説明

N−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類およびその製造方法

【課題】工業的に有利なN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類の製造方法の提供。
【解決手段】式(2)(式中、R1〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アミノ基等を表す。)で示される2−ピロリジノン類とジ−tert−ブチルジカーボネートとを、芳香族溶媒中で反応させる式(1)で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2−ピロリジノン類のジ−tert−ブチルジカーボネートを用いたN−tert−ブトキシカルボニル化(以下、単にN−Boc化と略記することもある。)としては、アセトニトリルを反応溶媒として用いる方法(非特許文献1参照)、N,N−ジメチルホルムアミドを反応溶媒として用いる方法(特許文献1参照)、テトラヒドロフランを反応溶媒として用いる方法(特許文献2参照)、トリエチルアミンを反応溶媒として用いる方法(特許文献3参照)等の極性溶媒を用いる方法や、非極性のハロゲン溶媒を用いる方法(非特許文献2参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの方法は、後処理の操作性や、溶媒の毒性の点において、工業的な製造方法としては、必ずしも満足できるものではなかった。
【特許文献1】国際特許公開WO2002/081442号明細書
【特許文献2】米国特許公開US5024994号明細書
【特許文献3】国際特許公開WO98/05327号明細書
【非特許文献1】Tetrahedron,61(13),3271(2005)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,68(19),7219(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、工業的に有利なN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、工業的に有利な2−ピロリジノン類のN−Boc化の方法について検討した結果、芳香族溶媒中で2−ピロリジノン類をN−Boc化する方法を見出した。
【0006】
即ち、本発明は、式(2)

(式中、R1〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、−OR基または−SR基を表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリル基、アルキル基、アリール基を表す。また、R1とR、RとRまたはRとRがそれぞれ一緒になって、その結合炭素原子とともに>C=O基または>C=N−OR基を形成していてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を表す。R1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成していてもよく、かかるメチレン基またはポリメチレン基を構成する1つまたは互いに隣接しない2つのメチレン基が酸素原子に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する1つまたは2つのエチレン基がビニレン基に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する互いに隣接しない2つのメチレン基同士が、酸素原子、メチレン基、エチレン基またはビニレン基を介して結合していてもよい。)
で示される2−ピロリジノン類とジ−tert−ブチルジカーボネートとを、芳香族溶媒中で反応させる式(1)

(式中、R1〜Rは、前記と同じ意味を表す。)
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のN−Boc化反応によれば、水溶性の極性溶媒を使用しないため後処理操作が簡便であり、また、有害な溶媒も使用しないので、工業的有利にN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
式(1)で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類(以下、Boc−2−ピロリジノン類(1)と略記することもある。)は、式(2)で示される2−ピロリジノン類(以下、2−ピロリジノン類(2)と略記することもある。)とジ−tert−ブチルジカーボネートとを芳香族溶媒中で反応させることにより得ることができる。該反応は、塩基の存在下に行うことが好ましい。
【0010】
式(1)および(2)におけるR1〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、−OR基または−SR基を表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリル基、アルキル基、アリール基を表す。また、R1とR、RとRまたはRとRがそれぞれ一緒になって、その結合炭素原子とともに>C=O基または>C=N−OR基を形成していてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を表す。R1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成していてもよく、かかるメチレン基またはポリメチレン基を構成する1つまたは互いに隣接しない2つのメチレン基が酸素原子に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する1つまたは2つのエチレン基がビニレン基に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する互いに隣接しない2つのメチレン基同士が、酸素原子、メチレン基、エチレン基またはビニレン基を介して結合していてもよい。
【0011】
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0012】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。これらアルキル基上に有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;アセトキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基;ベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;メトキシメトキシ基等のアルコキシアルコキシ基;トリメチルシリルオキシ基等のトリアルキルシリルオキシ基;アミノ基;アセトアミド基等のアルキルカルボニルアミノ基;ベンズアミド基等のアリールカルボニルアミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ベンジルアミノ基等のアラルキルアミノ基;アニリノ基等のアリールアミノ基;tert−ブトキシカルボニルアミノ基等のアルキルオキシカルボニルアミノ基;ベンジルオキシカルボニルアミノ基等のアラルキルオキシカルボニルアミノ基;カルボキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有していてもよいアリール基;等が挙げられる。かかる置換基を有するアルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、アミノメチル基、アミノエチル基、ヒドロキシカルボニルメチル基、ヒドロキシカルボニルエチル基、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0013】
