NDフィルターおよびその製造方法
【課題】NDフィルターの真空蒸着における多層成膜の再現性の乏しさ、工程の煩雑さ
とそれに伴う歩留の低下、および設計変更に容易に対応できないという従来の課題を解消し、波長平坦性の良好なNDフィルターを得ることができ、再現性良好で、且つ簡便なNDフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】特定の光線透過率を有する熱可塑性樹脂(A)と特定の粒径を有するカーボンブラック(B)を含有し、且つ380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)が下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とするNDフィルター。
とそれに伴う歩留の低下、および設計変更に容易に対応できないという従来の課題を解消し、波長平坦性の良好なNDフィルターを得ることができ、再現性良好で、且つ簡便なNDフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】特定の光線透過率を有する熱可塑性樹脂(A)と特定の粒径を有するカーボンブラック(B)を含有し、且つ380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)が下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とするNDフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NDフィルターおよびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、熱可塑性樹脂およびカーボンブラックを含有するNDフィルターおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のNDフィルターとしては、透明基板上に、光吸収能を有する金属膜と透過および反射を制御するための金属酸化物等からなる誘電体膜とが真空中で蒸着加工により形成されることにより作製された反射吸収型NDフィルターと、透明材料に染料および顔料を均一分散させることにより作製された光吸収型NDフィルターとに大別される。
【0003】
しかしながら、反射吸収型NDフィルターにおいては、真空蒸着による多層コーティングが必須となるので、NDフィルターの製造の再現性およびフィルター面内の光学特性の均一性を確保するためには、蒸着源からの距離を一定にすべく基板サイズを小型化する必要があった。一方、光吸収型NDフィルターでは、用いる染料または顔料の性質によっては可視光に対する均一な減光効果が得られない場合が多かった。
【0004】
また、昨今のデジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像機器においてはその高機能化、小型化に伴い、単一のNDフィルターにおいて、その光線透過位置を変化させることで減光性能を可変とする、フィルター面内の光線透過率に変化を持たせたNDフィルターが強く求められるようになった。
【0005】
このような要求を受けて、特許文献1には、蒸着法により複数のマスクを用いて、基体表面に光透過率が段階的に異なる領域を設けることにより形成されたNDフィルターが、特許文献2には、蒸発源の蒸発飛来方向と直交する平面に対して所定角度傾斜させて基体を固定配置し、更にマスクを基体と蒸着源の間に所定の角度を設けて蒸着することにより、無段階の光学濃度変化が付与されたNDフィルターの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−37548号
【特許文献2】特開平11−38206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたNDフィルターの製造方法では、開口部の大きさが異なるマスクを複数枚重ね合わせて蒸着厚みを制御するため、それぞれのマスクについて洗浄を十分におこなわないと、マスク同士の重ね合わせ時に以前の蒸着で付着した蒸着物質が剥離し、それが結果的に異物として基体に付着し、画像の質が低下してしまうなどの課題があった。また特許文献2に開示されたNDフィルターの製造方法では、基体およびマスクを傾斜配置するため、NDフィルターの設計変更に容易に対応できず、且つ傾斜角度のわずかな変化により製品の特性がばらつくといったいわゆるバッチ間の再現性が乏しいなどの課題があった。
【0008】
本発明の目的は、真空蒸着における多層成膜の再現性の乏しさ、工程の煩雑さとそれに伴う歩留の低下、ならびにNDフィルターの形状および光学濃度の設計変更の不自由さを解消し、かつ単一のNDフィルターにおいて再現性よくかつ簡便に、段階的または連続的
に光学濃度を変更することのできるNDフィルターおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の光線透過率を有する熱可塑性樹脂(A)と特定の粒径を有するカーボンブラック(B)を含有し、さらに波長平坦性を有するNDフィルターによれば、フィルターの高度な厚み制御を行い、同一フィルター上において透過光が通過する位置を変更することで、任意の減光特性が得られることを見出した。ここで波長平坦性とは、380〜780nmの波長別光線透過率の平均値がT(ave)(%)であった場合、380〜780nmにおける光線透過率の最大値T(max)が1.08×T(ave)(%)以下であり、かつ同最小値T(min)が0.92×T(ave)(%)以上であることを示す。
【0010】
第一の発明は、厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有し、且つ380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)が下記式(1)および式(2)を満たし、相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有することを特徴とするNDフィルターに関する。
【0011】
【数1】
【0012】
本発明のNDフィルターはカーボンブラック(B)が前記熱可塑性樹脂(A)に分散されていることが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)は下記式(I)で表される化合物から導かれる構造単位を有する環状オレフィン系重合体(A)を含有することが好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
本発明のNDフィルターは光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有することが好ましい。
【0016】
本発明のNDフィルターは、厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が
85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上に、前記組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体を少なくとも1層部分的に積層することにより形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明のNDフィルターは厚さでの1mmの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を射出成形することにより形成されていてもよい。
【0018】
本発明のNDフィルターは厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を押出し法により成型して得られたシートまたはフィルムに、彫刻を施したロールを押圧する工程を含む方法により形成されていてもよい。
【0019】
第二の発明は下記(i)〜(iii)の第一の発明のNDフィルターの製造方法に関する。
(i)厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上に、前記組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体を少なくとも1層部分的に積層する工程を有することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
(ii)厚さでの1mmの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を射出成形することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
(iii)厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を押出し法により成型して得られたシートまたはフィルムに彫刻を施したロールを押圧する工程を含むことを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【0020】
第三の発明は、前記NDフィルターを用いて、相互に光の入射方向の厚みが異なる部位に光を入射させることにより光の透過率を調節する方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のNDフィルターの製造方法では、大掛かりな真空装置を使用することなく、高歩留まり率などの高い生産性を有し、さらに設計変更の不自由さもない。該方法により得られるNDフィルターは高精度な減光特性を有するため、単一NDフィルター内において、その厚みを段階的または連続的に変化させることのできる性能である面内可変能を有する。このため本発明のNDフィルターは、デジタルカメラ、ビデオカメラといった撮像機器の性能を低コストで飛躍的に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1により得られたNDフィルター(1)の波長別透過特性を示す。
【図2】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の概略図を示す。
【図3】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(a)部の波長別光線透過率を示す。
【図4】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(b)部の波長別光線透過率を示す。
【図5】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(c)部の波長別光線透過率を示す。
【図6】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND2)の概略図を示す。
【図7】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(d)部の波長別光線透過率を示す。
【図8】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(e)部の波長別光線透過率を示す。
【図9】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(f)部の波長別光線透過率を示す。
【図10】実施例4により得られた蒸着法によるNDフィルター(ND3)の波長別光線透過率を示す。
【図11】実施例5により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の概略図を示す。
【図12】実施例5により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(g)部の波長別光線透過率を示す。
【図13】実施例5により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(h)部の波長別光線透過率を示す。
【図14】実施例5により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(i)部の波長別光線透過率を示す。
【図15】実施例6により得られたロール押圧型NDフィルター(ND5)の概略図を示す。
【図16】実施例6により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(j)部の波長別光線透過率を示す。
【図17】実施例6により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(k)部の波長別光線透過率を示す。
【図18】実施例6により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(l)部の波長別光線透過率を示す。
【図19】実施例7により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理後のSEM写真を示す。
【図20】射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理前後の反射率を示す。
【図21】射出成形型NDフィルター(ND4)の表面フッ素化処理前後の反射率を示す。
【図22】比較例1により得られたNDフィルター(A)の波長別光線透過率を示す。
【図23】実施例9により得られたNDフィルター(3)の概略図を示す。
【図24】実施例10により得られた射出成形型NDフィルター(ND6)の概略図を示す。
【図25】射出成形型NDフィルター(ND7)の反射防止処理後の反射率を示す。
【図26】比較例5により得られたNDフィルター(E)の波長別光線透過率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0024】
<NDフィルター>
本発明のNDフィルターは、厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である熱可塑性樹脂(A)と一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)を含有する。
【0025】
〔熱可塑性樹脂(A)〕
熱可塑性樹脂(A)は、厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である。光線透過率が85%より小さいと、カーボンブラック(B)との複合化に
よる減光効果が光線透過率において85%以下に限定されてしまうため好ましくない。前記光線透過率としては、好ましくは90%以上であり、より好ましくは92%以上である。前記光線透過率は、ダブルビーム方式の分光光度計によって測定される空気の透過率を100%とした相対透過率である。
【0026】
熱可塑性樹脂(A)は、厚さ1mmの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である限り特に限定されないが、ポリカーボネート、(メタ)アクリル酸樹脂、ポリエステル、環状オレフィン系重合体等から選ぶことができる。これらの中で、光学部品として複屈折が小さいこと、および環境変化による温度および湿度等の特性の安定などの観点から、環状オレフィン系重合体(A1)が好ましい。
【0027】
環状オレフィン系重合体(A1)は、下記式(I)で表される環状オレフィン化合物(I)から導かれる構造単位を有することが好ましい。
【0028】
【化2】
【0029】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
【0030】
上記炭化水素基としては、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。これらの基の中でも、メチル基、エチル基が耐熱安定性の点で好ましい。
【0031】
上記極性基としては、例えば、水酸基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1〜10のアルコキシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等のアリーロキシカルボニル基;シアノ基;アミド基;イミド基;トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリオルガノシリル基;トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のアルコキシシリル基;アミノ基;アシル基;スルホニル基;カルボキシル基など挙げられる。
【0032】
また、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。
【0033】
mは0または正の整数を示し、好ましくは0〜3の整数を示す。pは0または正の整数を示し、好ましくは0〜3の整数を示す。また、より好ましくはm+pが0〜4の整数、特に好ましくはm+pが0〜2の整数である。最も好ましくはm=1、p=0である。m=1、p=0である環状オレフィン化合物(I)を用いると、ガラス転移温度が高く、かつ機械的強度にも優れた重合体が得られるため好ましい。
【0034】
環状オレフィン化合物(I)としては、具体的には、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。
【0035】
環状オレフィン化合物(I)としては、R1〜R4のうち少なくとも一つは極性基である環状オレフィン化合物(II)を少なくとも1種を用いることが、カーボンブラックとの相溶性向上、蒸着製膜およびウェットコーティング等の表面加工における密着性向上の点で好ましい。
【0036】
上記極性基は、下記式(III)で表される極性基であることが好ましい。
【0037】
【化3】
【0038】
上記式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を示し、nは0〜5の整数を示す。
【0039】
上記式(III)において、Rは好ましくは炭素数1〜4、さらに好ましくは1または2
の炭化水素基である。ここで、炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。また、nは通常0〜5であり、nの値が小さい極性基を有する環状オレフィン化合物(II)ほど、ガラス転移温度が高い重合体が得られるため好ましく、nが0である環状オレフィン(−COOR)は合成も容易であるため特に好ましい。
【0040】
好ましい環状オレフィン化合物(II)としては、上記式(I)において、R1および
R3がそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10、より好ましくは1〜4、特に好
ましくは1もしくは2の炭化水素基であり;R2およびR4のうちの一方が水素原子であり、他方が極性基である化合物が挙げられる。この場合、R1またはR3で表される炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。さらに、R2およびR4のうちの一方が、上記式(III)で表される極性基であることが好ましい。
【0041】
また、環状オレフィン化合物(II)のうち、吸湿性の低い重合体が得られる観点から、R1がアルキル基であり、R2が上記式(III)で表される極性基であり、R3およびR4
が水素原子である化合物がより好ましい。
【0042】
上記式(III)で表される極性基を有する環状オレフィン化合物(II)としては、具
体的には、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]
−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.
