックに埋め込む。切片化、ヘマトキシリン及びエオシンによる染色、炎症のためのCD45染色、脱髄及び軸索消失を検出するためのKluver−PAS(ルクソール・ファースト青染色と過ヨウ素酸シッフ染色)による染色及びBielchowskis染色を実施する。
【0213】
脊髄において、全てのスライスの総面積を、格子あたり0.4×0.4mmの拡大で、10×10の格子の交差点として、各動物に対して測定する。血管周囲炎症性浸潤を各スライスにおいて数え、各動物に関する総計値を得、mm2あたりの浸潤の数として評価する。脱髄及び軸索消失面積を、格子あたり0.1×0.1mmの拡大で、10×10の格子の交差点として、各動物に対して測定し、スライスの総面積にわたる総脱髄面積の比率として表す。
【0214】
データ評価及び統計分析
臨床的及び組織病理学的観察の結果を、各処理グループにおける平均(±SEM)スコアとして表す。試験薬剤処理グループにおいて得られた値を、ポジティブコントロールグループのものと比較する。臨床スコアに関するグループ間の差の有意性を、一方向ANOVAにより分析し、有意性(p<0.05)の場合にはフィッシャー検定により分析する。
【0215】
血管周囲炎症性浸潤の存在、脊髄における脱髄及び軸索消失の程度、及び体重データに関する、グループ間の差は、一方向ANOVAにより分析し、有意性(p<0.05)の場合にはフィッシャー検定により分析する。
【0216】
実施例9:医薬製剤の調製
以下の製剤実施例は、本発明の代表的な医薬組成物について説明し、それらに限定されない。
【0217】
製剤1−錠剤
本発明の化合物を、乾燥粉末として、乾燥ゼラチン結合剤と約1:2の重量比で混合する。微量のステアリン酸マグネシウムを潤滑剤として添加する。この混合物を、錠剤プレスにおいて、240〜270mgの錠剤(1錠剤あたり80〜90mgの活性N−ヒドロキシアミド誘導体)に成形する。
【0218】
製剤2−カプセル
本発明の化合物を、乾燥粉末として、デンプン希釈剤と約1:1の重量比で混合する。この混合物を250mgのカプセルに充填する(1カプセルあたり125mgの活性N−ヒドロキシアミド誘導体)。
【0219】
製剤3−液体
本発明の化合物(1250mg)、スクロース(1.75g)及びキサンタンゴム(4mg)を混合し、No.10メッシュのU.S.ふるいにかけ、その後、前もって調製した水中の微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(11:89、50mg)の溶液と混合する。安息香酸ナトリウム(10mg)、香味料、及びカラー(color)を水で希釈し、撹拌しながら添加する。その後、充分の水を添加して、5mLの総体積を得た。
【0220】
製剤4−錠剤
本発明の化合物を、乾燥粉末として、乾燥ゼラチン結合剤と約1:2の重量比で混合する。微量のステアリン酸マグネシウムを潤滑剤として添加する。この混合物を、錠剤プレスにおいて、450〜900mgの錠剤(1錠剤あたり150〜300mgの活性N−ヒドロキシアミド誘導体)に成形する。
【0221】
製剤5−注射
本発明の化合物を、注入可能な水性媒体の緩衝化滅菌生理食塩水に溶解し、約5mg/mlの濃度とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のN−ヒドロキシアミド誘導体、
【化1】

{式中、
Aは、−C(B)−及びNから選択され;
Bは、Hであるか、或いはBは、R5又はR7のいずれかと結合を形成し;
1は、H、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C3−C8−シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C3−C8−シクロアルキルC1−C6アルキル、ヘテロシクロアルキルC1−C6アルキル、ヘテロアリールC1−C6アルキル、アミノ及びアルコキシから選択され;
2は、Hであり;
3は、H、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル及びC2−C6アルキニルから選択され;
4、R5、R6及びR7は、独立に、H、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニルから選択され;或いは、R4及びR7は、一緒に−CH2−結合を形成する}、
及び、鏡像体、ジアステレオマー及びそのラセミ酸塩形態のような光学活性形態、及びその医薬として許容される塩。
【請求項2】
1が、アリール及びヘテロアリールから選択される、請求項1に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項3】
1が、フェニルである、請求項1又は2に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項4】
3が、Hである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項5】
5、R6及びR7が、Hである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項6】
4が、H及びメチルから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項7】
Aが、Nである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項8】
1がフェニルであり、R2、R3、R5、R6及びR7がHであり、R4がH及びメチルから選択され、AがNである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体。
【請求項9】
以下の群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体:
(2R)−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド;
(2S)−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド;
(2S)−N,2−ジヒドロキシ−4−{(2R)−2−メチル−4−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}−4−オキソブタンアミド;
(2S)−4−[(2R)−4−ビフェニル−4−イル−2−メチルピペラジン−1−イル]−N,2−ジヒドロキシ−4−オキソブタンアミド。
【請求項10】
薬剤としての使用のための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
炎症性疾患、神経変性病、循環器疾患、卒中、癌、早期陣痛、子宮内膜症及び呼吸器疾患の予防及び/又は処置のための薬剤の調製のための、請求項1〜9に記載の化合物並びにこれらの異性体及び混合物の使用。
【請求項12】
前記疾患が、炎症性腸疾患、多発性硬化及び関節リウマチから選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疾患が、ぜんそく、気腫及び慢性閉塞性肺疾患から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記疾患が、肺繊維症、膵臓繊維症及び肝臓繊維症から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
メタロプロテイナーゼの調節のための医薬製剤の調製のための、請求項1〜9のいずれか一項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体の使用。
【請求項16】
メタロプロテイナーゼが、MMP−9、MMP−2及びMMP−12から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも1つのN−ヒドロキシアミド誘導体及びその医薬として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項18】
式(IV)の化合物を誘導体H2NO−R8と反応させる段階を含んで成る、請求項1〜9のいずれか一項に記載のN−ヒドロキシアミド誘導体を調製するための方法:
【化2】

{式中、A、R1、R2、R4、R5、R6及びR7は請求項1〜17において規定され、R8はH及びt−ブチル、ベンジル、トリアルキルシリル、テトラヒドロピラニルから選択される保護基から選択される}。
【請求項19】
脱保護段階を更に含んで成る、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式(IV)の化合物
【化3】

{式中、A、R1、R2、R4、R5、R6及びR7は、請求項1〜19のいずれか一項において規定される}。
【請求項21】
以下の群から選択される請求項20に記載の化合物:
(5R)−5−{2−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン;
(5S)−5−{2−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン;
(5S)−2,2−ジメチル−5−[2−((2R)−2−メチル−4−{4−[(トリフルオロメチル)オキシ]フェニル}ピペラジン−1−イル)−2−オキソエチル]−1,3−ジオキソラン−4−オン;
(5S)−5−{2−[(2R)−4−ビフェニル−4−イル−2−メチルピペラジン−1−イル]−2−オキソエチル}−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オン。

【公表番号】特表2008−528553(P2008−528553A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552648(P2007−552648)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050480
【国際公開番号】WO2006/079653
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(504320031)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】