アルケニル基としては、例えばビニル基、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。これらアルケニル基上に有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;カルボキシ基;等が挙げられる。かかる置換基を有するアルケニル基の具体例としては、メトキシカルボニルエテニル基、ベンジルオキシカルボニル基、カルボキシエテニル基等が挙げられる。
【0014】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。これらアリール基上に有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。かかる置換基を有するアリール基としては、例えば4−フルオロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、p−トリル基、3−ビフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−シアノフェニル基等が挙げられる。
【0015】
アミノ基上に有していてもよい置換基としては、例えば、アセチル基等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基等のアリールカルボニル基;メチル基、エチル基等のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;tert−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;等が挙げられる。かかる置換基を有するアミノ基の具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0016】
−OR基のRおよび−SR基のRは、水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリル基、アルキル基またはアリール基を表す。アルキルカルボニル基としては、例えばアセチル基等の炭素数2〜10のアルキルカルボニル基が挙げられる。アリールカルボニル基としては、例えばベンゾイル基等の炭素数7〜20のアリールカルボニル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、例えばメトキシメチル基等の炭素数2〜10のアルコキシアルキル基が挙げられる。トリアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル基等の炭素数3〜10のトリアルキルシリル基が挙げられる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0017】
−OR基の具体例としては、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、トリメチルシリルオキシ基、メトキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
【0018】
−SR基の具体例としては、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、ベンジルチオ基、メトキシメチルチオ基、トリメチルシリルチオ基、メチルチオ基、フェニルチオ基等が挙げられる。
【0019】
1とR、RとRまたはRとRがそれぞれ一緒になって、その結合炭素原子とともに形成していてもよい>C=N−OR基におけるRは、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。>C=N−OR基の具体例としては、ヒドロキシイミノ基、メトキシイミノ基等が挙げられる。
【0020】
1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成していてもよく、かかるメチレン基またはポリメチレン基を構成する1つまたは互いに隣接しない2つのメチレン基が酸素原子に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する1つまたは2つのエチレン基がビニレン基に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する互いに隣接しない2つのメチレン基同士が、酸素原子、メチレン基、エチレン基またはビニレン基を介して結合していてもよい。
【0021】
1〜Rのうち任意の2つが結合して、形成していてもよいポリメチレン基の炭素数は、通常2〜4の範囲である。メチレン基またはポリメチレン基上に置換していてもよい置換基としては、上記R1〜Rで示される置換基と同一のものが挙げられる。
【0022】
1〜Rのうち任意の2つが結合して形成される基の具体的な構造としては、例えば、下記式で示される二価の基等が挙げられる。
【0023】
−CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、(CHC<、(Cl)C<、(F)C<、>CH(CO



(上記各式中、−は1つの結合手を表し、>および<はそれぞれ2つの結合手を表す。)
【0024】
また、R1〜Rが、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表すか、あるいは、R1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成していることが好ましい。
【0025】
さらに、R1、R、RおよびRが、いずれも水素原子であり、RとRが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成していることが好ましい。
【0026】
2−ピロリジノン類(2)としては、例えば、2−ピロリジノン、3−メチル−2−ピロリジノン、4−メチル−2−ピロリジノン、5−メチル−2−ピロリジノン、4,4−ジメチル−2−ピロリジノン、5,5−ジメチル−2−ピロリジノン、3−エチル−2−ピロリジノン、4−プロピル−2−ピロリジノン、4−シクロヘキシル−2−ピロリジノン、4−メチル−4−プロピル−2−ピロリジノン、2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−オン、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン、2−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン、3−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−2−オン、7−アザビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン、8−アザビシクロ[4.3.0]ノナン−7−オン、4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3オン、4−アザトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−3オン、2−アザスピロ[4.4]ノナン−3−オン、スピロ[ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3’−ピロリジン]−5’−オン、3−(2−プロペニル)−2−ピロリジノン、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−3−オン、3−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−オン、2−アザビシクロ[3.3.0]オクタ−7−エン−3−オン、8−アザビシクロ[4.3.0]ノナン−3−エン−7−オン、4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン−3オン、4−アザトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−8−エン−3オン、6,6−ジクロロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、3−ベンジル−2−ピロリジノン、5−ベンジル−2−ピロリジノン、4−ベンジル−4−メチル−2−ピロリジノン、6−エトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、2−(5−オキソピロリジン−2−イル)酢酸エチル、3−(2−オキソピロリジン−3−イル)アクリル酸メチル、3−フェニル−2−ピロリジノン、4−フェニル−2−ピロリジノン、5−ジフェニル−2−ピロリジノン、5−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ピロリジノン、1−フェニル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、4−クロロ−2−ピロリジノン、4、4−ジフルオロ−2−ピロリジノン、4−ヒドロキシ−2−ピロリジノン、3−ヒドロキシ−2−ピロリジノン、4−アセトキシ−2−ピロリジノン、4−メトキシ−2−ピロリジノン、4−tert−ブトキシ−2−ピロリジノン、4−ベンジルオキシ−2−ピロリジノン、4−フェニルオキシ−2−ピロリジノン、3−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリジノン、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ピロリジノン、4−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−2−ピロリジノン、3,3−ジメチル−2,4−ジオキサ−7−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−6−オン、3−フェニル−2,4−ジオキサ−7−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−6−オン、3,3−ジメチル−2−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−6−オン、1,4−ジオキサ−7−アザスピロ[4.4]ノナン−8−オン、4−アザ−10−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3オン、4−アザ−10−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン−3オン、3−ヒドロキシ−9−アザビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン、4−メルカプト−2−ピロリジノン、4−メルカプト−5−メチル−2−ピロリジノン、4−フェニルチオ−2−ピロリジノン、1,4−ジチア−7−アザスピロ[4.4]ノナン−8−オン、1,4−ジチア−7−アザスピロ[4.4]ノナン−6−オン、6,10−ジチア−2−アザスピロ[4.5]デカン−3−オン、4−アセチルアミノ−2−ピロリジノン、4−ジメチルアミノ−2−ピロリジノン、4−ベンジルアミノ−2−ピロリジノン、4−ベンゾイルアミノ−2−ピロリジノン、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ピロリジノン、4−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ピロリジノン、3−アセチルアミノ−2−ピロリジノン、3−ジメチルアミノ−2−ピロリジノン、3−ベンジルアミノ−2−ピロリジノン、3−ベンゾイルアミノ−2−ピロリジノン、3−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ピロリジノン、3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ピロリジノン、4−tert−ブトキシカルボニルアミノメチル−2−ピロリジノン、5−tert−ブトキシカルボニルアミノメチル−2−ピロリジノン、4−メトキシイミノ−2−ピロリジノン、コハク酸イミド、2,4−ピロリジンジオン等、およびこれらの光学活性体等が挙げられる。
【0027】
かかる2−ピロリジノン類(2)は、市販のものであってもよいし、公知の方法に準じて合成されたものであってもよい。
【0028】
反応に用いる芳香族溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、イソブチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、クメン、シメン、ジイソプロピルベンゼン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、ブロモクロロベンゼン、フルオロベンゼン、α,α,α−トリフルオロトルエン、ニトロベンゼン、ニトロクロロベンゼン、ベンゾニトリル、スチレン、アニソール、ジメトキシベンゼン、安息香酸エチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒が好ましく、トルエンがより好ましい。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。芳香族溶媒の使用量は、2−ピロリジノン類(2)に対して、通常1〜50重量倍、好ましくは1〜10重量倍の範囲である。
【0029】
ジ−tert−ブチルジカーボネートの使用量は、2−ピロリジノン類(2)に対して、通常1〜10モル倍、好ましくは1〜2モル倍の範囲である。ジ−tert−ブチルジカーボネートは、市販のものであってもよいし、公知の方法により合成されたものであってもよい。
【0030】
塩基としては、例えばピリジン、キノリン、イソキノリン、N,N−ジメチルアミノピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、3−クロロピリジン、2−エチル−3−メチルピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、フェネチルジメチルアミン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。N,N−ジメチルアミノピリジンまたはトルエチルアミンが好ましい。これらの塩基は、単独で用いてもよいし、2種類以上を同時に用いてもよい。塩基を使用する場合、その使用量は、2−ピロリジノン類(2)に対して、通常0.01〜5モル倍、好ましくは0.02〜1モル倍の範囲である。