4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。なお、これらの化合物に限定されるものではない。
【0043】
環状オレフィン系重合体(A1)が有する環状オレフィン化合物(I)から導かれる構造単位の比率としては、環状オレフィン系重合体(A1)が有する全構造単位の質量を100質量%としたとき、好ましくは100〜60質量%、より好ましくは95〜30質量%である。
【0044】
本発明に用いられる環状オレフィン系重合体(A1)の固有粘度〔ηinh〕は、0.2
〜5dl/gが好ましく、0.3〜3dl/gがさらに好ましく、0.4〜1.5dl/gが特に好ましい。また、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、カラム:東ソー(株)製TSKgel G7000HXL×1、TSKgel GMHXL×2およびTSKgel G2000HXL×1の4本を直列に接続した。)で測定されるポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量(Mn)が好ましくは8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは12,000〜50,000であり、重量平均分子量(Mw)が好ましくは20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜250,000、特に好ましくは40,000〜200,000である。
【0045】
固有粘度〔ηinh〕、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)が上記範囲
にある環状オレフィン系重合体(A1)は、成形加工性に優れ、この樹脂によれば、耐熱性、耐水性、耐薬品性および機械的特性に優れたNDフィルターが得られる。
【0046】
また、環状オレフィン系重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、通常120℃以上、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは120〜250℃、特に好ましくは130〜200℃である。Tgが上記範囲にある環状オレフィン系重合体(A1)は、高温条件下での使用や、コーティングおよび印刷などの加熱を伴う二次加工においても変形しにくく、また、成形加工性に優れ、成形加工時の熱による劣化も起こりにくい。
【0047】
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体(A1)は、環状オレフィン化合物(I)を重合または共重合(以下(共)重合という)して得られる。この(共)重合には、環状オレフィン化合物(I)を1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
環状オレフィン系重合体(A1)が環状オレフィン化合物(II)から導かれる構造単位を有する場合は、環状オレフィン系重合体(A1)の合成に用いる全モノマーの質量を100質量%としたときに環状オレフィン化合物(II)を10〜100質量%用いて(共)重合することが好ましい。
【0049】
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体(A1)としては、具体的には、
(1)環状オレフィン化合物(I)の開環重合体
(2)環状オレフィン化合物(I)と共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体
(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体
(5)環状オレフィン化合物(I)と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
(6)環状オレフィン化合物(I)と、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体との付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体
(7)環状オレフィン化合物(I)とアクリレートとの交互共重合体が挙げられる。これらの中でも、(3)開環(共)重合体の水素添加(共)重合体が特に好ましく用いられる
。以下に上記重合体の製造方法について詳述する。
【0050】
(1)開環重合体および(2)開環共重合体
開環重合体(1)および開環共重合体(2)は、メタセシス触媒の存在下で、環状オレフィン化合物(I)を開環重合させるか、または環状オレフィン化合物(I)と共重合性単量体とを開環共重合させて得られる。
【0051】
(共重合性単量体)
共重合性単量体とは、環状オレフィン化合物(I)との共重合に用いられる環状オレフィン化合物(I)以外の単量体をいう。
【0052】
上記共重合性単量体としては、シクロオレフィンが挙げられ、炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは5〜12のシクロオレフィンが望ましい。より具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどを挙げることができる。これらのシクロオレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
環状オレフィン化合物(I)と上記共重合性単量体との使用割合は、質量比(環状オレフィン化合物(I)の質量/共重合性単量体の質量)で100/0〜50/50が好ましく、100/0〜60/40がより好ましい。なお、「環状オレフィン化合物(I)の質量/共重合性単量体の質量=100/0」は、環状オレフィン化合物(I)を単独重合する場合を意味する。
【0054】
(開環重合用触媒)
開環(共)重合反応において用いられるメタセシス触媒は、公知のものを用いることができ、好ましくは、下記の化合物(a)と化合物(b)との組合せからなる触媒である。(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物。
(b)デミングの周期律表IA族元素(例えば、Li、Na、Kなど)、IIA族元素(例えば、Mg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(例えば、B、Alなど)、IVA族元素(例えば、Si、Sn、Pbなど)およびIVB族元素(例えば、Ti、Zrなど)から選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物であって、上記元素と炭素との結合、または上記元素と水素との結合を少なくとも1つ有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物。
【0055】
また、上記メタセシス触媒は、その活性を高めるために、後述の添加剤(c)を含んでいてもよい。
【0056】
上記化合物(a)の具体例としては、WCl6、MoCl6、ReOCl3など、特開平
1−132626号公報の第8頁左下欄第6行〜第8頁右上欄第17行に記載の化合物を挙げることができる。
【0057】
上記化合物(b)の具体例としては、n−C4H9Li、(C2H5)3Al、(C2H5)2AlCl、(C2H5)1.5AlCl1.5、(C2H5)AlCl2、メチルアルモキサン、L
iHなど、特開平1−132626号公報の第8頁右上欄第18行〜第8頁右下欄第3行に記載の化合物を挙げることができる。
【0058】
上記添加剤(c)としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などを好適に用いることができ、さらに特開平1−132626号公報の第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第17行に記載の化合物を使用することもできる。
【0059】
(重合反応用溶媒)
開環(共)重合反応において、溶媒は、後述する分子量調節剤溶液を構成する溶媒や、環状オレフィンおよび/またはメタセシス触媒の溶媒として使用される。このような溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;クロロベンゼンなどのハロゲン化アリール;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができる。これらの溶媒は単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
【0060】
(分子量調節剤)
得られる開環(共)重合体の分子量は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によって調節することも可能であるが、分子量調節剤を共存させることによっても調節できる。
【0061】
(3)水素添加(共)重合体
上記開環(共)重合体は、そのままでも用いることができるが、さらにこれに水素添加して得られる水素添加(共)重合体(3)は、耐衝撃性に優れた樹脂として有用である。
【0062】
上記水素添加(共)重合体(3)は、優れた熱安定性を有し、成形加工時や製品として使用する際の加熱によっても、その特性が劣化することはない。
【0063】
水素添加(共)重合体(3)の水素添加率は、1H−NMRにより500MHzの条件
で測定した値が、通常50%以上、好ましく70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れ、長期にわたって安定した特性を有する導光体などの成形体を得ることができる。
【0064】
また、上記水素添加(共)重合体(3)は、ゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、特に1重量%以下であることが好ましい。
【0065】
(4)水素添加(共)重合体
水素添加(共)重合体(4)は、上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加することにより得られる。
【0066】
上記開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化する方法は、特に限定されず、たとえば、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。
【0067】
環化された開環(共)重合体は、上記(3)の水素添加反応と同様にして、水素添加することができる。
【0068】
飽和共重合体(5)は、付加重合触媒の存在下で、環状オレフィン化合物(I)を含む環状オレフィン化合物に不飽和二重結合含有化合物を付加重合させることにより得られる。付加重合法は従来公知の方法を適用できる。
【0069】
(付加重合触媒)
付加重合触媒としては、公知のものを用いることができ、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物と、助触媒として有機アルミニウム化合物との組合せが挙げられる。
【0070】
上記付加重合反応において用いられる溶媒としては、上記開環(共)重合反応において例示した溶媒を挙げることができる。
【0071】
また、飽和共重合体(5)の分子量の調節は、通常、水素を用いて行うことができる。
【0072】
(6)付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体
付加型(共)重合体(6)は、上記環状オレフィン化合物(I)に、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体を付加重合させることにより得られる。
【0073】
上記付加重合反応は、上記(5)における付加重合反応と同様にして実施することができる。
【0074】
上記付加型(共)重合体(6)の水素添加(共)重合体は、上記付加型(共)重合体(6)を、上記(3)と同様の方法により水素添加することにより得ることができる。
【0075】
(7)交互共重合体
交互共重合体(7)は、ルイス酸等の存在下で環状オレフィン化合物とアクリレートとをラジカル重合させることにより得られる。
【0076】
また、フリーラジカルを発生する公知の有機過酸化物またはアゾビス系のラジカル重合開始剤を用いることもできる。
【0077】
重合反応温度は、通常−20〜80℃、好ましくは5〜60℃である。また、重合反応用溶媒としては、上記開環(共)重合反応において例示した溶媒を挙げることができる。
【0078】
なお、本発明における「交互共重合体」とは、環状オレフィン化合物(I)に由来する構造単位同士が隣接しない共重合体、すなわち、環状オレフィン化合物に由来する構造単位の隣には必ずアクリレートに由来する構造単位が結合している共重合体を意味する。ただし、アクリレート由来の構造単位同士は隣接して存在していてもよい。
【0079】
〔カーボンブラック(B)〕
カーボンブラック(B)は、一次粒子径が50nm以下である。一次粒子径が50nmより大きいと、環状オレフィン系重合体(A1)において十分に分散された状態であっても拡散光線透過率(Td)が大きくなり、本発明のNDフィルターを介して、対象物を目
視観察した際に、像がぼけてしまうという課題が発生する。前記一次粒子径としては、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは20nm以下である。
【0080】
カーボンブラック(B)としては、一次粒子径が小さく、且つ分散処理等によりストラクチャーの単位まで均一分散されていることが拡散透過光による像のボケを抑制する上で好ましい。
【0081】
また、カーボンブラックの表面処理状態は熱可塑性樹脂の化学的性質に合わせて、適宜選定することが好ましい。
【0082】
一次粒子径が50nm以下のカーボンブラックとしては一般に市販されているものを適
宜用いることができる。
【0083】
本発明に用いることができるカーボンブラックの市販品としては、具体的には、MONARCH1300、MONARCH1100、MONARCH900、BLACK PE
ARLS 2000、VULCAN XC72R(以上キャボット社製)、FW1、FW18、FW200、S170、S160、Printex XE2、Printex95、Printex90、Printex V、Printex 140V(以上デグザ社製)、東海1、東海2、#3845、#4500(以上東海カーボン社製)、MCH−18B、#5820、IJH500、IJH300、IJ2P、#3230B、#2650、#990、#950、#2600、MA600、#3050B、#3350B、MA100(三菱化学社製)、Conductex975、Conductex7055、Raven7000、Raven3500、Raven2500 ULTRA、Raven1060、Raven760、Raven780、Raven790(以上コロンビヤン社製)、デンカブラック(デンカ社製)、旭F−200、旭HS−500(以上旭カーボン社製)を好適に用いることができる。
【0084】
とりわけ一次粒子径が小さく、ストラクチャーの比較的小さなPRINTEX90、PRINTEX95、MONARCH1100、#2600が、光散乱を小さくすることでき、像のボケを防ぐこと可能なため、好適に用いることができる。
【0085】
カーボンブラック(B)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは0.3〜3質量部である。カーボンブラック(B)の含有割合が上記範囲にあると光学濃度の制御を成形体厚みで制御しやすい、またカーボンブラック配合量の再現性の点で好ましい。
〔熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)との存在状態〕
本発明のNDフィルターにおいては、カーボンブラック(B)が熱可塑性樹脂(A)中に分散されていることが好ましい。「分散されている」とは、カーボンブラック(B)がストラクチャの状態まで凝集が解かれた状態で、熱可塑性樹脂(A)の中で略均一に存在していることをいう。カーボンブラック(B)が熱可塑性樹脂(A)中に分散されていると、カーボンブラック(B)が熱可塑性樹脂(A)の内部に取り込まれているため、環境変化に対して、カーボンブラック(B)のブリードアウトや、再凝集を防ぐことができ、長期信頼性が確保できるという点で好ましい。
【0086】
〔その他の成分〕
本発明のNDフィルターは、カーボンブラック(B)に加えて、黒色着色剤として染料または顔料のいずれかを含有することができる。有機物からなる染料を用いる場合は、その化学構造に起因する特定波長の吸収を有するため、可視域において均一な減光特性を得るためには複数種の染料を適当な割合で混合することが好ましい。
【0087】
また、本発明の目的を損なわない範囲において、本発明のNDフィルターはさらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。
【0088】
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0089】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。また、後述する溶液キャスティング法によりノルボルネン系樹脂製基板を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加
することにより、その製造を容易にすることができる。
【0090】
なお、これら添加剤は、NDフィルターを製造する際に、環状オレフィン系重合体(A1)等とともに混合してもよいし、環状オレフィン系重合体(A1)を製造する際に添加することで予め配合されていてもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、環状オレフィン系重合体(A1)100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部、好ましくは0.05〜2.0質量部である。
〔NDフィルターの光線透過率〕
本発明のNDフィルターは、380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)が下記式(1)および式(2)を満たす。
【0091】
【数1】
【0092】
ここで、380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)とは、ダブルビーム方式の分光光度計によって測定される空気の透過率を100%とした相対透過率の前記波長範囲における平均値であり、最小値T(min)とは同様に前記波長範囲における前記相対透過率の最小値であり、最大値T(max)とは、同様に前記波長範囲における前記相対透過率の最大値である。
【0093】
平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)がこのような波長平坦性を有すると、フィルターが、光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有するようにフィルターの厚みを制御し、そのフィルター上における透過光が通過する位置を適宜変化させることにより、NDフィルターの減光特性を任意に調整することができる。
【0094】
平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は下記式(1)’および 式(2)’を満たすことがさらに好ましい。
【0095】
【数2】
【0096】
本発明のNDフィルターは、光学濃度が相互に異なる複数の部位を有するが、光学濃度の異なる部位毎にすべて式(1)と式(2)を満たす。
〔NDフィルターの形状〕
本発明のNDフィルターは、相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有する。これを実現する形状としては、光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有するような形状が挙げられる。
【0097】
本発明のNDフィルターを、光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有するような形状にすると、そのフィルター上における透過光が通過する位置を適宜変化させることにより、NDフィルターの減光特性を任意に調整することができるようになる。光の入射方向の厚みが相互に異なる部位を有するとは、光の入射方向に平行なNDフィルター断面において、光の入射面からその対面に至る、光の入射方向に平行な線分の長
さを考えた場合、その長さが一様ではなく、少なくとも2つの長さが存在することを意味する。
【0098】
このような形状は、目的に応じて適宜決定することができる。たとえば、光の入射方向に平行なNDフィルター断面において、光の入射方向の厚みが階段状(非連続的)に変化する形状、および連続的に変化する形状等を挙げることができる。前者の厚みが階段状に変化する形状においては、その段数および段差の大きさ等には特に制限はない。後者の厚みが連続的に変化する形状においては、厚みが直線的に変化する形状であってもよく、また厚みが光の入射方向に向かって凹状または凸状に曲線状に変化する形状であってもよい。この厚みが連続的に変化する形状には、楔形の形状等が含まれる。また、階段状に変化する部分と連続的に変化する部分との両方を有する形状であってもよい。上記の厚みが階段状に変化する形状および連続的に変化する形状等においては、光の入射方向に直行する方向に厚みが小さくなるのみまたは大きくなるのみである必要はなく、たとえば光の入射方向に直行する方向に厚みが一旦小さくなり、途中から厚みが大きくなるなど、厚みが小さくなる部分および大きくなる部分をそれぞれ1つ以上有するような形状であってもよい。