【0031】
2−ピロリジノン類(2)とジ−tert−ブチルジカーボネートとの反応は、それらと芳香族溶媒と、必要に応じて塩基とを混合し、所望の反応温度に調節することにより実施され、その混合順序は特に限定されない。例えば、2−ピロリジノン類(2)と芳香族溶媒と必要に応じて塩基とを含む混合物中に、ジ−tert−ブチルジカーボネートまたはその芳香族溶媒溶液を滴下することにより実施できる。
【0032】
反応温度は、通常0℃以上、用いる芳香族溶媒の沸点以下の範囲であり、好ましくは10〜100℃の範囲である。
【0033】
このようにして、Boc−2−ピロリジノン類(1)を含む反応溶液が得られる。反応終了後、溶媒を留去して単離することも可能であるが、塩基の存在下にN−Boc化反応を行った場合は、通常、後処理操作を行う。
【0034】
後処理操作では、N−Boc化反応終了後の反応混合物に、水または酸性水溶液を加えて混合し、分液することにより、水層として、用いた塩基を除去する。かかる水または酸性水溶液による洗浄処理は、繰り返し行われてもよい。また、酸性水溶液による洗浄処理後、アルカリ性水溶液または水を用いて洗浄処理を繰り返し行ってもよい。
【0035】
上記の酸性水溶液に用いられる酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸の使用量は、用いた塩基に対して、通常0.5〜20モル倍、好ましくは1〜5モル倍の範囲である。アルカリ性水溶液による洗浄処理を行う際に用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩;等が挙げられる。
【0036】
上記の後処理操作は、必要により、芳香族溶媒以外の有機溶媒を用いて行ってもよい。かかる芳香族溶媒以外の有機溶媒としては、水と分液可能な有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキエタン等のエーテル溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;等が挙げられる。芳香族溶媒以外の有機溶媒の種類や使用量に関しては、特に制限されるものではない。
【0037】
上記の後処理操作後の有機層を、例えば、濃縮処理することにより、Boc−2−ピロリジノン類(1)を単離することができる。単離されたBoc−2−ピロリジノン類(1)は、カラムクロマトグラフィーや再結晶等の通常の処理により精製されてもよい。
【0038】
再結晶の方法は、通常の再結晶法を用いればよく、特に限定されるものではない。具体的な再結晶操作としては、例えば、粗製のBoc−2−ピロリジノン類(1)を良溶媒に溶解させた後、貧溶媒を滴下して結晶を析出させる方法;粗製のBoc−2−ピロリジノン類(1)を再結晶溶媒に溶解させた後、冷却して結晶を析出させる方法;粗製のBoc−2−ピロリジノン類(1)を再結晶溶媒に溶解させた後、溶媒を留去させて結晶を析出させる方法;および、これらの方法を組合せた方法等が挙げられる。良溶媒としては、Boc−2−ピロリジノン類(1)を実質的に溶解させうる溶媒であれば特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキエタン等のエーテル溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒;等が挙げられる。貧溶媒としては、Boc−2−ピロリジノン類(1)を実質的に溶解させない溶媒であれば特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒や水等が挙げられる。再結晶溶媒としては、例えば、上記の良溶媒や、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒等が挙げられる。
【0039】
また、Boc−2−ピロリジノン類(1)が光学活性体である場合は、上記の再結晶を行うと、光学活性体の光学純度が向上する場合がある。
【0040】
得られるBoc−2−ピロリジノン類(1)の具体例としては、N−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−3−メチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−メチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−5−メチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4,4−ジメチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−5,5−ジメチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−3−エチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−プロピル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−シクロヘキシル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−メチル−4−プロピル−2−ピロリジノン、2−tert−ブトキシカルボニル−2−アザビシクロ[3,1,0]ヘキサン−3−オン、3−tert−ブトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、6,6−ジメチル−3−tert−ブトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、2−tert−ブトキシカルボニル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン、2−tert−ブトキシカルボニル−2−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン、3−tert−ブトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−2−オン、7−tert−ブトキシカルボニル−7−アザビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン、8−tert−ブトキシカルボニル−8−アザビシクロ[4.3.0]ノナン−7−オン、4−tert−ブトキシカルボニル−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3オン、4−tert−ブトキシカルボニル−4−アザトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−3オン、2−tert−ブトキシカルボニル−2−アザスピロ[4.4]ノナン−3−オン、N−tert−ブトキシカルボニル−スピロ[ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3’−ピロリジン]−5’−オン、N−tert−ブトキシカルボニル−3−(2−プロペニル)−2−ピロリジノン、2−tert−ブトキシカルボニル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−3−オン、3−tert−ブトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−オン、2−tert−ブトキシカルボニル−2−アザビシクロ[3.3.0]オクタ−7−エン−3−オン、8−tert−ブトキシカルボニル−8−アザビシクロ[4.3.0]ノナン−3−エン−7−オン、4−tert−ブトキシカルボニル−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン−3オン、4−tert−ブトキシカルボニル−4−アザトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−8−エン−3オン、
【0041】
6,6−ジクロロ−3−tert−ブトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、6,6−ジフルオロ−3−tert−ブトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、N−tert−ブトキシカルボニル−3−ベンジル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−5−ベンジル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−ベンジル−4−メチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−6−エトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、N−tert−ブトキシカルボニル−2−(5−オキソピロリジン−2−イル)酢酸エチル、N−tert−ブトキシカルボニル−3−(2−オキソピロリジン−3−イル)アクリル酸メチル、N−tert−ブトキシカルボニル−3−フェニル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−フェニル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−5−ジフェニル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−5−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ピロリジノン、1−フェニル−3−tert−ブトキシカルボニル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−クロロ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4、4−ジフルオロ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−アセトキシ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−メトキシ−2−ピロリジノン、2,4−ジ−tert−ブトキシ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−ベンジルオキシ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−フェニルオキシ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−2−ピロリジノン、3,3−ジメチル−2,4−ジオキサ−7−tert−ブトキシカルボニル−7−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−6−オン、3−フェニル−2,4−ジオキサ−7−tert−ブトキシカルボニル−7−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−6−オン、3,3−ジメチル−2−オキサ−7−tert−ブトキシカルボニル−7−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−6−オン、1,4−ジオキサ−7−tert−ブトキシカルボニル−7−アザスピロ[4.4]ノナン−8−オン、
【0042】
4−tert−ブトキシカルボニル−4−アザ−10−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3オン、4−tert−ブトキシカルボニル−4−アザ−10−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン−3オン、3−ヒドロキシ−9−tert−ブトキシカルボニル−9−アザビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−メルカプト−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−メルカプト−5−メチル−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−4−フェニルチオ−2−ピロリジノン、1,4−ジチア−7−tert−ブトキシカルボニル−7−アザスピロ[4.4]ノナン−8−オン、1,4−ジチア−7−tert−ブトキシカルボニル−7−アザスピロ[4.4]ノナン−6−オン、6,10−ジチア−2−tert−ブトキシカルボニル−2−アザスピロ[4.5]デカン−3−オン、1−tert−ブトキシカルボニル−4−アセチルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−4−ジメチルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−4−ベンジルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−4−ベンゾイルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−4−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−3−アセチルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−3−ジメチルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−3−ベンジルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−3−ベンゾイルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−3−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−4−tert−ブトキシカルボニルアミノメチル−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−5−tert−ブトキシカルボニルアミノメチル−2−ピロリジノン、1−tert−ブトキシカルボニル−4−メトキシイミノ−2−ピロリジノン、N−tert−ブトキシカルボニル−コハク酸イミド、N−tert−ブトキシカルボニル−2,4−ピロリジンジオンおよびこれらの光学活性体等が挙げられる。
【0043】