<NDフィルターの製造方法>
本発明のNDフィルターは、熱可塑性樹脂(A)およびカーボンブラック(B)、必要に応じて前記その他の成分、さらに溶媒等を混合してNDフィルター形成用組成物を調製し、これを所定の形状に成形することにより製造することができる。
【0099】
上記カーボンブラック(B)の熱可塑性樹脂(A)への分散には、大きく分けて、溶剤と必要に応じて分散剤を調合した上で、ピコミル、ペイントシェイカー、またはボールミル等を用いて分散する湿式分散による方法と、熱可塑性樹脂を加温し、溶融させた状態で、カーボンブラックを分散させる乾式分散とがあり、これらのいずれの方法を用いてもよい。
湿式分散の場合は、カーボンブラック(B)を溶剤に予備分散したものと熱可塑性樹脂(A)を同一の溶剤に溶解したものを混合し、加えて上記の予備分散時に、分散剤として、熱可塑性樹脂(A)、もしくは熱可塑性樹脂(A)と化学的性質の類似した樹脂を用いることにより、式(1)と式(2)を満たすことができるように、カーボンブラック(B)の熱可塑性樹脂(A)への分散状態を制御することが可能となる。
【0100】
一方で、乾式分散の場合は、その処理温度を熱可塑性樹脂のガラス転移温度に対して、+100℃〜+200℃とすることで、式(1)と式(2)を満たすことができるように、カーボンブラック(B)の熱可塑性樹脂(A)への分散状態を制御することが可能となる。
【0101】
熱可塑性樹脂(A)を溶融した上での乾式分散では、公知の単軸または二軸の押出機を用いることが可能である。押出機のシリンダー径は、通常、10〜100mmである。スクリューは公知のものを用いることができる。例えば単軸の場合、フルフライト、サブフライトを組み合わせたもの、ダルメージを組み込んだもの、スクリューピッチまたは溝深さが同一スクリュー中で変わるものが挙げられる。二軸の場合、2条または3条のスクリュー、異方向または同方向回転のスクリューが挙げられる。スクリューパーツが自由に組み合わされる方式の場合、スクリューパーツの形状を、スクリュー式、逆送りスクリュー、パドル式スクリュー、ヘリカルパドル式スクリューなどから自由に選択し使用することが可能である。
【0102】
押出機は1台で運転することも可能であるが、押出機を2台以上連結させたもの、連続式およびバッチ式のニーダーと組み合わせたものを使用しても構わない。
【0103】
熱可塑性樹脂(A)およびカーボンブラック(B)は、公知のタンブラー式、回転式などのブレンダーや、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機を用いてあらかじめ固体の状態で混合することも可能であり、複数のフィーダーを用いることも可能である。またカーボンブラック(B)は押出し機の途中からフィードすることも可能である。
NDフィルター形成用組成物中の熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)の含有割合は、NDフィルターにおけるカーボンブラック(B)の含有割合が前記範囲内となる限り、NDフィルターの製造方法に応じて任意に決めることができる。
【0104】
熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)とのブレンドにおいては、両者をあらかじめ公知の方法で乾燥することも好ましい。乾燥方法としては、熱風乾燥、除湿乾燥、真空乾燥、窒素乾燥など公知の方法を用いることが可能である。
【0105】
また、押出し機のホッパー、投入口、ベント口、ダイス面などを窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガスでシールすることも好ましい方法である。
【0106】
前述のように、単一NDフィルター内で光学濃度を変えるために、材料の濃度を一定にしたまま、NDフィルターの厚みを面内で段階的または連続的に変化させることが好ましい。このような形状のNDフィルターの製造方法としては、たとえば下記(i)〜(iii)の方法を挙げることができる。
(i)前記NDフィルター形成用組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上の任意の場所に、同組成物を用いて作成した厚みの均一な任意の面積を有する成形体を1つ以上部分的に積層することにより、相互に光学濃度の異なる複数の部位を有するNDフィルターを製造する方法。
(ii)前記NDフィルター形成用組成物を、厚みの異なる部位を任意の場所に任意の面積で有する形状を有する成形体を成形できる金型を用いて、射出成形により、相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有するNDフィルターを製造する方法。
(iii)前記NDフィルター形成用組成物を用いて作成した均一な厚みのシート、またはフィルムに彫刻を施したロールを押圧するホットスタンプ等の方法にて、任意の光学濃度が得られるように厚みを制御した後、公知の打ち抜きの方法により相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有するNDフィルターを製造する方法。
【0107】
特に、金型を準備し、所定の形状を得る前記製造方法(ii)が、生産量の調整、NDフィルターのデザイン変更等への順応性が高く、かつ工程数が少ないため、生産性、歩留を向上させる点からも特に好ましい。
【0108】
前記製造方法(i)、(iii)において、厚みの均一な成形体、シートまたはフィルムは、NDフィルター形成用組成物を用いてキャスト法、押出し成形法等の任意の方法で成形することができる。その際に用いられるNDフィルター形成用組成物としては、熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)等を任意の溶媒中で混合し、取り扱い性などの観点から粘度を調節したものを用いることができる。
【0109】
前記溶媒としては、熱可塑性樹脂が溶解し、カーボンブラックが良好に分散する限り特に制限されないが、芳香族系炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を挙げることができる。トルエン、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートが熱可塑性樹脂の溶解性、カーボンブラックの分散性の点で好ましい。
〔反射防止能の付与〕
迷光およびゴーストを防ぐため、NDフィルター表面に反射防止処理をすることも好ましい。反射防止処理方法としては、具体的には公知の誘電体多層膜による方法に加え、ホ
ットスタンプによるナノインプリントにて可視域の反射防止性能を付与する方法、フッ素ガス中でNDフィルターの表層から0.1マイクロメートルをフッ素化反応させる方法、蒸着にて形成する誘電体多層膜に代わり、ウェットコーティングによりフッ素化合物または中空シリカ等からなる単一の反射防止層、更には屈折率の異なる複数の層からなる反射防止層を積層して反射防止性能を付与する方法等が好ましく用いられる。
【0110】
成形物を打ち抜き加工等によりチップ化して撮像機器等に組み込む際には、カット時に発生する、切粉の発生が大きな問題となる場合も多い。上述の反射防止性能を付与する手段としては、真空蒸着以外の方法を用いることで、切粉の発生を低減することが可能である。更に生産性を考慮した場合には、成形体の表裏を同時処理することが可能な表層フッ素化法、または、再現性に優れかつ加工速度の速い、ウェットコートによる単層からなる反射防止層により処理する方法が好ましい。
〔段差および非垂直面での反射光の処理〕
上記〔NDフィルターの形状〕で述べたように、非連続的にNDフィルターの厚みに変化をつけて面内での減光特性を変化させる場合、光の入射面は段差を有することになる。場合によってはこの段差の部分が受光素子へ影響を与える場合があるため、適宜、この段差部位に撮像機器への影響を少なくするための処理を施すことが好ましい。
【0111】
具体的には、光の入射方向に平行な断面において光の入射面が単純に直角に折れ曲がった線以外の線を描くようにする方法、段差の部分を光の入射方向からみた場合に、光の入射面の段差部に現れる線が、直線以外の例えば曲線からなる波型またはノコ刃様の線になるようにする方法、および段差部分の形状変化を連続的にする方法等がある。さらに、段差を無くするために、可視域で透明な樹脂を用いて段差を含むNDフィルター全面をコーティングし、段差部分のエッジ部に透明樹脂を充填すること、更にはコーティング量をより増やして、段差を全く無くしてしまう方法がある。
【0112】
更には、該NDフィルターの段差部分と互いに嵌り合う段差部分を有する透明な成形体を別途準備し、両者が嵌るように段差のある面同士を貼り合わせることにより段差が全く無くなるようにする方法が好ましく用いられる。これらの手法については撮像機器の受光素子への像への影響を実際に確認した上で、必要に応じて、単一の方法を、またはこれらの方法を2種以上の組合せて用いることが好ましい。
【0113】
また、NDフィルターの光の入射方法の厚みを連続的に変化させ、且つ該NDフィルターの位置を入射光に対して、直交方向に移動させることにより、減光特性を連続的に変化させることができる。
【0114】
しかし、上記の場合、該NDフィルターの入射面のうち一部は、少なくとも光の入射方向に対して垂直とはなりえない部分(以下、この面を非垂直面という)を有する。空気中を通って、該NDフィルターの非垂直面に達した光は、透過光は屈折を受け、また反射光は入射光とは異なる方向に反射されることとなり、それぞれ光軸のズレおよび反射による迷光を発生させる問題が生じてくる。
【0115】
そこで、その解決策として、非垂直面に前述の熱可塑性樹脂(A)などの透明樹脂を成形加工したものを貼り合わせ、且つその透明樹脂の形状を適宜調整することにより、透明樹脂を貼り合わせた後のNDフィルターの入射面および出射面を、共に入射光に対して垂直とすることができる。
【0116】
前述の貼り合わせによって、NDフィルター部位と透明樹脂部位との間に境界が生じるが、透明樹脂部分とNDフィルター部分との屈折率差が極めて小さいため、NDフィルターと透明樹脂との貼り合わせを接着および圧着等の方法にて空気を介さないように行い、
両者を一体化させることで、屈折および反射は実質的に問題とならないようにすることができる。
<NDフィルターの使用方法>
上記のNDフィルターを用いて、相互に光の入射方向の厚みが異なる部位に光を入射させることにより光の透過率を調節することができる。具体的には、例えば撮像機器を屋外で使用する際に、外光の強度に応じて、前記の厚みの異なる部位の適当な位置を選択することで、露光量を調節し、像の明るさを最適化することができるようになる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
キャストフィルムの残留トルエン量
真空乾燥後のトルエン含量は予め検量線を作成しておいたパーソナルガスクロマトグラフィーC-8A(検出機;FID 島津製作所社製)にて測定した。
波長別透過特性
波長380〜780nmの範囲の波長別の光線透過率を日立分光光度計U−3310(日立製作所社製)を用いて測定した。
波長別反射特性
上記の日立分光光度計U−3310に反射率測定ユニットを組み込んで、波長380〜780nmの波長別の反射率を、アルミ蒸着ミラーを100%とした5度正反射における相対反射率として測定した。
全光線透過率
ヘイズメーターHM−150(村上色彩技術研究所社製)を用いてJIS K7361に準拠した測定をおこなった。
光線透過率の平均値T(ave):厚みの同じ任意の箇所を3点測定し、平均値Tとした。
最小値T(min):厚みの同じ任意の箇所を3点測定し、最も透過率の低い箇所の値をT(min)とした。
最大値T(max):厚みの同じ任意の箇所を3点測定し、最も透過率の高い箇所の値をT(min)とした。
ヘイズ値
ヘイズメーターHM−150(村上色彩技術研究所社製)を用いてJIS K7136に準拠した測定を行った。
レタデーション
レタデーション(透過光の位相差)は王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、波長550nmにて測定した。
<合成例1(環状オレフィン系重合体の合成)>
窒素置換した反応容器に、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン225部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2
−エン25部と、分子量調節剤として1−ヘキセン18部と、溶媒としてトルエン750部とを仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム1.5モル/lを含有するトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)を含有する濃度0.05モル/lのトルエン溶液3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。
【0117】
この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環共重合体溶液を構成する開環共重合体の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh )を測定したところ、0.65dl/gであった。
【0118】
得られた開環共重合体溶液4000部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム:RuHCl(CO)[P(C6 H5 )3 ]3 0.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2 、反応温度165℃の条件下で3時間加熱攪拌することにより水素添加反応を行った。
【0119】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「環状オレフィン系重合体(a)」ともいう。)を得た。
【0120】
得られた環状オレフィン系重合体(a)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であった。
【0121】
また、環状オレフィン系重合体(a)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は39,000、重量平均分子量(Mw)は116,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.97であった。
【0122】
また、環状オレフィン系重合体(a)のガラス転移温度(Tg)は130℃であり、23℃における飽和吸水率は0.3重量%であった。また、環状オレフィン系重合体(a)のSP値を測定したところ、19(MPa1/2 )であり、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ0.67dl/gであった。
【0123】
[作製例1]NDフィルター(1)の製造
カーボンブラック分散液(御国色素社製、固形分濃度20%、カーボンブラック一次粒子径15nm)100重量部に対して、合成例1で得られた環状オレフィン系重合体(a)(1mm厚での380〜780nmにおける光線透過率:93%)の20%トルエン溶液2000重量部を添加した後、溶液が目視で均一になるまで攪拌し、NDフィルター形成用組成物としてキャスト用ドープ液(1)を作成した。
【0124】
このキャスト用ドープ液を液膜300マイクロメートルとなるようにPETフィルム(コスモシャインA4300 東洋紡社製)上にアプリケータを用いて塗布し、そのまま100℃の強制攪拌式オーブンに投入し、10分間放置し、トルエンを揮発させた後、カーボンブラック分散環状オレフィン系重合体フィルム(厚み35μm)を得た。このフィルムを100℃に温度調節した真空乾燥機にて10時間乾燥させて、トルエン含量が0.1%未満のNDフィルター(1)を得た。
【0125】
得られたNDフィルター(1)の波長別透過特性を図1に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。可視域における透過光強度の波長依存の極めて小さく、かつ拡散透過光がほとんどない良好な減光性能を示すNDフィルター(1)が得られた。NDフィルター(1)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ42%、41%および43%であった。
【0126】
なお、全光線透過光は平行光と拡散透過光とから構成され、平行光とは透過光のうち入射光と平行である光の成分であり、拡散透過光とは透過光のうち入射光と非平行である光の成分である。また、
ヘイズ=拡散透過率/全光線透過率(%)
の関係がある。よって、ヘイズ値が小さいことは拡散透過率が小さいことを意味し、拡散透過光が少ないことを意味する。
【0127】
[作製例2]NDフィルター(2)の製造
環状オレフィン系重合体(a)はあらかじめ100℃×4時間の条件で真空乾燥を行った。その後タンブラーブレンダーで所定量のカーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)と予備混合を行った。なお環状オレフィン重合体(a)とカーボンブラックの混合比は重量比で100:1とした。
【0128】
二軸押出機(TEM−37BS,東芝機械社製)を所定温度である290〜300℃に加熱し、ホッパーとシリンダー内を窒素で充満させた。温度が安定した後、スクリューを100rpmで回転させ、ホッパー部へ窒素を流しながら、20kg/hrの速度で溶融混合を行い、NDフィルター形成用組成物として、光吸収性のカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を得た。
【0129】
更にこのカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)は100℃×4時間の条件で真空乾燥を行い、窒素でシールしたアルミ袋中に保管した。
【0130】
更に十分に清掃した650mm幅のTダイを50mmφ押出機に取り付けた。ダイスおよび押出機の昇温を始める前にダイスリップ部にとりつけたアルミニウム製のカバーから、純度99.99%の窒素を0.6m3/hrの流速で流すことにより封止し、Tダイと
押出機の昇温を始めた。
【0131】
昇温開始から5時間かけ十分に昇温した後、カーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を窒素循環式除湿乾燥機(日水加工社製、SD−200)にて100℃で3時間除湿乾燥をおこなった後、押出機のホッパーに移送した。
【0132】
押出機としてジーエムエンジニアリング株式会社製90mm押出機(GM−90)を用いて、押出温度280〜300℃で吐出量5kg/hrで樹脂を溶融し、ギアポンプで定量供給し、コートハンガー型マニホールドを有する700mm幅のTダイを用いて、樹脂を膜状に引き伸ばし、ステンレスベルト(表面粗さ0.1s)とつや付きロール(表面粗さ0.1s)を用いて、3.2m/minの速度で、フィルムを引き取り、樹脂フィルムの両面に鏡面の状態を転写・剥離して、500mm幅、厚さ50μmのシートを作製した。冷却キャストドラムの温度設定はTg−5〜20℃に設定して成形を行いNDフィルター(2)を得た。
【0133】
全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。NDフィルター(2)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ30%、29%および32%であった。
[実施例1]積層法によるNDフィルター(ND1)の製造
実施例1で得られたNDフィルター(1)を20mm×10mm、15mm×10mm
、および10mm×10mmで打ち抜きをおこなったところ、端面のきれいな3種類のサイズからなるNDフィルターが得られた。この20mm×10mmのNDフィルター上にマイクロディスペンサーを用いて、基準とする10mm辺から距離7.5mmとなる中央部位にメチルアミルケトンを1マイクロリットル滴下し、2秒後に先に打ち抜いた15mm×10mmのNDフィルターを基準とする10mm辺がちょうど重なるように、重ね合わせた。
【0134】
更にこの15mm×10mmのNDフィルター上にマイクロディスペンサーを用いて、先の基準辺から距離5mmとなる中央部にメチルアミルケトンを1マイクロリットル滴下し、2秒後に先に打ち抜いた10mm×10mmのNDフィルターを基準とする10mm
辺がちょうど重なるように、重ね合わせた。
【0135】
上記の3枚のNDフィルターを重ね合わせた後、10Nの荷重で10秒間ホールドした後、18mm×8mmサイズの打ち抜き刃で重ね合わせたNDフィルターの中央部を打ち抜くことにより、積層型NDフィルター(ND1)を得た。積層型NDフィルター(ND1)の出来上がりの概略図を図2に示した。
【0136】
1〜3枚重ね合わせ部分、図2に示した(a)〜(c)部分の波長別光線透過率の結果を図3〜5に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。同様にして、実施例2で得た混練押出タイプのNDフィルター(2)を用いて積層型NDフィルター(ND2)を得た。積層型NDフィルター(ND2)の概略図についても図6に示した。積層型NDフィルター(ND2)についても同様の評価をおこない、図6に示した(d)〜(f)部分の波長別光線透過率の結果を図7〜9に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。
【0137】
積層型NDフィルター(ND1)の1枚重ね合わせ部分の380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ42%、41%および43%であった。同様に2枚重ね合わせ部分の380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ13.0%、12.9%および13.9%であった。同様に3枚重ね合わせ部分の380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ4.1%、4.1%および4.2%であった。NDフィルター(ND2)は、段階的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した。
【0138】
[実施例2] 蒸着法によるNDフィルター(ND3)の製造
NDフィルター(2)を20mm×10mmに打ち抜いたサンプルに10mm×10mmに打ち抜いた耐熱保護フィルムであるE−MASK TP300(日東電工社製)を10mmの辺がちょうど重なるように貼り合わせた。このNDフィルター(2)に耐熱保護フィルム貼り合わせたものを基体として、以下の構成となるように、金属クロムとフッ化マグネシウムからなる積層体の蒸着をおこなって蒸着型NDフィルター(ND3)を得た。蒸着終了後に、該蒸着基体を取り出し、該保護フィルムを貼り合わせていない部分の波長別光線透過率を図10に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。なお該保護フィルムを剥離した部分の光学特性はNDフィルター(2)と同等であった。
積層構成と条件
基体側から順に金属クロム33ナノメートル、フッ化マグネシウム110ナノメートル、さらにもっとも空気に近い層として、金属クロムが2ナノメートルとなるよう、抵抗加熱法にて蒸着源を気化させ蒸着を行った。
[実施例3]射出成形法によるNDフィルター(ND4)の製造
段差を有する成形品からなるNDフィルターを得るための金型を作成し、作製例2で作製したカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を用いて成形機SG75M−S(シリンダー径28mm、型締め75ton、住友重機社製)を用いて射出成形にて射出成形型NDフィルター(ND4)を得た。射出成形型NDフィルター(ND4)の概略図を図11に示した。射出成形型NDフィルター(ND4)についても実施例1と同様の評価をおこない、図11に示した(g)〜(i)部分の波長別光線透過率の結果を図12〜14に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。
【0139】
NDフィルター(ND4)の厚み44ミクロンの部位における380〜780nmにお
ける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ30%、29%および32%であった。また、厚み87ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ11.0%、10.2%および11.7%であった。また、厚み131ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ3.2%、3.1%、および3.3%であった。NDフィルター(ND4)は、段階的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した。
射出成形条件
成形速度;100mm/sec
シリンダー温度;樹脂Tgの+140〜160℃
金型温度;樹脂Tgの−10〜−20℃
[実施例4]ロール押圧法によるNDフィルター(ND5)の製造
環状オレフィン系重合体(a)はあらかじめ100℃×4時間の条件で真空乾燥を行った。その後タンブラーブレンダーで所定量のカーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)と予備混合を行った。なお環状オレフィン重合体とカーボンブラックの混合比は重量比で100:1とした。
【0140】
二軸押出機(TEM−37BS,東芝機械社製)を所定温度である290〜300℃に加熱し、ホッパーとシリンダー内を窒素で充満させた。温度が安定した後、スクリューを100rpmで回転させ、ホッパー部へ窒素を流しながら、20kg/hrの速度で溶融混合を行い、光吸収性のカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を得た。
【0141】
更にこのカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)は100℃×4時間の条件で真空乾燥を行い、窒素でシールしたアルミ袋中に保管した。
【0142】
更に十分に清掃した650mm幅のTダイを50mmφ押出機に取り付けた。ダイスおよび押出機の昇温を始める前にダイスリップ部にとりつけたアルミニウム製のカバーから、純度99.99%の窒素を0.6m3/hrの流速で流すことにより封止し、Tダイと
押出機の昇温を始めた。
【0143】
昇温開始から5時間かけ十分に昇温した後、カーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を窒素循環式除湿乾燥機(日水加工社製、SD−200)にて100℃で3時間除湿乾燥をおこなった後、押出機のホッパーに移送した。
【0144】
押出機としてジーエムエンジニアリング株式会社製90mm押出機(GM−90)を用いて、押出温度280〜300℃で吐出量10kg/hrで樹脂を溶融し、ギアポンプで定量供給し、コートハンガー型マニホールドを有する700mm幅のTダイを用いて、樹脂を膜状に引き伸ばし、ステンレスベルト(表面粗さ0.1s)と段差ロール(基準円周面より段差44ミクロン掘り込んだ円周方向の長さ5mmの溝、その溝に隣接して更に43ミクロン掘り込み、合計で基準面から87ミクロン掘り込んだ円周方向の長さが5mmの溝、その溝に隣接して基準となる円周面が円周方向に長さ10mm続いた後、再び前記の2種の深さの溝(基準円周面から44ミクロン掘り込んだ溝と87ミクロン掘り込んだ溝)と基準円周面を繰り返し有する)を用いて、3.2m/minの速度で、フィルムを引き取り、樹脂フィルムの両面に鏡面の状態を転写・剥離して、500mm幅、厚さ44〜131nmの不連続な厚みを有するフィルムを作製した。
【0145】
冷却キャストドラムの温度設定はTg−5〜20℃に設定して成形を行った。更に該成形フィルムを18mm×10mmの打ち抜き刃を用いて厚み44ミクロンの部分4mm×
8mm、厚み87ミクロンの部分が5mm×8mm、厚み131ミクロンからなる部分が10mm×8mmであるNDフィルター(ND5)を得た。
【0146】
ロール押圧法によるNDフィルター(ND5)の概略図を図15に示した。ロール押出法によるNDフィルター(ND5)についても実施例1と同様の評価をおこない図15に示した(j)〜(l)部分の波長別光線透過率の結果を図16〜18に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。
【0147】
NDフィルター(ND5)の厚み44ミクロンの部位における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ29%、28%、および31%であった。また、厚み87ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ9.7%、9.1%、および10.3%であった。また、厚み131ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ2.8%、2.7%および3.0%であった。NDフィルター(ND5)は、段階的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した。
[実施例5]射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理
実施例3で得た射出成形型NDフィルター(ND4)について、ナノインプリント金型で温度230℃でφ150ナノメートル、深さ0.1マイクロメートルの細孔を1ミクロン角の面積中に23個、ハニカム構造をとるように空けた。処理後のSEM写真を図19に示した。可視光サイズより十分に小さなナノサイズの細孔を空けることで実質的に反射防止処理がなされ、片面あたりの反射率は処理前の片面4%から、1%以下まで低下した。結果を図20に示した。
[実施例6]射出成形型NDフィルター(ND4)の表面フッ素化処理
実施例3で得た射出成形型NDフィルター(ND4)について、フッ素ガスおよび窒素ガスをそれぞれ任意の割合で混合したガスをボックスに導入し、40℃にて5分間反応させたところ、表面からおよそ0.1ミクロンの深さにおいてマトリックスである環状オレフィン重合体(a)のフッ素化がなされた。フッ素化の深さについてはSIMSにより確認したところ、約0.1マイクロメートルであった。フッ素化処理後の反射率は処理前の片面4%から約2%まで低下していた。結果を図21に示した。
【0148】
[実施例7]NDフィルター(3)の製造
カーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)と環状オレフィン系重合体(a)に加えて染料であるSDA9811(トスコ社製)を更に添加した以外は実施例2と同様にしてカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(2)を得た。なお、混合比は重量比で環状オレフィン系重合体(a)の量:カーボンブラックの量:染料の量=100:0.1:0.05とした。楔形の形状を有するNDフィルターを得るための金型を作成し、前記カーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(2)を用いて成形機SG75M−S(シリンダー径28mm、型締め75ton、住友重機社製)を用いて射出成形にてNDフィルター(3)を得た。NDフィルター(3)の概略図を図23に示した。
【0149】
NDフィルター(3)の厚み33ミクロンの部位における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ38%、37%および39%であった。また、厚み66ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ13.0%、12.1%および13.9%であった。また、厚み100ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ4.4%、4.2%および4.6%であった。NDフィルター(3)は、連続的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した
。
【0150】
[実施例8]射出成形型NDフィルター(ND6)
実施例7で作成したNDフィルター(3)と同様の楔形の形状を有する透明成形体を実施例7と同様の成形条件にて作成した。この透明成形体とNDフィルター(3)を実施例1と同様にメチルアミルケトンで貼り合わせ射出成形型NDフィルター(ND6)を得た。貼り合わせ後の射出成形型NDフィルター(ND6)の概略図を図24に示した。
【0151】
NDフィルター(ND6)の厚み33ミクロンの部位における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ38%、37%および39%であった。また、厚み66ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ13.1%、12.1%および13.8%であった。また、厚み100ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ4.4%、4.3%および4.6%であった。NDフィルター(ND6)は、連続的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した。
【0152】
[実施例9]射出成形型NDフィルター(ND6)の反射防止処理
射出成形型NDフィルター(ND6)の両面の反射防止処理を真空蒸着にておこない、片面反射率がおよそ1%程度の反射防止能を付与したNDフィルター(ND7)を得た。真空蒸着の条件を下記に示した。NDフィルター(ND7)の反射率測定結果を図25に示した。なお、図25は透明成形体側からの測定結果であり、その反対面からの測定結果も同等であった。
(蒸着条件)
NDフィルターに接する側より順次TiO2、SiO2、TiO2、SiO2を下記の膜厚で積層した。なお、蒸着材料およびその蒸着条件は両面ともに同等とした。
TiO2;11nm
SiO2;50nm
TiO2;16nm
SiO2;107nm
[比較例1]黒色染料を用いた場合
黒色の染料であるFBK80S(日本ピグメント社製)をつかった以外は作製例2と同様にしてNDフィルター(A)を作製した。得られたNDフィルター(A)の波長別透過特性を図22に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを表1に示した。可視域における透過光強度の波長依存性が大きくなってしまった。NDフィルター(A)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ66%、50%および81%であった。
[比較例2]粒子径が大きいタイプ
カーボンブラックとして一次粒子径が大きく、かつストラクチャーも大きなカーボンブラックであるシーストSVH(一次粒子径62nm)を用いた以外は作製例2と同様にしてNDフィルター(B)を作製した。得られたNDフィルター(B)の全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを表1に示した。拡散透過光の割合が多くなってしまった。NDフィルター(B)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ30%、29%および31%であった。
[比較例3] 熱硬化性樹脂を用いた場合
シリコーンレジンLPS−L500(信越化学工業社製)と所定量のカーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)とをホモジナイザーを用いて均一分散させ、光吸収性のカーボンブラック分散熱硬化性樹脂を得た。なおシリコーンレジンとカーボンブラッ
クの混合比は重量比で100:1とした。この光吸収性のカーボンブラック分散熱硬化性樹脂を用いて、ワイヤーバー(ウェット膜厚 40ミクロン)にて、ガラス基板上にフィルム製膜し、150℃×5時間の熱硬化をおこないNDフィルター(C)を得た。得られたNDフィルター(C)は、ごくわずかな面の屈曲に対して割れてしまう、可撓性に乏しいものであり、実用上のハンドリングが大変困難なものとなってしまった。
[比較例4] 光線透過率が低い樹脂を用いた場合
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(光線透過率47% 1mm厚)を用いて実施例2と同様にして タンブラーブレンダーで所定量のカーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)と予備混合を行った。なおポリプロピレンとカーボンブラックの混合比は重量比で100:1とした。
【0153】
二軸押出機(TEM−37BS,東芝機械社製)を所定温度である190〜200℃に加熱し、ホッパーとシリンダー内を窒素で充満させた。温度が安定した後、スクリューを100rpmで回転させ、ホッパー部へ窒素を流しながら、20kg/hrの速度で溶融混合を行い、NDフィルター形成用組成物として、光吸収性のカーボンブラック分散ポリプロピレン組成物を得た。
【0154】
このカーボンブラック分散ポリプロピレン組成物をホットプレス法(温度200℃、圧力100MPa)にてフィルム化したところ厚み0.1mmのNDフィルター(D)が得られた。
【0155】
NDフィルター(D)の全光線透過率、ヘイズ値、リタデーションを測定した結果を表1に示した。NDフィルター(D)はヘイズが高く、実際に該フィルターを介して目視で対象物を観察した際には、減光性能が得られたものの、対象物の像の輪郭が不明瞭であった。
【0156】
また、熱可塑性樹脂として前記ポリプロピレンを用いた場合、熱可塑性樹脂自体の光線透過率が47%のため、光線透過率が47%より大きなNDフィルターを作製することはできない。
[比較例5]減光特性に波長依存性が大きいケース
カーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)21.6重量部、分散剤BYK−167(ビックケミー・ジャパン社製)2.4重量部、トルエン96重量部、ジルコニアビーズ(直径0.1mm)48重量部をポリ瓶に入れて、ペイントシェイカーで6時間震盪した後、SUS製の200メッシュを用いて、ジルコニアビーズを除き、カーボンブラック分散液(1)を得た。このカーボンブラック分散液(1)100重量部に対して、合成例(1)で得られた環状オレフィン系重合体(a)(1mm厚での380〜780nmにおける光線透過率:93%)の20%トルエン溶液2000重量部を添加した後、溶液が目視で均一になるまで攪拌し、NDフィルター形成用組成物としてキャスト用ドープ液(2)を作成した。
【0157】
このキャスト用ドープ液を液膜300マイクロメートルとなるようにPETフィルム(コスモシャインA4300 東洋紡社製)上にアプリケータを用いて塗布し、そのまま100℃の強制攪拌式オーブンに投入し、10分間放置し、トルエンを揮発させた後、カーボンブラック分散環状オレフィン重合体フィルム(厚み35μm)を得た。このフィルムを100℃に温度調節した真空乾燥機にて10時間乾燥させて、トルエン含量が0.1%未満のNDフィルター(E)を得た。得られたNDフィルター(E)の波長別透過特性を図26に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。可視域における透過光強度の波長依存の大きなNDフィルター(E)が得られた。NDフィルター(E)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ46%、34%および54%で
あった。
【0158】
NDフィルター(E)の減光特性は波長依存性大きいため、実際に該フィルターを介して目視で対象物を観察した際には、対象物が黄色味を帯びており、色調変化が生じていた。
【0159】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NDフィルターおよびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、熱可塑性樹脂およびカーボンブラックを含有するNDフィルターおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のNDフィルターとしては、透明基板上に、光吸収能を有する金属膜と透過および反射を制御するための金属酸化物等からなる誘電体膜とが真空中で蒸着加工により形成されることにより作製された反射吸収型NDフィルターと、透明材料に染料および顔料を均一分散させることにより作製された光吸収型NDフィルターとに大別される。
【0003】
しかしながら、反射吸収型NDフィルターにおいては、真空蒸着による多層コーティングが必須となるので、NDフィルターの製造の再現性およびフィルター面内の光学特性の均一性を確保するためには、蒸着源からの距離を一定にすべく基板サイズを小型化する必要があった。一方、光吸収型NDフィルターでは、用いる染料または顔料の性質によっては可視光に対する均一な減光効果が得られない場合が多かった。
【0004】
また、昨今のデジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像機器においてはその高機能化、小型化に伴い、単一のNDフィルターにおいて、その光線透過位置を変化させることで減光性能を可変とする、フィルター面内の光線透過率に変化を持たせたNDフィルターが強く求められるようになった。
【0005】
このような要求を受けて、特許文献1には、蒸着法により複数のマスクを用いて、基体表面に光透過率が段階的に異なる領域を設けることにより形成されたNDフィルターが、特許文献2には、蒸発源の蒸発飛来方向と直交する平面に対して所定角度傾斜させて基体を固定配置し、更にマスクを基体と蒸着源の間に所定の角度を設けて蒸着することにより、無段階の光学濃度変化が付与されたNDフィルターの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−37548号