Boc−2−ピロリジノン類(1)は、新規な化合物である。医農薬の製造中間体として利用可能(例えば、国際特許公開WO2004/113295号明細書参照。)である点において、好ましくは、式(1)におけるR1〜Rが、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表すか、あるいは、R1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成している化合物であり、より好ましくは、式(1)におけるR1、R、RおよびRが、いずれも水素原子であり、RとRが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成している化合物である。さらに好ましくは、3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンであり、特に好ましくは、(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンである。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではないことは言うまでもない。
【0045】
実施例1
3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンの製造例
6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン195.5g(1.562mol)を含むトルエン溶液1158.5gにN,N−ジメチルアミノピリジン19.08g(0.156mol)を加え、25℃で溶解させた。この溶液中にジ−tert−ブチルジカーボネート443.2g(2.031mol)とトルエン195.5gとからなる溶液を2時間かけて滴下し、25℃で12時間保温した。
この溶液に1%塩酸569.5gを加えて混合、分液した。分液により得られた有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液262.5gで洗浄し、さらに水262.5gで洗浄後、3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンの349.7g(1.552mol)を含むトルエン溶液1652.8gを得た。6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンに対する収率は、99.4%であった。
3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンの定量は、高速液体クロマトグラフィーにより求めた。カラムは、SUMIPAX ODS D−210FF、4.6mmφ×150mm,3μm(住化分析センター社製)を使用した。
【0046】
実施例2
(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンの製造例
光学純度93.0%eeの(1R,5S)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン5.89kg(47.1mol)を含むトルエン溶液36.0kgにN,N−ジメチルアミノピリジン0.58kg(4.75mol)を加え、25℃で溶解させた。この溶液にジ−tert−ブチルジカーボネート13.36kg(61.2mol)とトルエン5.9kgとからなる溶液を3時間かけて滴下し、25℃で2時間保温した。反応は定量的に進行していた。
この溶液に1%塩酸17.38kgを加えて混合、分液した。続いて得られた有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液7.89kgで洗浄し、さらに水7.9kgで洗浄して、(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンを含むトルエン溶液を得た。この溶液中のトルエンの大部分を、減圧濃縮により留去した。これにヘプタン58.8kgを加えて減圧濃縮し溶媒の大部分を留去した。この溶媒の置換操作を再度繰り返した後、得られた残渣にヘプタン38.7kgを加えて50〜55℃まで昇温して、析出した結晶をすべて溶解させた。この溶液を45℃に冷却後、(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンの種晶を6g添加した。
結晶が析出したことを確認した後、0℃まで冷却した。得られた結晶を濾過後、ヘプタン15.9kgで2回洗浄した。次いで、減圧条件下で乾燥した。
光学純度が99.6%eeである(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンの結晶8.35kg(37.1mol)を得た。
光学純度は、高速液体クロマトグラフィーにより求めた。カラムは、CHIRALCEL OF、4.6mmφ×250mm,10μm(ダイセル社製)を使用した。
(1R,5S)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンに対する(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンの収率は、収率78.8%であった。
(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンの融点は、87〜88℃であった。
また、H−NMR(CDCl)の結果を下記に記す。
δ=3.81dd(1H),3.59d(1H),1.88dd(1H),1.67dt(1H),1.56s(9H),1.13s(3H),1.09s(3H)
【0047】
実施例3
N−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノンの製造例
2−ピロリジノン2.55g(30.0mmol)とトルエン25.5gとN,N−ジメチルアミノピリジン0.37g(3.0mmol)を加え、混合物の温度を25℃に調節した。得られた溶液中にジ−tert−ブチルジカーボネート8.50g(39.0mmol)とトルエン2.55gとからなる溶液を30分かけて滴下し、25℃で8時間保温した。得られた溶液中に1%塩酸10.9gを加えて混合後、分液した。得られた有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液5.0gで洗浄後、さらに水5.0gで洗浄した。得られた有機層を減圧下に濃縮して、N−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン5.30g(28.6mmol)を含む油状物質の5.70gを得た。
N−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノンの2−ピロリジノンに対する収率は、95.3%であった。
N−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノンの定量は、ガスクロマトグラフィーにより求めた。カラムは、J&J社製のDB−5(0.53mmφ×30m,1.5μm)を使用した。
【0048】
実施例4
N−tert−ブトキシカルボニル−コハク酸イミドの製造例
コハク酸イミド2.97g(30.0mmol)とトルエン29.7gとN,N−ジメチルアミノピリジン0.37g(3.0mmol)を加え、混合物の温度を25℃に調節した。この溶液中にジ−tert−ブチルジカーボネート8.79g(40.3mmol)とトルエン4.83gとからなる溶液を30分かけて滴下し、25℃で24時間保温した。この溶液に1%塩酸10.9gを加えて混合後、分液した。次に、得られた有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液5.0gで洗浄し、さらに水5.0gで洗浄した。