【特許文献2】特開平11−38206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたNDフィルターの製造方法では、開口部の大きさが異なるマスクを複数枚重ね合わせて蒸着厚みを制御するため、それぞれのマスクについて洗浄を十分におこなわないと、マスク同士の重ね合わせ時に以前の蒸着で付着した蒸着物質が剥離し、それが結果的に異物として基体に付着し、画像の質が低下してしまうなどの課題があった。また特許文献2に開示されたNDフィルターの製造方法では、基体およびマスクを傾斜配置するため、NDフィルターの設計変更に容易に対応できず、且つ傾斜角度のわずかな変化により製品の特性がばらつくといったいわゆるバッチ間の再現性が乏しいなどの課題があった。
【0008】
本発明の目的は、真空蒸着における多層成膜の再現性の乏しさ、工程の煩雑さとそれに伴う歩留の低下、ならびにNDフィルターの形状および光学濃度の設計変更の不自由さを解消し、かつ単一のNDフィルターにおいて再現性よくかつ簡便に、段階的または連続的
に光学濃度を変更することのできるNDフィルターおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の光線透過率を有する熱可塑性樹脂(A)と特定の粒径を有するカーボンブラック(B)を含有し、さらに波長平坦性を有するNDフィルターによれば、フィルターの高度な厚み制御を行い、同一フィルター上において透過光が通過する位置を変更することで、任意の減光特性が得られることを見出した。ここで波長平坦性とは、380〜780nmの波長別光線透過率の平均値がT(ave)(%)であった場合、380〜780nmにおける光線透過率の最大値T(max)が1.08×T(ave)(%)以下であり、かつ同最小値T(min)が0.92×T(ave)(%)以上であることを示す。
【0010】
第一の発明は、厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有し、且つ380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)が下記式(1)および式(2)を満たし、相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有することを特徴とするNDフィルターに関する。
【0011】
【数1】
【0012】
本発明のNDフィルターはカーボンブラック(B)が前記熱可塑性樹脂(A)に分散されていることが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)は下記式(I)で表される化合物から導かれる構造単位を有する環状オレフィン系重合体(A)を含有することが好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
本発明のNDフィルターは光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有することが好ましい。
【0016】
本発明のNDフィルターは、厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が
85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上に、前記組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体を少なくとも1層部分的に積層することにより形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明のNDフィルターは厚さでの1mmの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を射出成形することにより形成されていてもよい。
【0018】
本発明のNDフィルターは厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を押出し法により成型して得られたシートまたはフィルムに、彫刻を施したロールを押圧する工程を含む方法により形成されていてもよい。
【0019】
第二の発明は下記(i)〜(iii)の第一の発明のNDフィルターの製造方法に関する。
(i)厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上に、前記組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体を少なくとも1層部分的に積層する工程を有することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
(ii)厚さでの1mmの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を射出成形することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
(iii)厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を押出し法により成型して得られたシートまたはフィルムに彫刻を施したロールを押圧する工程を含むことを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【0020】
第三の発明は、前記NDフィルターを用いて、相互に光の入射方向の厚みが異なる部位に光を入射させることにより光の透過率を調節する方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のNDフィルターの製造方法では、大掛かりな真空装置を使用することなく、高歩留まり率などの高い生産性を有し、さらに設計変更の不自由さもない。該方法により得られるNDフィルターは高精度な減光特性を有するため、単一NDフィルター内において、その厚みを段階的または連続的に変化させることのできる性能である面内可変能を有する。このため本発明のNDフィルターは、デジタルカメラ、ビデオカメラといった撮像機器の性能を低コストで飛躍的に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1により得られたNDフィルター(1)の波長別透過特性を示す。
【図2】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の概略図を示す。
【図3】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(a)部の波長別光線透過率を示す。
【図4】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(b)部の波長別光線透過率を示す。
【図5】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(c)部の波長別光線透過率を示す。
【図6】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND2)の概略図を示す。
【図7】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(d)部の波長別光線透過率を示す。
【図8】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(e)部の波長別光線透過率を示す。
【図9】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(f)部の波長別光線透過率を示す。
【図10】実施例4により得られた蒸着法によるNDフィルター(ND3)の波長別光線透過率を示す。
【図11】実施例5により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の概略図を示す。
【図12】実施例5により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(g)部の波長別光線透過率を示す。
【図13】実施例5により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(h)部の波長別光線透過率を示す。
【図14】実施例5により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(i)部の波長別光線透過率を示す。
【図15】実施例6により得られたロール押圧型NDフィルター(ND5)の概略図を示す。
【図16】実施例6により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(j)部の波長別光線透過率を示す。
【図17】実施例6により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(k)部の波長別光線透過率を示す。
【図18】実施例6により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(l)部の波長別光線透過率を示す。
【図19】実施例7により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理後のSEM写真を示す。
【図20】射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理前後の反射率を示す。
【図21】射出成形型NDフィルター(ND4)の表面フッ素化処理前後の反射率を示す。
【図22】比較例1により得られたNDフィルター(A)の波長別光線透過率を示す。
【図23】実施例9により得られたNDフィルター(3)の概略図を示す。
【図24】実施例10により得られた射出成形型NDフィルター(ND6)の概略図を示す。
【図25】射出成形型NDフィルター(ND7)の反射防止処理後の反射率を示す。
【図26】比較例5により得られたNDフィルター(E)の波長別光線透過率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0024】
<NDフィルター>
本発明のNDフィルターは、厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である熱可塑性樹脂(A)と一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)を含有する。
【0025】
〔熱可塑性樹脂(A)〕
熱可塑性樹脂(A)は、厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である。光線透過率が85%より小さいと、カーボンブラック(B)との複合化に
よる減光効果が光線透過率において85%以下に限定されてしまうため好ましくない。前記光線透過率としては、好ましくは90%以上であり、より好ましくは92%以上である。前記光線透過率は、ダブルビーム方式の分光光度計によって測定される空気の透過率を100%とした相対透過率である。
【0026】
熱可塑性樹脂(A)は、厚さ1mmの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である限り特に限定されないが、ポリカーボネート、(メタ)アクリル酸樹脂、ポリエステル、環状オレフィン系重合体等から選ぶことができる。これらの中で、光学部品として複屈折が小さいこと、および環境変化による温度および湿度等の特性の安定などの観点から、環状オレフィン系重合体(A1)が好ましい。
【0027】
環状オレフィン系重合体(A1)は、下記式(I)で表される環状オレフィン化合物(I)から導かれる構造単位を有することが好ましい。
【0028】
【化2】
【0029】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
【0030】
上記炭化水素基としては、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。これらの基の中でも、メチル基、エチル基が耐熱安定性の点で好ましい。
【0031】
上記極性基としては、例えば、水酸基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1〜10のアルコキシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等のアリーロキシカルボニル基;シアノ基;アミド基;イミド基;トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリオルガノシリル基;トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のアルコキシシリル基;アミノ基;アシル基;スルホニル基;カルボキシル基など挙げられる。
【0032】
また、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。
【0033】
mは0または正の整数を示し、好ましくは0〜3の整数を示す。pは0または正の整数を示し、好ましくは0〜3の整数を示す。また、より好ましくはm+pが0〜4の整数、特に好ましくはm+pが0〜2の整数である。最も好ましくはm=1、p=0である。m=1、p=0である環状オレフィン化合物(I)を用いると、ガラス転移温度が高く、かつ機械的強度にも優れた重合体が得られるため好ましい。
【0034】
環状オレフィン化合物(I)としては、具体的には、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。
【0035】
環状オレフィン化合物(I)としては、R1〜R4のうち少なくとも一つは極性基である環状オレフィン化合物(II)を少なくとも1種を用いることが、カーボンブラックとの相溶性向上、蒸着製膜およびウェットコーティング等の表面加工における密着性向上の点で好ましい。
【0036】
上記極性基は、下記式(III)で表される極性基であることが好ましい。
【0037】
【化3】
【0038】
上記式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を示し、nは0〜5の整数を示す。
【0039】
上記式(III)において、Rは好ましくは炭素数1〜4、さらに好ましくは1または2
の炭化水素基である。ここで、炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。また、nは通常0〜5であり、nの値が小さい極性基を有する環状オレフィン化合物(II)ほど、ガラス転移温度が高い重合体が得られるため好ましく、nが0である環状オレフィン(−COOR)は合成も容易であるため特に好ましい。
【0040】
好ましい環状オレフィン化合物(II)としては、上記式(I)において、R1および
R3がそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10、より好ましくは1〜4、特に好
ましくは1もしくは2の炭化水素基であり;R2およびR4のうちの一方が水素原子であり、他方が極性基である化合物が挙げられる。この場合、R1またはR3で表される炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。さらに、R2およびR4のうちの一方が、上記式(III)で表される極性基であることが好ましい。
【0041】
また、環状オレフィン化合物(II)のうち、吸湿性の低い重合体が得られる観点から、R1がアルキル基であり、R2が上記式(III)で表される極性基であり、R3およびR4
が水素原子である化合物がより好ましい。
【0042】
上記式(III)で表される極性基を有する環状オレフィン化合物(II)としては、具
体的には、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]
−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.
4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。なお、これらの化合物に限定されるものではない。
【0043】
環状オレフィン系重合体(A1)が有する環状オレフィン化合物(I)から導かれる構造単位の比率としては、環状オレフィン系重合体(A1)が有する全構造単位の質量を100質量%としたとき、好ましくは100〜60質量%、より好ましくは95〜30質量%である。
【0044】
本発明に用いられる環状オレフィン系重合体(A1)の固有粘度〔ηinh〕は、0.2
〜5dl/gが好ましく、0.3〜3dl/gがさらに好ましく、0.4〜1.5dl/gが特に好ましい。また、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、カラム:東ソー(株)製TSKgel G7000HXL×1、TSKgel GMHXL×2およびTSKgel G2000HXL×1の4本を直列に接続した。)で測定されるポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量(Mn)が好ましくは8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは12,000〜50,000であり、重量平均分子量(Mw)が好ましくは20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜250,000、特に好ましくは40,000〜200,000である。
【0045】
固有粘度〔ηinh〕、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)が上記範囲
にある環状オレフィン系重合体(A1)は、成形加工性に優れ、この樹脂によれば、耐熱性、耐水性、耐薬品性および機械的特性に優れたNDフィルターが得られる。
【0046】
また、環状オレフィン系重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、通常120℃以上、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは120〜250℃、特に好ましくは130〜200℃である。Tgが上記範囲にある環状オレフィン系重合体(A1)は、高温条件下での使用や、コーティングおよび印刷などの加熱を伴う二次加工においても変形しにくく、また、成形加工性に優れ、成形加工時の熱による劣化も起こりにくい。
【0047】
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体(A1)は、環状オレフィン化合物(I)を重合または共重合(以下(共)重合という)して得られる。この(共)重合には、環状オレフィン化合物(I)を1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
環状オレフィン系重合体(A1)が環状オレフィン化合物(II)から導かれる構造単位を有する場合は、環状オレフィン系重合体(A1)の合成に用いる全モノマーの質量を100質量%としたときに環状オレフィン化合物(II)を10〜100質量%用いて(共)重合することが好ましい。
【0049】
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体(A1)としては、具体的には、
(1)環状オレフィン化合物(I)の開環重合体
(2)環状オレフィン化合物(I)と共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体
(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体
(5)環状オレフィン化合物(I)と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
(6)環状オレフィン化合物(I)と、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体との付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体
(7)環状オレフィン化合物(I)とアクリレートとの交互共重合体が挙げられる。これらの中でも、(3)開環(共)重合体の水素添加(共)重合体が特に好ましく用いられる
。以下に上記重合体の製造方法について詳述する。
【0050】
(1)開環重合体および(2)開環共重合体
開環重合体(1)および開環共重合体(2)は、メタセシス触媒の存在下で、環状オレフィン化合物(I)を開環重合させるか、または環状オレフィン化合物(I)と共重合性単量体とを開環共重合させて得られる。
【0051】
(共重合性単量体)
共重合性単量体とは、環状オレフィン化合物(I)との共重合に用いられる環状オレフィン化合物(I)以外の単量体をいう。
【0052】
上記共重合性単量体としては、シクロオレフィンが挙げられ、炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは5〜12のシクロオレフィンが望ましい。より具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどを挙げることができる。これらのシクロオレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
環状オレフィン化合物(I)と上記共重合性単量体との使用割合は、質量比(環状オレフィン化合物(I)の質量/共重合性単量体の質量)で100/0〜50/50が好ましく、100/0〜60/40がより好ましい。なお、「環状オレフィン化合物(I)の質量/共重合性単量体の質量=100/0」は、環状オレフィン化合物(I)を単独重合する場合を意味する。
【0054】
(開環重合用触媒)
開環(共)重合反応において用いられるメタセシス触媒は、公知のものを用いることができ、好ましくは、下記の化合物(a)と化合物(b)との組合せからなる触媒である。(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物。
(b)デミングの周期律表IA族元素(例えば、Li、Na、Kなど)、IIA族元素(例えば、Mg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(例えば、B、Alなど)、IVA族元素(例えば、Si、Sn、Pbなど)およびIVB族元素(例えば、Ti、Zrなど)から選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物であって、上記元素と炭素との結合、または上記元素と水素との結合を少なくとも1つ有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物。
【0055】
また、上記メタセシス触媒は、その活性を高めるために、後述の添加剤(c)を含んでいてもよい。
【0056】
上記化合物(a)の具体例としては、WCl6、MoCl6、ReOCl3など、特開平
1−132626号公報の第8頁左下欄第6行〜第8頁右上欄第17行に記載の化合物を挙げることができる。
【0057】
上記化合物(b)の具体例としては、n−C4H9Li、(C2H5)3Al、(C2H5)2AlCl、(C2H5)1.5AlCl1.5、(C2H5)AlCl2、メチルアルモキサン、L
iHなど、特開平1−132626号公報の第8頁右上欄第18行〜第8頁右下欄第3行に記載の化合物を挙げることができる。
【0058】
上記添加剤(c)としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などを好適に用いることができ、さらに特開平1−132626号公報の第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第17行に記載の化合物を使用することもできる。
【0059】
(重合反応用溶媒)
開環(共)重合反応において、溶媒は、後述する分子量調節剤溶液を構成する溶媒や、環状オレフィンおよび/またはメタセシス触媒の溶媒として使用される。このような溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;クロロベンゼンなどのハロゲン化アリール;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができる。これらの溶媒は単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
【0060】
(分子量調節剤)
得られる開環(共)重合体の分子量は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によって調節することも可能であるが、分子量調節剤を共存させることによっても調節できる。
【0061】
(3)水素添加(共)重合体
上記開環(共)重合体は、そのままでも用いることができるが、さらにこれに水素添加して得られる水素添加(共)重合体(3)は、耐衝撃性に優れた樹脂として有用である。
【0062】
上記水素添加(共)重合体(3)は、優れた熱安定性を有し、成形加工時や製品として使用する際の加熱によっても、その特性が劣化することはない。
【0063】
水素添加(共)重合体(3)の水素添加率は、1H−NMRにより500MHzの条件
で測定した値が、通常50%以上、好ましく70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れ、長期にわたって安定した特性を有する導光体などの成形体を得ることができる。
【0064】
また、上記水素添加(共)重合体(3)は、ゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、特に1重量%以下であることが好ましい。
【0065】
(4)水素添加(共)重合体
水素添加(共)重合体(4)は、上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加することにより得られる。
【0066】
上記開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化する方法は、特に限定されず、たとえば、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。
【0067】
環化された開環(共)重合体は、上記(3)の水素添加反応と同様にして、水素添加することができる。
【0068】
飽和共重合体(5)は、付加重合触媒の存在下で、環状オレフィン化合物(I)を含む環状オレフィン化合物に不飽和二重結合含有化合物を付加重合させることにより得られる。付加重合法は従来公知の方法を適用できる。
【0069】
(付加重合触媒)
付加重合触媒としては、公知のものを用いることができ、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物と、助触媒として有機アルミニウム化合物との組合せが挙げられる。
【0070】
上記付加重合反応において用いられる溶媒としては、上記開環(共)重合反応において例示した溶媒を挙げることができる。
【0071】
また、飽和共重合体(5)の分子量の調節は、通常、水素を用いて行うことができる。
【0072】
(6)付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体
付加型(共)重合体(6)は、上記環状オレフィン化合物(I)に、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体を付加重合させることにより得られる。
【0073】
上記付加重合反応は、上記(5)における付加重合反応と同様にして実施することができる。
【0074】
上記付加型(共)重合体(6)の水素添加(共)重合体は、上記付加型(共)重合体(6)を、上記(3)と同様の方法により水素添加することにより得ることができる。
【0075】
(7)交互共重合体
交互共重合体(7)は、ルイス酸等の存在下で環状オレフィン化合物とアクリレートとをラジカル重合させることにより得られる。
【0076】
また、フリーラジカルを発生する公知の有機過酸化物またはアゾビス系のラジカル重合開始剤を用いることもできる。
【0077】
重合反応温度は、通常−20〜80℃、好ましくは5〜60℃である。また、重合反応用溶媒としては、上記開環(共)重合反応において例示した溶媒を挙げることができる。
【0078】
なお、本発明における「交互共重合体」とは、環状オレフィン化合物(I)に由来する構造単位同士が隣接しない共重合体、すなわち、環状オレフィン化合物に由来する構造単位の隣には必ずアクリレートに由来する構造単位が結合している共重合体を意味する。ただし、アクリレート由来の構造単位同士は隣接して存在していてもよい。
【0079】
〔カーボンブラック(B)〕
カーボンブラック(B)は、一次粒子径が50nm以下である。一次粒子径が50nmより大きいと、環状オレフィン系重合体(A1)において十分に分散された状態であっても拡散光線透過率(Td)が大きくなり、本発明のNDフィルターを介して、対象物を目
視観察した際に、像がぼけてしまうという課題が発生する。前記一次粒子径としては、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは20nm以下である。
【0080】
カーボンブラック(B)としては、一次粒子径が小さく、且つ分散処理等によりストラクチャーの単位まで均一分散されていることが拡散透過光による像のボケを抑制する上で好ましい。
【0081】
また、カーボンブラックの表面処理状態は熱可塑性樹脂の化学的性質に合わせて、適宜選定することが好ましい。
【0082】
一次粒子径が50nm以下のカーボンブラックとしては一般に市販されているものを適
宜用いることができる。
【0083】
本発明に用いることができるカーボンブラックの市販品としては、具体的には、MONARCH1300、MONARCH1100、MONARCH900、BLACK PE
ARLS 2000、VULCAN XC72R(以上キャボット社製)、FW1、FW18、FW200、S170、S160、Printex XE2、Printex95、Printex90、Printex V、Printex 140V(以上デグザ社製)、東海1、東海2、#3845、#4500(以上東海カーボン社製)、MCH−18B、#5820、IJH500、IJH300、IJ2P、#3230B、#2650、#990、#950、#2600、MA600、#3050B、#3350B、MA100(三菱化学社製)、Conductex975、Conductex7055、Raven7000、Raven3500、Raven2500 ULTRA、Raven1060、Raven760、Raven780、Raven790(以上コロンビヤン社製)、デンカブラック(デンカ社製)、旭F−200、旭HS−500(以上旭カーボン社製)を好適に用いることができる。
【0084】
とりわけ一次粒子径が小さく、ストラクチャーの比較的小さなPRINTEX90、PRINTEX95、MONARCH1100、#2600が、光散乱を小さくすることでき、像のボケを防ぐこと可能なため、好適に用いることができる。
【0085】
カーボンブラック(B)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは0.3〜3質量部である。カーボンブラック(B)の含有割合が上記範囲にあると光学濃度の制御を成形体厚みで制御しやすい、またカーボンブラック配合量の再現性の点で好ましい。
〔熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)との存在状態〕
本発明のNDフィルターにおいては、カーボンブラック(B)が熱可塑性樹脂(A)中に分散されていることが好ましい。「分散されている」とは、カーボンブラック(B)がストラクチャの状態まで凝集が解かれた状態で、熱可塑性樹脂(A)の中で略均一に存在していることをいう。カーボンブラック(B)が熱可塑性樹脂(A)中に分散されていると、カーボンブラック(B)が熱可塑性樹脂(A)の内部に取り込まれているため、環境変化に対して、カーボンブラック(B)のブリードアウトや、再凝集を防ぐことができ、長期信頼性が確保できるという点で好ましい。
【0086】
〔その他の成分〕
本発明のNDフィルターは、カーボンブラック(B)に加えて、黒色着色剤として染料または顔料のいずれかを含有することができる。有機物からなる染料を用いる場合は、その化学構造に起因する特定波長の吸収を有するため、可視域において均一な減光特性を得るためには複数種の染料を適当な割合で混合することが好ましい。
【0087】
また、本発明の目的を損なわない範囲において、本発明のNDフィルターはさらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。
【0088】
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0089】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。また、後述する溶液キャスティング法によりノルボルネン系樹脂製基板を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加
することにより、その製造を容易にすることができる。
【0090】
なお、これら添加剤は、NDフィルターを製造する際に、環状オレフィン系重合体(A1)等とともに混合してもよいし、環状オレフィン系重合体(A1)を製造する際に添加することで予め配合されていてもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、環状オレフィン系重合体(A1)100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部、好ましくは0.05〜2.0質量部である。
〔NDフィルターの光線透過率〕
本発明のNDフィルターは、380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)が下記式(1)および式(2)を満たす。
【0091】
【数1】
【0092】
ここで、380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)とは、ダブルビーム方式の分光光度計によって測定される空気の透過率を100%とした相対透過率の前記波長範囲における平均値であり、最小値T(min)とは同様に前記波長範囲における前記相対透過率の最小値であり、最大値T(max)とは、同様に前記波長範囲における前記相対透過率の最大値である。
【0093】
平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)がこのような波長平坦性を有すると、フィルターが、光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有するようにフィルターの厚みを制御し、そのフィルター上における透過光が通過する位置を適宜変化させることにより、NDフィルターの減光特性を任意に調整することができる。
【0094】
平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は下記式(1)’および 式(2)’を満たすことがさらに好ましい。
【0095】
【数2】
【0096】
本発明のNDフィルターは、光学濃度が相互に異なる複数の部位を有するが、光学濃度の異なる部位毎にすべて式(1)と式(2)を満たす。
〔NDフィルターの形状〕
本発明のNDフィルターは、相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有する。これを実現する形状としては、光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有するような形状が挙げられる。
【0097】
本発明のNDフィルターを、光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有するような形状にすると、そのフィルター上における透過光が通過する位置を適宜変化させることにより、NDフィルターの減光特性を任意に調整することができるようになる。光の入射方向の厚みが相互に異なる部位を有するとは、光の入射方向に平行なNDフィルター断面において、光の入射面からその対面に至る、光の入射方向に平行な線分の長
さを考えた場合、その長さが一様ではなく、少なくとも2つの長さが存在することを意味する。
【0098】
このような形状は、目的に応じて適宜決定することができる。たとえば、光の入射方向に平行なNDフィルター断面において、光の入射方向の厚みが階段状(非連続的)に変化する形状、および連続的に変化する形状等を挙げることができる。前者の厚みが階段状に変化する形状においては、その段数および段差の大きさ等には特に制限はない。後者の厚みが連続的に変化する形状においては、厚みが直線的に変化する形状であってもよく、また厚みが光の入射方向に向かって凹状または凸状に曲線状に変化する形状であってもよい。この厚みが連続的に変化する形状には、楔形の形状等が含まれる。また、階段状に変化する部分と連続的に変化する部分との両方を有する形状であってもよい。上記の厚みが階段状に変化する形状および連続的に変化する形状等においては、光の入射方向に直行する方向に厚みが小さくなるのみまたは大きくなるのみである必要はなく、たとえば光の入射方向に直行する方向に厚みが一旦小さくなり、途中から厚みが大きくなるなど、厚みが小さくなる部分および大きくなる部分をそれぞれ1つ以上有するような形状であってもよい。
<NDフィルターの製造方法>
本発明のNDフィルターは、熱可塑性樹脂(A)およびカーボンブラック(B)、必要に応じて前記その他の成分、さらに溶媒等を混合してNDフィルター形成用組成物を調製し、これを所定の形状に成形することにより製造することができる。
【0099】
上記カーボンブラック(B)の熱可塑性樹脂(A)への分散には、大きく分けて、溶剤と必要に応じて分散剤を調合した上で、ピコミル、ペイントシェイカー、またはボールミル等を用いて分散する湿式分散による方法と、熱可塑性樹脂を加温し、溶融させた状態で、カーボンブラックを分散させる乾式分散とがあり、これらのいずれの方法を用いてもよい。
湿式分散の場合は、カーボンブラック(B)を溶剤に予備分散したものと熱可塑性樹脂(A)を同一の溶剤に溶解したものを混合し、加えて上記の予備分散時に、分散剤として、熱可塑性樹脂(A)、もしくは熱可塑性樹脂(A)と化学的性質の類似した樹脂を用いることにより、式(1)と式(2)を満たすことができるように、カーボンブラック(B)の熱可塑性樹脂(A)への分散状態を制御することが可能となる。
【0100】
一方で、乾式分散の場合は、その処理温度を熱可塑性樹脂のガラス転移温度に対して、+100℃〜+200℃とすることで、式(1)と式(2)を満たすことができるように、カーボンブラック(B)の熱可塑性樹脂(A)への分散状態を制御することが可能となる。
【0101】
熱可塑性樹脂(A)を溶融した上での乾式分散では、公知の単軸または二軸の押出機を用いることが可能である。押出機のシリンダー径は、通常、10〜100mmである。スクリューは公知のものを用いることができる。例えば単軸の場合、フルフライト、サブフライトを組み合わせたもの、ダルメージを組み込んだもの、スクリューピッチまたは溝深さが同一スクリュー中で変わるものが挙げられる。二軸の場合、2条または3条のスクリュー、異方向または同方向回転のスクリューが挙げられる。スクリューパーツが自由に組み合わされる方式の場合、スクリューパーツの形状を、スクリュー式、逆送りスクリュー、パドル式スクリュー、ヘリカルパドル式スクリューなどから自由に選択し使用することが可能である。
【0102】
押出機は1台で運転することも可能であるが、押出機を2台以上連結させたもの、連続式およびバッチ式のニーダーと組み合わせたものを使用しても構わない。
【0103】
熱可塑性樹脂(A)およびカーボンブラック(B)は、公知のタンブラー式、回転式などのブレンダーや、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機を用いてあらかじめ固体の状態で混合することも可能であり、複数のフィーダーを用いることも可能である。またカーボンブラック(B)は押出し機の途中からフィードすることも可能である。
NDフィルター形成用組成物中の熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)の含有割合は、NDフィルターにおけるカーボンブラック(B)の含有割合が前記範囲内となる限り、NDフィルターの製造方法に応じて任意に決めることができる。
【0104】
熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)とのブレンドにおいては、両者をあらかじめ公知の方法で乾燥することも好ましい。乾燥方法としては、熱風乾燥、除湿乾燥、真空乾燥、窒素乾燥など公知の方法を用いることが可能である。
【0105】
また、押出し機のホッパー、投入口、ベント口、ダイス面などを窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガスでシールすることも好ましい方法である。
【0106】
前述のように、単一NDフィルター内で光学濃度を変えるために、材料の濃度を一定にしたまま、NDフィルターの厚みを面内で段階的または連続的に変化させることが好ましい。このような形状のNDフィルターの製造方法としては、たとえば下記(i)〜(iii)の方法を挙げることができる。
(i)前記NDフィルター形成用組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上の任意の場所に、同組成物を用いて作成した厚みの均一な任意の面積を有する成形体を1つ以上部分的に積層することにより、相互に光学濃度の異なる複数の部位を有するNDフィルターを製造する方法。
(ii)前記NDフィルター形成用組成物を、厚みの異なる部位を任意の場所に任意の面積で有する形状を有する成形体を成形できる金型を用いて、射出成形により、相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有するNDフィルターを製造する方法。