得られた有機層を減圧下に濃縮して、N−tert−ブトキシカルボニル−コハク酸イミド4.22g(21.2mmol)を含む油状物質5.21gを得た。
N−tert−ブトキシカルボニル−コハク酸イミドのコハク酸イミドに対する収率は、70.7%であった。
N−tert−ブトキシカルボニル−コハク酸イミドの定量は、ガスクロマトグラフィーにより求めた。カラムは、J&J社製のDB−1[0.25mmφ×30m,0.25μm]を使用した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の製造法で得られるN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類は、化学原料や医農薬中間体として有用である。例えば3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン、好ましくは(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オンは、抗C型肝炎薬(国際特許公開WO2004/113295号明細書参照)の製造中間体として、利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)

(式中、R1〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、−OR基または−SR基を表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリル基、アルキル基、アリール基を表す。また、R1とR、RとRまたはRとRがそれぞれ一緒になって、その結合炭素原子とともに>C=O基または>C=N−OR基を形成していてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を表す。R1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成していてもよく、かかるメチレン基またはポリメチレン基を構成する1つまたは互いに隣接しない2つのメチレン基が酸素原子に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する1つまたは2つのエチレン基がビニレン基に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する互いに隣接しない2つのメチレン基同士が、酸素原子、メチレン基、エチレン基またはビニレン基を介して結合していてもよい。)
で示される2−ピロリジノン類とジ−tert−ブチルジカーボネートとを、芳香族溶媒中で反応させる式(1)

(式中、R1〜Rは、前記と同じ意味を表す。)
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類の製造方法。
【請求項2】
塩基の存在下に反応させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
芳香族溶媒が、芳香族炭化水素溶媒である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
芳香族炭化水素溶媒が、トルエンである請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
式(1)および(2)におけるR1〜Rが、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表すか、または、R1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成している請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
式(1)および(2)におけるR1、R、RおよびRが、いずれも水素原子であり、RとRが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成している請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
式(1)および(2)におけるR1、R、RおよびRが、いずれも水素原子であり、RとRが結合して、(CHC<基(イソプロピリデン基)を形成している請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
式(1)

(式中、R1〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、−OR基または−SR基を表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリル基、アルキル基、アリール基を表す。また、R1とR、RとRまたはRとRがそれぞれ一緒になって、その結合炭素原子とともに>C=O基または>C=N−OR基を形成していてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を表す。R1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成していてもよく、かかるメチレン基またはポリメチレン基を構成する1つまたは互いに隣接しない2つのメチレン基が酸素原子に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する1つまたは2つのエチレン基がビニレン基に置き換わっていてもよく、ポリメチレン基を構成する互いに隣接しない2つのメチレン基同士が、酸素原子、メチレン基、エチレン基またはビニレン基を介して結合していてもよい。)
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類。
【請求項9】
式(1)におけるR1〜Rが、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表すか、あるいは、R1〜Rのうち任意の2つが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成している請求項8に記載のN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類。
【請求項10】
式(1)におけるR1、R、RおよびRが、いずれも水素原子であり、RとRが結合して、置換基を有していてもよいメチレン基または置換基を有していてもよいポリメチレン基を形成している請求項1に記載のN−tert−ブトキシカルボニル−2−ピロリジノン類。
【請求項11】
3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン。
【請求項12】
(1R,5S)−3−tert−ブトキシカルボニル−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オン。

【公開番号】特開2008−222699(P2008−222699A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106765(P2007−106765)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】