(iii)前記NDフィルター形成用組成物を用いて作成した均一な厚みのシート、またはフィルムに彫刻を施したロールを押圧するホットスタンプ等の方法にて、任意の光学濃度が得られるように厚みを制御した後、公知の打ち抜きの方法により相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有するNDフィルターを製造する方法。
【0107】
特に、金型を準備し、所定の形状を得る前記製造方法(ii)が、生産量の調整、NDフィルターのデザイン変更等への順応性が高く、かつ工程数が少ないため、生産性、歩留を向上させる点からも特に好ましい。
【0108】
前記製造方法(i)、(iii)において、厚みの均一な成形体、シートまたはフィルムは、NDフィルター形成用組成物を用いてキャスト法、押出し成形法等の任意の方法で成形することができる。その際に用いられるNDフィルター形成用組成物としては、熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)等を任意の溶媒中で混合し、取り扱い性などの観点から粘度を調節したものを用いることができる。
【0109】
前記溶媒としては、熱可塑性樹脂が溶解し、カーボンブラックが良好に分散する限り特に制限されないが、芳香族系炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を挙げることができる。トルエン、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートが熱可塑性樹脂の溶解性、カーボンブラックの分散性の点で好ましい。
〔反射防止能の付与〕
迷光およびゴーストを防ぐため、NDフィルター表面に反射防止処理をすることも好ましい。反射防止処理方法としては、具体的には公知の誘電体多層膜による方法に加え、ホ
ットスタンプによるナノインプリントにて可視域の反射防止性能を付与する方法、フッ素ガス中でNDフィルターの表層から0.1マイクロメートルをフッ素化反応させる方法、蒸着にて形成する誘電体多層膜に代わり、ウェットコーティングによりフッ素化合物または中空シリカ等からなる単一の反射防止層、更には屈折率の異なる複数の層からなる反射防止層を積層して反射防止性能を付与する方法等が好ましく用いられる。
【0110】
成形物を打ち抜き加工等によりチップ化して撮像機器等に組み込む際には、カット時に発生する、切粉の発生が大きな問題となる場合も多い。上述の反射防止性能を付与する手段としては、真空蒸着以外の方法を用いることで、切粉の発生を低減することが可能である。更に生産性を考慮した場合には、成形体の表裏を同時処理することが可能な表層フッ素化法、または、再現性に優れかつ加工速度の速い、ウェットコートによる単層からなる反射防止層により処理する方法が好ましい。
〔段差および非垂直面での反射光の処理〕
上記〔NDフィルターの形状〕で述べたように、非連続的にNDフィルターの厚みに変化をつけて面内での減光特性を変化させる場合、光の入射面は段差を有することになる。場合によってはこの段差の部分が受光素子へ影響を与える場合があるため、適宜、この段差部位に撮像機器への影響を少なくするための処理を施すことが好ましい。
【0111】
具体的には、光の入射方向に平行な断面において光の入射面が単純に直角に折れ曲がった線以外の線を描くようにする方法、段差の部分を光の入射方向からみた場合に、光の入射面の段差部に現れる線が、直線以外の例えば曲線からなる波型またはノコ刃様の線になるようにする方法、および段差部分の形状変化を連続的にする方法等がある。さらに、段差を無くするために、可視域で透明な樹脂を用いて段差を含むNDフィルター全面をコーティングし、段差部分のエッジ部に透明樹脂を充填すること、更にはコーティング量をより増やして、段差を全く無くしてしまう方法がある。
【0112】
更には、該NDフィルターの段差部分と互いに嵌り合う段差部分を有する透明な成形体を別途準備し、両者が嵌るように段差のある面同士を貼り合わせることにより段差が全く無くなるようにする方法が好ましく用いられる。これらの手法については撮像機器の受光素子への像への影響を実際に確認した上で、必要に応じて、単一の方法を、またはこれらの方法を2種以上の組合せて用いることが好ましい。
【0113】
また、NDフィルターの光の入射方法の厚みを連続的に変化させ、且つ該NDフィルターの位置を入射光に対して、直交方向に移動させることにより、減光特性を連続的に変化させることができる。
【0114】
しかし、上記の場合、該NDフィルターの入射面のうち一部は、少なくとも光の入射方向に対して垂直とはなりえない部分(以下、この面を非垂直面という)を有する。空気中を通って、該NDフィルターの非垂直面に達した光は、透過光は屈折を受け、また反射光は入射光とは異なる方向に反射されることとなり、それぞれ光軸のズレおよび反射による迷光を発生させる問題が生じてくる。
【0115】
そこで、その解決策として、非垂直面に前述の熱可塑性樹脂(A)などの透明樹脂を成形加工したものを貼り合わせ、且つその透明樹脂の形状を適宜調整することにより、透明樹脂を貼り合わせた後のNDフィルターの入射面および出射面を、共に入射光に対して垂直とすることができる。
【0116】
前述の貼り合わせによって、NDフィルター部位と透明樹脂部位との間に境界が生じるが、透明樹脂部分とNDフィルター部分との屈折率差が極めて小さいため、NDフィルターと透明樹脂との貼り合わせを接着および圧着等の方法にて空気を介さないように行い、
両者を一体化させることで、屈折および反射は実質的に問題とならないようにすることができる。
<NDフィルターの使用方法>
上記のNDフィルターを用いて、相互に光の入射方向の厚みが異なる部位に光を入射させることにより光の透過率を調節することができる。具体的には、例えば撮像機器を屋外で使用する際に、外光の強度に応じて、前記の厚みの異なる部位の適当な位置を選択することで、露光量を調節し、像の明るさを最適化することができるようになる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
キャストフィルムの残留トルエン量
真空乾燥後のトルエン含量は予め検量線を作成しておいたパーソナルガスクロマトグラフィーC-8A(検出機;FID 島津製作所社製)にて測定した。
波長別透過特性
波長380〜780nmの範囲の波長別の光線透過率を日立分光光度計U−3310(日立製作所社製)を用いて測定した。
波長別反射特性
上記の日立分光光度計U−3310に反射率測定ユニットを組み込んで、波長380〜780nmの波長別の反射率を、アルミ蒸着ミラーを100%とした5度正反射における相対反射率として測定した。
全光線透過率
ヘイズメーターHM−150(村上色彩技術研究所社製)を用いてJIS K7361に準拠した測定をおこなった。
光線透過率の平均値T(ave):厚みの同じ任意の箇所を3点測定し、平均値Tとした。
最小値T(min):厚みの同じ任意の箇所を3点測定し、最も透過率の低い箇所の値をT(min)とした。
最大値T(max):厚みの同じ任意の箇所を3点測定し、最も透過率の高い箇所の値をT(min)とした。
ヘイズ値
ヘイズメーターHM−150(村上色彩技術研究所社製)を用いてJIS K7136に準拠した測定を行った。
レタデーション
レタデーション(透過光の位相差)は王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、波長550nmにて測定した。
<合成例1(環状オレフィン系重合体の合成)>
窒素置換した反応容器に、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン225部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2
−エン25部と、分子量調節剤として1−ヘキセン18部と、溶媒としてトルエン750部とを仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム1.5モル/lを含有するトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)を含有する濃度0.05モル/lのトルエン溶液3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。
【0117】
この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環共重合体溶液を構成する開環共重合体の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh )を測定したところ、0.65dl/gであった。
【0118】
得られた開環共重合体溶液4000部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム:RuHCl(CO)[P(C6 H5 )3 ]3 0.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2 、反応温度165℃の条件下で3時間加熱攪拌することにより水素添加反応を行った。
【0119】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「環状オレフィン系重合体(a)」ともいう。)を得た。
【0120】
得られた環状オレフィン系重合体(a)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であった。
【0121】
また、環状オレフィン系重合体(a)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は39,000、重量平均分子量(Mw)は116,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.97であった。
【0122】
また、環状オレフィン系重合体(a)のガラス転移温度(Tg)は130℃であり、23℃における飽和吸水率は0.3重量%であった。また、環状オレフィン系重合体(a)のSP値を測定したところ、19(MPa1/2 )であり、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ0.67dl/gであった。
【0123】
[作製例1]NDフィルター(1)の製造
カーボンブラック分散液(御国色素社製、固形分濃度20%、カーボンブラック一次粒子径15nm)100重量部に対して、合成例1で得られた環状オレフィン系重合体(a)(1mm厚での380〜780nmにおける光線透過率:93%)の20%トルエン溶液2000重量部を添加した後、溶液が目視で均一になるまで攪拌し、NDフィルター形成用組成物としてキャスト用ドープ液(1)を作成した。
【0124】
このキャスト用ドープ液を液膜300マイクロメートルとなるようにPETフィルム(コスモシャインA4300 東洋紡社製)上にアプリケータを用いて塗布し、そのまま100℃の強制攪拌式オーブンに投入し、10分間放置し、トルエンを揮発させた後、カーボンブラック分散環状オレフィン系重合体フィルム(厚み35μm)を得た。このフィルムを100℃に温度調節した真空乾燥機にて10時間乾燥させて、トルエン含量が0.1%未満のNDフィルター(1)を得た。
【0125】
得られたNDフィルター(1)の波長別透過特性を図1に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。可視域における透過光強度の波長依存の極めて小さく、かつ拡散透過光がほとんどない良好な減光性能を示すNDフィルター(1)が得られた。NDフィルター(1)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ42%、41%および43%であった。
【0126】
なお、全光線透過光は平行光と拡散透過光とから構成され、平行光とは透過光のうち入射光と平行である光の成分であり、拡散透過光とは透過光のうち入射光と非平行である光の成分である。また、
ヘイズ=拡散透過率/全光線透過率(%)
の関係がある。よって、ヘイズ値が小さいことは拡散透過率が小さいことを意味し、拡散透過光が少ないことを意味する。
【0127】
[作製例2]NDフィルター(2)の製造
環状オレフィン系重合体(a)はあらかじめ100℃×4時間の条件で真空乾燥を行った。その後タンブラーブレンダーで所定量のカーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)と予備混合を行った。なお環状オレフィン重合体(a)とカーボンブラックの混合比は重量比で100:1とした。
【0128】
二軸押出機(TEM−37BS,東芝機械社製)を所定温度である290〜300℃に加熱し、ホッパーとシリンダー内を窒素で充満させた。温度が安定した後、スクリューを100rpmで回転させ、ホッパー部へ窒素を流しながら、20kg/hrの速度で溶融混合を行い、NDフィルター形成用組成物として、光吸収性のカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を得た。
【0129】
更にこのカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)は100℃×4時間の条件で真空乾燥を行い、窒素でシールしたアルミ袋中に保管した。
【0130】
更に十分に清掃した650mm幅のTダイを50mmφ押出機に取り付けた。ダイスおよび押出機の昇温を始める前にダイスリップ部にとりつけたアルミニウム製のカバーから、純度99.99%の窒素を0.6m3/hrの流速で流すことにより封止し、Tダイと
押出機の昇温を始めた。
【0131】
昇温開始から5時間かけ十分に昇温した後、カーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を窒素循環式除湿乾燥機(日水加工社製、SD−200)にて100℃で3時間除湿乾燥をおこなった後、押出機のホッパーに移送した。
【0132】
押出機としてジーエムエンジニアリング株式会社製90mm押出機(GM−90)を用いて、押出温度280〜300℃で吐出量5kg/hrで樹脂を溶融し、ギアポンプで定量供給し、コートハンガー型マニホールドを有する700mm幅のTダイを用いて、樹脂を膜状に引き伸ばし、ステンレスベルト(表面粗さ0.1s)とつや付きロール(表面粗さ0.1s)を用いて、3.2m/minの速度で、フィルムを引き取り、樹脂フィルムの両面に鏡面の状態を転写・剥離して、500mm幅、厚さ50μmのシートを作製した。冷却キャストドラムの温度設定はTg−5〜20℃に設定して成形を行いNDフィルター(2)を得た。
【0133】
全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。NDフィルター(2)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ30%、29%および32%であった。
[実施例1]積層法によるNDフィルター(ND1)の製造
実施例1で得られたNDフィルター(1)を20mm×10mm、15mm×10mm
、および10mm×10mmで打ち抜きをおこなったところ、端面のきれいな3種類のサイズからなるNDフィルターが得られた。この20mm×10mmのNDフィルター上にマイクロディスペンサーを用いて、基準とする10mm辺から距離7.5mmとなる中央部位にメチルアミルケトンを1マイクロリットル滴下し、2秒後に先に打ち抜いた15mm×10mmのNDフィルターを基準とする10mm辺がちょうど重なるように、重ね合わせた。
【0134】
更にこの15mm×10mmのNDフィルター上にマイクロディスペンサーを用いて、先の基準辺から距離5mmとなる中央部にメチルアミルケトンを1マイクロリットル滴下し、2秒後に先に打ち抜いた10mm×10mmのNDフィルターを基準とする10mm
辺がちょうど重なるように、重ね合わせた。
【0135】
上記の3枚のNDフィルターを重ね合わせた後、10Nの荷重で10秒間ホールドした後、18mm×8mmサイズの打ち抜き刃で重ね合わせたNDフィルターの中央部を打ち抜くことにより、積層型NDフィルター(ND1)を得た。積層型NDフィルター(ND1)の出来上がりの概略図を図2に示した。
【0136】
1〜3枚重ね合わせ部分、図2に示した(a)〜(c)部分の波長別光線透過率の結果を図3〜5に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。同様にして、実施例2で得た混練押出タイプのNDフィルター(2)を用いて積層型NDフィルター(ND2)を得た。積層型NDフィルター(ND2)の概略図についても図6に示した。積層型NDフィルター(ND2)についても同様の評価をおこない、図6に示した(d)〜(f)部分の波長別光線透過率の結果を図7〜9に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。
【0137】
積層型NDフィルター(ND1)の1枚重ね合わせ部分の380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ42%、41%および43%であった。同様に2枚重ね合わせ部分の380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ13.0%、12.9%および13.9%であった。同様に3枚重ね合わせ部分の380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ4.1%、4.1%および4.2%であった。NDフィルター(ND2)は、段階的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した。
【0138】
[実施例2] 蒸着法によるNDフィルター(ND3)の製造
NDフィルター(2)を20mm×10mmに打ち抜いたサンプルに10mm×10mmに打ち抜いた耐熱保護フィルムであるE−MASK TP300(日東電工社製)を10mmの辺がちょうど重なるように貼り合わせた。このNDフィルター(2)に耐熱保護フィルム貼り合わせたものを基体として、以下の構成となるように、金属クロムとフッ化マグネシウムからなる積層体の蒸着をおこなって蒸着型NDフィルター(ND3)を得た。蒸着終了後に、該蒸着基体を取り出し、該保護フィルムを貼り合わせていない部分の波長別光線透過率を図10に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。なお該保護フィルムを剥離した部分の光学特性はNDフィルター(2)と同等であった。
積層構成と条件
基体側から順に金属クロム33ナノメートル、フッ化マグネシウム110ナノメートル、さらにもっとも空気に近い層として、金属クロムが2ナノメートルとなるよう、抵抗加熱法にて蒸着源を気化させ蒸着を行った。
[実施例3]射出成形法によるNDフィルター(ND4)の製造
段差を有する成形品からなるNDフィルターを得るための金型を作成し、作製例2で作製したカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を用いて成形機SG75M−S(シリンダー径28mm、型締め75ton、住友重機社製)を用いて射出成形にて射出成形型NDフィルター(ND4)を得た。射出成形型NDフィルター(ND4)の概略図を図11に示した。射出成形型NDフィルター(ND4)についても実施例1と同様の評価をおこない、図11に示した(g)〜(i)部分の波長別光線透過率の結果を図12〜14に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。
【0139】
NDフィルター(ND4)の厚み44ミクロンの部位における380〜780nmにお
ける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ30%、29%および32%であった。また、厚み87ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ11.0%、10.2%および11.7%であった。また、厚み131ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ3.2%、3.1%、および3.3%であった。NDフィルター(ND4)は、段階的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した。
射出成形条件
成形速度;100mm/sec
シリンダー温度;樹脂Tgの+140〜160℃
金型温度;樹脂Tgの−10〜−20℃
[実施例4]ロール押圧法によるNDフィルター(ND5)の製造
環状オレフィン系重合体(a)はあらかじめ100℃×4時間の条件で真空乾燥を行った。その後タンブラーブレンダーで所定量のカーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)と予備混合を行った。なお環状オレフィン重合体とカーボンブラックの混合比は重量比で100:1とした。
【0140】
二軸押出機(TEM−37BS,東芝機械社製)を所定温度である290〜300℃に加熱し、ホッパーとシリンダー内を窒素で充満させた。温度が安定した後、スクリューを100rpmで回転させ、ホッパー部へ窒素を流しながら、20kg/hrの速度で溶融混合を行い、光吸収性のカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を得た。
【0141】
更にこのカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)は100℃×4時間の条件で真空乾燥を行い、窒素でシールしたアルミ袋中に保管した。
【0142】
更に十分に清掃した650mm幅のTダイを50mmφ押出機に取り付けた。ダイスおよび押出機の昇温を始める前にダイスリップ部にとりつけたアルミニウム製のカバーから、純度99.99%の窒素を0.6m3/hrの流速で流すことにより封止し、Tダイと
押出機の昇温を始めた。
【0143】
昇温開始から5時間かけ十分に昇温した後、カーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(1)を窒素循環式除湿乾燥機(日水加工社製、SD−200)にて100℃で3時間除湿乾燥をおこなった後、押出機のホッパーに移送した。
【0144】
押出機としてジーエムエンジニアリング株式会社製90mm押出機(GM−90)を用いて、押出温度280〜300℃で吐出量10kg/hrで樹脂を溶融し、ギアポンプで定量供給し、コートハンガー型マニホールドを有する700mm幅のTダイを用いて、樹脂を膜状に引き伸ばし、ステンレスベルト(表面粗さ0.1s)と段差ロール(基準円周面より段差44ミクロン掘り込んだ円周方向の長さ5mmの溝、その溝に隣接して更に43ミクロン掘り込み、合計で基準面から87ミクロン掘り込んだ円周方向の長さが5mmの溝、その溝に隣接して基準となる円周面が円周方向に長さ10mm続いた後、再び前記の2種の深さの溝(基準円周面から44ミクロン掘り込んだ溝と87ミクロン掘り込んだ溝)と基準円周面を繰り返し有する)を用いて、3.2m/minの速度で、フィルムを引き取り、樹脂フィルムの両面に鏡面の状態を転写・剥離して、500mm幅、厚さ44〜131nmの不連続な厚みを有するフィルムを作製した。
【0145】
冷却キャストドラムの温度設定はTg−5〜20℃に設定して成形を行った。更に該成形フィルムを18mm×10mmの打ち抜き刃を用いて厚み44ミクロンの部分4mm×
8mm、厚み87ミクロンの部分が5mm×8mm、厚み131ミクロンからなる部分が10mm×8mmであるNDフィルター(ND5)を得た。
【0146】
ロール押圧法によるNDフィルター(ND5)の概略図を図15に示した。ロール押出法によるNDフィルター(ND5)についても実施例1と同様の評価をおこない図15に示した(j)〜(l)部分の波長別光線透過率の結果を図16〜18に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。
【0147】
NDフィルター(ND5)の厚み44ミクロンの部位における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ29%、28%、および31%であった。また、厚み87ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ9.7%、9.1%、および10.3%であった。また、厚み131ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ2.8%、2.7%および3.0%であった。NDフィルター(ND5)は、段階的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した。
[実施例5]射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理
実施例3で得た射出成形型NDフィルター(ND4)について、ナノインプリント金型で温度230℃でφ150ナノメートル、深さ0.1マイクロメートルの細孔を1ミクロン角の面積中に23個、ハニカム構造をとるように空けた。処理後のSEM写真を図19に示した。可視光サイズより十分に小さなナノサイズの細孔を空けることで実質的に反射防止処理がなされ、片面あたりの反射率は処理前の片面4%から、1%以下まで低下した。結果を図20に示した。
[実施例6]射出成形型NDフィルター(ND4)の表面フッ素化処理
実施例3で得た射出成形型NDフィルター(ND4)について、フッ素ガスおよび窒素ガスをそれぞれ任意の割合で混合したガスをボックスに導入し、40℃にて5分間反応させたところ、表面からおよそ0.1ミクロンの深さにおいてマトリックスである環状オレフィン重合体(a)のフッ素化がなされた。フッ素化の深さについてはSIMSにより確認したところ、約0.1マイクロメートルであった。フッ素化処理後の反射率は処理前の片面4%から約2%まで低下していた。結果を図21に示した。
【0148】
[実施例7]NDフィルター(3)の製造
カーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)と環状オレフィン系重合体(a)に加えて染料であるSDA9811(トスコ社製)を更に添加した以外は実施例2と同様にしてカーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(2)を得た。なお、混合比は重量比で環状オレフィン系重合体(a)の量:カーボンブラックの量:染料の量=100:0.1:0.05とした。楔形の形状を有するNDフィルターを得るための金型を作成し、前記カーボンブラック分散環状オレフィン重合体組成物(2)を用いて成形機SG75M−S(シリンダー径28mm、型締め75ton、住友重機社製)を用いて射出成形にてNDフィルター(3)を得た。NDフィルター(3)の概略図を図23に示した。
【0149】
NDフィルター(3)の厚み33ミクロンの部位における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ38%、37%および39%であった。また、厚み66ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ13.0%、12.1%および13.9%であった。また、厚み100ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ4.4%、4.2%および4.6%であった。NDフィルター(3)は、連続的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した
。
【0150】
[実施例8]射出成形型NDフィルター(ND6)
実施例7で作成したNDフィルター(3)と同様の楔形の形状を有する透明成形体を実施例7と同様の成形条件にて作成した。この透明成形体とNDフィルター(3)を実施例1と同様にメチルアミルケトンで貼り合わせ射出成形型NDフィルター(ND6)を得た。貼り合わせ後の射出成形型NDフィルター(ND6)の概略図を図24に示した。
【0151】
NDフィルター(ND6)の厚み33ミクロンの部位における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ38%、37%および39%であった。また、厚み66ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ13.1%、12.1%および13.8%であった。また、厚み100ミクロン部位における光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ4.4%、4.3%および4.6%であった。NDフィルター(ND6)は、連続的に光学濃度を変更することのできるNDフィルターとして使用できることを確認した。
【0152】
[実施例9]射出成形型NDフィルター(ND6)の反射防止処理
射出成形型NDフィルター(ND6)の両面の反射防止処理を真空蒸着にておこない、片面反射率がおよそ1%程度の反射防止能を付与したNDフィルター(ND7)を得た。真空蒸着の条件を下記に示した。NDフィルター(ND7)の反射率測定結果を図25に示した。なお、図25は透明成形体側からの測定結果であり、その反対面からの測定結果も同等であった。
(蒸着条件)
NDフィルターに接する側より順次TiO2、SiO2、TiO2、SiO2を下記の膜厚で積層した。なお、蒸着材料およびその蒸着条件は両面ともに同等とした。
TiO2;11nm
SiO2;50nm
TiO2;16nm
SiO2;107nm
[比較例1]黒色染料を用いた場合
黒色の染料であるFBK80S(日本ピグメント社製)をつかった以外は作製例2と同様にしてNDフィルター(A)を作製した。得られたNDフィルター(A)の波長別透過特性を図22に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを表1に示した。可視域における透過光強度の波長依存性が大きくなってしまった。NDフィルター(A)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ66%、50%および81%であった。
[比較例2]粒子径が大きいタイプ
カーボンブラックとして一次粒子径が大きく、かつストラクチャーも大きなカーボンブラックであるシーストSVH(一次粒子径62nm)を用いた以外は作製例2と同様にしてNDフィルター(B)を作製した。得られたNDフィルター(B)の全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを表1に示した。拡散透過光の割合が多くなってしまった。NDフィルター(B)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ30%、29%および31%であった。
[比較例3] 熱硬化性樹脂を用いた場合
シリコーンレジンLPS−L500(信越化学工業社製)と所定量のカーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)とをホモジナイザーを用いて均一分散させ、光吸収性のカーボンブラック分散熱硬化性樹脂を得た。なおシリコーンレジンとカーボンブラッ
クの混合比は重量比で100:1とした。この光吸収性のカーボンブラック分散熱硬化性樹脂を用いて、ワイヤーバー(ウェット膜厚 40ミクロン)にて、ガラス基板上にフィルム製膜し、150℃×5時間の熱硬化をおこないNDフィルター(C)を得た。得られたNDフィルター(C)は、ごくわずかな面の屈曲に対して割れてしまう、可撓性に乏しいものであり、実用上のハンドリングが大変困難なものとなってしまった。
[比較例4] 光線透過率が低い樹脂を用いた場合
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(光線透過率47% 1mm厚)を用いて実施例2と同様にして タンブラーブレンダーで所定量のカーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)と予備混合を行った。なおポリプロピレンとカーボンブラックの混合比は重量比で100:1とした。
【0153】
二軸押出機(TEM−37BS,東芝機械社製)を所定温度である190〜200℃に加熱し、ホッパーとシリンダー内を窒素で充満させた。温度が安定した後、スクリューを100rpmで回転させ、ホッパー部へ窒素を流しながら、20kg/hrの速度で溶融混合を行い、NDフィルター形成用組成物として、光吸収性のカーボンブラック分散ポリプロピレン組成物を得た。
【0154】
このカーボンブラック分散ポリプロピレン組成物をホットプレス法(温度200℃、圧力100MPa)にてフィルム化したところ厚み0.1mmのNDフィルター(D)が得られた。
【0155】
NDフィルター(D)の全光線透過率、ヘイズ値、リタデーションを測定した結果を表1に示した。NDフィルター(D)はヘイズが高く、実際に該フィルターを介して目視で対象物を観察した際には、減光性能が得られたものの、対象物の像の輪郭が不明瞭であった。
【0156】
また、熱可塑性樹脂として前記ポリプロピレンを用いた場合、熱可塑性樹脂自体の光線透過率が47%のため、光線透過率が47%より大きなNDフィルターを作製することはできない。
[比較例5]減光特性に波長依存性が大きいケース
カーボンブラック(PRINTEX95;デグサ社製)21.6重量部、分散剤BYK−167(ビックケミー・ジャパン社製)2.4重量部、トルエン96重量部、ジルコニアビーズ(直径0.1mm)48重量部をポリ瓶に入れて、ペイントシェイカーで6時間震盪した後、SUS製の200メッシュを用いて、ジルコニアビーズを除き、カーボンブラック分散液(1)を得た。このカーボンブラック分散液(1)100重量部に対して、合成例(1)で得られた環状オレフィン系重合体(a)(1mm厚での380〜780nmにおける光線透過率:93%)の20%トルエン溶液2000重量部を添加した後、溶液が目視で均一になるまで攪拌し、NDフィルター形成用組成物としてキャスト用ドープ液(2)を作成した。
【0157】
このキャスト用ドープ液を液膜300マイクロメートルとなるようにPETフィルム(コスモシャインA4300 東洋紡社製)上にアプリケータを用いて塗布し、そのまま100℃の強制攪拌式オーブンに投入し、10分間放置し、トルエンを揮発させた後、カーボンブラック分散環状オレフィン重合体フィルム(厚み35μm)を得た。このフィルムを100℃に温度調節した真空乾燥機にて10時間乾燥させて、トルエン含量が0.1%未満のNDフィルター(E)を得た。得られたNDフィルター(E)の波長別透過特性を図26に、全光線透過率、ヘイズ値、レタデーションを測定した結果を表1に示した。可視域における透過光強度の波長依存の大きなNDフィルター(E)が得られた。NDフィルター(E)における380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)は、それぞれ46%、34%および54%で
あった。
【0158】
NDフィルター(E)の減光特性は波長依存性大きいため、実際に該フィルターを介して目視で対象物を観察した際には、対象物が黄色味を帯びており、色調変化が生じていた。
【0159】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有し、且つ380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)が下記式(1)および式(2)を満たし、相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有することを特徴とするNDフィルター。
【数1】
【請求項2】
前記カーボンブラック(B)が前記熱可塑性樹脂(A)中に分散されていることを特徴とする請求項1に記載のNDフィルター。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)が、下記式(I)で表される化合物から導かれる構造単位を有する環状オレフィン系重合体(A)を含有することを特徴とする請求項1〜2に記載のNDフィルター。
【化1】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
【請求項4】
光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のNDフィルター。
【請求項5】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上に、前記組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体を少なくとも1層部分的に積層することにより形成されていることを特徴とする請求項4に記載のNDフィルター。
【請求項6】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を射出成形することにより形成されていることを特徴とする請求項4に記載のNDフィルター。
【請求項7】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を押出し法により成型して得られたシートまたはフィルムに、彫刻を施したロールを押圧する工程を含む方法により形成されていることを特徴とする請求項4に記載のNDフィルター。
【請求項8】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上に、前記組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体を少なくとも1層部分的に積層する工程を有することを特徴とする請求項4に記載のNDフィルターの製造方法。
【請求項9】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を射出成形することを特徴とする請求項4に記載のNDフィルターの製造方法。
【請求項10】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を押出し法により成型して得られたシートまたはフィルムに彫刻を施したロールを押圧する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載のNDフィルターの製造方法。
【請求項11】
請求項4〜7のいずれかに記載のNDフィルターを用いて、相互に光の入射方向の厚みが異なる部位に光を入射させることにより光の透過率を調節する方法。
【請求項1】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有し、且つ380〜780nmにおける光線透過率の平均値T(ave)、最小値T(min)および最大値T(max)が下記式(1)および式(2)を満たし、相互に光学濃度の異なる複数の部位を非連続的または連続的に有することを特徴とするNDフィルター。
【数1】
【請求項2】
前記カーボンブラック(B)が前記熱可塑性樹脂(A)中に分散されていることを特徴とする請求項1に記載のNDフィルター。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)が、下記式(I)で表される化合物から導かれる構造単位を有する環状オレフィン系重合体(A)を含有することを特徴とする請求項1〜2に記載のNDフィルター。
【化1】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
【請求項4】
光の入射方向の厚みが相互に異なる少なくとも2つの部位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のNDフィルター。
【請求項5】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上に、前記組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体を少なくとも1層部分的に積層することにより形成されていることを特徴とする請求項4に記載のNDフィルター。
【請求項6】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を射出成形することにより形成されていることを特徴とする請求項4に記載のNDフィルター。
【請求項7】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を押出し法により成型して得られたシートまたはフィルムに、彫刻を施したロールを押圧する工程を含む方法により形成されていることを特徴とする請求項4に記載のNDフィルター。
【請求項8】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体上に、前記組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体を少なくとも1層部分的に積層する工程を有することを特徴とする請求項4に記載のNDフィルターの製造方法。
【請求項9】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を射出成形することを特徴とする請求項4に記載のNDフィルターの製造方法。
【請求項10】
厚さ1mmでの380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径50nm以下のカーボンブラック(B)とを含有する組成物を押出し法により成型して得られたシートまたはフィルムに彫刻を施したロールを押圧する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載のNDフィルターの製造方法。
【請求項11】
請求項4〜7のいずれかに記載のNDフィルターを用いて、相互に光の入射方向の厚みが異なる部位に光を入射させることにより光の透過率を調節する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−107946(P2010−107946A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140343(P2009−140343)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】
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